説明

引き戸駆動装置及び引き戸駆動方法

【課題】簡素な構造で引き戸の開閉を容易に行うことができる引き戸駆動装置の提供。
【解決手段】引き戸10の開閉方向に延伸するように引き戸に取り付けられた長方板形状の強磁性体部200と、強磁性体部200に磁気的に作用するように近接して配置される円筒状磁石部104と、該円筒状磁石部104を回転駆動するモータ101と、該モータ101の回転制御を行う制御部120とを備え、円筒状磁石部104と強磁性体部200の磁気的作用による吸引力が、モータ101の回転トルクより小さく、且つ引き戸10を開閉するための引き戸作動力より大きいように設定したもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引き戸等の扉を簡易に開閉駆動することができる引き戸駆動装置及び引き戸駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に住宅等において直線的に平行移動する引き戸等の扉を開閉する引き戸駆動装置としては、例えばリニアモータを駆動源とするもの、ラック及びビニオンギヤ等の機構をモータ駆動するもの、ベルトドライブ駆動するもの、ローラを引き戸面に押し当てながら回転駆動することにより引き戸開閉駆動を行うものが提案されている。前記リニアモータを駆動源とする引き戸駆動装置が記載された文献としては、例えば下記特許文献1が挙げられ、前記回転ローラを引き戸に押し当てる引き戸駆動装置が記載された文献としては、例えば下記特許文献2が挙げられる。
【0003】
前記特許文献1には、鴨居に沿って多数設置されるコイルと、引き戸上端面に配置される磁石と、前記コイルを順次通電することにより前記磁石に駆動力を与える制御部とから引き戸駆動装置を構成する技術が記載されている。前記特許文献2には、引き戸の幅方向上端に配置した磁性体と、該磁性体に接触して回転駆動することにより引き戸の開閉駆動を行う駆動ローラと、該駆動ローラと一体的に結合され、該駆動ローラを引き戸の磁性体に磁力により押し付ける磁石とから引き戸駆動装置を構成し、前記磁石が駆動ローラを磁性体により押し付けた状態で駆動ローラを回転駆動させることによって、引き戸を開閉駆動する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−349139号公報
【0005】
【特許文献2】特開2006−125116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1に記載されたリニアモータを使用した引き戸駆動装置は、多数の回路部品を要するために高価となり、一般家庭用に普及することが困難であった。また前記特許文献2記載の技術は、機構が単純になるものの、引き戸を円滑に開閉させるためには駆動ローラを磁性体に押し付ける力を組み立て精度も考慮して厳密に調整しなければならないと言う不具合もあった。
【0007】
本発明の目的は、簡素な構造で引き戸の開閉を容易に行うことができる引き戸駆動装置及び引き戸駆動方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため本発明は、直線方向に開閉される引き戸の開閉駆動を行う引き戸駆動装置であって、
前記引き戸に取り付けられた強磁性体材料から成り、引き戸開閉方向に延伸する長方板形状を有する強磁性体部と、回転軸が前記強磁性体部の延伸方向と垂直な強磁性体高さ方向に設定され、且つ円筒外周部が前記強磁性体部と磁気的に作用するように近接して配置された円筒状磁石部と、該円筒状磁石部を任意の回転数により回転駆動するモータと、該モータの回転制御を行う制御部とを備え、前記円筒状磁石部と強磁性体部の磁気的作用による吸引力が、モータの回転トルクより小さく、且つ引き戸を開閉するための引き戸作動力より大きいように設定したことを第1の特徴とする。
【0009】
更に本発明は、閉じた状態において壁面と一面になるフラット型の引き戸の開閉駆動を行う引き戸駆動装置であって、
前記引き戸に取り付けられた強磁性体材料から成り、一端が引き戸開閉方向に延伸し、他端が壁内方に向かって湾曲する湾曲部を有する長方板形状の強磁性体部と、回転軸が前記強磁性体部の延伸方向と垂直な強磁性体高さ方向に設定され、且つ円筒外周部が前記強磁性体部と磁気的に作用するように近接して配置された円筒状磁石部と、該円筒状磁石部を任意の回転数により回転駆動するモータと、引き戸が閉じたときに引き戸と壁が一面にフラットとなり且つ引き込まれた状態において壁面と平行移動する様に引き戸の移動軌跡を案内する案内機構と、前記モータの回転制御を行う制御部とを備え、前記円筒状磁石部と強磁性体部の磁気的作用による吸引力が、モータの回転トルクより小さく、且つ引き戸を開閉するための引き戸作動力より大きいように設定したことを第2の特徴とする。
【0010】
また本発明は、前記第2の特徴の引き戸駆動装置において、前記引き戸案内機構が、前記鴨居の下面に取り付けられ、閉じたときに壁とフラットとなり且つ引き込まれた状態において壁面と平行移動する様に引き戸を案内する湾曲溝部及び直線溝部を有するガイドレールと、該ガイドレールの湾曲溝部及び直線溝部と一端が係合するピンと、引き戸に取り付けられ、前記ピンの他端が長孔と係合するブラケットとから構成されたことを第3の特徴とする。
【0011】
また本発明は、前記第1又は2又は3の特徴の引き戸駆動装置において、前記円筒状磁石が、前記強磁性体部の内部を前記延伸方向に向かってN極からS極に向かう磁力線経路を形成することを第4の特徴とする。
【0012】
また本発明は、前記第1又は2又は3の特徴の引き戸駆動装置において、前記円筒状磁石が、前記強磁性体部の内部を前記延伸方向と垂直な強磁性体高さ方向に向かってN極からS極に向かう磁力線経路を形成することを第5の特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記第1から第5の何れかの特徴の引き戸駆動装置において、前記円筒状磁石の円筒外周部の表面に非磁性材の薄膜を設けたことを第6の特徴とする。
【0014】
また本発明は、前記第1から第6の何れかの特徴の引き戸駆動装置において、前記強磁性体部の前記円筒状磁石と向かい合う表面に非磁性材の薄膜を設けたことを第7の特徴とする。
【0015】
また本発明は、前記何れかの特徴の引き戸駆動装置において、前記強磁性体部を取り付けた引き戸の移動量を検出するセンサ部を設け、前記制御部が前記センサ部により引き戸の移動量を検出しながらモータの回転制御を行うことを第8の特徴とする。
【0016】
また本発明は、前記第8の特徴の引き戸駆動装置において、前記モータが駆動パルス周波数に回転速度が比例するステッピングモータであり、前記制御部がステッピングモータの回転速度を加速するとき、前記引き戸作動力に抗して起動可能なプルイントルク未満且つモータを起動可能な駆動パルス周波数により前記ステッピングモータの回転を加速する第1の加速を行った後、前記引き戸作動力に抗して回転を維持するプルアウトトルク未満且つ前記第1の加速による駆動パルス周波数以上の駆動パルス周波数によりステッピングモータの回転を加速する第2の加速を行うことを第9の特徴とする。
【0017】
更に本発明は、引き戸に取り付けられた強磁性体材料から成り、引き戸開閉方向に延伸する長方板形状を有する強磁性体部と、回転軸が前記強磁性体部の延伸方向と垂直な強磁性体高さ方向に設定され、且つ円筒外周部が前記強磁性体部と磁気的に作用するように近接して配置された円筒状磁石部と、該円筒状磁石部を任意の回転数により回転駆動するモータと、該モータの回転制御を行う制御部とを備え、前記円筒状磁石部と強磁性体部の磁気的作用による吸引力が、モータの回転トルクより小さく、且つ引き戸を開閉するための引き戸作動力より大きいように設定した引き戸駆動装置の引き戸駆動方法であって、
前記制御部が、前記モータを用いて前記円筒状磁石部を回転させ、該円筒状磁石部の回転により、該円筒状磁石部に磁気的に作用した強磁性体部を前記モータ設置位置に対して相対的に移動させることを第10の特徴とする。
【0018】
更に本発明は、前記引き戸に取り付けられた強磁性体材料から成り、端が引き戸開閉方向に延伸し、他端が壁内方に向かって湾曲する湾曲部を有する長方板形状の強磁性体部と、回転軸が前記強磁性体部の延伸方向と垂直な強磁性体高さ方向に設定され、且つ円筒外周部が前記強磁性体部と磁気的に作用するように近接して配置された円筒状磁石部と、該円筒状磁石部を任意の回転数により回転駆動するモータと、引き戸が閉じたときに引き戸と壁が一面にフラットとなり且つ引き込まれた状態において壁面と平行移動する様に引き戸の移動軌跡を案内する案内機構と、前記モータの回転制御を行う制御部とを備え、前記円筒状磁石部と強磁性体部の磁気的作用による吸引力が、モータの回転トルクより小さく、且つ引き戸を開閉するための引き戸作動力より大きいように設定した引き戸駆動装置の引き戸駆動方法であって、
前記制御部が、前記モータを用いて前記円筒状磁石部を回転させ、該円筒状磁石部の回転により、該円筒状磁石部に磁気的に作用した強磁性体部を前記モータ設置位置に対して相対的に移動させることを第11の特徴とする。
【0019】
また本発明は、該第11の特徴の引き戸駆動方法において、前記鴨居の下面に取り付けられ、閉じたときに壁とフラットとなり且つ引き込まれた状態において壁面と平行移動する様に引き戸を案内する湾曲溝部及び直線溝部を有するガイドレールと、該ガイドレールの湾曲溝部及び直線溝部と一端が係合するピンと、引き戸に取り付けられ、前記ピンの他端が長孔と係合するブラケットとから前記引き戸案内機構を構成し、
前記制御部が、前記円筒状磁石部の回転により、前記引き戸案内機構により軌跡を案内しながら前記強磁性体部をモータ設置位置に対して相対的に移動させることを第12の特徴とする。
【0020】
また本発明は、前記第10又11又は12の特徴の引き戸駆動方法において、前記強磁性体部を取り付けた引き戸の移動量を検出するセンサ部を設けると共に、前記モータが駆動パルス周波数に回転速度が比例するステッピングモータであり、前記制御部がステッピングモータの回転速度を加速するとき、前記引き戸作動力に抗して起動可能なプルイントルク未満の駆動パルス周波数によりステッピングモータの回転を加速する第1の加速を行った後、前記引き戸作動力に抗して回転を維持するプルアウトトルク未満の駆動パルス周波数によりステッピングモータの回転を加速する第2の加速を行うことを第13特徴とする。
【0021】
また本発明は、前記第10から13何れかの特徴の引き戸駆動方法において、N極からS極に磁力線が強磁性体部の内部を前記延伸方向に向かって通る磁力線経路を形成する円筒状磁石を用い、該円筒状磁石が前記磁力線経路を形成しながら回転することにより引き戸の開閉動作を行うことを第14の特徴とする。
【0022】
また本発明は、前記第10から13何れかの特徴の引き戸駆動方法において、N極からS極に磁力線が強磁性体部の内部を前記延伸方向と垂直な強磁性体高さ方向に向かって通る磁力線経路を形成する円筒状磁石を用い、該円筒状磁石が前記磁力線経路を形成しながら回転することにより引き戸の開閉動作を行うことを第15の特徴とする。
【0023】
また本発明は、前記第10から第15の何れかの特徴の引き戸駆動方法において、前記円筒状磁石の円筒外周部の表面に非磁性材の薄膜を設け、該非磁性材の薄膜が該円筒状磁石との物理的接触を防止した状態で制御部が円筒状磁石を回転駆動することにより、引き戸の開閉動作を行うことを第16の特徴とする。
【0024】
また本発明は、前記第10から第16の何れかの特徴の引き戸駆動方法において、前記強磁性体部の前記円筒状磁石と向かい合う表面に非磁性材の薄膜を設け、該非磁性材の薄膜が該円筒状磁石との物理的接触を防止した状態で制御部が円筒状磁石を回転駆動することにより、引き戸の開閉動作を行うことを第17の特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明による引き戸駆動方法を採用した引き戸駆動装置は、引き戸に取り付けられた長板形状の強磁性体部と、該強磁性体部に磁気的に作用するように近接して配置された円筒状磁石部とを用い、前記円筒状磁石部と強磁性体部間の磁気的作用による吸引力が、モータの回転トルクより小さく、且つ引き戸を開閉するための引き戸作動力より大きいように設定した状態で、前記円筒状磁石部を回転させることによって、該円筒状磁石部に磁気的に作用した強磁性体部をモータ設置位置に対して相対的に移動させることができ、従って簡素な構造で引き戸の開閉を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態による引き戸駆動装置の構成の説明図。
【図2】本実施形態による強磁性体部を説明するための図。
【図3】本実施形態による磁石部の一例を説明するための図。
【図4】本実施形態による磁石部の他の例を説明するための図。
【図5】本実施形態による制御回路部を説明するための図。
【図6】本実施形態によるモータ制御を説明するための図。
【図7】本発明の第2実施形態による引き戸駆動装置の構成を説明するための図。
【図8】本発明の第3実施形態による引き戸駆動装置の構成概略図。
【図9】第3実施形態による引き戸駆動装置の動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明による引き戸駆動方法を採用した引き戸駆動装置の第1から第3実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1に示す第1実施形態の引き戸駆動装置は、直線移動する引き戸上部に駆動機構を取り付けて引き戸を直線方向のみに移動させる形態例であり、図7に示す第2実施形態による引き戸駆動装置は、直線移動する引き戸下部に駆動機構を取り付けて引き戸を直線方向のみに移動させる形態例であり、図8に示す第3実施形態による引き戸駆動装置は、引き戸を閉じたときに引き戸と壁が一面にフラットとなるフラット型引き戸に適用した形態例である。
【実施例1】
【0028】
[構成]
本実施形態による引き戸駆動装置を図1を参照して説明する。図1は、引き戸駆動装置を引き戸10の横方向から観た図であって、本実施形態による引き戸駆動装置は、鴨居1に沿って埋設されたガイドレール1a内で案内されるローラを含み、引き戸の上端に取り付けられる上ガイドローラ部11と、該引き戸10の下端に床面2に設けられた下ガイドローラ部12で案内されるガイドレール2aと、前記引き戸10の幅方向(引き戸開閉方向)上端に取付金具105を介して配置され、一側端に後述する複数の突起部220が設けられた概略長板形状の強磁性体部200と、回転軸が強磁性体200の延伸方向と垂直な強磁性体高さ方向に設定され、該強磁性体部200の主な側面と近接対向する位置に配置される円筒形状の磁石部104と、該磁石部104の中心孔に取り付けられたジョイント部103と、該ジョイント部103にモータシャフト102を取り付けたモータ101と、前記磁石部104の複数の突起部220の位置に配置され、前記突起部220の有無を光学的に検出するセンサ部107と、該センサ部107により検出した検出信号を基にモータ101を制御する制御回路部120とを備える。
【0029】
前記強磁性体部20は、磁性を帯びる事が可能な物質であって、例えば厚さ2.6mm、長さ800mmのスチール材から成る概略長板形状である。この強磁性体部20は、図2に示す上端側に高さL1且つ幅L2の複数の突起部220が間隔L3をもって設けられている。この突起部220は、開閉により引き戸が移動した際の移動量を光学的に検出するためのスリットを形成するものであって、本実施形態においては突起を用いる例を説明するが、例えば所定間隔に白と黒とを交互に彩色したプリントシートを貼り付け、該プリントシートからの光学的反射を検出して引き戸の移動量を検出できるように構成しても良い。
【0030】
前記センサ部107は、前記突起部220の有無を光学的に検出する一対のセンサ素子107aを強磁性体部20の長手方向に配置し、この一対のセンサ素子107aが突起部220と向かい合う又は離反した際の突起部220からの反射光を検出することによって、引き戸の移動量を検出することができる。このセンサ部107の分解能は、例えば強磁性体部20の高さL1を5mm、幅L2を5mm、間隔L3を5mmとしたとき、前記一対のセンサ素子107a間の中心間の間隔L4を10mmに設定することによって、約2.5mmにすることができる。
【0031】
前記磁石部104は、図3(a)に示す如く、半円状のN極部104aとS極部104bを円筒状に接合し、円筒表面に図示しない樹脂膜104cを厚さ0.6mmコーティングしたことにより強磁性体部200との物理的接触を防止したものであって、例えば、直径約10mm、内径約2mm、高さ10mm、表面磁束密度が約190〜500mT(ミリテスラ)のネオジム磁石(Neodymium magnet)やサマリュームコバルト磁石等の磁性材から構成される。前記表面磁束密度は、実験の結果、約250〜500mTが後述する引き戸の駆動源としては好適と考えられる。
【0032】
前記樹脂膜104cは、磁石部104と強磁性体部200とが物理的に接触しないように最小間隔を設けるためのものであって、この間隔を調整することによって、空回り時の回転トルクを調整することもできる。更に前記実施形態では円筒状の磁石部104の円筒外周部に樹脂膜104cを設けた例を説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、前記強磁性体部200の磁石部104と向かい合う表面に非磁性材の樹脂膜を設けても良く、両者に設けても良い。
【0033】
この磁石部104は、鴨居側の上方から見た図3(b)に示す如く、N極部104aから発生する磁力線8aが強磁性体部200の延伸長手方向(引き戸の開閉方向)の内部を通ってS極部104bに戻る磁力線経路を形成し、磁石部104を回転駆動することによって強磁性体部200に、図示の上下方向(鴨居方向)に移動させる駆動力を与えることができる。
【0034】
尚、本実施形態においては縦方向に分割した磁石部104を使用する例を説明したが、本発明は本実施形態に限られるものではなく、図4(a)に示す如く、横方向に上下に分割したN極部104aとS極部104bとを接合しても良い。この磁石部104から発生する磁界は、引き戸を横方向から見た図4(b)に示す如く、N極部104aから発生する磁力線8bが強磁性体部200の縦方向(引き戸の開閉方向と垂直な引き戸の高さ方向:強磁性体部200の短手方向)の内部を通ってS極部104bに戻る磁力線経路を形成し、磁石部104を回転駆動することによって強磁性体部200に、紙面垂直方向(鴨居方向)に移動させる駆動力を与えることもできる。
【0035】
前記モータ101は、例えば、静止最大トルクが236mNm(ミリニュートンメートル:2.4Kg・cm)、2000pps駆動時(回転数に換算して600rpm)のトルクが約180mNmの1.8角度の二相ステッピングモータが好適である。このモータ101の場合、1ステップで1.8度回転するため2000pps(パルス/秒)で1回転する特性を有する。本発明に適用するモータ101は、本例に示した二相に限らず、回転運動量が駆動パルス周波数に比例する三相や五相等の多相ステッピングモータであっても良く、更には回転速度制御を行うことができる他の形式のモータであっても良い。
【0036】
前記制御回路部120は、図5に示す如く、前記モータ101を回転数を制御しながら駆動するためのモータ駆動信号を出力するドライブ回路122と、引き戸開閉の速度調整を行うための速度調整ボリューム121と、前記センサ部107から出力される突起部の検出信号(パルス信号)と図示しないリモートコントローラからの開閉指示のためのリモコン制御信号と前記速度制御信号とを入力とし、前記リモコン制御信号により指示される引き戸10を開ける又は閉じる方向の制御信号をドライブ回路122に出力するCPU123とから構成される。
【0037】
[動作]
本実施形態による引き戸駆動装置は、制御回路部120が、センサ部107により引き戸10の移動状態を検出しながら、鴨居1に固定されたモータ101を用いて円筒状の磁石部104を回転させ、磁石部104から強磁性体部200に与える磁力線8aの印加状態を変化させることによって、引き戸10を開閉駆動することができ、この動作の詳細を次に説明する。
【0038】
本実施形態による引き戸駆動装置は、モータ101のトルクと、磁石部104と強磁性体部200との磁力による吸引力と、引き戸を開閉するために要する力である引き戸作動力との関係が、「モータトルク」>「吸引力」>「引き戸作動力」の関係になるようにモータ/強磁性体/円筒磁石/強磁性体と円筒磁石部との間隔を設定している。この磁石部104と強磁性体部200との間隔は、間隔を一定としたときには回転速度が高くなるに従ってステッピングモータが脱調する可能性が高く、このためモータ101の回転速度の制御が重要である。
【0039】
ここで念のためステッピンクモータの動作特性について説明すると、一般にステッピンクモータは、ステッピングモータが起動できる負荷トルクを各駆動パルス周波数毎に測定したプルイントルク(負荷を与えて起動し得る起動トルク)と、脱調せずに回転を維持できる負荷トルクであるプルアウトトルクとがあり、前記脱調とは、負荷に対して高周波数で起動すると前記プルイントルクが低くなり、ステッピングモータの向かい合ったステータの小刃とロータの小刃との位置関係が正しい位置からずれることを言う。
【0040】
発明者らは、前述した引き戸駆動装置の構成要素として、重量15Kgで手動開閉時に必要な引き戸作動力が3〜4N(ニュートン)である引き戸10と、厚さ2.6mm、長さ800mmのスチール材から成る概略長板形状の強磁性体部20と、外形10mm且つ内径2mmの半円状のN極部104aとS極部104bを円筒状に接合し、樹脂膜104cを厚さ0.6mmコーティングし、表面磁束密度が約500mT(ミリテスラ)のネオジム磁石(Neodymium magnet)の磁石部104と、静止最大トルクが236mNm、2000pps駆動時のトルクが約180mNmの1.8角度の二相ステッピングモータであるモータ101とを用いた実験の結果、前記モータ101を回転して磁石部104を後述する回転制御を用いて回転させることにより、該磁石部104と磁気的に結合(作用)した強磁性体部200が引き戸10を開閉駆動する引き戸作動力が得られることを確認した。尚、モータ101を三相や五相等の多相ステッピングモータを使用した際にも同様に推進力を得られることを確認した。
【0041】
この駆動時のモータ回転制御は、縦軸にモータの駆動パルス数を示すpps(パルス/秒)とし、横軸を引き戸の移動量mmとした図6に示す如く、停止域からppsを300ppsから710ppsに加速する第1加速領域(点A−点B間)と、該710ppsから2000ppsに加速する第2加速領域(点B−点C間)と、該2000ppsのまま定速を維持する定速領域(点C−点D間)と、該2000ppsから300pps迄減速する減速領域(点C−点D間)とを形成する様に行う。
【0042】
このように本実施形態においては、起動時には負荷(前記引き戸作動力)に抗して駆動パルス周波数を高く設定した際にはステッピングモータが過負荷によって脱調する可能性があるため、前記負荷に対して起動可能なプルイントルク未満且つモータを起動可能な駆動パルス周波数によりモータを起動して加速する第1加速領域(点A−点B間、距離換算で15.7mm間の距離)を通過する第1の加速を行った後、前記負荷に抗して回転を維持可能なプルアウトトルク未満且つ前記第1加速の駆動パルス周波数以上の駆動パルス周波数によりステッピングモータの回転を目標速度まで加速する第2の加速領域(点B−点C間、距離換算で31.4mm間の距離)を通過する第2の加速を行うことによって、起動時及び加速時の脱調を防止した加速制御を行うことができる。尚、本実施形態では第2の加速を一段階で行う例を説明したが、この第2の加速を多段に行うように構成しても良く。例えば前記B点に達してから710ppsを10〜20パルス間の距離だけ維持し、次いで2000ppsまで加速することや、前記B点に達してから710ppsを1200ppsまで加速し、更に2000ppsまで加速するようにしても良い。
【0043】
また前記第1の加速から第2の加速に移行する点Bまでの移動距離は、第1の加速によりモータが起動し、引き戸が静止摩擦を超えて移動し始め、引き戸質量による慣性力が生じる程度の距離に設定することが望ましく、前述した条件による実験結果では15.7mmが最低距離と考えられる。
【0044】
前記第2加速領域の速度は、第1加速領域の速度に比べて2倍から4倍程度の範囲とすることが望ましい。また本実施形態においては2段階の速度制御を行う例を説明したが、3段階以上の多段階に設定しても良い。尚、減速後における目標停止距離は点Eの位置であるが、実際には慣性によって引き戸の移動量に数mmのオーバーシュートが生じる。
【0045】
また発明者らは、外形10mm且つ内径2mmの円筒状のN極部104aとS極部104bを上下に接合(着磁方向は図4(b)の如く垂直)し、樹脂膜104cを厚さ0.1mmコーティングし、表面磁束密度が約320mTの磁石部104を用い、モータ101を1939pps(457rpm)で駆動した結果、引き戸の推進力として約7N程度得られることも確認したが、滑りがあるために加速が遅く、この磁石であれば1523pps(457rpm)駆動による0.24m/s程度が好適であることも確認した。
【0046】
この様に本実施形態による引き戸駆動方法を用いた引き戸駆動装置は、引き戸10の幅方向(開閉方向)に延伸するように貼られ、複数の突起部220が設けられた板状の強磁性体部200と、該強磁性体部200と磁気的に結合(作用)するように近接して配置された円筒状の磁石部104と、引き戸の鴨居1に固定され、該磁石部104を回転駆動するモータ101と、前記突起部220を光学的に検知するセンサ部107と、前記センサ部107からの引き戸10の位置信号を検出しながら前記モータ101の回転制御を行う制御部120とを備えることによって、引き戸10を簡素な構造で容易に開閉することができる。
【0047】
更に本実施形態による引き戸駆動方法を用いた引き戸駆動装置は、駆動対象である引き戸10の強磁性体部200と、駆動源である磁石部104とを機械的に結合せずに磁気的に結合するため、引き戸10を閉じる際等において引き戸10に異物が挟まる等の過負荷時においては、磁石部104が空回りし、安全性を確保することができる。
【0048】
また前記実施形態においては真円の円筒形状の磁石を使用する例を説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、例えばSN極が縦方向に磁化した棒状の磁石を概略円筒状に配置した多角形の磁石を用いても良い。また前記実施形態においては、モータ101を露出する例を説明したが、モータ駆動音を低減するために密閉箱等により静音化を図っても良い。
【実施例2】
【0049】
更に前記第1実施形態においては、引き戸駆動装置のモータ101等を引き戸の鴨居1側に配置した例を説明したが本発明はこれに限られるものではなく、例えば図7に示す如く、強磁性体部200を引き戸の下側に開閉方向に沿って貼り付けると共にモータ101を床面2に埋設し、センサ部107により強磁性体部200の突起部220を光学的に検出しながら制御部(図示せず)が引き戸の開閉動作を行うように構成しても良い。また本発明による引き戸駆動装置及び方法を一般家庭の引き戸に適用する例を説明したが、ガイドレール等によって直線方向の移動が案内される板状部材の移動にも適用することができる。
【実施例3】
【0050】
[構成]
更に前述の実施形態においては、引き戸が直線方向のみに移動する駆動装置を説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、引き戸を閉じたときに引き戸と壁が一面にフラットとなるフラット型引き戸駆動装置にも適用することもできる。
この第3実施形態による引き戸駆動装置は、図8に示す如く、引き戸10の壁面内側に取り付けられ、直線部分の一端が湾曲した湾曲部分をもつ湾曲強磁性体部210と、前記湾曲強磁性体部210の長手方向に沿って配置された円柱形状の磁石部104と、鴨居1の下面に取り付けられ、前記磁石部104を回転させるモータ101と、鴨居1の下面に取り付けられ、引き戸10の移動軌跡を案内するため案内溝30a及び30bが設けられたガイドレール30と、該案内溝30a及び30bと係合するピン9a〜9c及び長溝70aを含み、引き戸10の壁面内側に取り付けられたブラケット70とから構成される。前記ピン9a〜9cは、ピン9a及び9bがブラケット70の長溝70aに嵌め込まれ、ピン9b及び9cがガイドレール30の案内溝30a及び30bに嵌め込まれることによって、引き戸の移動軌跡を案内するものである。尚、本実施形態における駆動装置も、前述の実施形態同様にセンサ部/制御回路/取り付け金具等も含むものであるが、本実施形態の理解を容易にするために省略して説明する。
【0051】
また本実施形態による駆動装置は、閉じたときに引き戸と壁面が一面にフラットとなる様に引き戸10を移動させるため、引き戸10の端部に傾斜した傾斜端部10zを設けると共に、壁部40の端部に前記傾斜端部10zと対向し且つ同方向の傾斜を施した傾斜端部40zが設けられている。
【0052】
前記ガイドレール30は、引き戸10に取り付けられたブラケット70の長溝70aに嵌め込まれたピン9a〜9cの上端ピン9cが嵌め込まれ、且つ閉じたときに引き戸と壁面が一面にフラットとなる位置に向かって上端ピン9cを湾曲して案内する湾曲した案内溝30aと、引き戸が壁内方向に移動してから壁面と平行直線方向に案内する案内溝30bとを備え、これら案内溝30a及び30b並びにピン9a〜9及びブラケット70を介して引き戸10を、閉じたときに引き戸と壁面が一面にフラットとなる様に案内する様に構成されている。このように本実施形態においては、ガイドレール30とピン9a〜9cとブラケット70とによって引き戸案内機構を構成している。
【0053】
[動作]
次に本実施形態による引き戸駆動装置による引き戸動作を図9を参照して説明するが、図面が複雑に成るためブラケット70の図示は省略する。
まず本実施形態による引き戸駆動装置は、引き戸10が閉じ、壁40の面と引き戸面がフラットな状態においては、図9(a)に示す如く、ガイドレール30の湾曲部30aの端部にピン9aが位置し、磁石部104が強磁性体201の湾曲した端部に位置した状態である。
【0054】
この状態において、モータ101を回動することによって磁石部104が強磁性体部201を吸着し且つガイドレール30の溝30aに沿いながら図中左方向(X1方向)に湾曲に沿って移動させ、これにより本装置は、図9(b)に示す如く、引き戸10を壁40の面より引き込んだ位置に移動させる。
更にモータ101を回転させることにより本装置は、図9(c)に示す如く、ピン9aが溝30aと30bの境まで移動させ、引き戸10を壁40の内方へ引き込む位置まで移動させ、更にモータ101の回転により、図9(d)に示す如く、磁石部104が接する強磁性体部201の直線部分に達し、ピン9aがガイドレール30の直線溝30bにより案内することにより、引き戸10をX4方向へ壁40と平行移動させることができる。
【0055】
尚、前記ピン9cはブラケット70の長溝70a内において壁面と直角方向に移動自在に構成されていることにより、磁石部104の回転により移動する引き戸10の
動きに余裕をもって追従することができ、更に、モータ101を逆回転させることによって、開いた状態の引き戸10を壁40の面とフラットとなるように閉じることもできる。尚、制御回路によるモータ101の速度制御は湾曲強磁性体部210の湾曲部においては低速制御を行うのが望ましい。
【0056】
この様に本実施形態による引き戸駆動装置は、引き戸10に、直線部と壁の内方に向かって湾曲する湾曲部を有する強磁性体部201と、ピン9a〜9cを移動可能に溝に取り付けたブラケット70とを取り付け、鴨居1の下面に、前記磁石部104と近接するように配置し、回転する磁場によって前記強磁性体部201に駆動力を与える回転磁石部104と、前記ブラケット70のピン9aと係合することにより引き戸10が閉じたときに引き戸と壁が一面にフラットとなり且つ引き込まれた状態において壁面と平行移動する様に案内するガイドレール30とを配置したことによって、引き戸10を閉じたときに壁とフラットとなるように駆動することができる。
【0057】
尚、前記第3実施形態においては、ガイドレール30及びブラケット70により引き戸案内機構を一対設けた例を説明したが、引き戸を平行に移動させるため、引き戸の開き方向両端に前記ガイドレール30及びブラケット70を配置することが望ましい。
更に前記各実施形態においては、引き戸駆動装置の駆動源として1つのモータを使用する例を説明したが、複数のモータを引き戸の開閉方向に併設し、複数のモータを用いて引き戸を開閉するように構成しても良い。
【0058】
また前記実施形態においては、長方板形の強磁性体部の長方面を引き戸に貼り付ける例を説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、L字金具を使用して強磁性体部を引き戸面と垂直方向に設置し、鴨居等に埋設した回転磁石部が前記強磁性体部に磁力を作用させるように構成しても良い。
【符号の説明】
【0059】
1:鴨居、2:床面、2a:ガイドレール、8a:磁力線、8b:磁力線、10:引き戸、11:上ガイドローラ部、12:下ガイドローラ部、20:強磁性体部、101:モータ、102:モータシャフト、103:ジョイント部、104:円筒状磁石部、104a:N極部、104b:S極部、104c:樹脂膜、105:取付金具、107:センサ部、107a:センサ素子、120:制御回路部、121:速度調整ボリューム、122:ドライブ回路、200:強磁性体部、220:突起部、210:湾曲した強磁性部、70:ブラケット、30:ガイドレール、40:壁部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線方向に開閉される引き戸の開閉駆動を行う引き戸駆動装置であって、
前記引き戸に取り付けられた強磁性体材料から成り、引き戸開閉方向に延伸する長方板形状を有する強磁性体部と、回転軸が前記強磁性体部の延伸方向と垂直な強磁性体高さ方向に設定され、且つ円筒外周部が前記強磁性体部と磁気的に作用するように近接して配置された円筒状磁石部と、該円筒状磁石部を任意の回転数により回転駆動するモータと、該モータの回転制御を行う制御部とを備え、前記円筒状磁石部と強磁性体部の磁気的作用による吸引力が、モータの回転トルクより小さく、且つ引き戸を開閉するための引き戸作動力より大きいように設定した引き戸駆動装置。
【請求項2】
閉じた状態において壁面と一面になるフラット型の引き戸の開閉駆動を行う引き戸駆動装置であって、
前記引き戸に取り付けられた強磁性体材料から成り、端が引き戸開閉方向に延伸し、他端が壁内方に向かって湾曲する湾曲部を有する長方板形状の強磁性体部と、回転軸が前記強磁性体部の延伸方向と垂直な強磁性体高さ方向に設定され、且つ円筒外周部が前記強磁性体部と磁気的に作用するように近接して配置された円筒状磁石部と、該円筒状磁石部を任意の回転数により回転駆動するモータと、引き戸が閉じたときに引き戸と壁が一面にフラットとなり且つ引き込まれた状態において壁面と平行移動する様に引き戸の移動軌跡を案内する案内機構と、前記モータの回転制御を行う制御部とを備え、前記円筒状磁石部と強磁性体部の磁気的作用による吸引力が、モータの回転トルクより小さく、且つ引き戸を開閉するための引き戸作動力より大きいように設定した引き戸駆動装置。
【請求項3】
前記引き戸案内機構が、前記鴨居の下面に取り付けられ、閉じたときに壁とフラットとなり且つ引き込まれた状態において壁面と平行移動する様に引き戸を案内する湾曲溝部及び直線溝部を有するガイドレールと、該ガイドレールの湾曲溝部及び直線溝部と一端が係合するピンと、引き戸に取り付けられ、前記ピンの他端が長孔と係合するブラケットとから構成された請求項2記載の引き戸駆動装置。
【請求項4】
前記円筒状磁石が、前記強磁性体部の内部を前記延伸方向に向かってN極からS極に向かう磁力線経路を形成する請求項1又は2又は3記載の引き戸駆動装置。
【請求項5】
前記円筒状磁石が、前記強磁性体部の内部を前記延伸方向と垂直な強磁性体高さ方向に向かってN極からS極に向かう磁力線経路を形成する請求項1又は2又は3記載の引き戸駆動装置。
【請求項6】
前記円筒状磁石の円筒外周部の表面に非磁性材の薄膜を設けた請求項1から5何れかに記載の引き戸駆動装置。
【請求項7】
前記強磁性体部の前記円筒状磁石と向かい合う表面に非磁性材の薄膜を設けた請求項1から6何れかに記載の引き戸駆動装置。
【請求項8】
前記強磁性体部を取り付けた引き戸の移動量を検出するセンサ部を設け、前記制御部が前記センサ部により引き戸の移動量を検出しながらモータの回転制御を行う請求項1から7何れかに記載の引き戸駆動装置。
【請求項9】
前記モータが駆動パルス周波数に回転速度が比例するステッピングモータであり、前記制御部がステッピングモータの回転速度を加速するとき、前記引き戸作動力に抗して起動可能なプルイントルク未満且つモータを起動可能な駆動パルス周波数により前記ステッピングモータの回転を加速する第1の加速を行った後、前記引き戸作動力に抗して回転を維持するプルアウトトルク未満且つ前記第1の加速による駆動パルス周波数以上の駆動パルス周波数によりステッピングモータの回転を加速する第2の加速を行う請求項8記載の引き戸装置。
【請求項10】
引き戸に取り付けられた強磁性体材料から成り、引き戸開閉方向に延伸する長方板形状を有する強磁性体部と、回転軸が前記強磁性体部の延伸方向と垂直な強磁性体高さ方向に設定され、且つ円筒外周部が前記強磁性体部と磁気的に作用するように近接して配置された円筒状磁石部と、該円筒状磁石部を任意の回転数により回転駆動するモータと、該モータの回転制御を行う制御部とを備え、前記円筒状磁石部と強磁性体部の磁気的作用による吸引力が、モータの回転トルクより小さく、且つ引き戸を開閉するための引き戸作動力より大きいように設定した引き戸駆動装置の引き戸駆動方法であって、
前記制御部が、前記モータを用いて前記円筒状磁石部を回転させ、該円筒状磁石部の回転により、該円筒状磁石部に磁気的に作用した強磁性体部を前記モータ設置位置に対して相対的に移動させる引き戸駆動方法。
【請求項11】
前記引き戸に取り付けられた強磁性体材料から成り、端が引き戸開閉方向に延伸し、他端が壁内方に向かって湾曲する湾曲部を有する長方板形状の強磁性体部と、回転軸が前記強磁性体部の延伸方向と垂直な強磁性体高さ方向に設定され、且つ円筒外周部が前記強磁性体部と磁気的に作用するように近接して配置された円筒状磁石部と、該円筒状磁石部を任意の回転数により回転駆動するモータと、引き戸が閉じたときに引き戸と壁が一面にフラットとなり且つ引き込まれた状態において壁面と平行移動する様に引き戸の移動軌跡を案内する案内機構と、前記モータの回転制御を行う制御部とを備え、前記円筒状磁石部と強磁性体部の磁気的作用による吸引力が、モータの回転トルクより小さく、且つ引き戸を開閉するための引き戸作動力より大きいように設定した引き戸駆動装置の引き戸駆動方法であって、
前記制御部が、前記モータを用いて前記円筒状磁石部を回転させ、該円筒状磁石部の回転により、該円筒状磁石部に磁気的に作用した強磁性体部を前記モータ設置位置に対して相対的に移動させる引き戸駆動方法。
【請求項12】
前記鴨居の下面に取り付けられ、閉じたときに壁とフラットとなり且つ引き込まれた状態において壁面と平行移動する様に引き戸を案内する湾曲溝部及び直線溝部を有するガイドレールと、該ガイドレールの湾曲溝部及び直線溝部と一端が係合するピンと、引き戸に取り付けられ、前記ピンの他端が長孔と係合するブラケットとから前記引き戸案内機構を構成し、
前記制御部が、前記円筒状磁石部の回転により、前記引き戸案内機構により軌跡を案内しながら前記強磁性体部をモータ設置位置に対して相対的に移動させる引き戸駆動方法。
【請求項13】
前記強磁性体部を取り付けた引き戸の移動量を検出するセンサ部を設けると共に、前記モータが駆動パルス周波数に回転速度が比例するステッピングモータであり、前記制御部がステッピングモータの回転速度を加速するとき、前記引き戸作動力に抗して起動可能なプルイントルク未満の駆動パルス周波数によりステッピングモータの回転を加速する第1の加速を行った後、前記引き戸作動力に抗して回転を維持するプルアウトトルク未満の駆動パルス周波数によりステッピングモータの回転を加速する第2の加速を行う請求項11又は12記載の引き戸駆動方法。
【請求項14】
N極からS極に磁力線が強磁性体部の内部を前記延伸方向に向かって通る磁力線経路を形成する円筒状磁石を用い、該円筒状磁石が前記磁力線経路を形成しながら回転することにより引き戸の開閉動作を行う請求項11又は12又は13記載の引き戸駆動方法。
【請求項15】
N極からS極に磁力線が強磁性体部の内部を前記延伸方向と垂直な強磁性体高さ方向に向かって通る磁力線経路を形成する円筒状磁石を用い、該円筒状磁石が前記磁力線経路を形成しながら回転することにより引き戸の開閉動作を行う請求項11又は12又は13記載の引き戸駆動方法。
【請求項16】
前記円筒状磁石の円筒外周部の表面に非磁性材の薄膜を設け、該非磁性材の薄膜が該円筒状磁石との物理的接触を防止した状態で制御部が円筒状磁石を回転駆動することにより、引き戸の開閉動作を行う請求項11から15何れかに記載の引き戸駆動方法。
【請求項17】
前記強磁性体部の前記円筒状磁石と向かい合う表面に非磁性材の薄膜を設け、該非磁性材の薄膜が該円筒状磁石との物理的接触を防止した状態で制御部が円筒状磁石を回転駆動することにより、引き戸の開閉動作を行う請求項11から16何れかに記載の引き戸駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−257068(P2009−257068A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12107(P2009−12107)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(591162686)株式会社ニイテック (16)
【Fターム(参考)】