説明

引き戸

【課題】遮音性を高めることができる引き戸を提供する。
【解決手段】引き戸は、引き戸本体1と、引き戸本体1の周囲の隙間の全部または一部を塞ぐ閉鎖手段5とをもつ。閉鎖手段5は、引き戸本体1側の部位1kに設けられた第1閉鎖要素51と、相手材3側の部位3kに設けられた第2閉鎖要素52とをもつ。第1閉鎖要素51は、第1底面510と、引き戸本体1の開放方向(S2方向)に向けて変位するように傾斜する第1傾斜閉鎖面512とを有する。第2閉鎖要素52は、第2底面520と、第2底面520から離れるにつれて引き戸本体1の閉鎖方向(S1方向)に変位するように傾斜する第2傾斜閉鎖面522とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遮音性を高めた引き戸に関する。本発明は例えばトイレ室、勉強部屋、寝室、客室、居間、業務室、オーディオ室、コンピュータ室等といった遮音性を特に要請される家庭用、業務用の各引き戸に適用できる。
【背景技術】
【0002】
近年、引き戸では、遮音性を更に高めることが要請されつつある。そこで、特許文献1には、引き戸本体の底面に可動式の閉鎖部材を設け、引き戸本体を閉鎖させるとき、閉鎖部材を可動させて引き戸本体の底面と床面との間における隙間を閉鎖して遮音性を高める引き戸が開示されている。このものでは、引き戸本体の閉鎖時における遮音性が高まる。
【0003】
また、近年(2003年7月)、ホルムアルデヒド等の有害物質による室内におけるシックハウス症候群に対応するため建築基準法が改正され、換気設備による室内の換気性を確保すること、あるいは、ドアにおいて所定の有効開口面積を確保すること(非特許文献1参照)が要請されている。但し、通常の引き戸については、その四周に充分な隙間があるため、換気性は充分であるが、遮音性を高めた特殊な引き戸については、換気性が充分ではない場合が多いため、換気性を充分に確保すること(所定の有効開口面積を確保すること)が好ましい。
【特許文献1】実公平7−48944号公報
【非特許文献1】国土交通省住宅局建築指導課、国土交通省住宅局住宅生産課、国土交通省国土技術政策総合研究所、独立行政法人建築研究所、日本建築行政会議、シックハウス対策マニュアル編集委員会、「改正建築基準法に対応した建築物のシックハウス対策マニュアル−建築基準法・住宅性能表示制度の解説及び設計施工マニュアル−」、第1版、工学図書株式会社、平成15年5月1日、p.211
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したように特許文献1に係る引き戸によれば、遮音性は対策されているものの、必ずしも充分ではない。また、スライドさせて開閉する引き戸本体においても換気性を向上させるべく有効開口面積を増加させる構造を採用すると、換気性能が高くなるものの引き戸本体の遮音性が低減されるため、遮音性を更に高めることが要請されている。
【0005】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、遮音性を高めることができる引き戸を提供することを課題とするにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係る引き戸は、相手材に対してスライド可能に設けられスライドに伴い開口部を開放および閉鎖する引き戸本体と、前記引き戸本体と前記相手材との間における隙間の全部または一部を塞ぐ閉鎖手段とを具備する引き戸において、前記閉鎖手段は、前記引き戸本体側のうち前記相手材に対向する戸尻側の部分に設けられた第1閉鎖要素と、前記相手材側に設けられ前記第1閉鎖要素に対面可能な第2閉鎖要素とを具備しており、前記引き戸本体が前記開口部を閉鎖するとき、前記第1閉鎖要素は前記第2閉鎖要素に密接することを特徴とするものである。
【0007】
第1の発明に係る引き戸によれば、引き戸本体が開口部を閉鎖するとき、引き戸本体の相手材に対向する戸尻側の部分に設けられた第1閉鎖要素は、相手材に設けられた第2閉鎖要素に当たって密接する。この密接により、引き戸本体の相手材に対向する戸尻側と相手材との間における隙間が狭くなるか、消失するので、引き戸本体と相手材との間における遮音性が向上する。
【0008】
また、第1の発明に係る引き戸において、前記第1閉鎖要素は、前記引き戸本体の戸尻側の表面側に保持された第1底面と、前記引き戸本体の戸尻側における表面の法線方向において前記第1底面から離れるにつれて前記引き戸本体の開放方向に向けて変位するように傾斜する第1傾斜閉鎖面とを有し、前記第2閉鎖要素は、前記相手材の表面側に保持された第2底面と、前記引き戸本体の戸尻側における表面の前記法線方向と平行な方向において前記第2底面から離れるにつれて前記引き戸本体の閉鎖方向に変位するように傾斜し且つ前記引き戸本体が閉鎖されるとき前記第1傾斜閉鎖面に対面して接触する第2傾斜閉鎖面とを有することは好ましい。
【0009】
この引き戸によれば、第1閉鎖要素の第1傾斜閉鎖面は、引き戸本体の戸尻側における表面の法線方向において第1閉鎖要素の第1底面から離れるにつれて、引き戸本体の開放方向に向けて変位するように傾斜している。また、第2閉鎖要素の第2傾斜閉鎖面は、引き戸本体の戸尻側における表面の法線方向と平行な方向において第2閉鎖要素の第2底面から離れるにつれて、引き戸本体の閉鎖方向に変位するように傾斜している。
【0010】
そして、引き戸本体がスライドして閉鎖されるとき、第1閉鎖要素の第1傾斜閉鎖面は第2閉鎖要素の第2傾斜閉鎖面に対面して密接する。このため、後述する図4に例示するように、第1傾斜閉鎖面には第1分力F1が作用すると共に、第2傾斜閉鎖面には第2分力F2が作用する。従って、第1閉鎖要素の第1傾斜閉鎖面が第2閉鎖要素の第2傾斜閉鎖面に当たって密接したとしても、第1閉鎖要素の第1底面を引き戸本体(戸尻側)から剥離させる力は低減される。同様に、第2閉鎖要素の第2底面を相手材から剥離させる力は低減される。この結果、使用期間が長期にわたったとしても、第1閉鎖要素の第1底面および第2閉鎖要素の第2底面が剥離することは抑制される。
【0011】
第2の発明に係る引き戸は、相手材に対してスライド可能に設けられスライドに伴い開口部を開放および閉鎖する引き戸本体と、前記引き戸本体と前記相手材との間における隙間の全部または一部を塞ぐ閉鎖手段とを具備する引き戸において、前記閉鎖手段は、前記引き戸本体側のうち前記相手材に対向する部分に設けられた第1閉鎖要素と、前記相手材側に設けられ前記第1閉鎖要素に対面可能な第2閉鎖要素とを具備しており、前記第1閉鎖要素は、前記引き戸本体の表面側に保持された第1底面と、前記引き戸本体の表面の法線方向において前記第1底面から離れるにつれて前記引き戸本体の開放方向に向けて変位するように傾斜する第1傾斜閉鎖面とを有し、前記第2閉鎖要素は、前記相手材の表面側に保持された第2底面と、前記引き戸本体の表面の前記法線方向と平行な方向において前記第2底面から離れるにつれて前記引き戸本体の閉鎖方向に変位するように傾斜し且つ前記引き戸本体が閉鎖されるとき前記第1傾斜閉鎖面に対面して接触する第2傾斜閉鎖面とを有することを特徴とするものである。
【0012】
第2の発明に係る引き戸によれば、第1閉鎖要素の第1傾斜閉鎖面は、引き戸本体の表面の法線方向において第1閉鎖要素の第1底面から離れるにつれて、引き戸本体の開放方向に向けて変位するように傾斜している。また、第2閉鎖要素の第2傾斜閉鎖面は引き戸本体の表面の法線方向と平行な方向において第2閉鎖要素の第2底面から離れるにつれて、引き戸本体の閉鎖方向に変位するように傾斜している。
【0013】
そして、引き戸本体がスライドして閉鎖されるとき、第1閉鎖要素の第1傾斜閉鎖面は第2閉鎖要素の第2傾斜閉鎖面に当たって接触する。この接触により引き戸本体と相手材との隙間が狭くなるか、消失するので、引き戸本体と相手材との隙間における遮音性が向上する。
【0014】
ここで、引き戸本体が閉鎖されるとき、第1閉鎖要素の第1傾斜閉鎖面は第2閉鎖要素の第2傾斜閉鎖面に対面して接触する。このため、後述する図4に例示するように、第1傾斜閉鎖面には第1分力F1が作用すると共に、第2傾斜閉鎖面には第2分力F2が作用する。従って、第1閉鎖要素の第1傾斜閉鎖面は第2閉鎖要素の第2傾斜閉鎖面に当たって接触したとしても、第1閉鎖要素の第1底面を引き戸本体から剥離させる力は低減される。同様に、第2閉鎖要素の第2底面を相手材から剥離させる力は低減される。この結果、使用期間が長期にわたったとしても、第1閉鎖要素の第1底面および第2閉鎖要素の第2底面が剥離することは抑制される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、引き戸本体と相手材との隙間における遮音性を高めることができる。また、本発明によれば、引き戸本体が開口部を閉鎖するとき(引き戸本体が閉鎖されるとき)、第1閉鎖要素の第1傾斜閉鎖面は第2閉鎖要素の第2傾斜閉鎖面に当たって密接又は接触したとしても、第1閉鎖要素の第1底面を引き戸本体から剥離させる力は低減される。同様に、第2閉鎖要素の第2底面を相手材から剥離させる力は低減される。この結果、使用期間が長期にわたったとしても、第1閉鎖要素の第1底面および第2閉鎖要素の第2底面が剥離することは抑制される。第1閉鎖要素および第2閉鎖要素の耐久性が向上し、引き戸本体と相手材との隙間における遮音性が長期にわたり向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の引き戸としては、戸車式引き戸、上吊式引き戸、ふすま、障子を例示することができる。本発明によれば、相手材としては、開口部をもつ構造物、または、構造物に取り付けられ開口部をもつ枠体、または、引き戸本体と組をなす相手引き戸本体のいずれかである形態を例示することができる。構造物としては、建築物、車両、船体などが例示される。枠体としては、四角枠状でも良いし、コの字形状等のように切欠部を一部にもつ枠体でも良い。
【0017】
本発明によれば、第1閉鎖要素としては、引き戸本体の開閉方向に沿った断面において三角形状をなしている形態を例示することができる。この場合、第1閉鎖要素としては、引き戸本体(又はその戸尻側)の表面の法線方向において第1閉鎖要素の第1底面から離れるにつれて引き戸本体の閉鎖方向に向けて変位するように傾斜する第1対向傾斜面を有している形態を例示することができる。また、第2閉鎖要素は、引き戸本体の開閉方向に沿った断面において三角形状をなしている形態を例示することができる。この場合、第2閉鎖要素としては、引き戸本体(又はその戸尻側)の表面の法線方向と平行な方向において第2閉鎖要素の第2底面から離れるにつれて引き戸本体の開放方向に向けて変位するように傾斜する第2対向傾斜面を有している形態を例示することができる。
【0018】
本発明によれば、第1閉鎖要素および第2閉鎖要素としては、軟質材料を基材として形成されている形態を例示することができる。軟質材料としてはゴム系材料、樹脂系材料(発泡樹脂系材料を含む)の少なくとも1種を例示できる。第1閉鎖要素および第2閉鎖要素としては、高比重微小物と軟質材料との混合物を基材として形成されている形態を例示することができる。この場合、低周波領域の騒音に対する遮音性を高めることができる。高比重微小物の材質としては軟質材料よりも比重が高いものであれば良く、鉄等の金属、砂やアルミナやシリカなどの耐火物が例示される。高比重微小物の形態としては粉末状、粒状、繊維状などを例示することができる。
【0019】
本発明によれば、引き戸本体は、引き戸本体の閉鎖方向の端側に形成された戸先端面と、引き戸本体の開放方向の端側に形成された戸尻端面とを有している形態を例示することができる。更に、引き戸本体は、引き戸本体の表面において開口する表面開口と、戸尻端面において開口する戸尻開口と、戸尻開口と表面開口とを引き戸本体の内部において連通させる連通路とを有する形態を例示することができる。このように引き戸本体の戸尻端面に形成されている戸尻開口と、引き戸本体の内部において連通させる連通路とを利用すれば、引き戸本体の内外換気性を確保しつつ、引き戸本体の表面において開口する表面開口の開口面積を低減させることができる。故に、引き戸本体の表面における意匠選択の自由性が確保される。
【0020】
また本発明によれば、引き戸本体の底端面と相手材との間における隙間を狭くするか無しとする底端面閉鎖手段が設けられており、底端面閉鎖手段は、退避位置と遮音位置とに姿勢が切り替え可能な底端面閉鎖部材と、引き戸本体および相手材のうちのいずれか一方に設けられた第1係合部と、引き戸本体および相手材のうちのいずれか他方において引き戸本体のスライドにより第1係合部に対して係合可能に設けられ、係合に伴い退避位置と遮音位置との間で底端面閉鎖部材の姿勢を切り替える第1被係合部とを備えている形態を例示することができる。この場合、引き戸本体の閉鎖により第1係合部と第1被係合部とが係合するため、底端面閉鎖部材を退避位置から遮音位置に切り替える。これにより引き戸本体が閉鎖されている状態において、引き戸本体の底端面と相手材との間における隙間を狭くするか無しとする。従って、引き戸本体の底端面と相手材との間における隙間における遮音性が向上する。底端面閉鎖手段について、引き戸本体の開放により第1係合部と第1被係合部とが引き戸本体の閉鎖時の逆方向から係合する場合には、底端面閉鎖部材を遮音位置から退避位置に切り替えることが好ましい。退避位置では、引き戸本体と相手材との間に隙間が形成されるので、引き戸のスライドが容易となる。
【0021】
更に本発明によれば、引き戸本体の天井端面と相手材との間における隙間を狭くするか無しとする天井端面閉鎖手段が設けられており、天井端面閉鎖手段は、退避位置と遮音位置とに姿勢が切り替え可能な天井端面閉鎖部材と、引き戸本体および相手材のうちのいずれか一方に設けられた第2係合部と、引き戸本体および相手材のうちのいずれか他方において引き戸本体のスライドにより第2係合部に対して係合可能に設けられ、係合に伴い退避位置と遮音位置との間で天井端面閉鎖部材の姿勢を切り替える第2被係合部とを備えている形態を例示することができる。この場合、引き戸本体の閉鎖により第2係合部と第2被係合部とが係合するため、天井端面閉鎖部材を退避位置から遮音位置に切り替える。これにより引き戸本体が閉鎖されている状態において、引き戸本体の天井端面と相手材との間における隙間を狭くするか無しとする。従って、引き戸本体の天井端面と相手材との間における隙間における遮音性が向上する。天井端面閉鎖手段について、引き戸本体の開放により第2係合部と第2被係合部とが引き戸本体の閉鎖時の逆方向から係合する場合には、天井端面閉鎖部材を遮音位置から退避位置に切り替えることが好ましい。退避位置では、引き戸本体と相手材との間に隙間が形成されるので、引き戸のスライドが容易となる。
【実施例1】
【0022】
以下、本発明を具体化した実施例1について図1〜図8を参照して具体的に説明する。図の複雑化を避けるため、断面図においてハッチングを省略している部分がある。本実施例に係る戸車式の引き戸は、トイレ室、寝室等のように遮音性の要請が高い室の出入口を開閉するためのものである。引き戸は、引き戸本体1と、建築物等の構造物に取り付けられた相手材としての枠体3とを有する。枠体3は引き戸本体1で閉鎖される開口部30を有する。引き戸本体1は、枠体3に対してスライド可能に設けられており、スライドに伴い枠体3の開口部30を開放および閉鎖する。
【0023】
図1に示すように、引き戸本体1は、上部側に第1レール金具11を有するとともに、下部側に第2レール金具12を有する。第1レール金具11、第2レール金具12は、引き戸本体1の厚み方向(矢印T方向)において中央ではなく、厚み方向(矢印T方向)において偏芯した位置に設けられている。後述するように底端面閉鎖手段6および天井端面閉鎖手段7の構成部品が引き戸本体1の内部に設けられているためである。
【0024】
図1に示すように、引き戸本体1は、第1表面14と、第1表面14に対向する第2表面15と、天井端面16と、天井端面16に対向する底端面17とを有する。引き戸本体1の第1表面14には、第1表面開口21および第2表面開口22が形成されている。第1表面開口21は第1表面14の上部に形成されている。第2表面開口22は第1表面14の下部に形成されている。引き戸本体1の天井端面16には、天井端面開口24が形成されている。引き戸本体1の底端面17には底端面開口25が形成されている。
【0025】
このような構造が採用されている結果、図1に示すように、引き戸本体1の内部では、第1表面開口21を利用する通気路27a、第2表面開口22を利用する通気路27bが形成され、更に、通気路27aおよび通気路27bを連通させる通気路27cが引き戸本体1の内部に形成されている。これにより引き戸本体1の第1表面14側の第1空間41と第2表面15側の第2空間42との間における換気性が確保されている。
【0026】
本実施例によれば、図2に示すように、引き戸本体1は、引き戸本体1の閉鎖方向(矢印S1方向)の端側に形成された戸先端面43と、引き戸本体1の開放方向(矢印S2方向)の端側に形成された戸尻端面44とを有する。更に、引き戸本体1は、戸尻端面44において開口する戸尻開口45と、戸尻開口45と第1表面開口21および第2表面開口22とを引き戸本体1の内部において連通させる連通路46とを有する。これにより引き戸本体1の第1表面14側の第1空間41と第2表面15側の第2空間42との間における換気性が更に確保される。
【0027】
さて、図2〜図4に示すように、引き戸本体1の厚み方向において引き戸本体1と枠体3(相手材)との間における隙間100を塞ぐ閉鎖手段5が設けられている。閉鎖手段5は、引き戸本体1側のうち枠体3(相手材)側に対向する部位1kに設けられた第1閉鎖要素51と、枠体3(相手材)側の部位3kに設けられた第2閉鎖要素52とを備えている。第1閉鎖要素51および第2閉鎖要素52は引き戸本体1の高さ方向に沿って延設されている。部位1kは、引き戸本体1の戸尻側(引き戸本体1の開放方向(矢印S2方向)の端部)における第1表面14側に位置しており、部位3kは、枠体3のうち引き戸本体1の第1表面14に対面する表面3n側に位置している。引き戸本体1が閉鎖方向(矢印S1方向)にスライドして開口部30が閉鎖されると、第2閉鎖要素52と第1閉鎖要素51とは互いに接触可能又は対面可能とされている。
【0028】
図3に示すように、第1閉鎖要素51は、引き戸本体1の部位1kの第1表面14側に保持された第1底面510と、第1傾斜閉鎖面512と、第1対向傾斜面513とを有する。第1傾斜閉鎖面512は、引き戸本体1(部位1k)の第1表面14の法線方向(矢印P方向)において第1底面510から離れるにつれて引き戸本体1の開放方向(矢印S2方向)に向けて変位するように直状に傾斜している。第1対向傾斜面513は、引き戸本体1(部位1k)の第1表面14の法線方向(矢印P方向)において第1底面510から離れるにつれて、引き戸本体1の閉鎖方向(矢印S1方向)に向けて変位するように直状に傾斜している。第1閉鎖要素51は、引き戸本体1の閉鎖方向(矢印S1方向)および開放方向(矢印S2方向)に沿った断面において、頂部51xをもつ三角形状(ほぼ正三角形状)をなしている。
【0029】
図3に示すように、第2閉鎖要素52は、枠体3の部位3kの表面3n側に保持された第2底面520と、第2傾斜閉鎖面522と、第2対向傾斜面523とを有する。第2傾斜閉鎖面522は、引き戸本体1(部位1k)の第1表面14の法線方向(矢印P方向)と平行な方向において第2底面520から離れるにつれて、引き戸本体1の閉鎖方向(矢印S1方向)に変位するように直状に傾斜する。第2対向傾斜面523は、引き戸本体1(部位1k)の第1表面14の法線方向(矢印P方向)において第2底面520から離れるにつれて引き戸本体1の開放方向(矢印S2方向)に向けて変位するように直状に傾斜する。第2閉鎖要素52は、引き戸本体1の閉鎖方向(矢印S1方向)および開放方向(矢印S2方向)に沿った断面において頂部52xをもつ三角形状(ほぼ正三角形状)をなしている。
【0030】
引き戸本体1が矢印S1方向にスライドして閉鎖されるとき、図4に示すように、第1閉鎖要素51の第1傾斜閉鎖面512が第2閉鎖要素52の第2傾斜閉鎖面522に対面して接触する。また、引き戸本体1が矢印S1方向にスライドされて閉鎖されたときには、図2に示すように、引き戸本体1の戸先端面43の角部43cは、枠体3に設けられた第3閉鎖要素53に圧接し、シールされる。
【0031】
ここで、第1閉鎖要素51、第2閉鎖要素52および第3閉鎖要素53は、軟質材料を基材として形成され、弾性変形可能とされている。具体的には、第1閉鎖要素51、第2閉鎖要素52および第3閉鎖要素53は、高比重微小物(例えば鉄粉等)と軟質材料(例えばゴム材料)との混合物を基材として形成されている。この場合、高・中周波領域の騒音ばかりか、低周波領域の騒音に対する遮音性を高めることができる。
【0032】
以上説明したように本実施例によれば、図3および図4に示すように、第1閉鎖要素51の第1傾斜閉鎖面512は、引き戸本体1(部位1k)の第1表面14の法線方向(矢印P方向)において第1閉鎖要素51の第1底面510から離れるにつれて、引き戸本体1の開放方向(矢印S2方向)に向けて変位するように傾斜している。また、第2閉鎖要素52の第2傾斜閉鎖面522は、引き戸本体1(部位1k)の第1表面14の法線方向(矢印P方向)と平行な方向において第2閉鎖要素52の第2底面520から離れるにつれて、引き戸本体1の閉鎖方向(矢印S1方向)に変位するように傾斜している。そして、引き戸本体1が矢印S1方向にスライドされて閉鎖されるとき、図4に示すように、第1閉鎖要素51の第1傾斜閉鎖面512は第2閉鎖要素52の第2傾斜閉鎖面522に当たって接触又は密接する。この接触又は密接により引き戸本体1と枠体3(相手材)との隙間100が狭くなるか、消失化するので、引き戸本体1と枠体3(相手材)との隙間100における遮音性が向上する。
【0033】
ここで、図3及び図4に示すように、第1傾斜閉鎖面512および第2傾斜閉鎖面522の双方は、引き戸本体1(部位1k)の表面の法線方向(矢印P方向)に対して傾斜している。このため第1閉鎖要素51の第1傾斜閉鎖面512には第1分力F1が作用すると共に、第2閉鎖要素52の第2傾斜閉鎖面522には第2分力F2が作用する。第1分力F1は第1閉鎖要素51の第1底面510を引き戸本体1の部位1kの第1表面14に圧着させる方向に作用する。また、第2分力F2は第2閉鎖要素52の第2底面520を枠体3の部位3kの表面3nに圧着させる方向に作用する。従って、第1閉鎖要素51の第1傾斜閉鎖面512は第2閉鎖要素52の第2傾斜閉鎖面522に当たって接触または密接したとしても、第1閉鎖要素51の第1底面510を引き戸本体1の部位1kから剥離させる力は低減される。同様に、第2閉鎖要素52の第2底面520を枠体3(相手材)の部位3kから剥離させる力は低減される。この結果、使用期間が長期にわたったとしても、第1閉鎖要素51の第1底面510および第2閉鎖要素52の第2底面520が剥離することは抑制される。故に、第1閉鎖要素51および第2閉鎖要素52の耐久性が向上し、引き戸本体1と枠体3(相手材)との隙間100における遮音性が長期にわたり確保される。
【0034】
更に本実施例によれば、図5に示すように、引き戸本体1の底端面17と枠体3の床面Fとの間における隙間102を塞ぐ底端面閉鎖手段6が設けられている。底端面閉鎖手段6は、退避位置と遮音位置とに姿勢が切り替え可能となるように設けられた底端面閉鎖部材60と、枠体3(相手材)の床面F側に固定されたピン状をなす第1係合部61と、引き戸本体1の底側の固定枠1mに設けられたカム状をなす第1被係合部62とを有する。底端面閉鎖部材60は、引き戸本体1の底側において矢印Y1およびY2方向において昇降可能に設けられており、下端面60uをもつ。
【0035】
第1被係合部62は、引き戸本体1において第1回動軸63を中心として矢印A1方向及び矢印A2方向に回動可能に枢支されている。第1被係合部62は、底端面閉鎖部材60の下端面60uを枠体3の床面FからΔH1持ち上げるための持ち上げ部64と、第1係合部61に衝突する第1衝突部65と、底端面閉鎖部材60を支える第1支え部66とを有する。引き戸本体1が開放されているとき、第1被係合部62は図5に示す姿勢とされており、この結果、図5に示すように、第1被係合部62の第1持ち上げ部64は底端面閉鎖部材60を矢印Y1方向に持ち上げており、底端面閉鎖部材60の下端面60uと枠体3の床面Fとの間にΔH1の空間を形成している。ΔH1の空間により、引き戸本体1の開閉方向へのスライドが容易となる。
【0036】
開放されている状態の引き戸本体1が矢印S1方向にスライドされて開口部30が閉鎖されると、引き戸本体1の第1被係合部62の第1衝突部65が、枠体3の床面F側に固定されたピン状の第1係合部61の部位61aに衝突する。そして、図6に示すように、第1被係合部62が第1回動軸63を中心として矢印A1方向に回動し、第1持ち上げ部64が底端面閉鎖部材60を持ち上げている状態が解除される。従って図6に示すように、底端面閉鎖部材60が重力により矢印Y2方向に下降し、底端面閉鎖部材60が第1支え部66により支えられる。この状態では、図6に示すように、引き戸本体1の底端面17と枠体3の床面Fとの隙間102が塞がれる。これにより引き戸本体1が開口部30を閉鎖したとき、引き戸本体1の底端面17における遮音性が確保される。
【0037】
また閉鎖されている引き戸本体1が図6に示す状態から、矢印S2方向にスライドされて開口部30が開放されると、引き戸本体1と共に第1被係合部62が矢印S2方向に移動する。故に、引き戸本体1の第1被係合部62の衝突部65が枠体3の床面F側に固定されたピン状の第1係合部61の部位61cに衝突する。そして、図5に示すように、第1被係合部62が第1回動軸63を中心として矢印A2方向に回動し、この結果、第1被係合部62の持ち上げ部64が底端面閉鎖部材60を持ち上げることになる。この場合、図5に示すように、底端面閉鎖部材60の下端面60uと枠体3の床面Fとの間にΔH1の空間が形成される。ΔH1の空間により、引き戸本体1の開閉方向へのスライドが容易となる。
【0038】
更に本実施例によれば、図7及び図8に示すように、引き戸本体1の天井端面16と枠体3の天井部3rとの間における隙間104を塞ぐ天井端面閉鎖手段7が設けられている。天井端面閉鎖手段7は、退避位置と遮音位置とに姿勢が切り替え可能となるように設けられた天井端面閉鎖部材70と、引き戸本体1の天井端面16側に上向きに固定されたピン状をなす第2係合部61Bと、枠体3の天井部3rに第2回動軸63Bにより回動可能に設けられたカム状をなす第2被係合部62Bとを有する。天井端面閉鎖部材70は、枠体3の天井部3rにおいて矢印Y1およびY2方向において昇降可能に設けられている。
【0039】
第2被係合部62Bは、第2回動軸63Bを中心として矢印A1’方向及び矢印A2’方向に回動可能に枠体3の天井部3r側に枢支されている。第2被係合部62Bは、天井端面閉鎖部材70の下端面70uを引き戸本体1の天井端面16からΔH2持ち上げる第2持ち上げ部64Bと、第2係合部61Bに衝突可能な第2衝突部65Bと、天井端面閉鎖部材70を支える第2支え部66Bとを有する。
【0040】
引き戸本体1が開放されているときには、第2被係合部62Bは図7に示す姿勢とされている。この状態では、第2被係合部62Bの第2持ち上げ部64Bは天井端面閉鎖部材70を矢印Y1方向に持ち上げており、天井端面閉鎖部材70の下端面70uと引き戸本体1の天井端面16との間にΔH2の空間を形成している。ΔH2の空間により、引き戸本体1の開閉方向へのスライドが容易となる。
【0041】
引き戸本体1が矢印S1方向にスライドされて閉鎖されると、引き戸本体1がスライドされると共に、引き戸本体1に固定されているピン状の第2係合部61Bが矢印S1方向にスライドされるので、引き戸本体1の第2係合部61Bの部位61cが第2被係合部62Bの第2衝突部65Bに衝突する。そして、第2被係合部62Bが第2回動軸63Bを中心として矢印A1’方向に回動し、第2持ち上げ部64Bが天井端面閉鎖部材70を持ち上げている状態が解除される。従って図8に示すように、天井端面閉鎖部材70が重力により矢印Y2方向に下降し、引き戸本体1の天井端面16と枠体3の天井部3rとの隙間104が塞がれる。これにより引き戸本体1が開口部30を閉鎖したとき、引き戸本体1の天井端面16の遮音性が確保される。
【0042】
また閉鎖されている状態の引き戸本体1(基本的には図8に示す状態)を矢印S2方向にスライドして開口部30を開放させるときには、引き戸本体1と共にピン状の第2係合部61Bが矢印S2方向にスライドする。従って、ピン状の第2係合部61Bの部位61dが引き戸本体1の第2被係合部62Bの第2衝突部65Bに衝突する。そして、第2被係合部62Bが第2回動軸63Bを中心として矢印A2’方向に回動する。この結果、図7に示すように、第2被係合部62Bの第2持ち上げ部64Bが天井面閉鎖部材70を持ち上げることになる。この場合、天井端面閉鎖部材70の下端面70uと引き戸本体1の天井端面16との間にΔH2の空間が形成される。ΔH2の空間により、引き戸本体1の開閉方向へのスライドが容易となる。
【実施例2】
【0043】
以下、本発明を具体化した実施例2について図9を参照して具体的に説明する。図9は複雑化を避けるためハッチングを省略している。本実施例は図1、図5〜図8を準用する。本実施例においても、引き戸本体1と枠体3との間に形成されている隙間100を塞ぐ閉鎖手段5が設けられている。閉鎖手段5は、引き戸本体1側のうち枠体3(相手材)側に対向する部位1kに設けられた第1閉鎖要素51Bと、枠体3(相手材)側の部位3kに設けられた第2閉鎖要素52Bとを備えている。引き戸本体1が閉鎖方向(矢印S1方向)にスライドして閉鎖されるにつれて、第2閉鎖要素52Bと第1閉鎖要素51Bとは互いに接触可能または対面可能とされている。
【0044】
図9は、引き戸本体1の閉鎖方向(矢印S1方向)および開放方向(矢印S2方向)に沿った断面を示す。図9において、第1閉鎖要素51Bは、異形四角形状(台形状)をなしており、引き戸本体1の部位1kの第1表面14側に保持された第1底面510と、第1傾斜閉鎖面512と、第1対向傾斜面513とを有する。第1傾斜閉鎖面512は、引き戸本体1(部位1k)の第1表面14の法線方向(矢印P方向)において第1底面510から離れるにつれて引き戸本体1の開放方向(矢印S2方向)に向けて変位するように傾斜している。第1対向傾斜面513は、引き戸本体1(部位1k)の第1表面14の法線方向(矢印P方向)に沿っている。
【0045】
図9に示すように、第2閉鎖要素52Bは、異形四角形状(台形状)をなしており、枠体3の部位3kの表面3n側に保持された第2底面520と、第2傾斜閉鎖面522と、第2対向傾斜面523とを有する。第2傾斜閉鎖面522は、引き戸本体1(部位1k)の第1表面14の法線方向(矢印P方向)と平行な方向において第2底面520から離れるにつれて、引き戸本体1の閉鎖方向(矢印S1方向)に変位するように傾斜する。第2対向傾斜面523は、引き戸本体1(部位1k)の第1表面14の法線方向(矢印P方向)に沿っている。
【0046】
本実施例においても、引き戸本体1が矢印S1方向にスライドされて閉鎖されるとき、図9に示すように、第1閉鎖要素51Bの第1傾斜閉鎖面512は第2閉鎖要素52Bの第2傾斜閉鎖面522に当たって接触又は密接する。この接触又は密接により引き戸本体1の戸尻側と枠体3(相手材)との隙間100が狭くなるか消失するので、引き戸本体1と枠体3(相手材)の隙間100における遮音性が向上する。
【0047】
ここで、図9に示すように、第1傾斜閉鎖面512および第2傾斜閉鎖面522の双方は、引き戸本体1(部位1k)の第1表面14の法線方向(矢印P方向)に対して傾斜しているため、実施例1の場合と同様に、第1閉鎖要素51Bの第1傾斜閉鎖面512には第1分力F1が作用すると共に、第2閉鎖要素52Bの第2傾斜閉鎖面522には第2分力F2が作用する。第1分力F1は第1閉鎖要素51Bの第1底面510を引き戸本体1の部位1kに圧着させる方向に作用する。また第2分力F2は第2閉鎖要素52Bの第2底面520を枠体3の部位3kに圧着させる方向に作用する。従って、第1閉鎖要素51Bの第1傾斜閉鎖面512は第2閉鎖要素52Bの第2傾斜閉鎖面522に当たって接触又は密接したとしても、第1閉鎖要素51Bの第1底面510を引き戸本体1の部位1kから剥離させる力は低減される。同様に、第2閉鎖要素52Bの第2底面520を枠体3(相手材)の部位3kから剥離させる力は低減される。この結果、使用期間が長期にわたったとしても、第1閉鎖要素51Bの第1底面510および第2閉鎖要素52Bの第2底面520が剥離することは抑制される。第1閉鎖要素51Bおよび第2閉鎖要素52Bの耐久性が向上し、引き戸本体1と枠体3(相手材)との隙間100における遮音性が長期にわたり確保される。
【実施例3】
【0048】
以下、本発明を具体化した実施例3について図10を参照して具体的に説明する。本実施例は図1、図5〜図8を準用する。本実施例においては、実施例1における相手材の枠体3の一部に代えて、相手引き戸本体1Cが用いられている。引き戸本体1と相手引き戸本体1C(相手材)との間における隙間100を塞ぐ閉鎖手段5が設けられている。
【0049】
引き戸本体1は、引き戸本体1の閉鎖方向(矢印S1方向)の端側に形成された戸先端面43と、引き戸本体1の開放方向(矢印S2方向)の端側に形成された戸尻端面44とを有する。更に、引き戸本体1は、戸尻端面44において開口する戸尻開口45と、引き戸本体1の第1表面14において開口する第1表面開口21及び第2表面開口22と戸尻開口45とを引き戸本体1の内部において連通させる連通路46とを有する。
【0050】
図10に示すように、相手引き戸本体1Cは、相手引き戸本体1Cの閉鎖方向(矢印S2方向)の端側に形成された戸先端面43Cと、相手引き戸本体1Cの開放方向(矢印S1方向)の端側に形成された戸尻端面44Cとを有する。更に、相手引き戸本体1Cは、戸尻端面44Cにおいて開口する戸尻開口45Cと、相手引き戸本体1Cの第1表面14Cにおいて開口する第1表面開口21C及び第2表面開口22Cと戸尻開口45Cとを相手引き戸本体1Cの内部において連通させる連通路46Cとを有する。このような構造が採用されている結果、図10に示すように、引き戸本体1及び相手引き戸本体1Cで仕切られている第1空間41と第2空間42との間における換気性が一層確保される。
【0051】
(他の実施例)
上記した各実施例によれば、相手材としては枠体3や相手引き戸本体1Cを用いているが、これに限らず、開口部をもつ建築物、車両等の構造物そのものでも良い。上記した各実施例によれば、第1表面開口21および第2表面開口22が引き戸本体1の第1表面14に形成されているが、引き戸本体1の第2表面15に形成しても良い。更には、第1表面開口21および第2表面開口22を形成しない場合でも良い。また、戸尻端面44において開口する戸尻開口45を形成しない形態でも良い。更に、戸尻開口45と表面開口21,22とを引き戸本体1の内部において連通させる連通路46を形成しない形態でも良い。上記した実施例では、底端面閉鎖手段6および天井端面閉鎖手段7の双方が設けられているが、いずれか一方でも良く、あるいは、設けられていない形態でも良い。上記した各実施例では、第1閉鎖要素51,51B及び第2閉鎖要素52,52Bの断面形状を三角形状(ほぼ三角形状)や異形四角形状(台形状)としたが、特にこれらの断面形状に限定されるものではない。その他、本発明は上記し且つ図面に示した実施例のみに限定されるものではなく、必要に応じて適宜変更して実施できるものである。
【0052】
(付記)上記した記載から次の技術的思想が把握される。
・相手材に対してスライド可能に設けられスライドに伴い開口部を開放および閉鎖する引き戸本体を具備する引き戸において、前記引き戸本体は、前記引き戸本体の閉鎖方向の端側に形成された戸先端面と、前記引き戸本体の開放方向の端側に形成された戸尻端面とを有しており、更に、前記引き戸本体は、前記引き戸本体の表面において開口する表面開口と、前記戸尻端面において開口する戸尻開口と、前記戸尻開口と前記表面開口とを引き戸本体の内部において連通させる連通路とを有することを特徴とする引き戸。この場合、引き戸本体の戸尻端面に形成されている戸尻開口と、引き戸本体の内部において連通させる連通路とを利用すれば、引き戸本体の内外換気性を確保しつつ、引き戸本体の表面において開口する表面開口の開口面積を低減させることができる。故に、引き戸本体の表面における意匠選択の自由性が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施例1に係り、引き戸本体を厚み方向に切断した状態を模式的に示す断面図である。
【図2】引き戸本体をこれの開閉方向に切断した状態を模式的に示す断面図である。
【図3】互いに離れている第1閉鎖要素および第2閉鎖要素付近の状態を模式的に示す断面図。
【図4】第1閉鎖要素と第2閉鎖要素とが互いに接触又は密接している状態を模式的に示す断面図である。
【図5】底端面閉鎖手段の底端面閉鎖部材が床面から持ち上げられている状態を模式的に示す構成図である。
【図6】底端面閉鎖手段の底端面閉鎖部材が下降している状態を模式的に示す構成図である。
【図7】天井端面閉鎖手段の天井端面閉鎖部材が引き戸本体の天井端面から持ち上げられている状態を模式的に示す構成図である。
【図8】天井端面閉鎖手段の天井端面閉鎖部材が下降している状態を模式的に示す構成図である。
【図9】実施例2に係り、互いに接触又は密接した状態における第1閉鎖要素および第2閉鎖要素付近の状態を模式的に示す断面図である。
【図10】実施例3に係り、引き戸本体の第1閉鎖要素と相手引き戸本体の第2閉鎖要素とが接触または密接している状態を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1は引き戸本体、14は第1表面、15は第2表面、3は枠体(相手材)、43は戸先端面、44は戸尻端面、45は戸尻開口、46は連通路、5は閉鎖手段、51は第1閉鎖要素、510は第1底面、512は第1傾斜閉鎖面、52は第2閉鎖要素、520は第2底面、522は第2傾斜閉鎖面を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手材に対してスライド可能に設けられスライドに伴い開口部を開放および閉鎖する引き戸本体と、前記引き戸本体と前記相手材との間における隙間の全部または一部を塞ぐ閉鎖手段とを具備する引き戸において、
前記閉鎖手段は、
前記引き戸本体側のうち前記相手材に対向する戸尻側の部分に設けられた第1閉鎖要素と、
前記相手材側に設けられ前記第1閉鎖要素に対面可能な第2閉鎖要素とを具備しており、
前記引き戸本体が前記開口部を閉鎖するとき、前記第1閉鎖要素は前記第2閉鎖要素に密接することを特徴とする引き戸。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1閉鎖要素は、前記引き戸本体の戸尻側の表面側に保持された第1底面と、前記引き戸本体の戸尻側における表面の法線方向において前記第1底面から離れるにつれて前記引き戸本体の開放方向に向けて変位するように傾斜する第1傾斜閉鎖面とを有し、
前記第2閉鎖要素は、前記相手材の表面側に保持された第2底面と、前記引き戸本体の戸尻側における表面の前記法線方向と平行な方向において前記第2底面から離れるにつれて前記引き戸本体の閉鎖方向に変位するように傾斜し且つ前記引き戸本体が閉鎖されるとき前記第1傾斜閉鎖面に対面して接触する第2傾斜閉鎖面とを有することを特徴とする引き戸。
【請求項3】
相手材に対してスライド可能に設けられスライドに伴い開口部を開放および閉鎖する引き戸本体と、前記引き戸本体と前記相手材との間における隙間の全部または一部を塞ぐ閉鎖手段とを具備する引き戸において、
前記閉鎖手段は、
前記引き戸本体側のうち前記相手材に対向する部分に設けられた第1閉鎖要素と、
前記相手材側に設けられ前記第1閉鎖要素に対面可能な第2閉鎖要素とを具備しており、
前記第1閉鎖要素は、前記引き戸本体の表面側に保持された第1底面と、前記引き戸本体の表面の法線方向において前記第1底面から離れるにつれて前記引き戸本体の開放方向に向けて変位するように傾斜する第1傾斜閉鎖面とを有し、
前記第2閉鎖要素は、前記相手材の表面側に保持された第2底面と、前記引き戸本体の表面の前記法線方向と平行な方向において前記第2底面から離れるにつれて前記引き戸本体の閉鎖方向に変位するように傾斜し且つ前記引き戸本体が閉鎖されるとき前記第1傾斜閉鎖面に対面して接触する第2傾斜閉鎖面とを有することを特徴とする引き戸。
【請求項4】
請求項1〜3のうちのいずれか一項において、前記相手材は、前記開口部をもつ構造物、または、前記構造物に取り付けられ前記開口部をもつ枠体、または、前記引き戸本体と組をなす相手引き戸本体のいずれかであることを特徴とする引き戸。
【請求項5】
請求項1〜4のうちのいずれか一項において、前記第1閉鎖要素は、前記引き戸本体の開閉方向に沿った断面において三角形状をなしており、更に、前記引き戸本体の表面の前記法線方向において前記第1底面から離れるにつれて前記引き戸本体の閉鎖方向に向けて変位するように傾斜する第1対向傾斜面を有しており、且つ、
前記第2閉鎖要素は、前記引き戸本体の開閉方向に沿った断面において三角形状をなしており、更に、前記引き戸本体の表面の前記法線方向と平行な方向において第2底面から離れるにつれて前記引き戸本体の開放方向に向けて変位するように傾斜する第2対向傾斜面を有していることを特徴とする引き戸。
【請求項6】
請求項1〜5のうちのいずれか一項において、前記第1閉鎖要素および前記第2閉鎖要素は軟質材料を基材として形成されていることを特徴とする引き戸。
【請求項7】
請求項1〜5のうちのいずれか一項において、前記第1閉鎖要素および前記第2閉鎖要素は、高比重微小物と軟質材料との混合物を基材として形成されていることを特徴とする引き戸。
【請求項8】
請求項1〜7のうちのいずれか一項において、前記引き戸本体は、前記引き戸本体の閉鎖方向の端側に形成された戸先端面と、前記引き戸本体の開放方向の端側に形成された戸尻端面とを有しており、更に、
前記引き戸本体は、前記引き戸本体の表面において開口する表面開口と、前記戸尻端面において開口する戸尻開口と、前記戸尻開口と前記表面開口とを引き戸本体の内部において連通させる連通路とを有することを特徴とする引き戸。
【請求項9】
請求項1〜8のうちのいずれか一項において、前記引き戸本体の底端面と前記相手材との間における隙間を狭くするか無しとする底端面閉鎖手段が設けられており、
前記底端面閉鎖手段は、退避位置と遮音位置とに姿勢が切り替え可能な底端面閉鎖部材と、前記引き戸本体および前記相手材のうちのいずれか一方に設けられた第1係合部と、前記引き戸本体および前記相手材のうちのいずれか他方において前記引き戸本体のスライドにより前記第1係合部に対して係合可能に設けられ、係合に伴い前記退避位置と前記遮音位置との間で前記底端面閉鎖部材の姿勢を切り替える第1被係合部とを備えていることを特徴とする引き戸。
【請求項10】
請求項1〜9のうちのいずれか一項において、前記引き戸本体の天井端面と前記相手材との間における隙間を狭くするか無しとする天井端面閉鎖手段が設けられており、
前記天井端面閉鎖手段は、退避位置と遮音位置とに姿勢が切り替え可能な天井端面閉鎖部材と、前記引き戸本体および前記相手材のうちのいずれか一方に設けられた第2係合部と、前記引き戸本体および前記相手材のうちのいずれか他方において前記引き戸本体のスライドにより前記第2係合部に対して係合可能に設けられ、係合に伴い前記退避位置と前記遮音位置との間で前記天井端面閉鎖部材の姿勢を切り替える第2被係合部とを備えていることを特徴とする引き戸。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−23537(P2007−23537A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−204352(P2005−204352)
【出願日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【出願人】(000100805)アイシン高丘株式会社 (202)
【Fターム(参考)】