引き戸
【課題】遮音性を向上させることができる引き戸を提供する。
【解決手段】相手材に対してスライド可能に設けられスライドにより構造物の開口部を開閉する引き戸本体10と、相手材と引き戸本体10の戸尻102側との間における戸尻側隙間105の全部または一部を塞ぐ戸尻側隙間閉鎖手段200とをもつ。戸尻側隙間閉鎖手段200は、引き戸本体10のうち戸尻102側の部分および相手材側のうちの少なくとも一方に設けられ、弾性材料を基材とする戸尻側隙間閉鎖要素210,220を備えている。
【解決手段】相手材に対してスライド可能に設けられスライドにより構造物の開口部を開閉する引き戸本体10と、相手材と引き戸本体10の戸尻102側との間における戸尻側隙間105の全部または一部を塞ぐ戸尻側隙間閉鎖手段200とをもつ。戸尻側隙間閉鎖手段200は、引き戸本体10のうち戸尻102側の部分および相手材側のうちの少なくとも一方に設けられ、弾性材料を基材とする戸尻側隙間閉鎖要素210,220を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遮音性を高めた引き戸に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、引き戸では、遮音性を更に高めることが要請されつつある。そこで、特許文献1には、引き戸本体の底面側に可動式の閉鎖部材を設け、引き戸本体を閉鎖させるとき、閉鎖部材を可動させて引き戸本体の底面と床面との間における隙間を閉鎖して遮音性を高める引き戸が開示されている。このものでは、引き戸本体の閉鎖時における遮音性が高まる。
【特許文献1】実公平7−48944号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記したように特許文献1に係る引き戸によれば、遮音性は対策されているものの、必ずしも充分ではない。
【0004】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、引き戸本体を閉鎖したときにおいて、引き戸本体の戸尻側における遮音性を高めることができる引き戸を提供することを課題とするにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)様相1に係る引き戸は、相手材に対してスライド可能に設けられスライドにより構造物の開口部を開閉する引き戸本体と、前記相手材と前記引き戸本体の戸尻側の部分との間における戸尻側隙間の全部または一部を塞ぐ戸尻側隙間閉鎖手段とを具備しており、前記戸尻側隙間閉鎖手段は、前記引き戸本体のうち戸尻側の部分および前記相手材側のうちの少なくとも一方に設けられ、弾性材料を基材とする戸尻側隙間閉鎖要素を備えていることを特徴とする。
【0006】
引き戸本体がスライドされて閉鎖されたとき、戸尻側隙間閉鎖要素が弾性的に変形して戸尻側隙間の全部または一部を塞ぐため、引き戸本体の戸尻側における遮音性が向上する。
【0007】
(2)様相2に係る引き戸は、様相1において、前記戸尻側隙間閉鎖要素は、前記引き戸本体のうち前記戸尻側の部分に設けられ弾性材料を基材とする第1戸尻側隙間閉鎖要素と、前記相手材側に設けられ前記引き戸本体がスライドされて閉鎖されたとき前記第1戸尻側隙間閉鎖要素に対面して接触する弾性材料を基材とする第2戸尻側隙間閉鎖要素とを備えていることを特徴とする。
【0008】
(3)様相3に係る引き戸は、様相1または2において、前記戸尻側隙間閉鎖要素は、前記引き戸本体のスライド方向に沿った断面で、中空室をもつ中空構造であることを特徴とする。この場合、戸尻側隙間閉鎖要素の弾性変形性が高まり、戸尻側隙間閉鎖要素のスライド方向における潰し代が増加する。このため、引き戸本体の戸尻側における遮音性が向上する。
【0009】
(4)様相4に係る引き戸は、様相1〜3において、前記戸尻側隙間閉鎖要素は、前記引き戸本体のスライド方向に沿った断面で、少なくともリング形状部を有することを特徴とする。この場合、戸尻側隙間閉鎖要素の弾性変形性が高まり、戸尻側隙間閉鎖要素のスライド方向における潰し代が増加する。このため、引き戸本体の戸尻側における遮音性が向上する。
【0010】
(5)様相5に係る引き戸は、様相1〜3において、前記戸尻側隙間閉鎖要素は、前記引き戸本体のスライド方向に沿った断面で、中空室を有すると共に、外方と前記中空室とを連通させる切欠を有することを特徴とする。この場合、戸尻側隙間閉鎖要素の弾性変形性が高まり、戸尻側隙間閉鎖要素のスライド方向における潰し代が増加する。このため、引き戸本体の戸尻側における遮音性が向上する。
【0011】
(6)様相6に係る引き戸は、様相5において、前記戸尻側隙間閉鎖要素は、前記引き戸本体のスライド方向に沿った断面で、少なくともC形状を有することを特徴とする。この場合、戸尻側隙間閉鎖要素の弾性変形性が高まり、スライド方向における潰し代が増加する。このため、引き戸本体の戸尻側における遮音性が向上する。
【0012】
(7)様相7に係る引き戸は、様相2において、前記引き戸本体のスライド方向に沿った断面において、スライド方向に沿って前記第1戸尻側隙間閉鎖要素の中心を通る第1中心線と、スライド方向に沿って前記第2戸尻側隙間閉鎖要素の中心を通る第2中心線とは、スライド方向と直交する方向において所定量ずれていることを特徴とする。この場合、第1戸尻側隙間閉鎖要素と第2戸尻側隙間閉鎖要素との接触面積が増加する。このため、引き戸本体の閉鎖時において、第1戸尻側隙間閉鎖要素と第2戸尻側隙間閉鎖要素とが対面して接触するとき、シール性が高まり、引き戸本体の戸尻側における遮音性が向上する。
【0013】
(8)様相8に係る引き戸は、各様相において、前記引き戸本体の上辺部側の上側隙間を閉鎖する上側隙間閉鎖手段が設けられており、前記上側隙間閉鎖手段は、前記引き戸本体の閉鎖時において、引き戸本体の上辺部と前記構造物の前記開口部を形成する形成面との間における上側隙間を低減または閉鎖する遮音部材と、前記引き戸本体の閉鎖に伴い前記上側隙間を低減または閉鎖させる方向に前記遮音部材を移動させる作動部とをもつことを特徴とする。この場合、引き戸本体の閉鎖時において、引き戸本体の上辺部側における遮音性が向上する。
【0014】
(9)様相9に係る引き戸は、各様相において、前記引き戸本体の下辺部側の下側隙間を閉鎖する下側隙間閉鎖手段が設けられており、前記下側隙間閉鎖手段は、前記引き戸本体の閉鎖時において、引き戸本体の下辺部と前記構造物の前記開口部を形成する形成面との間における下側隙間を低減または閉鎖する遮音部材と、前記引き戸本体の閉鎖に伴い前記下側隙間を低減または閉鎖させる方向に前記遮音部材を移動させる作動部とをもつことを特徴とする。この場合、引き戸本体の閉鎖時において、引き戸本体の下辺部側における遮音性を高めることができる。
【発明の効果】
【0015】
各様相によれば、引き戸本体をスライドさせて閉鎖させたときにおいて、戸尻側における遮音性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
構造物としては、家屋やビル等の建築物を例示できる。開口部は、人が出入りする開口部(出入口)が挙げられるが、人が出入りしない換気用の開口部でも良い。開口部として、戸枠が取り付けられている形態でも、戸枠が取り付けられていない形態でも良い。
【0017】
引き戸は、構造物の開口部をスライドにより開閉するものである。引き戸としては、スライドにより開閉するものであれば、戸車式引き戸、上吊り式引き戸の他に、ふすま、障子などを含むことができる。引き戸としては、複数枚1組のものでも、単数のものでも良い。相手材としては、構造物に固定される中方立等の固定部でも良いし、あるいは、相手材側の引き戸であっても良い。
【0018】
引き戸は、相手材に対してスライド可能に設けられスライドにより構造物の開口部を開閉する引き戸本体と、相手材と引き戸本体の戸尻側の部分との間における戸尻側隙間の全部または一部を塞ぐ戸尻側隙間閉鎖手段とを備えている。戸尻側隙間閉鎖手段は、引き戸本体のうち戸尻側の部分および相手材側のうちの少なくとも一方に設けられ、弾性材料を基材とする戸尻側隙間閉鎖要素を備えている。戸尻側隙間閉鎖要素は、スライド方向に沿った断面で、中空室をもつ中空構造であることが好ましい。この場合、戸尻側隙間閉鎖要素の弾性変形性が高まり、スライド方向における潰し代が増加し、引き戸本体の戸尻側における遮音性が向上する。戸尻側隙間閉鎖要素は、スライド方向に沿った断面で、少なくともリング形状部を有することが好ましい。この場合、戸尻側隙間閉鎖要素の弾性変形性が高まり、スライド方向における潰し代が増加する。
【0019】
戸尻側隙間閉鎖要素は、スライド方向に沿った断面で、中空室を有すると共に、外方と中空室とを連通させる切欠を有することが好ましい。戸尻側隙間閉鎖要素は、スライド方向に沿った断面で、少なくともC形状を有することが好ましい。この場合、戸尻側隙間閉鎖要素の弾性変形性が高まり、スライド方向における潰し代が増加し、引き戸本体の戸尻側における遮音性が向上する。
【0020】
戸尻側隙間閉鎖手段または戸尻側隙間閉鎖要素は、好ましくは、引き戸本体のうち戸尻側の部分に設けられ弾性材料を基材とする第1戸尻側隙間閉鎖要素と、相手材側に設けられ引き戸本体がスライドされて閉鎖されたとき第1戸尻側隙間閉鎖要素に対面して接触する弾性材料を基材とする第2戸尻側隙間閉鎖要素とを備えている。ここで、スライド方向に沿った断面において、スライド方向に沿って第1戸尻側隙間閉鎖要素の中心を通る第1中心線と、スライド方向に沿って第2戸尻側隙間閉鎖要素の中心を通る第2中心線とは、スライド方向と直交する方向において所定量ずれている形態が例示される。この場合、第1戸尻側隙間閉鎖要素の弾性変形量、第2戸尻側隙間閉鎖要素の弾性変形量が確保され易い。従って、構造物に対する引き戸本体の取り付け性が経年変化等によって変化するときであっても、第1戸尻側隙間閉鎖要素と第2戸尻側隙間閉鎖要素との間の閉鎖性が確保され易いため、遮音性を高めるのに貢献できる。
【0021】
本発明によれば、上側隙間閉鎖手段が設けられている形態が例示される。上側隙間閉鎖手段は、引き戸本体の閉鎖時において、引き戸本体の上辺部と構造物の開口部を形成する形成面との間における上側隙間を低減または閉鎖する遮音部材と、引き戸本体の閉鎖に伴い上側隙間を低減または閉鎖させる方向に遮音部材を移動させる作動部とをもつ。遮音部材としては例えばゴムや樹脂等の有機高分子系材料を基材として形成できる。
【0022】
引き戸本体としては戸首をもつ形態が例示される。戸首は、引き戸本体の上辺部において上方に突出すると共にスライド方向に沿って延設されており、上辺部の一部を形成する突出部である。構造物の開口部としては、あるいは、構造物の開口部に取り付けられる戸枠としては、引き戸本体の戸首を嵌め込むと共にスライド方向に沿って延設された戸首嵌込溝をもつ形態が例示される。従って、戸首嵌込溝としては、構造物の開口部を形成する形成面に直接的に形成されていても良いし、あるいは、構造物の開口部に取り付けられる戸枠(その開口部を形成する形成面)に形成されていても良い。戸首は構造物の開口部等の戸首嵌込溝に嵌り込むため、引き戸本体のこれの厚み方向への転倒が防止される。
【0023】
上側隙間閉鎖手段としては、戸首の少なくとも一部を形成すると共に遮音部材を保持する基体をもつ形態が例示される。この場合、遮音部材を保持する上側隙間閉鎖手段の基体(戸首の少なくとも一部)を利用して引き戸の転倒が防止される。
【0024】
前記した作動部としては、引き戸本体が開放されるに伴い上側隙間を形成する方向に遮音部材を付勢するバネ部材と、引き戸本体が閉鎖されるに伴い上側隙間を低減または閉鎖させる方向に遮音部材を作動させる作動体とを備えている形態が例示される。この場合、引き戸本体が開放されるに伴い、バネ部材は、上側隙間を形成する方向に遮音部材を付勢する。引き戸本体が閉鎖されるに伴い、上側隙間を低減または閉鎖させる方向に作動体は遮音部材を作動させる。
【0025】
また本発明の好ましい形態によれば、引き戸本体は、第1空間に対面する第1表面と、第2空間に対面すると共に第1表面に背向する第2表面とをもち、引き戸本体の厚み方向に沿った断面で、引き戸本体の上辺部において遮音部材よりも第1表面側に形成された第1上面開口と、上辺部において遮音部材よりも第2表面側に形成された第2上面開口と、第1上面開口および第2上面開口を連通させることにより第1空間と第2空間とを連通させる上側連通路とをもつ。この場合、引き戸が閉鎖されるとき、引き戸は第1空間と第2空間とを仕切る。ここで引き戸が閉鎖されているにもかかわらず、第1上面開口、第2上面開口および上側連通路により、第1空間と第2空間とを連通させる通気性が確保される。この場合、引き戸本体の上辺部において第1上面開口および第2上面開口が形成されているため、通常の状態では、使用者は、第1上面開口および第2上面開口の存在を視認することができない。故に、使用者に通気孔の存在を認識させずとも、第1空間と第2空間とを連通させる通気性が確保される。
【0026】
また本発明の好ましい形態によれば、引き戸本体は、第1空間に対面する第1表面と、第2空間に対面すると共に第1表面に背向する第2表面とをもち、引き戸本体の厚み方向に沿った断面で、引き戸本体の上辺部において遮音部材よりも第1表面側および第2表面側のうちのいずれか一方側に形成された上面開口と、引き戸本体のうちの第1表面側および第2表面側のいずれか他方側に形成された表面開口と、上面開口および表面開口を連通させることにより第1空間と第2空間とを連通させる上側連通路とをもつ。この場合、上面開口、表面開口および上側連通路により、第1空間と第2空間とを連通させる通気性が確保される。更に本発明の好ましい形態によれば、前記した上側隙間閉鎖手段を上下逆にした下側隙間閉鎖手段が設けられている形態が例示される。
【実施例1】
【0027】
以下、本発明を具体化した実施例1について図1〜図5を参照して具体的に説明する。本実施例は、直動方向にスライドさせて開閉させる方式の引き戸に適用したものである。各図は概念図であり、細部構造の寸法などまで規定するものではない。
【0028】
図1に示すように、家屋や集合住宅等の構造物2において人が出入りする開口部20が形成されている。開口部20には、四角枠形状をなす戸枠3が設けられている。戸枠3は、構造物2の開口部20の上側において横方向に延設された上枠31と、開口部20の下側において横方向に延設され案内レール部32mをもつ下枠32と、上枠31および下枠32を繋ぐ縦方向に延設された互いに対向する2個の側枠33とを有する。
【0029】
図1に示すように、引き戸1は戸枠3に取り付けられている。引き戸1は正面視で縦長の四角形状をなしている。引き戸1の主体をなす引き戸本体10は、戸枠3の上枠31に対面する上辺部11と、戸枠3の下枠32に対面すると共に戸車6をもつ下辺部12と、互いに対向する2個の側辺部13とをもつ。
【0030】
図1に示すように、相手引き戸1Eは引き戸1と共に戸枠3に取り付けられている。相手引き戸1Eは正面視で縦長の四角形状をなしている。相手引き戸1Eの主体をなす相手引き戸本体10Eは、戸枠3の上枠31に対面する上辺部11と、戸枠3の下枠32に対面すると共に戸車6をもつ下辺部12と、互いに対向する2個の側辺部13とをもつ。引き戸1および相手引き戸1Eは、閉鎖されているとき締結ロック36により締結されると、スライド不能となる。
【0031】
図1に示すように、引き戸本体10は戸先100および戸尻102を有する。戸先100は、引き戸本体10の2つの側辺部13のうち引き戸本体10が矢印P2方向にスライドされて閉鎖されるとき、先端となる部位をいう。戸尻102は、引き戸本体10の2つの側辺部13のうち引き戸本体10が矢印P2方向にスライドされて閉鎖されるとき、後端となる部位をいう。また、相手引き戸本体10Eは戸先100xおよび戸尻102xを有する。戸先100xは、相手引き戸本体10Eの2つの側辺部13のうち相手引き戸本体10Eが矢印P2方向にスライドされて閉鎖されるとき、先端となる部位をいう。戸尻102xは、相手引き戸本体10Eの2つの側辺部13のうち相手引き戸本体10Eが矢印P2方向にスライドされて閉鎖されるとき、後端となる部位をいう。
【0032】
図2は、引き戸本体10および相手引き戸本体10Eが閉鎖される方向にスライドされ、引き戸本体10の戸尻102側と相手引き戸本体10Eの戸尻102x側とが接近している状態を示す。図2に示すように、相手引き戸本体10Eの戸尻102側xと引き戸本体10の戸尻102側との間における戸尻側隙間105の全部または一部を塞ぐ戸尻側隙間閉鎖手段200が設けられている。
【0033】
戸尻側隙間閉鎖手段200は、引き戸本体10の戸尻102側の部分に設けられ高分子系の弾性材料(ゴムまたは樹脂)を基材とする第1戸尻側隙間閉鎖要素210と、相手引き戸本体10Eの戸尻102x側の部分に設けられ高分子系の弾性材料(ゴムまたは樹脂)を基材とする第2戸尻側隙間閉鎖要素220とで形成されている。図3に示すように、第1戸尻側隙間閉鎖要素210は、硬質の高分子材料で形成された基部270と、基部270よりも軟質の高分子材料で基部270に一体的に形成されたシール部280とを備えている。基部270は、引き戸本体10から突出するように露出する露出部271と、引き戸本体10の取付孔19に圧入で着脱可能にまたは着脱不能に取り付けられる挿入部272とをもつ。挿入部272は取付孔19内に挿入されて隠蔽される。挿入部272は円筒形状の中空室273と、外周部に係合爪274とをもち、弾性変形性ひいては取付孔19に対する圧入性が確保されている。基部270は角形状の中空室275をもち、シール部280よりも硬質ながらも弾性変形性、衝突時における衝撃緩和性が確保されている。シール部280は断面でリング形状をなしている。従って、シール部280は、断面で円形状のシール中空室281をもち、可撓変形性および弾性変形性が確保され、スライド方向における潰し代が確保されている。
【0034】
第2戸尻側隙間閉鎖要素220は、部品点数の削減のため第1戸尻側隙間閉鎖要素210と同一のものであり、図3に示すように、相手引き戸本体10Eの取付孔19に圧入により着脱可能または着脱不能に取り付けられている。第2戸尻側隙間閉鎖要素220は、硬質の高分子材料で形成された基部270と、基部270よりも軟質の高分子材料で形成されたシール部280とを備えている。
【0035】
上記したようにシール部280はシール中空室281を有するため、スライド方向(矢印P方向)におけるシール部280の潰し代が増加する。故に、戸枠3に対する引き戸本体10および相手引き戸本体10Eの取り付け性が必ずしも充分でないときであっても、第1戸尻側隙間閉鎖要素210のシール部280および第2戸尻側隙間閉鎖要素220のシール部280におけるシール性が良好に確保され、遮音性および遮光性を高めることができる。
【0036】
上記したような断面でリング形状のシール部280については、引き戸本体10のスライド方向(矢印P方向)の寸法をDAとし、引き戸本体10のスライド方向と直交する方向(矢印PX方向)の寸法をDBとするとき、寸法DBに対して寸法DAの大きさを大きめに確保できる。このためスライド方向(矢印P方向)におけるシール部280の潰し代の大きさが確保され、ひいては戸尻側隙間105におけるシール性ひいては戸尻102,102x側における遮音性を高めるのに貢献できる。
【0037】
図2および図4に示すように、引き戸本体10および相手引き戸本体10Eが閉鎖される方向(矢印P2方向)にスライドされ、引き戸本体10の戸尻102側と相手引き戸本体10Eの戸尻102x側とが接近するとき、第1戸尻側隙間閉鎖要素210のシール部280および第2戸尻側隙間閉鎖要素220のシール部280は、互いに接近する。図4に示すように、引き戸本体10が戸枠3に閉鎖されるとき、引き戸本体10の戸先100は、戸枠3の側枠33に設けられている戸枠シール37に当たり、戸枠シール37を弾性変形させることにより、引き戸本体10の戸先側隙間100cが塞がれる。これにより戸先100側における遮音性および遮光性が確保される。相手引き戸本体10Eの戸先100xについても同様である。
【0038】
引き戸本体10および相手引き戸本体10Eが閉鎖されているとき、図5に示すように、第1戸尻側隙間閉鎖要素210のシール部280および第2戸尻側隙間閉鎖要素220のシール部280は、互いに圧接して弾性変形している。これにより相手引き戸本体10Eの戸尻102x側と引き戸本体10の戸尻102側との間に位置する戸尻側隙間105は良好に塞がれ、戸尻側隙間105におけるシール性、ひいては戸尻102,102x側における遮音性および遮光性が確保される。
【0039】
殊に、第1戸尻側隙間閉鎖要素210および第2戸尻側隙間閉鎖要素220の双方に弾性変形容易なシール部280が設けられているため、シール部280による潰し代が約2倍となり、シール性が向上し、ひいては遮音性および遮光性が向上する。引き戸本体10および相手引き戸本体10Eが閉鎖されているとき、基部270間の距離LK(図5参照)が引き戸本体10の高さ方向に沿って変動することがある。更に距離LKが経年変化によって変動することがある。このようなときであっても本実施例によれば、第1戸尻側隙間閉鎖要素210および第2戸尻側隙間閉鎖要素220のシール部280による潰し代(スライド方向の潰し代)が良好に確保されているため、距離LKの変動に対処することができる。
【0040】
図5に示すように、第1戸尻側隙間閉鎖要素210のシール部280の中心をスライド方向に沿って通る第1中心線N1と、第2戸尻側隙間閉鎖要素220のシール部280の中心をスライド方向に沿って通る第2中心線N2とは、スライド方向と直交する方向(矢印PX方向)において所定量ΔN3ずれている。このためシール部280は矢印P方向ばかりか、矢印PX方向にも良好に弾性変形できる。故に、第1戸尻側隙間閉鎖要素210のシール部280の弾性変形量と、第2戸尻側隙間閉鎖要素220のシール部280の弾性変形量とが良好に確保され、戸尻側隙間105におけるシール性を向上させ得、戸尻102,102x側における遮音性を高め得る。
【0041】
なお、図6に示すように、基部270およびシール部280をもつ第1戸尻側隙間閉鎖要素210を引き戸本体10の戸尻102側に取り付けるものの、相手引き戸本体10Eの戸尻102x側には、基部270を有するもののシール部280を有しない第2戸尻側隙間閉鎖要素220を取り付けることにしても良い。また図7に示すように、基部270およびシール部280をもつ第2戸尻側隙間閉鎖要素220を相手引き戸本体10Eの戸尻102x側に取り付けるものの、引き戸本体10の戸尻102側には、基部270を有するもののシール部280を有しない第1戸尻側隙間閉鎖要素210を取り付けることにしても良い。
【実施例2】
【0042】
図8は実施例2を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成、作用効果を有する。共通する部位に共通の符号を付する。以下、異なる部分を中心として説明する。図8は引き戸本体10のスライド方向(矢印P方向)に沿った断面を示す。図8に示すように、第1戸尻側隙間閉鎖要素210および第2戸尻側隙間閉鎖要素220はシール部280Bをもつ。シール部280Bは、断面で円形状のシール中空室281を有すると共に、外方とシール中空室281とを連通させる切欠283と、切欠283で形成された自由端285とをもつ。従って、シール部280Bは、スライド方向に沿った断面でC形状をなしている。シール部280Bは切欠283を有するため、スライド方向におけるシール部280Bの変形容易性および潰し代が確保され、シール性、ひいては遮音性および遮光性を高め得る。更にシール部280Bは切欠283を有し、変形容易性を有するため、使用期間が長期にわたったとしても耐へたり性を向上させ得る。
【0043】
図8に示すように、第1戸尻側隙間閉鎖要素210および第2戸尻側隙間閉鎖要素220において、切欠283は互いに反対方向に指向しているが、これに限らず、同一方向に指向していても良い。
【実施例3】
【0044】
図9は実施例3を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成、作用効果を有する。共通する部位に共通の符号を付する。以下、異なる部分を中心として説明する。図9は引き戸本体10のスライド方向(矢印P方向)に沿った断面を示す。図9に示すように、第1戸尻側隙間閉鎖要素210および第2戸尻側隙間閉鎖要素220はシール部280Cをもつ。シール部280Cは、断面で蒲鉾形状のシール中空室281を有すると共に、外方とシール中空室281とを連通させる切欠283と、切欠283で形成された自由端285と、弾性変形の支点となり易い根元部287とをもつ。シール部280Cは、スライド方向に沿った断面で偏平C形状(蒲鉾形状)をなしている。
【0045】
上記した偏平C形状のシール部280Cについては、図9に示すように、引き戸本体10のスライド方向(矢印P方向)の寸法をDAとし、引き戸本体10のスライド方向と直交する方向(矢印PX方向)の寸法をDBとするとき、寸法DBに対して寸法DAの大きさが小さめとなる。シール部280Cは切欠283を有するため、根元部287を介してシール部280Cは容易に変形することができるため、耐へたり性が向上する。更にシール部280Cは断面で偏平C形状(DB>DA)をなしているため、第1戸尻側隙間閉鎖要素210のシール部280Cと第2戸尻側隙間閉鎖要素220のシール部280C同士が接触するとき、接触面積を増加できる。これにより戸尻側隙間105におけるシール性、ひいては戸尻102,102x側における遮音性および遮光性を高め得る。
【実施例4】
【0046】
図10は実施例4を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成、作用効果を有する。共通する部位に共通の符号を付する。以下、異なる部分を中心として説明する。図10は引き戸本体10のスライド方向(矢印P方向)に沿った断面を示す。図10に示すように、戸尻側隙間閉鎖手段200は、引き戸本体10の戸尻102側の部分に設けられ弾性材料を基材とする第1戸尻側隙間閉鎖要素210と、相手引き戸本体10Eの戸尻102x側の部分に設けられ弾性材料を基材とする第2戸尻側隙間閉鎖要素220とで形成されている。図10に示すように、第1戸尻側隙間閉鎖要素210は、シール部280Cよりも硬質の高分子材料で形成された基部270と、基部270よりも軟質の高分子材料で形成されたシール部280Cとをもつ。シール部280Cは、蒲鉾形状のシール中空室281を有すると共に、外方とシール中空室281とを連通させる切欠283と、切欠283で形成された自由端285と、弾性変形の支点となり易い根元部287とをもつ。従って、シール部280Cは断面で偏平C形状(蒲鉾形状)をなしている。図10に示すように、第2戸尻側隙間閉鎖要素220は、硬質の高分子材料で形成された基部270と、基部270よりも軟質の高分子材料で形成されたシール部280とをもつ。シール部280は、断面でリング形状をなしており、断面で円形状のシール中空室281を有するものの、切欠を有しない。
【実施例5】
【0047】
図11は実施例5を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成、作用効果を有する。共通する部位に共通の符号を付する。以下、異なる部分を中心として説明する。実施例4に対して、図11に示すように断面でリング形状のシール部280と、断面で偏平C形状のシール部280Cとが逆の配置とされている。
【実施例6】
【0048】
図12は実施例6を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成、作用効果を有する。但し、引き戸本体10の戸尻102側に取り付けられている第1戸尻側隙間閉鎖要素210にはシール部280は形成されていない。相手引き戸本体10Eの戸尻102x側に取り付けられている第2戸尻側隙間閉鎖要素220は断面で偏平C形状のシール部280Cをもつ。
【実施例7】
【0049】
図13は実施例7を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成、作用効果を有する。図13に示すように、相手引き戸本体10Eの戸尻102x側に取り付けられている第2戸尻側隙間閉鎖要素220のシール部280は、断面でリング形状のシール中空室281をもつ筒形状をなしている。これに対して引き戸本体10の戸尻102側に取り付けられている第1戸尻側隙間閉鎖要素210はシール部280Eをもつ。シール部280Eは、第2戸尻側隙間閉鎖要素220のシール部280に向かうにつれて拡開する断面でV形状をなし、中空溝280kをもつため、第2戸尻側隙間閉鎖要素220のシール部280を中空溝280kに良好に嵌合でき、シール性が確保され、遮音性および遮光性が確保される。シール部280Eの中心線N5とシール部280の中心線N6とは、矢印PX方向において接近しているか、合致していることが好ましい。
【0050】
なお、断面でV形状のシール部280Eと断面でリング形状のシール部280との位置を逆にしても良い。あるいは、断面でリング形状のシール部280に代えて、断面で偏平C形状のシール部280Cを採用しても良い。
【実施例8】
【0051】
図14は実施例8を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成、作用効果を有する。図14に示すように、引き戸本体10の戸尻102側に取り付けられている第1戸尻側隙間閉鎖要素210はシール部280Hをもつ。シール部280Hは、断面で、スライド方向に沿って長径となる長円リング形状のシール中空室281をもつ。第2戸尻側隙間閉鎖要素220は複数のシール部280Hをもつ。第2戸尻側隙間閉鎖要素220では、スライド方向と直交する方向(矢印PX方向)においてシール部280Hが複数個並設されており、シール部280H間に圧入空間289を形成している。引き戸本体10と相手引き戸本体10Eとが閉鎖されると、第2戸尻側隙間閉鎖要素220の複数のシール部280H間の圧入空間289に第1戸尻側隙間閉鎖要素210のシール部280Hが圧入され、シール性が確保され、ひいては遮音性および遮光性が確保される。
【実施例9】
【0052】
図15は実施例9を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成、作用効果を有する。但し、相手引き戸本体10Eは設けられておらず、構造物2の固定部として機能する中方立25m(相手材)が設けられている。中方立25mに対して引き戸1の引き戸本体10がスライド方向に沿って移動されて開閉される。図15に示すように、引き戸本体10の戸尻102側には第1戸尻側隙間閉鎖要素210が着脱可能または着脱不能に取り付けられている。第1戸尻側隙間閉鎖要素210は基部270とシール部280Mとをもつ。中方立25m側には第2戸尻側隙間閉鎖要素220が着脱可能または着脱不能に取り付けられている。第2戸尻側隙間閉鎖要素220は基部270とシール部280Mとをもつ。上記したシール部280Mは、シール中空室281と、壁部を波形状とした蛇腹部288とをもつ。スライド方向(矢印P方向)における潰し代が蛇腹部288により確保される。ひいてはシール、遮音性および遮光性が確保される。
【実施例10】
【0053】
図16〜図19は実施例10を示す。本実施例は前記した実施例1と基本的には同様の構成、作用効果を有している。よって、引き戸本体10の戸尻102側の部分には、弾性材料を基材とする第1戸尻側隙間閉鎖要素210が設けられている。相手引き戸本体10Eの戸尻102x側には、弾性材料を基材とする第2戸尻側隙間閉鎖要素220が設けられている。
【0054】
以下、異なる部分を中心として説明する。図16に示すように、引き戸本体10および相手引き戸本体10E(以下、引き戸本体10,10Eと略記することもある)は、戸枠3に取り付けられている。図18に示すように、引き戸1の主体をなす引き戸本体10は、第1空間14xに対面する第1表面14と、第2空間15xに対面する第2表面15とをもつ。図18に示すように、引き戸1の戸首(後述する上側ケース41)と戸枠3の上枠31との間には、隙間量ΔE1をもつ上側隙間91が形成されている。
【0055】
図19に示すように、引き戸1の下辺部12と戸枠3の下枠32との間には、隙間量ΔE2をもつ下側隙間92が形成されている。上側隙間91および下側隙間92が形成されているため、引き戸1を開閉させるときの抵抗が低減されている。
【0056】
図17に示すように、上側隙間閉鎖手段4は、引き戸本体10の上辺部11側に設けられている。上側隙間閉鎖手段4は、上辺部11よりも上方(矢印U1方向)に向けて移動可能に設けられた上側遮音部材40と、上側遮音部材40を上辺部11よりも上方(矢印U1方向)に向けて移動させる上側作動部45とをもつ。図17に示すように、上側作動部45は、上辺部11に配置され上側収容室41rをもつ上側ケース41(上側基体)と、引き戸1が開放されるに伴い上側隙間91を形成する方向に上側遮音部材40を付勢する上側バネ部材42と、引き戸1が閉鎖されるに伴い上側隙間91を低減または閉鎖させる方向(矢印U1方向)に上側遮音部材40を作動させる上側作動体43とを備えている。
【0057】
図18に示すように、構造物2の開口部20に取り付けられている戸枠3の上枠31には、凹状の戸首嵌込溝38が形成されている。戸首嵌込溝38は引き戸本体10のスライド方向に沿って長溝状に延設されている。上側隙間閉鎖手段4の上側ケース41は、金属(例えばアルミニウム合金系、鉄系、チタン系等)または硬質樹脂等の材料で形成されており、上側ケース41の下半分41dは、引き戸本体10の上辺部11の内部に埋設されている。図18において、上側隙間閉鎖手段4の上側ケース41の幅(引き戸1の厚み方向における寸法)は、L1として示される。上側ケース41の幅L1は、引き戸本体10の厚み寸法TAよりも小さく設定されている。上側ケース41の上端部41uは、引き戸本体10の上辺部11よりも上方に向けて高さH1で突出している。上側ケース41は、戸枠3の上枠31の凹状の戸首嵌込溝38に着脱可能に嵌め込まれている。これにより上側ケース41は戸首として作用することができる。戸首作用により、引き戸本体10は矢印R1,R2方向(図18参照,引き戸本体10の厚み方向に沿った方向)への転倒が防止されており、引き戸本体10が戸枠3から離脱しないようにされている。なお図18に示すように、戸首嵌込溝38は溝側面38aと溝天井面38cとをもち、溝側面および溝天井面38cは、構造物の開口部を形成する形成面としての役割を担う。戸首嵌込溝38の深さはH2として示され,その幅はL2(L2>L1)として示されている。
【0058】
図18に示すように、上側遮音部材40は、上側ケース41の収容室41rに保持された金属または硬質樹脂等の硬質材料で形成された上側硬質部材401と、上側ケース41の収容室41rに上側硬質部材401に上向きに保持されたゴムまたは樹脂等の軟質材料で可撓性を有するように形成された上側軟質部材402とで形成されている。なお、上側軟質部材402は、戸枠3の上枠31の溝天井面38cに対する弾性変形性および密着シール性を高めるべく、中空室403を有する。但し、中空室403を廃止し、上側軟質部材402の内部に多孔質体を埋設した構造としても良いし、あるいは、中実構造としても良い。
【0059】
本実施例によれば、図17に示すように、上側バネ部材42は、複数の曲成部42mを並設状態に有するように蛇行状に曲成された板バネで形成されており、上側ケース41の収容室41rの延設方向に沿って、つまり上辺部11に沿って延設されている。曲成部42mには付設部42kが複数個取り付けられている。上側作動体43は、上側ケース41の収容室41rの端部において矢印S1,S2方向(引き戸本体10の上辺部11に沿った方向)に移動可能に設けられている。ここで、上側バネ部材42の先端部42aと上側作動体43とが接触係合していると共に、上側作動体43の突起状の上側操作子46が引き戸本体10の側辺部13よりも外方に突出するように設けられている。
【0060】
引き戸1が矢印P1方向にスライドされて開放されているときには、図17に示すように、上側作動体43の上側操作子46が戸枠3の側枠33から離間するため、上側バネ部材42の付勢力により上側操作子46が引き戸本体10の側辺部13よりも外方(矢印P2方向)に突出して露出している。これに対して、引き戸1が矢印P2方向にスライドされて閉鎖されるときには、図示しないものの、上側作動体43の上側操作子46が戸枠3の側枠33に当接するため、上側操作子46が退避方向(矢印P1方向)に押圧されて引き戸本体10の側辺部13内に退避される。すると、上側作動体43が退避方向(矢印S1方向)に移動し、ひいては上側バネ部材42の曲成部42mが直状に近づくように弾性変形される。この結果、上側バネ部材42は上側硬質部材401および上側軟質部材402を上方(矢印U1方向)に移動させる。これにより引き戸1が閉鎖されているときには、図18の仮想線に示すように、上側軟質部材402が戸枠3の上枠31の溝天井面38cに圧接し、上辺部11における上側隙間91が閉鎖され、引き戸本体10の上辺部11側におけるシール性、遮音性および遮光性が確保される。
【0061】
また、引き戸1が開放方向(矢印P1方向)にスライドされて開放されると、図17に示すように、戸枠3の側枠33から上側作動体43の上側操作子46が離間する。このため上側作動体43が上側バネ部材42を拘束する程度が低減され、上側バネ部材42の付勢力により上側操作子46が引き戸本体10の側辺部13よりも外方に突出する。つまり、上側操作子46は露出方向(矢印P2方向)に側辺部13よりも突出する。更に、上記したように上側バネ部材42の曲成部42mが元の形状に復元されるため、上側バネ部材42は上側硬質部材401および上側軟質部材402を下方(矢印U2方向)に移動させ、上側軟質部材402は上枠31から離間する。このため引き戸1を開放させる抵抗が低減される。
【0062】
更に本実施例によれば、図16および図17に示すように、引き戸本体10,10Eの下辺部12側には下側隙間閉鎖手段5が設けられている。下側隙間閉鎖手段5は、上側隙間閉鎖手段4と同一の機構を備えており、上下を逆にしたものである。図17に示すように、下側隙間閉鎖手段5は、下辺部12よりも下方(矢印D1方向)に向けて移動可能に設けられた下側遮音部材50と、下側遮音部材50を下辺部12よりも下方(隙間閉鎖方向、矢印D1方向)に向けて移動させる下側作動部55とをもつ。
【0063】
図17に示すように、下側作動部55は、引き戸1の下辺部12に配置され下側収容室51rをもつ下側ケース51(下側基体)と、引き戸1が開放されるに伴い下側隙間92を形成する方向に下側遮音部材50を付勢する下側バネ部材52と、引き戸1が閉鎖されるに伴い下側隙間92を閉鎖させる方向(矢印D1方向)に下側遮音部材50を作動させる下側作動体53とを備えている。
【0064】
図19に示すように、下側隙間閉鎖手段5は、引き戸本体10の下辺部12において、これの厚み方向の中央域よりも偏芯して配置されている。即ち、下側隙間閉鎖手段5の中心線MDは、引き戸本体10の厚み方向の中心線MCに対してΔM偏芯している。従って、引き戸本体10の下辺部12には、転動可能な戸車6が支持軸部6mを介して取り付けられている。引き戸本体10がスライドされるとき、戸車6は戸枠3の下枠32の案内レール部32mに沿って転動する。
【0065】
図19に示すように、下側遮音部材50は、下側ケース51の収容室51rに保持された金属または硬質樹脂等の硬質材料で形成された下側硬質部材501と、下側ケース51の収容室51rに下側硬質部材501に下向きに保持されたゴムまたは樹脂等の軟質材料で形成された下側軟質部材502とで形成されている。なお、下側軟質部材502は、戸枠3の下枠32への弾性変形性、密着シール性を高めるべく、中空室503を有する。
【0066】
図17に示すように、下側バネ部材52は、複数の曲成部52mを並設状態に有するように蛇行状に曲成された板バネで形成されており、下側ケース51の収容室51rの延設方向に沿って、つまり下辺部12に沿って延設されている。曲成部52mには付設部52kが取り付けられている。
【0067】
下側作動体53は、下側ケース51の収容室51rの端部において矢印S1方向(退避方向),矢印S2方向(露出方向)に移動可能に設けられている。ここで、下側バネ部材52の先端部52aと下側作動体53とが接触係合していると共に、下側作動体53の突起状の下側操作子56が引き戸本体10の側辺部13よりも外方(矢印P2方向)に突出するように設けられている。
【0068】
引き戸1が戸開放方向(矢印P1方向)にスライドされて開放されているときにおいては、図17に示すように、下側作動体53の下側操作子56が下側バネ部材52の付勢力により引き戸本体10の側辺部13から露出する方向(矢印P2方向)に突出している。これに対して、引き戸1が矢印P2方向にスライドされて閉鎖されるときには、下側作動体53の下側操作子56が戸枠3の側枠33に当接するため、下側操作子56が退避方向(矢印P1方向)に移動される。すると、下側作動体53が退避方向(矢印S1方向)に移動し、ひいては下側バネ部材52の曲成部52mが直状に近づくように弾性変形される。この結果、下側バネ部材52は下側硬質部材501および下側軟質部材502を下方(隙間閉鎖方向、矢印D1方向)に移動させる。これにより下側軟質部材502が戸枠3の下枠32に圧接し、下側隙間92が閉鎖する。これにより引き戸本体10の下辺部12側における遮音性が確保される。
【0069】
上記したように引き戸1が開放されるときには、下側バネ部材52の曲成部52mが元の形状に復元しようとする。このため、図17に示すように、下側作動体53の下側操作子56が下側バネ部材52の付勢力により引き戸本体10の側辺部13よりも外方(矢印P2方向)に突出する。更に、下側バネ部材52の曲成部52mが元の形状に復元されるため、下側バネ部材52は下側硬質部材501および下側軟質部材502を上方(矢印D2方向)に移動させる。これにより下側軟質部材502が下枠32から離れるため、引き戸1を開放させる抵抗が低減される。
【0070】
上記したように本実施例によれば、引き戸本体10,10Eの上辺部11側には、引き戸本体10,10Eの閉鎖時に上辺部11よりも上方の上側隙間91を閉鎖させる上側隙間閉鎖手段4が設けられている。この結果、引き戸1,10Eの閉鎖時には、上側隙間閉鎖手段4を構成する上側軟質部材402が戸枠3の上枠31に圧接し、上側隙間91が閉鎖され、上辺部11側における遮音性および遮光性が確保される。
【0071】
更に本実施例によれば、引き戸本体10,10Eの下辺部12側には、引き戸本体10,10Eの閉鎖時に下辺部12よりも下方の下側隙間92を閉鎖させる下側隙間閉鎖手段5が設けられている。同時に、下側隙間閉鎖手段5を構成する下側軟質部材502が戸枠3の下枠32に圧接し、下側隙間92が閉鎖され、下辺部12側における遮音性および遮光性が確保される。この結果、引き戸1,1Eの閉鎖時において、引き戸本体10の上辺部11側および下辺部12側の双方において、第1空間14xと第2空間15xとの間における音の伝播および光の伝播が抑えられ、遮音性および遮光性の高い引き戸1を提供することができる。
【実施例11】
【0072】
図20および図21は実施例11を示す。本実施例は実施例10と基本的には同様の構成、作用効果を有する。共通する部位に共通の符号を付する。図20および図21(引き戸本体10の厚み方向に沿った断面)に示すように、引き戸本体10の上辺部11においては、上側遮音部材40よりも第1表面14側に第1上面開口61が上向きに形成されていると共に、上側遮音部材40よりも第2表面15側に第2上面開口62が上向きに形成されている。更に、第1上面開口61および第2上面開口62を連通させる上側連通路63が引き戸本体10の内部に形成されている。上側連通路63により、第1空間14xと第2空間15xとを連通させる。なお、図20に示すように、第1上面開口61、第2上面開口62および上側連通路63は、断面でほぼ凹形状をなしている。
【0073】
引き戸1,1Eが閉鎖されているとき、第1空間14xと第2空間15xとは仕切られる。ここで、引き戸本体10,10Eの上辺部11において第1上面開口61および第2上面開口62が形成されているため、通常の状態では、使用者は、第1上面開口61および第2上面開口62の存在を視認することができない。故に、引き戸1が閉鎖されているときであっても、使用者に通気孔の存在を認識させずとも、第1空間14xと第2空間15xとを連通させる通気性(図20において矢印X1方向の通気性)が確保される。更に通気性を確保しつつ遮光性も確保される。
【0074】
更に本実施例によれば、図21に示すように、引き戸本体10,10Eの第1表面14において下部側に形成された横向きの表面開口71と、引き戸本体10,10Eの下辺部12に形成された下向きの下面開口72と、表面開口71および下面開口72を連通させることにより第1空間14xと第2空間15xとを連通させる下側連通路73とが形成されている。この結果、第1空間14xと第2空間15xとを連通させる通気性が一層確保される。更に下面開口72は下向きであるため、第1空間14xまたは第2空間15xの光を透過させず、遮光性も確保される。
【0075】
本実施例によれば、図20に示すように、上側隙間閉鎖手段4の基体としての上側ケース41は、上側遮音部材40を保持すると共に、戸首を形成している。即ち、上側ケース41は戸首として機能し、上側ケース41の上部分は戸枠3の上枠31の戸首嵌込溝38に嵌め込まれている。このように上側隙間閉鎖手段4の基体としての上側ケース41を戸首として有効利用することにより、引き戸1のこれの厚み方向への転倒を防止している。
【実施例12】
【0076】
図22は実施例12を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成、作用効果を有する。共通する部位に共通の符号を付する。図22に示すように、引き戸本体10の内部には内部連通路64が設けられている。内部連通路64は下側連通路73および上側連通路63を引き戸本体10の内部において互いに連通させている。この場合、第1空間14xと第2空間15xとを連通させる通気性が一層確保され易い。
【0077】
ところで、使用条件によっては、第1空間14xと第2空間15xとの間に大きな温度差または湿度差がかなり存在するときがある。この場合、第1表面14および第2表面15における温度差または湿度差に起因して、引き戸本体10に反りが発生するおそれがある。このような場合であっても、内部連通路64には第1空間14xおよび第2空間15xの雰囲気が進入する。故に、内部連通路64の内部は、第1空間14xと第2空間15xとの中間の温度または湿度となり易い。この場合、引き戸本体10,10Eに作用する急激な温度差または湿度差が軽減されるので、引き戸本体10,10Eの反りが低減される利点が得られる。
【0078】
このように引き戸本体10,10Eの閉鎖時において、遮音性を高めつつも、引き戸本体10,10Eで仕切られた第1空間14xと第2空間15xとの間における通気性が確保される。すなわち、第1上面開口61、第2上面開口62および上側連通路63により、引き戸本体10,10Eの上辺部11側の通気性が確保される。更に、表面開口71、第2下面開口72および下側連通路73により、引き戸本体10,10Eの下辺部12側の通気性が確保される。
【0079】
しかも第1上面開口61、第2上面開口62および下面開口72は使用者から視認できないため、使用者に通気孔を存在を認識させない。更に図22に示すように、第2表面15に通気孔の開口が形成されていないため、第2表面15における意匠を選択する自由度を拡大させることができる。
【0080】
本実施例においても、上側隙間閉鎖手段4の基体としての上側ケース41は、戸首として機能しており、上側ケース41の上部分は戸枠3の上枠31の戸首嵌込溝38に嵌め込まれている。このように上側隙間閉鎖手段4の基体としての上側ケース41を戸首として有効利用することにより、引き戸1のこれの厚み方向への転倒を防止している。
【実施例13】
【0081】
図23は実施例13を示す。本実施例は実施例3と基本的には同様の構成、作用効果を有する。共通する部位に共通の符号を付する。以下、異なる部分を中心として説明する。引き戸本体10,10Eの上辺部11側には、引き戸本体10,10Eの閉鎖時に上辺部11よりも上方の上側隙間91を閉鎖させる上側隙間閉鎖手段4が設けられている。この結果、第1空間14xと第2空間15xとの間における音の伝播が抑えられ、遮音性および遮光性の高い引き戸1を提供することができる。
【0082】
図23は引き戸本体10の厚み方向に沿った断面を示す。図23に示すように、引き戸本体10の上辺部11側において、引き戸本体10,10Eの第2表面15において形成された第2表面開口17uと、上辺部11において上側遮音部材40よりも第1表面14側に形成された第1上面開口61と、第2表面開口17uおよび第1上面開口61を連通させる断面でL字形状の上側連通路63とが形成されている。
【0083】
本実施例によれば、図23に示すように、上側隙間閉鎖手段4の中心線MUは、引き戸本体10,10Eの厚み方向の中心線MCよりも第2表面15側にΔM3偏芯している。このため引き戸本体10,10Eの上辺部11において、第1上面開口61を第1表面14側に寄せて形成することができる。
【0084】
本実施例においても、図23に示すように、上側隙間閉鎖手段4の基体としての上側ケース41は、戸首として機能しており、上側ケース41の上部分は戸枠3の上枠31の戸首嵌込溝38に嵌め込まれている。本実施例においても、引き戸本体10の内部には内部連通路64が設けられている。内部連通路64は下側連通路(図示せず)および上側連通路63を連通する。
【0085】
(そのほか)
上記した実施例では、第1戸尻側隙間閉鎖要素210および第2戸尻側隙間閉鎖要素220の基部270は中空構造とされているが、これに限らず、中実構造としても良い。基部270は高分子材料で形成されているが、シール部280が可撓性を有する限り、アルミ合金、鉄合金等の金属系材料で形成しても良い。更に、第1戸尻側隙間閉鎖要素210および第2戸尻側隙間閉鎖要素220のシール部280は中空構造とされているが、これに限らず、中実構造としても良い。
第1戸尻側隙間閉鎖要素210および第2戸尻側隙間閉鎖要素220のシール部の断面形状は上記した形状に限定されず、適宜変更できる。第1戸尻側隙間閉鎖要素210および第2戸尻側隙間閉鎖要素220を圧入により取り付けることにしているが、他の嵌合構造、ねじ等で取りつけても良い。更に、構造物2の開口部20には戸枠3が取り付けられていなくても良い。本発明は上記し且つ図面に示した実施例のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は例えばトイレ室、勉強部屋、寝室、客室、居間、業務室、オーディオ室、コンピュータ室等といった遮音性が特に要請される室に取り付けられる引き戸に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】実施例1に係り、戸枠に取り付けられている引き戸を開放している途中状態を模式的に示す正面図である。
【図2】実施例1に係り、引き戸本体の戸尻と相手引き戸本体の戸尻付近をスライド方向に沿って切断して模式的に示す構成図である。
【図3】実施例1に係り、戸尻側隙間閉鎖要素を取付孔に取り付ける状態を模式的に示す断面図である。
【図4】実施例1に係り、構造物の戸枠に引き戸本体を閉鎖する直前の状態を模式的に示す構成図である。
【図5】実施例1に係り、第1戸尻側隙間閉鎖要素および第2戸尻側隙間閉鎖要素が当接してシールしている状態を模式的に示す構成図である。
【図6】変形形態に係り、引き戸本体の戸尻と相手引き戸本体の戸尻付近をスライド方向に沿って切断して模式的に示す構成図である。
【図7】変形形態に係り、引き戸本体の戸尻と相手引き戸本体の戸尻付近をスライド方向に沿って切断して模式的に示す構成図である。
【図8】実施例2に係り、引き戸本体の戸尻側に取り付けられた第1戸尻側隙間閉鎖要素と相手引き戸本体の戸尻側に取り付けられた第2戸尻側隙間閉鎖要素の付近をスライド方向に沿って切断して模式的に示す構成図である。
【図9】実施例3に係り、引き戸本体の戸尻側に取り付けられた第1戸尻側隙間閉鎖要素と相手引き戸本体の戸尻側に取り付けられた第2戸尻側隙間閉鎖要素の付近をスライド方向に沿って切断して模式的に示す構成図である。
【図10】実施例4に係り、引き戸本体の戸尻側に取り付けられた第1戸尻側隙間閉鎖要素と、相手引き戸本体の戸尻側に取り付けられた第2戸尻側隙間閉鎖要素との付近をスライド方向に沿って切断して模式的に示す構成図である。
【図11】実施例5に係り、引き戸本体の戸尻側に取り付けられた第1戸尻側隙間閉鎖要素と、相手引き戸本体の戸尻側に取り付けられた第2戸尻側隙間閉鎖要素との付近をスライド方向に沿って切断して模式的に示す構成図である。
【図12】実施例6に係り、引き戸本体の戸尻側に取り付けられた第1戸尻側隙間閉鎖要素と、相手引き戸本体の戸尻側に取り付けられた第2戸尻側隙間閉鎖要素との付近をスライド方向に沿って切断して模式的に示す構成図である。
【図13】実施例7に係り、引き戸本体の戸尻側に取り付けられた第1戸尻側隙間閉鎖要素と、相手引き戸本体の戸尻側に取り付けられた第2戸尻側隙間閉鎖要素との付近をスライド方向に沿って切断して模式的に示す構成図である。
【図14】実施例8に係り、引き戸本体の戸尻側に取り付けられた第1戸尻側隙間閉鎖要素と、相手引き戸本体の戸尻側に取り付けられた第2戸尻側隙間閉鎖要素との付近をスライド方向に沿って切断して模式的に示す構成図である。
【図15】実施例9に係り、引き戸本体の戸尻側に取り付けられた第1戸尻側隙間閉鎖要素と、相手引き戸本体の戸尻側に取り付けられた第2戸尻側隙間閉鎖要素との付近をスライド方向に沿って切断して模式的に示す構成図である。
【図16】実施例10に係り、戸枠に取り付けられている引き戸を開放している途中状態を模式的に示す正面図である。
【図17】実施例10に係り、引き戸本体に上側隙間閉鎖手段および下側隙間閉鎖手段を搭載した状態を模式的に示す構成図である。
【図18】実施例10に係り、上側隙間閉鎖手段付近を模式的に示す断面図である。
【図19】実施例10に係り、下側隙間閉鎖手段付近を模式的に示す断面図である。
【図20】実施例11に係り、上側隙間閉鎖手段付近を模式的に示す断面図である。
【図21】実施例11に係り、引き戸が2枚重ねられている状態を模式的に示す断面図である。
【図22】実施例12に係り、引き戸が2枚重ねられている状態を模式的に示す断面図である。
【図23】実施例13に係り、上側隙間閉鎖手段付近を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0088】
100は戸先、102は戸尻、105は戸尻側隙間、200は戸尻側隙間閉鎖手段、210は第1戸尻側隙間閉鎖要素、220は第2戸尻側隙間閉鎖要素、270は基部、280はシール部、281はシール中空室、283は切欠を示す。
【0089】
1は引き戸、10は引き戸本体、1Eは相手引き戸(相手材)、10Eは相手引き戸本体(相手材)、11は上辺部、12は下辺部、13は側辺部、14は第1表面、14xは第1空間、15xは第2空間、15は第2表面、16は第1表面開口、17は第2表面開口、2は構造物、20は開口部、3は戸枠、31は上枠、32は下枠、33は側枠、4は上側隙間閉鎖手段、40は上側遮音部材、41は上側ケース(上側基体)、42は上側バネ部材、43は上側作動体、45は上側作動部、5は下側隙間閉鎖手段、50は下側遮音部材、51は下側ケース(下側基体)、52は下側バネ部材、53は下側作動体、55は下側作動部、61は第1上面開口、62は第2上面開口、63は上側連通路、71は表面開口、72は第2下面開口、73は下側連通路、91は上側隙間、92は下側隙間を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は遮音性を高めた引き戸に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、引き戸では、遮音性を更に高めることが要請されつつある。そこで、特許文献1には、引き戸本体の底面側に可動式の閉鎖部材を設け、引き戸本体を閉鎖させるとき、閉鎖部材を可動させて引き戸本体の底面と床面との間における隙間を閉鎖して遮音性を高める引き戸が開示されている。このものでは、引き戸本体の閉鎖時における遮音性が高まる。
【特許文献1】実公平7−48944号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記したように特許文献1に係る引き戸によれば、遮音性は対策されているものの、必ずしも充分ではない。
【0004】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、引き戸本体を閉鎖したときにおいて、引き戸本体の戸尻側における遮音性を高めることができる引き戸を提供することを課題とするにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)様相1に係る引き戸は、相手材に対してスライド可能に設けられスライドにより構造物の開口部を開閉する引き戸本体と、前記相手材と前記引き戸本体の戸尻側の部分との間における戸尻側隙間の全部または一部を塞ぐ戸尻側隙間閉鎖手段とを具備しており、前記戸尻側隙間閉鎖手段は、前記引き戸本体のうち戸尻側の部分および前記相手材側のうちの少なくとも一方に設けられ、弾性材料を基材とする戸尻側隙間閉鎖要素を備えていることを特徴とする。
【0006】
引き戸本体がスライドされて閉鎖されたとき、戸尻側隙間閉鎖要素が弾性的に変形して戸尻側隙間の全部または一部を塞ぐため、引き戸本体の戸尻側における遮音性が向上する。
【0007】
(2)様相2に係る引き戸は、様相1において、前記戸尻側隙間閉鎖要素は、前記引き戸本体のうち前記戸尻側の部分に設けられ弾性材料を基材とする第1戸尻側隙間閉鎖要素と、前記相手材側に設けられ前記引き戸本体がスライドされて閉鎖されたとき前記第1戸尻側隙間閉鎖要素に対面して接触する弾性材料を基材とする第2戸尻側隙間閉鎖要素とを備えていることを特徴とする。
【0008】
(3)様相3に係る引き戸は、様相1または2において、前記戸尻側隙間閉鎖要素は、前記引き戸本体のスライド方向に沿った断面で、中空室をもつ中空構造であることを特徴とする。この場合、戸尻側隙間閉鎖要素の弾性変形性が高まり、戸尻側隙間閉鎖要素のスライド方向における潰し代が増加する。このため、引き戸本体の戸尻側における遮音性が向上する。
【0009】
(4)様相4に係る引き戸は、様相1〜3において、前記戸尻側隙間閉鎖要素は、前記引き戸本体のスライド方向に沿った断面で、少なくともリング形状部を有することを特徴とする。この場合、戸尻側隙間閉鎖要素の弾性変形性が高まり、戸尻側隙間閉鎖要素のスライド方向における潰し代が増加する。このため、引き戸本体の戸尻側における遮音性が向上する。
【0010】
(5)様相5に係る引き戸は、様相1〜3において、前記戸尻側隙間閉鎖要素は、前記引き戸本体のスライド方向に沿った断面で、中空室を有すると共に、外方と前記中空室とを連通させる切欠を有することを特徴とする。この場合、戸尻側隙間閉鎖要素の弾性変形性が高まり、戸尻側隙間閉鎖要素のスライド方向における潰し代が増加する。このため、引き戸本体の戸尻側における遮音性が向上する。
【0011】
(6)様相6に係る引き戸は、様相5において、前記戸尻側隙間閉鎖要素は、前記引き戸本体のスライド方向に沿った断面で、少なくともC形状を有することを特徴とする。この場合、戸尻側隙間閉鎖要素の弾性変形性が高まり、スライド方向における潰し代が増加する。このため、引き戸本体の戸尻側における遮音性が向上する。
【0012】
(7)様相7に係る引き戸は、様相2において、前記引き戸本体のスライド方向に沿った断面において、スライド方向に沿って前記第1戸尻側隙間閉鎖要素の中心を通る第1中心線と、スライド方向に沿って前記第2戸尻側隙間閉鎖要素の中心を通る第2中心線とは、スライド方向と直交する方向において所定量ずれていることを特徴とする。この場合、第1戸尻側隙間閉鎖要素と第2戸尻側隙間閉鎖要素との接触面積が増加する。このため、引き戸本体の閉鎖時において、第1戸尻側隙間閉鎖要素と第2戸尻側隙間閉鎖要素とが対面して接触するとき、シール性が高まり、引き戸本体の戸尻側における遮音性が向上する。
【0013】
(8)様相8に係る引き戸は、各様相において、前記引き戸本体の上辺部側の上側隙間を閉鎖する上側隙間閉鎖手段が設けられており、前記上側隙間閉鎖手段は、前記引き戸本体の閉鎖時において、引き戸本体の上辺部と前記構造物の前記開口部を形成する形成面との間における上側隙間を低減または閉鎖する遮音部材と、前記引き戸本体の閉鎖に伴い前記上側隙間を低減または閉鎖させる方向に前記遮音部材を移動させる作動部とをもつことを特徴とする。この場合、引き戸本体の閉鎖時において、引き戸本体の上辺部側における遮音性が向上する。
【0014】
(9)様相9に係る引き戸は、各様相において、前記引き戸本体の下辺部側の下側隙間を閉鎖する下側隙間閉鎖手段が設けられており、前記下側隙間閉鎖手段は、前記引き戸本体の閉鎖時において、引き戸本体の下辺部と前記構造物の前記開口部を形成する形成面との間における下側隙間を低減または閉鎖する遮音部材と、前記引き戸本体の閉鎖に伴い前記下側隙間を低減または閉鎖させる方向に前記遮音部材を移動させる作動部とをもつことを特徴とする。この場合、引き戸本体の閉鎖時において、引き戸本体の下辺部側における遮音性を高めることができる。
【発明の効果】
【0015】
各様相によれば、引き戸本体をスライドさせて閉鎖させたときにおいて、戸尻側における遮音性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
構造物としては、家屋やビル等の建築物を例示できる。開口部は、人が出入りする開口部(出入口)が挙げられるが、人が出入りしない換気用の開口部でも良い。開口部として、戸枠が取り付けられている形態でも、戸枠が取り付けられていない形態でも良い。
【0017】
引き戸は、構造物の開口部をスライドにより開閉するものである。引き戸としては、スライドにより開閉するものであれば、戸車式引き戸、上吊り式引き戸の他に、ふすま、障子などを含むことができる。引き戸としては、複数枚1組のものでも、単数のものでも良い。相手材としては、構造物に固定される中方立等の固定部でも良いし、あるいは、相手材側の引き戸であっても良い。
【0018】
引き戸は、相手材に対してスライド可能に設けられスライドにより構造物の開口部を開閉する引き戸本体と、相手材と引き戸本体の戸尻側の部分との間における戸尻側隙間の全部または一部を塞ぐ戸尻側隙間閉鎖手段とを備えている。戸尻側隙間閉鎖手段は、引き戸本体のうち戸尻側の部分および相手材側のうちの少なくとも一方に設けられ、弾性材料を基材とする戸尻側隙間閉鎖要素を備えている。戸尻側隙間閉鎖要素は、スライド方向に沿った断面で、中空室をもつ中空構造であることが好ましい。この場合、戸尻側隙間閉鎖要素の弾性変形性が高まり、スライド方向における潰し代が増加し、引き戸本体の戸尻側における遮音性が向上する。戸尻側隙間閉鎖要素は、スライド方向に沿った断面で、少なくともリング形状部を有することが好ましい。この場合、戸尻側隙間閉鎖要素の弾性変形性が高まり、スライド方向における潰し代が増加する。
【0019】
戸尻側隙間閉鎖要素は、スライド方向に沿った断面で、中空室を有すると共に、外方と中空室とを連通させる切欠を有することが好ましい。戸尻側隙間閉鎖要素は、スライド方向に沿った断面で、少なくともC形状を有することが好ましい。この場合、戸尻側隙間閉鎖要素の弾性変形性が高まり、スライド方向における潰し代が増加し、引き戸本体の戸尻側における遮音性が向上する。
【0020】
戸尻側隙間閉鎖手段または戸尻側隙間閉鎖要素は、好ましくは、引き戸本体のうち戸尻側の部分に設けられ弾性材料を基材とする第1戸尻側隙間閉鎖要素と、相手材側に設けられ引き戸本体がスライドされて閉鎖されたとき第1戸尻側隙間閉鎖要素に対面して接触する弾性材料を基材とする第2戸尻側隙間閉鎖要素とを備えている。ここで、スライド方向に沿った断面において、スライド方向に沿って第1戸尻側隙間閉鎖要素の中心を通る第1中心線と、スライド方向に沿って第2戸尻側隙間閉鎖要素の中心を通る第2中心線とは、スライド方向と直交する方向において所定量ずれている形態が例示される。この場合、第1戸尻側隙間閉鎖要素の弾性変形量、第2戸尻側隙間閉鎖要素の弾性変形量が確保され易い。従って、構造物に対する引き戸本体の取り付け性が経年変化等によって変化するときであっても、第1戸尻側隙間閉鎖要素と第2戸尻側隙間閉鎖要素との間の閉鎖性が確保され易いため、遮音性を高めるのに貢献できる。
【0021】
本発明によれば、上側隙間閉鎖手段が設けられている形態が例示される。上側隙間閉鎖手段は、引き戸本体の閉鎖時において、引き戸本体の上辺部と構造物の開口部を形成する形成面との間における上側隙間を低減または閉鎖する遮音部材と、引き戸本体の閉鎖に伴い上側隙間を低減または閉鎖させる方向に遮音部材を移動させる作動部とをもつ。遮音部材としては例えばゴムや樹脂等の有機高分子系材料を基材として形成できる。
【0022】
引き戸本体としては戸首をもつ形態が例示される。戸首は、引き戸本体の上辺部において上方に突出すると共にスライド方向に沿って延設されており、上辺部の一部を形成する突出部である。構造物の開口部としては、あるいは、構造物の開口部に取り付けられる戸枠としては、引き戸本体の戸首を嵌め込むと共にスライド方向に沿って延設された戸首嵌込溝をもつ形態が例示される。従って、戸首嵌込溝としては、構造物の開口部を形成する形成面に直接的に形成されていても良いし、あるいは、構造物の開口部に取り付けられる戸枠(その開口部を形成する形成面)に形成されていても良い。戸首は構造物の開口部等の戸首嵌込溝に嵌り込むため、引き戸本体のこれの厚み方向への転倒が防止される。
【0023】
上側隙間閉鎖手段としては、戸首の少なくとも一部を形成すると共に遮音部材を保持する基体をもつ形態が例示される。この場合、遮音部材を保持する上側隙間閉鎖手段の基体(戸首の少なくとも一部)を利用して引き戸の転倒が防止される。
【0024】
前記した作動部としては、引き戸本体が開放されるに伴い上側隙間を形成する方向に遮音部材を付勢するバネ部材と、引き戸本体が閉鎖されるに伴い上側隙間を低減または閉鎖させる方向に遮音部材を作動させる作動体とを備えている形態が例示される。この場合、引き戸本体が開放されるに伴い、バネ部材は、上側隙間を形成する方向に遮音部材を付勢する。引き戸本体が閉鎖されるに伴い、上側隙間を低減または閉鎖させる方向に作動体は遮音部材を作動させる。
【0025】
また本発明の好ましい形態によれば、引き戸本体は、第1空間に対面する第1表面と、第2空間に対面すると共に第1表面に背向する第2表面とをもち、引き戸本体の厚み方向に沿った断面で、引き戸本体の上辺部において遮音部材よりも第1表面側に形成された第1上面開口と、上辺部において遮音部材よりも第2表面側に形成された第2上面開口と、第1上面開口および第2上面開口を連通させることにより第1空間と第2空間とを連通させる上側連通路とをもつ。この場合、引き戸が閉鎖されるとき、引き戸は第1空間と第2空間とを仕切る。ここで引き戸が閉鎖されているにもかかわらず、第1上面開口、第2上面開口および上側連通路により、第1空間と第2空間とを連通させる通気性が確保される。この場合、引き戸本体の上辺部において第1上面開口および第2上面開口が形成されているため、通常の状態では、使用者は、第1上面開口および第2上面開口の存在を視認することができない。故に、使用者に通気孔の存在を認識させずとも、第1空間と第2空間とを連通させる通気性が確保される。
【0026】
また本発明の好ましい形態によれば、引き戸本体は、第1空間に対面する第1表面と、第2空間に対面すると共に第1表面に背向する第2表面とをもち、引き戸本体の厚み方向に沿った断面で、引き戸本体の上辺部において遮音部材よりも第1表面側および第2表面側のうちのいずれか一方側に形成された上面開口と、引き戸本体のうちの第1表面側および第2表面側のいずれか他方側に形成された表面開口と、上面開口および表面開口を連通させることにより第1空間と第2空間とを連通させる上側連通路とをもつ。この場合、上面開口、表面開口および上側連通路により、第1空間と第2空間とを連通させる通気性が確保される。更に本発明の好ましい形態によれば、前記した上側隙間閉鎖手段を上下逆にした下側隙間閉鎖手段が設けられている形態が例示される。
【実施例1】
【0027】
以下、本発明を具体化した実施例1について図1〜図5を参照して具体的に説明する。本実施例は、直動方向にスライドさせて開閉させる方式の引き戸に適用したものである。各図は概念図であり、細部構造の寸法などまで規定するものではない。
【0028】
図1に示すように、家屋や集合住宅等の構造物2において人が出入りする開口部20が形成されている。開口部20には、四角枠形状をなす戸枠3が設けられている。戸枠3は、構造物2の開口部20の上側において横方向に延設された上枠31と、開口部20の下側において横方向に延設され案内レール部32mをもつ下枠32と、上枠31および下枠32を繋ぐ縦方向に延設された互いに対向する2個の側枠33とを有する。
【0029】
図1に示すように、引き戸1は戸枠3に取り付けられている。引き戸1は正面視で縦長の四角形状をなしている。引き戸1の主体をなす引き戸本体10は、戸枠3の上枠31に対面する上辺部11と、戸枠3の下枠32に対面すると共に戸車6をもつ下辺部12と、互いに対向する2個の側辺部13とをもつ。
【0030】
図1に示すように、相手引き戸1Eは引き戸1と共に戸枠3に取り付けられている。相手引き戸1Eは正面視で縦長の四角形状をなしている。相手引き戸1Eの主体をなす相手引き戸本体10Eは、戸枠3の上枠31に対面する上辺部11と、戸枠3の下枠32に対面すると共に戸車6をもつ下辺部12と、互いに対向する2個の側辺部13とをもつ。引き戸1および相手引き戸1Eは、閉鎖されているとき締結ロック36により締結されると、スライド不能となる。
【0031】
図1に示すように、引き戸本体10は戸先100および戸尻102を有する。戸先100は、引き戸本体10の2つの側辺部13のうち引き戸本体10が矢印P2方向にスライドされて閉鎖されるとき、先端となる部位をいう。戸尻102は、引き戸本体10の2つの側辺部13のうち引き戸本体10が矢印P2方向にスライドされて閉鎖されるとき、後端となる部位をいう。また、相手引き戸本体10Eは戸先100xおよび戸尻102xを有する。戸先100xは、相手引き戸本体10Eの2つの側辺部13のうち相手引き戸本体10Eが矢印P2方向にスライドされて閉鎖されるとき、先端となる部位をいう。戸尻102xは、相手引き戸本体10Eの2つの側辺部13のうち相手引き戸本体10Eが矢印P2方向にスライドされて閉鎖されるとき、後端となる部位をいう。
【0032】
図2は、引き戸本体10および相手引き戸本体10Eが閉鎖される方向にスライドされ、引き戸本体10の戸尻102側と相手引き戸本体10Eの戸尻102x側とが接近している状態を示す。図2に示すように、相手引き戸本体10Eの戸尻102側xと引き戸本体10の戸尻102側との間における戸尻側隙間105の全部または一部を塞ぐ戸尻側隙間閉鎖手段200が設けられている。
【0033】
戸尻側隙間閉鎖手段200は、引き戸本体10の戸尻102側の部分に設けられ高分子系の弾性材料(ゴムまたは樹脂)を基材とする第1戸尻側隙間閉鎖要素210と、相手引き戸本体10Eの戸尻102x側の部分に設けられ高分子系の弾性材料(ゴムまたは樹脂)を基材とする第2戸尻側隙間閉鎖要素220とで形成されている。図3に示すように、第1戸尻側隙間閉鎖要素210は、硬質の高分子材料で形成された基部270と、基部270よりも軟質の高分子材料で基部270に一体的に形成されたシール部280とを備えている。基部270は、引き戸本体10から突出するように露出する露出部271と、引き戸本体10の取付孔19に圧入で着脱可能にまたは着脱不能に取り付けられる挿入部272とをもつ。挿入部272は取付孔19内に挿入されて隠蔽される。挿入部272は円筒形状の中空室273と、外周部に係合爪274とをもち、弾性変形性ひいては取付孔19に対する圧入性が確保されている。基部270は角形状の中空室275をもち、シール部280よりも硬質ながらも弾性変形性、衝突時における衝撃緩和性が確保されている。シール部280は断面でリング形状をなしている。従って、シール部280は、断面で円形状のシール中空室281をもち、可撓変形性および弾性変形性が確保され、スライド方向における潰し代が確保されている。
【0034】
第2戸尻側隙間閉鎖要素220は、部品点数の削減のため第1戸尻側隙間閉鎖要素210と同一のものであり、図3に示すように、相手引き戸本体10Eの取付孔19に圧入により着脱可能または着脱不能に取り付けられている。第2戸尻側隙間閉鎖要素220は、硬質の高分子材料で形成された基部270と、基部270よりも軟質の高分子材料で形成されたシール部280とを備えている。
【0035】
上記したようにシール部280はシール中空室281を有するため、スライド方向(矢印P方向)におけるシール部280の潰し代が増加する。故に、戸枠3に対する引き戸本体10および相手引き戸本体10Eの取り付け性が必ずしも充分でないときであっても、第1戸尻側隙間閉鎖要素210のシール部280および第2戸尻側隙間閉鎖要素220のシール部280におけるシール性が良好に確保され、遮音性および遮光性を高めることができる。
【0036】
上記したような断面でリング形状のシール部280については、引き戸本体10のスライド方向(矢印P方向)の寸法をDAとし、引き戸本体10のスライド方向と直交する方向(矢印PX方向)の寸法をDBとするとき、寸法DBに対して寸法DAの大きさを大きめに確保できる。このためスライド方向(矢印P方向)におけるシール部280の潰し代の大きさが確保され、ひいては戸尻側隙間105におけるシール性ひいては戸尻102,102x側における遮音性を高めるのに貢献できる。
【0037】
図2および図4に示すように、引き戸本体10および相手引き戸本体10Eが閉鎖される方向(矢印P2方向)にスライドされ、引き戸本体10の戸尻102側と相手引き戸本体10Eの戸尻102x側とが接近するとき、第1戸尻側隙間閉鎖要素210のシール部280および第2戸尻側隙間閉鎖要素220のシール部280は、互いに接近する。図4に示すように、引き戸本体10が戸枠3に閉鎖されるとき、引き戸本体10の戸先100は、戸枠3の側枠33に設けられている戸枠シール37に当たり、戸枠シール37を弾性変形させることにより、引き戸本体10の戸先側隙間100cが塞がれる。これにより戸先100側における遮音性および遮光性が確保される。相手引き戸本体10Eの戸先100xについても同様である。
【0038】
引き戸本体10および相手引き戸本体10Eが閉鎖されているとき、図5に示すように、第1戸尻側隙間閉鎖要素210のシール部280および第2戸尻側隙間閉鎖要素220のシール部280は、互いに圧接して弾性変形している。これにより相手引き戸本体10Eの戸尻102x側と引き戸本体10の戸尻102側との間に位置する戸尻側隙間105は良好に塞がれ、戸尻側隙間105におけるシール性、ひいては戸尻102,102x側における遮音性および遮光性が確保される。
【0039】
殊に、第1戸尻側隙間閉鎖要素210および第2戸尻側隙間閉鎖要素220の双方に弾性変形容易なシール部280が設けられているため、シール部280による潰し代が約2倍となり、シール性が向上し、ひいては遮音性および遮光性が向上する。引き戸本体10および相手引き戸本体10Eが閉鎖されているとき、基部270間の距離LK(図5参照)が引き戸本体10の高さ方向に沿って変動することがある。更に距離LKが経年変化によって変動することがある。このようなときであっても本実施例によれば、第1戸尻側隙間閉鎖要素210および第2戸尻側隙間閉鎖要素220のシール部280による潰し代(スライド方向の潰し代)が良好に確保されているため、距離LKの変動に対処することができる。
【0040】
図5に示すように、第1戸尻側隙間閉鎖要素210のシール部280の中心をスライド方向に沿って通る第1中心線N1と、第2戸尻側隙間閉鎖要素220のシール部280の中心をスライド方向に沿って通る第2中心線N2とは、スライド方向と直交する方向(矢印PX方向)において所定量ΔN3ずれている。このためシール部280は矢印P方向ばかりか、矢印PX方向にも良好に弾性変形できる。故に、第1戸尻側隙間閉鎖要素210のシール部280の弾性変形量と、第2戸尻側隙間閉鎖要素220のシール部280の弾性変形量とが良好に確保され、戸尻側隙間105におけるシール性を向上させ得、戸尻102,102x側における遮音性を高め得る。
【0041】
なお、図6に示すように、基部270およびシール部280をもつ第1戸尻側隙間閉鎖要素210を引き戸本体10の戸尻102側に取り付けるものの、相手引き戸本体10Eの戸尻102x側には、基部270を有するもののシール部280を有しない第2戸尻側隙間閉鎖要素220を取り付けることにしても良い。また図7に示すように、基部270およびシール部280をもつ第2戸尻側隙間閉鎖要素220を相手引き戸本体10Eの戸尻102x側に取り付けるものの、引き戸本体10の戸尻102側には、基部270を有するもののシール部280を有しない第1戸尻側隙間閉鎖要素210を取り付けることにしても良い。
【実施例2】
【0042】
図8は実施例2を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成、作用効果を有する。共通する部位に共通の符号を付する。以下、異なる部分を中心として説明する。図8は引き戸本体10のスライド方向(矢印P方向)に沿った断面を示す。図8に示すように、第1戸尻側隙間閉鎖要素210および第2戸尻側隙間閉鎖要素220はシール部280Bをもつ。シール部280Bは、断面で円形状のシール中空室281を有すると共に、外方とシール中空室281とを連通させる切欠283と、切欠283で形成された自由端285とをもつ。従って、シール部280Bは、スライド方向に沿った断面でC形状をなしている。シール部280Bは切欠283を有するため、スライド方向におけるシール部280Bの変形容易性および潰し代が確保され、シール性、ひいては遮音性および遮光性を高め得る。更にシール部280Bは切欠283を有し、変形容易性を有するため、使用期間が長期にわたったとしても耐へたり性を向上させ得る。
【0043】
図8に示すように、第1戸尻側隙間閉鎖要素210および第2戸尻側隙間閉鎖要素220において、切欠283は互いに反対方向に指向しているが、これに限らず、同一方向に指向していても良い。
【実施例3】
【0044】
図9は実施例3を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成、作用効果を有する。共通する部位に共通の符号を付する。以下、異なる部分を中心として説明する。図9は引き戸本体10のスライド方向(矢印P方向)に沿った断面を示す。図9に示すように、第1戸尻側隙間閉鎖要素210および第2戸尻側隙間閉鎖要素220はシール部280Cをもつ。シール部280Cは、断面で蒲鉾形状のシール中空室281を有すると共に、外方とシール中空室281とを連通させる切欠283と、切欠283で形成された自由端285と、弾性変形の支点となり易い根元部287とをもつ。シール部280Cは、スライド方向に沿った断面で偏平C形状(蒲鉾形状)をなしている。
【0045】
上記した偏平C形状のシール部280Cについては、図9に示すように、引き戸本体10のスライド方向(矢印P方向)の寸法をDAとし、引き戸本体10のスライド方向と直交する方向(矢印PX方向)の寸法をDBとするとき、寸法DBに対して寸法DAの大きさが小さめとなる。シール部280Cは切欠283を有するため、根元部287を介してシール部280Cは容易に変形することができるため、耐へたり性が向上する。更にシール部280Cは断面で偏平C形状(DB>DA)をなしているため、第1戸尻側隙間閉鎖要素210のシール部280Cと第2戸尻側隙間閉鎖要素220のシール部280C同士が接触するとき、接触面積を増加できる。これにより戸尻側隙間105におけるシール性、ひいては戸尻102,102x側における遮音性および遮光性を高め得る。
【実施例4】
【0046】
図10は実施例4を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成、作用効果を有する。共通する部位に共通の符号を付する。以下、異なる部分を中心として説明する。図10は引き戸本体10のスライド方向(矢印P方向)に沿った断面を示す。図10に示すように、戸尻側隙間閉鎖手段200は、引き戸本体10の戸尻102側の部分に設けられ弾性材料を基材とする第1戸尻側隙間閉鎖要素210と、相手引き戸本体10Eの戸尻102x側の部分に設けられ弾性材料を基材とする第2戸尻側隙間閉鎖要素220とで形成されている。図10に示すように、第1戸尻側隙間閉鎖要素210は、シール部280Cよりも硬質の高分子材料で形成された基部270と、基部270よりも軟質の高分子材料で形成されたシール部280Cとをもつ。シール部280Cは、蒲鉾形状のシール中空室281を有すると共に、外方とシール中空室281とを連通させる切欠283と、切欠283で形成された自由端285と、弾性変形の支点となり易い根元部287とをもつ。従って、シール部280Cは断面で偏平C形状(蒲鉾形状)をなしている。図10に示すように、第2戸尻側隙間閉鎖要素220は、硬質の高分子材料で形成された基部270と、基部270よりも軟質の高分子材料で形成されたシール部280とをもつ。シール部280は、断面でリング形状をなしており、断面で円形状のシール中空室281を有するものの、切欠を有しない。
【実施例5】
【0047】
図11は実施例5を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成、作用効果を有する。共通する部位に共通の符号を付する。以下、異なる部分を中心として説明する。実施例4に対して、図11に示すように断面でリング形状のシール部280と、断面で偏平C形状のシール部280Cとが逆の配置とされている。
【実施例6】
【0048】
図12は実施例6を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成、作用効果を有する。但し、引き戸本体10の戸尻102側に取り付けられている第1戸尻側隙間閉鎖要素210にはシール部280は形成されていない。相手引き戸本体10Eの戸尻102x側に取り付けられている第2戸尻側隙間閉鎖要素220は断面で偏平C形状のシール部280Cをもつ。
【実施例7】
【0049】
図13は実施例7を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成、作用効果を有する。図13に示すように、相手引き戸本体10Eの戸尻102x側に取り付けられている第2戸尻側隙間閉鎖要素220のシール部280は、断面でリング形状のシール中空室281をもつ筒形状をなしている。これに対して引き戸本体10の戸尻102側に取り付けられている第1戸尻側隙間閉鎖要素210はシール部280Eをもつ。シール部280Eは、第2戸尻側隙間閉鎖要素220のシール部280に向かうにつれて拡開する断面でV形状をなし、中空溝280kをもつため、第2戸尻側隙間閉鎖要素220のシール部280を中空溝280kに良好に嵌合でき、シール性が確保され、遮音性および遮光性が確保される。シール部280Eの中心線N5とシール部280の中心線N6とは、矢印PX方向において接近しているか、合致していることが好ましい。
【0050】
なお、断面でV形状のシール部280Eと断面でリング形状のシール部280との位置を逆にしても良い。あるいは、断面でリング形状のシール部280に代えて、断面で偏平C形状のシール部280Cを採用しても良い。
【実施例8】
【0051】
図14は実施例8を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成、作用効果を有する。図14に示すように、引き戸本体10の戸尻102側に取り付けられている第1戸尻側隙間閉鎖要素210はシール部280Hをもつ。シール部280Hは、断面で、スライド方向に沿って長径となる長円リング形状のシール中空室281をもつ。第2戸尻側隙間閉鎖要素220は複数のシール部280Hをもつ。第2戸尻側隙間閉鎖要素220では、スライド方向と直交する方向(矢印PX方向)においてシール部280Hが複数個並設されており、シール部280H間に圧入空間289を形成している。引き戸本体10と相手引き戸本体10Eとが閉鎖されると、第2戸尻側隙間閉鎖要素220の複数のシール部280H間の圧入空間289に第1戸尻側隙間閉鎖要素210のシール部280Hが圧入され、シール性が確保され、ひいては遮音性および遮光性が確保される。
【実施例9】
【0052】
図15は実施例9を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成、作用効果を有する。但し、相手引き戸本体10Eは設けられておらず、構造物2の固定部として機能する中方立25m(相手材)が設けられている。中方立25mに対して引き戸1の引き戸本体10がスライド方向に沿って移動されて開閉される。図15に示すように、引き戸本体10の戸尻102側には第1戸尻側隙間閉鎖要素210が着脱可能または着脱不能に取り付けられている。第1戸尻側隙間閉鎖要素210は基部270とシール部280Mとをもつ。中方立25m側には第2戸尻側隙間閉鎖要素220が着脱可能または着脱不能に取り付けられている。第2戸尻側隙間閉鎖要素220は基部270とシール部280Mとをもつ。上記したシール部280Mは、シール中空室281と、壁部を波形状とした蛇腹部288とをもつ。スライド方向(矢印P方向)における潰し代が蛇腹部288により確保される。ひいてはシール、遮音性および遮光性が確保される。
【実施例10】
【0053】
図16〜図19は実施例10を示す。本実施例は前記した実施例1と基本的には同様の構成、作用効果を有している。よって、引き戸本体10の戸尻102側の部分には、弾性材料を基材とする第1戸尻側隙間閉鎖要素210が設けられている。相手引き戸本体10Eの戸尻102x側には、弾性材料を基材とする第2戸尻側隙間閉鎖要素220が設けられている。
【0054】
以下、異なる部分を中心として説明する。図16に示すように、引き戸本体10および相手引き戸本体10E(以下、引き戸本体10,10Eと略記することもある)は、戸枠3に取り付けられている。図18に示すように、引き戸1の主体をなす引き戸本体10は、第1空間14xに対面する第1表面14と、第2空間15xに対面する第2表面15とをもつ。図18に示すように、引き戸1の戸首(後述する上側ケース41)と戸枠3の上枠31との間には、隙間量ΔE1をもつ上側隙間91が形成されている。
【0055】
図19に示すように、引き戸1の下辺部12と戸枠3の下枠32との間には、隙間量ΔE2をもつ下側隙間92が形成されている。上側隙間91および下側隙間92が形成されているため、引き戸1を開閉させるときの抵抗が低減されている。
【0056】
図17に示すように、上側隙間閉鎖手段4は、引き戸本体10の上辺部11側に設けられている。上側隙間閉鎖手段4は、上辺部11よりも上方(矢印U1方向)に向けて移動可能に設けられた上側遮音部材40と、上側遮音部材40を上辺部11よりも上方(矢印U1方向)に向けて移動させる上側作動部45とをもつ。図17に示すように、上側作動部45は、上辺部11に配置され上側収容室41rをもつ上側ケース41(上側基体)と、引き戸1が開放されるに伴い上側隙間91を形成する方向に上側遮音部材40を付勢する上側バネ部材42と、引き戸1が閉鎖されるに伴い上側隙間91を低減または閉鎖させる方向(矢印U1方向)に上側遮音部材40を作動させる上側作動体43とを備えている。
【0057】
図18に示すように、構造物2の開口部20に取り付けられている戸枠3の上枠31には、凹状の戸首嵌込溝38が形成されている。戸首嵌込溝38は引き戸本体10のスライド方向に沿って長溝状に延設されている。上側隙間閉鎖手段4の上側ケース41は、金属(例えばアルミニウム合金系、鉄系、チタン系等)または硬質樹脂等の材料で形成されており、上側ケース41の下半分41dは、引き戸本体10の上辺部11の内部に埋設されている。図18において、上側隙間閉鎖手段4の上側ケース41の幅(引き戸1の厚み方向における寸法)は、L1として示される。上側ケース41の幅L1は、引き戸本体10の厚み寸法TAよりも小さく設定されている。上側ケース41の上端部41uは、引き戸本体10の上辺部11よりも上方に向けて高さH1で突出している。上側ケース41は、戸枠3の上枠31の凹状の戸首嵌込溝38に着脱可能に嵌め込まれている。これにより上側ケース41は戸首として作用することができる。戸首作用により、引き戸本体10は矢印R1,R2方向(図18参照,引き戸本体10の厚み方向に沿った方向)への転倒が防止されており、引き戸本体10が戸枠3から離脱しないようにされている。なお図18に示すように、戸首嵌込溝38は溝側面38aと溝天井面38cとをもち、溝側面および溝天井面38cは、構造物の開口部を形成する形成面としての役割を担う。戸首嵌込溝38の深さはH2として示され,その幅はL2(L2>L1)として示されている。
【0058】
図18に示すように、上側遮音部材40は、上側ケース41の収容室41rに保持された金属または硬質樹脂等の硬質材料で形成された上側硬質部材401と、上側ケース41の収容室41rに上側硬質部材401に上向きに保持されたゴムまたは樹脂等の軟質材料で可撓性を有するように形成された上側軟質部材402とで形成されている。なお、上側軟質部材402は、戸枠3の上枠31の溝天井面38cに対する弾性変形性および密着シール性を高めるべく、中空室403を有する。但し、中空室403を廃止し、上側軟質部材402の内部に多孔質体を埋設した構造としても良いし、あるいは、中実構造としても良い。
【0059】
本実施例によれば、図17に示すように、上側バネ部材42は、複数の曲成部42mを並設状態に有するように蛇行状に曲成された板バネで形成されており、上側ケース41の収容室41rの延設方向に沿って、つまり上辺部11に沿って延設されている。曲成部42mには付設部42kが複数個取り付けられている。上側作動体43は、上側ケース41の収容室41rの端部において矢印S1,S2方向(引き戸本体10の上辺部11に沿った方向)に移動可能に設けられている。ここで、上側バネ部材42の先端部42aと上側作動体43とが接触係合していると共に、上側作動体43の突起状の上側操作子46が引き戸本体10の側辺部13よりも外方に突出するように設けられている。
【0060】
引き戸1が矢印P1方向にスライドされて開放されているときには、図17に示すように、上側作動体43の上側操作子46が戸枠3の側枠33から離間するため、上側バネ部材42の付勢力により上側操作子46が引き戸本体10の側辺部13よりも外方(矢印P2方向)に突出して露出している。これに対して、引き戸1が矢印P2方向にスライドされて閉鎖されるときには、図示しないものの、上側作動体43の上側操作子46が戸枠3の側枠33に当接するため、上側操作子46が退避方向(矢印P1方向)に押圧されて引き戸本体10の側辺部13内に退避される。すると、上側作動体43が退避方向(矢印S1方向)に移動し、ひいては上側バネ部材42の曲成部42mが直状に近づくように弾性変形される。この結果、上側バネ部材42は上側硬質部材401および上側軟質部材402を上方(矢印U1方向)に移動させる。これにより引き戸1が閉鎖されているときには、図18の仮想線に示すように、上側軟質部材402が戸枠3の上枠31の溝天井面38cに圧接し、上辺部11における上側隙間91が閉鎖され、引き戸本体10の上辺部11側におけるシール性、遮音性および遮光性が確保される。
【0061】
また、引き戸1が開放方向(矢印P1方向)にスライドされて開放されると、図17に示すように、戸枠3の側枠33から上側作動体43の上側操作子46が離間する。このため上側作動体43が上側バネ部材42を拘束する程度が低減され、上側バネ部材42の付勢力により上側操作子46が引き戸本体10の側辺部13よりも外方に突出する。つまり、上側操作子46は露出方向(矢印P2方向)に側辺部13よりも突出する。更に、上記したように上側バネ部材42の曲成部42mが元の形状に復元されるため、上側バネ部材42は上側硬質部材401および上側軟質部材402を下方(矢印U2方向)に移動させ、上側軟質部材402は上枠31から離間する。このため引き戸1を開放させる抵抗が低減される。
【0062】
更に本実施例によれば、図16および図17に示すように、引き戸本体10,10Eの下辺部12側には下側隙間閉鎖手段5が設けられている。下側隙間閉鎖手段5は、上側隙間閉鎖手段4と同一の機構を備えており、上下を逆にしたものである。図17に示すように、下側隙間閉鎖手段5は、下辺部12よりも下方(矢印D1方向)に向けて移動可能に設けられた下側遮音部材50と、下側遮音部材50を下辺部12よりも下方(隙間閉鎖方向、矢印D1方向)に向けて移動させる下側作動部55とをもつ。
【0063】
図17に示すように、下側作動部55は、引き戸1の下辺部12に配置され下側収容室51rをもつ下側ケース51(下側基体)と、引き戸1が開放されるに伴い下側隙間92を形成する方向に下側遮音部材50を付勢する下側バネ部材52と、引き戸1が閉鎖されるに伴い下側隙間92を閉鎖させる方向(矢印D1方向)に下側遮音部材50を作動させる下側作動体53とを備えている。
【0064】
図19に示すように、下側隙間閉鎖手段5は、引き戸本体10の下辺部12において、これの厚み方向の中央域よりも偏芯して配置されている。即ち、下側隙間閉鎖手段5の中心線MDは、引き戸本体10の厚み方向の中心線MCに対してΔM偏芯している。従って、引き戸本体10の下辺部12には、転動可能な戸車6が支持軸部6mを介して取り付けられている。引き戸本体10がスライドされるとき、戸車6は戸枠3の下枠32の案内レール部32mに沿って転動する。
【0065】
図19に示すように、下側遮音部材50は、下側ケース51の収容室51rに保持された金属または硬質樹脂等の硬質材料で形成された下側硬質部材501と、下側ケース51の収容室51rに下側硬質部材501に下向きに保持されたゴムまたは樹脂等の軟質材料で形成された下側軟質部材502とで形成されている。なお、下側軟質部材502は、戸枠3の下枠32への弾性変形性、密着シール性を高めるべく、中空室503を有する。
【0066】
図17に示すように、下側バネ部材52は、複数の曲成部52mを並設状態に有するように蛇行状に曲成された板バネで形成されており、下側ケース51の収容室51rの延設方向に沿って、つまり下辺部12に沿って延設されている。曲成部52mには付設部52kが取り付けられている。
【0067】
下側作動体53は、下側ケース51の収容室51rの端部において矢印S1方向(退避方向),矢印S2方向(露出方向)に移動可能に設けられている。ここで、下側バネ部材52の先端部52aと下側作動体53とが接触係合していると共に、下側作動体53の突起状の下側操作子56が引き戸本体10の側辺部13よりも外方(矢印P2方向)に突出するように設けられている。
【0068】
引き戸1が戸開放方向(矢印P1方向)にスライドされて開放されているときにおいては、図17に示すように、下側作動体53の下側操作子56が下側バネ部材52の付勢力により引き戸本体10の側辺部13から露出する方向(矢印P2方向)に突出している。これに対して、引き戸1が矢印P2方向にスライドされて閉鎖されるときには、下側作動体53の下側操作子56が戸枠3の側枠33に当接するため、下側操作子56が退避方向(矢印P1方向)に移動される。すると、下側作動体53が退避方向(矢印S1方向)に移動し、ひいては下側バネ部材52の曲成部52mが直状に近づくように弾性変形される。この結果、下側バネ部材52は下側硬質部材501および下側軟質部材502を下方(隙間閉鎖方向、矢印D1方向)に移動させる。これにより下側軟質部材502が戸枠3の下枠32に圧接し、下側隙間92が閉鎖する。これにより引き戸本体10の下辺部12側における遮音性が確保される。
【0069】
上記したように引き戸1が開放されるときには、下側バネ部材52の曲成部52mが元の形状に復元しようとする。このため、図17に示すように、下側作動体53の下側操作子56が下側バネ部材52の付勢力により引き戸本体10の側辺部13よりも外方(矢印P2方向)に突出する。更に、下側バネ部材52の曲成部52mが元の形状に復元されるため、下側バネ部材52は下側硬質部材501および下側軟質部材502を上方(矢印D2方向)に移動させる。これにより下側軟質部材502が下枠32から離れるため、引き戸1を開放させる抵抗が低減される。
【0070】
上記したように本実施例によれば、引き戸本体10,10Eの上辺部11側には、引き戸本体10,10Eの閉鎖時に上辺部11よりも上方の上側隙間91を閉鎖させる上側隙間閉鎖手段4が設けられている。この結果、引き戸1,10Eの閉鎖時には、上側隙間閉鎖手段4を構成する上側軟質部材402が戸枠3の上枠31に圧接し、上側隙間91が閉鎖され、上辺部11側における遮音性および遮光性が確保される。
【0071】
更に本実施例によれば、引き戸本体10,10Eの下辺部12側には、引き戸本体10,10Eの閉鎖時に下辺部12よりも下方の下側隙間92を閉鎖させる下側隙間閉鎖手段5が設けられている。同時に、下側隙間閉鎖手段5を構成する下側軟質部材502が戸枠3の下枠32に圧接し、下側隙間92が閉鎖され、下辺部12側における遮音性および遮光性が確保される。この結果、引き戸1,1Eの閉鎖時において、引き戸本体10の上辺部11側および下辺部12側の双方において、第1空間14xと第2空間15xとの間における音の伝播および光の伝播が抑えられ、遮音性および遮光性の高い引き戸1を提供することができる。
【実施例11】
【0072】
図20および図21は実施例11を示す。本実施例は実施例10と基本的には同様の構成、作用効果を有する。共通する部位に共通の符号を付する。図20および図21(引き戸本体10の厚み方向に沿った断面)に示すように、引き戸本体10の上辺部11においては、上側遮音部材40よりも第1表面14側に第1上面開口61が上向きに形成されていると共に、上側遮音部材40よりも第2表面15側に第2上面開口62が上向きに形成されている。更に、第1上面開口61および第2上面開口62を連通させる上側連通路63が引き戸本体10の内部に形成されている。上側連通路63により、第1空間14xと第2空間15xとを連通させる。なお、図20に示すように、第1上面開口61、第2上面開口62および上側連通路63は、断面でほぼ凹形状をなしている。
【0073】
引き戸1,1Eが閉鎖されているとき、第1空間14xと第2空間15xとは仕切られる。ここで、引き戸本体10,10Eの上辺部11において第1上面開口61および第2上面開口62が形成されているため、通常の状態では、使用者は、第1上面開口61および第2上面開口62の存在を視認することができない。故に、引き戸1が閉鎖されているときであっても、使用者に通気孔の存在を認識させずとも、第1空間14xと第2空間15xとを連通させる通気性(図20において矢印X1方向の通気性)が確保される。更に通気性を確保しつつ遮光性も確保される。
【0074】
更に本実施例によれば、図21に示すように、引き戸本体10,10Eの第1表面14において下部側に形成された横向きの表面開口71と、引き戸本体10,10Eの下辺部12に形成された下向きの下面開口72と、表面開口71および下面開口72を連通させることにより第1空間14xと第2空間15xとを連通させる下側連通路73とが形成されている。この結果、第1空間14xと第2空間15xとを連通させる通気性が一層確保される。更に下面開口72は下向きであるため、第1空間14xまたは第2空間15xの光を透過させず、遮光性も確保される。
【0075】
本実施例によれば、図20に示すように、上側隙間閉鎖手段4の基体としての上側ケース41は、上側遮音部材40を保持すると共に、戸首を形成している。即ち、上側ケース41は戸首として機能し、上側ケース41の上部分は戸枠3の上枠31の戸首嵌込溝38に嵌め込まれている。このように上側隙間閉鎖手段4の基体としての上側ケース41を戸首として有効利用することにより、引き戸1のこれの厚み方向への転倒を防止している。
【実施例12】
【0076】
図22は実施例12を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成、作用効果を有する。共通する部位に共通の符号を付する。図22に示すように、引き戸本体10の内部には内部連通路64が設けられている。内部連通路64は下側連通路73および上側連通路63を引き戸本体10の内部において互いに連通させている。この場合、第1空間14xと第2空間15xとを連通させる通気性が一層確保され易い。
【0077】
ところで、使用条件によっては、第1空間14xと第2空間15xとの間に大きな温度差または湿度差がかなり存在するときがある。この場合、第1表面14および第2表面15における温度差または湿度差に起因して、引き戸本体10に反りが発生するおそれがある。このような場合であっても、内部連通路64には第1空間14xおよび第2空間15xの雰囲気が進入する。故に、内部連通路64の内部は、第1空間14xと第2空間15xとの中間の温度または湿度となり易い。この場合、引き戸本体10,10Eに作用する急激な温度差または湿度差が軽減されるので、引き戸本体10,10Eの反りが低減される利点が得られる。
【0078】
このように引き戸本体10,10Eの閉鎖時において、遮音性を高めつつも、引き戸本体10,10Eで仕切られた第1空間14xと第2空間15xとの間における通気性が確保される。すなわち、第1上面開口61、第2上面開口62および上側連通路63により、引き戸本体10,10Eの上辺部11側の通気性が確保される。更に、表面開口71、第2下面開口72および下側連通路73により、引き戸本体10,10Eの下辺部12側の通気性が確保される。
【0079】
しかも第1上面開口61、第2上面開口62および下面開口72は使用者から視認できないため、使用者に通気孔を存在を認識させない。更に図22に示すように、第2表面15に通気孔の開口が形成されていないため、第2表面15における意匠を選択する自由度を拡大させることができる。
【0080】
本実施例においても、上側隙間閉鎖手段4の基体としての上側ケース41は、戸首として機能しており、上側ケース41の上部分は戸枠3の上枠31の戸首嵌込溝38に嵌め込まれている。このように上側隙間閉鎖手段4の基体としての上側ケース41を戸首として有効利用することにより、引き戸1のこれの厚み方向への転倒を防止している。
【実施例13】
【0081】
図23は実施例13を示す。本実施例は実施例3と基本的には同様の構成、作用効果を有する。共通する部位に共通の符号を付する。以下、異なる部分を中心として説明する。引き戸本体10,10Eの上辺部11側には、引き戸本体10,10Eの閉鎖時に上辺部11よりも上方の上側隙間91を閉鎖させる上側隙間閉鎖手段4が設けられている。この結果、第1空間14xと第2空間15xとの間における音の伝播が抑えられ、遮音性および遮光性の高い引き戸1を提供することができる。
【0082】
図23は引き戸本体10の厚み方向に沿った断面を示す。図23に示すように、引き戸本体10の上辺部11側において、引き戸本体10,10Eの第2表面15において形成された第2表面開口17uと、上辺部11において上側遮音部材40よりも第1表面14側に形成された第1上面開口61と、第2表面開口17uおよび第1上面開口61を連通させる断面でL字形状の上側連通路63とが形成されている。
【0083】
本実施例によれば、図23に示すように、上側隙間閉鎖手段4の中心線MUは、引き戸本体10,10Eの厚み方向の中心線MCよりも第2表面15側にΔM3偏芯している。このため引き戸本体10,10Eの上辺部11において、第1上面開口61を第1表面14側に寄せて形成することができる。
【0084】
本実施例においても、図23に示すように、上側隙間閉鎖手段4の基体としての上側ケース41は、戸首として機能しており、上側ケース41の上部分は戸枠3の上枠31の戸首嵌込溝38に嵌め込まれている。本実施例においても、引き戸本体10の内部には内部連通路64が設けられている。内部連通路64は下側連通路(図示せず)および上側連通路63を連通する。
【0085】
(そのほか)
上記した実施例では、第1戸尻側隙間閉鎖要素210および第2戸尻側隙間閉鎖要素220の基部270は中空構造とされているが、これに限らず、中実構造としても良い。基部270は高分子材料で形成されているが、シール部280が可撓性を有する限り、アルミ合金、鉄合金等の金属系材料で形成しても良い。更に、第1戸尻側隙間閉鎖要素210および第2戸尻側隙間閉鎖要素220のシール部280は中空構造とされているが、これに限らず、中実構造としても良い。
第1戸尻側隙間閉鎖要素210および第2戸尻側隙間閉鎖要素220のシール部の断面形状は上記した形状に限定されず、適宜変更できる。第1戸尻側隙間閉鎖要素210および第2戸尻側隙間閉鎖要素220を圧入により取り付けることにしているが、他の嵌合構造、ねじ等で取りつけても良い。更に、構造物2の開口部20には戸枠3が取り付けられていなくても良い。本発明は上記し且つ図面に示した実施例のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は例えばトイレ室、勉強部屋、寝室、客室、居間、業務室、オーディオ室、コンピュータ室等といった遮音性が特に要請される室に取り付けられる引き戸に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】実施例1に係り、戸枠に取り付けられている引き戸を開放している途中状態を模式的に示す正面図である。
【図2】実施例1に係り、引き戸本体の戸尻と相手引き戸本体の戸尻付近をスライド方向に沿って切断して模式的に示す構成図である。
【図3】実施例1に係り、戸尻側隙間閉鎖要素を取付孔に取り付ける状態を模式的に示す断面図である。
【図4】実施例1に係り、構造物の戸枠に引き戸本体を閉鎖する直前の状態を模式的に示す構成図である。
【図5】実施例1に係り、第1戸尻側隙間閉鎖要素および第2戸尻側隙間閉鎖要素が当接してシールしている状態を模式的に示す構成図である。
【図6】変形形態に係り、引き戸本体の戸尻と相手引き戸本体の戸尻付近をスライド方向に沿って切断して模式的に示す構成図である。
【図7】変形形態に係り、引き戸本体の戸尻と相手引き戸本体の戸尻付近をスライド方向に沿って切断して模式的に示す構成図である。
【図8】実施例2に係り、引き戸本体の戸尻側に取り付けられた第1戸尻側隙間閉鎖要素と相手引き戸本体の戸尻側に取り付けられた第2戸尻側隙間閉鎖要素の付近をスライド方向に沿って切断して模式的に示す構成図である。
【図9】実施例3に係り、引き戸本体の戸尻側に取り付けられた第1戸尻側隙間閉鎖要素と相手引き戸本体の戸尻側に取り付けられた第2戸尻側隙間閉鎖要素の付近をスライド方向に沿って切断して模式的に示す構成図である。
【図10】実施例4に係り、引き戸本体の戸尻側に取り付けられた第1戸尻側隙間閉鎖要素と、相手引き戸本体の戸尻側に取り付けられた第2戸尻側隙間閉鎖要素との付近をスライド方向に沿って切断して模式的に示す構成図である。
【図11】実施例5に係り、引き戸本体の戸尻側に取り付けられた第1戸尻側隙間閉鎖要素と、相手引き戸本体の戸尻側に取り付けられた第2戸尻側隙間閉鎖要素との付近をスライド方向に沿って切断して模式的に示す構成図である。
【図12】実施例6に係り、引き戸本体の戸尻側に取り付けられた第1戸尻側隙間閉鎖要素と、相手引き戸本体の戸尻側に取り付けられた第2戸尻側隙間閉鎖要素との付近をスライド方向に沿って切断して模式的に示す構成図である。
【図13】実施例7に係り、引き戸本体の戸尻側に取り付けられた第1戸尻側隙間閉鎖要素と、相手引き戸本体の戸尻側に取り付けられた第2戸尻側隙間閉鎖要素との付近をスライド方向に沿って切断して模式的に示す構成図である。
【図14】実施例8に係り、引き戸本体の戸尻側に取り付けられた第1戸尻側隙間閉鎖要素と、相手引き戸本体の戸尻側に取り付けられた第2戸尻側隙間閉鎖要素との付近をスライド方向に沿って切断して模式的に示す構成図である。
【図15】実施例9に係り、引き戸本体の戸尻側に取り付けられた第1戸尻側隙間閉鎖要素と、相手引き戸本体の戸尻側に取り付けられた第2戸尻側隙間閉鎖要素との付近をスライド方向に沿って切断して模式的に示す構成図である。
【図16】実施例10に係り、戸枠に取り付けられている引き戸を開放している途中状態を模式的に示す正面図である。
【図17】実施例10に係り、引き戸本体に上側隙間閉鎖手段および下側隙間閉鎖手段を搭載した状態を模式的に示す構成図である。
【図18】実施例10に係り、上側隙間閉鎖手段付近を模式的に示す断面図である。
【図19】実施例10に係り、下側隙間閉鎖手段付近を模式的に示す断面図である。
【図20】実施例11に係り、上側隙間閉鎖手段付近を模式的に示す断面図である。
【図21】実施例11に係り、引き戸が2枚重ねられている状態を模式的に示す断面図である。
【図22】実施例12に係り、引き戸が2枚重ねられている状態を模式的に示す断面図である。
【図23】実施例13に係り、上側隙間閉鎖手段付近を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0088】
100は戸先、102は戸尻、105は戸尻側隙間、200は戸尻側隙間閉鎖手段、210は第1戸尻側隙間閉鎖要素、220は第2戸尻側隙間閉鎖要素、270は基部、280はシール部、281はシール中空室、283は切欠を示す。
【0089】
1は引き戸、10は引き戸本体、1Eは相手引き戸(相手材)、10Eは相手引き戸本体(相手材)、11は上辺部、12は下辺部、13は側辺部、14は第1表面、14xは第1空間、15xは第2空間、15は第2表面、16は第1表面開口、17は第2表面開口、2は構造物、20は開口部、3は戸枠、31は上枠、32は下枠、33は側枠、4は上側隙間閉鎖手段、40は上側遮音部材、41は上側ケース(上側基体)、42は上側バネ部材、43は上側作動体、45は上側作動部、5は下側隙間閉鎖手段、50は下側遮音部材、51は下側ケース(下側基体)、52は下側バネ部材、53は下側作動体、55は下側作動部、61は第1上面開口、62は第2上面開口、63は上側連通路、71は表面開口、72は第2下面開口、73は下側連通路、91は上側隙間、92は下側隙間を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手材に対してスライド可能に設けられスライドにより構造物の開口部を開閉する引き戸本体と、前記相手材と前記引き戸本体の戸尻側の部分との間における戸尻側隙間の全部または一部を塞ぐ戸尻側隙間閉鎖手段とを具備しており、
前記戸尻側隙間閉鎖手段は、
前記引き戸本体のうち前記戸尻側の部分および前記相手材側のうちの少なくとも一方に設けられ、弾性材料を基材とする戸尻側隙間閉鎖要素を備えていることを特徴とする引き戸。
【請求項2】
請求項1において、前記戸尻側隙間閉鎖要素は、前記引き戸本体のうち前記戸尻側の部分に設けられ弾性材料を基材とする第1戸尻側隙間閉鎖要素と、前記相手材側に設けられ前記引き戸本体がスライドされて閉鎖されたとき前記第1戸尻側隙間閉鎖要素に対面して接触する弾性材料を基材とする第2戸尻側隙間閉鎖要素とを備えていることを特徴とする引き戸。
【請求項3】
請求項1または2において、前記戸尻側隙間閉鎖要素は、前記引き戸本体のスライド方向に沿った断面で、中空室をもつ中空構造であることを特徴とする引き戸。
【請求項4】
請求項1〜3のうちのいずれか一項において、前記戸尻側隙間閉鎖要素は、前記引き戸本体のスライド方向に沿った断面で、少なくともリング形状部を有することを特徴とする引き戸。
【請求項5】
請求項1〜3のうちのいずれか一項において、前記戸尻側隙間閉鎖要素は、前記引き戸本体のスライド方向に沿った断面で、中空室を有すると共に、外方と前記中空室とを連通させる切欠を有することを特徴とする引き戸。
【請求項6】
請求項5において、前記戸尻側隙間閉鎖要素は、前記引き戸本体のスライド方向に沿った断面で、少なくともC形状を有することを特徴とする引き戸。
【請求項7】
請求項2において、前記引き戸本体のスライド方向に沿った断面において、スライド方向に沿って前記第1戸尻側隙間閉鎖要素の中心を通る第1中心線と、スライド方向に沿って前記第2戸尻側隙間閉鎖要素の中心を通る第2中心線とは、スライド方向と直交する方向において所定量ずれていることを特徴とする引き戸。
【請求項8】
請求項1〜7のうちのいずれか一項において、前記引き戸本体の上辺部側の上側隙間を閉鎖する上側隙間閉鎖手段が設けられており、
前記上側隙間閉鎖手段は、前記引き戸本体の閉鎖時において、前記引き戸本体の上辺部と前記構造物の前記開口部を形成する形成面との間における上側隙間を低減または閉鎖する遮音部材と、前記引き戸本体の閉鎖に伴い前記上側隙間を低減または閉鎖させる方向に前記遮音部材を移動させる作動部とをもつことを特徴とする引き戸。
【請求項9】
請求項1〜8のうちのいずれか一項において、前記引き戸本体の下辺部側の下側隙間を閉鎖する下側隙間閉鎖手段が設けられており、
前記下側隙間閉鎖手段は、前記引き戸本体の閉鎖時において、前記引き戸本体の下辺部と前記構造物の前記開口部を形成する形成面との間における下側隙間を低減または閉鎖する遮音部材と、前記引き戸本体の閉鎖に伴い前記下側隙間を低減または閉鎖させる方向に前記遮音部材を移動させる作動部とをもつことを特徴とする引き戸。
【請求項1】
相手材に対してスライド可能に設けられスライドにより構造物の開口部を開閉する引き戸本体と、前記相手材と前記引き戸本体の戸尻側の部分との間における戸尻側隙間の全部または一部を塞ぐ戸尻側隙間閉鎖手段とを具備しており、
前記戸尻側隙間閉鎖手段は、
前記引き戸本体のうち前記戸尻側の部分および前記相手材側のうちの少なくとも一方に設けられ、弾性材料を基材とする戸尻側隙間閉鎖要素を備えていることを特徴とする引き戸。
【請求項2】
請求項1において、前記戸尻側隙間閉鎖要素は、前記引き戸本体のうち前記戸尻側の部分に設けられ弾性材料を基材とする第1戸尻側隙間閉鎖要素と、前記相手材側に設けられ前記引き戸本体がスライドされて閉鎖されたとき前記第1戸尻側隙間閉鎖要素に対面して接触する弾性材料を基材とする第2戸尻側隙間閉鎖要素とを備えていることを特徴とする引き戸。
【請求項3】
請求項1または2において、前記戸尻側隙間閉鎖要素は、前記引き戸本体のスライド方向に沿った断面で、中空室をもつ中空構造であることを特徴とする引き戸。
【請求項4】
請求項1〜3のうちのいずれか一項において、前記戸尻側隙間閉鎖要素は、前記引き戸本体のスライド方向に沿った断面で、少なくともリング形状部を有することを特徴とする引き戸。
【請求項5】
請求項1〜3のうちのいずれか一項において、前記戸尻側隙間閉鎖要素は、前記引き戸本体のスライド方向に沿った断面で、中空室を有すると共に、外方と前記中空室とを連通させる切欠を有することを特徴とする引き戸。
【請求項6】
請求項5において、前記戸尻側隙間閉鎖要素は、前記引き戸本体のスライド方向に沿った断面で、少なくともC形状を有することを特徴とする引き戸。
【請求項7】
請求項2において、前記引き戸本体のスライド方向に沿った断面において、スライド方向に沿って前記第1戸尻側隙間閉鎖要素の中心を通る第1中心線と、スライド方向に沿って前記第2戸尻側隙間閉鎖要素の中心を通る第2中心線とは、スライド方向と直交する方向において所定量ずれていることを特徴とする引き戸。
【請求項8】
請求項1〜7のうちのいずれか一項において、前記引き戸本体の上辺部側の上側隙間を閉鎖する上側隙間閉鎖手段が設けられており、
前記上側隙間閉鎖手段は、前記引き戸本体の閉鎖時において、前記引き戸本体の上辺部と前記構造物の前記開口部を形成する形成面との間における上側隙間を低減または閉鎖する遮音部材と、前記引き戸本体の閉鎖に伴い前記上側隙間を低減または閉鎖させる方向に前記遮音部材を移動させる作動部とをもつことを特徴とする引き戸。
【請求項9】
請求項1〜8のうちのいずれか一項において、前記引き戸本体の下辺部側の下側隙間を閉鎖する下側隙間閉鎖手段が設けられており、
前記下側隙間閉鎖手段は、前記引き戸本体の閉鎖時において、前記引き戸本体の下辺部と前記構造物の前記開口部を形成する形成面との間における下側隙間を低減または閉鎖する遮音部材と、前記引き戸本体の閉鎖に伴い前記下側隙間を低減または閉鎖させる方向に前記遮音部材を移動させる作動部とをもつことを特徴とする引き戸。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2007−314995(P2007−314995A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−144229(P2006−144229)
【出願日】平成18年5月24日(2006.5.24)
【出願人】(000100805)アイシン高丘株式会社 (202)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月24日(2006.5.24)
【出願人】(000100805)アイシン高丘株式会社 (202)
【Fターム(参考)】
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