説明

弦楽器用構造体

本発明は、成形材料で作られた胴部1と、胴部に固着された竿部2と、竿部に固着された頭部3とを含む弦楽器用構造体であって、頭部3も成形材料で作られ、胴部1および頭部3の成形材料が複合塊体であり、竿部2が炭素繊維材料で作られており、竿部2の胴部1および頭部3への接合4、5が、胴部および頭部の成形可能な複合塊体を成形して竿部と一体の単体にすることによって実現される弦楽器用構造体に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形材料で作られた胴部(ボディー)と、胴部に固着された竿部(ネック)と、竿部に固着された頭部(ヘッド)とを含む弦楽器構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
前記の3つの構成部分のための材料選択、及びこれらの接合は、とりわけギターの構成に関して、常に関心が持たれている。新たな解決策を探索する際、例えば楽器の耐久性、費用、演奏適応性、重量、及び様々な音響特性に注意が払われている。
【0003】
英国特許出願第2037049号は、頭部と竿部とストリング・アンカ(弦押さえ部)から形成されて、様々な胴部に取り付けることのできる鋳造単体(ユニット)を開示している。この解決策の目的は、前記に記載した要素に影響を与えることである。しかしながら、この解決策はなお、胴部を前記鋳造単体にいかに配置して取り付けるかという問題を含んでいる。
【0004】
米国特許第4290336号は、従来のボルト固着法によって互いに結合された、成形可能材料から作られた頭部および胴部を記載している。例えば望みの音響特性に応じて、胴部に中実構造体、発泡構造体、又は空洞を備えることができる。この製造方法を選択する主な動機は、とりわけ伝統的な木製楽器と比較して楽器の製造費用を下げることである。
【0005】
米国特許第5682003号は、この形式のギターの寸法を小さくする目標に基づいて設計されたセミアコースティック・エレキギターを開示している。この解決策では、頭部、竿部、及び中央胴部材が一体単体を形成する。そして、中央胴部材は、個別の左胴部材および個別の右胴部材を備える。この単体は複雑であり、材料について、又は胴部部材を連結する方法について詳細な説明は記載されていない。
【0006】
米国特許第5895872号は、弦楽器のための複合構造体を記載している。1つの実施例は、竿部、胴部下部、及び胴縁部が繊維強化材料から一体部品として成形されたアコースティック・ギターに関するものである。胴部のカバー部品を別々に取り付けて固着しなければならない。この特許に記載された電気ギター構造体は、米国特許第5682003号に示された構造体に良く似ている。
【0007】
米国特許第5911168号は、プラスチック材料で作られた胴部および竿部が、連結領域において繊維構造体を使用して一体部品に形成されている、ギター構造体を示している。これらの繊維構造体は帯状の部品であり、かなりの距離にわたって突き出て、胴部および竿部の中に入っている。この製造方法の目的は、低費用でできるだけ堅固な構造体を得ることである。
【0008】
さらに米国特許第4088050号によって、頭部、竿部、および胴部の下部分が、プラスチックから一体部品として成形されて、同じ方法で形成された別の上部分によって覆われる、玩具ギターが知られている。しかし、この公開の教示を、より要求の厳しい構造体に適用することはできない。
【0009】
前記の従来技術に関連する問題点には、いくつかの複雑な製造段階に起因して製造費が高いことが含まれ、結果的に消費者にとって購入価格が高くなる。従来技術による総合的な解決策では、重量が大きいこと、及び伝統的製造方法による楽器よりも音質の劣ることからも問題が発生する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、楽器のための完全に新しい構造上の解決策を提供することによって、前記の問題点を除去することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、本発明による弦楽器用構造体であって、頭部も成形材料で作られ、胴部および頭部の成形材料は複合塊体(composite mass)であり、頭部は炭素繊維材料から作られ、竿部の胴部および頭部への接合部は、胴部および頭部の成形可能複合塊体を成形(molding)して、竿部と一体の単体にすることによって実現されることを特徴とする構造体により達成される。
【0012】
本発明は、楽器の胴部、竿部、及び頭部が、別々の固着手段又は固着材料を使用しないで、材料の適切な組合せを使用して、できるだけ少ない工程で一体単体に成形されるという考えに基づくものである。本発明では、これはすべて、予め作られた炭素繊維竿部および複合成形塊体によって達成される。
【0013】
炭素繊維竿部中に直接成形された複合成形胴部及び頭部は、ボルトと接着固定具と胴部を貫通する竿部接合部とを備える既存の解決策よりも、音出し、音調、解決(resolution)、及び保持(sustain)に関してより良い振動特性を提供する。本発明による成形接合部は、耐久性があり柔軟で安価である。使用される接合部および材料は、竿部を押すか又は引くことによって制御された方式でピッチを上下することを可能にする(ブリッジを参照)。押したか又は引いた後に、楽器は再び調子が合う。空気の温度および湿度の変動はどちらも、楽器の調律状態に影響する変化をひき起こさない。上側竿部の演奏適応性が、従来の解決策、例えばボルトによる固着又は従来の竿部基部の補強が使用される場合よりも著しく良くなるように、胴部と竿部との間の接合部を形成することができる。その理由は、竿部が接合部において補強される必要がないためである。
【0014】
少なくとも胴部の成形塊体の内部に成形された永久中子(コア)、および成形後に除去される中子があることも好ましい。適所に残された中子は、望まれない共鳴を起こすことなく楽器の重量の減少、および質量中心の改善を可能にする。成形後に除去される中子は、中空構造を形成するために使用され、この場合には別々の固着板又は取付具がなくても電子装置を取り付けることができる。
【0015】
本発明を、添付の図面を参照して好ましい例示的解決策によって以下にさらに詳しく説明する。
【実施例】
【0016】
各図は、3つの主要構成部分、すなわち、胴部1、胴部1に固着された竿部2、及び竿部2に固着された頭部を含む本発明によるギター構造体を図示する。
【0017】
胴部1および頭部3は、複合塊体からなる成形材料で作られている。同じ塊体を両部品の材料として使用してもよく、又は必要であれば、異なる組成物を胴部1及び頭部3に使用してもよい。成形塊体の基本的構成部材は適切なプラスチック材料である。その代わりに、頭部2は、設定基準を満たす、それ自体周知の炭素繊維で作られている。
【0018】
竿部2の胴部1と頭部3とに対する接合部4及び5は、胴部1および頭部3の成形可能な複合塊体を成形して竿部2と一体単体にすることによって実現される。この実施例では、竿部2は完全に中空であり、成形材料が竿部の中に貫通する距離は、竿部の内部に取り付けられた心材(コア)6及び7によって制限される。その上、永久中子8と成形後に除去される中子9が、例えば胴部1の内部に取り付けようとする電子装置のために、胴部1の成形塊体の内部に成形されている。中子9を、蒸発、溶解、又は畳み込み式空気入り中子によって除去することができる。空気式「除去」に関連しては、ある中子材料は自然に楽器の中に残されるが、実際には中子は除去されていると言える。中子をどこにでも、例えば竿部領域に置くこともできる。竿部のトラス・ロッド10が同時に成形によって楽器の中に埋め込まれ、この場合、トラス・ロッドは成形によって頭部3に固定される。
【0019】
本発明の前記の説明は、単に本発明の概念の図解を意図するものである。しかし、本発明の概念を様々な方法で実施できることは当業者には明らかである。したがって、本発明は前記に説明した実施例に限定されるものではなく、その詳細を添付の特許請求の範囲内で変えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】胴部に平行な平面で切ったエレキギターの縦断面図。
【図2】胴部に直角な平面で切った図1のエレキギターの縦断面図。
【図3】図1のIII−IIIに沿った断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形材料で作られた胴部(1)と、該胴部に固着された竿部(2)と、該竿部に固着された頭部(3)とを含む弦楽器用構造体において、
前記頭部(3)も成形材料で作られており、
前記胴部(1)および前記頭部(3)の成形材料が複合塊体であり、
前記竿部(2)が炭素繊維材料で作られており、
前記竿部(2)の前記胴部(1)および前記頭部(3)への接合(4、5)が、前記胴部および前記頭部の成形可能な前記複合塊体を成形して、前記竿部と一体の単体にすることによって実現されることを特徴とする弦楽器用構造体。
【請求項2】
前記竿部(2)が中空であり、前記成形材料が前記竿部の中に貫通できる距離が、前記竿部の中に取り付けられた心材(6、7)によって制限されることを特徴とする請求項1に記載された弦楽器用構造体。
【請求項3】
少なくとも1つの永久中子(8)が、少なくとも前記胴部(1)の前記成形塊体の内部に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載された弦楽器用構造体。
【請求項4】
成形後に除去される少なくとも1つの中子(9)が、少なくとも前記胴部(1)の前記成形塊体の内部に成形されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載された弦楽器用構造体。
【請求項5】
竿部トラス・ロッド(10)が成形によって楽器の中に埋め込まれており、前記トラス・ロッドは成形によって前記頭部(3)に固定されていることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載された弦楽器用構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−502429(P2006−502429A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−542527(P2004−542527)
【出願日】平成15年10月7日(2003.10.7)
【国際出願番号】PCT/FI2003/000739
【国際公開番号】WO2004/034374
【国際公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願人】(505129644)
【Fターム(参考)】