説明

強化されたポリ(トリメチレンテレフタレート)樹脂の供給方法

開示されるのは、(A)(a−1)ポリ(トリメチレンテレフタレート)ホモポリマーまたはコポリマー樹脂;および(a−2)1種以上のアイオノマーポリマーまたは1種以上のアイオノマーポリマーと酸ポリマーとの組み合わせを含む第1の成分を溶融ブレンドして第1の溶融ブレンドを供給する工程;ならびに(B)前記第1の溶融ブレンドと式E/X/Yのエチレンコポリマーからなる群より選択される1種以上のグループBポリマー強化剤とを溶融ブレンドする工程を包含する方法であり、式中:Eは、エチレンから形成されるラジカルであり;Xは、CH2=CH(R1)−C(O)−OR2から形成されるラジカルからなる群より選択され、Yは、選択されるモノマーから形成される1種以上のラジカルであるが、但し、Yは、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、イタコン酸、フマル酸、フマル酸モノエステル、以上の各酸の塩、ならびにグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、およびグリシジルビニルエーテルからなる群より選択されるモノマーから形成されるラジカルを少なくとも1つ含まなければならない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、現在係属中の、本明細書にその全体が援用される、2009年11月2日に出願された米国特許出願第61/257,108号に基づく優先権の利益を請求するものである。
【0002】
技術分野
本発明は、ポリ(トリメチレンテレフタレート)樹脂および強化方法に関する。
【背景技術】
【0003】
熱可塑性ポリマーは、例えば、自動車部品、食品容器、電気部品などの用途において使用され得る種々の造形品を製造するために一般的に使用される。ポリエステルを含む造形品は、多くの溶融押出プロセス(例えば、射出成形、圧縮成形、および吹込成形)によって溶融ポリマーから調製され得る。
【0004】
1,3−プロパンジオールの再生可能資源から製造される、E.I.du Pont de Nemours & Company(DuPont)により開発された、ポリ(トリメチレン)テレフタレート(PTT)は、Sorona(登録商標)樹脂の名で市販されている。DuPontは、再生可能資源(コーンシュガーを含む)から1,3−プロパンジオールを製造する方法を開拓した。Sorona(登録商標)樹脂は、半結晶質分子構造をはじめとする特性を有している。
【0005】
熱可塑性樹脂組成物の射出成形加工を改善すると同時にその加水分解安定性を向上させるために、溶融体から迅速に結晶化され得るPTTなどの熱可塑性ポリエステル組成物を開発することが望まれる。
【0006】
PTT成形用樹脂の結晶化速度を高め、したがって熱可塑性樹脂成形プロセスのサイクル時間を減少させるためには、通常、成核剤が、結晶化の速度を高めるために添加される。ポリエステルにおいて多くの場合に成核剤として作用し得るアイオノマーは、必ずしもPTTにとって望ましい結果をもたらさない。さらに、他の添加剤(例えば、反応性ポリマー強化剤)は、PTTの結晶化の速度に予想外の有害な影響を及ぼし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
強化されたPTT組成物において、迅速な結晶化、優れた加水分解耐性、および高いノッチ付きアイゾッド耐衝撃性を含む性能特性の組み合わせを示す組成物を調製するための方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示されているのは、
A)
(a−1)ポリ(トリメチレンテレフタレート)ホモポリマーまたはコポリマー樹脂;
(a−2)0.1〜4重量%の1種以上のアイオノマーポリマーまたは1種以上のアイオノマーポリマーと酸コポリマーとの組み合わせ;ならびに
(a−3)任意選択で、0.1〜20重量パーセントの、前記(a−1)以外の熱可塑性ポリマー、滑剤、流れ調整剤、可塑剤、熱安定剤、酸化防止剤、染料、顔料、およびUV安定剤からなる群より選択される1種以上の有機添加剤
を含む第1の成分を溶融ブレンドして第1の溶融ブレンドを供給する工程であって、(a−2)および(a−3)の重量パーセントは、(a−1)、(a−2)および(a−3)の総重量に基づいている、工程と、
B)
b−1)約0.5〜約5重量パーセントの、式E/X/Yのエチレンコポリマーからなる群より選択される1種以上のグループBポリマー強化剤であって、式中:
Eは、エチレンから形成されるラジカルであり;
Xは、
CH2=CH(R1)−C(O)−OR2
(ここで、R1は、H、CH3またはC25であり、R2は、1個〜8個の炭素原子を有するアルキル基である);酢酸ビニル;およびそれらの混合物から形成されるラジカルからなる群より選択され;Xは、E/X/Yコポリマーの0〜50重量%を構成し;
Yは、一酸化炭素、二酸化硫黄、アクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイン酸ジエステル、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、イタコン酸、フマル酸、フマル酸モノエステルおよび以上の各酸の塩、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ならびにグリシジルビニルエーテルからなる群より選択されるモノマーから形成される1種以上のラジカルであり:Yは、E/X/Yコポリマーの0.5〜35重量%、好ましくはE/X/Yコポリマーの0.5〜20重量パーセントであり、そしてEは、残りの重量パーセントであり、好ましくはE/X/Yコポリマーの40〜90重量パーセントを構成するものであるが;但し、Yは、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、イタコン酸、フマル酸、フマル酸モノエステル、以上の各酸の塩、ならびにグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、およびグリシジルビニルエーテルからなる群より選択されるモノマーから形成されるラジカルを少なくとも1つ含まなければならない、
1種以上のグループBポリマー強化剤;
b−2)任意選択で、ポリ(トリメチレンテレフタレート)ホモポリマーまたはコポリマー樹脂、アイオノマーポリマーおよび酸コポリマーの群から選択される1種以上の樹脂;ならびに
b−3)任意選択で、前記(a−1)以外の熱可塑性ポリマー、滑剤、流れ調整剤、可塑剤、熱安定剤、酸化防止剤、染料、顔料、およびUV安定剤からなる群より選択される1種以上の有機添加剤
を含む第2の成分と、前記第1の溶融ブレンドとを溶融ブレンドして第2の溶融ブレンドを供給する工程であって、(b−1)の重量パーセントは、(a−1)、(a−2)、(a−3)、(b−1)、(b−2)、および(b−3)の総重量に基づいている、工程と
を包含する方法である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】大きい再結晶発熱量を示す市販のPTT樹脂のメルトクエンチ試料のDSC走査を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、「コポリマー」は、2種以上のコモノマーの共重合の結果として生じる共重合単位を含むポリマーをいう。「ジポリマー」は、2種のコモノマー誘導単位から実質的になるポリマーをいい、「ターポリマー」とは、3種のコモノマー誘導単位から実質的になるコポリマーを意味する。
【0011】
本明細書において、用語「(メタ)アクリル」および「(メタ)アクリレート」は、それぞれ、アクリル酸およびメタクリル酸、ならびにアクリル酸のエステルおよびメタクリル酸のエステルを包含する。
【0012】
第1の工程(A)の溶融ブレンド工程は、(a−1)ポリ(トリメチレンテレフタレート)ホモポリマーまたはコポリマー樹脂を必要とする。「ポリ(トリメチレンテレフタレート)ホモポリマー」とは、トリメチレンテレフタレートの反復単位から実質的になる任意のポリマーを意味する。ポリ(トリメチレンテレフタレート)ホモポリマーは、1,3−プロパンジオールとテレフタル酸との重合から実質的に誘導されるか、または代替的に、そのエステル形成性等価物(例えば、重合されて最終的にポリ(トリメチレンテレフタレート)のポリマーをもたらし得る任意の反応物)から誘導される。本発明を実施するのに最も好ましい樹脂は、ポリ(トリメチレンテレフタレート)ホモポリマーである。
【0013】
「ポリ(トリメチレンテレフタレート)コポリマー」とは、少なくとも約80モルパーセントのトリメチレンテレフタレートを含むまたはそれから誘導されるポリマーであって、そのポリマーの残部はテレフタル酸および1,3−プロパンジオールまたはそれらのエステル形成性等価物以外のモノマーから誘導される、任意のポリマーを意味する。ポリ(トリメチレンテレフタレート)コポリマーの例としては、各反応物が2つのエステル形成性基を有する3種以上の反応物から合成されるコポリエステルが挙げられる。例えば、ポリ(トリメチレンテレフタレート)コポリマーは、1,3−プロパンジオールと、テレフタル酸と、4個〜12個の炭素原子を有する線状、環状、および分岐の脂肪族ジカルボン酸(例えば、ブタン二酸、ペンタン二酸、ヘキサン二酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、またはそれらのエステル形成性等価物);テレフタル酸以外の8個〜12個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸(例えば、フタル酸、イソフタル酸または2,6−ナフタレンジカルボン酸);1,3−プロパンジオール以外の2個〜8個の炭素原子を有する線状、環状、および分岐の脂肪族ジオール(例えば、エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、シクロヘキサンジメタノールまたは1,4−シクロヘキサンジオール);ならびに4個〜10個の炭素原子を有する脂肪族および芳香族のエーテルグリコール(例えば、ヒドロキノンビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル)から選択される1種以上のコモノマーとを反応させることによって調製され得る。代替的に、ポリ(トリメチレンテレフタレート)コポリマーは、約460より低い分子量を有するポリ(エチレンエーテル)グリコール(例えば、ジエチレンエーテルグリコール、メトキシポリアルキレングリコール、ジエチレングリコール、およびポリエチレングリコール)から調製され得る。このコモノマーは、コポリマー中に約0.5〜約20mol%のレベルで存在し得、約30mol%までのレベルで存在し得る。
【0014】
好ましいPTTコポリマーは、少なくとも約85mol%、少なくとも約90mol%、少なくとも約95mol%、または少なくとも約98mol%のトリメチレンテレフタレートの共重合単位を含有する。本発明にとって好ましいポリ(トリメチレンテレフタレート)ホモポリマーは、E.I.du Pont de Nemours and Co.(Wilmington,DE)からSorona(登録商標)の商品名で市販されているものである。PTTの調製のための方法は、例えば米国特許第6,277,947号明細書および所有者共通の米国特許出願第11/638,919号(「ポリ(トリメチレンテレフタレート)を製造する連続法」と題し、2006年12月14日に出願)明細書において検討されている。
【0015】
本明細書に開示される方法にとって好ましいポリ(トリメチレンテレフタレート)ホモポリマーまたはコポリマーの別の実施形態は、ポリ(トリメチレンテレフタレート)反復単位および末端基を含み、前記ポリ(トリメチレンテレフタレートホモポリマーまたはコポリマーは、核磁気共鳴分析により測定される場合に、前記ポリ(トリメチレンテレフタレート)反復単位および前記環状ダイマーの重量に基づき1.1重量%以下の環状ダイマー含有量を有し;前記ポリ(トリメチレンテレフタレート)ホモポリマーまたはコポリマーは、約0.8〜約2.0dL/g、好ましくは約0.9〜約1.5dL/g、より好ましくは約0.9〜約1.3dL/gの固有粘度を有する。
【0016】
本明細書において使用される好ましいPTT樹脂について、環状ダイマーは、以下の式(I)
【0017】
【化1】

【0018】
のものである。環状ダイマー含有量の測定には、NMR分析が、本明細書において使用される。この分析は、ポリマー反復単位中の全てのテレフタレート基(あらゆる末端基中に存在するテレフタレートを含む)の含有量と、別個の異なる領域において、環状ダイマーのテレフタレート基の含有量とを直接測定する。環状ダイマーに帰属されるピークは、8.1ppmのところにあるPTTテレフタレート反復単位とは異なる、7.7ppm付近にある。
【0019】
1.1重量%以下の環状ダイマー含有量を有するPTT樹脂は、PTTの固相重合によって得られ、この固相重合は、
3.0〜4.0g/100ペレットのペレットサイズを有する複数のペレットの形態で、ポリ(トリメチレンテレフタレート)反復単位を含む初期PTT樹脂組成物を供給する工程であって、前記初期PTT樹脂組成物は、初期環状ダイマー含有量および1種以上の縮合触媒を有し;前記初期ポリ(トリメチレンテレフタレート)樹脂組成物は、0.50〜0.89dL/gの固有粘度を有する、工程と、
この複数の樹脂ペレットを縮合温度まで縮合時間にわたって加熱し攪拌して、ポリ(トリメチレンテレフタレート)反復単位を有し、かつ核磁気共鳴分析により測定される場合に1.1重量%以下の低環状ダイマー含有量および0.9〜2.0dL/gの範囲内にある固有粘度を有する前記高粘度PTT樹脂を供給する工程であって、その環状ダイマー含有量は、前記ポリ(トリメチレンテレフタレート)反復単位および前記環状ダイマーの量に基づいている、工程と
を包含する。
【0020】
初期PTT樹脂は、1種以上の縮合触媒を、前記初期PTT樹脂組成物の重量に基づき、好ましくは約25〜約200ppm有する。好ましい触媒は、チタン(IV)ブトキシドである。
【0021】
複数の樹脂ペレットを縮合温度まで加熱し攪拌する工程は、180℃と215℃の範囲内で、約0.1〜約10mmHgの減圧下において、回転乾燥機、流動床、または流動カラム反応器で行われ得る。
【0022】
代替的なPTT固相重合方法は、米国特許第7,332,561号明細書に開示されている。
【0023】
1つの実施形態において、成分(a−1)は、前記第1の溶融ブレンドの約50〜99.9重量パーセントで存在する。別の実施形態において、成分(a−1)は、前記第1の溶融ブレンドの約76〜約99.9重量パーセントで存在する。別の実施形態において、前記第1の成分を溶融ブレンドする工程は、下記に開示されるように、グループBポリマー強化剤を含まない。
【0024】
第1の工程の溶融ブレンド工程は、(a−2)0.1〜4重量%の1種以上のアイオノマーポリマーまたは1種以上のアイオノマーポリマーと酸コポリマーとの組み合わせを必要とする。(a−2)の重量パーセントは、(a−1)、(a−2)および(a−3)の総重量に基づいている。用語「酸コポリマー」は、本明細書で使用される場合、α−オレフィン、α,β−エチレンン性不飽和カルボン酸、および任意選択で1種もしくは複数種の他の好適なコモノマー(例えば、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル)の共重合単位を含むポリマーをいう。
【0025】
用語「アイオノマー」は、本明細書で使用される場合、アルカリ金属イオンカルボン酸塩(例えば、カルボン酸ナトリウム)であるイオン基を含むポリマーをいう。そのようなポリマーは、一般的に、本明細書で規定されるような前駆体酸コポリマーのカルボン酸基を、例えば塩基との反応により、部分的または完全に中和することによって製造される。アルカリ金属アイオノマーの1つの例は、ナトリウムアイオノマー(またはナトリウム中和アイオノマー)(例えば、エチレンとメタクリル酸とのコポリマーであって、共重合メタクリル酸単位のカルボン酸基の全部または一部がカルボン酸ナトリウムの形態にあるもの)である。
【0026】
アイオノマーポリマーは、前駆体酸コポリマーの、イオン性の、中和されたまたは部分的に中和された誘導体である、アイオノマーを含む。この前駆体酸コポリマーは、2個〜10個の炭素を有するα−オレフィンの共重合単位と、その前駆体酸コポリマーの総重量に基づき約5〜約30重量パーセント、約5〜25重量パーセント、または約10〜約25重量パーセントの、3個〜8個の炭素を有するα,β−エチレン性不飽和カルボン酸の共重合単位とを含む。
【0027】
好適なα−オレフィンコモノマーとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、3 メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンなど、およびこれらのα−オレフィンの2種以上のものの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、このα−オレフィンは、エチレンである。
【0028】
好適なα,β−エチレン性不飽和カルボン酸コモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、モノメチルマレイン酸、およびこれらの酸コモノマーの2種以上のものの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、このα,β−エチレン性不飽和カルボン酸は、(メタ)アクリル酸から選択される。
【0029】
前駆体酸コポリマーは、1種もしくは複数種の他のコモノマー(例えば、2個〜10個もしくは好ましくは3個〜8個の炭素を有する不飽和カルボン酸、またはこれらの誘導体)の共重合単位をさらに含み得る。好適な酸誘導体としては、酸無水物、アミド、およびエステルが挙げられる。エステルが好ましい。不飽和カルボン酸の好ましいエステルの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)ベヘニルエーテル(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)4−ノニルフェニルエーテル(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)フェニルエーテル(メタ)アクリレート、ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジブチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、ジブチルフマレート、ジメチルフマレート、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、およびそれらの2種以上のものの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい好適なコモノマーの例としては、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ビニルアセテート、およびそれらの2種以上のものの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。しかしながら、好ましくは、前駆体酸コポリマーは、他のコモノマーを顕著な量では組み込まない。
【0030】
前駆体酸コポリマーの混合物もまた、そのコポリマーの特性が本明細書に記載される範囲内にあるのであれば、好適である。例えば、異なる量の共重合カルボン酸コモノマーまたは異なるメルトインデックスを有する2種以上のジポリマーが使用され得る。また、ジポリマーおよびターポリマーを含む前駆体酸コポリマーの混合物が、好適であり得る。
【0031】
前駆体酸コポリマーは、ASTM法D1238に準拠して190℃および2.16kgで測定される場合に約10〜約1000g/10分、または約20〜約500g/10分、または約40〜約300g/10分、または約50〜約250g/10分の溶融流量(MFR)を有し得る。
【0032】
本明細書に記載されるアイオノマー組成物において有用なアイオノマーを得るために、前駆体酸コポリマーは、その前駆体酸コポリマー中のカルボン酸基が反応してカルボキシレート基を形成するように塩基で中和される。好ましくは、前駆体酸コポリマー基は、非中和の前駆体酸コポリマーについて算出または測定される場合の前駆体酸コポリマーの総カルボン酸含有量に基づき、約40%〜約90%、または約40%〜約70%、または約43%〜約60%のレベルまで中和される。
【0033】
任意の安定なカチオンが、アイオノマー中のカルボキシレート基に対する対イオンとして好適であると考えられるが、本発明の組成物を作製するには、一価のカチオン(例えば、アルカリ金属のカチオン)が好ましい。さらにより好ましくは、塩基がナトリウムイオン含有塩基であり、前駆体酸のカルボン酸基の約40%〜約90%、または約40%〜約70%、または約43%〜約60%の水素原子がナトリウムカチオンで置換されたナトリウムアイオノマーをもたらす。アイオノマーの個々の中和レベルを、中和率と呼ぶ。
【0034】
1つの実施形態において、1種以上のアイオノマーポリマーは、エチレン/メタクリル酸コポリマーの重量に基づき約5〜25重量%のメタクリル酸反復単位を有するエチレン/メタクリル酸コポリマーを含み、より具体的には、このエチレン/メタクリル酸コポリマーは、0.40〜約0.70の中和率を有する。
【0035】
本明細書において使用されるアイオノマーを得るために、前駆体酸コポリマーは、任意の従来の手順(例えば、米国特許第3,404,134号明細書および同第6,518,365号明細書に開示されている手順)により中和され得る。
【0036】
中和したままのアイオノマーは、ASTM法D1238に準拠して190℃および2.16kgで測定される場合に、約0.1〜約50g/分以下、または約0.2〜約30g/10分以下、または約0.3〜約25g/10分、または約0.5〜約10g/10分、または約0.6〜約5g/10分のMFRを有し得る。
【0037】
第1の工程の溶融ブレンド工程は、(a−3)任意選択で、PTT以外の熱可塑性ポリマー、滑剤、流れ調整剤、可塑剤、熱安定剤、酸化防止剤、染料、顔料、およびUV安定剤からなる群より選択される1種以上の有機添加剤を存在させ得る。好ましくは、第1の工程の溶融ブレンド工程は、(a−1)、(a−2)および(a−3)の総重量に基づき0.1〜約20重量パーセントの1種以上の有機添加剤を有する。用語「(a−2)および(a−3)の重量パーセントは、(a−1)、(a−2)および(a−3)の総重量に基づいている」は、(a−1)、(a−2)および(a−3)の総重量が、前記第1の成分を溶融ブレンドする工程中に存在し得るあらゆる充填剤を計算に入れないことを意味するものである。
【0038】
(a−1)以外の熱可塑性ポリマーとしては、ポリエステル(例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)、PETコポリマー、PBTコポリマー)、ポリ(ヒドロキシルアルカン酸)(poly(hydroxylalkanoic):PHA)ポリマー(例えば、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(ヒドロキシ−酪酸)、ポリ(6−ヒドロキシヘキサン酸)、ポリ(3−ヒドロキシヘキサン酸)、ポリ(4−ヒドロキシヘキサン酸) ポリ(3−ヒドロキシヘプタン酸))、ポリエーテルエステル、ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミド、ポリアミド、ポリカーボネート、およびグループAポリマー強化剤(ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/α−オレフィンコポリマーおよびエチレン/プロピレン/ジエンゴムを含む);エチレンコポリマー;コポリエーテルエステルエラストマー;ならびにポリオレフィンおよびエチレンコポリマーからなる群より選択されるブレンドからなる群より選択される)からなる群より選択されるポリマーが挙げられる。
【0039】
グループAポリマー強化剤は、非干渉性強化剤(non−interferring toughener)と称される。すなわち、これらは、(a−1)の成分と反応する酸、酸塩、酸無水物、またはエポキシド官能基などの官能基を有しておらず、第1の溶融ブレンドまたは第2の溶融ブレンドのアルカリカルボン酸塩ファクター(ACF、下記に開示)に、希釈による以外の影響を及ぼさない。用語「希釈による以外」とは、グループAポリマー強化剤の存在が、第1の溶融ブレンドまたは第2の溶融ブレンドの総重量に影響を及ぼし得ること、したがって、ACF値にいくらかの影響を及ぼし得ることを意味する。なぜなら、成分(a−1)、(a−2)および(a−3)の総重量が、ACF値の計算に使用されるからである(下記参照)。
【0040】
グループAポリマー強化剤の範囲において、用語「ポリオレフィン」は、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン/オクテンコポリマーおよびエチレン/プロピレン/ジエン(EPDM)ゴムを包含する。
【0041】
グループAポリマー強化剤の範囲において、用語「エチレンコポリマー」は、以下の(i)および(ii)に開示されるようなエチレンと1種以上の他のエチレン性不飽和モノマーとの重合からのラジカルを含むポリマーを包含する。非干渉性強化剤として有用なエチレンコポリマーは、
i)式E/Xのエチレンコポリマーであって、式中、
Eは、エチレンから形成されるラジカルであり、そのエチレンコポリマーの40〜90重量パーセントを構成し;
Xは、
CH2=CH(R1)−C(O)−OR2
(ここで、R1は、H、CH3またはC25であり、好ましくはHまたはCH3であり、最も好ましくはHであり;R2は、1個〜8個の炭素原子を有するアルキル基である);酢酸ビニル;またはそれらの混合物から形成される1種以上のラジカルであり;Xは、10〜60重量パーセントを構成する、エチレンコポリマーと、
ii)式E/X/Y1のエチレンコポリマーであって、
式中、EおよびXは、上記のとおりであり、そしてY1は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル;スチレンおよび一酸化炭素からなる群より選択されるモノマーから形成されるラジカルであり;Eは、40〜89.5重量パーセントであり;Xは、そのエチレンコポリマーの、10〜40重量パーセントを構成し、Y1は、0.5〜20重量パーセントを構成する、エチレンコポリマーと
からなる群より選択される。好ましくは、Y1は、一酸化炭素から形成される。好ましくは、Xは、エチレンコポリマーの15〜35重量%、最も好ましくは20〜35重量%を構成し、Y1は、エチレンコポリマーの0.5〜20重量%、好ましくは2.0〜12重量%、最も好ましくは3〜8重量%を構成する。
【0042】
グループAポリマー強化剤として有用なコポリエーテルエステルエラストマーは、米国特許第3,766,146号明細書、同4,014,624号明細書および同4,725,481号明細書に開示されているようなものである。これらの特許文献は、カルボン酸および長鎖グリコールから誘導される繰り返しポリマー長鎖エステル単位と、ジカルボン酸および低分子量ジオールから誘導される短鎖エステル単位とを含有するセグメント化熱可塑性コポリエーテルエステルエラストマーを開示している。長鎖エステル単位はコポリエーテルエステルエラストマーの軟質セグメントを形成し、短鎖エステル単位は硬質セグメントを形成する。
【0043】
より具体的には、そのようなコポリエーテルエステルエラストマーは、エステル結合により頭−尾結合した、多様な繰り返し直鎖内(intralinear)長鎖エステル単位および短鎖エステル単位を含み得、前記長鎖エステル単位は、式:
−OGO−C(O)RC(O)− (I)
によって表わされ、前記短鎖エステル単位は、式:
−ODO−C(O)RC(O)− (II)
によって表わされ、式中:
Gは、約2.0〜4.3の炭素と酸素の比率、約200より高い分子量および約60℃より低い融点を有するポリ(アルキレンオキシド)グリコールからの末端ヒドロキシル基の除去後に残る二価のラジカルである。Gセグメントを形成するのに有用な1種以上のポリ(アルキレンオキシド)グリコールとしては、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(1,2−または1,3−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシド−プロピレンオキシドのブロックまたはランダムコポリマー、エチレンオキシド−テトラヒドロフランのブロックまたはランダムコポリマーなどが挙げられる。これらのポリ(アルキレンオキシド)グリコールのうち、ポリ(エチレンオキシド)グリコールが好ましい。ポリ(アルキレンオキシド)グリコールの数平均分子量は、好ましくは200〜6,000、より好ましくは400〜4,000である。
【0044】
Rは、約300未満の分子量を有するジカルボン酸からのカルボキシル基の除去後に残る二価のラジカルであり;そして
Dは、約250未満の分子量を有する低分子量ジオールからのヒドロキシル基の除去後に残る二価のラジカルである。
【0045】
用語「長鎖エステル単位」は、ポリマー鎖中の単位に用いられる場合、長鎖グリコールとジカルボン酸との反応生成物をいう。当該コポリエステル中の反復単位であるそのような「長鎖エステル単位」は、上記の式(I)に相当する。長鎖グリコールは、末端(または可能な限り末端近くに)ヒドロキシル基を有し、約200より高い、好ましくは約400〜4000の分子量を有するポリマーグリコールである。コポリエステルを調製するために使用される長鎖グリコールは、上記に開示されたとおりのポリ(アルキレンオキシド)グリコールである。
【0046】
用語「短鎖エステル単位」は、ポリマー鎖中の単位に用いられる場合、約550未満の分子量を有する低分子量化合物またはポリマー鎖単位をいう。これらは、低分子量ジオール(約250未満)をジカルボン酸で処理して上記の式(II)によって表わされるエステル単位を形成することによって作製される。
【0047】
反応して短鎖エステル単位を形成する低分子量ジオールの中に含まれるのは、非環式、脂環式および芳香族のジヒドロキシル化合物であり、その1つの例は、1,4−ブタンジオールである。本発明のコポリエステルを生成するために上述の長鎖グリコールおよび低分子量ジオールと反応させるジカルボン酸は、低分子量の、すなわち約300未満の分子量を有する、脂肪族、脂環式または芳香族のジカルボン酸であり、その1つの例は、テレフタル酸である。
【0048】
本発明において有用な具体的なコポリエーテルエステルエラストマーの例は、E.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington,DE)から入手可能なHytrel(登録商標)エラストマーである。
【0049】
本発明において有用な酸化防止剤は、ヒンダードフェノール化合物(例えば、共にCIBA Specialty Chemicals(Tarrytown,N.Y.)から入手可能なIrganox(登録商標)1010およびIrganox 1076として市販されているテトラキス(メチレン(3,5−ジ−(tert)−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート))メタンを含む)である。他の酸化防止剤は、GE Specialty Chemical(Morgantown,WV)から入手可能な、亜リン酸塩であるUltranox(登録商標)626およびWestin(登録商標)619、CIBA Specialty Chemicalsから入手可能なIrgafos(登録商標)168(トリス(2,4−ジtert−ブチルフェニル)フォスファイト)、ならびに株式会社Adeka(東京 116−8554、日本)から入手可能なAdekastab(登録商標)P−EPQおよびAdekastab(登録商標)PEP−36である。
【0050】
本発明において有用な滑剤は、Cognisから入手可能なLoxiol PTS HOB 7119、ならびにClariant Corp.(Charlotte,NC)から入手可能なLicomont ET 132、Licomont ET141、およびLicomont wax OPである。
【0051】
第1の工程の溶融ブレンド工程は、成分(a−1)、(a−2)および(a−3)の他に、第1の溶融ブレンドの総重量に基づき0〜50重量%の1種以上の充填剤を含み得る。充填剤は、熱可塑性樹脂組成物において一般的に使用されている任意の材料(例えば、強化材および他の充填剤)である。充填剤は、その上にコーティング(例えば、その組成物のポリマーへのその充填剤の接着性を向上させるサイズ剤および/または塗料)を有していても有していなくてもよい。有用な充填剤は、鉱物(例えば、粘土、海泡石、滑石、ケイ灰石、雲母、および炭酸カルシウム);種々の形態(例えば、繊維、ミルドガラス、中実または中空ガラス球)のガラス;ブラックまたは繊維としての炭素;二酸化チタン;短繊維、フィブリルまたはフィブリドの形態のアラミド;難燃剤(例えば、酸化アンチモン、亜アンチモン酸ナトリウム)、およびそれらの2種以上の組み合わせからなる群より選択される充填剤である。種々の実施形態において、第1の溶融ブレンドは、その第1の溶融ブレンドの総重量に基づき約1〜約50重量パーセント、好ましくは約15〜約45重量パーセントで1種以上の充填剤をさらに含む。種々の実施形態において、充填剤は、ケイ灰石、雲母、滑石、ガラス(特にガラス繊維)、二酸化チタン、および炭酸カルシウムである。
【0052】
工程(B)の溶融ブレンド工程は、(b−1)約0.5〜約5重量パーセントの、式E/X/Yのエチレンコポリマーからなる群より選択される1種以上のグループBポリマー強化剤を必要とし、式中:
Eは、エチレンから形成されるラジカルであり;
Xは、
CH2=CH(R1)−C(O)−OR2
(式中、R1は、H、CH3またはC25であり、好ましくはHまたはCH3であり、最も好ましくはHであり;R2は、1個〜8個の炭素原子を有するアルキル基である);酢酸ビニル;またはそれらの混合物から形成されるラジカルからなる群より選択され;Xは、E/X/Yコポリマーの0〜50重量%、好ましくはE/X/Yコポリマーの10〜40重量パーセントを構成し;
Yは、一酸化炭素、二酸化硫黄、アクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイン酸ジエステル、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、イタコン酸、フマル酸、フマル酸モノエステルおよび以上の各酸の塩、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ならびにグリシジルビニルエーテルからなる群より選択されるモノマーから形成される1種以上のラジカルであり:Yは、E/X/Yコポリマーの0.5〜35重量%、好ましくはE/X/Yコポリマーの0.5〜20重量パーセントであり、そしてEは、残りの重量パーセントであり、好ましくは、E/X/Yコポリマーの40〜90重量パーセントを構成するものであるが;但し、Yは、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、イタコン酸、フマル酸、フマル酸モノエステル、以上の各酸の塩、ならびにグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、およびグリシジルビニルエーテルからなる群より選択されるモノマーから形成されるラジカルを少なくとも1つ含まなければならない。
【0053】
1つの実施形態において、前記1種以上のグループBポリマー強化剤は、Yがグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、およびグリシジルビニルエーテルを含む、式E/X/Yのエチレンコポリマーからなる群より選択される。
【0054】
本発明の組成物において使用される式E/X/Yのエチレンコポリマーは、約100〜約270℃または約130〜約230℃の高温で、かつ少なくとも約70MPaまたは約140〜約350MPaの高圧での、フリーラジカル重合開始剤の存在下における上述のモノマーの直接重合によって調製され得るランダムコポリマーである。エチレンコポリマーはまた、チューブラ法、オートクレーブ、もしくはそれらの組み合わせ、または他の好適な方法を用いて調製され得る。エチレンコポリマーは、重合の間の不完全な混合、または重合の過程において変動し得るモノマー濃度のせいで、ポリマー鎖全体にわたって反復単位組成が完全には均一でないことがあり得る。エチレンコポリマーは、重合後にグラフトされず、その他の方法での変性もされない。
【0055】
工程(B)の溶融ブレンド工程は、上記に開示されるように、(b−2)任意選択で、ポリ(トリメチレンテレフタレート)ホモポリマーまたはコポリマー樹脂、アイオノマーポリマーおよび酸コポリマーの群から選択される1種以上の樹脂を存在させ得る。
【0056】
工程(B)の溶融ブレンド工程は、上記に開示されるように、(b−3)任意選択で、PTT(上記に開示されるとおり)以外の熱可塑性ポリマー、滑剤、流れ調整剤、可塑剤、熱安定剤、酸化防止剤、染料、顔料、およびUV安定剤からなる群より選択される1種以上の有機添加剤を存在させ得る。
【0057】
工程(B)は、成分(b−1)、(b−2)および(b−3)の他に、上記に開示されるように、1種以上の充填剤を、第2の溶融ブレンドの総重量に基づき0〜50重量パーセント含み得る。種々の実施形態において、第2の溶融ブレンドは、1種以上の充填剤を、その第2の溶融ブレンドの総重量に基づき、約1〜約50重量パーセント、好ましくは約15〜約45重量パーセントで含む。種々の実施形態において、充填剤は、ケイ灰石、雲母、滑石、ガラス(特にガラス繊維)、二酸化チタン、および炭酸カルシウムである。
【0058】
工程(B)の溶融ブレンド工程において、(b−1)の重量パーセントは、(a−1)、(a−2)、(a−3)、(b−1)、(b−2)、および(b−3)の総重量に基づいている。
【0059】
1つの実施形態において、グループAポリマー強化剤は、成分(a−1)、(a−2)、(a−3)、(b−1)、(b−2)、および(b−3)の総重量に基づき、約0.5〜約5重量パーセント、好ましくは0.5〜3重量パーセントで存在する。
【0060】
1つの好ましい実施形態において、前記第1の溶融ブレンド中、前記1種以上のアイオノマーポリマーならびに/または1種以上のアイオノマーポリマーおよび酸コポリマーは、C3〜C8カルボン酸反復単位を有しており、各アイオノマーおよび酸コポリマーは:
成分(a−1)、(a−2)および(a−3)の重量に基づく重量パーセントW;
各アイオノマーポリマーまたは酸コポリマーの重量に基づくC3〜C8カルボン酸反復単位の重量分率Z;ならびに
0〜1.0の任意の値に等しい中和率N
を有しており、
前記中和率Nは、前記アイオノマーおよび酸コポリマー中の全カルボン酸反復単位に基づくアルカリ金属塩として中和された前記カルボン酸反復単位のモル分率であり;そして前記第1の溶融ブレンドは、4〜約14、好ましくは約4〜12のアルカリカルボン酸塩ファクターACFを有しており;前記ACFは、式:
ACF=Σa-i[(W・Z・N)a-i(W・N)a-i・100/Σa-i(W)a-i
によって定義されるものである。
【0061】
項(W・Z・N)a-iは、アルカリカルボン酸塩レベルを示し;項(W・N)a-i/Σa-i(W)a-iは、当該組成物についての重量平均した中和率であり;組成物中に存在する各アイオノマーポリマーおよび酸コポリマーは、連続する文字a-iによって表わされる。個々のアイオノマーポリマーおよび酸コポリマー全ての総寄与が、ACF数を与える。しかしながら、酸コポリマーは、定義上、中和率が0であり、それゆえ、式(I)中のΣa-i(W)a-i項にしか寄与しない。したがって、ACFが、成形用樹脂中の酸コポリマーの存在および量に影響され得るものであることは明らかである。各アイオノマーおよび酸ポリマーの重量パーセントWは成分(a−1)、(a−2)および(a−3)の重量のみに基づいているので、充填剤の存在は、第1の溶融ブレンドのACF値に何ら影響を及ぼさない。
【0062】
典型的に、従来のPTT樹脂は、比較的ゆっくりと溶融体から結晶化する。個々の樹脂組成物の結晶化能力を評価するために、組成物は、典型的に、制御された恒温条件下で溶融され、次いで、この溶融試料は、液体窒素中にその溶融試料を浸漬することによって急速に冷却される。これは、「メルトクエンチ(melt−quenching)」または「メルトクエンチした試料」の供給として知られている。図1は、アイオノマー組成物が添加されていない、市販のPTT樹脂のメルトクエンチ試料の典型的なDSC走査を示している。この走査は0℃から開始され;10℃/分の走査速度で加熱し再結晶発熱量(100)を経た。
【0063】
再結晶発熱量は、PTT組成物の結晶化がクエンチ処理においてどのくらい起こらなかったかの、ジュール/グラム(J/g)試料単位での尺度である。大きい発熱量は、PTT組成物の結晶化が比較的ゆっくりであること、およびPTTの大部分がクエンチで結晶化しなかったことを示す。大きい発熱量は、成形用樹脂において好ましくない特性と見なされる。非常に小さい再結晶発熱量は、クエンチの間の高度の結晶化を示しており、成形用樹脂にとって極めて望ましい。
【実施例】
【0064】
以下の検討は、本発明を再結晶に関して実施例で説明するものである。
【0065】
比較例C−1は、アイオノマー樹脂を存在させ、5.22のACF値を有するものであり、メルトクエンチの際の迅速な結晶化を示す2.5J/gの再結晶ピークを示す。
【0066】
比較例C−2は、C−1と類似の組成を有し、ACF値は5.22であるが、グループBポリマー強化剤(1.5重量%)が全ての他の成分と共に押出機の後方に加えられ、メルトクエンチの際の緩慢な結晶化を示す17.3J/gの再結晶ピークを示す。この比較例は、一段溶融ブレンド法が使用される場合にグループBポリマー強化剤がPTT/アイオノマー組成物の結晶化速度に影響を及ぼすことを例証している。
【0067】
実施例2は、C−2と類似の組成を有し、ACF値は5.22であるが、グループBポリマー強化剤(1.5重量%)が押出機の側方に加えられ、メルトクエンチの際の迅速な結晶化を示す2.8J/gの再結晶ピークを示す。この実施例は、グループBポリマー強化剤が結晶化速度に及ぼす悪影響が、予備成形されたPTT/アイオノマー溶融ブレンドにグループBポリマー強化剤を添加することによってほぼ完全に緩和され得ることを例証している。
【0068】
1つの実施形態は、メルトクエンチ試料から10℃/分の走査速度で示差走査熱分析(DSC)により測定される場合に5J/g未満の再結晶ピークを有する、上記に開示されるような、第2の溶融ブレンドを供給する方法である。
【0069】
多くの用途のために検討されなければならないPTT樹脂の別の重要な特性は、熱可塑性樹脂組成物から得られる成形品の加水分解耐性である。加水分解耐性は、プレッシャクッカ試験(Pressure Cooker Test)においてその熱可塑性樹脂組成物の成形品を30時間までの時間にわたり高温かつ高圧で処理することにより、本明細書において評価される。次いで、引張り強さおよび破断伸び(elongation to break)が処理された試料について測定され、引張り強さおよび破断伸びの残率%を決定するために、処理されていない試料の引張り強さおよび破断伸びと比較される。
【0070】
1つの実施形態は、30時間にわたる121℃および2atmでのプレッシャクッカ試験後に、ISO法527−1/2により測定される場合に約70%超の、好ましくは90%超の、未処理の成形品に対する引張り強さ残率を有する、上記に開示されるような、第2の溶融ブレンドを供給する方法である。
【0071】
溶融ブレンド工程(A)および(B)は、任意の溶融ブレンド方法で行われ得る。用語「溶融ブレンドする」とは、第1および第2の溶融ブレンド工程の有機ポリマー成分を溶融させるのに十分な温度で成分材料を混合して、均一に分散した混合物を供給することを意味する。充填剤およびポリマー強化剤は、均一に分散されるが、別個の相として残る。溶融ブレンド工程は、任意の溶融ミキサー(例えば、一軸または二軸スクリュー押出機、ブレンダー、ニーダー、バンバリーミキサーなど)を用いて成し遂げられて、第1および第2の溶融ブレンドを得てもよい。第1の溶融ブレンドは、押出され、冷却され、そしてペレットに細断され得るか、または第1の溶融ブレンドが調製され、次いで第2の溶融ブレンド工程のためのさらなる成分が添加され、均一になるまでさらに溶融混合され得る。
【0072】
好ましくは、第1の溶融ブレンド工程および第2の溶融ブレンド工程は、1つの押出機内で、前記第1の溶融ブレンドを冷却することなく行われる。第1の溶融ブレンドを第1の成分を押出機の後方に加え;そして第2の成分(b−1)、ならびに任意選択で(b−2)、(b−3)、および充填剤を側方供給することによって調製される。
【0073】
第2の溶融ブレンドは、当業者に知られている方法(例えば、射出成形など)を用いて物品に成形され得る。そのような物品としては、電気および電子用途、機械の機械部品、ならびに自動車用途における使用のための物品が挙げられ得る。本発明の種々の実施形態は、本発明の方法によって供給されたポリ(トリメチレンテレフタレート)樹脂組成物の射出成形によって提供される成形品である。
【0074】
全ての実施形態、比較例および実施例において:
小さい再結晶ピーク発熱量(例えば、5J/g未満)は、その組成物が迅速に結晶化することを示し、望ましい特性であり;
4.0KJ/m2を超える、好ましくは4.5KJ/m2を超える、高いノッチ付きアイゾッド衝撃は、その組成物が有利な耐衝撃性を有することを示しており;
高い引張り強さ(TS)の残率%(例えば、80%超、好ましくは90%超、最も好ましくは95%超)は、その組成物が30時間のプレッシャクッカ試験下で有利な加水分解耐性を有することを示している。
【0075】
材料
Sorona(登録商標)Bright PTT樹脂は、1.02dL/gのIVおよび2.7重量%の環状ダイマーを有するものであり、E.I.du Pont de Nemours & Co.,Inc.(Wilmington,DE,USA)から入手可能であった。
【0076】
以下の方法を、本実施例で使用される種々のPTT樹脂を調製するために使用した。
【0077】
(PTT−A)1,3−プロパンジオールとテレフタル酸とのチタン(IV)n−ブトキシド(100ppm)の存在下での連続重合からもたらされた、2.9±0.2×2.8±0.2×4.1±0.2mmの寸法、0.61dL/gの固有粘度、および2.5重量%のPTT環状ダイマー濃度を有し、ペレット1個当り33±2mgを有するPTT樹脂(15.0Kg)を、デュアルコーン回転式乾燥機(#36 Conaform回転乾燥機、Patterson Industries,Toccoa Georgia,USA)に投入した。この回転式乾燥機を、1.8mmHg(240Pa)の真空下および3.7L/分の窒素下において205℃まで36℃/時間の速度で加熱しながら、毎分6回転の速度で回転させた。乾燥機の温度を、14時間にわたり202±2℃で保持した。この乾燥機を、ペレット温度が37℃に到達するまで真空下で冷却し;この真空を窒素で破壊し、正の窒素圧下で反応器を空にした。乾燥機を40℃/時間の速度で冷却して、0.88dL/gの固有粘度(IV);および約0.85重量%の環状ダイマー含有量を有するPTT−Aペレットを得た。
【0078】
(PTT−C)PTT−Cは、ドライブレンドされた、Sorona(登録商標)Bright PTT樹脂のペレット(IV 1.02dL/g、70部)とPTT−Aペレット(IV 0.88dL/g、30部)との、0.92dL/gのIVを有する混合物であった。
【0079】
(PTT−E)1,3−プロパンジオールとテレフタル酸とのチタン(IV)n−ブトキシド(100ppm)の存在下での連続重合からもたらされた、2.9±0.2×2.8±0.2×4.1±0.2mmの寸法、0.61dL/gの固有粘度、および2.5重量%のPTT環状ダイマー濃度を有し、ペレット1個当り33±2mgを有するPTT樹脂(15Kgのペレット)を、デュアルコーン回転式乾燥機(#36 Conaform回転乾燥機、シリアル#84−MX−0214。Patterson Industries(Toccoa Georgia USA)により1984年に構築された)に投入した。この回転式乾燥機を、1.8mmHg(240Pa)の真空下および3.7L/分の窒素下において205℃まで36℃/時間の速度で加熱しながら、毎分6回転の速度で回転させた。乾燥機の温度を、27時間にわたり202±2℃で保持した。この乾燥機を、ペレット温度が37℃に到達するまで真空下で冷却し;この真空を窒素で破壊し、正の窒素圧下で反応器を空にした。乾燥機を40℃/時間の速度で冷却して、0.976dL/gの固有粘度(IV)を有する固相重合ペレットを得た。
【0080】
(PTT−F)1,3−プロパンジオールとテレフタル酸ジメチルとのチタン(IV)n−ブトキシド(100ppm)の存在下での連続重合からもたらされた、2.9±0.2×2.8±0.2×4.1±0.2mmの寸法、0.76dL/gの固有粘度、および2.5重量%のPTT環状ダイマー濃度を有し、ペレット1個当り33±2mgを有するPTT樹脂(4680Kgのペレット)を、デュアルコーン回転式乾燥機(ABBE回転乾燥機、24型、Patterson,NJ,USA)に投入した。回転式乾燥機を、205℃まで12℃/時間の速度で加熱しながら、毎分4回転の速度で回転させた。この加熱は、真空(0.65mmHg)下で行われた。乾燥機の温度を、10時間にわたり207±2℃で保持した。この乾燥機を、ペレット温度が60℃に到達するまで真空下で冷却し;この真空を窒素で破壊し、正の窒素圧下で反応器を空にした。乾燥機は22℃/時間の速度で冷却した。環状ダイマー濃度を、冷却後に測定した。環状ダイマー濃度は0.88重量%であり、固有粘度(IV)は1.04dL/gであった。
【0081】
アイオノマー−B樹脂は、中和されたエチレン−メタクリル酸コポリマー(15重量%MAA、59mol%Na中和)である。
【0082】
NT−4は、E.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington,DE)から入手可能な、27重量%n−ブチルアクリレートを含む、エチレン/n−ブチルアクリレートコポリマーである。
【0083】
強化剤B−1は、E.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington,DE)から入手可能な、12のメルトインデックを有する、エチレン66.7重量%、n−ブチルアクリレート28重量%、およびグリシジルメタクリレート5.3重量%のターポリマーである。
【0084】
強化剤B−2は、E.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington,DE)から入手可能な、エチレン/マレイン酸モノエチルエステル(MAME)コポリマー(9.3%MAME)である。
【0085】
Irganox(登録商標)1010酸化防止剤は、Ciba Specialty Chemicals,Inc.(Tarrytown,NY)から入手可能である。
【0086】
Loxiol PTS HOB7119は、Cognisから入手可能なペンタエリトリトールテトラステアレートである。
【0087】
方法
試料調製および物理試験
実施例および比較例の組成物を、4mmのISO万能試験片に成形した。この試験片を用いて、成形したまま乾燥させた23℃の試料について、機械的性質を測定した。以下の試験手順が使用された試験手順であり、その結果を表1〜4に示す。
引張り強さおよび破断点伸び:ISO 527−1/2
ノッチ付きアイゾッド衝撃:ISO 180−1A
【0088】
プレッシャクッカ試験
さらに、試験片を、オートクレーブにおいて、121℃、2atm、および相対湿度100%で、30時間にわたって状態調整した。機械的性質を、状態調整された試験片について測定し、その結果を、状態調整されていない試験片の性質と比較した。状態調整された試験片の機械的性質および物性の残率パーセントを、表1〜3に示す。より高い物性の残率は、より良好な加水分解耐性を示している。
【0089】
固有粘度
PTT樹脂の固有粘度(IV)は、ASTM D 5225−92に基づく自動化方法に従って19℃にて0.4グラム/dLの濃度で50/50重量%トリフルオロ酢酸/塩化メチレン中に溶解させたポリマーについてViscotek Forced Flow Viscometer Y−501(Viscotek Corporation,Houston,Tex.)で測定された粘度を用いて決定した。次いで、この測定された粘度を、ASTM D 4603−96によって測定されるとおり、60/40重量%フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン中での標準粘度と相関させて、報告される固有値に到達した。
【0090】
NMRによる環状ダイマー含有量の測定
4個〜6個のPTTペレットを、260℃で溶融プレスし、5分間溶融し、続いて、溶解し易いようにポリマーの表面積を増加させるために、10,000lbの圧力までプレスして、薄いフィルム(厚さ0.14mm)を作った。ポリマー(15mg)のプレスフィルムを、CDCl3/TFA−d(5:1、1mL)混合物に加え、溶解させた。この溶液を5mmのNMRチューブに移し、試料調製後1時間以内に分析した。プロトン/フッ素/カーボンプローブを備えたVarian INOVA 500MHz NMRで、16秒の遅延時間を用い、30℃にて64回の走査を行った。得られたスペクトルを、テレフタレート領域(8.1ppm)および環状ダイマー領域(7.65ppm)において積分した。環状ダイマーの重量パーセントは、環状ダイマー領域の積分値を、環状ダイマー領域の積分値とテレフタレート領域の積分値との和で除した値に100を乗じることによって計算される。
【0091】
示差走査熱分析(DSC)
「標準モード」で動作する示差走査熱分析計TA Instruments Q1000 MDSC(変調DSC)を使用して、熱可塑性樹脂組成物のメルトクエンチ試料における再結晶ピークを測定した。10〜12mgの組成物試料をアルミニウムDSC皿に量り入れ、この試料をDSC中で窒素雰囲気下において10分間にわたり270℃まで加熱して、平衡状態の溶融試料を得た。この溶融試料をDSCから取り出し、液体窒素中にその試料を浸漬することによって急速クエンチした(quick quenched)。このメルトクエンチ試料を、DSC中で窒素雰囲気下において0℃で平衡させた後、熱事象を記録しながら、10℃/分の走査速度で270℃まで加熱し;270℃で3分間恒温保持し、そして10℃/分の走査速度で30℃まで冷却した。再結晶ピークは、加熱サイクルにおいて示された第1の発熱ピークであり、約65〜75℃にてピーク高さの最大値を有する。再結晶ピークのエンタルピーは、ジュール毎グラム(J/g)単位で測定した。
【0092】
比較例C−1〜C−5
比較例C−1〜C5は、PTTおよびアイオノマーとの組み合わせにおいて反応性強化剤が及ぼす影響を例証している。
【0093】
比較例1〜5について表1に列挙された成分を合わせ、ZSK 30mm二軸スクリュー押出機の後方に供給し、約260℃の溶融温度を用いて溶融混合して、溶融ブレンド組成物を得た。押出機から出る際に、この組成物にダイを通過させてストランドを形成し、このストランドをクエンチ槽において冷却固化し、続いて細断してペレットを形成した。
【0094】
これらの組成物を試験体に成形し、上に概説した方法に従って試験した。
【0095】
比較例C−1は、アイオノマーBを含有するPTT組成物であり、小さい再結晶発熱ピーク(2.5J/g)を有するが、望ましくなく低いノッチ付きアイゾッド衝撃、および30時間のプレッシャクッカ試験下での低いTSの残率%(55%)を有していた。
【0096】
比較例2〜5は、反応性強化剤である強化剤B−1および/または強化剤B−2が、アイオノマーBを含むPTT組成物と溶融ブレンドされる一段法を実証するものであり、この反応性強化剤は、全ての他の成分と共に押出機の後方に供給された。反応性強化剤の添加は、ノッチ付きアイゾッド衝撃の向上、およびC−1コントロールより高い30時間のプレッシャクッカ試験下でのTSの残率%をもたらした。しかしながら、6.8〜26.2J/gにわたる再結晶ピーク発熱量は、C−1コントロールより著しく高かった。
【0097】
【表1】

【0098】
実施例1〜5および比較例C−6
実施例1〜5は、反応性強化剤をPTTおよびアイオノマーと溶融ブレンドする際に二段溶融ブレンド法が使用される場合の影響を例証している。
【0099】
実施例1〜5およびC−6について表2に列挙された後方供給成分を合わせ、ZSK 30mm二軸スクリュー押出機の後方に供給し、約260℃の溶融温度を用いて溶融混合して、溶融ブレンド組成物を得た。実施例1〜5について表2に列挙されたグループB強化剤を含む側方供給成分を合わせ、押出機(バレルNo.6)の側方に供給して、第2の溶融ブレンドを得た。押出機から出る際に、この第2の溶融ブレンドにダイを通過させてストランドを形成し、このストランドをクエンチ槽において冷却固化し、続いて細断してペレットを形成した。
【0100】
これらの組成物を試験体に成形し、上に概説した方法に従って試験した。
【0101】
【表2】

【0102】
実施例1〜5は、二段溶融ブレンド法が使用される場合において、グループB強化剤の添加が、ノッチ付きアイゾッド衝撃の向上、およびC−6コントロールより高い30時間のプレッシャクッカ試験下でのTSの残率%をもたらしたことを示している。しかしながら、驚くべきことに、そして予想外なことに、実施例1〜5についての再結晶ピーク発熱量は、2.5〜2.8J/gにわたるものであり、グループB強化剤を有さないC−6コントロールに匹敵し;その再結晶ピーク発熱量は、ポリマー強化剤が後方供給された表1中の類似の組成物よりもはるかに小さかった。
【0103】
実施例6および比較例C−7
実施例6および7ならびに比較例C−7は、グループB強化剤をPTTおよびアイオノマーと溶融ブレンドする際に二段溶融ブレンド法が使用される影響を例証するものであり、第1の溶融ブレンドは4と約14との間のACF値を有しており;この第1の溶融ブレンドを、冷却し、ペレット化して、マスターバッチ1(MB−1)の形態でマスターバッチ(MB)を形成する。
【0104】
比較例C−7
比較例C−7において、表3に列挙された全ての成分を、ZSK 30mm二軸スクリュー押出機の後方に供給し、約260℃の溶融温度で溶融ブレンドして、溶融ブレンド組成物を得た。この組成物は、望ましくなく高い、26.2J/gの再結晶ピーク発熱量を示した。
【0105】
実施例6
表3に列挙されたMB−1の成分を、ZSK 30mm二軸スクリュー押出機の後方に供給し、約260℃の溶融温度で溶融ブレンドして、溶融ブレンド組成物を得た。この溶融ブレンドを押出してストランドにし、ペレット化して、5.74のACF値を有するMB−1を得た。
【0106】
MB−1ペレットおよび表3に列挙されたポリマー強化剤を、ZSK 30mm二軸スクリュー押出機の後方に供給し、約260℃の溶融温度で溶融ブレンドして、第2の溶融ブレンド組成物を得、これを押出してストランドにし、ペレット化した。この第2の溶融ブレンド組成物は、比較例C−7と同じ成分を有していた。しかしながら、実施例6は、C−7についての26.2J/gに対し、1.8J/gの再結晶発熱量を示した。これは、二段溶融ブレンド法が、同じ成分を用いた一段溶融ブレンド法とは著しく異なる特性を有する製品をもたらし得ることを証明している。
【0107】
実施例7
実施例7は、4〜約14の好ましいACF範囲より著しく高いACF値(52.2)を有する第2のマスターバッチ(MB−2)の使用を例示するものである。
【0108】
表3に列挙されたMB−2の成分を、ZSK 40mm二軸スクリュー押出機の後方に供給し、約260℃の溶融温度で溶融ブレンドして、溶融ブレンド組成物を得た。この溶融ブレンドを押出してストランドにし、ペレット化して、約10重量%のアイオノマー−Bを有するMB−2を得た。MB−2は、52.2のACF値を有していた。
【0109】
MB−2ペレット、PTT、および表3に列挙されたポリマー強化剤を、ZSK 40mm二軸スクリュー押出機の後方に供給し、約260℃の溶融温度で溶融ブレンドして、第2の溶融ブレンド組成物を得、これを押出してストランドにし、ペレット化した。この第2の溶融ブレンド組成物は、より少ない熱安定剤および滑剤が存在したということを除いて実施例6とほぼ同じ成分を有していた。実施例6(5.59)および実施例7(5.22)の最終ACF値は類似していたが、実施例7は、実施例6についての1.8J/gと比較して、6.9J/gという著しく大きい再結晶発熱量を示した。これは、二段溶融ブレンド法において、第1の溶融ブレンドには、約4〜14であると考えられる、好ましいACF値の範囲があるということを証明している。
【0110】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)
(a−1)ポリ(トリメチレンテレフタレート)ホモポリマーまたはコポリマー樹脂;
(a−2)0.1〜4重量%の1種以上のアイオノマーポリマーまたは1種以上のアイオノマーポリマーと酸コポリマーとの組み合わせ;ならびに
(a−3)任意選択で、0.1〜20重量パーセントの、前記(a−1)以外の熱可塑性ポリマー、滑剤、流れ調整剤、可塑剤、熱安定剤、酸化防止剤、染料、顔料、およびUV安定剤からなる群より選択される1種以上の有機添加剤
を含む第1の成分を溶融ブレンドして第1の溶融ブレンドを供給する工程であって、(a−2)および(a−3)の前記重量パーセントは、(a−1)、(a−2)および(a−3)の総重量に基づいている、工程と、
(B)
b−1)約0.5〜約5重量パーセントの、式E/X/Yのエチレンコポリマーからなる群より選択される1種以上のグループBポリマー強化剤
[式中:
Eは、エチレンから形成されるラジカルであり;
Xは、
CH2=CH(R1)−C(O)−OR2
(ここで、R1は、H、CH3またはC25であり、R2は、1個〜8個の炭素原子を有するアルキル基である);
酢酸ビニル;およびそれらの混合物から形成される基からなる群より選択され;
Xは、E/X/Yコポリマーの0〜50重量%を構成し;
Yは、一酸化炭素、二酸化硫黄、アクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイン酸ジエステル、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、イタコン酸、フマル酸、フマル酸モノエステルおよび以上の各酸の塩、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ならびにグリシジルビニルエーテルからなる群より選択されるモノマーから形成される1種以上の基であり:Yは、前記E/X/Yコポリマーの0.5〜35重量%であり、そしてEは、残りの重量パーセントであり、前記E/X/Yコポリマーの40〜90重量パーセントを構成するものであるが;但し、Yは、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、イタコン酸、フマル酸、フマル酸モノエステル、以上の各酸の塩、ならびにグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、およびグリシジルビニルエーテルからなる群より選択されるモノマーから形成される基を少なくとも1つ含まなければならない];
b−2)任意選択で、ポリ(トリメチレンテレフタレート)ホモポリマーまたはコポリマー樹脂、アイオノマーポリマーおよび酸コポリマーの群から選択される1種以上の樹脂;
b−3)任意選択で、前記(a−1)以外の熱可塑性ポリマー、滑剤、流れ調整剤、可塑剤、熱安定剤、酸化防止剤、染料、顔料、およびUV安定剤からなる群より選択される1種以上の有機添加剤
を含む第2の成分と、前記第1の溶融ブレンドとを溶融ブレンドして第2の溶融ブレンドを供給する工程であって、(b−1)の前記重量パーセントは、(a−1)、(a−2)、(a−3)、(b−1)、(b−2)、および(b−3)の総重量に基づいている、工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記第1の溶融ブレンドにおいて、前記1種以上のアイオノマーポリマーまたは1種以上のアイオノマーポリマーと酸コポリマーとの組み合わせは、C3〜C8カルボン酸反復単位を有しており、各アイオノマーおよび酸コポリマーは:
成分(a−1)、(a−2)および(a−3)の重量に基づく重量パーセントW;
各アイオノマーポリマーまたは酸コポリマーの重量に基づくC3〜C8カルボン酸反復単位の重量分率Z;ならびに
0〜1.0の任意の値に等しい中和率N
を有しており、
前記中和率Nは、前記アイオノマーおよび酸コポリマー中の全カルボン酸反復単位に基づくアルカリ金属塩として中和された前記カルボン酸反復単位のモル分率であり;そして前記第1の溶融ブレンドは、4〜約14のアルカリカルボン酸塩ファクターACFを有しており;前記ACFは、式:
ACF=Σa-i[(W・Z・N)a-i(W・N)a-i・100/Σa-i(W)a-i
によって定義されるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の成分を溶融ブレンドする工程はグループBポリマー強化剤を含まないことを条件とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の溶融ブレンドが、メルトクエンチした試料から10℃/分の走査速度で示差走査熱分析により測定される場合に5J/g未満の再結晶ピークを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリ(トリメチレンテレフタレート)ホモポリマーまたはコポリマーが、ポリ(トリメチレンテレフタレート)反復単位および末端基を含み、前記ポリ(トリメチレンテレフタレートホモポリマーまたはコポリマーは、核磁気共鳴分析により測定される場合に、前記ポリ(トリメチレンテレフタレート)反復単位および環状ダイマーの重量に基づき1.1重量%以下の環状ダイマー含有量を有しており;そして前記ポリ(トリメチレンテレフタレート)ホモポリマーまたはコポリマーは、0.80〜約2.00dL/gの固有粘度を有している、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記1種以上のアイオノマーポリマーが、エチレン/メタクリル酸コポリマーの重量に基づき約5〜25重量%のメタクリル酸反復単位を有するエチレン/メタクリル酸コポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記1種以上のグループBポリマー強化剤が、Yがグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、およびグリシジルビニルエーテルを含む、前記式E/X/Yのエチレンコポリマーからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
請求項1に記載の第2の溶融ブレンドを含む成形品。

【図1】
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【公表番号】特表2013−509494(P2013−509494A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537937(P2012−537937)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/055094
【国際公開番号】WO2011/053966
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】