説明

強化織物及び強化織物の製造方法

【課題】従来公知の経木シートから作られた織物に比べて摩擦力に新規な織物の開発
【解決手段】 木材を薄くスライスし、かつウレタン樹脂を含浸させた経木シートから成る素材を裁断して厚さ0.2mm以下、好ましくは0.1mm以下、幅2mm以下、好ましくは1mm以下の糸状体を形成し、該糸状体を経糸または緯糸としてそして通常の糸を緯糸又は経糸として織物を形成し、その織物に再度ウレタン樹脂を含侵させ、得たシートを熱プレスした経木シートから作られた強化織物。

【発明の詳細な説明】
【産業上の利用分野】
【0001】
本発明は、木製の糸状体を利用した強化織物及びその強化織物の製造方法に関し、その強化織物は、車のシートカバー、財布、バック、壁のクロス、椅子のシートカバー等に使用できる。
【発明が解決すべき課題】
【0002】
木材を薄くスライスし、かつウレタン樹脂を含浸させた経木シートから成る素材を裁断して厚さ0.2mm以下、幅2mm以下の糸状体を形成し、該糸状体を経糸または緯糸としてそして通常の糸を緯糸又は経糸として織物は、公知であった(実公平6-40600号公報参照)。しかしながら、従来公知の織物は、それなりに多方面に使用されているが、特に摩擦に弱いという欠点があった。
【特許文献1】実公平6−40600号公報
【課題を解決すべき手段】
【0003】
本発明は、従来公知の織物の強度を強化した織物及びそれの製造方法に関する。すなわち、本発明は、 木材を薄くスライスし、かつウレタン樹脂を含浸させた経木シートから成る素材を裁断して厚さ0.2mm以下、好ましくは0.1mm以下、幅2mm以下、好ましくは1mm以下の糸状体を形成し、該糸状体を経糸または緯糸としてそして通常の糸を緯糸又は経糸として織物を形成し、その織物に再度ウレタン樹脂を含侵させ、得たシートを熱プレスした強化織物に関する。
【0004】
本発明は、又
(a)木材を薄くスライスして経木シートを形成し、
(b)その経木シートをウレタン樹脂液に浸漬してその経木シートにウレタン樹脂を含浸させ,
(c)ウレタン樹脂含侵経木シートを裁断して厚さ0.2mm以下、好ましく0.1mm以下、幅2mm以下、好ましく1mm以下の糸状体を形成し、
(d)該糸状体を経糸または緯糸としてそして通常の糸を緯糸又は経糸として織物を形成し、
(e)その織物を再度ウレタン樹脂液に浸漬してその織物にウレタン樹脂含侵させ、そして
(f)得たシートを熱プレスする
の各工程を含む強化織物の製造方法にも関する。
【0005】
前記目的を達する本発明は、木材を薄くスライスし、かつウレタン樹脂2を含浸させた経木シート1から成る素材Aを裁断して厚さ0.2mm以下、幅2mm以下、好ましくは厚さ0.1mm以下、幅1mm以下の糸状体3を形成し、該糸状体3を経糸または緯糸としてそして通常の糸を緯糸又は経糸5として180度折曲げ自由な織物を形成する。
【0006】
経木シート1の材料としてはアカマツ、エゾマツ、シナノキ、モミ及びキリのほか、ブナ、カラマツ、ホオ、ケヤキその他が用いられる。これらは経木又は合板の材料でもある。木製経木シートをそのまま使用することにより木材の木肌、木目を生かした独特の味わいを利用することができる。経木シートの厚さは0.2mm以下、好ましくは0.1mm以下、より好ましくは0.03〜0.06mmが良く、幅は2mm以下、好ましくは1mm以下、さらに0.4mm程度までが良い。また着色糸状体とするにはウレタン樹脂含浸前に染色すると良く、樹脂系の顔料を使用すれば互いにまざり合いが美しく染色できる。
【0007】
本発明における、その経木シート1へのウレタン樹脂の含侵は、どのようなウレタン樹脂でも使用できる。特に繊維加工用ポリウレタンディスパージョンが好適である。その樹脂液に経木シートを浸漬し乾燥させるか或いは、ぬれている状態のままバックシートとしてのバックシートをウレタン樹脂接着剤で接着させることにより木を柔軟化させ、折り鶴の様な折曲げの多いものでも容易に作成可能な程の柔軟性が生じ、強靭な皮膜は黄変せず、熱に強く−40度〜200度の範囲で実用性があり、水に膨潤し難い経木シートを形成する。このようにすることにより桐の木のようなものでも桐の木目をそのままでくずすことなく折曲げることができ、また経木シートを重層したものでも割れを生じさせずに折曲げることができた。尚浸漬時間は経木シートの厚さで変るが、1分間以上が良い。
【0008】
ウレタン樹脂2は前述の経木シート1に含浸させた場合その木肌を自然に残すことができ、木製経木シート1に柔軟性を与えることができる。また難燃性であり、水蒸気と気体の透過性が極めて小さい特徴を利用することができ、しかもコンパウンドの配合範囲も広くかつ安価であり、しかも取扱いが容易で皮膚障害がない。
【0009】
木材を薄くスライスし、かつウレタン樹脂を含浸させた経木シートから成る素材を裁断して糸状体を形成し、該糸状体を経糸または緯糸としてそして通常の糸を緯糸又は経糸として織った織物を再度ウレタン樹脂で含侵は、経木シートの含侵と同じような方法で行う。
【0010】
次いでウレタン樹脂を含侵した織物のプレスは、プレス版の温度120℃以上、6.0〜9.0Kg/cm2の圧力で行われるのが好ましい。
得られた織物にバックシートを貼着しても良い。使用するバックシートは,強度向上の目的で使用されるが素材寸法を拡大したり、重層材形成のためにも使用でき、いずれの場合もウレタン樹脂は固着乃至接着手段として利用することとなり、抗張力,伸度,硬度等優れた諸物性が活用される。また、防災加工剤(例えばピロガードF800.10%,商品名)を同時に使用することもある。接着の相手であるバックシートとして例えばポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、セロファン生布、紙、木の葉その他の板状、織布、不織布シート状或いはフィルム状のもの、又はシート状自体が使用できる。しかしながら、バックシートとして、織布及び不織布が好ましい。
【実施例】
【0011】
実施例1
厚さ0.05mmのブナ製経木より成る経木シート1をウレタン樹脂2であるエラストロンDP−200(第1工業製薬(株)製)の80%溶液に10分間浸漬して素材Aを形成し引上げ、ウレタン樹脂含侵経木シートを形成した。次にこれを幅0.5mmに裁断して糸状体3を形成し、この糸状体3を緯糸としてジャカード織機により織りこみ、第5図に例示したような組織の織物を製造した。5は経糸であり、かけ方は織物組織により異なる。
次いで、得られた織物を上記のようにしてウレタン樹脂で含侵した。その後予備乾燥室温で15時間そして本乾燥120℃で20分間行った。次いで120℃の温度及び7.7Kg/cm2圧力でプレスを行い、強化織物を得た。
実施例2
厚さ0.1mmのブナ製経木より成る経木シート1をウレタン樹脂2であるスーパーフレックス300(第1工業製薬(株)製)の100%溶液に1時間間浸漬して素材Aを形成し引上げ、ウレタン樹脂含侵経木シートを形成した。次にこれを幅0.6mmに裁断して糸状体3を形成し、この糸状体3を緯糸としてジャカード織機により織りこみ、第5図に例示したような組織の織物を製造した。5は経糸であり、かけ方は織物組織により異なる。
次いで、得られた織物を上記のようにしてウレタン樹脂20%溶液で含侵した。その後予備乾燥室温で15時間そして本乾燥120℃で20分間行った。次いで120℃の温度及び7.7Kg/cm2圧力でプレスを行い、強化織物を得た。
その結果は、下記の表1に示す。
【0012】
【表1】

【0013】
引き裂き強さは、JISL−1096 6.15.A.1で行った。
引張り強さは、JIS−L−1096 6.12.1Aで行った。
摩擦強さは、JIS L−0849で行った。
【発明の開示】
【発明の効果】
【0014】
本発明の織物は木材を処理加工、細断した糸状体3を緯糸または経糸に使用するので、木材の生地を活かした織物が編成され、糸状体3はウレタン樹脂を含浸させているため木質が柔軟化しかつ強靭なものとなる。よって、例えば180度折曲げても折損したり割れたり裂けたりする虞れがなく、単なる表面塗装と異なり経木シート中に完全にウレタン樹脂2が含浸しているから事後剥離することがなく、表面の美しさも長期間保たれ、また製品は少なくとも経糸または緯糸の一方は水に強く虫食いの虞もない糸状体3によって形成されており、染色も可能であってしかも木の肌合いをもった強靭な織布が得られる。さらに、本発明では、織物を形成した後、再度ウレタン樹脂で含侵し、プレス加工を行うものである。そのため、摩擦強さが非常に増加する。そのために本発明の強化織物は、自動車のシートカバー、椅子の表面カバーに使用できる。その外に帯、財布、ハンドバックその他の身装、見回り品、カーテン、テーブルクロス、或いは衣類等の材料として使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】糸状体を裁断した状態の斜視図
【図2】糸状体の断面図
【図3】糸状体の断面図
【図4】糸状体の断面図
【図5】織物の正面拡大図
【符号の説明】
【0016】
1……経木シート、2……ウレタン樹脂、3……糸状体、4……シートまたはフィルム、A、A'、A''……素材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材を薄くスライスし、かつウレタン樹脂を含浸させた経木シートから成る素材を裁断して厚さ0.2mm以下、幅2mm以下の糸状体を形成し、該糸状体を経糸または緯糸としてそして通常の糸を緯糸又は経糸として織物を形成し、その織物に再度ウレタン樹脂を含侵させ、得たシートを熱プレスした強化織物。
【請求項2】
糸状体は、0.1mm以下の厚さ及び1mm以下の幅を有する請求項1記載の織物。
【請求項3】
(a)木材を薄くスライスして経木シートを形成し、
(b)その経木シートをウレタン樹脂液に浸漬してその経木シートにウレタン樹脂を含浸させ,
(c)ウレタン樹脂含侵経木シートを裁断して厚さ0.2mm以下、幅2mm以下の糸状体を形成し、
(d)該糸状体を経糸または緯糸としてそして通常の糸を緯糸又は経糸として織物を形成し、
(e)その織物を再度ウレタン樹脂液に浸漬してその織物にウレタン樹脂含侵させ、
そして
(f)得たシートを熱プレスする
の各工程を含む強化織物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−9160(P2006−9160A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−183344(P2004−183344)
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【出願人】(504240887)
【Fターム(参考)】