説明

弾性のあるシールリングを有するねじ接合部

ねじ接合部はピンとボックスの間に間挿され、該ボックス(3)のねじセクション(5)の端部とノーズ(15)の間の溝(18)内に配置された、シールリング(6)を具備する。該シールリング(6)は、第1ベース(8)と、該第1ベースと軸線方向で相対する第2ベース(9)と、外面上の少なくとも2つの突出する環状リブ(11,12)と、そして、無負荷位置で、該シールリングの中央の方へテーパー付けされ、フィレット(10)により接合された2つの円錐台型環状面(19,20)を有する内面と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はねじ接合部に関し、特に、炭化水素産業で使われ、オーシーテージー(OCTG)(産油地チューブ品)の分野及び海底採掘適用設備のラインパイプで使われる掘削パイプを作るために予め規定された長さのチューブを連結するねじ接合部に関する。
【背景技術】
【0002】
石油、もっと一般的には炭化水素の探索は近年ハードウエア及びデバイスの関連で益々厳しくなっており、それは油田及びガス田又はリザーバーが地表下でより深く、又は海底下の到達し難い場所に、位置しているからである。炭化水素産地の期待と開発は、過去には余り重要でなかった高負荷及び腐食の様な環境的挑戦にもっと耐えるハードウエアを要求している。
【0003】
近代的接合部は一般に、通常、接合部の一端又は両端のねじ部分の、適当な応力の大きさのための弾性係数の弾性範囲で干渉する、2面間の接触によって作られる金属対金属のシールを用いて設計される。しかしながら、特定の状況では、ねじの隙間内への外部流体の侵入を防止するために、金属シールの代わり、又は金属シールと組み合わせた弾性シールが必要となる。
【0004】
従って、腐食速度を減ずるために、接合部シールが外部流体の侵入に抵抗すること、又は少なくとも、既に侵入した流体の周囲流体との連続した交換をさせないことが設計要求である。
【0005】
述べられた問題を解決するために、種々の解決策が提供されており、この解決策の1つはねじ部分の近くの接合部端部へのポリマー材料製のシールリング、例えばO−リングの挿入から成っている。
【0006】
ボックス上に予め設置されたO−リングを使うことは普及した慣行であるが、この慣行は、リングの設置時及び/又は組み込み時にシールリングが破損され得ると云う、重要な欠点を有する。
【0007】
これらO−リングがボックス上に予め設置されているので、ボックスの組み立て時に、シールがピンのねじ部分の上をボックスと一緒に引きずられる。ねじプロフアイル、ピッチ、テーパー角、スタブ角、他の様々な結合の幾何学的パラメーターと一緒に、シールが適切に働くようにピン、ボックス及びシールの寸法間に必要とされる直径方向の締め代のために、シールは不可避的にピンのねじ部上を這わされ、後で動作時のシール効率を危うくするシールの下面の損傷或いは永久変形を受ける。
【0008】
効率を高め、海水が接合部のギャップ内に侵入することを防止するために、より複雑な形状を有するシールリング、例えば“H”又は“U”型断面を有するリングが提案されて来た。しかしながら、この様なシールリングは、最初の組み入れ操作と動作寿命中の両面で余りの応力及び不利な環境条件とに供されるので、これらシーリングの効率はある時間後は遙かに減じられる。例え、ピン上への予めの設置がシールリングにとって余り有害でなくても、ボックス上に予め設置されねばならない或る現地応用品はもっと簡単なシールリングを要求する。
【0009】
特許文献1は、排水型シールを有するねじ接合部を開示するが、該シールは、結合部の各端部のねじ無し範囲と、チューブ状部分の各端部に隣接するねじ無し円柱状範囲と、の
間に半径方向シールを形成するために、結合部の各端部の近くの溝内に位置付けられた圧力エネルギー付与型エラストマーシールである。
【0010】
該リング部分の形状は組み入れ時のねじ部分の上の引きずりを容易化しない。この形状のために、シャープなコーナーはねじ頂上部を打ち、ねじ内にくっつく傾向がある。接合部の解体の場合は、シールリングを一層破損し易い。
【0011】
破損した場合、先端を失ったねじを有するピンの部分は、起こり得る外部腐食性流体に対し無防備になり、接合部を潤滑するために使われるドープが容易に洗い落されてしまう。
【0012】
この接合部は市場で入手可能な標準シールリングを使う。従って、異なる接続部に同じリング設計が使われねばならず、各ピンテーパー、スタブ角、ねじ高さ及びピッチ等のためにリング形状の専用化をもたらしていない。
【0013】
リップ間のキャビテイはハウジングを壊れやすくし、ハウジングの下部部分がピンのねじ上を引きずられる結合部の解体時に破裂させ勝ちであり、ねじを破壊する大きな変形を引き起こす。
【0014】
ボックスのノーズの近傍に収容されるシールリングのための改良された構成を設計する多くの企てが行われたが、全てが現在の接合部用に設定される高い要求に耐えるには不充分である。
【発明の概要】
【0015】
従って、本発明の目的は前記欠点を克服するねじ接合部を提供することである。
【0016】
本発明の主要な目的は、簡単で信頼性のある初期組み入れ及び動作時の高いシール効率の両者を保証する革新的なシールリングを有する接合部を提供することである。
【0017】
上記目的は、ピンとして規定される雄ねじチューブ、ボックスとして規定される雌ねじチューブ及びピンとボックスの間に間挿されるシールリングを具備し、該ピンが該ボックス内に組み入れられるように構成され、シールリングがねじ部分の端部とボックスのノーズとの間のボックスの表面の部分上に配置され、そして外面を介して該ボックスの内面と緊密にシール接触し、内面を介して該ピンの外面と緊密にシール接触をしており、該シールリングが第1ベースと、該第1ベースと軸線方向で相対する第2ベースと、該外面上の少なくとも2つの突出する環状リブとを備え、前記シールリングの該内面が、無負荷位置で該シールリングの中央の方へテーパーが付けられ、かつフイレットにより接合された2つの円錐台形環状面を有するねじ接合部による本発明により達成される。
【0018】
新規設計のシールリングを有する本発明の接合部は該シールリングの再利用性を保証するか、又は少なくともスペアのO−リングが入手可能でない場合により高い信頼性を有する。対照的に、解体後大抵の、円形断面を有する公知のO−リングを組み入れた従来技術のねじ接合部は元のO−リングを破損しており、新しい組み入れ操作用に新シールリングが使われねばならず、何故ならば該元のものは最初の組み入れと解体の両作業により破損されるからである。
【0019】
本発明の利点は、信頼性が重要で、時間と課題の関連の操作コストの低減が望ましい、真の現地操作条件で信頼性のあるねじ接合部を提供することである。
【0020】
ねじ接合部のシールリング用ハウジングは該シールリングの形状と最良の仕方でマッチ
するように構成され、その逆も然りであり、そこでは該シールリングは組み入れの時及びその後の何れに於いてもハウジングと共働して動作する。
【0021】
本発明の溝は作り易く、円形断面の標準的O−リングを収容する現在使われている溝形状よりも作るのに複雑であったり、或いは高価であったりしないので、この共働の作用がコストを上げることなく得られることは有利である。加えて、該シールリングと組み合わされる該ハウジングの断面の簡単な形状は、円形断面のO−リング用の溝の寸法に比較して溝の全体寸法を減ずるもので、これは該円形断面の直径が該溝の深さを決めるからである。従来技術の接合部に設置される2つの標準的O−リングを表す図1に示され、説明される様に、組み入れ時にピンのねじの2つの隣合う頂上間にくっつくのを避けるのに大きい径のO−リングが好ましいので、これはより深い溝(その右の例)の加工を要し、壁厚さw’を要する小径のO−リング(左の例)と比較して、接合部壁強度のみならず、その部分のボックスの壁厚さwも著しく減じられる。
【0022】
腐食性の外部因子による接触に曝されそうな該接合部の先端を除かれたねじ領域に近いピンの加工された表面の保護のために該シールリングに含まれる表面にはコーティングが付けられ得るのが有利である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
上記及び他の目的は下記の詳細な説明及び付置図面を参照することにより更に容易に明らかになるであろう。
【図1】従来技術のO−リングを有するねじ接合部の詳細の拡大図を示す。
【図1A】メークアップ前の本発明の接合部の軸線方向平面上の断面図を示す。
【図2】メークアップ後の本発明の接合部の長手軸線方向平面上の断面図を示す。
【図3】図1Aの接合部のシールリングのその無負荷位置に於ける断面図を示す。
【実施例1】
【0024】
特に、図1Aから図3を参照すると、公称外径Dを有し普通ピン2と呼ばれる雄のチューブと、Dに等しいかそれより大きい外径D1の、ボックス3とも呼ばれる雌のチューブと、の2本のチューブを連結する参照数字1で全体的に指示されるねじ接合部が示されている。
【0025】
ピン2は適当な外形、例えば台形、の雄ねじを有するねじ部分4を備え、ボックス3は雌ねじを有する雌ねじ部分5を備える。ピン2及びボックス3の共通軸線はAで指示される。ボックスはノーズ15で終わっている。
【0026】
ねじ5の端部に近いボックス3の部分は、ボックスノーズ15とねじ端部の間の環状溝18を有する。この溝18はシールリング6のハウジングである。
【0027】
ボックス3のこのハウジング18内に配置された無負荷位置のリング6の断面を示す図3を特に参照すると、シールリング6は環状の溝13により分離された2つの環状リブ11,12を有する外面を備える。リブ11,12は、丸い又は何等かの他の適当な形状の頂上を有するのが好ましい。ハウジング18内に位置付けされた時、リング6の外側は溝13の底部に接触する。この底部は加工を容易にするため軸線方向に平坦であるのが好ましい。
【0028】
溝13とリブ11,12は2つの主な利点、すなわち、
1つの側面では溝13は、リング6の内面のより容易な圧搾を可能にすることに必要な半径方向変形を提供する空白部として作用し、
もう1つの側面ではリブ11,12が負荷集中をもたらし、これによりシール用の接触を増やし、二つの独立したシール用のバリヤとして作用する、ことをもたらす。
【0029】
シールリング6は相互に軸線方向に相対する2つのベース8,9を有する。1つの、又は両方のベース8,9は実質的に平坦であるが、平坦以外も排除しない。
【0030】
シールリング6の内面は軸線方向の断面で見た時、V字型である2つの円錐台面又は斜面19,20を有する。斜面19,20のテーパー角αは、ねじパラメーターすなわちテーパー、スタブ角、他の関数として規定される。テーパー角αの好ましい値は45°である。
【0031】
各斜面19,20のテーパーは又テーパー角α及びγ用に異なる値を有してもよい。この実施例は図3で特に示されている。
【0032】
ねじ接合部の更に特定的で有利な実施例では、シールリング6は特定寸法を有する断面を備える。
【0033】
軸線方向のシールリング6の厚さ“t”はねじ幅により規定され、シールリング6の厚さ“t”はねじの2つの頂上間のボイド“b”の軸線方向長さより長い。これは組み入れ時のシールリングの先端10による頂上の飛び越えを容易にする。
【0034】
ボックス3の溝18の半径方向の厚さ“d”は好ましくは3〜15mmの間にあるのがよい。溝18は半径方向のシールリング6の厚さの約75%を収容すべきである。
【0035】
斜面19及び20のテーパー角α及びγは、ねじ斜面のスタブ角β及び負荷角δで下記関係、すなわち
α>βで、かつ
γ>δ
が充たされる様な大きさを有する様に選ばれる。
【0036】
2つのテーパー付き円錐台面すなわち斜面19と20が出会うリングの先端10は断面で見る時にフィレットの様な丸い形状を有するのが好ましい。シールリング6は現在、現地で使われる従来のO−リングに優る簡単で、効果的な改良品である。主な利点はシールリング6の中央に向かってテーパー付けされ、これら斜面の間の先端又はフィレット10により接合されたその円錐台形の環状面すなわち斜面19,20であり、先端又はフィレットがねじ上でのシールリングの前進又は後退運動を容易化し、これによって損傷を避ける。更に、シールリング6の内面は負荷集中を生じ、このためにシール用接触を高め、組み入れ時のシールリングのシール能力を改良する。
【0037】
シールリングはエラストマー材料で作られてもよく、この材料は、この出願ではゴム、プラスチックス、ポリマー等の、弾性特性を有する天然又は合成材料を含むよう意図されている。
【0038】
ねじ接合部は、中を流体、例えば、天然ガス又は石油の様な炭化水素、又は他の同様な流体が流れる、ピン及びボックスの軸線Aを含む内部空間16と、或る応用品では海水の様な種々の流体と接触する外側空間17と、を規定する。
【0039】
リング6は接合部の外側で接合部1の重要な保護を提供するが、これはボックスの端部に配置され、従って、空間17を占める外部流体が接合部1のねじ帯域内に漏れることを防止するからである。
【0040】
有利な実施例では、異なる材料、すなわちシールリングのプラスチック材料より強い金属が好ましいが、この様な材料、の強化リング7が、シールリング6のボデイ内に、この強化リングを埋め込むことにより追加されてもよい。
【0041】
有利なことに、ピン及びボックスの両者の、シールリング6と接触している面にコーティングが付けられてもよい。
【0042】
本発明のねじ接合部は、上記の特徴により改良したシール能力と、組み入れ及び解体の破損に対する保護と、を提供する。
【0043】
本発明のねじ接合部は、特に海底採掘適用設備に於ける、石油及びガス産業用のオーシーテージー及びラインパイプ接続の分野で使われるのが好ましい。ねじ接合部は、ねじ部分が外部の水の浸透からなお保護されて留まる3500mまでの深さで使われてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピンとして規定される雄ねじチューブ(2)、ボックスとして規定される雌ねじチューブ(3)、該ピン及び該ボックスの間に間挿されるシールリング(6)を具備し、該ピンが該ボックス内に組み入れられるように構成され、該シールリングはねじ部分(5)の端部と該ボックス(3)のノーズ(15)との間の該ボックス(3)の表面の部分に配置され、そして外面(11,12,13)を介して該ボックス(3)の内面と緊密にシール接触し、内面(10,19,20)を介して該ピン(2)の外面と緊密にシール接触をしており、
該シールリング(6)は、
第1ベース(8)と、
該第1ベースと軸線方向に相対する第2ベース(9)と、
該外面上の少なくとも2つの突出する環状リブ(11,12)と、を備えており、
前記シールリング(6)の該内面が、無負荷位置で該シールリングの中央の方へテーパーが付けられ、かつフィレット(10)により接合された2つの円錐台形環状面(1
9,20)を有しているねじ接合部。
【請求項2】
前記円錐台形環状面(19,20)が等しい値のそれぞれのテーパー角を有する請求項1記載のねじ接合部。
【請求項3】
前記円錐台形環状面(19,20)が異なる値のそれぞれのテーパー角(α、γ)を有する請求項1記載のねじ接合部。
【請求項4】
前記円錐台形環状面(19,20)が下記関係を充たす値を有する角(α、γ)を備え、
α>βそして
γ>δ
ここでβはねじ斜面のスタブ角であり、δはねじ斜面の負荷角である請求項3記載のねじ接合部。
【請求項5】
該シールリングの軸線方向の厚さ“t”がねじの2つの頂上間のボイド“b”より大きい請求項3記載のねじ接合部。
【請求項6】
該シールリング(6)のボデイの内部に強化リング(7)が設けられる請求項1記載のねじ接合部。
【請求項7】
該シールリング(6)がエラストマー材料製である請求項1記載のねじ接合部。
【請求項8】
該第1ベース(8)が実質的に平面である請求項1乃至7の何れか1に記載のねじ接合部。
【請求項9】
該ピン及びボックスの両者の該シールリング(6)に接触し続ける面にコーティングが付けられる請求項1乃至8の何れか1に記載のねじ接合部。

【図1】
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【図1A】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−533827(P2010−533827A)
【公表日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516487(P2010−516487)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【国際出願番号】PCT/EP2008/059226
【国際公開番号】WO2009/010507
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(504415946)テナリス・コネクシヨンズ・アクチエンゲゼルシヤフト (15)
【Fターム(参考)】