説明

弾性体型成形装置及び方法

【課題】押型により平板材の素材を介して加圧された成形用弾性体の、圧縮に伴うはみ出し変形を押型方向(内方)に強制し、素材を曲げ成形するための反力を確保することのできる弾性体型成形装置及び方法を提供する。
【解決手段】平板材6を曲げ成形するプレス加工用の弾性体型成形装置であって、上下方向に移動する押型3と、前記押型3に対向する下方に配置され、凹状空間を有する拘束ブロック5と、前記拘束ブロック5の凹状空間内に収納され、上面に前記平板材6が載置される成形用弾性体4とを備え、前記拘束ブロックの凹状空間を形成する幅方向両側壁は、上方に向かうに従って狭くなるような傾斜面5Aを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性体型成形装置及び方法に係り、特に、プレス成形機により素材を曲げあるいは絞り成形し、複雑な曲げ形状品などを成形する弾性体型成形装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、押型と受け型の間に素材である板材を挟み込み、押圧し、成形する型曲げ成形技術において、U字型をしたブロック(リテーナ)の内部にゴム等の弾性体を配置収納し、弾性体の上に素材を搭載し、素材を金属等の剛体製の押型で押圧して弾性体の反力によって押型形状に成形するゴム型成形技術が知られている。
【0003】
弾性体の反力が素材の加工力となることから、例えば素材を大きく曲げ成形する場合や、複雑な形状に成形する場合には、大きな反力が必要となり、このために、押型に大きな押圧力を付与することが必要となる。押圧力の低減を図る目的で、弾性体とU字状ブロック(リテーナ)との間にロールバーを配置したものや、(例えば、非特許文献1参照。)、ゴム受け型の下に任意形状にできる駆動パンチ等を設けたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−117336号公報
【非特許文献1】福田,山口「多種少量生産におけるゴム工具の利用」塑性加工学会誌「塑性と加工」,日本塑性加工学会,1980年8月,第21巻,第235号,p.727−730
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、押型により押圧された素材と弾性体は、押圧力が弾性体に伝達され、弾性体の反力により素材が押型形状に倣わされて曲げ成形される。しかし、弾性体に伝達された押圧力は、U字状ブロック(リテーナ)の内壁との間で生じる摩擦力と、例えば、押型とリテーナの内壁との間隙等の非拘束空間へ弾性体をはみ出し変形させる力に吸収されてしまうため、素材を曲げ成形するための反力が低減するという課題がある。また、反力を確保するために、過剰な押圧力を加えると、弾性体のはみ出し変形が塑性変形域に到達してしまい、弾性体の形状が元に復元せず亀裂損傷してしまう怖れがある。
【0006】
本発明は、上述の事項に基づいてなされたもので、その目的は、押型により素材を介して加圧された成形用弾性体の、圧縮に伴うはみ出し変形を押型方向(内方)に強制し、素材を曲げ成形するための反力を確保することのできる弾性体型成形装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、第1の発明は、平板材を曲げ成形するプレス加工用の弾性体型成形装置であって、上下方向に移動する押型と、前記押型に対向する下方に配置され、凹状空間を有する拘束ブロックと、前記拘束ブロックの凹状空間内に収納され、上面に前記平板材が載置される成形用弾性体とを備え、前記拘束ブロックの凹状空間を形成する幅方向両側壁は、上方に向かうに従って狭くなるような傾斜面を有しているものとする。
【0008】
また、第2の発明は、平板材を曲げ成形するプレス加工用の弾性体型成形装置であって、上下方向に移動する押型と、前記押型に対向する下方に配置され、凹状空間を有する拘束ブロックと、前記拘束ブロックの凹状空間内に収納され、上面に前記平板材が載置される成形用弾性体と、前記成形用弾性体の幅方向の両側面にそれぞれ配置され、外側面に内方に向かう傾斜角度をもった傾斜面を有する変形拘束ブロックと、前記押型の幅方向の両側面にそれぞれ設けられ、前記拘束ブロックの内面に摺接する外側面と前記変形拘束ブロックの傾斜面に摺接する傾斜面とを有する傾斜ブロックとを備えたものとする。
【0009】
更に、第3の発明は、平板材を曲げ成形するプレス加工用の弾性体型成形装置であって、上下方向に移動する押型と、プレス成形時に前記押型の形状に前記平板材を押し付け、前記平板材を曲げ成形させるための成形用弾性体と、前記押型に対向する下方に、前記成形用弾性体の側面をそれぞれ拘束あるいは収納するために幅方向に傾動可能にそれぞれ配置した傾斜拘束ブロックと、前記傾斜拘束ブロックの底部からの前記成形用弾性体のはみ出しを抑制するために前記傾斜拘束ブロックの底部上面に搭載された抑制用敷板と、前記傾斜拘束ブロックを傾動して支持するための回転支持部と、前記傾斜拘束ブロックの底部側に設けられ、前記傾斜拘束ブロックの回転支持の反力を発生する傾斜拘束反力支持部とを備えたものとする。
【0010】
また、第4の発明は、平板材を曲げ成形するプレス加工用の弾性体型成形装置であって、上下方向に移動する押型と、上面に前記平板材が載置され、プレス成形時に前記押型の形状に前記平板材を押し付け、前記平板材を曲げ成形させるための成形用弾性体と、前記押型に対向する下方に、前記成形用弾性体の側面をそれぞれ拘束あるいは収納するために幅方向にそれぞれ配置した断面L字状の傾斜拘束ブロックと、前記傾斜拘束ブロックの底部からの前記成形用弾性体のはみ出しを抑制するために前記傾斜拘束ブロックの底部上面に搭載された抑制用敷板と、前記傾斜拘束ブロックを収納する凹状空間を有する支持ブロックと、前記傾斜拘束ブロックの垂直方向の下面と前記支持ブロックの底部上面との間に挿嵌された補助弾性体とを備え、前記傾斜拘束ブロックの幅方向側板の外側と支持ブロックの幅方向側板の内側とが、回動ピンにより幅方向に回動可能に軸支されているものとする。
【0011】
更に、第5の発明は、平板材を曲げ成形するプレス加工用の弾性体型成形装置であって、上下方向に移動する押型と、上面に前記平板材が載置され、プレス成形時に前記押型の形状に前記平板材を押し付け、前記平板材を曲げ成形させるための成形用弾性体と、前記押型に対向する下方に、前記成形用弾性体の側面をそれぞれ拘束あるいは収納するために幅方向にそれぞれ配置した断面L字状の傾斜拘束ブロックと、前記傾斜拘束ブロックの底部からの前記成形用弾性体のはみ出しを抑制するために前記傾斜拘束ブロックの底部上面に搭載された抑制用敷板と、前記傾斜拘束ブロックの幅方向の側面を支持する傾動支持部材と、前記傾斜拘束ブロックの垂直方向の下面を支持する安定支持部材と、前記傾斜拘束ブロック、前記傾動支持部材、及び前記安定支持部材を収納する凹状空間を有する支持ブロックとを備え、前記傾斜拘束ブロックの断面L字の外周凸部と、前記傾動支持部材の内壁を同じ曲線状に形成し、前記傾斜拘束ブロックを幅方向に回動可能とするように形成したものとする。
【0012】
また、第6の発明は、平板材を曲げ成形するプレス加工用の弾性体型成形方法であって、前記平板材を拘束ブロックの凹状空間内に収納された成形用弾性体の上面に位置決めして載置し、この平板材の幅方向中央部を押型により前記成形用弾性体に押し当てながら前記成形用弾性体に向かって押し込むことにより、前記成形用弾性体の一部を前記拘束ブロックの内壁と前記押型との隙間部分にはみ出すように変形させ、このはみ出し変形部の反力によって前記平板材の両端部を押型に密着させる方向に折り曲げるものとする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の弾性体型成形装置及び方法によれば、素材の圧縮に際して、成形用弾性体の両側部を拘束ブロックの内側面に沿ってはみ出し変形可能にしたので、素材を介して加圧された成形用弾性体の圧縮に伴うはみ出し変形を押型方向(内方)に強制することができる。この結果、素材を曲げ成形するための反力を確保することができ、素材の曲げ成形高さの拡大と曲げ精度の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の弾性体型成形装置の第1の実施の形態を備えたプレスブレーキを一部断面にて示す側面図である。
【図2】本発明の弾性体型成形装置の第1の実施の形態による加工方法を拡大して示す側面図である。
【図3】本発明の弾性体型成形装置によって曲げ成形した素材の形状を示す断面図であって、2点鎖線は、従来のゴム型成形装置によって成形した素材を示し、実線は、本発明の弾性体型成形装置によって成形した素材の形状を示す。
【図4】本発明の弾性体型成形装置の第2の実施の形態を示す側面図である。
【図5】本発明の弾性体型成形装置の第3の実施の形態を示す側面図である。
【図6】図5に示す本発明の弾性体型成形装置の第3の実施の形態による加工方法を示す側面図である。
【図7】本発明の弾性体型成形装置の第4の実施の形態を示す側面図である。
【図8】図7に示す本発明の弾性体型成形装置の第4の実施の形態による加工方法を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の弾性体型成形装置の実施の形態を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明の弾性体型成形装置の第1の実施の形態を備えたプレスブレーキを一部断面にて示す側面図である。
【0017】
図1において、押型3はプレスブレーキ1の押型搭載用ラム2に取り付けられ、押型搭載用ラム2は上下に駆動制御できる機構となっている。成形用弾性体4は底部及び側面を拘束可能なU字状幅傾斜拘束ブロック5の凹状空間内に収納され、例えば平板材からなる素材6は成形用弾性体4の上に位置決めして置かれ、U字状幅傾斜拘束ブロック5は、プレスブレーキ1下方の、押型搭載用ラム2と対向した位置に配置されている。本実施の形態において、押型搭載用ラム2は上下に駆動できる機構となっているが、受け型搭載用ベース7が上下駆動制御できる機構でも良い。また、押型3、成形用弾性体4、U字状幅傾斜拘束ブロック5、素材6は、いずれも、図1の紙面に直交する方向に長尺に形成された部材で構成されている。
【0018】
ここで、U字状幅傾斜拘束ブロック5は、成形用弾性体4の変形を拘束するために、側壁は上方に向かうに従って狭くなるように、幅方向両側壁に傾斜角度θ1の傾斜面5A(詳細は図2参照)を有していて、ここに収納される成形用弾性体4も、同様に幅方向の断面形状を略台形に形成している。上述したU字状幅傾斜拘束ブロック5の傾斜面5Aは、成形用弾性体4が圧縮された際に成形用弾性体4の両側部に素材6の端部と傾斜面5Aとの間から上方に向かうようにはみ出し変形部を生起させると共に、このはみ出し変形部が押型3の内方に向かう押圧力を発生させる機能を有している。
【0019】
次に、上述した本発明の弾性体型成形装置の第1の実施の形態によって平板材を曲げ成形する方法を説明する。
図2は、本発明の弾性体型成形装置の第1の実施の形態による加工方法を拡大して示す側面図である。図2において、押型3が下降し、素材6の幅方向略中央に接触し、更に加圧させて下降させることにより、成形用弾性体4が圧縮され、押型3とU字状幅傾斜拘束ブロック5の内壁との隙間に成形用弾性体4は、はみ出すように変形する。この成形用弾性体4のはみ出し変形部の反力により、素材6は押型3のプロフィール形状に押し付けられ曲げ成形される。従来であれば、この成形用弾性体4のはみ出し変形部は山形形状になり、素材6の曲げ成形に対する成形力としては、山高さが大きくなるほど低減する。
【0020】
本実施の形態にあっては、U字状幅傾斜拘束ブロック5の幅方向両側壁に傾斜角度θ1を設けたことから、圧縮された成形用弾性体4から傾斜角度に直角方向の分力が発生し、素材6を押型3に密着させる方向に反力が増強される。また、曲げ成形過程において発生する押型3とU字状幅傾斜拘束ブロック5の内壁上部との隙間部分における成形用弾性体4のはみ出し変形部が、押型3の内方に向かう押圧力を発生させる。この結果、素材6の曲げ成形に必要な押型3の圧縮量δ1を小さくすることができる。つまり、押型3の圧縮量に対する素材6の曲げ高さの比率を大きくすることができることから、押型3の押圧力を低減することが可能となる。この結果、成形用弾性体4の変形率を低減できることから、塑性変形の発生等の成形用弾性体4に対する損傷を抑えることができる。
【0021】
図3は、弾性体型成形装置によって曲げ成形した素材の形状を示す断面図であって、2点鎖線は、従来のゴム型成形装置によって成形した素材を示し、実線は、本発明の弾性体型成形装置によって成形した素材の形状を示す。従来のゴム型成形装置によって成形した素材6の両端部の曲げ角度をθ2、曲げ高さをL1として、本発明の弾性体型成形装置によって成形した素材6の両端部の曲げ角度をθ3、曲げ高さをL2とすると、図3に示すように、曲げ角度はθ3>θ2となり、本発明の弾性体型成形装置であれば、スプリングバック量を考慮しても押型3のコーナ曲率に近い角度に素材6の両端部を成形することが可能になる。また、素材6の両端部の曲げ高さもL2>L1となり、本発明の弾性体型成形装置であれば、成形用弾性体4のはみ出し変形部を押型3方向(内方)に強制したことから、従来のゴム型成形装置における素材6の両端部における曲げ高さの限界を大幅に改善することができる。
【実施例2】
【0022】
図4は本発明の弾性体型成形装置の第2の実施の形態を示す側面図である。なお、図4において、図1乃至図3に示す符号と同符号のものは同一部分又は相当する部分であるので、その部分の説明を省略する。
【0023】
図4に示す弾性体型成形装置は、拘束コッター方式弾性体型成形装置であって、押型3はプレスブレーキ1の押型搭載用ラム2に取り付けられ、押型搭載用ラム2は上下に駆動制御できる機構となっている。押型搭載用ラム2と対向する下方には、幅方向の断面形状がU字形で凹状空間を有するU字状幅拘束ブロック8が配置され、この凹状空間内には、例えば平板材からなる素材6を載置した成形用弾性体4が収納され、この成形用弾性体4の幅方向両側面に外側面に内方に向かう傾斜角度θ4をもった傾斜面11Aを有する変形拘束ブロックとしてのテーパブロック11a,11bがそれぞれ配置されている。
【0024】
押型3の幅方向の側面であってプレスブレーキ1の前面側(図4の右側)には、傾斜ブロックとしての前面拘束コッター10aが、プレスブレーキ1の後面側(図4の左側)には、傾斜ブロックとしての後面拘束コッター10bがそれぞれ取り付けられている。前面拘束コッター10a、及び後面拘束コッター10bは、断面逆L字状の剛体からなり、U字状幅拘束ブロック8の内面に摺接する外側面と、テーパブロック11a,11bの傾斜面11Aに摺接する傾斜面10Aをそれぞれ有している。上述したテーパブロック11a,11bの傾斜面11A、及び拘束コッター10a,10bの傾斜面10Aは、互いに摺接していて、拘束コッター10a,10bの下降によりテーパブロック11a,11bの離間距離を縮小するくさび作用を生起させる。このくさび作用は、成形用弾性体4が圧縮された際に成形用弾性体4の両側部に素材6の端部と傾斜面5Aとの間から上方に向かうようにはみ出し変形部を生起させると共に、このはみ出し変形部が押型3の内方に向かう押圧力を発生させる機能を有している。
【0025】
次に、上述した本発明の弾性体型成形装置の第2の実施の形態によって平板材を曲げ成形する方法を説明する。
押型3と共に拘束コッター10a,10bが下降し、拘束コッター10a,10bの傾斜面10Aとテーパブロック11a,11bの傾斜面11Aが摺接しながらさらに下降すると、くさび作用により、拘束コッター10a,10bの下降方向の直角方向である水平方向にテーパブロック11a,11bが、それぞれの離間距離を縮小するように移動させられる。この結果、テーパブロック11a,11bの間に収納されている成形用弾性体4が幅方向に圧縮、拘束される。
【0026】
本発明の弾性体型成形装置の第2の実施の形態によれば、曲げ成形を行うための加圧ストロークで成形用弾性体4の幅を強制的に圧縮変形でき、曲げ成形過程において発生する押型3とテーパブロック11との隙間部分における成形用弾性体4のはみ出し変形部を押型3方向(内方)に強制できる。
更に、強制的に成形用弾性体4の幅を圧縮させているため、素材6の曲げ成形のための成形力を増強でき、素材6の曲げ成形高さを大きくすることができる。
【0027】
また、本実施の形態においては、弾性体型成形装置が、傾斜角度θ4を有した拘束コッター10a,10bとテーパブロック11a,11bによるくさびの原理を使用する構造としているため、小さな押型3の押圧力で、適切な成形用弾性体4を圧縮する水平方向の加圧力を発生させることができる。したがって、弾性体型成形装置をコンパクト化することができる。
【0028】
さらに、成形用弾性体4の幅方向を強制する機構部が不要となり、設備の小型化、費用低減の効果につながる。また、成形用弾性体4の変形を抑えることにより塑性変形の防止が図れ、寿命向上につながる。
【実施例3】
【0029】
図5及び図6は本発明の弾性体型成形装置の第3の実施の形態を示すもので、図5は、本発明の弾性体型成形装置の第3の実施の形態を示す側面図、図6は、図5に示す本発明の弾性体型成形装置の第3の実施の形態による加工方法を示す側面図である。なお、図5及び図6において、図1乃至図4に示す符号と同符号のものは同一部分又は相当する部分であるので、その部分の説明を省略する。
【0030】
図5に示す弾性体型成形装置は、第1の傾動拘束弾性体型成形装置であって、押型3はプレスブレーキ1の押型搭載用ラム2に取り付けられ、押型搭載用ラム2、及び受け型搭載用ベース7が上下に駆動制御できる機構となっている。押型搭載用ラム2と対向する下方には、幅方向に左右分割可能な断面L字状の傾斜拘束ブロックとしての傾動ブロック12a,12bが配置され、この傾動ブロック12a,12bの底部上面に搭載された抑制用敷板としての弾性体はみ出し防止プレート13の上に例えば平板材からなる素材6を載置した成形用弾性体4が収納されている。
【0031】
傾動ブロック12a,12bの下方には、幅方向の断面形状がコ字形で凹状空間を有する支持ブロックとしての弾性体支持ブロック16が配置され、この凹状空間内には、傾斜拘束反力支持部としての補助弾性体15が収納され、補助弾性体15の上面に傾動ブロック12a,12bの垂直方向の下面が載置している。
【0032】
また、傾動ブロック12a,12bは、図5に示すように、幅方向側板の外側に設けたピン支持部材の支持孔と傾動ブロック12a,12bの幅方向外周に配置された支持ブロックとしての弾性体支持ブロック16のピン支持部材の支持孔とを貫通する傾動ピン14a,14bとからなる回転支持部により幅方向に回動可能に軸支されている。弾性体支持ブロック16は、型搭載用ベース7の上に配置されている。なお、弾性体はみ出し防止プレート13は、金属等の剛体で形成され、成形用弾性体4の傾動ブロック12a,12bの底部からのはみ出しを抑制している。
【0033】
次に、上述した本発明の弾性体型成形装置の第3の実施の形態によって平板材を曲げ成形する方法を説明する。
図6において、受け型搭載用ベース7が上昇し、押型3が素材6に接触し、更に加圧させて上昇させることにより、成形用弾性体4が圧縮される。このとき、傾動ブロック12a,12bは、補助弾性体15上にあるため、補助弾性体15の変形により傾動ピン14a,14bを中心に回転し、曲げ成形過程において発生する押型3と傾動ブロック12a,12bとの隙間部分における成形用弾性体4のはみ出し変形部を押型3方向(内方)に強制する。この結果、素材6を押型3に押し付ける曲げ成形力を増強できる。つまり、補助弾性体15は、傾動ブロック12a,12bの回転支持の反力を発生させている。
【0034】
本発明の弾性体型成形装置の第3の実施の形態によれば、押型3の圧縮ストロークに応じ、成形用弾性体4を保持した左右に分割した傾動ブロック12a,12bを配置し、成形用弾性体4の幅方向を閉め付ける方向に傾動させることにより、押型3と傾動ブロック12a,12bとの隙間部分における成形用弾性体4のはみ出し変形部を押型3方向(内方)に強制する。また、傾動ブロック12a,12bの締め付けにより、成形用弾性体4を圧縮させることができ、素材6を押型3に倣わせる拘束力を発生させることができ、曲げ成形高さの拡大と曲げ精度の向上が図れる。更に、成形用弾性体4の変形を抑えることにより塑性変形の防止が図れ、寿命向上につながる。
【実施例4】
【0035】
図7及び図8は本発明の弾性体型成形装置の第4の実施の形態を示すもので、図7は、本発明の弾性体型成形装置の第4の実施の形態を示す側面図、図8は、図7に示す本発明の弾性体型成形装置の第4の実施の形態による加工方法を示す側面図である。なお、図7及び図8において、図1乃至図6に示す符号と同符号のものは同一部分又は相当する部分であるので、その部分の説明を省略する。
【0036】
図7に示す弾性体型成形装置は、第2の傾動拘束弾性体型成形装置であって、押型3はプレスブレーキ1の押型搭載用ラム2に取り付けられ、押型搭載用ラム2が上下に駆動制御できる機構となっている。押型搭載用ラム2と対向する下方には、幅方向に左右分割可能な断面L字状の傾斜拘束ブロックとしての傾動ブロック19a,19bが配置され、この傾動ブロック19a,19bの底部上面に搭載された抑制用敷板としての弾性体はみ出し防止プレート13の上に例えば平板材からなる素材6を載置した成形用弾性体4が収納されている。
【0037】
傾動ブロック19a,19bの下方には、幅方向の断面形状がコ字形で凹状空間を有する支持ブロック20が配置され、この凹状空間内には、幅方向略中央底部に曲線状に上面を形成した安定支持部材としての傾動ブロック安定支持材22が、幅方向両端部に傾動支持部材としての傾動支持板18a,18bがそれぞれ配置されている。
【0038】
また、傾動ブロック19a,19bは、図7に示すように、断面L字の外周凸部を幅方向に回動可能とするように曲線状に形成され、同じ曲線状に内壁を形成した傾動支持板18a,18bに幅方向側面を、傾動ブロック安定支持材22に垂直方向の下面をそれぞれ支持されている。
【0039】
また、支持ブロック20は、受け型搭載用ベース7の上部に搭載される支持ブロック組立てベース21の上に配置されている。傾動ブロック安定支持材22は、その底部に例えば油圧制御やスプリング構造などからなる反力発生器23を設け、反力発生器23は、支持ブロック組立てベース21に載置されている。
【0040】
なお、傾動ブロック19a,19b、傾動支持板18a,18b、及び支持ブロック20の上部面には、成形用弾性体4のはみ出し変形を防止する弾性体上面拘束板17a,17bが配置されている。なお、反力発生器23は、成形用弾性体4の硬度、素材6の板厚、変形抵抗などの諸条件に対応して、その抑え力を任意に制御できる構造であることが好ましい。
【0041】
次に、上述した本発明の弾性体型成形装置の第4の実施の形態によって平板材を曲げ成形する方法を説明する。
図8において、押型3が下降し、素材6に接触し、更に加圧させて下降させることにより、成形用弾性体4が圧縮される。この押型3からの押圧力は、傾動ブロック19a,19bの垂直方向の下面を介して傾動ブロック安定支持材22を押圧し、反力発生器23が圧縮されることで、傾動ブロック安定支持材22を下方向に移動させる。傾動ブロック安定支持材22の下方向への移動と曲線形状に形成された傾動ブロック19a,19bの外周凸部と傾動支持板18a,18bの内壁構造とにより、傾動ブロック19a,19bは、それぞれの上面端部を幅方向内側に近接させるように回転する。
【0042】
このため、素材6の曲げ成形過程において発生する押型3と傾動ブロック19a,19bとの隙間部分における成形用弾性体4のはみ出し変形部を押型3方向(内方)に強制する。この結果、素材6を押型3に押し付ける曲げ成形力を増強できる。
【0043】
また、傾動ブロック19a,19bと傾動ブロック安定支持材22とにより発生する反力によっても、成形用弾性体4が素材6を押型3に押し付ける曲げ成形力を増強することができる。これにより、曲げ成形高さの拡大と曲げ精度の向上が図れる。更に、成形用弾性体4の変形を抑えることにより塑性変形の防止が図れ、寿命向上につながる。
【0044】
本発明の弾性体型成形装置の第4の実施の形態によれば、上述した第1の実施の形態乃至第3の実施の形態と同様な効果を得ることができるとともに、傾動ブロック安定支持材22を、成形用弾性体4を収納する傾動ブロック19a,19bの幅方向略中央の分割部に配置したので、成形用弾性体4が押型3の成形ストロークにより圧縮されたときに最適な反力を発生させることができ、傾動ブロック19a,19bの回転方向の安定化を保つことができる。
【符号の説明】
【0045】
1 プレスブレーキ
2 押型搭載用ラム
3 押型
4 成形用弾性体
5 U字状幅傾斜拘束ブロック(拘束ブロック)
5A 傾斜面
6 素材(平板材)
7 受け型搭載用ベース
8 U字状幅拘束ブロック
10 拘束コッター
10A 傾斜面
11 テーパブロック
11A 傾斜面
12 傾動ブロック
13 弾性体はみ出し防止プレート
14 傾動ピン
15 補助弾性体
16 弾性体支持ブロック
17 弾性体上面拘束ブロック
18 傾動支持板
19 傾動ブロック
20 傾動支持板
21 支持ブロック組立てベース
22 傾動ブロック安定支持材
23 反力発生器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板材を曲げ成形するプレス加工用の弾性体型成形装置であって、
上下方向に移動する押型と、
前記押型に対向する下方に配置され、凹状空間を有する拘束ブロックと、
前記拘束ブロックの凹状空間内に収納され、上面に前記平板材が載置される成形用弾性体とを備え、
前記拘束ブロックの凹状空間を形成する幅方向両側壁は、上方に向かうに従って狭くなるような傾斜面を有している
ことを特徴とする弾性体型成形装置。
【請求項2】
平板材を曲げ成形するプレス加工用の弾性体型成形装置であって、
上下方向に移動する押型と、
前記押型に対向する下方に配置され、凹状空間を有する拘束ブロックと、
前記拘束ブロックの凹状空間内に収納され、上面に前記平板材が載置される成形用弾性体と、
前記成形用弾性体の幅方向の両側面にそれぞれ配置され、外側面に内方に向かう傾斜角度をもった傾斜面を有する変形拘束ブロックと、
前記押型の幅方向の両側面にそれぞれ設けられ、前記拘束ブロックの内面に摺接する外側面と前記変形拘束ブロックの傾斜面に摺接する傾斜面とを有する傾斜ブロックとを備えた
ことを特徴とする弾性体型成形装置。
【請求項3】
平板材を曲げ成形するプレス加工用の弾性体型成形装置であって、
上下方向に移動する押型と、
プレス成形時に前記押型の形状に前記平板材を押し付け、前記平板材を曲げ成形させるための成形用弾性体と、
前記押型に対向する下方に、前記成形用弾性体の側面をそれぞれ拘束あるいは収納するために幅方向に傾動可能にそれぞれ配置した傾斜拘束ブロックと、
前記傾斜拘束ブロックの底部からの前記成形用弾性体のはみ出しを抑制するために前記傾斜拘束ブロックの底部上面に搭載された抑制用敷板と、
前記傾斜拘束ブロックを傾動して支持するための回転支持部と、
前記傾斜拘束ブロックの底部側に設けられ、前記傾斜拘束ブロックの回転支持の反力を発生する傾斜拘束反力支持部とを備えた
ことを特徴とする弾性体型成形装置。
【請求項4】
平板材を曲げ成形するプレス加工用の弾性体型成形装置であって、
上下方向に移動する押型と、
上面に前記平板材が載置され、プレス成形時に前記押型の形状に前記平板材を押し付け、前記平板材を曲げ成形させるための成形用弾性体と、
前記押型に対向する下方に、前記成形用弾性体の側面をそれぞれ拘束あるいは収納するために幅方向にそれぞれ配置した断面L字状の傾斜拘束ブロックと、
前記傾斜拘束ブロックの底部からの前記成形用弾性体のはみ出しを抑制するために前記傾斜拘束ブロックの底部上面に搭載された抑制用敷板と、
前記傾斜拘束ブロックを収納する凹状空間を有する支持ブロックと、
前記傾斜拘束ブロックの垂直方向の下面と前記支持ブロックの底部上面との間に挿嵌された補助弾性体とを備え、
前記傾斜拘束ブロックの幅方向側板の外側と支持ブロックの幅方向側板の内側とが、回動ピンにより幅方向に回動可能に軸支されている
ことを特徴とする弾性体型成形装置。
【請求項5】
平板材を曲げ成形するプレス加工用の弾性体型成形装置であって、
上下方向に移動する押型と、
上面に前記平板材が載置され、プレス成形時に前記押型の形状に前記平板材を押し付け、前記平板材を曲げ成形させるための成形用弾性体と、
前記押型に対向する下方に、前記成形用弾性体の側面をそれぞれ拘束あるいは収納するために幅方向にそれぞれ配置した断面L字状の傾斜拘束ブロックと、
前記傾斜拘束ブロックの底部からの前記成形用弾性体のはみ出しを抑制するために前記傾斜拘束ブロックの底部上面に搭載された抑制用敷板と、
前記傾斜拘束ブロックの幅方向の側面を支持する傾動支持部材と、
前記傾斜拘束ブロックの垂直方向の下面を支持する安定支持部材と、
前記傾斜拘束ブロック、前記傾動支持部材、及び前記安定支持部材を収納する凹状空間を有する支持ブロックとを備え、
前記傾斜拘束ブロックの断面L字の外周凸部と、前記傾動支持部材の内壁を同じ曲線状に形成し、前記傾斜拘束ブロックを幅方向に回動可能とするように形成した
ことを特徴とする弾性体型成形装置。
【請求項6】
平板材を曲げ成形するプレス加工用の弾性体型成形方法であって、
前記平板材を拘束ブロックの凹状空間内に収納された成形用弾性体の上面に位置決めして載置し、
この平板材の幅方向中央部を押型により前記成形用弾性体に押し当てながら前記成形用弾性体に向かって押し込むことにより、
前記成形用弾性体の一部を前記拘束ブロックの内壁と前記押型との隙間部分にはみ出すように変形させ、
このはみ出し変形部の反力によって前記平板材の両端部を押型に密着させる方向に折り曲げる
ことを特徴とする弾性体型成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−269366(P2010−269366A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−125419(P2009−125419)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】