説明

弾性力付与機構及び搬送台車

【課題】駆動機構によりワークを変位させる機構の小型化又は低コスト化を実現することが可能な弾性力付与機構及び搬送台車を提供する。
【解決手段】弾性力付与機構26は、基台50と、ワークを支持する支持台と、前記基台と前記支持台の間で平行に配置され、前記支持台に対して弾性力を付与する複数の弾性部材52a〜52fと、前記複数の弾性部材のうち第1弾性部材52a、52b、52d、52eの支持台側端部と、前記第1弾性部材と隣り合う第2弾性部材52b、52c、52e、52fの基台側端部とを連結する連結部材54a〜54dとを備える。前記第1弾性部材の基台側端部は、前記基台側に連結され、前記第2弾性部材の支持台側端部は、前記支持台側に連結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダブロック等のワークを支持する支持台に対して弾性力を付与する弾性力付与機構及び搬送台車に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン組立ラインでは、シリンダブロックにシリンダヘッドやオイルパン等の部品を組み付ける。このような組付けを行うために、シリンダヘッドを片持ち状に支持する支持台を備える搬送台車が開発されている(例えば、特許文献1)。特許文献1の搬送台車では、シリンダブロック(CB)を片持ち状に支持した状態で、昇降駆動機構(25)を作動してシリンダブロック(CB)の高さを調整する(特許文献1の段落[0015]、図4)。この昇降駆動機構(25)は、サーボモータ等の回転駆動手段(26)を駆動し、ボールねじ軸(27)を回転させることで、シリンダブロック(CB)を支持する昇降台枠(24)を昇降させる(同段落[0015])。また、回転駆動機構(25)の代わりに、ブレーキ付エアシリンダ等による単独の直線運動機構を用いることも示されている(同段落[0016])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2677040号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、昇降台枠(24)の昇降を回転駆動手段(26)又は直線運動機構の駆動力のみによって行うため、シリンダブロック(CB)の重量が大きくなると、それに応じて回転駆動手段(26)又は直線運動機構の出力も増大させる必要が生じる。その結果、搬送台車の小型化やコスト低減が図りにくくなる。また、このような問題は、シリンダブロック用の搬送台車に限らず、駆動手段によりワークを変位させる機構一般に当てはまる。
【0005】
本発明は、上記のような問題を考慮してなされたものであり、駆動手段によりワークを変位させる機構の小型化又は低コスト化を実現することが可能な弾性力付与機構及び搬送台車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る弾性力付与機構は、基台と、ワークを支持する支持台と、前記基台と前記支持台の間で平行に配置され、前記支持台に対して弾性力を付与する複数の弾性部材と、前記複数の弾性部材のうち第1弾性部材の支持台側端部と、前記第1弾性部材と隣り合う第2弾性部材の基台側端部とを連結する連結部材とを備えるものであって、前記第1弾性部材の基台側端部は、前記基台側に連結され、前記第2弾性部材の支持台側端部は、前記支持台側に連結されることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、基台と支持台の間で平行に配置された複数の弾性部材のうち基台側の第1弾性部材の支持台側端部と、前記第1弾性部材と隣り合う支持台側の第2弾性部材の基台側端部とが連結部材で連結され、第1弾性部材及び第2弾性部材は1つの弾性部材のように機能する。ばね等の弾性部材の弾性エネルギは、自然長からの伸縮量の二乗に比例する。このため、弾性エネルギを大きくするためには、弾性部材の伸縮量を大きくする方法が考えられる。その一方、伸縮量を大きくするために弾性部材を長くすると、その分、弾性力付与機構の寸法に制約が生じてしまう。本発明では、複数の弾性部材を1つの弾性部材のように機能させることが可能となり、各弾性部材を相対的に短くすることができる。このため、弾性力付与機構の設計の自由度を高めることができる。そして、このような弾性力付与機構を、駆動機構によりワークを変位させる変位機構と組み合わせた場合、弾性力付与機構により駆動機構を補助させることで駆動機構の出力を小さくすることが可能となり、当該変位機構を小型化又は低コスト化することができる。
【0008】
前記複数の弾性部材は、例えば、コイルばね、板ばね又は空気ばねとすることができる。
【0009】
前記弾性力付与機構は、前記支持台に固定され前記第2弾性部材の支持台側端部に係合する係合部材を備え、前記連結部材は、前記第2弾性部材を収納し、前記第2弾性部材の基台側端部を支持する収納部と、前記収納部に連結固定され、前記第1弾性部材の支持台側端部に係合する係合部とを備え、前記支持台が前記ワークを支持しない状態では、前記第1弾性部材が前記基台に当接し、前記第2弾性部材が前記基台から離間し、前記支持台が前記ワークを支持した状態では、前記ワークからの荷重に応じて前記第2弾性部材が前記基台側に変位してもよい。これにより、簡易な構成で第1弾性部材と第2弾性部材との間の力の伝達を行うことができる。
【0010】
本発明に係る搬送台車は、上述した弾性力付与機構と、前記基台に対して前記支持台を昇降させる昇降機構とを有する。本発明によれば、昇降機構が支持台を押し上げる際、弾性力付与機構からの弾性力が支持台に付与される。このため、昇降機構への負荷を低減して昇降機構の耐久性を向上できる、或いは、昇降機構の出力を小さくして昇降機構を小型化することができる。さらに、支持台のストロークの自由度を高めると共に、搬送台車自体を小型化することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基台と支持台の間で平行に配置された複数の弾性部材のうち基台側の第1弾性部材の支持台側端部と、前記第1弾性部材と隣り合う支持台側の第2弾性部材の基台側端部とが連結部材で連結され、第1弾性部材及び第2弾性部材は1つの弾性部材のように機能する。ばね等の弾性部材の弾性エネルギは、自然長からの伸縮量の二乗に比例する。このため、弾性エネルギを大きくするためには、弾性部材の伸縮量を大きくする方法が考えられる。その一方、伸縮量を大きくするために弾性部材を長くすると、その分、弾性力付与機構の寸法に制約が生じてしまう。本発明では、複数の弾性部材を1つの弾性部材のように機能させることが可能となり、各弾性部材を相対的に短くすることができる。このため、弾性力付与機構の設計の自由度を高めることができる。そして、このような弾性力付与機構を、駆動機構によりワークを変位させる変位機構と組み合わせた場合、弾性力付与機構により駆動機構を補助させることで駆動機構の出力を小さくすることが可能となり、当該変位機構を小型化又は低コスト化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る搬送台車の斜視図である。
【図2】前記搬送台車の一部透視右側面図である。
【図3】前記搬送台車の昇降機構及び弾性力付与機構を説明するための一部透視右側面図である。
【図4】前記昇降機構を説明するための一部断面背面図である。
【図5】前記弾性力付与機構を説明するための一部断面背面図である。
【図6】図5のVI−VI線における一部断面平面図である。
【図7】前記実施形態におけるワーク支持部、位置決め治具及びワークを前記搬送台車の左前方から見た斜視図である。
【図8】前記位置決め治具を前記ワークに取り付けた状態を、前記搬送台車の左前方から見た斜視図である。
【図9】前記ワーク支持部、前記位置決め治具及び前記ワークを前記搬送台車の左後方から見た斜視図である。
【図10】前記位置決め治具を介して前記ワークを前記ワーク支持部に取り付けた状態を、前記搬送台車の左後方から見た斜視図である。
【図11】前記位置決め治具を介して前記ワークを前記ワーク支持部に取り付けた状態における前記搬送台車の正面図である。
【図12】図12Aは、前記ワークを前記ワーク支持部に取り付けた時(基準位置)の一例を示す背面図である。図12Bは、前記ワークを前記ワーク支持部において回転させた時の一例を示す背面図である。
【図13】前記ワーク支持部のストッパを示す一部断面背面図である。
【図14】図14Aは、前記位置決め治具を前記ワークに取り付けた状態を簡略的に示す正面図である。図14Bは、別の位置決め治具を別のワークに取り付けた状態を簡略的に示す正面図である。
【図15】前記搬送台車をエンジン組立ラインで用いた状態の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る搬送台車10の概略的な構成を示す斜視図である。図2は、搬送台車10の一部(蛇腹部材16)の内部を透視した側面図である。搬送台車10の本体前部12には、制御盤13(制御部)が設けられると共に、本体前部12の上側には、図示しないキットパレットを載置することが可能である。また、搬送台車10の本体後部14上には、蛇腹部材16が配置され、この蛇腹部材16の上部にはワーク支持部18が配置されている。
【0015】
図3は、搬送台車10の本体後部14及び蛇腹部材16の内部(特に、搬送台車10の昇降機構24及び弾性力付与機構26)を説明するための一部透視右側面図である。図3に示すように、本体後部14には、バッテリ20、走行モータ22a、22b及び駆動輪23が設けられており、制御盤13が走行モータ22a、22bを制御することにより、搬送台車10を駆動する。また、本体後部14及び蛇腹部材16の内部には、昇降機構24及び弾性力付与機構26が設けられている。昇降機構24は、制御盤13からの指令に基づいて昇降台40及びこの昇降台40上に配置されたワーク支持部18を昇降させる。さらに、弾性力付与機構26は、複数のコイルばね52a〜52f(図5)等の部材からなり、昇降機構24の昇降動作を補助すると共に、ワーク支持部18がワークW(本実施形態では、シリンダブロック)を支持する際にカウンタウエイトとして機能する。
【0016】
図4は、昇降機構24を説明するための一部断面背面図である。図3及び図4に示すように、本実施形態の昇降機構24は、昇降用のモータ30と、第1プーリ32と、タイミングベルト34と、第2プーリ36と、ボールねじ機構38と、昇降台40とを有する。前記制御盤からの指令に応じてモータ30が作動すると、第1プーリ32、タイミングベルト34、第2プーリ36及びボールねじ機構38を介して昇降台40が昇降する。その結果、昇降台40に固定されているワーク支持部18も昇降する。さらに、昇降機構24は、リニアガイド42a、42b(図5及び図6)を有している。
【0017】
図5は、弾性力付与機構26を説明するための一部断面背面図である。図6は、図5のVI−VI線における一部断面平面図である。図5に示すように、弾性力付与機構26は、基台50と、互いに平行に配置され材質及び形状(内径、外径、長さ、巻き数等)が同一である複数のコイルばね52a〜52fと、係合部56a〜56d及び収納部58a〜58dを有する複数の連結部材54a〜54dと、有底円筒形状の収納ケース60a、60bと、案内棒62a〜62dと、係合部材64とを備える。図5に示すように、複数のコイルばね52a〜52fは、2本ずつ高さが異なって配置される。
【0018】
収納ケース60a、60bは、その底面においてボルト65a、65bにより基台50に固定され、コイルばね52a、52dを収納する。収納ケース60a、60bに収納されたコイルばね52a、52dは、収納ケース60a、60bの開口側において連結部材54a、54cの係合部56a、56cと係合している。係合部56a、56cは、外径がコイルばね52a、52dと略同一の円柱状であり、係合部56a、56cの下端には、外径がコイルばね52a、52dの内径と略同一の円柱状である連結棒66a、66cがコイルばね52a、52dに向かって延在している。連結部材54a、54cの係合部56a、56cの上端は、収納部58a、58cの突出部68a、68cにボルト締結されている。
【0019】
連結部材54a、54cの収納部58a、58cは、有底円筒状であり、底面の一部が開口し、案内棒62a、62cが挿通している。収納部58a、58cには、コイルばね52b、52eが収納されている。案内棒62a、62cの外径は、コイルばね52b、52eの内径と略同一である。
【0020】
収納部58a、58cに収納されたコイルばね52b、52eは、収納部58a、58cの開口側において連結部材54b、54dの係合部56b、56dと係合している。係合部56b、56dは、連結部材54a、54cの係合部56a、56cと略同一の形状であり、連結部材54a、54cの連結棒66a、66cと同様の連結棒66b、66dを有する。係合部56b、56dの上端は、連結部材54b、54dの収納部58b、58dの突出部68b、68dにボルト締結されている。
【0021】
連結部材54b、54dの収納部58b、58dは、収納部58a、58cと同様、有底円筒状であり、底面の一部が開口し、案内棒62b、62dが挿通している。収納部58b、58dには、コイルばね52c、52fが収納されている。案内棒62b、62dの外径は、コイルばね52c、52fの内径と略同一である。案内棒62b、62dは、案内棒62a、62cと略同一の外径であると共に、案内棒62a、62cよりも長い。
【0022】
収納部58b、58dに収納されたコイルばね52c、52fは、収納部58b、58dの開口側において係合部材64の係合部70a、70bと係合している。係合部70a、70bは、連結部材54a〜54dの係合部56a〜56dと外径が略同一であり、連結部材54a〜54dの連結棒66a〜66dと同様の連結棒72a、72bを有する。係合部70a、70bの上端は、係合部材64の板状部材74にボルト締結されている。板状部材74は、ワーク支持部18が取り付けられた昇降台40に連結されている。
【0023】
以上のように、コイルばね52a、52bは、連結部材54aで連結され、コイルばね52b、52cは、連結部材54bで連結されている。このため、3本のコイルばね52a〜52cは、1つの力伝達経路を形成する。同様に、コイルばね52d、52eは、連結部材54cで連結され、コイルばね52e、52fは、連結部材54dで連結されている。このため、3本のコイルばね52d〜52fは、別の力伝達経路を形成する。
【0024】
図7は、位置決め治具80をワークWに取り付ける前の状態で、搬送台車10の左斜め前方から見たワーク支持部18、位置決め治具80及びワークW(シリンダブロック)の斜視図である。図8は、位置決め治具80をワークWに取り付けた状態で、搬送台車10の左斜め前方から見たワーク支持部18、位置決め治具80及びワークWの斜視図である。図9は、位置決め治具80をワークWに取り付ける前の状態で搬送台車10の左斜め後方から見たワーク支持部18、位置決め治具80及びワークWの斜視図である。図10は、位置決め治具80を介してワークWをワーク支持部18に取り付けた状態で搬送台車10の左斜め後方から見たワーク支持部18、位置決め治具80及びワークWの斜視図である。図11は、位置決め治具80を介してワークWをワーク支持部18に取り付けた状態における搬送台車10の正面図である。
【0025】
図7〜図11に示すように、本実施形態では、複数のボルト82a、82bにより位置決め治具80をワークWに取り付けた後、位置決め治具80を介してワークWをワーク支持部18に取り付ける。
【0026】
ワーク支持部18は、基台90と、ワーク取付台92と、回転駆動力入力部94と、ストッパ96とを有する。基台90は、側面視略L字状且つ平面視略U字状であり、昇降機構24の昇降台40に固定されている。基台90は、搬送台車10の前側から後ろ側に延在する2本のアーム98a、98bと、本体後部14の前側において鉛直方向に延在する環状ケース100とを有する。環状ケース100は、図示しない駆動力伝達系を収納する。
【0027】
ワーク取付台92は、環状ケース100の前記駆動力伝達系に連結された環状回転部102と、環状回転部102から延在する断面略U字状の複数の柱状部104a〜104dと、略円弧状のワーク取付部106と、クランプ部108a、108bとを有する。ワーク取付部106は、柱状部104a、104dにボルト112a、112bで締結された2枚の略円弧状のプレート110a、110bと、これらのプレート110a、110bにボルト締結された位置決め棒114とを備える。ボルト112a、112bは、プレート110a、110bよりもワークW側(搬送台車10の後方)に突出している。
【0028】
各クランプ部108a、108bは、図示しないコイルばねに挿通されたヒンジ118a、118bに支持された可動部116a、116bと、ボルト120a、120bとを有する。図示しないナットランナでボルト120a、120bを可動部116a、116bに向かう方向に変位させることで可動部116a、116bの内側先端をワーク支持部18のプレート110a、110bに接近させ、可動部116a、116bとプレート110a、110bとの間で位置決め治具80を挟持することができる。反対に、前記ナットランナでボルト120a、120bを可動部116a、116bから離間する方向に変位させると、前記コイルばねの弾性力により可動部116a、116bの内側先端がプレート110a、110bから離間し、位置決め治具80の取外しが可能となる。
【0029】
回転駆動力入力部94は、環状回転部102を回転させるための回転駆動力を入力する部位であり、環状ケース100内に配置された前記駆動力伝達系に連結されている。具体的には、回転駆動力入力部94の入力軸122に図示しない連結具を介して図示しない駆動モータを連結し、当該駆動モータからの回転駆動力により入力軸122を回転させる。或いは、図示しない回転ハンドルを入力軸122に取り付け、手動で入力軸122を回転させてもよい。回転駆動力入力部94に回転駆動力を入力することにより、図12A及び図12Bに示すように、ワーク取付台92を介してワークWを水平軸Hを中心に回転させることができる。
【0030】
ストッパ96は、環状回転部102の回転を規制するためのものであり、図13に示すように、先端が円錐台状の軸部材130と、操作レバー132とを有する。操作レバー132を操作することにより、軸部材130は、環状回転部102の中心に対して進退する。環状回転部102は、環状ケース100内部の部位に複数の凹部134が形成されている。この凹部134の1つに軸部材130が係合することにより、環状回転部102の位置を固定することができる。
【0031】
図7〜図9に示すように、位置決め治具80は、略円弧状の板状部材140と、位置決めフック142とを有する。板状部材140には、ボルト取付孔144a、144bと、位置決め孔146a、146bと、係合溝148a、148bとが形成されている。ワークWのミッション取付面には、ボルト取付孔144a、144bに対応するボルト締付孔150a、150bが形成されており、ボルト取付孔144a、144bを介してボルト締付孔150a、150bにボルト82a、82bを締め付けることで位置決め治具80をワークWに取り付けることができる。また、ワークWには、位置決め孔146a、146bに対応する位置に位置決め孔152a、152bが形成されており、ワークWに対する位置決め治具80の位置決めに用いることができる。さらに、位置決めフック142は、断面略逆U字状であり、ワーク取付台92の位置決め棒114と係合することができる。加えて、係合溝148a、148bは、板状部材140のうちワーク支持部18側の下方に形成されており、ワーク取付台92のボルト112a、112bをその内部に案内することができる。
【0032】
図14A及び図14Bに示すように、本実施形態では、別のワークW1(シリンダブロック)に対応する位置決め治具80Aを用いることでワークW、W1の形状が異なる場合であっても、ワーク取付台92を共有することができる。すなわち、位置決め治具80Aの板状部材140aは、位置決め治具80の板状部材140と形状が異なる。また、板状部材140aのワークW1側に形成されたボルト取付孔144c、144d及び位置決め孔146c、146dの位置が、位置決め治具80のボルト取付孔144a、144b及び位置決め孔146a、146bの位置と異なる。その一方、板状部材140aのワーク支持部18側に形成された位置決めフック142a及び係合溝148c、148dの位置は、位置決めフック142及び係合溝148a、148bの位置と同じである。従って、位置決め治具80Aを用いた場合でも、ワーク取付台92にワークW1を取り付けることができる。
【0033】
次に、ワーク取付台92に対するワークWの取付けは、以下のように行う。すなわち、ワークWに位置決め治具80を取り付けると共に、ワーク取付台92が図9に示すような初期位置にある状態で、ローダ等の吊下げ装置(図示せず)によりワークWを水平移動させ、ワーク取付台92の上方に配置する。次いで、ワークWを下降させ、位置決め治具80の位置決めフック142をワーク取付台92の位置決め棒114に係合させると共に、係合溝148a、148bをボルト112a、112b内に案内させる。そして、図示しないナットランナにより、クランプ部108a、108bのボルト120a、120bを変位させてクランプ部108a、108bにより位置決め治具80をクランプする。その結果、図10に示すように、ワークWは、ワーク取付台92に片持ち状に支持される。
【0034】
図15には、本実施形態の搬送台車10をエンジン組立ライン200で使用した状態の一例を示す図である。エンジン組立ライン200には、複数のナットランナ204a、204bを有する多関節ロボット202等の設備が配置されている。搬送台車10は、ワーク支持部18にワークWを片持ち状に支持させた状態で、多関節ロボット202等による加工位置に移動する。そして、図示しないロボットにより回転駆動力入力部94やストッパ96を操作することで、図12に示すようにワークWの傾きを適宜調整しながら組立て作業を行う。例えば、ワークWの上部にシリンダヘッド(図示せず)を取り付けた後、ワークWを180°回転させ、ワークWの下部にオイルパン(図示せず)を取り付けることを比較的容易に行うことができる。
【0035】
以上のように、本実施形態によれば、昇降台40と基台50の間で平行に配置された複数のコイルばね52a〜52cのうちコイルばね52a、52bの昇降台40側の端部と、これらに隣り合うコイルばね52b、52cの基台50側の端部とが連結部材54a、54bで連結され、コイルばね52a〜52cは1つのコイルばねのように機能する。コイルばね52d〜52fも同様である。コイルばね52a〜52fの弾性エネルギは、自然長からの伸縮量の二乗に比例する。このため、弾性エネルギを大きくするためには、コイルばね52a〜52fの伸縮量を大きくする方法が考えられる。その一方、伸縮量を大きくするためにコイルばね52a〜52dを長くすると、その分、弾性力付与機構26の寸法に制約が生じてしまう。本実施形態では、コイルばね52a〜52c及びコイルばね52d〜52fをそれぞれ1つのコイルばねのように機能させることが可能となり、各コイルばね52a〜52fを相対的に短くすることができる。このため、弾性力付与機構26の設計の自由度を高めることができる。そして、このような弾性力付与機構26を、昇降機構24と組み合わせ、弾性力付与機構26により昇降機構24を補助させることで昇降機構24の出力を小さくすることが可能となり、昇降機構24を小型化又は低コスト化することができる。
【0036】
弾性力付与機構26は、昇降台40に固定されコイルばね52c、52fの昇降台40側の端部に係合する係合部材64を備え、連結部材54a〜54dは、コイルばね52b、52c、52e、52fを収納し、コイルばね52b、52c、52e、52fの基台50側の端部を支持する収納部58a〜58dと、収納部58a〜58dに連結固定され、コイルばね52a、52b、52d、52eの昇降台40側の端部に係合する係合部56a〜56dとを備え、昇降台40(ワーク支持部18)がワークWを支持しない状態では、コイルばね52a、52dが基台50に当接し、コイルばね52b、52c、52e、52fが基台50から離間し、昇降台40(ワーク支持部18)がワークWを支持した状態では、ワークWからの荷重に応じてコイルばね52b、52c、52e、52fが基台50側に変位する。これにより、簡易な構成でコイルばね52a〜52cの間及びコイルばね52d〜52fの間の弾性力の伝達を行うことができる。
【0037】
本実施形態によれば、昇降機構24が昇降台40を押し上げる際、弾性力付与機構26からの弾性力が昇降台40に付与される。このため、昇降機構24への負荷を低減して昇降機構24の耐久性を向上できる、或いは、昇降機構24の出力を小さくして昇降機構24を小型化することができる。さらに、昇降台40のストロークの自由度を高めると共に、搬送台車10自体を小型化することができる。
【0038】
なお、本発明は、上記実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることはもちろんである。例えば、以下に示す構成を採ることができる。
【0039】
上記実施形態では、ワークW、W1としてシリンダブロックを用いたが、その他の部品をワークとすることもできる。
【0040】
上記実施形態では、6つのコイルばね52a〜52fを用いたが、これに限られず、隣り合う2つのコイルばねがあればその数は任意である。また、上記実施形態では、6つのコイルばね52a〜52fは、材質及び形状(内径、外径、長さ、巻き数等)が同一であったが、異なる材質や形状のものを用いることも可能である。
【0041】
上記実施形態では、弾性部材として、コイルばね52a〜52fを用いたが、その他の弾性部材を用いてもよい。例えば、コイルばね52a〜52fの代わりに、板ばね又は空気ばねを用いることもできる。空気ばねによる流体装置を用いる場合、圧力を制御することで昇降台40の昇降を補助することで、昇降機構24のモータ30の出力を小さくし、モータ30の小型化及び低コスト化又は耐久性の向上を図ることができる。
【0042】
上記実施形態では、弾性力付与機構26を搬送台車10内に設けたが、これに限られず、その他の設備に設けてもよい。また、上記実施形態では、コイルばね52a〜52fを鉛直方向に配置したが(すなわち、上下方向に掛かる力に対して弾性力付与機構26を機能させるように構成したが)、これに限られず、例えば、コイルばね52a〜52fを水平方向に配置してもよい。
【符号の説明】
【0043】
10…搬送台車 18…ワーク支持部(支持台)
24…昇降機構 26…弾性力付与機構
50…基台 52a〜52f…コイルばね(複数の弾性部材)
54a〜54d…連結部材 56a〜56d…係合部
58a〜58d…収納部 64…係合部材
W、W1…ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、
ワークを支持する支持台と、
前記基台と前記支持台の間で平行に配置され、前記支持台に対して弾性力を付与する複数の弾性部材と、
前記複数の弾性部材のうち第1弾性部材の支持台側端部と、前記第1弾性部材と隣り合う第2弾性部材の基台側端部とを連結する連結部材と
を備える弾性力付与機構であって、
前記第1弾性部材の基台側端部は、前記基台側に連結され、前記第2弾性部材の支持台側端部は、前記支持台側に連結される
ことを特徴とする弾性力付与機構。
【請求項2】
請求項1記載の弾性力付与機構において、
前記複数の弾性部材は、コイルばね、板ばね又は空気ばねである
ことを特徴とする弾性力付与機構。
【請求項3】
請求項1又は2記載の弾性力付与機構において、
前記弾性力付与機構は、前記支持台に固定され前記第2弾性部材の支持台側端部に係合する係合部材を備え、
前記連結部材は、前記第2弾性部材を収納し、前記第2弾性部材の基台側端部を支持する収納部と、前記収納部に連結固定され、前記第1弾性部材の支持台側端部に係合する係合部とを備え、
前記支持台が前記ワークを支持しない状態では、前記第1弾性部材が前記基台に当接し、前記第2弾性部材が前記基台から離間し、
前記支持台が前記ワークを支持した状態では、前記ワークからの荷重に応じて前記第2弾性部材が前記基台側に変位する
ことを特徴とする弾性力付与機構。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の弾性力付与機構と、
前記基台に対して前記支持台を昇降させる昇降機構と
を有する搬送台車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−184316(P2010−184316A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−29481(P2009−29481)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】