説明

弾性境界波装置及びその製造方法

【課題】不要波が抑圧されており、高性能な弾性境界波装置を提供する。
【解決手段】弾性境界波装置1は、圧電体からなる第1の媒質11と、第1の媒質11の上に形成されており、窒化ケイ素からなる第2の媒質12と、第1の媒質11と第2の媒質12との間に形成されており、酸化ケイ素からなる第3の媒質13と、第2の媒質12の上に形成されている吸音層と、第1の媒質11と第3の媒質13との間に形成されているIDT電極16とを備えている。第2の媒質12の波長規格化厚みh2/λは0.60×(h3/λ)−1.24×(h3/λ)+0.94よりも小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性境界波装置及びその製造方法に関する。特には、本発明は、圧電体からなる第1の媒質と、第1の媒質の上に形成されており、窒化ケイ素からなる第2の媒質と、第1の媒質と第2の媒質との間に形成されており、酸化ケイ素からなる第3の媒質と、第1の媒質と第3の媒質との間に形成されているIDT電極とを備える弾性境界波装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、外乱に対する特性変化が小さい弾性波装置として、所謂3媒質型の弾性境界波装置が注目されている。
【0003】
3媒質型の弾性境界波装置は、圧電体からなる第1の媒質と、第1の媒質の上に形成されている第2の媒質と、第1の媒質と第2の媒質との間に形成されている第3の媒質とを備えている。第1の媒質と第3の媒質との間には、IDT電極が形成されている。このIDT電極において発生する弾性波が第1の媒質と第3の媒質の境界付近を伝搬する弾性境界波となる。
【0004】
ところで、弾性境界波装置の構成によっては、IDT電極において、SH波やSV波などの複数種類の弾性波が生じることがある。例えば、SH波の基本モードを利用した弾性境界波装置においては、SH波の基本モード以外のSV波などの弾性波は、スプリアスとなる場合がある。このため、従来、利用する弾性波以外の弾性波に起因するスプリアスを抑圧する技術が種々提案されている。
【0005】
例えば、下記の特許文献1には、スプリアスとなるストンリー波を抑制するために、圧電基板のカット角θ、IDT電極の膜厚及び酸化ケイ素膜の膜厚を所定の範囲内とすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−267366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載の弾性境界波装置では、圧電基板のカット角θ、IDT電極の膜厚及び酸化ケイ素膜の膜厚のうちのひとつが決定されると、その他の2つも自動的に決定されてしまう。このため、不要波を抑圧しようとすると、使用する弾性波の伝搬特性などが悪化してしまい、弾性境界波装置の性能が低下してしまう場合があった。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、不要波が抑圧されており、高性能な弾性境界波装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る弾性境界波装置は、第1の媒質と、第2の媒質と、第3の媒質と、吸音層と、IDT電極とを備えている。第1の媒質は、圧電体からなる。第2の媒質は、第1の媒質の上に形成されている。第2の媒質は、窒化ケイ素からなる。第3の媒質は、第1の媒質と第2の媒質との間に形成されている。第3の媒質は、酸化ケイ素からなる。吸音層は、第2の媒質の上に形成されている。IDT電極は、第1の媒質と第3の媒質との間に形成されている。第2の媒質の弾性境界波の波長により規格化された厚みをh2/λとし、第3の媒質の弾性境界波の波長により規格化された厚みをh3/λとしたときに、第2の媒質の波長規格化厚みh2/λが0.60×(h3/λ)−1.24×(h3/λ)+0.94よりも小さい。
【0010】
本発明に係る弾性境界波装置のある特定の局面では、第3の媒質の波長規格化厚みh3/λは、0.2〜0.8の範囲内にある。第3の媒質の波長規格化厚みh3/λが0.2を下回ると、第1の媒質のバルク波音速に対して、弾性境界波の音速が速くなりすぎ、使用する弾性境界波が第1の媒質側に漏洩する場合がある。また、第3の媒質の波長規格化厚みh3/λが0.8より大きいと、使用する弾性境界波の高次モードに起因するスプリアスが生じる場合がある。
【0011】
本発明に係る弾性境界波装置の別の特定の局面では、第2の媒質の波長規格化厚みh2/λが0.33×(h3/λ)−0.69×(h3/λ)+0.55よりも大きい。この構成によれば、SH波を第3の媒質中により効果的に閉じ込めることができる。従って、弾性境界波装置をより高性能化することができる。
【0012】
本発明に係る弾性境界波装置のさらに他の特定の局面では、吸音層は、樹脂組成物からなる。
【0013】
本発明に係る弾性境界波装置のさらに別の特定の局面では、圧電体は、LiNbOまたはLiTaOである。
【0014】
本発明に係る弾性境界波装置の製造方法は、圧電体を用意する工程と、圧電体上にIDT電極を形成する工程と、圧電体の上にIDT電極を覆うように酸化ケイ素膜を形成する酸化ケイ素膜形成工程と、酸化ケイ素膜上に窒化ケイ素膜を形成する窒化ケイ素膜形成工程と、窒化ケイ素膜上に吸音層を形成する工程とを備える。本発明に係る弾性境界波装置の製造方法では、酸化ケイ素膜形成工程及び窒化ケイ素膜形成工程において、酸化ケイ素膜と窒化ケイ素膜とを、SH波が酸化ケイ素膜内に閉じ込められる弾性波となり、SV波が窒化ケイ素膜表面にエネルギー分布を有する弾性波となるように形成する。
【0015】
本発明に係る弾性境界波装置の製造方法のある特定の局面では、酸化ケイ素膜形成工程及び窒化ケイ素膜形成工程において、酸化ケイ素膜と窒化ケイ素膜とを、窒化ケイ素膜の弾性境界波の波長により規格化された厚みをh2/λとし、酸化ケイ素膜の弾性境界波の波長により規格化された厚みをh3/λとしたときに、窒化ケイ素膜の波長規格化厚みh2/λが0.60×(h3/λ)−1.24×(h3/λ)+0.94よりも小さくなるように形成する。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、第2の媒質の波長規格化厚みh2/λが0.60×(h3/λ)−1.24×(h3/λ)+0.94よりも小さい。このため、SV波を、第2の媒質の表面にエネルギー分布を持つ弾性波とすることができる。よって、SV波が吸音層により吸音される。従って、SV波を抑圧することができる。また、SV波の抑圧を第2及び第3の媒質の厚みの設定のみで行うため、設計自由度が高い。このため、SV波の抑圧と、使用する弾性波の高い伝搬特性との両立を図ることが容易である。従って、本発明によれば、不要波が抑圧されており、高性能な弾性境界波装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明を実施した一実施形態に係る弾性境界波装置の略図的平面図である。
【図2】本発明を実施した一実施形態に係る弾性境界波装置の略図的断面図である。
【図3】第2の媒質の波長規格化厚みと、SH波およびSV波各々について、第2の媒質の波長規格化膜厚が1.2の場合の音速に対する相対音速との関係を表すグラフである。
【図4】SV波が第2の媒質の表面にエネルギー分布を持つ弾性波となる条件を表すグラフである。
【図5】SH波が第2の媒質の表面にエネルギー分布を持たず、弾性境界波となる条件を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施した好ましい形態について、図1及び図2に示す弾性境界波装置1を例に挙げて説明する。但し、弾性境界波装置1は、単なる例示である。本発明は、弾性境界波装置1に何ら限定されない。
【0019】
図1は、本実施形態に係る弾性境界波装置の略図的平面図である。図2は、本実施形態に係る弾性境界波装置の一部の略図的断面図である。
【0020】
図1に示す弾性境界波装置1は、弾性境界波共振子である。もっとも、本発明の弾性境界波装置は、弾性境界波共振子に限定されない。本発明の弾性境界波装置は、例えば、弾性境界波フィルタ装置であってもよい。
【0021】
図2に示すように、弾性境界波装置1は、第1〜第3の媒質11〜13を備えている。第1の媒質11は、圧電体からなる。第1の媒質11を構成する圧電体の種類は特に限定されない。第1の媒質11を構成する圧電体は、例えば、LiNbO、LiTaO、水晶などであってもよい。
【0022】
第2の媒質12は、第1の媒質11の上方に形成されている。第2の媒質12は、SiNなどの窒化ケイ素からなる。
【0023】
第3の媒質13は、第1の媒質11と第2の媒質12との間に形成されている。第3の媒質13は、SiOなどの酸化ケイ素からなる。
【0024】
本実施形態においては、第2及び第3の媒質12,13は、h2/λ<0.60×(h3/λ)−1.24×(h3/λ)+0.94を満たすように形成されている。また、本実施形態では、第2及び第3の媒質12,13は、h2/λ>0.33×(h3/λ)−0.69×(h3/λ)+0.55を満たすように形成されている。
【0025】
但し、h2/λは、IDT電極16のピッチで規定される弾性境界波の波長λで規格化された第2の媒質12の波長規格化厚みである。h3/λは、IDT電極16のピッチで規定される弾性境界波の波長λで規格化された第3の媒質13の波長規格化厚みである。
【0026】
第3の媒質13の波長規格化厚みh3/λは、0.2〜0.8の範囲内にあることが好ましい。第3の媒質13の波長規格化厚みh3/λが小さすぎると、第1の媒質11のバルク波音速よりも、第1の媒質11と第3の媒質13の境界付近を伝搬する弾性境界波の音速が速くなりすぎ、弾性境界波が第1の媒質11側に漏洩してしまう場合がある。また、第3の媒質13の波長規格化厚みh3/λが大きすぎると、使用する弾性境界波(SH波の基本モード)の高次モードに起因するスプリアスが生じることがある。
【0027】
図1及び図2に示すように、第1の媒質11と第3の媒質13との間には、IDT電極16と、IDT電極16の弾性波伝搬方向の両側に設けられている反射器19a、19bとが設けられている。IDT電極16は、互いに間挿し合う一対のくし歯電極16a、16bを有する。IDT電極16及び反射器19a、19bの材質は、導電性を有するものである限りにおいて特に限定されない。IDT電極16及び反射器19a、19bは、例えば、Al,Ag,Au,Pt,Ni,Cr,Cuなどの金属や、それらの金属を一種以上含む合金により形成することができる。また、IDT電極16及び反射器19a、19bは、例えば、複数の導電膜を有する導電膜積層体により構成されていてもよい。
【0028】
図2に示すように、第2の媒質12の上には、吸音層14が形成されている。吸音層14は、吸音層14に到達した弾性波を吸音する層である。吸音層14の材質は、吸音層14に到達した弾性波を吸音可能なものである限りにおいて特に限定されない。吸音層14は、例えば、エポキシ、ポリイミドなどの樹脂を含む樹脂組成物により形成することができる。
【0029】
本実施形態の弾性境界波装置1は、SH波(基本モード)を弾性境界波として利用する装置である。弾性境界波装置1では、SH波(基本モード)以外のSV波などの弾性波は、不要波とされている。このため、弾性境界波装置1の高性能化を図るためには、利用するSH波を第3の媒質13中に閉じ込める一方、不要波となるSV波を第2の媒質12側に漏洩させて、吸音層14により吸音させる必要がある。
【0030】
図3は、第3の媒質13が波長規格化膜厚h3/λ=0.2のSiO膜である場合の、弾性境界波装置1における第2の媒質の波長規格化厚みと、SH波及びSV波の弾性境界波の音速に対する相対音速との関係を表すグラフである。但し、図3に示すデータは、吸音層14を設けていない場合のデータである。
【0031】
本発明者は、図3に示すように、IDT電極16のピッチで定められる波長λで規格化された第2の媒質12の波長規格化厚み(h2/λ)が変化したときの、SH波及びSV波の相対音速の挙動が異なることに着目した。具体的には、図3に示すように、SH波は、第2の媒質12の波長規格化厚みh2/λが小さくなっても相対音速はそれほど変化しない。それに対して、SV波は、第2の媒質12の波長規格化厚みh2/λが約0.6より小さくなると、相対音速が急激に低下する。第2の媒質12の厚みが変化することによる相対音速の低下は、第2の媒質12の表面にエネルギー分布を持たない境界波には起こりえず、第2の媒質12の表面にエネルギー分布を持つ表面波に見られる性質である。すなわち、相対音速の低下は、弾性波のエネルギーが第2の媒質12の表面に分布している、ということを意味する。
【0032】
図3より、SH波は、第2の媒質12の波長規格化厚みh2/λが小さくなっても、第2の媒質12の表面12aにエネルギー分布を持つ弾性波となりにくいのに対して、SV波は、第2の媒質12の波長規格化厚みh2/λが小さくなると、第2の媒質12の表面12aにエネルギー分布を持つ弾性波となりやすいことが分かる。この結果から、本発明者は、第3の媒質13の波長規格化厚みに対する第2の媒質12の波長規格化厚みを所定以下とすることで、SH波を弾性境界波として第3の媒質13内に閉じ込めつつ、不要波であるSV波を、第2の媒質12の表面12aにエネルギー分布を持つ弾性波とできることに想到した。すなわち、弾性境界波装置の特性を劣化させることなく、不要波を抑制することができる。
【0033】
そして、本発明者は、第3の媒質13の波長規格化厚みh3/λが0.2,0.3,0.4,0.5,0.6,0.7及び0.8であるときのそれぞれにおいて、SV波の相対音速が、第2の媒質の波長規格化膜厚が1.2の場合の音速に比べて0.05%変化するときの第2の媒質12の波長規格化厚みh2/λを求めた。その結果を図4に示す。
【0034】
図4に示すように、SV波の相対音速が、第2の媒質の波長規格化膜厚が1.2の場合の音速に比べて0.05%変化するときの第2の媒質12の波長規格化厚みh2/λと第3の媒質13の波長規格化厚みh3/λとの関係は、下記曲線C1により好適に近似された。
【0035】
曲線C1:h2/λ=0.60×(h3/λ)−1.24×(h3/λ)+0.94
【0036】
すなわち、図4において、下記曲線C1よりも第2の媒質12の波長規格化厚みh2/λが大きい領域においては、SV波は、第2の媒質12の表面12aにエネルギー分布を持たない弾性境界波となる。一方、図4において、下記曲線C1よりも第2の媒質12の波長規格化厚みh2/λが小さい領域においては、SV波は、第2の媒質12の表面12aにエネルギー分布を持つ。
【0037】
従って、h2/λ<0.60×(h3/λ)−1.24×(h3/λ)+0.94が満たされるように、第2及び第3の媒質12,13が形成されている本実施形態の弾性境界波装置1では、不要波であるSV波を第2の媒質12の表面12aにまで漏洩させることができる。その結果、吸音層14により吸音させることができる。従って、SV波に起因するスプリアスを抑圧することができる。
【0038】
また、本実施形態では、第3の媒質13の波長規格化膜厚h3/λに対する第2の媒質12の波長規格化膜厚h2/λが所定以下であることのみによりSV波を抑圧できるため、設計自由度が高い。従って、不要波の抑圧と、高性能化との両立を容易に図ることができる。
【0039】
また、本発明者は、第3の媒質13の波長規格化厚みh3/λが0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7および0.8であるときのそれぞれにおいて、SH波の相対音速が、第2の媒質の波長規格化膜厚が1.2の場合の音速に比べて0.05%変化するときの第2の媒質12の波長規格化厚みh2/λを求めた。その結果を図5に示す。
【0040】
図5に示すように、SH波の相対音速が、第2の媒質の波長規格化膜厚が1.2の場合の音速に比べて0.05%変化するときの第2の媒質12の波長規格化厚みh2/λと第3の媒質13の波長規格化厚みh3/λとの関係は、下記曲線C2により好適に近似された。
【0041】
曲線C2:h2/λ=0.33×(h3/λ)−0.69×(h3/λ)+0.55
【0042】
すなわち、図5において、下記曲線C2よりも第2の媒質12の波長規格化厚みh2/λが大きい領域においては、SH波は、第2の媒質12の表面12aにエネルギー分布を持たない弾性境界波となる。一方、図5において、下記曲線C2よりも第2の媒質12の波長規格化厚みh2/λが小さい領域においては、SH波は、第2の媒質12の表面12aにエネルギー分布を持つ。
【0043】
従って、h2/λ>0.33×(h3/λ)−0.69×(h3/λ)+0.55が満たされるように、第2及び第3の媒質12,13が形成されている本実施形態の弾性境界波装置1では、利用する弾性波であるSH波を第3の媒質13中に効果的に閉じ込めることができる。従って、より高性能な弾性境界波装置1を実現することができる。
【0044】
このように、本実施形態では、h2/λ<0.60×(h3/λ)−1.24×(h3/λ)+0.94及びh2/λ>0.33×(h3/λ)−0.69×(h3/λ)+0.55の両方が満たされるように第2及び第3の媒質12,13が形成されている。このため、SV波に起因するスプリアスが抑圧されており、高性能な弾性境界波装置1を実現することができる。
【0045】
なお、本実施形態の弾性境界波装置1は、例えば、以下のような方法で製造することができる。まず、第1の媒質11を構成する圧電体を用意する。次に、圧電体上にIDT電極16を形成する。IDT電極16の形成方法は特に限定されず、例えば、スパッタリング法やCVD法などの気相成長法と、フォトリソグラフィー法などのパターニング方法とを組み合わせることによりIDT電極16を形成することができる。
【0046】
次に、圧電体の上に、IDT電極16を覆うように、第3の媒質13を構成する酸化ケイ素膜を形成し(酸化ケイ素膜形成工程)、さらに、酸化ケイ素膜の上に、第2の媒質12を構成する窒化ケイ素膜を形成する(窒化ケイ素膜形成工程)。酸化ケイ素膜及び窒化ケイ素膜の形成方法は特に限定されない。酸化ケイ素膜及び窒化ケイ素膜は、例えば、スパッタリング法やCVD法などの気相成長法等により形成することができる。
【0047】
最後に、窒化ケイ素膜の上に、吸音層14を形成ことにより、弾性境界波装置1を完成させることができる。なお、吸音層14の形成は、例えば、塗布法により行うことができる。
【0048】
ここで、SH波が酸化ケイ素膜に閉じ込められる弾性波となり、SV波が窒化ケイ素膜の表面にエネルギー分布を有する弾性波となるように、窒化ケイ素膜と酸化ケイ素膜とを形成する。
【0049】
具体的には、上記酸化ケイ素膜形成工程と窒化ケイ素膜形成工程とにおいて、h2/λ<0.60×(h3/λ)−1.24×(h3/λ)+0.94及びh2/λ>0.33×(h3/λ)−0.69×(h3/λ)+0.55の両方が満たされるように酸化ケイ素膜と窒化ケイ素膜とを形成する。従って、上述の通り、SV波に起因するスプリアスが抑圧されており、高性能な弾性境界波装置1を製造することができる。
【符号の説明】
【0050】
1…弾性境界波装置
11…第1の媒質
12…第2の媒質
12a…第2の媒質の表面
13…第3の媒質
14…吸音層
16…IDT電極
16a、16b…くし歯電極
19a、19b…反射器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電体からなる第1の媒質と、
前記第1の媒質の上に形成されており、窒化ケイ素からなる第2の媒質と、
前記第1の媒質と前記第2の媒質との間に形成されており、酸化ケイ素からなる第3の媒質と、
前記第2の媒質の上に形成されている吸音層と、
前記第1の媒質と前記第3の媒質との間に形成されているIDT電極とを備える弾性境界波装置であって、
前記第2の媒質の弾性境界波の波長により規格化された厚みをh2/λとし、前記第3の媒質の弾性境界波の波長により規格化された厚みをh3/λとしたときに、前記第2の媒質の波長規格化厚みh2/λが0.60×(h3/λ)−1.24×(h3/λ)+0.94よりも小さい、弾性境界波装置。
【請求項2】
前記第3の媒質の波長規格化厚みh3/λが0.2〜0.8の範囲内にある、請求項1に記載の弾性境界波装置。
【請求項3】
前記第2の媒質の波長規格化厚みh2/λが0.33×(h3/λ)−0.69×(h3/λ)+0.55よりも大きい、請求項1または2に記載の弾性境界波装置。
【請求項4】
前記吸音層は、樹脂組成物からなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の弾性境界波装置。
【請求項5】
前記圧電体は、LiNbOまたはLiTaOである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の弾性境界波装置。
【請求項6】
圧電体を用意する工程と、
前記圧電体上にIDT電極を形成する工程と、
前記圧電体の上に前記IDT電極を覆うように酸化ケイ素膜を形成する酸化ケイ素膜形成工程と、
前記酸化ケイ素膜上に窒化ケイ素膜を形成する窒化ケイ素膜形成工程と、
前記窒化ケイ素膜上に吸音層を形成する工程とを備え、
前記酸化ケイ素膜形成工程及び前記窒化ケイ素膜形成工程において、前記酸化ケイ素膜と前記窒化ケイ素膜とを、SH波が前記酸化ケイ素膜内に閉じ込められる弾性波となり、SV波が前記窒化ケイ素膜表面にエネルギー分布を有する弾性波となるように形成する、弾性境界波装置の製造方法。
【請求項7】
前記酸化ケイ素膜形成工程及び前記窒化ケイ素膜形成工程において、前記酸化ケイ素膜と前記窒化ケイ素膜とを、前記窒化ケイ素膜の弾性境界波の波長により規格化された厚みをh2/λとし、前記酸化ケイ素膜の弾性境界波の波長により規格化された厚みをh3/λとしたときに、前記窒化ケイ素膜の波長規格化厚みh2/λが0.60×(h3/λ)−1.24×(h3/λ)+0.94よりも小さくなるように形成する、請求項6に記載の弾性境界波装置の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−135468(P2011−135468A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294791(P2009−294791)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】