説明

弾性手袋の被覆

ヒドロゲル被覆を含む弾性手袋を提供する。本発明者等は、このヒドロゲル被覆が、該手袋の使用感(湿潤性および/または乾燥性)を改善し、しかもその着用者に対して、幾つかの他の利便を付与し得ることを見出した。具体的には、このヒドロゲル被覆は、架橋されたヒドロゲルの網状構造内に保持された、活性薬剤を含む。水性環境に暴露された場合に、該ヒドロゲル被覆が膨潤し、その孔を介する該活性薬剤の拡散およびその着用者の皮膚との接触を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(発明の背景)
弾性手袋は、使用者の手にしっかりと適合するように作られ、しかもその使用中良好な把持性および触質性を与える。更に、弾性手袋は、通常、その着用者と、該手袋を使用している環境との間のバリアーを与えるべく、液体不透過性である。不幸にして、該弾性手袋の持つこれらの望ましい特性は、該着用者の皮膚に対して苛酷な環境を生成する。例えば、発汗は、手袋の着用者に共通する問題点であり、また生成する高湿度環境は様々な皮膚に係る問題に導く可能性があり、該問題点は、例えばカビや酵母の生育、並びに皮膚の細菌およびウイルス感染の問題を含む。更に、医学の分野で弾性手袋を使用するものは、石鹸または衛生用アルコール処方物で、その手を頻繁に洗浄する。この定常的な洗浄は、皮膚にとって苛酷であり、過度の乾燥を引起こし、そのために他の皮膚に関する問題が更に悪化する恐れがある。
過去においては、弾性手袋の着用者との接触表面は、タルクまたは炭酸カルシウム粉末等の粉末で処理して、水分を吸収し、かつ該手袋の着用者の直面する上記問題点の幾つかを軽減していた。この粉末は、また着用をも簡単化する。しかし、粉末は幾つかの用途において依然として許容し得るものであるが、これは典型的には、外科またはクリーンルーム型の環境においては、望ましからぬものである。そのために、使用中に着用者の手が暴露される、苛酷な環境に由来する可能性のある上記問題点の幾つかを軽減することのできる、改良された手袋に対する需要が、一般的に存在する。
【0002】
(発明の概要)
本発明の一態様によれば、弾性手袋が開示され、これは弾性材料で作られた層を含む支持本体を含む。この支持本体は、内側表面と外側表面とを画成する。被覆が、該支持本体の内側表面上にあり、また該手袋の使用者と接触する表面を画成する。該被覆は、架橋されたヒドロゲルの網状構造を含み、その内部に、使用者に利便を付与することのできる、活性薬剤を保持することができる。この活性薬剤は、該被覆が水性環境と接触したときに、該網状構造から放出し得る。
本発明の別の態様によれば、弾性物品が開示され、これは弾性材料で作られた層を含む支持本体を含む。該弾性材料は、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-イソプレンブロックコポリマー、スチレン-ブタジエンブロックコポリマー、天然ゴムラテックス、ニトリルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ポリ塩化ビニル、シリコーンゴムおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される。該支持本体は、表面を画成し、該表面上には被覆がある。この被覆は、実質的に水不溶性であり、架橋されたヒドロゲルの網状構造を含み、その内部に、利便を付与することのできる、活性薬剤を保持することができる。この活性薬剤は、該被覆が水性環境と接触したときに、該網状構造から放出し得る。
【0003】
本発明の更に別の態様によれば、支持本体と、該支持本体の表面上にある被覆とを含む、弾性手袋の製法を開示する。この方法は、手の形状の浸漬型を、弾性ポリマーを含む少なくとも一つの浴に浸漬して、該手袋の支持本体を生成する工程を含む。該支持本体または該手の形状の浸漬型に、水性溶液を注いで、該手袋の被覆を生成する。該水性溶液は、少なくとも1種のヒドロゲル生成ポリマーおよび活性薬剤を含む。該ヒドロゲル生成ポリマーを架橋して、ヒドロゲル網状構造を生成する。この手袋において、該活性薬剤は、該ヒドロゲル網状構造内に保持されており、また該被覆が水性環境と接触したときに、該網状構造から該活性薬剤を放出し得る。
本発明の更に別の態様によれば、支持本体と、該支持本体の表面上にある被覆とを含む、弾性手袋の製法を開示する。この方法は、手の形状の浸漬型を、弾性ポリマーを含む少なくとも一つの浴に浸漬して、該手袋の支持本体を生成する工程を含む。該支持本体または該手の形状の浸漬型に、水性溶液を注いで、該手袋の被覆を生成する。この水性溶液は、少なくとも1種のヒドロゲル生成ポリマーを含有する。このヒドロゲル生成ポリマーを架橋して、ヒドロゲル網状構造を生成する。活性薬剤を、該ヒドロゲル網状構造に配合するが、この活性薬剤は、該被覆が水性環境と接触したときに、該網状構造から遊離し得る。
【0004】
本発明の他の特徴並びに局面を、以下により詳細に論じる。
本発明の最良の態様を含む、当業者に向けられた、本発明の完全な、かつその実施を容易にする開示を、本明細書の残りの部分においてより具体的に示すが、この開示は、添付図面を参照して行われる。
本明細書および添付図面における参照番号の反復的な使用は、本発明の同一または類似の特徴または要素を表すものである。
【0005】
(代表的な態様の詳細な説明)
ここでは、本発明の様々な態様について詳細に言及するが、その1またはそれ以上の例を以下に記載する。各例は、本発明を説明するためのものであって、本発明を限定するものではない。事実、本発明の範囲および精神を逸脱すること無しに、本発明に対して様々な改良並びに変更を行うことが可能であることは、当業者には明らかであろう。例えば、一態様の一部として例示しまたは説明した特長を、他の態様に適用して、更に別の態様を得ることも可能である。従って、本発明は、このような改良並びに変更も、添付した特許請求の範囲およびその等価な範囲に含まれるものとして、これらをもカバーするものである。
【0006】
一般に、本発明は、ヒドロゲル被覆を含む、コンドームまたは手袋等の弾性物品を意図する。本発明者等は、このヒドロゲル被覆が、該物品の使用感(湿潤性および/または乾燥性)を改善し、しかもその使用者に対して、幾つかの他の利便を付与し得ることを見出した。具体的には、このヒドロゲル被覆は、架橋されたヒドロゲルの網状構造内に保持された、活性薬剤を含む。水性環境に暴露された場合に、該ヒドロゲル被覆が膨潤し、その孔を介する該活性薬剤の拡散およびその使用者の皮膚との接触が可能となる。
【0007】
例えば、添付図1-2を参照すると、弾性手袋20の一態様が例示されており、これは使用者22の手に被せることができる。この手袋20は、その基本的な形状を持つ支持本体24を含む。この支持本体24は、当分野において公知の様々な天然および/または合成の、弾性材料の何れかを用いて作ることができる。例えば、弾性材料の適当な幾つかの例は、S-EB-S (スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン)ブロックコポリマー、S-I-S (スチレン-イソプレン-スチレン)ブロックコポリマー、S-B-S (スチレン-ブタジエン-スチレン)ブロックコポリマー、S-I (スチレン-イソプレン)ブロックコポリマー、S-B (スチレン-ブタジエン)ブロックコポリマー、天然ゴムラテックス、ニトリルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ポリ塩化ビニル、シリコーンゴムおよびこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。該支持本体24を製造するのに使用できる、他の適当な弾性材料は、Buddenhagen等の米国特許第5,112,900号、Buddenhagen等の米国特許第5,407,715号、Plamthottamの米国特許第5,900,452号、Plamthottamの米国特許第6,288,159号およびWeikel等の米国特許第6,306,514号に記載されている。あらゆる目的のために、これら文献の内容全体を本発明の参考とする。
【0008】
一態様においては、該支持本体24を、天然ゴムラテックスから製造する。天然ラテックスから該支持本体24を製造するためには、その浸漬型を、先ず凝固剤浴に浸漬して、該浸漬型からの該手袋の、後の剥ぎ取りを容易にする。該凝固剤浴は、炭酸カルシウムおよび/または硝酸カルシウムを含むことができる。その後、この凝固剤で被覆された浸漬型を乾燥し、引続き一種またはそれ以上のラテックス浴に浸漬する。次いで、得られるラテックス層を、典型的には水中で滲出処理して、該ラテックスおよび凝固剤中の水溶性不純物の大部分を抽出する。次に、この被覆された浸漬型を乾燥して、該ゴムを硬化(即ち架橋)する。天然ゴム製の手袋を製造するときに使用する条件、処理法および材料は、当分野において周知であり、本発明の実施にとって重大なことではないものと理解すべきである。
【0009】
該支持本体24を製造するのに使用した特定の材料とは無関係に、該手袋20も被覆26を含み、これは該支持本体24によって画成される、内側表面28上に存在する。この態様において、該被覆26は、該手袋20の着用者との接触面27を画成し、この表面が使用者22の身体と接触する。該被覆26は、本発明において二重の目的を果たしている。具体的には、該被覆26は、使用者の手が乾燥または湿っている場合に、即ち乾燥および湿潤時着用のときに、該手袋20の着用を容易にする、低い摩擦係数を有する。この低い摩擦係数は、表面の組織を通して、および/または該被覆26を製造するのに使用した材料の潤滑性を通して付与することができる。着用の容易さに加えて、該被覆26のもう一つの目的は、使用者の皮膚と接触させ、また幾つかの所定の利便をもたらすために、その内部に収容された活性薬剤を、調節自在に放出することである。本発明者等は、該被覆26を、内部に該活性薬剤を保持した、ヒドロゲルで作ることによって、このような二重の目的が達成可能であることを見出した。
【0010】
一般的に言えば、様々なポリマーの何れかを本発明において使用して、このヒドロゲルを作ることができる。典型的には、親水性かつ水溶性の、少なくとも1種のヒドロゲル-生成モノマーから製造したポリマーを使用する。本発明において、このヒドロゲルを製造するのに使用できる、多くの公知の親水性かつ水溶性のモノマーが存在する。このようなモノマーの幾つかの例は、ビニルピロリドン、ヒドロキシエチルアクリレートまたはメタクリレート(例えば、2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ヒドロキシプロピルアクリレートまたはメタクリレート、アクリル酸またはメタクリル酸、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル、ビニルピリジン、アクリルアミド、ビニルアルコール、エチレンオキシド、これらの誘導体等を含むが、これらに限定されない。適当なモノマーの他の例は、James等の米国特許第4,499,154号等に記載されている。あらゆる目的のために、この文献の内容全体を本発明の参考とする。得られるポリマーは、ホモポリマーまたは共重合体(例えば、コポリマー、ターポリマー等)であり得、またノニオン性、アニオン性、カチオン性、または両性ポリマーであり得る。更に、このポリマーは、一種の型(即ち、均質)または異なるポリマーの混合物(即ち、不均質)何れであっても良い。
【0011】
このヒドロゲルを製造するために、公知のイオン性または共有結合的架橋技術を包含する、任意の公知の架橋技術を利用して、該ポリマーを架橋する。例えば、幾つかの態様においては、架橋剤を用いて架橋を容易にすることができる。架橋剤の例は、多価アルコール(例えば、グリセロール)、ポリアジリジン化合物(例えば、2,2-ビスヒドロキシメチルブタノールトリス[3-(1-アジリジン)プロピオネート]またはトリアジリジン)、エポキシ化合物、ハロエポキシ化合物(例えば、エピクロルヒドリン)、アルデヒド化合物(例えば、尿素-ホルムアルデヒド、メラミン-ホルムアルデヒド、ヒダントイン-ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、グリオキサール、マロンアルデヒド、サクシンアルデヒド、アジポアルデヒド、またはジアルデヒド澱粉)、ポリイソシアネート化合物(例えば、2,4-トルエンジイソシアネート)等を含むが、これらに限定されない。架橋は、該支持本体24の表面28に該ポリマーを適用する前に、その間におよび/またはその後に行うことができる。例えば、一態様において、架橋剤とポリマーとを含む水性溶液を、該表面28に適用する。その後、該混合物を、高温にて硬化する。熱的な活性化に加えて、他の周知の技術を利用して、架橋を実施することも可能である。例えば、架橋は、イオン化輻射により引起こすことができ、この輻射は、媒体中に直接または間接的にイオンを生成するのに十分なエネルギーを持つものである。本発明において使用できるイオン化輻射技術の幾つかの適当な例は、電子ビーム輻射、天然または人工放射性同位体輻射線(例えば、α-、β-およびγ-線)、X-線、中性子ビーム、正電荷ビーム、レーザービーム等を含むが、これらに限定されない。電子ビーム輻射は、例えば電子ビームデバイスによる加速された電子の生成を含む。電子ビームデバイスは、一般に当分野において周知である。例えば、一態様において、電子ビームデバイスは、マサチューセッツ州、ウォバーンのエナージーサイエンスズ社(Energy Sciences, Inc.)から、「マイクロビーム(Microbeam) LV」として入手できるものを使用することができる。適当な電子ビームデバイスの他の例は、Livesayの米国特許第5,003,178号、Avneryの米国特許第5,962,995号、Avnery等の米国特許第6,407,492号に記載されている。あらゆる目的のために、これら文献の内容全体を本発明の参考とする。
【0012】
使用する技術とは無関係に、架橋によりヒドロゲルが生成し、これは、実質的に水不溶性の3-次元網状構造によって構成される。従って、水に暴露されたときに、このヒドロゲルは溶解されず、その代わりに幾分かの水を吸収することができる。例えば、このヒドロゲルは、約20%〜約90%なる範囲の含水量、また幾つかの態様においては、約35%〜約85%なる範囲の含水量、更に幾つかの態様においては、約50%〜約80%なる範囲の含水量を達成することができる。このヒドロゲルの含水量は、以下のようにして決定される:
含水量(%)=[(湿潤ヒドロゲル重量と乾燥ヒドロゲル重量の差)/
(乾燥ヒドロゲル重量)]×100
水を吸収したときに、このヒドロゲルは膨潤し、結果として架橋結合同士の領域を増大させ、孔を生成する。例えば、このヒドロゲルの最大の含水率において、これは、約1nm〜約10μmなる範囲、幾つかの態様においては、約10nm〜約1μmなる範囲、また幾つかの態様においては、約50nm〜約100nmなる範囲の平均径を持つ孔を持つことができる。
【0013】
このヒドロゲルが該手袋20上にある場合、予想されるその使用状態は、様々な起源の水分、例えば洗浄に起因する使用者の手の上に存在する水、哺乳動物の汗腺から分泌される水分等に対する、このヒドロゲルの暴露である。例えば、ヒトの汗腺には、2種の型、即ちエクリンおよびアポクリンがある。アポクリン腺は、腋の下および耳、臍、乳頭および肛門性器間領域近傍のみにおいて見られ、臭気腺である。しかし、エクリン腺は、手を含む身体全体に存在し、また体温の調節を司っている。明らかに、このエクリン腺から分泌される流体の量は、体温に依存しているが、寒い日においてさえ、経皮による幾分かの水分の喪失も、同様に生じているであろう。弾性手袋(例えば、外科手術用の手袋)は、しばしば使用者の手にしっかりと適合しており、外気によって、容易に手を冷やさないようになっているので、手袋を着用している場合には、使用者の手の温度が増大し易い。この温度の増加は、該エクリン腺による更なる流体の分泌を引起こす可能性がある。
【0014】
従って、使用者の皮膚近傍に配置された場合、このヒドロゲルは、常に、該エクリン腺により分泌される流体、またはある他の源由来の流体に暴露されるであろう。この暴露は、該ヒドロゲルに関する水和度の増大、および対応する該ヒドロゲルの孔径の増大に導く。この孔径の増大に伴って、該架橋されたヒドロゲル網状構造における該活性薬剤が遊離し得る。一旦放出されると、この活性薬剤は、細胞レベルにおいて上皮組織と直接相互作用して、皮膚に対して利便をもたらす。あるいはまた、この活性薬剤は、皮膚表面またはその近傍において、様々な成分と相互作用して、所定の利便を与えることができる。
【0015】
該活性薬剤は、該ヒドロゲルの形成前、その最中および/またはその後に、その内部に配合することができる。例えば、一態様において、該活性薬剤は、架橋前に、上記のヒドロゲル-生成ポリマーおよび架橋剤と混合することができる。架橋した場合、該活性薬剤は、生成する3-次元網状構造内に保持される。上記の如く、該活性薬剤は、該ヒドロゲルの形成後に適用することも可能である。例えば、該ヒドロゲルに、該活性薬剤を含有する水性溶液を適用することができる。上記のように、この水性溶液は、該ヒドロゲルを水和し、有孔率の増大を引起こす。この高い有孔率のために、該活性薬剤は、該孔を介して、該架橋されたヒドロゲル網状構造内に拡散することができる。その後、このヒドロゲルを乾燥し、その内部に該活性薬剤を保持させる。典型的には、この活性薬剤の粒径は、乾燥したときに、該ヒドロゲルの網状構造内に該薬剤が物理的に保持されるように、該ヒドロゲルの孔径よりも小さい。該ヒドロゲル内での該薬剤の物理的な保持とは別に、該活性薬剤は、また例えば共有結合、イオン結合、または水素結合を介して、該ヒドロゲルに化学的に結合することもできる。
【0016】
一般的に言えば、この「活性薬剤(active agent)」は、所定の結果を与えることのできる任意の化合物またはその混合物であり得る。固体状であれ、液体状であれ、該活性薬剤は、典型的には水性系に対して十分に可溶性または混和性であって、該ヒドロゲル網状構造の孔を通して放出し得るものとなり得る。このような活性薬剤の例は、薬物、スキンコンディショナー、植物性薬剤等を含むが、これらに限定されない。「薬物(drugs)」とは、任意の生理的または薬理的に活性な物質を含み、これらは、動物内で局部的な、または全身的な効果を発生する。放出できるこれら薬剤は、抗-炎症剤、免疫抑制剤、抗-微生物剤、麻酔薬、鎮痛剤、ホルモン剤、抗-ヒスタミン剤等を含むが、これらに限定されない。多数のこのような化合物が当業者には公知であり、例えば治療薬の薬理的基礎(The Pharmacological Basis of Therapeutics), Hardman, Limbird, Goodman & Gilman, マグローヒル(McGraw-Hill), N.Y., (1996)並びにNiemiec等の米国特許第6,419,913号、Mantelle等の米国特許第6,562,363号、Rothbard等の米国特許第6,593,292号、Allen, Jr.の米国特許第6,567,693号、およびLavi等の米国特許第6,645,181号に記載されている。あらゆる目的のために、これら文献の内容全体を本発明の参考とする。活性薬剤の幾つかの例をここに記載したが、本発明は、特定の活性薬剤に何等限定されるものではないものと理解すべきである。事実、如何なる使用者に対しても、あらゆる利便を持つ任意の活性薬剤を、本発明に従って使用できる。
【0017】
この点に関連して、一群の適当な薬物は、抗-炎症剤、例えばグルココルチコイド(アドレノコルチコイドステロイド)を包含する。グルココルチコイドの例は、ヒドロコルチゾン、プレニゾン(prenisone)(デルタゾン(deltasone))およびプレドリソンロン(predrisonlone)(ハイデルタゾール(hydeltasol))を包含する。グルココルチコイドは、炎症性の皮膚疾患、例えば湿疹(例えば、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎およびアレルギー性皮膚炎)、水泡性疾患、膠原病性血管疾患(collagen vascular diseases)、サルコイドーシス、スイート病、壊疽性膿皮症、I型反応性らい病、毛細血管腫、扁平苔癬、剥脱性皮膚炎、結節性紅斑、ホルモン分泌異常(アクネおよび多毛症を含む)、毒性表皮性壊死、多形紅斑、皮膚T-細胞リンパ腫、紅斑性狼瘡等を治療するのに使用できる。レチノイド類、例えばレチノール、トレチノイン、イソトレチノイン、エトレチナート、アシトレチン、およびアロチノイドを使用することも可能である。レチノイド類を使用して治療できる可能性のある状態は、例えばアクネ、角質化障害、乾癬、皮膚の老化、紅斑性狼瘡、硬化性粘液水腫、イボ状表皮性母斑、角質層下膿疱性皮膚病、ライター症候群、イボ、扁平苔癬、黒色表皮腫、サルコイドーシス、グローバー(Grover's)病、汗孔角化症等を含むが、これらに限定されない。他の適当な抗-炎症性薬物はCOX-2阻害剤、例えばセレコキシブ(celecoxib)、メロキシカム、ロフェコキシブ(rofecoxib)、およびフロスリド(flosulide)である。これらの薬物は、遊走細胞内の前-炎症性刺激によって誘発され、かつ組織に炎症を起こす、該COX-2(シクロオキシゲナーゼ-2)酵素の生産を阻害する。更に、非-ステロイド系の薬物(NSAIDs)も使用することができる。NSAIDsの例は、アスピリン、イブプロフェン、インドメタシン、フェニルブタゾン、ブロムフェナク、スリンダク、ナブメトン、ケトロラク、メフェナム酸、およびナプロキセンを包含するが、これらに限定されない。
【0018】
免疫抑制薬物は、該活性薬剤を選択することのできる、追加の薬物群を構成する。これらの薬物は、分裂過多(hyperproliferative)疾患、例えば乾癬、並びに免疫疾患、例えば水泡性皮膚病、および白血球破砕性(leukocytoclastic)血管炎を治療するために使用できる。このような薬物の例は、代謝拮抗薬、例えばメトトレキサート、アザチオプリン、フルオロウラシル、ヒドロキシウレア、6-チオカニン(6-thioquanine)、ミコフェノレート、クロラムブシル(chlorambucil)、ビニクリスチン(vinicristine)、ビンブラスチン、およびダクチノマイシン;アルキル化剤、例えばシクロホスファミド、メクロロエタミン(mechloroethamine)塩酸塩、カルムスチン、タキソール、タクロリムス(tacrolimus)、およびビンブラスチン等を含むが、これらに限定されない。
【0019】
もう一つの適当な薬物群は抗-微生物剤、例えば抗菌薬、抗真菌薬、抗-ウイルス薬等を包含する。抗菌薬は、アクネ、皮膚感染症等の状態を治療するために有用である。例えば、幾つかの適当な抗-微生物剤は、ビスフェノール類、例えば2,4,4'-トリクロロ-2'-ヒドロキシジフェニルエーテル(トリクロサン(triclosan));四級アンモニウム化合物、例えば塩化ベンザルコニウム;p-ヒドロキシ安息香酸のエステル、例えばメチルパラベン;ホルムアルデヒドおよびホルムアルデヒドドナー、例えば2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール、ヒダントイン、ジアゾリジニルウレア、およびイミダゾリジニルウレア;アルキルイソチアゾリノン(alkylisothizaolinones);フェノキシエタノール;クロルヘキシジングルコネート;p-クロロメタキシレノール(PCMX);キトサン、例えばキトサンピロリドンカルボキシレート;これらの組み合わせ等を含むが、これらに限定されない。抗真菌薬も、体幹白癬、足部白癬、爪真菌症、カンジダ症、クロナマズ、爪真菌症等の状態を治療するために有用である抗真菌薬の例は、アゾール系の抗真菌薬、例えばイトラコナゾール、ミコナゾールおよびフルコナゾールを含むが、これらに限定されない。抗-ウイルス薬の例は、アシクロビル、ファムシクロビルおよびバラシクロビル(valacyclovir)を含むが、これらに限定されない。このような薬剤は、ウイルス性疾患、例えばヘルペスの治療にとって有用である。
【0020】
抗-ヒスタミン薬は、更に別の適当な薬物群である。このような抗-ヒスタミン薬の例は、テルフェナジン、アステミゾール、ロロタジン(lorotadine)、セチリジン、アクリバスチン、テメラスチン、シメチジン、ラニチジン、ファモチジン、ニザチジン等を含む。これらの薬物は、掻痒症、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、乾癬等の状態の治療にとって有用である。更に、局所麻酔剤は、使用できるもう一つの薬物群を構成する。局所麻酔剤の例は、リドカイン、ブピバカイン、ノボカイン(novocaine)、プロカイン、テトラカイン(tetracaine)、ベンゾカイン、メピバカイン、エチドカイン、2-クロロプロカイン塩酸塩等を含むが、これらに限定されない。
【0021】
薬物以外にも、種々の他の活性薬剤を、本発明の手袋から放出することができる。例えば、幾つかの態様においては、該活性薬剤は、スキン-コンディショナーであり得、これは保水性、柔軟性、肌理、および皮膚に係る他の特性を改善できる。このようなスキン-コンディショナーの一例は、エモリエント剤であり、これは乾燥皮膚を、より正常な水分バランスにまで回復させるのに役立つ。具体的には、エモリエント剤は、ブレンドした油脂を皮膚に適用することにより、皮膚に作用して、これを柔軟にし、その角質層における割れおよび亀裂の幾分かを修復し、皮膚内に水分を取込む保護膜を形成する。本発明において使用するのに適したものであり得るエモリエント剤は、ミツロウ、ステアリン酸ブチル、サーマイド(cermides)、パルミチン酸セチル、ユーセライト(eucerit)、イソヘキサデカン、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ミンクオイル、鉱油、ナッツオイル、オレイルアルコール、石油ゼリーまたはワセリン、グリセラル(glyceral)ステアレート、アボカド油、ホホバ油、ラノリン(またはウールワックス)、ラノリン誘導体、例えばラノリンアルコール、レチニル(retinyl)パルミテート(ビタミンA誘導体)、セテアリル(cetearyl)アルコール、スクアラン、スクアレン、ステアリン酸、ステアリルアルコール、ミリスタル(myristal)ミリステート、様々な脂質、デシルオレエートおよびヒマシ油を含むが、これらに限定されない。他の可能なスキン-コンディショナーは、保湿剤であり、これは、空気中から水分を取込み、かつこれを皮膚上に保持することによって、皮膚に水分を供給することができる。本発明において適したものであり得る保湿剤は、アラニン、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヒアルロン酸、天然湿潤性因子(Natural Moisturizing Factor; 皮膚用の天然保湿剤としての、アミノ酸と塩との混合物)、サッカリドイソメラーゼ、乳酸ナトリウム、ソルビトール、尿素等を含むが、これらに限定されない。更に別の適当なスキン-コンディショナーは、酸化防止剤、皮膚の酸化を防止し、もしくはこれを遅らせ、結果的に皮膚をその早期の老化から保護する、一群の物質を包含する。酸化防止剤の例は、ビタミンE、ビタミンE誘導体、ビタミンC、ビタミンC誘導体、ビタミンAパルミテート、ブチル化ヒドロキシトルエン、フェノール、フェノール誘導体、チオジプロピオネートエステル、ヒドロキノン誘導体、アルキル化アリールアミン、これらの組み合わせ等を含むが、これらに限定されない。
【0022】
該活性薬剤は、また潜在的に膨潤、痒み、充血等を軽減することのできる植物性薬剤であっても良い。使用可能な幾つかの植物性薬剤の例は、セイヨウニンジンボク、アロエベラ、ヒレハリソウ、キンセンカ、ドングクアイ(dong quai)、米国東部産キンポウゲ科サラシナショウマ属植物、カミルレ、マツヨイグサ、オトギリソウ(Hypericum perforatum)、カンゾウの根、クロフサスグリ種子油、セントジョーンズ(St. John's)草(オトギリソウ属植物)、茶の抽出物、セイヨウヤマハッカ、トウガラシ、ローズマリー、アレカカテキュ、ヤエナリ、ルリジサ種子油、アメリカマンサク、コロハ、ラベンダー、大豆、アーモンド、カミルレ抽出物(例えば、ビサボロール)、ニワトコ属植物、花蜜、ベニバナ油、およびエラスチンを含むが、これらに限定されない。
【0023】
上記被覆26は、任意の適当な方法を用いて製造できる。例えば、本発明においては浸漬、噴霧、パッティング、タンブリング等の技術を使用できる。該被覆26が、該表面28全体を覆うことが、一般的には望ましいが、該表面28の一部分のみを、被覆26で覆うことも可能である。乾燥時点の、該被覆26の厚みは、約0.05〜約50μmなる範囲、幾つかの態様では、約0.1〜約20μmなる範囲、および幾つかの態様では、約1〜約10μmなる範囲であり得る。更に、乾燥された被覆は、1gの上記手袋20につき、約0.0001〜約1gなる範囲、幾つかの態様では、該手袋1g当たり、約0.001〜約0.5gなる範囲、および幾つかの態様では、該手袋1g当たり、約0.01〜約0.2gなる範囲で含まれる。更に、該表面28を覆っているものに加えて、該被覆26と同一または異なる追加の被覆が、上記支持本体24の外側表面30(例えば、把持表面)を覆っていても良い。例えば、該表面30上に存在する場合、該ヒドロゲル被覆26は、調節自在に、該手袋20と接触するヒトに対して幾つかの利便を与える、活性薬剤を放出することができる。
本発明に従って製造した弾性物品は、一般的に当分野において公知の様々な方法を用いて製造できる。事実、弾性物品を製造し得る任意の方法を、本発明において利用できる。例えば、弾性物品の製造技術は、浸漬、噴霧、ハロゲン化、乾燥、硬化、並びに当分野において公知の任意の他の技術を用いることができる。この点に関連して、天然ゴムラテックス製手袋の、浸漬-製造法の一態様を、以下においてより詳細に説明する。ここでは、バッチ法を説明するが、セミ-バッチ法および連続法を、本発明において使用することも可能であるものと理解すべきである。
【0024】
先ず、任意の周知の浸漬型、例えば金属、セラミックス、またはプラスチック製の浸漬型を準備する。この浸漬型を、予備加熱したオーブン内を搬送することによって乾燥させて、残留する水分を除去する。次に、この予備加熱した浸漬型を、凝固剤、界面活性剤、水および場合により他の成分、例えば粉末を含む浴に浸漬する。該凝固剤は、カルシウムイオンを含み(例えば、硝酸カルシウム)、そのために、エマルションの保護系が破壊され、結果的に該ラテックスをこの浸漬型上に堆積することができる。該粉末は、後に離型剤として作用する、炭酸カルシウム粉末であり得る。該界面活性剤は、良好な湿潤性を与えて、メニスカスの生成を回避し、該型と堆積したラテックスとの間、特に折返し部分に空気を取込む。上記の如く、該浸漬型は、該乾燥段階において予備加熱され、その余熱が水分をとばして、例えば硝酸カルシウム、炭酸カルシウム粉末、および界面活性剤を該浸漬型の上に残す。他の適当な凝固剤溶液が、Joungの米国特許第4,310,928号にも記載されている。あらゆる目的のために、この文献の内容全体を本発明の参考とする。
【0025】
次いで、この被覆した浸漬型を、天然ゴムラテックス浴液を含むタンクに浸漬する。この浴は、例えば天然ゴムラテックス、安定剤、酸化防止剤、硬化活性化剤、有機促進剤、加硫剤等を含む。該安定剤は、例えばホスフェート型の界面活性剤であり得る。該酸化防止剤は、フェノールを基本とする化合物、例えば2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、であり得る。該硬化活性化剤は、酸化亜鉛であり得る。該有機促進剤は、ジチオカルバメートであり得る。該加硫剤は、硫黄または硫黄-含有化合物であり得る。これら物質を使用する場合、該安定剤、酸化防止剤、活性化剤、促進剤および加硫剤は、小片の形成を回避すべく、ボールミルを使用して、水中に分散させることができる。次いで、この分散液を該ラテックスと混合する。該浸漬型の上に所定の厚みを持つラテックス層を堆積させるのに十分な回数に渡り、一種またはそれ以上のラテックス浴に、該浸漬型を浸漬する。一例として、該支持本体24は、約0.1〜約0.3mmなる範囲の厚みを持つことができる。
幾つかの態様においては、ビーズロールステーション(bead roll station)を使用して、該手袋20に折返し部分を付与することができる。例えば、このビーズロールステーションは、該浸漬型を割出して、折返し部分を与えるように、一種またはそれ以上のビーズロールを含むことができる。次に、このラテックスで被覆した浸漬型を、熱水が循環されている滲出タンク内に浸漬して、水溶性の成分、例えば残留硝酸カルシウムおよび天然ラテックス中に含まれるタンパク質を除去する。この滲出工程は、タンク内の水温約49℃にて、約12分間継続することができる。
【0026】
次いで、該ラテックス-被覆浸漬型を、該手袋20のヒドロゲル被覆26を形成するための溶液に浸漬することができる。一態様においては、該ラテックス-被覆浸漬型を、水溶性のヒドロゲル生成ポリマーまたはこのようなポリマーの混合物の水性溶液中に浸漬する。この水性組成物は、例えば約0.1質量%〜約30質量%なる範囲のヒドロゲル生成ポリマー、幾つかの態様では、約0.5質量%〜約10質量%なる範囲のヒドロゲル生成ポリマー、および幾つかの態様では、約1質量%〜約5質量%なる範囲のヒドロゲル生成ポリマーを含むことができる。使用する活性薬剤の量は、活性薬剤の型、ヒドロゲルの型等に応じて変動する可能性がある。具体的には、緩慢な放出速度を与えるヒドロゲルは、迅速な放出速度を与えるヒドロゲルよりも、高い活性薬剤含有率を必要とする可能性がある。例えば、殆どの態様において、該水性溶液は、約0.0001質量%〜約30質量%なる範囲の活性薬剤を含み、幾つかの態様では、約0.001質量%〜約10質量%なる範囲の活性薬剤を含み、および幾つかの態様では、約0.1質量%〜約5質量%なる範囲の活性薬剤を含むことができる。この水性溶液は、他の成分を含むこともできる。例えば、幾つかの態様では、該水性溶液は、約0.01質量%〜約10質量%なる範囲の架橋剤を、幾つかの態様では、約0.1質量%〜約5質量%なる範囲の架橋剤を、および幾つかの態様では、約0.2質量%〜約2質量%なる範囲の架橋剤を含むことができる。水は、典型的に該水性溶液の約70質量%〜約99.9質量%、および幾つかの態様では、約90質量%〜約99質量%を構成する。付随的な浸漬を行って、所定の厚みを持つ被覆26を構築することができる。更に、この被覆26は、また該浸漬型を、該ラテックス含有浴液に浸漬する前に、この型に適用することも可能である。
【0027】
該被覆混合物中には、他の成分が存在し得ることをも理解すべきである。例えば、架橋工程を開始または加速するために、p-トルエンスルホン酸または塩酸等の触媒を使用することができる。更に、例えばGoldstein等の米国特許第6,242,042号に記載されているような、重合開始剤を使用することも可能である。あらゆる目的のために、この文献の内容全体を本発明の参考とする。pH調節剤、例えば酸または塩基を添加して、所定のpHを達成することもできる。
【0028】
一旦被覆したら、該浸漬型を、硬化ステーション(例えば、オーブン)に送り、そこで該天然ゴムを加硫し、かつ該ヒドロゲル形成ポリマーを架橋する。所望により、該硬化ステーションでは、先ずあらゆる残留水を除去し、次いでより高温での加硫および架橋段階に進むこともできる。例えば、該ヒドロゲル形成ポリマーの架橋は、約25〜約200℃、幾つかの態様では、約50〜約150℃、および幾つかの態様では、約70〜約120℃にて、約1分〜約12時間、幾つかの態様では、約5分〜約5時間、および幾つかの態様では、約10分〜約1時間加熱することによって開始することができる。加硫は、該ヒドロゲル形成ポリマーの架橋と同時に起っても、また異なる時点において起ってもよい。所望により、該オーブンを、異なる4つのゾーンに分割し、浸漬型を、徐々に上昇する温度を持つこれらゾーンを介して搬送してもよい。その一例は、4つのゾーンを持ち、その初めの2つのゾーンは、専ら乾燥するためのものであり、かつ残りの2つのゾーンは、主として該ヒドロゲル形成ポリマーの加硫および架橋のためのものであるようなオーブンである。これらゾーン各々は、僅かに高い温度を持つことができ、例えば第一のゾーンは約80℃にあり、第二のゾーンは約95℃にあり、第三のゾーンは約105℃にあり、かつ第四のゾーンは約115℃にある。該浸漬型の滞留時間は、例えば約10分である。
【0029】
次いで、この浸漬型を、ストリッピングステーションに移すことができる。このストリッピングステーションは、該浸漬型からの該手袋20の、自動的または手作業による取出し手段を含むことができる。例えば、一態様において、該手袋20を該浸漬型から剥離しつつ、これを裏返すことによって、該浸漬型から手作業で取外すことができる。該浸漬型から取外した後、該手袋20を水洗し、また乾燥することができる。
場合により、該手袋20の把持特性を高めるために、被覆を適用しても良い。例えば、一態様において、シリコーンエマルション(例えば、DC365、ダウコーニング(Dow Corning)社から入手)を、先ず高剪断ミキサを用いて、水と十分に混合して、所定の固形分含有率を持つ均質溶液を得る。その後、得られたエマルションを、種々の異なる方法で、該支持本体24の表面30に適用することができる。例えば、一態様において、該手袋20を、所定期間(例えば、1-10分間)タンブラー内で浸漬し、その間グリップ表面30をシリコーンエマルションで濯ぐ。あるいはまた、公知の噴霧ノズルを用いて、該グリップ表面30にシリコーンエマルションを噴霧しても良い。一旦該シリコーンエマルションを適用した後、該手袋20を乾燥する。例えば、幾つかの態様においては、該手袋20を、約20〜約200℃なる範囲、および幾つかの態様においては、約35〜約115℃なる範囲の温度にて乾燥することができる。
【0030】
該乾燥工程の後、該手袋を、場合により裏返し、またハロゲン化する。ハロゲン化(例えば、塩素化)は、当分野において公知の任意の適当な方法で行うことができる。このような方法は、(1) 水性混合物中に塩素ガスを直接注入する方法、(2) 高密度漂白粉末および塩化アルミニウムとを水中で混合する方法、(3) 塩水を電解して、塩素化された水を生成する方法、(4) 酸性化漂白法を包含する。このような方法の例は、Kavalirの米国特許第3,411,982号、Agostinelliの同第3,740,262号、Homsy等の同第3,992,221号、Momoseの同第4,597,108号、およびMomoseの同第4,851,266号、Littleton等の同第5,792,531号に記載されている。あらゆる目的のために、これら文献の内容全体を本発明の参考とする。一態様においては、例えば塩素ガスを水流中に噴射し、次いで手袋を収容した塩素化処理器(密閉された容器)に供給する。塩素濃度を監視し、かつ調節して、塩素化度を制御することができる。この塩素濃度は、典型的に少なくとも約100ppm、幾つかの態様においては、約200〜約3500ppmなる範囲、および幾つかの態様においては、約300〜約600ppmなる範囲、例えば約400ppmである。この塩素化段階の期間を調節して、塩素化度を制御することもでき、これは、例えば約1〜約10分なる範囲、例えば4分間であり得る。依然として塩素化処理器内で、該手袋20を、水道水にて、ほぼ室温条件下で洗浄することができる。この洗浄サイクルは、必要ならば繰返しても良い。一旦全ての水を除いた後、該手袋20をタンブリング処理して、過剰の水分を除去する。
【0031】
弾性物品の様々な構成並びに様々なその製造技術について、上で説明してきたが、本発明は、特定の該物品の構成並びにその製造技術によって、何等限定されるものではないことを理解すべきである。例えば、上記の層が、全ての例において使用できるものではない。更に、上で具体的に述べられていない他の層を、本発明において使用することも可能である。例えば、一態様においては、付随的な潤滑剤が、該活性薬剤の、調節自在に遊離し得る能力に悪影響を与えない限りにおいて、この潤滑剤を該ヒドロゲル被覆26の上に適用することができる。必須ではないが、この潤滑剤は、該被覆26によって覆われていない、該表面28の部分をも覆うことができる。適当な潤滑剤は、シリコーンエマルション、例えばModha等の米国特許出願第2003/0118837号に記載されているものを含む。あらゆる目的のために、この文献の内容全体を本発明の参考とする。
【実施例】
【0032】
以下の実施例を参照することによって、本発明を更に良く理解することができる。
本発明によって、弾性手袋の製造が可能であることを立証した。先ず、予備加熱した手袋形の浸漬型を、硝酸カルシウム、炭酸カルシウム、界面活性剤、および水を含む凝固溶液に浸漬した。次に、この被覆した浸漬型を、配合し、予備的に加硫した天然ゴムラテックスを含む浸漬タンクに浸漬した。浸漬後、この浸漬型を、該天然ゴムラテックス含有浸漬タンクから取出し、水で滲出した。その後、このラテックスで被覆した浸漬型を、温度115℃にて約20分間、オーブン内で硬化した。得られた手袋を、その対応する浸漬型から取外しつつ、これを裏返すことにより、該手袋を手作業で該浸漬型から取外した。該浸漬型から取外した後に、該手袋を脱イオン水中で洗浄した。得られたこの手袋の厚みは、0.24mmであった。該乾燥段階後に、該手袋を裏返し、塩素化処理器に入れた。水流と混合した塩素ガスを、この塩素化処理器内に射出して、該手袋の着用表面を塩素化した。塩素濃度は875ppmであり、またpHは1.8であった。この手袋を該塩素溶液に4分間浸漬した。塩素化後、この手袋を反転させ、温度約55℃にて40分間乾燥させた。
次に、このラテックス製手袋を、96.725質量%の水、0.25質量%のメラミン-ホルムアルデヒド(架橋剤)、0.025質量%のp-トルエンスルホン酸(触媒)、および3質量%の、ヒドロキシエチルアクリレートとアクリル酸モノマートから生成したヒドロゲル形成ポリマー(これは、南カリフォルニア、イーズレイ(Easley)の、オルテック社(Ortec, Inc.)から入手した)を含む溶液に浸漬した。この混合物を、次に約120℃の温度にて約18分間加熱して、該ポリマーを架橋し、かつ該手袋上にヒドロゲル被覆を形成した。
【0033】
このヒドロゲル-被覆手袋の、調節自在の活性薬剤遊離能力をテストするために、99.5質量%の水、および0.5質量%の染料(デュポン社から入手できる、繊維同定染料(Fiber Identification Stain) #7)を含む水性溶液中に7時間浸漬させた。比較用の手袋も、同一の水性溶液に7時間浸漬させた。この比較用の手袋は、該テスト用の手袋と同等であるが、前者はヒドロゲル被覆を含んでいなかった。各手袋を該染料溶液から取出し、水で数回洗浄して、過剰の染料を除去した。これらの手袋を、次にオーブン内で60℃にて一夜乾燥した。その後、50mlの水を、各手袋によって形成される手を受容れる空洞に注入し、2分間維持した。該水を注ぎだし、更に50mlの水をこの手袋に入れ、3分間維持した。水をこの手袋に注入し、様々な期間に渡り維持するこの工程を、接触時間が280分となるまで繰返した。次に、この水のサンプルの吸光度値を、UV-可視分光光度計を用いて、波長547nmにて測定した。この分光光度計は、日本国、京都の島津社から市販品(モデルNo. UV-1601)として入手できる。該手袋から該水中に拡散した染料の量と、この吸光度とは相関関係を有していた。
【0034】
結果を図3に示す。図示の如く、該染料の増大量を、約275分までの拡散時間について検出した。この結果は、本発明による、手袋上に存在するヒドロゲル被覆からの、活性薬剤の制御自在の放出能力を例示している。他方で、該ヒドロゲルを含まない、上記手袋は、該染料を取り込む能力を示さなかった。
以上、本発明を、その特定の態様に関連して詳しく説明してきたが、当業者は、上記説明を理解するにときして、これら態様の種々な代替物、変更、並びに等価物に、容易に思い至るであろう。従って、本発明の範囲は、添付した特許請求の範囲およびこれに等価な範囲にあるものと理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に従って製造した弾性手袋の一態様に関する斜視図である。
【図2】図1のライン2-2に沿って取った、図1の手袋の断面図である。
【図3】実施例において得られた結果を示すグラフであり、そこでは、染料の吸光度が、様々な拡散時間に対してプロットされている。
【符号の説明】
【0036】
20・・・手袋
22・・・使用者
24・・・支持本体
26・・・ヒドロゲル被覆
27・・・着用者との接触面
28・・・内側表面
30・・・グリップ表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持本体と該支持本体の内側表面上に存在する被覆とを含む弾性物品であって、
該支持本体は、弾性物質で作られた層を含み、内側表面と外側表面とを画成し、
該被覆は、該物品の使用者と接する表面を画成し、その内部に使用者に対して利便を与えることのできる活性薬剤が保持されている架橋されたヒドロゲル網状構造を有し、該被覆が水性環境と接触したときに、該網状構造から該活性薬剤を放出できることを特徴とする、上記弾性物品。
【請求項2】
該ヒドロゲル網状構造が、一種またはそれ以上のポリマーから作られており、該ポリマーの少なくとも1種が、親水性かつ水溶性の少なくとも1種のモノマーから作られたものである、請求項1記載の弾性物品。
【請求項3】
該モノマーがビニルピロリドン、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニルピリジン、アクリルアミド、ビニルアルコール、エチレンオキシド、これらの誘導体、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項2記載の弾性物品。
【請求項4】
該モノマーがヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、これらの誘導体、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項3記載の弾性物品。
【請求項5】
該ヒドロゲル網状構造が、実質的に水不溶性である、請求項1〜4の何れか1項に記載の弾性物品。
【請求項6】
該物品が手袋である、請求項1〜5の何れか1項に記載の弾性物品。
【請求項7】
支持本体と該支持本体の表面上に存在する被覆とを含む弾性手袋の製法であって、
手の形状の浸漬型を、弾性ポリマーを含む少なくとも一つの浴に浸漬して、該手袋の支持本体を生成する工程、
該支持本体または該手の形状の浸漬型に水性溶液を注いで、手袋の被覆を生成する工程であって、該水性溶液が少なくとも1種のヒドロゲル生成ポリマーおよび活性薬剤を含有する工程、および
該ヒドロゲル生成ポリマーを架橋して、その内部に活性薬剤が保持されている実質的に水不溶性のヒドロゲル網状構造を生成する工程であって、該被覆が水性環境と接触したときに、該網状構造から該活性薬剤が放出される工程
を含むことを特徴とする、上記弾性手袋の製法。
【請求項8】
該活性薬剤が、該水性溶液を基準として、約0.0001質量%〜約30質量%、好ましくは約0.001質量%〜約10質量%なる範囲の量で含まれる請求項7記載の方法。
【請求項9】
支持本体と該支持本体の表面上に存在する被覆とを含む弾性手袋の製法であって、
手の形状の浸漬型を、弾性ポリマーを含む少なくとも一つの浴に浸漬して、該手袋の支持本体を生成する工程、
該支持本体または該手の形状の浸漬型に水性溶液を注いで、手袋の被覆を生成する工程であって、該水性溶液が、少なくとも1種のヒドロゲル生成ポリマーを含有する工程、
該ヒドロゲル生成ポリマーを架橋して、実質的に水不溶性のヒドロゲル網状構造を生成する工程、および
活性薬剤を、該ヒドロゲル網状構造に加える工程であって、該被覆が水性環境と接触したときに、該網状構造から該活性薬剤が放出される工程、
を含むことを特徴とする、上記弾性手袋の製法。
【請求項10】
該ヒドロゲル生成ポリマーが、該水性溶液を基準として、約0.1質量%〜約30質量%、好ましくは約0.5質量%〜約10質量%なる範囲の量で含まれる、請求項7〜9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
該水性溶液が、更に架橋剤を含む、請求項7〜10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
該水性溶液が該手の形状の浸漬型の上に存在する間に、該溶液を該支持本体に注ぐ、請求項7〜11の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
該浴に浸漬する前に、該手の形状の浸漬型に該水性溶液を注ぐ、請求項7〜11の何れか1項に記載の方法。
【請求項14】
更に、該活性薬剤を含有する追加の水性溶液を、ヒドロゲル網状構造に適用する工程を含む、請求項9記載の方法。
【請求項15】
該弾性材料または該支持本体のポリマーがスチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-イソプレンブロックコポリマー、スチレン-ブタジエンブロックコポリマー、天然ゴムラテックス、ニトリルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ポリ塩化ビニル、シリコーンゴムおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜14の何れか1項に記載の弾性物品または方法。
【請求項16】
該弾性材料または該支持本体のポリマーが、天然ゴムラテックスである、請求項1〜15の何れか1項に記載の弾性物品または方法。
【請求項17】
該活性薬剤が、薬物、スキンコンディショナー、植物性薬剤、またはこれらの組合わせである、請求項1〜16の何れか1項に記載の弾性物品または方法。
【請求項18】
該ヒドロゲル網状構造が、約20%〜約90%なる範囲、好ましくは約35%〜約85%なる範囲、および好ましくは約50%〜約80%なる範囲の含水量を達成できる、請求項1〜17の何れか1項に記載の弾性物品または方法。
【請求項19】
該被覆の平均の厚みが、約0.1〜約20μmなる範囲にある、請求項1〜18の何れか1項に記載の弾性物品または方法。
【請求項20】
該被覆が、上記物品または手袋1g当たり、約0.001〜約0.5gなる範囲内にある、請求項1〜19の何れか1項に記載の弾性物品または方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−524772(P2007−524772A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543789(P2006−543789)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【国際出願番号】PCT/US2004/021611
【国際公開番号】WO2005/060855
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(504460441)キンバリー クラーク ワールドワイド インコーポレイテッド (396)
【Fターム(参考)】