説明

弾性波デバイス及びその製造方法

【課題】圧電基板と支持基板とを接着層を介して貼り合わせたものにおいて、加熱により生じる不具合の発生をより抑制する。
【解決手段】本発明の弾性波デバイス30は、電極が形成されている圧電基板42と、支持基板44と、圧電基板42と支持基板44とを接着する接着層46と、を備え、圧電基板42側から支持基板44側に向かって凸形状となるよう圧電基板42には膨出部43が形成されている。弾性波デバイス30は、支持基板44に屈曲部48が形成されており、圧電基板42の表面41から支持基板44の屈曲部48に向かって外周が小さくなるよう形成され屈曲部48から裏面45に向かって外周の大きさが同じになるよう形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波デバイス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、弾性波デバイスの製造方法としては、圧電基板とそれを支持する支持基板とを接合した接合体の分割工程において、分割後の圧電基板の幅が支持基板の幅より小さくなるように切断するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この製造方法では、最初に圧電基板の切断に適した材質の回転刃で圧電基板の表面側から圧電基板のみを分割し、その後、支持基板の分割に適した材質で圧電基板用の回転刃よりも幅の狭い回転刃で、支持基板の裏面側から支持基板のみを分割することにより、弾性波デバイスを作製する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−94661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、こうした弾性波デバイスは、切断されたあと、高温プロセス工程を行うことがある。しかしながら、この特許文献1に記載された弾性波デバイスでは、圧電基板の幅が支持基板の幅より小さく形成されているが、加熱による膨張・収縮の影響により圧電基板の端部でクラックなどが発生することがあった。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、圧電基板と支持基板とを接着層を介して貼り合わせたものにおいて、加熱により生じる不具合の発生をより抑制することができる弾性波デバイス及びその製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した主目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、圧電基板側から支持基板側に向かって凸形状となるよう圧電基板に膨出部を形成したところ、加熱により生じる不具合の発生をより抑制することができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明の弾性波デバイスは、
電極が形成されている圧電基板と、
前記圧電基板と直接又は間接的に接着されている支持基板と、を備え、
前記圧電基板側から前記支持基板側に向かって凸形状となるよう前記圧電基板には膨出部が形成されているものである。
【0008】
本発明の弾性波デバイスの製造方法は、
電極が形成されている圧電基板と、前記圧電基板と直接又は間接的に接着されている支持基板と、を備えた複合基板を用いた弾性波デバイスの製造方法であって、
前記圧電基板側から前記支持基板側に向かって弾性波デバイスが凸形状となる膨出部を形成する切断面が得られる切断部材を用いて、前記複合基板から前記弾性波デバイスを切り出す切出工程、を含むものである。
【発明の効果】
【0009】
この弾性波デバイスの製造方法では、圧電基板側から支持基板側に向かって凸形状となるよう圧電基板に膨出部を形成する。このような、本発明の弾性波デバイス及びその製造方法では、加熱により生じる不具合の発生をより抑制することができる。この理由は、以下のように推察される。例えば、圧電基板には膨出部が形成されており、接着層により支持基板に接着されている圧電基板の面に比して、接着されていない圧電基板の表面側の方が大きく形成されており、自由度の高い表面側のボリュームが比較的大きくなっている。この膨出部の存在により、加熱された際など支持基板及び圧電基板の膨張・収縮により生じる端部での応力を緩和可能であるものと推察される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】複合基板10及び弾性波デバイス30の構成の概略を示す説明図。
【図2】弾性波デバイス30の製造プロセスの一例を模式的に示す断面図。
【図3】弾性波デバイス30の製造プロセスの一例を模式的に示す断面図。
【図4】弾性波デバイス30Bの製造プロセスの一例を模式的に示す断面図。
【図5】弾性波デバイス30の構成の概略を示す構成図。
【図6】弾性波デバイス30Cの構成の概略を示す構成図。
【図7】比較例1の弾性波デバイス130の構成の概略を示す断面図。
【図8】比較例2の弾性波デバイス230の構成の概略を示す断面図。
【図9】実施例1〜3及び比較例1〜3の評価結果の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態である複合基板10及び弾性波デバイス30の構成の概略を示す説明図である。図2は、弾性波デバイス30の製造プロセスの一例を模式的に示す断面図である。本発明の弾性波デバイス30の製造方法は、(a)圧電基板と支持基板とを貼り合わせ電極を形成した複合基板を作製する複合基板作製工程と、(b)圧電基板側から支持基板側に向かって弾性波デバイスが凸形状となる膨出部を形成する切断面が得られる切断部材を用いて複合基板から弾性波デバイスを切り出す切出工程と、を含むものとしてもよい。本発明の弾性波デバイス30としては、弾性表面波デバイスやラム波素子、薄膜共振子(FBAR)などとしてもよい。例えば、弾性表面波デバイスは、圧電基板の表面に、弾性表面波を励振する入力側のIDT(Interdigital Transducer)電極(櫛形電極、すだれ状電極ともいう)と弾性表面波を受信する出力側のIDT電極とを設けたものである。入力側のIDT電極に高周波信号を印加すると、電極間に電界が発生し、弾性表面波が励振されて圧電基板上を伝搬していく。そして、伝搬方向に設けられた出力側のIDT電極から、伝搬された弾性表面波を電気信号として取り出すことができる。
【0012】
(a)複合基板作製工程
まず、この工程では、圧電基板12と支持基板14とを貼り合わせて貼り合わせ基板を形成し、貼り合わせ基板の外周面を研削し、圧電基板の厚みを薄くすると共に、圧電基板の表面を鏡面研磨してもよい。ここで、圧電基板12と支持基板14とは、直接接着してもよいし、例えば接着層16を介して間接的に接着してもよい。ここでは、図2に示すように、接着層16を介して接着する場合について主として説明する。圧電基板12としては、例えば、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウム固溶体単結晶、ホウ酸リチウム、ランガサイト、水晶などのうち1以上を用いることができる。支持基板14としては、シリコン製のものを用いることができる。この支持基板14の熱膨張係数は、圧電基板12の熱膨張係数が13〜20ppm/Kの場合には、2〜7ppm/Kのものを用いるのが好ましい。接着層16としては、耐熱性を有する有機接着剤により形成されることが好ましく、例えば、エポキシ系接着剤やアクリル系接着剤などを用いることができる。次に、圧電基板12の表面に電極を形成する。電極の形成は、例えば、フォトリソグラフィ技術を用いて、図1に示すように、圧電基板12の表面にIDT電極32、34と反射電極36とを形成するものとしてもよい。
【0013】
(b)切出工程
この工程では、図2に示すように、多数の弾性表面波デバイスの集合体である複合基板10をダイシングして、1つ1つの弾性波デバイス30に切り出す処理を行う。なお、ここでは、ダイシング前のものをそれぞれ圧電基板12、支持基板14、接着層16と称し、ダイシング後のものをそれぞれ圧電基板42、支持基板44及び接着層46と称する。この工程では、圧電基板12側から支持基板14側に向かって弾性波デバイスが凸形状となる膨出部43を圧電基板42に形成する切断面が得られる切断部材50を用いるものとする。ここで、凸形状には、例えば、弾性波デバイス30の表面41から裏面45に向かうと外形が小さくなるような形状を含む。この切出工程では、図2に示すように、先端側に向けて尖った形状を有する回転刃である切断部材50を用い、この切断部材50の先端を圧電基板の表面11側に配置して、複合基板10から弾性波デバイス30を切り出すものとしてもよい。こうすれば、先細りになった先端側を利用して、比較的容易に膨出部43を圧電基板42に形成することができる。また、この切出工程では、図2に示すように、支持基板14と圧電基板12とを切断する一つの切断部材を用いて、複合基板10から弾性波デバイスを切り出すものとしてもよい。こうすれば、1回の切断処置により支持基板14と圧電基板12とを切断することができるため、作業効率がよい。あるいは、この切出工程では、図3に示すように、支持基板14を切断可能な支持基板切断部材52を用いて支持基板14を切削したあと、圧電基板12を切断する圧電基板切断部材54を用いて、この切削した支持基板14側から圧電基板12を切断するものとしてもよい。こうすれば、切断処理を2回必要とするが、支持基板14及び圧電基板12の端部の破損をより抑制することができる。また、支持基板や圧電基板の破損などをより抑制することができる。この支持基板切断部材52での切削処理では、接着層46まで切削してもよいし、支持基板44の表面近傍まで切削してもよい。切断部材の材質としては、例えば、電鋳系砥石、レジン系砥石などのうち1以上を用いることができる。また、図4に示すように、先端側に向けて尖った形状で且つ先端に厚さが変わらない平板部51Bを設けた切断部材50Bを用いるものとしてもよい。この切断部材50Bの先端を圧電基板の表面11側に配置して、複合基板10から弾性波デバイス30Bを切り出すものとしてもよい。こうすれば、ダイシングすると共に、膨出部43Bの端部を平面に形成することができ、圧電基板42Bの端部の破損などをより抑制することができる。このように、切断部材を用いて所定の間隔で複合基板10を切断すると、膨出部43が形成されており、圧電基板42側から支持基板44側に向かって凸形状である弾性波デバイス30を作製することができる。なお、図2〜6では、圧電基板42上に形成されている電極は省略した。
【0014】
次に、このようにして作製した弾性波デバイス30について説明する。図5は、弾性波デバイス30の構成の概略を示す構成図であり、図6は、弾性波デバイス30Cの構成の概略を示す構成図である。本発明の弾性波デバイスは、電極が形成されている圧電基板と、支持基板と、圧電基板と支持基板とを接着する接着層と、を備え、圧電基板側から支持基板側に向かって凸形状となるよう、圧電基板には外周側に膨出した膨出部が形成されているものである。弾性波デバイス30は、図5に示すように、支持基板44に屈曲部48が形成されており、圧電基板42の表面41から支持基板44の屈曲部48に向かって外周が小さくなるよう形成され屈曲部48から裏面45に向かって外周の大きさが同じになるよう形成されている。また、弾性波デバイス30は、圧電基板42から接着層46を通り支持基板44まで連続な外周面を有している。こうすれば、外周側での接着層の剥離などをより抑制することができる。また、弾性波デバイス30において、圧電基板42は、支持基板44に接着されている側を接着面49とし、接着面49の反対側の面を表面41としたときに、接着面49を表面41に対して垂直方向に表面41に投影すると、接着面49が表面41の内側に入るように、膨出部43が形成されているものとしてもよい。こうすれば、膨出部43により加熱した際に生じる不具合(例えばクラックなど)の発生をより抑制することができる。また、弾性波デバイス30では、接着面49に対して垂直であり弾性波デバイス30の中心を通る断面において、接着面49の延長面と膨出部43の表面とがなす最大角である角度θが鋭角であるものとしてもよい。こうすれば、比較的大きなボリュームの膨出部43を圧電基板42に形成することができ好ましい。この角度θは、90°未満であり、80°以下であることがより好ましく、75°以下であることが更に好ましい。また、この角度θは、0°を超えることが好ましく、20°以上であることがより好ましく、45°以上であることが更に好ましい。この角度θが75°以下45°以上では、圧電基板42の端部での機械的強度をより確保することができ好ましい。なお、角度θを45°以上とすることにより膨出部43が小さくなり、生産効率が上がる。
【0015】
また、図6に示すように、圧電基板42Cに屈曲部48Cが形成されていてもよい。この弾性波デバイス30Cは、上述の切断部材50の先端をより深い位置として複合基板10を切り出すことにより作製することができる。この弾性波デバイス30Cにおいても、圧電基板42Cから接着層46Cを通り支持基板44Cまで連続な外周面を有している。なお、接着層に屈曲部が形成されているものとしてもよいし、圧電基板から接着層を通り支持基板まで連続な外周面を有していなくてもよい。また、図4に示すように、膨出部43Bの端部が平面に形成されている弾性波デバイス30Bとしてもよい。この弾性波デバイス30Bにおいても、圧電基板42Bから接着層46Bを通り支持基板44Bまで連続な外周面を有している。
【0016】
以上説明した実施例の弾性波デバイス及びその製造方法によれば、圧電基板側から支持基板側に向かって凸形状となるよう圧電基板に膨出部が形成されており、加熱により生じる不具合の発生をより抑制することができる。この理由は、以下のように推察される。例えば、接着層により支持基板に接着されている圧電基板の面に比して、接着されていない圧電基板の表面側の方が大きく形成されており、自由度の高い表面側のボリュームが比較的大きくなっている。この膨出部の存在により、加熱された際など支持基板及び圧電基板の膨張・収縮により生じる端部での応力を緩和可能であるものと推察される。
【0017】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0018】
例えば、上述した実施形態では、複合基板作製工程を含むものとしたが、作製済みの複合基板10を用意し、この複合基板作製工程を省略してもよい。
【実施例】
【0019】
以下には、弾性波デバイスを具体的に製造した例を実施例として説明する。
【0020】
[複合基板の作製]
まず、圧電基板として、オリエンテーションフラット部(OF部)を有し、直径が100mm、厚さが250μmのタンタル酸リチウム基板(LT基板)を用意した。また、支持基板として、OF部を有し、直径が100mm、厚さが350μmの支持基板としてのシリコン基板を用意した。ここで、LT基板は、弾性表面波(SAW)の伝搬方向をXとし、切り出し角が回転Yカット板である42°YカットX伝搬LT基板を用いた。次いで、シリコン基板にスピンコートによりエポキシ系接着剤を塗布し、LT基板を貼付けて180℃に加熱し、接着層(エポキシ系接着剤が固化した層)の厚さが0.3μmの貼り合わせ基板を形成した。次いで、研磨機にてLT基板の厚さが30μmとなるまで研磨した。研磨機としては、以下のように厚みを薄くしたあと鏡面研磨を行うものを用いた。即ち、厚みを薄くするときには、研磨定盤とプレッシャープレートとの間に貼り合わせ基板を挟み込み、その基板と研磨定盤との間に研磨砥粒を含むスラリーを供給し、このプレッシャープレートにより研削後基板を定盤面に押し付けながらプレッシャープレートに自転運動を与えて行うものを用いた。続いて、鏡面研磨を行うときには、研磨定盤を表面にパッドが貼られたものとすると共に研磨砥粒を番手の高いものへと変更し、プレッシャープレートに自転運動及び公転運動を与えることによって、圧電基板の表面を鏡面研磨するものを用いた。まず、研削後基板のLT基板の表面を定盤面に押し付け、自転運動の回転速度を100rpm、研磨を継続する時間を60分として研磨した。続いて、研磨定盤を表面にパッドが貼られたものとすると共に研磨砥粒を番手の高いものへと変更し、研削後基板を定盤面に押し付ける圧力を0.2MPa、自転運動の回転速度を100rpm、公転運動の回転速度を100rpm、研磨を継続する時間を60分として鏡面研磨した。なお、本実施例では、圧電基板の表面上に電極を形成する工程は省略した。
【0021】
[実施例1]
上記作製した複合基板をダイシングし、弾性波デバイスを作製した。ダイシングは、図2に示す、先端の尖った形状の切断部材50を用いて行った。ダイシングの条件は、切断部材の幅が0.5mm、回転数29000rpmで同一速度にて行った。なお、切断部材50としては、接着面49の外周から圧電基板42の膨出部43に向けた接線と接着面49の延長線とがなす角度θが45°となるものを用いた。得られた弾性波デバイスを実施例1とした。この実施例1の弾性波デバイス30を1600個作製した。
【0022】
[実施例2,3]
切断部材50として接着面49の外周から圧電基板42の膨出部43に向けた接線と接着面49の延長線とがなす角度θが60°,75°となるものを用いた以外は実施例1と同様の工程を経て、得られた弾性波デバイスをそれぞれ実施例2,3とした。この実施例2,3の弾性波デバイス30を50個作製した。
【0023】
[比較例1]
上記作製した複合基板を図7に示す形状、即ち、表面側の面積が小さい形状にダイシングして得られた弾性波デバイスを比較例1とした。図7は、比較例1の弾性波デバイス130の構成の概略を示す断面図である。ダイシングは、切断部材の幅が0.5mm、回転数29000rpmで表面141側から圧電基板142を切削したのち、回転数29000rpmで裏面145側から支持基板144を切断した。ここでは、圧電基板142の接着面149の外周から圧電基板142の外周面に向けた接線と接着面149の延長線とがなす角度θが135°となるように圧電基板142を切削した。この比較例1の弾性波デバイス130を1600個作製した。
【0024】
[比較例2]
圧電基板142の接着面149の外周から圧電基板142の外周面に向けた接線と接着面149の延長線とがなす角度θが120°となるように圧電基板142を切削した以外は比較例1と同様の工程を経て、得られた弾性波デバイスを比較例2とした。この比較例2の弾性波デバイス130を50個作製した。
【0025】
[比較例3]
上記作製した複合基板を図8に示す形状、即ち、表面側の面積と裏面側の面積とが同じ形状にダイシングして得られた弾性波デバイスを比較例3とした。図8は、比較例3の弾性波デバイス230の構成の概略を示す断面図である。ダイシングは、比較例1と同様の条件で、表面241側から圧電基板242を切削したのち、裏面245側から支持基板244を切断した。ここでは、圧電基板242の接着面249の外周から圧電基板242の外周面に向けた接線と接着面249の延長線とがなす角度θが90°となるように圧電基板242を切削した。この比較例3の弾性波デバイス230を1600個作製した。
【0026】
次に、得られた実施例1〜3及び比較例1〜3の複合基板のチップを空気中、260℃で加熱処理した。図9は、加熱処理後の実施例1〜3及び比較例1〜3の弾性波デバイスの評価結果の模式図である。また、加熱処理実験の評価結果を表1に示す。図9及び表1に示すように、実施例1〜3では、熱処理を行ったあとに弾性波デバイスの端部での欠けやクラックなどの不具合はみられなかった。一方、比較例1,2では、作製したもののうちそれぞれ90%,84%で、熱処理を行ったあとに圧電基板の表面に細かなクラックの発生が確認された。また、比較例3では、作製したもののうち70%で、熱処理を行ったあとに圧電基板の表面に細かなクラックの発生が確認された。したがって、圧電基板側から支持基板側に向かって凸形状となるよう圧電基板に膨出部を形成すると、加熱により生じる不具合の発生をより抑制することができることが明らかになった。
【0027】
【表1】

【符号の説明】
【0028】
10 複合基板、12 圧電基板、14 支持基板、16 接着層、30,30B,30C,130,230 弾性波デバイス、32,34 IDT電極、36 反射電極、41,141,241 表面、42,42B,42C,142,242 圧電基板、43,43B,43C 膨出部、44,44B,44C,144,244 支持基板、45,145,245 裏面、46,46B,46C,146,246 接着層、48,48B,48C,148 屈曲部、49,149,249 接着面、50,50B 切断部材、51B 平板部、52 支持基板切断部材、54 圧電基板切断部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極が形成されている圧電基板と、
前記圧電基板と直接又は間接的に接着されている支持基板と、を備え、
前記圧電基板側から前記支持基板側に向かって凸形状となるよう前記圧電基板には膨出部が形成されている、弾性波デバイス。
【請求項2】
前記圧電基板は、前記支持基板と接着されている側を接着面とし、該接着面の反対側の面を表面としたときに、該接着面を該表面に対して垂直方向に該表面に投影すると、該接着面が該表面の内側に入るように、前記膨出部が形成されている、請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項3】
前記接着面に対して垂直であり前記弾性波デバイスの中心を通る断面において、前記接着面の延長面と膨出部の表面とがなす最大角である角度θが鋭角である、請求項1又は2に記載の弾性波デバイス。
【請求項4】
前記角度θが、45°≦θ≦75°の範囲である、請求項3に記載の弾性波デバイス。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の弾性波デバイスであって、
前記圧電基板と前記支持基板とを接着する接着層、を備えた、弾性波デバイス。
【請求項6】
電極が形成されている圧電基板と、前記圧電基板と直接又は間接的に接着されている支持基板と、を備えた複合基板を用いた弾性波デバイスの製造方法であって、
前記圧電基板側から前記支持基板側に向かって弾性波デバイスが凸形状となる膨出部を形成する切断面が得られる切断部材を用いて、前記複合基板から前記弾性波デバイスを切り出す切出工程、を含む弾性波デバイスの製造方法。
【請求項7】
前記切出工程では、先端側に向けて尖った形状を有する前記切断部材を用い、該切断部材の先端を前記圧電基板の表面側に配置して、前記複合基板から前記弾性波デバイスを切り出す、請求項6に記載の弾性波デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記切出工程では、前記支持基板と前記圧電基板とを切断する一つの前記切断部材を用いて、前記複合基板から前記弾性波デバイスを切り出す、請求項6又は7に記載の弾性波デバイスの製造方法。
【請求項9】
前記切出工程では、前記支持基板を切断可能な支持基板切断部材を用いて該支持基板を切削したあと、前記圧電基板を切断する圧電基板切断部材を用いて該切削した支持基板側から前記圧電基板を切断する、請求項6〜8のいずれか1項に記載の弾性波デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−120226(P2011−120226A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240415(P2010−240415)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】