説明

弾性舗装材の評価方法

【課題】弾性舗装材の施工性を、より実地に即して評価することができる弾性舗装材の評価方法を提供する。
【解決手段】バインダーと、ゴムチップおよび/またはゴム粉末と、骨材とを含有する弾性舗装材の粘度を評価するにあたり、弾性舗装材の全配合成分を混合して作製した合材10を、テーブル1上に載置した円筒型2内に充填し、円筒型2を垂直に引き上げて取り去ってから、合材1がテーブル上に広がり終わるまでの時間を計測して、弾性舗装材の粘度の指標とする弾性舗装材の評価方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は弾性舗装材の評価方法(以下、単に「評価方法」とも称する)に関し、詳しくは、弾性舗装材の施工性を合材の状態で評価することができる弾性舗装材の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、交通騒音の低減を図るための低騒音舗装として、大粒径の骨材を用いて舗装内部に空隙を設けた、多孔質の排水性舗装が存在する。また、加硫ゴムを粉末またはチップ状にして利用し、ウレタンやエポキシ等の硬化性樹脂をバインダーとして使用した低騒音弾性舗装が知られている。
【0003】
このうちゴムチップを用いた弾性舗装は、ゴムチップの有する弾力性により歩行時の衝撃吸収性や転倒時の安全性といった優れた効果を奏するとともに、内部に空隙を有することから、排水性および通気性に加えて吸音性にも優れ、そのためタイヤと路面内で発生する騒音の低減にも有効であるため、都市部での交通騒音低減のための機能性弾性舗装材として注目されている。
【0004】
かかる弾性舗装材に関しては、これまでに種々検討がなされてきている。例えば、本出願人においては、ウレタンやエポキシ等の従来の硬化性バインダーに代えて、短時間で施工でき、低コストで2次リサイクルが可能なアスファルトをバインダーに用いた弾性舗装について種々検討を行ってきており、熱可塑性樹脂であるエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)をアスファルトとともにバインダーとして用いた弾性舗装材料について提案を行っている(例えば、特許文献1,2等)。
【特許文献1】特願2004−381513
【特許文献2】特願2005−004509
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、かかる弾性舗装材の施工性の評価は、通常、バインダー粘度に基づき行われている。これは、一般の流体粘度の測定装置では、バインダーとゴムおよび骨材等とを混合した状態の合材、即ち、実際の弾性舗装材自体の粘度を測定することが不可能であるためである。
【0006】
しかしながら、バインダー単独の粘度と、ゴムや骨材等を混合して合材としたときの粘度とでは、当然ながら異なってくるため、バインダー粘度による施工性評価は、実際の弾性舗装材の施工性について十分に評価できる手段とはいえなかった。
【0007】
そこで本発明の目的は、上記問題を解消して、弾性舗装材の施工性を、より実地に即して評価することができる弾性舗装材の評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、合材の粘度を評価するために、土木分野でコンクリートやモルタルに適用されているフロー試験を改良して用いることで、実際の弾性舗装材の施工性をより的確に評価することが可能となることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明の弾性舗装材の評価方法は、バインダーと、ゴムチップおよび/またはゴム粉末と、骨材とを含有する弾性舗装材の粘度を評価するにあたり、
前記弾性舗装材の全配合成分を混合して作製した合材を、テーブル上に載置した円筒型内に充填し、該円筒型を垂直に引き上げて取り去ってから、前記合材が前記テーブル上に広がり終わるまでの時間を計測して、前記弾性舗装材の粘度の指標とすることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の評価方法は、好適には、以下のような条件下で行うことができる。
(1)前記円筒型内に充填する際の合材温度を、80〜220℃とする。
(2)前記テーブルおよび円筒型を、あらかじめ80〜220℃に加熱して行う。
(3)前記円筒型として、内径φ8〜14cm×高さ8〜14cmのものを用いる。
(4)前記合材を、前記円筒型内に、空隙率20〜60%にて充填する。
(5)前記テーブルおよび円筒型として金属材料からなるものを用いる。
(6)前記円筒型の引き上げ速度を30〜70cm/秒とする。
【0011】
本発明の評価方法は特に、前記バインダーとして熱可塑性バインダーを含有する弾性舗装材の評価に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、上記構成としたことにより、弾性舗装材の粘度、ひいてはその施工性を、より実際に近い状態で比較、評価することが可能となった。また、本発明の評価方法では、粘度測定用の試料を別途作製することが不要で、実際に用いる合材で容易に評価を行うことができるため、本発明の評価方法は、従来法に比しより簡易な評価方法であると言える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
本発明は、バインダーと、ゴムチップおよび/またはゴム粉末と、骨材とを含有する弾性舗装材の粘度を評価するための評価方法である。本発明によれば、バインダー単体ではなく、ゴムや骨材を含む弾性舗装材の全配合成分を混合して作製した合材の状態で粘度を評価することができるために、より実際に近い状態で施工性を評価することが可能となる。
【0014】
図1に、本発明の弾性舗装材の評価方法に係る概略説明図を示す。図示するように、本発明においては、弾性舗装材の全配合成分を混合してなる合材10を、テーブル1上に載置した円筒型2内に充填し(図中の(a))、円筒型2を垂直に引き上げて取り去ってから、合材10がテーブル1上に広がり終わるまでの時間を計測して(図中の(b))、弾性舗装材の粘度の指標とする。即ち本発明では、合材10の広がる時間により、弾性舗装材の施工性を定量化することができる。
【0015】
本発明の評価方法を実施する際の好適条件としては、まず、円筒型内に充填する際の合材温度を、80〜220℃とする。合材温度が低すぎると崩れるまでに時間がかかりすぎ、一方、高すぎると崩れる時間が短すぎて測定不能となるため、いずれも好ましくない。また、テーブル1および円筒型2についても、あらかじめ80〜220℃程度に加熱しておくことが好ましい。テーブル1および円筒型2を所定温度に加熱しておくことで、合材10の広がる速度を適度に制御することができる。
【0016】
環境条件としては、常温常湿、具体的には温度10〜30℃、湿度30〜80%RHとする。また、円筒型2の引き上げ速度は、30〜70cm/秒程度とすることができ、計測の開始は、円筒型2を垂直に引き上げ終わって取り去った時点からとする。
【0017】
テーブル1および円筒型2の材質としては、上記温度に耐え得る耐熱性を有するものであれば特に制限されないが、好適には、鉄、ステンレス等の金属材料からなるものを用いる。また、円筒型2の寸法は、特に制限されるものではないが、評価を行う際の便宜の点から、好適には内径φ8〜14cm×高さ8〜14cm程度、例えば、内径φ10cm×高さ10cm程度の寸法とすることが好ましい。また、かかる円筒型2内に合材10を充填するに際しては、空隙率20〜60%程度とすることが好ましい。
【0018】
本発明は、バインダーとして熱可塑性バインダーを含有する弾性舗装材の評価に好適に適用できるものであり、ゴムや骨材その他のバインダー以外の弾性舗装材の構成材料と、熱可塑性バインダーとを混合した合材の粘度、ひいては施工性を、実際の施工時により近い状態で評価することができるものである。
【実施例】
【0019】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
下記の表1に示す弾性舗装材の構成成分を混合し、混合機中に投入して、常温で5分間攪拌することにより、合材を作製した。バインダーについては、配合を下記表2に示すようにそれぞれ変えて混合し、180℃で攪拌することにより調製した。
【0020】
<合材粘度測定>
各バインダー配合に対応する合材10を、図1に示すように、鉄板1上に載置した円筒型2(内径φ10cm×高さ10cm)内に空隙40%になるように充填して、円筒型2を垂直に引き上げて取り去ってから、合材10が鉄板1上に広がり終わるまでの時間を計測して、各合材(弾性舗装材)粘度の指標とした。評価に際しては、鉄板1および円筒型2について、あらかじめ180℃に事前加熱を行った。また、合材10の充填時の温度は180℃、充填量は428gであった。さらに、円筒型2の引き上げ速度は50cm/秒とした。
【0021】
<バインダー180℃粘度測定>
また、各バインダーの180℃粘度を、図2に概略を示す測定装置(BROOKFIELD DV−II+VISCOMETER 治具NO.27(φ12mm×40mm))を用いて測定した。図中、符号20はバインダーを、符号11は治具を示す。
これらの結果を、下記の表2中に併せて示す。
【0022】
【表1】

*1)粒径2〜5mm
*2)粒径0.1〜5mm
【0023】
【表2】

*1)EVA(1):EV210ET(三井デュポンポリケミカル社製)
*2)EVA(2):EVA633(東ソー(株)製)
*3)アスファルト:25℃針入度60〜80
*4)ワックス:FT100(日本精鑞(株)製)
*5)アミノ系シランカップリング剤:KBM603(信越シリコーン(株)製)
【0024】
上記表2の結果からわかるように、本発明の評価方法により得られる合材粘度は、バインダー粘度とある程度相関しているが、バインダー単独の粘度よりもより実際に近い状態で施工性の比較ができることが確かめられた。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の弾性舗装材の評価方法に係る概略説明図である。
【図2】実施例における180℃粘度の測定装置を示す概略図である。
【符号の説明】
【0026】
1 テーブル(鉄板)
2 円筒型
10 合材
11 治具
20 バインダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダーと、ゴムチップおよび/またはゴム粉末と、骨材とを含有する弾性舗装材の粘度を評価するにあたり、
前記弾性舗装材の全配合成分を混合して作製した合材を、テーブル上に載置した円筒型内に充填し、該円筒型を垂直に引き上げて取り去ってから、前記合材が前記テーブル上に広がり終わるまでの時間を計測して、前記弾性舗装材の粘度の指標とすることを特徴とする弾性舗装材の評価方法。
【請求項2】
前記円筒型内に充填する際の合材温度を、80〜220℃とする請求項1記載の弾性舗装材の評価方法。
【請求項3】
前記テーブルおよび円筒型を、あらかじめ80〜220℃に加熱して行う請求項1または2記載の弾性舗装材の評価方法。
【請求項4】
前記円筒型として、内径φ8〜14cm×高さ8〜14cmのものを用いる請求項1〜3のうちいずれか一項記載の弾性舗装材の評価方法。
【請求項5】
前記合材を、前記円筒型内に、空隙率20〜60%にて充填する請求項1〜4のうちいずれか一項記載の弾性舗装材の評価方法。
【請求項6】
前記テーブルおよび円筒型が金属材料からなる請求項1〜5のうちいずれか一項記載の弾性舗装材の評価方法。
【請求項7】
前記円筒型の引き上げ速度を30〜70cm/秒とする請求項1〜6のうちいずれか一項記載の弾性舗装材の評価方法。
【請求項8】
前記バインダーとして熱可塑性バインダーを含有する弾性舗装材の評価に用いられる請求項1〜7のうちいずれか一項記載の弾性舗装材の評価方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−298434(P2007−298434A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−127399(P2006−127399)
【出願日】平成18年5月1日(2006.5.1)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】