説明

弾性表面波フィルタ素子

【課題】平衡型端子を有する弾性表面波フィルタに関して、バランス特性が劣化するという課題があった。
【解決手段】圧電基板101と、圧電基板上に形成された複数のIDT電極102〜104とを備えた弾性表面波フィルタ素子であって、複数のIDT電極の内、少なくとも一つのIDT電極102は平衡型端子に接続され、他のIDT電極103、104は不平衡型端子に接続され、少なくとも一つのIDT電極102に接続された第1、第2の配線電極107、109は、他のIDT電極に接続された第3の回路基板上配線電極116と異なる平面上に配置されており、IDT電極と異なる平面上に設けられた、第3の回路基板上配線電極116は、IDT電極103、104の電極指とバンプ又はビアを介して実質的に直接に接続された構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的特性の劣化を抑えた平衡型端子を有する弾性表面波フィルタ素子、弾性表面波フィルタ、モジュール、及び通信機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、移動体通信の発展に伴い、使用される部品の高性能化、小型化が期待されている。さらに、対雑音特性の良好化を目的としてICなどの半導体部品の平衡化が進み、RF段に使用される弾性表面波フィルタ素子においても平衡化が求められている。
【0003】
従来より、移動体通信機器などのRF段のフィルタとしては、弾性表面波フィルタが広く用いられている。特に、縦モード型の弾性表面波フィルタ素子は平衡−不平衡変換が容易に実現できる。
【0004】
さらには、小型化に関して、従来のワイヤーボンディング実装技術からフリップチップやCSP(Chip Size Package)などに代表されるフェースダウン実装技術が主流となりつつある。
【0005】
以下、従来の平衡型入出力端子を有する縦モード型の弾性表面波フィルタ素子について説明する。
【0006】
図7に従来の平衡型端子を有する縦モード型の弾性表面波フィルタの構成を示す。
【0007】
図7において、弾性表面波フィルタ素子は、圧電基板701上に、第1、第2、第3のインターディジタルトランスデューサ電極(以下、IDT電極と称する)702、703、704と第1、第2の反射器電極705、706とにより構成される。第1のIDT電極702の一方の電極指は平衡型端子の一方707に接続され、第1のIDT電極702の他方の電極指は平衡型端子の他方708に接続される。
【0008】
また、第2、第3のIDT電極703、704の一方の側の電極指を不平衡型端子709に接続し、他方を接地する。以上の構成とすることにより不平衡型−平衡型端子を有する弾性表面波フィルタ素子が得られる。
【0009】
次に、前記弾性表面波フィルタ素子を回路基板上にフェースダウン実装する場合の構成についての一例を述べる。図8(a)は、図7の弾性表面波フィルタ素子の圧電基板上の構成を模式的に示した図である。
【0010】
第1のIDT電極702の一方の電極指は第1の配線電極801を介して第1の電極パッド802に接続される。第1のIDT電極702の他方の電極指は第2の配線電極803を介して第2の電極パッド804に接続される。
【0011】
第2のIDT電極703の一方の側の電極指と、第3のIDT電極704の一方の側の電極指は、それぞれ第3の配線電極805を介して第3の電極パッド806に接続される。また、接地電極に関しては省略している。
【0012】
図8(b)に示すのは、前述の弾性表面波フィルタ素子が実装される回路基板の表層図である。回路基板807には第1の回路基板上配線電極808、第2の回路基板上配線電極809、第3の回路基板上配線電極810がそれぞれ設けられている。
【0013】
図8(a)に示す弾性表面波フィルタ素子は、回路基板807に対向するように実装される。例えば、金バンプを用いた超音波熱圧着による実装方法を用いることができる。この時、第1の電極パッド802は第1の回路基板上配線電極808に接続され、第2の電極パッド804は第2の回路基板上配線電極809に接続され、第3の電極パッド806は第3の回路基板上配線電極810に接続される。
【0014】
第1、第2、第3の回路基板上配線電極808、809、810は、スルーホールやビアホール、或いは回路基板の外部の電極などにより端子として引き出される。この場合、第1、第2、第3の電極808、809、810はそれぞれ、平衡型出力端子の一方OUT1、平衡型出力端子の他方OUT2、不平衡型入力端子INに接続され、不平衡型−平衡型端子を有する弾性表面波フィルタが実現される。
【0015】
又、従来の弾性表面波デバイスは、弾性表面波素子の接地用電極パッドの少なくとも1つと、表面実装用パッケージの接地用外部接続端子の少なくとも1つとを接続する接地用連絡導体を、表面実装用パッケージ内面に複数設けることにより、帯域外抑圧度を向上している(例えば、特許文献1参照。)。
【0016】
又、従来の弾性表面波デバイスは、不平衡型入力端子と平衡型IDTの端子間に結合があると同相電圧が発生するので、両IDT間の電気的結合は出来るだけ抑圧しなければならないと示されているが、その具体的構成に関しては開示されていない(例えば、非特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平11−145772号公報
【非特許文献1】「2001年電子情報通信学会基礎・境界ソサイエティ大会講演論文集」社団法人電子情報通信学会、2001年8月29日、p283−284
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、上述の弾性表面波フィルタ素子あるいは、弾性表面波フィルタにおいては、重要な電気的特性の一つであるバランス特性に関して、その劣化の原因に関する詳細な議論が少なく、バランス特性を考慮した圧電基板上の配線電極構成、そして回路基板の構造が明確化されていなかった。
【0018】
本発明では、上記従来のこの様な課題を考慮して、平衡型端子を有する弾性表面波フィルタ素子あるいは、弾性表面波フィルタに関して、バランス特性の劣化原因を明確化し、その改善を行い、良好なバランス特性を有する弾性表面波フィルタ素子、弾性表面波フィルタ、モジュール、及び通信機器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
第1の本発明は、圧電基板(例えば、符号101)と、
前記圧電基板上に形成された複数のインターディジタルトランスデ
ューサ電極(以下、IDT電極と称す)(例えば、符号102,103,104)とを備えた弾性表面波フィルタ素子であって、
前記複数のIDT電極(例えば、符号102,103,104)の内、少なくとも一つのIDT電極(例えば、符号102)は平衡型端子に接続され、他のIDT電極(例えば、符号103,104)は平衡型端子または不平衡型端子に接続され、
前記少なくとも一つのIDT電極(例えば、符号102)に接続されるべき又は接続された第1の配線電極手段(例えば、符号107,109)と、前記他のIDT電極に接続されるべき又は接続された第2の配線電極手段(例えば、符号116)とが、互いに異なる平面上に配置されている弾性表面波フィルタ素子である。
【0020】
第2の本発明は、前記第1及び第2の配線電極手段の内、一方の前記配線電極手段が前記圧電基板の主面上に配置されており、他の前記配線電極手段は前記圧電基板が実装されるべき回路基板(例えば、符号113)上に配置されている上記第1の本発明の弾性表面波フィルタ素子である。
【0021】
第3の本発明は、(1)前記第1及び第2の配線電極手段の内、一方の前記配線電極手段が前記圧電基板上に形成されており、且つ、他方の前記配線電極手段は前記圧電基板が実装されるべき回路基板の内層電極である、又は、(2)前記第1及び第2の配線電極手段の内、一方の前記配線電極手段は前記圧電基板が実装されるべき回路基板上に形成され、且つ、他方の前記配線電極手段は前記回路基板の内層電極である上記第1の本発明の弾性表面波フィルタ素子である。
【0022】
第4の本発明は、前記第1及び第2の配線電極手段の内、一方の前記配線電極手段が圧電基板の主面上に設けられており、他方の前記配線電極手段が前記圧電基板の前記主面上に形成された保護膜(例えば、符号1902)上に設けられている上記第1の本発明の弾性表面波フィルタ素子である。
【0023】
第5の本発明は、前記保護膜が誘電体薄膜である上記第4の本発明の弾性表面波フィルタ素子である。
【0024】
第6の本発明は、前記弾性表面波フィルタ素子が、第1、第2、第3のIDT電極(例えば、符号102,103,104)と少なくとも2つの反射器電極(例えば、符号105,106)とを弾性表面波の伝搬方向に沿って配置した縦モード型の弾性表面波フィルタ素子であって、
前記第1のIDT電極の両側に前記第2、第3のIDT電極が配置される構成である上記第1の本発明の弾性表面波フィルタ素子である。
【0025】
第7の本発明は、前記圧電基板上に設けられた第1及び第2の電極パッド(例えば、図1(a)中の符号108,110)と、
前記圧電基板上に設けられた、前記第2のIDT電極に実質上直接に接続された第3の電極パッド(例えば、図1(a)中の符号111)と、
前記圧電基板上に設けられた、前記第3のIDT電極に実質上直接に接続された第4の電極パッド(例えば、図1(a)中の符号112)とを備え、
(1)前記第1の配線電極手段手段は、一対の配線電極(例えば、符号107と109)として前記圧電基板上に設けられており、且つ、(2)前記第1のIDT電極(例えば、符号102)は、平衡型であって、しかも前記一対の配線電極(例えば、符号107と109)の各配線電極を介して前記第1、第2の電極パッド(例えば、符号108,110)に接続されており、
前記第2の配線電極手段(例えば、符号116)は、前記回路基板(例えば、符号113)に設けられており、
前記弾性表面波フィルタ素子が、前記回路基板に実装されることにより、前記第3、第4の電極パッド(例えば、符号111,112)が、前記第2の配線電極手段(例えば、符号116)に接続される上記第6の本発明の弾性表面波フィルタ素子である。
【0026】
第8の本発明は、前記圧電基板上に設けられた、前記第1のIDT電極に実質上直接に接続された第1及び第2の電極パッド(例えば、図3(a)中の符号108,110)と、
前記圧電基板(例えば、符号101)上に設けられた第3の電極パッド(例えば、図3(a)中の符号302)とを備え、
(1)前記第2の配線電極手段(例えば、図3(a)中の符号301)は、前記圧電基板上に設けられており、且つ、(2)前記第2及び第3のIDT電極(例えば、図3(a)中の符号103,104)は不平衡型であって、しかも前記第2の配線電極手段(例えば、符号301)を介して前記第3の電極パッド(例えば、符号302)に接続されており、
前記第1の配線電極手段(例えば、図3(b)中の符号303,304)は、前記回路基板(例えば、図3(b)中の符号113)に設けられており、
前記弾性表面波フィルタ素子が、前記回路基板に実装されることにより、前記第1、第2の電極パッドが、前記第1の配線電極手段に接続される上記第6の本発明の弾性表面波フィルタ素子である。
【0027】
第9の本発明は、前記第3の電極パッド(例えば、図5(a)中の符号505)が前記第2のIDT電極(例えば、図5(a)中の403)の一方の電極指(例えば、図5(a)中の符号403a)に接続されており、且つ、前記第4の電極パッド(例えば、図5(a)中の符号506)が前記第3のIDT電極(例えば、図5(a)中の符号404)の他方の電極指に接続されており、
前記他方の電極指が、前記一方の電極指から見て逆側に設けられている上記第7の本発明の弾性表面波フィルタ素子である。
【0028】
第10の本発明は、前記第2の配線電極手段(例えば、図15(a)中の符号3011)が、前記第2のIDT電極(例えば、図15(a)中の符号103)の一方の電極指(例えば、図15(a)中の符号103a)に接続されており、且つ、前記第3のIDT電極(例えば、図15(a)中の符号104)の他方の電極指(例えば、図15(a)中の符号104a)に接続されており、
前記他方の電極指(例えば、図15(a)中の符号104b)が、前記一方の電極指(例えば、図15(a)中の符号103a)から見て逆側に設けられている上記第8の本発明の弾性表面波フィルタ素子である。
【0029】
第11の本発明は、前記弾性表面波フィルタ素子は、第1のIDT電極と、その両側に配置された2つの反射器電極により構成される弾性表面波共振子とを、梯子型又は、対称格子型に接続した構成である上記第1の本発明の弾性表面波フィルタ素子である。
【0030】
第12の本発明は、上記第1〜11の何れか一つの本発明の弾性表面波フィルタ素子と、
前記弾性表面波フィルタ素子が実装された回路基板と、
を備えた弾性表面波フィルタである。
【0031】
第13の本発明は、前記回路基板がセラミックパッケージの一部を構成している上記第12の本発明の弾性表面波フィルタである。
【0032】
第14の本発明は、前記回路基板は誘電体により構成された積層体であり、
前記弾性表面波フィルタ素子は前記積層体上に実装される構成であって、
前記配線電極手段は、前記積層体最上面に、または前記積層体内層に設けられている上記第12の本発明の弾性表面波フィルタである。
【0033】
第15の本発明は、前記IDT電極と、前記回路基板上に形成された配線電極手段とが空間的に重ならない様に配置されている上記第12の本発明の弾性表面波フィルタである。
【0034】
第16の本発明は、前記実装がフェースダウン実装である上記第12の本発明の弾性表面波フィルタである。
【0035】
第17の本発明は、前記異なる平面間は自由空間であることを特徴とする上記第1の本発明の弾性表面波フィルタ素子である。
【0036】
第18の本発明は、前記異なる平面間の比誘電率をε、前記異なる平面にそれぞれ形成される前記第1及び第2の配線電極手段間の距離をt、前記第1の配線電極手段と、前記第2の配線電極手段との交差部分の面積をSとした時に、
ε×S/t≦1.1×10-2
を満足する上記第1の本発明の弾性表面波フィルタ素子である。
【0037】
第19の本発明は、前記圧電基板は、実効比誘電率が40以上の基板であることを特徴とする上記第1の本発明の弾性表面波フィルタ素子である。
【0038】
第20の本発明は、前記圧電基板の材料が、タンタル酸リチウム及び、ニオブ酸リチウムの中から選ばれたものである上記第19の本発明の弾性表面波フィルタ素子である。
【0039】
第21の本発明は、前記第1の配線電極手段と、前記第2の配線電極手段との寄生成分としてのアドミッタンスの値が0.6mS以下となるように構成されることを特徴とする上記第1の本発明の弾性表面波フィルタ素子である。
【0040】
第22の本発明は、上記第1〜11、17〜21の何れか一つの本発明の弾性表面波フィルタ素子と、
所定の半導体装置と、
前記弾性表面波フィルタ素子及び前記半導体装置が実装された基板と、
を備えたモジュールである。
【0041】
第23の本発明は、前記基板は、誘電体層が積層された積層体である上記第22記載のモジュールである。
【0042】
第24の本発明は、前記半導体装置が、低雑音増幅器である上記第22の本発明のモジュールである。
【0043】
第25の本発明は、前記低雑音増幅器が平衡型である上記第24の本発明のモジュールである。
【0044】
第26の本発明は、前記半導体装置が、スイッチ素子であるか、又はミキサーである上記第24の本発明のモジュールである。
【0045】
第27の本発明は、(1)圧電基板と、(2)前記圧電基板上に形成された複数のインターディジタルトランスデューサ電極(IDT電極)とを有する弾性表面波フィルタ素子と、
前記弾性表面波フィルタ素子が実装された回路基板と、
前記複数のIDT電極の内、少なくとも一つのIDT電極を、前記回路基板に設けられた平衡型端子に接続するための第1の配線電極手段と、
前記複数のIDT電極の内、他のIDT電極を、前記回路基板に設けられた平衡型端子または不平衡型端子に接続するための第2の配線電極手段とを備え、
前記第1の配線電極手段と、前記第2の配線電極手段とが、互いに異なる平面上に配置されている弾性表面波フィルタである。
【0046】
第28の本発明は、アンテナと、
前記アンテナに接続されたスイッチ手段と、
前記スイッチ手段と送信回路の間に設けられた送信フィルタと、
前記スイッチ手段と受信回路の間に設けられた受信フィルタとを備えた通信機器であって、
前記送信フィルタ及び/又は前記受信フィルタが、上記第1〜11,17〜21,27の何れか一つの本発明の弾性表面波フィルタ素子を有している通信機器である。
【発明の効果】
【0047】
以上述べたことから明らかなように、本発明はバランス特性が良好であるという長所を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1の弾性表面波フィルタ素子、及び弾性表面波フィルタについて図面を参照しながら説明する。
【0049】
まず、前述の弾性表面波フィルタ素子のバランス特性の劣化原因に関しての考察を行う。図9に示すのは、図8(a)の弾性表面波フィルタにおいてA−A’で切り出した断面図である。このような弾性表面波は一般的にリチウム酸タンタル(LiTaO3)やリチウム酸ニオブ(LiNbO3)などの圧電基板が広く用いられており、このような基板の実効比誘電率はそれぞれ48、49程度と大きい値である。ここで、実効比誘電率とは圧電基板の比誘電率テンソルε11Tとε33Tを用いて、次式1の通り定義する。
【0050】
【数1】

【0051】
図9に示すように、第1の配線電極801と第3の配線電極805の間には基板を介する寄生成分Csub、空間的な寄生成分Cpなどが生じる。
【0052】
圧電基板上で配線電極を用いて配線を行う場合には比誘電率が大きいので、その影響も大きくなる。また、これらの電極の距離を離せば、寄生成分による結合は小さくできるが、実際には弾性表面波フィルタ素子の小型化も同時に必要であり、これらの電極の距離を大きくするのには限界がある。
【0053】
図10に、これらの寄生成分を考慮した構成を示す。図7の弾性表面波フィルタにおける寄生成分としては、入出力IDT電極間に容量成分1001を仮定した構成が考えられる。図10に示す構成で容量成分1001の容量値を変化させて、900MHz帯のフィルタに関して解析を行った結果を図11(a)、図11(b)に示す。
【0054】
図11(a)、図11(b)はバランス特性を表す指標として、振幅バランス特性、位相バランス特性を示した図である。
【0055】
ここで、振幅バランス特性とは次の通りである。即ち、図7又は図10に示す弾性表面波フィルタ素子の不平衡型端子709から入力された信号は、平衡型端子の一方の707と他方の708にバランス信号として出力される。その場合の平衡型端子の一方の707に出力される信号振幅と、平衡型端子の他方の708に出力される信号振幅との振幅差を表したものが、振幅バランス特性である。そして、この値が零となればバランス特性の劣化はないといえる。
【0056】
又、位相バランス特性とは、上記平衡型端子の一方の707に出力される信号の位相と、上記平衡型端子の他方の708に出力される信号の位相との位相差の180度からのずれを表したものである。そして、この値が零となればバランス特性の劣化はないといえる。
【0057】
図11(a)、図11(b)は、通過帯域内における振幅、位相のバランス特性の最大値と最小値を示している。図11(a)が振幅バランス特性であり、図11(b)が位相バランス特性である。
【0058】
図11(a)、図11(b)に示すように、容量値が大きくなる程バランス特性が劣化している。即ち、入出力間の寄生成分による結合が大きい程バランス特性が劣化する。
【0059】
振幅バランス特性を±1dB以内、位相バランス特性を±10度以内のフィルタを実現するには、入出力間の寄生成分としての容量値を0.10pF以下にする必要がある。即ち、アドミッタンス成分Yで考えるとY=2πfCより、Yが0.6[mS]以下とすればよい。ここでfは周波数、Cは容量値である。
【0060】
次に、前述のバランス特性の劣化原因を克服する弾性表面波フィルタ素子、及び弾性表面波フィルタの構成について述べる。
【0061】
図1(a)は、弾性表面波フィルタ素子の圧電基板上の構成を模式的に示した図である。第1のIDT電極102の一方の電極指は第1の配線電極107を介して第1の電極パッド108に接続される。
【0062】
第1のIDT電極102の他方の電極指は第2の配線電極109を介して第2の電極パッド110に接続される。
【0063】
第2、第3のIDT電極103、104の一方の側の電極指は実質上直接に第3、第4の電極パッド111、112に接続される。第2、第3のIDT電極103、104の他方の側の電極指は接地されるが、ここでは接地電極に関しては省略している。
【0064】
図1(b)に示すのは、前述の弾性表面波フィルタ素子が実装される回路基板の表層図である。回路基板113には第1、第2、第3の回路基板上配線電極114、115、116が設けられている。
【0065】
図1(a)に示す弾性表面波フィルタ素子は、回路基板113に対向するように実装される(図12参照)。ここで、図12は、弾性表面波フィルタ素子が回路基板113に対向するように実装された弾性表面波フィルタの分解斜視図である。
【0066】
例えば、金バンプを用いた超音波熱圧着による実装方法を用いることができる。
【0067】
この時、第1の電極パッド108は第1の回路基板上配線電極114に接続され、第2の電極パッド110は第2の回路基板上配線電極115に接続され、第3、第4の電極パッド111、112は第3の回路基板上配線電極116の2箇所に接続される。
【0068】
この時、回路基板上の配線電極116は、図8(a)の第3の配線電極805と同じ役割、即ち、第3の電極パッド111と第4の電極パッド112とを電気的に接続するための配線電極としての役割を担う。
【0069】
第1、第2、第3の回路基板上配線電極114、115、116はスルーホールやビアホール、或いは回路基板の外部の電極などにより端子として引き出される。
【0070】
この場合、第1、第2、第3の電極114、115、116はそれぞれ、平衡型出力端子の一方OUT1、平衡型出力端子の他方OUT2、不平衡型入力端子INに接続され、不平衡型−平衡型端子を有する弾性表面波フィルタが実現される。
【0071】
以上の構成とすることにより、第1のIDT電極における第1、第2の配線電極107、109と第2、第3のIDT電極に接続される第3の回路基板上の配線電極116は空間的に離れた配置となる。
【0072】
この様な構成によれば、図8(a)に示す構成と比べて、明らかに入出力間での結合を最小限に抑えることができ、弾性表面波フィルタ素子のバランス特性を改善することができる。
【0073】
尚、本発明の第1の配線電極手段は、図1(a)の第1、第2の配線電極107,109で表された一対の配線電極に対応する。又、本発明の第2の配線電極手段は、図1(b)に示す第3の回路基板上配線電極116に対応する。
【0074】
また、図2において、第1の配線電極107と第3の回路基板上の配線電極116とは交差する部分が生じるが、この部分での寄生成分Caは、交差部分を近似的に平行平板コンデンサとして仮定すると、次式2で表される。
【0075】
【数2】


となる。
【0076】
ここで、ε0は自由空間の誘電率であり、Sは交差部分の面積、tは電極間の距離である。
【0077】
例えば、S=100μm×100μm、t=20μmとすると、式2より、Caは4.4[fF]と小さな値となる。
【0078】
なお、実際には交差部分以外の要素も考慮して、圧電基板、回路基板の構成を最適化する必要があるが、空間的に離れた配置であれば、従来よりも入出力間の結合を小さくすることができ、バランス特性が改善す
るという効果は同様に得られる。
【0079】
また、弾性表面波フィルタ素子の圧電基板上の配線電極をなくして、回路基板を多層基板とし配線を行う場合には、基板を含めたフィルタ全体の高さは若干高くなるので、低背化を考えた場合には欠点となるが、バランス特性に関しては、小さい比誘電率の基板であれば、改善の効果がある。
【0080】
例えば、回路基板としてはアルミナやセラミック誘電体からなる積層体などが挙げられ、これらの比誘電率は10程度のものがある。この場合、前式においてはCaは0.04[pF]となり、図11より、バランス特性の劣化が小さいことが分かる。
【0081】
よって、これらの回路基板内での多層配線を行って、寄生成分が0.1pF以下になるような構成とするには、回路基板材料の比誘電率εと配線電極間の距離t、配線電極の交差部分の面積Sとの関係が
【0082】
【数3】

を満たすことが好ましい。
【0083】
但し、複数の異なる比誘電率の材料が平面間に存在する場合には、平面間全体で上記の関係を満足すればよい。
【0084】
また、本実施の形態においては、平衡側の配線電極107、109を圧電基板101の上に形成し、不平衡側は回路基板上の回路基板上の配線電極116と実質上直接に接続している。しかしこれに限らず例えば、図3に示すように、不平衡側の第2、第3のIDT電極103、104は配線電極301を介して、電極パッド302に接続して、第1、第2の電極パッド108、110は第1のIDT電極102に実質上直接に接続される構成としても構わない。
【0085】
この時、第1、第2の電極パッド108、110は回路基板上の配線電極303、304に接続される。従って、回路基板上の配線電極303は、図8(a)の第1の配線電極801と同様の配線電極としての役割を担う。また、回路基板上の配線電極304は、図8(a)の第2の配線電極803と同様の配線電極としての役割を担う。
【0086】
また、第3の電極パッド302は回路基板上の配線電極305に接続される。この場合は、回路基板113の表層の配置される回路基板上の配線電極303,304,305は圧電基板101上の弾性表面波の構成に応じて適宜配置されるものである。
【0087】
以上の構成においても、第1のIDT電極における第1、第2の回路基板上の配線電極303,304と第2、第3のIDT電極の配線電極301は空間的に離れた配置となり、入出力間での結合を最小限に抑えることができ、弾性表面波フィルタのバランス特性を改善することができる。
【0088】
尚、本発明の第1の配線電極手段は、図3(b)の第1、第2の回路基板上配線電極303,304に表された一対の配線電極に対応する。又、本発明の第2の配線電極手段は、図3(a)に示す配線電極301に対応する。
【0089】
なお、本実施形態においては、回路基板として説明したが、これはパッケージなどであっても構わない。
【0090】
又、本実施の形態においては、第2,第3のIDT電極103,104の一方の側の電極指は、実質上直接に第3,第4の電極パッド111,112に接続される構成について説明したが、これに限らず、例えば、バスバー電極等を介して接続されていてもよく、配線の長さが短くなるような構成で最適化されていればよい。
【0091】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2の弾性表面波フィルタ素子及び弾性表面波フィルタについて図面を参照して説明する。
【0092】
図4において、弾性表面波フィルタ素子は、圧電基板401上に、第1、第2、第3のIDT電極402、403、404と第1、第2の反射器電極405、406と、IDT電極と反射器電極とにより構成される弾性表面波共振子410とにより構成される。
【0093】
第1のIDT電極402の一方の電極指は平衡型端子の一方407に接続され、第1のIDT電極402の他方の電極指は平衡型端子の他方408に接続される。
【0094】
また、不平衡型端子409は、弾性表面波共振子410を介して第2のIDT電極403の一方の側の電極指403aと第3のIDT電極404の他方の電極指404bとに接続される。
【0095】
ここで、第2のIDT電極403の一方の側の電極指403aと第3のIDT電極404の他方の電極指404bとは、図4、図5に示す様に、一方から見て他方が逆側に配置されている電極指である。
【0096】
以上の構成とすることにより不平衡型−平衡型端子を有する弾性表面波フィルタ素子が得られる。
【0097】
次に、前記弾性表面波フィルタ素子をパッケージや基板上にフェースダウン実装する場合の構成についての一例を述べる。図5(a)は、弾性表面波フィルタ素子の圧電基板上の構成を模式的に示した図である。
【0098】
第1のIDT電極402の一方の電極指は第1の配線電極501を介して第1の電極パッド502に接続される。第1のIDT電極402の他方の電極指は第2の配線電極503を介して第2の電極パッド504に接続される。
【0099】
第2のIDT電極403の一方の側の電極指は実質上直接に第3の電極パッド505に接続される。第3のIDT電極404の他方の側の電極指は実質上直接に第4の電極パッド506に接続される。
【0100】
第2のIDT電極403の他方の側の電極指、第3のIDT電極404の一方の側の電極指は接地されるが、ここでは接地電極に関してはその記載を省略している。
【0101】
さらに、弾性表面波共振器410のIDT電極の一方と他方には第5、第6の電極パッド507、508に実質上直接に接続される。
【0102】
図5(b)に示すのは、前述の弾性表面波フィルタ素子が実装される回路基板の表層図である。回路基板509には第1、第2、第3、第4の回路基板上配線電極510、511、512、513が設けられている。
【0103】
図5(a)に示す弾性表面波フィルタ素子は、回路基板509に対向するように実装される。
【0104】
例えば、金バンプを用いた超音波熱圧着による実装方法を用いることができる。この時、第1の電極パッド502は第1の回路基板上配線電極510に接続され、第2の電極パッド504は第2の回路基板上配線電極511に接続され、第3、第4の電極パッド505、506は第3の回路基板上配線電極512に接続される。
【0105】
また、第5の電極パッド507は第4の回路基板上配線電極513に接続され、第6の電極パッド508は第3の回路基板上配線電極512に接続される。
【0106】
即ち、第3の回路基板上配線電極512には3箇所の電極パッドが接続されていて、弾性波共振器410と第2、第3のIDT電極403、404を接続する配線電極の役割を担っている。
【0107】
また、第1、第2、第4の回路基板上配線電極510、511、513はスルーホールやビアホール、或いは回路基板の外部の電極などにより端子として引き出される。
【0108】
この場合、第1、第2、第4の電極510、511、513はそれぞれ、平衡型出力端子の一方OUT1、平衡型出力端子の他方OUT2、不平衡型入力端子INに接続され、不平衡型−平衡型端子を有する弾性表面波フィルタが実現される。
【0109】
以上の構成とすることにより、第1のIDT電極における第1、第2の配線電極501、503と第2、第3のIDT電極に接続される第3の回路基板上配線電極512は空間的に離れた配置となり、入出力間での結合を最小限に抑えることができ、弾性表面波フィルタ素子のバランス特性を改善することができる。
【0110】
実際に、本発明のフィルタと従来の構成のフィルタとの実測結果を比較してみたところ、1.8GHz帯のフィルタにてバランス特性を評価したところ、本発明の構成とすることにより、振幅、及び位相バランス特性の偏差(最大値と最小値との差)が25%程度改善される結果が得られた。
【0111】
さらに、回路基板上の配線電極と圧電基板上に形成されるIDT電極とが空間的に重ならない構成とすることによって、さらに寄生成分を小さくすることができる。
【0112】
即ち、図6中に示す矢印Aの方向に沿って圧電基板401を見た場合、図6に示すように、IDT電極601と回路基板上の配線電極602とが重ならない構成とすることが有効である。仮に図6の破線で示した部分603に回路基板上の配線電極を設けてしまうとIDT電極との間に寄生成分604が生じ、電気特性の劣化の原因となる。
【0113】
尚、上記実施の形態では、本発明の第1、第2の配線電極の内、何れか一方の配線電極が圧電基板上に設けられ、他の配線電極が回路基板上に設けられている例を中心に述べた。
【0114】
しかしこれに限らず例えば、(1)前記第1及び第2の配線電極の内、一方の前記配線電極が前記圧電基板上に形成されており、且つ、他方の前記配線電極は前記圧電基板が実装されるべき回路基板の内層電極である構成でも良いし(図13参照)、あるいは、(2)前記第1及び第2の配線電極の内、一方の前記配線電極は前記圧電基板が実装されるべき回路基板上に形成され、且つ、他方の前記配線電極は前記回路基板の内層電極である構成(図示省略)でもかまわない。
【0115】
ここで、図13は、前者の構成例の分解斜視図であり、図12の場合と異なり、本発明の第2の配線電極に対応する配線電極が、内層電極1301として回路基板の内層面に形成されている。内層電極1301は、ビア1302を介して第3,第4の電極パッド111,112と接続されている。尚、端子電極1303a、1303bは、回路基板上の表層電極114,115と電気的に接続されている。又、後者の例としては、例えば、図13を代用して説明すると、図13に示す本発明の第1の配線電極手段に対応する第1,第2の配線電極107,109が、圧電基板上ではなく、回路基板上に表層電極として形成された構成でもよい。あるいは、図13を代用して説明した上記構成では、本発明の第1の配線電極手段と第2の配線電極手段が、表層電極と内層電極の関係にある場合を示しているが、これら双方の関係が互いに逆の構成、即ち、本発明の第1の配線電極手段が回路基板の内層電極として、且つ本発明の第2の配線電極手段が回路基板の表層電極として構成されていても良い。
【0116】
尚、図14は、図13の構成例を模式的に表した図である。同図において、圧電基板101と回路基板113は、便宜上、透明なものとして透過的に表している。又、図中の斜線部は、弾性表面波フィルタ電極部の配置位置を略示したものである。
【0117】
又、上記実施の形態では、図5(a)を用いて、第3の電極パッド505が、第2のIDT電極403の一方の電極指403aに接続されており、且つ、第4の電極パッド506が、第3のIDT電極404の他方の電極指404bに接続されており、しかも、その他方の電極指404bが上記一方の電極指403aから見て逆側に設けられている場合について説明した。
【0118】
しかしこれに限らず例えば図15(a)に示す様に、本発明の第2の配線電極手段3011の一端1501aが、第2のIDT電極103の一方の電極指103aに接続されており、且つ、前記第2の配線電極手段3011の他端1501bが、第3のIDT電極104の他方の電極指104bに接続されており、且つ、その他方の電極指104bが上記一方の電極指103aから見て逆側に設けられている弾性表面波フィルタ素子であっても良い。
【0119】
この場合でも上記実施の形態と同様の効果を発揮する。図15(a)は、図3(a)に示した本発明の一実施の形態の弾性表面波フィルタ素子の変形例の構成を示す模式図である。又、図15(b)は、図15(a)に示す変形例に対応する回路基板の表層図である。
【0120】
又、上記実施形態においては、圧電基板と回路基板とを有する構成を中心に説明したが、これに限らず、例えば、圧電基板とパッケージから弾性表面波フィルタが構成されていてもよい。この場合、例えば、図16、図17に示す様に、セラミックパッケージ1601、1701の下部が回路基板1602、1702を兼ねている構成であってもよい。図16において、符号1603,1604は外部端子を示す。図17の構成では、内層電極116と外部端子(底面電極)1704とをビア1703により電気的に接続している点が、図16と異なる。
【0121】
ここで、図16、図17は、圧電基板とパッケージから弾性表面波フィルタを構成した例を説明するための、図14と同様に透過的に表した模式図である。図中の斜線部は、弾性表面波フィルタ電極部の配置位置を略示したものである。
【0122】
又、上記実施の形態では、本発明の第1の配線電極手段と、本発明の第2の配線電極手段とが、互いに異なる平面上に配置されている弾性表面波フィルタ素子、及び弾性表面波フィルタの例として、上記異なる平面の具体例として、圧電基板と回路基板を利用する場合(例えば、図1,図3、図5,図15)、回路基板の表層面と内層面を利用する場合などについて述べた。
【0123】
しかし、これに限らず例えば図18,図19に示す様に、本発明の第1及び第2の配線電極の内、一方の配線電極(図18(a)〜図19(c)の107,109)が圧電基板(図18(b)の113)の主面上に設けられており、他方の配線電極(図19(c)の1901)が、圧電基板の主面上に形成された保護膜(図19(c)の1902)上に設けられている弾性表面波フィルタ素子でも上記と同様の効果を発揮する。
【0124】
尚、図19(b)、図19(c)に示す様に、配線電極1901はビア1905を介して、電極1903,1904と電気的に接続されている。又、電極パッド108はビア1906を介して、配線電極107と電気的に接続されている。
【0125】
特に、この保護膜に関しては、酸化シリコンや窒化シリコン等の誘電体薄膜を用いることにより、IDT電極のパッシベーション効果と同時に、温度特性を改善する効果も得られる。
【0126】
又、電極パッドの接続はビアに限るものではなく、電気的接続が行えるものであればどのような構成でもよい。
【0127】
また、本発明の実施形態1、2においては圧電基板の実効比誘電率が大きい程その効果は大きく、LiTaO3やLiNbO3などの実効比誘電率が40以上の圧電基板であれば十分な効果が得られる。
【0128】
また、本発明の実施形態1、2においては3電極の縦モード型フィルタを用いて説明したが、これは2電極や4電極、5電極の縦モード型フィルタであっても、本発明の実施形態のように入力側と出力側の結合が小さくなる構成であれば、バランス特性に関して同様の効果が得られる。また、多電極の縦モード型弾性表面波フィルタに限らず、弾性表面波共振子を用いた梯子型や対称格子型のフィルタ構成であっても、同様に入力側と出力側の結合が小さくなる構成であれば、バランス特性に関して同様の効果が得られる。
【0129】
また、本実施形態では1段の弾性表面波フィルタ素子について説明したが、これは複数の弾性表面波フィルタ素子を多段に縦続接続した構成であっても構わない。
【0130】
なお、IDT電極の個数が増える程、圧電基板上での配線が複雑となり、配線電極間の寄生成分も大きくなるので本発明によるバランス特性改善の効果は大きいと期待できる。
【0131】
また、本実施形態1、2においては平衡−不平衡型の弾性表面波フィルタ素子、及び平衡−不平衡型の弾性表面波フィルタについて説明したが、平衡−平衡型の弾性表面波フィルタ素子等であっても、同様に入力側と出力側の結合が小さくなる構成であれば、バランス特性に関して同様の効果が得られる。
【0132】
また、本実施形態1、2においては入力側を不平衡型、出力側を平衡型としているが、これは逆であっても効果は同様である。
【0133】
また、図20(a)、図20(b)に示す様に、実装基板2001上に本発明の弾性表面波フィルタ素子2002と半導体IC2003とを実装してモジュール化することにより、装置全体がコンパクトに出来、しかもバランス特性の劣化による感度劣化を抑えることができる。同図において、符号2004,2005は外部端子を示し、符号2006は整合回路部である。図20(a)はモジュールの平面図であり、図20(b)は、その構成例を説明するための、図14と同様に透過的に表した模式図である。図中の斜線部は、弾性表面波フィルタ電極部の配置位置を略示したものである。
【0134】
又、上記モジュールにおいて、半導体装置が、低雑音増幅器である構成でも良い。又、上記半導体装置が、ミキサーである構成でもよい。又、半導体を平衡型として説明したが、これは、GaAsスイッチやPINダイオードを用いたスイッチなどの様に不平衡−不平衡型のデバイスと、不平衡−平衡型SAWフィルタを一体化しても良い。
【0135】
また、本発明の弾性表面波フィルタ素子、又は弾性表面波フィルタを図21に示す様な平衡型高周波回路を有する通信機器等に適用することが出来る。これにより、送信又は受信用フィルタのバランス特性の劣化による感度劣化を抑えることができ、高性能な移動体通信機器を実現することができる。
【0136】
以下に、図21を参照しながら、上記平衡型高周波回路を有する通信機器の構成及び動作について説明する。ここで、図21は、本発明の平衡型デバイスを用いた平衡型高周波回路2701のブロック図である。
【0137】
図21において、送信回路2711から出力される送信信号は、送信増幅器2702,送信フィルタ2703、スイッチ2704を介してアンテナ2705より送信される。
【0138】
又、アンテナ2705より受信された受信信号は、スイッチ2704、受信フィルタ2706,受信増幅器2707を介して受信回路2712に入力される。
【0139】
ここで、送信増幅器2702は平衡型であり、スイッチ2704は不平衡型であるので、送信フィルタ2703は不平衡−平衡型入出力端子を有する構成となる。又、受信増幅器2707は平衡型であり、スイッチ2704は不平衡型であるので、受信フィルタ2706は不平衡−平衡型入出力端子を有する構成となる。
【0140】
本発明の弾性表面波フィルタを送信フィルタ2703,及び/又は受信フィルタ2706に適用することにより、バランス特性の劣化による送信時の変調精度の劣化を抑えることが出来る。又、バランス特性の劣化による受信時の感度劣化を抑えることが出来、高性能な平衡型高周波回路を実現することが出来る。
【0141】
又、送信フィルタ2703と送信増幅器2702、あるいは受信フィルタ2706と受信増幅器2707を上述したモジュール構成としてもかまわない。
【0142】
又、スイッチ素子と受信フィルタ、あるいは、スイッチ素子と送信フィルタを上述したモジュール構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明にかかる弾性表面波フィルタ素子は、バランス特性が良好であるという長所を有し、弾性表面波フィルタ素子、弾性表面波フィルタ、モジュール、及び通信機器等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】(a):本発明の実施の形態1における弾性表面波フィルタ素子の構成の模式図 (b):本発明の実施の形態1における回路基板の表層図
【図2】本発明の実施の形態1における配線電極と、回路基板上の回路基板上配線電極の配置関係を模式的に示す側面図
【図3】(a):本発明の実施の形態1における他の弾性表面波フィルタ素子の構成を示す模式図 (b):本発明の実施の形態1における他の回路基板の表層図
【図4】本発明の実施の形態2における弾性表面波フィルタの構成を示す模式図
【図5】(a):本発明の実施の形態2における弾性表面波フィルタ素子の構成を示す模式図 (b):本発明の実施の形態2における回路基板の表層図
【図6】本発明の実施の形態2におけるIDT電極と、回路基板上の回路基板上配線電極の配置関係を模式的に示す側面図
【図7】従来の弾性表面波フィルタを模式的に示した構成図
【図8】(a):従来の弾性表面波フィルタ素子の構成模式図 (b):従来の回路基板の表層図
【図9】図8(a)におけるA−A’での断面図
【図10】寄生成分を考慮した場合の弾性表面波フィルタの構成の模式図
【図11】(a):弾性表面波フィルタの振幅を示す図 (b):位相バランス特性を示す図
【図12】本発明の実施の形態1の弾性表面波フィルタの分解斜視図
【図13】本発明の実施の形態の変形例としての弾性表面波フィルタの分解斜視図
【図14】図13の構成例を模式的に表した図
【図15】(a):図3(a)に示した本発明の一実施の形態の弾性表面波フィルタ素子の変形例の構成を示す模式図 (b):図15(a)に示す変形例に対応する回路基板の表層図
【図16】本発明の弾性表面波フィルタの他の例としてのパッケージタイプの構成を示す模式図
【図17】本発明のパッケージタイプ弾性表面波フィルタの他の構成を示す模式図
【図18】(a):本発明の弾性表面波フィルタ素子の他の例の模式図 (b):図18(a)の弾性表面波フィルタ素子に対応する回路基板の表層図
【図19】(a):本発明の弾性表面波フィルタ素子の他の例の模式図 (b):図19(a)の弾性表面波フィルタ素子のA−A’断面図 (c):図19(a)の弾性表面波フィルタ素子のB−B’断面図
【図20】(a):本発明のモジュールの一構成例を示す模式図 (b):図20(a)を側面から見た模式図
【図21】本発明の弾性表面波フィルタの通信機器への適用例を説明する構成図
【符号の説明】
【0145】
101 圧電基板
102 第1のIDT電極
103 第2のIDT電極
104 第3のIDT電極
105 第1の反射器電極
106 第2の反射器電極
107 第1の配線電極
108 第1の電極パッド
109 第2の配線電極
110 第2の電極パッド
111 第3の電極パッド
112 第4の電極パッド
113 回路基板
114 第1の回路基板上配線電極
115 第2の回路基板上配線電極
116 第3の回路基板上配線電極
301 配線電極
302 電極パッド
303 第1の回路基板上配線電極
304 第2の回路基板上配線電極
305 第3の回路基板上配線電極
401 圧電基板
402 第1のIDT電極
403 第2のIDT電極
404 第3のIDT電極
405 第1の反射器電極
406 第2の反射器電極
407 平衡型端子の一方
408 平衡型端子の他方
409 不平衡型端子
410 弾性表面波共振子
501 第1の配線電極
502 第1の電極パッド
503 第2の配線電極
504 第2の電極パッド
505 第3の電極パッド
506 第4の電極パッド
507 第5の電極パッド
508 第6の電極パッド
509 回路基板
510 第1の回路基板上配線電極
511 第2の回路基板上配線電極
512 第3の回路基板上配線電極
513 第4の回路基板上配線電極
601 IDT電極
602 回路基板上の配線電極
603 回路基板上の配線電極
604 寄生成分
701 圧電基板
702 第1のIDT電極
703 第2のIDT電極
704 第3のIDT電極
705 第1の反射器電極
706 第2の反射器電極
707 平衡型端子の一方
708 平衡型端子の他方
709 不平衡型端子
801 第1の配線電極
802 第1の電極パッド
803 第2の配線電極
804 第2の電極パッド
805 第3の配線電極
806 第3の電極パッド
807 回路基板
808 第1の回路基板上配線電極
809 第2の回路基板上配線電極
810 第3の回路基板上配線電極
1001 容量成分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と、
前記圧電基板上に形成された複数のインターディジタルトランスデューサ電極(IDT電極)とを備えた弾性表面波フィルタ素子であって、
前記複数のIDT電極の内、少なくとも一つのIDT電極は平衡型端子に接続され、他のIDT電極は平衡型端子または不平衡型端子に接続され、
前記少なくとも一つのIDT電極に接続された第1の配線電極手段は、前記他のIDT電極に接続された第2の配線電極手段と異なる平面上に配置されており、
前記複数のIDT電極と異なる平面上に設けられた、前記第1及び第2の配線電極手段の何れか一方は、前記IDT電極の何れかの電極指とバンプまたはビアを介して実質的に直接に接続された弾性表面波フィルタ素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2008−306773(P2008−306773A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−241784(P2008−241784)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【分割の表示】特願2002−311730(P2002−311730)の分割
【原出願日】平成14年10月25日(2002.10.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】