説明

弾性表面波素子および当該素子を備えた弾性表面波装置

【課題】複数のSAW素子を備えたSAW装置の電気特性を向上させる。SAW素子間のカップリングを防ぐ。
【解決手段】圧電基板の表面に形成した第一弾性表面波素子部と、これに隣接して前記圧電基板の表面に形成した第二弾性表面波素子部とを備え、第一弾性表面波素子部及び第二弾性表面波素子部が共に、信号入力端子と、信号出力端子と、グランド端子と、信号入力端子及び信号出力端子間を結ぶ信号路と、信号路上に直列に接続された直列腕共振器と、信号路から分岐してグランド端子に至る分岐路と、分岐路上に接続された並列腕共振器とを含む弾性表面波素子で、第一弾性表面波素子部及び第二弾性表面波素子部のうちの少なくとも一方の信号路を当該弾性表面波素子部の中心線より外側に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性表面波素子および当該素子を備えた弾性表面波装置に係り、特に、複数の弾性表面波素子を備えた弾性表面波装置内で各素子間に生じ得るカップリング(電磁気的結合)を防ぐ技術に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電効果によって生じる弾性表面波(Surface Acoustic Wave/以下、SAWという)を利用したSAW装置は、小型軽量で信頼性に優れることから、フィルタやデュプレクサ等の信号処理デバイスとして移動体通信機器をはじめとする各種の電子機器で広く使用されている。かかるSAW装置は、一般に圧電基板上に複数の共振器を設けたチップ状のSAW素子を、樹脂やセラミックスからなるベース基板上に実装して気密パッケージを施すことにより作製される。
【0003】
SAW素子内の各共振器は、圧電基板の表面に形成した交差指状の電極(Interdigital Transducer/以下、IDTという)によって構成され、各共振器は同じく圧電基板上に形成した導体パターンによって電気的に接続されて、例えばデュプレクサを構成する場合には、それぞれ異なる特定の周波数帯域を有する送信側フィルタ並びに受信側フィルタが形成される。ベース基板へのSAW素子の実装は、ワイヤーボンディング(WB)方式から、小型低背化に有利なフリップチップボンディング(FCB)方式に近年移行しつつある。
【0004】
またこのようなSAW装置、特にSAW装置内に備えられる複数のSAW素子間のカップリングを防ぐ技術を開示するものとして下記特許文献がある。すなわち、下記特許文献1(特開2003‐101381)では、SAW素子間の入力電極及び出力電極を圧電基板上に相互に異なる側辺部や角部に配置することによって、一方、特許文献2(特開平11‐145772)では、表面実装用パッケージの接地用連絡導体を複数存在させることで、それぞれSAW素子間のカップリングの低減を図る。
【0005】
【特許文献1】特開2003‐101381号公報
【特許文献2】特開平11‐145772号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、移動体通信機器等の電子機器の小型化の進展は著しく、それに伴いこれら機器に用いられるSAW装置にも、より一層の小型化ならびに高性能化(特性向上)が求められている。
【0007】
しかしながら、装置を小型化すれば、その分、SAW素子同士が近接することとなるから素子間のアイソレーション特性が低下し、例えば上記のようにデュプレクサを構成した場合には送受信両フィルタ間の結合によって阻止帯域における減衰特性の劣化が引き起こされるおそれがある。特に、小型化ならびに製造工程の簡略化の点で有利な、複数のSAW素子を1つの圧電体基板上に形成するSAW装置構造を採用する場合には、各SAW素子が個別のチップとして構成されていた在来のSAW装置構造と比べ、素子間が接近し結合が一層顕著となる傾向にあり、より良好にカップリングを防ぐ技術の提供が望まれる。
【0008】
したがって、本発明の目的は、複数のSAW素子を備えたSAW装置の電気的特性を向上させること、特に、複数のSAW素子間に生じ得るカップリングをより一層低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成して課題を解決するため、本発明に係るSAW(弾性表面波)素子は、圧電基板の表面に形成した第一SAW素子部(第一弾性表面波素子部)と、当該第一SAW素子部に隣接して前記圧電基板の表面に形成した第二SAW素子部(第二弾性表面波素子部)とを備え、前記第一SAW素子部および前記第二SAW素子部が共に、信号が入力される入力端子と、信号が出力される出力端子と、グランドに接続されるグランド端子と、前記入力端子および前記出力端子間を結ぶ信号路と、この信号路上に直列に接続された1つ以上の直列腕共振器と、前記信号路から分岐して前記グランド端子に至る分岐路と、この分岐路上に接続された1つ以上の並列腕共振器とを含むSAW素子であって、前記第一SAW素子部および前記第二SAW素子部のうちの少なくとも一方の前記信号路を当該SAW素子部の中心線より外側に配置した。
【0010】
本発明者はSAW装置の電気的特性をより一層向上させるため検討を行ったところ、現状のSAW装置では、圧電基板上の各共振器を接続する配線(導体線路)の配置について格別な配慮がなされておらず、この点で更なる改良の余地があることを見出した。
【0011】
具体的には、図12は従来のSAW素子(デュプレクサ用のSAW素子)の一例を模式的に示す平面図である。このSAW素子は、1つの圧電基板5上に隣接して2つのSAW素子部1,2、すなわち送信側フィルタ1と受信側フィルタ2とを備え、各SAW素子部1,2が、信号入力端子T1,R1と信号出力端子T2,R2とを結ぶ信号路L1上に直列に接続された複数の直列腕共振器S11,S12,S13,S21,S22と、この信号路L1から分岐してグランド端子Gに至る分岐路L2上にそれぞれ接続した複数の並列腕共振器P11,P12,P21,P22,P23とを有するラダー型のSAWフィルタ素子である。
【0012】
ここで、このSAW素子構造では、送信側フィルタ1の信号路L1の一部(信号入力端子T1側から見て最後の直列腕共振器S13付近の信号路部分)と、受信側フィルタ2の信号路L1の一部(2つの直列腕共振器S21,S22の間の信号路部分)とが互いに接近しており(同図矢印A参照)、送信信号が受信側フィルタ2に流れ込み、あるいは受信信号が送信側フィルタ1に流れ込んで相手側フィルタの特性を劣化させるおそれがある。特に、送信側フィルタ1の信号路L1から送信信号が受信側フィルタ2に流れ込めば、雑音の原因となり通話品質を劣化させるから、これを無くし或いは出来るだけ小さく抑えることが望ましい。
【0013】
そこで、本発明では、上述のように第一のSAW素子部および第二のSAW素子部のうちの少なくとも一方の信号路を当該SAW素子部の中心線より外側に配置する。
【0014】
ここで、「外側」とは、隣接するSAW素子部から離れた側(遠い側)を言い、第一SAW素子部について言えば、当該SAW素子部に隣接することとなるSAW素子部(つまり第二SAW素子部)から離れた(遠い)側を、また第二SAW素子部について言えば、当該SAW素子部に隣接することとなるSAW素子部(つまり第一SAW素子部)から離れた(遠い)側をそれぞれ意味する。
【0015】
また「中心線」とは、第一SAW素子部と第二SAW素子部の配列方向(隣接方向/図12の例では左右方向)と直交する中心軸を言う。より具体的には、第一SAW素子部と第二SAW素子部の配列方向を左右方向とした場合に、SAW素子部(当該SAW素子の構成要素(例えばIDTや接続パッド、これらを接続する導体線路)が配置されたSAW素子の形成領域)の平面形状が左右対称である場合には、上記中心線は当該対称軸と一致する。一方、SAW素子部の平面形状が左右対称でない場合には、左右方向(第一SAW素子部と第二SAW素子部の配列方向)について、最も内側(隣り合うSAW素子部に近い側)の縁部と、最も外側の(隣り合うSAW素子部から遠い側)の縁部との中間位置を通りかつ左右方向(第一SAW素子部と第二SAW素子部の配列方向)に直交する軸を意味する。
【0016】
更に「信号路」とは、信号が入力される入力端子と、当該信号が出力される出力端子とを結ぶ伝送路であり、信号が伝送される最短の経路を言う。
【0017】
このように隣り合う第一SAW素子部または第二SAW素子部について、信号路を他のSAW素子部から離して配置することで、両SAW素子部のカップリングを防ぎ、複数のSAW素子を含む小型化のかつ電気特性に優れたSAW素子を構成することが可能となる。
【0018】
上記本発明のSAW素子では、更に、前記第一SAW素子部および第二SAW素子部のうちの他方の信号路の一部を当該SAW素子部の中心線より外側に配置しても良い。また、前記第一SAW素子部および第二SAW素子部の各信号路を各SAW素子部の中心線より外側にそれぞれ配置しても良い。互いに隣接する両SAW素子部間のカップリングを良好に防ぐためである。
【0019】
更に、前記第一SAW素子部の信号路と前記第二SAW素子部の信号路との間に介在されるように前記分岐路を配置しても良い。このように両信号路の間に、グランド端子に接続された分岐路を介在させれば、グランドに不要な信号を流すことができ、隣接する他のSAW素子部への影響を好ましく抑制することが可能となる。
【0020】
本発明に係るSAW装置は、上記いずれかのSAW素子をベース基板上にフリップチップ実装し、当該SAW素子を気密封止する蓋体を備えたSAW装置である。このSAW装置において蓋体は、接地導体を備えないものとすることが望ましい。蓋体を通じたSAW素子部間の結合を防ぐためである。
【0021】
本発明においてSAW素子部は、2つに限られるものではなく、3つ以上あっても良い。また、上記直列腕共振器および並列腕共振器は、圧電基板の表面に設けた交差指状電極(Interdigital Transducer/IDT)により構成することができ、反射器を備えていても良い。さらに、本発明に言うSAW装置は、例えばデュプレクサであるが、これに限定されるものではなく、トリプレクサや各種フィルタ装置その他、弾性表面波を利用しかつ1つ以上のSAW素子(又はSAW素子部)を備えた様々なSAW装置が含まれる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、複数のSAW素子間に生じ得るカップリングを低減し、複数のSAW素子を備えたSAW装置の電気的特性を向上させることが出来る。
【0023】
本発明の他の目的、特徴および利点は、図面に基づいた以下の本発明の実施の形態の説明により明らかにする。尚、各図中、同一の符号は、同一又は相当部分を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第一の実施形態に係るSAW装置であるデュプレクサを示すブロック図である。同図に示すようにこのデュプレクサは、帯域中心周波数f1を有してアンテナに接続される共通端子Cに接続された送信側フィルタ11と、f1より大きな帯域中心周波数f2を有して共通端子Cに接続された受信側フィルタ12とを有し、送信信号が入力される送信信号端子Txおよび受信信号が出力される受信信号端子Rxを備える。
【0025】
図2及び図3は、それぞれ送信側フィルタ11(SAW素子部)及び受信側フィルタ12(SAW素子部)の構成を示す回路図である。図2に示すように送信側フィルタ11は、前記送信信号端子Txに接続されて送信信号が入力される入力端子T1と当該送信信号が出力される出力端子T2との間の伝送路(信号路)上に直列に接続した3つの直列腕共振器S11,S12,S13と、当該信号路から分岐してグランド端子Gに至る分岐路上にそれぞれ接続した2つの並列腕共振器P11,P12とを備える。
【0026】
一方、受信側フィルタ12は、図3(a)に示すように、前記共通端子Cに接続されてアンテナからの受信信号が入力される入力端子R1と当該受信信号が出力される出力端子R2との間の伝送路(信号路)上に直列に接続した2つの直列腕共振器S21,S22と、この信号路から分岐してグランド端子Gに至る分岐路上にそれぞれ接続した3つの並列腕共振器P21,P22,P23とを備える。尚、図3(a)に示す構成例では、2つの並列腕共振器P22,P23を接続するグランド端子Gを共通のものとしたが、同図(b)に示すように別々のグランド端子Gに並列腕共振器P22,P23をそれぞれ接続するようにしても良い。
【0027】
これら送信側及び受信側の各フィルタ11,12を構成する共振器S11,S12,S13,S21,S22,P11,P12,P21,P22,P23は、後に述べるように圧電基板上に形成した交差指状電極(IDT)とその両側に設けた反射器とからなる。また、送信側フィルタ11及び受信側フィルタ12の構成は、一例として示したものであって、直列腕及び並列腕の各共振器の数や接続配置構造等は、図示の例のほかにも様々なものであって良い。さらに本実施形態では、受信側の中心周波数f2が送信側の中心周波数f1より大きいが、逆に、送信側の中心周波数f1が受信側の中心周波数f2より大きなシステムであっても良い。
【0028】
図4は、本実施形態に係るデュプレクサを示す断面図である。この図に示すように本実施形態のデュプレクサは、ベース基板21の表面にSAW素子10を実装し、このSAW素子10の周囲を取り囲む枠状の基板22およびこの枠状基板22の上面を覆う天板基板23からなる蓋体によってSAW素子10を気密封止してある(同図(a)参照)。蓋体(天板基板23)には、接地導体(グランド電極)を設けない。当該接地導体を通じての両フィルタ11,12間のカップリングを防ぐためである。尚、蓋体は、同図(b)に示すように、2つの基板(枠状基板と天板基板)からなるものでなく、一体の(1枚の)封止材31からなるものであっても良い。この場合にも、同様の理由から当該蓋体31には、接地導体(グランド電極)を設けない。
【0029】
SAW素子10は、1枚の圧電基板5の表面に前記送信側フィルタ11と前記受信側フィルタ12とを並べて形成してあり、これを所謂フェースダウンによってベース基板21上に設けた接続パッド25に金属バンプ26を介して電気的に接続しつつフリップチップ実装する。ベース基板21は、例えば樹脂基板、セラミックス基板、あるいは樹脂に無機フィラー等を混入した複合材料からなる基板とすることが出来る。
【0030】
図5は、上記SAW素子10の表面を模式的に示す平面図である。この図に示すように本実施形態におけるSAW素子10は、1枚の圧電基板5の表面に送信側フィルタ11(第一SAW素子部)と受信側フィルタ12(第二SAW素子部)とを並べて形成する。送信側フィルタ11は、前述のように送信信号が入力される入力端子T1と、当該送信信号が出力される出力端子T2との間の伝送路である信号路L1上に、3つの直列腕共振器S11,S12,S13を備えると共に、この信号路L1から分岐してグランド端子Gに至る分岐路L2上に並列腕共振器P11,P12を有する。
【0031】
ここで、本実施形態では、送信側フィルタ11の中心線CL1を境に受信側フィルタ12に近い側を「内側」、受信側フィルタ12から遠い側を「外側」と称した場合に(次に述べる受信側フィルタ12についても同様)、送信側フィルタ11の信号路L1を、当該送信側フィルタ11の中心線CL1より外側に配置している。
【0032】
一方、受信側フィルタ12は、前述のようにアンテナからの受信信号が入力される入力端子R1と、当該受信信号が出力される出力端子R2との間の伝送路である信号路L1上に、2つの直列腕共振器S21,S22を備えると共に、この信号路L1から分岐してグランド端子Gに至る分岐路L2上に並列腕共振器P21,P22,P23を有する。そして、上記送信側フィルタ11と同様に、受信側フィルタ12の信号路L1を、当該受信側フィルタ12の中心線CL2より外側に配置してある。
【0033】
また、この受信側フィルタ12の信号路L1と上記送信側フィルタ11の信号路L1との間に、送信側フィルタ11の分岐路L2及び受信側フィルタ12の分岐路L2が介在されるように配置する。
【0034】
信号路並びに分岐路のこのような配置構成により、本実施形態では送受信両フィルタ11,12間のカップリングを防ぎ、両フィルタ11,12の周波数特性の劣化を回避することが出来る。図6は上記第一実施形態に係るデュプレクサの周波数‐減衰特性(シミュレーション結果)を前記従来のSAW素子構造(図12)と比較して示す線図であり、図中、符合11は送信側フィルタを、符号12は受信側フィルタをそれぞれ示し、細線が前記従来の素子構造を有するデュプレクサを、太線が本実施形態のデュプレクサをそれぞれ示している。
【0035】
また、下記表1は、送信側フィルタの通過域(受信側フィルタの減衰域)中の特定スペック周波数830MHz乃至840MHzにおける受信側フィルタの減衰量を示すものであり、下記表2は、受信側フィルタの通過域(送信側フィルタの減衰域)中の特定スペック周波数875MHz乃至885MHzにおける送信側フィルタの減衰量を示すものである。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【0038】
さらに、図7は本実施形態における送受信フィルタ間のアイソレーション特性を示す線図であり、細線が前記従来の素子構造を、太線が本実施形態をそれぞれ示している。また下記表3は、送信側フィルタの通過域中の特定スペック周波数830MHz乃至840MHzにおける送受信両フィルタ間のアイソレーション特性(減衰量)を示し、表4は、受信側フィルタの通過域中の特定スペック周波数875MHz乃至885MHzにおける送受信両フィルタ間のアイソレーション特性(減衰量)を示すものである。
【0039】
【表3】

【0040】
【表4】

【0041】
これら図6,7及び表1〜4に示すシミュレーション結果から明らかなように、前記従来の素子構造に比べ、本実施形態の素子構造によれば、相手側フィルタの通過域における減衰特性を改善し、送受信両フィルタ間のアイソレーション特性を向上させることが出来ることが分かる。
【0042】
〔第2実施形態〕
図8は、本発明の第二の実施形態に係るSAW装置(デュプレクサ)が備えるSAW素子を示す平面図である。このデュプレクサは、前記第一の実施形態と同様に、1つの圧電基板5上に送信側フィルタ51と受信側フィルタ12とを形成したSAW素子50を備え、受信側フィルタ12の信号路L1を当該受信側フィルタ12の中心線CL2より外側に配置したものであるが、送信側フィルタ51の構造が前記第一実施形態と異なっている。
【0043】
すなわち、前記共通端子Cに接続される送信側フィルタ51の出力端子T2が、受信側フィルタ寄りにあり、この出力端子T2と、送信信号端子Txに接続される入力端子T1とを結ぶ信号路L1の一部が当該送信側フィルタ51の中心線CL1より内側(受信フィルタ側)に配線されている。
【0044】
しかしながら、送信信号が入力される入力端子T1側の信号路部分は中心線CL1より外側に配置し、受信側フィルタ12の信号路L1は前述のように中心線CL2より外側に配置し、かつこれら送信側及び受信側フィルタ51,12の信号路L1の間にはグランド端子Gに接続された分岐路L2が介在されるように配置してあり、このような配置構造により、両フィルタ51,12のカップリングを防ぐことが可能である。
【0045】
図9及び図10は、前記図6及び図7と同様に、それぞれ当該第二の実施形態に係るデュプレクサの周波数‐減衰特性(シミュレーション結果)を前記従来のSAW素子構造(図12)と比較して示す線図と、送受信両フィルタ間のアイソレーション特性を示す線図である。尚、符合51は送信側フィルタを、符号12は受信側フィルタをそれぞれ示し、細線が前記従来の素子構造を、太線が本実施形態をそれぞれ示す。また、下記表5から表8はそれぞれ前記表1から表4に対応するもので、表5は受信側フィルタの減衰量、表6は送信側フィルタの減衰量、表7及び表8は送受信両フィルタ間のアイソレーション特性(減衰量)を示すものである。
【0046】
【表5】

【0047】
【表6】

【0048】
【表7】

【0049】
【表8】

【0050】
これら図9,10及び表5〜8に示すシミュレーション結果から明らかなように、前記従来の素子構造に比べ、本実施形態の素子構造によっても、相手側フィルタの通過域における減衰特性を改善することができ、送受信両フィルタ間のアイソレーション特性を向上させることが出来る。
【0051】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で種々の変更を行うことができることは当業者にとって明らかである。
【0052】
例えば、SAW素子部は対称な平面形状を有するとは限らない。図11はSAW素子部が左右対称でない平面形状を有する一例を示すものである。この例では、圧電基板5上に2つのSAW素子部101,102が設けられているが、各SAW素子部101,102が左右対称ではない。この場合、左右方向(第一SAW素子部101と第二SAW素子部102の配列方向)について、最も内側(隣接するSAW素子部に近い側)の縁部(第一SAW素子部101の場合はE11、第二SAW素子部102の場合はE21)と、最も外側の(隣接するSAW素子部から遠い側)の縁部(第一SAW素子部101の場合はE12、第二SAW素子部102の場合はE22)との中間点を通りかつ左右方向(第一SAW素子部101と第二SAW素子部102の配列方向)に直交する軸CL1,CL2を各SAW素子部の中心線として、これらの外側(ハッチングを施した領域)に、いずれか一方又は双方の前記信号路を配置すれば良い。
【0053】
尚、本発明に基づいて信号路を前記中心線より外側に配置する場合、当該信号路の全部が完全に中心線の外側に位置しなくても、当該信号路の略全体が外側にあれば(一部が内側にあっても)良い。当該信号路についてその大部分を中心線より外側の領域に配置すれば、同様の(略同等の)効果が得られるからである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第一の実施形態に係るSAW装置(デュプレクサ)を示すブロック図である。
【図2】前記第一実施形態に係るSAW装置が備える送信側フィルタを示す回路図である。
【図3】(a)及び(b)は前記第一実施形態に係るSAW装置が備える受信側フィルタの一例及び別の例を示す回路図である。
【図4】(a)及び(b)は前記第一実施形態に係るSAW装置の一例及び別の例を示す断面図である。
【図5】前記第一実施形態に係るSAW装置が備えるSAW素子を模式的に示す平面図である。
【図6】前記第一実施形態に係るデュプレクサの周波数‐減衰特性(シミュレーション結果)を従来のSAW素子構造と比較して示す線図である。
【図7】前記第一実施形態における送受信フィルタ間のアイソレーション特性を示す線図である。
【図8】本発明の第二の実施形態に係るSAW装置が備えるSAW素子を模式的に示す平面図である。
【図9】前記第二実施形態に係るデュプレクサの周波数‐減衰特性(シミュレーション結果)を従来のSAW素子構造と比較して示す線図である。
【図10】前記第二実施形態における送受信フィルタ間のアイソレーション特性を示す線図である。
【図11】本発明に係るSAW素子の別の一構成例を模式的に示す平面図である。
【図12】従来のSAW素子構造を模式的に示す平面図である。
【符号の説明】
【0055】
C 共通端子
G グランド端子
Rx 受信信号端子
Tx 送信信号端子
R1,T1 入力端子
R2,T2 出力端子
P11,P12,P21,P22,P23 並列腕共振器
S11,S12,S13,S21,S22 直列腕共振器
CL1,CL2 中心線
L1 信号路
L2 分岐路
1,11,51,101 送信側フィルタ(第一SAW素子部)
2,12,102 受信側フィルタ(第二SAW素子部)
5 圧電基板
10,50 SAW素子
21 ベース基板
22 枠状基板(蓋体)
23 天板基板(蓋体)
25 接続パッド
26 金属バンプ
31 封止材(蓋体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板の表面に形成した第一弾性表面波素子部と、
当該第一弾性表面波素子部に隣接して前記圧電基板の表面に形成した第二弾性表面波素子部と、
を備え、
前記第一弾性表面波素子部および前記第二弾性表面波素子部が共に、
信号が入力される入力端子と、
信号が出力される出力端子と、
グランドに接続されるグランド端子と、
前記入力端子および前記出力端子間を結ぶ信号路と、
この信号路上に直列に接続された1つ以上の直列腕共振器と、
前記信号路から分岐して前記グランド端子に至る分岐路と、
この分岐路上に接続された1つ以上の並列腕共振器と、
を含む弾性表面波素子であって、
前記第一弾性表面波素子部および前記第二弾性表面波素子部のうちの少なくとも一方の前記信号路を当該弾性表面波素子部の中心線より外側に配置した
ことを特徴とする弾性表面波素子。
【請求項2】
前記第一弾性表面波素子部および前記第二弾性表面波素子部のうちの他方の前記信号路の一部を当該弾性表面波素子部の中心線より外側に配置した
ことを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波素子。
【請求項3】
前記第一弾性表面波素子部および前記第二弾性表面波素子部の各信号路を各弾性表面波素子部の中心線より外側にそれぞれ配置した
ことを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波素子。
【請求項4】
前記第一弾性表面波素子部の信号路と前記第二弾性表面波素子部の信号路との間に介在されるように前記分岐路を配置した
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の弾性表面波素子。
【請求項5】
弾性表面波素子を実装可能なベース基板と、
当該ベース基板上にフリップチップ実装した前記請求項1から4のいずれか一項に記載の弾性表面波素子と、
当該弾性表面波素子を気密封止する蓋体と、
を備えた弾性表面波装置。
【請求項6】
前記蓋体が接地導体を備えていない
請求項5に記載の弾性表面波装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−274272(P2007−274272A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−96517(P2006−96517)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】