説明

弾性表面波装置

【課題】DMSフィルタをカスケード接続してなるSAW装置を小型化し、通過帯域高域側の減衰特性を改善する。
【解決手段】カスケード接続した第一段フィルタと第二段フィルタとを含み、これらのフィルタは共に、入力端子又は出力端子を接続した中央IDTと、一方の反射器に隣り合って配した第一外側IDT電極と、他方の反射器に隣り合って配した第二外側IDTとを含む。第一段フィルタの第一外側IDT及び第二外側IDT、並びに第二段フィルタの第一外側IDT及び第二外側IDTの、各信号側の櫛形電極を、隣り合う反射器に電気的に接続すると共に、第一段フィルタの一方の反射器と第二段フィルタの一方の反射器とを電気的に接続し、第一段フィルタの他方の反射器と第二段フィルタの他方の反射器とを電気的に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性表面波装置に係り、特に縦結合多重モード型弾性表面波フィルタを複数段カスケード接続してなる弾性表面波装置を小型化すると共に、通過帯域高域側の減衰特性の改善を図る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電効果によって発生する弾性表面波(Surface Acoustic Wave:SAW/以下、弾性表面波をSAWと言うことがある)を利用したSAW(弾性表面波)フィルタは、小型軽量で信頼性に優れることから、移動体通信機器の送受信フィルタやアンテナ分波器などに今日広く使用されている。かかるSAWフィルタは、一般に、弾性表面波を励振する複数の交差指状電極(インターデジタルトランスデューサ:Interdigital Transducer/以下、IDTと言う)を圧電基板上に複数形成し、これらのIDTを電気的あるいは音響的に接続することにより構成される。
【0003】
IDTの接続方法としては、例えば、弾性表面波の伝搬経路に沿って複数のIDTを並べて音響的に結合させる縦結合多重モード型構造が知られており、帯域外における減衰特性を向上させるため、さらに複数の縦結合多重モード型フィルタ(以下、DMSフィルタと言う)をカスケード接続する構造が採られることがある。また、複数段に接続された各DMSフィルタ内においては、弾性表面波をフィルタ内に閉じ込めるため、配列させたIDTの両側に反射器が備えられる。
【0004】
図25から図26は従来のこの種のSAWフィルタの一例(第一従来例)を示すものである。これらの図に示すようにこのフィルタは、不平衡端子である入力端子1と出力端子2との間にDMSフィルタ11,21を2段カスケード接続したもので、入力端子1に接続される入力段フィルタ11および出力端子2に接続される出力段フィルタ21は共に、一対の反射器15,16;25,26の間に、入力端子1または出力端子2に接続した中央IDT12,22と、その両側に配した外側IDT13,14;23,24とを備え、各フィルタ11,21内の外側IDT13,23;14,24同士を導体パターン(信号ライン)18a,18bで電気的に繋ぐことにより両フィルタ11,21を接続したものである。なお、図26において符号19a,19b,19e〜19hはグランド端子を示す。
【0005】
また、図27は従来のSAWフィルタの別の例(第二従来例)を示すものである。このSAWフィルタは平衡信号を出力させるようにしたもので、上記第一従来例に係るSAWフィルタにおいて出力段フィルタ21の中央IDT22を弾性表面波の伝搬方向と直交する方向に2分割して電気的に直列に接続し、各IDT部22c,22dに平衡出力端子2a,2bを接続している。入力端子1から入力された信号は、入力段フィルタ11で平衡信号に変換され、これが外側IDT13,14および両フィルタ11,21を接続する上記信号ライン18a,18bを通じて出力段フィルタ21に伝送され、出力段フィルタ21の中央IDT22に接続した出力端子2から平衡信号として取り出される。なお、信号ライン18a,18bのうち一方の信号ライン18aを通じて伝送される信号と、他方の信号ライン18bを通じて伝送される信号とは互いに位相が180°ずれた信号となっている。
【0006】
またこのようなSAW装置を開示するものとして下記文献がある。
【特許文献1】特開平5‐55872号公報
【特許文献2】特開2003−179462号公報
【特許文献3】特表2003−528523号公報
【特許文献4】特開2001−189639号公報
【特許文献5】特開2007‐124085号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記のようなSAW装置を実装するにあたってワイヤボンディング(WB)による場合には、従来から、リードレスチップキャリアに素子を搭載し、各IDTに対して入出力やグランドそれぞれに独立してボンディングパッドを設けることが一般的であった。また、入力端子及び出力端子を囲むように2つの外側のIDTの入出力端子側にあるグランドが共通化されることもあるが、共通にするための配線が余分に必要となってこれが小型化を妨げる一因となっている。さらに、反射器の外側にフィルタを取り囲むようにカスケード接続する配線が引き回されることもあるが(特許文献5の図11A,段落0051参照)、このような接続構造も小型化の妨げとなる。
【0008】
一方、電子機器の小型化とこれに伴う電子部品の小型低背化の要請から、WBからフリップチップボンディング(FCB)への実装形式の移行が近年進んでいる。しかしながら、FCB実装においても依然としてボンディングパッドや接続ラインは旧来のWB実装におけるものと変わりがなく、WB実装時のパッド電極のままこれにバンプを配して接続を行っていることが少なくない。したがって、この点で小型化のための更なる改良の余地がある。
【0009】
他方、本発明者は上記のようなDMSフィルタを複数段接続したフィルタ構造についてシミュレーション解析を通じた検討を重ねた。その結果、上述したSAW装置の小型化と共に特性改善の余地があること、特に、フィルタの平面的な大きさ寸法を小さくしつつ同時にバンドパスフィルタを構成したときの通過帯域高域側の減衰特性を改善できることを見出した。
【0010】
したがって、本発明はこのような知見に基づくものであり、その目的は、DMSフィルタを複数段カスケード接続してなるSAW装置をより一層小型化すると共に、通過帯域高域側の減衰特性を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決し目的を達成するため、本発明に係るSAW(弾性表面波)装置は、信号入力端子と、信号出力端子と、これら信号入力端子と信号出力端子との間にカスケード接続した複数のDMS(縦結合多重モード型SAW)フィルタとを備え、かつ、前記複数のDMSフィルタは、圧電基板上において弾性表面波の伝搬方向に配列した複数のIDT(交差指状電極)と、これらIDTの両側に配した1対の反射器とをそれぞれ有して互いにカスケード接続された第一段フィルタと第二段フィルタとを含み、前記第一段フィルタの複数のIDTは、信号入力端子を接続した中央IDTと、前記1対の反射器のうちの一方の内側に隣り合って配置した第一外側IDTと、前記1対の反射器のうちの他方の内側に隣り合って配置した第二外側IDTとを含み、前記第二段フィルタの複数のIDTは、信号出力端子を接続した中央IDTと、前記1対の反射器のうちの一方の内側に隣り合って配置した第一外側IDTと、前記1対の反射器のうちの他方の内側に隣り合って配置した第二外側IDTとを含むSAW装置であって、前記第一段フィルタの第一外側IDTおよび第二外側IDT、ならびに前記第二段フィルタの第一外側IDTおよび第二外側IDTの、各信号側の櫛形電極を、隣り合う反射器に電気的に接続すると共に、前記第一段フィルタの一方の反射器と前記第二段フィルタの一方の反射器とを電気的に接続し、前記第一段フィルタの他方の反射器と前記第二段フィルタの他方の反射器とを電気的に接続した。
【0012】
本発明のSAW装置は、DMSフィルタをカスケード接続したSAW装置について様々な回路構成(電極パターン)を検討した結果として得られたものである。すなわち、かかる解析の結果、カスケード接続した第一段フィルタと第二段フィルタの各反射器同士を電気的に接続し、当該反射器およびこれらを接続する接続導体(反射器自体を長くして接続導体としても利用する場合を含む)を信号ラインとして使用することにより、通過帯域より高域側の減衰帯域、特に通過帯域近傍の高域側減衰帯域の減衰量を大きくすることが出来ることを見出しこれに基づいてなされものである。なお、この効果については後の実施形態において図面に基づいて説明する。
【0013】
より具体的な構成としては、第一段フィルタおよび第二段フィルタの各フィルタに含まれる、弾性表面波の伝搬方向に配列させたIDTのうち両端のIDT(すなわち第一外側IDTと第二外側IDT)の各信号側の櫛形電極を隣り合う反射器にそれぞれ電気的に接続する。また、第一段フィルタの一方の反射器と第二段フィルタの一方の反射器とを電気的に接続すると共に、第一段フィルタの他方の反射器と第二段フィルタの他方の反射器とを電気的に接続する。
【0014】
これにより、信号入力端子から入力された信号は、第一段フィルタの外側IDT(第一外側IDTおよび第二外側IDT)を通じて両端の反射器へ伝送され、当該第一段フィルタ両端の反射器から第二段フィルタ両端の反射器に入力されて当該第二段フィルタの外側IDT(第一外側IDTおよび第二外側IDT)に伝送され、第二段フィルタの中央IDTを通じて信号出力端子から出力される。
【0015】
上記のような本発明のSAW装置によれば、高域側減衰域における減衰量を大きくすることが出来るが、これに加え、SAW装置を小型化することが可能となる。従来のSAW装置では、第一段フィルタと第二段フィルタとをカスケード接続する信号ラインとして両フィルタに含まれる外側IDT同士を導体パターン(信号ライン)をフィルタの周囲に引き回して接続することがあったが、このような引き回しラインが不要となるからである。また、従来のように入力側及び出力側のグランドを共通化するための配線が新たに必要となることもなく、本発明は小型化の点で有利である。
【0016】
上記本発明において、外側IDTの信号側櫛形電極と反射器とを電気的に接続するには、例えば当該信号側櫛形電極のバスバーと、反射器のバスバーとを連続した導体パターンで形成(両バスバーを共通化)すれば良い。
【0017】
また、第一段フィルタの反射器と第二段フィルタの反射器とを接続するには、圧電基板上に形成した導体パターン(導体線路)によることも可能であるが、例えば、第一段フィルタと第二段フィルタとを、互いに圧電基板上で弾性表面波の伝搬方向と略直交する方向に配列させ、第一段フィルタの一方の反射器と第二段フィルタの一方の反射器とを連続する1つの反射器として形成すると共に、第一段フィルタの他方の反射器と第二段フィルタの他方の反射器とを連続する1つの反射器として形成しても良い。このような装置構造によれば、第一段フィルタと第二段フィルタとを音響的に繋げることが出来ることに加え、当該信号ラインとその周囲に形成されるグランドパターンとの間、或いは素子が実装されている場合には、素子と実装面のグランドパターンとの間に生じ得る寄生容量を低減することが出来る。
【0018】
さらに、第一段フィルタおよび第二段フィルタのいずれか一方または双方について、第一外側IDTと、当該第一外側IDTの外側に配した反射器との間、ならびに、第二外側IDTと、当該第二外側IDTの外側に配した反射器との間、のいずれか一方または双方に、前記1対の反射器(フィルタ最外部の反射器/以下、この反射器を「端部反射器」と言うことがある)とは別の反射器(以下、この反射器を端部反射器と区別するために「結合反射器」と言うことがある)を更に備えても良い。
【0019】
このように外側IDTと反射器との間に更に別の反射器(結合反射器)を備えれば、例えば電極指対数や電極ピッチ等の差異により、第一段フィルタと第二段フィルタの長さ(弾性表面波伝搬方向の大きさ)が異なる場合であっても、当該結合反射器を介在させることでフィルタの長さを調整することができ、第一段フィルタと第二段フィルタの端部反射器同士を容易に(ストレートに)カスケード接続して多段フィルタを構成することが可能となる。なお、当該結合反射器は、他のIDTおよび反射器(端部反射器)と電気的に接続されていない所謂浮き反射器としても良いし、例えばバスバーを共通にするなど他のIDT又は反射器(端部反射器)と電気的に接続された反射器であっても構わない。
【0020】
さらに本発明の具体的な装置構成として、上記SAW装置において、第一段フィルタの中央IDT、ならびに第二段フィルタの中央IDTが、共に、第一外側IDTの内側に隣り合って配置した第一中央IDTと、前記第二外側IDTの内側に隣り合って配置した第二中央IDTと、これら第一中央IDTと第二中央IDTとの間に配置した第三中央IDTとからなり、第一段フィルタの第一中央IDTおよび第二IDTに信号入力端子を接続する一方、第二段フィルタの第一中央IDTおよび第二IDTに信号出力端子を接続し、第一段フィルタに含まれる第三中央IDTの信号側櫛形電極と、第二段フィルタに含まれる第三中央IDTの信号側櫛形電極とを電気的に接続しても良い。
【0021】
かかる装置は、所謂5‐IDT型のDMSフィルタにより第一段フィルタおよび第二段フィルタを構成した例であり、前記中央IDTを、弾性表面波の伝搬方向に配列して音響結合させた3つのIDTにより構成し、これらのうち両端のIDT(第一中央IDTおよび第二中央IDT)に信号端子(入力信号端子または出力信号端子)を接続すると共に、第一段フィルタおよび第二段フィルタの中央のIDT(第三中央IDT)同士を電気的に接続して段間接続用の信号ラインとしたものである。
【0022】
さらに当該SAW装置において、第一段フィルタの第三中央IDT、ならびに第二段フィルタの第三中央IDTが、共に、第一中央IDTまたは第二中央IDTの内側に隣り合って配置した2つのIDT部と、これら2つのIDT部間に配置した中央反射器とを含み、第一段フィルタの中央反射器と、第二段フィルタの中央反射器とを電気的に接続して当該接続ラインを段間接続用の信号ラインとしても良い。
【0023】
また上記本発明においては、第一段フィルタの中央IDTのグランド側の櫛形電極と、第二段フィルタの中央IDTのグランド側の櫛形電極とを同一のグランド接続用のパッド電極に接続しても良い。より具体的には、例えば、第一段フィルタと第二段フィルタとを、互いに圧電基板上で弾性表面波の伝搬方向と略直交する方向に配列させると共に、第一段フィルタの中央IDTのグランド側櫛形電極と、第二段フィルタの中央IDTのグランド側櫛形電極とが互いに対向するように配置し、上記グランド接続用のパッド電極をこれら第一段フィルタと第二段フィルタのグランド側櫛形電極の間に配して、当該グランド接続用パッド電極に第一段フィルタのグランド側櫛形電極と第二段フィルタのグランド側櫛形電極とを接続する。
【0024】
このような装置構造によれば、第一段フィルタと第二段フィルタとで、グランド用のパッド電極を共通化し(1つの接続パッドで済む)、パッド電極の数を少なくすることが出来るから、SAW装置のより一層の小型化が可能となる。
【0025】
さらに、上記第一段フィルタの反射器および第二段フィルタの反射器のいずれか一方または双方に対して重み付けを施しても良い。上記信号入力端子ならびに信号出力端子は、不平衡端子および平衡端子のいずれとしても良い。具体的には、例えば入力端子と出力端子の双方を不平衡端子とすることも出来るし、入力端子が不平衡端子で出力端子が平衡端子とすることも可能であるし、あるいは逆に、入力端子が平衡端子で出力端子が不平衡端子としても良い。
【0026】
一方、本発明に係るデュプレクサは、アンテナに接続される共通端子と、第一の周波数帯に属する信号のための第一信号端子と、前記第一の周波数帯より高い第二の周波数帯に属する信号のための第二信号端子と、前記共通端子と第一信号端子との間に接続されかつ通過帯域として前記第一の周波数帯を有する第一SAW装置と、前記共通端子と第二信号端子との間に接続されかつ通過帯域として前記第二の周波数帯を有する第二SAW装置とを備えたデュプレクサであって、前記第一SAW装置および前記第二SAW装置のうち少なくとも前記第一SAW装置を前記本発明に係るいずれかのSAW装置としたものである。
【0027】
このようなデュプレクサによれば、第二SAW装置の通過帯域(第二周波数帯)における第一SAW装置の減衰量を大きくすることができ、周波数特性に優れたデュプレクサを構成することが出来る。なお、当該デュプレクサにおいては、第一SAW装置が送信用フィルタで第二SAW装置が受信用フィルタであっても良いし、逆に、第一SAW装置が受信用フィルタで第二SAW装置が送信用フィルタであっても構わない。
【0028】
上記本発明のSAW装置ならびにデュプレクサの実装にあたっては、典型的には低背化に有利なFCB(フリップチップボンディング)を採用するが、本発明は必ずしもこれに限定されず、WB(ワイヤボンディング)実装によることも可能である。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、DMSフィルタを複数段カスケード接続してなるSAW装置をより一層小型化すると共に、通過帯域高域側の減衰特性を改善することが出来る。
【0030】
本発明の他の目的、特徴および利点は、図面に基づいて述べる以下の本発明の実施の形態の説明により明らかにする。尚、各図中、同一の符号は、同一又は相当部分を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
〔実施形態1〕
図1から図2は、本発明の第一の実施形態に係るSAW装置を模式的に示すものである(図示の都合上IDTや反射器の電極の本数は実際と異なる。以降の図面においても同様)。これらの図に示すようにこのSAW装置は、信号が入力される入力端子1と信号が出力される出力端子2との間に直列に(2段に)DMSフィルタ(縦結合多重モードSAWフィルタ)11,21をカスケード接続したもので、これら入力段および出力段の各フィルタ11,21は、共に、弾性表面波の伝搬方向に配列するように圧電基板上に設けた3つのIDT12,13,14;22,23,24と、その両端に設けた反射器15,16;25,26とを備えた所謂3‐IDT型のDMSフィルタである。
【0032】
なお、これら3つの配列したIDTのうち中央のIDT12,22を中央IDT、当該中央IDT12,22の両側に配したIDT13,14,23,24を外側IDTと称する。また各フィルタ11,21に含まれる中央IDT12,22および外側IDT13,14,23,24は、共に、一対の櫛形電極からなるが、それらのうち信号電位側の櫛形電極を信号側櫛形電極、グランド電位側の櫛形電極をグランド側櫛形電極と称する。さらに、入力段フィルタ11と出力段フィルタ21とは、圧電基板上で弾性表面波の伝搬方向と直交する方向に並べて配置してあり、当該フィルタ11,21の配列方向の一方の(入力段フィルタ11側の)外側に入力端子1を、他方の(出力段フィルタ21側の)外側に出力端子2をそれぞれ配置し、両フィルタ11,21の間にグランド端子19a,19bを設けてある。
【0033】
入力段フィルタ11において、中央IDT12の信号側櫛形電極12aは、弾性表面波伝搬方向と直交する方向の入力端子側に配置して当該入力端子1と電気的に接続し、外側IDT13,14の信号側櫛形電極13a,14aは同じく弾性表面波伝搬方向と直交する方向の入力端子側に配置してそのバスバーを隣り合う反射器15,16の各バスバーと共通にすることにより当該反射器15,16とそれぞれ電気的に接続する。また、中央IDT12および外側IDT13,14のグランド側櫛形電極17は、共通の(1本の)バスバーにより構成し、弾性表面波伝搬方向と直交する方向についてグランド端子19a側に配置して両フィルタ11,21の間に設けた当該グランド端子19aと電気的に接続する。
【0034】
同様に、出力段フィルタ21では、中央IDT22の信号側櫛形電極22aを弾性表面波伝搬方向と直交する方向の出力端子側に配置して当該出力端子2と電気的に接続し、外側IDT23,24の信号側櫛形電極23a,24aは同じく弾性表面波伝搬方向と直交する方向の出力端子側に配置してそのバスバーを隣り合う反射器25,26の各バスバーと共通にすることにより当該反射器25,26とそれぞれ電気的に接続する。また、中央IDT22および外側IDT23,24のグランド側櫛形電極27は、共通の(1本の)バスバーにより構成し、両フィルタ11,21の間に配したグランド端子19b側に配置して当該グランド端子19bと電気的に接続する。
【0035】
また、入力段フィルタ11の一方の端部(弾性表面波の伝搬方向についての端部/以下同様)に配した反射器15と、出力段フィルタ21の一方の端部に配した反射器25とを導体パターン(カスケード接続ライン又は信号ライン)18で接続すると共に、入力段フィルタ11の他方の端部に配した反射器16と、出力段フィルタ21の他方の端部に配した反射器26とを同様に導体パターン18で接続することにより、両フィルタ11,21をカスケード接続する。
【0036】
図3から図5はこのような装置構造を有する本実施形態に係るSAW装置の周波数‐減衰特性(太線)を、比較例に係るSAW装置(細線)との対比において示した線図である。これらの図から明らかなように本実施形態のSAW装置によれば、通過帯域の電気特性を損なわずに、高域側の減衰特性、特に通過域近傍領域において減衰量を大きくしてフィルタ特性を改善できることが分かる。具体的な一例として、高域側減衰域869〜894MHzで−40dBという要求仕様(GSM送信フィルタ/通過帯域824〜849MHzを想定)を例にとって述べれば、通過帯域に近い側の869MHzにおいて比較例1(細線)では33.2dBと、当該仕様を満たすことが出来ないのに対して、本実施形態1(太線)によれば43.7dBと、比較例1に較べて10.5dB減衰特性を改善して当該仕様を十分に満たすことが可能となる。なお、通過帯域における要求仕様(824〜849MHzで−2.4dB)については、比較例および本実施形態1は共に、849MHzにおいて−1.4dBであり、当該要求を満たすことが出来る(図5参照)。このように本発明は、特に送受信信号の帯域が近い場合に良好な特性を得る効果的な手段となり得る。なお、上記周波数については、一例を示しただけであって本発明はこれに限定されないことは勿論である(後述の図13及び図15についても同様)。
【0037】
なお、上記比較例に係る装置は、図22および図23に示すように、本実施形態の装置と同様に両側に反射器15,16,25,26を備えた3‐IDT型のDMSフィルタ11,21を2段カスケード接続したものであるが、入力段フィルタ11および出力段フィルタ21の外側IDT13,23;14,24同士を接続して信号ライン(カスケード接続ライン)18としている。またこの比較例では、両フィルタ11,21の反射器15,25;16,26同士を接続しているが、当該各反射器15,16,25,26は外側IDT13,14,23,24のグランド電位側櫛形電極13b,14b,23b,24bのバスバーと接続させてある。さらに反射器同士を接続するライン20上にはグランド端子19c,19dを備える。
【0038】
さらに本実施形態に係るSAW装置では、前記図1乃至図2に示すように反射器同士をストレートに導体パターン18で接続して両フィルタ11,21の周囲にカスケード接続用の導体パターンやグランド端子等を配する必要がないから、素子の形成面積を小さくし、SAW装置全体を小型化する点でも有利である。なお、本実施形態では、各反射器15,16,25,26の何れか又は総てについて重み付けを施しても良い。具体的な重み付けの方法は、例えば後述の第五実施形態(図11)と同様に、弾性表面波の伝搬方向の位置によって反射器の電極長さが異なるようにしても良いし、他の様々な重み付けの方法を採ることが可能である。
【0039】
〔実施形態2〕
図6から図7は、本発明の第二の実施形態に係るSAW装置を示すものである。これらの図に示すようにこの実施形態に係る装置は、前記第一実施形態の装置において、入力段フィルタ11と出力段フィルタ21との間に配したグランド端子19a,19b(図2参照)を共通化した、すなわち、入力段フィルタ11のグランド側櫛形電極17と出力段フィルタ21のグランド側櫛形電極27を入力段フィルタ11と出力段フィルタ21との間に配した1つのグランド端子電極19に接続したものである。
【0040】
このような装置構造によれば、グランド端子の数を減らすことが出来る。なお、入力段フィルタ11と出力段フィルタ21の反射器15,16,25,26同士を接続して信号ライン(カスケード接続ライン)として使用する点その他は、本実施形態は前記第一実施形態と同様であるから、図面に同一の符号を付して重複した説明を省略する(以下の実施形態において同様)。
【0041】
〔実施形態3〕
図8から図9は、本発明の第三の実施形態に係るSAW装置を示すものである。これらの図に示すようにこの実施形態に係る装置は、前記第一実施形態の装置において、入力段フィルタ11と出力段フィルタ21における各両側の反射器の電極を他方のフィルタの反射器に向け延ばして(当該延長部分を符号28で表す)一方の反射器15,25同士ならびに他方の反射器16,26同士を接続したものである。言い換えれば、入力段フィルタ11の一方の端部に備える反射器15と出力段フィルタ21の一方の端部に備える反射器25とを共通化する(同一の(1つの)反射器とする)と共に、入力段フィルタ11の他方の端部に備える反射器16と出力段フィルタ21の他方の端部に備える反射器26とを共通化する(同一の(1つの)反射器とする)ことで、反射器を信号ライン(両フィルタを接続するカスケード接続ライン)としたものである。
【0042】
端部反射器15,25;16,26を共通にするこのような装置構造によれば、入力段フィルタ11と出力段フィルタ21とを音響的に繋げることが出来ることに加え、当該信号ライン28とその周囲に形成されるグランドパターン(図示せず)との間、或いは素子が実装されている場合には、素子と実装面のグランドパターンとの間に生じ得る寄生容量を低減することが出来る。なお、図面では、入力段フィルタ11に属する反射器部分15,16と、出力段フィルタ21に属する反射器部分25,26とで電極本数が同一となっているが、各反射器部分で電極本数が異なっていても良く、また各反射器部分のピッチや、ピッチに対する電極幅の比が異なっていても良い。
【0043】
〔実施形態4〕
図10は、本発明の第四の実施形態に係るSAW装置を示すものである。同図に示すようにこの実施形態に係る装置は、前記第三実施形態(図8〜図9)の装置において、前記第二実施形態と同様に、入力段フィルタ11と出力段フィルタ21との間に配したグランド端子19を共通化したものである。
【0044】
〔実施形態5〕
さらに図11は、本発明の第五の実施形態に係るSAW装置を示すもので、この実施形態に係る装置は、前記第四実施形態(図10)の装置において、両端の反射器15,16,25,26に対して重み付けを施したものである。この重み付けは、本実施形態では、装置の外側方向(弾性表面波の伝搬方向について外側)へ行くほど直線状にバスバーの幅を広くして各反射器15,16,25,26の電極の長さが短くなるようにする(台形状のグレーティング電極とする)ことで、弾性表面波の伝搬方向に直交する方向の位置によって反射器の電極本数が変わるようにした(弾性表面波の伝搬方向に直交する方向について外側位置ほど電極本数が少なくなる、すなわち、反射器15,16,25,26のバスバーに近い位置では本数が少なく、当該バスバーから遠い位置ほど本数が多い)。なお、当該重み付けは、この例のほかにも、例えば曲線状に反射器の電極長さを変化させる、あるいは円弧状のグレーティング電極とするなど様々な構成を採ることが可能である。
【0045】
〔実施形態6〕
図12は、本発明の第六の実施形態に係るSAW装置を示すもので、この実施形態の装置は平衡出力信号を取り出すようにしたものである。具体的には、前記第一から第五実施形態の装置と同様に一対の反射器15,16;25,26の間に中央IDT12;22とその両側に配した外側IDT13,14;23,24とを備えた3‐IDT型のDMSフィルタ(入力段フィルタ11および出力段フィルタ21)を両端の反射器15,16;25,26および反射器同士を接続するライン(導体パターン)18a,18bを通じて2段カスケード接続したものであるが、出力段フィルタ21の中央IDT22を弾性表面波の伝搬方向と直交する方向に2分割して電気的に直列に接続し各IDT部22c,22dに平衡出力端子2a,2bをそれぞれ接続している。
【0046】
入力端子1は、前記第一から第五実施形態の装置と同様に不平衡端子である。また、前記各実施形態と同様に入力段フィルタ11と出力段フィルタ21との間にグランド端子19を設けて、このグランド端子19に、入力段フィルタ11の中央IDT12および外側IDT13,14のグランド側櫛形電極17と、出力段フィルタ21の各外側IDT23,24のグランド側櫛形電極23a,24aを接続する。
【0047】
入力端子1から入力された信号は、前記第二従来例(図27)と同様に入力段フィルタ11で平衡信号に変換されるが、当該信号は外側IDT13,14と、これらに隣接する反射器15,16および入力段フィルタ11と出力段フィルタ21の反射器同士を接続する上記信号ライン18a,18bを通じて出力段フィルタ21に伝送され、出力段フィルタ21の反射器25,26、外側IDT23,24および中央IDT22を通じて平衡出力端子2から平衡信号として取り出される。なお、信号ライン18a,18bのうち一方の信号ライン18aを通じて伝送される信号と、他方の信号ライン18bを通じて伝送される信号とは互いに位相が180°ずれた信号となっている。
【0048】
図13は本実施形態に係る装置の周波数‐減衰特性(太線)を、第二の比較例に係るSAW装置(細線)との対比において示した線図である。この図から明らかなように本実施形態のSAW装置によれば、通過帯域の電気特性を損なわずに、高域側の減衰特性、特に通過域近傍領域において減衰量を大きくしてフィルタ特性を改善できることが分かる。具体的には、高域側減衰域980〜1030MHzで−25dBという要求仕様(GSM受信フィルタ/通過帯域925〜960MHzを想定)を例にとって述べれば、通過帯域に近い側の980MHzにおいて比較例2(細線)は30.9dBであるのに対して、本実施形態(太線)によれば34.8dBと、比較例2に較べて3.9dB減衰特性を改善することができ、当該要求仕様を十分に満たすことが出来る。
【0049】
なお、当該第二比較例に係る装置は、図24に示すように、本実施形態の装置と同様に両側に反射器15,16;25,26を備えた3‐IDT型のDMSフィルタ11,21を2段カスケード接続し、出力段フィルタ21から平衡信号を取り出すようにしたものであるが、入力段フィルタ11および出力段フィルタ21の外側IDT13,23;14,24同士を接続して信号ライン(カスケード接続ライン)18a,18bとしている。またこの第二比較例では、両フィルタ11,21の反射器15,25;16,26同士を接続しているが、当該各反射器15,16,25,26は外側IDT13,14,23,24のグランド電位側櫛形電極13b,14b,23b,24bのバスバーと接続させてある。さらに反射器同士を接続するライン20上にはグランド端子を備える。
【0050】
〔実施形態7〕
図14は、本発明の第七の実施形態に係るSAW装置を模式的に示すものである。この実施形態の装置は、前記第六実施形態と異なって不平衡入力端子1から入力された不平衡信号を入力段フィルタ11からそのまま反射器15,16および反射器同士を接続する信号ライン18a,18bを通じて出力段フィルタ21に伝送し、出力段フィルタ21で当該不平衡信号を平衡信号に変換して平衡出力端子2から平衡信号を取り出すようにしたものである。なお、出力段フィルタ21における不平衡信号から平衡信号への変換は、出力段フィルタ21の2つの外側IDT23,24の極性を互いに略180°反転させておくことにより行えば良い。信号ライン18a,18bを通じて伝送される信号は、この実施形態では前記第六実施形態と異なり、同位相の信号である。
【0051】
図15は本実施形態に係る装置の周波数‐減衰特性を、前記第二比較例に係るSAW装置との対比において示した線図である。この図から明らかなように本実施形態のSAW装置によっても、通過帯域の電気特性を損なわずに、高域側の減衰特性、特に通過域近傍領域において減衰量を大きくしてフィルタ特性を改善できることが分かる。具体的には、高域側減衰域980〜1030MHzで−25dBという要求仕様(GSM受信フィルタ/通過帯域925〜960MHzを想定)を例にとって述べれば、通過帯域に近い側の980MHzにおいて比較例2(細線)は30.9dBであるのに対して、本実施形態(太線)によれば38.1dBと、比較例2に較べて7.2dBの特性改善を行うことができ、当該要求仕様を十分に満たすことが出来る。
【0052】
〔実施形態8〕
図16は、本発明の第八の実施形態に係るSAW装置を模式的に示すものである。同図に示すようにこの実施形態に係るSAW装置は、前記各実施形態と同様に、両側に反射器(端部反射器)15,16;25,26を備えた3‐IDT型DMSフィルタを、端部反射器同士を電気的に接続して信号ラインとしたものであるが、入力段および出力段の各フィルタ11,21について、外側IDT13,14,23,24と端部反射器15,16,25,26との間に、独立した反射器(浮き反射器)31をそれぞれ設けている。
【0053】
このように外側IDT13,14,23,24と端部反射器15,16,25,26との間に更に別の反射器31を備えることとすれば、例えば電極指対数や電極ピッチ等の差異により入力段フィルタ11と出力段フィルタ21の長さ(弾性表面波伝搬方向の大きさ)が異なる場合であっても、当該反射器31を介在させることでフィルタの長さを調整することができ、両フィルタ11,21の端部反射器同士を容易にカスケード接続して多段フィルタを構成することが可能となる。
【0054】
なお、外側IDT13,14,23,24の信号側櫛形電極13a,14a,23a,24aと端部反射器15,16,25,26とを信号ライン38により電気的に接続してある。また、入力端子1は不平衡端子であり、出力端子2は前記第六実施形態(図12)と同様に平衡端子である。入力端子1から入力され入力段フィルタ11で平衡信号に変換された入力信号のうち、一方の信号ライン18aを通じて伝送される信号と、他方の信号ライン18bを通じて伝送される信号とは第六実施形態と同様に互いに位相が180°ずれた信号となっている。
【0055】
〔実施形態9〕
図17は、本発明の第九の実施形態に係るSAW装置を模式的に示すものである。同図に示すようにこの実施形態に係るSAW装置は、前記第八実施形態において、前記第三実施形態のように入力段フィルタ11と出力段フィルタ21における各端部反射器の電極を他方のフィルタの端部反射器に向け延ばし(延長部分28により)、一方の反射器15,25同士ならびに他方の反射器16,26同士を接続して信号ライン(両フィルタを接続するカスケード接続ライン)としたものである。なお、各フィルタ11,21において各外側IDT13,14,23,24と各端部反射器15,16,25,26との間には、前記第八実施形態と同様に反射器31を備えてある。
【0056】
〔実施形態10〕
図18は、本発明の第十の実施形態に係るSAW装置を模式的に示すものである。同図に示すようにこの実施形態に係るSAW装置は、前記第九実施形態と同様に、入力段フィルタ11と出力段フィルタ21とでIDTの電極指対数や電極ピッチ等が相違し両フィルタの長さが異なる場合に好適な構成例を示すものであるが、第九実施形態と異なり、外側IDT13,14,23,24と端部反射器15,16,25,26との間に浮き反射器31を設けず、その代わりに他方のフィルタ(出力段フィルタ21)と接続して一体化する端部反射器15,16について、当該他方のフィルタ21とは接続しない非接続電極部32を備えたものである。このように浮き反射器でなく、非接続電極部32を端部反射器に設けることによっても、電極指対数や電極ピッチの差異に対応することが出来る。なお、非接続電極部32は、図示の例では、入力段フィルタ11に設けたが、出力段フィルタ21に、あるいは両フィルタ11,21に設けても良い。
【0057】
〔実施形態11〕
図19は、本発明の第十一の実施形態に係るSAW装置を模式的に示すものである。同図に示すようにこの実施形態に係るSAW装置は、入力段フィルタ11および出力段フィルタ21を、弾性表面波の伝搬方向に配列した5つのIDT13,41,43,42,14;23,51,53,52,24を備える5‐IDT型DMSフィルタにより構成したものである。
【0058】
具体的には、入力段フィルタ11の中央IDTは、第一外側IDT13の内側に隣り合って配置した第一中央IDT41と、第二外側IDT14の内側に隣り合って配置した第二中央IDT42と、これら第一中央IDT41と第二中央IDT42との間に配置した第三中央IDT43とからなる。同様に、出力段フィルタ21の中央IDTは、第一外側IDT23の内側に隣り合って配置した第一中央IDT51と、第二外側IDT24の内側に隣り合って配置した第二中央IDT52と、これら第一中央IDT51と第二中央IDT52との間に配置した第三中央IDT53とからなる。
【0059】
また、入力端子1は、入力段フィルタ11の第一中央IDT41と第二中央IDT42とに接続し、出力端子2は出力段フィルタ21の第一中央IDT51と第二中央IDT52とに接続する。さらに、入力段フィルタ11に含まれる第三中央IDT43の信号側櫛形電極43aと、出力段フィルタ21に含まれる第三中央IDT53の信号側櫛形電極53aとを電気的に接続して段間接続用の信号ライン48とする。なお、入力段フィルタ11および出力段フィルタ21の各端部反射器15,16,25,26同士を電気的に接続して信号ライン18とすることは前記各実施形態と同様である。
【0060】
なお、図28は、5‐IDT型DMSフィルタ11,21を入力端子1と出力端子2との間に2段カスケード接続した従来のSAW装置の一例を示す概念図である。この図に示すように従来のSAW装置では、弾性表面波の伝搬方向に配列して各フィルタを構成するIDT13,41,43,42,14;23,51,53,52,24のうちの両端のIDT(外側IDT)13,23;14,24同士、ならびに、中央のIDT43,53同士をそれぞれ電気的に接続して信号ライン(カスケード接続ライン)18,48としている。上記本実施形態に係るSAW装置は、従来のこの種のSAW装置と比較して、前記各実施形態と同様に、SAW装置全体の小型化と、高域側(特に通過域近傍領域)の減衰特性の改善が可能である(次に述べる第十二実施形態も同様)。
【0061】
〔実施形態12〕
さらに図20は、本発明の第十二の実施形態に係るSAW装置を模式的に示すものである。同図に示すようにこの実施形態に係るSAW装置は、前記第十一実施形態と同様に、入力段フィルタ11および出力段フィルタ21を5‐IDT型DMSフィルタにより構成したものであるが、入力段フィルタ11の第三中央IDTが、第一中央IDT41または第二中央IDT42の内側に隣り合って配置した2つのIDT部43A,43Bと、これら2つのIDT部43A,43Bの間に配置した反射器(中央反射器)43Cとからなる。同様に、出力段フィルタ21についても、第三中央IDTが、第一中央IDT51または第二中央IDT52の内側に隣り合って配置した2つのIDT部53A,53Bと、これら2つのIDT部53A,53Bの間に配置した反射器(中央反射器)53Cとからなる。また、入力段フィルタ11の中央反射器43Cと、出力段フィルタ21の中央反射器53Cとを電気的に接続して段間接続用の信号ライン48とする。
【0062】
なお、本実施形態ならびに前記第十一実施形態においても、前記各実施形態と同様に、入力および出力の一方または双方を平衡端子とすることが可能であることは当業者に明らかである。また、5‐IDT型フィルタによって入力段および出力段の各フィルタ11,21を構成した本実施形態(第十二実施形態)ならびに前記第十一実施形態においても、前記3‐IDT型フィルタによる前記第三実施形態(図8)と同様に、入力段および出力段の各フィルタ11,21について端部反射器15,25;16,26同士を共通にすることにより両フィルタ11,21をカスケード接続することが出来る。そしてこのような端部反射器同士を共通化した装置構造によれば、入力段フィルタ11と出力段フィルタ21とを音響的に繋げることができ、また当該信号ラインとその周囲に形成されるグランドパターン(図示せず)との間、或いは素子が実装されている場合には、素子と実装面のグランドパターンとの間に生じ得る寄生容量を低減することが可能となる。
【0063】
図21は、本発明の係るデュプレクサの一例を示すものである。同図に示すようにこのデュプレクサは、共通端子Cと送信信号端子(第一信号端子)Txとの間に接続される送信側フィルタ(第一弾性表面波装置)101と、共通端子Cと受信信号端子(第二信号端子)Rxとの間に接続される受信側フィルタ(第二弾性表面波装置)102とを備え、送信側フィルタ101の通過帯域が受信側フィルタ102の通過帯域より低く、送信側フィルタ101として前記いずれかの実施形態のSAW装置を用いたものである。なお、共通端子Cはアンテナに接続される。また、受信側フィルタ102は本発明に基づくSAW装置であっても良いし、他のSAW装置(フィルタ)としても構わない。
【0064】
このような本実施形態によれば、送信側フィルタ101について受信側フィルタ102の通過帯域で良好な減衰特性を得ることができ、電気特性に優れたデュプレクサを構成することが出来る。
【0065】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で種々の変更を行うことができることは当業者に明らかである。
【0066】
例えば、カスケード接続する弾性表面波フィルタの接続段数は典型的には2段であるが、3段以上とすること(例えば第一段フィルタ(入力段フィルタ)と第二段フィルタ(出力段フィルタ)との間に、あるいは、第一段フィルタの前段に、あるいは、第二段フィルタの後段に、さらにSAWフィルタをカスケード接続する等)を本発明は除外するものではない。また、圧電基板の材料や回転カット角、あるいはIDTや反射器を構成する電極の材料や各部寸法(電極本数、電極幅、ピッチ、交差長等)などの具体的な構成は、使用周波数帯、等に応じて様々に設定可能であり、特に限定されない。また、必要に応じてフィルタにSAW共振器が直列または並列に接続された構造であっても良い。さらに、端部反射器の間に配置するIDTの数は、実施形態では3個および5個を例示したが、本発明はこれらの数に限定されるものではなく、これ以外の数(例えば4個または6個以上)であっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る弾性表面波フィルタを示す概念図である。
【図2】前記第一実施形態に係る弾性表面波フィルタの導体パターンを模式的に示す図である。
【図3】前記第一実施形態に係る弾性表面波フィルタの周波数特性を示す線図である。
【図4】前記第一実施形態に係る弾性表面波フィルタの高域側における減衰特性を拡大して示す線図である。
【図5】前記第一実施形態に係る弾性表面波フィルタの通過帯域における周波数特性を拡大して示す線図である。
【図6】本発明の第二の実施形態に係る弾性表面波フィルタを示す概念図である。
【図7】前記第二実施形態に係る弾性表面波フィルタの導体パターンを模式的に示す図である。
【図8】本発明の第三の実施形態に係る弾性表面波フィルタを示す概念図である。
【図9】前記第三実施形態に係る弾性表面波フィルタの導体パターンを模式的に示す図である。
【図10】本発明の第四の実施形態に係る弾性表面波フィルタを示す概念図である。
【図11】本発明の第五の実施形態に係る弾性表面波フィルタを示す概念図である。
【図12】本発明の第六の実施形態に係る弾性表面波フィルタを示す概念図である。
【図13】前記第六実施形態に係る弾性表面波フィルタの周波数特性を示す線図である。
【図14】本発明の第七の実施形態に係る弾性表面波フィルタを示す概念図である。
【図15】前記第七実施形態に係る弾性表面波フィルタの周波数特性を示す線図である。
【図16】本発明の第八の実施形態に係る弾性表面波フィルタを示す概念図である。
【図17】本発明の第九の実施形態に係る弾性表面波フィルタを示す概念図である。
【図18】本発明の第十の実施形態に係る弾性表面波フィルタを示す概念図である。
【図19】本発明の第十一の実施形態に係る弾性表面波フィルタを示す概念図である。
【図20】本発明の第十二の実施形態に係る弾性表面波フィルタを示す概念図である。
【図21】本発明に係るデュプレクサの一例を示すブロック図である。
【図22】弾性表面波フィルタの一例(第一比較例)を示す概念図である。
【図23】前記第一比較例に係る弾性表面波フィルタの導体パターンを模式的に示す図である。
【図24】弾性表面波フィルタの別の例(第二比較例)を示す概念図である。
【図25】従来の弾性表面波フィルタの一例(第一従来例)を示す概念図である。
【図26】前記第一従来例に係る弾性表面波フィルタの導体パターンを模式的に示す図である。
【図27】従来の弾性表面波フィルタの別の例(第二従来例)を示す概念図である。
【図28】従来の弾性表面波フィルタの更に別の例を示す概念図である。
【符号の説明】
【0068】
11 入力段フィルタ(DMSフィルタ)
12,22 中央IDT
13,23 第一外側IDT
14,24 第二外側IDT
15,16,25,26,31,43C,53C 反射器
17,27 グランド側櫛形電極
18,18a,18b カスケード接続ライン(信号ライン)
19,19a〜19h グランド端子
21 出力段フィルタ(DMSフィルタ)
32 非接続電極部
38,48 信号ライン
41,51 第一中央IDT
42,52 第二中央IDT
43,53 第三中央IDT

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号入力端子と、
信号出力端子と、
これら信号入力端子と信号出力端子との間にカスケード接続した複数の縦結合多重モード型弾性表面波フィルタと、
を備え、かつ
前記複数の縦結合多重モード型弾性表面波フィルタは、圧電基板上において弾性表面波の伝搬方向に配列した複数の交差指状電極と、これら交差指状電極の両側に配した1対の反射器とをそれぞれ有して互いにカスケード接続された第一段フィルタと第二段フィルタとを含み、
前記第一段フィルタの複数の交差指状電極は、信号入力端子を接続した中央交差指状電極と、前記1対の反射器のうちの一方の内側に隣り合って配置した第一外側交差指状電極と、前記1対の反射器のうちの他方の内側に隣り合って配置した第二外側交差指状電極とを含み、
前記第二段フィルタの複数の交差指状電極は、信号出力端子を接続した中央交差指状電極と、前記1対の反射器のうちの一方の内側に隣り合って配置した第一外側交差指状電極と、前記1対の反射器のうちの他方の内側に隣り合って配置した第二外側交差指状電極とを含む
弾性表面波装置であって、
前記第一段フィルタの第一外側交差指状電極および第二外側交差指状電極、ならびに前記第二段フィルタの第一外側交差指状電極および第二外側交差指状電極の、各信号側の櫛形電極を、隣り合う反射器に電気的に接続すると共に、
前記第一段フィルタの一方の反射器と前記第二段フィルタの一方の反射器とを電気的に接続し、
前記第一段フィルタの他方の反射器と前記第二段フィルタの他方の反射器とを電気的に接続した
ことを特徴とする弾性表面波装置。
【請求項2】
前記第一段フィルタの第一外側交差指状電極および第二外側交差指状電極、ならびに前記第二段フィルタの第一外側交差指状電極および第二外側交差指状電極の、各信号側の櫛形電極のバスバーと、隣り合う反射器のバスバーとを連続した導体パターンで形成することにより、前記第一外側交差指状電極および第二外側交差指状電極の各信号側櫛形電極と各反射器との電気的接続を行った
請求項1に記載の弾性表面波装置。
【請求項3】
前記第一段フィルタと前記第二段フィルタとを、互いに前記圧電基板上で弾性表面波の伝搬方向と略直交する方向に配列させ、
前記第一段フィルタの一方の反射器と前記第二段フィルタの一方の反射器とを連続する1つの反射器として形成すると共に、
前記第一段フィルタの他方の反射器と前記第二段フィルタの他方の反射器とを連続する1つの反射器として形成した
請求項1または2に記載の弾性表面波装置。
【請求項4】
前記第一段フィルタおよび第二段フィルタのいずれか一方または双方について、前記第一外側交差指状電極と、当該第一外側交差指状電極の外側に配した前記反射器との間、ならびに、前記第二外側交差指状電極と、当該第二外側交差指状電極の外側に配した前記反射器との間、のいずれか一方または双方に、前記1対の反射器とは別の反射器を更に備えた
請求項1から3のいずれか一項に記載の弾性表面波装置。
【請求項5】
前記第一段フィルタの中央交差指状電極、ならびに前記第二段フィルタの中央交差指状電極は、共に、前記第一外側交差指状電極の内側に隣り合って配置した第一中央交差指状電極と、前記第二外側交差指状電極の内側に隣り合って配置した第二中央交差指状電極と、これら第一中央交差指状電極と第二中央交差指状電極との間に配置した第三中央交差指状電極とからなり、
前記第一段フィルタの第一中央交差指状電極および第二交差指状電極に前記信号入力端子を接続する一方、
前記第二段フィルタの第一中央交差指状電極および第二交差指状電極に前記信号出力端子を接続し、
前記第一段フィルタに含まれる第三中央交差指状電極の信号側櫛形電極と、前記第二段フィルタに含まれる第三中央交差指状電極の信号側櫛形電極とを電気的に接続した
請求項1から4のいずれか一項に記載の弾性表面波装置。
【請求項6】
前記第一段フィルタの第三中央交差指状電極、ならびに前記第二段フィルタの第三中央交差指状電極は、共に、前記第一中央交差指状電極または第二中央交差指状電極の内側に隣り合って配置した2つの交差指状電極部と、これら2つの交差指状電極部間に配置した中央反射器とを含み、
第一段フィルタの前記中央反射器と、第二段フィルタの前記中央反射器とを電気的に接続した
請求項5に記載の弾性表面波装置。
【請求項7】
前記第一段フィルタの中央交差指状電極のグランド側の櫛形電極と、前記第二段フィルタの中央交差指状電極のグランド側の櫛形電極とを同一のグランド接続用のパッド電極に接続した
請求項1から6のいずれか一項に記載の弾性表面波装置。
【請求項8】
前記第一段フィルタと前記第二段フィルタとを、互いに前記圧電基板上で弾性表面波の伝搬方向と略直交する方向に配列させると共に、
前記第一段フィルタの中央交差指状電極のグランド側の櫛形電極と、前記第二段フィルタの中央交差指状電極のグランド側の櫛形電極とが、互いに対向するように配置し、
前記グランド接続用のパッド電極をこれら前記第一段フィルタと第二段フィルタのグランド側櫛形電極の間に配して、
当該グランド接続用パッド電極に前記第一段フィルタのグランド側櫛形電極と前記第二段フィルタのグランド側櫛形電極とを接続した
請求項7に記載の弾性表面波装置。
【請求項9】
前記第一段フィルタの反射器および前記第二段フィルタの反射器のいずれか一方または双方に対して重み付けを施した
請求項1から8のいずれか一項に記載の弾性表面波装置。
【請求項10】
前記信号入力端子が不平衡端子または平衡端子であり、
前記信号出力端子が不平衡端子または平衡端子である
請求項1から9のいずれか一項に記載の弾性表面波装置。
【請求項11】
アンテナに接続される共通端子と、
第一の周波数帯に属する信号のための第一信号端子と、
前記第一の周波数帯より高い第二の周波数帯に属する信号のための第二信号端子と、
前記共通端子と第一信号端子との間に接続されかつ通過帯域として前記第一の周波数帯を有する第一弾性表面波装置と、
前記共通端子と第二信号端子との間に接続されかつ通過帯域として前記第二の周波数帯を有する第二弾性表面波装置と、
を備えたデュプレクサであって、
前記第一弾性表面波装置および前記第二弾性表面波装置のうち少なくとも前記第一弾性表面波装置を前記請求項1から10のいずれか一項に記載の弾性表面波装置とした
ことを特徴とするデュプレクサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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