弾球遊技機の二重透明板構成体とその二重透明板構成体の製造方法
【課題】本発明は、二重透明板構成体を製造する際の生産性を向上させてコストダウンを図ることを可能とした弾球遊技機の二重透明板構成体とその二重透明板構成体の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の二重透明板構成体は、弾球遊技機の前面に、遊技盤の前面が透視可能に、2枚の透明板がほぼ平行に配設される一対の透明板体10と、軟質の熱可塑性樹脂で形成され、内周部に前記一対の透明板体10の外周縁部が各々はめ込まれる板保持溝32を有し、前記外周縁部を前記板保持溝にはめ込んで保持するための軟質保持体30と、硬質の熱可塑性樹脂で形成され、前記軟質保持体の外周部を外嵌するように、かつ、前記弾球遊技機に取り付け可能に設けられた取付枠体20とを備えている。
【解決手段】本発明の二重透明板構成体は、弾球遊技機の前面に、遊技盤の前面が透視可能に、2枚の透明板がほぼ平行に配設される一対の透明板体10と、軟質の熱可塑性樹脂で形成され、内周部に前記一対の透明板体10の外周縁部が各々はめ込まれる板保持溝32を有し、前記外周縁部を前記板保持溝にはめ込んで保持するための軟質保持体30と、硬質の熱可塑性樹脂で形成され、前記軟質保持体の外周部を外嵌するように、かつ、前記弾球遊技機に取り付け可能に設けられた取付枠体20とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾球遊技機の遊技盤の前面に配置される弾球遊技機の二重透明板構成体とその二重透明板構成体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パチンコ機などの弾球遊技機では、遊技盤の前方に、板ガラス等を配置して、その板ガラスと遊技盤との間に遊技領域となる空間が形成されている。遊技者は、発射装置によって遊技領域に遊技球を撃ち込み、この遊技球の挙動によって遊技を行う。そして、弾球遊技機では、入賞等が成立すれば遊技球が払い出されることになる。この板ガラスは1枚でもよいが、不正行為に対する対策として、所定の間隔を有し、その間に空間が設けられるように一体構造にした2枚構成の二重板ガラス構成体に構成されることが多い。
【0003】
従来、二重板ガラス構成体は、枠体の両方の端部に、接着剤で接着させる方法で製造されているものが一般的であった。例えば、この二重板ガラス構成体は、枠部材の一方の段部にディスペンサー等で接着剤を塗布後、一方の板ガラスを貼り付けて接着し、次に、枠部材の他方の段部にディスペンサー等で接着剤を塗布後、他方の板ガラスを貼り付けて接着している。この二重板ガラス構成体について、特許文献に基づいてさらに説明を行う。
【0004】
パチンコ機の枠体の両端面に二枚の板ガラスを夫々接着したパチンコ機用二重ガラス組体に関する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、接着構造の改良案として、フレームにガラスの切断面が接着される支持面と、この支持面に直交する立面と、立面に凹設された接着剤溜まりとが形成されたパチンコ機に関する技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
さらに、保持部に外周側突出部を形成し、少ない接着剤によって枠体にガラス板を固定できる遊技機におけるガラスユニットに関する技術が知られている(例えば、特許文献3参照)。また、枠体に加熱剥離型接着剤を介してガラス板を接着し、枠体及びガラス板のリサイクル性を向上させた遊技機におけるガラス体に関する技術が知られている(例えば、特許文献4参照)。一方、接着剤を使用しない方法として、枠体を額縁状にし、枠体の楔受に楔部材を嵌入して、作用端部を変形させガラス板を枠体に押し付ける技術が知られている(例えば、特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公昭57−047012号公報
【特許文献2】特開2003−126474号公報
【特許文献3】特開2010−082379号公報
【特許文献4】特開2009−148426号公報
【特許文献5】特開2004−166804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1〜4の技術のように、接着剤で接着してする二重板ガラス構成体を製造する方法は、手間がかかるうえ、接着剤がはみださないようにしなければならず、生産性がよくない。また、製造コスト高になりやすいという問題点があった。また、特許文献5の技術は、枠体の構造が複雑になるうえ、楔部材を介して一体化する作業に時間がかかり、生産性が向上しないおそれがある。
また、この板ガラスには、強化ガラスが採用されることが多い。この強化ガラスは、所定の形状に切断後、焼き入れ処理して製造されるものであり、外形寸法、板厚寸法等にバラツキが生じ寸法管理が容易でない。そのため、板ガラスを枠体の溝部に挿入して一体化する方法では、板ガラスと枠体の溝部との間にがたつき、隙間などを生じさせることなく組み付けるのが容易でないという問題点もあった。
【0008】
本発明は、前述のような技術背景のもとになされたものであり、下記目的を達成する。
本発明の目的は、前記した問題を解決するためになされたものであり、生産性の向上を図ることができる弾球遊技機の二重透明板構成体とその二重透明板構成体の製造方法を提供することにある。
又、本発明の他の目的は、透明板体の寸法にバラツキがあっても、それを容易に吸収して取付枠体と透明板体との間にがたつきを発生させることがない弾球遊技機の二重透明板構成体とその二重透明板構成体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記目的を達成するため、次の手段を採る。
本発明1の弾球遊技機の二重透明板構成体は、
弾球遊技機の前部に、遊技盤の前面が透視可能に、2枚の透明板がほぼ平行に配設される一対の透明板体と、軟質の熱可塑性樹脂で形成され、内周部に前記一対の透明板体の外周縁部が各々はめ込まれる板保持溝を有し、前記外周縁部を前記板保持溝にはめ込んで保持するための軟質保持体と、硬質の熱可塑性樹脂で形成され、前記軟質保持体の外周部を外嵌するように、かつ、前記弾球遊技機に取り付け可能に設けられた取付枠体とを備えていることを特徴とする。
【0010】
本発明2の弾球遊技機の二重透明板構成体は、本発明1において、
前記取付枠体は、前記軟質保持体にはめ込まれた前記一対の透明板体を、射出成形用金型内にインサートした状態で射出成形するインサート成形で形成されたものであることを特徴とする。
【0011】
本発明3の弾球遊技機の二重透明板構成体は、本発明1において、
前記取付枠体は、前記一対の透明板体と平行な平面で分割された一対の分割取付枠体が接合されたものであることを特徴とする。
【0012】
本発明4の弾球遊技機の二重透明板構成体は、本発明3において、
前記一対の分割取付枠体は、レーザ溶着、超音波溶着、接着から選択される一つの接合方法で接合されたものであることを特徴とする。
【0013】
本発明5の弾球遊技機の二重透明板構成体は、本発明1〜4において、
前記一対の透明板体は、所定の大きさに切断され、所定の熱処理が施された強化ガラスからなるものであることを特徴とする。
【0014】
本発明6の弾球遊技機の二重透明板構成体の製造方法は、
弾球遊技機の前部に、遊技盤の前面が透視可能に配設される弾球遊技機の二重透明板構成体の製造方法であって、軟質の熱可塑性樹脂で形成され、一対の透明板体の外周縁部をはめ込むための板保持溝を有する軟質保持体を射出成形または押出成形で形成する第1の工程と、前記一対の透明板体の外周縁部を、前記軟質保持体の前記板保持溝にはめ込んで一体にするための第2の工程と、取付枠体を成形するための金型面を有する射出成形用金型を開き、前記射出成形用金型内に、一体化された前記軟質保持体と前記一対の透明板体をインサートする第3の工程と、前記射出成形用金型を閉じ、前記射出成形用金型内に形成されたキャビティに硬質の熱可塑性樹脂を射出してインサート成形を行い、前記取付枠体、前記軟質保持体、及び、前記一対の透明板体を一体にする第4の工程と、前記射出成形用金型を開き、前記取付枠体、前記軟質保持体、及び、前記一対の透明板体が一体化した二重透明板構成体を取り出す第5の工程とからなっている。
【0015】
本発明7の弾球遊技機の二重透明板構成体の製造方法は、本発明6において、
前記一対の透明板体は、所定の大きさに切断され、所定の熱処理が施された強化ガラスからなるものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明の弾球遊技機の二重透明板構成体(二重板ガラス構成体)は、一対の透明板体(一対の板ガラス体)を保持するために、軟質の熱可塑性樹脂で成形された軟質保持体を設けているため、強化ガラス、透明合成樹脂製板等からなる一対の透明板体の寸法にバラツキがあっても容易に吸収することができる。また、軟質保持体により一対の透明板体は保持されているので、取付枠体に対して、一対の透明板体が、がたつくようなことが生じない。さらに、取付枠体は硬質の熱可塑性樹脂で成形されたものであり、弾球遊技機、扉体等への取付、搬送等が容易である。
【0017】
更に、本発明の二重透明板構成体の製造方法によれば、生産性の高い射出成形の技術を採用して、軟質保持体、取付枠体を成形しているので、二重透明板構成体(二重板ガラス構成体)の生産性が向上しコストダウンが図れる。この二重透明板構成体は、多量生産可能なものであり、このコストダウンの効果は大きい。また、二重透明板中間構成体(二重板ガラス中間構成体)、二重透明板構成体等の搬出入動作を自動化することが可能であり、この自動化により、さらに生産性向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の弾球遊技機の二重透明板構成体を示す正面図である。
【図2】図2は、図1をA−A線で切断した断面図である。
【図3】図3は、軟質保持体の他の実施の形態を示す外観図である。
【図4】図4は、弾球遊技機の二重透明板構成体(二重板ガラス構成体)の製造方法を示すフローチャートである。
【図5】図5は、二重透明板構成体(二重板ガラス構成体)の取付枠体を射出成形で製造する工程を説明するための説明図であって、熱可塑性樹脂を射出する前の状態を示す部分断面図である。
【図6】図6は、二重透明板構成体(二重板ガラス構成体)の取付枠体を射出成形で製造する工程を説明するための説明図であって、熱可塑性樹脂を射出した後の状態を示す部分断面図である。
【図7】図7は、二重透明板構成体の他の実施の形態であって、分割された分割取付枠体が接合前の状態を示す部分断面図である。
【図8】図8は、二重透明板構成体の他の実施の形態であって、分割取付枠体が一体に接合された後の状態を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1は、二重透明板構成体(二重板ガラス構成体)を示す正面図、図2は、図1をA−A線で切断した断面図である。図3は、軟質保持体の他の実施の形態を示す外観図である。
二重透明板構成体である二重板ガラス構成体1は、弾球遊技機(例えば、パチンコ機)の前面に設けられ、中央の透明な透明板部(板ガラス部)が、パチンコ機内部の液晶表示、模様、装飾部材、風車、釘、入賞部、発射された弾球等を遊技者が視覚で確認できるように透明なものである。二重板ガラス構成体1は、一対の透明板体である一対の板ガラス体10、一対の板ガラス体10を保持するための軟質保持体30、軟質保持体30の外周部を外嵌して支持するための取付枠体20等から構成されている。なお、この実施の形態の説明では、透明板体が強化ガラスからなる板ガラス体として説明を行うが、一般的な透明な板ガラス体、透明な合成樹脂製板体であってもよい。
【0020】
一対の板ガラス体(一対の透明板体)10は、第1板ガラス(第1透明板)11と、第2板ガラス(第2透明板)12とからなっており、第1板ガラス11及び第2板ガラス12は、所定の厚み(例えば、3.2mm)に形成された板ガラスである。第1板ガラス11、第2板ガラス12は、所定の形状に切断した後、焼き入れ処理を行ったいわゆる「強化ガラス」であり、一般的な板ガラス(フロート板ガラス)に比べ数倍(例えば3〜5倍)の強度を有するものである。この強化ガラスの製造法は、板ガラスを所定の温度(例えば、約700度)まで加熱した後、ガラス表面の空気を吹き付け、均一に急激に冷やすことで生成する周知な技術であり、詳細な説明は省略する。この一対の板ガラス体10は、不正行為に対する対策として、所定の間隔を有し、その間に空間が設けられるように、軟質保持体30を介して、2枚の第1板ガラス11、第2板ガラス12が、平行またはほぼ平行に、一体に構成されているものである。なお、一対の透明板構成体は、一対の透明な合成樹脂製板、透明な合成樹脂製板と透明な板ガラスとを組み合わせたもの等であってもよい。
【0021】
軟質保持体30は、軟質の材料である軟質の熱可塑性樹脂(例えば、熱可塑性エラストマー)で製造されたものである。この実施の形態では、軟質の熱可塑性樹脂を熱可塑性エラストマーとして説明を行う。熱可塑性エラストマーとは、高温では軟化して流動性を示し、圧縮成形、押出成形、射出成形等プラスチック加工機で成形することができ、冷却された時(例えば、常温時)にはゴム状弾性体としての性質を持つものである。この実施の形態では、軟質保持体30は、射出成形用金型(図示せず)に熱可塑性エラストマーが射出されリング状に成形されたものである。また、軟質保持体30は、外周面が、中央部が高くて両端側が低い断面R状の面で、内周部31が円筒面となっている断面半円形状であってリング状に成形されたものである。軟質保持体30の内周部31には、第1板ガラス11、第2板ガラス12の外周縁部をはめ込んで保持するための板保持溝32、32が連続したリング溝として形成されている。言い換えると、軟質保持体30は、断面が半円形状で、リング状に形成されたものであり、内周部31に、平行に、所定量離れた位置に2本の板保持溝32、32が形成されている。
【0022】
そして、軟質保持体30は、板保持溝32、32に第1板ガラス11、第2板ガラス12の外周縁部を、各々、はめ込んで保持するようになっている。このとき、第1板ガラス11と第2板ガラス12とは、平行またはほぼ平行な状態に保持されている。この軟質保持体30と、軟質保持体30の板保持溝32の一方に保持された第1板ガラス11、軟質保持体30の板保持溝32の他方に保持された第2板ガラス12とが一体になったものが、二重透明板中間構成体である二重板ガラス中間構成体5となる。
【0023】
板保持溝32の溝幅と、第1板ガラス11、第2板ガラス12の板厚とを比べると、溝幅のほうが板厚より所定量小さい寸法であって、第1板ガラス11、第2板ガラス12を差し込むと溝部が弾性変形してはめ込み可能な寸法になっている。第1板ガラス11、第2板ガラス12の板厚が、板保持溝32の溝幅より少し厚くても、溝部が溝幅方向に弾性変形して、第1板ガラス11、第2板ガラス12が板保持溝32内に挿入可能である。軟質保持体30は、前述したように、熱可塑性エラストマー製であり、板保持溝32の弾性変形が容易である。そして、このような寸法管理を行うことにより、軟質保持体30の板保持溝32と、第1板ガラス11、第2板ガラス12の外周縁部との間に隙間が生じさせることなく保持させることができる。また、第1板ガラス11、第2板ガラス12の寸法にバラツキがあっても容易に吸収することができる。すなわち、第1板ガラス11、第2板ガラス12は、軟質保持体30に対して、がたつきを生じることはない。
【0024】
なお、軟質保持体は、図3に示すような押出成形で成形された軟質保持体30aからなるものであってもよい。この軟質保持体30aは、板保持溝32a、32aに一対の板ガラス体10の外周縁部がはめ込まれるとともに、一対の板ガラス体10の外周縁部に巻き付けられた状態で、一対の板ガラス体10を保持するものである。軟質保持体30aは、外周縁部に巻き付けられた状態のとき、軟質保持体30aの両端が接するような長さになっている。また、外周縁部に巻き付けられた状態のとき、軟質保持体30aの両方の端部は、両面テープ等で仮止めされていてもよい。この軟質保持体30aにも、内周部31aに板保持溝32a、32aが形成されている。
【0025】
取付枠体20は、硬質の材料である硬質の熱可塑性樹脂〔例えば、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)、PC樹脂(ポリカーボネート樹脂)等〕で製造されたものであり、軟質保持体30の断面半円形状の外周部を外嵌して支持するように設けられている。取付枠体20の外周には、パチンコ機の前部に開閉可能に設けられている扉体(図示せず)に取り付けるための取り付け部21が所定数(例えば、この形態では4個)設けられている。取付枠体20は、軟質保持体30の外周部に射出成形で一体に強固に接合される。
【0026】
取付枠体20をインサート成形するための金型構成について、図5、6に基づいて説明を行う。図5は、二重透明板構成体(二重板ガラス構成体)の取付枠体を射出成形で製造する工程を説明するための説明図であって、熱可塑性樹脂を射出する前の状態を示す部分断面図、図6は、熱可塑性樹脂を射出した後の状態を示す部分断面図である。
【0027】
射出成形用金型40は、一方の金型42、他方の金型41とから構成され、一方の金型42、他方の金型41には、取付枠体20をインサート成形するための金型面が形成されている。すなわち、一方の金型42と他方の金型41とを組み合わせ閉じたとき、一方の金型42、他方の金型41、射出成形用金型40内にインサートされた二重板ガラス中間構成体(軟質保持体30と、第1板ガラス11、第2板ガラス12とが一体になったもの)5とで区画された空間がキャビティ45を形成する(図5参照)。キャビティ45には、ゲート46が連通している。すなわち、熱可塑性樹脂は、射出成形機(図示せず)から一方の金型42のゲート46を介して射出されることによりキャビティ45内に流入する。流入した熱可塑性樹脂は、冷却後、取り付け部21が一体に形成された取付枠体20になる。
【0028】
二重板ガラス構成体(二重透明板構成体)1の製造方法について、図4〜6に基づいて説明を行う。図4は、二重板ガラス構成体の製造方法を示すフローチャートである。
【0029】
所定の厚さの板ガラスを所定の大きさ、形状に切断するとともに熱処理を行い、強化ガラス製の第1板ガラス11、第2板ガラス12を形成する(ステップS1)。なお、第1透明板、第2透明板が、透明な合成樹脂製板の場合には、所定の厚さの透明な合成樹脂製板を所定の大きさ、形状に切断する。軟質保持体を成形するための射出成形用金型(図示せず)に、所定の温度に加熱されるとともに所定の圧力に加圧された熱可塑性エラストマーを射出し、熱可塑性エラストマーからなる軟質保持体30を射出成形で成形する(ステップS2)。なお、軟質保持体が図3に示すような軟質保持体30aである場合、熱可塑性エラストマーを押出成形して成形する。
【0030】
軟質保持体30を径方向に弾性変形させながら軟質保持体30の板保持溝32、32に第1板ガラス11、第2板ガラス12の外周縁をはめ込み、軟質保持体30と、第1板ガラス11、第2板ガラス12とが一体になった二重板ガラス中間構成体5を製造する(ステップS3)。なお、軟質保持体が図3に示すような軟質保持体30aである場合、板保持溝32a、32aに一対の板ガラス体10の外周縁部をはめ込むとともに、一対の板ガラス体10の外周縁部に巻き付ける。一対の板ガラス体10の外周縁部に巻き付けられた軟質保持体30aは、一対の板ガラス体10を保持し、軟質保持体30aと一対の板ガラス体10とが一体となった二重板ガラス中間構成体5が製造される。また、巻き付けられた軟質保持体30aの両端は仮止めされていてもよい。
【0031】
一方の金型42、他方の金型41とからなる射出成形用金型40を開き、二重板ガラス中間構成体5を他方の金型41内にインサートする。射出成形用金型40を閉じると、射出成形用金型40内にキャビティ45が形成される(ステップS4、図5)。所定の温度に加熱されるとともに所定の圧力に加圧された熱可塑性樹脂はゲート46から射出され、キャビティ45内に熱可塑性樹脂が流入する(ステップS5、図6)。加熱、加圧され、キャビティ45内に流入した熱可塑性樹脂が取付枠体20を形成する。また、この時、軟質保持体30の外周面と取付枠体20の内周面は強固に一体に接合する。さらに、取付枠体20には、取り付け部21が一体に形成される。熱可塑性樹脂が冷却後、射出成形用金型40を開き、射出成形用金型40から一対の板ガラス体10、軟質保持体30、取付枠体20が一体化した二重板ガラス構成体1を取り出す(ステップS6)。なお、この二重板ガラス中間構成体5を射出成形用金型40内に搬入する作業、二重板ガラス構成体1を射出成形用金型40外に取り出し搬出する作業等は、ロボット、ローダー等搬送手段を設け、自動化されることが好ましい。例えば、板ガラス等を吸着して搬送する搬送手段であるとよい。
【0032】
〔二重透明板構成体の他の実施の形態〕
二重透明板構成体(二重板ガラス構成体)の他の実施の形態について、図7、8に従って説明を行う。図7は分割された取付枠体が接合前の状態を示し、図8は分割された取付枠体が接合された後の状態を示す部分断面図である。この他の実施の形態の取付枠体120は、第1分割取付枠体121と第2分割取付枠体122とから構成されている(図7参照)。第1分割取付枠体121、第2分割取付枠体122で、軟質保持体30の断面半円形状の外周部を半分ずつ外嵌した後、各々の接合面121a、122aを接合したものである。
【0033】
この接合面121a、122aの接合は、レーザ照射による溶着、接着剤による接着、超音波照射による溶着などで行われる。レーザ照射で行う方法は、第1分割取付枠体121、第2分割取付枠体122のどちらか一方をレーザ非透過性樹脂(レーザ吸収性樹脂)とし、他方をレーザ透過性樹脂で形成すればよい。レーザは、レーザ透過性樹脂側から照射すると、レーザはレーザ透過性樹脂内を透過して接合面121a、接合面122aの間で発熱し溶着する。接着剤により接合する方法では、接合面間を接着剤の接着力で接合する。超音波照射により接合する方法では、接合面121a、接合面122a間に、微細な超音波振動と圧力を加え、その摩擦熱によって瞬時に溶融し、接合する。
【0034】
以上、実施の形態を種々説明したが、本発明はこれら実施の形態に限定されることはない。本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内での変更が可能なことはいうまでもない。例えば、一対の透明板体(一対の板ガラス体)、軟質保持体、取付枠体の形状等は、弾球遊技機の種類に対応した形状、大きさに適宜変更可能なものであることはいうまでもない。さらに、軟質保持体の外形部、取付枠体の内径部の断面形状は、他の形状(例えば、楕円形状、長円形状、四角形状、矩形形状、三角形状、多角形状など)であってもよい。
【符号の説明】
【0035】
1…二重透明板構成体(二重板ガラス構成体)
5…二重透明板中間構成体(二重板ガラス中間構成体)
10…一対の透明板体(一対の板ガラス体)
11…第1透明板(第1板ガラス)
12…第2透明板(第2板ガラス)
20、120…取付枠体
30…軟質保持体
32…板保持溝
40…射出成形用金型
121…第1分割取付枠体
122…第2分割取付枠体
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾球遊技機の遊技盤の前面に配置される弾球遊技機の二重透明板構成体とその二重透明板構成体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パチンコ機などの弾球遊技機では、遊技盤の前方に、板ガラス等を配置して、その板ガラスと遊技盤との間に遊技領域となる空間が形成されている。遊技者は、発射装置によって遊技領域に遊技球を撃ち込み、この遊技球の挙動によって遊技を行う。そして、弾球遊技機では、入賞等が成立すれば遊技球が払い出されることになる。この板ガラスは1枚でもよいが、不正行為に対する対策として、所定の間隔を有し、その間に空間が設けられるように一体構造にした2枚構成の二重板ガラス構成体に構成されることが多い。
【0003】
従来、二重板ガラス構成体は、枠体の両方の端部に、接着剤で接着させる方法で製造されているものが一般的であった。例えば、この二重板ガラス構成体は、枠部材の一方の段部にディスペンサー等で接着剤を塗布後、一方の板ガラスを貼り付けて接着し、次に、枠部材の他方の段部にディスペンサー等で接着剤を塗布後、他方の板ガラスを貼り付けて接着している。この二重板ガラス構成体について、特許文献に基づいてさらに説明を行う。
【0004】
パチンコ機の枠体の両端面に二枚の板ガラスを夫々接着したパチンコ機用二重ガラス組体に関する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、接着構造の改良案として、フレームにガラスの切断面が接着される支持面と、この支持面に直交する立面と、立面に凹設された接着剤溜まりとが形成されたパチンコ機に関する技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
さらに、保持部に外周側突出部を形成し、少ない接着剤によって枠体にガラス板を固定できる遊技機におけるガラスユニットに関する技術が知られている(例えば、特許文献3参照)。また、枠体に加熱剥離型接着剤を介してガラス板を接着し、枠体及びガラス板のリサイクル性を向上させた遊技機におけるガラス体に関する技術が知られている(例えば、特許文献4参照)。一方、接着剤を使用しない方法として、枠体を額縁状にし、枠体の楔受に楔部材を嵌入して、作用端部を変形させガラス板を枠体に押し付ける技術が知られている(例えば、特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公昭57−047012号公報
【特許文献2】特開2003−126474号公報
【特許文献3】特開2010−082379号公報
【特許文献4】特開2009−148426号公報
【特許文献5】特開2004−166804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1〜4の技術のように、接着剤で接着してする二重板ガラス構成体を製造する方法は、手間がかかるうえ、接着剤がはみださないようにしなければならず、生産性がよくない。また、製造コスト高になりやすいという問題点があった。また、特許文献5の技術は、枠体の構造が複雑になるうえ、楔部材を介して一体化する作業に時間がかかり、生産性が向上しないおそれがある。
また、この板ガラスには、強化ガラスが採用されることが多い。この強化ガラスは、所定の形状に切断後、焼き入れ処理して製造されるものであり、外形寸法、板厚寸法等にバラツキが生じ寸法管理が容易でない。そのため、板ガラスを枠体の溝部に挿入して一体化する方法では、板ガラスと枠体の溝部との間にがたつき、隙間などを生じさせることなく組み付けるのが容易でないという問題点もあった。
【0008】
本発明は、前述のような技術背景のもとになされたものであり、下記目的を達成する。
本発明の目的は、前記した問題を解決するためになされたものであり、生産性の向上を図ることができる弾球遊技機の二重透明板構成体とその二重透明板構成体の製造方法を提供することにある。
又、本発明の他の目的は、透明板体の寸法にバラツキがあっても、それを容易に吸収して取付枠体と透明板体との間にがたつきを発生させることがない弾球遊技機の二重透明板構成体とその二重透明板構成体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記目的を達成するため、次の手段を採る。
本発明1の弾球遊技機の二重透明板構成体は、
弾球遊技機の前部に、遊技盤の前面が透視可能に、2枚の透明板がほぼ平行に配設される一対の透明板体と、軟質の熱可塑性樹脂で形成され、内周部に前記一対の透明板体の外周縁部が各々はめ込まれる板保持溝を有し、前記外周縁部を前記板保持溝にはめ込んで保持するための軟質保持体と、硬質の熱可塑性樹脂で形成され、前記軟質保持体の外周部を外嵌するように、かつ、前記弾球遊技機に取り付け可能に設けられた取付枠体とを備えていることを特徴とする。
【0010】
本発明2の弾球遊技機の二重透明板構成体は、本発明1において、
前記取付枠体は、前記軟質保持体にはめ込まれた前記一対の透明板体を、射出成形用金型内にインサートした状態で射出成形するインサート成形で形成されたものであることを特徴とする。
【0011】
本発明3の弾球遊技機の二重透明板構成体は、本発明1において、
前記取付枠体は、前記一対の透明板体と平行な平面で分割された一対の分割取付枠体が接合されたものであることを特徴とする。
【0012】
本発明4の弾球遊技機の二重透明板構成体は、本発明3において、
前記一対の分割取付枠体は、レーザ溶着、超音波溶着、接着から選択される一つの接合方法で接合されたものであることを特徴とする。
【0013】
本発明5の弾球遊技機の二重透明板構成体は、本発明1〜4において、
前記一対の透明板体は、所定の大きさに切断され、所定の熱処理が施された強化ガラスからなるものであることを特徴とする。
【0014】
本発明6の弾球遊技機の二重透明板構成体の製造方法は、
弾球遊技機の前部に、遊技盤の前面が透視可能に配設される弾球遊技機の二重透明板構成体の製造方法であって、軟質の熱可塑性樹脂で形成され、一対の透明板体の外周縁部をはめ込むための板保持溝を有する軟質保持体を射出成形または押出成形で形成する第1の工程と、前記一対の透明板体の外周縁部を、前記軟質保持体の前記板保持溝にはめ込んで一体にするための第2の工程と、取付枠体を成形するための金型面を有する射出成形用金型を開き、前記射出成形用金型内に、一体化された前記軟質保持体と前記一対の透明板体をインサートする第3の工程と、前記射出成形用金型を閉じ、前記射出成形用金型内に形成されたキャビティに硬質の熱可塑性樹脂を射出してインサート成形を行い、前記取付枠体、前記軟質保持体、及び、前記一対の透明板体を一体にする第4の工程と、前記射出成形用金型を開き、前記取付枠体、前記軟質保持体、及び、前記一対の透明板体が一体化した二重透明板構成体を取り出す第5の工程とからなっている。
【0015】
本発明7の弾球遊技機の二重透明板構成体の製造方法は、本発明6において、
前記一対の透明板体は、所定の大きさに切断され、所定の熱処理が施された強化ガラスからなるものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明の弾球遊技機の二重透明板構成体(二重板ガラス構成体)は、一対の透明板体(一対の板ガラス体)を保持するために、軟質の熱可塑性樹脂で成形された軟質保持体を設けているため、強化ガラス、透明合成樹脂製板等からなる一対の透明板体の寸法にバラツキがあっても容易に吸収することができる。また、軟質保持体により一対の透明板体は保持されているので、取付枠体に対して、一対の透明板体が、がたつくようなことが生じない。さらに、取付枠体は硬質の熱可塑性樹脂で成形されたものであり、弾球遊技機、扉体等への取付、搬送等が容易である。
【0017】
更に、本発明の二重透明板構成体の製造方法によれば、生産性の高い射出成形の技術を採用して、軟質保持体、取付枠体を成形しているので、二重透明板構成体(二重板ガラス構成体)の生産性が向上しコストダウンが図れる。この二重透明板構成体は、多量生産可能なものであり、このコストダウンの効果は大きい。また、二重透明板中間構成体(二重板ガラス中間構成体)、二重透明板構成体等の搬出入動作を自動化することが可能であり、この自動化により、さらに生産性向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の弾球遊技機の二重透明板構成体を示す正面図である。
【図2】図2は、図1をA−A線で切断した断面図である。
【図3】図3は、軟質保持体の他の実施の形態を示す外観図である。
【図4】図4は、弾球遊技機の二重透明板構成体(二重板ガラス構成体)の製造方法を示すフローチャートである。
【図5】図5は、二重透明板構成体(二重板ガラス構成体)の取付枠体を射出成形で製造する工程を説明するための説明図であって、熱可塑性樹脂を射出する前の状態を示す部分断面図である。
【図6】図6は、二重透明板構成体(二重板ガラス構成体)の取付枠体を射出成形で製造する工程を説明するための説明図であって、熱可塑性樹脂を射出した後の状態を示す部分断面図である。
【図7】図7は、二重透明板構成体の他の実施の形態であって、分割された分割取付枠体が接合前の状態を示す部分断面図である。
【図8】図8は、二重透明板構成体の他の実施の形態であって、分割取付枠体が一体に接合された後の状態を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1は、二重透明板構成体(二重板ガラス構成体)を示す正面図、図2は、図1をA−A線で切断した断面図である。図3は、軟質保持体の他の実施の形態を示す外観図である。
二重透明板構成体である二重板ガラス構成体1は、弾球遊技機(例えば、パチンコ機)の前面に設けられ、中央の透明な透明板部(板ガラス部)が、パチンコ機内部の液晶表示、模様、装飾部材、風車、釘、入賞部、発射された弾球等を遊技者が視覚で確認できるように透明なものである。二重板ガラス構成体1は、一対の透明板体である一対の板ガラス体10、一対の板ガラス体10を保持するための軟質保持体30、軟質保持体30の外周部を外嵌して支持するための取付枠体20等から構成されている。なお、この実施の形態の説明では、透明板体が強化ガラスからなる板ガラス体として説明を行うが、一般的な透明な板ガラス体、透明な合成樹脂製板体であってもよい。
【0020】
一対の板ガラス体(一対の透明板体)10は、第1板ガラス(第1透明板)11と、第2板ガラス(第2透明板)12とからなっており、第1板ガラス11及び第2板ガラス12は、所定の厚み(例えば、3.2mm)に形成された板ガラスである。第1板ガラス11、第2板ガラス12は、所定の形状に切断した後、焼き入れ処理を行ったいわゆる「強化ガラス」であり、一般的な板ガラス(フロート板ガラス)に比べ数倍(例えば3〜5倍)の強度を有するものである。この強化ガラスの製造法は、板ガラスを所定の温度(例えば、約700度)まで加熱した後、ガラス表面の空気を吹き付け、均一に急激に冷やすことで生成する周知な技術であり、詳細な説明は省略する。この一対の板ガラス体10は、不正行為に対する対策として、所定の間隔を有し、その間に空間が設けられるように、軟質保持体30を介して、2枚の第1板ガラス11、第2板ガラス12が、平行またはほぼ平行に、一体に構成されているものである。なお、一対の透明板構成体は、一対の透明な合成樹脂製板、透明な合成樹脂製板と透明な板ガラスとを組み合わせたもの等であってもよい。
【0021】
軟質保持体30は、軟質の材料である軟質の熱可塑性樹脂(例えば、熱可塑性エラストマー)で製造されたものである。この実施の形態では、軟質の熱可塑性樹脂を熱可塑性エラストマーとして説明を行う。熱可塑性エラストマーとは、高温では軟化して流動性を示し、圧縮成形、押出成形、射出成形等プラスチック加工機で成形することができ、冷却された時(例えば、常温時)にはゴム状弾性体としての性質を持つものである。この実施の形態では、軟質保持体30は、射出成形用金型(図示せず)に熱可塑性エラストマーが射出されリング状に成形されたものである。また、軟質保持体30は、外周面が、中央部が高くて両端側が低い断面R状の面で、内周部31が円筒面となっている断面半円形状であってリング状に成形されたものである。軟質保持体30の内周部31には、第1板ガラス11、第2板ガラス12の外周縁部をはめ込んで保持するための板保持溝32、32が連続したリング溝として形成されている。言い換えると、軟質保持体30は、断面が半円形状で、リング状に形成されたものであり、内周部31に、平行に、所定量離れた位置に2本の板保持溝32、32が形成されている。
【0022】
そして、軟質保持体30は、板保持溝32、32に第1板ガラス11、第2板ガラス12の外周縁部を、各々、はめ込んで保持するようになっている。このとき、第1板ガラス11と第2板ガラス12とは、平行またはほぼ平行な状態に保持されている。この軟質保持体30と、軟質保持体30の板保持溝32の一方に保持された第1板ガラス11、軟質保持体30の板保持溝32の他方に保持された第2板ガラス12とが一体になったものが、二重透明板中間構成体である二重板ガラス中間構成体5となる。
【0023】
板保持溝32の溝幅と、第1板ガラス11、第2板ガラス12の板厚とを比べると、溝幅のほうが板厚より所定量小さい寸法であって、第1板ガラス11、第2板ガラス12を差し込むと溝部が弾性変形してはめ込み可能な寸法になっている。第1板ガラス11、第2板ガラス12の板厚が、板保持溝32の溝幅より少し厚くても、溝部が溝幅方向に弾性変形して、第1板ガラス11、第2板ガラス12が板保持溝32内に挿入可能である。軟質保持体30は、前述したように、熱可塑性エラストマー製であり、板保持溝32の弾性変形が容易である。そして、このような寸法管理を行うことにより、軟質保持体30の板保持溝32と、第1板ガラス11、第2板ガラス12の外周縁部との間に隙間が生じさせることなく保持させることができる。また、第1板ガラス11、第2板ガラス12の寸法にバラツキがあっても容易に吸収することができる。すなわち、第1板ガラス11、第2板ガラス12は、軟質保持体30に対して、がたつきを生じることはない。
【0024】
なお、軟質保持体は、図3に示すような押出成形で成形された軟質保持体30aからなるものであってもよい。この軟質保持体30aは、板保持溝32a、32aに一対の板ガラス体10の外周縁部がはめ込まれるとともに、一対の板ガラス体10の外周縁部に巻き付けられた状態で、一対の板ガラス体10を保持するものである。軟質保持体30aは、外周縁部に巻き付けられた状態のとき、軟質保持体30aの両端が接するような長さになっている。また、外周縁部に巻き付けられた状態のとき、軟質保持体30aの両方の端部は、両面テープ等で仮止めされていてもよい。この軟質保持体30aにも、内周部31aに板保持溝32a、32aが形成されている。
【0025】
取付枠体20は、硬質の材料である硬質の熱可塑性樹脂〔例えば、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)、PC樹脂(ポリカーボネート樹脂)等〕で製造されたものであり、軟質保持体30の断面半円形状の外周部を外嵌して支持するように設けられている。取付枠体20の外周には、パチンコ機の前部に開閉可能に設けられている扉体(図示せず)に取り付けるための取り付け部21が所定数(例えば、この形態では4個)設けられている。取付枠体20は、軟質保持体30の外周部に射出成形で一体に強固に接合される。
【0026】
取付枠体20をインサート成形するための金型構成について、図5、6に基づいて説明を行う。図5は、二重透明板構成体(二重板ガラス構成体)の取付枠体を射出成形で製造する工程を説明するための説明図であって、熱可塑性樹脂を射出する前の状態を示す部分断面図、図6は、熱可塑性樹脂を射出した後の状態を示す部分断面図である。
【0027】
射出成形用金型40は、一方の金型42、他方の金型41とから構成され、一方の金型42、他方の金型41には、取付枠体20をインサート成形するための金型面が形成されている。すなわち、一方の金型42と他方の金型41とを組み合わせ閉じたとき、一方の金型42、他方の金型41、射出成形用金型40内にインサートされた二重板ガラス中間構成体(軟質保持体30と、第1板ガラス11、第2板ガラス12とが一体になったもの)5とで区画された空間がキャビティ45を形成する(図5参照)。キャビティ45には、ゲート46が連通している。すなわち、熱可塑性樹脂は、射出成形機(図示せず)から一方の金型42のゲート46を介して射出されることによりキャビティ45内に流入する。流入した熱可塑性樹脂は、冷却後、取り付け部21が一体に形成された取付枠体20になる。
【0028】
二重板ガラス構成体(二重透明板構成体)1の製造方法について、図4〜6に基づいて説明を行う。図4は、二重板ガラス構成体の製造方法を示すフローチャートである。
【0029】
所定の厚さの板ガラスを所定の大きさ、形状に切断するとともに熱処理を行い、強化ガラス製の第1板ガラス11、第2板ガラス12を形成する(ステップS1)。なお、第1透明板、第2透明板が、透明な合成樹脂製板の場合には、所定の厚さの透明な合成樹脂製板を所定の大きさ、形状に切断する。軟質保持体を成形するための射出成形用金型(図示せず)に、所定の温度に加熱されるとともに所定の圧力に加圧された熱可塑性エラストマーを射出し、熱可塑性エラストマーからなる軟質保持体30を射出成形で成形する(ステップS2)。なお、軟質保持体が図3に示すような軟質保持体30aである場合、熱可塑性エラストマーを押出成形して成形する。
【0030】
軟質保持体30を径方向に弾性変形させながら軟質保持体30の板保持溝32、32に第1板ガラス11、第2板ガラス12の外周縁をはめ込み、軟質保持体30と、第1板ガラス11、第2板ガラス12とが一体になった二重板ガラス中間構成体5を製造する(ステップS3)。なお、軟質保持体が図3に示すような軟質保持体30aである場合、板保持溝32a、32aに一対の板ガラス体10の外周縁部をはめ込むとともに、一対の板ガラス体10の外周縁部に巻き付ける。一対の板ガラス体10の外周縁部に巻き付けられた軟質保持体30aは、一対の板ガラス体10を保持し、軟質保持体30aと一対の板ガラス体10とが一体となった二重板ガラス中間構成体5が製造される。また、巻き付けられた軟質保持体30aの両端は仮止めされていてもよい。
【0031】
一方の金型42、他方の金型41とからなる射出成形用金型40を開き、二重板ガラス中間構成体5を他方の金型41内にインサートする。射出成形用金型40を閉じると、射出成形用金型40内にキャビティ45が形成される(ステップS4、図5)。所定の温度に加熱されるとともに所定の圧力に加圧された熱可塑性樹脂はゲート46から射出され、キャビティ45内に熱可塑性樹脂が流入する(ステップS5、図6)。加熱、加圧され、キャビティ45内に流入した熱可塑性樹脂が取付枠体20を形成する。また、この時、軟質保持体30の外周面と取付枠体20の内周面は強固に一体に接合する。さらに、取付枠体20には、取り付け部21が一体に形成される。熱可塑性樹脂が冷却後、射出成形用金型40を開き、射出成形用金型40から一対の板ガラス体10、軟質保持体30、取付枠体20が一体化した二重板ガラス構成体1を取り出す(ステップS6)。なお、この二重板ガラス中間構成体5を射出成形用金型40内に搬入する作業、二重板ガラス構成体1を射出成形用金型40外に取り出し搬出する作業等は、ロボット、ローダー等搬送手段を設け、自動化されることが好ましい。例えば、板ガラス等を吸着して搬送する搬送手段であるとよい。
【0032】
〔二重透明板構成体の他の実施の形態〕
二重透明板構成体(二重板ガラス構成体)の他の実施の形態について、図7、8に従って説明を行う。図7は分割された取付枠体が接合前の状態を示し、図8は分割された取付枠体が接合された後の状態を示す部分断面図である。この他の実施の形態の取付枠体120は、第1分割取付枠体121と第2分割取付枠体122とから構成されている(図7参照)。第1分割取付枠体121、第2分割取付枠体122で、軟質保持体30の断面半円形状の外周部を半分ずつ外嵌した後、各々の接合面121a、122aを接合したものである。
【0033】
この接合面121a、122aの接合は、レーザ照射による溶着、接着剤による接着、超音波照射による溶着などで行われる。レーザ照射で行う方法は、第1分割取付枠体121、第2分割取付枠体122のどちらか一方をレーザ非透過性樹脂(レーザ吸収性樹脂)とし、他方をレーザ透過性樹脂で形成すればよい。レーザは、レーザ透過性樹脂側から照射すると、レーザはレーザ透過性樹脂内を透過して接合面121a、接合面122aの間で発熱し溶着する。接着剤により接合する方法では、接合面間を接着剤の接着力で接合する。超音波照射により接合する方法では、接合面121a、接合面122a間に、微細な超音波振動と圧力を加え、その摩擦熱によって瞬時に溶融し、接合する。
【0034】
以上、実施の形態を種々説明したが、本発明はこれら実施の形態に限定されることはない。本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内での変更が可能なことはいうまでもない。例えば、一対の透明板体(一対の板ガラス体)、軟質保持体、取付枠体の形状等は、弾球遊技機の種類に対応した形状、大きさに適宜変更可能なものであることはいうまでもない。さらに、軟質保持体の外形部、取付枠体の内径部の断面形状は、他の形状(例えば、楕円形状、長円形状、四角形状、矩形形状、三角形状、多角形状など)であってもよい。
【符号の説明】
【0035】
1…二重透明板構成体(二重板ガラス構成体)
5…二重透明板中間構成体(二重板ガラス中間構成体)
10…一対の透明板体(一対の板ガラス体)
11…第1透明板(第1板ガラス)
12…第2透明板(第2板ガラス)
20、120…取付枠体
30…軟質保持体
32…板保持溝
40…射出成形用金型
121…第1分割取付枠体
122…第2分割取付枠体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾球遊技機の前部に、遊技盤の前面が透視可能に、2枚の透明板がほぼ平行に配設される一対の透明板体と、
軟質の熱可塑性樹脂で形成され、内周部に前記一対の透明板体の外周縁部が各々はめ込まれる板保持溝を有し、前記外周縁部を前記板保持溝にはめ込んで保持するための軟質保持体と、
硬質の熱可塑性樹脂で形成され、前記軟質保持体の外周部を外嵌するように、かつ、前記弾球遊技機に取り付け可能に設けられた取付枠体とを備えている
ことを特徴とする弾球遊技機の二重透明板構成体。
【請求項2】
請求項1に記載の弾球遊技機の二重透明板構成体において、
前記取付枠体は、前記軟質保持体にはめ込まれた前記一対の透明板体を、射出成形用金型内にインサートした状態で射出成形するインサート成形で形成されたものである
ことを特徴とする弾球遊技機の二重透明板構成体。
【請求項3】
請求項1に記載の弾球遊技機の二重透明板構成体において、
前記取付枠体は、前記一対の透明板体と平行な平面で分割された一対の分割取付枠体が接合されたものである
ことを特徴とする弾球遊技機の二重透明板構成体。
【請求項4】
請求項3に記載の弾球遊技機の二重透明板構成体において、
前記一対の分割取付枠体は、レーザ溶着、超音波溶着、接着から選択される一つの接合方法で接合されたものである
ことを特徴とする弾球遊技機の二重透明板構成体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載された弾球遊技機の二重透明板構成体において、
前記一対の透明板体は、所定の大きさに切断され、所定の熱処理が施された強化ガラスからなるものである
ことを特徴とする弾球遊技機の二重透明板構成体。
【請求項6】
弾球遊技機の前部に、遊技盤の前面が透視可能に配設される弾球遊技機の二重透明板構成体の製造方法であって、
軟質の熱可塑性樹脂で形成され、一対の透明板体の外周縁部をはめ込むための板保持溝を有する軟質保持体を射出成形または押出成形で形成する第1の工程と、
前記一対の透明板体の外周縁部を、前記軟質保持体の前記板保持溝にはめ込んで一体にするための第2の工程と、
取付枠体を成形するための金型面を有する射出成形用金型を開き、前記射出成形用金型内に、一体化された前記軟質保持体と前記一対の透明板体をインサートする第3の工程と、
前記射出成形用金型を閉じ、前記射出成形用金型内に形成されたキャビティに硬質の熱可塑性樹脂を射出してインサート成形を行い、前記取付枠体、前記軟質保持体、及び、前記一対の透明板体を一体にする第4の工程と、
前記射出成形用金型を開き、前記取付枠体、前記軟質保持体、及び、前記一対の透明板体が一体化した二重透明板構成体を取り出す第5の工程と
からなる弾球遊技機の二重透明板構成体の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載された弾球遊技機の二重透明板構成体の製造方法であって、
前記一対の透明板体は、所定の大きさに切断され、所定の熱処理が施された強化ガラスからなるものである
ことを特徴とする弾球遊技機の二重透明板構成体の製造方法。
【請求項1】
弾球遊技機の前部に、遊技盤の前面が透視可能に、2枚の透明板がほぼ平行に配設される一対の透明板体と、
軟質の熱可塑性樹脂で形成され、内周部に前記一対の透明板体の外周縁部が各々はめ込まれる板保持溝を有し、前記外周縁部を前記板保持溝にはめ込んで保持するための軟質保持体と、
硬質の熱可塑性樹脂で形成され、前記軟質保持体の外周部を外嵌するように、かつ、前記弾球遊技機に取り付け可能に設けられた取付枠体とを備えている
ことを特徴とする弾球遊技機の二重透明板構成体。
【請求項2】
請求項1に記載の弾球遊技機の二重透明板構成体において、
前記取付枠体は、前記軟質保持体にはめ込まれた前記一対の透明板体を、射出成形用金型内にインサートした状態で射出成形するインサート成形で形成されたものである
ことを特徴とする弾球遊技機の二重透明板構成体。
【請求項3】
請求項1に記載の弾球遊技機の二重透明板構成体において、
前記取付枠体は、前記一対の透明板体と平行な平面で分割された一対の分割取付枠体が接合されたものである
ことを特徴とする弾球遊技機の二重透明板構成体。
【請求項4】
請求項3に記載の弾球遊技機の二重透明板構成体において、
前記一対の分割取付枠体は、レーザ溶着、超音波溶着、接着から選択される一つの接合方法で接合されたものである
ことを特徴とする弾球遊技機の二重透明板構成体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載された弾球遊技機の二重透明板構成体において、
前記一対の透明板体は、所定の大きさに切断され、所定の熱処理が施された強化ガラスからなるものである
ことを特徴とする弾球遊技機の二重透明板構成体。
【請求項6】
弾球遊技機の前部に、遊技盤の前面が透視可能に配設される弾球遊技機の二重透明板構成体の製造方法であって、
軟質の熱可塑性樹脂で形成され、一対の透明板体の外周縁部をはめ込むための板保持溝を有する軟質保持体を射出成形または押出成形で形成する第1の工程と、
前記一対の透明板体の外周縁部を、前記軟質保持体の前記板保持溝にはめ込んで一体にするための第2の工程と、
取付枠体を成形するための金型面を有する射出成形用金型を開き、前記射出成形用金型内に、一体化された前記軟質保持体と前記一対の透明板体をインサートする第3の工程と、
前記射出成形用金型を閉じ、前記射出成形用金型内に形成されたキャビティに硬質の熱可塑性樹脂を射出してインサート成形を行い、前記取付枠体、前記軟質保持体、及び、前記一対の透明板体を一体にする第4の工程と、
前記射出成形用金型を開き、前記取付枠体、前記軟質保持体、及び、前記一対の透明板体が一体化した二重透明板構成体を取り出す第5の工程と
からなる弾球遊技機の二重透明板構成体の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載された弾球遊技機の二重透明板構成体の製造方法であって、
前記一対の透明板体は、所定の大きさに切断され、所定の熱処理が施された強化ガラスからなるものである
ことを特徴とする弾球遊技機の二重透明板構成体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2012−249(P2012−249A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137576(P2010−137576)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(000206141)大成プラス株式会社 (87)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(000206141)大成プラス株式会社 (87)
【Fターム(参考)】
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