説明

弾球遊技機

【課題】発射機構内で発生した球詰まりを、メンテナンス扉を開放することなく解消できる弾球遊技機を提供する。
【解決手段】本発明の弾球遊技機は、遊技球を1個ずつ遊技領域に発射するための発射機構50を備える。発射機構50は、発射された遊技球を遊技領域に導く発射レール52と、発射レール52上に遊技球を停止させる打球ストッパ53と、発射レール52上の遊技球を発射レール52を介して遊技領域に発射する球発射部51と、遊技球を発射するときには発射レール52と打球ストッパ53との間に遊技球の大きさよりも小さい間隙を生じ、打球発射位置から遊技球を球抜きするときには発射レール52と打球ストッパ53との間に遊技球の大きさよりも大きい間隙を生じさせる球抜部54と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ遊技機やスマートボール等の弾球遊技機に関し、特に弾球遊技機における遊技球の回収方式に関する。
【背景技術】
【0002】
金属製の遊技球を発射機構により打ち出して、釘が打ち込まれた盤面からなる遊技領域の入賞口に遊技球が入ることで遊技を行うパチンコ遊技機が広く知られている。この種のパチンコ遊技機では、遊技球が、球貸機から球貯留皿に貯留された後、発射機構に供給される。そして、発射機構に供給された遊技球に対して、遊技者が適宜発射操作を行うことで、遊技球が遊技領域に向けて発射される。
【0003】
遊技場に設置されるパチンコ遊技機では、不正行為が問題となっている。不正行為には、さまざまな態様のものがあるが、その一つに、遊技球自体を不正な物に取り替えるというものがある。不正な遊技球には、例えば、正規の遊技球より径が小さい、正規の遊技球より径が大きい、偏心している、正規の遊技球の一部が削ってある、等がある。径の小さい遊技球や、その一部を削った遊技球は、入賞口への入賞率を不正に高める。また、径の大きい遊技球は、入賞口付近にこのような遊技球を停留させて、外部から電磁波を照射することにより、入賞検出用のセンサを誤作動させることができる。
【0004】
このような不正な遊技球を用いた不正行為を防止するために、近年は封入式遊技機が導入される例もある。封入式遊技機では、遊技機内で所定数の遊技球を循環して遊技を行う。そのために、外部から不正な遊技球を正規の遊技球に混入させて不正行為を行うことが困難になる。そこで、不正を行う者は、様々な手段を用いて不正な遊技球を正規の遊技球に混入させようとする。例えば、遊技機の発射レール上に意図的に遊技球を詰まらせて球詰まりの状態にすることで、遊技機のメンテナンス扉を開放させて、詰まった遊技球を店員が除去している隙に不正な遊技球を混入する。また、混入しなくとも、遊技球を持ち出して他で不正を行うことができる。球詰まりは、発射機構による発射強度の調節により容易に実現可能であり、このようにして不正な遊技球の混入や遊技球の持ち出しを行うことはさほど困難ではない。
【0005】
封入式遊技機の場合には、同じ遊技球が繰り返し遊技に用いられるために、不正な遊技球が混入されると、不正な遊技球が何度も遊技に用いられ、遊技店の損害は大きくなりがちである。
【0006】
このような不正への対応として、発射機構で球詰まりした遊技球を、遊技機のメンテナンス扉を開放することなく除去する方法が有効である。そのための方策として、発射機構に供給された遊技球をすべて球抜き動作により取り除けばよい。特許文献1〜4には、発射機構から遊技球を球抜きする従来のパチンコ遊技機の構成についての発明が開示されている。
【0007】
特許文献1には、打球供給皿の遊技球を球送り部材により発射レールに1個ずつ供給する打球供給装置と、打球供給皿の遊技球を球抜きする球抜き操作手段を備えたパチンコ遊技機が開示されている。球送り部材の回動方向を球抜き手段の操作に連動して切替えることで、発射レールに打球を供給する動作と打球供給皿からの球抜き動作とを行う。このような構成により、発射レールから発射される直前の遊技球を抜き取ることができる。
【0008】
特許文献2には、打球供給装置に球抜き口を開設すると共に、該球抜き口を球抜き部材を配設し、該球抜き部材と打球供給皿の設けた操作部材を連繋することにより、打球供給装置の球抜きを可能としたパチンコ遊技機が開示されている。このような構成により、打球供給皿の球抜き時に打球供給装置内にパチンコ球を残すことなく全てのパチンコ球を球抜きし、遊技者の残球処理の煩わしさを解消する。
【0009】
特許文献3には、パチンコ遊技機の本体枠に開閉可能に配設された打球供給皿が、背面板と背面板の前面側に設けられた球皿部と、球皿部から下方に球を導く球流路を有して、背面板に球流路に連通する開口部と、開口部を閉塞するメンテナンス扉を設けていることが記載されている。このような打球供給皿により、球流路の清掃や球詰まり解消等のメンテナンスを容易にする。
【0010】
特許文献4には、封入式の遊技機において封入された遊技球の抜き取り作業を適切に行うことについての発明が開示される。抜き取り作業は、切換弁が移動して、打球待機樋と玉抜通路とが連通することで行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001−112943号公報
【特許文献2】特開2001−145759号公報
【特許文献3】特開2002−263325号公報
【特許文献4】特開2002−66096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1〜4では、発射機構に供給される直前の遊技球を抜き取ることが記載されている。しかし、発射機構に供給後の遊技球について抜き取ることについては開示が無い。そのために、発射機構の発射レールで球詰まりが発生しても、遊技球を抜き取ることができない。つまり、従来は球詰まりへの対処を店員がメンテナンス扉を開放して行うことが一般的であり、メンテナンス扉を開放せずに対処するという発想が無かった。
【0013】
本発明は、このような問題を解決するために、発射機構内で発生した球詰まりを、メンテナンス扉を開放することなく解消できる弾球遊技機を提供することを、主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決する本発明の弾球遊技機は、 遊技球を1個ずつ遊技領域に発射するための発射機構を備え、前記遊技球を遊技に供する弾球遊技機である。
前記発射機構は、前記遊技球を前記遊技領域に導くための発射レールと、前記発射レール上の打球発射位置に前記遊技球を停止させる打球ストッパと、遊技者による操作に応じて、前記打球発射位置に停止された前記遊技球を前記発射レールを介して前記遊技領域に発射する球発射部と、前記球発射部が遊技球を発射するときには前記発射レールと前記打球ストッパとの間隔を前記遊技球の大きさよりも小さくし、所定の条件を満たすときは前記発射レールと前記打球ストッパとの間隔を前記遊技球の大きさよりも大きくするように、前記発射レールの位置及び前記打球ストッパの位置の少なくとも一方を変化させ、これにより前記打球発射位置からの前記遊技球を球抜きを可能にする球抜部とを備えて構成されるものである。
【0015】
発射レールと打球ストッパとの間隔が変化することで、発射レール上の遊技球が、遊技中には発射レール上に停止され、球抜き時には発射レール上からリリースされる。「所定の条件」は、球詰まりの発生を検知した場合、例えば発射レール上の打球発射位置に、遊技球を検出する検出器を設け、この検出器が所定時間以上続けて遊技球を検出した場合、あるいは、遊技中の遊技者(外部)からの指示入力を受け付けた場合等である。つまり、自動検知あるいは手動による指示の形で球詰まりを検知する。
このような構成では、複数の遊技球が発射レール上で球詰まりになった場合でも、球抜き時には打球ストッパにより遊技球が停止させられないので、発射レール上の遊技球をすべて一度にリリースできるようになる。また、球抜部により発射レール、打球ストッパの位置が変化するために、メンテナンス扉を開放して対処する必要がない。
【0016】
前記球抜部は、例えば、以下のようにして発射レール、打球ストッパの位置を変化させる。(i)打球ストッパを回転させる。(ii)前記発射レールを上下動可能であり、前記遊技球を球抜きするときには前記発射レールを下げる。(iii)前記発射レールを回転可能であり、前記遊技球を球抜きするときには前記発射レール回転させる。
【0017】
遠隔制御装置により外部からの指示入力を前記条件の一つとする場合、弾球遊技機には、遠隔制御装置からの指示入力を受け付けるための受信部が備えられる。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、発射レールと打球ストッパとの間隔を調整することで発射レール上の遊技球の球抜きを行うために、メンテナンス扉を開放することなく球詰まりを解消することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態のパチンコ遊技機の正面図である。
【図2】回収機構及び発射機構の構成図である。
【図3】球抜部及び打球ストッパの動作を説明する図であり、図3(A)は通常の遊技を行っているときの球抜部及び打球ストッパ状態を表す図であり、図3(B)は球抜き時の球抜部及び打球ストッパ状態を表す図である。
【図4】球抜部の他の構成よる動作を説明する図であり、図4(A)は通常の遊技を行っているときの昇降部の状態を表す図であり、図4(B)は球抜き時の昇降部の状態を表す図である。
【図5】球抜部の他の構成よる動作を説明する図である。
【図6】球詰まりを自動的に解消する球抜部の構成図である。
【図7】手動による球抜きを実現するための球抜部の構成図である。
【図8】手動による球抜きを実現するための球抜部の他の構成図である。
【図9】打球払出機の構成の説明図であり、図9(A)は打球待機樋上で遊技球を保持している状態を表す図であり、図9(B)は打球待機樋から発射レールに遊技球を供給する状態を表す図である。
【図10】操作ロッドの操作を説明する図である。
【図11】打球払出機の他の例の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0021】
<パチンコ遊技機>
図1は、本実施形態のパチンコ遊技機1の正面図である。この実施形態のパチンコ遊技機1は、内部に封入された遊技球を循環させて繰返し遊技に用いる封入式の弾球遊技機である。
【0022】
なお、この実施形態では封入式の弾球遊技機としてパチンコ遊技機について説明するが、本発明においてはこれに限定されるわけではなく、遊技球を利用する弾球遊技機であればいかなるものでもよい。
【0023】
パチンコ遊技機1は、ドラム11、複数の釘12、複数の入賞口13、アウト口14等を盤面に有する遊技領域10と、遊技に用いる遊技球を回収して次の遊技に用いるための回収機構40と、回収機構40から供給される遊技球を遊技領域10に発射するための発射機構50と、パチンコ遊技機1の動作を制御するための制御部60とを備えている。遊技領域10は開閉可能なガラス面を有するメンテナンス扉で覆われている。回収機構40、発射機構50、及び制御部60は、パチンコ遊技機1に内蔵されており、正面からは隠されている。また、パチンコ遊技機1には、遊技者により操作可能で発射機構50に遊技球を発射させるためのハンドル15、遊技に用いられる遊技球の数を表示する持ち球数表示器16、及び遊技後の球抜きを行ったり、遊技中の球詰まりを解消するための球抜ボタン17が設けられている。
【0024】
パチンコ遊技機1は、側部に玉貸機2が設けられている。遊技の開始時に、玉貸カードにより、玉貸機2を用いて遊技球がパチンコ遊技機1に供給される。玉貸カードは、現金と引き替えに遊技者が受けとるものであり、その現金情報が記録されている。現金情報に相当する数の遊技球を遊技者が使用できる。
【0025】
玉貸機2は、カード挿入口22を有するカードリーダライタ21、玉貸カードに記録された現金情報をカード残額として表示する表示器23、遊技に使用する金額を指定するための選別操作ボタン24、カード挿入口22から玉貸カードを排出させるための返却ボタン25、及び玉貸機2の作動状態を表す作動表示ランプ26を備える。
【0026】
遊技者は、玉貸機2に設けられたカードリーダライタ21のカード挿入口22に玉貸カードを挿入する。玉貸カードに記録されている記録情報は、カードリーダライタ21により読取られる。読取られた情報に応じたカード残額が、表示器23に表示される。なお、カード残額に対応する遊技球の数を表示するものでもよい。表示器23は、パチンコ遊技機1に設けてもよい。
遊技者は、選別操作ボタン24を操作することで、表示器23に表示されているカード残額の範囲内で遊技に用いる金額を指定できる。遊技者により遊技に用いる金額が指定されると、その金額に対応する遊技球の数が、パチンコ遊技機1に設けられた持玉数表示器16に表示されるとともにパチンコ遊技機1に供給される。遊技球が供給されると、供給された遊技球の個数が減算された後の持玉数が持玉数表示器16に表示される。
返却ボタン25が押下されることで、カード挿入口22から玉貸カードが排出される。作動表示ランプ26は、玉貸機2が作動中である旨を点灯表示する。
【0027】
玉貸機2によりパチンコ遊技機1に供給された遊技球は、まず、回収機構40に溜められて、遊技が開始されると回収機構40から発射機構50に送られる。発射機構50に送られた遊技球は、遊技者によるハンドル15の操作に応じて、発射機構50から遊技領域10に発射される。遊技領域10に発射された遊技球は、入賞口13やアウト口14に入り、再び回収機構40に収容されて、次の遊技に用いられることで循環する。
【0028】
回収機構40及び発射機構50について、図2を用いて詳細に説明する。
回収機構40は、玉貸機2により供給された遊技球を溜める打球ストッカ41と、打球ストッカ41から発射機構50に遊技球を供給するための打球待機樋42と、遊技領域10のアウト口14からの遊技球を回収するためのアウト球誘導口43と、入賞口13からの遊技球を回収してアウト球誘導口43に誘導するための入賞球誘導口44と、ファウルになった遊技球を回収するためのファウル誘導樋45と、発射機構50から抜き取った遊技球をファウルになった遊技球と共に回収するための打球抜取樋46と、打球ストッカ41に回収した遊技球を入れる打球リフト47と、アウト球誘導口43及び打球抜取樋45から回収した遊技球を打球リフト47に誘導するための球集合樋48と、を備えている。打球待機樋42は、打球ストッカ41から発射機構50に向かって下向きに傾斜する。そのために、打球ストッカ41から打球待機樋42に供給された遊技球は、傾斜に沿って発射機構50に導かれる。
【0029】
発射機構50は、回収機構40から供給された遊技球を遊技領域10に発射するための球発射部51と、球発射部51により発射された遊技球を遊技領域10に導く発射レール52と、発射レール52上の打球時の遊技球の位置である打球発射位置に遊技球を停止させるための打球ストッパ53と、遊技球を球抜きする際に打球ストッパ53を移動させる球抜部54とを備えている。球発射部51は、遊技者により行われるハンドル15の操作に応じた強さで、遊技球を遊技領域10に発射する。
発射レール52は、遊技領域10に向かって上向きに傾斜する。打球ストッパ53は、遊技球が発射レール52の傾斜により転がり落ちないように、遊技球を停止させる。球抜部54は、制御部60の制御により打球ストッパ53を動作させて、傾斜に沿って遊技球を打球抜取樋46側にリリースする。球抜部54は、この実施形態では電磁アクチュエータ541で実現される。
【0030】
回収機構40及び発射機構50には、遊技球の有無を検出するための複数の検出器(センサ)が設けられる。アウト球誘導口43には、球集合樋48への開口部分にアウト球検出器61が設けられる。打球抜取樋46には、球集合樋48への開口部分にファウル球検出器62が設けられる。球集合樋48には、打球リフト47への開口部分に回収球検出器63が設けられる。発射レール52には、打球待機樋42から遊技球が供給される位置に打球払出検出器64が設けられるとともに、打球発射位置に打球検出器65が設けられる。各検出器による検出信号は、制御部60に送られる。制御部60は、これらの検出信号により、遊技者が遊技により獲得した遊技球の個数などを管理して、その実数を持ち玉数表示器16に表示する。また、パチンコ遊技機1は封入式であるために、遊技に用いられる遊技球の個数は一定である。各検出器の検出信号は、当該パチンコ遊技機1で循環して用いられる遊技球の個数を管理するためにも用いられる。更に、各部で球詰まりが発生した場合にも、各検出器により球詰まりが検出される。
【0031】
アウト球検出器61は、遊技領域10の入賞口13及びアウト口14に入った遊技球を回収した際に、これらの遊技球を検出する。ファウル球検出器62は、ファウルとなった遊技球及び球抜きされた遊技球を検出する。回収球検出器63は、回収された遊技球を検出する。打球払出検出器64は、遊技球が打ち出されて次の遊技球が打球発射位置に供給されるときに、当該遊技球を検出する。
打球検出器65は、打球発射位置に遊技球が保持されているか否かを検出する。また、打ち損じが生じたときなどに遊技球が打球発射位置に止まった場合にも、打球検出器65が検出する。この場合、制御部60は、打球発射位置に遊技球があると判断して、打球待機樋42から発射機構50への遊技球の供給をストップしてもよい。
【0032】
<通常の遊技>
通常の遊技を行う場合には、まず、打球ストッカ41に供給された遊技球が、打球待機樋42を介して発射機構50に送られる。発射機構50は、打球ストッパ53により、打球ストッカ41から供給された遊技球を受け止めて、発射レール52上の打球発射位置に停止させる。遊技者のハンドル操作により発射機構50が作動すると、球発射部51が間欠揺動して、打球発射位置に停止した遊技球を打撃して発射する。発射された遊技球は、発射レール52を介して遊技領域10に供給される。
遊技領域10に供給された遊技球は、入賞口13或いはアウト口14に入り、その後、入賞球誘導口44或いはアウト球誘導口43を介して球集合樋48に集められる。球集合樋48に集められた遊技球は、打球リフト47により打球ストッカ41に運ばれて溜められる。次の遊技に用いられる場合には、遊技球が再び打球ストッカ41から打球待機樋42に送られる。
【0033】
<球抜き動作>
発射機構50の動作において、球発射部51による遊技球への打撃力が弱い等の理由で打ち損じが生じると、当該遊技球がファウル球として処理される。ファウル球となった遊技球は、ファウル誘導樋45に導かれ、打球抜取樋46を通って球集合樋48に送られる。打ち損じた遊技球がファウル誘導樋45まで届かない場合には、当該遊技球がそのまま発射レール52上の打球発射位置に止まる。このような遊技球は球詰まりの原因になってしまい、遊技球の発射ができない状態になる。
【0034】
このような場合には、打球ストッパ53を開放して、発射レール52上の遊技球を打球抜取樋46にリリースすることで、遊技球の球詰まりを解消する。打球ストッパ53は、球抜部54により、その動作が制御される。
【0035】
球抜きボタン17は、球抜部54のスイッチとなっており、球抜ボタン17が遊技者により押下されることで、制御部60に球抜きを行う指示が入力される。制御部60が、この指示により球抜き動作のための条件を満たしたと判断し、球抜部54に球抜き動作の制御信号を与える。これにより、球抜部54が起動する。このとき、制御部60は球発射部51の動作を停止させ、回収機構40から発射機構50への遊技球の供給を一時的に停止させる。球抜部54が起動すると、電磁アクチュエータ541により磁力が生じ、操作ロッド542が移動する。操作ロッド542は、基端が電磁アクチュエータ541に接続され、先端が打球ストッパ53に接続されている。操作ロッド542が移動することで、打球ストッパ53が回転する。
【0036】
図3は、球抜部54及び打球ストッパ53の動作を説明する図である。図3(A)は、通常の遊技時の球抜部54及び打球ストッパ53の状態を表す図である。この場合、電磁アクチュエータ541が起動しておらず、打球ストッパ53は操作されずに遊技球を発射レール52上に止める。打球ストッパ53は、ピン531により図中で時計回りに回転しないようになっている。このように通常の遊技のときには、打球ストッパ53と発射レール52との間の間隔が、遊技球の大きさよりも小さく、発射レール52から落ちないように打球ストッパ53が遊技球を支える。
【0037】
図3(B)は、球抜き時の球抜部54及び打球ストッパ53の状態を表す図である。球抜ボタン17が押下されると、電磁アクチュエータ541に磁力が発生して、操作ロッド542が電磁アクチュエータ541に引きつけられる。操作ロッド542の先端は、打球ストッパ53の2つの突起に挟まれているために、操作ロッド542が電磁アクチュエータ541に引きつけられることで、打球ストッパ53が図中で軸532を中心に反時計回りに回転する。打球ストッパ53の回転により、発射レール52上の遊技球がリリースされて、打球抜取樋46側に落下する。このように球抜きのときには、打球ストッパ53と発射レール52との間の間隔が遊技球の大きさよりも大きくなり、打球ストッパ53の支えが無くなって遊技球が発射レール52から打球抜取樋46へ落下する。
【0038】
発射レール52上に複数の遊技球が溜まって球詰まりを起こしている場合でも、打球ストッパ53が回転することで一度にリリースできて、球詰まりを解消することができる。遊技者においては、球抜ボタン17を押下することで容易に球詰まりを解消することができるので、球詰まりのたびに店員を呼んで対処してもらう必要がなくなり、スムーズに遊技を続けることができる。
遊技場においても、店員が球詰まりに対処する時間を大幅に削減できる。また、球詰まりが発生してもメンテナンス扉を開放する必要が無いために、遊技者が不正な遊技球をパチンコ遊技機1内に混入させることができなくなる。
【0039】
なお、球抜ボタン17の他に、遠隔制御装置により制御部60に球抜きの指示が入力され、球抜部54が作動するように構成してもよい。
この場合、パチンコ遊技機1が遠隔制御装置からの指示の入力を受け付け、その指示により電磁アクチュエータ542を作動させる。そのため、パチンコ遊技機1には受信機が備えられる。遠隔制御装置からの上記指示の内容を表す情報を受信機で受信して、受信機から制御部60にこの指示の内容を伝達する。制御部60は、この指示に応じて球抜きを動作を行うように、発射機構50の動作を制御するための制御信号を出力する。このような構成では、例えば球詰まりが発生しても、店員が当該パチンコ遊技機まで行かなくとも、球詰まりを解消することができる。
【0040】
<球抜部54の他の構成例>
図4は、球抜部54の他の構成による動作を説明する図である。図3(A)、(B)とは、以下の点で異なる。まず、打球ストッパ53は固定されており、回転等の動きをしない。そのために電磁アクチュエータ541及び操作ロッド542を備えていない。発射レール52は、上下動できるようになっている。そのために球抜部54は、昇降部55を備えている。昇降部55は、例えば、電磁マグネットや、ステッピングモータを用いて実現できる。
【0041】
図4(A)は、通常の遊技時の昇降部55の状態を表す図である。通常の遊技を行うときには、昇降部55が上がっている。昇降部55が上がっているために、発射レール52が上がる。発射レール52が上がった状態では、発射レール52と打球ストッパ53との間に遊技球の大きさよりも小さい間隙しか生じない。そのために遊技球は、発射レール52上に打球ストッパ53によって止まる。
図4(B)は、球抜き時の昇降部55の状態を表す図である。球抜き時には、昇降部55が下がる。昇降部55が下がっているために、発射レール52が下がる。発射レール52が下がることで、発射レール52と打球ストッパ53との間に遊技球の大きさよりも大きい間隙が生じる。この間隙を通って遊技球は打球抜取樋46にリリースされる。
このような構成においても、図3の構成と同様の効果が期待できる。また、遠隔制御装置による動作も、図3と同様に可能である。
【0042】
図4では発射レール52の全体を上下動させているが、この他に、図5に示すように、球発射位置から離れた位置(遊技領域10に最も近い位置でもよい)を支点として、発射レール52を回転させることで、打球ストッパ53との間隔を大きくするようにしてもよい。発射レール52の回転は、例えば、図5に示すように支点を軸521として回転するモータを用いたり、球発射位置を上下動させることで実現できる。この例では、発射レール52を回転させるモータが、球抜部54になる。
【0043】
なお、図3の構成と図4の構成との両方を備えた構成であってもよい。すなわち、球抜部54により打球ストッパ53を回転させ、昇降部55により発射レール52を下げることで、打球ストッパ53と発射レール52との間隔を広げて、発射レール52上の遊技球を球抜きするようにしてもよい。また、図3の構成と図5の構成との両方を備えて、球抜部54により打球ストッパ53を回転させ、軸521を回転させることで発射レール52の球発射位置側を回転させて下げることで、打球ストッパ53と発射レール52との間隔を広げて、発射レール52上の遊技球を球抜きするようにしてもよい。
【0044】
<球詰まりの自動的な解消>
図3、図4、図5の構成では、球抜きボタン17の押下による動作としているが、球抜きボタン17によらず、球詰まりを検知することで自動的に球抜きを行う構成であってもよい。このような構成では、遊技者が球詰まりを意識することなく遊技が続けられるために、球詰まりへの対処に煩わされることなく遊技を行うことができる。
【0045】
この場合、図6に示す構成となる。図6は、球発射位置付近の拡大図であり、図2の構成に球詰まり検出器66が追加された構成である。
図6の構成では、例えば制御部60が、打球検出器65及び球詰まり検出器66が同時に所定時間(例えば、1秒間)遊技球の存在を検出した場合に、上記条件が満たされたと判断し、球詰まりの発生を検知する。制御部60は、球詰まりの発生を検知すると、球発射部51の動作を停止して、ハンドル15の操作に係わらず、遊技球の発射を停止する。
【0046】
遊技球の発射停止後に、図3、図4、又は図5のように打球ストッパ53或いは発射レール52を移動させて、球詰まりを起こした遊技球の球抜き動作を制御する。その後、制御部60は、打球検出器65及び球詰まり検出器66による遊技球の存在検出が所定時間(例えば、1秒間)無かったときは球詰まりが解消されたと判断し、打球ストッパ53或いは発射レールを通常の遊技時の状態に戻して、回収機構40から発射機構50への遊技球の供給を再開するとともに、発射機構50を通常の動作に戻す。このようにして、遊技者の遊技が煩わされることなく、自動的に球詰まりが解消される。
【0047】
<手動による球抜き動作>
図7は、手動による球抜きを実現するための球抜部54の構成図である。通常の遊技時には、バネ545により打球ストッパ53が電磁アクチュエータ543側に付勢されており、打球ストッパ53が固定されて移動しないようになっている。
【0048】
打球検出器65及び球詰まり検出器66により球詰まりが検知されると、電磁アクチュエータ543により操作ロッド544が可動状態になる。球詰まりの検知時には、音やランプの点滅などで、遊技者に報知される。遊技者は、球詰まりが検知されると、球抜ボタン17を操作する。球抜ボタン17の操作により、操作ロッド544は打球ストッパ53側に移動する。これにより、打球ストッパ53は操作ロッド544に押されて、図7中反時計回りに回転する。打球ストッパ53が回転することで、打球ストッパ53と発射レール52との間隔が遊技球の大きさよりも大きくなり、詰まった遊技球がリリースされて球詰まりが解消される。打球ストッパ53は、ピン533により回転が制限されている。
【0049】
図8は、手動による球抜きを実現する球抜き機54の他の構成図である。通常の遊技時には、バネ548により発射レール52が図中上側に付勢されており、発射レール52が固定されて移動しないようになっている。
【0050】
打球検出器65及び球詰まり検出器66により球詰まりが検知されると、電磁アクチュエータ546により操作ロッド547が可動状態になる。球詰まりの検知は、音やランプの点滅などで、遊技者に報知される。遊技者は、球詰まりが検知されると、球抜ボタン17を操作する。球抜ボタン17の操作により、操作ロッド547は発射レール52を押し下げる。これにより、発射レール52は、図8中時計回りに回転する。発射レール52が回転することで、発射レール52と打球ストッパ53との間隔が遊技球の大きさよりも大きくなり、詰まった遊技球がリリースされて球詰まりが解消される。図示は省略してあるが、発射レール52からリリースされた遊技球は、打球抜取樋46に落ちるようになっている。なお、発射レール52は、回転の他に、図4で示すように上下動する構成であってもよい。
【0051】
<発射機構への打球の供給>
また、球抜部54は、遊技終了時に打球待機樋42及び発射レール52上に残るすべての遊技球の球抜きにも用いることができる。発射レール52上の遊技球は球抜部54により抜き取られる。打球待機樋42上の遊技球は、一旦、発射レール52に供給されてから抜き取られてもよく、また、打球待機樋42から直接抜き取られてもよい。打球待機樋42から発射レール52に遊技球を供給する打球払出機について、図9により説明する。
【0052】
図9は、打球払出機の構成の説明図である。図9(A)は、打球待機樋42上で遊技球を保持している状態を表す図であり、図9(B)は、打球待機樋42から発射レール52に遊技球を供給する状態を表す図である。
【0053】
図9の打球払出機は、軸Pを中心に回転可能な回転部材56と操作ロッド57とを備えている。回転部材56には、遊技球が1個嵌る大きさの窪みが形成されている。操作ロッド57は、図10のように電磁アクチュエータ58により操作される。遊技球を発射レール52に供給する際には、電磁アクチュエータ58により操作ロッド57が電磁アクチュエータ側に引っ張られる。操作ロッド57が引っ張られることで回転部材56が回転して、回転部材56の窪みに嵌った遊技球が、打球待機樋42から発射レール52に供給される。この際、後続の遊技球は、回転部材56の窪みの縁により係止されて、打球待機樋42から発射レール42に供給されることはない。遊技中及び球抜き時に、図9(A)、(B)の状態が交互に繰り返されて、発射レール52に遊技球が1個ずつ供給される。
【0054】
図11は、打球払出機の他の例の構成図である。図11の打球払出機は、回転部材56がステッピングモータ59により回転される。ステッピングモータ59の回転により、回転部材56が回転することで、遊技球が打球待機樋42から発射レール42に供給される。
【0055】
このような打球払出機を用いることで、遊技球を1個ずつ発射機構50に供給することができる。電磁アクチュエータ58又はステッピングモータ59は、制御部60により制御されて動作する。
【0056】
以上のように、本実施形態のパチンコ遊技機1は、メンテナンス扉を開放することなく、球抜ボタン17或いは遠隔制御装置の操作により、遊技球を抜き取ることができる。そのために、メンテナンス扉を開放することで生じていた不正を防止でき、遊技の円滑化が図れる。また、遊技球を直接手で触れることが無いために、手の油脂等による遊技球の汚れが少なくなり、遊技球自体のメンテナンスの頻度が従来よりも少なくすることができる。
【符号の説明】
【0057】
1…パチンコ遊技機、2…玉貸機、21…カードリーダライタ、22…カード挿入口、23…表示器、24…選別操作ボタン、25…返却ボタン、26…作動表示ランプ、10…遊技領域、11…ドラム、12…釘、13…入賞口、14…アウト口、15…ハンドル、16…待ち玉数表示器、17…球抜ボタン、40…回収機構、41…打球ストッカ、42…打球待機樋、43…アウト球誘導口、44…入賞球誘導口、45…ファウル誘導樋、46…打球抜取樋、47…打球リフト、48…球集合樋、50…発射機構、51…球発射部、52…発射レール、521…軸、53…打球ストッパ、531,533…ピン、532…軸、54…球抜部、541,543、546…電磁アクチュエータ、542,544,547…操作ロッド、545,548…バネ、55…昇降部、56…回転部材、57…操作ロッド、58…電磁アクチュエータ、59…ステッピングモータ、60…制御部、61…アウト球検出器、62…ファウル球検出器、63…回収球検出器、64…打球払出検出器、65…打球検出器、66…球詰まり検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技球を1個ずつ遊技領域に発射するための発射機構を備え、当該遊技球を遊技に供する弾球遊技機であって、
前記発射機構は、
前記遊技球を前記遊技領域に導くための発射レールと、
前記発射レール上の打球発射位置に前記遊技球を停止させる打球ストッパと、
遊技者による操作に応じて、前記打球発射位置に停止された前記遊技球を前記発射レールを介して前記遊技領域に発射する球発射部と、
前記球発射部が遊技球を発射するときには前記発射レールと前記打球ストッパとの間隔を前記遊技球の大きさよりも小さくし、所定の条件を満たすときは前記発射レールと前記打球ストッパとの間隔を前記遊技球の大きさよりも大きくするように、前記発射レールの位置及び前記打球ストッパの位置の少なくとも一方を変化させ、これにより前記打球発射位置からの前記遊技球を球抜きを可能にする球抜部と、を備える、
弾球遊技機。
【請求項2】
前記球抜部は、前記打球ストッパを回転させることにより、前記発射レールとの間の間隔を遊技球の大きさよりも大きくする、
請求項1記載の弾球遊技機。
【請求項3】
前記球抜部は、前記発射レールを上下動可能であり、前記発射レールを下げることで、前記発射レールとの間の間隔を遊技球の大きさよりも大きくする、
請求項1又は2記載の弾球遊技機。
【請求項4】
前記球抜部は、前記発射レールを回転可能であり、前記発射レール回転させて、前記発射レールとの間の間隔を遊技球の大きさよりも大きくする、
請求項1又は2記載の弾球遊技機。
【請求項5】
前記発射レール上の前記打球発射位置に存在する遊技球を検出する検出器を備えており、
前記球抜部は、前記検出器が所定時間以上続けて遊技球を検出したことを前記条件の一つとして、前記発射レールと前記打球ストッパとの間隔を前記遊技球の大きさよりも大きくする、
請求項1〜4のいずれか1項記載の弾球遊技機。
【請求項6】
前記球抜部は、外部からの指示入力を前記条件の一つとして、前記発射レールと前記打球ストッパとの間隔を前記遊技球の大きさよりも大きくする、
請求項1乃至4のいずれか1項記載の弾球遊技機。
【請求項7】
前記外部からの指示入力が遠隔制御装置からのものであり、
該遠隔制御装置からの指示入力を受け付けるための受信部を更に備える、
請求項6記載の弾球遊技機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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