形状測定装置
【課題】長尺大面積の直線形状や、面形状の測定における逐次3点法の零点調整を、工作機械やそれに類似する測定システム上に簡便に実現することができ、反転法と異なり長尺の被測定物の被測定対象面を置き直すことがなく測定ができる形状測定装置を提供する。
【解決手段】
形状測定装置は、変位センサ41〜43の検出感度軸方向Kが水平面に含まれるとともに互いに反対方向となる第2姿勢位置D2及び第3姿勢位置D3、及び水平面と直交する鉛直方向に向ける第1姿勢位置D1を取り得るようにホルダ38を回転自在に支持する姿勢可変機構を備える。形状測定装置は基準幅直定規を変位センサ41〜43の配列方向を走査方向として、該走査方向に走査測定することで得られる幅真直形状と基準幅直定規の校正値を比較することで変位センサ41〜43の零点調整誤差を算出し、被測定物の断面形状を逐次3点法で測定して、零点調整誤差に基づき校正する。
【解決手段】
形状測定装置は、変位センサ41〜43の検出感度軸方向Kが水平面に含まれるとともに互いに反対方向となる第2姿勢位置D2及び第3姿勢位置D3、及び水平面と直交する鉛直方向に向ける第1姿勢位置D1を取り得るようにホルダ38を回転自在に支持する姿勢可変機構を備える。形状測定装置は基準幅直定規を変位センサ41〜43の配列方向を走査方向として、該走査方向に走査測定することで得られる幅真直形状と基準幅直定規の校正値を比較することで変位センサ41〜43の零点調整誤差を算出し、被測定物の断面形状を逐次3点法で測定して、零点調整誤差に基づき校正する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状測定装置に関し、特に逐次3点法で大型の被測定物である被測定物の形状測定を行うことができる形状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大型の面形状や、断面直線形状の測定をするためには、基準となる基準直定規との比較測定を実施することが多い。また、基準直定規が使えないときには、反転法や多点法を用いて運動誤差と形状誤差を分離する方法がとられる。
【0003】
測定対象が大型化するのにともない、基準直定規が長尺化し、基準直定規の作成が困難になるだけでなく、高精度の基準直定規の運搬にも困難が生じる。また、大型の基準直定規は使用時の弾性変形、熱変形が基準精度を低下させるなどの問題がある。また、大型の基準直定規は反転によっても、支持位置での摩擦力による弾性変形を生じ、形が定まらない。
【0004】
ところで、多点法においては、センサ間の零点調整誤差に起因する放物線誤差が大きな問題になるため、この零点調整のための種々の方法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−337112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
多点法で使用するセンサ間の零点調整誤差を取り除くために被測定物を反転する必要のない方法が理論的に知られてはいるが、これらを工作機械等の機上でどのように実現するか、或いは工作機械と類似の測定システムでその場で実現する装置は未だ提案されていない。
【0007】
本発明の目的は、上記課題を解決して、長尺大面積の直線形状や、面形状の測定における逐次3点法の零点調整を、工作機械やそれに類似する測定システム上に簡便に実現することができ、反転法と異なり長尺の被測定物の被測定対象面に置き直すことがなく測定ができる形状測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、請求項1の発明は、3つのプローブを保持するホルダと、前記3つのプローブの検出感度軸方向が水平面に含まれるとともに互いに反対方向となる2つの姿勢、及び前記水平面と直交する鉛直方向に向ける姿勢が少なくとも取り得るように前記ホルダを回転自在に支持する姿勢可変機構と、幅又は溝を有して、前記幅又は前記溝の幅の長さ方向の変化(以下、両者を含めて幅真直形状という)が予め校正されて校正値が得られた基準幅直定規と、前記基準幅直定規が着脱自在に設けられ、又は前記基準幅直定規が形成され、前記3つのプローブによる逐次3点法で測定走査できる姿勢で被測定物を載せる支持手段と、前記姿勢可変機構と前記基準幅直定規を備えた前記支持手段の少なくともいずれかを水平面に含まれる第1方向に移動する第1移動手段と、前記姿勢可変機構と前記支持手段の少なくともいずれかを水平面内に含まれるとともに前記第1方向と直交する第2方向に移動する第2移動手段と、を備え、前記基準幅直定規を前記3つのプローブの配列方向を走査方向にして、前記第1移動手段及び第2移動手段のうち、少なくとも第1移動手段の駆動により前記走査方向に走査測定することで得られる幅真直形状と前記基準幅直定規の校正値を比較することで前記3つのプローブの零点調整誤差を算出し、前記被測定物の断面形状を逐次3点法で測定して、前記零点調整誤差に基づいて校正することを特徴とする形状測定装置を要旨とするものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1において、前記ホルダを鉛直軸周りに回転させて、回転された回転位置に保持する回転支持機構を備え、前記回転支持機構により、前記ホルダが前記鉛直軸周りの回転された回転位置に保持された状態のときの前記プローブの配列方向を走査方向にして、前記第1移動手段の駆動により前記走査方向に走査測定することで、被測定物における走査方向に向かう直線に沿う断面形状を測定することを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2において、前記ホルダを、プローブの検出感度軸方向に並進移動可能にするホルダ移動手段と、被測定物の被測定対象面が前記プローブの所定の測定範囲内に入るように前記ホルダ移動手段を移動制御する制御手段を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1又は請求項2において、前記ホルダを、前記プローブの検出感度軸方向に並進移動可能にするホルダ移動手段と、前記プローブの所定の測定範囲内に入るように、前記ホルダの被測定物との相対運動軌跡を予め記憶する第1運動軌跡記憶手段と、前記相対運動軌跡に基づいて、前記ホルダ移動手段及び前記姿勢可変機構を制御して、前記被測定物に対する前記ホルダの相対位置及び相対姿勢を変化させ、前記プローブの所定の測定範囲を維持する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、請求項3において、前記ホルダに設けられ、前記3つのプローブを第1〜第3のプローブとしたとき、第1〜第3のプローブよりも測定範囲が広い第4のプローブと、該第4のプローブで、前記第1〜第3のプローブの測定範囲に収まるように、被測定物の被測定対象面が予め測定されて、この測定時の被測定対象面に対する相対運動軌跡を記憶する第2運動軌跡記憶手段と、前記相対運動軌跡に基づいて、前記ホルダ移動手段及び前記姿勢可変機構を制御して、前記被測定物に対する前記ホルダの相対位置及び相対姿勢を変化させ、前記第1〜第3のプローブの測定範囲を維持する制御手段を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1乃至請求項5のうちいずれか1項において、前記基準幅直定規の校正値、又は前記3つのプローブの零点調整誤差を記憶する記憶手段を備え、該記憶手段に記憶した前記校正値、又は零点調整誤差により、前記3つのプローブのドリフトによる零点の変化を補正可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1乃至請求項6の発明によれば、長尺大面積の直線形状や、面形状の測定における逐次3点法の零点調整を工作機械や、それに類似する測定システム上に簡便に実現することができ、反転法と異なり長尺の被測定物の被測定対象面を置き直すことがなく測定ができる形状測定装置を提供できる。
【0015】
請求項2の発明によれば、回転支持機構により、ホルダが鉛直軸周りで回転された回転位置に保持された状態において、被測定物における走査方向に向かう直線に沿った断面形状の測定が可能となる。
【0016】
請求項3の発明によれば、制御手段が、ホルダ移動手段を移動制御して、ホルダをプローブの検出感度軸方向に並進移動することにより、被測定物の被測定対象面が前記プローブの所定の測定範囲内に入るようにすることができる。そして、被測定物の被測定対象面が傾斜していたり、測定線での断面形状が曲線であるときは、制御手段はホルダ移動手段を駆動して、被測定対象面に追従させることができる。
【0017】
請求項4の発明によれば、制御手段が、相対運動軌跡に基づいて、ホルダ移動手段及び前記姿勢可変機構を制御して、被測定物に対するホルダの相対位置及び相対姿勢を変化させることにより、プローブの所定の測定範囲を維持することができる。
【0018】
請求項5の発明によれば、制御手段が、第1〜第3のプローブよりも測定範囲が広い第4のプローブで予め測定した被測定物の測定対象面に対する相対運動軌跡に基づいて、ホルダ移動手段を制御して、前記被測定物に対する前記ホルダの相対位置を変化させることにより、第1〜第3プローブの測定範囲を維持することができる。特に、逐次3点法で用いられるプローブは分解能を高めるため、所定の測定範囲に制限が生じるが、このことから、長尺の被測定物ではプローブの所定の測定範囲に被測定物の被測定対象面の全長を入れることが可能となる。
【0019】
請求項6の発明によれば、記憶手段に記憶した基準幅直定規の校正値、又は零点調整誤差により、3つのプローブのドリフトによる零点の変化を補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を具体化した第1実施形態の形状測定装置の全体概略斜視図。
【図2】同じく作用を示す形状測定装置の全体概略斜視図。
【図3】同じく図4のA−A線断面図。
【図4】同じく姿勢可変機構の正面図。
【図5】同じく形状測定装置10の電気的構成のブロック図。
【図6】逐次3点法の零点調整法の原理を説明するための説明図。
【図7】第2実施形態における回転支持機構KB及び周辺部分の概略説明図であり、第1実施形態の図3に相当する図。
【図8】同じく測定線Sの説明図。
【図9】同じく形状測定装置10の電気的構成のブロック図。
【図10】同じく回転角θの説明図。
【図11】第3、及び第4実施形態におけるスライダ33、支持体46、及びホルダ38及びその周辺の概略図。
【図12】同じく形状測定装置10の電気的構成のブロック図。
【図13】第5実施形態の図11相当図。
【図14】同じく第5実施形態の形状測定装置10の電気的構成のブロック図。
【図15】(a)〜(c)は、他の実施形態の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態の形状測定装置を図1〜図6を参照して説明する。
【0022】
形状測定装置10は、リニアテーブル20、及び、門形のコラム30を備えている。リニアテーブル20は、ACサーボモータM1(図5参照)の回転を図示しないボールねじを介してテーブル25を直線移動させる。テーブル25上面は、水平面とされており、テーブル25の移動方向(本実施形態では、図1に示すX軸方向)に沿うように長尺であって、四角柱状をなす基準幅直定規100、及び被測定物(図示しない)が、テーブル25に設けられた図示しない電磁チャックにより取付け取り外し可能に載置可能である(図1、図2参照)。テーブル25は、支持手段に相当し、リニアテーブル20はテーブル25を走査方向(すなわち、X軸方向)に移動する第1移動手段に相当する。X軸方向は第1方向に相当する。又、基準幅直定規100の横断面形状は、正方形、或いは、長方形であることが好ましい。
【0023】
本実施形態では、基準幅直定規100の側面100aは、テーブル25上面に対して垂直となるように配置され、重力方向に向かないように配置されている。
コラム30は、一対の脚部31及び両脚部31の上部間に梁渡された梁部32からなる。梁部32の下面には、図4、図5に示すように、Y軸方向に延びる一対のガイドレール34が設けられている。スライダ33は、エンコーダ付きACサーボモータM2(図5参照)に作動連結されたボールねじ36(図3、4参照)の回転により、前記ガイドレール34にて沿って移動され、すなわち、Y軸方向に往復移動自在となっている。Y軸方向は第2方向に相当する。
【0024】
ACサーボモータM2及びボールねじ36により、第2移動手段が構成されている。
スライダ33の下部には、支持ブラケット37を介して、ホルダ38がX軸周りで回動自在に支持されている。ホルダ38は、等間隔にX軸方向に併設されたプローブとしての3個の変位センサ41〜43を保持する。
【0025】
ホルダ38は、支持ブラケット37に固定されたエンコーダ付きACサーボモータM3(図4参照)の回転駆動及び保持により、図3に示す変位センサ41〜43が鉛直方向に向く位置、変位センサ41〜43がY軸方向及び反Y軸方向にそれぞれ向く位置の3位置の姿勢を取り得ることが可能である。すなわち、ホルダ38は、図3に示すように変位センサ41〜43の検出感度軸方向KがZ軸方向と同方向の鉛直方向に向く第1姿勢位置D1、及び、前記Z軸に直交する水平面内に含まれるように検出感度軸方向Kが互いに反対方向に向く第2姿勢位置D2、第3姿勢位置D3の各姿勢位置に位置することが可能である。すなわち、第2姿勢位置D2と第3姿勢位置D3では、変位センサ41〜43の検出感度軸方向Kが共通の水平面に含まれるとともに互いに180°反対方向になる。
【0026】
本実施形態では、第2姿勢位置D2では、検出感度軸方向KがY軸方向に向き、第3姿勢位置D3では、検出感度軸方向Kが反Y軸方向に向く。
なお、ACサーボモータM3の図示しない出力軸とホルダ38とを作動連結する機構(図示しない)には、減速機構45が含まれる。前記ACサーボモータM3及びACサーボモータM3の回転駆動をホルダ38に伝達する減速機構45により、姿勢可変機構KAが構成されている。
【0027】
変位センサ41〜43は、テーブル25の移動方向に沿って一列に並ぶように、且つ、等間隔d離間して配置されており(図4参照)、基準幅直定規100の側面100a、或いは被測定物(図示しない)の側面に対向して離間配置される。本実施形態では、前記変位センサ41〜43は、非接触式のセンサであって、静電容量型センサからなる。なお、変位センサは、非接触式や、静電容量型センサに限定されるものではなく、接触式でもよく、或いは、非接触式の場合、静電容量型センサに代えて、例えば、光学センサとしてもよい。
【0028】
(形状測定装置10の電気的構成)
形状測定装置10の制御装置の電気的構成について説明すると、図5に示すように形状測定装置10の制御装置は、コンピュータからなるCPU(中央処理装置)11を備えている。CPU11は,変位センサ41〜43を図示しないA/D変換器を介して接続されており、各センサの出力信号(すなわち、検出信号)を入力する。CPU11は、各種処理プログラム等を格納するROM(図示しない)を備えており、該プログラムに従って各種の演算処理を行う。
【0029】
リニアスケール12は、テーブル25が移動する際に、テーブル移動を検出するためのものであり、テーブル移動に応じたパルス信号を、CPU11が備える図示しないパルスカウンタに入力する。前記パルスカウンタは入力したパルス信号をカウントし、CPU11は、そのカウント値に基づいてテーブル25の移動量を検出する。
【0030】
CPU11は、ドライバ15を介して、ACサーボモータM1に対する駆動制御により、テーブル25の定速度制御が可能である。そして、本実施形態では、リニアスケール12によるテーブル25の移動量の検出に基づいて、テーブル25が、図1、図4、図6に示すX軸方向に一定距離D(=d)で移動する毎に、CPU11は、変位センサ41〜43からの出力信号を取り込んで、演算処理等を行うようにしている。
【0031】
又、CPU11は、ドライバ16を介してACサーボモータM2に対する駆動制御により、スライダ33を移動して、ホルダ38を図1に示す位置(以下、第1測定位置という)と、図2に示す位置(以下、第2測定位置という)に位置させることが可能である。第1測定位置は、基準幅直定規100又は被測定物のY軸方向に向く面の形状測定を行う位置である。又、第2測定位置は、すなわち、側面100a又は被測定物の反Y軸方向に向く面の形状測定を行う位置である。
【0032】
又、CPU11は、ドライバ17を介してACサーボモータM3に対する駆動制御により、ホルダ38を回転させて第1姿勢位置D1、第2姿勢位置D2、第3姿勢位置D3のいずれかの姿勢を取らせることが可能である。本実施形態では、ホルダ38は第1測定位置に位置する際に、第3姿勢位置D3の姿勢位置となり、第2測定位置に位置する際に、第2姿勢位置の姿勢位置となる。
【0033】
(実施形態の作用)
次に、上記のように構成された形状測定装置10を使用して行う逐次3点法について説明する。図6は、本実施形態で利用する逐次3点法の零点調整法の原理を説明するための説明図である。
【0034】
この逐次3点法の零点調整法では、幅真直形状が既知の基準幅直定規100の幅を形成する2面のそれぞれについて、変位センサ41〜43の検出感度軸方向の向きを180度反対方向に切り換える姿勢可変機構KA(図4参照)を使用して測定をする。
【0035】
まず、図1に示すように、形状測定装置10の制御装置のCPU11は、ACサーボモータM2を駆動して、スライダ33を移動させてホルダ38を第1測定位置に位置させ、かつ、ACサーボモータM3を駆動して、ホルダ38を第3姿勢位置D3に位置させる。この状態において、基準幅直定規100の一方の面(側面100a)の形状測定を行う。この形状測定は、CPU11によってACサーボモータM1の駆動制御が行われ、テーブル25が、図1、図6に示すX軸方向(すなわち、走査方向)に一定距離D(=d)で移動する毎に、CPU11は、変位センサ41〜43からの出力信号を取り込むことにより行われる。このようにして、得られた出力信号(すなわち、測定値)は、CPU11に接続された記憶装置18に格納される。
【0036】
前述した基準幅直定規100の一方の面(側面100a)の形状測定は、基準幅直定規100と3つの変位センサ41〜43が並ぶ方向、すなわち、配列方向を走査方向として、逐次測定する3点法によって行われ、一方の面(側面100a)の形状に関する測定結果は、次式で表わされる。
【0037】
すなわち、間隔dで配置された3つの変位センサ41〜43の出力をm1(x)、m2(x)、m3(x)とし、一方の面(側面100a)の形状をf(x)、走査運動のZ軸方向並進誤差をez(x)、ピッチング誤差をep(x)とすると、m1(x)、m2(x)、m3(x)は次式で与えられる。
【0038】
m1(x)=f(x−d)+ez(x)−ep(x)d ……(1)
m2(x)=f(x)+ez(x)+α ……(2)
m3(x)=f(x+d)+ez(x)+ep(x)d ……(3)
ただし、αは、変位センサ41及び変位センサ43の取付け位置が同じとし、変位センサ41を基準としたときの変位センサ42の零点調整誤差である。
【0039】
ここで隣り合う変位センサの出力差を求めると、一階の差分として、次式(4)、式(5)を得る。
Δm12(x)=f(x)−f(x−d)+α+ep(x)d ……(4)
Δm23(x)=f(x+d)−f(x)−α+ep(x)d ……(5)
式(5)−式(4)により、ep(x)dの項を消去して2回の差分を得る。
【0040】
Δμf(x)=f(x+d)−2f(x)+f(x−d)−2α ……(6)
ここで、Δμf(x)は、式(5)−式(4)により得られた2回の差分値である。
次に、CPU11は、ACサーボモータM1の駆動制御が行われ、テーブル25を反X軸方向に移動させて、基準幅直定規100がホルダ38と干渉しない位置に退避させる。この状態で、図2に示すように、形状測定装置10の制御装置のCPU11は、ACサーボモータM2を駆動して、スライダ33を移動させてホルダ38を第2測定位置に位置させ、かつ、ACサーボモータM3を駆動して、ホルダ38を第2姿勢位置D2に位置させる。
【0041】
そして、この状態において、基準幅直定規100の他方の面(すなわち、側面100aとは反対側であって、反Y側に向く面)の形状測定を行う。この形状測定は、CPU11によってACサーボモータM1の駆動制御が行われ、テーブル25が、図1、図6に示すX軸方向(すなわち、走査方向)に一定距離D(=d)で移動する毎に、CPU11は、変位センサ41〜43からの出力信号を取り込むことにより行われる。このようにして、得られた出力信号(すなわち、測定値)は、CPU11に接続された記憶装置18に格納される。
【0042】
この基準幅直定規100の他方の面の形状についても、逐次測定する3点法によって、得られた測定結果に基づき、走査運動時のピッチング誤差の項を消去すると、式(7)に示す2回の差分を得る。
【0043】
Δμg(x)=g(x+d)−2g(x)+g(x−d)−2α ……(7)
なお、g(x)は、基準幅直定規100の他方の面の形状を表わし、Δμg(x)は、前述したΔμf(x)に相当する基準幅直定規100の他方の面の形状における2回の差分値である。
【0044】
上記の式(6)、式(7)に示す2回の差分値から、CPU11は積分或いは逐次和の算出を行うことにより、前記基準幅直定規100の両面の形状を求める。
又、基準幅直定規100の両面の形状の測定結果から得られる、幅の長さ方向の変化、すなわち、幅真直形状は、両面の測定結果の和であり、幅真直形状W(x)は次式(8)のようになり、零点調整誤差αに起因する放物線誤差を含む。
【0045】
W(x)=f(x)+g(x)−2αx2 ……(8)
ただし、αは変位センサ(プローブ)の零点調整誤差であり、前記両面の測定中は、不変とする。又、両面の一次の傾斜は、取り除いて表わしている。又、基準幅直定規100の形状{f(x)+g(x)}は予めの構成で校正された校正値となって既知となっているため、CPU11は、基準幅直定規100の全長をLとして、零点調整誤差αは次のように求める。
【0046】
α={f(x)+g(x)−W(x)}/(2L2) ……(9)
なお、式(9)は、式(8)からの変形である。
上記のようにして、CPU11は、零点調整誤差αを求めた後、この零点調整誤差αを後の被測定物の断面形状を測定する場合の零点調整誤差補償量として、記憶装置18に格納する。
【0047】
そして、電磁チャック(図示しない)を開放してテーブル25から基準幅直定規100を外し、新たにテーブル25上に前記電磁チャックにより被測定物(図示しない)を保持し、該被測定物の断面形状を逐次三点法で測定する。この場合、被測定物の断面形状が、上方を向いている面、例えば鉛直方向に直交する水平面である場合には、CPU11は、ホルダ38を第1姿勢位置D1(図3参照)にして、測定を行う。この場合の測定結果を、CPU11は、前記得られた零点調整誤差補償量により校正する。
【0048】
又、被測定物(図示しない)の断面形状(測定対象の面)が鉛直面であって、該鉛直面が基準幅直定規100の側面100aと同様にY軸方向に向いている場合には、ホルダ38を第1測定位置に位置させるとともにホルダ38を第3姿勢位置D3の姿勢にして測定を行う。この場合の測定結果も、CPU11は、前記得られた零点調整誤差補償量により校正する。
【0049】
又、被測定物(図示しない)の断面形状(測定対象の面)が鉛直面であって、該鉛直面が基準幅直定規100の側面100aとは反対の反Y軸方向に向いている場合には、ホルダ38を第2測定位置に位置させるとともにホルダ38を第2姿勢位置D2の姿勢にして測定を行う。この場合の測定結果も、CPU11は、前記得られた零点調整誤差補償量により校正する。
【0050】
本実施形態では、下記の特徴を有する。
(1) 本実施形態の形状測定装置10は、変位センサ41〜43の検出感度軸方向Kが水平面に含まれるとともに互いに反対方向となる第2姿勢位置D2及び第3姿勢位置D3、及び水平面と直交する鉛直方向に向ける第1姿勢位置D1を取り得るようにホルダ38を回転自在に支持する姿勢可変機構KAを備える。又、形状測定装置10は、幅の長さ方向の変化(幅真直形状)が予め校正されて校正値が得られた基準幅直定規100と、前記基準幅直定規100が着脱自在に設けられ、変位センサ41〜43による逐次3点法で測定走査できる姿勢で被測定物を載せるテーブル25(支持手段)を備える。又、形状測定装置10は、基準幅直定規100を備えたテーブル25(支持手段)を水平面に含まれる第1方向(X軸方向)に移動するリニアテーブル20(第1移動手段)と、姿勢可変機構KAを水平面に含まれるとともに第1方向と直交する第2方向に移動するACサーボモータM2及びボールねじ36(第2移動手段)を備える。そして、形状測定装置10は基準幅直定規100を変位センサ41〜43の配列方向を走査方向として、該走査方向(X軸方向)に走査測定することで得られる幅真直形状と基準幅直定規100の校正値を比較することで変位センサ41〜43の零点調整誤差αを算出し、被測定物の断面形状を逐次3点法で測定して零点調整誤差αに基づいて校正する。
【0051】
この結果、長尺大面積の直線形状や、面形状の測定における逐次3点法の零点調整を工作機械や、それに類似する測定システム上に簡便に実現することができ、反転法と異なり長尺の被測定物の被測定対象面を置き直すことがなく測定ができる。
【0052】
(第2実施形態)
次に第2実施形態を図7〜図10を参照して説明する。なお、本実施形態を含めた以下の実施形態では、第1実施形態で説明した構成に相当する構成については、第1実施形態と同一符号を付してその説明を省略し、異なる構成について説明する。第1実施形態では、ホルダ38をスライダ33に対して支持ブラケット37を介して支持した。それに対して、第2実施形態では、図7に示すようにスライダ33の下部に、回転支持体35が鉛直方向に向かうZ軸(すなわち、鉛直軸)の周りで回転自在に支持され、該回転支持体35に対してホルダ38が支持ブラケット37を介して支持されているところが異なっている。
【0053】
又、ホルダ38には変位センサ41〜43の検出感度軸方向Kが鉛直方向に向く第1姿勢位置D1、及び、前記Z軸に直交する水平面内に含まれるように検出感度軸方向Kが互いに反対方向に向く第2姿勢位置D2、第3姿勢位置D3の各姿勢位置に位置することが可能である(図7参照)。
【0054】
前記回転支持体35は、ホルダ38が第1姿勢位置D1に位置する際の変位センサ42の検出感度軸方向Kと同軸となる回転軸線K1の周りで回転可能になっており、スライダ33内に設けられたエンコーダ付きACサーボモータM4により図示しない減速機構を介して回転駆動される。前記回転支持体35を支持するスライダ33及びACサーボモータM4、減速機構(図示しない)により、回転支持機構KBが構成されている。
【0055】
形状測定装置10の制御装置のCPU11は、図9に示すようにドライバ19を介してACサーボモータM4に対する駆動制御により、回転支持体35を回転させて回転された回転位置に位置させることが可能である。このときの回転角をθ(0°<θ<360°)とする。なお、本実施形態では、回転角θは図10に示すように、X軸方向を基準とした時計回り方向の回転のときの角度を正の値とする。
【0056】
上記形状測定装置10では、零点調整は、第1実施形態と同様に行われる。すなわち、テーブル25には第1実施形態と同様に基準幅直定規100が取付けされる。そして、変位センサ41〜43の配列方向をX軸方向に一致させた状態で、第1実施形態と同様にホルダ38の姿勢を第1測定位置では第3姿勢位置D3とし、第2測定位置では第2姿勢位置D2にした状態で基準幅直定規100の両面の形状がそれぞれ測定され、その結果に基づいて、零点調整誤差αが求められる。そして、得られた零点調整誤差αは後の被測定物の断面形状を測定する場合の零点調整誤差補償量として、記憶装置18に格納される。
【0057】
次に、電磁チャック(図示しない)を開放してテーブル25から基準幅直定規100を外し、新たにテーブル25上に前記電磁チャックにより図8に示すように被測定物50を保持し、該被測定物50の断面形状を逐次三点法で測定する。この場合、第1実施形態と異なり、本実施形態では、被測定物50の上面において、X軸方向から回転角θでずらした直線(以下、測定線Sという。図8参照)上の該被測定物50の断面形状を測定するものとする。この測定線Sの延びる方向は、変位センサ41〜43の配列方向と一致し、後述するCPU11の変位センサ41〜43の走査方向と一致する。
【0058】
この場合、図10に示すように、CPU11は、ACサーボモータM4を駆動して回転支持体35を回転角θ分回転させて位置させる。又、この場合、CPU11は、ACサーボモータM3を駆動制御してホルダ38を第1姿勢位置D1(図7参照)にして測定を行う。そして、CPU11は、ACサーボモータM1に対してd・cosθ分の移動量で駆動する毎に、ACサーボモータM2に対してd・sinθ分の移動量となるように駆動するようにして、それぞれACサーボモータM1,ACサーボモータM2に対して定速度制御する。このように、CPU11は、ACサーボモータM1,ACサーボモータM2を駆動制御することにより、変位センサ41〜43の配列方向と走査方向とを一致させる。
【0059】
そして、リニアスケール12が、d・cosθ分検出する毎に、すなわち、ホルダ38が被測定物50に対して測定線S上を相対的にd分移動する毎に、CPU11は、変位センサ41〜43からの出力信号を取り込みして、演算処理を行い、測定線Sでの該被測定物50の断面形状の測定を行う。この場合の測定結果を、CPU11は、前記得られた零点調整誤差補償量により校正する。
【0060】
第2実施形態では、下記の特徴がある。
(1) 第2実施形態の形状測定装置10は、ホルダ38を鉛直軸(Z軸)周りに回転させて、回転された回転位置に保持する回転支持機構KBを備えている。又、形状測定装置10は、回転支持機構KBによりホルダ38が鉛直軸周りの回転された回転位置に保持された状態のときの変位センサ41〜43の配列方向を走査方向にする。すなわち、CPU11はリニアテーブル20(第1移動手段)及びACサーボモータM2及びボールねじ36(第2移動手段)の駆動制御により前記走査方向に走査して、被測定物50の測定線S(被測定物50における走査方向に向かう直線)に沿う断面形状を測定する。
【0061】
この結果、第2実施形態では、回転支持機構KBにより、ホルダ38が鉛直軸周りで回転された回転位置に保持された状態において、被測定物50における走査方向に向かう直線に沿った断面形状の測定ができる。
【0062】
(第3実施形態)
次に第3実施形態を図11及び図12を参照して説明する。第3実施形態では、第1実施形態の構成中、スライダ33の取付け構成及び該スライダ33に対するホルダ38の取付け構成が異なっている。すなわち、第1実施形態では、一対のガイドレール34は梁部32下面に設けられていたが、第3実施形態では、一対のガイドレール34は梁部32のX軸方向に向く側面に対してY軸方向に延びるように設けられている。そして、スライダ33は、ACサーボモータM2(図12参照)に作動連結されたボールねじ36(図11参照)が回転することにより、前記ガイドレール34にて沿って移動され、すなわち、Y軸方向に往復移動自在となっている。本実施形態において、ACサーボモータM2及びボールねじ36により、第2移動手段が構成されている。
【0063】
スライダ33の側面には、Z軸方向に沿って2本のZ軸方向案内面39が形成されている。Z軸方向案内面39には、支持体46がZ軸方向へ往復摺動自在に配置されている。支持体46には、スライダ33のZ軸方向に沿って設けられたボールねじ47と螺合するナット48が取付けられている。スライダ33には、前記ボールねじ47を回転駆動するエンコーダ付きACサーボモータM5が設けられている。前記図示しないNC装置は、ACサーボモータM5を制御回転することにより、ボールねじ47を介して、支持体46を移動位置決めする。支持体46の下部には、支持ブラケット37を介してホルダ38が支持されている。ホルダ38がACサーボモータM3により第1姿勢位置D1、第2姿勢位置D2、第3姿勢位置D3に位置する構成は、第1実施形態と同様である。
【0064】
ACサーボモータM5、ボールねじ47、支持体46により、第1姿勢位置D1に位置する場合のホルダ38を、変位センサ41〜43の検出感度軸方向Kに並進移動可能とするホルダ移動手段Hが構成されている。
【0065】
又、ACサーボモータM2及びボールねじ36、スライダ33により、第2姿勢位置D2及び第3姿勢位置D3に位置する場合のホルダ38を、変位センサ41〜43の検出感度軸方向Kに並進移動可能とするホルダ移動手段が構成されている。
【0066】
又、図12に示すように、形状測定装置10の制御装置のCPU11は、ドライバ21を介してACサーボモータM5に対する駆動制御により、支持体46をZ軸方向に往復移動可能である。
【0067】
又、CPU11は、変位センサ41〜43の出力信号(すなわち、検出信号)を入力したとき、いずれか1つの出力信号(測定値)が、前回得られた出力信号(測定値)よりも大きく(又は、小さく)て、その差分の絶対値が閾値を越える場合には、その差分の絶対値が閾値内に収まるようにする。
【0068】
具体的には、ホルダ38が第1姿勢位置D1に位置する場合、CPU11は前記差分の絶対値が前記閾値内に収まるように、ACサーボモータM5の駆動量を算出し、その駆動量に基づきACサーボモータM5を駆動してホルダ38をZ軸方向(又は反Z方向)に移動させる。この結果、被測定物の被測定対象面と、ホルダ38(変位センサ41〜43)間の距離がコントロールされる。
【0069】
このようにして、被測定物の被測定対象面が傾斜していたり、測定線Sでの断面形状が曲線であるときは、CPU11はホルダ移動手段Hを移動制御して、前記被測定対象面が変位センサ41〜43のすべての変位センサについて所定の測定範囲内に入るようにする。なお、変位センサ41〜43の測定範囲は同じ測定範囲で測定が可能である。ここで所定の測定範囲とは、被測定物の被測定対象面の変位を変位センサによって最も好適に検出ができる範囲である。
【0070】
又、ホルダ38が第2姿勢位置D2(又は、第3姿勢位置D3)に位置する場合、CPU11は、前記差分の絶対値が前記閾値内に収まるように、ACサーボモータM2の駆動量を算出して、その駆動量に基づきACサーボモータM2を駆動してホルダ38をY軸方向(又は反Y軸方向)に移動させる。この結果、被測定物の被測定対象面と、ホルダ38(変位センサ41〜43)と被測定物間の距離をコントロールされる。このようにして、被測定物の被測定対象面が傾斜していたり、測定線Sでの断面形状が曲線であるときは、CPU11はACサーボモータM2及びボールねじ36、スライダ33からなるホルダ移動手段を駆動して、被測定対象面に追従させる。
【0071】
本実施形態では、CPU11は、制御手段に相当する。
第3実施形態では、下記の特徴がある。
(1) 本実施形態の形状測定装置10は、ホルダ38を、変位センサ41〜43の検出感度軸方向Kに並進移動可能にするホルダ移動手段H等を備えている。又、形状測定装置10は、被測定物の被測定対象面が変位センサ41〜43の所定の測定範囲内に入るようにホルダ移動手段H等を移動制御するCPU11(制御手段)を備える。
【0072】
この結果、CPU11が、ホルダ移動手段H等を移動制御して、ホルダ移動手段Hを変位センサ41〜43の検出感度軸方向に並進移動することにより、被測定物の被測定対象面が変位センサ41〜43の所定の測定範囲内に入るようにすることができる。そして、被測定物の被測定対象面が傾斜していたり、測定線での断面形状が曲線であるときは、CPU11はホルダ移動手段H等を駆動して、被測定対象面に追従させることができる。
【0073】
(第4実施形態)
次に形状測定装置10の第4実施形態を図11及び図12を参照して説明する。
第4実施形態は、第3実施形態の構成において、これから測定する被測定物の被測定対象面の測定線Sにおける、ホルダ38の被測定物に対する相対運動軌跡が記憶装置18に予め格納されている。
【0074】
相対運動軌跡は、テーブル25上に載置した被測定物をX軸方向に定速度で移動させているときに、CPU11がACサーボモータM2,M3,M5を駆動制御する制御周期毎に、ホルダ38を位置させるべき座標(Y,Z)と、その座標に位置させる場合のホルダ38の姿勢(β)を含む。
【0075】
従って、座標(Y,Z)中、Y座標値は前述した測定中にスライダ33が位置するためのACサーボモータM2への指令値となる。又、前記座標(Y,Z)中、Z座標値は、前述した測定中に支持体46が位置するためのACサーボモータM5への指令値となるものである。又、姿勢(β)は、ACサーボモータM3への指令値となる回転角βである。なお、本実施形態では、回転角βには、第1姿勢位置D1,第2姿勢位置D2,第3姿勢位置D3以外に、D1とD2間の任意の回転角、及び第1姿勢位置D1と第3姿勢位置D3間の任意の回転角も含む。
【0076】
測定中における前記制御周期毎の座標(Y,Z)とその座標に位置する場合の姿勢(β)は、被測定物の被測定対象面の測定線Sに沿った形状が概略的に予め測定され、或いは計算されており、第3実施形態と同様に、被測定物の被測定対象面が変位センサ41〜43の所定の測定範囲内に入るように設定されている。なお、所定の測定範囲の趣旨は、第3実施形態と同趣旨である。
【0077】
第4実施形態では、記憶装置18が第1運動軌跡記憶手段に相当する。又、CPU11は、制御手段に相当する。又、第4実施形態においても、ホルダ移動手段H、及びACサーボモータM2及びボールねじ36、スライダ33からなるホルダ移動手段を備える。
【0078】
従って、前記定速度で制御されたテーブル25上の被測定物の被測定対象面に対して測定線Sに沿って測定する際、CPU11は記憶装置18に格納された相対運動軌跡を読出す。そして、CPU11は制御周期毎に、前記相対運動軌跡の座標(Y,Z)とその座標に位置する場合の姿勢(β)に基づいて、ACサーボモータM2,M5,M3に前記指令値を出し、ホルダ38の位置と姿勢を制御する。このとき、被測定物の被測定対象面が変位センサ41〜43の内の全ての変位センサの所定の測定範囲内に入るよう位置することになる。
【0079】
第4実施形態では、下記の特徴がある。
(1) 本実施形態の形状測定装置10は、ホルダ38を、変位センサ41〜43の検出感度軸方向Kに並進移動可能にするホルダ移動手段H等を備える。又、形状測定装置10は、変位センサ41〜43の所定の測定範囲内に入るように、ホルダ38の被測定物との相対運動軌跡を予め記憶する記憶装置18(第1運動軌跡記憶手段)を備える。そして、CPU11(制御手段)は、前記相対運動軌跡に基づいて、ホルダ移動手段H等及び姿勢可変機構KAを制御して、被測定物に対するホルダ38の相対位置及び相対姿勢を変化させ、変位センサ41〜43の所定の測定範囲を維持する。
【0080】
このように、第4実施形態では、CPU11が、相対運動軌跡に基づいて、ホルダ移動手段H等及び姿勢可変機構KAを制御して、被測定物に対するホルダ38の相対位置及び相対姿勢を変化させることにより、変位センサ41〜43の所定の測定範囲を維持できる。
【0081】
(第5実施形態)
次に第5実施形態を図13及び図14を参照して説明する。第5実施形態では、第3実施形態の構成に加えて、さらに、図13に示すようにホルダ38に対して変位センサ44が設けられている。すなわち、変位センサ44は、変位センサ41〜43の配列方向上において、変位センサ43に隣接して配置されている。なお、本実施形態では、変位センサ44の配置は、変位センサ43に隣接した反変位センサ42側に設けられているが、変位センサ41の反変位センサ42側の位置に隣接して配置されていても良い。
【0082】
本実施形態の変位センサ41〜43は、非接触式の変位センサである。又、変位センサ44は、非接触式の変位センサであって、前記変位センサ41〜43の測定範囲よりも広い測定範囲を測定可能である。なお、変位センサ44の分解能は変位センサ41〜43の分解能よりも劣る。
【0083】
図14に示すように形状測定装置10の制御装置のCPU11は、変位センサ44を図示しないA/D変換器を介して接続されており、変位センサ44の出力信号(すなわち、検出信号)を入力する。前記変位センサ41〜43は、それぞれ第1〜第3のプローブに相当する。又、変位センサ44は第4のプローブに相当する。
【0084】
第5実施形態では、これから測定する被測定物の被測定対象面の測定線Sにおける、ホルダ38の被測定物に対する相対運動軌跡が記憶装置18に格納されている。
この相対運動軌跡は、テーブル25上に載置した被測定物をX軸方向に定速度で移動させているときに、変位センサ44で測定することにより得られたものである。そして、該相対運動軌跡は、CPU11がACサーボモータM2,M3,M5を駆動制御する制御周期毎に、ホルダ38を位置させるべき座標(Y,Z)と、その座標に位置させる場合の姿勢(β)を含む。
【0085】
なお、変位センサ44で測定する際に、CPU11は、変位センサ41〜43の全ての変位センサにかかる所定の測定範囲内に被測定対象面を捉えることができるようにすべく、前記ホルダ38の位置するべき座標(Y,Z)と、その座標に位置する場合の姿勢(β)を算出して、記憶装置18に記憶する。
【0086】
そして、実際の測定中(すなわち、変位センサ41〜43での測定中のこと、以下、同じ)には、前記座標(Y,Z)中、Y座標値は前述した変位センサ44による測定中にスライダ33が位置するためのACサーボモータM2への指令値となる。又、前記座標(Y,Z)中、Z座標値は、前述した実際の測定中に支持体46が位置するためのACサーボモータM5への指令値となるものである。又、姿勢(β)は、実際の測定中にACサーボモータM3への指令値となる回転角βである。なお、本実施形態では、第4実施形態と同様に回転角βには、第1姿勢位置D1,第2姿勢位置D2,第3姿勢位置D3以外に、D1とD2間の任意の回転角、及び第1姿勢位置D1と第3姿勢位置D3間の任意の回転角も含む。
【0087】
第5実施形態では、記憶装置18が第2運動軌跡記憶手段に相当する。又、CPU11は、制御手段に相当する。又、第5実施形態においても、ホルダ移動手段H、及びACサーボモータM2及びボールねじ36、スライダ33からなるホルダ移動手段を備える。
【0088】
従って、定速度制御されたテーブル25上の被測定物の被測定対象面における測定線Sに沿って行われる実際の測定では、CPU11は記憶装置18に格納された相対運動軌跡を読出す。そして、CPU11は制御周期毎に、前記相対運動軌跡の座標(Y,Z)とその座標に位置する場合の姿勢(β)に基づいて、ACサーボモータM2,M5,M3に前記指令値を出し、ホルダ38の位置と姿勢を制御する。このとき、被測定物の被測定対象面が変位センサ41〜43のいずれの測定範囲内にも入るようになる。
【0089】
第5実施形態では、下記の特徴がある。
(1) 本実施形態の形状測定装置10は、ホルダ38には、変位センサ41〜43と、変位センサ41〜43よりも測定範囲が広い変位センサ44とを備える。そして、変位センサ44で、変位センサ41〜43の測定範囲に収まるように、被測定物の被測定対象面が予め測定されて、この測定時の被測定対象面に対する相対運動軌跡を記憶する記憶装置18(第2運動軌跡記憶手段)を備える。そして、CPU11(制御手段)は、前記相対運動軌跡に基づいて、ホルダ移動手段H等及び姿勢可変機構KAを制御して、前記被測定物に対するホルダ38の相対位置及び相対姿勢を変化させ、変位センサ41〜43の測定範囲を維持する。この結果、本実施形態では、変位センサ41〜43の測定範囲を維持することができる。特に、逐次3点法で用いられる変位センサ41〜43では分解能を高めるため、所定の測定範囲に制限が生じるが、このことから、長尺の被測定物ではプローブの所定の測定範囲に被測定物の被測定対象面の全長を入れることが可能となる。
【0090】
なお、本発明の実施形態は前記実施形態に限定されるものではなく、下記のように変更しても良い。
○ 第1実施形態では、ホルダ38を、変位センサ41〜43の検出感度軸方向Kが鉛直方向に向く第1姿勢位置D1、Y軸方向に向く第2姿勢位置D2、及び反Y軸方向に向く第3姿勢位置D3の各姿勢位置に位置することを可能としたが、この3つの姿勢位置に限定されるものではない。前記3つの姿勢位置に、さらに、第1姿勢位置D1と第2姿勢位置D2との間の姿勢位置、第1姿勢位置D1と第3姿勢位置D3との間の姿勢位置の少なくともいずれか1つを含む姿勢位置を加えても良い。
【0091】
○ 前記ACサーボモータM1〜M5の代わりにステッピングモータを使用しても良い。
○ 第1実施形態では、第1移動手段をリニアテーブル20にて構成したが、第1移動手段の構成はリニアテーブル20に限定されるものではない。例えば、コラム30を第1移動手段としてX軸方向(第1方向)に移動自在に構成してもよい。又、リニアテーブル20とコラム30の両者により、X軸方向(第1方向)に移動自在に構成することも可能である。
【0092】
○ 第1実施形態では、第2移動手段をACサーボモータM2及びボールねじ36により構成し、姿勢可変機構KAを第2方向(Y軸方向)に移動するようにしたが、支持手段であるテーブル25を第2方向(Y軸方向)に移動するようにしてもよい。例えば、テーブル25をXYテーブルとすることによりこのようにすることは容易に実現できる。又、この場合、テーブル25が第2移動手段に相当する。又、テーブル25と、ACサーボモータM2及びボールねじ36により、姿勢可変機構KAと支持手段であるテーブル25をY軸方向(第2方向)に移動自在に構成してもよい。
【0093】
○ 第1実施形態では、第2移動手段を、ACサーボモータM2及びボールねじ36により構成したが、リニアモータで構成してもよい。
○ 第1実施形態では基準幅直定規100の幅を測定するようにしたが、図15(a)に示すように、テーブル25上面にX軸方向に延びる溝26を形成してもよい。溝26は、図15(a)に示すように、一対の鉛直面27,28及び底面29により、横断面凹状に形成されるとともに、支持ブラケット37及びホルダ38が余裕をもって入る溝の幅を有する。この溝26が形成されている部分が基準幅直定規に相当する。
【0094】
そして、図15(a)に示すように、この溝26内にホルダ38を入れて、第2姿勢位置D2で鉛直面27の形状を測定できるように、すなわち、被測定物の被測定対象面である鉛直面27が前記プローブ41〜43の所定の測定範囲内に入るようにACサーボモータM2を駆動してスライダ33をY方向又は反Y方向に移動させる。なお、ここで所定の測定範囲とは、被測定物の被測定対象面の変位を変位センサによって最も好適に検出ができる範囲である。そして、第2姿勢位置D2で鉛直面27の形状測定をする。
【0095】
鉛直面27の形状測定の終了後、次に、第3姿勢位置D3で、鉛直面28が前記プローブ41〜43の所定の測定範囲内に入るようにACサーボモータM2を駆動してスライダ33をY方向又は反Y方向に移動させる。この後、鉛直面28の形状測定をする。そして、両鉛直面27,28の形状測定結果に基づいて、溝26の溝幅をCPU11が算出する。
【0096】
この算出は、第1実施形態において、基準幅直定規100の幅を算出する場合と同様に行われる。このとき、予めの校正で校正値となって溝26の溝幅が既知となっているとすると、第1実施形態と同様に零点調整誤差を求めることができる。
【0097】
従って、CPU11は、零点調整誤差を求めた後、この零点調整誤差を後の被測定物の断面形状を測定する場合の零点調整誤差補償量として、記憶装置18に格納する。
○ なお、上記のようにテーブル25上面に溝26を設ける代わりに、基準幅直定規100の上面において、一対の鉛直面と両鉛直面を連結する底面とからなる凹状の溝(図示しない)を、X軸方向である長手方向に延出するように形成してもよい。この場合、該溝は支持ブラケット37及びホルダ38が余裕をもって入る溝幅を有する。
【0098】
そして、図15(a)の実施形態と同様に溝の両鉛直面の形状測定を行い、両鉛直面の形状測定結果に基づいて、該溝の溝幅をCPU11が算出する。この算出は、第1実施形態において、基準幅直定規100の幅を算出する場合と同様に行われる。このとき、予めの校正で校正値となって溝の溝幅が既知となっているとすると、第1実施形態と同様に零点調整誤差を求めることができる。
【0099】
従って、CPU11は、零点調整誤差を求めた後、この零点調整誤差を後の被測定物の断面形状を測定する場合の零点調整誤差補償量として、記憶装置18に格納する。
○ 第1実施形態では基準幅直定規100の幅を測定するようにしたが、図15(b),(c)に示すように、テーブル25のY軸方向側の側面25a及び反Y軸方向側の側面25bを鉛直面に形成して、両側面25a,25bを基準幅直定規としてもよい。
【0100】
そして、図15(b)に示すように、第2姿勢位置D2で側面25aの形状測定をするとともに、図15(c)に示すように、第3姿勢位置D3で側面25bの形状測定をし、両側面の形状測定結果に基づいて、テーブル25の幅をCPU11が算出する。この算出は、第1実施形態において、基準幅直定規100の幅を算出する場合と同様に行われる。このとき、予めの校正で校正値となってテーブル25の幅が既知となっているとすると、第1実施形態と同様に零点調整誤差を求めることができる。
【0101】
従って、CPU11は、零点調整誤差を求めた後、この零点調整誤差を後の被測定物の断面形状を測定する場合の零点調整誤差補償量として、記憶装置18に格納する。
○ 第2実施形態では、回転支持体35は、ホルダ38が第1姿勢位置D1に位置する際の変位センサ42の検出感度軸方向Kと同軸となる回転軸線K1の周りで回転可能になっていたが、この構成に限定されるものではない。例えば、ホルダ38が第1姿勢位置D1に位置する際の変位センサ41又は変位センサ43の検出感度軸方向Kと同軸となるように回転軸線K1と一致させて回転軸線K1の周りで回転支持体35が回転可能になっていてもよい。又、ホルダ38が第1姿勢位置D1に位置する際、該ホルダ38における変位センサ41〜43の配列方向に沿った軸線(すなわち、ホルダ38の支持ブラケット37に対する回転軸線)を回転軸線K1が通過する位置でもよい。
【0102】
○ 前記各実施形態において、記憶手段としての記憶装置18に、基準幅直定規100の校正値、又は変位センサ41〜43の零点調整誤差αを記憶するようにしてもよい。記憶装置18に基準幅直定規100の校正値、又は変位センサ41〜43の零点調整誤差αを記憶しておけば、該校正値、又は零点調整誤差αにより、変位センサ41〜43のドリフト(すなわち、熱ドリフト)による零点の変化を補正することが可能となる。
【符号の説明】
【0103】
10…形状測定装置、11…CPU(制御手段)、12…リニアスケール、
18…記憶装置(第1運動軌跡記憶手段、第2運動軌跡記憶手段、記憶手段)、
20…リニアテーブル(第1移動手段)、25…テーブル(支持手段)、
30…コラム、31…脚部、32…梁部、33…スライダ、
34…ガイドレール、37…支持ブラケット、38…ホルダ、
41〜43…変位センサ(プローブ)、
45…減速機構、100…基準幅直定規、100a…側面、
M1,M2,M3,M4,M5…ACサーボモータ、
D1…第1姿勢位置、D2…第2姿勢位置、D3…第3姿勢位置、
KA…姿勢可変機構、K…検出感度軸方向、KB…回転支持機構、
K1…回転軸線、H…ホルダ移動手段。
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状測定装置に関し、特に逐次3点法で大型の被測定物である被測定物の形状測定を行うことができる形状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大型の面形状や、断面直線形状の測定をするためには、基準となる基準直定規との比較測定を実施することが多い。また、基準直定規が使えないときには、反転法や多点法を用いて運動誤差と形状誤差を分離する方法がとられる。
【0003】
測定対象が大型化するのにともない、基準直定規が長尺化し、基準直定規の作成が困難になるだけでなく、高精度の基準直定規の運搬にも困難が生じる。また、大型の基準直定規は使用時の弾性変形、熱変形が基準精度を低下させるなどの問題がある。また、大型の基準直定規は反転によっても、支持位置での摩擦力による弾性変形を生じ、形が定まらない。
【0004】
ところで、多点法においては、センサ間の零点調整誤差に起因する放物線誤差が大きな問題になるため、この零点調整のための種々の方法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−337112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
多点法で使用するセンサ間の零点調整誤差を取り除くために被測定物を反転する必要のない方法が理論的に知られてはいるが、これらを工作機械等の機上でどのように実現するか、或いは工作機械と類似の測定システムでその場で実現する装置は未だ提案されていない。
【0007】
本発明の目的は、上記課題を解決して、長尺大面積の直線形状や、面形状の測定における逐次3点法の零点調整を、工作機械やそれに類似する測定システム上に簡便に実現することができ、反転法と異なり長尺の被測定物の被測定対象面に置き直すことがなく測定ができる形状測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、請求項1の発明は、3つのプローブを保持するホルダと、前記3つのプローブの検出感度軸方向が水平面に含まれるとともに互いに反対方向となる2つの姿勢、及び前記水平面と直交する鉛直方向に向ける姿勢が少なくとも取り得るように前記ホルダを回転自在に支持する姿勢可変機構と、幅又は溝を有して、前記幅又は前記溝の幅の長さ方向の変化(以下、両者を含めて幅真直形状という)が予め校正されて校正値が得られた基準幅直定規と、前記基準幅直定規が着脱自在に設けられ、又は前記基準幅直定規が形成され、前記3つのプローブによる逐次3点法で測定走査できる姿勢で被測定物を載せる支持手段と、前記姿勢可変機構と前記基準幅直定規を備えた前記支持手段の少なくともいずれかを水平面に含まれる第1方向に移動する第1移動手段と、前記姿勢可変機構と前記支持手段の少なくともいずれかを水平面内に含まれるとともに前記第1方向と直交する第2方向に移動する第2移動手段と、を備え、前記基準幅直定規を前記3つのプローブの配列方向を走査方向にして、前記第1移動手段及び第2移動手段のうち、少なくとも第1移動手段の駆動により前記走査方向に走査測定することで得られる幅真直形状と前記基準幅直定規の校正値を比較することで前記3つのプローブの零点調整誤差を算出し、前記被測定物の断面形状を逐次3点法で測定して、前記零点調整誤差に基づいて校正することを特徴とする形状測定装置を要旨とするものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1において、前記ホルダを鉛直軸周りに回転させて、回転された回転位置に保持する回転支持機構を備え、前記回転支持機構により、前記ホルダが前記鉛直軸周りの回転された回転位置に保持された状態のときの前記プローブの配列方向を走査方向にして、前記第1移動手段の駆動により前記走査方向に走査測定することで、被測定物における走査方向に向かう直線に沿う断面形状を測定することを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2において、前記ホルダを、プローブの検出感度軸方向に並進移動可能にするホルダ移動手段と、被測定物の被測定対象面が前記プローブの所定の測定範囲内に入るように前記ホルダ移動手段を移動制御する制御手段を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1又は請求項2において、前記ホルダを、前記プローブの検出感度軸方向に並進移動可能にするホルダ移動手段と、前記プローブの所定の測定範囲内に入るように、前記ホルダの被測定物との相対運動軌跡を予め記憶する第1運動軌跡記憶手段と、前記相対運動軌跡に基づいて、前記ホルダ移動手段及び前記姿勢可変機構を制御して、前記被測定物に対する前記ホルダの相対位置及び相対姿勢を変化させ、前記プローブの所定の測定範囲を維持する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、請求項3において、前記ホルダに設けられ、前記3つのプローブを第1〜第3のプローブとしたとき、第1〜第3のプローブよりも測定範囲が広い第4のプローブと、該第4のプローブで、前記第1〜第3のプローブの測定範囲に収まるように、被測定物の被測定対象面が予め測定されて、この測定時の被測定対象面に対する相対運動軌跡を記憶する第2運動軌跡記憶手段と、前記相対運動軌跡に基づいて、前記ホルダ移動手段及び前記姿勢可変機構を制御して、前記被測定物に対する前記ホルダの相対位置及び相対姿勢を変化させ、前記第1〜第3のプローブの測定範囲を維持する制御手段を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1乃至請求項5のうちいずれか1項において、前記基準幅直定規の校正値、又は前記3つのプローブの零点調整誤差を記憶する記憶手段を備え、該記憶手段に記憶した前記校正値、又は零点調整誤差により、前記3つのプローブのドリフトによる零点の変化を補正可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1乃至請求項6の発明によれば、長尺大面積の直線形状や、面形状の測定における逐次3点法の零点調整を工作機械や、それに類似する測定システム上に簡便に実現することができ、反転法と異なり長尺の被測定物の被測定対象面を置き直すことがなく測定ができる形状測定装置を提供できる。
【0015】
請求項2の発明によれば、回転支持機構により、ホルダが鉛直軸周りで回転された回転位置に保持された状態において、被測定物における走査方向に向かう直線に沿った断面形状の測定が可能となる。
【0016】
請求項3の発明によれば、制御手段が、ホルダ移動手段を移動制御して、ホルダをプローブの検出感度軸方向に並進移動することにより、被測定物の被測定対象面が前記プローブの所定の測定範囲内に入るようにすることができる。そして、被測定物の被測定対象面が傾斜していたり、測定線での断面形状が曲線であるときは、制御手段はホルダ移動手段を駆動して、被測定対象面に追従させることができる。
【0017】
請求項4の発明によれば、制御手段が、相対運動軌跡に基づいて、ホルダ移動手段及び前記姿勢可変機構を制御して、被測定物に対するホルダの相対位置及び相対姿勢を変化させることにより、プローブの所定の測定範囲を維持することができる。
【0018】
請求項5の発明によれば、制御手段が、第1〜第3のプローブよりも測定範囲が広い第4のプローブで予め測定した被測定物の測定対象面に対する相対運動軌跡に基づいて、ホルダ移動手段を制御して、前記被測定物に対する前記ホルダの相対位置を変化させることにより、第1〜第3プローブの測定範囲を維持することができる。特に、逐次3点法で用いられるプローブは分解能を高めるため、所定の測定範囲に制限が生じるが、このことから、長尺の被測定物ではプローブの所定の測定範囲に被測定物の被測定対象面の全長を入れることが可能となる。
【0019】
請求項6の発明によれば、記憶手段に記憶した基準幅直定規の校正値、又は零点調整誤差により、3つのプローブのドリフトによる零点の変化を補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を具体化した第1実施形態の形状測定装置の全体概略斜視図。
【図2】同じく作用を示す形状測定装置の全体概略斜視図。
【図3】同じく図4のA−A線断面図。
【図4】同じく姿勢可変機構の正面図。
【図5】同じく形状測定装置10の電気的構成のブロック図。
【図6】逐次3点法の零点調整法の原理を説明するための説明図。
【図7】第2実施形態における回転支持機構KB及び周辺部分の概略説明図であり、第1実施形態の図3に相当する図。
【図8】同じく測定線Sの説明図。
【図9】同じく形状測定装置10の電気的構成のブロック図。
【図10】同じく回転角θの説明図。
【図11】第3、及び第4実施形態におけるスライダ33、支持体46、及びホルダ38及びその周辺の概略図。
【図12】同じく形状測定装置10の電気的構成のブロック図。
【図13】第5実施形態の図11相当図。
【図14】同じく第5実施形態の形状測定装置10の電気的構成のブロック図。
【図15】(a)〜(c)は、他の実施形態の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態の形状測定装置を図1〜図6を参照して説明する。
【0022】
形状測定装置10は、リニアテーブル20、及び、門形のコラム30を備えている。リニアテーブル20は、ACサーボモータM1(図5参照)の回転を図示しないボールねじを介してテーブル25を直線移動させる。テーブル25上面は、水平面とされており、テーブル25の移動方向(本実施形態では、図1に示すX軸方向)に沿うように長尺であって、四角柱状をなす基準幅直定規100、及び被測定物(図示しない)が、テーブル25に設けられた図示しない電磁チャックにより取付け取り外し可能に載置可能である(図1、図2参照)。テーブル25は、支持手段に相当し、リニアテーブル20はテーブル25を走査方向(すなわち、X軸方向)に移動する第1移動手段に相当する。X軸方向は第1方向に相当する。又、基準幅直定規100の横断面形状は、正方形、或いは、長方形であることが好ましい。
【0023】
本実施形態では、基準幅直定規100の側面100aは、テーブル25上面に対して垂直となるように配置され、重力方向に向かないように配置されている。
コラム30は、一対の脚部31及び両脚部31の上部間に梁渡された梁部32からなる。梁部32の下面には、図4、図5に示すように、Y軸方向に延びる一対のガイドレール34が設けられている。スライダ33は、エンコーダ付きACサーボモータM2(図5参照)に作動連結されたボールねじ36(図3、4参照)の回転により、前記ガイドレール34にて沿って移動され、すなわち、Y軸方向に往復移動自在となっている。Y軸方向は第2方向に相当する。
【0024】
ACサーボモータM2及びボールねじ36により、第2移動手段が構成されている。
スライダ33の下部には、支持ブラケット37を介して、ホルダ38がX軸周りで回動自在に支持されている。ホルダ38は、等間隔にX軸方向に併設されたプローブとしての3個の変位センサ41〜43を保持する。
【0025】
ホルダ38は、支持ブラケット37に固定されたエンコーダ付きACサーボモータM3(図4参照)の回転駆動及び保持により、図3に示す変位センサ41〜43が鉛直方向に向く位置、変位センサ41〜43がY軸方向及び反Y軸方向にそれぞれ向く位置の3位置の姿勢を取り得ることが可能である。すなわち、ホルダ38は、図3に示すように変位センサ41〜43の検出感度軸方向KがZ軸方向と同方向の鉛直方向に向く第1姿勢位置D1、及び、前記Z軸に直交する水平面内に含まれるように検出感度軸方向Kが互いに反対方向に向く第2姿勢位置D2、第3姿勢位置D3の各姿勢位置に位置することが可能である。すなわち、第2姿勢位置D2と第3姿勢位置D3では、変位センサ41〜43の検出感度軸方向Kが共通の水平面に含まれるとともに互いに180°反対方向になる。
【0026】
本実施形態では、第2姿勢位置D2では、検出感度軸方向KがY軸方向に向き、第3姿勢位置D3では、検出感度軸方向Kが反Y軸方向に向く。
なお、ACサーボモータM3の図示しない出力軸とホルダ38とを作動連結する機構(図示しない)には、減速機構45が含まれる。前記ACサーボモータM3及びACサーボモータM3の回転駆動をホルダ38に伝達する減速機構45により、姿勢可変機構KAが構成されている。
【0027】
変位センサ41〜43は、テーブル25の移動方向に沿って一列に並ぶように、且つ、等間隔d離間して配置されており(図4参照)、基準幅直定規100の側面100a、或いは被測定物(図示しない)の側面に対向して離間配置される。本実施形態では、前記変位センサ41〜43は、非接触式のセンサであって、静電容量型センサからなる。なお、変位センサは、非接触式や、静電容量型センサに限定されるものではなく、接触式でもよく、或いは、非接触式の場合、静電容量型センサに代えて、例えば、光学センサとしてもよい。
【0028】
(形状測定装置10の電気的構成)
形状測定装置10の制御装置の電気的構成について説明すると、図5に示すように形状測定装置10の制御装置は、コンピュータからなるCPU(中央処理装置)11を備えている。CPU11は,変位センサ41〜43を図示しないA/D変換器を介して接続されており、各センサの出力信号(すなわち、検出信号)を入力する。CPU11は、各種処理プログラム等を格納するROM(図示しない)を備えており、該プログラムに従って各種の演算処理を行う。
【0029】
リニアスケール12は、テーブル25が移動する際に、テーブル移動を検出するためのものであり、テーブル移動に応じたパルス信号を、CPU11が備える図示しないパルスカウンタに入力する。前記パルスカウンタは入力したパルス信号をカウントし、CPU11は、そのカウント値に基づいてテーブル25の移動量を検出する。
【0030】
CPU11は、ドライバ15を介して、ACサーボモータM1に対する駆動制御により、テーブル25の定速度制御が可能である。そして、本実施形態では、リニアスケール12によるテーブル25の移動量の検出に基づいて、テーブル25が、図1、図4、図6に示すX軸方向に一定距離D(=d)で移動する毎に、CPU11は、変位センサ41〜43からの出力信号を取り込んで、演算処理等を行うようにしている。
【0031】
又、CPU11は、ドライバ16を介してACサーボモータM2に対する駆動制御により、スライダ33を移動して、ホルダ38を図1に示す位置(以下、第1測定位置という)と、図2に示す位置(以下、第2測定位置という)に位置させることが可能である。第1測定位置は、基準幅直定規100又は被測定物のY軸方向に向く面の形状測定を行う位置である。又、第2測定位置は、すなわち、側面100a又は被測定物の反Y軸方向に向く面の形状測定を行う位置である。
【0032】
又、CPU11は、ドライバ17を介してACサーボモータM3に対する駆動制御により、ホルダ38を回転させて第1姿勢位置D1、第2姿勢位置D2、第3姿勢位置D3のいずれかの姿勢を取らせることが可能である。本実施形態では、ホルダ38は第1測定位置に位置する際に、第3姿勢位置D3の姿勢位置となり、第2測定位置に位置する際に、第2姿勢位置の姿勢位置となる。
【0033】
(実施形態の作用)
次に、上記のように構成された形状測定装置10を使用して行う逐次3点法について説明する。図6は、本実施形態で利用する逐次3点法の零点調整法の原理を説明するための説明図である。
【0034】
この逐次3点法の零点調整法では、幅真直形状が既知の基準幅直定規100の幅を形成する2面のそれぞれについて、変位センサ41〜43の検出感度軸方向の向きを180度反対方向に切り換える姿勢可変機構KA(図4参照)を使用して測定をする。
【0035】
まず、図1に示すように、形状測定装置10の制御装置のCPU11は、ACサーボモータM2を駆動して、スライダ33を移動させてホルダ38を第1測定位置に位置させ、かつ、ACサーボモータM3を駆動して、ホルダ38を第3姿勢位置D3に位置させる。この状態において、基準幅直定規100の一方の面(側面100a)の形状測定を行う。この形状測定は、CPU11によってACサーボモータM1の駆動制御が行われ、テーブル25が、図1、図6に示すX軸方向(すなわち、走査方向)に一定距離D(=d)で移動する毎に、CPU11は、変位センサ41〜43からの出力信号を取り込むことにより行われる。このようにして、得られた出力信号(すなわち、測定値)は、CPU11に接続された記憶装置18に格納される。
【0036】
前述した基準幅直定規100の一方の面(側面100a)の形状測定は、基準幅直定規100と3つの変位センサ41〜43が並ぶ方向、すなわち、配列方向を走査方向として、逐次測定する3点法によって行われ、一方の面(側面100a)の形状に関する測定結果は、次式で表わされる。
【0037】
すなわち、間隔dで配置された3つの変位センサ41〜43の出力をm1(x)、m2(x)、m3(x)とし、一方の面(側面100a)の形状をf(x)、走査運動のZ軸方向並進誤差をez(x)、ピッチング誤差をep(x)とすると、m1(x)、m2(x)、m3(x)は次式で与えられる。
【0038】
m1(x)=f(x−d)+ez(x)−ep(x)d ……(1)
m2(x)=f(x)+ez(x)+α ……(2)
m3(x)=f(x+d)+ez(x)+ep(x)d ……(3)
ただし、αは、変位センサ41及び変位センサ43の取付け位置が同じとし、変位センサ41を基準としたときの変位センサ42の零点調整誤差である。
【0039】
ここで隣り合う変位センサの出力差を求めると、一階の差分として、次式(4)、式(5)を得る。
Δm12(x)=f(x)−f(x−d)+α+ep(x)d ……(4)
Δm23(x)=f(x+d)−f(x)−α+ep(x)d ……(5)
式(5)−式(4)により、ep(x)dの項を消去して2回の差分を得る。
【0040】
Δμf(x)=f(x+d)−2f(x)+f(x−d)−2α ……(6)
ここで、Δμf(x)は、式(5)−式(4)により得られた2回の差分値である。
次に、CPU11は、ACサーボモータM1の駆動制御が行われ、テーブル25を反X軸方向に移動させて、基準幅直定規100がホルダ38と干渉しない位置に退避させる。この状態で、図2に示すように、形状測定装置10の制御装置のCPU11は、ACサーボモータM2を駆動して、スライダ33を移動させてホルダ38を第2測定位置に位置させ、かつ、ACサーボモータM3を駆動して、ホルダ38を第2姿勢位置D2に位置させる。
【0041】
そして、この状態において、基準幅直定規100の他方の面(すなわち、側面100aとは反対側であって、反Y側に向く面)の形状測定を行う。この形状測定は、CPU11によってACサーボモータM1の駆動制御が行われ、テーブル25が、図1、図6に示すX軸方向(すなわち、走査方向)に一定距離D(=d)で移動する毎に、CPU11は、変位センサ41〜43からの出力信号を取り込むことにより行われる。このようにして、得られた出力信号(すなわち、測定値)は、CPU11に接続された記憶装置18に格納される。
【0042】
この基準幅直定規100の他方の面の形状についても、逐次測定する3点法によって、得られた測定結果に基づき、走査運動時のピッチング誤差の項を消去すると、式(7)に示す2回の差分を得る。
【0043】
Δμg(x)=g(x+d)−2g(x)+g(x−d)−2α ……(7)
なお、g(x)は、基準幅直定規100の他方の面の形状を表わし、Δμg(x)は、前述したΔμf(x)に相当する基準幅直定規100の他方の面の形状における2回の差分値である。
【0044】
上記の式(6)、式(7)に示す2回の差分値から、CPU11は積分或いは逐次和の算出を行うことにより、前記基準幅直定規100の両面の形状を求める。
又、基準幅直定規100の両面の形状の測定結果から得られる、幅の長さ方向の変化、すなわち、幅真直形状は、両面の測定結果の和であり、幅真直形状W(x)は次式(8)のようになり、零点調整誤差αに起因する放物線誤差を含む。
【0045】
W(x)=f(x)+g(x)−2αx2 ……(8)
ただし、αは変位センサ(プローブ)の零点調整誤差であり、前記両面の測定中は、不変とする。又、両面の一次の傾斜は、取り除いて表わしている。又、基準幅直定規100の形状{f(x)+g(x)}は予めの構成で校正された校正値となって既知となっているため、CPU11は、基準幅直定規100の全長をLとして、零点調整誤差αは次のように求める。
【0046】
α={f(x)+g(x)−W(x)}/(2L2) ……(9)
なお、式(9)は、式(8)からの変形である。
上記のようにして、CPU11は、零点調整誤差αを求めた後、この零点調整誤差αを後の被測定物の断面形状を測定する場合の零点調整誤差補償量として、記憶装置18に格納する。
【0047】
そして、電磁チャック(図示しない)を開放してテーブル25から基準幅直定規100を外し、新たにテーブル25上に前記電磁チャックにより被測定物(図示しない)を保持し、該被測定物の断面形状を逐次三点法で測定する。この場合、被測定物の断面形状が、上方を向いている面、例えば鉛直方向に直交する水平面である場合には、CPU11は、ホルダ38を第1姿勢位置D1(図3参照)にして、測定を行う。この場合の測定結果を、CPU11は、前記得られた零点調整誤差補償量により校正する。
【0048】
又、被測定物(図示しない)の断面形状(測定対象の面)が鉛直面であって、該鉛直面が基準幅直定規100の側面100aと同様にY軸方向に向いている場合には、ホルダ38を第1測定位置に位置させるとともにホルダ38を第3姿勢位置D3の姿勢にして測定を行う。この場合の測定結果も、CPU11は、前記得られた零点調整誤差補償量により校正する。
【0049】
又、被測定物(図示しない)の断面形状(測定対象の面)が鉛直面であって、該鉛直面が基準幅直定規100の側面100aとは反対の反Y軸方向に向いている場合には、ホルダ38を第2測定位置に位置させるとともにホルダ38を第2姿勢位置D2の姿勢にして測定を行う。この場合の測定結果も、CPU11は、前記得られた零点調整誤差補償量により校正する。
【0050】
本実施形態では、下記の特徴を有する。
(1) 本実施形態の形状測定装置10は、変位センサ41〜43の検出感度軸方向Kが水平面に含まれるとともに互いに反対方向となる第2姿勢位置D2及び第3姿勢位置D3、及び水平面と直交する鉛直方向に向ける第1姿勢位置D1を取り得るようにホルダ38を回転自在に支持する姿勢可変機構KAを備える。又、形状測定装置10は、幅の長さ方向の変化(幅真直形状)が予め校正されて校正値が得られた基準幅直定規100と、前記基準幅直定規100が着脱自在に設けられ、変位センサ41〜43による逐次3点法で測定走査できる姿勢で被測定物を載せるテーブル25(支持手段)を備える。又、形状測定装置10は、基準幅直定規100を備えたテーブル25(支持手段)を水平面に含まれる第1方向(X軸方向)に移動するリニアテーブル20(第1移動手段)と、姿勢可変機構KAを水平面に含まれるとともに第1方向と直交する第2方向に移動するACサーボモータM2及びボールねじ36(第2移動手段)を備える。そして、形状測定装置10は基準幅直定規100を変位センサ41〜43の配列方向を走査方向として、該走査方向(X軸方向)に走査測定することで得られる幅真直形状と基準幅直定規100の校正値を比較することで変位センサ41〜43の零点調整誤差αを算出し、被測定物の断面形状を逐次3点法で測定して零点調整誤差αに基づいて校正する。
【0051】
この結果、長尺大面積の直線形状や、面形状の測定における逐次3点法の零点調整を工作機械や、それに類似する測定システム上に簡便に実現することができ、反転法と異なり長尺の被測定物の被測定対象面を置き直すことがなく測定ができる。
【0052】
(第2実施形態)
次に第2実施形態を図7〜図10を参照して説明する。なお、本実施形態を含めた以下の実施形態では、第1実施形態で説明した構成に相当する構成については、第1実施形態と同一符号を付してその説明を省略し、異なる構成について説明する。第1実施形態では、ホルダ38をスライダ33に対して支持ブラケット37を介して支持した。それに対して、第2実施形態では、図7に示すようにスライダ33の下部に、回転支持体35が鉛直方向に向かうZ軸(すなわち、鉛直軸)の周りで回転自在に支持され、該回転支持体35に対してホルダ38が支持ブラケット37を介して支持されているところが異なっている。
【0053】
又、ホルダ38には変位センサ41〜43の検出感度軸方向Kが鉛直方向に向く第1姿勢位置D1、及び、前記Z軸に直交する水平面内に含まれるように検出感度軸方向Kが互いに反対方向に向く第2姿勢位置D2、第3姿勢位置D3の各姿勢位置に位置することが可能である(図7参照)。
【0054】
前記回転支持体35は、ホルダ38が第1姿勢位置D1に位置する際の変位センサ42の検出感度軸方向Kと同軸となる回転軸線K1の周りで回転可能になっており、スライダ33内に設けられたエンコーダ付きACサーボモータM4により図示しない減速機構を介して回転駆動される。前記回転支持体35を支持するスライダ33及びACサーボモータM4、減速機構(図示しない)により、回転支持機構KBが構成されている。
【0055】
形状測定装置10の制御装置のCPU11は、図9に示すようにドライバ19を介してACサーボモータM4に対する駆動制御により、回転支持体35を回転させて回転された回転位置に位置させることが可能である。このときの回転角をθ(0°<θ<360°)とする。なお、本実施形態では、回転角θは図10に示すように、X軸方向を基準とした時計回り方向の回転のときの角度を正の値とする。
【0056】
上記形状測定装置10では、零点調整は、第1実施形態と同様に行われる。すなわち、テーブル25には第1実施形態と同様に基準幅直定規100が取付けされる。そして、変位センサ41〜43の配列方向をX軸方向に一致させた状態で、第1実施形態と同様にホルダ38の姿勢を第1測定位置では第3姿勢位置D3とし、第2測定位置では第2姿勢位置D2にした状態で基準幅直定規100の両面の形状がそれぞれ測定され、その結果に基づいて、零点調整誤差αが求められる。そして、得られた零点調整誤差αは後の被測定物の断面形状を測定する場合の零点調整誤差補償量として、記憶装置18に格納される。
【0057】
次に、電磁チャック(図示しない)を開放してテーブル25から基準幅直定規100を外し、新たにテーブル25上に前記電磁チャックにより図8に示すように被測定物50を保持し、該被測定物50の断面形状を逐次三点法で測定する。この場合、第1実施形態と異なり、本実施形態では、被測定物50の上面において、X軸方向から回転角θでずらした直線(以下、測定線Sという。図8参照)上の該被測定物50の断面形状を測定するものとする。この測定線Sの延びる方向は、変位センサ41〜43の配列方向と一致し、後述するCPU11の変位センサ41〜43の走査方向と一致する。
【0058】
この場合、図10に示すように、CPU11は、ACサーボモータM4を駆動して回転支持体35を回転角θ分回転させて位置させる。又、この場合、CPU11は、ACサーボモータM3を駆動制御してホルダ38を第1姿勢位置D1(図7参照)にして測定を行う。そして、CPU11は、ACサーボモータM1に対してd・cosθ分の移動量で駆動する毎に、ACサーボモータM2に対してd・sinθ分の移動量となるように駆動するようにして、それぞれACサーボモータM1,ACサーボモータM2に対して定速度制御する。このように、CPU11は、ACサーボモータM1,ACサーボモータM2を駆動制御することにより、変位センサ41〜43の配列方向と走査方向とを一致させる。
【0059】
そして、リニアスケール12が、d・cosθ分検出する毎に、すなわち、ホルダ38が被測定物50に対して測定線S上を相対的にd分移動する毎に、CPU11は、変位センサ41〜43からの出力信号を取り込みして、演算処理を行い、測定線Sでの該被測定物50の断面形状の測定を行う。この場合の測定結果を、CPU11は、前記得られた零点調整誤差補償量により校正する。
【0060】
第2実施形態では、下記の特徴がある。
(1) 第2実施形態の形状測定装置10は、ホルダ38を鉛直軸(Z軸)周りに回転させて、回転された回転位置に保持する回転支持機構KBを備えている。又、形状測定装置10は、回転支持機構KBによりホルダ38が鉛直軸周りの回転された回転位置に保持された状態のときの変位センサ41〜43の配列方向を走査方向にする。すなわち、CPU11はリニアテーブル20(第1移動手段)及びACサーボモータM2及びボールねじ36(第2移動手段)の駆動制御により前記走査方向に走査して、被測定物50の測定線S(被測定物50における走査方向に向かう直線)に沿う断面形状を測定する。
【0061】
この結果、第2実施形態では、回転支持機構KBにより、ホルダ38が鉛直軸周りで回転された回転位置に保持された状態において、被測定物50における走査方向に向かう直線に沿った断面形状の測定ができる。
【0062】
(第3実施形態)
次に第3実施形態を図11及び図12を参照して説明する。第3実施形態では、第1実施形態の構成中、スライダ33の取付け構成及び該スライダ33に対するホルダ38の取付け構成が異なっている。すなわち、第1実施形態では、一対のガイドレール34は梁部32下面に設けられていたが、第3実施形態では、一対のガイドレール34は梁部32のX軸方向に向く側面に対してY軸方向に延びるように設けられている。そして、スライダ33は、ACサーボモータM2(図12参照)に作動連結されたボールねじ36(図11参照)が回転することにより、前記ガイドレール34にて沿って移動され、すなわち、Y軸方向に往復移動自在となっている。本実施形態において、ACサーボモータM2及びボールねじ36により、第2移動手段が構成されている。
【0063】
スライダ33の側面には、Z軸方向に沿って2本のZ軸方向案内面39が形成されている。Z軸方向案内面39には、支持体46がZ軸方向へ往復摺動自在に配置されている。支持体46には、スライダ33のZ軸方向に沿って設けられたボールねじ47と螺合するナット48が取付けられている。スライダ33には、前記ボールねじ47を回転駆動するエンコーダ付きACサーボモータM5が設けられている。前記図示しないNC装置は、ACサーボモータM5を制御回転することにより、ボールねじ47を介して、支持体46を移動位置決めする。支持体46の下部には、支持ブラケット37を介してホルダ38が支持されている。ホルダ38がACサーボモータM3により第1姿勢位置D1、第2姿勢位置D2、第3姿勢位置D3に位置する構成は、第1実施形態と同様である。
【0064】
ACサーボモータM5、ボールねじ47、支持体46により、第1姿勢位置D1に位置する場合のホルダ38を、変位センサ41〜43の検出感度軸方向Kに並進移動可能とするホルダ移動手段Hが構成されている。
【0065】
又、ACサーボモータM2及びボールねじ36、スライダ33により、第2姿勢位置D2及び第3姿勢位置D3に位置する場合のホルダ38を、変位センサ41〜43の検出感度軸方向Kに並進移動可能とするホルダ移動手段が構成されている。
【0066】
又、図12に示すように、形状測定装置10の制御装置のCPU11は、ドライバ21を介してACサーボモータM5に対する駆動制御により、支持体46をZ軸方向に往復移動可能である。
【0067】
又、CPU11は、変位センサ41〜43の出力信号(すなわち、検出信号)を入力したとき、いずれか1つの出力信号(測定値)が、前回得られた出力信号(測定値)よりも大きく(又は、小さく)て、その差分の絶対値が閾値を越える場合には、その差分の絶対値が閾値内に収まるようにする。
【0068】
具体的には、ホルダ38が第1姿勢位置D1に位置する場合、CPU11は前記差分の絶対値が前記閾値内に収まるように、ACサーボモータM5の駆動量を算出し、その駆動量に基づきACサーボモータM5を駆動してホルダ38をZ軸方向(又は反Z方向)に移動させる。この結果、被測定物の被測定対象面と、ホルダ38(変位センサ41〜43)間の距離がコントロールされる。
【0069】
このようにして、被測定物の被測定対象面が傾斜していたり、測定線Sでの断面形状が曲線であるときは、CPU11はホルダ移動手段Hを移動制御して、前記被測定対象面が変位センサ41〜43のすべての変位センサについて所定の測定範囲内に入るようにする。なお、変位センサ41〜43の測定範囲は同じ測定範囲で測定が可能である。ここで所定の測定範囲とは、被測定物の被測定対象面の変位を変位センサによって最も好適に検出ができる範囲である。
【0070】
又、ホルダ38が第2姿勢位置D2(又は、第3姿勢位置D3)に位置する場合、CPU11は、前記差分の絶対値が前記閾値内に収まるように、ACサーボモータM2の駆動量を算出して、その駆動量に基づきACサーボモータM2を駆動してホルダ38をY軸方向(又は反Y軸方向)に移動させる。この結果、被測定物の被測定対象面と、ホルダ38(変位センサ41〜43)と被測定物間の距離をコントロールされる。このようにして、被測定物の被測定対象面が傾斜していたり、測定線Sでの断面形状が曲線であるときは、CPU11はACサーボモータM2及びボールねじ36、スライダ33からなるホルダ移動手段を駆動して、被測定対象面に追従させる。
【0071】
本実施形態では、CPU11は、制御手段に相当する。
第3実施形態では、下記の特徴がある。
(1) 本実施形態の形状測定装置10は、ホルダ38を、変位センサ41〜43の検出感度軸方向Kに並進移動可能にするホルダ移動手段H等を備えている。又、形状測定装置10は、被測定物の被測定対象面が変位センサ41〜43の所定の測定範囲内に入るようにホルダ移動手段H等を移動制御するCPU11(制御手段)を備える。
【0072】
この結果、CPU11が、ホルダ移動手段H等を移動制御して、ホルダ移動手段Hを変位センサ41〜43の検出感度軸方向に並進移動することにより、被測定物の被測定対象面が変位センサ41〜43の所定の測定範囲内に入るようにすることができる。そして、被測定物の被測定対象面が傾斜していたり、測定線での断面形状が曲線であるときは、CPU11はホルダ移動手段H等を駆動して、被測定対象面に追従させることができる。
【0073】
(第4実施形態)
次に形状測定装置10の第4実施形態を図11及び図12を参照して説明する。
第4実施形態は、第3実施形態の構成において、これから測定する被測定物の被測定対象面の測定線Sにおける、ホルダ38の被測定物に対する相対運動軌跡が記憶装置18に予め格納されている。
【0074】
相対運動軌跡は、テーブル25上に載置した被測定物をX軸方向に定速度で移動させているときに、CPU11がACサーボモータM2,M3,M5を駆動制御する制御周期毎に、ホルダ38を位置させるべき座標(Y,Z)と、その座標に位置させる場合のホルダ38の姿勢(β)を含む。
【0075】
従って、座標(Y,Z)中、Y座標値は前述した測定中にスライダ33が位置するためのACサーボモータM2への指令値となる。又、前記座標(Y,Z)中、Z座標値は、前述した測定中に支持体46が位置するためのACサーボモータM5への指令値となるものである。又、姿勢(β)は、ACサーボモータM3への指令値となる回転角βである。なお、本実施形態では、回転角βには、第1姿勢位置D1,第2姿勢位置D2,第3姿勢位置D3以外に、D1とD2間の任意の回転角、及び第1姿勢位置D1と第3姿勢位置D3間の任意の回転角も含む。
【0076】
測定中における前記制御周期毎の座標(Y,Z)とその座標に位置する場合の姿勢(β)は、被測定物の被測定対象面の測定線Sに沿った形状が概略的に予め測定され、或いは計算されており、第3実施形態と同様に、被測定物の被測定対象面が変位センサ41〜43の所定の測定範囲内に入るように設定されている。なお、所定の測定範囲の趣旨は、第3実施形態と同趣旨である。
【0077】
第4実施形態では、記憶装置18が第1運動軌跡記憶手段に相当する。又、CPU11は、制御手段に相当する。又、第4実施形態においても、ホルダ移動手段H、及びACサーボモータM2及びボールねじ36、スライダ33からなるホルダ移動手段を備える。
【0078】
従って、前記定速度で制御されたテーブル25上の被測定物の被測定対象面に対して測定線Sに沿って測定する際、CPU11は記憶装置18に格納された相対運動軌跡を読出す。そして、CPU11は制御周期毎に、前記相対運動軌跡の座標(Y,Z)とその座標に位置する場合の姿勢(β)に基づいて、ACサーボモータM2,M5,M3に前記指令値を出し、ホルダ38の位置と姿勢を制御する。このとき、被測定物の被測定対象面が変位センサ41〜43の内の全ての変位センサの所定の測定範囲内に入るよう位置することになる。
【0079】
第4実施形態では、下記の特徴がある。
(1) 本実施形態の形状測定装置10は、ホルダ38を、変位センサ41〜43の検出感度軸方向Kに並進移動可能にするホルダ移動手段H等を備える。又、形状測定装置10は、変位センサ41〜43の所定の測定範囲内に入るように、ホルダ38の被測定物との相対運動軌跡を予め記憶する記憶装置18(第1運動軌跡記憶手段)を備える。そして、CPU11(制御手段)は、前記相対運動軌跡に基づいて、ホルダ移動手段H等及び姿勢可変機構KAを制御して、被測定物に対するホルダ38の相対位置及び相対姿勢を変化させ、変位センサ41〜43の所定の測定範囲を維持する。
【0080】
このように、第4実施形態では、CPU11が、相対運動軌跡に基づいて、ホルダ移動手段H等及び姿勢可変機構KAを制御して、被測定物に対するホルダ38の相対位置及び相対姿勢を変化させることにより、変位センサ41〜43の所定の測定範囲を維持できる。
【0081】
(第5実施形態)
次に第5実施形態を図13及び図14を参照して説明する。第5実施形態では、第3実施形態の構成に加えて、さらに、図13に示すようにホルダ38に対して変位センサ44が設けられている。すなわち、変位センサ44は、変位センサ41〜43の配列方向上において、変位センサ43に隣接して配置されている。なお、本実施形態では、変位センサ44の配置は、変位センサ43に隣接した反変位センサ42側に設けられているが、変位センサ41の反変位センサ42側の位置に隣接して配置されていても良い。
【0082】
本実施形態の変位センサ41〜43は、非接触式の変位センサである。又、変位センサ44は、非接触式の変位センサであって、前記変位センサ41〜43の測定範囲よりも広い測定範囲を測定可能である。なお、変位センサ44の分解能は変位センサ41〜43の分解能よりも劣る。
【0083】
図14に示すように形状測定装置10の制御装置のCPU11は、変位センサ44を図示しないA/D変換器を介して接続されており、変位センサ44の出力信号(すなわち、検出信号)を入力する。前記変位センサ41〜43は、それぞれ第1〜第3のプローブに相当する。又、変位センサ44は第4のプローブに相当する。
【0084】
第5実施形態では、これから測定する被測定物の被測定対象面の測定線Sにおける、ホルダ38の被測定物に対する相対運動軌跡が記憶装置18に格納されている。
この相対運動軌跡は、テーブル25上に載置した被測定物をX軸方向に定速度で移動させているときに、変位センサ44で測定することにより得られたものである。そして、該相対運動軌跡は、CPU11がACサーボモータM2,M3,M5を駆動制御する制御周期毎に、ホルダ38を位置させるべき座標(Y,Z)と、その座標に位置させる場合の姿勢(β)を含む。
【0085】
なお、変位センサ44で測定する際に、CPU11は、変位センサ41〜43の全ての変位センサにかかる所定の測定範囲内に被測定対象面を捉えることができるようにすべく、前記ホルダ38の位置するべき座標(Y,Z)と、その座標に位置する場合の姿勢(β)を算出して、記憶装置18に記憶する。
【0086】
そして、実際の測定中(すなわち、変位センサ41〜43での測定中のこと、以下、同じ)には、前記座標(Y,Z)中、Y座標値は前述した変位センサ44による測定中にスライダ33が位置するためのACサーボモータM2への指令値となる。又、前記座標(Y,Z)中、Z座標値は、前述した実際の測定中に支持体46が位置するためのACサーボモータM5への指令値となるものである。又、姿勢(β)は、実際の測定中にACサーボモータM3への指令値となる回転角βである。なお、本実施形態では、第4実施形態と同様に回転角βには、第1姿勢位置D1,第2姿勢位置D2,第3姿勢位置D3以外に、D1とD2間の任意の回転角、及び第1姿勢位置D1と第3姿勢位置D3間の任意の回転角も含む。
【0087】
第5実施形態では、記憶装置18が第2運動軌跡記憶手段に相当する。又、CPU11は、制御手段に相当する。又、第5実施形態においても、ホルダ移動手段H、及びACサーボモータM2及びボールねじ36、スライダ33からなるホルダ移動手段を備える。
【0088】
従って、定速度制御されたテーブル25上の被測定物の被測定対象面における測定線Sに沿って行われる実際の測定では、CPU11は記憶装置18に格納された相対運動軌跡を読出す。そして、CPU11は制御周期毎に、前記相対運動軌跡の座標(Y,Z)とその座標に位置する場合の姿勢(β)に基づいて、ACサーボモータM2,M5,M3に前記指令値を出し、ホルダ38の位置と姿勢を制御する。このとき、被測定物の被測定対象面が変位センサ41〜43のいずれの測定範囲内にも入るようになる。
【0089】
第5実施形態では、下記の特徴がある。
(1) 本実施形態の形状測定装置10は、ホルダ38には、変位センサ41〜43と、変位センサ41〜43よりも測定範囲が広い変位センサ44とを備える。そして、変位センサ44で、変位センサ41〜43の測定範囲に収まるように、被測定物の被測定対象面が予め測定されて、この測定時の被測定対象面に対する相対運動軌跡を記憶する記憶装置18(第2運動軌跡記憶手段)を備える。そして、CPU11(制御手段)は、前記相対運動軌跡に基づいて、ホルダ移動手段H等及び姿勢可変機構KAを制御して、前記被測定物に対するホルダ38の相対位置及び相対姿勢を変化させ、変位センサ41〜43の測定範囲を維持する。この結果、本実施形態では、変位センサ41〜43の測定範囲を維持することができる。特に、逐次3点法で用いられる変位センサ41〜43では分解能を高めるため、所定の測定範囲に制限が生じるが、このことから、長尺の被測定物ではプローブの所定の測定範囲に被測定物の被測定対象面の全長を入れることが可能となる。
【0090】
なお、本発明の実施形態は前記実施形態に限定されるものではなく、下記のように変更しても良い。
○ 第1実施形態では、ホルダ38を、変位センサ41〜43の検出感度軸方向Kが鉛直方向に向く第1姿勢位置D1、Y軸方向に向く第2姿勢位置D2、及び反Y軸方向に向く第3姿勢位置D3の各姿勢位置に位置することを可能としたが、この3つの姿勢位置に限定されるものではない。前記3つの姿勢位置に、さらに、第1姿勢位置D1と第2姿勢位置D2との間の姿勢位置、第1姿勢位置D1と第3姿勢位置D3との間の姿勢位置の少なくともいずれか1つを含む姿勢位置を加えても良い。
【0091】
○ 前記ACサーボモータM1〜M5の代わりにステッピングモータを使用しても良い。
○ 第1実施形態では、第1移動手段をリニアテーブル20にて構成したが、第1移動手段の構成はリニアテーブル20に限定されるものではない。例えば、コラム30を第1移動手段としてX軸方向(第1方向)に移動自在に構成してもよい。又、リニアテーブル20とコラム30の両者により、X軸方向(第1方向)に移動自在に構成することも可能である。
【0092】
○ 第1実施形態では、第2移動手段をACサーボモータM2及びボールねじ36により構成し、姿勢可変機構KAを第2方向(Y軸方向)に移動するようにしたが、支持手段であるテーブル25を第2方向(Y軸方向)に移動するようにしてもよい。例えば、テーブル25をXYテーブルとすることによりこのようにすることは容易に実現できる。又、この場合、テーブル25が第2移動手段に相当する。又、テーブル25と、ACサーボモータM2及びボールねじ36により、姿勢可変機構KAと支持手段であるテーブル25をY軸方向(第2方向)に移動自在に構成してもよい。
【0093】
○ 第1実施形態では、第2移動手段を、ACサーボモータM2及びボールねじ36により構成したが、リニアモータで構成してもよい。
○ 第1実施形態では基準幅直定規100の幅を測定するようにしたが、図15(a)に示すように、テーブル25上面にX軸方向に延びる溝26を形成してもよい。溝26は、図15(a)に示すように、一対の鉛直面27,28及び底面29により、横断面凹状に形成されるとともに、支持ブラケット37及びホルダ38が余裕をもって入る溝の幅を有する。この溝26が形成されている部分が基準幅直定規に相当する。
【0094】
そして、図15(a)に示すように、この溝26内にホルダ38を入れて、第2姿勢位置D2で鉛直面27の形状を測定できるように、すなわち、被測定物の被測定対象面である鉛直面27が前記プローブ41〜43の所定の測定範囲内に入るようにACサーボモータM2を駆動してスライダ33をY方向又は反Y方向に移動させる。なお、ここで所定の測定範囲とは、被測定物の被測定対象面の変位を変位センサによって最も好適に検出ができる範囲である。そして、第2姿勢位置D2で鉛直面27の形状測定をする。
【0095】
鉛直面27の形状測定の終了後、次に、第3姿勢位置D3で、鉛直面28が前記プローブ41〜43の所定の測定範囲内に入るようにACサーボモータM2を駆動してスライダ33をY方向又は反Y方向に移動させる。この後、鉛直面28の形状測定をする。そして、両鉛直面27,28の形状測定結果に基づいて、溝26の溝幅をCPU11が算出する。
【0096】
この算出は、第1実施形態において、基準幅直定規100の幅を算出する場合と同様に行われる。このとき、予めの校正で校正値となって溝26の溝幅が既知となっているとすると、第1実施形態と同様に零点調整誤差を求めることができる。
【0097】
従って、CPU11は、零点調整誤差を求めた後、この零点調整誤差を後の被測定物の断面形状を測定する場合の零点調整誤差補償量として、記憶装置18に格納する。
○ なお、上記のようにテーブル25上面に溝26を設ける代わりに、基準幅直定規100の上面において、一対の鉛直面と両鉛直面を連結する底面とからなる凹状の溝(図示しない)を、X軸方向である長手方向に延出するように形成してもよい。この場合、該溝は支持ブラケット37及びホルダ38が余裕をもって入る溝幅を有する。
【0098】
そして、図15(a)の実施形態と同様に溝の両鉛直面の形状測定を行い、両鉛直面の形状測定結果に基づいて、該溝の溝幅をCPU11が算出する。この算出は、第1実施形態において、基準幅直定規100の幅を算出する場合と同様に行われる。このとき、予めの校正で校正値となって溝の溝幅が既知となっているとすると、第1実施形態と同様に零点調整誤差を求めることができる。
【0099】
従って、CPU11は、零点調整誤差を求めた後、この零点調整誤差を後の被測定物の断面形状を測定する場合の零点調整誤差補償量として、記憶装置18に格納する。
○ 第1実施形態では基準幅直定規100の幅を測定するようにしたが、図15(b),(c)に示すように、テーブル25のY軸方向側の側面25a及び反Y軸方向側の側面25bを鉛直面に形成して、両側面25a,25bを基準幅直定規としてもよい。
【0100】
そして、図15(b)に示すように、第2姿勢位置D2で側面25aの形状測定をするとともに、図15(c)に示すように、第3姿勢位置D3で側面25bの形状測定をし、両側面の形状測定結果に基づいて、テーブル25の幅をCPU11が算出する。この算出は、第1実施形態において、基準幅直定規100の幅を算出する場合と同様に行われる。このとき、予めの校正で校正値となってテーブル25の幅が既知となっているとすると、第1実施形態と同様に零点調整誤差を求めることができる。
【0101】
従って、CPU11は、零点調整誤差を求めた後、この零点調整誤差を後の被測定物の断面形状を測定する場合の零点調整誤差補償量として、記憶装置18に格納する。
○ 第2実施形態では、回転支持体35は、ホルダ38が第1姿勢位置D1に位置する際の変位センサ42の検出感度軸方向Kと同軸となる回転軸線K1の周りで回転可能になっていたが、この構成に限定されるものではない。例えば、ホルダ38が第1姿勢位置D1に位置する際の変位センサ41又は変位センサ43の検出感度軸方向Kと同軸となるように回転軸線K1と一致させて回転軸線K1の周りで回転支持体35が回転可能になっていてもよい。又、ホルダ38が第1姿勢位置D1に位置する際、該ホルダ38における変位センサ41〜43の配列方向に沿った軸線(すなわち、ホルダ38の支持ブラケット37に対する回転軸線)を回転軸線K1が通過する位置でもよい。
【0102】
○ 前記各実施形態において、記憶手段としての記憶装置18に、基準幅直定規100の校正値、又は変位センサ41〜43の零点調整誤差αを記憶するようにしてもよい。記憶装置18に基準幅直定規100の校正値、又は変位センサ41〜43の零点調整誤差αを記憶しておけば、該校正値、又は零点調整誤差αにより、変位センサ41〜43のドリフト(すなわち、熱ドリフト)による零点の変化を補正することが可能となる。
【符号の説明】
【0103】
10…形状測定装置、11…CPU(制御手段)、12…リニアスケール、
18…記憶装置(第1運動軌跡記憶手段、第2運動軌跡記憶手段、記憶手段)、
20…リニアテーブル(第1移動手段)、25…テーブル(支持手段)、
30…コラム、31…脚部、32…梁部、33…スライダ、
34…ガイドレール、37…支持ブラケット、38…ホルダ、
41〜43…変位センサ(プローブ)、
45…減速機構、100…基準幅直定規、100a…側面、
M1,M2,M3,M4,M5…ACサーボモータ、
D1…第1姿勢位置、D2…第2姿勢位置、D3…第3姿勢位置、
KA…姿勢可変機構、K…検出感度軸方向、KB…回転支持機構、
K1…回転軸線、H…ホルダ移動手段。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3つのプローブを保持するホルダと、前記3つのプローブの検出感度軸方向が水平面に含まれるとともに互いに反対方向となる2つの姿勢、及び前記水平面と直交する鉛直方向に向ける姿勢が少なくとも取り得るように前記ホルダを回転自在に支持する姿勢可変機構と、幅又は溝を有して、前記幅又は前記溝の幅の長さ方向の変化(以下、両者を含めて幅真直形状という)が予め校正されて校正値が得られた基準幅直定規と、前記基準幅直定規が着脱自在に設けられ、又は前記基準幅直定規が形成され、前記3つのプローブによる逐次3点法で測定走査できる姿勢で被測定物を載せる支持手段と、前記姿勢可変機構と前記基準幅直定規を備えた前記支持手段の少なくともいずれかを水平面に含まれる第1方向に移動する第1移動手段と、前記姿勢可変機構と前記支持手段の少なくともいずれかを水平面内に含まれるとともに前記第1方向と直交する第2方向に移動する第2移動手段と、を備え、
前記基準幅直定規を前記3つのプローブの配列方向を走査方向にして、前記第1移動手段及び第2移動手段のうち、少なくとも第1移動手段の駆動により前記走査方向に走査測定することで得られる幅真直形状と前記基準幅直定規の校正値を比較することで前記3つのプローブの零点調整誤差を算出し、前記被測定物の断面形状を逐次3点法で測定して、前記零点調整誤差に基づいて校正することを特徴とする形状測定装置。
【請求項2】
前記ホルダを鉛直軸周りに回転させて、回転された回転位置に保持する回転支持機構を備え、
前記回転支持機構により、前記ホルダが前記鉛直軸周りの回転された回転位置に保持された状態のときの前記プローブの配列方向を走査方向にして、前記第1移動手段の駆動により前記走査方向に走査測定することで、被測定物における走査方向に向かう直線に沿う断面形状を測定することを特徴とする請求項1に記載の形状測定装置。
【請求項3】
前記ホルダを、プローブの検出感度軸方向に並進移動可能にするホルダ移動手段と、
被測定物の被測定対象面が前記プローブの所定の測定範囲内に入るように前記ホルダ移動手段を移動制御する制御手段を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の形状測定装置。
【請求項4】
前記ホルダを、前記プローブの検出感度軸方向に並進移動可能にするホルダ移動手段と、
前記プローブの所定の測定範囲内に入るように、前記ホルダの被測定物との相対運動軌跡を予め記憶する第1運動軌跡記憶手段と、
前記相対運動軌跡に基づいて、前記ホルダ移動手段及び前記姿勢可変機構を制御して、前記被測定物に対する前記ホルダの相対位置及び相対姿勢を変化させ、前記プローブの所定の測定範囲を維持する制御手段とを備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の形状測定装置。
【請求項5】
前記ホルダに設けられ、前記3つのプローブを第1〜第3のプローブとしたとき、第1〜第3のプローブよりも測定範囲が広い第4のプローブと、
該第4のプローブで、前記第1〜第3のプローブの測定範囲に収まるように、被測定物の被測定対象面が予め測定されて、この測定時の被測定対象面に対する相対運動軌跡を記憶する第2運動軌跡記憶手段と、
前記相対運動軌跡に基づいて、前記ホルダ移動手段及び前記姿勢可変機構を制御して、前記被測定物に対する前記ホルダの相対位置及び相対姿勢を変化させ、前記第1〜第3のプローブの測定範囲を維持する制御手段を備えることを特徴とする請求項3に記載の形状測定装置。
【請求項6】
前記基準幅直定規の校正値、又は前記3つのプローブの零点調整誤差を記憶する記憶手段を備え、
該記憶手段に記憶した前記校正値、又は零点調整誤差により、前記3つのプローブのドリフトによる零点の変化を補正可能であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のうちいずれか1項に記載の形状測定装置。
【請求項1】
3つのプローブを保持するホルダと、前記3つのプローブの検出感度軸方向が水平面に含まれるとともに互いに反対方向となる2つの姿勢、及び前記水平面と直交する鉛直方向に向ける姿勢が少なくとも取り得るように前記ホルダを回転自在に支持する姿勢可変機構と、幅又は溝を有して、前記幅又は前記溝の幅の長さ方向の変化(以下、両者を含めて幅真直形状という)が予め校正されて校正値が得られた基準幅直定規と、前記基準幅直定規が着脱自在に設けられ、又は前記基準幅直定規が形成され、前記3つのプローブによる逐次3点法で測定走査できる姿勢で被測定物を載せる支持手段と、前記姿勢可変機構と前記基準幅直定規を備えた前記支持手段の少なくともいずれかを水平面に含まれる第1方向に移動する第1移動手段と、前記姿勢可変機構と前記支持手段の少なくともいずれかを水平面内に含まれるとともに前記第1方向と直交する第2方向に移動する第2移動手段と、を備え、
前記基準幅直定規を前記3つのプローブの配列方向を走査方向にして、前記第1移動手段及び第2移動手段のうち、少なくとも第1移動手段の駆動により前記走査方向に走査測定することで得られる幅真直形状と前記基準幅直定規の校正値を比較することで前記3つのプローブの零点調整誤差を算出し、前記被測定物の断面形状を逐次3点法で測定して、前記零点調整誤差に基づいて校正することを特徴とする形状測定装置。
【請求項2】
前記ホルダを鉛直軸周りに回転させて、回転された回転位置に保持する回転支持機構を備え、
前記回転支持機構により、前記ホルダが前記鉛直軸周りの回転された回転位置に保持された状態のときの前記プローブの配列方向を走査方向にして、前記第1移動手段の駆動により前記走査方向に走査測定することで、被測定物における走査方向に向かう直線に沿う断面形状を測定することを特徴とする請求項1に記載の形状測定装置。
【請求項3】
前記ホルダを、プローブの検出感度軸方向に並進移動可能にするホルダ移動手段と、
被測定物の被測定対象面が前記プローブの所定の測定範囲内に入るように前記ホルダ移動手段を移動制御する制御手段を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の形状測定装置。
【請求項4】
前記ホルダを、前記プローブの検出感度軸方向に並進移動可能にするホルダ移動手段と、
前記プローブの所定の測定範囲内に入るように、前記ホルダの被測定物との相対運動軌跡を予め記憶する第1運動軌跡記憶手段と、
前記相対運動軌跡に基づいて、前記ホルダ移動手段及び前記姿勢可変機構を制御して、前記被測定物に対する前記ホルダの相対位置及び相対姿勢を変化させ、前記プローブの所定の測定範囲を維持する制御手段とを備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の形状測定装置。
【請求項5】
前記ホルダに設けられ、前記3つのプローブを第1〜第3のプローブとしたとき、第1〜第3のプローブよりも測定範囲が広い第4のプローブと、
該第4のプローブで、前記第1〜第3のプローブの測定範囲に収まるように、被測定物の被測定対象面が予め測定されて、この測定時の被測定対象面に対する相対運動軌跡を記憶する第2運動軌跡記憶手段と、
前記相対運動軌跡に基づいて、前記ホルダ移動手段及び前記姿勢可変機構を制御して、前記被測定物に対する前記ホルダの相対位置及び相対姿勢を変化させ、前記第1〜第3のプローブの測定範囲を維持する制御手段を備えることを特徴とする請求項3に記載の形状測定装置。
【請求項6】
前記基準幅直定規の校正値、又は前記3つのプローブの零点調整誤差を記憶する記憶手段を備え、
該記憶手段に記憶した前記校正値、又は零点調整誤差により、前記3つのプローブのドリフトによる零点の変化を補正可能であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のうちいずれか1項に記載の形状測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−181195(P2010−181195A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22932(P2009−22932)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(000150604)株式会社ナガセインテグレックス (35)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(000150604)株式会社ナガセインテグレックス (35)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]