説明

後方散乱波を使用した異常の画像化

異常の画像を生成する方法は、複数のセンサの各々から、評価対象である構造内に向かうパルス波を生成することと、パルス波が異常に衝突することにより生じる散乱波データを収集することとを含む。散乱波データの収集は、パルス波を生成したセンサと同じセンサにより行っても、異なるセンサにより行ってもよい。本方法は、散乱波データを収集するセンサの位置を基準とした場合の異常の遠位の端又は境界からの後方散乱波データを識別することも含むことができる。本方法は、加えて、散乱波データを収集する複数のセンサの各々からの後方散乱波データを処理することにより、異常の二次元画像を生成することを含むことができる。本方法は、更に、異常の二次元画像を提示することを含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機又はその他の構造といった構造における異常の検出に関するものであり、具体的には、層割れ又はその他の不具合といった異常を検出し、後方散乱波を用いてそのような異常の画像生成を行う方法とシステムとに関するものである。
【背景技術】
【0002】
航空宇宙業界において民間航空機及びその他の航空宇宙ビークルに、並びにその他の産業においても、新規の軽量型複合材料及び設計がこれまでになく多用されている。このような複合材料を使用した構造は複数のプライ又は層を用いて形成することができ、これらのプライ又は層は、積層させることにより軽量で強度の高い構造を形成することができる材料からなる。従来の材料と同様に、このような構造は、航空宇宙ビークルの飛行操作中、又はその他の操作中に、極度の応力に曝される可能性があり、或いは衝撃又はその他の原因による損傷を受ける可能性がある。このような材料からなる複数のプライは、前述のような応力又は衝撃を受けると、分離したり、層割れしたりする可能性がある。更には、新規の材料及び従来の材料の設計が最適化されるにつれ、航空宇宙産業界では、効率よく全ての構造を早急に特定及び維持して、出発信頼度を向上させ、航空機及びその他同様の高価な装備の稼働率を上昇させることが必要である。したがって、恒久的に取り付けられた圧電アクチュエータ/センサを使用して板状構造における損傷又は層割れを可視化する必要がある。しかしながら、このような努力は、事前のトレーニングデータに基づく実験的画像化プロセスへの依存が大きいことと、複雑な信号応答を真の損傷情報に直接関連付ける単純且つ頑強な解釈技術が無いこととにより、本物の航空機構造に実際に装備する実現可能性を成功裏に実証できていない。これまでの画像化技術では、真の損傷の大きさ又は輪郭に直接関連しない、損傷の質的な画像が生成されるだけである。したがって、Cスキャン、X線又は同様の評価技術といった従来の非破壊的評価方法の一つと等価な損傷の直接像を生成できる頑強な画像化技術が必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
本発明の一実施形態によれば、異常の画像を生成する方法は、複数のセンサの各々から、評価対象の構造内に向かうパルス波を生成し、パルス波が異常に衝突することにより生じる散乱波のデータを収集することを含むことができる。散乱波データは、パルス波を生成したセンサと同じセンサにより収集しても、又は同センサとは異なるセンサにより収集してもよい。本方法は、散乱波データを収集するセンサの位置を基準として、異常の遠位の端又は境界からの後方散乱波を識別することも含むことができる。本方法は、加えて、散乱波データを収集する複数のセンサの各々からの後方散乱波データを処理することにより、異常の二次元画像を生成することを含むことができる。本方法は、更に、異常の二次元画像を提示することを含むことができる。
【0004】
本発明の別の実施形態によれば、異常の画像を生成する方法は、評価される構造の部分の所定の位置に配置された複数のセンサの各々から、評価対象の構造内に向かうパルス波を生成することを含むことができる。本方法はまた、パルス波が異常に衝突することにより生じる散乱波を収集することを含むことができる。この散乱波データは、パルス波を生成したセンサと同じセンサによって収集しても、又は同センサとは異なるセンサにより収集してもよい。本方法は、散乱波データを収集するセンサの位置を基準とした場合の異常の遠位端からの後方散乱波を識別することも含むことができる。本方法は、加えて、散乱波データを収集する複数のセンサの各々からの後方散乱波データを処理することにより、評価対象の構造における異常の二次元画像を生成することを含むことができる。後方散乱波の処理は、散乱波データを収集した複数のセンサの各々からの後方散乱波データを重ねて表示することを含むことができる。異常の輪郭は、評価対象の構造の二次元画像において、後方散乱波データが最も重複して他の部分から視覚的に区別される領域に相当する。本方法は、更に、異常の二次元画像を提示することを含むことができる。
【0005】
本発明の別の実施形態によれば、異常の画像を生成するためのシステムは、複数のデバイスを含むことができる。各デバイスは、評価対象の構造内に向かってパルス波を生成することができ、異常によって少なくとも部分的に反射されるパルス波のエネルギーにより生じる散乱波データを収集することができる。本システムは、散乱波データを収集するデバイスの位置を基準とした場合の異常の遠位端からの後方散乱波データに基づいて、評価対象の構造における異常の二次元画像を生成する構造健全性モニタリングユニットも含むことができる。
【0006】
本発明の別の実施形態によれば、異常の画像を生成するためのシステムは、複数のアクチュエータを含むことができる。各アクチュエータは、評価される構造の一部分の所定の位置に配置することができる。各アクチュエータは、構造内に向かうパルス波を生成することができる。複数のセンサは、それぞれ評価対象の構造のこの部分の選択された位置に配置することができる。各センサは、少なくとも部分的に異常によって反射されるパルス波のエネルギーにより生じる散乱波データを収集することができる。本システムは、散乱波を収集するセンサを基準とした場合の異常の遠位端からの後方散乱波データを識別する構造健全性モニタリングユニットも含むことができる。この構造健全性モニタリングユニットは、散乱波データを収集する複数のセンサの各々からの後方散乱波データを処理することにより、異常の二次元画像を生成することもできる。本システムは、更に、異常の二次元画像を提示するための出力デバイスを含むことができる。
【0007】
本発明の他の態様及び特徴は、請求の範囲によってのみ規定されるものであり、添付図面と併せて本発明に関する後述の非限定的な詳細な説明を読んだ当業者には明瞭となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の一実施形態による構造内の異常の画像を生成する方法の一実施例のフローチャートである。
【図2】図2は、本発明の一実施形態による構造内の異常の画像を生成するための例示的システムのブロック図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態による構造内の異常の画像を生成するための波形を示している。
【図4】図4A−Eは、本発明の一実施形態によるピッチキャッチ構成を用いた構造内の異常の画像生成の一実施例を示している。
【図5】図5は、本発明の一実施形態によるパルスエコー式又は自己感知式構成を用いた構造内の異常の画像生成の一実施例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態ついての後述の詳細な説明では、本発明の特定の実施形態を説明する添付図面に言及する。異なる構造及び動作を有する他の実施形態も、本発明の範囲から逸脱するものではない。
【実施例】
【0010】
図1は、本発明の一実施形態による、構造内の異常の画像生成方法100の一実施例のフローチャートである。ブロック102では、パルス波、ラム波、又は同様の信号を生成し、モニタリング又は評価の対象である構造内に方向付けることができる。ラム波は、縦波に類似しており、圧縮部と希薄部(rarefraction)とを含むが、送信された構造内の表面によって伝播範囲を制限されて導波効果を生じるので、異常を検出してその大きさを定量するために使用することができる。画像プロセスを更に容易且つ頑強なものにするために、ラム波又は同様のパルス波の単一モード(即ち、a0基本非対称モード又はs0基本対象モード)を構造に注入することができる。
【0011】
ここで図2も参照する。図2は、本発明の一実施形態による、構造204内の異常202の画像を生成するための例示的システム200のブロック図である。構造健全性モニタリングユニット206を使用して、パルス波を生成することができる。複数のセンサ又はアクチュエータ208の各々は、パルス波を、生成、伝送、又はモニタリング対象の構造204又は対象に向かって図2の矢印210で示すように方向付けることができる。本明細書で更に詳細に説明するように、パルス波210が異常202に衝突することによって生じた散乱波データの少なくとも一部は、パルス波を生成したセンサと同じセンサ208で収集しても、それとは異なるセンサ218で収集してもよい。構造健全性モニタリングユニット206は、ラム波発生器又は送受信機、或いはここに記載する構造健全性モニタリングのために信号の送受信を行うことができるデータ収集ユニット、又は同様のデバイスとすることができる。
【0012】
本発明の別の実施形態によれば、センサ208の各々は、パルス波の生成及び散乱波データの受信の両方を行うアクチュエータとセンサとの組み合わせであってよい。アクチュエータ、又はアクチュエータ−センサの組み合わせ208は、構造健全性モニタリングのために、信号を生成するか、又は構造204へ向かって、ラム波、或いは同様の信号又は波のような信号を方向付けることができる電気機械アクチュエータ/センサとすることができる。アクチュエータ、又はアクチュエータ−センサの組み合わせ208の一実施例として、圧電アクチュエータ/センサ又は構造204に取り付け可能な同様のデバイスを挙げることができる。
【0013】
構造204又は対象は、複合材料又は同様の材料からなる複数のプライ又は層212により形成されている。構造204又は対象は、航空宇宙ビークル、地球圏ビークル、船舶といったビークル、橋、建造物又はその他の構造といった民間構造物、或いは構造の健全性又は状態をモニタリングすることが望ましいあらゆる対象とすることができる。
【0014】
図1に戻る。ブロック104では、何も異常の無い構造204の基線波データを収集することができる。基線波データは、構造204又は対象の使用を開始する前か、又は構造204に対する構造健全性モニタリングプログラムを開始する前のいずれかの時点で収集することができる。
【0015】
ブロック104では、新規パルス波210を生成することにより、基線波データ収集後に新規データを収集することもできる。パルス波210が図2の実施例における異常202又は層割れといった異常に衝突することにより生じた散乱波データが収集される。波長が十分に短いラム波は、構造204のような積層構造の層割れといった異常に衝突すると、波動散乱を引き起こす。波動散乱は、本明細書に記載されるような画像生成のプロセスを必要とする応答を複雑にする。衝突波の波長は、検出される損傷の大きさの範囲に基づいて調節することができる。例えば、約0.4インチ〜約0.8インチの波長は、約0.5インチ〜約2インチの直径又は長さ寸法を有する異常を検出することができる。FEM(有限要素法)及び他の試験による数値的シミュレーションにより、層割れ周辺の優勢な散乱波が、後方散乱波であるか、又は後方散乱波データを収集するセンサの位置又は配置を基準とした場合の層割れの遠位の端部又は境界から散乱した波であることが示されている。図2を参照して説明したように、後方散乱波214は、異常202又は層割れの内部から異常202の外側領域まで伝播するため、前方散乱波216より強い散乱波でありうる。ここでは後方散乱波データを主に取り扱うが、前方散乱波データ216及び後方散乱波214の両方が収集されてよい。アクチュエータ−センサ208が自己感知式である場合、後方散乱波データ214又はパルスは、アクチュエータ−センサの組み合わせ208により収集される。後方散乱波214又はパルスは、パルス波を生成したセンサ208又はアクチュエータとは異なるセンサ218によっても収集することができる。センサ218は、散乱波データ又はパルスを受信して、受信又は収集した散乱波データを解析のために構造健全性モニタリングユニット216へ送信することにより、異常202の二次元画像を生成することができる。センサ218は、圧電センサ又は前方散乱波216及び後方散乱波214を感知することができる同様のデバイスのような、電気機械デバイスとしてもよい。
【0016】
システム200は、感知能力を持たないアクチュエータ208と、ピッチキャッチ(pitch-catch)構成又はピッチキャッチアクチュエータ/センサと呼ばれ、ピッチキャッチモードで動作可能なセンサ218とを含むことができる。アクチュエータ208は、パルス波210を構造204内へ送信又はピッチすることができ、センサ218は、異常202からの後方散乱波データ214及び前方散乱波データ216の少なくとも一部を受信又はキャッチすることができる。二次元画像を生成するピッチキャッチ構成又は動作のピッチキャッチモードの一実施例については、図4A−4Eを参照して更に詳細に記載する。
【0017】
別の構成では、上述のように、デバイス208及び218は共に、パルス波210の送信と、後方散乱波214及び前方散乱波216の受信とを両方行うアクチュエータデバイスとセンサデバイスの組み合わせとすることができる。デバイス208及び218は、収集したデータを構造健全性モニタリングユニット206に送ることにより、後方散乱波214を識別して、異常202の二次元画像を生成する。このような構成は、パルスエコー構成又はパルスエコーアクチュエータ/センサと呼ばれ、パルスエコーモード又は自己感知モードで動作することができる。パルスエコー構成又は動作のパルスエコーモードの一実施例については、図5を参照して更に詳細に記載する。
【0018】
複数のピッチキャッチアクチュエータ/センサ又はパルスエコーアクチュエータ/センサの任意の組み合わせ208及び218は、評価対象の構造204上の所定の位置に配置されて、異常202の二次元画像を生成することができる。アクチュエータデバイスとセンサデバイスとの組み合わせも、ピッチキャッチモードで動作することができる。複数の自己感知式センサ208又はピッチキャッチアクチュエータ及びセンサ208及び218が、異常202の二次元画像を生成するために必要である。
【0019】
ブロック106では、基線波データを使用して、構造204内における波又は信号の伝播速度を測定又は較正することができる。基線波形300の一実施例を図3に示す。図3は、異常の検出を示す波形302と、前方散乱波データ306及び後方散乱波データ308を示す波形304の一実施例も示している。図3に示すように、後方散乱波308は、図2に示す構造と同様の複合構造又は積層構造に典型的な損傷又は異常の場合、前方散乱波306より極めて高い振幅を呈する。波の伝播の較正済み速度を、本明細書に記載の後方散乱波データ214に基づく二次元画像の生成に使用することができる。
【0020】
ブロック108では、構造204に関して収集された基線波データを使用して、前方散乱波データ214及び後方散乱波データ216に信号処理を実行することができる。異常202によって生じた散乱波214及び216は、当初の(基線)波データから損傷後データを減算することにより、アクチュエータ208からセンサ218へ直接送信された波及び/又はそれ以外に存在しうる、構造的境界又は構造204内に存在するその他の形状からの反射波といった、他のいかなる波からも分離又は区別することができる。
【0021】
ブロック110では、後方散乱波214及び前方散乱波216を、区別又は区別して識別することができる。後方散乱波214及び前方散乱波216は、振幅比較を用いて区別又は識別することができる(即ち、図3に示すものと類似の複合構造内に異常がある場合、後方散乱波の呈する振幅は、前方散乱波の振幅より極めて高い)。後方散乱波214及び前方散乱波216は、信号の伝播時間の解析、雑音消去、又はその他の既知の信号処理技術に基づくモード分離を用いて区別又は識別することができる。
【0022】
ブロック112では、後方散乱波データ214に基づいて、評価される構造204の部分における異常の二次元画像を生成することができる。本明細書に更に詳細に記載するように、異常領域又はそのような領域の輪郭は、センサ208及び218の各々又はアクチュエータとセンサとの組み合わせの各々からの後方散乱波を重ねるか又は重ねて表示することにより、評価される構造の部分の他の領域からの対比が最も大きな領域とすることができる。二次元画像は、ブロック106で決定された基線データに基づいて較正された伝播速度を使用して生成することができる。FEM又は解析モデル114に基づく波の伝播速度も、二次元画像を生成するうえでの入力として使用することができる。
【0023】
本発明の別の実施形態では、層割れ又は異常の大きさは、センサ208及び218における後方散乱波データ214と前方散乱波データ216との到着時間の差、又は波の伝播時間(TOF)差に基づいて、且つ構造204における波の伝播(Vg)の較正された速度に基づいて、推測することができる。TOFは、信号又は波が送信されてから、前方及び後方散乱波が受信されるまでの時間と定義することができる。測定された後方散乱(TOFb)の伝播時間と、測定された前方散乱(TOFf)の伝播時間と、構造内部での較正された速度Vgとに基づいた、異なるアクチュエータ/センサ構成について損傷の大きさを予測する実施例は、2007年5月16日出願の米国特許出願第11/49539号(表題「METHOD AND SYSTEM FOR DETECTING AN ANOMALLY AND DETERMINING ITS SIZE」に更に詳細に記載されている。この出願は、本発明と同じ譲受人に譲渡されており、本出願の親出願である。
【0024】
ブロック116では、何らかの層割れ又は異常の二次元画像を、ディスプレイ、プリントアウト、又はその他の手段でユーザに提示することができる。層割れ又はその他の異常の二次元画像の提示の実施例については、図4A−4D及び図5を参照して説明する。図4A−4Dは、上述したものと同様の、ピッチキャッチモードでの動作の一実施例を示しており、この場合、実質的に楕円形の複数のアクチュエータ−センサパルス波経路を生成することにより異常の二次元画像が生成される。図5は、上述のものと同様の、パルスエコーモードでの動作の一実施例を示しており、この場合、実質的に円形の複数のパルスエコーパルス波経路を生成することにより、異常の二次元画像が生成される。
【0025】
ここで図2に戻ると、層割れ又はその他の異常の二次元画像は、ディスプレイなどのユーザインターフェース220(図2)上に提示することができる。ユーザインターフェース220は、キーボード、コンピュータポインティングデバイス、プリンタ、又は構造健全性モニタリングユニット206との接点となって同ユニットの動作を制御するその他手段も含むことができる。
【0026】
構造健全性モニタリングユニット206は、基線波データと、後方散乱波214及び前方散乱波216を解析するための他のあらゆるデータとを保存するデータ記憶要素222を含むことができる。構造健全性モニタリングユニット206は、ここに記載されるあらゆる層割れ又は異常の二次元画像を生成するモジュール224も含むことができる。方法100の要素は、モジュール224に埋めこんで同モジュールにより実行することができる。
【0027】
構造健全性モニタリングユニット206は、ここに記載されるあらゆる層割れ又は異常の大きさ、形状、及び位置を推定するモジュールも含むことができる。
【0028】
図4A−4Eは、本発明の一実施形態によるピッチキャッチ構成を使用した構造内の異常402の画像400生成の一実施例である。上述したものと同様に、ピッチキャッチ構成又はピッチキャッチ動作モードでは、複数のセンサ404から選択されたセンサが、何らかの試験条件下でアクチュエータとして機能するようにプリセットすることができるか、又はアクチュエータとすることができる。アクチュエータの各々は、評価対象の構造内に向かう個別のパルス波を、異なる時点で生成することができる。上述のように、パルス波はラム波とすることができる。
【0029】
複数のセンサ404から選択された他のセンサは、アクチュエータセンサ404によって生成されたパルス波が、異常又は評価対象の構造の他の形状によって散乱することにより生じる散乱波データを収集することができる。アクチュエータ及びセンサ404の各々は、二つ一組となってそれぞれのアクチュエータ−センサ波経路406a−406dを生成することができる。ピッチキャッチ動作モードでは、アクチュエータ−センサ波経路406a−406dは、図4A−4Dに示すようなに実質的に楕円形でありうる。アクチュエータ−センサパルス波経路406a−406dの各々の形状は、後方散乱波の伝播時間の測定値及び波の伝播角の関数としての波の速度プロファイルにより決定される。図4A−4Dに示すように、アクチュエータ−センサパルス波経路406a−406dの各々を、評価される構造の部分について互いに重ねて表示することにより、異常の二次元画像を生成することができる。図4D及びEに示すように、異常402の輪郭は、楕円形のパルス波経路の後方散乱波データが最も重複する領域に相当する。この領域は、図4Eに示すように、評価対象の構造の画像の他の部分又は領域から視覚的に区別される。異常の画像又は輪郭の解像度は、異常を囲むピッチキャッチ波経路を追加することにより向上させることができる。
【0030】
図5は、本発明の一実施形態によるパルスエコー式又は自己感知式の構成を使用した構造内の異常502の画像500生成の一実施例を示している。上述のものと同様に、パルスエコー式又は自己感知式の構成又はモードでは、複数のセンサ504の各々が、個別のパルス波又はラム波を生成する。パルス波を生成するセンサと同じセンサ504が、パルス波が構造の何らかの異常又はその他の形状に衝突することにより生じる散乱波データを収集する。パルスエコーモードでは、各センサ504は、図5に示すような実質的に円形のパルスエコー波経路506a−506dを生成することにより、任意の後方散乱波の伝播時間に基づいて、任意の異常の二次元画像500を生成する。パルスエコー波経路506a−506dの各々の形状は、後方散乱波の伝播時間の測定値及び波の伝播角の関数としての波の速度プロファイルにより決定されうる。評価される構造の部分についてパルスエコー波経路506a−506dを互いに重ね合わせるか又は重ねて表示することにより、任意の異常502の輪郭508又は二次元画像が生成される。図5に示すように、異常502の輪郭508は、円形パルス波経路506a−506dの後方散乱波データが最も重なり合う領域に相当する。この領域は、図5に示すように、評価される構造の画像の他の部分又は領域から視覚的に区別される。ピッチキャッチ構成と同様に、任意の異常を囲む、利用可能なパルスエコー波経路の数が多いほど、異常の画像又は輪郭の解像度は向上する。システムに、ピッチキャッチ構成とパルスエコー構成の両方が可能である場合、同じ手順により、全てのピッチキャッチ経路及びパルスエコー経路を組み合わせて互いに重ねて表示することができる。本発明は、構造に対して恒久的に又は一時的に取り付けられて分散配置される送信機及びセンサからなる構造健全性モニタリングシステムも含むことができる。
【0031】
他の実施形態として下記が挙げられる。
A12. 異常の画像を生成する方法であって、評価される構造の部分の所定の位置に配置された複数のセンサの各々から、評価対象である構造内に向かってパルス波を生成すること;パルス波が異常に衝突することにより生じる散乱波データを収集することであって、パルス波を生成したセンサと同じセンサによって行っても又は異なるセンサによって行ってもよい散乱波データの収集;散乱波データを収集するセンサの位置を基準にした場合の異常の遠位端からの後方散乱波を識別すること;散乱波データを収集するセンサの各々からの後方散乱波データを処理することにより、評価される構造内の異常の二次元画像を生成することであって、後方散乱波データの処理が、散乱波データを収集するセンサの各々からの後方散乱波データを重ねて表示することを含み、異常の輪郭が、後方散乱波が最も重なり合って、評価対象の構造の二次元画像の他の部分から視覚的に区別される領域に相当する後方散乱波データの処理;並びに、異常の二次元画像を提示することを含む方法。
【0032】
A13. ピッチキャッチ構成で操作することであって、この場合、複数のセンサから選択されたセンサがアクチュエータであり、各アクチュエータが個別のパルス波を生成し、複数のセンサから選択された他のセンサが散乱波データを収集し、各アクチュエータ−センサの組がアクチュエータ−センサパルス波経路を画定することを更に含む、A12に記載の方法。
【0033】
A.14 複数の実質的に楕円形のアクチュエータ−センサパルス波経路を生成することにより、後方散乱波の伝播時間に基づく異常の二次元画像を生成することと、評価される構造の部分についてアクチュエータ−センサパルス波経路を互いに重ね合わせることにより、異常の二次元画像を生成することであって、この場合、各アクチュエータ−センサパルス波の形状が、後方散乱波の伝播時間の測定値及び波の伝播角の関数としての波の速度プロファイルにより決定されることとを更に含む、A13に記載の方法。
【0034】
A15. パルスエコー式又は自己感知式構成で操作することであって、この場合、複数のセンサの各々が個別のパルス波を生成し、同じセンサが後方散乱波を収集してパルスエコー経路を画定することを更に含む、A12に記載の方法。
【0035】
A16. 複数の実質的に円形のパルスエコー波経路を生成することにより、後方散乱波の伝播時間に基づく異常の二次元画像を生成することと、評価される構造の部分についてパルスエコー波経路を互いに重ねて表示することにより、異常の二次元画像を生成することであって、この場合、複数のパルスエコー経路の各々の形状が、後方散乱波の伝播時間の測定値及び波の伝播角の関数としての波の速度プロファイルにより決定されることとを更に含む、A15に記載の方法。
【0036】
A24. 異常の画像を生成するためのシステムであって、各々が評価される構造の部分の所定の位置に配置されて同構造内に向かってパルス波を生成する複数のアクチュエータと;各々が評価される構造の部分の選択された位置に配置されて異常によって少なくとも部分的に反射されたパルス波のエネルギーにより生じた散乱波データを収集する複数のセンサと;散乱波データを収集するセンサの位置を基準とした場合の異常の遠位端からの後方散乱波を識別し、散乱波データを収集する複数のセンサの各々からの後方散乱波データを処理することにより異常の二次元画像を生成する構造健全性モニタリングユニットと;異常の二次元画像を提示する出力デバイスとを備えるシステム。
【0037】
A25. 構造健全性モニタリングユニットが、散乱波データを収集した複数のセンサの各々からの後方散乱波データを重ねて表示することにより、後方散乱波データを処理するものであり、異常の輪郭が、後方散乱波データが最も重なり合って画像の他の部分から視覚的に区別される領域に相当する、A24に記載のシステム。
【0038】
本明細書において使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、開示内容を制限するものではない。本明細書において名詞が使用される場合、その名詞は、別途明記しない限り、単数形及び複数形の両方を含む。更に、本明細書において使用される、「備える」及び/又は「備えている」、及び「含む」及び/又は「含んでいる」という表現は、記載された特徴、整数、ステップ、動作、要素、及び/又は構成要素の存在を特定するものであるが、一又は複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、及び/又はそれらの組の存在を除外するものではない。
【0039】
本明細書では、特定の実施形態を例示して説明したが、当業者であれば、同じ目的を達成すると予想されるあらゆる構成により、示された特定の実施形態を置換可能であること、及び本発明が他の環境において他の用途を有することを理解するであろう。本出願は、本発明のあらゆる修正例又は変形例を網羅するものである。特許請求の範囲は、発明の範囲を、ここに開示された特定の実施形態に制限することを意図していない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異常の画像を生成する方法(100)であって、
複数のセンサの各々から、評価対象の構造(204)内部へ向かうパルス波を生成すること(102)、
パルス波が異常に衝突することにより生じた散乱波データを収集することであって、パルス波を生成したセンサと同じセンサによって行っても、異なるセンサによって行ってもよい散乱波データの収集(104)、
散乱波データを収集するセンサの位置を基準にした場合の異常の遠位端からの後方散乱波データを識別すること(108)、
散乱波データを収集する複数のセンサの各々からの後方散乱波データを処理することにより、異常の二次元画像を生成すること(112)、及び
異常の二次元画像を提示すること(116)
を含む方法。
【請求項2】
後方散乱波の処理が、散乱波データを収集したセンサ(208、218)の各々からの後方散乱波データを重ねて表示することを含んでおり、異常の輪郭が、後方散乱波データが最も重なり合って評価対象である構造の画像の他の部分から視覚的に区別される領域に相当する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
構造の基線波データを生成すること(104)、及び
基線波データ、解析モデル、及び有限要素法(FEM)モデルのうちの少なくとも一つを用いることにより、構造内における波の伝播速度を較正すること(106)
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
構造の基線波データを使用することにより、後方散乱波データのみについて信号処理を実行すること、及び
モード分解及び雑音消去の少なくとも一方を使用して後方散乱波を識別すること
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
複数のセンサが、各々がパルス波を生成する複数のアクチュエータと、各々が散乱波データを収集する複数の受信センサとを含み、複数のアクチュエータ及び複数の受信センサの各々を、互いに対して構造上の選択した位置に配置することにより、異常の二次元画像を生成する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
構造が、航空機、地球圏ビークル、船舶、及び民間建造物の一つである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ピッチキャッチモード及びパルスエコーモードの一方を動作させることにより、任意の異常の二次元画像を生成することを更に含み、ピッチキャッチモードが、アクチュエータである複数のセンサから選択されたセンサの各々によりパルス波を生成することと、複数のセンサから選択された他のセンサの各々により散乱波データを収集することとを含み、アクチュエータとセンサとの各組が、ピッチキャッチパルス波経路を形成するものであり、パルスエコーモードが、複数のセンサの各々によりパルス波を生成することと、パルス波を生成したセンサと同じセンサにより散乱波データを収集することとを含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ピッチキャッチ構成で動作させることを更に含み、複数のセンサ(404)から選択されたセンサが、それぞれ個別のパルス波を生成するアクチュエータであり、複数のセンサから選択された他のセンサが散乱波データを収集し、アクチュエータとセンサとの各組が、アクチュエータ−センサパルス波経路(406a−406d)を画定する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
複数の実質的に楕円形のアクチュエータ−センサパルス波経路を生成することにより、後方散乱波の伝播時間に基づいて異常の二次元画像を生成することと、評価される構造の部分について、アクチュエータ−センサパルス波経路を互いに重ねて表示することにより、異常の二次元画像を生成することとを更に含み、各アクチュエータ−センサパルス波経路の形状が、後方散乱波の伝播時間の測定値及び波の伝播角の関数としての波の速度プロファイルにより決定される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
パルスエコー式又は自己感知式構成で動作させることを更に含み、複数のセンサ(504)の各々が個別のパルス波を生成し、同じセンサが後方散乱波データの少なくとも一部を収集することにより、パルスエコー経路が画定される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
複数の実質的に円形のパルスエコー経路(506a−506d)を生成することにより、後方散乱波の伝播時間に基づいて異常の二次元画像を生成することと、評価される構造の部分について、パルスエコー経路を互いに重ねて表示することにより、異常の二次元画像を生成することとを更に含み、複数のパルスエコー経路の各々の形状が、後方散乱波の伝播時間の測定値及び波の伝播角の関数としての波の速度プロファイルによって決定される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
異常の画像を生成するためのシステム(200)であって、
各々が、評価対象である構造(204)内に向かうパルス波を生成し、異常により少なくとも部分的に反射されるパルス波のエネルギーにより生じた散乱波データを収集する複数のデバイス(208、218、404、504)と、
散乱波データを収集するデバイスの位置を基準とした場合の異常の遠位端からの後方散乱波データに基づいて、評価対象である構造内の異常の二次元画像を生成する構造健全性モニタリングユニット(206)と
を備えるシステム。
【請求項13】
構造健全性モニタリングユニットが、散乱波データを収集した複数のデバイスの各々からの後方散乱波データを重ねて表示することにより、後方散乱波を処理するモジュールを備えており、異常の輪郭が、後方散乱波データが最も重なり合って評価対象の構造の二次元画像の他の部分から視覚的に区別される領域に相当する、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
複数のデバイスが、パルスエコーモード及びピッチキャッチモードの一方で動作する、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
ピッチキャッチモードでは、複数のデバイスが、
各々が、評価対象の構造内に個別のパルス波を生成する複数のアクチュエータ(208、404)と、
各々が、散乱波データを収集する複数のセンサ(218、404)と
を備えており、複数のアクチュエータと複数のセンサが対になってアクチュエータ−センサ対を形成する、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
アクチュエータ−センサの各対が、実質的に楕円形のアクチュエータ−センサパルス波経路を生成することにより、後方散乱波の伝播時間に基づく異常の二次元画像が生成され、構造健全性モニタリングユニットが、評価対象の構造の一部分についてアクチュエータ−センサパルス波経路の各々を互いに重ねて表示することにより、異常の二次元画像を生成するモジュールを備えており、各アクチュエータ−センサパルス波経路の形状が、後方散乱波の伝播時間の測定値及び波の伝播角の関数としての波の速度プロファイルにより決定される、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
パルスエコーモードでは、複数のデバイスが、それぞれ個別のパルス波を生成する複数のセンサ(504)を含んでおり、同じセンサが、センサによって生成された個々のパルス波に由来する後方散乱波データの少なくとも一部を収集する、請求項14に記載のシステム。
【請求項18】
複数のセンサの各々が、実質的に円形のパルスエコーパルス波経路を生成することにより、後方散乱波の伝播時間に基づいて異常の二次元画像を生成し、構造健全性モニタリングユニットが、評価対象の構造の一部分についてパルスエコーパルス波経路を互いに重ねて表示することにより異常の二次元画像を生成するモジュールを含んでおり、複数のパルスエコーパルス波経路の各々の形状が、後方散乱波の伝播時間の測定値及び波の伝播角の関数としての波の速度プロファイルによって決定される、請求項17に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−516897(P2011−516897A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505055(P2011−505055)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際出願番号】PCT/US2009/036188
【国際公開番号】WO2009/148660
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】