説明

後方確認用モニタ装置

【課題】オペレータが後部の映像を映し出しているモニタ画面を見やすく、また後部の状況を正確に判断できようにして、操作性並びに安全性を向上させる。
【解決手段】後方監視カメラ6と該後方監視カメラ6で撮影された映像をディスプレイするモニタ7とを備える作業機械において、モニタ7を運転席8の左右いずれかの側方に設置するとともに、該モニタ7の画面に、後方監視カメラ6で撮影して得られた映像を鏡像とし、かつ、バックミラーで見る映像と同等になるように加工してディスプレイする後方確認用モニタ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油圧ショベル等の作業機械における後方確認用モニタ装置に関するものであり、特に、作業機械から後方に向けて設けられた後方監視カメラで撮影して得られた映像をモニタの画面にディスプレイして後方の安全を確認する後方確認用モニタ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、乗用車等の車両の後部に監視カメラを設け、その映像を運転室内のモニタの画面に表示し、運転操作者の死角を確認するようにした監視カメラシステムは良く知られている。また、近年、油圧ショベル等の作業機械は、狭い都市部において使用する割合が増え、それに伴い障害物等に油圧ショベル等の作業機械のカウンタウエイト等が接触し易い状況になっている。このような背景から、作業機械の後部に後方監視カメラを搭載し、後方の映像を運転室内のモニタ画面に映し出し、オペレータの死角を監視するシステムの設置要求が高まっており、その発明も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実用新案登録2592085号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1を含め、従来の後方監視カメラシステムでは、モニタを運転席の前方に設置しており、このためモニタ画面がオペレータから遠く離れていて見づらく、またモニタがオペレータの前方視界を妨げることがあるので運転操作がしづらいという問題があった。
【0004】
そこで、オペレータが後部の映像を映し出しているモニタ画面を見やすく、また後部の状況を正確に判断できようにして、操作性並びに安全性を向上させるために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、後方監視カメラと該後方監視カメラで撮影された映像をディスプレイするモニタとを有する後方確認用モニタ装置を備える作業機械において、前記モニタを運転席の左右いずれかの側方に設置するとともに、該モニタの画面に、前記後方監視カメラで撮影して得られた映像を鏡像とし、かつ、サイドミラーで見る映像と同等となるように加工してディスプレイするモニタ装置を備える後方確認用モニタ装置を提供する。
【0006】
この構成によれば、モニタを運転席の左右いずれかの側方に設置することにより、オペレータの前方視界を妨げることなくモニタの画面をオペレータの目に近づけることができる。また、モニタの画面には後方監視カメラで撮影して得られた映像が鏡像でディスプレイされることにより、オペレータは作業機械後方の状況をバックミラーで見ているような感覚で正確に判断することができることなる。
【0007】
請求項2記載の発明は、上記モニタの画面に、前記後方監視カメラで得られた上記映像と同時に残燃料や水温等の機械情報をディスプレイする後方確認用モニタ装置を提供する。
【0008】
この構成によれば、モニタの画面で前記後方監視カメラによる上記映像を確認しながら、残燃料や水温等の機械情報も確認できる。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明は、オペレータの前方視界を妨げることなくモニタの画面をオペレータの目に近づけることができるので、視認性及び操作性の向上が期待できる。また、モニタの画面に映像を鏡像でディスプレイするので、オペレータは作業機械後方の状況をバックミラーで見ているような感覚で正確に判断することができ、視認性及び操作性がより一層向上する。
【0010】
請求項2記載の発明は、モニタの画面で後方監視カメラによる映像を確認しながら、残燃料や水温等の機械情報も確認することができるので、オペレータはモニタ画面に集中できる。これにより、請求項1記載の発明の効果に加えて、オペレータの疲労も軽減でき、安全性及び操作性がより一層向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
オペレータが後部の映像を映し出しているモニタ画面を見やすく、また後部の状況を正確に判断できようにして、操作性並びに安全性を向上させるという目的を達成するために、後方監視カメラと該後方監視カメラで撮影された映像をディスプレイするモニタとを有する後方確認用モニタ装置を備える作業機械において、前記モニタを運転席の左右いずれかの側方に設置するとともに、該モニタの画面に、前記後方監視カメラで撮影して得られた映像を鏡像とし、かつ、バックミラーで見る映像と同等になるように加工してディスプレイするモニタ装置を備えることにより実現した。
【実施例】
【0012】
以下、本発明の後方確認用モニタ装置を備える作業機械について、好適な実施例をあげて説明する。図1は本発明に係る作業機械の一実施例として示す油圧ショベルの平面図である。同図において、油圧ショベル1は、走行機能を有する下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3を備える。
【0013】
前記上部旋回体3には左前方にキャブ(運転室)4が設けられ、中央前方にブーム及びアーム等で構成される俯仰動可能な作業機5が設置されている。また、上部旋回体3の後方部には後方監視カメラ6が設置されている。
【0014】
前記キャブ4には、オペレータが着座して運転を行うための運転席8が設けられているとともに、前記後方監視カメラ6で撮影して得られた映像をディスプレイするモニタ7が設けられている。
【0015】
前記後方監視カメラ6とモニタ7は後方確認用のモニタ装置を構成するようにセットにされて使用されている。また、該モニタ7は、オペレータが運転席8に着座して見ることができるように該運転席8の左右いずれかの側方(実施例では右側方)に横向きで設置されている。さらに、該モニタ7の画面には後方監視カメラ6で撮影して得られた映像11を鏡像とし、例えば図4に示すように、運転席8に着座しているオペレータPが二点鎖線で示す仮想のサイドミラー10で見る映像と同等となるように加工してディスプレイするように設定してある。図2には、該後方監視カメラ6で撮影して得られた映像を鏡像でモニタ7の画面にディスプレイしている一例を示している。なお、本実施例におけるモニタ7の画面は、オペレータがサイドミラーの画像を見ているように、表示画面もサイドミラーの画面の形で表示している。しかし、この画面の形はこれ以外の形であってもよい。また、該後方監視カメラ6で撮影して得られた映像11を鏡像に変換処理するには、後方監視カメラ6内で光学的または電気的に変換処理してもよいし、あるいはモニタ7内で電気的に処理してもよい。
【0016】
したがって、運転席8に着座してオペレータが見るモニタ7の画面上の映像11は、バックミラーを介して得られる光学的な反射像、すなわち鏡像の状態で見ることができる。また、該モニタ7は、オペレータが見やすいように任意に回転させて、画面の角度を自由に調整することができるようにしてキャブ4に取り付けられている。
【0017】
このような構成において、油圧ショベル1を後進させる場合、オペレータは運転席8に着座して側方のモニタ7の画面を見た状態のままで、前記後方監視カメラ6によって撮影される後方の映像11をバックミラー(図4に示す仮想のバックミラー10)で見る映像と同等となるようにして確認できる。このときの確認できる視野は、オペレータがキャブ4の中から後方を振り返って確認した場合の視野では死角である後方部の近傍も範囲内に納めることができる。これにより、オペレータは、後進操作を行う前に油圧ショベル1の後進方向に人間や他の障害物があるか否かを判断して後進動作を開始できる。すなわち、危険を前もって予知することが可能となる。
【0018】
また、従来の監視カメラシステムのように運転席8の前方にモニタを設置していた場合では、該モニタがオペレータの視界の妨げになる問題や、モニタ画面とオペレータの目との間の距離が大きく離れて見づらいという問題があったが、この実施例の場合では、モニタ7を運転席8の左右いずれかの側方に設置しているので、モニタ7がオペレータの前方視界を妨げることはなく、モニタ7の画面とオペレータの目との距離を最大限に近づけて画面を見やすくすることができる。さらに、バックミラーを見るように視認性を向上させてオペレータによる操作をスムーズに行わせることができる。
【0019】
なお、上記実施例の構造では、後方監視カメラ6によって撮影される映像11だけをモニタ7の画面にディスプレイしている場合について説明したが、これ以外に、例えば図3に示しているように後方監視カメラ6による映像11と同時に残燃料や水温等の機械情報をモニタ7の画面にディスプレイするように構成してもよい。すなわち、図3では、モニタ7の画面に後方監視カメラ6による映像11と残燃料を示す機械情報12及び水温を示す機械情報13を同時にディスプレイしている状態を示している。このようにした場合では、オペレータはモニタ7の画面に集中でき、また疲労も軽減できる。さらに、後方監視情報と機械情報をモニタの画面に集約させると構造の簡略化も可能になる。
【0020】
また、運転席8の近傍にモニタ画面の切り換え手段を設け、例えば図2に示す機械情報を表示しないモニタ画面モードと図3に示す映像11と機械情報12,13を同時に表示しているモニタ画面モードとに切り換えできるようにしてもよい。
【0021】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】発明に係る作業機械の一例として示す油圧ショベルの平面図。
【図2】モニタ画面の一例を示す図。
【図3】モニタ画面の他の例を示す図。
【図4】仮想的なサイドミラーを示す図。
【符号の説明】
【0023】
1 油圧ショベル
2 下部走行体
3 上部旋回体
4 キャブ
5 作業機
6 後方監視カメラ7 モニタ
8 運転席10
10 仮想のサイドミラー
11 映像
12 残燃料を示す機械情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後方監視カメラと該後方監視カメラで撮影された映像をディスプレイするモニタとを有する後方確認用モニタ装置を備える作業機械において、
前記モニタを運転席の左右いずれかの側方に設置するとともに、該モニタの画面に、前記後方監視カメラで撮影して得られた映像を加工して鏡像とし、かつ、サイドミラーで見る映像と同等となるようにしてディスプレイすることを特徴とする後方確認用モニタ装置。
【請求項2】
上記モニタの画面に、上記後方監視カメラで得られた上記映像と同時に残燃料や水温等の機械情報をディスプレイすることを特徴とする請求項1記載の後方確認用モニタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−70929(P2010−70929A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−237182(P2008−237182)
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【出願人】(502246528)住友建機株式会社 (346)
【Fターム(参考)】