説明

徐放性カルベジロール製剤

【課題】適切な生体内利用率と徐放性を備えたカルベジロール徐放性製剤の提供。
【解決手段】投与回数が少ない、好ましくは一日一回の投与向けの徐放性カルベジロール製剤であって、前記徐放性製剤が治療有効量のカルベジロールまたはその薬学的に許容される塩と、マトリックス形成ポリマーと、溶解性エンハンサーと、薬学的に許容されるキャリアを含み、一実施態様においては、治療有効量のカルベジロールを含む徐放性製剤が、異なる放出プロファイルを持つ2つ以上のサブユニットを含み、前記徐放性製剤は心血管系疾患などの1つ以上の疾患の治療及び(または)予防に使用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投与回数が少ない、好ましくは一日一回の投与向けの徐放性カルベジロール製剤に関する。特に本発明は、心血管系疾患などに罹患した被験者における1つ以上の疾患の治療及び(または)予防における前記徐放性製剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
カルベジロールの化学名は、((±)1−(カルバゾール−4−イルオキシ−3−[[2−(o−メトキシフェノキシ)エチル]−アミノ]−2−プロパノール)であり、その構造は下記化学式1で表わされる。
【化1】

【0003】
カルベジロールは、α−アドレナリン受容体遮断による血管拡張作用を備えた非選択的βアドレナリン遮断薬である。高血圧や鬱血性心不全、または心筋梗塞後の左心室機能不全などの心血管系疾患の治療に一般的に用いられる。カルベジロールの抗高血圧作用は主にα−アドレナリン受容体遮断の結果であり、一方β−アドレナリン遮断作用は、高血圧の治療において使用されたとき、不要な副作用(主に反射性心頻拍)を防止する。
【0004】
しかしながら、カルベジロールには病状の治療において特定の不利な点もある。例えば、カルベジロールは溶解性と安定性の問題があり、生体内利用率が低いことで知られている。弱塩基であるため、溶解性はpH値によって決まる。薬理学的に適した1〜8のpH値の範囲で、水溶液中のカルベジロールの溶解性は約0.01mg/mlから約1mg/mlに増加する。さらに、カルベジロールは水、胃液(人工、TS、pH1.1)、腸液(人工、パンクレアチンを含まないTS、pH7.5)での溶解性が低い。また、カルベジロールは吸収帯が狭い。カルベジロールの空腸、回腸、結腸での相対吸収率はそれぞれ56%、28%、7%と報告されている(例:特許文献1及び非特許文献1を参照)。カルベジロールの溶解性及び吸収の制限が、一日二回投与されるカルベジロールの即放性市販製剤に影響を与えている(例:Coreg(登録商標)処方情報を参照)。
【0005】
上述の不利な点と現在利用可能なカルベジロール製剤を踏まえ、適切な生体内利用率と徐放性を提供し、必要な投与回数を減少できる、カルベジロール徐放性製剤が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2003/028718号パンフレット
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Nolteら、Arzneimittelforschung、1999年、第49巻、第9号、745−9頁。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、適切な生体内利用率と徐放性を備えたカルベジロール徐放性製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のカルベジロール徐放性製剤は、治療有効量のカルベジロールまたはその薬学的に許容される塩と、マトリックス形成ポリマーと、溶解性エンハンサーと、薬学的に許容されるキャリアを含む。
【0010】
本発明はさらに、2つ以上のサブユニットを備えたカルベジロール徐放性製剤を提供し、前記サブユニットのうち少なくとも1つのサブユニットが治療有効量のカルベジロールまたはその薬学的に許容される塩と、マトリックス形成ポリマーと、薬学的に許容されるキャリアを含み、かつそのうち少なくとも1つのサブユニットが、治療有効量のカルベジロールまたはその薬学的に許容される塩と、マトリックス形成ポリマーと、溶解性エンハンサーと、薬学的に許容されるキャリアを含む。
【0011】
特に、本発明が提供する徐放性製剤は、
(a)治療有効量のカルベジロール遊離塩基またはそのカルベジロール塩、
(b)メトセルK15M約20%〜約60重量%(例:約25%〜約35重量%)、メトセルK100M約15%〜約20重量%、メトセルE4M約25%〜約35重量%、オイドラギットRSPO約35%〜約45重量%、WSR N12NF約35%〜約55重量%のうち1つ以上を含むマトリックス形成ポリマー、
(c)ポビドン約25%〜約55重量%、PEG6000約25%〜約35重量%、HPC−L約35%〜約45重量%のうち1つ以上を含む溶解性エンハンサー、
(d)コーンスターチ約15%〜約35重量%またはステアリン酸マグネシウム約0.1%〜約2重量%のうち1つ以上を含む賦形剤、
を含む。
【0012】
また本発明は、2つ以上のサブユニットを含む徐放性製剤を提供し、そのうち、前記サブユニットのうち少なくとも1つが治療有効量のカルベジロール遊離塩基またはそのカルベジロール塩と、マトリックス形成ポリマーと、溶解性エンハンサーと、薬学的に許容されるキャリアを含む即放性カルベジロールサブユニットであり、前記サブユニットのうち少なくとも1つが治療有効量のカルベジロール遊離塩基またはそのカルベジロール塩と、マトリックス形成ポリマーと、薬学的に許容されるキャリアを含む徐放性カルベジロールサブユニットである。
【0013】
本発明の一実施態様によると、前記カルベジロールは遊離塩基カルベジロールである。
【0014】
本発明の一実施態様によると、前記マトリックス形成ポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリオキシエチレンオキシド、アルギン酸、メチルセルロース、エチルセルロース、メタクリル酸エステル共重合体、またはヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)のうち1つ以上を含む。
【0015】
本発明の一実施態様によると、前記溶解性エンハンサーは、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、またはラウリル硫酸ナトリウム(SLS)のうち1つ以上を含む。
【0016】
本発明の一実施態様によると、前記薬学的に許容されるキャリアは、ラクトース、コーンスターチまたはステアリン酸マグネシウムのうち1つ以上を含む。
【0017】
さらに本発明の提供する徐放性製剤は、
(i)治療有効量のカルベジロール遊離塩基またはそのカルベジロール塩、
(ii)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリオキシエチレンオキシド、アルギン酸、メチルセルロース、エチルセルロース、メタクリル酸エステル共重合体、またはヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)のうち1つ以上を含むマトリックス形成ポリマー約4%〜約5重量%、
(iii)賦形剤約0.01%〜約0.1重量%、
を含む1つ以上の即放性サブユニットと、
(i)治療有効量のカルベジロール遊離塩基またはそのカルベジロール塩、
(ii)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリオキシエチレンオキシド、アルギン酸、メチルセルロース、エチルセルロース、メタクリル酸エステル共重合体、またはヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)のうち1つ以上を含むマトリックス形成ポリマー 約20%〜約55重量%、
(iii)ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、またはラウリル硫酸ナトリウム(SLS)のうち1つ以上を含むマ溶解性エンハンサー約1.0%〜約30重量%、
(iv)賦形剤約0.01%〜約25重量%、
を含む、1つ以上の徐放性サブユニットを含む。
【0018】
本発明の一実施態様によると、前記エチルセルロースはエトキシル約20%〜約80%(w/w)を含む。
【0019】
本発明の一実施態様によると、前記ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)のメトキシル含有量は、約10%〜約60%(w/w)である。
【0020】
本発明の一実施態様によると、前記賦形剤は、ラクトース、コーンスターチまたはステアリン酸マグネシウムのうち1つ以上を含む。
【0021】
本発明の一実施態様によると、前記徐放性製剤は、徐放性製剤の対数変換後のAUC0−∞の幾何平均値対対照製剤(Coreg CR(商標))の対数変換後のAUC0−∞の幾何平均値の比が約0.80〜約1.20を示す、または、
前記徐放性製剤は、徐放性製剤の対数変換後のAUC0−tの幾何平均値対対照製剤(Coreg CR(商標))の対数変換後のAUC0−tの幾何平均値の比が約0.80〜約1.20を示す、または、
前記徐放性製剤は、徐放性製剤の対数変換後のCmaxの幾何平均値対対照製剤(Coreg CR(商標))の対数変換後のCmaxの幾何平均値の比が約0.80〜約1.20を示す。
【0022】
本発明の一実施態様によると、前記徐放性製剤は患者への経口投与の約4時間後に第1最高血漿中濃度Tmax1、約24時間後に第2最高血漿中濃度Tmax2を示す。
【0023】
さらに本発明が提供する徐放性製剤の製造方法は、
(i)治療有効量のカルベジロール、マトリックス形成ポリマー約4%〜約5重量%を混合して第1混合物を形成する工程、
(ii)前記第1混合物を粒状化して第1粒剤とする工程、
を含む即放性サブユニットを作製する工程と、
(i)治療有効量のカルベジロールと、マトリックス形成ポリマー約20%〜約55重量%を混合して混合物を形成する工程、
(ii)前記混合物に溶解性エンハンサー約1.0%〜約30重量%を添加して第2混合物を形成する工程、
(iii)前記第2混合物を粒状化して第2粒剤とする工程、
を含む徐放性サブユニットを作製する工程と、
賦形剤約0.01%〜約25重量%を前記第1粒剤と第2粒剤に添加し、前記第1粒剤と第2粒剤を圧縮して錠剤を形成する工程と、
を含む。
【0024】
本発明の一実施態様によると、前記第1混合物の粒状化の工程はさらに、前記第1混合物を約50℃〜約70℃の温度で加熱することを含む。前記第1混合物の粒状化の工程はさらに、20メッシュのふるいで前記第1混合物をふるうことを含んでもよい。
【0025】
本発明の一実施態様によると、前記第2混合物の粒状化の工程はさらに、前記第2混合物を約50℃〜約70℃の温度で加熱することを含む。前記第2混合物の粒状化の工程はさらに、20メッシュのふるいで前記第2混合物をふるうことを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】表1の徐放性製剤の溶出性を示すグラフである。
【図2】表2の徐放性製剤の溶出性を示すグラフである。
【図3】表3の徐放性製剤の溶出性を示すグラフである。
【図4】表4の徐放性製剤の溶出性を示すグラフである。
【図5】表5の徐放性製剤の溶出性を示すグラフである。
【図6】表6の徐放性製剤の溶出性を示すグラフである。
【図7】表7の徐放性製剤の溶出性を示すグラフである。
【図8】表8と表9のT1及びT2製剤の溶出性を示すグラフである。
【図9】表10のT4製剤の溶出性を示すグラフである。
【図10A】被験者が対照製剤(Coreg CR(商標))(●R−平均)とT4製剤(△T−平均)の投与を受けた後のカルベジロールの平均血漿中濃度−時間特性を示す縦軸線形プロットである。
【図10B】被験者が対照製剤(Coreg(商標))(●R−平均)とT4製剤(△T−平均)の投与を受けた後のカルベジロールの平均血漿中濃度−時間特性を示す縦軸対数線形プロットである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、治療有効量のカルベジロールまたはその薬学的に許容される塩と、マトリックス形成ポリマーと、溶解性エンハンサーと、薬学的に許容されるキャリアを含む、徐放性カルベジロール製剤を提供する。
【0028】
本発明の別の態様において、前記徐放性製剤は2つ以上のサブユニットを含み、そのうち、少なくとも1つのサブユニットが「即放性」サブユニットであり、少なくとも1つのサブユニットが「徐放性」サブユニットである。前記徐放性製剤は、カルベジロールをゆっくりと放出する徐放性サブユニットと、カルベジロールをより迅速に放出してカルベジロールの初期投与量を提供する即放性サブユニットにより、カルベジロールを異なる速度で放出することで希望の薬物動態プロファイルを提供する。サブユニットの構成の一例は、単層即放性サブユニットに単層徐放性サブユニットを組み合わせて二層製剤を形成する。第二の例は、徐放性サブユニットがコアを形成し、即放性サブユニットにより周囲が覆われた構成である。
【0029】
「即放性サブユニット」は、治療有効量のカルベジロールまたはその薬学的に許容される塩、マトリックス形成ポリマー、薬学的に許容されるキャリアを含む。即放性サブユニットは、投与後2時間内に、通常は投与後1時間内に、カルベジロールの約60%以上が放出される、従来のまたは未変更の方法でカルベジロールを放出する。
【0030】
「徐放性サブユニット」は、治療有効量のカルベジロールまたはその薬学的に許容される塩と、マトリックス形成ポリマーと、溶解性エンハンサーと、薬学的に許容されるキャリアを含む。これは、投与後長い時間にわたり、好ましくは約24時間にわたって、制御された、または変更された方法でカルベジロールを放出する。前記溶解性エンハンサーは近位小腸でのカルベジロールの溶解性を高め、吸収時間を延長する働きをする。
【0031】
「サブユニット」は、組成物、混合物、粒子、沈殿物、マイクロカプセル、マイクロタブレット、またはカルベジロールを単独で、または別のサブユニットと組み合わせて送達することができるその他薬学的に許容される構成を含む。
【0032】
ここで使用される「有効量」とは、高血圧、息切れ、足首の腫れなどの心血管系疾患の1以上の症状を緩和または軽減する量を指す。ここで使用される「制御された放出」という語は、投与後長時間、好ましくは24時間にわたり、制御された速度でカルベジロールを徐々に放出することを指す。カルベジロールの血漿中濃度が長時間、好ましくは24時間にわたり、治療域内に留まる。
【0033】
カルベジロール
本発明の製剤は、治療有効量のカルベジロールを含み、これはカルベジロール米国特許第4503067号などに記載される既知の方法で作製することができ、この特許は参照としてその全体が本明細書に組み込まれる。一実施態様において、カルベジロールは遊離塩基の形態である。
【0034】
「薬学的に許容される塩」は、カルベジロールが酸性塩を作ることで改変された、カルベジロールの誘導体を含む。薬学的に許容される塩の例としては、例えば塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、硫酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、安息香酸、クエン酸、マレイン酸、コハク酸、メタンスルホン酸など無機酸または有機酸の塩を含むが、これに限らない。カルベジロール塩の例としては、カルベジロール安息香酸塩、カルベジロールクエン酸塩、カルベジロールグルタル酸塩、カルベジロール臭化水素酸塩、カルベジロール塩酸塩、カルベジロールリン酸水素塩、カルベジロールリン酸二水素塩、カルベジロール乳酸塩、カルベジロールマンデル酸塩、カルベジロールマレイン酸塩、カルベジロールメシル酸塩、カルベジロールシュウ酸塩、カルベジロール硫酸塩、または前述の塩の水和物または溶媒和物を含む。
【0035】
本発明で使用されるカルベジロールまたはその薬学的に許容される塩は、結晶質、非晶質、多形、無水、水和の形態、またはそれらの形態の組み合わせとすることができる。
【0036】
マトリックス形成ポリマー
徐放性製剤はマトリックス型製剤であり、その中で有効な化合物がマトリックス形成ポリマーを使用してマトリックスに均一に分散される。本発明で使用するマトリックス形成ポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリオキシエチレンオキシド、アルギン酸、メチルセルロース、エチルセルロース、メタクリル酸エステル共重合体、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、またはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0037】
一実施態様において、HPMCは約4,000〜約220,000Daの範囲内の分子量を有する。ここで使用する「約」とは、挙げられた値の±15%を指す。当業者であれば、本発明の製剤では異なるグレードのHPMCを使用可能であることを理解するであろう。例えば、Methocel(商標) E4M Premium 2、Methocel(商標) E10M Premium CR、METHOCEL(商標)F50 Premium、METHOCEL(商標) F4M Premium、METHOCEL(商標) K4M Premium2、METHOCEL(商標) K15M Premium2、METHOCEL(商標) K100M 10 Premium2(Dow Chemical社より市販)が使用可能である。
【0038】
別の実施態様において、ポリオキシエチレンオキシドは約100,000〜約7,000,000Daの範囲内の分子量を有する。当業者であれば、本発明の製剤では異なるグレードのポリオキシエチレンオキシドを使用可能であることを理解するであろう。例えば、Polyox(商標) WSR N−10 NF、15 Polyox(商標) WSR N−12 NF、Polyox(商標) WSR N−80 NF、Polyox(商標) WSR N−750 NF、Polyox(商標) WSR−205 NF、Polyox(商標) WSR−1105 NF、Polyox(商標) WSR N−12K NF、Polyox(商標) WSR N−60K NF、Polyox(商標) WSR−301 NF、Polyox(商標) WSR Coagulant NF、Polyox(商標) WSR−303 NF(Dow Chemical社より市販)が使用可能である。
【0039】
別の実施態様において、アルギン酸は約10,000〜約50,000Daの範囲内の分子量を有する。当業者であれば、本発明の製剤では異なるグレードのアルギン酸を使用可能であることを理解するであろう。
【0040】
本発明の一実施態様において、メチルセルロースは約10,000〜約250,000Daの範囲内の分子量を有する。当業者であれば、本発明の製剤では異なるグレードのメチルセルロースを使用可能であることを理解するであろう。メチルセルロースの例としては、METHOCEL(商標) A15 Premium LV、METHOCEL(商標) A4C Premium、METHOCEL(商標) A15C Premium、METHOCEL(商標) A4M Premium(Dow Chemical社より市販)を含む。
【0041】
さらに別の一実施態様において、エチルセルロースはエトキシル約20%〜約80%(w/w)、好ましくは約45%〜55%(w/w)を含む。エチルセルロースの例としては、ETHOCEL Standard 4 Premium、ETHOCEL Standard 7 Premium、ETHOCEL Standard 10 Premium、ETHOCEL Standard 14 Premium、ETHOCEL Standard 20 Premium、ETHOCEL Standard 45 Premium、ETHOCEL Standard 100 Premium(Dow Chemical社より市販)を含む。
【0042】
別の一実施態様において、メタクリル酸エステル共重合体は約10,000〜約1,500,000Daの範囲の分子量を有する。メタクリル酸エステル共重合体の例としては、EUDRAGIT(登録商標) L、EUDRAGIT(登録商標) S 100、EUDRAGIT(登録商標) E 100、EUDRAGIT(登録商標) E PO、EUDRAGIT(登録商標) E 12.5、EUDRAGIT(登録商標) L 100−55、EUDRAGIT(登録商標) L 30 D−55、EUDRAGIT(登録商標) NE 30 D、EUDRAGIT(登録商標) RL 100、EUDRAGIT(登録商標) RS 100、10 EUDRAGIT(登録商標) RL PO、EUDRAGIT(登録商標) RS PO、EUDRAGIT(登録商標) RL 12.5、EUDRAGIT(登録商標) RS 12.5、EUDRAGIT(登録商標) RL 30 D、EUDRAGIT(登録商標) RS 30 D、EUDRAGIT(登録商標) NM 30 D、EUDRAGIT(登録商標) FS 30 D(Evonik Industries AG社より市販)を含む。
【0043】
別の一実施態様において、HEMCはメトキシル含有量約10〜約60%(w/w)、好ましくは約15%〜約45%(w/w)を含む。HEMCの例としては、CULMINAL(登録商標)(Ashland社より市販)を含む。
【0044】
溶解性エンハンサー
本発明の溶解性エンハンサーは、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0045】
一実施態様において、HPCは約50,000〜約1,250,000Daの分子量を有する。HPCの例としては、HPC−L、HPC−M、HPC−SL(Nisso America社より市販)を含む。
【0046】
一実施態様において、HECは約80,000〜約1,500,000Daの分子量を有する。HECの例としては、Ashland社より市販されているNatrosol(登録商標)を含む。
【0047】
別の一実施態様において、PVPは約2,500〜約3,000,000Daの分子量を有する。PVPの例としては、BASFにより市販されているKollidon(登録商標)を含む。
【0048】
さらに別の一実施態様において、PEGは約200〜約35,000Daの分子量を有する。PEGの例としては、PEG200、PEG400、PEG600、PEG1000、PEG2000、PEG3000、PEG4000、PEG6000、PEG8000を含む。
【0049】
薬学的に許容されるキャリア
本発明の一実施態様において、「薬学的に許容されるキャリア」とは、被験者に投与した後、好ましくない生理学的作用を引き起こさないキャリアを指す。薬学的組成物におけるキャリアは、有効成分と適合性があり、かつ、好ましくは、それを安定化させることができるという意味で「許容される」必要がある。カルベジロールの送達用の薬学的キャリアとして1つ以上の可溶化剤を使用することができる。薬学的に許容されるキャリアは、当業者が従来使用する基準で選択することができる。薬学的に許容されるキャリアは、滅菌水または食塩水、水電解質溶液、等張性調節剤、ポリエチレングリコールなどの水ポリエーテル(water polyether)、ポリビニルアルコールやポビドンなどのポリビニル、メチルセルロースやヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体、カルボキシポリメチレンゲルなどのアクリル酸のポリマー、デキストランなどの多糖類、およびヒアルロン酸ナトリウムなどのグリコサミノグリカン、塩化ナトリウムや塩化カリウムなどの塩を含むが、これらに限らない。
【0050】
本発明の別の一実施態様において、薬学的に許容されるキャリアとは、充填剤、増量剤、結合剤、保湿剤、崩壊剤、湿潤剤、および(または)潤滑剤など、充填剤、増量剤、結合剤、保湿剤、崩壊剤、湿潤剤、および(または)潤滑剤など経口製剤で一般的に用いられる1つ以上の賦形剤を指す。本発明で使用される賦形剤の例としては、セルロース、微晶質、でんぷん、コーンスターチ、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、ケイ酸、クエン酸、クロスポビドン、塩化ナトリウム、セチルアルコール、グリセロールモノステアレート、カオリン、ベントナイト粘土、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコールを含むが、これらに限らない。
【0051】
製剤
本発明において、前記カルベジロールは製剤の約1%〜約40重量%、好ましくは約9%〜約25%、より好ましくは約9.5%〜10.5%の量で含まれる。前記マトリックス形成ポリマーは製剤の約10%〜約80重量%、好ましくは約2%〜約55%、より好ましくは約35%〜45%の量で含まれる。前記溶解性エンハンサーは製剤の約0.1%〜約60重量%、好ましくは約1.5%〜55%、より好ましくは約15%〜25%の量で含まれる。前記賦形剤は製剤の約0.1%〜約75重量%、好ましくは約0.3%〜約35%の量で含まれる。
【0052】
一実施態様において、前記徐放性製剤はHPMC約15%〜約35%と、PVP約20%〜約55%の組み合わせを含む。別の一実施態様において、前記徐放性製剤はHPMC約25%〜約35%と、PEG約25%〜約35%の組み合わせを含む。別の一実施態様において、前記徐放性製剤はオイドラギット約35%〜約45%と、HPC約35%〜約45%の組み合わせを含む。別の一実施態様において、前記徐放性製剤はポリオキシエチレンオキシド約40%〜約50%と、PVP約25%〜約35%の組み合わせを含む。さらに別の一実施態様において、前記徐放性製剤はポリオキシエチレンオキシド約35%〜約45%と、HPC約35%〜約45%の組み合わせを含む。
【0053】
本発明の薬学的組成物は、選択された投与方法に適した任意の形態に構成することができる。例えば、経口投与に適した組成物には、丸薬、カプセル、顆粒、錠剤、粉末などの固体形態、および溶液、シロップ、エリキシル剤、懸濁液などの液体形態が含まれる。非経口投与に便利な形態には、滅菌溶液、乳剤、懸濁液が含まれる。
【0054】
前記カルベジロール徐放性製剤は、乾式造粒法または湿式造粒法の後に加圧または圧縮するなどの従来の方法を使用して作製することができる。例えば、最も一般的な作製法は、マトリックス形成ポリマー及び溶解性エンハンサーとカルベジロールを混合し、この混合物を粒状化した後、形成された顆粒を10〜40(好ましくは20〜30)メッシュのふるいで篩い、この顆粒を約50℃〜約70℃(好ましくは約60℃)で加熱し、顆粒を圧縮して錠剤とすることを含む。作製の詳細については後の例で説明する。
【0055】
溶出性
溶出性とは、時間の関数としての放出された有効成分の累積量のプロットである。溶出性は、標準試験USP 26(試験<711>)に含まれる薬物溶出試験<724>を使用して測定することができる。挙動は、例えば装置の種類、シャフト速度、温度、量、溶出溶媒のpHなどの選択された試験条件によって特徴付けられる。二つ以上の溶出性を測定することが可能である。例えば、第一の溶出性を胃に類似したpHレベルで測定し、第二の溶出性を腸の一点に類似したpHレベルで、または腸の複数の点に類似した複数のpHレベルで測定することができる。
【0056】
強酸性pHを用いて胃を模擬し、より弱い酸性から塩基性のpHまでを用いて腸を模擬することができる。「強酸性pH」という語は、約1〜約4.5のpHを指す。例えば約1.2のpHを使用して、胃のpHを模擬することができる。「より弱い酸性から塩基性のpHまで」という語は、約4より大きく約7.5までのpHを指し、特に約6〜約7.5を指す。約6〜約7.5、特に約6.8のpHを使用して腸のpHを模擬することができる。
【0057】
薬物動態試験
対照製剤に対するカルベジロール組成物の生物学的同等性は、生体内生物学的同等性試験によって判定でき、カルベジロール組成物に関する薬物動態パラメータを判定することができる。具体的に、生物学的同等性は、生体内生物学的同等性試験によって2つの組成物に関する薬物動態パラメータを比較することで判定することができる。カルベジロール組成物または対照製剤に関する薬物動態パラメータは、反復または非反復設計を使用して単回または反復投与の生物学的同等性試験で測定することができる。試験組成物と対照製剤の単回投与が行われ、有効成分の血液または血漿レベルが時間経過と共に測定される。有効成分の吸収速度と程度を特徴付ける薬物動態パラメータが統計的に評価される。
【0058】
0時間から最終測定可能時間まで(AUC0−t)及び無限時間まで(AUC0−∞)、Cmax、Tmaxの血漿中濃度−時間曲線下面積は、標準の手法に従い判定することができる。対数変換後のデータ(例:AUC0−t、AUC0−∞、またはCmaxデータ)について、分散分析(ANOVA)を用い、薬物動態データの統計分析が行われる。
【0059】
別の一実施態様において、徐放性カルベジロール組成物とRLD(reference listed drug、承認済み対照製剤)間でFDA(米国食品医薬品局)の『APPROVE DRUG PRODUCTS WITH THERAPEUTIC EQUIVALENCE EVALUATIONS』(承認医薬品と治療同等性評価)(通称オレンジブック)に指定された強度を使用して単回投与薬物動態試験が実施される。
【0060】
米国FDAの指針に基づき、2つの製品(例:発明された組成物とCOREG CR(商標))は、2つの製品に関する対数変換後のAUC0−t、AUC0−∞、Cmaxの幾何平均値の比の90%信頼区間(CI)限界値が約0.80〜約1.25の場合、生物学的に同等である。
【0061】
一実施態様において、ある特定の試験で、対数変換後のAUC0−t、AUC0−∞、またはCmax比の幾何平均値の試験製剤/対照製剤両方の比に加え、その対応する上下の90%CI限界値が約0.80の下限値と約1.25の上限値の範囲内である場合、カルベジロール組成物はCOREG CR(商標)と生物学的に同等であると見なされる。したがって、カルベジロール組成物とCoreg CR(商標)間の直接比較において、カルベジロール組成物とCoreg CR(商標)を同一の薬物動態試験でつき合わせ、薬物動態パラメータを判定することがより好ましい場合がある。
【0062】
本発明の徐放性製剤は、投与後、周囲のpHが中性になった(つまり体内で小腸を通過中)としても、カルベジロールの放出が少なくとも6時間、好ましくは少なくとも12時間、より好ましくは少なくとも24時間にわたって行われるように延長することができる。
【0063】
したがって、本発明はさらに、ここで開示且つ説明される1つ以上のサブユニットを含む徐放性カルベジロール製剤を被験者に投与することを含む、必要とする被験者にカルベジロールを送達する方法を提供する。
【0064】
本発明の方法は、高血圧、狭心症、鬱血性心不全、心筋梗塞後の左心室機能不全などの心血管系疾患の治療に有用である。
【0065】
次の例は本発明をさらに説明するものである。これらの例は本発明を説明することのみを意図しており、本発明を制限すると見なされない。
【実施例】
【0066】
(実施例1)
カルベジロール徐放性製剤の作製
本発明の徐放性製剤は、以下に示すように、湿式造粒とその後の圧縮によって作製される。
1、カルベジロールとその他成分(マトリックス形成ポリマーと溶解性エンハンサーを含む)の正確な分量を測定し(ステアリン酸マグネシウムを除く)、高せん断造粒機に移した。
2、工程1の成分を撹拌機に入れ、適切な撹拌翼とチョッパ速度で3分間撹拌し、混合物を形成した。
3、工程2の混合物をエタノールと水に分散させ、造粒プロセスを開始した。
4、撹拌翼とチョッパの設定及び造粒溶液の特性が監視された。
5、造粒機を使って工程4の造粒溶液を粒状化し、造粒終了点に達したとき、20〜30メッシュのふるいで篩った。
6、工程5の顆粒を60℃のオーブンで加熱し、顆粒の湿気を1.0%〜3.0%の範囲で維持した。
7、ステアリン酸マグネシウムの正確な量を測定し、工程6の顆粒に混合した。
8、工程7の試料を高速ロータリー式打錠機で圧縮し、錠剤にした。
【0067】
表1〜表7に上記工程に従って作製された徐放性製剤の内容を示す。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【0068】
(実施例2)
カルベジロール徐放性製剤の溶出試験
米国薬局方(USP 31−NF 26)711、Dissolution、Apparatus IIに従って溶出が行われた。最初の120分間、塩酸(0.1N)が溶出溶媒として使用された。リン酸緩衝液を添加して溶出溶媒のpHがpH4.5に変更された。240分時、リン酸緩衝液をさらに添加して溶出溶媒がpH6.8に変更された。パドル回転速度100rpmで24時間にわたり900mlの溶出溶媒中で溶出が行われた。適切な時間間隔で試料が採取され、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)によりカルベジロール含有量について分析が行われた。
【0069】
図1から図7に表1から表7の製剤の溶出性をそれぞれ示す。これらの結果は、表1から表7に従って作製された徐放性製剤の放出時間が延長され、少なくとも24時間にわたり適切な溶出が維持されることを示している。
【0070】
(実施例3)
徐放性製剤(T1製剤)の作製
即放性サブユニット
次に示すように、即放性サブユニットが造粒プロセスの後、圧縮によって圧縮サブユニットとして作製された。
1、カルベジロール76.25 グラム、Flow Lac 100(ラクトース)296.25 グラムとメトセルK100LV125.60グラムを計量し、5分間撹拌した。
2、工程1の混合物を40メッシュのふるいで篩い、さらに10分間撹拌した。
3、工程2の混合物を高せん断造粒機に移し、1分間混合した。
4、工程3の混合物を95%エタノール200mlと水55mlに分散させ、造粒プロセスを開始した。
5、工程4の顆粒を60℃のオーブンで8時間加熱し、顆粒に含まれる湿気を1.0%〜3.0%の範囲で維持した。
6、造粒溶液をさらに20メッシュのふるいで篩った。
7、ステアリン酸マグネシウム1.5グラムをロータリー式ダブルデッキ打錠機の第1セル内の前記即放性顆粒に添加した。
【0071】
徐放性サブユニット
次に示すように、徐放性サブユニットが造粒プロセスの後、圧縮によって圧縮サブユニットとして作製された。
1A、カルベジロール240.0グラム 、コーンスターチ600グラム、メトセルK15M 600グラムを計量し、5分間混合した。
2A、工程1Aの混合物を40メッシュのふるいで篩い、さらに10分間混合された。
3A、工程2Aの混合物を高せん断造粒機に移し、1分間混合した。
4A、工程3Aの混合物を95%エタノール638.5mlに分散させ、5分間混合した。
5A、ポビドンK30を187.5グラム添加して1分間混合し、さらにポビドンK30を250グラム添加して1分間混合し、もう一度ポビドンK30を250グラム添加して3分間混合した。
6A、工程5Aの顆粒を60℃のオーブンで8時間加熱し、顆粒に含まれる湿気を1.0%〜3.0%の範囲で維持した。
7A、造粒溶液をさらに20メッシュのふるいで篩った。
8A、ステアリン酸マグネシウム6.0グラムをロータリー式ダブルデッキ打錠機の第2セル内の前記徐放性顆粒に添加した。
【0072】
徐放性製剤の形成
工程8Aの徐放性顆粒及び工程7の即放性顆粒をロータリー式ダブルデッキ打錠機で圧縮して二層徐放性製剤が形成された。この徐放性カルベジロール製剤はカルベジロールを合計約63.46mg含有する。表8に上述のプロセスで製造された徐放性製剤(T1製剤)の成分を示す。
【0073】
【表8】

【0074】
(実施例4)
徐放性製剤(T2製剤)の作製
即放性サブユニット
次に示すように、即放性サブユニットが造粒プロセスの後、圧縮によって圧縮サブユニットとして作製された。
1、カルベジロール76.25グラム、Flow Lac 100(ラクトース)296.25グラム、メトセルK100LV125.60グラムを計量し、5分間撹拌した。
2、工程1の混合物を40メッシュのふるいで篩い、さらに10分間撹拌した。
3、工程2の混合物を高せん断造粒機に移し、1分間混合した。
4、工程3の混合物を95%エタノール200mlと水55mlに分散させ、造粒プロセスを開始した。
5、工程4の顆粒を60℃のオーブンで8時間加熱し、顆粒に含まれる湿気を1.0%〜3.0%の範囲で維持した。
6、造粒溶液をさらに20メッシュのふるいで篩った。
7、ステアリン酸マグネシウム1.5グラムをロータリー式ダブルデッキ打錠機の第1セル内の前記即放性顆粒に添加した。
【0075】
徐放性サブユニット
次に示すように、徐放性サブユニットが造粒プロセスの後、圧縮によって圧縮サブユニットとして作製された。
1A、カルベジロール240.0グラム、コーンスターチ500グラム、メトセルK15M1500グラム、ラウリル硫酸ナトリウム50グラムを計量し、混合物を5分間撹拌した。
2A、工程1Aの混合物を40メッシュのふるいで篩い、さらに10分間撹拌した。
3A、工程2Aの混合物を高せん断造粒機に移し、1分間混合した。
4A、工程3Aの混合物を95%エタノール1374mlと水1832mlに分散させ、3分間混合した。
5A、工程4Aの顆粒を60℃のオーブンで8時間加熱し、顆粒に含まれる湿気を1.0%〜3.0%の範囲で維持した。
6A、造粒溶液をさらに20メッシュのふるいで篩った。
7A、ステアリン酸マグネシウム6.0グラムをロータリー式ダブルデッキ打錠機の第2セル内の前記徐放性顆粒に添加した。
【0076】
徐放性製剤の形成
工程7Aの徐放性顆粒及び工程7の即放性顆粒をロータリー式ダブルデッキ打錠機で圧縮して二層徐放性製剤が形成された。この徐放性カルベジロール製剤はカルベジロールを合計約63.46mg含有する。表9に上述のプロセスで製造された徐放性製剤(T2製剤)の成分を示す。
【0077】
【表9】

【0078】
(実施例5)
カルベジロール徐放性製剤(T1/T2製剤)の溶出試験
米国薬局方(USP 31−NF 26)711、Dissolution、Apparatus IIに従って溶出が行われた。最初の120分間、塩酸(0.1N)が溶出溶媒として使用された。リン酸緩衝液を添加して溶出溶媒のpHがpH4.5に変更された。240分時、リン酸緩衝液をさらに添加して溶出溶媒がpH6.8に変更された。パドル回転速度100rpmで24時間にわたり900mlの溶出溶媒中で溶出が行われた。適切な時間間隔で試料が採取され、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)によりカルベジロール含有量について分析が行われた。
【0079】
図8にT1/T2製剤と、対照製剤であるCoreg CR(商標)(GSKにより市販)の溶出性を示す。この結果は、表8と表9に従って作製された徐放性製剤の放出時間が延長され、少なくとも24時間にわたり適切な溶出が維持されることを示している。
【0080】
(実施例6)
徐放性製剤(T4製剤)の作製
即放性サブユニット
次に示すように、即放性サブユニットが造粒プロセスの後、圧縮によって圧縮サブユニットとして作製された。
1、カルベジロール4グラムと、32.5グラムのGranulac 200、メトセルK100LV13.5グラムを計量し、5分間撹拌した。
2、工程1の成分を高せん断造粒機に移し、1分間混合した。
3、工程2の混合物を95%エタノール20mlと水5.5mlで分散させ、造粒プロセスを開始した。
4、工程3の顆粒を60℃のオーブンで8時間加熱し、顆粒に含まれる湿気を1.0%〜3.0%の範囲で維持した。
5、造粒溶液を20メッシュのふるいで篩った。
6、ステアリン酸マグネシウム0.15グラムをロータリー式ダブルデッキ打錠機の第1セル内の前記即放性顆粒に添加した。
【0081】
徐放性サブユニット
次に示すように、徐放性サブユニットが造粒プロセスの後、圧縮によって圧縮サブユニットとして作製された。
1A、カルベジロール27.7グラム、コーンスターチ60グラム、メトセルK15M115グラムを計量し、5分間撹拌した。
2A、工程1Aの混合物を高せん断造粒機に移し、1分間混合した。
3A、工程2Aの混合物を95%エタノール63.9mlで分散させ、5分間混合した。
4A、ポビドンK30を18.8グラム添加して1分間混合し、さらにポビドンK30を15.0グラム添加して1分間混合し、もう一度ポビドンK30を1 5.0グラム添加して3分間混合した。
5A、工程4Aの顆粒を60℃のオーブンで8時間加熱し、顆粒に含まれる湿気を1.0%〜3.0%の範囲で維持した。
6A、造粒溶液を20メッシュのふるいで篩った。
7A、ステアリン酸マグネシウム0.8グラムをロータリー式ダブルデッキ打錠機の第2セル内の前記徐放性顆粒に添加した。
【0082】
徐放性製剤の形成
工程7Aの徐放性顆粒及び工程6の即放性顆粒をロータリー式ダブルデッキ打錠機で圧縮して二層徐放性製剤が形成された。この徐放性カルベジロール製剤はカルベジロールを合計約63.3mg含有する。表10に上述のプロセスで製造された徐放性製剤(T4製剤)の成分を示す。
【0083】
【表10】

【0084】
(実施例7)
カルベジロール徐放性製剤(T4製剤)の溶出試験
米国薬局方(USP 31−NF 26)711、Dissolution、Apparatus IIに従って溶出が行われた。最初の120分間、塩酸(0.1N)が溶出溶媒として使用された。リン酸緩衝液を添加して溶出溶媒のpHがpH4.5に変更された。240分時、リン酸緩衝液をさらに添加して溶出溶媒がpH6.8に変更された。パドル回転速度100rpmで24時間にわたり900mlの溶出溶媒中で溶出が行われた。適切な時間間隔で試料が採取され、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)によりカルベジロール含有量について分析が行われた。
【0085】
図9にT4製剤と、対照製剤(Coreg CR(商標))の溶出性を示す。この結果は、表10に従って作製された徐放性製剤の放出時間が延長され、少なくとも24時間にわたり適切な溶出が維持されることを示している。
【0086】
(実施例8)
T4製剤のPKデータ
T4製剤対Coreg CR(商標)の非盲検2ウェイ交差試験が正常な健康被験者において実施された。この試験は関連の臨床条件下におけるT4製剤からのカルベジロールの生物学的同等性を対象としている。
【0087】
試験の設計:
体重が50kg以上かつ治験責任医師とコミュニケーションをとることができる12名の生命徴候の安定した健康な被験者がこの試験に採用された。2回の投与期間が少なくとも3日の休薬期間で隔てられた。2回の投与法は次の通りである。T4製剤25mgとCoreg CR(商標)25mgが一晩の空腹後の標準的朝食の開始から30分後に投与された。血液試料が投与の30分前(0時間)と、T4製剤及びCoreg CR(商標)投与の1.5、3、4、5、6、7、8、10、12、14、16、24時間後に採取された。
【0088】
結果:
表11に被験者がCoreg CR(商標)(対照製剤)とT4製剤の投与を受けた後のカルベジロールの平均薬物動態パラメータを示す。
【0089】
【表11】

【0090】
表12にCoreg(商標)(対照製剤)とT4製剤の薬物動態比の概要を示す。
【0091】
【表12】

【0092】
図10(A)及び図10(B)に被験者がCoreg(商標)とT4製剤の投与を受けた後のカルベジロールの平均血漿中濃度−時間特性を示す。これらの結果は、T4製剤がカルベジロールの即時の初期投与量を提供し、カルベジロール放出時間を延長して、少なくとも24時間にわたり適切な血漿中濃度を維持することを示している。
【符号の説明】
【0093】
なし。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
徐放性製剤であって、
(a)治療有効量のカルベジロール遊離塩基またはそのカルベジロール塩、
(b)メトセルK15M約20%〜約60重量%、メトセルK100M約15%〜約20重量%、メトセルE4M約25%〜約35重量%、オイドラギットRSPO約35%〜約45重量%、またはWSR N12NF約35%〜約55重量%の1つ以上を含むマトリックス形成ポリマー、
(c)ポビドン約25%〜約55重量%、PEG6000約25%〜約35重量%、またはHPC−L約35%〜約45重量%の1つ以上を含む溶解性エンハンサー、
(d)コーンスターチ約15%〜約35重量%、ステアリン酸マグネシウム約0.1%〜約2重量%の1つ以上を含む賦形剤、
を含んで成る、徐放性製剤。
【請求項2】
前記カルベジロールが、カルベジロール遊離塩基であることを特徴とする、請求項1に記載の徐放性製剤。
【請求項3】
2つ以上のサブユニットを含んで成る徐放性製剤であって、そのうち、前記サブユニットの少なくとも1つが、治療有効量のカルベジロール遊離塩基またはそのカルベジロール塩と、マトリックス形成ポリマーと、溶解性エンハンサーと、薬学的に許容されるキャリアを含む即放性カルベジロールサブユニットであり、前記サブユニットの少なくとも1つが、治療有効量のカルベジロール遊離塩基またはそのカルベジロール塩と、マトリックス形成ポリマーと、薬学的に許容されるキャリアを含む徐放性カルベジロールサブユニットであることを特徴とする、徐放性製剤。
【請求項4】
前記カルベジロールが、カルベジロール遊離塩基であることを特徴とする、請求項3に記載の徐放性製剤。
【請求項5】
前記マトリックス形成ポリマーが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリオキシエチレンオキシド、アルギン酸、メチルセルロース、エチルセルロース、メタクリル酸エステル共重合体、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)の1つ以上を含むことを特徴とする、請求項3に記載の徐放性製剤。
【請求項6】
前記溶解性エンハンサーが、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、またはラウリル硫酸ナトリウム(SLS)の1つ以上を含むことを特徴とする、請求項3に記載の徐放性製剤。
【請求項7】
前記エチルセルロースが約20%〜約80%(w/w)のエトキシルを含むことを特徴とする、請求項5に記載の徐放性製剤。
【請求項8】
前記ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)のメトキシル含有量が、約10%〜約60%(w/w)であることを特徴とする、請求項5に記載の徐放性製剤。
【請求項9】
前記薬学的に許容されるキャリアが、ラクトース、コーンスターチまたはステアリン酸マグネシウムの1つ以上を含むことを特徴とする、請求項3に記載の徐放性製剤。
【請求項10】
前記徐放性製剤において、
前記徐放性製剤の対数変換後のAUC0−∞の幾何平均値対対照製剤(Coreg CR(商標))の対数変換後のAUC0−∞の幾何平均値比が約0.80〜約1.20であるか、
前記徐放性製剤の対数変換後のAUC0−tの幾何平均値対対照製剤(Coreg CR(商標))の対数変換後のAUC0−tの幾何平均値比が約0.80〜約1.20であるか、または、
前記徐放性製剤の対数変換後のCmaxの幾何平均値対対照製剤(Coreg CR(商標))の対数変換後のCmaxの幾何平均値比が約0.80〜約1.20である、
ことを特徴とする、請求項3に記載の徐放性製剤。
【請求項11】
前記徐放性製剤が、患者への経口投与の約4時間後に第1最高血漿中濃度Tmax1、約24時間後に第2最高血漿中濃度Tmax2を示すことを特徴とする、請求項3に記載の徐放性製剤。
【請求項12】
徐放性製剤であって、
(i)治療有効量のカルベジロール遊離塩基またはそのカルベジロール塩、
(ii)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリオキシエチレンオキシド、アルギン酸、メチルセルロース、エチルセルロース、メタクリル酸エステル共重合体、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)の1つ以上を含むマトリックス形成ポリマー約4%〜約5重量%、
(iii)賦形剤約0.01%〜約0.1重量%、
を含む1つ以上の即放性サブユニットと、
(i)治療有効量のカルベジロール遊離塩基またはそのカルベジロール塩、
(ii)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリオキシエチレンオキシド、アルギン酸、メチルセルロース、エチルセルロース、メタクリル酸エステル共重合体、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)の1つ以上を含むマトリックス形成ポリマー約20%〜約55重量%、
(iii)ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)の1つ以上を含む溶解性エンハンサー約1.0%〜約30重量%、
(iv)賦形剤約0.01%〜約25重量%、
を含む1つ以上の徐放性サブユニットと、
を含んで成ることを特徴とする、徐放性製剤。
【請求項13】
前記カルベジロールがカルベジロール遊離塩基であることを特徴とする、請求項12に記載の徐放性製剤。
【請求項14】
前記エチルセルロースがエトキシル約20%〜約80%(w/w)を含むことを特徴とする、請求項12に記載の徐放性製剤。
【請求項15】
前記ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)のメトキシル含有量が約10%〜約60%(w/w)であることを特徴とする、請求項12に記載の徐放性製剤。
【請求項16】
前記賦形剤が、ラクトース、コーンスターチ、ステアリン酸マグネシウムの1つ以上を含むことを特徴とする、請求項12に記載の徐放性製剤。
【請求項17】
前記徐放性製剤が、
前記徐放性製剤の対数変換後のAUC0−∞の幾何平均値対対照製剤(Coreg CR(商標))の対数変換後のAUC0−∞の幾何平均値比が約0.80〜約1.20であるか、
前記徐放性製剤の対数変換後のAUC0−tの幾何平均値対対照製剤(Coreg CR(商標))の対数変換後のAUC0−tの幾何平均値比が約0.80〜約1.20であるか、または、
前記徐放性製剤の対数変換後のCmaxの幾何平均値対対照製剤(Coreg CR(商標))の対数変換後のCmaxの幾何平均値比が約0.80〜約1.20である、
ことを特徴とする、請求項12に記載の徐放性製剤。
【請求項18】
前記徐放性製剤が、患者への経口投与の約4時間後に第1最高血漿中濃度Tmax1、約24時間後に第2最高血漿中濃度Tmax2を示すことを特徴とする、請求項12に記載の徐放性製剤。
【請求項19】
徐放性製剤を製造する方法であって、
(i)治療有効量のカルベジロールと、マトリックス形成ポリマー約4%〜約5重量%を混合して撹拌し、第1混合物を形成する工程と、
(ii)前記第1混合物を粒状化して第1粒剤とする工程と、
を含む、即放性サブユニットを作製する工程と、
(i)治療有効量のカルベジロールと、マトリックス形成ポリマー約20%〜約55重量%を混合して撹拌し、混合物を形成する工程と、
(ii)溶解性エンハンサー約1.0%〜約30重量%を前記混合物に添加して第2混合物を形成する工程と、
(iii)前記第2混合物を粒状化して前記第2粒剤とする工程と、
を含む、徐放性サブユニットを作製する工程と、
前記第1粒剤と前記第2粒剤に賦形剤約0.01%〜約25重量%を添加して、前記第1粒剤と前記第2粒剤を圧縮して錠剤とする工程と、
を含むことを特徴とする、徐放性製剤の製造方法。
【請求項20】
前記第1混合物を粒状化する工程がさらに、前記第1混合物を約50℃〜約70℃の温度で加熱することを含むことを特徴とする、請求項19に記載の徐放性製剤の製造方法。
【請求項21】
前記第1混合物を粒状化する工程がさらに、前記第1混合物を20メッシュのふるいで篩うことを含むことを特徴とする、請求項20に記載の徐放性製剤の製造方法。
【請求項22】
前記第2混合物を粒状化する工程がさらに、前記第2混合物を約50℃〜約70℃の温度で加熱することを含むことを特徴とする、請求項19に記載の徐放性製剤の製造方法。
【請求項23】
前記第2混合物を粒状化する工程がさらに、前記第2混合物を20メッシュのふるいで篩うことを含むことを特徴とする、請求項22に記載の徐放性製剤の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【公表番号】特表2013−505970(P2013−505970A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531226(P2012−531226)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【国際出願番号】PCT/CN2010/077466
【国際公開番号】WO2011/038683
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(512080778)ティーエスエイチ バイオファーム コーポレーション リミテッド (1)
【出願人】(511259692)イノファーマックス インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】