説明

従動ローラ

【課題】一つのすべり面に異物が噛み込まれてもスムーズな回転を確保でき、かつ、がたつきが発生し難い従動ローラを提供することである。
【解決手段】円環状のすべり軸受3の内径面と外径面の両方をすべり面3aとすることにより、一方のすべり面3aに異物が噛み込まれても他方のすべり面3aでスムーズな回転を確保できるようにするとともに、すべりを二つのすべり面3aに分散させて各すべり面3aでの摩耗を抑制し、がたつきが発生し難いようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、戸車、キャスタ、プリンタの紙押さえローラ等の従動ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
固定軸の回りに従動回転する従動ローラは、すべり軸受や転がり軸受を介して固定軸に回転自在に支持されているが、戸車、キャスタ、プリンタの紙押さえローラ等の小径の従動ローラは、軸受部をコンパクトに設計できるすべり軸受で支持されたものが多い。
【0003】
このような小径の従動ローラを支持するすべり軸受は、円環状の樹脂製のものとされることが多く、固定軸の外径面または従動ローラの内径面に固着されて、すべり軸受と従動ローラまたは固定軸の間に一つのすべり面が形成されている。すべり軸受を固定軸に固着される内輪と従動ローラに固着される外輪で形成し、これらの内輪と外輪の間に一つのすべり面を形成したものもある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2007−127225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように一つのすべり面が形成されるすべり軸受で固定軸に回転自在に支持された従来の従動ローラは、外部から塵埃等の異物がすべり面に噛み込まれると、一つだけのすべり面でのすべりが悪くなり、スムーズな回転が阻害される問題がある。また、すべりが一つのすべり面に集中するので、すべり面が摩耗しやすく、がたつきが発生しやすい問題もある。
【0006】
そこで、本発明の課題は、一つのすべり面に異物が噛み込まれてもスムーズな回転を確保でき、かつ、がたつきが発生し難い従動ローラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、固定軸に円環状の樹脂製すべり軸受を介して回転自在に支持された従動ローラにおいて、前記円環状のすべり軸受の内径面と外径面の両方をすべり面とした構成を採用した。
【0008】
すなわち、円環状のすべり軸受の内径面と外径面の両方をすべり面とすることにより、一方のすべり面に異物が噛み込まれても他方のすべり面でスムーズな回転を確保できるようにするとともに、すべりを二つのすべり面に分散させて各すべり面での摩耗を抑制し、がたつきが発生し難いようにした。
【0009】
前記固定軸の外径面に環状溝を設け、この外径面に外嵌されるすべり軸受の内径面に前記環状溝と係合する環状突条を設けて、この環状突条を設けたすべり軸受を熱可塑性樹脂で形成し、この熱可塑性樹脂で形成した環状突条を弾性変形させて前記環状溝に嵌め込むことにより、すべり軸受を固定軸に容易に位置決めすることができる。
【0010】
前記熱可塑性樹脂は環状突条を弾性変形可能とするものであればよく、特に、耐摩耗性に優れたポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂等が好ましい。
【0011】
前記すべり軸受の外径面と、この外径面に外嵌される従動ローラの内径面のいずれか一方に環状溝を設け、他方にこの環状溝と係合する環状突条を設けて、この環状突条を設けた従動ローラまたはすべり軸受を熱可塑性樹脂で形成し、この熱可塑性樹脂で形成した環状突条を弾性変形させて前記環状溝に嵌め込むことにより、従動ローラとすべり軸受を容易に抜け止めすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の従動ローラは、円環状のすべり軸受の内径面と外径面の両方をすべり面としたので、一方のすべり面に異物が噛み込まれてもスムーズな回転を確保できるとともに、がたつきが発生し難いようにすることができる。
【0013】
前記固定軸の外径面に環状溝を設け、この外径面に外嵌されるすべり軸受の内径面に環状溝と係合する環状突条を設けて、この環状突条を設けたすべり軸受を熱可塑性樹脂で形成し、この熱可塑性樹脂で形成した環状突条を弾性変形させて環状溝に嵌め込むことにより、すべり軸受を固定軸に容易に位置決めすることができる。
【0014】
前記すべり軸受の外径面と、この外径面に外嵌される従動ローラの内径面のいずれか一方に環状溝を設け、他方にこの環状溝と係合する環状突条を設けて、この環状突条を設けた従動ローラまたはすべり軸受を熱可塑性樹脂で形成し、この熱可塑性樹脂で形成した環状突条を弾性変形させて環状溝に嵌め込むことにより、従動ローラとすべり軸受を容易に抜け止めすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。図1および図2に示すように、この従動ローラ1は、固定軸2に円環状のすべり軸受3を介して回転自在に支持され、すべり軸受3の内径面と外径面の両方がすべり面3aとされており、従動ローラ1とすべり軸受3は、いずれも熱可塑性樹脂であるポリアセタール樹脂で形成されている。したがって、この従動ローラ1は、一方のすべり面3aに異物が噛み込まれても他方のすべり面3aでスムーズな回転を確保でき、かつ、すべりが二つのすべり面3aに分散されるので、各すべり面3aでの摩耗が抑制され、がたつきが発生し難い。
【0016】
前記従動ローラ1は、外筒部1aと内筒部1bを円環部1cで連結したものであり、内筒部1bの内径面に環状突条4aが設けられ、すべり軸受3の外径面に環状溝5aが設けられて、これらの環状突条4aと環状溝5aの係合によって、従動ローラ1とすべり軸受3が抜け止めされている。また、すべり軸受3の内径面には環状突条4bが設けられ、この環状突条4bが固定軸2の外径面に設けられた環状溝5bに係合されて、すべり軸受3が固定軸2に抜け止めされている。ポリアセタール樹脂で形成された従動ローラ1とすべり軸受3の環状突条4a、4bは、それぞれこれらを弾性変形させることにより、各環状溝5a、5bに嵌め込まれている。
【0017】
図3に拡大して示すように、前記各環状突条4a、4bを各環状溝5a、5bに嵌め込み易くするために、各環状突条4a、4bの両肩部には面取り6が設けられ、その幅と高さ寸法は、各環状溝5a、5bの幅と深さ寸法よりも少し小さく形成されている。
【0018】
上述した実施形態では、従動ローラとすべり軸受をポリアセタール樹脂で形成し、従動ローラ側に環状突条、すべり軸受側に環状溝を設けてこれらを抜け止めしたが、従動ローラ側に環状溝、すべり軸受側に環状突条を設けることもできる。従動ローラ側に環状溝を設ける場合は、従動ローラを金属や熱硬化性樹脂で形成してもよい。従動ローラはポリウレタン樹脂等の軟質樹脂で形成することもできる。また、すべり軸受を形成する熱可塑性樹脂はポリアセタール樹脂に限定されることはなく、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂等とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従動ローラの実施形態を示す縦断面図
【図2】図1の切欠き分解斜視図
【図3】図1の各環状突条と各環状溝の係合部を拡大して示す断面図
【符号の説明】
【0020】
1 従動ローラ
1a 外筒部
1b 内筒部
1c 円環部
2 固定軸
3 すべり軸受
3a すべり面
4a、4b 環状突条
5a、5b 環状溝
6 面取り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定軸に円環状の樹脂製すべり軸受を介して回転自在に支持された従動ローラにおいて、前記円環状のすべり軸受の内径面と外径面の両方をすべり面としたことを特徴とする従動ローラ。
【請求項2】
前記固定軸の外径面に環状溝を設け、この外径面に外嵌されるすべり軸受の内径面に前記環状溝と係合する環状突条を設けて、この環状突条を設けたすべり軸受を熱可塑性樹脂で形成し、この熱可塑性樹脂で形成した環状突条を弾性変形させて前記環状溝に嵌め込んだ請求項1に記載の従動ローラ。
【請求項3】
前記すべり軸受の外径面と、この外径面に外嵌される従動ローラの内径面のいずれか一方に環状溝を設け、他方にこの環状溝と係合する環状突条を設けて、この環状突条を設けた従動ローラまたはすべり軸受を熱可塑性樹脂で形成し、この熱可塑性樹脂で形成した環状突条を弾性変形させて前記環状溝に嵌め込んだ請求項1または2に記載の従動ローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−250336(P2009−250336A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−98181(P2008−98181)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(395013865)オービー工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】