説明

従来品とは異なる水分硬化触媒、およびそれらの触媒から製造される常温硬化ポリイソシアネート接着剤

エンジニアリング複合木材の製造において使用するのに適した常温硬化ポリイソシアネート接着剤組成物。さらに、イソシアネート反応性のヒドロキシル水素原子もしくはアミン水素原子の数が減少しているか、又は実質的に含まない第三アミンアルコキシレートを含んだ触媒が提供されている。さらに、前記接着剤組成物を使用して複合物を製造する方法、および前記接着剤組成物から製造される複合物が提供されている。前記接着剤組成物から製造される複合物は、大幅に増大した離層抵抗を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は接着剤システムに関し、さらに詳細には、ポリイソシアネート接着剤に使用するための常温硬化触媒、このような触媒を使用して製造されるポリイソシアネート接着剤、このような接着剤を使用して製造される接着剤接合した複合物を製造する方法、およびこのような接着剤で接合した複合物に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ポリイソシアネート接着剤の使用は、チップボード(OSB)、ファイバーボード、および関連した複合木材製品等の固めた複合木材を製造する上でよく知られている。ポリイソシアネート接着剤はさらに、I-ビーム(I-ジョイスト)、積層ベニヤ木材(LVL)、および他のタイプの構造用複合木材等のエンジニアリング複合木材(engineered lumber composites)を製造する際に使用することでも知られている。これらの最終用途におけるポリイソシアネートの硬化は、木材支持体(wood substrate)中に存在する水分によって促進されると考えられている。これらの用途において速やかな硬化を促進するために、100℃を超えるプレス温度(しばしば200℃以上)が使用される。しかしながら、特殊な構造(あるいはエンジニアリング)木材用途においては、接着剤の硬化を進行させるのに熱を使用するのは実際的ではない場合が多い。なぜなら、エンジニアリング複合木材構造物(engineered wood composite structures)は、充分な熱伝達を果たすには大きすぎる塊状物だからである。こうした極めて特殊な構造用途に対しては、周囲温度で硬化するポリイソシアネート接着剤を使用するのがより好ましい。“常温硬化”ポリイソシアネート接着剤の処方は当業界によく知られている。このような樹脂を配合する上での課題は、室温での速硬化の必要性と適度に長い可使時間(すなわちポットライフ)との適切なバランスを達成することである。
【0003】
ポリイソシアネート接着剤の水分活性化による硬化を促進するために低分子量の第三アミン触媒が使用される、ということは先行技術において公知である。残念なことに、これらの低分子量第三アミン化学種の使用は、たとえそれらが、イソシアネートに対して反応性の活性水素基を含まない第三アミンであるとしても、完全に満足できる結果が得られることが実証されているわけではない。なぜなら、このようなアミンは通常、複合木材工業において最も広く使用されているタイプのポリイソシアネート中にて不安定であり、そして、接着剤の簡単な取扱いを可能にするだけの充分に長い開放時間(可使時間)、あるいは接着剤接合を集成していくための充分な時間をもたらさないからである。
【0004】
先行技術において開示されている、一成分系の水分硬化用途に使用するのに適した他の種類の、触媒作用によるポリイソシアネート系木材接着剤システムは、アミンアルコキシレートのイソシアネート基末端プレポリマーを含んだポリイソシアネート系木材接着剤を常温硬化させることを含む(たとえば、米国特許第6,368,714号を参照)。これらのプレポリマー組成物は、木材支持体上での長い可使時間(長いポットライフ)と、周囲温度条件下での良好な水分硬化特性(常温硬化)との優れた組み合わせをもたらすことが見出されている。しかしながらこれらの接着剤システムは、積層木材の用途に使用すると、常温硬化の条件下では、ASTM D-2559-00に従って試験した場合に過剰の離層と不満足な性能を引き起こすことが示されている。離層の問題は、接着剤の遅い硬化および/または不十分な硬化によって引き起こされる、とされている。
【0005】
したがって、特にASTM D-2559-00に記載の手順に従って試験したときに増大した離層抵抗をもたらすと共に、長いポットライフと優れた安定性とを有する、改良された種類のポリイソシアネートベースの常温硬化木材接着剤が強く求められている。
【発明の開示】
【0006】
本発明は、最初のアルコキシレート上に存在する有機-OH基の少なくとも一部を、アミンアルコキシレートが引き続きイソシアネート基と反応して付加生成物を形成する能力を減少させるような仕方で、1種以上の単官能化学種と反応させてある、という場合の少なくとも部分的にブロックされたアルコキシル化アミン誘導体に関する。好ましいアルコキシレートは、有機-OH基以外のイソシアネート反応性基を実質的に含まず、数平均に基づいて、1分子当たり少なくとも1つの脂肪族第三アミン基を含有する。
【0007】
本発明はさらに、少なくとも部分的にブロックされたアミンアルコキシレート(またはその付加生成物)とポリイソシアネートとを含んだポリイソシアネート接着剤組成物を提供する。より好ましい実施態様においては、本発明のポリイソシアネート接着剤組成物は、常温硬化の一成分系水分活性化接着剤である。
【0008】
本発明はさらに、接着剤接合による複合木材の製造法を提供する。本発明の製造法は、少なくとも部分的にブロックされたアミンアルコキシレート化学種を含有するポリイソシアネート接着剤の使用を含む。
【0009】
本発明はさらに、ここに開示の接着剤で接合した、接着剤接合による複合木材品を提供する。好ましい実施態様においては、接着剤接合による複合木材品は、減少した離層傾向を示す積層物である。より好ましい実施態様においては、接着剤で積層された複合木材品は、ASTM D-2559-00の層間剥離試験法による測定にて2%未満の全離層を有することを特徴とする。
【0010】
好ましい実施態様においては、アルコキシル化アミンの遊離-OH基の少なくとも部分的なブロッキングを達成するのに使用される単官能ブロッキング剤は、有機モノイソシアネートを含む。より好ましい実施態様においては、アルコキシル化アミン中に最初に存在する遊離の有機ヒドロキシル基の少なくとも30モル%が、単官能ブロッキング剤でブロックされる。
【0011】
発明の詳細な説明
少なくとも部分的にブロックされたアミンアルコキシレートは、末端-OH基の少なくとも一部と1種以上の単官能ブロッキング剤との反応によってブロックされている、アンモニアまたは脂肪族アミンのエトキシル化誘導体および/またはプロポキシル化誘導体であるのが好ましい。この目的に対して使用できる単官能ブロッキング剤は、ポリイソシアネートのイソシアネート基とは反応しないような仕方で、有機-OH基と反応することができる公知の単官能試剤の全てを含む。好ましい種類のブロッキング剤は有機モノイソシアネートである。芳香族モノイソシアネートも脂肪族モノイソシアネートも使用することができる。適切なモノイソシアネートブロッキング剤の例としては、フェニルイソシアネート、p-トリルイソシアネート、o-トリルイソシアネート、メチルイソシアネート、エチルイソシアネート、n-ブチルイソシアネート、n-ヘキシルイソシアネート、イソプロピルイソシアネート、イソブチルイソシアネート、2-エチルヘキシルイソシアネート、n-オクチルイソシアネート、n-ノニルイソシアネート、n-オクタデシルイソシアネート、ベンジルイソシアネート、およびこれらの組み合わせ物などがあるが、これらに限定されない。
【0012】
アミンアルコキシレート中に存在する末端有機-OH基の少なくとも部分的なブロッキングを達成するのに使用できる他の単官能有機化合物としては、モノカルボン酸、モノカルボン酸無水物、モノカルボン酸エステル、モノカルボン酸ハロゲン化物、ハロゲン化アルキル(特に第一級ハロゲン化アルキル)、メタンスルホン酸アルキル(特に第一級メタンスルホン酸アルキル)、トルエンスルホン酸アルキル(特に第一級アルカンのトルエンスルホン酸アルキル)、ベンゼンスルホン酸アルキル(特に第一級アルカンのベンゼンスルホン酸アルキル)、およびこれら種々のタイプのブロッキング剤の組み合わせ物などがあるが、これらに限定されない。場合によっては有用な他のブロッキング剤は、当業者にはよく知られている。最初のアミンアルコキシレート中に存在する末端-OH基とイソシアネート基との反応を妨げるか、あるいはこの反応の速度を低下させるいかなるブロッキング剤も使用することができる。特に好ましいブロッキング剤はフェニルイソシアネートである。
【0013】
単官能ブロッキング剤は、アミンアルコキシレートの末端-OH基と、あるいは-OH基の少なくとも一部と反応して共有結合構造(ウレタン結合、エステル結合、またはエーテル結合等)を形成する。“単官能の”とは、ブロッキング剤分子自体がイソシアネート反応性の活性水素原子を含んでいないということ、そしてさらに、最初の(誘導体化されていない)アミンアルコキシレート分子中に存在する有機-OH基の1つだけと反応するということを意味している。
【0014】
特定の理論で拘束されるつもりはないが、アミンアルコキシレート中に存在する遊離-OH基の少なくとも部分的なブロッキングは、水分活性化ポリイソシアネート接着剤樹脂の硬化時におけるモビリティを、したがってアミンアルコキシレート中に存在する第三アミン基の触媒有効性を高める効果をもたらす、と考えられる。ブロックされたアミンアルコキシレートは、硬化プロセスにおいて、少なくとも比較的おそくまではマトリックス樹脂中に固定されるようにならない。当業界に知られている従来の第三アミン触媒と比較して、少なくとも部分的にブロックされたアミンアルコキシレートの分子量が高いことが、触媒作用による接着剤の硬化速度を減速させる原因となっており、これにより貯蔵時において、および木材支持体に塗布した後において、接着剤システムに対する有用なポットライフがもたらされる。分子量が比較的高いということはさらに、揮発と不快なアミン臭〔従来の(低分子量の)第三アミン触媒に特徴的である〕を防ぐ。
【0015】
ブロッキングの程度はかなり広範囲で変わってよい。末端-OH基は、ブロッキング剤との反応によって部分的にブロックすることもできるし、あるいは完全にブロックすることもできる。ブロッキングの程度というのは単に、ブロッキング剤とアミンアルコキシレートとの反応の化学量論を調整するということにすぎない。ブロッキングの程度は、最初のアミンアルコキシレート中に存在する利用可能な有機ヒドロキシル基の少なくとも25モル%であるのが好ましく、少なくとも30モル%であるのがさらに好ましい。ブロッキングの程度は、アミンアルコキシレート中に最初に存在するヒドロキシル基の60モル%であってよく、80モル%であってよく、あるいは100モル%であってもよい。
【0016】
“アルコキシル化第三アミン”という用語は、本明細書において使用するときは、アミン基の実質的に全てが第三級であるアミンアルコキシレートを表わしているものとする。このことは、アルコキシル化第三アミンを製造するのに使用される開始剤が第三アミンである、ということを意味しているわけではない。実際には、いかなるアミン開始剤、またはアミン開始剤のいかなる混合物も、これらのアミン開始剤が、アルコキシル化することができる活性水素基を含有する限り使用することができる。
【0017】
開始剤は、第一アミン、第二アミン、または第三アミンを含んでよく、あるいはアンモニアでさえ含んでよい。アルコキシル化第三アミンは、単官能ブロッキング剤を使用してブロッキング処理される場合には、第三アミン基以外のアミン基を持たないのが理想的である。しかしながら、実際問題として、存在する全アミン基のうちの少量(最大で約10モル%)が第一アミン基および/または第二アミン基であってもよい。これらの第一アミン基および/または第二アミン基は、アルコキシル化第三アミン組成物中に存在する全アミン基の5モル%未満を構成するのが好ましく、2モル%未満を構成するのがさらに好ましく、1モル%未満を構成するのがさらに好ましく、0.5モル%未満を構成するのが最も好ましい。
【0018】
必要に応じて、種々のブロッキング剤の混合物を使用すること、および/または、種々のアミンアルコキシレートの混合物にブロッキング処理を施すことは、当然ながら本発明の範囲内に含まれる。必要に応じて、種々のブロッキング剤でブロックされた種々のブロックアミンアルコキシレートの混合物を使用すること、および/または、種々の程度(最初に存在する-OH基のモル%として)にブロッキング処理されたアミンアルコキシレートの混合物を使用することも本発明の範囲内に含まれる。この種の調節は、当業者にはよく知られている。
【0019】
少なくとも部分的にブロックされたアミンアルコキシレート誘導体を製造するために使用することができるアミンアルコキシレートの種類は、かなり広い範囲で変わってよい。必要に応じて、種々のアミンアルコキシレートの混合物も使用することができる。特に好ましい種類のアミンアルコキシレートは、第一アミン基または第二アミン基を実質的に含まない。アミンアルコキシレート中には、アミンN-H基(aminic N-H groups)が存在しないのが理想的である。ブロッキング処理する前の、より好ましいアミンアルコキシレート中に存在するイソシアネート反応性基は、実質的に、脂肪族結合した第一級ヒドロキシル基および/または第二級ヒドロキシル基からなる。これらの脂肪族結合した第一級ヒドロキシル基および/または第二級ヒドロキシル基は、アミンアルコキシレート中に存在する全イソシアネート反応性官能基の少なくとも80モル%を構成し、少なくとも90モル%を構成するのが好ましく、少なくとも95モル%を構成するのがさらに好ましく、少なくとも98モル%を構成するのがさらに好ましく、少なくとも99モル%を構成するのがさらに好ましく、99.5モル%以上を構成するのが最も好ましい。ブロッキング処理する前のアミンアルコキシレートの分子量は、数平均に基づいて149〜100,000の範囲であるのが好ましく、500〜10,000の範囲であるのがさらに好ましく、800〜8000の範囲であるのがさらに好ましく、900〜7000の範囲であるのがさらに好ましく、そして1000〜6000の範囲であるのが最も好ましい。
【0020】
ブロッキング処理する前のアミンアルコキシレート中に存在するヒドロキシル基の数は、数平均に基づいて1〜約20の範囲であってよく、約2〜10であるのが好ましく、3〜8であるのがさらに好ましく、3〜6であるのがさらに好ましく、3より大きくて最大6であるのがさらに好ましく、そして3より大きくて最大約4であるのが最も好ましい。
【0021】
アミンアルコキシレート中に存在するアミン基が全て第三アミンであるのが好ましい。アミンアルコキシレート中に存在するアミン基が全て脂肪族第三アミンであるのがさらに好ましい。アミンアルコキシレート中に存在する1分子当たりの第三アミン基の数(数平均による)は、1〜10の範囲であるのが好ましく、1〜5の範囲であるのがさらに好ましく、2〜5の範囲であるのがさらに好ましく、2〜4の範囲であるのがさらに好ましく、2〜3の範囲であるのがさらに好ましく、そして約2であるのが最も好ましい。
【0022】
特に好ましい種類のアミンアルコキシレートは、エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドから誘導されるオキシアルキレン単位だけを実質的に含有する。最も好ましいアミンアルコキシレートは、オキシエチレン単位とオキシプロピレン単位の両方を含有し、他の種類のオキシアルキレン単位を実質的に含有しない。エチレンオキシドまたはプロピレンオキシド以外のアルキレンオキシドから誘導されるオキシアルキレン単位のモル%は、数平均に基づいて、分子中に存在するオキシアルキレン単位の合計数の10モル%未満であるのが好ましく、5モル%未満であるのがさらに好ましく、2モル%未満であるのがさらに好ましく、そして1モル%未満であるのが最も好ましい。
【0023】
少なくとも部分的にブロックされたアミンアルコキシレートを製造するのに適した最も好ましいアミンアルコキシレートは、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドとエチレンジアミンとを、エチレンジアミン開始剤中に存在するアミン基の全てが第三アミンに転化されるまで反応させることによって得られるアミンアルコキシレートである。一般には、好ましいアミンアルコキシレートは、分子中に複数のエーテル基を含有し、オキシエチレンまたはオキシプロピレン以外のオキシアルキレン基を持たない。エチレンオキシド(EO)およびプロピレンオキシド(PO)とエチレンジアミン(EDA)との反応は、所望するどのような順序でも行うことができる。EOとPOはさらに、単一の操作で(ランダムに)一緒に反応させることもできる。これらの特に好ましいアミンアルコキシレートは、エチレンオキシドから誘導されるオキシエチレン単位を、全分子構造のうちの一部として少なくとも1重量%、そしてさらに好ましくは少なくとも2重量%〜最大60重量%含有する。
【0024】
一般には、少なくとも部分的にブロックされたアミンアルコキシレートが、エチレンオキシドから誘導されるオキシエチレン単位を、全分子構造のうちの一部として少なくとも1重量%〜最大80重量%、さらに好ましくは少なくとも2重量%〜最大70重量%、さらに好ましくは少なくとも5重量%〜最大65重量%、さらに好ましくは少なくとも7重量%〜最大65重量%、そしてさらに好ましくは少なくとも10重量%〜最大60重量%含有する、というのが常に望ましい。本発明による少なくとも部分的にブロックされたアミンアルコキシレートを製造する際に使用するのに最も好ましい特定のアミンアルコキシレートの例としては、シンペロニック(SYNPERONIC)(登録商標)T-304製品(ICI PLCのユニケマ事業部から市販)やテトロニック(TETRONIC)(登録商標)T-340製品(BASF社から市販)があるが、これらに限定されない。これら2つの製品はエチレンジアミンのプロポキシル化・エトキシル化誘導体であると考えられ、存在するアミン基が全て第三アミン基である。これら2つの市販品は極めて類似していると考えられる。いずれも公称的には、約1650の数平均分子量を有するテトラオール(tetrol)であると思われる。どちらの製品も、エチレンオキシドから誘導されるオキシエチレン単位を、全分子構造のうちの一部として約40重量%含有する。
【0025】
ブロッキング剤とアルコキシル化アミンとの反応は、当業界によく知られている方法によって果たすことができる。好ましい実施態様においては、フェニルイソシアネートがブロッキング剤として使用される。フェニルイソシアネートをアルコキシル化アミンに、攪拌しながら周囲温度(約25℃)にて所望の化学量論比で加える。アルコキシル化アミン中に存在する第三アミン基は、一般には、モノイソシアネートと存在する遊離ヒドロキシル基との反応を触媒して、こうした低い温度でもウレタン基を形成させる。しかしながら、必要に応じてより高い温度(好ましくは約80℃より高くない温度)も使用することができる。これとは別に、一般には好都合ではないが、フェニルイソシアネートにアルコキシル化アミンを加えることも本発明の範囲内である。必要に応じて溶媒も使用することができるが、一般には溶媒は必要とされない。好ましいアミンアルコキシレートは、周囲温度の実験室条件下では液体であり、攪拌できる程度に充分に低粘度である。モノイソシアネートをブロッキング剤として使用することの主要な利点の1つは、アルコキシル化アミンとの反応において副生物が生じないという事実による。これにより、少なくとも部分的にブロックされたアルコキシル化アミンを極めて簡単に合成できる方法が得られる。他の種類のブロッキング剤(たとえば、無水物、エステル、またはアルキル化剤)を使用する場合は、副生物を除去するのが最も好ましい。さもないと、これらの副生物は、最終的に得られる接着剤組成物の性能を阻害したり、他の問題点(たとえば、安定性の低下や不快な臭気)を引き起こしたりすることがある。これらの副生物の除去は、極めて複雑な操作でコストがかかる。
【0026】
他の実施態様においては、常温硬化用途に使用するのに適したポリイソシアネート木材接着剤が提供される。ポリイソシアネート木材接着剤は、上記の少なくとも部分的にブロックされたアミンアルコキシレートの1種以上を含有する。1つの実施態様においては、アミンアルコキシレートが完全にブロックされていて、製造条件下や貯蔵条件下にてポリイソシアネートと反応すると思われるタイプの残りの活性水素基を含有しない場合は、ブロックされたアルコキシレートを、所望の水分硬化特性(たとえば常温硬化性能)を付与するに足る量にてポリイソシアネート接着剤中に単に混合すればよい。他の実施態様において、アミンアルコキシレートが、製造条件下や貯蔵条件下にてポリイソシアネートと反応すると思われるタイプの遊離の活性水素基をまだ含有する、部分的にブロックされたアルコキシル化アミン化学種を含む場合、部分的にブロックされたアルコキシレートを1モル過剰のポリイソシアネートと予備反応させるのが好ましい。こうして得られる組成物は、イソシアネート末端プレポリマーの1種であり、遊離の未反応(ベース)ポリイソシアネート化学種を幾らか含有するのが好ましい。この場合も、アミンアルコキシレート化学種の使用量は、所望の水分硬化特性(すなわち、常温硬化する能力)が得られるように選定される。
【0027】
アミンアルコキシレートが、ブロッキング処理後に残留有機ヒドロキシル基を含有する場合、絶対に必要というわけではないが、残留有機ヒドロキシル基をポリイソシアネートと完全に反応させてからポリイソシアネート木材接着剤を使用するのが好ましい。これは通常、単に周囲温度で混合し、そして遊離-NCO基の含量(遊離-NCO基の重量%)が安定化するまで混合物を周囲温度でエージングすることによって達成される。好ましい実施態様(アミンアルコキシレートの第三アミン基が脂肪族であり、アミンアルコキシレート中に存在する残留-OH基が全て第一級および/または第二級の脂肪族-OH基である場合)においては、この操作は、1〜12時間より多くかかることはめったにない。この予備重合反応は、一般には、存在する第三アミン基によって促進されるが、混合物中の遊離-OH基対イソシアネート基の比が増大するにつれて反応時間がより長くなる。必要であれば、反応を完全に進行させるために加熱を施すこともできる。しかしながら、好ましくないアロファネート形成を防ぐために、80℃を超える温度は避けるべきである。プレポリマーの形成に対する反応温度は60℃以下であるのが好ましく、50℃未満であるのがさらに好ましい。この予備重合反応は、ウレタンの段階で停止させるのが極めて望ましい。接着剤配合物の種類に応じて、好ましくないアロファネート形成をできるだけ抑えるために、反応温度、反応時間、および貯蔵条件の制御に関してさらなる予防策をとる必要がある場合がある。これを果たすための方法は、当業者には周知のことである。
【0028】
ポリイソシアネート接着剤組成物を製造するのに使用される成分は、モノマー(すなわち“ベース”)ポリイソシアネート成分を約99〜約50重量%含むのが好ましく、約93〜約60重量%含むのがさらに好ましく、約90〜約70重量%含むのが最も好ましい。ポリイソシアネート木材接着剤組成物を製造するのに使用される成分の残部は、少なくとも部分的にブロックされたアミンアルコキシレートを含み、さらなる任意成分を含む場合もある。少なくとも部分的にブロックされたアミンアルコキシレートは、ポリイソシアネート接着剤組成物の少なくとも0.5重量%を構成するのが好ましく、少なくとも1重量%を構成するのがさらに好ましく、少なくとも3重量%を構成するのがさらに好ましく、少なくとも5重量%を構成するのがさらに好ましく、少なくとも7重量%を構成するのがさらに好ましく、少なくとも10重量%を構成するのが最も好ましい。
【0029】
本発明の文脈における“ポリイソシアネート”という用語は、二官能イソシアネート化学種、より高い官能価のイソシアネート化学種、およびこれらの混合物を包含すると理解しなければならない。“ベース”ポリイソシアネート(すなわちモノマーポリイソシアネート)という用語は、イソシアネート反応性化学種との反応によってプレポリマーを形成するようには変性されていないポリイソシアネートを表わしていると理解しなければならない。しかしながらこの用語は、ポリイソシアネートの種々の公知の自己縮合反応〔たとえば、カルボジイミド変性、ウレトンイミン変性、およびトリマー(イソシアヌレート)変性〕によって変性されたポリイソシアネート(但し、変性ポリイソシアネートが、さらなる反応のために利用できる遊離のイソシアネート基をまだ含有している)を包含する。
【0030】
ポリイソシアネート接着剤組成物を製造するのに適した成分としての、本発明において有用なベースポリイソシアネートは、2.0以上の、好ましくは2.1より大きい、さらに好ましくは2.3より大きい、そして最も好ましくは2.4より大きい数平均イソシアネート官能価を有するポリイソシアネートである。有用なベースポリイソシアネートは、約100〜約5000の数平均分子量を有し、好ましくは約120〜約1800の数平均分子量を有し、さらに好ましくは150〜1000の数平均分子量を有し、さらに好ましくは170〜700の数平均分子量を有し、さらに好ましくは180〜500の数平均分子量を有し、そして最も好ましくは200〜400の数平均分子量を有する。ベースポリイソシアネート組成物のイソシアネート基の少なくとも80モル%が芳香環に直接結合しているのが好ましく、95モル%以上が芳香環に直接結合しているのがさらに好ましい。
【0031】
ポリイソシアネート接着剤組成物を製造する上でベースポリイソシアネートとして使用するのに適したポリイソシアネートの例としては、p-フェニレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’-MDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-MDI)、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,2’-MDI)、および3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ならびにこれらの混合物がある。2より大きい数平均官能価を有するポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(MDI系列のポリイソシアネート)が、ベースポリイソシアネートとして使用するための芳香族ポリイソシアネートの特に好ましい一群である。
【0032】
MDIベースのポリイソシアネートは、2,4’-MDIと2,2’-MDIとを合わせた含量が18.0%未満であるのが好ましく、10%未満であるのがさらに好ましく、5%未満であるのが最も好ましい。しかしながら、いかなるMDIジイソシアネート異性体組成物も、ベースポリイソシアネート組成物として使用するのに、あるいはベースポリイソシアネート組成物の一部として使用するのに適している。
【0033】
MDIジイソシアネート異性体、これらの異性体と官能価が3以上のポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートとの混合物、官能価が3以上のポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートそのもの、およびMDI系列のポリイソシアネートの非プレポリマー誘導体(たとえば、カルボジイミド変性誘導体、ウレトンイミン変性誘導体、および/またはイソシアヌレート変性誘導体)はいずれも、接着剤組成物を製造する上でベースポリイソシアネートとして使用するための好ましいポリイソシアネートの例である。
【0034】
ベースポリイソシアネート組成物は、必要に応じて少量の脂肪族ポリイソシアネートを含んでよい。適切な脂肪族ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシルジイソシアネート、上記芳香族ポリイソシアネートの飽和類縁体、およびこれらの混合物がある。
【0035】
ポリイソシアネート木材接着剤組成物を製造するのに適したベースポリイソシアネート成分は、官能価が3以上の高分子量ポリイソシアネートを含むのが好ましく、官能価が3以上の高分子量ジフェニルメタンジイソシアネート(ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート)化学種を含むのがさらに好ましい。MDI系列の市販の高分子量ポリイソシアネートとしては、ハンツマンポリウレタンズ社から市販のルビネート(RUBINATE)(登録商標)Mがある。ルビネートMポリイソシアネートは、MDIジイソシアネート異性体とより大きな官能価を有するMDI系列のオリゴマーとの複雑な混合物を含んだベースポリイソシアネートである。この市販のベースポリイソシアネート製品は、約31.5重量%の遊離NCO含量と約2.7の数平均官能価を有する。
【0036】
ポリイソシアネート木材接着剤を製造するのに使用される成分は、必要に応じて1種以上のポリオールを含んでもよい。こうした任意のポリオールは、ブロッキング処理がなされていない、アミンを開始剤とするポリオールを含んでよい。原材料流れ(成分)中にポリオールが使用される場合、ポリオールは、1モル過剰のベースポリイソシアネートとの予備重合によって最終的なポリイソシアネート組成物中に組み込まれる。本発明においては任意のこうしたプレポリマー化学種は末端がイソシアネートになっている。イソシアネート末端プレポリマーは当業界によく知られている。本明細書に開示のポリイソシアネート木材接着剤組成物を製造する上で、ブロックされていないポリオールを使用する必要はない。任意のポリオールを使用する場合は、任意のポリオールを、少なくとも部分的にブロックされたアミンアルコキシレートの導入と同時にベースポリイソシアネート成分組成物中に反応させることができる。これとは別に、任意のポリオールを、少なくとも部分的にブロックされたアミンアルコキシレートを導入する前にベースポリイソシアネート中に反応させることもできる。さらに、任意のポリオールを、少なくとも部分的にブロックされたアミンアルコキシレートを加えた後にポリイソシアネート組成物中に反応させることもできるが、こうした導入の仕方は、一般にはあまり望ましくない。なぜなら、好ましくない副反応(たとえば、アロファネートの形成)を促進する傾向があるからである。当業者であれば明らかに、本発明の範囲を逸脱することなく、木材接着剤組成物を製造する際の任意のプレポリマーの使用に関して多くのバリエーションを認識できるであろう。
【0037】
本明細書に開示のポリイソシアネート木材接着剤中に組み込まれる成分は、少なくとも部分的にブロックされたアミンアルコキシレートの量(重量)が、最終的なポリイソシアネート木材接着剤組成物中に効果的なレベルで存在するという条件にて、当業界に公知のイソシアネート相溶性の添加剤、または予備重合可能な添加剤のどれでも必要に応じて含んでよい。使用できる任意の添加剤としては、湿潤剤、飽和もしくは不飽和の不活性植物油(イソシアネート反応性基を含有しない)、粒状充填剤、不揮発性の不活性粘度低下用希釈剤(760mmHgの圧力にて180℃より高い沸点を有する)、および不活性の低分子量硬化触媒(イソシアネート反応性の活性水素基を含有しない)からなる群から選択される1種以上の添加剤がある。接着剤配合物中には低分子量の第三アミン触媒を使用しないのが好ましいけれども、これらの第三アミン触媒を使用することはできる。好ましい任意の添加剤(低分子量の硬化触媒)はDMDEE(すなわち2,2’-ジモルホリノジエチルエーテル)である。この(あるいは他の)任意の低分子量第三アミン触媒が使用される場合、最終的なポリイソシアネート木材接着剤組成物において1重量%未満の濃度であるのが好ましい。ポリイソシアネート接着剤組成物中に溶媒を使用することは、一般には望ましいことではなく、または必要なことではない。特に、760mmHgの圧力にて180℃未満で沸騰する溶媒は避けるのが好ましい。
【0038】
本明細書に開示のポリイソシアネート木材接着剤組成物は、液体であること、および水分の非存在下にて25℃で少なくとも30日間貯蔵したときに安定であること、を特徴とするのが好ましい。これらの液体接着剤組成物は、水分にさらされない状態において25℃で少なくとも30日間貯蔵した後の測定にて、10,000cps未満の粘度を有するのが好ましく、7000cps未満の粘度を有するのがさらに好ましく、5000cps未満の粘度を有するのがさらに好ましく、そして4000cps未満の粘度を有するのが最も好ましい。ポリイソシアネート木材接着剤組成物は、有機結合の遊離イソシアネート(-NCO)基の濃度が5重量%〜35重量%の範囲であるのが好ましく、7重量%〜31重量%の範囲であるのがさらに好ましく、8重量%〜30重量%の範囲であるのがさらに好ましく、9重量%〜28重量%の範囲であるのがさらに好ましく、そして10重量%〜27重量%の範囲であるのが最も好ましい。
【0039】
本発明のポリイソシアネート木材接着剤組成物は常温硬化可能である。水分の存在下にて約10℃〜周囲温度(25℃、高くても30℃)の範囲の温度で硬化させることができる。より好ましい常温硬化の温度範囲は20℃〜27℃である。しかしながら、必要に応じて30℃より高い温度でこれらの接着剤を熱硬化させることも本発明の範囲内である。常温硬化できるという能力は大きな利点である。一般には、好ましいシステムは、水分の存在下において周囲温度にて10分〜約2時間で硬化する。硬化時間は一般に、配合物中の第三アミンの含量を増やすことによって短縮することができ、この操作は、少なくとも部分的にブロックされたアミンアルコキシレート成分のレベルを高めることによって行うのが好ましい。
【0040】
接着剤組成物は、水分の存在下において硬化する一液型接着剤として使用するのが好ましい。しかしながら、これらの組成物を、ミキシング活性化による多成分接着剤システムのポリイソシアネート部分として使用すること(あまり好ましいことではないが)も本発明の範囲内である。
【0041】
本発明のポリイソシアネート接着剤組成物は、多くの異なったタイプの水分含有支持体を接合するのに使用することができる。本発明の組成物は、エンジニアリング木材製品を製造すべく、複数の木材支持体を接合するのに使用するのが好ましい。支持体の少なくとも1つが、木材、紙、もみ殻、セメント、石、布、牧草(grass)、トウモロコシの皮、バガス、堅果の殻、ポリマーフォームのフィルムとシート、ポリマーフォーム、および繊維材料からなる群から選択されるのが好ましい。最も好ましいのは木材支持体である。本発明の組成物は、複数支持体複合物または複数支持体積層物〔特に、リグノセルロース系材料またはセルロース系材料(たとえば、木材や紙)を含んだ複合物や積層物〕を製造するのに、また合板、積層ベニヤ木材、ウエハーボード(チップボードまたはOSBとしても知られている)、パーティクルボード、ファイバーボード、および複合木材Iビーム(Iジョイスト)等の製品を製造するのに使用するのが好ましい。
【0042】
ポリイソシアネート木材接着剤を使用する上での、本明細書に開示の方法においては、接着剤組成物が水分硬化される。重要なのは、支持体が適度に高い水分含量を有するということである。具体的には、支持体は、少なくとも約5重量%の水分含量を有するべきであり、少なくとも約6重量%の水分含量を有するのがさらに好ましく、約7重量%以上の水分含量を有するのがさらに好ましい。支持体は、約10〜20重量%の水分含量を有するのがさらに好ましく、約12〜15重量%の水分含量を有するのが最も好ましい。
【0043】
本発明はさらに、前述の接着剤組成物を使用することによって支持体を接合する方法に関する。最も好ましい支持体は木材支持体である。本発明の接着剤組成物は、第1の支持体の表面に塗布するのが好ましい。次いで第2の支持体の表面を、接着剤組成物を含有する第1の支持体の表面に接触させる。接触表面に圧力を加え、接着剤組成物を硬化させる。第1の支持体と接触させる第2の支持体の表面には、一般にはポリイソシアネート接着剤組成物を塗布しない。しかしながら、必要に応じて、支持体を接触させる前に第2の支持体に塗布してもよい。
【0044】
ポリイソシアネート接着剤組成物は、従来のどのような仕方でも支持体の表面に塗布することができる。たとえば、噴霧、はけ塗り、ドクターブレード処理、ワイピング(wiping)、浸漬、流し込み、リボンコーティング、およびこれら種々の方法の組み合わせ等によって、表面に組成物を塗布することができる。特定の最終用途向けに支持体の表面に接着剤組成物を施すための適切な方法は、本発明の開示内容から当業者には明らかであろう。
【0045】
接着剤を塗布した支持体を互いに接触させた後、圧力を加える。圧力は、表面の互いの接着を引き起こすだけの充分な圧力でなければならない。一般には、圧力の量および圧力が加えられる時間は限定されておらず、当業者にとっては、本発明の開示内容から特定の圧力や時間が明らかであろう。しかしながら、殆どの支持体に対して適切な接着を引き起こすためには、約10〜200psiの圧力を約10分〜約2時間にわたって加えるのが好ましく、約10分〜20分にわたって加えるのがさらに好ましい(25℃にてプレス)、ということが見出されている。一般には、処理した(圧力を加えて接着した)支持体に対して、約1時間以内にさらなるプロセシングを施すことができる。
【0046】
塗布の仕方に関係なく、2つの支持体間の接着剤接合に施される接着剤組成物のトータル量は、ある最終用途(すなわち、支持体のタイプ)から別の最終用途までかなり変わってよい。接着剤の量は、所定の試験条件下において所望の接着強さと接着耐久性を達成するのに充分な量でなければならない。こうした量は、それぞれの状況に応じて最適化しなければならないが、当業者には明らかであろう。所定の接着強さと所定の程度の接着耐久性を達成するのに必要とされるより多くの接着剤を使用することは、経済的な理由から一般には望ましくない。過剰量の接着剤を使用すると、硬化がより遅くなることもある。しかしながら、接着表面積(すなわち、接着剤組成物によって接合しようとする支持体間の重なり部分の面積である)1平方フィート当たり約10g〜約40gのポリイソシアネート接着剤組成物を使用するのが好ましく、約10g〜約30gのポリイソシアネート接着剤組成物を使用するのがさらに好ましいことが見出されている。
【0047】
本発明はさらに、本明細書に開示のポリシイシアネート接着剤組成物を使用することによって製造される、接着剤接合された複合木材品に関する。
【0048】
本明細書に開示の接着剤組成物の主要な利点の1つは、接着剤で積層された複合木材品において離層抵抗が大幅に改良されることである。これらの改良は、先行技術の接着剤組成物と比較してかなり大きい。
【0049】
離層抵抗に対する特に厳しい試験が、ASTM D-2559-00セクション1.2.2に記載の方法(湿潤と乾燥に対する促進暴露時の離層抵抗)(該文書の全内容を参照により本明細書に含める)において説明されている。本明細書に開示の好ましいポリイソシアネート接着剤組成物から、好ましい量にて好ましいプロセシング条件下で製造される積層複合木材は、ASTM D-2559-00セクション15.4.1に記載の層間剥離離試験法に従って、5%未満の全離層結果(total delamination results)を有するのが好ましく、3%未満の全離層結果を有するのがさらに好ましく、2%未満の全離層結果を有するのがさらに好ましく、そして1%未満の全離層結果を有するのが最も好ましい。
【0050】
オキシエチレンを含有する少なくとも部分的にブロックされた好ましい脂肪族アミンアルコキシレートは、一液型の水分硬化ポリイソシアネート木材接着剤において使用するのが最も好ましいことに加えて、ポリイソシアネート中において安定であって、且つ穏やかな触媒活性を有する触媒化学種を必要とするポリウレタン技術の他の用途においても有用である場合がある。
【0051】
本明細書においては、ポリマー化学種の分子量、当量、および基官能価(group functionalities)はいずれも、特に明記しない限り数平均であるとする。同様に、混ざりものではない化合物の分子量、当量、および基官能価は、特に明記しない限り絶対値であるとする。
【0052】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、これらの実施例によって本発明が限定されることはない。パーセントはいずれも、特に明記しない限り重量基準である。
【実施例】
【0053】
用語の意味
【0054】
1. ルビネート(RUBINATE)(登録商標)-1850ポリイソシアネート: ポリメリックMDIのイソシアヌレート変性(部分的に三量化された)誘導体であり、ハンツマン・ポリウレタンズ社から市販されている。この製品は、約31重量%の遊離イソシアネート基含量を有する。25℃で液体であり、その温度で約700cpsの粘度を有する。この製品はプレポリマーを含有していない。
【0055】
2. シンペロニック(SYNPERONIC)(登録商標)T-304製品: アミン基が全て第三脂肪族アミンであって、オキシエチレンユニットの含量が約40重量%である場合の、エチレンジアミン(EDA)のエトキシル化・プロポキシル化誘導体である。この製品は公称テトラオールであって、ICI PLCのユニケマ事業部から市販されており、約1650の数平均分子量を有する。
【0056】
3. テトロニック(TETRONIC)(登録商標)T-304製品: 化学的にシンペロニックT-304製品と同等であると思われる。この製品はBASF社から市販されている。
【0057】
4. リネスター(LINESTAR)(登録商標)-4800ポリイソシアネート(以下、LS-4800と記載する): 先行技術において公知のタイプの常温硬化ポリイソシアネート木材接着剤である。この製品は、ジフェニルメタンジイソシイアネート異性体とMDI系列のより高級のオリゴマーとの混合物から誘導されるプレポリマーである。このプレポリマーは、EDAを開示剤とするポリエーテルテトラオールとポリオキシプロピレンジオールとの組み合わせから形成される。この製品はハンツマン・ポリウレタンズ社から市販されていて、約19重量%の遊離イソシアネート(-NCO)基含量および25℃にて約3500cpsの粘度を有する液体である。この製品は、一成分型の水分硬化木材接着剤として使用するよう意図されている。
【0058】
(実施例1: フェニルイソシアネートで末端キャップされたT-304の製造)
本実施例は、アミンアルコキシレートの少なくとも部分的にブロックされた誘導体の製造について説明する。使用したアミンアルコキシレートはテトロニックT-304製品であり、単官能ブロッキング剤はフェニルイソシアネートであった。
【0059】
テトロニックT-304製品のサンプルはBASF社から入手した。この物質は以下のような特性を有する:数平均MW=1650;公称ヒドロキシル官能価4(公称官能価は、開始剤の活性水素官能価である;この場合はエチレンジアミン);および数平均当量=412.5。公称ヒドロキシル官能価は、この系の数平均ヒドロキシル官能価にかなり近い。T-304中のアミン基は全て第三アミン基である、と考えられる。フェニルイソシアネートは、アルドリッチケミカル社から入手した。この物質は以下のような特性を有する:分子量(絶対値)=119.12;イソシアネート官能価(絶対値)=1;密度=1.096。どちらの試剤も、受け入れたままの状態で使用した。
【0060】
ガラスジャー中に100gのT-304を計量した。ジャーの上に乾燥窒素の穏やかなパージを使用して、T-304が過剰な水分を吸収しないようにした。T-304の温度は約25℃(周囲実験室条件)であった。シリンジを予め計量し、ある量のフェニルイソシアネートをシリンジ中に吸い込み、そして再び計量することによって、フェニルイソシアネートを10ccのプラスチックシリンジ中に計り込んだ。9gのフェニルイソシアネートをシリンジ中に吸い込んだ。この量のフェニルイソシアネートは、T-304上の約30モル%のヒドロキシル基を反応させるのに充分な量である。9gのフェニルイソシアネートを、約25℃で攪拌しながらT-304に徐々に加えた。フェニルイソシアネートを加えた後、攪拌を約15分続けた。乾燥窒素の雰囲気下にてジャーを金属製キャップでシールし、60℃のオーブン中に3時間置いた。この3時間の間に、サンプルをときどきオーブンから取り出して振盪した。3時間加熱した後、サンプルをオーブンから取り出し、周囲の実験室温度で一晩平衡化させた。
【0061】
(実施例2: 実施例1において製造したフェニルイソシアネート末端キャップT-304の、常温硬化条件下での、一成分型ポリイソシアネート木材接着剤における使用)
フェニルイソシアネート末端キャップT-304を使用して、一連のポリイソシアネート接着剤配合物を製造した(本発明にしたがって)。これらのサンプルを、対照標準としてのLS-4800(米国特許第6,368,714号に開示の技術を具現する)と比較した。指定されたポリイソシアネート製品と指定された量のポリイソシアネート末端キャップT-304とを周囲実験室温度(約25℃)でブレンドし、末端キャップT-304上の遊離-OH基の反応を約24時間にわたって起こさせることによって、フェニルイソシアネート末端キャップT-304を含有するポリイソシアネート接着剤を製造した。
【0062】
積層複合木材の試験サンプルを作製し、ASTM-D-2559-00のセクション10と11にしたがって試験した。この試験において使用した木材は、6’×12’×3/4”の寸法にカットし、サンドペーパーでこすり、1重量%のウレア水溶液で表面処理し、そして8〜9重量%の水分含量が得られるよう、45%RHおよび38℃で少なくとも24時間状態調節したサザン・イエロー・パイン(Southern Yellow Pine)であった。それぞれの試験系列において、約8gの指定された接着剤組成物を、ウレアで前処理し状態調節した木材試験片の上表面に塗布し、6層の5ボンドライン積層サンプルを、本検討において使用した各タイプの接着剤に関し、実験室プレスにて250psiの圧力にて25℃で60分加圧した。接着剤をはけ塗りによって塗布し、各接合界面の一方の側にだけ塗布した。塗布された試験片から積層物を作製し、接着剤を塗布してから5分以内に加圧した。
【0063】
各積層物を、下記のカッティング・ダイアグラム(cutting diagram)に示すようにカットした。各積層物からの2つの試験片を、ASTM規格D2559-00セクション15(促進暴露時の離層抵抗)に記載の手順にしたがって試験した。表に記載のデータは、2つのサンプルの平均である。
【0064】
【表1】

【0065】
サイクリック層間剥離試験の結果が、それぞれの接着剤タイプに対して下記の表に記載してある。
【0066】
【表2】

【0067】
【表3】

【0068】
【表4】

【0069】
これらのデータから、フェニルイソシアネート末端キャップT-304物質を組み込んだ、本発明の2種の接着剤サンプルに関しては、全離層パーセントの大幅な減少が達成されることがわかる。さらに、本発明の接着剤組成物から製造されるサンプルの個々の接着界面のほとんどにおいて離層パーセントの大幅な減少が見られる。ルビネート1850ポリイソシアネートとフェニルイソシアネート末端キャップT-304とを組み合わせてなる単純化された接着剤配合物でさえ、対照標準(LS-4800)より大幅に優れた性能を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i) ヒドロキシル末端アルコキシル化第三アミンと少なくとも1種の単官能有機ブロッキング剤との反応生成物、このときヒドロキシル末端アルコキシル化第三アミン中に最初に存在する遊離ヒドロキシル基が少なくとも部分的にブロックされている;及び
(ii) ポリイソシアネート;
の反応生成物を含む、水分で活性化される接着剤組成物。
【請求項2】
ヒドロキシル末端アルコキシル化第三アミンが、活性水素基を有するアンモニアまたは脂肪族アミンのエトキシル化誘導体およびプロポキシル化誘導体を含む、請求項1に記載の水分で活性化される接着剤組成物。
【請求項3】
ヒドロキシル末端アルコキシル化第三アミンが少なくとも500の数平均分子量を有する、請求項1に記載の水分で活性化される接着剤組成物。
【請求項4】
ヒドロキシル末端アルコキシル化第三アミンが、数平均に基づいて1分子当たり1〜10個の脂肪族第三アミン基を含む、請求項1に記載の水分で活性化される接着剤組成物。
【請求項5】
ヒドロキシル末端アルコキシル化第三アミンが、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドとエチレンジアミンとの反応生成物を含み、このとき反応生成物において、エチレンジアミン中の全てのアミン基が第三アミンに転化されている、請求項1に記載の水分で活性化される接着剤組成物。
【請求項6】
ヒドロキシル末端アルコキシル化第三アミンが、ヒドロキシル末端アルコキシル化第三アミンの重量を基準として2〜60重量%のオキシエチレン単位を含む、請求項1に記載の水分で活性化される接着剤組成物。
【請求項7】
ヒドロキシル末端アルコキシル化第三アミン中に最初に存在する遊離ヒドロキシル基の少なくとも30モル%がウレタン基に転化される、請求項1に記載の水分で活性化される接着剤組成物。
【請求項8】
約70重量%〜約90重量%のポリイソシアネートを含む、請求項1に記載の水分で活性化される接着剤組成物。
【請求項9】
ヒドロキシル末端アルコキシル化第三アミンと少なくとも1種の単官能有機ブロッキング剤との反応生成物を少なくとも10重量%含む、請求項1に記載の水分で活性化される接着剤組成物。
【請求項10】
単官能有機ブロッキング剤がフェニルイソシアネートを含む、請求項1に記載の水分で活性化される接着剤組成物。
【請求項11】
(i) ヒドロキシル末端アルコキシル化第三アミンと、フェニルイソシアネートを含むブロッキング剤との反応生成物、このときヒドロキシル末端アルコキシル化第三アミン中に最初に存在する遊離ヒドロキシル基の少なくとも25モル%がブロックされている;および
(ii) ポリイソシアネート;
の反応生成物を含む、水分で活性化される接着剤組成物。
【請求項12】
ポリイソシアネートを約70重量%〜約90重量%含む、請求項11に記載の水分で活性化される接着剤組成物。
【請求項13】
ヒドロキシル末端アルコキシル化第三アミンとブロッキング剤との反応生成物を少なくとも10重量%含む、請求項12に記載の水分で活性化される接着剤組成物。
【請求項14】
a. 第1の支持体の表面に請求項1記載の水分で活性化される接着剤組成物を塗布する工程;
b. 第1の支持体の表面と第2の支持体の表面とを10℃〜30℃の範囲の温度で接触させる工程;および
c. 接触表面間に接着結合を達成するに足る時間にわたって接触表面に圧力を加える工程;
を含む、複数のリグノセルロース支持体またはセルロース支持体を接合する方法。
【請求項15】
a. 第1の支持体の表面に請求項11記載の水分で活性化される接着剤組成物を塗布する工程;
b. 第1の支持体の表面と第2の支持体の表面とを10℃〜30℃の範囲の温度で接触させる工程;および
c. 接触表面間に接着結合を達成するに足る時間にわたって接触表面に圧力を加える工程;
を含む、複数のリグノセルロース支持体またはセルロース支持体を接合する方法。
【請求項16】
請求項1記載の水分で活性化される接着剤組成物で接合された第1の支持体と第2の支持体とを含む複合材料品。
【請求項17】
請求項11記載の水分で活性化される接着剤組成物で接合された第1の支持体と第2の支持体とを含む複合材料品。
【請求項18】
ASTM D-2559-00セクション15.4.1のサイクリック層間剥離試験法による測定にて2%未満の全離層値を含む、請求項16に記載の複合材料品。
【請求項19】
ASTM D-2559-00セクション15.4.1のサイクリック層間剥離試験法による測定にて2%未満の全離層値を含む、請求項17に記載の複合材料品。
【請求項20】
ヒドロキシル末端アルコキシル化第三アミンと少なくとも1種の単官能有機ブロッキング剤との反応生成物を含み、このときヒドロキシル末端アルコキシル化第三アミン中に最初に存在する遊離ヒドロキシル基が少なくとも部分的にブロックされている、ポリイソシアネートベースの接着剤に使用するための触媒。
【請求項21】
ヒドロキシル末端アルコキシル化第三アミン中に最初に存在する遊離ヒドロキシル基の全てがブロックされる、請求項20に記載の触媒。
【請求項22】
単官能有機ブロッキング剤がフェニルイソシアネートを含む、請求項20に記載の触媒。
【請求項23】
ヒドロキシル末端アルコキシル化第三アミン中に最初に存在する遊離ヒドロキシル基の少なくとも30モル%がブロックされる、請求項20に記載の触媒。
【請求項24】
ヒドロキシル末端アルコキシル化第三アミンが少なくとも500の数平均分子量を有する、請求項20に記載の触媒。
【請求項25】
ヒドロキシル末端アルコキシル化第三アミンが、数平均に基づいて1分子当たり1〜10個の脂肪族第三アミン基を含む、請求項20に記載の触媒。
【請求項26】
ヒドロキシル末端アルコキシル化第三アミンが、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドとエチレンジアミンとの反応生成物を含み、このとき反応生成物において、エチレンジアミン中の全てのアミン基が第三アミンに転化されている、請求項20に記載の触媒。
【請求項27】
ヒドロキシル末端アルコキシル化第三アミンが、ヒドロキシル末端アルコキシル化第三アミンの重量を基準として2〜60重量%のオキシエチレン単位を含む、請求項20に記載の触媒。

【公表番号】特表2007−521348(P2007−521348A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−507837(P2005−507837)
【出願日】平成15年7月25日(2003.7.25)
【国際出願番号】PCT/US2003/023255
【国際公開番号】WO2005/016986
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(500030150)ハンツマン・インターナショナル・エルエルシー (56)
【Fターム(参考)】