説明

循環細胞の捕獲用デバイス

本発明は、希少細胞を捕獲するためのデバイスと方法を提供する。本発明に関するデバイスと方法は、転移性癌の診断と観察を容易にするために用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、希少細胞を捕獲するためのデバイスおよび方法に関する。
【0002】
本出願は、2009年3月18日の米国仮出願第61/161248号および2010年2月5日の米国仮出願第61/301839号にて優先権を主張しており、これらの内容全体が参照されて本明細書に組み込まれている。
【0003】
本明細書で述べられ請求される発明につながる仕事は、米国の国立衛生研究所からの資金、助成番号CA119347を用いて実施されたものである。米国政府は、本発明に一定の権利を有している。
【背景技術】
【0004】
癌は、先進国における死亡の主要な原因の一つで、米国だけで年間50万人以上が死亡する結果になっている。100万人以上の人々が、毎年米国では癌と診断され、全体的には三人に一人以上が一生の間に何らかの癌になるとみられている。
【0005】
ほとんどの癌患者は、原発腫瘍によって死んでいるわけではない。むしろ、癌患者は、転移、即ち、体のある部分から別の部分への悪性細胞の広がり、に負けている。原発腫瘍が十分早期に検出された場合、それはしばしば手術、放射線、化学療法またはこれらの治療法のいくつかの組み合わせによって除去することができる。対照的に、転移性腫瘍は検出が困難であり、治療は、転移の進行に従い難しくなる。このため、早期の癌転移を検出する方法を開発することが必要とされている。
【0006】
原発腫瘍部位から抜け出た癌細胞は、循環腫瘍細胞(CTC)として知られている(例えば、非特許文献1参照)。CTCは、非血液性癌の検出や特性評価およびモニタリングのために腫瘍組織としての侵襲的生検の潜在的な代替となるものである(例えば、非特許文献2〜4参照)。
過去10年間以上で、CTCは、癌の病気の進行と治療成績のモニタリングと同じように早期の癌転移を検出するための新興の「バイオマーカー」となっている(例えば、非特許文献5参照)。しかしながら、CTCの分離は、血液中の数が多い血液細胞(10細胞/mL)の間で、CTCが極めて低濃度(mL当たり数百分のいくつ程度)な故に、技術的に困難である(例えば、非特許文献4、6、7参照)。
【0007】
末梢血からCTCを富化する或は取り出していくための従来のアプローチには、フローサイトメトリー、免疫磁気ビーズ、高スループットの光イメージングシステム、および光ファイバアレイスキャニングが含まれる。CTCの免疫ビーズ精製は、現在臨床の現場で最も広く使用されている技術であり、そして、肺、前立腺、大腸、乳房および膵臓癌の患者でCTCをうまく特定している(例えば、非特許文献3、4、8、10参照)。しかし、このアプローチは、少数のCTC(肺癌で(4±24(平均±SD))個/mL;乳房癌で11±118個; 前立腺癌で10±33個;大腸癌および膵臓癌の両方で1±2 個)(例えば、非特許文献3参照)を非常に低い純度(0.01−0.1%)(例えば、非特許文献10参照)で且つ低収率(患者の約20−60%)(例えば、非特許文献3参照)で分離している。免疫磁気ビーズ技術の、低感度と低選択性および低収率に関係する「生物学的ノイズ」のレベルは、癌の早期発見と、治療に対する患者の応答のモニターにおいて、この使用を制限している。現在、免疫磁気ビーズ技術は、患者を高リスクおよび低リスクのカテゴリーに分類する総予後ツールとして有用である(例えば、非特許文献5参照)。
【0008】
マイクロ流体LOC(lab−on−a−chip)デバイスは、細胞選別と希少細胞検出のための独創的な機会を提供している。マイクロ流体技術は、マイクロ流体フローサイトメトリー、連続的なサイズベースの分離(例えば、非特許文献11参照)とクロマトグラフィー分離(例えば、非特許文献12参照)に上手く使用されている。しかし、これらの方法は、大量(例えば、全血のミリリットル量)の試料を処理することができない(例えば、非特許文献13参照)。
マイクロ流体技術はまた、全血試料からのCTCを捕獲するためにも使用されてきた(例えば、非特許文献8、9参照)。しかし、既存のCTC捕獲システムは、デバイスを介して血流を導入するための複雑な流体取り扱いシステムを必要としている。さらに、これらのシステムは、CTCを分離するために、細胞捕獲のために最適でない微細構造を使用している。
【0009】
上皮由来のほとんどの腫瘍細胞(癌)の表面は、いろいろな大きさと形態のナノ構造微絨毛で覆われている(例えば、非特許文献14参照)。腺由来の良性の上皮細胞において、この微絨毛は、分極(例えば、通常は腺や器官の内腔に面している正常細胞の一形態に限定)されていて、均一で単調な形態になっている。上皮癌細胞の微絨毛は、細胞表面全体を覆い、大きさと長さがいろいろであり、時には非常に長い微絨毛の塊を形成している。いくつかの腫瘍、特に癌性中皮腫、長い微絨毛の房は、悪性細胞を特徴づけている。さらに、追加の構造が細胞表面に存在し、この構造も大きさがナノスケールで、葉状仮足(lamellipodia)、糸状仮足(filopodia)、および脂質ラフト分子群を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、いくつかの実施態様において、細胞表面上にこれらのナノスケールの構造体があることの利点を有する新世代の細胞捕獲デバイスを提案するものである。
【0011】
さらなる目的および利点は、詳細な説明、図面、および実施例の考察から明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の実施態様によれば、細胞捕獲用デバイスは、ナノ構造の表面領域を含む基板を持つ。ナノ構造の表面領域に付加しているのは、複数の結合剤であり、細胞試料中の標的(ターゲット)細胞を選択的に捕獲することができる。ナノ構造の表面領域には、複数のナノ構造体が含まれる。本ナノ構造体は、縦方向寸法と横方向寸法を持ち、いくつかの実施態様では、縦方向寸法は横方向寸法より少なくとも10倍大きい。
【0013】
いくつかの実施態様または本発明で、デバイスは、マイクロ流体デバイスである。本マイクロ流体デバイスは、フロー層に接続された基板を有し、マイクロ流体チャネルを形成する。本基板は、ナノ構造の表面領域を持ち、その一部分は、動作中にマイクロ流体チャネル内を流れる流体と接触する。このナノ構造の表面領域は、それぞれ縦方向寸法と横方向寸法を有する複数のナノ構造を含む。ナノ構造の表面領域に付加しているのは、複数の結合剤であり、細胞試料中の標的細胞を選択的に捕獲することが可能である。
【0014】
本発明の実施態様はまた、細胞試料から標的細胞を単離する方法に向けられている。本方法は、少なくとも1つの標的細胞を有する細胞試料を提供することおよび複数のナノ構造体と細胞試料を接触させることを含む。ナノ構造体に付加しているものは、複数の結合剤であり、これは、選択的に細胞試料中の標的細胞を捕獲することが可能である。
【0015】
本発明の他の実施態様は、疾患の診断、病気の進行を監視し、治療の有効性を評価するために本発明の方法およびデバイスを使用することに関する。
【0016】
本発明のさらなる実施態様は、本発明のデバイスを含むキットに関する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、ナノ構造基板が、本発明の実施態様に係る試料から改良された細胞捕獲効率をいかに実現できるかその方法の概念図を提供している。ナノ構造基板が細胞表面成分との強化された局所的相互作用を与える故に、平坦基板よりもナノ構造基板の上により多くの細胞表面成分が付着していることを示している。
【図2】図2のA−2Cは、本発明の実施態様に係るシリコンナノワイヤー(SiNW)の調製を示している。図2Aは、シリコン基板(シリコンウェハー)上にSiNWの配列を導入するためのAgとHFによる化学エッチングを示している。走査型電子顕微鏡(SEM)画像では、100〜200nmの直径範囲と10μm程度の長さを持つ、明確に定義されたSiNWを明らかにしている。図2Bは、シリコン基板上にビオチン化した上皮細胞の接着分子抗体(抗EpCAM)をグラフト化する模式図である。図2Cは、湿式化学エッチングによって得られるさまざまなSiNWの長さをもつSiNW基板のSEM像を示している。
【図3】図3のA−3Cでは、平坦シリコン基板と本発明の実施態様のSiNW基板を比較して示したものである。図3Aは、それらの上にMCF7が捕獲されたSiNW基板と平坦なシリコン基板の蛍光顕微鏡像とSEM像を示している。図3Bは、それらの上にダウディB(DaubiB)細胞が捕獲されたSiNW基板と平坦なシリコン基板の蛍光顕微鏡像とSEM像を示している。図3Aおよび3Bでは、SiNW基板は平坦基板よりも有意に高い細胞捕獲効率を示している。図3Cは、近接実験の設定で細胞捕獲効率を比較するために、シリコン基板上にSiNWと平坦基板を交互にパターニングするフォトリソグラフィ工程の概略図である。図3Dは、細胞捕獲前のパターン化基板のSEM像(上)と、パターン化基板上に捕獲された細胞の蛍光像(下)を示している。
【図4】図4のAおよびBは、本発明の実施態様であるSiNW基板の捕獲効率に与える捕獲時間とSiNWの長さの効果を示している。図4Aは、細胞捕獲効率と捕獲時間との相関関係を示している。図4Bは、細胞捕獲効率と0−20μm範囲のさまざまなSiNWの長さとの相関関係を示している。
【図5】図5は、3種の異なる基板、つまり、表面改質なしのSiNW 基板(SiNW−No)、ストレプトアビジンで修飾したコーティングのSiNW 基板(SiNW−SA)、および抗EpCAMで改質したSiNWの基板(SiNW−SA−抗EpCAM)の細胞捕獲性能を比較して示している。
【図6】図6のA−6Eは、本発明の実施態様に係るマイクロ流体デバイスを示している。図6Aは、マイクロ流体細胞捕獲プラットフォームの写真である。図6Bは、捕獲剤でコーティングされたSiNW基板と上敷きのマイクロ流体の無秩序混合体又はミキサー(microfluidic chaotic mixer)で構成する組込みCTC捕獲プラットフォームの概略図である。図6Cは、無秩序混合チャンネルの下のSiNWパターンの光学像である。図6Dは、100−200nm範囲の直径と10μm程度の長さを持つよく定義されたSiNWを側面から見たSEM像である。図6Eは、どのようにして細胞表面成分が、高い効率でナノ構造基板上に付着しているかを示しており、その理由として、おそらく、ナノ構造基板が細胞表面成分と局所的な相互作用を高めていることを示している。
【図7】図7のA−7Cは、本発明の実施態様に係るマイクロ流体デバイス内の細胞捕獲への流量の影響を示している。図7Aは、マイクロ流体デバイスの流量と捕獲収率との相関関係を示している。図7Bは、入口から出口(0−88cm)のマイクロチャネルでの捕獲細胞の分布を示している。図7Cは、マイクロ流体デバイスの写真である。
【図8】図8は、本発明の実施態様に係るマイクロ流体デバイスで、3種の異なる癌細胞株、つまり、乳房(MCF7)、前立腺(PC3)、および膀胱(T−24)のmL当たり100細胞でスパイク(spike)されたPBS の捕獲収率を示している。
【図9】図9は、本発明の実施態様に係るマイクロ流体デバイスの中で、溶解した血液(lysed blood)試料に全血を比べて、様々な標的細胞の濃度に対する捕獲効率を示している。プロットは、回収細胞に対してスパイクされた細胞の数を表している。
【図10】図10のA−10Dは、本発明の実施態様に係るマイクロ流体デバイスの捕獲効率で捕獲時間とSiNWの長さの影響を示している。図10Aは、細胞捕獲効率と捕獲時間との相関関係を示している。図10Bは、細胞捕獲効率と0−20μmの範囲の異なるSiNWの長さとの相関関係を示している。図10Cは、異なる比率の細胞混合物中で捕獲されている目標ダウディB細胞の割合を示している。図10Dは、SiNP基板上に捕獲されたダウディB細胞の蛍光像を示している。細胞の各プロットとエラーバーは、3回の繰り返しからの平均±標準偏差を表している。
【図11】図11のA−11Cは、本発明の実施の態様とセルサーチ(CellSearch)(TM:トレードマーク)技術に係るデバイスの捕獲能力を比較して示している。図11Aは、転移性前立腺癌患者の43検体で報告されたCTCの数値を示している。図11Bは、静的培養条件下での本発明の実施態様に係るデバイスを用いて患者検体について報告されたCTCの数値を示している。図11Cは、本発明の実施態様に係るマイクロ流体デバイスを用いて患者検体について報告されたCTCの数値を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のいくつかの実施態様は、迅速かつ効率的に希少細胞、例えば、生物学的試料からのCTCを分離することができるデバイス(装置)に関する。デバイスには、ナノ構造に付加された結合剤が含まれる。細胞捕獲は、結合剤と標的細胞の相互作用によって仲介される。さらに、ナノ構造は、微絨毛、葉状仮足、糸状仮足、および脂質ラフト分子群のような細胞表面成分と相互作用することにより、細胞の捕獲に役立つ。生物学的試料中の希少細胞を正確に識別し測定することに加えて、本発明のいくつかの実施態様によるデバイスは、その後の工程で使用できる希少細胞を分離する。本発明のいくつかの実施態様はさらに、疾患を検出し、診断し、監視する本デバイスの使用を含む研究と臨床管理の両方において、本デバイスを使用することに関する。
【0019】
いくつかの実施態様において、本発明のデバイスと方法は、単一の操作で全血から直接、希少細胞を探し出すことができる。例えば、本発明の実施態様に従ったデバイスおよび方法は、全抗凝固処理血液(ただしこれに限定されない)を、希釈、遠心分離、赤血球溶解、細胞固定、または細胞標識のような試料処理工程を更に行うことなく、利用することができる。このことは、多数の「バルク」半自動化調製の工程(遠心分離、洗浄、および培養)、その結果、希少細胞の重要な部分を損失および/または破壊することになる、そのような工程を要する免疫磁気ビーズベースのシステムとは対照的である。加えて、本発明の実施態様に従ったデバイスおよび方法は、生育可能細胞および固定化細胞の両方を単離することが可能であり、対して、磁気ビーズベースの方法では、固定化、生育不可能細胞を単離することができるのみである。更に、複雑な流体処理システムを必要とする既存のマイクロ流体CTC捕獲デバイスとは異なり、本発明の実施の態様に応じたデバイスは、静的にデバイス中で血液試料を培養することにより、高い細胞捕獲効率を達成することができる。
【0020】
本発明のデバイス及び方法のいくつかの実施態様は、生体試料中の循環細胞を捕獲し分離するためにナノ構造体を使用するという点でも特徴的である。以前のマイクロ流体CTC捕獲デバイスは、標的細胞と相互作用する微細構造を採用していた。これらの微細構造は、通常10−30μmサイズであるほとんどの細胞と相互作用することが出来る。しかし、これらの微細構造は、サイズがナノスケールである(例えば、微絨毛)細胞表面上のさまざまな成分と相互作用することはできなかった。本発明の実施態様によるナノ構造体は、これらのナノスケールの細胞表面の成分と相互作用することにより、標的細胞への結合を強化する。
【0021】
いくつかの実施態様において、本発明のデバイスおよび方法は、高い感度(例えば、CTCを持つものとして同定された腫瘍を有する患者の割合)で、高い特異性(例えば、CTCを持っていないものとして同定された腫瘍を有さない患者の割合)で、そして高い純度(デバイスによって保持された他の細胞に相対する、デバイスに保持された希少細胞の割合として定義される)で、希少細胞の捕獲を達成することができる。CTC捕獲のための以前のデバイスと方法に比べて、感度、特異性、そして純度の観測されたレベルは驚くべきである(例えば、図10を参照)。
【0022】
いくつかの実施態様において、本発明のデバイス及び方法は、原料量および結合剤における変化を含む様々な臨床シナリオでの潜在的な使用にすぐに適応可能であり、任意の型の稀少循環細胞の捕獲を可能とする。加えて、本発明のいくつかの実施態様によるデバイスおよび方法は、循環腫瘍細胞の同定および単離に限定されない。本発明の実施態様によるデバイスおよび方法は、細胞学的研究分野の範囲内での使用に適している。本発明のいくつかの実施態様のワンステップの可能性と汎用性は、これらの実施態様を、臨床実践へのポイントオブケア(POC)の使用や迅速な組み入れに資するものになる。
【0023】
本発明の実施態様を、以下で詳しく説明する。実施態様の説明では、特定の用語が、理解を容易にするために使用されている。しかし、これらの実施態様は、そのように選択された特定の用語に限定されるものではない。関連技術における当業者であれば、本発明の精神および範囲から逸脱しない限り、他の同等の成分を採用して、他の方法が開発され得ることを認識できよう。ここに挙げたすべての参考文献は、それぞれが個々に組み込まれているかのように、参考として援用されている。
【0024】
1.定義
本発明の理解を容易にするために、幾つかの用語やフレーズが下記に定義されている。
【0025】
本明細書において、英語表記上、単数形の冠詞「a」、「an」、そして「the」は、文脈で明瞭に述べていない限り複数形を含む。したがって、例えば、「結合剤(a binding agent)」 への言及は、一つよりも多い結合剤(more than one binding agent)への言及も含まれている。
【0026】
用語「ナノ構造体(nanostructure)」とは、横方向寸法、縦方向寸法、または横方向寸法と縦方向寸法が共に1mm未満である、横方向寸法と縦方向寸法を有する構造体を意味する。このナノ構造体の形状は重要ではない。それは、例えば、ビーズ、粒子、撚糸、チューブ、球、など任意の三次元表面でもよい。
【0027】
用語「診断(diagnostic)」と「診断(diagnosis)」とは、病態の存在や性質を識別することに言及しており、特定の疾患または障害を発症する危険にさらされている患者を識別することが含まれている。診断方法は、その感度及び特異性が異なっている。診断法の「感度(sensitivity)」とは、検査陽性の病気の人の割合(「真陽性(true positives)」のパーセント)のことをいう。診断法により検出されない病気の人は「偽陰性(false negatives)」になる。病気でなくて検査で陰性の対象者は、「真の陰性(true negatives)」と呼ばれる。診断法の「特異性(specificity)」は、「1−偽陽性率」であり、ここで「偽陽性(false positive)」率は、検査陽性で疾患のない者の割合として定義される。特定の診断方法は、或る状態の確定診断ができないかもしれない一方で、その方法が診断を援ける助ける正の指標を示すものであればそれで十分である。
【0028】
「検出(detection)」、「検出すること(detecting)」およびそのような用語は、バイオマーカーの検出、または疾患または障害の検出(たとえば、正のアッセイ結果が得られる時)の文脈で使用することができる。後者の文脈では、「検出すること(detecting)」と「診断すること(diagnosing)」とは、同義語であると考えることができる。
【0029】
本発明の方法は、ヒトに限定されないで、他の哺乳動物(たとえば、猫、犬等)にも有用である必要があるが、用語の「被験体(subject)」、「患者(patient)」または「個人(individual)」とは、一般的にはヒトを指す。
【0030】
「試料(sample)」は、本明細書ではその最も広い意味で用いられている。試料は、血液、血清、血漿、涙、水硝子体液、脊髄液、尿、および唾液を含む体液;細胞または組織の調製、または細胞が増殖された培地の可溶性画分、を含むことができる。適切な生物学的試料を得る手段は、当業者には公知である。
【0031】
本明細書中で用いられる用語「結合剤(binding agent)」は、任意の実在物または物質、例えば、分子を指し、かかる分子は、ナノ構造の表面領域と関連させられている(例えば、その上に固定されている、または共有結合あるいは非共有結合のいずれかで付着されている)、または、このような表面の部分(例えば、プラスチック表面の誘導体化部分(derivatized portion)であり、そして標的細胞との特異的な相互作用または関連付けを受けることができる。「複数の結合剤(plurality of binding agents)」は、一つの特定の結合剤の複数または一つよりも多い結合剤の複数のものを指すことが出来る。
【0032】
「抗体(antibody)」とは、蛋白質、ポリペプチド、ペプチド、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質などのような標的を、免疫グロブリン分子の可変領域内の少なくとも1つの抗原認識部位を介して、認識し特異的に結合する免疫グロブリン分子である。本明細書で用いられるように、本用語はもっとも広い意味で用いられ、無傷のポリクローナル抗体、無傷のモノクローナル抗体、抗体フラグメント(Fab、Fab'、F(ab')およびFvフラグメントのような)、単鎖Fv(scFv)変異体、少なくとも二つの完全な抗体から生じた二重特異性抗体のような多重特異性抗体、ハイブリッド抗体、抗体部分を含む融合タンパク質、および抗原認識部位を含む任意の他の修飾免疫グロブリン分子、抗体が所望の生物学的活性を示す限り、網羅している。抗体は、免疫グロブリン:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgM、またはそれからのサブクラス(アイソタイプ)(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)、それぞれアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、およびミューと呼ばれるそれらのヘビー鎖定常ドメインの同定に基づいた、任意の5つの主要なクラスのものでもよい。免疫グロブリンの異なるクラスは、異なったよく知られているサブユニット構造と三次元の形状をしている。抗体は、毒素や放射性同位元素等のような他の分子に対しむき出しになっていて結合することが出来る。
【0033】
用語「抗体フラグメント(antibody fragments)」は、無傷の抗体の一部分を指す。抗体フラグメントの例としては、線形抗体;単鎖抗体分子;FcまたはFc'ペプチド、FabおよびFabフラグメント、および抗体断片から形成される多重特異性抗体を含むが、これらに限定されるものではない。
【0034】
「ハイブリッド抗体(hybrid antibodies)」は、免疫グロブリン分子であり、その中では、異なる抗原決定領域を有する抗体からの重鎖および軽鎖のペアが、2つの異なるエピトープまたは2つの異なる抗原を認識し、結果の四量体に結ばれることができるように一緒に集まっている。
【0035】
細胞に関しての「単離された(isolated)」とは、その自然環境(固形腫瘍の中のような)から取り除かれ、そして単離又は分離されている細胞を指していて、自然に存在しているが本細胞が単離される際のマーカーを欠いている他の細胞から少なくとも約30%、50%、75%、および90%遊離したものである。
【0036】
分子(例えば、結合剤)が、標的細胞に「特異的に結合する(specificallybinds)」または「特異的結合(specific binding)」を示す、あるいは標的細胞を「捕獲する(capture)」または「選択的に捕獲する(selectively capture)」とは、より頻繁に、より迅速に、より大きい持続時間で、および/または代替物質と比べて標的細胞とのより大きな親和性を持って、本分子が反応したり会合したりすることを意味する。このように、指定された実験条件下では、特定分子が少なくとも2倍以上のバックグラウンドで標的細胞と結合し、試料中に存在する他の細胞やタンパク質に有意な量では実質的に結合しない。
【0037】
本明細書中で使用される「転移(metastasis)」とは、新しい部位での同じ癌病変の展開を伴い、原発部位から身体の他の部位へ、癌が拡散または転移するプロセスを指す。「転移性(metastatic)」または「転移している(metastasizing)」細胞は、隣接する細胞と接着性接触を欠き、隣接する体構造に侵入する疾患の第一部位からの血流やリンパを介して移行するものである。
【0038】
2.デバイス
本発明の実施態様に係るデバイスは、図1、2A、および2Bに概略的に示されている。デバイス(100および200)には、ナノ構造の表面領域(104と204)を有する基板(102および202)が含まれている。複数の結合剤(106と206)が、前記基板の前記ナノ構造表面領域に付加している。ナノ構造の表面領域は、縦方向寸法と横方向寸法を各々有する複数のナノ構造(ナノ構造108およびナノ構造 208のような)で構成されている。試料は、デバイス上に置かれ、生物学的細胞(110および210)は、結合剤と複数のナノ構造体が連携して作用することによって、選択的に捕獲される。
【0039】
結合剤または用いる薬剤は、標的となる生物学的細胞の種類に依存し得る。従来の結合剤は、本発明の実施態様のいくつかで使用に適している。結合剤の非限定的な例には、抗体、核酸、オリゴまたはポリペプチド、細胞受容体、リガンド、アプタマー、ビオチン、アビジン、配位錯体、合成ポリマー、および炭水化物が含まれている。本発明のいくつかの実施態様において、結合剤は、従来の方法を使用するナノ構造表面領域に付加されている。本採用方法は、結合剤およびデバイスを構築するために使用される材料に依存する。付加方法の非限定的な例は、結合剤、または薬剤が付加している、または、化学結合している、例えば自己組織化単分子膜またはシラン化学を通じている、化合物のいずれかの表面への非特異的な吸着を含む。いくつかの実施態様では、ナノ構造の表面領域は、ストレプトアビジンでコーティングされており、結合剤は、ビオチン化されていて、それが、ストレプトアビジンの分子との相互作用を介してナノ構造の表面領域に付加を容易にする。
【0040】
本発明のいくつかの態様において、ナノ構造体は、基板の表面積を増加させ、与えられた細胞が結合剤に接触する確率を増加させる。これらの実施態様で、ナノ構造体は、微絨毛、葉状仮足、糸状仮足、および脂質ラフト分子群のような細胞表面の成分と相互作用することにより標的細胞の結合を強化することができる。いくつかの実施態様では、ナノ構造体は、横方向寸法と等しい縦方向寸法を持ち、ここでは、その横方向寸法と縦方向寸法の両方が1μm未満、すなわちナノスケールである。他の実施態様では、ナノ構造体は、その横方向寸法より少なくとも10倍大きい縦方向寸法を持っている。さらなる実施態様では、ナノ構造体は、横方向寸法よりも少なくとも20倍大きい、50倍大きい、または100倍大きい縦方向寸法を持っている。いくつかの実施態様では、横方向寸法は、1μm未満である。他の実施態様では、横方向寸法は、1−500nm間である。さらなる実施態様では、横方向寸法は30−400nm間である。更に別の実施態様においては、横方向寸法は、50−250nm間である。いくつかの実施態様では、縦方向寸法の寸法は、少なくとも1μmの長さである。他の実施態様では、縦方向寸法の寸法は1−50μm長の間である。他の実施態様では、縦方向寸法の寸法が、1−25μm長である。さらなる実施態様においては、縦方向寸法の寸法は5−10μm長である。更に別の実施態様においては、縦方向寸法の寸法は、少なくとも6μm長である。
【0041】
ナノ構造体の形状は重要ではない。本発明のいくつかの実施態様において、ナノ構造体は、球またはビーズ状である。他の実施態様では、ナノ構造は、ストランド、ワイヤー、またはチューブ状である。さらなる実施態様では、複数のナノ構造体は、ナノワイヤー、ナノファイバー、ナノチューブ、ナノピラー、ナノスフェア、またはナノ粒子状の一つ以上を含み得る。
【0042】
正確なデバイスの形状は、アッセイ(試験)に基づいて決定される。デバイスは、ナノ構造表面体の光学的または視覚的な検査を可能にする部分を含むことも、含まないことがあってもよい。
【0043】
実施態様においては、高い細胞捕獲効率が、静的に血液試料を培養することにより、達成できる。
【0044】
本発明によるマイクロ流体デバイス(600)の実施態様は、図6Bに概略的に示されている。マイクロ流体デバイス(600)は、マイクロチャンネル(606)を形成する基板(604)に接続されているフロー層(602)がある。このようなデバイス(600)においては、基板(604)のナノ構造表面領域の部分は、マイクロ流体チャネル内を流れる流体と接触することになる。マイクロ流体デバイスは、少なくとも1つの流体の入力マイクロチャネル(608)が含まれている。しかし、マイクロ流体デバイスは1つだけの入力マイクロチャネルに限定されるものではない。いくつかの実施態様では、マイクロ流体デバイスは、流体接続にある2つ以上の流体のソースと同様に2つ以上の入力チャネルを含むことができる。マイクロ流体デバイスにはまた、流体の出口の1つ以上の出力マイクロチャネル(610)がある。
【0045】
デバイスに導入することができる流体の非限定的な例には、非特異的に結合した細胞または未使用の試薬、溶解試薬、または標識化試薬、例えば、細胞外または細胞内の染色剤を除去するための、洗浄バッファーが含まれている。いくつかの実施態様において、本発明のデバイスは、細胞が結合する可能性のあるすべてまたは一領域に接近できるように取り外し可能なカバーを持つように設計される。これらのデバイスを用いて、試薬、例えば、標識試薬または溶解試薬を特定の領域に適用することが可能である。個々の細胞はまた、そのようなところから除去削除される可能性がある。他の実施態様では、デバイスは通常、異なる時間に、デバイスに複数の流体の導入を可能にする複数の入力マイクロチャネルと出力マイクロチャネルを持つ。複数の入力マイクロチャネルと対応する出力マイクロチャネルを有することにより、流体は、指定された領域で結合した細胞を操作するためにデバイスへ同時に導入され得る。これらの領域のサイズは、入力マイクロチャネルと出力のマイクロチャネルの位置と入力マイクロチャネルからと出力マイクロチャネルからの相対的体積流量とに基づいて制御され得る。
【0046】
本発明のいくつかの実施態様において、入力マイクロチャネルは、マイクロ流体チャネルへの試料と試薬の流れを制御するためのポンプ(612)に接続される。デバイスに必要なせん断応力を作り出すことができる従来の流体ポンプは、本発明のいくつかの実施態様での使用に適している。ポンプの非限定的例としては、シリンジポンプ、蠕動ポンプ、及び真空源が含まれている。いくつかの実施態様では、ポンプは、従来の方法を使用しているデバイスに結合されている。デバイスは、与えられた任意のチャネルでの実質的な一定せん断応力または一チャネルでの変動せん断応力に応じて設定することができる。当業者には、希望の流体流量と同様に処理される流体の種類と量とに基づいて、本発明で使用するためのポンプを選択して設定する方法は公知である。
【0047】
実施態様において、本発明のデバイスは、無秩序ミキサーを含む。従来の無秩序ミキサーは、本発明のいくつかの実施態様での使用に適している。いくつかの実施態様で、フロー層は、マイクロ流体チャネルで無秩序流れを生ずるテクスチャ(又は織目)表面(textured surface)を有している。無秩序流れは、生物学的細胞が基板のナノ構造表面領域に接触する確率を高め、それによって、ナノ構造の表面領域での結合剤が試料中の標的の生物学的細胞と相互作用し結合する確率を増加させる。いくつかの実施態様において、テクスチャ表面は、循環液を混合する流体の流れの主方向に相関的に配向した複数の構造を有している。テクスチャ表面は、例えば、長方形、円形、および放物線を含む様々な幾何学的な形状を形成することができる。形状は、周期的またはランダムな配置に結合され得る。いくつかの実施態様では、形状は、ヘリンボーン(又はニシン骨)模様(herring−bone pattern)を形成する複数のシェブロン−形状を含むことができる。本明細書中で使用されるように、用語「ヘリンボーン」とは、一方向に傾斜した一列中のすべての線と、他方向へ傾斜した隣接する列中の線とを持つ短い平行線の列(例えば、二つの)の通常の意味を持っている。流体混合を促進するためにテクスチャ表面に形成することができるパターンについての更なる詳細は、ストーク(Stook)らによる「層流混合の装置と方法」と題する米国公開特許出願2004/0262223号に記載されている。
【0048】
いくつかの実施態様では、本発明のデバイスは、従来の手法を用いて製造され得る。採用製造技術は、デバイスを作るために使用される材料に依存する。製造技術の非限定的例には、成形、フォトリソグラフィ、電子線リソグラフィ、ソフトリソグラフィ、電鋳、および機械加工などが含まれる。材料の非限定的例には、ガラス、石英、高分子(例えば、ポリスチレン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)のようなシリコン、エポキシ樹脂、ポリメチルメタクリレート、ウレタン、多糖類、ポリ乳酸、およびポリテトラフルオロエチレン(テフロン))、シリコンおよび半導体、金属(例えば、アルミ、チタン、およびスチール)が含まれる。材料はまた、無機酸化物(例えば、酸化亜鉛、酸化ケイ素、および酸化アルミニウム)であってもよい。
【0049】
本発明のいくつかの実施態様において、マイクロ流体デバイスは、ソフトリソグラフィによって実装される。例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)層が、所望のパターンを有する基板に適用できる。その層は、レジストが塗布された、光パターンにさらされ、流体チャネルを、例えば、事前に決めたパターンに形成するように構造を作成するためにエッチングされ得る。コーティング、露光、及びエッチングの連続的なステップは、より複雑な構造体を作成するために使用することができる。
【0050】
3.使用方法
実施態様において、本発明のデバイスは、試料からの希少細胞を分離するために採用される。いくつかの実施態様では、希少細胞は末梢血からの循環腫瘍細胞である。他の実施態様では、希少細胞は、末梢血に見られる生物(例えば、細菌、ウイルス、原生生物、および菌類)である。さらなる実施態様では、希少細胞は、通常は血液中に検出されない非造血細胞(例えば、内皮細胞や胎児性細胞)、および造血由来の細胞(例えば、血小板、鎌状細胞赤血球、および白血球の亜集団)である。
【0051】
本発明の実施例に係るデバイスを用いて検出することができる癌は、前立腺癌、肺癌、腺癌、腺腫、副腎癌、基底細胞癌、骨癌、脳癌、乳癌、気管支癌、子宮頚部異形成、大腸癌、類表皮癌、上皮癌におけるユーイング肉腫、胆嚢癌、胆石の腫瘍、巨細胞腫、多形性膠芽腫、頭部癌、過形成、過形成性角膜神経腫瘍、上皮腫瘍、腸の神経節細胞腫、膵島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎臓癌、喉頭癌、平滑筋腫、肝臓癌、悪性カルチノイド、悪性高カルシウム血症、悪性黒色腫、マルファノイドハビタス(marfanoid hubitus)腫瘍、髄様癌、転移性皮膚癌、粘膜神経腫、菌状息肉腫、頸部癌、神経組織癌、神経芽細胞腫、骨肉腫、骨肉腫、卵巣腫瘍、膵臓癌、甲状腺癌、褐色細胞腫、原発性脳腫瘍、直腸癌、腎細胞腫瘍、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、セミノーマ、皮膚癌、小細胞肺癌、軟部肉腫、扁平上皮癌、胃癌、甲状腺癌、局所的な皮膚病変、veticulum細胞肉腫、またはウィルム腫瘍である。いくつかの実施態様において、結合剤、抗上皮細胞接着分子抗体(抗EpCAM抗体)である。EpCAMは、頻繁に肺、大腸、乳房、前立腺、頸頭部、および肝臓起源の癌によって過剰発現しているので、非分画血液からのCTC捕獲のための特異性を供するものであり、それ故に、臨床的に局在化されているとみなされるものさえも、腫瘍に関連する臨床的なそして診断的な情報を提供することができる。
【0052】
試料からの生物細胞を単離する方法に加えて、本発明のいくつかの態様は、単離された細胞が、追加の情報を与えるために使用され得る方法を提供する。実施態様において、本発明の方法およびデバイスを使用した単離細胞は、さらに、追加的なイン・ビトロ(in vitro)アッセイを用いて、試験することができる。いくつかの態様において、本発明の方法およびデバイスを用いて単離される細胞は、カウントされる。細胞計測のための従来の方法が、いくつかの実施態様で使用することができ、例えば、光学的、例えば、目視検査、自動計測、顕微鏡ベースの検出;FACS;および電気的検出、例えば、コールターカウンタ、を含む。細胞計数は、病気の診断、病気の進行監視、治療の有効性の監視と決定に役立つ。
【0053】
いくつかの実施態様において、本発明の方法およびデバイスを用いて単離された細胞は、フローサイトメトリーまたは他の分析プラットフォームによって免疫細胞化学的分析に供される。このような分析は、診断を容易にし、臨床医に重要な情報を提供する。
【0054】
いくつかの実施態様では、本発明の方法およびデバイスを用いて単離した細胞は、溶解することができ、その1つ以上の細胞の性質、またはそこでの一部を測定することができる。溶解した細胞で測定可能な生物学的特性の非限定的な例は、mRNAの発現、タンパク質の発現、およびDNAの定量化が含まれる。さらに、いくつかの実施態様では、細胞DNAの塩基配列決定ができる、または特定の配列の特徴(例えば、多型と染色体異常)が、従来技術、例えば、FISHやPCRを用いて同定することができる。いくつかの実施態様において、細胞を、まだデバイスに結合されている間に、溶解させることができる。デバイス上で細胞を溶解し、有用な遺伝情報を取得する機能は、本発明のいくつかの実施態様に応じたデバイスおよび方法を用いて得られた試料の高い純度によって実現される。
【0055】
いくつかの実施態様において、本発明の方法によって単離された細胞は、溶解せずにアッセイされる。非溶解細胞のアッセイ方法の非限定的な例には、細胞外または細胞内の染色;様々な培地での形態や生育特性の観察;および細胞表面上のバイオマーカーの同定、の使用が含まれている。さらなる実施態様において、単離された細胞は、後続のイン・ビトロ・アッセイで使用する前に、単離された細胞を増幅するために培養される。
【0056】
本発明のいくつかの実施態様では、分離された細胞から得られる情報は、特定のゲノムDNA、cDNA、またはmRNA配列の同定または列挙;細胞表面マーカーの同定または列挙(例えば、CDI33、CD44、CD24、上皮特異抗原(ESA)、Nanog、および癌の幹細胞に関するBMII);およびタンパク質または特定の腫瘍の種類や存在の指標となる他の細胞内成分の同定または列挙、が含まれる。実施態様では、CTCは、その起源組織、疾患の病期や重症度、または特定の治療に対する感受性、を決定するために分析され得る。
【0057】
いくつかの実施態様において、本発明の方法およびデバイスは、腫瘍を根絶するための医療、放射線、または外科的の治療後の循環している残存癌細胞を評価するために使用される。さらなる実施態様において、本発明の方法およびデバイスは、疾患の発生、再発および/または進行の指標として、循環している腫瘍細胞の存在と数で患者を評価するために数年の歳月で定期的に実行される。
【0058】
また、本発明のいくつかの実施態様で提供されるものには、本明細書に記載の方法を実施するためのキットがある。実施態様において、本キットには、本発明のデバイスが含まれる。いくつかの態様において、本キットには、本発明のデバイスと共に使用する試薬が含まれる。さらなる実施態様において、本キットには、哺乳動物被験体(例えば、体液)から試料を採取し、そして哺乳動物被験体における癌を診断するために本キットを使用して、または癌を有する哺乳動物被験体に施す治療法の効果を監視するための指示が含まれる。
【0059】
本発明の実施態様は、以下の非限定的実施例を参照することにより、さらに理解することがでる。材料及び方法の両方に対する多くの変形が、本開示の範囲から逸脱することなく実施できることは、当業者には明らかであろう。
【0060】
4.実施例
本明細書に記載する実施例および実施態様は、例示目的のみではなく、その中の記載に照らした様々な変形や変更が当業者に示唆され、この出願の精神と範囲内に含まれている。
【0061】
(実施例1)
SiNW基板の調製と表面改質
ナノ構造の細胞捕獲基板を以下のように調製した。最初に、100〜200nmの直径を持つ密集シリコンナノワイヤー(SiNW)が、湿式化学エッチング法(図2A)を使用してシリコン基板(例えば、1cm× 2cm)上に導入された。シリコン基板の表面は、親水性になるように処理された。シリコン基板は、有機グリースからの汚染を除去するために、それぞれ10分間および5分間、室温でアセトンとエタノール中で超音波処理した。その後、脱脂シリコン基板を沸騰ピラニア溶液(4:1のHSO/H(V /V))とRCA溶液(1:1:5のNH/H/HO(V / V / V))各々に1時間加熱し、シリコン基板は、脱イオン水(DI)で数回洗浄した。浄化シリコン基板は、ウェットエッチングプロセスによって処理した。テフロン容器が容器として使用され、脱イオン水、HF、および硝酸銀からなるエッチング混合物は、室温で使用された。HFと硝酸銀の濃度は、それぞれ4.6Mと0.2Mであった。エッチング時間は、ナノワイヤーの必要な長さに応じて、可変であった。エッチング後、基板は、銀膜を除去するために15分間:沸騰王水(3:1のHCl/HNO(V /V))に浸漬した。最後に、基板を、脱イオン水ですすぎ、窒素で乾燥し、表面改質のために準備した。これらの化学エッチングされたSiNWの長さは、異なるエッチング時間を適用することによって制御することができる。その結果、1〜25μmの様々な長さのSiNWを持つ一連のSiNW基板を得ることができた(図2C)。SiNW基板の調製後、NHS −マレイミド化学(図2B)が、SiNWの表面にストレプトアビジンを導入するために採用された。基板は、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランの1%エタノール液(V /V)を用い室温で12時間、あるいは3−メルカプトプロピルトリメトキシシランの4%エタノール液(V /V)を用い室温で45分間、修飾された。基板は、それから、カップリング剤N−イマレイミドブチロキシスクシンイミドエステル(N−ymaleimidobutyryloxy succinimide ester)(GMBS、0.25 mM)で30分間処理し、その結果、基板にGMBS付加を行った。次に、基板を、ストレプトアビジンの10μg/mlで室温にて30分間処理し、GMBS上への固定化に導いた。基板は、過剰なストレプトアビジンを除去するために1XPBSで洗い流し、ストレプトアビジンでコートしたSiNW基板を、最大6ヶ月までPBS緩衝液(pH=7.2)中に4℃で保存した。ビオチン化した抗EpCAM(R&D)が、細胞捕獲実験に使用する前に、ストレプトアビジンでコートした基板上に新たに導入された。
【0062】
(実施例2)
SiNW基板と平坦基板上に捕獲された細胞の形態の比較
ナノスケール細胞/基板の相互作用は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて可視化した。基板固定化細胞の形態を維持するために、試料は、グルタルアルデヒド固定、オスミウム四酸化処理、および脱水によって処理された。簡単に言えば、細胞は、基板上に24時間の培養後、0.1Mカコジル酸ナトリウムで緩衝化された1.5−4%のグルタルアルデヒドで固定(4℃、1時間)した。細胞は、次いで、1%四酸化オスミウムで後固定を1時間行って、1%タンニン酸を媒染剤として使用した。試料は、一連のアルコール濃度(30%、50%、70%および90%)で脱水し、0.5%酢酸ウラニルで染色し、さらに脱水(96%、100%、および100%アルコール)を行った。最後の脱水は、空気の乾燥が続くヘキサメチルジシラザン(HMDS)中で行った。一度乾燥し、試料は、10keVの加速電圧での日立S800電界放射型SEMを用いて試験する前に金でスパッタコーティングした。
【0063】
細胞はまた、蛍光顕微鏡を用いて可視化した。コントロールの試料は、1000−1250個細胞/mL、80−100個細胞/mLと50−20個細胞/mLの細胞密度でウサギの血液中にDiD染色MCF7乳癌細胞をスパイクすることで調製した。25μLのビオチン化抗EpCAM(PBS中1%のBSA(W /V)および0.09%のアジ化ナトリウム(W /V)含む10μg/mL液 )が、1cm× 2cmの基板上に添加し、30分間培養した。基板をPBSで洗浄した。試料1mLを、基板上に加え、45分間培養(37℃、5%CO)した。基板をPBSで洗浄し、基板上に捕獲された細胞を20分間PBS中4%パラホルムアルデヒド(PFA)で固定した。捕獲された細胞を染色して可視化するために、0.2%トリトンX−100のPBS液0.9mLを基板に加え、10分間培養した。それからDAPI溶液(脱イオン水1mL中1XDAPI試薬)を、基板に加え、5分間培養した。基板をPBSで洗浄し、基板を標準カバーガラスの上に逆さにした。細胞は、ニコンTE2000蛍光顕微鏡を用いて画像化してカウントした。色、明るさ、および細胞サイズ、形状、そして核の大きさを含めて形態学的特性が、潜在的なCTCを識別し、細胞残渣と非特定の細胞を除外するために用いられた。二元染色(赤:DiD+と青:DAPI+)を示し特定の表現型の形態学的特徴を持っていた細胞をCTCとしてスコア化し、DAPI+細胞は、非特異細胞としてスコア化した。
【0064】
図3Aの右側に示されている様に、平坦Si基板上に捕獲された細胞は、SiNW基板上に捕獲された細胞と比較して著しく異なる形態を示す。図3Aの挿入図は、平坦Si基板(上)とSiNW基板(下)上に捕獲された細胞の典型的な形態を示している。平坦基板上に、細胞の中央部(通常は核と核周囲細胞小器官を含む)を囲む葉状仮足にリンクされたラメラがある。これらの結果は、細胞が平坦Si基板上に付着することが困難であるにもかかわらず、一度平坦Si基板と会合すると広がり始めることを示唆している。これとは対照的に、細胞から飛び出た沢山の糸状仮足が、その上部または中央のいずれかがナノワイヤーを「把握(grasping)」して、SiNW基板上の三次元(3D)のナノワイヤーに取り付く。また、糸状仮足は、SiNWの横方向寸法と同じく(約100〜150nm)ナノスケールの大きさである。SiNWは不動であるが、細胞表面の成分は自身で配列することができ、その結果、細胞と基板間のより親密な局所的相互作用を持つことになる。従って、SiNWが細胞捕獲に貢献し、平坦Si基板とSiNW基板に関連付けられている細胞で異なった形態が見られることを説明する。
【0065】
また、本出願人らは、これらの結果を、標的細胞としてダウディB細胞(すなわち、癌性B細胞)とダウディB細胞を捕獲するために抗CD20でコーティングされたナノ構造体とを使用して、確認した。結果は、図3Bに示されており、MCF7乳癌細胞で観察された結果と一致している。
【0066】
さらに、本出願人らは、平坦Si基板での結合効率をSiNW基板と、近接して配置して、比較した。フォトリソグラフィが、化学エッチング工程と組み合わせて、シリコン基板の上にパターンを適用するのに使用された(図3Cの左のパネル)。本出願人らは、ナノワイヤーがある場合とない場合のパターン化基板を作った(図3Dの上部)。上記のような表面改質と細胞捕獲の同様のプロセス後に、パターニングされた基板は、蛍光顕微鏡下で観察した。これらの実験で、MCF7乳癌細胞と抗EpCAMでコーティングされたナノ構造体を使用した。図3Dの下部に示すように、ナノワイヤー領域に比べて、大幅に少ない細胞が平坦な領域で観察された。これらの結果は、上記で得られた結果と一致していて、ナノワイヤーベースの表面は、平坦表面と比較して、細胞捕獲に増幅効果を発揮できるというさらなる証拠を提供している。
【0067】
(実施例3)
細胞捕獲効率に対する捕獲時間の影響
最大細胞捕獲を達成するために必要な最小時間を決定するために、本出願人らは、異なる培養時間で10μmのSiNWと平坦Si−基板(抗EpCAMコーティング付き)の両方の細胞捕獲性能を検討した。三種のEpCAM発現癌細胞(すなわち、MCF7、U87脳癌細胞とPC3前立腺癌細胞)を試験した。図4Aは、培養時間と基板固定化細胞の数との相関関係をまとめたものである。SiNW基板の存在下で、最大の細胞捕獲が調べた細胞の種類に関係なく、45分の培養時間で達成された。45分の時点で、10μmのSiNWは、平坦Si基板と比較して、10倍までの細胞捕獲効率を示している。細胞数の連続的な増加が平坦Si基板に観察されたが、全体的な細胞の捕獲数は、SiNW基板に観察されたものよりも平坦Si基板で有意に低かった。
【0068】
本出願人らは、この高い捕獲率が、三種の異なる基板上に同様の細胞捕獲実験を行うことにより、SiNWの非特異的相互作用から来ているかどうかを評価した。三種の異なる基板とは、表面改質なしのSiNW基板(SiNW−No)、ストレプトアビジンコーティングのSiNW基板(SiNW−SA)、抗EpCAMで修正されたSiNW基板(SiNW−SA−抗EpCAM)である。 SiNW−No基板とSiNW−SA基板の上に捕獲された細胞数は、SiNW基板上に捕獲された細胞数の5%未満であった(図5)。したがって、SiNW基板上の細胞捕獲の高収率は、SiNWと細胞表面の成分間の物理的な局所的相互作用と細胞表面上の抗EpCAMとEpCAM間の化学的認識との協同効果によるものである。
【0069】
(実施例4)
細胞捕獲効率に対するSiNWの長さの影響
本出願人らは、細胞捕獲実験に、SiNWの長さが 4、6、8、10、および20μmの一連のSiNW基板を利用した。癌細胞株(すなわち、MCF7、U87脳癌細胞、またはPC3前立腺癌細胞)を含む試料は、静的にSiNW基板と平坦基板の上で培養した。 抗EpCAMが、両方の基板上にコートされ、図4Bに示すようにされ、SiNWの縦方向寸法を大きくすると、捕獲された細胞数を増やすことになった。 SiNWの長さが6μmより長くなったとき、最大の細胞捕獲効率を達成した。
【0070】
(実施例5)
スパイクされた全血試料からのCTCの静的捕獲
本出願人らは、静的な細胞捕獲を実行するために本出願人らのデバイスの能力をテストした。人工CTC含有血液試料は、増殖させた緑色蛍光タンパク質(EGFP)発現のU87細胞をウサギの血液中に1000、100および5(細胞/mL血液)の細胞濃度でスパイクすることによって調製した。本スパイク(spiked)試料を10μmEpCAMコーティングSiNWの基板上で45分間培養した。表1に示すように、本出願人らのアプローチは高い捕獲率(>40%)、高い特異性(>40%)および高感度(>90%)を持っている。これらの結果は、本発明のデバイスが、非常に低い感度(約20−60%)および低い特異性(約0.1%)を持つ現在の最先端の技術すなわち免疫磁気ビーズ法よりも大幅にパフォーマンスが優れていることを示している。
【表1】

【0071】
(実施例6)
無秩序混合のPDMS層の調製
本出願人らは、無秩序混合を生成する流れの層を有する本発明のマイクロ流量デバイスを生み出した(図6A及び6Bを参照)。無秩序混合のPDMS層は、スタンドアロンのソフトリソグラフィ技術により作製した。最初に、本出願人らは二層SU−8のパターンを有する、正のパターンを持つシリコンモールドを作製した。底層が主なマイクロチャネル(高さ100μmで幅2mm)であり、最上層が、ヘリンボーン模様(カオス的混合)のマイクロチャンネル(高さ25μm)である。このヘリンボーン模様構造は、粘性の流れに対し異方性抵抗を作ることができる銃身に旋条を付けることに似ている。 PDMS混合物を注ぎ数時間焼成した後に、ヘリンボーン模様構造を持つPDMS層をマイクロチャネルの上に得る。入口と出口がPDMS層にパンチされた後、1−3μmの厚さの接着PDMS層は、接触印刷によってPDMSブロックに転送され、組み立てデバイスを供する抗EpCAMコートSiNW基板の上に直接付着した。
【0072】
(実施例7)
細胞捕獲効率に対する流量の影響
マイクロ流体デバイスでの最大細胞捕獲数を達成するために必要な最適化された流量を決定するに、本出願人らは、PBSに100細胞/mLで乳癌細胞(すなわち、MCF7)をスパイクし、スパイク癌細胞を捕獲した。マイクロ流体デバイスは、試料瓶に接続された。ビオチン化抗EpCAM(BSA1%およびアジ化ナトリウム0.09%のPBS溶液(W/V)中での10μg/mL)は、マイクロ流体デバイスが溶液で満たされているような試料瓶に充填した。ビオチン化抗EpCAM溶液は、30分間培養し、それからマイクロ流体デバイスをPBSで洗浄した。試料1mLが、目的の流量でマイクロ流体チップを介して圧力をかけられ、PBSで洗浄した。マイクロ流体デバイスは、基板上に捕獲された細胞を固定するために、20分間PBS中4%パラホルムアルデヒド(PFA)で満たされた。捕獲細胞を染色して可視化するために、PFAは、PBS中の0.2%トリトンX−100を用い10分間、続いてDAPI溶液(脱イオン水1mL中1xDAPI試薬)を用いて 5分間で置き換えられた。マイクロ流体デバイスは、PBSで洗浄し、マイクロ流体層を基板から分離された。この基板を、イメージングのために標準的カバーガラスの上に反転した。
【0073】
計算された捕獲効率は、90%以上であり、また3mL/時間以上の流量で有意に減少した(図7A)が、おそらく、ずり応力の増加に起因したと思われる。捕獲の効率は、1mL/分以下の流量では増加しなかったので、その後の研究には1−2mL/分の流量を選ぶことになった。図7Aは、流量と捕獲収率との相関関係をまとめたものである。
【0074】
(実施例8)
異なる癌細胞株に対するEpCAM発現レベルの影響
本発明の実施態様に係るマイクロ流体デバイスを用いたCTC捕獲効率に対するEpCAM発現の効果を決定するために、本出願人らは、細胞当たり約500,000抗原を用いた乳癌MCF7細胞を含め、細胞当たり約50,000抗原を用いた前立腺癌PC3細胞、そして細胞当たり約2,000抗原を用いた膀胱癌T−24細胞の、様々なEpCAM発現をもつ3種の癌細胞株間の捕獲収率を比較した。各細胞株は、100細胞/mLの濃度でPBSにスパイクした。各細胞株でEpCAM発現のさまざまなレベルにもかかわらず、平均捕獲収率はすべてのケースで90%より大であった(図8)。これらの結果は、マイクロ流体デバイスでの細胞とSiNW基板の間で増幅された細胞−基板相互作用によるものである可能性がある。
【0075】
(実施例9)
マイクロ流体デバイスを用いたスパイク試料からのCTC捕獲
マイクロ流体デバイスの細胞捕獲効率をテストするに、人工的なCTC含有血液試料を、5000、1000、500、100および50細胞/mLの細胞密度で健康なドナーの血液中にDiD 染色MCF7(乳癌細胞株)をスパイクすることによって調製した。スパイク試料は、45分間10μmのEpCAMコーティングSiNW基板上で培養した。図8に示すように、本出願人らのマイクロ流体デバイスは、免疫磁気ビーズ法よりもはるかに高い捕獲収率(>90%)を示している。流路中の赤血球の潜在的な空間的障害を評価するために、これらの研究は、健康なドナーからの溶解した血液を用いて繰り返した。全血および溶解した試料を用いて、本出願人らは同様の結果を得た(図9)。
【0076】
本出願人らはまた、マイクロ流体デバイスの捕獲効率に対する捕獲時間とSiNWの長さの影響を試験した。最大細胞捕獲を達成するために必要な最小時間を決定するために、本出願人らは、異なる培養時間で10μmのSiNW(抗EpCAMコーティング付き)の両方の細胞捕獲性能を調べた。ダウディB細胞(すなわち、癌性B細胞)とジャーカット(Jurkat)細胞(すなわち、癌性T細胞)をマイクロ流体デバイスにおける抗CD20コーティング基板の上でテストした。図10Aは、培養時間と基板に固定された細胞数との相関関係をまとめたものである。SiNW基板の存在下で、最大の細胞捕獲がダウディB細胞での30分間の培養で達成された。対照的に、細胞捕獲が、細胞表面にCD20を欠くジャーカット細胞では観察されなかった。
【0077】
SiNWの長さと捕獲効率との相関関係を評価するために、本出願人らは、細胞捕獲実験において長さが4、6、8、10、および20μmのSiNW を持つ一連のSiNW基板を利用した。ダウディB細胞およびジャーカット細胞を試験し、図10Bに示すように、SiNWの縦方向寸法の寸法を大きくすると、捕獲される細胞数を増やすことになった。SiNWの長さが6μmのときに最大の細胞捕獲効率を達成した。
【0078】
(実施例10)
本出願人らのマイクロ流体チップとセルサーチ(TM)技術との捕獲CTC数の比較
実験パラメータの最適化後、本出願人らはUCLAのIRB承認(IRB#09−03−038−01)でUCLAの泌尿器科と共同で転移性前立腺癌患者から採取したCTCの血液試料を用いて臨床試験を実施した。まず、静的な結合条件の下でCTCを捕獲するために、本発明の実施態様に係るデバイスの能力を調べた。簡単に述べると、血液試料は、高度な固形段階(solid−stage)の腫瘍患者(IRBで承認)から採取し、EDTAを含むバキュテナーチューブ(vacutainer tube)に集めた。ビオチン化抗EpCAM(1%BSA(W/V)および0.09%アジ化ナトリウム(W/V)のPBSに10μg/mL溶解)の25μLを1cm ×2cmの基板上に加え、30分間培養した。基板をPBSで洗浄し、試料1mLを基板上に加え、45分間培養(37℃、5%CO)した。基板を、PBSで洗浄し、捕獲細胞を20分間PBS中の4%パラホルムアルデヒド(PFA)で固定した。
【0079】
三パラメータ免疫細胞化学プロトコル(DAPI、FITC標識抗CD45およびのPE標識抗サイトケラチン(CK)の並列染色用)を固定化細胞の染色に適用した。例えば、0.3%トリトンX−100のPBS200μLを基板に加え、30分間培養した。ブロッキング溶液(5%正常ヤギ血清、0.1%のTween20、3%BSA のPBS)の200μLを基板に加え、室温で1時間培養した。次に、200μL蛍光標識抗体溶液(初期濃度20μL/1mL)を基板に加え、一晩4℃で暗所にて培養した。基板をPBSで洗浄し、DAPI溶液(10μg/mL)を加え、5分間培養した。基板をPBSで洗浄し、基板はイメージングのために標準的カバーガラスの上に反転した。
【0080】
本出願人らはまた、本発明の実施態様に係るマイクロ流体デバイスで試料をテストした。マイクロ流体デバイスは、試料瓶に接続された。ビオチン化抗EpCAM(1%BSA(W/V)および0.09%アジ化ナトリウム(W/V)を含むPBS中10μg/mL)を、マイクロ流体デバイスが溶液で満たされるように、試料瓶にロードした。ビオチン化抗EpCAM溶液を30分培養し、PBSで洗浄した。1mLの患者の試料を1mL/時間の流量でマイクロ流体チップを介して圧力をかけた。マイクロ流体デバイスは、PBSで洗浄し、続いて捕獲細胞を固定するために、20分間PBS中4%パラホルムアルデヒド(PFA)液で洗浄した。捕獲細胞を染色し可視化するために、PFAを、0.2%トリトンX−100のPBS液に10分間、続いて蛍光標識抗体溶液(初期濃度20μL/1mL)に置き換えた。マイクロ流体デバイスは、4℃で一晩暗所にて培養した。マイクロ流体デバイスを、それから、PBSで洗浄し、DAPI溶液(脱イオン水1mL中1×DAPI試薬)を加え、5分間培養した。マイクロ流体デバイスは、PBSで洗浄し、マイクロ流体層を基板から分離した。基板は、イメージングのために標準的なカバーガラスの上に反転した。
【0081】
モデル細胞用に確立されたシグナルしきい値と大きさ/形態の特徴によれば、CTCは、明らかにバックグラウンドの免疫細胞と区別された。患者の血液中のわずか1.0mLが、各CTC捕獲検討に要求されるため、本出願人らは、受け取った各患者の血液試料で3つの測定を行うことができた。図11A−11Cでは、静的条件(図11B)の下での本出願人らのデバイスを使用した場合と、流体条件(図11C)の下での本出願人らのデバイスを使用した場合と、そしてセルサーチ(TM)技術(図11A)を使用した場合とにおける、CTC捕獲実験の結果を示している。
本出願人らのデバイスは、静的および流体条件の下で、CTC陽性の患者の検体を同定できたが、セルサーチ(TM)技術は、CTC数をなんら登録できなかった。
【0082】
(実施例11)
試薬
本発明の実施態様を実施するのに使用するのに適した試薬の非限定的例は、次のようなものがある。
1.極上級指向シリコン基板、p型、抵抗率約10−20オーム−cm(シリコンクエストインターナショナル社)。 室温で保存。
2.フォトレジスト(PR)AZ5214(AZエレクトロニックマテリアルズ米国社 (AZ Electronic Materials USA Corp.))。
3.現像液AZ400K(AZエレクトロニックマテリアルズ米国社)。
4.フォトレジストSU8−2100(マイクロケム社(MicroChem Corp.)、米国)。
5.フォトレジスト SU8−2025(マイクロケム社、米国)。
6.現像液SU8(マイクロケム社、米国)。
7.エタノール、>99.5%(シグマ・アルドリッチ社(Sigma−Aldrich))。室温で保存。
8.硫酸、98%(シグマ・アルドリッチ社、#32050−1)。室温で保存。
9.過酸化水素、30%(シグマ・アルドリッチ社、#31698−9)。室温で保存。
10.フッ化水素酸、水中48重量%(シグマ・アルドリッチ社、#339261−100mL)。室温で保存。
11.硝酸銀、>99.8%(シグマ・アルドリッチ社、#S6506−5G)。室温で保存。
12.アセトン、ACS試薬、光学グレード99.5%(フィッシャーサイエンティフィック社(Fisher Scientific)、#AC40010−0040)。室温で保存。
13.イソプロパノール、ACS試薬、光学グレード99.5%(フィッシャーサイエンティフィック社、#AC41279−5000)。室温で保存
14.3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、95%(シグマ・アルドリッチ社、#175617−25G)。室温で保存。
15.N−イ−マレイミドブチリロキシスクシンイミドエステル(4−マレイミドブチル酸N−ヒドロスクシンイミド、GMBS)、>98%HPLC(シグマ・アルドリッチ社、#63175−25MG−F)。室温で保存。
16.ストレプトアビジン、1mg/mL(インビトロジェン社(Invitrogen)、#SNN1001)。単一使用の分注で−20℃保存。
17.グルタルアルデヒド E.M.グレード、3%(ポリサイエンスズ社(Polysciences))。室温で保存。
18.カコジル酸ナトリウム塩三水和物(シグマ・アルドリッチ社、#C0250−10g)。室温で保存。
19.四酸化オスミウム、ACS試薬、>98%(シグマ・アルドリッチ社、#419494−250mg)。有毒。室温で保管。
20.タンニン酸(エレクトロンマイクロスコピーサイエンスズ)。室温で保管。
21.酢酸ウラニル(エレクトロンマイクロスコピーサイエンスズ)。室温で保管。
22. ヘキサメチルジシラザン(HDMS)(シグマ、#H4875−00mL)。有毒。室温で保存。
23.トリメチルシリルクロライド(TMSCI、>98%、アルファ・エイサー社(Alfa Aesar)、#MFCD00000502)。
24.ポリジメチルシロキサン(PDMS、GE RTV 615)。
25.乳癌細胞株、MCF7(アメリカンタイプカルチャーコレクション)。
26.ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM、1×)、液体(高グルコース)、(インビトロジェン社、#11965−118)。
27.ウシ胎児血清(FBS)、標準(フィッシャーサイエンティフィック社、#BW14−502F)。−20℃で保存。
28.ペニシリン−ストレプトマイシン、100×(フィッシャーサイエンティフィック社、#ICN1670049)。−20℃で保存。
29.クエン酸化全ウサギ血(コロラド血清社(Colorado Serum Company))。
30.ビブラント(Vybrant)(登録商標)DiD細胞標識溶液(インビトロジェン社、#11330−057)。4℃で保存。
31.ダルベッコのリン酸塩緩衝液(PBS)(インビトロジェン社、#14190250)。4℃で保存。
32.R&D製品マニュアルに従い10μg/mLに希釈したビオチン化抗ヒトEpCAM / TROP1抗体(ヤギIgG、R&D)。単一使用分注で−20℃に保存。
33.ラボ−テックチャンバースライド(Lab−Tek Chamber slide) 4穴ガラス製、滅菌(サーモフィッシャーサイエンティフィック、#177399)。室温で保存。
34.PBSで20μg/mLに希釈したサイトケラチン抗サイトケラチンPE(CAM5.2、フィコエリスリンとのコンジュゲート)(ビーディーバイオサイエンス社(BD Biosciences)、#347204)。単一使用分注で−20℃に保存。
35.PBSで20μg/mLに希釈したFITC抗ヒトCD45、Ms IgG1、クローンH130(ビーディーバイオサイエンス社、#555482)。単一使用分注で−20℃に保存。
36.1×PBS緩衝液(すすぎ剤)。4℃で保存。
37.1×PBS中の1%DAPI(核染色剤)。4℃で保存。
38.1×PBS中の4%パラホルムアルデヒド(固定剤)。4℃で保存。
39.ウシ血清アルブミン(BSA)(シグマ)。4℃で保存。
40.トリトンX−100。4℃で保存。
【0083】
(実施例12)
本発明の実施態様の実践方法
本発明の実施態様を作り実践するための方法の非限定的な例は次のとおりである。
1.シリコン基板を1cm×2cmの面積を有するシリコン基板部分にカットする。
2.カットシリコン基板をアセトン中10分間室温で超音波洗浄し、窒素ガス下でそれを乾燥する。次に、基板をエタノール中5分間室温で超音波洗浄し、窒素ガス下で乾燥する。これらの手順は、シリコン基板から汚れ(有機グリースなどのようなもの)を取り除く。
3.シリコン基板の表面をエッチングするために、まず熱沸騰ピラニア溶液(4:1のHSO/H(V/V))中でシリコン基板を1時間加熱する。その後、基板を沸騰RCA(1:1:5のNH/H/HO(V/V))溶液中で1時間加熱する。脱イオン水で基板を5回すすぐ。次に、シリコン基板をテフロン容器に置いて、エッチング液(4.6M HF、0.2M硝酸銀の脱イオン水溶液)で基板を50℃でエッチングする。
4.基板を沸騰王水(3:1のHCl/HNO(V/V))に15分間浸す。
5.基板を脱イオン水ですすぎ、窒素ガス下で乾燥させる。
【0084】
1.基板に4%の3−メルカプトプロピルトリメチルシランのエタノール溶液(V/V)を加え、その後45分間室温で基板を放置する。
2.基板を 0.25mMのN−マレイミドブチリロキシスクシンイミドエステル(GMBS)で処理し、室温で30分間培養する。
3.基板を10μg/mLのストレプトアビジン(SA)で処理し、室温で30分間培養する。
4.過剰のストレプトアビジンを除去するために基板を1×PBSで洗い流す。
5.修飾基板は、最大6ヶ月間まで4−8℃で保存する。
【0085】
1.細胞を基板上で24時間培養させる。
2.細胞を4%グルタルアルデヒドの0.1Mカコジル酸ナトリウム緩衝液で固定し、細胞を4℃で1時間培養する。その後、1%四酸化オスミウムを用いて1時間細胞を固定する。媒染剤として1%タンニン酸を使用する。
3.一連のアルコール濃度(30%、50%、70%、および90%)で試料を脱水する。脱水後、0.5%酢酸ウラニルで試料を染色する。さらに一連のより高濃度のアルコール(96%、100%、および100%)を通し試料を脱水する。最終的にヘキサメチルジシラザン(HMDS)で試料を脱水する。
4.試料を空気乾燥する。
5.一度乾燥し、試料を金でスパッタコーティングし、電界放射型SEM(10keVの加速電圧)で調べる。
【0086】
1.MCF7細胞をDiD赤色蛍光色素で染色する。
2.1000−1250、80−100、および5−20細胞/mLの細胞密度でウサギ血液中に染色したMCF7細胞をスパイクすることによって、コントロール試料を調製する。
【0087】
1.基板を大きさの合った4穴ラボ−テックチャンバースライドに置く。1cm×2cmの基板上にビオチン化抗EpCAM (1%のBSA(W/V)および0.09%のアジ化ナトリウム(W/V)のPBS溶液中に10μg/mL)の25μLを滴下する。30分間培養する。 PBSで洗う。
2.各基板上に1mLのコントロール試料をロードする。
3.デバイス一式を45分間培養する(37℃、5%CO)。
4.基板をPBSで少なくとも5回穏やかに洗う。
5.4%のパラホルムアルデヒド(PFA)のPBS溶液で基板上の捕獲細胞を20分間固定する。
6.捕獲細胞を染色して可視化するために、基板を0.2%トリトンX-100のPBS溶液0.9mLで10分間処理する。基板をDAPI溶液(蒸留水1mL中1×DAPI試薬)で5分間培養する。基板をPBSで3回洗浄する。標準のカバーガラス上に基板を反転する。
7.ニコンTE2000蛍光顕微鏡を用いて、細胞を画像に撮ってカウントする。
8.二元染色(赤:DiD+と青:DAPI+)を示し表現型の形態学的特徴を満たす細胞は、CTCとして保存する。色、明るさ、および細胞の大きさ、形状、そして核の大きさを含む形態学的特性が、潜在的なCTCを識別し、細胞残渣と非特異細胞を除外するために採用される。DAPI+のみでカウントされる細胞は、非特異的細胞である。
9.これらの手順は、血液試料調製の効率を最大にするものである。
【0088】
1.基板を大きさの合った4穴ラボ−テックチャンバースライドに置く。1cm×2cmの基板上にビオチン化抗EpCAM(1%のBSA(W/V)および0.09%のアジ化ナトリウム(W/V)のPBS溶液中に10μg/mL)の25μLを滴下する。30分間培養する。PBSで洗う。
2.高度な固形段階の腫瘍(IRBで承認された)を持つ患者から採取した血液試料が、抗凝固剤ETDAを含むバキュテナーチューブに収集される。試料は収集後すぐに処理されねばならない。
3.細胞を捕獲するために、各SiNP基板上に、患者試料の1mLをロードする。デバイス一式を45分間培養する(37℃、5%CO)。少なくとも5回PBSで基板を穏やかに洗浄する。
4.4%パラホルムアルデヒド(PFA)のPBS溶液200μLを各基板上に室温で20分間ロードすることによって、基板上に捕獲された細胞を固定する。各基板をPBSで3回洗浄する。
5.室温で30分間0.3%トリトンX−100のPBS溶液200μLで各基板を処理することにより細胞を透過処理する。引き続き、PBSで各基板を3回洗浄する。
6.ブロッキング溶液(5%正常ヤギ血清、0.1%Tween20、3%BSAのPBS溶液)の200μLを各基板に加え、室温で1時間培養する。次に、蛍光標識抗体溶液(初期濃度20μL/1mL)の200μLを各基板へ加え、4℃で一晩暗所にて基板を培養する。200μLのPBSで3回洗浄する(最初の洗浄は室温で15分間、2番目と3番目の洗浄は室温で5分間)。DAPI溶液(10μg/mL)で基板を5分間培養する。各基板をPBSで3回洗浄する。
7.イメージングのための準備にカバーガラスの上に、ピンセットを使用して、基板をゆっくりと反転させる。
【0089】
1.蛍光顕微鏡の設定を選択する。
1.1.最適化された露光時間は、
1.1.1.DAPI(青)フィルタ:50msの露光時間(背景:約1300)、
1.1.2.FITC(緑)フィルタ:300msの露光時間(背景:約1600)、
1.1.3.TRITC(赤)フィルタ:100msの露光時間(背景:約1300)。
1.2.デジタイザは1MHzに設定する必要がある。その他の設定は、緑色フィルタで非常に高いバックグラウンドが生じる。
【0090】
2.顕微鏡に試料を置き、基板の端に焦点を合わせる。焦点が合ったら、DAPIにフィルタを切り替える
2.1.基板の右上隅でスタートし、4×または10×倍率で直径約7−20μmの核を求めスキャンする。
2.2.推定の細胞が突き止められたら、倍率を10×または20×に上げる。顕微鏡のマウスを使用して、DAPI、TRITCおよびFITCの蛍光下で蛍光強度を確認する。バックグラウンドの蛍光強度の2倍を超える試料の蛍光強度が、陽性結果として記録される。
3. 二元染色(赤:抗サイトケラチンPE+、および青:DAPI+)を示し、標準的な表現型と形態学的特徴を満たす細胞が、CTCとして記録されねばならない。二元染色(緑:抗CD45 FITC+、および青:DAPI+)を示す細胞は、リンパ球/非特異的細胞として除外する必要がある。すべての3つのフィルタ(緑+と赤+と青+)で染色を示すものは、細胞残渣として除外する必要がある。
【0091】
1.基板(ウェハー)の洗浄:アセトン、エタノールおよび脱イオン水。
2.基板の乾燥:基板を風で乾燥し、150℃で5分間ホットプレートの上に置く。
3.基板上にAZ5214を注ぐ。
4.基板を1000rpmで1分間回転する。
5.基板を100℃で1分間弱く焼く。
6.基板を56mJ/cmの紫外線に曝す。
7.現像液の準備:AZ400K:水=1:3。
8.現像液でAZ5214を現像する。
9.製品に風を送り乾燥させる。
10.100℃で5分間AZ5214を強く焼く。
11.AZ5214でパターニングしたシリコン基板の表面をエッチングするために、シリコン基板をテフロン容器の中に置いて、基板をエッチング混合液(4.6モルHF、0.2モル硝酸銀の脱イオン水液)を用い50℃でエッチングする。
12.基板を沸騰王水(3:1のHCl/HNO(V/V))に15分間浸す。
13.基板を脱イオン水ですすぎ、窒素ガス下で乾燥させる。
【0092】
1.基板の洗浄:アセトン、エタノール及び脱イオン水。
2.基板の乾燥:基板を風で乾燥し、150℃で5分間ホットプレート上に置く。
3.基板上にSU8−2100を注ぐ。
4.基板を3000rpmで1分間回転させる。
5.基板を15分間95℃で弱く焼く。
6.基板を 320mJ/cmで紫外線に曝す。
7.基板を 95℃で10分間の後焼きをする。
8.SU−8現像液でSU8−2100を現像する。
9.製品を風で乾燥する。
10.SU8−2100を5分間150℃で強く焼く。
11.基板上にSU8−20250を注ぐ。
12.基板を2000rpmで1分間を回転させる。
13.基板を95℃で8分間弱く焼く。
14.基板を250mJ/cmの紫外線に曝す。
15.基板を95℃で5分間の後焼きをする。
16.SU−8現像液でSU8−2025を現像する。
17.製品を風で乾燥する。
18.SU8−2025を150℃で10分間強く焼く。
【0093】
1.マイクロ流体チップ用のシリコンモールドをTMSCl蒸気へ10分間曝す。
2.シリコンモールド上によく混合したPDMSプレポリマー(GE RTV 615AおよびBの合計20g、混合比A:B =10:1)を注ぐ。
3.プレポリマーを80℃で48時間焼く。
4.シリコンモールドからPDMS層を剥離して、入口用と出口用の穴をパンチする。
5.マイクロ流体チップを形成するために、ストレプトアビジンコートのSiNP基板上にPDMS層をクラップ又はぽんぽんと叩く(clap)。
【0094】
1.DiDの赤色蛍光色素でMCF7細胞を染色する。
2.1000−1250、80−100、および5−20細胞/mLの細胞密度でウサギの血液中に染色MCF7細胞をスパイクすることによって、コントロール試料を準備する。
【0095】
1.試料瓶にマイクロ流体チップを接続する。ビオチン化抗EpCAM(1%BSA(W/V)および0.09%(W/V)アジ化ナトリウムを含むPBS液中で10μg/mL)溶液の25μLを試料瓶にロードする。その溶液でマイクロ流体チップをいっぱいに満たす。30分間培養する。PBSで洗浄する。
2.所望の流量でマイクロ流体チップを介して人工血液試料の1mLに圧力をかける。
3.マイクロ流体チップをPBS100μLで穏やかに洗浄する。
4.基板上に捕獲された細胞を固定するために4%パラホルムアルデヒド(PFA)のPBS溶液でマイクロ流体チップを20分間いっぱいに満たす。
5.捕獲細胞を染色して可視化するために、0.2%トリトンX−100のPBS液でPFAを置換し10分間培養する。
6.DAPI溶液(脱イオン水1mL中1×DAPI試薬)でトリトンX−100を5分間置換する。
7.マイクロ流体チップをPBS200μLで洗浄する。
8.基板からマイクロ流体層をアンクラップ又は叩いてはずし(unclap)、標準のカバーガラス上に基板を反転させる。
9.ニコンTE2000蛍光顕微鏡を用いて、細胞の画像を撮って数を数える。
10.二元染色(赤:DID+、および青:DAPI+)を示し表現型の形態学的特徴を満たす細胞はCTCとして数える。色、明るさ、および細胞の大きさ、形状、そして核の大きさなどの形態学的特性は、潜在的なCTCを識別するために、また細胞残渣と非特異細胞を除外するために、採用される。DAPI+のみによる細胞数は、非特異的細胞である。
【0096】
1.試料瓶にマイクロ流体チップを接続する。ビオチン化抗EpCAM(1%BSA(W/V)および0.09%のアジ化ナトリウム(W/V)のPBS溶液中で10μg/mL)溶液100μLを試料瓶にロードする。その溶液でマイクロ流体チップを完全に満たす。30分間培養する。PBSで洗浄する。
2.流量(1mL/時間)でマイクロ流体チップを介して患者血液試料の1mLに圧力をかける。
3.マイクロ流体チップを100μLのPBSで穏やかに洗浄する。
4.20分間、基板上に捕獲された細胞を固定するために4%パラホルムアルデヒド(PFA)のPBS溶液でマイクロ流体チップを完全に満たす。
5.捕獲細胞を染色して可視化するために、0.2%トリトンX−100のPBS液でPFAを置換し、10分間培養する。
6.次に、蛍光標識抗体溶液(初期濃度20μL/1mL)の100μLでマイクロ流体チップを満たし、一晩4℃暗所でマイクロ流体チップを培養する。1mL/時間の流量で200μLのPBSにてマイクロ流体チップを洗う。
7.マイクロ流体チップにDAPI(脱イオン水1 mLに1×DAPI試薬)溶液の100μLを満たして、5分間培養する。200μLのPBSでマイクロ流体チップを洗浄する。
8.基板からマイクロ流体層を叩いてはずしし、標準のカバーガラス上に基板を反転させる。
【0097】
1.蛍光顕微鏡の設定を選択する。
1.1.最適化された露光時間は、
1.1.1.DAPI(青)フィルタ:50msの露光時間(背景:約1300)、
1.1.2.FITC(緑)フィルタ:300msの露光時間(背景:約1600)、
1.1.3.TRITC(赤)フィルタ:100msの露光時間(背景:約1300)。
1.2.デジタイザは1MHzに設定する必要がある。その他の設定は、緑色のフィルタで非常に高いバックグラウンドが生じる。
2.顕微鏡に試料を配置し、基板の端に焦点を合わせる。ピントが合ったら、DAPIにフィルタを切り替える。
2.1.基板の右上隅から始め、4×または10×の倍率で直径約7−20μmの核をスキャンする。
2.2.推定の細胞を探したら、倍率を10×または20×に上げる。顕微鏡のマウスを使用して、DAPI、TRITC、およびFITC蛍光下で蛍光強度を調べる。試料の蛍光強度がバックグラウンドの蛍光強度の2倍を超えているものを、陽性結果としてスコアする。
3.二元染色(赤:抗サイトケラチンPE+、青:DAPI+)を示し標準的な表現型および形態学的特徴を満たす細胞は、CTCとして数える。 二元染色(緑:抗CD45 FITC+、青:DAPI+)を示す細胞は、リンパ球/非特異的細胞として除外する必要がある。3つのフィルタ(緑+と赤+と青+)すべてで染色を示すものは、細胞残渣として除外する必要がある。
【0098】
本明細書に引用する全ての出版物は、ここにその全体が参考として援用されている。
本明細書に引用の参考文献は、便宜上、以下にリストされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0099】
【非特許文献1】ステエグ、P.S.著 「腫瘍転移:機構的な洞察と臨床的な課題」 ナットメッド(Nat Med) 12 895〜904 2006年
【非特許文献2】バッド、G.T.著 「転移性乳癌におけるイメージング予測生存期間に対する循環腫瘍細胞」 臨床癌研究 12 6403〜6409 2006年
【非特許文献3】アラード、W.J.著 「腫瘍細胞は、すべての主要な癌の末梢血中にて循環するものであり、健常な被験者にてではなく、また、非悪性疾患を持つ患者にてでもない」 臨床癌研究 10 6897〜6904 2004年
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【非特許文献8】ナグラス、S.等著 「マイクロチップ技術による癌患者における希少循環腫瘍細胞の単離」 ネイチャー 450 1235〜1239 2007年
【非特許文献9】アダムス、A.等著 「全血からの循環腫瘍細胞の高効率単離と統合された導電率センサーを持つポリマーベースのマイクロ流体工学を使用する非標識列挙」 米国化学会雑誌 130 8633〜8641 2008年
【非特許文献10】スミルノフ、D.A.等著 「循環腫瘍細胞のグローバルな遺伝子発現プロファイリング」 癌研究 65 4993〜4997 2005年
【非特許文献11】フアン、L.R.、コックス、E.C.、オースティン、R.H.及びシュトゥルム、J.C.著 「確定的横転置による連続的粒子分離」 科学 304 987〜990 2004年
【非特許文献12】チャン、W.C.、リー、L.P.及びリープマン、D.著 「マイクロ流体チャネル内での接着ベースの細胞収集と分離のための生物模倣手法」 ラボチップ 5 64〜73 2005年
【非特許文献13】トナー、M.及びイリミア、D.著 「チップの上の血液」 医用生体工学年次レビュー 7 77〜103 2005年
【非特許文献14】ドマガラ、W.及びコス、L.著 「滲出液におけるヒト癌細胞の表面の形状」 ヴィルコウスアーチフBセルパソロジーゼルパソロジー 26 27〜42 1978年

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的な細胞を捕獲するデバイスであって、
ナノ構造表面領域を含む基板と、
前記基板の前記ナノ構造表面領域に付加された複数の結合剤、
ここで、前記ナノ構造の表面領域が、縦方向寸法と横方向寸法を各々有する複数ナノ構造体を含み、前記縦方向寸法が少なくとも横方向寸法の10倍よりも大きく、且つ、生物学的細胞が、前記結合剤と前記複数ナノ構造体の協同的な作用によって選択的に捕獲される、
とを含む生物学的細胞の捕獲用デバイス。
【請求項2】
前記基板が、シリコン基板であり、前記複数ナノ構造体がシリコンナノワイヤーやナノファイバーであることを特徴とする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記基板が、金属基板であり、前記複数ナノ構造体が金属ナノワイヤーやナノファイバーであることを特徴とする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記金属基板が、チタン、アルミニウムまたはスチールの少なくとも一つを含むことを特徴とする、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記基板が、無機酸化物基板であり、前記複数ナノ構造体が無機酸化物ナノワイヤーやナノファイバーであることを特徴とする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記無機酸化物基板が、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化チタン、または酸化アルミニウムの少なくとも一つを含むことを特徴とする、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記基板が、高分子基板であり、前記複数ナノ構造体が高分子ナノワイヤーやナノファイバーであることを特徴とする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記高分子基板が、ポリメチルメタクリレート、多糖類、またはポリ乳酸の少なくとも一つを含むことを特徴とする、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記ナノワイヤーまたはナノファイバーが、前記基板のバルク部と一体であることを特徴とする、請求項2〜8のいずれかの一項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記ナノワイヤーまたはナノファイバーが、前記基板の上に取り付けられていることを特徴とする、請求項2〜9のいずれかの一項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記縦方向寸法が少なくとも6μm長であることを特徴とする、請求項1から10のいずれかの一項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記横方向寸法が、30nmより大きくかつ400nmよりも小さいことを特徴とする、請求項1〜11のいずれかの一項に記載のデバイス。
【請求項13】
前記基板のナノ構造表面領域が、ストレプトアビジンでコーティングされていて、前記結合剤が、ビオチン化されてストレプトアビジンでコーティングされた前記基板の前記ナノ構造表面領域に接続されていることを特徴とする、請求項1〜12のいずれかの一項に記載のデバイス。
【請求項14】
前記複数の結合剤が、DNA、ペプチド、アプタマー、及び抗体の一つ以上を含むことを特徴とする、請求項1〜13のいずれかの一項に記載のデバイス。
【請求項15】
前記複数の結合剤が、腫瘍細胞に対して過剰発現された複数の抗体を含むことを特徴とする。請求項1〜13のいずれかの一項に記載のデバイス。
【請求項16】
前記複数の結合剤が、複数の抗上皮細胞接着分子抗体(抗EpCAM)であることを特徴とする、請求項1〜13のいずれかの一項に記載のデバイス。
【請求項17】
前記複数の結合剤が、免疫細胞に対する複数の抗体であることを特徴とする、請求項1〜13のいずれかの一項に記載のデバイス。
【請求項18】
さらに、前記基板のナノ構造表面領域の少なくとも一部分が操作中に前記マイクロ流体チャンネルを介して流れる流体と接触するようなマイクロ流体チャンネルを形成するために前記基板に接続されているフロー層を含む、ここで生物学的細胞を捕獲するための前記デバイスがマイクロ流体デバイスである、ことを特徴とする、請求項1〜17のいずれかの一項に記載のデバイス。
【請求項19】
前記フロー層が、生物学的細胞が前記基板のナノ構造表面領域に接触して捕獲されるようになる確率を高めるために無秩序流れを生じさせるテクスチャ表面からなることを特徴とする、請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
前記テクスチャ表面が、流体の流れの主方向に相関的な配向になされている複数の構造体を含むことを特徴とする、請求項19に記載のデバイス。
【請求項21】
前記複数の構造体が、ヘリンボーン模様に配向していることを特徴とする、請求項20に記載のデバイス。
【請求項22】
前記フロー層が、エラストマー性ポリマーからなることを特徴とする、請求項18から21のいずれかの一項に記載のデバイス。
【請求項23】
前記エラストマー性ポリマーが、シリコーンポリマー、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、及びポリテトラフルオロエチレン(テフロン)の一つ以上からなることを特徴とする、請求項22に記載のデバイス
【請求項24】
生物学的細胞を捕獲するためのマイクロ流体デバイスであって、
ナノ構造の表面領域を含む基板と、
前記基板の前記ナノ構造表面領域の少なくとも一部分が、操作時には前記マイクロ流体チャネルを介して流れる流体と接触しているようなマイクロ流体チャネルを形成するように前記基板に付着されているフロー層と、
前記基板の前記ナノ構造表面領域に付着した複数の結合剤と、を含み、
ここで、前記ナノ構造表面領域が、縦方向寸法と横方向寸法を各々持つ複数のナノ構造体を含んでおり、また、
ここで、生物学的細胞が、前記結合剤と前記複数のナノ構造体が協同して作用することで選択的捕獲されるマイクロ流体デバイス。
【請求項25】
前記基板が、シリコン基板であり、前記ナノ構造体が、複数のシリコンナノワイヤーまたはナノファイバーであることを特徴とする、請求項24に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項26】
前記基板が金属基板であり、前記複数のナノ構造体が金属ナノワイヤーまたはナノファイバーであることを特徴とする、請求項24に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項27】
前記金属基板が、チタン、アルミまたはスチールの少なくとも一つを含むことを特徴とする、請求項26に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項28】
前記基板が、無機酸化物の基板であり、前記複数のナノ構造体が無機酸化物のナノワイヤーまたはナノファイバーであることを特徴とする、請求項24に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項29】
前記無機酸化物の基板が、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化チタンまたは、酸化アルミニウムの少なくとも一つを含むことを特徴とする、請求項28に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項30】
前記基板が、高分子基板であり、前記複数のナノ構造体が高分子ナノワイヤーまたはナノファイバーであることを特徴とする、請求項24に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項31】
前記高分子基板が、ポリメチルメタクリレート、多糖類、またはポリ乳酸の少なくとも一つを含むことを特徴とする、請求項30に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項32】
前記ナノワイヤーまたはナノファイバーが、前記基板のバルク部と一体であることを特徴とする、請求項25〜31のいずれかの一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項33】
前記ナノワイヤーまたはナノファイバーが、前記基板の上に沈積されていることを特徴とする、請求項25〜32のいずれかの一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項34】
前記縦方向寸法が、少なくとも6μm長であることを特徴とする、請求項24〜33のいずれかの一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項35】
前記横方向寸法が、30nmよりも大きく400nmよりも小さいことを特徴とする、請求項24〜34のいずれかの一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項36】
前記ナノ構造表面領域が、ストレプトアビジンでコーティングされていて、前記結合剤が、ビオチン化されていてストレプトアビジンでコーティングされた前記ナノ構造表面領域に付着されていることを特徴とする、請求項24〜35のいずれかの一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項37】
前記複数の結合剤が、DNA、ペプチド、アプタマー、及び抗体の一つ以上を含むことを特徴とする、請求項24〜36のいずれかの一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項38】
前記複数の結合剤が、腫瘍細胞に対する複数の過剰発現抗体を含むことを特徴とする、請求項24〜36のいずれかの一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項39】
前記複数の結合剤が、複数の抗上皮細胞接着分子抗体(抗EpCAM)であることを特徴とする、請求項24〜36のいずれかの一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項40】
前記複数の結合剤が、免疫細胞に対する複数の抗体であることを特徴とする、請求項24〜36のいずれかの一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項41】
前記フロー層が、前記生物学的細胞が前記ナノ構造表面領域と接触して捕獲されるようになる、確率を高めるために無秩序流れを起こすテクスチャ表面を、含むことを特徴とする、請求項24に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項42】
前記テクスチャ表面が、流体流れの主方向に相関的に配向した複数の構造体を含むことを特徴とする、請求項41に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項43】
前記複数の構造体が、ヘリンボーン模様に配向していることを特徴とする、請求項42に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項44】
前記フロー層がエラストマー性ポリマーを含むことを特徴とする、請求項24〜43のいずれかの一項に記載のデバイス。
【請求項45】
前記エラストマー性ポリマーが、シリコーンポリマー、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、及びポリテトラフルオロエチレン(テフロン)の一つ以上を含むことを特徴とする、請求項44に記載のデバイス。
【請求項46】
さらに、流体入力マイクロチャンネルを含んでなることを特徴とする、請求項24〜45のいずれかの一項に記載のデバイス。
【請求項47】
さらに、マイクロ流体デバイスと流体接続したポンプを含んでなることを特徴とする、請求項24〜46のいずれかの一項に記載のデバイス。
【請求項48】
細胞試料から生物学的細胞を選択的に単離する方法であって、
結合剤が生物学的細胞の亜集団を選択的に結合することを許す条件の下で請求項1〜47のいずれかの一項のデバイスに細胞試料を接触させて、その結果、結合した生物学的細胞となる工程、および
デバイスから非結合の生物学的細胞を除去する工程、とからなる
細胞試料から生物学的細胞を選択的に単離する方法。
【請求項49】
さらに、捕獲した生物学的細胞を水性媒体で洗浄する工程を含むことを特徴とする、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
細胞試料が、体液、血漿、唾液、髄液、および尿の一つ以上を含むことを特徴とする、請求項48または49に記載の方法。
【請求項51】
生物学的細胞の亜集団が、循環腫瘍細胞を含むことを特徴とする、請求項48〜50のいずれかの一項に記載の方法。
【請求項52】
細胞試料から少なくとも一つの標的生物学的細胞を選択的に単離する方法であって、
少なくとも一つの標的生物学的細胞を含む細胞試料を提供すること;および
標的生物学的細胞が捕獲されることになるように、複数のナノ構造体に細胞試料を接触させること、からなり、
ここで、標的生物学的細胞に特異的にそして結合する複数の結合剤が、ナノ構造体に接続されていて;
標的生物学的細胞がナノ構造体に接続された結合剤に結合し、結果として結合生物学的細胞を得ることができる、効果的な条件下になる方法。
【請求項53】
さらに、結合生物学的細胞を水性媒体で洗浄することを含むことを特徴とする、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
さらに、標的生物学的細胞の存在を検出することを含むことを特徴とする、請求項52または53に記載の方法。
【請求項55】
細胞試料が、体液、血漿、唾液、髄液、および尿の一つ以上を含むことを特徴とする、請求項52〜54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
標的生物学的細胞が、循環腫瘍細胞を含むことを特徴とする、請求項52〜55のいずれかの一項に記載の方法。
【請求項57】
複数の結合剤が、DNA、ペプチド、アプタマー、及び抗体の一つ以上を含むことを特徴とする、請求項52〜56のいずれかの一項に記載の方法。
【請求項58】
前記複数の結合剤が、腫瘍細胞に対して複数の過剰発現された抗体を含むことを特徴とする、請求項52〜56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記複数の結合剤が、複数の抗上皮細胞接着分子抗体(抗EpCAM)であることを特徴とする、請求項52〜56のいずれかの一項に記載の方法。
【請求項60】
前記複数の結合剤が、免疫細胞に対する複数の抗体であることを特徴とする、請求項52〜56のいずれかの一項に記載の方法。
【請求項61】
請求項1〜47のいずれかの一項に記載のデバイスを含む、細胞試料から少なくとも一つの標的生物学的細胞を単離するのに有用なキット。
【請求項62】
さらに、哺乳動物被験体から試料を採取し、試料から生物学的細胞を単離するための指示を含むことを特徴とする、請求項61に記載のキット。
【請求項63】
標的生物学的細胞が、循環腫瘍細胞を含むことを特徴とする、請求項61または62に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2012−520687(P2012−520687A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500964(P2012−500964)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/027816
【国際公開番号】WO2010/108003
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(508255090)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (9)
【Fターム(参考)】