説明

微分干渉型検査装置

【課題】簡易かつ安価に比較的広い範囲にわたってシャー量を調節する。
【解決手段】試料3に照射する光を発する光源7と、光源7からの光を2つの光路に分岐して試料3の異なる場所に照射する照明光学系10と、照明光学系10により試料3に照射された光の反射光を合成して得られた干渉光を撮影する撮影光学系20とを備え、照明光学系10が、光源7からの光を2つの光路に分岐して第1の偏光光15Aを反射し第2の偏光光15Bを透過する光路分岐部16と、光路分岐部16を透過した第2の偏光光15Bを光路分岐部16によって反射された第2の偏光光15Bに対して平行な方向に反射する第1のミラー17と、第1のミラー17と光路分岐部16との相対距離を調節する間隔調整機構とを備える微分干渉型検査装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微分干渉型検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウエハ検査において、パターンの微細化とウエハの大型化に伴い、比較的大きなサイズの欠陥に対してはウエハ全数検査を自動的に行うマクロ検査装置の要求が増えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の表面欠陥検査装置は、ライン照明部およびラインセンサと基板とをライン状の照明領域の長手方向に対して交差する方向に相対的に移動させることによって2次元の観察画像を取得するようになっている。しかし、このような従来の検査装置では、パターン付き平坦面上の傷や異物などの凹凸欠陥とパターンの模様との区別がつき難く、凹凸欠陥だけをコントラスト高く観察することは難しい。
【0004】
ここで、原理的に試料表面の凹凸に対し感度が高い観察方法として、落射型の微分干渉像を取得する微分干渉顕微鏡が知られている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載の微分干渉顕微鏡は、微分干渉像のコントラストや解像力を決める重量なパラメータである2光線の横ずらし量(いわゆる、シャー量)を可変にすることで、高精度の微分干渉観察を行うことができるようになっている。
【0005】
【特許文献1】特開平9−61365号公報
【特許文献2】特開平10−161031号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の微分干渉顕微鏡は、対をなす楔状の結晶板を通過する直線偏光に対して、結晶板の一方を照明光学系の光軸方向に直交する方向に移動して結晶板の光軸方向の厚さを変化させることでシャー量を変えるものであり、シャー量を微調整することしかできないという問題がある。また、シャー量を微調整する構成としてノマルスキープリズムを使用したのでは高価になるという不都合がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、簡易かつ安価に比較的広い範囲にわたってシャー量を調節することができる微分干渉型検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、試料に照射する光を発する光源と、該光源からの前記光を2つの光路に分岐して前記試料の異なる場所に照射する照明光学系と、該照明光学系により前記試料に照射された前記光の反射光を合成して得られた干渉光を撮影する撮影光学系とを備え、前記照明光学系が、前記光源からの前記光を前記2つの光路に分岐して一方の光を反射し他方の光を透過する光路分岐部材と、該光路分岐部材を透過した前記他方の光を前記光路分岐部材によって反射された前記一方の光に対して平行な方向に反射する平行反射部材と、該平行反射部材と前記光路分岐部材との相対距離を調節する距離調節機構とを備える微分干渉型検査装置を提供する。
【0009】
本発明によれば、撮影光学系により、光路分岐部材および平行反射部材によって分岐された2つの光路の光軸に直交する方向の距離、すなわち、横ずらし量(以下「シャー量」という。)に応じたコントラストおよび解像度で、試料の微小段差が立体的に可視化された微分干渉像が取得される。
【0010】
この場合に、光路分岐部材によって反射される一方の光に対して、光路分岐部材を透過した他方の光を平行反射部材によって平行な方向に反射することで、シャー量を平行反射部材と光路分岐部材との距離に応じて決定することができる。また、距離調節機構により平行反射部材と光路分岐部材との相対距離を調節することで、シャー量を変更することができる。したがって、高価なノマルスキープリズムを使用することなく、簡易かつ安価に比較的広い範囲にわたってシャー量を調節することができる。
【0011】
上記発明においては、前記撮像光学系が縮小光学系を備えることとしてもよい。
このように構成することで、マクロ観察を行うことできる。例えば、回路基板の検査において、比較的に広い検査範囲を縮小光学系により縮小してマクロ的に観察することができる。
【0012】
また、回路基板上で所定のパターンが繰り返される場合に、距離調節機構により、パターンの繰り返し周期の整数倍に一致するシャー量を確保することで、パターンの干渉像の発生を抑えて、パターンの中に存在する傷や異物などの欠陥のみを際立たせることができる。したがって、回路基板上にパターンが存在する場合であっても、パターンと欠陥とのコントラストが向上し欠陥を良好に検出することができる。
【0013】
また、上記発明においては、前記光路分岐部材がビームスプリッタであり、前記平行反射部材がミラーであることとしてもよい。
このように構成することで、光源から発せられた光を、簡易かつ安価な構成で、光軸に直交する方向に比較的広い範囲に間隔をあけて平行に配置された2つの光路に分解することができる。
【0014】
また、上記発明においては、前記光路分岐部材が偏光ビームスプリッタであることとしてもよい。
このように構成することで、光源から発せられた光を相互に直交する偏光面を有する2つの偏光光に分岐することができ、干渉を効率よく行わせることができる。
【0015】
また、上記発明においては、前記照明光学系が、前記2つの光路に分岐される前記光の位相を調整する位相差調整機構を備えることとしてもよい。
【0016】
このように構成することで、2つの光路に分岐された光を試料の形状に適した位相差に設定することができる。したがって、例えば、回路基板の検査において、位相差調整機構により、欠陥のない正常なパターンの微分干渉像が比較的暗くなるように位相差を設定することで、欠陥のS/N比(シグナルノイズ比)を向上することができる。
【0017】
また、上記発明においては、前記撮影光学系に、前記2つの光路の光路長を調節する光路長調節機構を備えることとしてもよい。
平行反射部材と光路分岐部材との相対距離に応じて僅かに発生する撮影光学系側の光路長差を補正することで、2つの光路の反射光による像を同じフォーカス位置に結ぶことができる。したがって、鮮明な微分干渉像を取得することができる。
【0018】
また、上記発明においては、前記照明光学系が、前記2つの光路に分岐された前記光の断面形状をライン状に整形するビーム整形光学系を備え、前記試料と前記照明光学系および前記撮影光学系とを前記ライン状の光に交差する方向に相対的に移動させる移動機構を備えることとしてもよい。
【0019】
このように構成することで、2次元の微分干渉像を取得することができる。したがって、例えば、回路基板の検査において、1度の撮影で回路基板の表面全体の微分干渉像を取得することができ、検査効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、簡易かつ安価に比較的広い範囲にわたってシャー量を調節することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の第1の実施形態に係る微分干渉型検査装置1について、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る微分干渉型検査装置1は、例えば、半導体基板やFPD(フラットパネルディスプレイ)等の試料の繰り返し構造を持つパターンに付いた傷や異物等の欠陥を検査するためのものである。
【0022】
微分干渉型検査装置1は、図1および図2に示すように、試料3を配置する一軸ステージ5と、試料3に照射する光を発する光源7と、光源7から発せられた光を2つの光路に分岐して試料3の異なる場所に照射する照明光学系10と、照明光学系10により試料3に照射された光の反射光を合成して得られた光を撮影する撮影光学系20と、これら一軸ステージ5、照明光学系10および撮影光学系20の作動を制御する制御機構9とを備えている。
【0023】
一軸ステージ5は、図示しない移動機構を備え、一方向(図1において矢印Y方向)に移動可能に配置されている。この一軸ステージ5は、画像入力部35および画像処理部37に接続されている。
【0024】
照明光学系10は、光源7から発せられた光が入射される投影レンズ11と、投影レンズ11を透過した光を直線偏光に変換する偏光板13と、直線偏光に1/4波長の位相差を生じさせる1/4波長板14と、直線偏光を2つの光路に分岐する光路分岐部(光路分岐部材、偏光ビーム・スプリッタ)16と、光路分岐部16を透過した光を反射する第1のミラー(平行反射部材)17と、第1のコリメートレンズ19とを備えている。
【0025】
光源7は、例えば、純単色の波長の光を発生するようになっている。
投影レンズ11は、光源7からの光を一軸ステージ5の移動方向に直交する方向に延びる長方形状に整形して試料3に拡大投影するものである。
【0026】
偏光板13は、一定方向に振動している光のみを透過させる性質を有している。また、偏光板13は、例えば、円盤形状を有し、投影レンズ11を透過した光の光軸を中心として回転可能に配置されている。この偏光板13と1/4波長板14は、透過する光の変更状態を変えて、光路分岐部16に入射する光の位相差を0〜λまでの間で変更するようになっている。
【0027】
光路分岐部16は、例えば、キューブ型のPBS(偏光ビームスプリッタ)であり、入射した直線偏光を相互に直交する偏光面を有する2つの偏光光に分岐するようになっている。この光路分岐部16は、1/4波長板14を透過した直線偏光が入射面に対して約45°の角度で入射されるように配置されており、入射面に垂直な方向に振動する光(以下「第1の偏光光」という。)15Aを略直角に反射し、入射面内に振動方向を持つ光(以下「第2の偏光光」という。)15Bを透過するようになっている。
【0028】
第1のミラー17は、光路分岐部16の反射面に対して平行に配置された反射面を有し、光路分岐部16を透過した第2の偏光光15Bが入射面に対して約45°の角度で入射されるように配置されている。また、第1のミラー17は、光路分岐部16に対して平行な状態を保ったまま、光路分岐部16に対して近づく方向および遠ざかる方向に移動可能に配置されている。
【0029】
この第1のミラー17は、第2の偏光光15Bを光路分岐部16によって反射された第1の偏光光15Aに対して平行な方向に反射するようになっている。第1のミラー17によって反射された第2の偏光光15Bは、光路分岐部16によって反射された第1の偏光光15Aに対して、光路分岐部16と第1のミラー17との間隔tに依存する距離だけ光軸方向に直交する方向に間隔をあけて配置される。以下、第1の偏光光15Aの光路と第2の偏光光15Bの光路との光軸に直交する方向の距離、すなわち、横ずらし量をシャー量という。
【0030】
第1のコリメートレンズ19は、投影レンズ11との作用により第1の偏光光15Aおよび第2の偏光光15Bの断面形状をライン状に整形するビーム整形光学系を構成するものであり、第1の偏光光15Aおよび第2の偏光光15Bを試料3上に略平行光として照射するようになっている。なお、試料3に照射された第1の偏光光15Aと第2の偏光光15Bとの横ずれ量を符号δとする。
以下、試料3において反射される第1の偏光光15Aの反射光を第1の反射光25Aといい、第2の偏光光15Bの反射光を第2の反射光25Bという。
【0031】
撮影光学系20は、試料3から反射された第1の反射光25Aおよび第2の反射光25Bが入射される第2のコリメートレンズ21と、第2のコリメートレンズ21を通過した第2の反射光25Bを反射する第2のミラー24と、第1の反射光25Aと第2の反射光25Bとを合成する偏光合成部(偏光ビームスプリッタ)23と、偏光合成部23によって合成された光から干渉信号を抽出する検光子26と、撮像レンズ27と、撮像レンズ27を透過した光を撮影するラインセンサ29とを備えている。
【0032】
また、第2のコリメートレンズ21と偏光合成部23との間の第1の反射光25Aの光路上には、試料3と撮像レンズ27との間の光路長を補正する光路長補正素子69が配置されている。光路長補正素子69は、例えば、ガラス板等である。
【0033】
偏光合成部23は、例えば、キューブ型のPBS(偏光ビームスプリッタ)である。この偏光合成部23は、第1の反射光25Aおよび第2の反射光25Bの光路上に設けられ、第1の反射光25Aおよび第2の反射光25Bが入射面に対して約45°の角度で入射されるように配置されている。また、偏光合成部23は、入射面に垂直な方向に振動する第1の反射光25Aを反射し、入射面に振動方向を持つ第2の反射光25Bを透過するようになっている。
【0034】
第2のミラー24は、偏光合成部23の反射面に対して平行に配置された反射面を有し、偏光合成部23を透過した第2の反射光25Bが入射面に対して約45°の角度で入射されるように配置されている。第2のミラー24は、偏光合成部23に対して平行な状態を保ったまま、偏光合成部23に対して近づく方向および遠ざかる方向に移動可能に配置されている。
【0035】
第2のミラー24は、第2の反射光25Bを偏光合成部23によって反射された第1の反射光25Aの光路上に第1の反射光25Aと平行に反射するようになっている。第2のミラー24により反射された第2の反射光25Bは、偏光合成部23を再び透過する際に第1の反射光25Aと合成されて出射される。
【0036】
撮像レンズ27は、第2のコリメートレンズ21との作用により試料3の長方形状の照射エリアを縮小投影する縮小光学系を構成するものである。また、撮像レンズ27は、検光子26により抽出された干渉信号に基づき、ラインセンサ29上に試料3の微分干渉像を形成するようになっている。
【0037】
ラインセンサ29は、撮像レンズ27を透過した光の光軸方向に移動可能に配置されている。このラインセンサ29は、画像入力部35および画像処理部37に接続されている。
【0038】
制御機構9は、各種試料の形状等に適した検査条件を記憶する記憶部31と、第1のミラー17と光路分岐部16の間隔tおよび第2のミラー24と偏光合成部23の間隔tをそれぞれ調整する間隔調整機構41と、第1の偏光光15Aと第2の偏光光15Bとの位相差を調整する位相差調整機構51と、試料3と撮像レンズ27との間の光路長補正を調整する光路長補正機構61と、これら記憶部31、間隔調整機構41、位相差調整機構51、光路長補正機構61とラインセンサ29および一軸ステージ5を制御する制御部33とを備えている。
【0039】
記憶部31には、例えば、試料ごとの繰り返しパターンの周期等が検査条件として記憶されている。検査条件に基づき、パターンの繰返し周期の整数倍に一致するシャー量を確保するように各調整機構を作動させることで、パターンの微分干渉像の発生を抑えて、パターンの中に存在する欠陥のみを際立たせることができる、
【0040】
間隔調整機構(距離調節機構)41は、第1のミラー17を移動させる第1ミラー駆動部43と、第2のミラー24を移動させる第2ミラー駆動部45と、第1のミラー17および第2のミラー24の位置を設定する間隔設定部47とを備えている。
【0041】
光路分岐部16によって反射される第1の偏光光15Aに対して、第2の偏光光15Bを第1のミラー17によって平行な方向に反射することで、シャー量が第1のミラー17と光路分岐部16との距離tに応じて決定される。また、間隔調整機構41により第1のミラー17と光路分岐部16との間隔を調整することで、シャー量が変更される。なお、間隔設定部47は、第1ミラー駆動部43および第2ミラー駆動部45を連動して作動させるようになっている。
【0042】
位相差調整機構51は、偏光板13を光軸を中心として回転させる偏光板回転駆動部53と、第1の偏光光15Aと第2の偏光光15Bとの位相差を設定する位相差設定部57とを備えている。位相差設定部57は、偏光板回転駆動部53を介して、偏光板13を回転させるようになっている。
【0043】
光路長補正機構61は、第1の反射光25Aの光路上に光路長補正素子69を挿入する光路長補正素子挿脱駆動部63と、ラインセンサ29を光軸方向に移動するラインセンサ駆動部65と、試料3と撮像レンズ27との間の光路長の補正量を設定する光路長補正量設定部67とを備えている。
【0044】
光路長補正量設定部67は、光路長補正素子挿脱駆動部63を介して、厚さが異なる複数の光路長補正素子69から適切な厚さのものを選択し、選択した光路長補正素子69を第1の反射光25Aの光路中に挿入するようになっている。また、光路長補正量設定部67は、ラインセンサ駆動部65を介して、ラインセンサ29を光軸方向に移動させるようになっている。
【0045】
このように構成された本実施形態に係る微分干渉型検査装置1の作用について説明する。
本実施形態に係る微分干渉型検査装置1により試料3の表面を検査するには、まず、一軸ステージ5上に試料3を配置し、制御部33に検査開始信号を入力する。制御部33においては、記憶部31から試料3に適した検査条件が読み出され、間隔調整機構41、位相差調整機構57および光路長補正機構61に対して検査条件が出力される。
【0046】
間隔調整機構41においては、間隔設定部47により、入力された検査条件に基づいて第1ミラー駆動部43および第2ミラー駆動部45が駆動される。これにより、適切なシャー量となるように第1のミラー17および第2のミラー24が移動し、第1のミラー17と光路分岐部16の間隔tおよび第2のミラー24と偏光合成部23の間隔tがそれぞれ調整される。
【0047】
位相差調整機構57においては、位相差設定部57により、入力された検査条件に基づいて偏光板回転駆動部53が駆動される。これにより、第1の偏光光15Aおよび第2の偏光光15Bの位相差が適切な位相量になるように偏光板13が回転する。
【0048】
光路長補正機構61においては、光路長補正量設定部67により、入力された検査条件に基づいて光路長補正素子挿脱駆動部63およびラインセンサ駆動部65が駆動される。光路長補正素子挿脱駆動部63により、適切な厚さの光路長補正素子69が選択されて第1の反射光25Aの光路中に挿入される。また、ラインセンサ駆動部65により、ラインセンサ29が光軸方向に設定量分移動させられる。
【0049】
間隔調整機構41、位相差調整機構57および光路長補正機構61による調整が終了すると、制御部33により、ラインセンサ29に撮影開始指示が出力され、一軸ステージ5に捜査開始指示が出力される。また、制御部33により、画像入力部35に対して一軸ステージ5の取り込み開始信号が入力される。
【0050】
光源7から発せられた光は、投影レンズ11を通った後、偏光板13および1/4波長板14を順に通過する。偏光板回転駆動部53により偏光板13を回転することで、偏光板13を通過した直線偏光の2つの偏光光(第1の偏光光15Aおよび第2の偏光光15B)の位相差が調整される。例えば、欠陥がない正常なパターンでは微分干渉像が比較的暗くなるように位相差を設定することで、欠陥のS/N比(シグナルノイズ比)を向上することができる。
【0051】
偏光板13および1/4波長板14を通過した直線偏光は、光路分離部16に到達して互いに直交する2つの偏光光に分岐される。具体的には、第1の偏光光15Aは光路分離部16によって反射され、第2の偏光光15Bは光路分離部16を透過した後、第1のミラー17によって第1の偏光光15Aに平行する方向に反射される。
【0052】
この場合に、第2の偏光光15Bは、光路分岐部16によって反射された第1の偏光光15Aに対して、光路分岐部16と第1のミラー17との間隔tに依存する距離tだけ光軸方向に直交する方向に間隔をあけて配置される。
【0053】
第1の偏光光15Aおよび第2の偏光光15Bは、第1のコリメートレンズ19を透過して一軸ステージ5の移動方向に直交するライン状の略平行光となり、試料3上に光軸に直交する方向に横ずれ量δの間隔をあけてそれぞれ照射される。
【0054】
この場合に、光路分岐部16と第1のミラー17との間隔tと、第1の偏光光15Aおよび第2の偏光光15Bの試料3上の横ずれ量δとの関係は、
(式1)δ≒t/sin(45deg)≒1.4t
で表される。(式1)は、光源7から光路分離部16への直線偏光の入射角度が45°、試料3への第1の偏光光15Aおよび第2の偏光光15Bの入射角度が0°に近い場合を例示している。(式1)より、間隔tに応じて試料3上の第1の偏光光15Aおよび第2の偏光光15Bの横ずれ量δが変わることが導かれる。
【0055】
試料3のそれぞれの位置で反射された第1の反射光25Aおよび第2の反射光25Bは、それぞれ第2のコリメートレンズ21を通り、第1の反射光25Aのみ光路長補正素子69を通過して、それぞれ偏光合成部23に到達する。
【0056】
第1の反射光25Aが光路長補正素子69を通過することで、間隔tに応じて発生する撮像光学系側の光路長差を補正し、第1の反射光25Aと第2の反射光25Bとによる像を同じフォーカス位置に結ばせることができる。
【0057】
第1の反射光25Aは偏光合成部23によって反射され、第2の反射光25Bは偏光合成部23を透過した後、第2のミラー24によって第1の反射光25Aの光路上に第1の反射光25Aと平行するように反射される。これにより、偏光合成部23において、第1の反射光25Aおよび第2の反射光25Bが同じ光路上で重なって合成されて出射される。
【0058】
偏光合成部23により合成された光は、検光子26において干渉信号が抽出され、撮像レンズ27を透過してラインセンサ29上に試料の像を形成する。この像は、例えば、試料3上で距離δだけ離れた隣接チップ間での微分干渉像となる。これにより、ラインセンサ29により、シャー量に応じたコントラストおよび解像度で、試料3の微小段差が立体的に可視化された微分干渉像が取得される。
【0059】
そして、画像入力部35において、ラインセンサ29からのラインデータが取得されて2次元画像が構築される。画像入力部35により構築された2次元画像は、画像処理部37に送られて欠陥検出が行われ、欠陥の有無の判定結果が出力される。
【0060】
以上説明したように、本実施形態に係る微分干渉型顕微鏡1によれば、全数検査によって、試料3の比較的に広い検査範囲を縮小したマクロ観察を行うことができる。また、試料3に照射する第1の偏光光15Aおよび第2の偏光光15Bのシャー量が第1のミラー17と光路分岐部16との距離tに応じて決定され、第1のミラー17と光路分岐部16との距離を調節することでシャー量を変更することができる。したがって、高価なノマルスキープリズムを使用することなく、簡易かつ安価に試料3の形状に合わせて比較的広い範囲にわたってシャー量を調節することができる。例えば、シャー量を変更して、複数のチップを含むパターン単位で微分干渉像を取得してマクロ的に観察することとしてもよい。
【0061】
なお、本実施形態においては、ラインセンサ29、もしくは、ラインセンサ29および撮像レンズ27を光路長の変化分だけ光軸方向に移動可能に設定しておくこととしてもよい。このようにすることで、間隔tに応じて僅かに発生する横倍率の試料3ごとの変化を防ぎ、欠陥座標のばらつき等をなくすことができる。
また、本実施形態のおいては、光路分離部16および偏光合成部23として、キューブ型のPBSを例示して説明したが、これに代えて、例えば、キューブ型のPBSを変形したものでもよいし、ワイヤグリッド型のPBSを採用することとしてもよい。ワイヤグリッド型のPBSは薄いガラス基板状であるため、シャー量を1mm以下の小さい量に設定する場合に有効である。
【0062】
また、本実施形態においては、光源7から発せられた光を光路分離部16により偏光分離することとしたが、光路分離部16に代えて、例えば、ビームスプリッタやハーフミラーを採用することとしてもよい。この場合、例えば、ハーフミラーにより光を2つの光路に位置ずらしするだけで微分干渉像を取得することができる。また、2次、3次の反射光が発生するので、余分な光をハーフミラーのコーティングや絞り等によって適切に除去することで、比較的大きなシャー量による微分干渉像をより安価な構成で取得することが可能になる。
【0063】
また、本実施形態おいては、光源7が純単色の波長の光を発生することとしたが、白色の波長の光を発生することとしてもよい。また、本実施形態においては、第1の偏光光15Aと第2の偏光光15Bの位相量を調整する手段として、位相差調整機構57を例示して説明したが、これに代えて、光源7の使用波長を変えて対応することとしてもよい。また、例えば、試料3として、半導体ウエハを用いる場合には、第1の偏光光15Aおよび第2の偏光光15Bの横ずれした位置に隣接チップがない場合がある。この場合、一軸ステージ5に代えて回転ステージを採用し、試料3を45°または90°回転させて撮影することで、試料3上の全てのチップを検査することとしてもよい。
【0064】
また、例えば、偏光合成部23に絞りを設けて、有効な微分干渉像に寄与する光のみが撮像レンズ27に到達するように設定することとしてもよい。このようにすることで、第1の反射光25Aおよび第2の反射光25Bが試料3の偏光特性を受けて楕円偏光となり偏光合成部23の他の場所から反射光が発生する場合に対応することができる。また、間隔調整機構41は、第1のミラー17と光路分岐部16および第2のミラー24と偏光合成部23との相対距離を調節するものであればよく、例えば、光路分岐部16や偏光合成部23を移動させることとしてもよい。
【0065】
また、撮像レンズ27と第2のコリメートレンズ21とにより縮小光学系を構成してマクロ観察を行うことを例示して説明したが、これに代えて、拡大光学系を構成させることとしてもよい。また、第1のミラー17および第2のミラー24をマイクロミラーアレイで構成することとしてもよい。また、光路長補正や位相差調整には、位相差調整用の液晶等を採用することとしてもよい。また、ラインセンサ29に代えて、CCD等の2次元的な撮影手段を採用することとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施形態に係る微分干渉型顕微鏡の概略構成図である。
【図2】図1の微分干渉型顕微鏡の制御機構を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0067】
1 微分干渉型検査装置
3 試料
7 光源
10 照明光学系
15A 第1の偏光光
15B 第2の偏光光
16 光路分岐部(光路分岐部材)
17 第1のミラー(平行反射部材)
20 撮影光学系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に照射する光を発する光源と、
該光源からの前記光を2つの光路に分岐して前記試料の異なる場所に照射する照明光学系と、
該照明光学系により前記試料に照射された前記光の反射光を合成して得られた干渉光を撮影する撮影光学系とを備え、
前記照明光学系が、前記光源からの前記光を前記2つの光路に分岐して一方の光を反射し他方の光を透過する光路分岐部材と、該光路分岐部材を透過した前記他方の光を前記光路分岐部材によって反射された前記一方の光に対して平行な方向に反射する平行反射部材と、該平行反射部材と前記光路分岐部材との相対距離を調節する距離調節機構とを備える微分干渉型検査装置。
【請求項2】
前記撮像光学系が縮小光学系を備える請求項1に記載の微分干渉型検査装置。
【請求項3】
前記光路分岐部材がビームスプリッタであり、前記平行反射部材がミラーである請求項1または請求項2に記載の微分干渉型検査装置。
【請求項4】
前記光路分岐部材が偏光ビームスプリッタである請求項3に記載の微分干渉型検査装置。
【請求項5】
前記照明光学系が、前記2つの光路に分岐される前記光の位相を調整する位相差調整機構を備える請求項1から請求項4のいずれかに記載の微分干渉型検査装置。
【請求項6】
前記撮影光学系に、前記2つの光路の光路長を調節する光路長調節機構を備える請求項1から請求項5のいずれかに記載の微分干渉型検査装置。
【請求項7】
前記照明光学系が、前記2つの光路に分岐された前記光の断面形状をライン状に整形するビーム整形光学系を備え、
前記試料と前記照明光学系および前記撮影光学系とを前記ライン状の光に交差する方向に相対的に移動させる移動機構を備える請求項1から請求項6のいずれかに記載の微分干渉型検査装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−134036(P2010−134036A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307593(P2008−307593)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】