説明

微分非直線性誤差を用いたADコンバータのミッシングコード検出方法

【課題】 被検査素子に組み込まれているADコンバータのミッシングコードの有無を、微分非直線性誤差(以下、DNLと略す)を用いて検査する際に、取り込むディジタルデータ量と検査時間を増加させることなく、よりミッシングコードの誤判定の少ない検査を行う。
【解決手段】 被検査素子に検査用ランプ波を複数回入力し、この被検査素子が返すデータから各コードの出現個数をカウントし、これを入力回数で平均した値から各コードの絶対値付きDNLを求めると同時に、個別のランプ波からそれぞれ各コードの絶対値付きDNLを求めたうえでこれらの最小値を選び、各コードの絶対値付きDNLとする。次に、この2通りの方法で求めた各コードの絶対値付きDNLをそれぞれ比較し、小さい方の値をそのコードの絶対値付きDNLとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査素子である半導体素子に組み込まれたADコンバータのミッシングコードの有無を検査するミッシングコード検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の微分非直線性誤差(Differential Nonlinearity Error : 以下DNLと略記)を用いたADコンバータ(以下ADCと略記)のミッシングコードの検出方法を以下に示す。
【0003】
一般に、被検査素子(以下DUTと略記)に内蔵されたADCのミッシングコードの有無は、DNLを用いて評価される。ここでまず、ADCの各出力コードに対するDNLの算出方法について説明する。
【0004】
あるADCの分解能がD[bit]であるとすると、その出力コードは0…2D - 1の2Dとおりとなる。いま、この範囲の両端(0, 2D - 1)の2コードを除外した2D-2個のコードから任意の1コードを選び、これをnとすると、コードnのDNL(これをDNLとおく)は、次式で求まる。
【0005】
DNLn = {(Vn+1 - Vn) ‐ 1LSB} / 1LSB [LSB] …(1)
ここで、図2中に示すように、記号VnはADCの出力コードがnからn+1へ遷移する時のアナログ入力電圧を示し、記号1LSBは(V2D-2- V1)/ (2D - 2)で計算される、コードが1遷移するのに必要なアナログ電圧である。
【0006】
すなわち、コードnのDNLとは、0と2D - 1を除く1コードあたりの出現頻度の理論値に対するコードnの出現頻度の偏差を意味するものである。理想的なADCでは、全てのコードについて、そのDNL = 0となる。一方、ある特定のコードについて、そのコードが出現しない(ミッシングコードがある)か、1コードあたりの出現頻度の理論値×2以上の出現頻度を示す場合、|DNL|≧1.00となる。特に、注目するコードがミッシングコードである場合、そのコードでのDNL=-1.00であり、|DNL| = 1.00となる。
【0007】
したがって、これら2D - 2個のコード全ての|DNL| < 1.00ならば、そのADCにミッシングコードが無く、その伝達特性が単調であることが保証される。
【0008】
式(1)において、通常Vnの値はDUTごとに異なり、未知である。一方、ADCの出力コードはディジタル入力としてディジタルシグナルプロセッサ(DSP)に容易に取り込むことができるため、次に示す式(2)を式(1)の代わりに用いてDNLを計算できる。
【0009】
DNLn = (Nn ‐ N1LSB) / N1LSB
= Nn / N1LSB - 1 … (2)
ただし、図3に示すように、従来方法でNnは1回の検査用ランプ波の入力に対して得られたコードnの出現回数、またN1LSBは1コードあたりの出現回数の理論値で、検査用入力波形1回の入力に対する全2D - 2とおりのデータの総数Ntotalを用いて、次式より求まる。
【0010】
N1LSB = Ntotal / (2D - 2) … (3)
なお、記号Ntotalは従来の方法で、分解能D[bit]のDUTが、検査用ランプ波の入力に対して返すバイナリデータのうち、0と2D - 1を除く2D - 2とおりのデータの総数を示す。
【0011】
ここで、検査用アナログ入力信号として、DUT内蔵のADCより高い分解能を持つDAコンバータ(以下DACと略記)から出力される低速の線形ランプ波を入力すると、2D - 2とおりの各コードの出現回数の理論値N1LSBが全て等しくなるため、比較的容易にDNLを計算できる。
【0012】
ここで、ランプ波をDUTに複数回入力し、各コードの出現回数をランプ波の入力回数で平均化したデータより各コードのDNLを求めるためのフローについて説明する。この方法により、ランプ波をDUTに1回のみ入力して得られた各コードの出現回数からDNLを求めるよりも、ランプ波生成用DACとその周辺回路のジッタと出力電圧ばらつき、外乱ノイズによる検査用ランプ波の波形ばらつきに起因するミッシングコードの有無の誤判定がより少ない検査を実現している。
【0013】
このフローを図7に示す。同図において、記号Ntotaliは、分解能D[bit]のDUTが、i回目の検査用ランプ波の入力に対して返すバイナリデータのうち、0と2D - 1を除く2D - 2とおりのデータの総数を示す。記号Nniはi回目の検査用ランプ波の入力に対してカウントされるコードnの出現回数を示す。記号N1LSBΣは複数回の検査用ランプ波入力に対して得られたディジタルデータから、コード0と2D- 1を除く全てのデータを用いて計算される、1コードあたりの出現回数の理論値を示す。記号DNLnは従来の方法で、複数回の検査用ランプ波入力に対して得られたディジタルデータから、コード0と2D- 1を除く全てのデータを用いてコードnについて計算されるDNLを示す。記号ABS(DNLn)は従来方法を用いてコードnについて算出される絶対値付きDNLを示す。記号Max_ABS(DNL)は従来方法を用いて、DUTに内蔵されるADCのコード0と2D - 1を除く2D- 2個のコードについて算出されるABS(DNLn))の中から最大値を選び、検査対象であるADCの最大絶対値付きDNLとしたものを示す。
【0014】
まず、DUTに検査用ランプ波をm回入力し、DUTが返すディジタルデータを回収する。
【0015】
つぎに、i回目のランプ波から得たデータの総数Ntotaliをカウントする処理と、i回目のランプ波から得たデータよりn=1→2D−2の各コードの出現個数Nniをカウントする処理とを、i=1→mのm回繰り返す。
【0016】
つぎに、次式の演算処理を行う。
【0017】
N1LSB Σ = Σ(Ntotal1, Ntotal2, …, Ntotalm) / (2D - 2)
つぎに、次式の演算処理を、n=1→2D−2の各コードについて行う。
【0018】
DNLn = Σ(Nn1, Nn2, …, Nnm) / NlLSB Σ - 1
ABS(DNLn) = |DNLn|
つぎに、次式の演算処理を行う。
【0019】
Max_ABS(DNL) = Max{ABS(DNL1), ABS(DNL2), …, ABS(DNL2D-2)}
つぎに、Max_ABS(DNL)<1.00
であるかどうかを判断し、1.00より小さいとミッシングコード無しと判定し、1.00以上であれば、ミッシングコード有りと判断する。
【特許文献1】特開昭61−137429号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら上記従来の方法では、注目するDUT内のADCが、ミッシングコードは無いが、その特定の出力コードnが他のコードと比較して出現頻度が低い、あるいは高いという特性を持つ場合、ランプ波の入力回数が少ないと、得られた出力データの中にそのコードnが存在しない、あるいは複数のランプ波から得られた1コードあたりの出現回数の理論値をN1LSBΣとするとき、コードnがN1LSBΣ×2以上の回数で出現することがある。この場合、コードnで|DNLn|≧1.00と計算されるため、誤ってミッシングコード有りと判定されることがある。
【0021】
一方、ランプ波は低速であり、DUTから出力されるデータの取り込みにもデータ量に応じた時間を要するため、検査時間を考慮すると、ランプ波の入力回数増はできる限り避けなければならない。
【0022】
また、DUTに組み込まれているADCの分解能が高い場合、1コードあたりの出現回数N1LSBΣの理論値を大きくとることができない。そのため、これによってもミッシングコードの有無を誤判定することがある。
【0023】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、DUTに組み込まれているADCに対し、取り込むディジタルデータ量と検査時間を増加させることなく、よりミッシングコードの誤判定の少ない検査を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題を解決するために、本発明のミッシングコード検出方法は、図4に示すように、DUTに内蔵されたADCのミッシングコードの有無を検査するADCのミッシングコード検出方法であって、DUTに検査用入力波形として複数回ランプ波を入力し、DUTが返すディジタルデータを取り込んだ後、入力した全てのランプ波を用いてADCの各出力コードの出現個数を平均し、ADCの各出力コードの出現個数の平均値より各コードの第1の絶対値付きDNLを求める(先行技術と同様)。なお、図4において、記号V0はADCのゼロスケール電圧を示す。記号V2D - 1はADCのフルスケール電圧を示す。
【0025】
これと同時に、個別のランプ波の各出力コードからも絶対値付きDNLを求める。i番目に入力されたランプ波から得られるコードnの出現回数をNni、1コードあたりの出現回数の理論値をN1LSBi、とすれば、この値は
DNLni = (Nni‐ N1LSBi) / N1LSBi
= Nni / N1LSBi - 1 [LSB]
となる。これを第2の絶対値付きDNLとおく。各コードについて、この値をランプ波の入力回数分求めたうえでその最小値、すなわち各コードについて、1コードあたりの出現回数の理論値に最も近い出現回数が得られたデータから計算されたものを選び出して各コードの第3の絶対値付きDNLとする。
【0026】
ここで、最小値を選ぶ目的について説明する。すなわち、最小値を選ぶ目的は、検査対象であるADCのミッシングコードの有無を判定するとき、ランプ波の入力回数分得られるコードnの絶対値付きDNLの中に、|DNLni|<1.00であるものと、そうでないものとが同時に存在した場合、|DNLni|<1.00であるものを選ぶことにより、そのコードがミッシングコードでないと判定させるためである。
【0027】
つぎに、ランプ波の入力回数分の第2の絶対値付きDNLの中の最小値が、1コードあたりの出現回数の理論値に最も近い出現回数が得られたデータから計算されたものになる理由を説明する。すなわち、式(2)より、コードの出現回数Nnが理論値N1LSBと等しければ、DNLnは0となる。したがって、DNLnの絶対値|DNLn|が0に近いほど、コードの出現回数Nnは理論値N1LSBに近づく。さらに言えば、得られた絶対値付きDNLの最小値を選択することにより、選択された値は0に近づくが、式(2)より、この値が0に近いほどコードnにおける理想伝達特性曲線の値N1LSBに近いことになる。
【0028】
そして、各コードについて第1の絶対値付きDNLと第3の絶対値付きDNLとを比較し、それらのうちの小さい方の値をそのコードの第4の絶対値付きDNLとする。ここで、第1の絶対値付きDNLと第3の絶対値付きDNLのうち、小さい方の値が1.00未満であれば、注目するコードが必ず一度は出現していることになる。検査規格値を1.00未満に設定すれば、後述するMax_ABS(DNL)≧1.00であるDUTは除外されるので、検査をパスしたDUTに対しては、真にミッシングコードが無いことが保証される。
【0029】
最後に、ゼロスケール値とフルスケール値を除く全コードについて計算された第4の絶対値付きDNLの最大値をDUTの最大絶対値付きDNL(Max_ABS(DNL))とおき、Max_ABS(DNL)<1.00ならば、DUTはミッシングコード無しと判断する。
【0030】
以上の方法により、図5のように、コードnの出現個数データに、同時に0とN1LSBi×2以上が現れ、かつこれらの和を取るとN1LSBΣ×2より小さくなる場合、第3の絶対値付きDNLのみを用いるとミッシングコードと判定される。しかしながら、コードnはN1LSBi×2以上の回数が出現しているので、実際にはミッシングコードでない。この場合は従来方法と同様に求められた第1の絶対値付きDNLが選択することにより、このADCの最大絶対値付きDNL≧1.00となることを回避し、従来よりもミッシングコードの誤判定の少ない検査を実現できる。
【0031】
また、図6のように、コードnの出現個数の和はN1LSBΣ×2以上となるが、個別に見るとN1LSBi×2より小さい出現個数のデータがある場合に、従来方法ではΣ(Nn1, Nn2, …, Nnm) / NlLSBが2以上となるため、第1の絶対値付きDNLは1.00以上となり、ミッシングコードと判定される。しかしながら、コードnは出現しているので、実際にはミッシングコードでない。この場合は第3の絶対値付きDNLが選択することにより、このADCの最大絶対値付きDNL≧1.00となることを回避し、従来よりもミッシングコードの誤判定の少ない検査を実現できる。
【0032】
本発明のプログラムは、上記したADコンバータのミッシングコード検出方法をコンピュータに実行させるものである。
【0033】
また、本発明の記録媒体は、コンピュータが読み取り可能なものであり、上記プログラムが記録されている。
【発明の効果】
【0034】
以上のように本発明によれば、全ランプ波のデータを平均した各コードの絶対値付きDNLと、各ランプ波について得られたデータから計算した各コードの絶対値付きDNLの中から最小値を選択したものとを比較し、各コードについてこれら2値の最小値を選択することから、従来よりもミッシングコードの誤判定の少ない検査を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態のミッシングコード検出方法について、図1を参照しながら説明する。
【0036】
このミッシングコード検出方法では、最初に検査用ランプ波を複数回入力し、DUTが返すディジタルデータをディジタル入力により回収する。その後、以下のような処理を行う。
【0037】
はじめに、第1の絶対値付きDNLとして、各コードの出現回数をランプ波の入力回数で平均化したデータから各コードの絶対値付きDNLを算出する。これをコードnの絶対値付きDNL_Aとし、ABS(DNL_An)とおく。
【0038】
ABS(DNL_An) = |ABS(DNL_An)|…(5)
つぎに、個別のランプ波からi回目に入力されたランプ波に対応する、DUTが返すバイナリデータの総数をNtotali、そのランプ波の入力に対する1コードあたりの出現回数の理論値N1LSBiとすると
N1LSBi = Ntotali/ (2D - 2) …(6)
である。よって、i回目のランプ波の入力に対するコードnのDNLをDNL_Bni’とおくと
DNL_Bni’ = {Nni - N1LSBi} / N1LSBi
= Nni/ N1LSBi - 1…(7)
となる。この値の絶対値をとったものを第2の絶対値付きDNLとし、ランプ波の入力回数分(m個)得られる。ここでDNLを求めるにあたって、DUTの線形性を重視せず、ミッシングコードの有無のみに着目していることに注意すると、m個得られたDNL_Bni’の中から絶対値付き最小値を選び出し、これをコードnの絶対値付きDNLとしても差し支えない。よって、これを行うと
ABS(DNL_Bn) = Min(|DNL_Bn1’|, |DNL_Bn2’|, …, |DNL_Bnm’|)…(8)
となり、第3の絶対値付きDNLを得る。
【0039】
ここで、最小値を選び出し、これをコードnの絶対値付きDNLとしても差し支えない理由について説明する。あるコードnがミッシングコードであるかどうかを調べるにあたっては、絶対値つきDNLが1.00未満であれば、実際にそのコードが必ず一度は出力されていることになる。したがって、そのコードnはミッシングコードとはならない。よって、各ランプ波より得られた第2の絶対値付きDNLが、一度でも1.00未満となっているかどうかを確認することにより、コードnがミッシングコードであるかどうかを判定できるため、最小値を選び出している。
【0040】
さらに、得られたABS(DNL_An)とABS(DNL_Bn)を比較し、その最小値をコードnの第4の絶対値付きDNLとし、次のようにABS_DNLとおく。
【0041】
ABS(DNLn) = Min(ABS(DNL_An), ABS(DNL_Bn)) … (9)
最後に、式(10)のようにコード0, 2D - 1を除く全てのコードについてABS(DNLn)を比較し、最大値をそのADCの絶対値付き最大DNLとみなし、Max_ABS(DNL)とおく。
【0042】
Max_ABS(DNL) = Max{ ABS(DNL1), ABS(DNL2), …, ABS(DNL2D-2)} … (10)
Max_ABS(DNL)が1より小さい場合、検査対象のADCにはミッシングコードが無いことが保証される。以上の処理は、例えば図1のフローで実現できる。
【0043】
ここで、図1のフローについて説明する。図1において、記号Ntotaliは、分解能D[bit]のDUTが、i回目の検査用ランプ波の入力に対して返すバイナリデータのうち、0と2D - 1を除く2D - 2とおりのデータの総数を示す。記号N1LSBiはi回目の検査用ランプ波の入力に対して得られるデータのうち、0と2D- 1を除く2D - 2とおりの各コードの出現回数の理論値を示す。記号Nniはi回目の検査用ランプ波の入力に対してカウントされるコードnの出現回数を示す。記号DNL_Bni’はi回目の検査用ランプ波の入力に対して得られたデータから求まるコードnのDNLを示す。記号ABS(DNL_Bn)は検査用ランプ波をDUTにm回入力したとき、コードnについて得られるm個のDNL値(DNL_B’n1), (DNL_B’n2),…, (DNL_B’nm)の中から選び出された絶対値付き最小値を示す。記号N1LSBΣは複数回の検査用ランプ波入力に対して得られたディジタルデータから、コード0と2D- 1を除く全てのデータを用いて計算される、1コードあたりの出現回数の理論値を示す。記号DNL_Anは複数回入力された検査用ランプ波から得られたデータを入力回数で平均化して求められる、コードnのDNLを示す。記号ABS(DNL_An)はDNL_Anの絶対値を示す。記号ABS(DNLn)は本発明の方法を用いてコードnについて算出される絶対値付きDNLを示す。記号Max_ABS(DNL)は本発明の方法を用いて、DUTに内蔵されるADCのコード0と2D - 1を除く2D- 2個のコードについて算出されるABS(DNLn))の中から最大値を選び、検査対象であるADCの最大絶対値付きDNLとしたものを示す。
【0044】
まず、DUTに検査用ランプ波をm回入力し、DUTが返すディジタルデータを回収する。
【0045】
つぎに、i回目のランプ波から得たデータの総数Ntotaliをカウントする処理と、i回目のランプ波から得たデータよりn=1→2D−2の各コードの出現個数Nniをカウントする処理、および次式の演算処理を、i=1→mのm回繰り返す。
【0046】
N1LSBi = Ntotali / (2D - 2)
DNL_Bni’ = Nni / N1LSBi - 1
つぎに、次式の演算処理を行う。
【0047】
ABS(DNL_Bn) = Min(|DNL_Bn1’|, |DNL_Bn2’|, …, |DNL_Bnm’|)
つぎに、次式の演算処理を行う。
【0048】
N1LSBΣ = Σ(Ntotal1, Ntotal2, …, Ntotalm) / (2D - 2)
つぎに、次式の演算処理を、n=1→2D−2の各コードについて行う。
【0049】
DNL_An = Σ(Nn1, Nn2, …, Nnm) / N1LSB Σ - 1
ABS(DNL_An) = |DNL_An|
つぎに、次式の演算処理を、n=1→2D−2の各コードについて行う。
【0050】
ABS(DNLn) = Min{ABS(DNL_An), ABS(DNL_Bn)}
つぎに、次式の演算処理を行う。
【0051】
Max_ABS(DNL) = Max{ABS(DNL1), ABS(DNL2), …, ABS(DNL2D-2)}
つぎに、Max_ABS(DNL)<1.00
であるかどうかを判断し、1.00より小さいとミッシングコード無しと判定し、1.00以上であれば、ミッシングコード有りと判断する。
【0052】
本発明のプログラムは、上記した本発明の実施の形態のADコンバータのミッシングコード検出方法をコンピュータに実行させるプログラムである。また、本発明の記録媒体は、コンピュータが読み取り可能で、上記プログラムが記録されている。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明にかかるADCのミッシングコード検出方法によれば、従来よりもミッシングコードの誤判定の少ない検査を実現できる。すなわち、従来よりも少ない検査用波形の入力回数で検査が可能であるという特徴を有し、検査時間を短縮することができる。このため、ランプ波の入力回数を低く抑える場合や、ADCの出力bit数が大きく、1LSBあたりの出現回数の理論値を大きくとれない場合に有効である。
【0054】
また、ランプ波生成用DACとその周辺回路のジッタと出力電圧ばらつき、外乱ノイズによる検査用ランプ波の波形ばらつきに起因するミッシングコードの有無の誤判定を抑えることができるため、電磁環境変化に対しての、DUTからのデータ回収後の手続き上の対策としても使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施の形態におけるDUTに組み込まれたADCのミッシングコード有無判定方法の実行フローを示す図である。
【図2】ADCの入出力特性を示す図である。
【図3】ADCの出力コードを用いた微分非直線性誤差(DNL)の計算方法を示す図である。
【図4】DUTに組み込まれたADCのミッシングコード検査の原理と検査用入力波形(ランプ波)を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態におけるADCのミッシングコード有無判定方法で、個別ランプ波データから得たコードnの出現個数データに、同時に0とN1LSBi×2以上が現れ、かつこれらの和を取るとN1LSBΣ×2より小さくなる場合を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態におけるADCのミッシングコード有無判定方法で、コードnの出現個数和をとるとN1LSBΣ×2以上となるが、個別に見るとN1LSBi×2より小さい出現個数のデータが存在する場合を示す図である。
【図7】従来のDUTに組み込まれたADCのDNLを用いたミッシングコード有無判定方法の実行フローを示す図である。
【符号の説明】
【0056】
Ntotali 分解能D[bit]のDUTが、i回目の検査用ランプ波の入力に対して返すバイナリデータのうち、0と2D- 1を除く2D - 2とおりのデータの総数
N1LSBi i回目の検査用ランプ波の入力に対して得られるデータのうち、0と2D - 1を除く2D - 2とおりの各コードの出現回数の理論値
Nni i回目の検査用ランプ波の入力に対してカウントされるコードnの出現回数
DNL_B’ni i回目の検査用ランプ波の入力に対して得られたデータから求まるコードnのDNL
ABS(DNL_Bn) 検査用ランプ波をDUTにm回入力したとき、コードnについて得られるm個のDNL値(DNL_B’n1), (DNL_B’n2),…, (DNL_B’nm)の中から選び出された絶対値付き最小値
N1LSBΣ 複数回の検査用ランプ波入力に対して得られたディジタルデータから、コード0と2D- 1を除く全てのデータを用いて計算される、1コードあたりの出現回数の理論値
DNL_An 複数回入力された検査用ランプ波から得られたデータを入力回数で平均化して求められる、コードnのDNL
ABS(DNL_An) (DNL_An)の絶対値
ABS(DNLn) 本発明の方法を用いてコードnについて算出される絶対値付きDNL
Max_ABS(DNL) 本発明の方法を用いて、DUTに内蔵されるADCのコード0と2D- 1を除く2D - 2個のコードについて算出されるABS(DNLn))の中から最大値を選び、検査対象であるADCの最大絶対値付きDNLとしたもの
V0 ADCのゼロスケール電圧
V2D - 1 ADCのフルスケール電圧
Vn ADCの出力コードがnからn + 1へ遷移する時のアナログ入力電圧
n ADCのディジタル出力コード
Nn 従来の方法で、1回の検査用ランプ波の入力に対し、得られたコードnの出現個数
Ntotal 従来の方法で、分解能D[bit]のDUTが、検査用ランプ波の入力に対して返すバイナリデータのうち、0と2D - 1を除く2D - 2とおりのデータの総数
DNLn 従来の方法で、複数回の検査用ランプ波入力に対して得られたディジタルデータから、コード0と2D - 1を除く全てのデータを用いてコードnについて計算されるDNL
ABS(DNLn) 従来方法を用いてコードnについて算出される絶対値付きDNL
Max_ABS(DNL) 従来方法を用いて、DUTに内蔵されるADCのコード0と2D- 1を除く2D - 2個のコードについて算出されるABS(DNLn))の中から最大値を選び、検査対象であるADCの最大絶対値付きDNLとしたもの

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査素子に内蔵されたADコンバータのミッシングコードの有無を検査するADコンバータのミッシングコード検出方法であって、
前記被検査素子に検査用入力波形として複数回ランプ波を入力し、前記被検査素子が返すディジタルデータを取り込んだ後、
入力した全てのランプ波を用いて前記ADコンバータの各出力コードの出現個数を平均し、前記ADコンバータの各出力コードの出現個数の平均値より各コードの第1の絶対値付き微分非直線性誤差を求め、
個別のランプ波からも各コードの第2の絶対値付き微分非直線性誤差をランプ波の入力回数分求め、各コードについて前記ランプ波の入力回数分の第2の絶対値付き微分非直線性誤差の中から最小値を選び出して各コードの第3の絶対値付き微分非直線性誤差とし、
各コードについて前記第1の絶対値付き微分非直線性誤差と前記第3の絶対値付き微分非直線性誤差のうちの小さい方の値をそのコードの第4の絶対値付き微分非直線性誤差とし、
ゼロスケール値とフルスケール値を除く全コードについて計算された前記第4の絶対値付き微分非直線性誤差の最大値を前記被検査素子の最大絶対値付き微分非直線性誤差(Max_ABS(DNL))とし、Max_ABS(DNL)<1.00ならば、前記被検査素子はミッシングコード無しと判断するADコンバータのミッシングコード検出方法。
【請求項2】
請求項1記載のADコンバータのミッシングコード検出方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項3】
請求項2記載のプログラムが記録され、コンピュータが読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−319750(P2006−319750A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−141189(P2005−141189)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】