説明

微多孔膜ならびにかかる膜の製造方法および使用方法

本発明は、電池用セパレータフィルムとしての使用に好適な微多孔性ポリマー膜に関する。本発明はまた、かかる膜の製造方法、電池用セパレータとしてかかる膜を含有する電池、かかる電池の製造方法、およびかかる電池の使用方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2009年5月11日出願の米国特許仮出願第61/177,060号および2009年6月25日出願の欧州特許出願公開第091636985号;2009年3月30日出願の米国特許仮出願第61/164,824号および2009年5月25日出願の欧州特許出願公開第091609644号;2009年3月30日出願の米国特許仮出願第61/164,817号および2009年5月25日出願の欧州特許出願公開第091609651号;2009年3月30日出願の米国特許仮出願第61/164,833号および2009年5月25日出願の欧州特許出願公開第091609669号;2009年3月30日出願の米国特許仮出願第61/164,827号および2009年5月25日出願の欧州特許出願公開第091609677号;2009年6月24日出願の米国特許仮出願第61/220,094号および2009年8月19日出願の欧州特許出願公開第091681940号の優先権を主張し、それぞれの内容を全体として参照により組み入れるものとする。
【0002】
本発明は、多層微多孔膜であって、少なくとも1つの層が、115.0℃〜130.0℃の範囲のTmおよび5.0×10〜4.0×10のMwを有する第1のポリマーを含み、膜が、130.5℃以下のシャットダウン温度および170.0℃以上の破膜温度を有する多層微多孔膜に関する。また、本発明は、かかる多層微多孔膜により形成される電池用セパレータ、およびかかるセパレータを含む電池にも関する。本発明の別の態様は、多層微多孔膜の製造方法、セパレータとしてかかる膜を用いる電池の製造方法、およびかかる電池の使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
微多孔膜は、例えば、リチウム一次電池および二次電池、リチウムポリマー電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル亜鉛電池、銀亜鉛二次電池等における電池用セパレータとして使用することができる。微多孔膜を電池用セパレータ、特にリチウムイオン電池用セパレータとして使用する場合、膜の性能が電池の特性、生産性、および安全性に大きく影響する。したがって微多孔膜は、好適な機械的特性、耐熱性、透過性、寸法安定性、シャットダウン特性、メルトダウン特性等を有するべきである。電池は、電池の安全性を向上させるためには、比較的低いシャットダウン温度および比較的高い温度安定性を有することが望ましく、特に、製造、充電、再充電、過充電、使用、および/または保管中に高温にさらされる電池に関して必要とされている。セパレータの透過度を向上させると、通常は電池のパワーおよび容量の向上につながる。低いシャットダウン温度は、特に電池が過充電条件下で作動する場合に、電池の安全性の向上にとって望ましい。高温でセパレータが劣化すると電池電圧の低下を引き起こすため、セパレータの保存安定性の向上が望まれている。
【0004】
通常、ポリプロピレンから製造された多層微多孔膜セパレータは、メルトダウン温度が高い可能性がある。かかるセパレータは、比較的低いシャットダウン温度を得るために、ポリエチレンを含有してもよく、特に有意な量の末端不飽和基を有するポリエチレンを含んでいてもよい。例えば国際公開第97−23554A号および特開2002−338730号公報を参照されたい。典型的には、シャットダウン温度は、比較的遅い速度でセパレータの温度を上昇させてシャットダウン移行を正確に観察することにより求める。しかしながら電池においては、例えば過充電中に、急速に加熱が起こることがある。このような条件下では、急速加熱条件下でのかかる膜のシャットダウン応答は十分でない場合があり、セパレータシャットダウン温度を超える温度までセルが比較的速く加熱されてしまう場合がある。破膜温度に達する前にセパレータがシャットダウンできないと、電池が故障する可能性がある。
【0005】
したがって、比較的高い破膜特性を維持しながらもこれまで達成できた温度よりも低いシャットダウン温度を有するセパレータは、かかる急速加熱条件中の安全域を増大させることとなる。同様に、急速加熱条件下でのシャットダウン応答が向上したセパレータは有用となる。
【発明の概要】
【0006】
一態様においては、本発明は、複数の層からなる微多孔膜であって、少なくとも1つの層が、115.0℃〜130.0℃の範囲のTmおよび5.0×10〜4.0×10のMwを有する第1のポリマー、特にポリオレフィンを含み、膜が、130.5℃以下のシャットダウン温度および170.0℃以上の破膜温度を有する、微多孔膜に関する。
【0007】
別の実施形態においては、膜は、少なくとも第1のポリマーを含んでいる少なくとも第1の層および少なくともポリプロピレンを含んでいる第2の層を含んでいる。そのような実施形態の一つにおいては、第1のポリマーは、121.0〜125.0℃の範囲のTmを有するエチレン/α−オレフィンコポリマーであり、膜は、5.0×10以上のMwおよび150℃以上のTmを有するポリプロピレンを含む第2の層を少なくとも含んでいる。かかる実施形態のいくつかは、115.0℃〜130.0℃の範囲のTmを有するポリオレフィンまたはエチレン/α−オレフィンコポリマー等の第1のポリマーを含んでいる第3の層をさらに含んでおり、第2の層は第1の層と第3の層の間に位置している。
【0008】
別の実施形態においては、記載の微多孔膜は、擬似過充電条件下においてシャットダウン応答の向上を示す。例えばかかる膜のいくつかは、35℃/分の速度の加熱を施した際に、例えば150℃〜160℃といった175℃以下の温度にて1.0×10(オーム)(cm)の表面インピーダンスに達する。
【0009】
さらに別の実施形態においては、本発明は、130.5℃以下のシャットダウン温度および170.0℃以上の破膜温度を有する多層微多孔膜であって、膜が、
それぞれ第1および第3の層の重量を基準として、20.0重量%〜30.0重量%の、1.0×10〜7.0×10のMwを有するエチレン/α−オレフィンコポリマー、45.0重量%〜70.0重量%の、1.0×10以下のMwを有するポリエチレン、および0.0重量%〜35.0重量%の、1.0×10超のMwを有するポリエチレンを互いに独立して含む第1および第3の層、ならびに
20.0%〜80.0重量%の、1.1×10のMwおよび110.0J/g超の融解熱を有するポリプロピレン、0重量%〜10.0重量%の、1.0×10超のMwを有するポリエチレン、および20.0重量%〜70.0重量%の、1.0×10以下のMwを有するポリエチレン(重量パーセントは第2の層の重量が基準)を含む、第1の層と第3の層の間に位置する第2の層
を含む、多層微多孔膜を提供する。
【0010】
別の態様においては、本発明は、
少なくとも、115.0℃〜130.0℃の範囲のTmおよび5.0×10〜4.0×10の範囲のMwを有するポリマーを含む第1のポリマーと、少なくとも1種の第1の希釈剤とを混合する工程;
少なくとも、1.0×10未満のMwを有するポリプロピレンと、少なくとも第2の希釈剤とを混合する工程;
第1のポリエチレンを含有する第1の層、第3のポリエチレンを含有する第2の層、および第1の層と第3の層の間に位置しポリプロピレンを含有する第2の層を有する多層押出物をそこから形成する工程;ならびに
第1、第2、および第3の希釈剤の少なくとも一部を多層押出物から除去して膜を製造する微多孔膜の製造方法に関する。
【0011】
一実施形態においては、当該方法は、少なくとも、115.0℃〜130.0℃の範囲のTmおよび5.0×10〜4.0×10の範囲のMwを有するポリマーを含む第3のポリマーと、少なくとも1種の第3の希釈剤とを混合する工程をさらに含んでいる。別のそのような実施形態においては、第1のポリマーおよび第3のポリマーは、記載の特性を有する、エチレン/α−オレフィンコポリマー等のポリオレフィンを含んでいる。
【0012】
別の実施形態においては、当該方法は、第1および第3の層が、それぞれ第1および第3の層内のポリマーの全重量を基準として、3〜50重量%の、115.0℃〜130.0℃の範囲のTmおよび5.0×10〜4.0×10の範囲のMwを有するポリマー、0〜25.0重量%の、1.0×10超のMwを有するポリエチレン、40〜97重量%の、1.0×10以下のMwを有するポリエチレンを含有し、第2の層が、第2の層内のポリオレフィンの全重量を基準として、15〜40重量%のポリプロピレン、ならびに0〜10重量%の、独立して選択される1.0×10超のMwを有するポリエチレン、および50〜85重量%の、1.0×10以下のMwを有するポリエチレンを含有し、第1、第2、および第3の希釈剤が同じである、多層微多孔膜を提供することを含む。
【0013】
別の実施形態においては、本発明は、前述のプロセスで製造される微多孔膜に関する。
【0014】
さらに別の実施形態においては、本発明は、負極と、正極と、電解質と、前述のいずれかの実施形態の微多孔膜を含む、負極と正極の間に位置する少なくとも1つの電池用セパレータとを含む電池に関する。電池は、例えばリチウムイオン一次電池または二次電池であってもよい。電池は、例えば電動ノコギリもしくはドリル等の電動工具用、または電気自動車もしくはハイブリッド電気自動車用の電力源として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】35℃/分の速度で加熱されている本発明の実施形態を含んでいるセルと乾式法で作製された市販のセパレータを含んでいるセルの、1.0×10(オーム)(cm)の交流インピーダンスに達する温度を比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書に記載の多層微多孔膜セパレータは、従来の多層膜セパレータに比べて安全域が拡大している。急速加熱条件下におけるセパレータのインピーダンスによって測定されるシャットダウンが比較的速いセパレータを提供することにより安全性はさらに向上し得る。
【0017】
ある実施形態においては、多層微多孔膜は、少なくとも2つの層を含む。膜の層の一方は、115.0℃〜130.0℃の範囲のTmおよび5.0×10〜4.0×10のMwを有するポリマーを含んでいる。もう一方の層は、例えばポリプロピレン等のより高い融点のポリマーを含んでもよい。得られる膜は、130.5℃以下のシャットダウン温度および170.0℃以上の破膜温度を有する。一実施形態においては、一方の層は、選択された範囲内のTmおよびMwを有するポリオレフィン、特にエチレン/α−オレフィンコポリマーを含み、もう一方の層は、5.0×10以上のMwおよび150℃以上のTmを有するポリプロピレンを少なくとも含んでいる。
【0018】
ある特定の実施形態においては、多層微多孔膜は、少なくとも1つの層が115.0℃〜130.0℃の範囲のTmを有するポリマーを含有する、少なくとも3つの層を含んでいる。そのような実施形態の一つにおいては、膜は、第1および第3の層ならびにその間の第2の層を含んでおり、第1および第3の層は、115.0℃〜130.0℃の範囲のTmおよび5.0×10〜4.0×10のMwを有するポリマーを含み、第2の層は、ポリプロピレンを含む。そのような実施形態においては、第1および第3の層によりシャットダウン性能が向上する一方で、第2の層により耐破膜特性が得られる。
【0019】
本発明の実施形態においては、115.0℃〜130.0℃の範囲のTmおよび5.0×10〜4.0×10のMwを有するポリマーは狭い融解ピーク幅を有しており、比較的高い透気度の膜の製造を可能にする。
【0020】
三層膜の共押出膜に関して膜を説明するが、それに限定されるものではなく、またこの説明は、二層膜または積層等の他の方法で製造される膜が適用範囲にあることを除外することを意図するものではない。
[1]微多孔膜の組成および構造
【0021】
ある実施形態においては、微多孔膜は、
115.0℃〜130.0℃の範囲のTmおよび5.0×10〜4.0×10の重量平均分子量(「Mw」)を有するポリマーを少なくとも含んでいるポリマー組成物P1を含む第1の層、115.0℃〜130.0℃の範囲のTmおよび5.0×10〜4.0×10のMwを有するポリマーを少なくとも含んでいるポリマー組成物P3を含む第3の層、ならびにポリマー組成物P2を含み第1の層と第3の層の間に位置する第2の層を含む。第2の層の厚さは、通常は第1、第2、および第3の層を合わせた厚さの約4%〜約21%、約5%〜約15%、または7%〜約10%の範囲である。ある実施形態においては、第1および第3の層は1つまたは複数のポリエチレンを大量に含み、一方で第2の層は1つまたは複数のポリエチレンとともに1つまたは複数のポリプロピレンを含んでいる。
【0022】
別の実施形態においては、微多孔膜は、
115.0℃〜130.0℃の範囲のTmおよび5.0×10〜4.0×10の範囲のMwを有するポリエチレンホモポリマーまたはエチレン/α−オレフィンコポリマーを含むP1を含む第1の層、115.0℃〜130.0℃の範囲のTmおよび5.0×10〜4.0×10の範囲のMwを有するポリエチレンホモポリマーまたはエチレン/α−オレフィンコポリマーを含むP3を含む第3の層を含む。P1およびP3は、所望により、1.0×10以下のMwおよび131.0℃以上の融解ピークを有するポリエチレンもまた含んでいてもよい。さらにP1およびP3は、1.0×10超のMwを有するポリエチレンを含んでいてもよい。得られるP1およびP3組成物のMwは重要ではなく、例えば約1.0×10〜約1.0×10、約1.0×10〜約5.0×10、または約2.0×10〜約3.0×10の範囲であってもよい。かかる実施形態は、5.0×10以上のMwおよび150℃以上のTmを有するポリプロピレンを含むP2を含む第2の層を含んでいる。P2は、所望により、1.0×10以下のMwを有し典型的には131.0℃以上の融解ピークを有するポリエチレンもまた含んでいてもよい。さらにP2は、1.0×10超のMwを有するポリエチレンを含んでいてもよい。第2の層は第1の層と第3の層の間に位置する。第2の層の厚さは、通常は第1、第2、および第3の層を合わせた厚さの約4%〜約21%、約5%〜約15%、または7%〜約10%の範囲である。ある実施形態においては、第1および第3の層は1つまたは複数のポリエチレンを大量に含み、一方で第2の層は1つまたは複数のポリエチレンとともに1つまたは複数のポリプロピレンを含んでいる。
【0023】
ある実施形態においては、微多孔膜は3つの層を含み、そのうちの少なくとも1つが、115.0℃〜130.0℃の範囲のTmおよび5.0×10〜4.0×10のMwを有するポリマーを含み、第1および第3の層(「表面」層または「スキン」層とも呼ぶ)が膜の外層を構成し、第2の層が第1の層と第3の層の間に位置する中間層(または「コア」層)である。関連する実施形態においては、微多孔膜は、さらなる層、すなわち、2つのスキン層およびコア層以外の層を含んでもよい。例えば、膜はさらなるコア層を有してもよい。すなわち、第1および第2の層の上に1つまたは複数のさらなる層があってもよいし、第1および第2の層に1つまたは複数の層が塗布されていてもよい。必須ではないが、コア層は、例えばA/B/Aといった配置で層が対面で積み重ねられたスキン層の1つまたは複数と平面接触していてもよい。膜がポリオレフィンを含有する場合、膜を「ポリオレフィン膜」と呼んでもよい。膜はポリオレフィンのみを含有してもよいが、これは必須ではなく、ポリオレフィン膜が、ポリオレフィン、およびポリオレフィンではない材料を含有することは本発明の範囲内である。ある実施形態においては、膜はポリオレフィンからなるか、または本質的にポリオレフィンからなる。ある特定の実施形態においては、P1およびP3は、互いに独立して、ポリエチレンからなるか、または本質的にポリエチレンからなり、P2は、ポリプロピレンおよびポリエチレンからなるか、または本質的にポリプロピレンおよびポリエチレンからなる。
【0024】
必須ではないが、第1および第3の層は、厚さおよび組成が同じであってもよい。第1および第3の層を合わせた厚さは、所望により多層微多孔膜の全厚さの79%〜96%の範囲であってもよい。例えばその厚さは、80%〜90%、または85%〜90%の範囲であってもよい。第1の層または第3の層内における、115.0℃〜130.0℃の範囲のTmおよび5.0×10〜4.0×10の範囲のMwを有するポリマーの量は、それぞれ第1または第3の層の重量を基準として、3.0〜50.0重量%、10.0〜40.0重量%、または15.0〜30.0重量%の範囲になるように、独立して選択することができる。第2の層のP2内のポリプロピレンの量は、第2の層の重量を基準として、通常は40.0重量%以下、5.0〜35.0重量%、または10.0〜30.0重量%である。第1および第3の層は、それぞれ第1の層または第3の層の重量を基準として、40.0重量%〜97.0重量%の、1.0×10以下のMwを有するポリエチレン、および0重量%〜25.0重量%の、1.0×10超のMwを有するポリエチレンをそれぞれ独立してさらに含み、第2の層はポリエチレンをさらに含む。かかる実施形態のいくつかにおいては、第2の層は、15.0〜40.0重量%のポリプロピレン、0重量%〜10.0重量%の、1.0×10超のMwを有するポリエチレン、および50.0重量%〜85.0重量%の、1.0×10以下のMwを有するポリエチレンを含む(重量パーセントは第2の層の重量が基準)。
[2]多層微多孔膜の製造に用いる材料
【0025】
ポリマー組成物P1、P2、およびP3は、1つまたは複数のポリマー、特にポリオレフィン、例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレンコポリマーを含むポリエチレン、ポリプロピレンを含む。本明細書で用いるポリエチレンという用語は、エチレン由来の繰返し単位を含有するポリオレフィンホモポリマーまたはコポリマーを指す。このようなポリエチレンとしては、限定するものではないが、ポリエチレンホモポリマー、および/または繰返し単位の少なくとも85%(個数基準)がエチレン由来であるコポリマーが挙げられる。本明細書で用いるポリプロピレンという用語は、プロピレン由来の繰返し単位を含有するポリオレフィンホモポリマーまたはコポリマーを指す。このようなポリプロピレンとしては、限定するものではないが、ポリプロピレンホモポリマー、および/または繰返し単位の少なくとも85%(個数基準)がプロピレン由来であるコポリマーが挙げられる。このようなポリエチレンおよびポリプロピレンは、それぞれ、ポリエチレンもしくはポリプロピレン単独物の混合物またはリアクタブレンドであってもよい。
【0026】
一般的にP1および/またはP3は、115.0℃〜130.0℃の範囲のTmおよび5.0×10〜4.0×10の範囲のMwを有する第1のポリマーを含む。Tmが115.0℃以下の場合、膜の透過性を低下させずに、同時に熱的に安定な膜(例えば熱収縮率が小さいもの)を製造することがより困難である。一般的に、熱的に安定な膜の製造には115.0℃超の熱処理温度(例えば熱セット温度)が用いられ、熱セット温度がポリマーのTm以上の場合は膜の透過度が低下する。第1のポリマーのTmが131.0℃超の場合、高い透過性と低いシャットダウン温度の両方を有する微多孔膜を製造することがより困難である。第1のポリマーのMwが5.0×10を有意に下回るかまたはMwが4.0×10を有意に上回ると、Tmが例えば125℃〜130℃の範囲またはそれ以上といった比較的高い場合であっても、良好な透気度を有する微多孔膜を製造することがより困難である、ということが分かっている。
【0027】
ある実施形態においては、第1のポリマーは、ポリエチレンホモポリマーまたはコポリマーを含む。いくつかの有用なポリエチレンホモポリマーおよびコポリマーは、8.0×10〜2.0×10の範囲のMwを有する。一実施形態においては、ポリエチレンホモポリマーまたはコポリマーは、1.0×10〜1.0×10または1.0×10〜7.0×10の範囲のMwを有する。所望によりエチレン系ポリマーは、例えば1.5〜20、約1.5〜約5、または約1.8〜約3.5の範囲といった、100以下の分子量分布(「MWD」:Mw/Mnと定義される)を有する。
【0028】
ある実施形態においては、ポリエチレンコポリマーは、エチレンとα−オレフィン等のコモノマーとのコポリマーを含む。コモノマーは、一般的にエチレンの量と比べると比較的少量で存在する。例えばコモノマー量は、コポリマー100モル%を基準として通常は10モル%未満、例えば1.0%〜5.0モル%である。コモノマーは、例えば、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、スチレン、または他のモノマーの1つまたは複数であってもよい。かかるポリマーまたはコポリマーは、シングルサイト触媒を含むいずれかの好適な触媒を用いて製造することができる。例えばポリマーは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,084,534号に開示されている方法(例えば、当該特許の実施例27および41に開示されている方法)に従って製造することができる。
【0029】
ある実施形態においては、ポリエチレンホモポリマーまたはコポリマーの量は、例えば、膜の製造に用いるポリマーの全重量を基準として、例えば約1.0重量%〜30.0重量%または1.0重量%〜20.0重量%、例えば約4.0重量%〜17.0重量%または約8.0重量%〜約13.0重量%といった、1.0重量%以上であってもよい。
【0030】
Tmは、JIS K7122に従って次のようにして測定する。第1のポリエチレンの試料を、210℃で溶融プレスされる厚さ0.5mmの成形物として作製し、次いで約25℃の温度にさらしながら約24時間保存する。次いで試料を、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製Pyris Diamond DSC)の試料ホルダーに入れ、窒素雰囲気中にて25℃の温度にさらす。次いで試料を、230℃の温度に達するまで10℃/分の速度で上昇する温度にさらす(第1の加熱サイクル)。試料を230℃の温度に1分間さらし、次いで30℃の温度に達するまで10℃/分の速度で低下する温度にさらす。試料を30℃の温度に1分間さらし、次いで230℃の温度に達するまで10℃/分の速度で上昇する温度にさらす(第2の加熱サイクル)。DSCによって、第2の加熱サイクル中に試料へと流れる熱の量が記録される。Tmは、30℃〜200℃の温度範囲内の、DSCによって記録される試料への熱流量が最大の時の温度である。ポリエチレンは、主ピークに隣接する副融解ピーク、および/または溶融終点転移(end-of-melt transition)を示すことがあるが、本明細書においては、そのような副融解ピークはまとめて一つの融点と見なし、これらのピークの中で最も高いものをTmと見なす。
【0031】
ある実施形態においては、ポリエチレンホモポリマーまたはコポリマーは、例えば120.0℃〜126.0℃、120.5℃〜124.5℃、または121.0℃〜124.0℃といった、120.0℃〜128.0℃の範囲のTmを有する。別の実施形態においては、ポリエチレンホモポリマーまたはコポリマーは、122.0℃〜126.0℃の範囲のTmを有する。
【0032】
P1、P2、および/またはP3は、130℃超のTm、約2.0×10〜約0.95×10の範囲のMw、約2〜約100の範囲のMWDを有する高密度ポリエチレン(HDPE)もまた含んでいていもよい。特定のそのようなHDPEは、炭素原子10,000個当たり0.20未満の末端不飽和基量を有してもよい。ある実施形態においては、例えば約4×10〜約6×10といった、約2.0×10〜約9×10の範囲のMw、および約3〜約10のMWDを有するHDPEが選択される。ある実施形態においては、炭素原子10,000個当たり0.1以下、または炭素原子10,000個当たり0.10以下、例えば炭素原子10,000個当たり0.05〜0.14の範囲(例えば、測定の検出限界よりも下)の末端不飽和基量を有するHDPEが選択される。
【0033】
あるいは、P1、P2、および/またはP3は、130℃超のTm、約2.0×10〜約0.95×10の範囲のMw、約2〜約100の範囲のMWDを有し、かつ炭素原子10,000個当たり0.20以上の末端不飽和基量を有するHDPEを含んでいてもよい。ある実施形態においては、HDPEは、炭素原子10,000個当たり0.30以上、または炭素原子10,000個当たり0.50以上、例えば炭素原子10,000個当たり0.7〜10の範囲の末端不飽和基量を有する。本発明で使用するHDPEの非限定的な例として、例えば約7.0×10といった、約3.0×10〜約7.0×10の範囲のMw、および約4〜約50のMWDを有するものがある。
【0034】
本発明において有用なHDPEは、ポリエチレンホモポリマー、または例えば、少量、例えば5モル%以下の1つまたは複数のα−オレフィンコモノマーを含有するようなコポリマーであってもよい。α−オレフィンコモノマーは、エチレンではなく、好ましくは、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、もしくはスチレン、またはそれらの組合せである。ポリマーは、例えばチーグラー・ナッタ重合触媒またはシングルサイト重合触媒を用いるプロセスで製造することができるが、これは必須ではない。末端不飽和基量は、例えばPCT特許公開公報第WO97/23554号に記載の手順に従って測定することができる。
【0035】
いくつかの実施形態においては、P1、P2、および/またはP3は、約1.0×10〜約5.0×10のMwおよび約2〜約100のMWDを有する超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)もまた含んでいていもよい。本発明で使用するそのようなUHMWPEの非限定的な例としては、例えば約2.0×10といった、約1.0×10〜約3.0×10のMw、および約2〜約50、好ましくは約4〜15のMWDを有するものがある。本発明において有用なUHMWPEとしては、ポリエチレンホモポリマー、または例えば、少量、例えば約5モル%以下の1つまたは複数のα−オレフィンコモノマーを含有するコポリマー等のコポリマーが挙げられる。α−オレフィンコモノマーは、エチレンではなく、例えば、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、もしくはスチレン、またはそれらの組合せであってもよい。かかるコポリマーは、シングルサイト触媒、チーグラー・ナッタ触媒を用いて、または他の重合法によって製造することができる。
【0036】
P2は通常は、ポリプロピレン、好ましくは約5.0×10超、典型的には1.0×10超のMwを有するポリプロピレンを含んでいる。特定の実施形態においては、ポリプロピレンは約7.5×10〜約1.5×10の範囲のMwを有する。ある実施形態においては、ポリプロピレンは、例えば約1.5〜約50、もしくは約2〜約6といった、約1〜約100の範囲のMWD;および/または例えば112J/g〜120J/g、もしくは114J/g〜116J/gといった、110J/g以上の融解熱(「ΔHm」)を有する。ΔHmは、PCT特許公開第WO2007/132942号に記載のように、JIS K7122に従って示差走査熱量測定を用いて測定する。ポリプロピレンは、例えば、(i)プロピレンホモポリマーまたは(ii)プロピレンとコモノマーのコポリマーの1つまたは複数であってもよい。コポリマーは、ランダムコポリマーまたはブロックコポリマーであってもよい。コモノマーは、例えば、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、およびスチレン等のα−オレフィン;ならびにブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン等のジオレフィンの1つまたは複数であってもよい。コモノマーを使用する場合は、例えばコポリマー100モル%を基準として10モル%以下といった少量で存在する。所望により、ポリプロピレンは以下の特性の1つまたは複数を有する:(i)ポリプロピレンは、アイソタクチックである;(ii)ポリプロピレンは、230℃の温度および25秒−1のひずみ速度において少なくとも約50,000Pa秒の伸張粘度を有する;(iii)ポリプロピレンは、少なくとも約160℃の融解ピーク(第二融解)を有する;かつ/または(iv)ポリプロピレンは、約230℃の温度および25秒−1のひずみ速度において測定した場合に少なくとも約15のトルートン比を有する。
【0037】
ポリエチレンのMwおよびMnは、示差屈折計(DRI)を備えた高温サイズ排除クロマトグラフ、すなわち「SEC」(GPC PL 220、ポリマーラボラトリーズ社)を用いて決定する。3本のPLgel Mixed-Bカラム(ポリマーラボラトリーズ社製)を用いる。公称流量は0.5cm/分であり、公称注入量は300μLである。トランスファーライン、カラム、およびDRI検出器が、145℃に維持されたオーブン内に含まれていた。測定は、"Macromolecules, Vol. 34, No. 19, pp. 6812-6820 (2001)"に開示されている手順に従って行う。
【0038】
使用するGPC溶媒は、約1000ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有する、濾過済みの、アルドリッチ社製の、試薬グレードの1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB)である。TCBを、SECに導入する前にオンライン脱気装置で脱気する。ポリマー溶液を、乾燥ポリマーをガラス容器に入れ、所望の量の上記TCB溶媒を加え、次いでこの混合物を160℃で継続的に撹拌しながら約2時間加熱することにより調製する。UHMWPE溶液の濃度は0.25〜0.75mg/mlである。試料溶液は、GPCに注入する前に、モデルSP260 Sample Prep Station(ポリマーラボラトリーズ社製)を用いて2μmフィルターでオフラインろ過する。
【0039】
Mpが約580〜約10,000,000の範囲の17種のそれぞれのポリスチレン標準を用いて作成した検量線でカラムセットの分離効率を較正し、これを検量線の作成に用いる。ポリスチレン標準はポリマーラボラトリーズ社(マサチューセッツ州アマースト)より入手する。各PS標準についてDRI信号のピークにおける保持容量を記録し、このデータセットを二次多項式に当てはめることによって、検量線(logMp対保持容量)を作成する。ウェーブメトリクス社(Wave Metrics, Inc.)製IGOR Proを用いて試料を分析する。
【0040】
ポリプロピレンのMwおよびMnは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、PCT特許公開第WO2007/132942号に開示されている方法で決定する。
多層微多孔膜の製造に用いる希釈剤
【0041】
第1、第2、および第3の希釈剤は、例えば、ノナン、デカン、デカリン、p−キシレン、ウンデカン、ドデカン等の脂肪族、脂環式、または芳香族炭化水素の1つまたは複数からなるもの;流動パラフィン;および前述の炭化水素と同程度の沸点を有する鉱油蒸留物であってもよい。必須ではないが、第1、第2、および第3の希釈剤は同じであってもよい。ある実施形態においては、希釈剤は、押出物の製造に用いるポリマー用の不揮発性液体溶媒である。希釈剤の粘度は、25℃の温度で測定した場合、通常は約30cSt〜約500cSt、または約30cSt〜約200cStの範囲である。粘度の選択は特に重要なことではないが、25℃における粘度が約30cSt未満である場合は、ポリマーと希釈剤との混合物が泡立つことがあり、その結果配合が困難になる。一方で、粘度が約500cStを超えた場合は、押出物から溶媒を除去するのがより困難になり得る。
【0042】
ある実施形態においては、押出物中の希釈剤の総量は、例えば、押出物の重量を基準として約25重量%〜約80重量%、または60重量%〜80重量%の範囲であってもよく、残りが押出物の製造に用いるポリマーとなる。他の実施形態においては、押出物は、約65重量%〜80重量%、または70重量%〜75重量%の範囲の量の希釈剤を含む。
【0043】
押出物および微多孔膜は、無機種(ケイ素および/またはアルミニウム原子を含有する種等)および/またはPCT特許公開公報第WO2007/132942号および同第WO2008/016174号に記載のポリマー等の耐熱性ポリマーを含有してもよいが、これらは必須ではない。ある実施形態においては、押出物および膜は、かかる物質を実質的に含まない。この文脈における実質的に含まないとは、微多孔膜中のかかる物質の量が、押出物の製造に用いるポリマーの全重量を基準として1重量%未満であることを意味する。
【0044】
一般的に、最終の微多孔膜は押出物の製造に用いるポリマーを含む。処理中に導入する希釈剤または他の種の少量もまた、一般的に微多孔性ポリオレフィン膜の重量を基準として1重量%未満の量で存在してもよい。処理中にポリマーの分子量の低下が少量発生することがあるが、これは許容可能なものである。ある実施形態においては、処理中に分子量の低下があったとしても、膜中のポリマーのMWDの値と押出し前のポリマーのMWDとの違いは、例えばわずか約10%、わずか約1%、またはわずか約0.1%にしかならない。
[3]多層微多孔性ポリオレフィン膜の製造方法
【0045】
ある実施形態においては、多層微多孔膜は、微多孔膜の外層を構成する第1および第3の微多孔層ならびに第1の層と第3の層の間に位置する第2の層を含む。第1の層はP1から製造され、第2の層はP2から製造され、第3の層はP3から製造される。
【0046】
多層膜の製造方法の1つは、(a)少なくともP1と少なくとも1種の第1の希釈剤とを混合する工程であって、P1は115.0℃〜130.0℃の範囲のTmおよび5.0×10〜4.0×10の範囲のMwを有する第1のポリマーを少なくとも含み、(b)少なくともP2と少なくとも1種類の第2の希釈剤とを混合する工程を含み、この時、P2は好ましくはポリプロピレンを含んでいることを特徴とする。三層膜が所望である場合は、かかる方法は、少なくともP3と少なくとも第3の希釈剤とを混合する工程を含み、P3は115.0℃〜130.0℃の範囲のTmおよび5.0×10〜4.0×10の範囲のMwを有する第1のポリマーを少なくとも含むことを特徴とする。
【0047】
当該方法は、少なくともP2と第2の希釈剤とを混合したものの一部を共押出ししながら、P1と第1の希釈剤とを混合したものの少なくとも一部を少なくとも1つのダイを通して共押出しして、それぞれP1およびP2を含む第1および第2の層を有する多層押出物を形成することもまた含んでいる。三層膜を形成する場合、P3と第3の希釈剤とを混合したものの少なくとも一部を少なくとも1つのダイを通して共押出しして、P2を含む第2の層が第1の層と第3の層の間に位置するように第3の層を形成する。所望により、115.0℃〜130.0℃の範囲のTmおよび5.0×10〜4.0×10の範囲のMwを有する第1のポリマーの総量は、P1の重量を基準として1.0〜50重量%の範囲である。
【0048】
当該方法は、第1、第2、および第3の希釈剤の少なくとも一部を押出物から除去して多層微多孔膜を製造することをさらに含んでいる。膜の横(TD)方向への大きさは第1の乾燥幅と呼ぶことができ、膜の機械方向(MD)への大きさは第1の乾燥長さと呼ぶことができる。所望によりこの方法は、乾燥押出物を、第1の乾燥長さは変えずに、第1の乾燥幅から、約1.1〜約1.6の範囲の倍率で第1の乾燥幅より大きい第2の乾燥幅へ横方向に延伸して延伸膜を作製することをさらに含んでもよい。延伸は、乾燥押出物を、例えば118℃〜129℃の範囲といった、116℃〜130℃の温度にさらしながら行ってもよい。
【0049】
微多孔膜の製造において一般的に有用である追加の工程を任意に用いてもよい。例えば、任意の押出物冷却工程、任意の押出物延伸工程、任意の熱溶媒処理工程、任意の熱セット工程、任意の電離放射線による架橋工程、および任意の親水性処理工程等、全てPCT特許公開第WO2007/132942号および同第WO2008/016174号に記載されているが、これらを所望により行ってもよい。これらの任意の工程の数も順序も重要ではない。
(1)および(2)ポリマーと希釈剤との混合
【0050】
上記のポリマーは、例えば、ドライブレンドまたは溶融混練により混合することができ、次にこの混合物を適切な希釈剤(または希釈剤の混合物)と混合してポリマーと希釈剤との混合物を製造することができる。あるいは、ポリマー(1つまたは複数)と希釈剤とは単一の工程で混合することもできる。第1、第2、および第3の希釈剤は、同じであっても異なっていてもよく、例えば同じまたは異なる流動パラフィンであってもよい。希釈剤がポリマーの1つまたは複数に対する溶媒である場合、混合物はポリマー溶液と呼ぶことができる。混合物は、1種または複数の酸化防止剤等の添加剤を含有してもよい。ある実施形態においては、かかる添加剤の量は、ポリマー溶液の重量を基準として1重量%を超えることはない。混合条件、押出し条件等の選択は、例えばPCT特許公開公報第WO2008/016174号に開示されているものと同じであってもよい。
(3)押出し
【0051】
ある実施形態においては、混合したポリマーと希釈剤とを押出機からダイへと導く。
【0052】
押出物または冷却押出物(後述)は、延伸工程の後に、望ましい厚さの最終膜を製造するのに適切な厚さを有するべきである。例えば押出物は、約0.2mm〜2mm、または1.2mm〜1.8mmの範囲の厚さを有してもよい。この押出しを行うための処理条件は、例えばPCT特許公開第WO2007/132942号および同第WO2008/016174号に開示されているものと同じであってもよい。MDは、押出物がダイから製造される方向と定義される。TDは、MDおよび押出物の厚さ方向の両方に対して垂直な方向と定義される。押出物はダイから連続的に製造することができるし、または、例えばバッチ処理の場合のように不連続的に製造することもできる。TDおよびMDの定義は、バッチ処理および連続処理のどちらにおいても同じである。押出物は(a)P1(ならびに所望によりHDPEおよび/またはUHMWPE)と第1の希釈剤とを混合したもの、(b)P2(ならびに所望によりHDPEおよび/またはUHMWPE)と第2の希釈剤、および(c)P3(ならびに所望によりHDPEおよび/またはUHMWPE)と第3の希釈剤を共押出しすることにより製造することができるが、これは必須ではない。積層法等の、前述の組成の層状押出物を製造することができるいずれの方法を用いてもよい。積層法を用いて膜を製造する場合、希釈剤(1種または複数)は、積層法の前または後に除去してもよい。
任意の冷却
【0053】
所望により、多層押出物を15℃〜25℃の範囲の温度にさらして冷却押出物を形成することができる。冷却速度は特に重要ではない。例えば押出物は、押出物の温度(冷却した温度)が押出物のゲル化温度とほぼ同じ(またはそれ以下)になるまで、最低でも約30℃/分の冷却速度で冷却してもよい。冷却の処理条件は、例えばPCT特許公開第WO2008/016174号および同第WO2007/132942号に開示されているものと同じであってもよい。ある実施形態においては、冷却押出物は、1.2mm〜1.8mm、または1.3mm〜1.7mmの範囲の厚さを有する。
任意の延伸
【0054】
所望により、押出物または冷却押出物を少なくとも1つの方向(例えば、MDまたはTD等の少なくとも1つの平面方向)に延伸して延伸押出物を製造することができる。例えば押出物を、例えば112℃〜118℃、または113℃〜115℃といった、約110℃〜120℃の範囲の温度にさらしながら、横方向および機械方向に同時に4〜6の範囲の倍率に延伸することができる。好適な延伸方法は、例えばPCT特許公開第WO2008/016174号および同第WO2007/13294号に記載されている。必須ではないが、MDおよびTDの倍率は同じであってもよい。ある実施形態においては、延伸倍率はMDおよびTDにおいて5に等しく、延伸温度は115.0℃である。別の実施形態においては、延伸倍率はMDおよびTDにおいて5に等しく、延伸温度は113.0℃である。
(4)希釈剤の除去
【0055】
希釈剤の少なくとも一部を延伸押出物から除去(または置換)して膜を形成する。例えばPCT特許公開第WO2008/016174号および同第WO2007/132942号に記載のように、置換(または「洗浄」)溶媒を用いて希釈剤を除去(洗浄、または置換)してもよい。全ての希釈剤を延伸押出物から除去する必要はないが、希釈剤を除去すると最終膜の空孔率が増加するのでそうすることが望ましいと言える。
【0056】
ある実施形態においては、洗浄溶媒等の残留したいずれかの揮発性種の少なくとも一部を、希釈剤除去後のいずれかの時点において膜から除去してもよい。加熱乾燥、風乾(空気を動かすこと)等の従来の方法を含む、洗浄溶媒を除去することが可能ないずれの方法を用いてもよい。洗浄溶媒等の揮発性種を除去するための処理条件は、例えばPCT特許公開公報第WO2008/016174号および同第WO2007/132942号に開示されているものと同じであってもよい。
(5)任意の膜の延伸(ドライ延伸)
【0057】
膜を延伸して延伸膜を製造することができる。この工程の開始時において、膜は、MD方向の最初の大きさ(第1の乾燥長さ(dry length))およびTD方向の最初の大きさ(第1の乾燥幅(dry width))である。膜を、第1の乾燥長さは変えずに、第1の乾燥幅から、約1.1〜約1.6(例えば、1.20〜1.40)倍に第1の乾燥幅より大きい第2の乾燥幅へTDに延伸する。延伸は、乾燥後の押出物を、例えば118℃〜129℃または118℃〜125℃といった、116℃〜130℃の範囲の温度にさらしながら行ってもよい。ある実施形態においては、延伸は118.5℃〜119.0℃で行う。ドライ延伸は、通常は乾燥後の膜を例えばおよそTcd−30℃〜Tmの範囲といったTm以下の温度にさらしながら行うが、この工程に適切なTmは、使用するポリマーの中で最も低いTmを有するポリマーのTmである。膜が、ポリエチレンを含む第1および第3の層と、第1の層と第3の層の間に位置するポリプロピレンを含む第2の層とを有する多層膜である実施形態においては、通常は、例えば約80℃〜約132℃、例えば125℃〜132℃または128℃〜131℃といった、約70〜約135℃の範囲の温度にさらして膜に延伸が施される。
【0058】
本明細書で用いる用語「第1の乾燥幅」は、乾燥押出物の、ドライ延伸開始前における横方向の大きさを指す。用語「第1の乾燥長さ」は、乾燥後の押出物の、ドライ延伸開始前における機械方向の大きさを指す。
【0059】
延伸速度は、TDにおいては好ましくは1%/秒以上である。延伸速度は、好ましくは2%/秒以上、より好ましくは3%/秒以上、例えば2%/秒〜10%/秒の範囲である。特に重要ではないが、延伸速度の上限は通常は約50%/秒である。
(6)任意の制御された幅の縮小
【0060】
ドライ延伸に続き、乾燥後の膜に、第2の乾燥幅から第3の幅へ制御して幅を縮めるが、第3の乾燥幅は、第1の乾燥幅から第1の乾燥幅の約1.3倍の範囲である。ある実施形態においては、それぞれ第1の幅に対して、第2の乾燥幅は1.4倍広く、第3の幅は1.2倍広い。一般的に、幅の縮小は、膜を、Tcd−30℃以上であるがTmよりは低い温度にさらしながら行う。この工程に適切なTmは、使用するポリマーの中で最も低いTmを有するポリマーのTmである。例えば、幅の縮小中に、膜を、例えば約116℃〜約132℃、例えば約118℃〜約119℃といった、約70℃〜約135℃の範囲の温度にさらしてもよい。ある実施形態においては、膜幅の縮小は、膜をTmよりも低い温度にさらしながら行う。ある実施形態においては、第3の乾燥幅は、第1の乾燥幅の1.0倍〜第1の乾燥幅の約1.6倍、例えば1.2〜1.5倍の範囲である。
【0061】
制御された幅の縮小中に、膜を、TD延伸中に膜がさらされる温度以上の温度にさらすと、最終膜の耐熱収縮性がより高くなると考えられる。
任意の熱セット
【0062】
所望により、希釈剤の除去後、例えばドライ延伸の後、制御された幅の収縮の後、またはその両方の後、一回または複数回、膜を熱的に処理(熱セット)する。熱固定により、結晶が安定化して膜中に均一なラメラ層が形成されると考えられる。ある実施形態においては、熱セットは、TcdからTmの範囲の温度に膜をさらしながら行われるが、この工程に適切なTmは、使用するポリマーの中で最も低いTmを有するポリマーのTmであり、例えば、例えば約116℃〜約125℃、または約118.5℃〜約119.0℃といった、約100℃〜約135℃の範囲の温度である。通常、熱固定は、膜中に均一なラメラ層を形成するのに十分な時間、例えば1〜600秒の範囲の時間行う。ある実施形態においては、熱セットは、一般的な熱セット「熱固定」条件下で実施する。用語「熱固定」は、例えば熱セット中に膜の外周をテンタークリップで保持すること等によって膜の長さおよび幅をほぼ一定に維持しながら行う熱セットをいう。
【0063】
所望により、熱セット工程の後にアニーリング処理を行ってもよい。アニーリングは、膜には荷重をかけない加熱処理であり、例えばベルトコンベアを備えた加熱室またはエアフローティング型(air-floating-type)加熱室等で行うことができる。アニーリングは、熱セットの後にテンターを緩めた状態で連続的に行うこともできる。アニーリング中、膜を、例えば約60℃〜およそTm−5℃の範囲といった、Tmまたはそれ以下の範囲の温度にさらしてもよい。アニーリングによって微多孔膜の透過度および強度が向上すると考えられる。
【0064】
必要に応じて、任意の、熱ローラ処理、熱溶媒処理、架橋処理、親水性処理、およびコーティング処理を、例えばPCT特許公開公報第WO2008/016174号に記載されているように行ってもよい。
【0065】
所望により、熱セットの前、間、または後にアニーリング処理を行ってもよい。アニーリングは、膜には負荷をかけない加熱処理であり、例えば、ベルトコンベアを備えた加熱室またはエアフローティング型加熱室で行うことができる。アニーリングは、例えば熱セットの後にテンターを緩めた状態で連続的に行うことができる。アニーリング中に膜がさらされる温度(アニーリング温度)は、例えば約116℃〜125℃の範囲であってもよい。アニーリングによって微多孔膜の熱収縮特性および強度が向上すると考えられる。
【0066】
任意である、熱ローラー処理、熱溶媒処理、架橋処理、親水性処理、およびコーティング処理を、例えばPCT特許公開公報第WO2008/016174号に記載されているように、必要に応じて行ってもよい。
[4]多層微多孔膜の特性
【0067】
ある実施形態においては、多層ポリエチレン微多孔膜は、130.5℃以下の比較的低いシャットダウン温度および170.0℃以上の破膜温度を有する。ある実施形態においては、膜は、35℃/分の速度の加熱を施した際に、例えば150〜160℃といった175℃以下の温度にて1.0×10(オーム)(cm)の表面インピーダンスを達成することができる。膜は通常は、約3μm〜約200μm、または約5μm〜約50μm、好ましくは15μm〜約30μmの範囲の厚さを有する。加えて、言及した膜は、以下の性質の1つまたは複数を有してもよい。
A.130.5℃以下のシャットダウン温度
【0068】
微多孔膜のシャットダウン温度は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、PCT特許公開公報第WO2007/052663号に開示されている方法により測定する。この方法に従い、微多孔膜を上昇していく温度(5℃/分)にさらし、その間に膜の透気度を測定する。微多孔膜のシャットダウン温度は、微多孔膜の透気度(ガーレー値)が最初に100,000秒/100cmを超える時の温度と定義される。微多孔膜の透気度は、透気度計(旭精工株式会社製、EGO-1T)を用いてJIS P8117に従って測定する。ある実施形態においては、シャットダウン温度は126℃〜130℃である。別の実施形態においては、シャットダウン温度は128℃である。
B.700秒/100cm/20μm以下の正規化透気度
【0069】
ある実施形態においては、膜の正規化透気度(ガーレー値)は700秒/100cm/20μm以下である。正規化透気度は、JIS P8117に従って測定し、その結果を、A=20μm*(X)/Tの式を用いて、20μmの厚さを有する同等の膜の透気度値に正規化する。式中、Xは、実厚さTを有する膜の透気度の実測値であり、Aは、20μmの厚さを有する同等の膜の正規化透気度である。透気度値は、20μmの厚さを有する同等の膜に正規化するため、透気度値は「秒/100cm/20μm」の単位で表す。ある実施形態においては、正規化透気度は、400秒/100cm/20μm〜約600秒/100cm/20μm、または150秒/100cm/20μm〜375秒/100cm/20μmの範囲である。
C.約3000mN/20μm以上の突刺強度
【0070】
突刺強度(20μmの膜の厚さにおける値に換算)は、3000mN/20μm以上である。突刺強度は、厚さTを有する微多孔膜を、末端が球面(曲率半径R:0.5mm)である直径1mmの針で2mm/秒の速度で突き刺した時に測定した最大荷重、と定義される。突刺強度は、S=1μm*(S)/T(式中、Sは突刺強度の実測値であり、Sは正規化突刺強度であり、Tは膜の平均厚さである。)の式を用いて、膜の厚さ1μmにおける値に正規化してもよい。ある実施形態においては、突刺強度は3000mN/20μm以上であり、別の実施形態においては、突刺強度は3750mN/20μm以上である。
D.約25%〜約80%の空孔率
【0071】
ある実施形態においては、膜は、例えば約25%〜約80%、または30%〜60%の範囲といった、25%以上の空孔率を有する。膜の空孔率は、膜の実重量と、同じ組成の同等の非多孔膜(同じ長さ、幅、および厚さを有するという意味において同等)の重量とを比較することにより、従来法で測定する。次に、以下の式を用いて空孔率を求める:空孔率%=100×(w2−w1)/w2。式中、「w1」は微多孔膜の実重量であり、「w2」は、同じ大きさおよび厚さを有する、同等の非多孔性膜の重量である。
E.170℃以上の破膜温度
【0072】
ある実施形態においては、膜の破膜温度は、例えば171℃〜200℃、または172℃〜190℃の範囲といった、170℃以上である。破膜温度は、次のようにして測定する。5cm×5cmの微多孔膜を、それぞれが直径12mmの円形の開口部を有するブロックで挟み、直径10mmの炭化タングステンの球を、円形の開口部内の微多孔膜上に置く。次いで、膜を5℃/分の速度で上昇する温度にさらす。膜の破膜温度は、球が最初に膜を突き破る時の温度と定義される。膜の破膜温度は、球が試料を完全に貫通する温度、すなわち試料が破れる温度と定義される。
【0073】
ある実施形態においては、破膜温度は180℃〜190℃の範囲である。膜は、望ましいほどに高い破膜温度を有するため、電気自動車およびハイブリッド電気自動車に動力を供給するために用いる電池等の、高出力、高容量リチウムイオン電池における電池用セパレータとして使用するのに好適である。
F.メルトダウン温度
【0074】
メルトダウン温度は以下の手順で測定する:3mm×50mmの長方形の試料を、試料の長軸がTDと一直線になり、かつ短軸がMDと一直線になるように微多孔膜から切り出す。この試料を、チャック間距離10mmで、熱機械分析装置(TMA/SS6000 セイコーインスツル株式会社製)にセットする。すなわち、上部チャックから下部チャックまでの距離が10mmである。下部チャックを固定し、上部チャックで試料に19.6mNの荷重をかける。両チャックおよび試料を、加熱可能な管に封入する。30℃で開始し、管の内部の温度を5℃/分の速度で上昇させ、19.6mNの荷重下における試料の長さの変化を0.5秒間隔で測定し、温度の上昇とともに記録する。温度は200℃まで上昇させる。試料のメルトダウン温度は、試料が破壊する温度と定義され、通常は170℃超〜約200℃の範囲の温度である。
G.5.5%未満の105℃におけるTDおよび/またはMD熱収縮率
【0075】
105℃における微多孔膜の直交面方向(例えばTDおよびMD)の収縮率は、次にようにして測定する:
(i)周囲温度における微多孔膜の試験片の大きさをMDおよびTDの両方について測定し、(ii)微多孔膜の試験片を、105℃の温度にて8時間、負荷をかけずに平衡化させ、次いで(iii)膜の大きさをMDおよびTDの両方について測定する。MDまたはTDのどちらの熱(すなわち「熱による」)収縮率も、測定結果(i)を測定結果(ii)で割り、得られた商を百分率で表すことによって得ることができる。
【0076】
ある実施形態においては、微多孔膜は、例えば2.0%〜4.0%といった、1.0%〜7.0%の範囲の105℃におけるMDおよびTD熱収縮率を有する。
H.引張強度
【0077】
ある実施形態においては、膜は、例えば100,000〜110,000kPaの範囲といった、90,000kPa以上のMD引張強度、および例えば80,000kPa〜100,000kPaの範囲といった、75,000kPa以上のTD引張強度を有する。引張強度は、ASTM D-882Aに従って、MDおよびTDにおいて測定する。
I.引張伸度≧100%
【0078】
引張伸度は、ASTM D-882Aに従って測定する。ある実施形態においては、膜のMDおよびTD引張伸度はそれぞれ、例えば150%〜350%の範囲といった、150%以上である。別の実施形態においては、膜のMD引張伸度は、例えば150%〜250%の範囲であり、TD引張伸度は、例えば150%〜250%の範囲である。
J.35℃/分の急速加熱下におけるセルのシャットダウン
【0079】
急速加熱下におけるセルのシャットダウンは、以下の手順に従って簡易電池セルを組み立てることにより測定する。Ni箔(30mm×20mm)をそれぞれ別のガラス板(50mm(W)×80mm(L)×3mm(T))の上に置くことにより2つの電極を調製する。これら2つの電極の間に、セパレータを、1mol/LのLiPFを用いた、リチウム塩、エチレンカーボネート、およびジエチルカーボネートによる典型的な電解質とともに置く。35℃/分の速度で加熱するように制御されたホットプレート(200mm(W)*150mm(L))上でセルを加熱しながら、セルの交流インピーダンスおよびセルの表面の温度をモニタする。インピーダンスが最初に1.0×10(オーム)(cm)に達した時にセルのシャットダウン温度が得られる。
[5]電池用セパレータ
【0080】
ある実施形態においては、上記の多層微多孔性ポリオレフィン膜によって形成された電池用セパレータは、約3μm〜約200μm、または約5μm〜約50μmの範囲の厚さを有する。例えば選択する電解質にもよるが、セパレータの膨潤によって最終厚さが200μm超の値に増加する可能性がある。
[6]電池
【0081】
本発明の微多孔膜は、例えばリチウムイオン一次電池および二次電池における電池用セパレータとして有用である。かかる電池は、PCT特許公開公報第WO2008/016174号に記載されている。
【0082】
電池は、1つまたは複数の電気部品または電子部品への(または、からの)電荷のソース(またはシンク)として有用である。かかる部品としては、例えば変圧器等を含む、抵抗器、コンデンサ、誘導器等の受動素子、電動機および発電機等の電動デバイス、ならびにダイオード、トランジスタおよび集積回路等の電子デバイスが挙げられる。これらの部品を、直列および/または並列電気回路にて電池に接続して電池システムを形成することができる。回路は、直接的または間接的に電池に接続してもよい。例えば、電池によって生成される電気エネルギーは、これらの部品の1つまたは複数の中で電気エネルギーが消費または蓄積される前に、(例えば二次電池または燃料電池によって)電気化学的に、かつ/または(例えば発電機を動かしている電動機によって)電気機械的に変換することができる。電池システムは、電動工具および電気自動車またはハイブリッド電気自動車を駆動するための電動機等の比較的高出力のデバイスに動力を供給するための電力源として用いることができる。
【0083】
本発明は、以下の非限定的な実施形態を含んでいる。
1.層を含む微多孔膜であって、少なくとも1つの層が、115.0℃〜130.0℃の範囲のTmおよび5.0×10〜4.0×10のMwを有する第1のポリマーを含み、膜が、130.5℃以下のシャットダウン温度および170.0℃以上の破膜温度を有する微多孔膜。
2.第1のポリマーが、115.0℃以上130.0℃以下のTmを有するポリオレフィンである実施形態1の膜。
3.第1のポリマーが、121.0〜125.0℃の範囲のTmを有するエチレン/α−オレフィンコポリマーであり、少なくとも膜の第2の層が、5.0×10以上のMwおよび150℃以上のTmを有するポリプロピレンを含む実施形態1または2の膜。
4.700秒/100cm3/20μm以下の透気度を有する実施形態1または3の膜。
5.膜が、エチレン/α−オレフィンコポリマーを含む第3の層をさらに含み、第2の層が、第1の層と第3の層の間に位置する実施形態3または4の膜。
6.第1および第3の層が、それぞれ第1の層または第3の層の重量を基準として、3重量%〜50重量%のエチレン/α−オレフィンコポリマーをそれぞれ独立して含み、第2の層が、第2の層の重量を基準として40重量%以下のポリプロピレンを含む実施形態1または5の膜。
7.第1および第3の層が、それぞれ第1の層または第3の層の重量を基準として、40.0重量%〜97.0重量%の、1.0×10以下のMwを有するポリエチレン、および0重量%〜25.0重量%の、1.0×10超のMwを有するポリエチレンをそれぞれ独立してさらに含み、第2の層が、ポリエチレンをさらに含む実施形態5または6の膜。
8.第2の層が、15.0重量%〜40.0重量%のポリプロピレン、0重量%〜10.0重量%の、1.0×10超のMwを有するポリエチレン、および50.0重量%〜85.0重量%の、1.0×10以下のMwを有するポリエチレン(重量パーセントは第2の層の重量が基準)を含む、実施形態7の膜。
9.エチレン/α−オレフィンコポリマーが、約1.0〜5.0モル%の範囲のコモノマー含有量を有し、コモノマーが、ヘキセンまたはオクテンである実施形態3〜8のいずれかの微多孔膜。
10.微多孔膜が、約50.0〜約7.00×10秒/100cm/20μmの範囲の正規化透気度を有する実施形態3〜9のいずれかの微多孔膜。
11.微多孔膜が、35℃/分の速度の加熱を施した際に175℃以下の温度にて1.0×10(オーム)(cm)の表面インピーダンスを達成する実施形態1〜10のいずれかの微多孔膜。
12.微多孔膜が、35℃/分の速度の加熱を施した際に150℃〜160℃の温度にて1.0×10(オーム)(cm)の表面インピーダンスを有する実施形態1〜11のいずれかの微多孔膜。
13.微多孔膜が、3000mN/20μm以上の突刺強度および20〜50%の空孔率を有する実施形態1〜12のいずれかの微多孔膜。
14.多層微多孔膜であって、第1および第3の層が、それぞれ第1および第3の層の重量を基準として、20.0重量%〜30.0重量%の、1.0×10〜7.0×10のMwを有するエチレン/α−オレフィンコポリマー、45.0重量%〜70.0重量%の、1.0×10以下のMwを有するポリエチレン、および0.0重量%〜35.0重量%の、1.0×10超のMwを有するポリエチレンを互いに独立して含み、第1の層と第3の層の間に位置する第2の層が、20.0%〜80.0重量%の、1.0×10のMwおよび110.0J/g超の融解熱を有するポリプロピレン、0重量%〜10.0重量%の、1.0×10超のMwを有するポリエチレン、および20.0重量%〜70.0重量%の、1.0×10以下のMwを有するポリエチレン(重量パーセントは第2の層の重量が基準)を含み、膜が、130.5℃以下のシャットダウン温度および170.0℃以上の破膜温度を有する多層微多孔膜。
15.微多孔膜の製造方法であって、
a.少なくとも、115.0℃〜130.0℃の範囲のTmおよび5.0×10〜4.0×10の範囲のMwを有するポリマーを含む第1のポリマーと、少なくとも1種の第1の希釈剤とを混合する工程;
b.少なくとも、1.0×10以上のMwを有するポリプロピレンと、少なくとも第2の希釈剤とを混合する工程;
c. 混合された第1のポリマーとポリプロピレンと希釈剤とを混合したものからなる多層押出物を形成する工程であって、押出物は第1のポリエチレンを含有する第1の層、第3のポリエチレンを含有する第2の層、および第1の層と第3の層の間に位置しポリプロピレンを含有する第2の層を有する工程;ならびに
d.第1、第2、および第3の希釈剤の少なくとも一部を延伸多層押出物から除去して膜を製造する工程
を含む微多孔膜の製造方法。
16.更に、少なくとも、115.0℃〜130.0℃の範囲のTmおよび5.0×10〜4.0×10の範囲のMwを有するポリマーを含む第3のポリマーと、少なくとも1種の第3の希釈剤とを混合する工程を含む実施形態15の方法。
17.第1および第3のポリマーが、ポリオレフィンを含む実施形態15または16の方法。
18.第1のポリマーが、121.0〜125.0℃の範囲のTmを有するエチレン/α−オレフィンコポリマーを含み、第2のポリプロピレンが、5.0×10以上のMwおよび150℃以上のTmを有するポリプロピレンを含む実施形態15〜17のいずれかの方法。
19.更に工程(d)の前に押出物を延伸する工程と、工程(d)の間または後にいずれかの揮発性種の少なくとも一部を膜から除去する工程とを含む実施形態15〜18のいずれかの方法。
20.(a)第1の希釈剤と混合する第1のポリマーの量が、約15〜40重量%の範囲であり、第1の希釈剤の量が、85〜60重量%の範囲であり(重量パーセントはともに第1のポリマーと第1の希釈剤とを混合したものが基準);
(b)第3の希釈剤と混合する第3のポリマーの量が、約15〜40重量%の範囲であり、第3の希釈剤の量が、85〜60重量%の範囲であり(重量パーセントはともに第3のポリマーと第3の希釈剤とを混合したものが基準);かつ
(c)第2の希釈剤と混合するポリプロピレンの量が、約15〜40重量%の範囲であり、第2の希釈剤の量が、85〜60重量%の範囲である(重量パーセントはともにポリプロピレンと第2の希釈剤とを混合したものが基準)
実施形態16〜19のいずれかの方法。
21.多層押出物が、1.0×10超のMwを有するポリエチレンをさらに含む実施形態15〜20のいずれかの方法。
22.多層押出物が、1.0×10以下のMwを有するポリエチレンをさらに含む実施形態15〜21のいずれかの方法。
23.第1および第3の層が、それぞれ第1および第3の層内のポリオレフィンの全重量を基準として、3.0〜50.0重量%の、115.0℃〜130.0℃の範囲のTmおよび5.0×10〜4.0×10の範囲のMwを有するポリマー、0〜25.0重量%の、1.0×10超のMwを有するポリエチレン、ならびに40.0〜97.0重量%の、1.0×10以下のMwを有するポリエチレンを含有し、第2の層が、第2の層内のポリオレフィンの全重量を基準として、15.0〜40.0重量%のポリプロピレン、ならびに0〜10.0重量%の、独立して選択される1.0×10超のMwを有するポリエチレン、および50.0〜85.0重量%の、1.0×10以下のMwを有するポリエチレンを含有し、第1、第2、および第3の希釈剤が同じである実施形態16の方法。
24.第1および第3の層内の1.0×10超のMwを有するポリエチレンが、第2の層内の1.0×10超のMwを有するポリエチレンと同じである実施形態23の方法。
25.工程(c)に続いて多層押出物を更に冷却する工程を含む実施形態15〜24のいずれかの方法。
26.少なくとも1つの方向に膜を更に延伸する工程を含む実施形態25の方法。
27.膜の延伸が、膜を90℃〜135℃の範囲の温度にさらしながら行われる実施形態26の方法。
28.実施形態15〜27のいずれかの方法により作製される多層膜。
29.負極と、正極と、電解質と、多層微多孔膜からなる電池であって5.0かける103〜4.0翔る105のMwを有するエチレン/α−オレフィンコポリマーを含む多層微多孔膜とを含む電池であって、膜が、130.5℃未満のシャットダウン温度および170℃以上の破膜温度を有する多層微多孔膜によって少なくとも負極と正極が隔てられている電池。
30.電解質が、リチウムイオンを含有し、電池が、二次電池である実施形態29の電池。
31.電気的、電気化学的、かつ/または電気機械的に電池に接続されて電池システムを形成する1つまたは複数の抵抗性の成分および/または反応性成分をさらに含み、これらの成分(1つまたは複数)の電源である実施形態29または30の電池。
32.少なくとも1つの成分が、電気自動車またはハイブリッド電気自動車を動かすための手段を含む実施形態31の電池システム。
33.手段が、電動機および/または電動機を含み、かつ電池が電動機に電気的に接続されている実施形態31または32の電池システム。
[7]実施例
【0084】
以下の非限定的な例を参照し、本発明をより詳細に説明する。
実施例1
(1)第1のポリオレフィン溶液の調製
【0085】
第1のポリマー組成物(P1)を、(a)25.0重量%の、253g/10分のメルトインデックス(MI、ASTM D-1238、条件190℃./2.16kg(正式には「条件(E)」として知られており、またIとしても知られている)に従って決定)、2.5のMWD、および122.0のTmを有するポリエチレン(シングルサイト触媒を用いて製造)、(b)57.0重量%の、5.6×10のMwおよび4.05のMWDを有するポリエチレン樹脂(HDPE)、ならびに(c)18.0重量%の、2.0×10のMwおよび5.1のMWDを有するポリエチレン樹脂(UHMWPE)をドライブレンドすることにより調製する。
【0086】
25重量%となるように第1のポリマー組成物を、58mmの内径および42のL/Dを有する強混練型二軸スクリュー押出機内に供給し、75重量%の流動パラフィン(40℃で50cSt)を、サイドフィーダーを介して二軸スクリュー押出機に供給して、第1のポリマー溶液を調製する。重量パーセントは第1のポリマー溶液の重量が基準である。溶融混練は、210℃および200rpmにて行う。
(2)第2のポリオレフィン溶液の調製
【0087】
第2のポリマー組成物(P2)を、(a)68.6重量%の、5.6×10のMw、4.05のMWD、135℃のTc、および100℃のTcdを有するポリエチレン樹脂(HDPE)、(b)1.4重量%の、2.0×10のMwおよび5.1のMWDを有するポリエチレン樹脂(UHMWPE)、ならびに(c)30重量%の、1.1×10のMw、114J/gの融解熱、および5のMWDを有するポリプロピレン樹脂(パーセンテージは第2のポリマー組成物の重量が基準)をドライブレンドすることにより調製する。
【0088】
30重量%となるようにP2を、58mmの内径および42のL/Dを有する第2の強混練型二軸スクリュー押出機内に供給し、75重量%の流動パラフィン(40℃で50cSt)を、サイドフィーダーを介して二軸スクリュー押出機に供給して、第2のポリマー溶液を調製する。重量パーセントは第2のポリオレフィン溶液の重量が基準である。溶融混練は、210℃および200rpmにて行う。
【0089】
第3のポリマー組成物(P3)を、(a)25.0重量%の、253g/10分のメルトインデックス(MI、ASTM D-1238、条件190℃./2.16kg(正式には「条件(E)」として知られており、またIとしても知られている)に従って決定)、2.5のMWD、および122.0のTmを有するポリエチレン(シングルサイト触媒を用いて製造)、(b)57.0重量%の、5.6×10のMwおよび4.05のMWDを有するポリエチレン樹脂(HDPE)、ならびに(c)18.0重量%の、2.0×10のMwおよび5.1のMWDを有するポリエチレン樹脂(UHMWPE)をドライブレンドすることにより調製する。
【0090】
25重量%となるように先の第3のポリマー組成物を、58mmの内径および42のL/Dを有する強混練型二軸スクリュー押出機内に供給し、75重量%の流動パラフィン(40℃で50cSt)を、サイドフィーダーを介して二軸スクリュー押出機に供給して、第3のポリマー溶液を調製する。重量パーセントは第3のポリマー溶液の重量が基準である。溶融混練は、210℃および200rpmにて行う。
(3)膜の製造
【0091】
第1、第2、および第3のポリマー溶液を、それぞれの二軸スクリュー押出機から三層押出Tダイへと供給し、そこから押し出して第1のポリマー溶液層/第2のポリマー溶液層/第3のポリマー溶液層の層厚比が45.3/9.4/45.3である層状押出物(積層物とも呼ぶ)を製造する。あるいは、第1および第3の層内のポリマーが同じである場合は、第1または第3のポリマー溶液のどちらかを用いるだけでよく、その溶液をダイに送り込み、2つの押出機を使用するだけで膜を製造することができる。押出物を、20℃に制御された冷却ローラに通しながら冷却させ、三層ゲル状シートの形態の押出物を製造する。ゲル状シートを、113℃の温度(「二軸延伸温度」)にさらしながら、テンター延伸機で、MDおよびTDのそれぞれに5倍の倍率に(同時に)二軸延伸する。延伸した三層ゲル状シートを、20cm×20cmのアルミニウムフレームに固定し、25℃に制御された塩化メチレン浴に3分間浸漬して流動パラフィンを除去し、室温の気流で乾燥させて乾燥膜を製造する。次いで乾燥膜をドライ延伸する。ドライ延伸の前には、乾燥膜は、最初の乾燥長さ(MD)および最初の乾燥幅(TD)を有する。まず乾燥膜を、118.7℃の温度(「TD延伸温度」)にさらしながら1.4倍の倍率にTDにドライ延伸し、第2の乾燥長さを得る。膜の幅(MD)は、TDドライ延伸中、最初の乾燥幅とほぼ等しいままである。TDドライ延伸に続いて、膜を、118.7℃の温度(「幅縮小温度」)にさらしながら、第2の乾燥幅から1.2倍の最終倍率への制御された幅の縮小(TD)を行う。最終倍率は、ドライ延伸の開始時における最初の膜の幅が基準である。膜の長さ(MD)は、幅の縮小中、第2の乾燥長さとほぼ等しいままである。膜はバッチ延伸機に固定されたままであるが、次いでこの膜を、10分間118.7℃の温度(「熱セット温度」)にさらしながら熱セットし、最終的な多層微多孔膜を製造する。
実施例2
【0092】
二軸延伸温度が115.0℃であり、118.9℃のTD延伸温度での1.6倍の倍率へのTDドライ延伸であること以外は、実施例1を繰り返す。
比較例1
(1)第1のポリオレフィン溶液の調製
【0093】
第1のポリオレフィン組成物を、(a)68.6重量%の、5.62×10のMw、4.05のMWD、135℃のTm、および100℃のTcdを有する第1のポリエチレン樹脂;(b)1.4重量%の、1.95×10のMwおよび5.09のMWDを有するポリエチレン樹脂;ならびに(c)30重量%の、1.1×10のMw、114J/gの融解熱、および5.0のMWDを有するポリプロピレン樹脂(パーセンテージは第1のポリオレフィン組成物の重量が基準)をドライブレンドすることにより調製する。
【0094】
30重量%となるように先の第1のポリオレフィン組成物を、58mmの内径および42のL/Dを有する強混練型二軸スクリュー押出機内に供給し、70重量%の流動パラフィン(40℃で50cSt)を、サイドフィーダーを介して二軸スクリュー押出機に供給して、第1のポリオレフィン溶液を調製する。重量パーセントは第1のポリオレフィン溶液の重量が基準である。溶融混練は、210℃および200rpmにて行う。
(2)第2のポリオレフィン溶液の調製
【0095】
第2のポリオレフィン溶液を、上記と同様に、(a)82重量%の、5.62×10のMw、4.05のMWD、135℃のTm、および100℃のTcdを有する第1のポリエチレン樹脂、ならびに(b)18重量%の、1.95×10のMwおよび5.09のMWDを有するポリエチレン樹脂(パーセンテージは第2のポリオレフィン組成物の重量が基準)をドライブレンドすることにより調製する。
【0096】
25重量%となるように先の第2のポリオレフィン組成物を、58mmの内径および42のL/Dを有する強混練型二軸スクリュー押出機内に供給し、70重量%の流動パラフィン(40℃で50cSt)を、サイドフィーダーを介して二軸スクリュー押出機に供給して、第2のポリオレフィン溶液を調製する。重量パーセントは第2のポリオレフィン溶液の重量が基準である。溶融混練は、210℃および200rpmにて行う。
(3)膜の製造
【0097】
第1および第2のポリオレフィン溶液を、それぞれの二軸スクリュー押出機から三層押出Tダイへと供給し、そこから押し出して第2のポリオレフィン溶液層/第1のポリオレフィン溶液層/第2のポリオレフィン溶液層の層厚さ比が45.3/9.4/45.3である層状押出物(積層物とも呼ぶ)を製造する。押出物を、20℃に制御された冷却ローラに通しながら冷却させ、三層ゲル状シートの形態の押出物を製造する。ゲル状シートを、129秒間115.5℃の温度に加熱した後、115.5℃の温度(「二軸延伸温度」)にさらしながら、テンター延伸機で、880%/分の変形速度でMDおよびTDのそれぞれに5倍の倍率に(同時に)二軸延伸する。延伸したゲル状シートを95.0℃で16秒間熱処理する。延伸した三層ゲル状シートを、20cm×20cmのアルミニウムフレームに固定し、25℃に制御された塩化メチレン浴に3分間浸漬して流動パラフィンを除去し、室温の気流で乾燥させて乾燥膜を製造する。
【0098】
ドライ延伸の前には、乾燥後の膜は、最初の乾燥長さ(MD)および最初の乾燥幅(TD)を有する。乾燥膜を、127.3℃の温度にさらしながら1.6倍の倍率にTDにドライ延伸し、第2の乾燥幅を得る。膜の長さ(MD)は、TD方向のドライ延伸中、最初の乾燥長さとほぼ等しいままである。TD方向のドライ延伸に続いて、膜を、127.3℃の温度(「幅縮小温度」)にさらしながら、第2の乾燥幅から1.3倍の最終倍率への制御された幅の縮小(TD)を行う。最終倍率は、ドライ延伸の開始時における最初の膜の幅が基準である。膜の長さ(MD)は、幅の縮小中、第2の乾燥長さとほぼ同じのままである。膜はバッチ延伸機に固定されたままであるが、次いでこの膜を、10分間127.3℃の温度(「熱セット温度」)にさらしながら熱セットし、最終多層微多孔膜を製造する。次いで乾燥後の膜をドライ延伸する。
比較例2
【0099】
比較例2は、ポリエチレンおよびポリプロピレンを含む、乾式法で作製された市販の多層セパレータである。比較例2のセパレータは、19.1μmの厚さ、435の正規化透気度、3.04kPa(310gf)の突刺強度、0%の105℃における熱収縮率を有し、176℃の温度にて1.0×10(オーム)(cm)のインピーダンスに達する。
【表1】


【表2】

【0100】
表2から、実施例1および2の微多孔膜は、128℃未満のシャットダウンおよび185℃の破膜温度等の、バランスの良い重要な特性を示していることがわかる。比較例1の膜と比較すると、本発明の実施例1および2は、同程度の破膜温度を維持しながらより低い温度でシャットダウンしている。実施例1および2はまた、35℃/分の比較的急速な加熱下において、比較例1および2よりもかなり低い温度にて1.0×10(オーム)(cm)の表面インピーダンスに達している。
【0101】
優先権書類を含む、本明細書で引用した全ての特許、試験手順、およびその他の文献は、参照により、かかる開示が本発明に矛盾しない範囲で完全に組み込まれ、またかかる組込みが許容される全ての権限について、完全に組み込まれる。
【0102】
本明細書中に開示した例示的形態は特定のものについて記載しているが、種々の他の変形態様が、当業者にとっては明らかであり、かつ当業者によって本開示の精神および範囲から逸脱することなく容易に行われ得ることが理解されるであろう。したがって、本明細書に添付した特許請求の範囲の範囲は本明細書中に示した実施例および説明に限定されるものではなく、特許請求の範囲は、本開示が属する分野の当業者によってその等価物として扱われる全ての特徴を含む、本明細書に備わる特許可能な新規性のある特徴の全てを包含するものとして解釈されることが意図されている。
【0103】
数値の下限および数値の上限が本明細書中に列挙されている場合、あらゆる下限からあらゆる上限までの範囲が想定されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の層からなる微多孔膜であって、少なくとも1つの層が、115.0℃〜130.0℃の範囲のTmおよび5.0×10〜4.0×10のMwを有する第1のポリマーを含み、膜が、130.5℃以下のシャットダウン温度および170.0℃以上の破膜温度を有することを特徴とする微多孔膜。
【請求項2】
第1のポリマーが、115.0℃以上130.0℃以下のTmを有するポリオレフィンであることを特徴とする請求項1に記載の膜。
【請求項3】
第1のポリマーが、121.0〜125.0℃の範囲のTmを有するエチレン/α−オレフィンコポリマーであり、少なくとも膜の第2の層が、5.0×10以上のMwおよび150℃以上のTmを有するポリプロピレンを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の膜。
【請求項4】
700秒/100cm/20μm以下の正規化透気度を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の膜。
【請求項5】
膜が、エチレン/α−オレフィンコポリマーを含む第3の層をさらに含み、第2の層が、第1の層と第3の層の間に位置することを特徴とする請求項3または4に記載の多層膜。
【請求項6】
第1および第3の層が、それぞれ第1の層または第3の層の重量を基準として、3重量%〜50重量%のエチレン/α−オレフィンコポリマーをそれぞれ独立して含み、第2の層が、第2の層の重量を基準として40重量%以下のポリプロピレンを含むことを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の多層膜。
【請求項7】
第1および第3の層が、それぞれ第1の層または第3の層の重量を基準として、40重量%〜97重量%の、1.0×10以下のMwを有するポリエチレン、および0重量%〜25重量%の、1.0×10超のMwを有するポリエチレンをそれぞれ独立して含み、更に第2の層が、ポリエチレンを含むことを特徴とする請求項5または6に記載の膜。
【請求項8】
第2の層が、15重量%〜40重量%のポリプロピレン、0重量%〜10重量%の、1.0×10超のMwを有するポリエチレン、および50重量%〜85重量%の、1.0×10以下のMwを有するポリエチレン(重量パーセントは第2の層の重量が基準)を含むことを特徴とする請求項7に記載の膜。
【請求項9】
エチレン/α−オレフィンコポリマーが、約1.0〜5.0モル%の範囲のコモノマー含有量を有し、コモノマーが、ヘキセンまたはオクテンであることを特徴とする請求項3〜8のいずれかに記載の微多孔膜。
【請求項10】
微多孔膜が、約50.0〜約7.00×10秒/100cm/20μmの範囲の正規化透気度を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の微多孔膜。
【請求項11】
微多孔膜が、35℃/分の速度の加熱を施した際に175℃以下の温度にて1.0×10(オーム)(cm)の表面インピーダンスを達成することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の微多孔膜。
【請求項12】
微多孔膜が、35℃/分の速度の加熱を施した際に150℃〜160℃の温度にて1.0×10(オーム)(cm)の表面インピーダンスを有することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の微多孔膜。
【請求項13】
微多孔膜が、3000mN/20μm以上の正規化突刺強度および20〜50%の空孔率を有することを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の微多孔膜。
【請求項14】
多層微多孔膜であって、第1および第3の層が、それぞれ第1および第3の層の重量を基準として、20.0重量%〜30.0重量%の、1.0×10〜7.0×10のMwを有するエチレン/α−オレフィンコポリマー、45.0重量%〜70.0重量%の、1.0×10以下のMwを有するポリエチレン、および0.0重量%〜35.0重量%の、1.0×10超のMwを有するポリエチレンを互いに独立して含み、第1の層と第3の層の間に位置する第2の層が、20.0%〜80.0重量%の、1.1×10のMwおよび110.0J/g超の融解熱を有するポリプロピレン、0重量%〜10.0重量%の、1.0×10超のMwを有するポリエチレン、および20.0重量%〜70.0重量%の、1.0×10以下超のMwを有するポリエチレン(重量パーセントは第2の層の重量が基準)を含み、膜が、130.5℃以下のシャットダウン温度および170.0℃以上の破膜温度を有することを特徴とする多層微多孔膜。
【請求項15】
微多孔膜の製造方法であって、
a.少なくとも、115.0℃〜130.0℃の範囲のTmおよび5.0×10〜4.0×10の範囲のMwを有するポリマーを含む第1のポリマーと、少なくとも1種の第1の希釈剤とを混合する工程;
b.少なくとも、1.0×10以上のMwを有するポリプロピレンと、少なくとも第2の希釈剤とを混合する工程;
c.混合された第1のポリマーとポリプロピレンと希釈剤からなる多層押出物を作る工程であって、押出物が、第1のポリエチレンを含有する第1の層、第3のポリエチレンを含有する第2の層、および第1の層と第3の層の間に位置しポリプロピレンを含有する第2の層を有する工程;ならびに
d.第1、第2、および第3の希釈剤の少なくとも一部を延伸多層押出物から除去して膜を製造する工程
を含むことを特徴とする微多孔膜の製造方法。
【請求項16】
更に、少なくとも、115.0℃〜130.0℃の範囲のTmおよび5.0×10〜4.0×10の範囲のMwを有するポリマーを含む第3のポリマーと、少なくとも1種の第3の希釈剤とを混合する工程を含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
第1および第3のポリマーが、ポリオレフィンを含むことを特徴とする請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
第1のポリマーが、121.0〜125.0℃の範囲のTmを有するエチレン/α−オレフィンコポリマーを含み、第2のポリプロピレンが、5.0×10以上のMwおよび150℃以上のTmを有するポリプロピレンを含むことを特徴とする請求項15〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
工程(d)の前に押出物を延伸する工程、および工程(d)の間または後にいずれかの揮発性種の少なくとも一部を膜から除去する工程をさらに含むことを特徴とする請求項15〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
(a)第1の希釈剤と混合した第1のポリマーの量が、約15〜40重量%の範囲であり、第1の希釈剤の量が、85〜60重量%の範囲であり(重量パーセントはともに第1のポリマーと第1の希釈剤とを混合したものが基準);
(b)第3の希釈剤と混合した第3のポリマーの量が、約15〜40重量%の範囲であり、第3の希釈剤の量が、85〜60重量%の範囲であり(重量パーセントはともに第3のポリマーと第3の希釈剤とを混合したものが基準);かつ
(c)第2の希釈剤と混合したポリプロピレンの量が、約15〜40重量%の範囲であり、第2の希釈剤の量が、85〜60重量%の範囲である(重量パーセントはともにポリプロピレンと第2の希釈剤とを混合したものが基準)ことを特徴とする請求項16〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
多層押出物が、1.0×10以上のMwを有するポリエチレンをさらに含むことを特徴とする請求項15〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
多層押出物が、1.0×10以下のMwを有するポリエチレンをさらに含むことを特徴とする請求項15〜21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
第1および第3の層が、それぞれ第1および第3の層内のポリオレフィンの全重量を基準として、3〜50重量%の、115.0℃〜130.0℃の範囲のTmおよび5.0×10〜4.0×10の範囲のMwを有するポリマー、0〜25重量%の、1.0×10以上のMwを有するポリエチレン、40〜97重量%の、1.0×10以下のMwを有するポリエチレンを含有し、
第2の層が、第2の層内のポリオレフィンの全重量を基準として、15〜40重量%のポリプロピレン、ならびに0〜10重量%の、独立して選択される1.0×10以上のMwを有するポリエチレン、および50〜85重量%の、1.0×10以下のMwを有するポリエチレンを含有し、第1、第2、および第3の希釈剤が同じであることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項24】
第1および第3の層内の1.0×10以上のMwを有するポリエチレンが、第2の層内の1.0×10以上のMwを有するポリエチレンと同じであることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
工程(c)に続いて多層押出物を冷却する工程をさらに含むことを特徴とする請求項15〜24のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−522354(P2012−522354A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503460(P2012−503460)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【国際出願番号】PCT/US2010/026423
【国際公開番号】WO2010/114673
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(510157580)東レバッテリーセパレータフィルム株式会社 (31)
【Fターム(参考)】