微小コイルの製造方法及び製造装置
【課題】原料ガスの反応容器内への導入及び当該反応容器からのガス排出の構成に工夫を凝らし、反応容器内における原料ガスの流動や触媒との接触を良好に行うようにした微小コイルの製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】反応容器20は、円筒状容器本体20aと、この容器本体20aの左右両側部から互いに逆方向に延出された原料ガス筒群20b〜29d及び排出ガス筒群20fと、容器本体20a内に挿入した円筒状基材30とを備えている。原料ガス筒群20b〜29dから容器本体20a内に導入された原料ガスは、所定の高温下にて、基材30に担持した触媒と反応して熱分解して、基材30から微小コイルを成長させる。
【解決手段】反応容器20は、円筒状容器本体20aと、この容器本体20aの左右両側部から互いに逆方向に延出された原料ガス筒群20b〜29d及び排出ガス筒群20fと、容器本体20a内に挿入した円筒状基材30とを備えている。原料ガス筒群20b〜29dから容器本体20a内に導入された原料ガスは、所定の高温下にて、基材30に担持した触媒と反応して熱分解して、基材30から微小コイルを成長させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小コイルの製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の製造装置としては、下記特許文献1に記載のコイル状炭素繊維の製造装置が提案されている。この製造装置は、コイル状炭素繊維を成長させるに要する円管状の反応容器を有している。
【0003】
また、当該反応容器には、流入口、一対の注入口及び流出口が設けられている。上記流入口は、反応容器の中央上部周面に突出形成されており、当該流入口は、炭化水素ガス又は一酸化炭素ガス等の原料ガスを反応容器内に流入させる役割を果たす。上記一対の注入口は、反応容器の両端部の上部周面に突出形成されており、当該一対の注入口は、反応容器内にシールガスを注入させる役割を果たす。また、上記流出口は、反応容器の中央下部周面に、上記流入口に対応するように突出形成されており、当該流出口は、反応容器内に流入された原料ガスや、反応容器内に注入されたシールガスを流出させる役割を果たす。
【0004】
換言すれば、上述した流入口及び一対の注入口は、反応容器にその上部から上方へ垂直に延出するように設けられて、それぞれの役割を果たし、また、上述した流出口は、反応容器にその下部から下方へ垂直に延出するように設けられて、その役割を果たす。
【0005】
このように構成した製造装置において、反応容器を加熱器により所定温度に加熱した状態において、原料ガスを上記流入口から供給すると、当該原料ガスは、反応容器内に下方に向け流入して、反応容器内にて熱分解される。すると、このように熱分解した原料ガスのもとに、気相成長炭素繊維が、反応容器内に金属触媒を塗布して収容した基材上からコイル状に巻きながら成長する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−081051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記製造装置では、上述のごとく、流入口が、反応容器の上部からその上方へ垂直に延出されている。このことは、上記製造装置は、原料ガスを反応容器内にその上方から下方に向け強制的に導入する方式を採用していることを意味する。
【0008】
従って、このような製造装置では、反応容器内における原料ガスの対流等の流動や金属触媒との接触が、上述のような反応容器に対する流入口の構成に起因して、制限されてしまう。その結果、十分な熱分解反応や触媒反応が反応容器内において起こりにくく、コイルの収量や純度も非常に低いという不具合が生じる。
【0009】
また、上記製造装置では、上述のごとく、流入口が、反応容器の上部からその上方へ垂直に延出され、また、流出口が反応容器の下部からその下方へ垂直に延出されている。従って、上記製造装置において、当該反応容器を、複数、上下方向には積層しにくく、その結果、コイル状炭素繊維を効率よく多量に製造することができないという不具合も生ずる。
【0010】
そこで、本発明は、以上のようなことに対処するため、原料ガスの反応容器内への導入及び当該反応容器からのガス排出の構成に工夫を凝らし、反応容器内における原料ガスの流動や触媒との接触を良好に行うようにした微小コイルの製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題の解決にあたり、本発明に係る微小コイルの製造方法では、請求項1の記載によれば、
筒状容器本体(20a)と、この容器本体内にその軸方向に沿い挿入される基材であってその容器本体の内周面に対向するように触媒を担持してなる基材(30)とを有して、熱分解されたときガス状炭素種を生成する原料ガスを容器本体の両横方向対向壁部の一方から当該容器本体内に導入するとともに上記両横方向対向壁部の他方から容器本体内のガスを排出するようにした反応容器(20)を準備して、
容器本体を所定の高温に加熱して維持する加熱工程(S2)と、
容器本体にその両横方向対向壁部の上記一方から上記原料ガスを導入する原料ガス導入工程(S5)とを備えて、
当該原料ガス導入工程にて、容器本体を上記所定の高温に維持した状態にて、容器本体内に導入した上記原料ガスを上記触媒により熱分解して基材にガス状炭素種を生成させ、このガス状炭素種に基づき基材から微小コイルを成長させて製造するようにした。
【0012】
これによれば、反応容器において、原料ガスが容器本体の両横方向対向壁部の一方から当該容器本体内に導入されるから、このように当該容器本体内に導入された原料ガスは、容器本体内において、横方向に円滑にかつ良好に流動して、基材の触媒との反応を良好になし得る。
【0013】
従って、容器本体を上記所定の高温に維持した状態にて、容器本体内に導入した上記原料ガスを上記触媒により熱分解してガス状炭素種を基材に良好に生成させ得る。その結果、このガス状炭素種に基づく微小コイルの基材からの成長製造が良好に効率よくなされ得る。
【0014】
また、本発明に係る微小コイルの製造方法では、請求項2の記載によれば、
筒状容器本体(20a)と、この容器本体内にその軸方向に沿い挿入される基材であってその容器本体の内周面に対向するように触媒を担持してなる基材(30)とを有して、熱分解されたときガス状炭素種を生成する原料ガスを容器本体の上下方向対向壁部のうち下方向対向壁部から当該容器本体内に導入するとともに上記上下方向対向壁部のうち上方向対向壁部から容器本体内のガスを排出するようにした反応容器を準備して、
容器本体を所定の高温に加熱して維持する加熱工程(S2)と、
容器本体に上記下方向対向壁部から上記原料ガスを導入する原料ガス導入工程(S5)とを備えて、
当該原料ガス導入工程にて、容器本体を上記所定の高温に維持した状態にて、容器本体内に導入した上記原料ガスを上記触媒により熱分解して基材にガス状炭素種を生成させ、このガス状炭素種に基づき基材から微小コイルを成長させて製造するようにした。
【0015】
これによれば、反応容器において、原料ガスが容器本体内にその下方から導入されるから、このように当該容器本体内に導入された原料ガスは、容器本体内において、上方へ円滑にかつ良好に流動して、基材の触媒との反応を良好になし得る。その結果、請求項1に記載の発明と実質的に同様の作用効果が達成され得る。
【0016】
また、本発明は、請求項3の記載によれば、請求項1または2に記載の微小コイルの製造方法において、
基材は、筒状容器本体内にその軸方向に挿入されて外周面に上記触媒を担持してなる筒状基体(31)を有しており、
上記原料ガス導入工程にて、筒状容器本体を上記所定の高温に維持した状態にて、筒状容器本体内に導入した上記原料ガスを上記触媒により熱分解させて筒状基体の外周面にガス状炭素種を生成させ、このガス状炭素種に基づき筒状基体の外周面から微小コイルを成長させて製造するようにしたことを特徴とする。
【0017】
このように、基材が、筒状容器本体内にその軸方向に挿入されて外周面に上記触媒を担持してなる筒状基体であることから、微小コイルが筒状基体の外周面から成長することとなる。その結果、微小コイルをより一層多量に効率よく製造し得る。
【0018】
また、本発明は、請求項4の記載によれば、請求項1〜3のいずれか1つに記載の微小コイルの製造方法において、
上記原料ガスは、アセチレンガス、水素ガス及び硫化水素ガスからなる混合ガスであり、
上記加熱工程において、上記所定の高温を600(℃)〜900(℃)の範囲内の温度として、この温度に容器本体を加熱して維持することを特徴とする。
【0019】
このように、原料ガスは、アセチレンガス、水素ガス及び硫化水素ガスからなる混合ガスであって、窒素ガスやチオフェンのような原料ガスに害をなすような成分を含まない。従って、原料ガスの触媒との反応による熱分解が良好になされ得ることから、微小コイルの成長がより一層良好になされ得る。
【0020】
また、本発明に係る微小コイルの製造装置は、請求項5の記載によれば、
ケーシング(10、10a、10b)と、反応容器(20)と、基材(30)と、加熱制御手段(50、60、70)とを備えて、
反応容器は、
ケーシング内に軸方向に挿入される筒状容器本体(20a)と、
この容器本体の両横方向対向壁部の一方から外方へ延出されて、熱分解されたときガス状炭素種を生成する原料ガスを、原料ガス供給源から容器本体内に導入する少なくとも1本の原料ガス導入筒(23、24、25)と、
容器本体の上記両横方向対向壁部の他方から上記少なくとも1本の原料ガス導入筒とは逆方向に外方へ延出されて容器本体内のガスを排出する少なくとも1本のガス排出筒(28)とを具備しており、
基材は、容器本体内にその軸方向に沿い挿入されて、容器本体の内周面に対向するように触媒を担持してなり、
加熱制御手段は、容器本体を所定の高温に維持するように加熱制御するようにして、
容器本体を上記所定の高温に維持した状態にて、容器本体内の上記原料ガスを上記触媒により加熱分解して基材にガス状炭素種を生成させ、このガス状炭素種に基づき基材から微小コイルを成長させて製造するようにした。
【0021】
これによれば、少なくとも1本の原料ガス導入筒が容器本体の両横方向対向壁部の一方から延出され、少なくとも1本のガス排出筒が容器本体の両横方向対向壁部の他方から上記少なくとも1本の原料ガス導入筒とは逆方向に延出されている。
【0022】
このため、このように当該容器本体内に導入された原料ガスは、容器本体内において、基材に沿い横方向へ円滑にかつ良好に流動して、当該基材の触媒との反応を良好になし得る。従って、容器本体を上記所定の高温に維持した状態にて、容器本体内に導入した上記原料ガスを上記触媒により熱分解してガス状炭素種を基材に良好に生成させ得る。その結果、このガス状炭素種に基づく微小コイルの基材からの成長製造が良好に効率よくなされ得る。
【0023】
また、本発明に係る微小コイルの製造装置は、請求項6の記載によれば、
ケーシング(10、10a、10b)と、反応容器(20)と、基材(30)と、加熱制御手段(50、60、70)とを備えて、
反応容器は、
ケーシング内に軸方向に挿入される筒状容器本体(20a)と、
この容器本体の両上下方向対向壁部のうち下方向対向壁部から下方へ延出されて、熱分解されたときガス状炭素種を生成する原料ガスを、原料ガス供給源から容器本体内に導入する少なくとも1本の原料ガス導入筒(23、24、25)と、
容器本体の上記両上下方向対向壁部のうち上方向対向壁部から上記少なくとも1本の原料ガス導入筒とは逆方向に上方へ延出されて容器本体内のガスを排出する少なくとも1本のガス排出筒(28)とを具備しており、
基材は、容器本体内にその軸方向に沿い挿入されて、容器本体の内周面に対向するように触媒を担持してなり、
加熱制御手段は、容器本体を所定の高温に維持するように加熱制御するようにして、
容器本体を上記所定の高温に維持した状態にて、容器本体内の上記原料ガスを上記触媒により加熱分解して基材にガス状炭素種を生成させ、このガス状炭素種に基づき基材から微小コイルを成長させて製造するようにした。
【0024】
これによれば、少なくとも1本の原料ガス導入筒が容器本体から下方へ延出され、少なくとも1本のガス排出筒が容器本体から上方へ延出されている。
【0025】
このため、このように当該容器本体内に導入された原料ガスは、容器本体内において、基材に沿い上方へ円滑にかつ良好に流動して、当該基材の触媒との反応を良好になし得る。従って、容器本体を上記所定の高温に維持した状態にて、容器本体内に導入した上記原料ガスを上記触媒により熱分解してガス状炭素種を基材に良好に生成させ得る。その結果、このガス状炭素種に基づく微小コイルの基材からの成長製造が良好に効率よくなされ得る。
【0026】
また、本発明は、請求項7の記載によれば、請求項5または6に記載の微小コイルの製造装置において、
基材は、筒状容器本体内にその軸方向に挿入されて外周面に前記触媒を担持してなる筒状基体(31)を有することを特徴とする。
【0027】
これにより、筒状容器本体内に導入した原料ガスは、筒状基体の外周面に沿い流動して、触媒と反応して熱分解により筒状基体から微小コイルを成長させることとなる。従って、微小コイルの成長領域が、筒状基体の外周面に亘る広範囲となり、その結果、微小コイルをより一層多量に効率よく成長させ得る。
【0028】
また、本発明は、請求項8の記載によれば、請求項7に記載の微小コイルの製造装置において、
筒状基材は、筒状基体(31)と、ニッケル金属を、その表面に部分酸化及び部分硫化を施した上で2(μm)〜6(μm)の範囲内の厚さでもって、筒状基体の外周面に塗布することで、上記触媒として筒状基体の上記外周面に担持させてなる触媒層(32)とにより構成されていることを特徴とする。
【0029】
このように、触媒層を形成することで、原料ガスの触媒との反応による熱分解をより一層良好にし得る。その結果、請求項7に記載の発明の作用効果がより一層向上され得る。
【0030】
また、本発明は、請求項9の記載によれば、請求項7または8に記載の微小コイルの製造装置において、
上記少なくとも1本の原料ガス導入筒は、複数の原料ガス導入筒であって、
当該複数の原料ガス導入筒は、筒状基材のうち軸方向長さの1/3以上の長さに対応する部位から当該筒状基材の軸方向に原料ガス導入筒の内径の20倍以内の間隔をおいて延出されており、
筒状基材の外周面と前記原料ガス導入筒の内端開口部との間の径方向対向間隔が、5(mm)〜50(mm)の範囲内の値に設定されていることを特徴とする。
【0031】
これにより、容器本体内の原料ガスの筒状基材の触媒との反応が効率よくなされ、その結果、請求項7または8に記載の作用効果がより一層向上され得る。
【0032】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る微小コイルの製造装置の第1実施形態における装置本体を設置面上に載置した状態で示す平面図である。
【図2】上記第1実施形態における加熱回路を示すブロック図である。
【図3】上記第1実施形態における装置本体を設置面上に載置した状態で示す右側側面図である。
【図4】上記第1実施形態における装置本体を設置面上に載置した状態で示す左側側面図である。
【図5】上記第1実施形態における装置本体の図4にて5−5線に沿う横断面斜視図である。
【図6】上記第1実施形態における反応容器を加熱器とともに示す斜視図である。
【図7】上記第1実施形態における反応容器の横断面斜視図である。
【図8】上記第1実施形態における装置本体を円筒状基材の外周面に微小コイルを成長させる状態にて示す横断面図である。
【図9】上記第1実施形態における微小コイルの製造工程図である。
【図10】上記第1実施形態にて製造した微小コイルを、電子顕微鏡による拡大写真でもって示す図である。
【図11】上記第1実施形態にて製造した微小コイルを含む析出物を、電子顕微鏡による拡大写真でもって示す図である。
【図12】上記第1実施形態にて得られた他の析出物を、電子顕微鏡による拡大写真でもって示す図である。
【図13】本発明に係る微小コイルの製造装置の第3実施形態の要部を示す横断面斜視図である。
【図14】上記第3実施形態における加熱回路を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の各実施形態を図面により説明する。
(第1実施形態)
図1及び図2は、本発明にかかる微小コイルの製造装置の第1実施形態を示しており、この製造装置は、装置本体B(図1参照)と、加熱回路E(図2参照)とにより構成されている。本第1実施形態において、上記微小コイルは、炭素種から成長する微小コイルであって、カーボンマイクロコイルともいう。これは、微小コイルのコイル径がμmオーダーであることに起因する。
【0035】
なお、図1において、図示左側及び右側が、それぞれ、装置本体Bの後側及び前側に対応し、図示上側及び図示下側が、それぞれ、装置本体Bの左側及び右側に対応する。また、図1において、紙面の手前側及び奥側が、それぞれ、装置本体Bの上側及び下側に対応する。
【0036】
装置本体Bは、図1にて示すごとく、ケーシング10と、反応容器20と、円筒状基材30と、前後両側エンドカバー40とを備えている。ケーシング10は、横断面矩形状筒体10aと、角柱状電気絶縁性充填部材10bとを備えている(図5参照)。
【0037】
筒体10aは、図5にて例示するごとく、横断面コ字状の上壁11、横断面コ字状の下壁12、左壁13及び右壁14でもって矩形筒状となるように、ステンレスでもって形成されている。ここで、上壁11は、その左右両縁部にて、下方に向けL字状に折れ曲がって、左右両壁13、14の各上縁部に外方から着脱可能に組み付けられている。また、下壁12は、その左右両縁部にて、上方に向けL字状に折れ曲がって、左右両壁13、14の各下縁部に外方から着脱可能に組み付けられている。
【0038】
角柱状電気絶縁性充填部材10bは、ロックウール等の柔軟性電気絶縁材料により角柱状に形成されており、この充填部材10bは、筒体10a内に同軸的に収容されている。これにより、当該充填部材10bは、後述のごとく、容器本体20aを、筒体10aから電気的に絶縁しつつ当該筒体10a内に同軸的に支持する役割を果たす。なお、当該装置本体Bの設置にあたり、ケーシング10は、通常、筒体10aの下壁12にて、基台の水平面L上に載置される(図1、図3或いは図4参照)。
【0039】
反応容器20は、図1、図3〜図7のいずれかにて示すごとく、円筒状容器本体20aと、3組の原料ガス導入筒群20b〜20dと、シールガス注入筒群20eと、ガス排出筒群20fとを備えている。
【0040】
容器本体20aは、透明の石英でもって円筒状に形成されており、この容器本体20aは、電気絶縁性充填部材10bの貫通穴部15内に同軸的に挿通されている。ここで、貫通穴部15は、電気絶縁性充填部材10b内に同軸的に形成されている。これにより、容器本体20aは、その軸方向前後両端部21、22にて、筒体10aの軸方向両端開口部及び電気絶縁性充填部材10bの軸方向両端開口部から互いに逆方向に延出するとともに、充填部材10bによって、上述のごとく、筒体10aから電気的に絶縁されつつ当該筒体10a内に同軸的に支持されている。
【0041】
本第1実施形態において、容器本体20aの形成材料として、透明の石英を採用したのは、透明の石英が、触媒活性、硫化水素に対する耐食性、直線状炭素繊維や固形炭素膜や炭素粉等の微小コイル生成反応以外の副反応を抑制すること及び容器本体20aの内部を外部から透視し易いことに起因する。
【0042】
また、容器本体20aの内径は、原料ガス(後述する)の対流等の流動や混合、金属触媒との接触、排気ガスの効率的排出等の点から、30(mm)〜300(mm)の範囲の値に設定されることが好ましく、さらには、100(mm)〜150(mm)の範囲内の値に設定されることが、より一層好ましい。本第1実施形態では、容器本体20aの内径は、100(mm)に設定されている。
【0043】
また、容器本体20aの全長は、600(mm)〜2500(mm)の範囲内の値に設定されることが好ましく、さらには、1000(mm)〜1800(mm)の範囲の値に設定されることが、より一層好ましい。本第1実施形態では、容器本体20aの全長は、1500(mm)に設定されている。
【0044】
3組の原料ガス導入筒群20b〜20dは、原料ガス供給源(図示しない)からの原料ガス(後述する)を容器本体20a内に導入する役割を果たすもので、当該3組の原料ガス導入筒群20b〜20dは、図3、図5、図6及び図7のいずれかにて示すごとく、容器本体20aの左側半円筒部26aからケーシング10の左壁13を介し左方へ延出されている。
【0045】
ここで、上記原料ガスとしては、触媒ガス及び水素ガスの他、熱分解して容易にガス状炭素種を生成するアセチレン、メタン、プロパン等の炭化水素ガスや一酸化炭素ガスが挙げられる。これらの原料ガスのうち、アセチレンが最も好ましい。これは、アセチレンが、反応温度で容易に熱分解して金属触媒と反応し、金属触媒粒の各結晶面での触媒活性の異方性を効率よく発現させるからである。
【0046】
そこで、本第1実施形態においては、アセチレンガスが、水素ガス、及び触媒ガスである硫化水素ガスとともに、上記原料ガスとして採用されている。
【0047】
また、上記触媒ガスとしては、周期律表の第15属及び第16族を含むガスであって、イオウ、チオフェン,メチルメルカプタン、硫化水素等のイオウ原子を含む化合物のガス、或いはリン、3塩化リン等のリン原子を含む化合物のガスが挙げられる。上記触媒ガスのうち、使用の簡便性と微小コイルを高収量と高収率で得る観点から、硫化水素ガスが最も好ましい。
【0048】
そこで、本第1実施形態では、硫化水素ガスが、上記触媒ガスとして、上述のごとく、原料ガスのうちの1つのガスとして、採用されている。また、上記触媒ガスである硫化水素ガスの反応雰囲気中の濃度は、0.01(容量%)〜0.5の範囲内の濃度であり、さらに0.05(容量%)〜0.2(容量%)範囲内の濃度であることがより好ましい。よって、本第1実施形態では、硫化水素ガスの容器本体20a内への供給濃度は、反応雰囲気中の濃度を0.05(容量%)〜0.2(容量%)範囲内の濃度とするように設定されている。
【0049】
なお、硫化水素ガスの濃度が0.01(容量%)未満或いは0.5(容量%)を超えて高くなると、微小コイルの成長は殆ど得られない。また、硫化水素ガスの流量は少ないので、1(容量%)〜2(容量%)の範囲内の値の水素バランスガスが用いられる。
【0050】
また、3組の原料ガス導入筒群20b〜20dは、原料ガス導入筒群20bから原料ガス導入筒群20dにかけて、容器本体20aの左側半円筒部26aの上側部位、中側部位及び下側部位から延出されている。
【0051】
また、左側半円筒部26aの上側部位、中側部位及び下側部位において、上記中側部位は、容器本体20aの左側半円筒部26aの上下方向中央部位に相当する。これに伴い、上記上側部位は、上記中側部位と左側半円筒部26aの上縁部位との間の中央部位に相当し、一方、上記下側部位は、上記中側部位と左側半円筒部26aの下縁部位との間の中央部位に相当する。
【0052】
従って、左側半円筒部26aは、上記中側部位にて、容器本体20aのケーシング10の下壁12に平行な断面(平行断面)内に位置し、上記上側部位にて、容器本体20aの上記平行断面に対し当該容器本体20aの中心を基準に上方へ45°傾斜する断面(上方傾斜断面)内に位置し、また、上記下側部位にて、容器本体20aの上記平行断面に対し当該容器本体20aの中心を基準に下方へ45°傾斜する断面(下方傾斜断面)内に位置する。
【0053】
原料ガス導入筒群20bは、複数本(例えば、16本)の原料ガス導入筒23からなるもので、当該複数の原料ガス導入筒23は、その各基端開孔部23aにて、容器本体20aの左側半円筒部26aの上記上側部位の前後方向において等間隔にて溶接等により接合されて、容器本体20aの内部に連通している。また、当該複数の原料ガス導入筒23は、その基端開孔部23aからケーシング10の左壁13の上側部位を通り左方へ延出している。
【0054】
原料ガス導入筒群20cは、複数(例えば、16本)の原料ガス導入筒24を有しており、当該複数の原料ガス導入筒24は、その各基端開孔部24aにて、容器本体20aの左側半円筒部26aの上記中側部位に前後方向において上記等間隔にて溶接等により接合されて、容器本体20aの内部に連通している。また、当該複数の原料ガス導入筒24は、その基端開孔部24aからケーシング10の左壁13の中側部位を通り左方へ延出している。
【0055】
原料ガス導入筒群20dは、複数(例えば、16本)の原料ガス導入筒25を有しており、当該複数の原料ガス導入筒25は、その各基端開孔部25aにて、容器本体20aの左側半円筒部26aの上記下側部位に前後方向において上記等間隔にて溶接等により接合されて、容器本体20aの内部に連通している。また、当該複数の原料ガス導入筒24は、その基端部からケーシング10の左壁13の下側部位を通り左方へ延出している。
【0056】
なお、原料ガス導入筒群20bから原料ガス導入筒群20dにかけて、各対応の原料ガス導入筒22、23及び25は、互いに上下方向に対応するように、容器本体20aの同一の前後方向位置にある。
【0057】
本第1実施形態において、3組の原料ガス導入筒群20b〜20dの各原料ガス導入筒の内径は、原料ガスの流量や流速を所定範囲内に保持するために、3(mm)〜50(mm)の範囲の値に設定されることが好ましく、さらには、6(mm)〜30(mm)の範囲の値に設定されることがより一層好ましい。
【0058】
本第1実施形態では、原料ガス導入筒群20b〜20dの各原料ガス導入筒の内径は、9(mm)に設定されている。なお、原料ガス導入筒群20b、20b及び20dの各々において、互いに隣り合う各両原料ガス導入筒の中心間隔は、75(mm)に設定されている。
【0059】
シールガス注入筒群20eは、シールガス供給源(図示しない)から容器本体20a内にシールガス(後述する)を注入する役割を果たすもので、当該シールガス注入筒群20eは、図1或いは図3にて示すごとく、容器本体20aの左側半円筒部26aの上記中側部位からケーシング10の左壁13を介し左方へ延出されている。本第1実施形態において、上記シールガスとして、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの化学的に不活性なガス或いは水素ガスが挙げられる。これは、外部から容器本体20a内に混入される酸素ガスや当該容器本体20a内に導入される窒素ガス等によって、余分な或いは有害な影響を反応系に与えられることを防止するためである。本第1実施形態では、水素ガスがシールガスとして採用されている。
【0060】
当該シールガス注入筒群20eは、例えば、2本のシールガス注入筒27からなるもので、当該2本のシールガス注入筒27は、その基端開孔部にて、容器本体20aの左側半円筒部26aの上記中側部位に原料ガス導入筒群20bの前後両側にて溶接等により接合されて、容器本体20aの内部に連通している。また、各シールガス注入筒27は、その基端開孔部からケーシング10の左壁13の上記中側部位を通り左方へ延出している。
【0061】
ガス排出筒群20fは、容器本体20a内のガスを当該容器本体20aの外部に排出する役割を果たすもので、当該ガス排出筒群20fは、図1、図4或いは図6にて示すごとく、容器本体20aの右側半円筒部26bからケーシング10の右壁14を介し右方へ延出されている。
【0062】
当該ガス排出筒群20fは、例えば、5本のガス排出筒28からなるもので、各ガス排出筒28は、その基端開孔部28aにて、容器本体20aの右側半円筒部26bの中側部位にその前後方向において等間隔にて溶接等により接合されて、容器本体20aの内部に連通している。ここで、右側半円筒部26bの中側部位は、容器本体20aの前後方向軸を介し左側半円筒部26aの中側部位に対向する。また、各ガス排出筒28は、その基端開孔部28aからケーシング10の右壁14の中側部位(左側半円筒部26aの中側部位に対応)を通り右方へ延出している。なお、各ガス排出筒28の内径は、ガス排出筒間で同一であるが、当該各ガス排出筒28の内径の総和は、全原料ガス導入筒23〜25の各断面積の総和に相当する断面積を確保するように設定されている。これは、容器本体20a内のガスの排出を円滑に行うためである。
【0063】
本第1実施形態において、容器本体20aの最前端側に位置するガス排出筒28の基端開孔部28aは、容器本体20aの最前端側に位置する原料ガス導入筒24から後側へ3本目の原料ガス導入筒24の基端開孔部24aに対向し、また、容器本体20aの最後端側に位置するガス排出筒28の基端開孔部28aは、容器本体20aの最後端側に位置する原料ガス導入筒24から前側へ3本目の原料ガス導入筒24の基端開孔部24aに対向する。
【0064】
円筒状基材30は、多数の微小コイルを成長させる役割を果たすもので、この円筒状基材30は、後述のごとく、反応容器20a内にて同軸的に収容されている。なお、円筒状基材30は、その外周面にて、反応容器20aの3組の原料ガス導入筒群20b〜20dの各原料ガス導入筒の基端開孔部に対向している。
【0065】
当該円筒状基材30は、図1、図4或いは図6にて示すごとく、円筒状基体31と、円筒状触媒層32と、前後両側脚33とにより構成されている。円筒状基体31は、透明な石英でもって円筒状に形成されており、当該円筒状基体31の外周面には、サンドブラスト処理が施されている。
【0066】
円筒状触媒層32は、金属触媒の粉末を基体31の外周面に亘り、例えば、刷毛を用いて塗布することで円筒状に形成されている。ここで、円筒状基体31の外周面には、上述のごとく、サンドブラスト処理が施されているから、金属触媒の粉末は、基体31の外周面に対し良好に担持され得る。このことは、円筒状基材30が、円筒状基体31の外周面に触媒層32でもって金属触媒の粉末を円筒状に担持することを意味する。
【0067】
ここで、上記金属触媒としては、ニッケル、鉄、チタン或いはタングステン等の遷移金属の単体や合金の他、遷移金属の酸化物、炭化物、硫化物、窒化物、リン化物、炭酸化物或いは炭硫化物等から選択される少なくとも1種の化合物が挙げられる。
【0068】
また、上記金属触媒の粉末の平均粒径は、50(nm)〜5(μm)の範囲内の粒径である。上記金属触媒としては、より好ましくは、ニッケル、チタン、タングステンなどの金属、合金、酸素との固溶体、酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、炭酸化物或いは炭硫化物等が挙げられる。その中でも、金属触媒の各結晶面での触媒活性の異方性及びコストの点から、ニッケルと酸素の固溶体が、上記金属触媒として、最も好ましい。
【0069】
この点につき詳細に述べれば、従来、金属触媒として、Ni、Fe、Nb、NiO、Auのうちの1種類の金属が用いられてきた。Ni、Fe、Nb等の純粋な金属を触媒として用いた場合、規則的に巻いた純粋な微小コイル以外にも、かなりの量の大きく巻いた炭素繊維や直線状の炭素繊維が析出し、コイル純度の低いものしか得られなかった。また、NiO触媒の場合、コイル収量やコイル純度は非常に低かった。
【0070】
ガス状炭素種から気相成長する炭素繊維がコイル状に巻くためには、触媒の中心部分は単結晶であり、それぞれの結晶面での触媒活性に差があること、換言すれば、異方性があることが必須条件である。
【0071】
例えば、Niの場合、異方性はNi単結晶表面に存在するNi−C−S−O系の4元系疑液相(液晶相)の組成比の違いによってもたらされると考えられている。これは、例えば、Ni(100)、Ni(110)及びNi(111)の結晶面では、それぞれの結晶面における原料ガス中の、C、S及びOとの反応性や吸着能が異なることに起因している。Ni酸化物であるNiOの場合、そのような効果は小さく、従って、コイルになる割合も非常に低い。
【0072】
ニッケル触媒の触媒活性の異方性を十分発現させるためには、予めその表面を部分酸化及び部分硫化処理することが必須条件である。この処理により、その後アセチレンを導入して反応を行った際に、極めて効率よく異方性が発現され、微小コイルが効率よく成長する。部分酸化処理及び硫化処理を行わず、直接、アセチレンを導入して反応を行うと、十分な異方性が発現されず、従って、微小コイルのコイル収率及びコイル純度も著しく低下する。
【0073】
このため、本第1実施形態では、ニッケルと酸素との固溶体が、上記金属触媒として用いられている。具体的には、ニッケルの粉末を、その表面にて部分酸化及び部分硫化処理した上で、酸素との固溶体とし、2(μm)〜5(μm)の範囲内の厚さとなるように基体31に塗布して触媒層32としている。
【0074】
また、本第1実施形態において、基体31は、30(mm)〜250(mm)の範囲内の外径を有する。但し、三組の原料ガス導入筒群20b〜20dの各原料ガス導入筒の基端開孔部の開孔面(容器本体20aの内周面)と円筒状基材30の外周面(触媒層32の外周面)との間の基体31の径方向に沿う所定対向間隔が、1(mm)〜80(mm)の範囲内の値に設定されるように、基体31の外径が選定されている。また、当該所定対向間隔は、より好ましくは、10(mm)〜50(mm)の範囲内に設定されるように、さらに最も好ましくは、15(mm)〜30(mm)の範囲内に設定されるように、基体31の外径が選定される。
【0075】
上記所定対向間隔が30(mm)を越えて増大するにつれて、規則的に巻いた微小コイルの割合が減少し、コイル径は次第に大きく不規則になり、また大きくカールした微小コイルの割合が次第に増加する。上記所定対向間隔が、1(mm)未満となるか、或いは100(mm)を超えて増大すると、微小コイルは全く得られず、直線状炭素繊維または炭素粉末のみが析出される。本第1実施形態では、三組の原料ガス導入筒群20b〜20dの各原料ガス導入筒の基端開孔部の開孔面と円筒状基材30の外周面との間の基体31の径方向に沿う所定対向間隔は、25(mm)に設定されるとともに、基体31の外径は、60(mm)に設定されている。
【0076】
前後両側脚33は、図1、図4或いは図6にて示すごとく、共に、同一の二股形状にて、触媒層32の軸方向両端下部から下方へ着脱可能に延出されている。このことは、前後両側脚33は、その各二股部にて、容器本体20aの内周面の前後方向両側下部上に着座して、基体31を容器本体20a内に同軸的に支持することを意味する。
【0077】
前後両側エンドカバー40は、それぞれ、円板状壁部41と、この円板状壁部41の外周部から延出する環状壁部42とでもって、透明の石英により、縦断面コ字状に形成されている。
【0078】
しかして、前後両側エンドカバー40のうち前側エンドカバー40は、その環状壁部42にて、前側耐熱性オーリング42aを介し、容器本体20aの軸方向前端部21に気密的に着脱可能に嵌装されている。また、後側エンドカバー40は、その環状壁部42にて、後側耐熱性オーリング42aを介し、容器本体20aの軸方向後端部22に気密的に嵌装されている。なお、前側耐熱性オーリング42aは、前側エンドカバー40の環状壁部42の軸方向中間部位にその内面側から形成した環状溝部内に収容されており、後側耐熱性オーリング42aは、後側エンドカバー40の環状壁部42の軸方向中間部位にその内面側から形成した環状溝部内に収容されている。
【0079】
加熱回路Eは、図2にて示すごとく、加熱器50と、温度センサ60と、温度制御回路70とを備えている。加熱器50は、複数の発熱線部材51からなるもので、当該複数の発熱線部材51は、それぞれ、互いに並行な両並行線部51a、51bと、これら両並行線部51a、51bを連結する連結線部51cとでもって、U字状となるように、所定長さのニクロム線を折り曲げて形成されている。
【0080】
このように構成した複数の発熱線部材51は、図6にて示すごとく、容器本体20aの外周面に沿い、その周方向に等角度間隔にて、配設されており、当該複数の発熱線部材51は、発熱線部材ごとに、その連結部51cを、容器本体20aの後側に位置させるとともに、両並行線部51a、51bを、容器本体20aの前後方向に沿い延在させるように配設されている。これにより、加熱器50は、複数の発熱線部材51にて、容器本体20aのほぼ全体に亘り分散して位置するように配設されている。
【0081】
しかして、このように配設された加熱器50において、複数の発熱線部材51は、各並行線部51aの接続端部にて相互に接続されるとともに、各並行線部51bの接続端部にて相互に接続されている。これにより、加熱器50は、各発熱線部材51の発熱により、容器本体20aをその外周面のほぼ全体から加熱する。
【0082】
温度センサ60は、高温検出型熱電対からなるもので、この温度センサ60は、図1或いは図5から分かるように、円筒状基材30の中空部内中央部に支持されている。ここで、当該中空部内中央部は、円筒状基材30の中空部の前後方向中央部であって径方向中央部に相当する。これにより、当該温度センサ60は、円筒状基材30の中空部内中央部における温度を、容器本体20aの温度として検出する。
【0083】
温度制御回路70は、インバータからなるもので、この温度制御回路70は、交流電源PSから開閉スイッチSWを介し200(V)の交流電圧を供給されて、温度センサ60の検出温度に基づき、加熱器50をその各発熱線部材51にて発熱するように駆動制御する。ここで、この駆動制御は、温度センサ60の検出温度に基づき容器本体20aを所定の高温に維持するようになされる。このことは、容器本体20aの内部を上記所定の高温に維持することを意味する。
【0084】
ここで、上記所定の高温は、微小コイルの収量及び収率の観点から、600(℃)〜950(℃)の範囲内の温度に設定されることが好ましく、また、この範囲のうちでも、700(℃)〜800(℃)の範囲内の温度に設定されることがより一層好ましい。そこで、本第1実施形態においては、上記所定の高温は、750(℃)の温度に設定されている。なお、上記所定の高温が600(℃)未満或いは950(℃)を超えて高い場合には、微小コイルは殆ど成長することがない。
【0085】
以上のように構成した本第1実施形態において、微小コイルは、当該製造装置により次のように気相製造される。なお、この気相製造過程において、温度センサ60は、円筒状基材30の中空部内中央部における温度を、容器本体20aの温度として検出する。
【0086】
しかして、まず、図9の製造工程にて示すごとく、窒素ガス供給工程S1の処理がなされる。この窒素ガス供給工程S1において、窒素ガス供給源(図示しない)からの窒素ガスを、1000(ミリリットル/分)の流量にて、原料ガス導入筒群20bの全原料ガス導入筒を通して反応容器20の容器本体20a内に供給する。
【0087】
これに伴い、容器本体20a内に供給された窒素ガスは、当該容器本体20a内を流動して、この容器本体20a内の酸素等のガスを押し出すようにしてガス排出筒群20fから排出される。これにより、容器本体20aを含む反応容器20の内部の脱気処理及び脱酸素処理がなされ得る。
【0088】
また、上記窒素ガス供給工程S1の処理にあわせ、或いは当該窒素ガス供給工程S1の処理の後に、加熱工程S2において、容器本体20aの加熱処理がなされる。この加熱処理では、温度制御回路70が、開閉スイッチSWの閉状態にて、交流電源PSから交流電圧を印加されて、作動状態となり、温度センサ60の現時点における検出温度に基づき、加熱器50を発熱するように駆動制御する。
【0089】
これに伴い、各発熱線部材51が、発熱により、容器本体20aの温度を上記所定の高温に上昇させるように当該容器本体20aを加熱する。また、容器本体20aの温度が上記所定の高温750(℃)に達した後は、当該容器本体20aの温度が変動しても、温度制御回路70は、その後の温度センサ60の検出温度に基づき、容器本体20aの温度を上記所定の高温750(℃)に維持するように加熱器50を制御する。これにより、容器本体20aの内部は、上記所定の高温750(℃)に維持される。
【0090】
このように加熱工程S2を処理した後、窒素ガス供給停止工程S3において、上記窒素ガス供給源から容器本体20a内への窒素ガスの供給を停止する。
【0091】
然る後、次のシールガス注入工程S4において、シールガスである水素ガスを、1000(ミリリットル/分)にて、シールガス注入筒群20eの各シールガス注入筒27を通して容器本体20a内に注入する。これに伴い、先に容器本体20a内に供給済みの窒素ガスが、容器本体20a内への注入シールガスにより排出ガス筒群20eの各排出筒27から排出される。
【0092】
このため、容器本体20aの内部は、円筒状基材30の内部をも含め、シールガスである水素ガスのみの雰囲気となる。これにより、容器本体20aの内部においては、円筒状基材30の内部をも含め、余分な或いは有害な影響が反応系に与えられることを防止し得る。
【0093】
従って、後述するように、原料ガス導入工程S5において容器本体20a内に原料ガスを導入しても、この原料ガスに対する窒素ガスの混入を招くことがない。その結果、窒素ガスが、原料ガス中に含まれるアセチレンの熱分解反応を阻害するという事態の発生を未然に防止して、微小コイルのコイル収量及びコイル純度(後述する)の低下を未然に防止し得る。
【0094】
上述のようにシールガス注入工程S4の処理が終了すると、次の原料ガス導入工程S5において、上記原料ガス供給源から供給される原料ガス、即ち、アセチレンガス、水素ガス及び硫化水素ガスの混合ガスを、3組の原料ガス導入筒群20b〜20dの各原料ガス導入筒を通して容器本体20a内にその左側から導入する。
【0095】
現段階では、容器本体20aの内部が、円筒状基材30の外周面及びその内部とともに、上記所定の高温に維持されている。このことは、触媒層32の外周面も上記所定の高温に維持されていることを意味する。
【0096】
このような状態において、上述のように原料ガスが容器本体20a内に導入されると、当該原料ガスと触媒層32の金属触媒との間で反応を開始する。このことは、原料ガス導入工程S5は、反応工程であることを意味する。なお、本第1実施形態では、この反応工程における反応時間は、2時間とした。
【0097】
ここで、上記原料ガスは、原料ガス導入筒1本当たり、60(ミリリットル/分)のアセチレンガス、265(ミリリットル/分)の水素ガス、及び0.06(ミリリットル/分)の硫化水素ガスでもって構成される。
【0098】
従って、上記原料ガス供給源内の原料ガスは、導入筒1本当たりにつき、60(ミリリットル/分)のアセチレンガス、265(ミリリットル/分)の水素ガス、及び0.06(ミリリットル/分)の硫化水素ガスの混合ガスとなるように、予め、均一に混合されたものである。
【0099】
ここで、当該原料ガスの組成を、上述のように、アセチレンガス、水素ガス及び硫化水素ガスとした根拠は、次の通りである。
【0100】
従来、原料ガスは、アセチレンガス、水素ガス、窒素ガス、チオフェンガス及び硫化水素ガスからなる混合ガスとして、同時にかつ連続的に容器本体20a内に導入されるとともに触媒との間で反応させていた。
【0101】
しかし、窒素ガスは、上述したごとく、アセチレンの熱分解を著しく抑制するばかりか、有害な副反応を起こし、規則的に巻いた微小コイルの成長を阻害し、コイル収量及びコイル純度を低下させる。また、チオフェンは規則的に巻いた微小コイルの成長には有害であり、またコイル収量及びコイル純度を低下させる要因となっている。
【0102】
そこで、本第1実施形態では、原料ガスを、上述のごとく、アセチレンガス、水素ガス及び硫化水素ガスによる混合ガスとした。なお、当該原料ガスは、後述のように加熱により熱分解されたとき、ガス状炭素種が円筒状基材30の外周面から生成される。
【0103】
3組の原料ガス導入筒群20b〜20dの各原料ガス導入筒を通して容器本体20a内の導入される原料ガスの流量をガスの線速度でもって示すと、微小コイルの収量及び収率を向上させるためには、当該ガスの線速度は、室温及び1気圧の条件下にて、100(cm/min)〜3000(cm/min)の範囲内の値に設定されることが好ましい。また、当該ガスの線速度は、200(cm/min)〜2000(cm/min)の範囲内の値に設定されることがより好ましく、また、さらには、500(cm/min)〜1500(cm/min)の範囲内の値に設定されることが特に好ましい。
【0104】
そこで、本第1実施形態では、当該ガスの線速度は、500(cm/min)〜1500(cm/min)の範囲内の値に設定されている。さらに、上記ガスの線速度は、原料ガス導入筒の基端開孔部とこの基端開孔部に対する円筒状基材30の外周面の対向部位との間の間隔(上記所定対向間隔)と密接な関係を有する。このため、上記ガスの線速度が、例えば、500(cm/min)〜800(cm/min)の範囲内の値であれば、上記所定対向間隔は、10(mm)〜20(mm)の範囲内の値に設定されることが好ましい。
【0105】
上述のように、原料ガスと触媒層32の金属触媒との間で反応を開始すると、微小コイルは、3組の原料ガス導入筒群20b〜20dの各原料ガス導入筒の基端開孔部に対する円筒状基材30の基体31の円筒状外周面の対向表面部位において、原料ガス導入筒の内径の2倍〜30倍の範囲内の径を有する円形内に密集して成長していく。
【0106】
このため、3組の原料ガス導入筒群20b〜20dの各原料ガス導入筒のうち各両隣接導入筒の間の間隔は、各微小コイルを、互いに干渉させることなく、かつ隙間なく円筒状基材30の外周面上に成長させるために、原料ガス導入筒の内径の2倍〜30倍の範囲の値に設定されることが好ましく、さらには、原料ガス導入筒の内径の5倍〜20倍の範囲内の値に設定されることがより好ましい。
【0107】
そこで、本第1実施形態では、上述の各両隣接原料ガス導入筒の間の間隔は、原料ガス導入筒の内径(9(mm))の5倍〜20倍の範囲内の値(75(mm))に設定されている。
【0108】
これにより、各微小コイルが、3組の原料ガス導入筒群20b〜20dの各原料ガス導入筒の基端開孔部に対する円筒状基材30上に殆ど互いに重なり合うことなく、ほぼ均一の厚さで成長し得る(図8参照)。このことは、多数の微小コイルが円筒状基材30上に成長することで製造されることを意味する。
【0109】
上述のようにして原料ガス導入工程S5の処理が終了すると、次の原料ガス供給及び加熱の各停止工程S6において、上記原料ガス供給源から容器本体20a内への原料ガスの供給が停止されるとともに、温度制御回路70による加熱器50に対する制御が停止される。具体的には、開閉スイッチSWが開成される。これにより、原料ガスと触媒層32の金属触媒との間の反応が終了する。
【0110】
然る後、円筒状基材取り出し工程S7において、上述のような加熱器50に対する制御の停止に伴い、容器本体20a内の温度が200(℃)まで降下したときに、装置本体Bの前後両側エンドカバー40を容器本体20aの両端部から外した上で、円筒状基材30を容器本体20aの内部から取り出す。ついで、円筒状基材30に成長した微小コイルを回収する。
【0111】
以上説明したように、本第1実施形態によれば、反応容器20において、3組の原料ガス導入筒群20b〜20dは、容器本体20aの左側半円筒部26aから左方へ延出するとともに、ガス排出筒群20fは、容器本体20aの右側半円筒部26bから右方へ延出している。また、容器本体20a内に挿入してなる円筒状基材30において、触媒層32が、ニッケル触媒を、微小コイルを析出するようにその表面を部分酸化・硫化処理して円筒状基体31の外周面に塗布して形成されている。
【0112】
このような構成のもと、容器本体20aを上記所定の高温750(℃)に加熱して維持した状態にて、アセチレンガス、水素ガス及び硫化水素ガスの混合による原料ガスを、同時にかつ連続的に容器本体20a内に導入して、円筒状基材30の外周面上に、上述のごとく、微小コイルを成長させる。
【0113】
このようにして成長した微小コイルを上述のように回収した結果、この回収による微小コイルのコイル収量は、60(g)であった。また、アセチレンベースの微小コイルのコイル収率は80(%)であった。このことは、微小コイルが、高純度にて、一度に効率よく多量に製造され得ることを意味する。なお、このようにして製造された微小コイルは、電磁波吸収材、マイクロ波発熱材、マイクロセンサー、マイクロメカニカル素子、癒し材、化粧品、鎮痛材、ガン治療薬、食品添加材等に利用され得る。
【0114】
ちなみに、本第1実施形態にて得られた析出物の電子顕微鏡(SEM)写真によれば、図10にて示すように、成長による析出物は、100(%)の微小コイル(カーボンマイクロコイル)からなり、これら微小コイルの殆どが、3(μm)〜5(μm)の範囲内のコイル径でもって規則的に巻いている。また、微小コイルの各々においてその各隣接コイル部間のギャップは殆ど無いため、当該微小コイルの各々は、電磁気的な微小のソレノイド形状となっている。
【0115】
換言すれば、上述の析出物中において、一定のコイル径でもって規則的に巻いたソレノイド形状の微小コイルの割合、即ち、コイル純度は、100(%)であるといえる。
【0116】
また、本第1実施形態にて述べた製造装置によれば、反応容器20における3組の原料ガス導入筒群20b〜20dの各原料ガス導入筒と、ガス排出筒群20fの各ガス排出筒とが、容器本体20aの左右両側壁26a、26bから互いに逆方向に基台の水平面Lに平行となるように水平状にケーシング10から延出している。
【0117】
従って、原料ガスは、各原料ガス導入筒を通り容器本体20a内に基台の水平面Lに沿うように導入されるから、このように容器本体20a内に導入された原料ガスは、容器本体20a内において、円筒状基材30の外周面に沿い左右方向に円滑にかつ良好に流動して、円筒状基材30の円筒状触媒層32の触媒との反応を、何ら制限されることなく、良好になし得る。また、容器本体20a内のガスが各排出筒28を通り基台の水平面Lに沿うように排出されるので、ガスの排出が円滑になされ得る。
【0118】
その結果、原料ガスの触媒との間の十分な熱分解反応や触媒反応が容器本体20a内において起こり、微小コイルの収量や純度が非常に高くなる。
【0119】
また、上述のように、各原料ガス導入筒及び各ガス排出筒が、基台の水平面Lに平行となるように水平状にケーシング10から延出しているので、本第1実施形態にて述べた装置本体Bを、複数準備して、その各ケーシング10にて上方に積層するにあたり、これら複数の装置本体Bを、3組の原料ガス導入筒群20b〜20d及びガス排出筒群20fとの干渉を招くことなく、容易に積層することができる。
【0120】
以上により、装置本体Bの積層数に比例して、微小コイルのコイル収量及びコイル収率を増大させることができるのは勿論のこと、当該複数の装置本体Bの工場等内における設置面積を減少させて工場等内の利用効率を高めることができる。
【0121】
次に、本第1実施形態における装置本体Bを実施例1−1とし、この実施例1−1と対比すべく、実施例1−2及び各比較例1−1〜1−7を準備した。なお、実施例1−2及び各比較例1−1〜1−7の加熱回路は、本第1実施形態における加熱回路Eと同様である。
(実施例1−2)
この実施例1−2の装置本体においては、円筒状基材30の触媒層32として、ニッケルからなる触媒層であってその表面を部分酸化したニッケル触媒層が採用されている。当該実施例1−2の装置本体のその他の構成は、実施例1にいう装置本体Bと同様である。
【0122】
このような実施例1−2を用いて、微小コイルの製造にあたり、本第1実施形態にて述べた製造工程において、原料ガス導入工程S5の処理を行うに先立ち、3組の原料ガス導入筒群20b〜20dの各原料ガス導入筒を通して5分間硫化水素のみを容器本体20a内に導入して、加熱工程S2の処理で750(℃)に維持されている容器本体20a内にて、上記ニッケル触媒層の表面に部分硫化処理を施した後、原料ガス導入工程S5において、上記各原料ガス導入筒を通して容器本体20a内にアセチレンを導入して上記ニッケル触媒層との反応を行った。その他の工程は、本第1実施形態にて述べた製造の工程と同様である。
【0123】
この実施例1−2によれば、微小コイルのコイル収量は58(g)であり、当該微小コイルのコイル収率は78(%)であり、また、当該微小コイルのコイル純度は100(%)であった。これによれば、本実施例1−2でも、実施例1−1と実質的同様の製造結果をもたらすことが分かる。
【0124】
また、この実施例1−2においても、実施例1−1と同様に、反応容器20における3組の原料ガス導入筒群20b〜20dと、ガス排出筒群20fとが、容器本体20aの左右両側円筒壁部26a、26bから互いに逆方向に基台の水平面Lに平行となるように水平状にケーシング10から延出している。
【0125】
従って、実施例1−2の装置本体を、複数準備して、これら複数の装置本体を、その各ケーシング10にて上方に積層するにあたり、各原料ガス導入筒群20b〜20d及びガス排出筒群20fとの干渉を招くことなく、容易に積層することができる。これによれば、実施例1−2においても、装置本体の積層数に比例して、微小コイルのコイル収量及びコイル収率を増大させることができる。
(比較例1−1)
この比較例1−1の装置本体では、三組の原料ガス導入筒群20b〜20dの各原料ガス導入筒の基端開孔部の開孔面と円筒状基材30の外周面との間の基体31の径方向に沿う所定対向間隔を60(mm)としたことを除き、当該比較例1−1の装置本体のその他の構成は、実施例1−1と同様である。
【0126】
当該比較例1−1の装置本体でもって、本第1実施形態における製造工程に従い実施例1−1による微小コイルと同様に微小コイルを製造した。これにより得られた析出物の電子顕微鏡(SEM)写真によれば、図10にて例示するように、3(μm)〜5(μm)の範囲内のコイル径で規則的に巻いた微小コイルのほかに、不規則に巻いた微小コイルや、10(μm)以上のコイル径及び大きく崩れたコイル形状を有する微小コイルが多数観察された。なお、少量の直線状炭素繊維も観察された。
【0127】
従って、この比較例1−1によれば、微小コイルのコイル収量やコイル純度が実施例1−1による場合に比べて低いといえる。
(比較例1−2)
この比較例1−2の装置本体では、三組の原料ガス導入筒群20b〜20dの各原料ガス導入筒の基端開孔部の開孔面と円筒状基材30の外周面との間の基体31の径方向に沿う所定対向間隔を80(mm)としたことを除き、当該比較例1−2の装置本体のその他の構成は、実施例1−1にいう装置本体Bと同様である。
【0128】
当該比較例1−2の装置本体を用いて、本第1実施形態における製造工程に従い実施例1による微小コイルと同様に微小コイルを製造した。これにより得られた析出物の電子顕微鏡(SEM)写真によれば、図12にて例示するように、殆どのコイルが、極めて不規則に巻いたものや大きく不規則に巻いたものであり、当該析出物には、直線状の炭素繊維も含まれている。従って、微小コイルは観察されなかった。
(比較例1−3)
この比較例1−3の装置本体においては、円筒状基材30の触媒層32として、ニッケルからなる触媒層であってその表面を部分酸化した0.5(μm)の平均厚さを有するニッケル触媒層が採用されている。当該比較例1−3の装置本体のその他の構成は、実施例1−1にいう装置本体Bと同様である。
【0129】
この比較例1−3によれば、微小コイルのコイル収量は非常に少なく5(g)にすぎなかった。なお、当該比較例1−3による析出物の大部分が直線状の炭素繊維であった。
(比較例1−4)
この比較例1−4の装置本体においては、円筒状基材30の触媒層32として、ニッケルからなる触媒層であってその表面を部分酸化した15(μm)の平均厚さを有するニッケル触媒層が採用されている。当該比較例1−4の装置本体のその他の構成は、実施例1−1にいう装置本体Bと同様である。
【0130】
このような比較例1−4を用いて、微小コイルを製造すべく、本第1実施形態にて述べた製造工程を適用したところ、原料ガス導入工程S5における反応開始と共に容器本体20a内の温度が急激に上昇し、1分経過後には円筒状基材30の外周面(触媒層の表面)の温度が850℃以上に上昇し、円筒状基材30の外周面から10(mm)離れた位置の温度が、最高で820(℃)まで上昇した。
【0131】
また、円筒状基材30の外周面上には、堅い炭素層が、1.5(mm)〜3(mm)の範囲内の厚さにて析出した。この析出物において、微小コイルのコイル収率は10(g)にすぎなかった。なお、当該析出物においては、規則的に巻いたコイルは非常に少なく、殆どが、非常に不規則に巻いたコイルや、大きく巻いただけのもの或いは直線状の炭素繊維であった。
(比較例1−5)
この比較例1−5の装置本体においては、円筒状基材30の触媒層32として、酸素を全く含まない純粋なニッケル粉末からなる触媒層が採用されている。当該比較例5の装置本体のその他の構成は、実施例1−1にいう装置本体Bと同様である。
【0132】
このような比較例1−5を用いて、微小コイルを製造すべく、本第1実施形態にて述べた製造工程を適用したところ、微小コイルのコイル収量は15(g)にすぎず、また、当該微小コイルのコイル純度も、30(%)〜35(%)の範囲内の値と低かった。
(比較例1−6)
この比較例1−6の装置本体においては、円筒状基材30の触媒層32として、酸化ニッケルからなる触媒層が採用されている。当該比較例6の装置本体のその他の構成は、実施例1−1にいう装置本体Bと同様である。
【0133】
このような比較例1−6を用いて、微小コイルを製造すべく、本第1実施形態にて述べた製造工程を適用したところ、微小コイルのコイル収量は10(g)にすぎず、また、当該微小コイルのコイル純度も、10(%)〜20(%)の範囲内の値と低かった。
(比較例1−7)
この比較例1−7の装置本体は、実施例1の装置本体Bと同様である。このような比較例1−7を用いて本第1実施形態にて述べた製造工程に従い、微小コイルを製造するにあたり、上記原料ガスが、原料ガス導入筒1本当たり、50(ミリリットル/分)のアセチレンガス、200(ミリリットル/分)の水素ガス及び0.06(ミリリットル/分)の硫化水素ガスを含むこと以外に、200(ミリリットル/分)の窒素ガスを同時に連続して容器本体内に導入するようにした。その他は、実施例1−1と同様に製造とした。
【0134】
この比較例1−7によれば、微小コイルのコイル収量は非常に少なく12(g)にすぎず、また、当該微小コイルのコイル純度は25(%)にすぎなかった。
【0135】
ちなみに、微小コイルの製造にあたり、従来の製造方法や製造装置で得られる析出物は、規則的に一定のコイル径とコイルピッチで巻いた電磁気的ソレノイド状の良質の微小コイルの他に、多くの不規則の巻いたコイル、コイル径の非常に大きなコイル、大きく巻いただけの炭素繊維や、直線状の炭素繊維を多数含んでおり、全析出物中のソレノイド状の良質の微小コイルの割合(以下、“コイル純度”と略す)は、5(%)〜25(%)の範囲内であって低い。このようにコイル純度が低いことは、マイクロ波電磁波吸収特性等の多くの特性に非常に悪影響を及ぼす。従って、工業的には、微小コイルのコイル純度は、80(%)以上であることが要請されている。
【0136】
この点からすれば、実施例1−1及び実施例1−2の装置本体を用いて製造した微小コイルのコイル純度は、100(%)であるから十分であるといえる。
(第2実施形態)
次に、本発明にかかる微小コイルの製造装置の第2実施形態について説明すると、この第2実施形態では、上記第1実施形態にて述べた製造装置の装置本体Bにおいて、反応容器20が、ケーシング10との関連において、上記第1実施形態とは異なり、次のように構成されている。
【0137】
即ち、上記第1実施形態にて述べた3組の原料ガス導入筒群20b〜20d及びシールガス注入筒群20eは、反応容器20の容器本体20aの下側半円筒部位から下方へ延出されており、一方、上記第1実施形態にて述べたガス排出筒群20fは、容器本体20aの上側半円筒部位から上方へ延出されている。
【0138】
具体的には、本第2実施形態では、上記第1実施形態にて述べた反応容器20(図6参照)が、90°回転されて、3組の原料ガス導入筒群20b〜20d及びシールガス注入筒群20eを容器本体20aの下側に位置させ、ガス排出筒群20fを容器本体20aの上側に位置させるように構成したものとなっている。
【0139】
これに伴い、各複数本の原料ガス導入筒23、24及び25は、それぞれ、容器本体20aの下側半円筒部の左側部位、中側部位(下端部位)及び右側部位から下方へ延出されるとともに、両シールガス注入筒27は、容器本体20aの下側半円筒部の中側部位から下方へ延出されている。また、各ガス排出筒28は、容器本体20aの上側半円筒部の中側部位(上端部位)から下方へ延出されている。その他の構成は上記第1実施形態と同様である。
【0140】
このように構成した第2実施形態において、微小コイルは、上記第1実施形態にて述べた製造工程に従い気相成長製造される。この製造工程のうち原料ガス導入工程S5において、上記原料ガス供給源から供給される原料ガスは、3組の原料ガス導入筒群20b〜20dの各原料ガス導入筒を通して容器本体20a内にその下側から導入される。なお、容器本体20a内のガスの排出は、容器本体20aの内部から各ガス排出筒28を通し上方へ排出される。なお、その他の製造工程の処理は、上記第1実施形態と同様である。
【0141】
このような製造工程を経て製造した微小コイルに関して、コイル収量は65(g)であり、コイル収率は88(%)であり、また、コイル純度は100(%)であった。
【0142】
これによれば、本第2実施形態では、上記第1実施形態にて述べた製造装置による製造1と実質的に同様の製造結果を得ることができる。
【0143】
但し、本第2実施形態では、上記第1実施形態とは異なり、各原料ガス導入筒23〜25を容器本体20から下方へ延出させ、各ガス排出筒28を容器本体20aの上方へ延出させる構成を採用している。
【0144】
従って、原料ガスが各原料ガス導入筒を通り容器本体20a内に上方に向けて導入されることから、容器本体20a内において、円筒状基材30の外周面に沿い上方向に円滑にかつ良好に流動して、円筒状基材30の円筒状触媒層32の触媒との反応を、何ら制限されることなく、良好になし得る。また、容器本体20a内のガスが各排出筒28を通り上方に排出されるので、ガスの排出が円滑になされ得る。
【0145】
その結果、原料ガスの触媒との間の十分な熱分解反応や触媒反応が容器本体20a内において起こり、微小コイルの収量や純度が非常に高くなる。
【0146】
なお、上述のように、各原料ガス導入筒が容器本体20aから上方へ延出するとともに各ガス排出筒が容器本体20aから下方へ延出していることから、本第2実施形態の装置本体を複数準備しても、これら装置本体の積層は、各原料ガス導入筒及び各ガス排出筒により邪魔されて不可能である。このため、上記第1実施形態の装置本体を積層する場合に期待されるような微小コイルのコイル収量及びコイル収率の増大は困難である。その他の作用効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0147】
ちなみに、本第2実施形態における装置本体を実施例2−1とし、この実施例2−1と対比すべく、各比較例2−2及び2−3を準備した。
(比較例2−2)
この比較例2−2の装置本体では、実施例2−1の装置本体の反応容器において、当該反応容器とは異なり、各原料ガス導入筒を容器本体の上部から上方に向けて延出させ、各ガス排出筒を容器本体の下部から下方へ延出させる構成を採用して、原料ガスを各原料ガス導入筒から容器本体内に上方に向けて導入し、この容器本体内のガスを各ガス排出筒から上方へ排出するようにした。当該比較例2−2の装置本体のその他の構成は、実施例2−1と同様である。
【0148】
この比較例2−2によれば、微小コイルに関して、コイル収量は15(g)であり、コイル純度は20(%)〜30(%)の範囲内であった。従って、当該比較例8では、微小コイルのコイル収量及びコイル純度において、実施例1−1、1−2及び2−1のいずれと比較してもかなり低いことが分かる。
【0149】
しかも、比較例2−2の装置本体を複数準備しても、これら装置本体の積層は、各原料ガス導入筒及び各ガス排出筒により邪魔されて、実施例2−1の積層の場合と同様に不可能である。このため、上記第1実施形態にて述べた実施例1や実施例2の装置本体を積層する場合に期待されるような微小コイルのコイル収量及びコイル収率の増大は不可能である。
(比較例2−3)
この比較例2−3の装置本体は、比較例2−2の装置本体と同様である。このような比較例2−3を用いて上記第1実施形態にて述べた製造工程に従い、微小コイルを製造するにあたり、上記原料ガスが、原料ガス導入筒1本当たり、50(ミリリットル/分)のアセチレンガス、200(ミリリットル/分)の水素ガス及び0.06(ミリリットル/分)の硫化水素ガスを含むこと以外に、200(ミリリットル/分)の窒素ガス及び0.20(ミリリットル/分)のチオフェンガスを同時に連続して容器本体内に導入するようにした。その他は、比較例2−2と同様に製造とした。
【0150】
この比較例2−3によれば、微小コイルに関し、そのコイル収量は非常に少なく15(g)にすぎず、また、そのコイル純度も20(%)と低かった。
(第3実施形態)
図13及び図14は、本発明に係る微小コイルの製造装置の第3実施形態を示している。この第3実施形態においては、積層装置本体Baが、図13にて示すごとく、上記第1実施形態にて述べた製造装置の装置本体Bに代えて、採用されている。
【0151】
積層装置本体Baは、上記第1実施形態にて述べた装置本体Bを複数(例えば、3つ)積層して構成されている。3つの装置本体Bのうち、下側装置本体Bは、ケーシング10の下壁12にて、基台の水平面L(図1参照)上に載置される。
【0152】
また、3つの装置本体Bのうち、中側装置本体Bは、そのケーシング10の下壁12にて、下側装置本体Bのケーシング10の上壁11上に載置されており、上側装置本体Bは、そのケーシング10の下壁12にて、中側装置本体Bのケーシング10の上壁11上に載置されている。
【0153】
本第3実施形態では、3つの装置本体Bの各々の反応容器20の原料ガス導入筒群20b〜20dにおいて、原料ガス導入筒群20bを構成する各原料ガス導入筒23は、連結管23bでもって相互に連結され、原料ガス導入筒群20cを構成する各原料ガス導入筒24は、連結管24bでもって相互に連結され、また、原料ガス導入筒群20dを構成する各原料ガス導入筒25は、連結管25bでもって相互に連結されている。
【0154】
これにより、上記原料ガス供給源からの原料ガスは、連結管25b及び3組の原料ガス導入筒群20b〜20dの各原料ガス導入筒を通して容器本体20a内に導入される。
【0155】
また、3つの装置本体Bの各々の反応容器20のガス排出筒群20fを構成する各ガス排出筒28は、連結管28bでもって相互に連結されている。これにより、各容器本体20a内のガスは、各対応の各ガス排出筒28及び連結管28bを通して排出される。積層装置本体Baにおける各装置本体Bのその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0156】
本第3実施形態における加熱回路は、図14にて示すごとく、上記第1実施形態にて述べた加熱回路Eを、積層装置本体Baの装置本体B毎に採用して構成されている。ここで、各加熱回路Eの温度制御回路70が、ともに、開閉スイッチSWを介し交流電源PSに接続されている。
【0157】
従って、積層装置本体Baの装置本体B毎に、加熱回路Eが、その温度制御回路70にて、開閉スイッチSWを介し交流電源PSから交流電圧を供給されて、対応の温度センサ60の検出出力に基づき、対応の加熱器50を駆動して、対応の容器本体20aの温度を上記所定の高温に維持するように制御する。その他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0158】
このように構成した本第3実施形態において、微小コイルは、上記第1実施形態にて述べた製造工程に従い気相成長製造される。なお、この製造過程において、各装置本体Bの温度センサ60は、対応装置本体Bの円筒状基材30の中空部内中央部における温度を、対応装置本体Bの容器本体20aの温度として検出する。
【0159】
しかして、上記第1実施形態と同様に、図9の製造工程にて示す窒素ガス供給工程S1の処理にあわせ、或いは当該窒素ガス供給工程S1の処理の後に、加熱工程S2において、各装置本体Bの容器本体20aの加熱処理がなされる。この加熱処理では、各対応の温度制御回路70が、開閉スイッチSWの閉状態にて、交流電源PSから交流電圧を印加されて、作動状態となり、各対応の温度センサ60の現時点における検出温度に基づき、各対応の加熱器50を発熱するように制御する。
【0160】
これに伴い、各加熱回路Eの加熱器50が、対応の容器本体20aの温度を上記所定の高温750(℃)に上昇させるように当該対応の容器本体20aを加熱して上記所定の高温に維持する。
【0161】
また、原料ガス導入工程S5において、上記原料ガス供給源から供給される原料ガス、即ち、アセチレンガス、水素ガス及び硫化水素ガスの混合ガスを、容器本体20a毎に、対応の3組の原料ガス導入筒群20b〜20dの各原料ガス導入筒を通して対応の容器本体20a内にその左側から導入する。
【0162】
これに伴い、反応容器20ごとに、原料ガスと触媒層32の金属触媒との間で反応を開始する。すると、微小コイルは、反応容器20ごとに、上記第1実施形態と同様に、原料ガス導入筒の内径の2倍〜30倍の範囲内の径を有する円形内に密集して成長していく。
【0163】
然る後、反応容器20毎に、原料ガスと触媒層32の金属触媒との間の反応が終了すると、上記第1実施形態と実質的に同様に、円筒状基材30を容器本体20aの内部から取り出して、微小コイルを回収する。
【0164】
このようにして回収された微小コイルは、反応容器毎に、上記第1実施形態と同様に、一定のコイル径でもって規則的に巻いたソレノイド形状の微小コイルとして高純度にて装置本体Bの積層数に応じて多量に得られる。
【0165】
また、本第3実施形態にて述べた製造装置の積層装置本体Baによれば、反応容器20における3組の原料ガス導入筒群20b〜20dの各原料ガス導入筒と、ガス排出筒群20fの各ガス排出筒とが、装置本体Bごとに、容器本体20aの左右両側壁26a、26bから互いに逆方向に基台の水平面Lに平行となるように水平状にケーシング10から延出している。
【0166】
従って、本第3実施形態における製造装置において、各装置本体Bは、各ケーシング10にて上方に積層するにあたり、3組の原料ガス導入筒群20b〜20d及びガス排出筒群20fとの干渉を招くことなく、容易に積層することができる。これによれば、製造装置の積層数に比例して、微小コイルのコイル収量及びコイル収率を増大させることができるのは勿論のこと、当該製造装置の工場等内における設置面積を減少させて工場等内の利用効率を高めることができる。その他の作用効果は上記第1実施形態と同様である。
【0167】
なお、本発明の実施にあたり、上記実施形態に限ることなく、次のような種々の変形例が挙げられる。
(1)本発明の実施にあたり、反応容器20の容器本体20aは、上記実施形態にて述べた透明の石英に限ることなく、不透明の石英、ニッケル、ステンレス、ハステロイ、タングステン或いはチタンなどの耐熱性金属、アルミナ、セラミックス、金属製反応管であってその内面をセラミックスライニングした金属製反応管等の種々の材料でもって形成してもよい。
(2)本発明の実施にあたり、円筒状基材30の基体31は、透明な石英に限ることなく、不透明な石英でもって形成するようにしてもよい。
(3)本発明の実施にあたり、触媒層32は、金属触媒の粉末に限ることなく、金属板或いは金属触媒の粉末の焼結板であってもよい。
(4)本発明の実施にあたり、触媒層32は、上記第1実施形態とは異なり、金属触媒の粉末の水或いはアルコールなどへの分散液を基体31の外周面に塗布してもよく、また、これに代えて、ニッケル化合物の水溶液を基体31の外周面に塗布して形成されるニッケル触媒層であってもよい。このニッケル触媒層の厚さは、3(μm)〜6(μm)の範囲内の値であることが好ましい。当該ニッケル触媒層の厚さが3(μm)未満と薄い場合には、このニッケル触媒層の原料ガスとの反応開始時にニッケル触媒層内で異常な温度上昇が起こり、硬い炭素層が厚く析出するため、コイル状炭素繊維の収量及び収率は共に低下するからである。
(5)本発明の実施にあたり、原料ガス導入筒群20b〜20dの各原料ガス導入筒は、その基端開孔部にて、上記第1実施形態とは異なり、円筒状基材30の外周面にその面積の約3/1以上に亘り対向するように、容器本体20aに接合されていればよい。これにより、原料ガスの原料ガス導入筒群20b〜20dによる容器本体20a内への導入量は、反応時において、適切な量を確保し得る。
(6)本発明の実施にあたり、ガス排出筒28の本数は、上記第1実施形態にて述べた数に限ることなく、全原料ガス導入筒23〜25の数に対し、1/3〜1/20の範囲の本数に設定されていればよく、好ましくは、1/5〜1/10の範囲の本数に設定されていればよい。
(7)本発明の実施にあたり、容器本体20aの上記高温に維持した状態にて、静電場、変動電場、超音波場、静磁場、変動磁場或いはプラズマ場等の外部エネルギー場を単一的に或いは重畳的に反応容器20a内の反応場(原料ガスの触媒との反応場)に作用させるようにしてもよい。
【0168】
これによれば、当該外部エネルギー場によって原料ガス種の拡散・混合や分子運動の活性化、内部ネルギーの活性化、触媒活性の向上等をもたらして、原料ガスの触媒との熱分解反応を促進することができ、その結果、微小コイルのコイル収量とコイル収率を向上させることができる。
【0169】
また、外部エネルギー場の重畳効果により、金属触媒の結晶面での触媒活性の異方性を小さくすることによりコイル径の小さな微小コイルが得られ、逆に異方性を大きくすることによりコイル径の大きな微小コイルが得られる。このことは、微小コイルのコイル径及びコイルピッチの大きさを制御し得ることを意味する。
(8)本発明の実施にあたり、上記第3実施形態にて述べた装置本体Bの積層数は、3つに限ることなく、必要に応じて、適宜増減させてもよい。
(9)本発明の実施にあたり、上記第1実施形態にて述べた円筒状基材30に代えて、多角形状基材を採用してもよく、また、平板状基材を採用してもよい。
(10)本発明の実施にあたり、上記第1実施形態にて述べた装置本体Bにおいて、前後両側エンドカバー40は、断面コ字状の構成に限ることなく、それぞれ、単なる平板状のエンドカバーであってもよい。なお、この場合、当該平板状の各エンドカバーは、その外周部にて、耐熱性オーリングを介し円筒状容器本体20aの前後両端面の各々に当接されて、例えば、複数のネジにより着脱可能に締着される。
(11)本発明の実施にあたり、上記第1実施形態にて述べた原料ガス導入筒群20b〜20dのうちの原料ガス導入筒群20dは、上記第1実施形態とは異なり、容器本体20aの右側半円筒部26bの上側部位(左側反円筒部位26aの上側部位に対向する)からケーシング10の右壁14を介し右方へ延出するように構成してもよい。
【0170】
具体的には、各原料ガス導入筒25は、上記第1実施形態と異なり、各ガス排出筒28の上側に位置するように、容器本体20aの右側半円筒部26bの上側部位から右方へ延出するように構成してもよい。これにより、各原料ガス導入筒25を通して原料ガスを容器本体20a内に導入するにあたり、各原料ガス導入筒25の内部が詰まることなく、原料ガスを容器本体20a内に円滑に導入することができる。その結果、容器本体20a内における析出物の析出量が、上記第1実施形態にて述べた各原料ガス導入筒25による原料ガスの容器本体20a内への導入による析出物の析出量に比較して増大され得る。
【符号の説明】
【0171】
10…ケーシング、10a…矩形状筒体、10b…角柱状電気絶縁性充填部材、
20…反応容器、20a…容器本体、23、24、25…原料ガス導入筒、
28…ガス排出筒、30…円筒状基材、31…筒状基体、32…円筒状触媒層、
S2…加熱工程、50…加熱回路、60…温度センサ、70…温度制御回路、
S5…原料ガス導入工程。
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小コイルの製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の製造装置としては、下記特許文献1に記載のコイル状炭素繊維の製造装置が提案されている。この製造装置は、コイル状炭素繊維を成長させるに要する円管状の反応容器を有している。
【0003】
また、当該反応容器には、流入口、一対の注入口及び流出口が設けられている。上記流入口は、反応容器の中央上部周面に突出形成されており、当該流入口は、炭化水素ガス又は一酸化炭素ガス等の原料ガスを反応容器内に流入させる役割を果たす。上記一対の注入口は、反応容器の両端部の上部周面に突出形成されており、当該一対の注入口は、反応容器内にシールガスを注入させる役割を果たす。また、上記流出口は、反応容器の中央下部周面に、上記流入口に対応するように突出形成されており、当該流出口は、反応容器内に流入された原料ガスや、反応容器内に注入されたシールガスを流出させる役割を果たす。
【0004】
換言すれば、上述した流入口及び一対の注入口は、反応容器にその上部から上方へ垂直に延出するように設けられて、それぞれの役割を果たし、また、上述した流出口は、反応容器にその下部から下方へ垂直に延出するように設けられて、その役割を果たす。
【0005】
このように構成した製造装置において、反応容器を加熱器により所定温度に加熱した状態において、原料ガスを上記流入口から供給すると、当該原料ガスは、反応容器内に下方に向け流入して、反応容器内にて熱分解される。すると、このように熱分解した原料ガスのもとに、気相成長炭素繊維が、反応容器内に金属触媒を塗布して収容した基材上からコイル状に巻きながら成長する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−081051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記製造装置では、上述のごとく、流入口が、反応容器の上部からその上方へ垂直に延出されている。このことは、上記製造装置は、原料ガスを反応容器内にその上方から下方に向け強制的に導入する方式を採用していることを意味する。
【0008】
従って、このような製造装置では、反応容器内における原料ガスの対流等の流動や金属触媒との接触が、上述のような反応容器に対する流入口の構成に起因して、制限されてしまう。その結果、十分な熱分解反応や触媒反応が反応容器内において起こりにくく、コイルの収量や純度も非常に低いという不具合が生じる。
【0009】
また、上記製造装置では、上述のごとく、流入口が、反応容器の上部からその上方へ垂直に延出され、また、流出口が反応容器の下部からその下方へ垂直に延出されている。従って、上記製造装置において、当該反応容器を、複数、上下方向には積層しにくく、その結果、コイル状炭素繊維を効率よく多量に製造することができないという不具合も生ずる。
【0010】
そこで、本発明は、以上のようなことに対処するため、原料ガスの反応容器内への導入及び当該反応容器からのガス排出の構成に工夫を凝らし、反応容器内における原料ガスの流動や触媒との接触を良好に行うようにした微小コイルの製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題の解決にあたり、本発明に係る微小コイルの製造方法では、請求項1の記載によれば、
筒状容器本体(20a)と、この容器本体内にその軸方向に沿い挿入される基材であってその容器本体の内周面に対向するように触媒を担持してなる基材(30)とを有して、熱分解されたときガス状炭素種を生成する原料ガスを容器本体の両横方向対向壁部の一方から当該容器本体内に導入するとともに上記両横方向対向壁部の他方から容器本体内のガスを排出するようにした反応容器(20)を準備して、
容器本体を所定の高温に加熱して維持する加熱工程(S2)と、
容器本体にその両横方向対向壁部の上記一方から上記原料ガスを導入する原料ガス導入工程(S5)とを備えて、
当該原料ガス導入工程にて、容器本体を上記所定の高温に維持した状態にて、容器本体内に導入した上記原料ガスを上記触媒により熱分解して基材にガス状炭素種を生成させ、このガス状炭素種に基づき基材から微小コイルを成長させて製造するようにした。
【0012】
これによれば、反応容器において、原料ガスが容器本体の両横方向対向壁部の一方から当該容器本体内に導入されるから、このように当該容器本体内に導入された原料ガスは、容器本体内において、横方向に円滑にかつ良好に流動して、基材の触媒との反応を良好になし得る。
【0013】
従って、容器本体を上記所定の高温に維持した状態にて、容器本体内に導入した上記原料ガスを上記触媒により熱分解してガス状炭素種を基材に良好に生成させ得る。その結果、このガス状炭素種に基づく微小コイルの基材からの成長製造が良好に効率よくなされ得る。
【0014】
また、本発明に係る微小コイルの製造方法では、請求項2の記載によれば、
筒状容器本体(20a)と、この容器本体内にその軸方向に沿い挿入される基材であってその容器本体の内周面に対向するように触媒を担持してなる基材(30)とを有して、熱分解されたときガス状炭素種を生成する原料ガスを容器本体の上下方向対向壁部のうち下方向対向壁部から当該容器本体内に導入するとともに上記上下方向対向壁部のうち上方向対向壁部から容器本体内のガスを排出するようにした反応容器を準備して、
容器本体を所定の高温に加熱して維持する加熱工程(S2)と、
容器本体に上記下方向対向壁部から上記原料ガスを導入する原料ガス導入工程(S5)とを備えて、
当該原料ガス導入工程にて、容器本体を上記所定の高温に維持した状態にて、容器本体内に導入した上記原料ガスを上記触媒により熱分解して基材にガス状炭素種を生成させ、このガス状炭素種に基づき基材から微小コイルを成長させて製造するようにした。
【0015】
これによれば、反応容器において、原料ガスが容器本体内にその下方から導入されるから、このように当該容器本体内に導入された原料ガスは、容器本体内において、上方へ円滑にかつ良好に流動して、基材の触媒との反応を良好になし得る。その結果、請求項1に記載の発明と実質的に同様の作用効果が達成され得る。
【0016】
また、本発明は、請求項3の記載によれば、請求項1または2に記載の微小コイルの製造方法において、
基材は、筒状容器本体内にその軸方向に挿入されて外周面に上記触媒を担持してなる筒状基体(31)を有しており、
上記原料ガス導入工程にて、筒状容器本体を上記所定の高温に維持した状態にて、筒状容器本体内に導入した上記原料ガスを上記触媒により熱分解させて筒状基体の外周面にガス状炭素種を生成させ、このガス状炭素種に基づき筒状基体の外周面から微小コイルを成長させて製造するようにしたことを特徴とする。
【0017】
このように、基材が、筒状容器本体内にその軸方向に挿入されて外周面に上記触媒を担持してなる筒状基体であることから、微小コイルが筒状基体の外周面から成長することとなる。その結果、微小コイルをより一層多量に効率よく製造し得る。
【0018】
また、本発明は、請求項4の記載によれば、請求項1〜3のいずれか1つに記載の微小コイルの製造方法において、
上記原料ガスは、アセチレンガス、水素ガス及び硫化水素ガスからなる混合ガスであり、
上記加熱工程において、上記所定の高温を600(℃)〜900(℃)の範囲内の温度として、この温度に容器本体を加熱して維持することを特徴とする。
【0019】
このように、原料ガスは、アセチレンガス、水素ガス及び硫化水素ガスからなる混合ガスであって、窒素ガスやチオフェンのような原料ガスに害をなすような成分を含まない。従って、原料ガスの触媒との反応による熱分解が良好になされ得ることから、微小コイルの成長がより一層良好になされ得る。
【0020】
また、本発明に係る微小コイルの製造装置は、請求項5の記載によれば、
ケーシング(10、10a、10b)と、反応容器(20)と、基材(30)と、加熱制御手段(50、60、70)とを備えて、
反応容器は、
ケーシング内に軸方向に挿入される筒状容器本体(20a)と、
この容器本体の両横方向対向壁部の一方から外方へ延出されて、熱分解されたときガス状炭素種を生成する原料ガスを、原料ガス供給源から容器本体内に導入する少なくとも1本の原料ガス導入筒(23、24、25)と、
容器本体の上記両横方向対向壁部の他方から上記少なくとも1本の原料ガス導入筒とは逆方向に外方へ延出されて容器本体内のガスを排出する少なくとも1本のガス排出筒(28)とを具備しており、
基材は、容器本体内にその軸方向に沿い挿入されて、容器本体の内周面に対向するように触媒を担持してなり、
加熱制御手段は、容器本体を所定の高温に維持するように加熱制御するようにして、
容器本体を上記所定の高温に維持した状態にて、容器本体内の上記原料ガスを上記触媒により加熱分解して基材にガス状炭素種を生成させ、このガス状炭素種に基づき基材から微小コイルを成長させて製造するようにした。
【0021】
これによれば、少なくとも1本の原料ガス導入筒が容器本体の両横方向対向壁部の一方から延出され、少なくとも1本のガス排出筒が容器本体の両横方向対向壁部の他方から上記少なくとも1本の原料ガス導入筒とは逆方向に延出されている。
【0022】
このため、このように当該容器本体内に導入された原料ガスは、容器本体内において、基材に沿い横方向へ円滑にかつ良好に流動して、当該基材の触媒との反応を良好になし得る。従って、容器本体を上記所定の高温に維持した状態にて、容器本体内に導入した上記原料ガスを上記触媒により熱分解してガス状炭素種を基材に良好に生成させ得る。その結果、このガス状炭素種に基づく微小コイルの基材からの成長製造が良好に効率よくなされ得る。
【0023】
また、本発明に係る微小コイルの製造装置は、請求項6の記載によれば、
ケーシング(10、10a、10b)と、反応容器(20)と、基材(30)と、加熱制御手段(50、60、70)とを備えて、
反応容器は、
ケーシング内に軸方向に挿入される筒状容器本体(20a)と、
この容器本体の両上下方向対向壁部のうち下方向対向壁部から下方へ延出されて、熱分解されたときガス状炭素種を生成する原料ガスを、原料ガス供給源から容器本体内に導入する少なくとも1本の原料ガス導入筒(23、24、25)と、
容器本体の上記両上下方向対向壁部のうち上方向対向壁部から上記少なくとも1本の原料ガス導入筒とは逆方向に上方へ延出されて容器本体内のガスを排出する少なくとも1本のガス排出筒(28)とを具備しており、
基材は、容器本体内にその軸方向に沿い挿入されて、容器本体の内周面に対向するように触媒を担持してなり、
加熱制御手段は、容器本体を所定の高温に維持するように加熱制御するようにして、
容器本体を上記所定の高温に維持した状態にて、容器本体内の上記原料ガスを上記触媒により加熱分解して基材にガス状炭素種を生成させ、このガス状炭素種に基づき基材から微小コイルを成長させて製造するようにした。
【0024】
これによれば、少なくとも1本の原料ガス導入筒が容器本体から下方へ延出され、少なくとも1本のガス排出筒が容器本体から上方へ延出されている。
【0025】
このため、このように当該容器本体内に導入された原料ガスは、容器本体内において、基材に沿い上方へ円滑にかつ良好に流動して、当該基材の触媒との反応を良好になし得る。従って、容器本体を上記所定の高温に維持した状態にて、容器本体内に導入した上記原料ガスを上記触媒により熱分解してガス状炭素種を基材に良好に生成させ得る。その結果、このガス状炭素種に基づく微小コイルの基材からの成長製造が良好に効率よくなされ得る。
【0026】
また、本発明は、請求項7の記載によれば、請求項5または6に記載の微小コイルの製造装置において、
基材は、筒状容器本体内にその軸方向に挿入されて外周面に前記触媒を担持してなる筒状基体(31)を有することを特徴とする。
【0027】
これにより、筒状容器本体内に導入した原料ガスは、筒状基体の外周面に沿い流動して、触媒と反応して熱分解により筒状基体から微小コイルを成長させることとなる。従って、微小コイルの成長領域が、筒状基体の外周面に亘る広範囲となり、その結果、微小コイルをより一層多量に効率よく成長させ得る。
【0028】
また、本発明は、請求項8の記載によれば、請求項7に記載の微小コイルの製造装置において、
筒状基材は、筒状基体(31)と、ニッケル金属を、その表面に部分酸化及び部分硫化を施した上で2(μm)〜6(μm)の範囲内の厚さでもって、筒状基体の外周面に塗布することで、上記触媒として筒状基体の上記外周面に担持させてなる触媒層(32)とにより構成されていることを特徴とする。
【0029】
このように、触媒層を形成することで、原料ガスの触媒との反応による熱分解をより一層良好にし得る。その結果、請求項7に記載の発明の作用効果がより一層向上され得る。
【0030】
また、本発明は、請求項9の記載によれば、請求項7または8に記載の微小コイルの製造装置において、
上記少なくとも1本の原料ガス導入筒は、複数の原料ガス導入筒であって、
当該複数の原料ガス導入筒は、筒状基材のうち軸方向長さの1/3以上の長さに対応する部位から当該筒状基材の軸方向に原料ガス導入筒の内径の20倍以内の間隔をおいて延出されており、
筒状基材の外周面と前記原料ガス導入筒の内端開口部との間の径方向対向間隔が、5(mm)〜50(mm)の範囲内の値に設定されていることを特徴とする。
【0031】
これにより、容器本体内の原料ガスの筒状基材の触媒との反応が効率よくなされ、その結果、請求項7または8に記載の作用効果がより一層向上され得る。
【0032】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る微小コイルの製造装置の第1実施形態における装置本体を設置面上に載置した状態で示す平面図である。
【図2】上記第1実施形態における加熱回路を示すブロック図である。
【図3】上記第1実施形態における装置本体を設置面上に載置した状態で示す右側側面図である。
【図4】上記第1実施形態における装置本体を設置面上に載置した状態で示す左側側面図である。
【図5】上記第1実施形態における装置本体の図4にて5−5線に沿う横断面斜視図である。
【図6】上記第1実施形態における反応容器を加熱器とともに示す斜視図である。
【図7】上記第1実施形態における反応容器の横断面斜視図である。
【図8】上記第1実施形態における装置本体を円筒状基材の外周面に微小コイルを成長させる状態にて示す横断面図である。
【図9】上記第1実施形態における微小コイルの製造工程図である。
【図10】上記第1実施形態にて製造した微小コイルを、電子顕微鏡による拡大写真でもって示す図である。
【図11】上記第1実施形態にて製造した微小コイルを含む析出物を、電子顕微鏡による拡大写真でもって示す図である。
【図12】上記第1実施形態にて得られた他の析出物を、電子顕微鏡による拡大写真でもって示す図である。
【図13】本発明に係る微小コイルの製造装置の第3実施形態の要部を示す横断面斜視図である。
【図14】上記第3実施形態における加熱回路を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の各実施形態を図面により説明する。
(第1実施形態)
図1及び図2は、本発明にかかる微小コイルの製造装置の第1実施形態を示しており、この製造装置は、装置本体B(図1参照)と、加熱回路E(図2参照)とにより構成されている。本第1実施形態において、上記微小コイルは、炭素種から成長する微小コイルであって、カーボンマイクロコイルともいう。これは、微小コイルのコイル径がμmオーダーであることに起因する。
【0035】
なお、図1において、図示左側及び右側が、それぞれ、装置本体Bの後側及び前側に対応し、図示上側及び図示下側が、それぞれ、装置本体Bの左側及び右側に対応する。また、図1において、紙面の手前側及び奥側が、それぞれ、装置本体Bの上側及び下側に対応する。
【0036】
装置本体Bは、図1にて示すごとく、ケーシング10と、反応容器20と、円筒状基材30と、前後両側エンドカバー40とを備えている。ケーシング10は、横断面矩形状筒体10aと、角柱状電気絶縁性充填部材10bとを備えている(図5参照)。
【0037】
筒体10aは、図5にて例示するごとく、横断面コ字状の上壁11、横断面コ字状の下壁12、左壁13及び右壁14でもって矩形筒状となるように、ステンレスでもって形成されている。ここで、上壁11は、その左右両縁部にて、下方に向けL字状に折れ曲がって、左右両壁13、14の各上縁部に外方から着脱可能に組み付けられている。また、下壁12は、その左右両縁部にて、上方に向けL字状に折れ曲がって、左右両壁13、14の各下縁部に外方から着脱可能に組み付けられている。
【0038】
角柱状電気絶縁性充填部材10bは、ロックウール等の柔軟性電気絶縁材料により角柱状に形成されており、この充填部材10bは、筒体10a内に同軸的に収容されている。これにより、当該充填部材10bは、後述のごとく、容器本体20aを、筒体10aから電気的に絶縁しつつ当該筒体10a内に同軸的に支持する役割を果たす。なお、当該装置本体Bの設置にあたり、ケーシング10は、通常、筒体10aの下壁12にて、基台の水平面L上に載置される(図1、図3或いは図4参照)。
【0039】
反応容器20は、図1、図3〜図7のいずれかにて示すごとく、円筒状容器本体20aと、3組の原料ガス導入筒群20b〜20dと、シールガス注入筒群20eと、ガス排出筒群20fとを備えている。
【0040】
容器本体20aは、透明の石英でもって円筒状に形成されており、この容器本体20aは、電気絶縁性充填部材10bの貫通穴部15内に同軸的に挿通されている。ここで、貫通穴部15は、電気絶縁性充填部材10b内に同軸的に形成されている。これにより、容器本体20aは、その軸方向前後両端部21、22にて、筒体10aの軸方向両端開口部及び電気絶縁性充填部材10bの軸方向両端開口部から互いに逆方向に延出するとともに、充填部材10bによって、上述のごとく、筒体10aから電気的に絶縁されつつ当該筒体10a内に同軸的に支持されている。
【0041】
本第1実施形態において、容器本体20aの形成材料として、透明の石英を採用したのは、透明の石英が、触媒活性、硫化水素に対する耐食性、直線状炭素繊維や固形炭素膜や炭素粉等の微小コイル生成反応以外の副反応を抑制すること及び容器本体20aの内部を外部から透視し易いことに起因する。
【0042】
また、容器本体20aの内径は、原料ガス(後述する)の対流等の流動や混合、金属触媒との接触、排気ガスの効率的排出等の点から、30(mm)〜300(mm)の範囲の値に設定されることが好ましく、さらには、100(mm)〜150(mm)の範囲内の値に設定されることが、より一層好ましい。本第1実施形態では、容器本体20aの内径は、100(mm)に設定されている。
【0043】
また、容器本体20aの全長は、600(mm)〜2500(mm)の範囲内の値に設定されることが好ましく、さらには、1000(mm)〜1800(mm)の範囲の値に設定されることが、より一層好ましい。本第1実施形態では、容器本体20aの全長は、1500(mm)に設定されている。
【0044】
3組の原料ガス導入筒群20b〜20dは、原料ガス供給源(図示しない)からの原料ガス(後述する)を容器本体20a内に導入する役割を果たすもので、当該3組の原料ガス導入筒群20b〜20dは、図3、図5、図6及び図7のいずれかにて示すごとく、容器本体20aの左側半円筒部26aからケーシング10の左壁13を介し左方へ延出されている。
【0045】
ここで、上記原料ガスとしては、触媒ガス及び水素ガスの他、熱分解して容易にガス状炭素種を生成するアセチレン、メタン、プロパン等の炭化水素ガスや一酸化炭素ガスが挙げられる。これらの原料ガスのうち、アセチレンが最も好ましい。これは、アセチレンが、反応温度で容易に熱分解して金属触媒と反応し、金属触媒粒の各結晶面での触媒活性の異方性を効率よく発現させるからである。
【0046】
そこで、本第1実施形態においては、アセチレンガスが、水素ガス、及び触媒ガスである硫化水素ガスとともに、上記原料ガスとして採用されている。
【0047】
また、上記触媒ガスとしては、周期律表の第15属及び第16族を含むガスであって、イオウ、チオフェン,メチルメルカプタン、硫化水素等のイオウ原子を含む化合物のガス、或いはリン、3塩化リン等のリン原子を含む化合物のガスが挙げられる。上記触媒ガスのうち、使用の簡便性と微小コイルを高収量と高収率で得る観点から、硫化水素ガスが最も好ましい。
【0048】
そこで、本第1実施形態では、硫化水素ガスが、上記触媒ガスとして、上述のごとく、原料ガスのうちの1つのガスとして、採用されている。また、上記触媒ガスである硫化水素ガスの反応雰囲気中の濃度は、0.01(容量%)〜0.5の範囲内の濃度であり、さらに0.05(容量%)〜0.2(容量%)範囲内の濃度であることがより好ましい。よって、本第1実施形態では、硫化水素ガスの容器本体20a内への供給濃度は、反応雰囲気中の濃度を0.05(容量%)〜0.2(容量%)範囲内の濃度とするように設定されている。
【0049】
なお、硫化水素ガスの濃度が0.01(容量%)未満或いは0.5(容量%)を超えて高くなると、微小コイルの成長は殆ど得られない。また、硫化水素ガスの流量は少ないので、1(容量%)〜2(容量%)の範囲内の値の水素バランスガスが用いられる。
【0050】
また、3組の原料ガス導入筒群20b〜20dは、原料ガス導入筒群20bから原料ガス導入筒群20dにかけて、容器本体20aの左側半円筒部26aの上側部位、中側部位及び下側部位から延出されている。
【0051】
また、左側半円筒部26aの上側部位、中側部位及び下側部位において、上記中側部位は、容器本体20aの左側半円筒部26aの上下方向中央部位に相当する。これに伴い、上記上側部位は、上記中側部位と左側半円筒部26aの上縁部位との間の中央部位に相当し、一方、上記下側部位は、上記中側部位と左側半円筒部26aの下縁部位との間の中央部位に相当する。
【0052】
従って、左側半円筒部26aは、上記中側部位にて、容器本体20aのケーシング10の下壁12に平行な断面(平行断面)内に位置し、上記上側部位にて、容器本体20aの上記平行断面に対し当該容器本体20aの中心を基準に上方へ45°傾斜する断面(上方傾斜断面)内に位置し、また、上記下側部位にて、容器本体20aの上記平行断面に対し当該容器本体20aの中心を基準に下方へ45°傾斜する断面(下方傾斜断面)内に位置する。
【0053】
原料ガス導入筒群20bは、複数本(例えば、16本)の原料ガス導入筒23からなるもので、当該複数の原料ガス導入筒23は、その各基端開孔部23aにて、容器本体20aの左側半円筒部26aの上記上側部位の前後方向において等間隔にて溶接等により接合されて、容器本体20aの内部に連通している。また、当該複数の原料ガス導入筒23は、その基端開孔部23aからケーシング10の左壁13の上側部位を通り左方へ延出している。
【0054】
原料ガス導入筒群20cは、複数(例えば、16本)の原料ガス導入筒24を有しており、当該複数の原料ガス導入筒24は、その各基端開孔部24aにて、容器本体20aの左側半円筒部26aの上記中側部位に前後方向において上記等間隔にて溶接等により接合されて、容器本体20aの内部に連通している。また、当該複数の原料ガス導入筒24は、その基端開孔部24aからケーシング10の左壁13の中側部位を通り左方へ延出している。
【0055】
原料ガス導入筒群20dは、複数(例えば、16本)の原料ガス導入筒25を有しており、当該複数の原料ガス導入筒25は、その各基端開孔部25aにて、容器本体20aの左側半円筒部26aの上記下側部位に前後方向において上記等間隔にて溶接等により接合されて、容器本体20aの内部に連通している。また、当該複数の原料ガス導入筒24は、その基端部からケーシング10の左壁13の下側部位を通り左方へ延出している。
【0056】
なお、原料ガス導入筒群20bから原料ガス導入筒群20dにかけて、各対応の原料ガス導入筒22、23及び25は、互いに上下方向に対応するように、容器本体20aの同一の前後方向位置にある。
【0057】
本第1実施形態において、3組の原料ガス導入筒群20b〜20dの各原料ガス導入筒の内径は、原料ガスの流量や流速を所定範囲内に保持するために、3(mm)〜50(mm)の範囲の値に設定されることが好ましく、さらには、6(mm)〜30(mm)の範囲の値に設定されることがより一層好ましい。
【0058】
本第1実施形態では、原料ガス導入筒群20b〜20dの各原料ガス導入筒の内径は、9(mm)に設定されている。なお、原料ガス導入筒群20b、20b及び20dの各々において、互いに隣り合う各両原料ガス導入筒の中心間隔は、75(mm)に設定されている。
【0059】
シールガス注入筒群20eは、シールガス供給源(図示しない)から容器本体20a内にシールガス(後述する)を注入する役割を果たすもので、当該シールガス注入筒群20eは、図1或いは図3にて示すごとく、容器本体20aの左側半円筒部26aの上記中側部位からケーシング10の左壁13を介し左方へ延出されている。本第1実施形態において、上記シールガスとして、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの化学的に不活性なガス或いは水素ガスが挙げられる。これは、外部から容器本体20a内に混入される酸素ガスや当該容器本体20a内に導入される窒素ガス等によって、余分な或いは有害な影響を反応系に与えられることを防止するためである。本第1実施形態では、水素ガスがシールガスとして採用されている。
【0060】
当該シールガス注入筒群20eは、例えば、2本のシールガス注入筒27からなるもので、当該2本のシールガス注入筒27は、その基端開孔部にて、容器本体20aの左側半円筒部26aの上記中側部位に原料ガス導入筒群20bの前後両側にて溶接等により接合されて、容器本体20aの内部に連通している。また、各シールガス注入筒27は、その基端開孔部からケーシング10の左壁13の上記中側部位を通り左方へ延出している。
【0061】
ガス排出筒群20fは、容器本体20a内のガスを当該容器本体20aの外部に排出する役割を果たすもので、当該ガス排出筒群20fは、図1、図4或いは図6にて示すごとく、容器本体20aの右側半円筒部26bからケーシング10の右壁14を介し右方へ延出されている。
【0062】
当該ガス排出筒群20fは、例えば、5本のガス排出筒28からなるもので、各ガス排出筒28は、その基端開孔部28aにて、容器本体20aの右側半円筒部26bの中側部位にその前後方向において等間隔にて溶接等により接合されて、容器本体20aの内部に連通している。ここで、右側半円筒部26bの中側部位は、容器本体20aの前後方向軸を介し左側半円筒部26aの中側部位に対向する。また、各ガス排出筒28は、その基端開孔部28aからケーシング10の右壁14の中側部位(左側半円筒部26aの中側部位に対応)を通り右方へ延出している。なお、各ガス排出筒28の内径は、ガス排出筒間で同一であるが、当該各ガス排出筒28の内径の総和は、全原料ガス導入筒23〜25の各断面積の総和に相当する断面積を確保するように設定されている。これは、容器本体20a内のガスの排出を円滑に行うためである。
【0063】
本第1実施形態において、容器本体20aの最前端側に位置するガス排出筒28の基端開孔部28aは、容器本体20aの最前端側に位置する原料ガス導入筒24から後側へ3本目の原料ガス導入筒24の基端開孔部24aに対向し、また、容器本体20aの最後端側に位置するガス排出筒28の基端開孔部28aは、容器本体20aの最後端側に位置する原料ガス導入筒24から前側へ3本目の原料ガス導入筒24の基端開孔部24aに対向する。
【0064】
円筒状基材30は、多数の微小コイルを成長させる役割を果たすもので、この円筒状基材30は、後述のごとく、反応容器20a内にて同軸的に収容されている。なお、円筒状基材30は、その外周面にて、反応容器20aの3組の原料ガス導入筒群20b〜20dの各原料ガス導入筒の基端開孔部に対向している。
【0065】
当該円筒状基材30は、図1、図4或いは図6にて示すごとく、円筒状基体31と、円筒状触媒層32と、前後両側脚33とにより構成されている。円筒状基体31は、透明な石英でもって円筒状に形成されており、当該円筒状基体31の外周面には、サンドブラスト処理が施されている。
【0066】
円筒状触媒層32は、金属触媒の粉末を基体31の外周面に亘り、例えば、刷毛を用いて塗布することで円筒状に形成されている。ここで、円筒状基体31の外周面には、上述のごとく、サンドブラスト処理が施されているから、金属触媒の粉末は、基体31の外周面に対し良好に担持され得る。このことは、円筒状基材30が、円筒状基体31の外周面に触媒層32でもって金属触媒の粉末を円筒状に担持することを意味する。
【0067】
ここで、上記金属触媒としては、ニッケル、鉄、チタン或いはタングステン等の遷移金属の単体や合金の他、遷移金属の酸化物、炭化物、硫化物、窒化物、リン化物、炭酸化物或いは炭硫化物等から選択される少なくとも1種の化合物が挙げられる。
【0068】
また、上記金属触媒の粉末の平均粒径は、50(nm)〜5(μm)の範囲内の粒径である。上記金属触媒としては、より好ましくは、ニッケル、チタン、タングステンなどの金属、合金、酸素との固溶体、酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、炭酸化物或いは炭硫化物等が挙げられる。その中でも、金属触媒の各結晶面での触媒活性の異方性及びコストの点から、ニッケルと酸素の固溶体が、上記金属触媒として、最も好ましい。
【0069】
この点につき詳細に述べれば、従来、金属触媒として、Ni、Fe、Nb、NiO、Auのうちの1種類の金属が用いられてきた。Ni、Fe、Nb等の純粋な金属を触媒として用いた場合、規則的に巻いた純粋な微小コイル以外にも、かなりの量の大きく巻いた炭素繊維や直線状の炭素繊維が析出し、コイル純度の低いものしか得られなかった。また、NiO触媒の場合、コイル収量やコイル純度は非常に低かった。
【0070】
ガス状炭素種から気相成長する炭素繊維がコイル状に巻くためには、触媒の中心部分は単結晶であり、それぞれの結晶面での触媒活性に差があること、換言すれば、異方性があることが必須条件である。
【0071】
例えば、Niの場合、異方性はNi単結晶表面に存在するNi−C−S−O系の4元系疑液相(液晶相)の組成比の違いによってもたらされると考えられている。これは、例えば、Ni(100)、Ni(110)及びNi(111)の結晶面では、それぞれの結晶面における原料ガス中の、C、S及びOとの反応性や吸着能が異なることに起因している。Ni酸化物であるNiOの場合、そのような効果は小さく、従って、コイルになる割合も非常に低い。
【0072】
ニッケル触媒の触媒活性の異方性を十分発現させるためには、予めその表面を部分酸化及び部分硫化処理することが必須条件である。この処理により、その後アセチレンを導入して反応を行った際に、極めて効率よく異方性が発現され、微小コイルが効率よく成長する。部分酸化処理及び硫化処理を行わず、直接、アセチレンを導入して反応を行うと、十分な異方性が発現されず、従って、微小コイルのコイル収率及びコイル純度も著しく低下する。
【0073】
このため、本第1実施形態では、ニッケルと酸素との固溶体が、上記金属触媒として用いられている。具体的には、ニッケルの粉末を、その表面にて部分酸化及び部分硫化処理した上で、酸素との固溶体とし、2(μm)〜5(μm)の範囲内の厚さとなるように基体31に塗布して触媒層32としている。
【0074】
また、本第1実施形態において、基体31は、30(mm)〜250(mm)の範囲内の外径を有する。但し、三組の原料ガス導入筒群20b〜20dの各原料ガス導入筒の基端開孔部の開孔面(容器本体20aの内周面)と円筒状基材30の外周面(触媒層32の外周面)との間の基体31の径方向に沿う所定対向間隔が、1(mm)〜80(mm)の範囲内の値に設定されるように、基体31の外径が選定されている。また、当該所定対向間隔は、より好ましくは、10(mm)〜50(mm)の範囲内に設定されるように、さらに最も好ましくは、15(mm)〜30(mm)の範囲内に設定されるように、基体31の外径が選定される。
【0075】
上記所定対向間隔が30(mm)を越えて増大するにつれて、規則的に巻いた微小コイルの割合が減少し、コイル径は次第に大きく不規則になり、また大きくカールした微小コイルの割合が次第に増加する。上記所定対向間隔が、1(mm)未満となるか、或いは100(mm)を超えて増大すると、微小コイルは全く得られず、直線状炭素繊維または炭素粉末のみが析出される。本第1実施形態では、三組の原料ガス導入筒群20b〜20dの各原料ガス導入筒の基端開孔部の開孔面と円筒状基材30の外周面との間の基体31の径方向に沿う所定対向間隔は、25(mm)に設定されるとともに、基体31の外径は、60(mm)に設定されている。
【0076】
前後両側脚33は、図1、図4或いは図6にて示すごとく、共に、同一の二股形状にて、触媒層32の軸方向両端下部から下方へ着脱可能に延出されている。このことは、前後両側脚33は、その各二股部にて、容器本体20aの内周面の前後方向両側下部上に着座して、基体31を容器本体20a内に同軸的に支持することを意味する。
【0077】
前後両側エンドカバー40は、それぞれ、円板状壁部41と、この円板状壁部41の外周部から延出する環状壁部42とでもって、透明の石英により、縦断面コ字状に形成されている。
【0078】
しかして、前後両側エンドカバー40のうち前側エンドカバー40は、その環状壁部42にて、前側耐熱性オーリング42aを介し、容器本体20aの軸方向前端部21に気密的に着脱可能に嵌装されている。また、後側エンドカバー40は、その環状壁部42にて、後側耐熱性オーリング42aを介し、容器本体20aの軸方向後端部22に気密的に嵌装されている。なお、前側耐熱性オーリング42aは、前側エンドカバー40の環状壁部42の軸方向中間部位にその内面側から形成した環状溝部内に収容されており、後側耐熱性オーリング42aは、後側エンドカバー40の環状壁部42の軸方向中間部位にその内面側から形成した環状溝部内に収容されている。
【0079】
加熱回路Eは、図2にて示すごとく、加熱器50と、温度センサ60と、温度制御回路70とを備えている。加熱器50は、複数の発熱線部材51からなるもので、当該複数の発熱線部材51は、それぞれ、互いに並行な両並行線部51a、51bと、これら両並行線部51a、51bを連結する連結線部51cとでもって、U字状となるように、所定長さのニクロム線を折り曲げて形成されている。
【0080】
このように構成した複数の発熱線部材51は、図6にて示すごとく、容器本体20aの外周面に沿い、その周方向に等角度間隔にて、配設されており、当該複数の発熱線部材51は、発熱線部材ごとに、その連結部51cを、容器本体20aの後側に位置させるとともに、両並行線部51a、51bを、容器本体20aの前後方向に沿い延在させるように配設されている。これにより、加熱器50は、複数の発熱線部材51にて、容器本体20aのほぼ全体に亘り分散して位置するように配設されている。
【0081】
しかして、このように配設された加熱器50において、複数の発熱線部材51は、各並行線部51aの接続端部にて相互に接続されるとともに、各並行線部51bの接続端部にて相互に接続されている。これにより、加熱器50は、各発熱線部材51の発熱により、容器本体20aをその外周面のほぼ全体から加熱する。
【0082】
温度センサ60は、高温検出型熱電対からなるもので、この温度センサ60は、図1或いは図5から分かるように、円筒状基材30の中空部内中央部に支持されている。ここで、当該中空部内中央部は、円筒状基材30の中空部の前後方向中央部であって径方向中央部に相当する。これにより、当該温度センサ60は、円筒状基材30の中空部内中央部における温度を、容器本体20aの温度として検出する。
【0083】
温度制御回路70は、インバータからなるもので、この温度制御回路70は、交流電源PSから開閉スイッチSWを介し200(V)の交流電圧を供給されて、温度センサ60の検出温度に基づき、加熱器50をその各発熱線部材51にて発熱するように駆動制御する。ここで、この駆動制御は、温度センサ60の検出温度に基づき容器本体20aを所定の高温に維持するようになされる。このことは、容器本体20aの内部を上記所定の高温に維持することを意味する。
【0084】
ここで、上記所定の高温は、微小コイルの収量及び収率の観点から、600(℃)〜950(℃)の範囲内の温度に設定されることが好ましく、また、この範囲のうちでも、700(℃)〜800(℃)の範囲内の温度に設定されることがより一層好ましい。そこで、本第1実施形態においては、上記所定の高温は、750(℃)の温度に設定されている。なお、上記所定の高温が600(℃)未満或いは950(℃)を超えて高い場合には、微小コイルは殆ど成長することがない。
【0085】
以上のように構成した本第1実施形態において、微小コイルは、当該製造装置により次のように気相製造される。なお、この気相製造過程において、温度センサ60は、円筒状基材30の中空部内中央部における温度を、容器本体20aの温度として検出する。
【0086】
しかして、まず、図9の製造工程にて示すごとく、窒素ガス供給工程S1の処理がなされる。この窒素ガス供給工程S1において、窒素ガス供給源(図示しない)からの窒素ガスを、1000(ミリリットル/分)の流量にて、原料ガス導入筒群20bの全原料ガス導入筒を通して反応容器20の容器本体20a内に供給する。
【0087】
これに伴い、容器本体20a内に供給された窒素ガスは、当該容器本体20a内を流動して、この容器本体20a内の酸素等のガスを押し出すようにしてガス排出筒群20fから排出される。これにより、容器本体20aを含む反応容器20の内部の脱気処理及び脱酸素処理がなされ得る。
【0088】
また、上記窒素ガス供給工程S1の処理にあわせ、或いは当該窒素ガス供給工程S1の処理の後に、加熱工程S2において、容器本体20aの加熱処理がなされる。この加熱処理では、温度制御回路70が、開閉スイッチSWの閉状態にて、交流電源PSから交流電圧を印加されて、作動状態となり、温度センサ60の現時点における検出温度に基づき、加熱器50を発熱するように駆動制御する。
【0089】
これに伴い、各発熱線部材51が、発熱により、容器本体20aの温度を上記所定の高温に上昇させるように当該容器本体20aを加熱する。また、容器本体20aの温度が上記所定の高温750(℃)に達した後は、当該容器本体20aの温度が変動しても、温度制御回路70は、その後の温度センサ60の検出温度に基づき、容器本体20aの温度を上記所定の高温750(℃)に維持するように加熱器50を制御する。これにより、容器本体20aの内部は、上記所定の高温750(℃)に維持される。
【0090】
このように加熱工程S2を処理した後、窒素ガス供給停止工程S3において、上記窒素ガス供給源から容器本体20a内への窒素ガスの供給を停止する。
【0091】
然る後、次のシールガス注入工程S4において、シールガスである水素ガスを、1000(ミリリットル/分)にて、シールガス注入筒群20eの各シールガス注入筒27を通して容器本体20a内に注入する。これに伴い、先に容器本体20a内に供給済みの窒素ガスが、容器本体20a内への注入シールガスにより排出ガス筒群20eの各排出筒27から排出される。
【0092】
このため、容器本体20aの内部は、円筒状基材30の内部をも含め、シールガスである水素ガスのみの雰囲気となる。これにより、容器本体20aの内部においては、円筒状基材30の内部をも含め、余分な或いは有害な影響が反応系に与えられることを防止し得る。
【0093】
従って、後述するように、原料ガス導入工程S5において容器本体20a内に原料ガスを導入しても、この原料ガスに対する窒素ガスの混入を招くことがない。その結果、窒素ガスが、原料ガス中に含まれるアセチレンの熱分解反応を阻害するという事態の発生を未然に防止して、微小コイルのコイル収量及びコイル純度(後述する)の低下を未然に防止し得る。
【0094】
上述のようにシールガス注入工程S4の処理が終了すると、次の原料ガス導入工程S5において、上記原料ガス供給源から供給される原料ガス、即ち、アセチレンガス、水素ガス及び硫化水素ガスの混合ガスを、3組の原料ガス導入筒群20b〜20dの各原料ガス導入筒を通して容器本体20a内にその左側から導入する。
【0095】
現段階では、容器本体20aの内部が、円筒状基材30の外周面及びその内部とともに、上記所定の高温に維持されている。このことは、触媒層32の外周面も上記所定の高温に維持されていることを意味する。
【0096】
このような状態において、上述のように原料ガスが容器本体20a内に導入されると、当該原料ガスと触媒層32の金属触媒との間で反応を開始する。このことは、原料ガス導入工程S5は、反応工程であることを意味する。なお、本第1実施形態では、この反応工程における反応時間は、2時間とした。
【0097】
ここで、上記原料ガスは、原料ガス導入筒1本当たり、60(ミリリットル/分)のアセチレンガス、265(ミリリットル/分)の水素ガス、及び0.06(ミリリットル/分)の硫化水素ガスでもって構成される。
【0098】
従って、上記原料ガス供給源内の原料ガスは、導入筒1本当たりにつき、60(ミリリットル/分)のアセチレンガス、265(ミリリットル/分)の水素ガス、及び0.06(ミリリットル/分)の硫化水素ガスの混合ガスとなるように、予め、均一に混合されたものである。
【0099】
ここで、当該原料ガスの組成を、上述のように、アセチレンガス、水素ガス及び硫化水素ガスとした根拠は、次の通りである。
【0100】
従来、原料ガスは、アセチレンガス、水素ガス、窒素ガス、チオフェンガス及び硫化水素ガスからなる混合ガスとして、同時にかつ連続的に容器本体20a内に導入されるとともに触媒との間で反応させていた。
【0101】
しかし、窒素ガスは、上述したごとく、アセチレンの熱分解を著しく抑制するばかりか、有害な副反応を起こし、規則的に巻いた微小コイルの成長を阻害し、コイル収量及びコイル純度を低下させる。また、チオフェンは規則的に巻いた微小コイルの成長には有害であり、またコイル収量及びコイル純度を低下させる要因となっている。
【0102】
そこで、本第1実施形態では、原料ガスを、上述のごとく、アセチレンガス、水素ガス及び硫化水素ガスによる混合ガスとした。なお、当該原料ガスは、後述のように加熱により熱分解されたとき、ガス状炭素種が円筒状基材30の外周面から生成される。
【0103】
3組の原料ガス導入筒群20b〜20dの各原料ガス導入筒を通して容器本体20a内の導入される原料ガスの流量をガスの線速度でもって示すと、微小コイルの収量及び収率を向上させるためには、当該ガスの線速度は、室温及び1気圧の条件下にて、100(cm/min)〜3000(cm/min)の範囲内の値に設定されることが好ましい。また、当該ガスの線速度は、200(cm/min)〜2000(cm/min)の範囲内の値に設定されることがより好ましく、また、さらには、500(cm/min)〜1500(cm/min)の範囲内の値に設定されることが特に好ましい。
【0104】
そこで、本第1実施形態では、当該ガスの線速度は、500(cm/min)〜1500(cm/min)の範囲内の値に設定されている。さらに、上記ガスの線速度は、原料ガス導入筒の基端開孔部とこの基端開孔部に対する円筒状基材30の外周面の対向部位との間の間隔(上記所定対向間隔)と密接な関係を有する。このため、上記ガスの線速度が、例えば、500(cm/min)〜800(cm/min)の範囲内の値であれば、上記所定対向間隔は、10(mm)〜20(mm)の範囲内の値に設定されることが好ましい。
【0105】
上述のように、原料ガスと触媒層32の金属触媒との間で反応を開始すると、微小コイルは、3組の原料ガス導入筒群20b〜20dの各原料ガス導入筒の基端開孔部に対する円筒状基材30の基体31の円筒状外周面の対向表面部位において、原料ガス導入筒の内径の2倍〜30倍の範囲内の径を有する円形内に密集して成長していく。
【0106】
このため、3組の原料ガス導入筒群20b〜20dの各原料ガス導入筒のうち各両隣接導入筒の間の間隔は、各微小コイルを、互いに干渉させることなく、かつ隙間なく円筒状基材30の外周面上に成長させるために、原料ガス導入筒の内径の2倍〜30倍の範囲の値に設定されることが好ましく、さらには、原料ガス導入筒の内径の5倍〜20倍の範囲内の値に設定されることがより好ましい。
【0107】
そこで、本第1実施形態では、上述の各両隣接原料ガス導入筒の間の間隔は、原料ガス導入筒の内径(9(mm))の5倍〜20倍の範囲内の値(75(mm))に設定されている。
【0108】
これにより、各微小コイルが、3組の原料ガス導入筒群20b〜20dの各原料ガス導入筒の基端開孔部に対する円筒状基材30上に殆ど互いに重なり合うことなく、ほぼ均一の厚さで成長し得る(図8参照)。このことは、多数の微小コイルが円筒状基材30上に成長することで製造されることを意味する。
【0109】
上述のようにして原料ガス導入工程S5の処理が終了すると、次の原料ガス供給及び加熱の各停止工程S6において、上記原料ガス供給源から容器本体20a内への原料ガスの供給が停止されるとともに、温度制御回路70による加熱器50に対する制御が停止される。具体的には、開閉スイッチSWが開成される。これにより、原料ガスと触媒層32の金属触媒との間の反応が終了する。
【0110】
然る後、円筒状基材取り出し工程S7において、上述のような加熱器50に対する制御の停止に伴い、容器本体20a内の温度が200(℃)まで降下したときに、装置本体Bの前後両側エンドカバー40を容器本体20aの両端部から外した上で、円筒状基材30を容器本体20aの内部から取り出す。ついで、円筒状基材30に成長した微小コイルを回収する。
【0111】
以上説明したように、本第1実施形態によれば、反応容器20において、3組の原料ガス導入筒群20b〜20dは、容器本体20aの左側半円筒部26aから左方へ延出するとともに、ガス排出筒群20fは、容器本体20aの右側半円筒部26bから右方へ延出している。また、容器本体20a内に挿入してなる円筒状基材30において、触媒層32が、ニッケル触媒を、微小コイルを析出するようにその表面を部分酸化・硫化処理して円筒状基体31の外周面に塗布して形成されている。
【0112】
このような構成のもと、容器本体20aを上記所定の高温750(℃)に加熱して維持した状態にて、アセチレンガス、水素ガス及び硫化水素ガスの混合による原料ガスを、同時にかつ連続的に容器本体20a内に導入して、円筒状基材30の外周面上に、上述のごとく、微小コイルを成長させる。
【0113】
このようにして成長した微小コイルを上述のように回収した結果、この回収による微小コイルのコイル収量は、60(g)であった。また、アセチレンベースの微小コイルのコイル収率は80(%)であった。このことは、微小コイルが、高純度にて、一度に効率よく多量に製造され得ることを意味する。なお、このようにして製造された微小コイルは、電磁波吸収材、マイクロ波発熱材、マイクロセンサー、マイクロメカニカル素子、癒し材、化粧品、鎮痛材、ガン治療薬、食品添加材等に利用され得る。
【0114】
ちなみに、本第1実施形態にて得られた析出物の電子顕微鏡(SEM)写真によれば、図10にて示すように、成長による析出物は、100(%)の微小コイル(カーボンマイクロコイル)からなり、これら微小コイルの殆どが、3(μm)〜5(μm)の範囲内のコイル径でもって規則的に巻いている。また、微小コイルの各々においてその各隣接コイル部間のギャップは殆ど無いため、当該微小コイルの各々は、電磁気的な微小のソレノイド形状となっている。
【0115】
換言すれば、上述の析出物中において、一定のコイル径でもって規則的に巻いたソレノイド形状の微小コイルの割合、即ち、コイル純度は、100(%)であるといえる。
【0116】
また、本第1実施形態にて述べた製造装置によれば、反応容器20における3組の原料ガス導入筒群20b〜20dの各原料ガス導入筒と、ガス排出筒群20fの各ガス排出筒とが、容器本体20aの左右両側壁26a、26bから互いに逆方向に基台の水平面Lに平行となるように水平状にケーシング10から延出している。
【0117】
従って、原料ガスは、各原料ガス導入筒を通り容器本体20a内に基台の水平面Lに沿うように導入されるから、このように容器本体20a内に導入された原料ガスは、容器本体20a内において、円筒状基材30の外周面に沿い左右方向に円滑にかつ良好に流動して、円筒状基材30の円筒状触媒層32の触媒との反応を、何ら制限されることなく、良好になし得る。また、容器本体20a内のガスが各排出筒28を通り基台の水平面Lに沿うように排出されるので、ガスの排出が円滑になされ得る。
【0118】
その結果、原料ガスの触媒との間の十分な熱分解反応や触媒反応が容器本体20a内において起こり、微小コイルの収量や純度が非常に高くなる。
【0119】
また、上述のように、各原料ガス導入筒及び各ガス排出筒が、基台の水平面Lに平行となるように水平状にケーシング10から延出しているので、本第1実施形態にて述べた装置本体Bを、複数準備して、その各ケーシング10にて上方に積層するにあたり、これら複数の装置本体Bを、3組の原料ガス導入筒群20b〜20d及びガス排出筒群20fとの干渉を招くことなく、容易に積層することができる。
【0120】
以上により、装置本体Bの積層数に比例して、微小コイルのコイル収量及びコイル収率を増大させることができるのは勿論のこと、当該複数の装置本体Bの工場等内における設置面積を減少させて工場等内の利用効率を高めることができる。
【0121】
次に、本第1実施形態における装置本体Bを実施例1−1とし、この実施例1−1と対比すべく、実施例1−2及び各比較例1−1〜1−7を準備した。なお、実施例1−2及び各比較例1−1〜1−7の加熱回路は、本第1実施形態における加熱回路Eと同様である。
(実施例1−2)
この実施例1−2の装置本体においては、円筒状基材30の触媒層32として、ニッケルからなる触媒層であってその表面を部分酸化したニッケル触媒層が採用されている。当該実施例1−2の装置本体のその他の構成は、実施例1にいう装置本体Bと同様である。
【0122】
このような実施例1−2を用いて、微小コイルの製造にあたり、本第1実施形態にて述べた製造工程において、原料ガス導入工程S5の処理を行うに先立ち、3組の原料ガス導入筒群20b〜20dの各原料ガス導入筒を通して5分間硫化水素のみを容器本体20a内に導入して、加熱工程S2の処理で750(℃)に維持されている容器本体20a内にて、上記ニッケル触媒層の表面に部分硫化処理を施した後、原料ガス導入工程S5において、上記各原料ガス導入筒を通して容器本体20a内にアセチレンを導入して上記ニッケル触媒層との反応を行った。その他の工程は、本第1実施形態にて述べた製造の工程と同様である。
【0123】
この実施例1−2によれば、微小コイルのコイル収量は58(g)であり、当該微小コイルのコイル収率は78(%)であり、また、当該微小コイルのコイル純度は100(%)であった。これによれば、本実施例1−2でも、実施例1−1と実質的同様の製造結果をもたらすことが分かる。
【0124】
また、この実施例1−2においても、実施例1−1と同様に、反応容器20における3組の原料ガス導入筒群20b〜20dと、ガス排出筒群20fとが、容器本体20aの左右両側円筒壁部26a、26bから互いに逆方向に基台の水平面Lに平行となるように水平状にケーシング10から延出している。
【0125】
従って、実施例1−2の装置本体を、複数準備して、これら複数の装置本体を、その各ケーシング10にて上方に積層するにあたり、各原料ガス導入筒群20b〜20d及びガス排出筒群20fとの干渉を招くことなく、容易に積層することができる。これによれば、実施例1−2においても、装置本体の積層数に比例して、微小コイルのコイル収量及びコイル収率を増大させることができる。
(比較例1−1)
この比較例1−1の装置本体では、三組の原料ガス導入筒群20b〜20dの各原料ガス導入筒の基端開孔部の開孔面と円筒状基材30の外周面との間の基体31の径方向に沿う所定対向間隔を60(mm)としたことを除き、当該比較例1−1の装置本体のその他の構成は、実施例1−1と同様である。
【0126】
当該比較例1−1の装置本体でもって、本第1実施形態における製造工程に従い実施例1−1による微小コイルと同様に微小コイルを製造した。これにより得られた析出物の電子顕微鏡(SEM)写真によれば、図10にて例示するように、3(μm)〜5(μm)の範囲内のコイル径で規則的に巻いた微小コイルのほかに、不規則に巻いた微小コイルや、10(μm)以上のコイル径及び大きく崩れたコイル形状を有する微小コイルが多数観察された。なお、少量の直線状炭素繊維も観察された。
【0127】
従って、この比較例1−1によれば、微小コイルのコイル収量やコイル純度が実施例1−1による場合に比べて低いといえる。
(比較例1−2)
この比較例1−2の装置本体では、三組の原料ガス導入筒群20b〜20dの各原料ガス導入筒の基端開孔部の開孔面と円筒状基材30の外周面との間の基体31の径方向に沿う所定対向間隔を80(mm)としたことを除き、当該比較例1−2の装置本体のその他の構成は、実施例1−1にいう装置本体Bと同様である。
【0128】
当該比較例1−2の装置本体を用いて、本第1実施形態における製造工程に従い実施例1による微小コイルと同様に微小コイルを製造した。これにより得られた析出物の電子顕微鏡(SEM)写真によれば、図12にて例示するように、殆どのコイルが、極めて不規則に巻いたものや大きく不規則に巻いたものであり、当該析出物には、直線状の炭素繊維も含まれている。従って、微小コイルは観察されなかった。
(比較例1−3)
この比較例1−3の装置本体においては、円筒状基材30の触媒層32として、ニッケルからなる触媒層であってその表面を部分酸化した0.5(μm)の平均厚さを有するニッケル触媒層が採用されている。当該比較例1−3の装置本体のその他の構成は、実施例1−1にいう装置本体Bと同様である。
【0129】
この比較例1−3によれば、微小コイルのコイル収量は非常に少なく5(g)にすぎなかった。なお、当該比較例1−3による析出物の大部分が直線状の炭素繊維であった。
(比較例1−4)
この比較例1−4の装置本体においては、円筒状基材30の触媒層32として、ニッケルからなる触媒層であってその表面を部分酸化した15(μm)の平均厚さを有するニッケル触媒層が採用されている。当該比較例1−4の装置本体のその他の構成は、実施例1−1にいう装置本体Bと同様である。
【0130】
このような比較例1−4を用いて、微小コイルを製造すべく、本第1実施形態にて述べた製造工程を適用したところ、原料ガス導入工程S5における反応開始と共に容器本体20a内の温度が急激に上昇し、1分経過後には円筒状基材30の外周面(触媒層の表面)の温度が850℃以上に上昇し、円筒状基材30の外周面から10(mm)離れた位置の温度が、最高で820(℃)まで上昇した。
【0131】
また、円筒状基材30の外周面上には、堅い炭素層が、1.5(mm)〜3(mm)の範囲内の厚さにて析出した。この析出物において、微小コイルのコイル収率は10(g)にすぎなかった。なお、当該析出物においては、規則的に巻いたコイルは非常に少なく、殆どが、非常に不規則に巻いたコイルや、大きく巻いただけのもの或いは直線状の炭素繊維であった。
(比較例1−5)
この比較例1−5の装置本体においては、円筒状基材30の触媒層32として、酸素を全く含まない純粋なニッケル粉末からなる触媒層が採用されている。当該比較例5の装置本体のその他の構成は、実施例1−1にいう装置本体Bと同様である。
【0132】
このような比較例1−5を用いて、微小コイルを製造すべく、本第1実施形態にて述べた製造工程を適用したところ、微小コイルのコイル収量は15(g)にすぎず、また、当該微小コイルのコイル純度も、30(%)〜35(%)の範囲内の値と低かった。
(比較例1−6)
この比較例1−6の装置本体においては、円筒状基材30の触媒層32として、酸化ニッケルからなる触媒層が採用されている。当該比較例6の装置本体のその他の構成は、実施例1−1にいう装置本体Bと同様である。
【0133】
このような比較例1−6を用いて、微小コイルを製造すべく、本第1実施形態にて述べた製造工程を適用したところ、微小コイルのコイル収量は10(g)にすぎず、また、当該微小コイルのコイル純度も、10(%)〜20(%)の範囲内の値と低かった。
(比較例1−7)
この比較例1−7の装置本体は、実施例1の装置本体Bと同様である。このような比較例1−7を用いて本第1実施形態にて述べた製造工程に従い、微小コイルを製造するにあたり、上記原料ガスが、原料ガス導入筒1本当たり、50(ミリリットル/分)のアセチレンガス、200(ミリリットル/分)の水素ガス及び0.06(ミリリットル/分)の硫化水素ガスを含むこと以外に、200(ミリリットル/分)の窒素ガスを同時に連続して容器本体内に導入するようにした。その他は、実施例1−1と同様に製造とした。
【0134】
この比較例1−7によれば、微小コイルのコイル収量は非常に少なく12(g)にすぎず、また、当該微小コイルのコイル純度は25(%)にすぎなかった。
【0135】
ちなみに、微小コイルの製造にあたり、従来の製造方法や製造装置で得られる析出物は、規則的に一定のコイル径とコイルピッチで巻いた電磁気的ソレノイド状の良質の微小コイルの他に、多くの不規則の巻いたコイル、コイル径の非常に大きなコイル、大きく巻いただけの炭素繊維や、直線状の炭素繊維を多数含んでおり、全析出物中のソレノイド状の良質の微小コイルの割合(以下、“コイル純度”と略す)は、5(%)〜25(%)の範囲内であって低い。このようにコイル純度が低いことは、マイクロ波電磁波吸収特性等の多くの特性に非常に悪影響を及ぼす。従って、工業的には、微小コイルのコイル純度は、80(%)以上であることが要請されている。
【0136】
この点からすれば、実施例1−1及び実施例1−2の装置本体を用いて製造した微小コイルのコイル純度は、100(%)であるから十分であるといえる。
(第2実施形態)
次に、本発明にかかる微小コイルの製造装置の第2実施形態について説明すると、この第2実施形態では、上記第1実施形態にて述べた製造装置の装置本体Bにおいて、反応容器20が、ケーシング10との関連において、上記第1実施形態とは異なり、次のように構成されている。
【0137】
即ち、上記第1実施形態にて述べた3組の原料ガス導入筒群20b〜20d及びシールガス注入筒群20eは、反応容器20の容器本体20aの下側半円筒部位から下方へ延出されており、一方、上記第1実施形態にて述べたガス排出筒群20fは、容器本体20aの上側半円筒部位から上方へ延出されている。
【0138】
具体的には、本第2実施形態では、上記第1実施形態にて述べた反応容器20(図6参照)が、90°回転されて、3組の原料ガス導入筒群20b〜20d及びシールガス注入筒群20eを容器本体20aの下側に位置させ、ガス排出筒群20fを容器本体20aの上側に位置させるように構成したものとなっている。
【0139】
これに伴い、各複数本の原料ガス導入筒23、24及び25は、それぞれ、容器本体20aの下側半円筒部の左側部位、中側部位(下端部位)及び右側部位から下方へ延出されるとともに、両シールガス注入筒27は、容器本体20aの下側半円筒部の中側部位から下方へ延出されている。また、各ガス排出筒28は、容器本体20aの上側半円筒部の中側部位(上端部位)から下方へ延出されている。その他の構成は上記第1実施形態と同様である。
【0140】
このように構成した第2実施形態において、微小コイルは、上記第1実施形態にて述べた製造工程に従い気相成長製造される。この製造工程のうち原料ガス導入工程S5において、上記原料ガス供給源から供給される原料ガスは、3組の原料ガス導入筒群20b〜20dの各原料ガス導入筒を通して容器本体20a内にその下側から導入される。なお、容器本体20a内のガスの排出は、容器本体20aの内部から各ガス排出筒28を通し上方へ排出される。なお、その他の製造工程の処理は、上記第1実施形態と同様である。
【0141】
このような製造工程を経て製造した微小コイルに関して、コイル収量は65(g)であり、コイル収率は88(%)であり、また、コイル純度は100(%)であった。
【0142】
これによれば、本第2実施形態では、上記第1実施形態にて述べた製造装置による製造1と実質的に同様の製造結果を得ることができる。
【0143】
但し、本第2実施形態では、上記第1実施形態とは異なり、各原料ガス導入筒23〜25を容器本体20から下方へ延出させ、各ガス排出筒28を容器本体20aの上方へ延出させる構成を採用している。
【0144】
従って、原料ガスが各原料ガス導入筒を通り容器本体20a内に上方に向けて導入されることから、容器本体20a内において、円筒状基材30の外周面に沿い上方向に円滑にかつ良好に流動して、円筒状基材30の円筒状触媒層32の触媒との反応を、何ら制限されることなく、良好になし得る。また、容器本体20a内のガスが各排出筒28を通り上方に排出されるので、ガスの排出が円滑になされ得る。
【0145】
その結果、原料ガスの触媒との間の十分な熱分解反応や触媒反応が容器本体20a内において起こり、微小コイルの収量や純度が非常に高くなる。
【0146】
なお、上述のように、各原料ガス導入筒が容器本体20aから上方へ延出するとともに各ガス排出筒が容器本体20aから下方へ延出していることから、本第2実施形態の装置本体を複数準備しても、これら装置本体の積層は、各原料ガス導入筒及び各ガス排出筒により邪魔されて不可能である。このため、上記第1実施形態の装置本体を積層する場合に期待されるような微小コイルのコイル収量及びコイル収率の増大は困難である。その他の作用効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0147】
ちなみに、本第2実施形態における装置本体を実施例2−1とし、この実施例2−1と対比すべく、各比較例2−2及び2−3を準備した。
(比較例2−2)
この比較例2−2の装置本体では、実施例2−1の装置本体の反応容器において、当該反応容器とは異なり、各原料ガス導入筒を容器本体の上部から上方に向けて延出させ、各ガス排出筒を容器本体の下部から下方へ延出させる構成を採用して、原料ガスを各原料ガス導入筒から容器本体内に上方に向けて導入し、この容器本体内のガスを各ガス排出筒から上方へ排出するようにした。当該比較例2−2の装置本体のその他の構成は、実施例2−1と同様である。
【0148】
この比較例2−2によれば、微小コイルに関して、コイル収量は15(g)であり、コイル純度は20(%)〜30(%)の範囲内であった。従って、当該比較例8では、微小コイルのコイル収量及びコイル純度において、実施例1−1、1−2及び2−1のいずれと比較してもかなり低いことが分かる。
【0149】
しかも、比較例2−2の装置本体を複数準備しても、これら装置本体の積層は、各原料ガス導入筒及び各ガス排出筒により邪魔されて、実施例2−1の積層の場合と同様に不可能である。このため、上記第1実施形態にて述べた実施例1や実施例2の装置本体を積層する場合に期待されるような微小コイルのコイル収量及びコイル収率の増大は不可能である。
(比較例2−3)
この比較例2−3の装置本体は、比較例2−2の装置本体と同様である。このような比較例2−3を用いて上記第1実施形態にて述べた製造工程に従い、微小コイルを製造するにあたり、上記原料ガスが、原料ガス導入筒1本当たり、50(ミリリットル/分)のアセチレンガス、200(ミリリットル/分)の水素ガス及び0.06(ミリリットル/分)の硫化水素ガスを含むこと以外に、200(ミリリットル/分)の窒素ガス及び0.20(ミリリットル/分)のチオフェンガスを同時に連続して容器本体内に導入するようにした。その他は、比較例2−2と同様に製造とした。
【0150】
この比較例2−3によれば、微小コイルに関し、そのコイル収量は非常に少なく15(g)にすぎず、また、そのコイル純度も20(%)と低かった。
(第3実施形態)
図13及び図14は、本発明に係る微小コイルの製造装置の第3実施形態を示している。この第3実施形態においては、積層装置本体Baが、図13にて示すごとく、上記第1実施形態にて述べた製造装置の装置本体Bに代えて、採用されている。
【0151】
積層装置本体Baは、上記第1実施形態にて述べた装置本体Bを複数(例えば、3つ)積層して構成されている。3つの装置本体Bのうち、下側装置本体Bは、ケーシング10の下壁12にて、基台の水平面L(図1参照)上に載置される。
【0152】
また、3つの装置本体Bのうち、中側装置本体Bは、そのケーシング10の下壁12にて、下側装置本体Bのケーシング10の上壁11上に載置されており、上側装置本体Bは、そのケーシング10の下壁12にて、中側装置本体Bのケーシング10の上壁11上に載置されている。
【0153】
本第3実施形態では、3つの装置本体Bの各々の反応容器20の原料ガス導入筒群20b〜20dにおいて、原料ガス導入筒群20bを構成する各原料ガス導入筒23は、連結管23bでもって相互に連結され、原料ガス導入筒群20cを構成する各原料ガス導入筒24は、連結管24bでもって相互に連結され、また、原料ガス導入筒群20dを構成する各原料ガス導入筒25は、連結管25bでもって相互に連結されている。
【0154】
これにより、上記原料ガス供給源からの原料ガスは、連結管25b及び3組の原料ガス導入筒群20b〜20dの各原料ガス導入筒を通して容器本体20a内に導入される。
【0155】
また、3つの装置本体Bの各々の反応容器20のガス排出筒群20fを構成する各ガス排出筒28は、連結管28bでもって相互に連結されている。これにより、各容器本体20a内のガスは、各対応の各ガス排出筒28及び連結管28bを通して排出される。積層装置本体Baにおける各装置本体Bのその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0156】
本第3実施形態における加熱回路は、図14にて示すごとく、上記第1実施形態にて述べた加熱回路Eを、積層装置本体Baの装置本体B毎に採用して構成されている。ここで、各加熱回路Eの温度制御回路70が、ともに、開閉スイッチSWを介し交流電源PSに接続されている。
【0157】
従って、積層装置本体Baの装置本体B毎に、加熱回路Eが、その温度制御回路70にて、開閉スイッチSWを介し交流電源PSから交流電圧を供給されて、対応の温度センサ60の検出出力に基づき、対応の加熱器50を駆動して、対応の容器本体20aの温度を上記所定の高温に維持するように制御する。その他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0158】
このように構成した本第3実施形態において、微小コイルは、上記第1実施形態にて述べた製造工程に従い気相成長製造される。なお、この製造過程において、各装置本体Bの温度センサ60は、対応装置本体Bの円筒状基材30の中空部内中央部における温度を、対応装置本体Bの容器本体20aの温度として検出する。
【0159】
しかして、上記第1実施形態と同様に、図9の製造工程にて示す窒素ガス供給工程S1の処理にあわせ、或いは当該窒素ガス供給工程S1の処理の後に、加熱工程S2において、各装置本体Bの容器本体20aの加熱処理がなされる。この加熱処理では、各対応の温度制御回路70が、開閉スイッチSWの閉状態にて、交流電源PSから交流電圧を印加されて、作動状態となり、各対応の温度センサ60の現時点における検出温度に基づき、各対応の加熱器50を発熱するように制御する。
【0160】
これに伴い、各加熱回路Eの加熱器50が、対応の容器本体20aの温度を上記所定の高温750(℃)に上昇させるように当該対応の容器本体20aを加熱して上記所定の高温に維持する。
【0161】
また、原料ガス導入工程S5において、上記原料ガス供給源から供給される原料ガス、即ち、アセチレンガス、水素ガス及び硫化水素ガスの混合ガスを、容器本体20a毎に、対応の3組の原料ガス導入筒群20b〜20dの各原料ガス導入筒を通して対応の容器本体20a内にその左側から導入する。
【0162】
これに伴い、反応容器20ごとに、原料ガスと触媒層32の金属触媒との間で反応を開始する。すると、微小コイルは、反応容器20ごとに、上記第1実施形態と同様に、原料ガス導入筒の内径の2倍〜30倍の範囲内の径を有する円形内に密集して成長していく。
【0163】
然る後、反応容器20毎に、原料ガスと触媒層32の金属触媒との間の反応が終了すると、上記第1実施形態と実質的に同様に、円筒状基材30を容器本体20aの内部から取り出して、微小コイルを回収する。
【0164】
このようにして回収された微小コイルは、反応容器毎に、上記第1実施形態と同様に、一定のコイル径でもって規則的に巻いたソレノイド形状の微小コイルとして高純度にて装置本体Bの積層数に応じて多量に得られる。
【0165】
また、本第3実施形態にて述べた製造装置の積層装置本体Baによれば、反応容器20における3組の原料ガス導入筒群20b〜20dの各原料ガス導入筒と、ガス排出筒群20fの各ガス排出筒とが、装置本体Bごとに、容器本体20aの左右両側壁26a、26bから互いに逆方向に基台の水平面Lに平行となるように水平状にケーシング10から延出している。
【0166】
従って、本第3実施形態における製造装置において、各装置本体Bは、各ケーシング10にて上方に積層するにあたり、3組の原料ガス導入筒群20b〜20d及びガス排出筒群20fとの干渉を招くことなく、容易に積層することができる。これによれば、製造装置の積層数に比例して、微小コイルのコイル収量及びコイル収率を増大させることができるのは勿論のこと、当該製造装置の工場等内における設置面積を減少させて工場等内の利用効率を高めることができる。その他の作用効果は上記第1実施形態と同様である。
【0167】
なお、本発明の実施にあたり、上記実施形態に限ることなく、次のような種々の変形例が挙げられる。
(1)本発明の実施にあたり、反応容器20の容器本体20aは、上記実施形態にて述べた透明の石英に限ることなく、不透明の石英、ニッケル、ステンレス、ハステロイ、タングステン或いはチタンなどの耐熱性金属、アルミナ、セラミックス、金属製反応管であってその内面をセラミックスライニングした金属製反応管等の種々の材料でもって形成してもよい。
(2)本発明の実施にあたり、円筒状基材30の基体31は、透明な石英に限ることなく、不透明な石英でもって形成するようにしてもよい。
(3)本発明の実施にあたり、触媒層32は、金属触媒の粉末に限ることなく、金属板或いは金属触媒の粉末の焼結板であってもよい。
(4)本発明の実施にあたり、触媒層32は、上記第1実施形態とは異なり、金属触媒の粉末の水或いはアルコールなどへの分散液を基体31の外周面に塗布してもよく、また、これに代えて、ニッケル化合物の水溶液を基体31の外周面に塗布して形成されるニッケル触媒層であってもよい。このニッケル触媒層の厚さは、3(μm)〜6(μm)の範囲内の値であることが好ましい。当該ニッケル触媒層の厚さが3(μm)未満と薄い場合には、このニッケル触媒層の原料ガスとの反応開始時にニッケル触媒層内で異常な温度上昇が起こり、硬い炭素層が厚く析出するため、コイル状炭素繊維の収量及び収率は共に低下するからである。
(5)本発明の実施にあたり、原料ガス導入筒群20b〜20dの各原料ガス導入筒は、その基端開孔部にて、上記第1実施形態とは異なり、円筒状基材30の外周面にその面積の約3/1以上に亘り対向するように、容器本体20aに接合されていればよい。これにより、原料ガスの原料ガス導入筒群20b〜20dによる容器本体20a内への導入量は、反応時において、適切な量を確保し得る。
(6)本発明の実施にあたり、ガス排出筒28の本数は、上記第1実施形態にて述べた数に限ることなく、全原料ガス導入筒23〜25の数に対し、1/3〜1/20の範囲の本数に設定されていればよく、好ましくは、1/5〜1/10の範囲の本数に設定されていればよい。
(7)本発明の実施にあたり、容器本体20aの上記高温に維持した状態にて、静電場、変動電場、超音波場、静磁場、変動磁場或いはプラズマ場等の外部エネルギー場を単一的に或いは重畳的に反応容器20a内の反応場(原料ガスの触媒との反応場)に作用させるようにしてもよい。
【0168】
これによれば、当該外部エネルギー場によって原料ガス種の拡散・混合や分子運動の活性化、内部ネルギーの活性化、触媒活性の向上等をもたらして、原料ガスの触媒との熱分解反応を促進することができ、その結果、微小コイルのコイル収量とコイル収率を向上させることができる。
【0169】
また、外部エネルギー場の重畳効果により、金属触媒の結晶面での触媒活性の異方性を小さくすることによりコイル径の小さな微小コイルが得られ、逆に異方性を大きくすることによりコイル径の大きな微小コイルが得られる。このことは、微小コイルのコイル径及びコイルピッチの大きさを制御し得ることを意味する。
(8)本発明の実施にあたり、上記第3実施形態にて述べた装置本体Bの積層数は、3つに限ることなく、必要に応じて、適宜増減させてもよい。
(9)本発明の実施にあたり、上記第1実施形態にて述べた円筒状基材30に代えて、多角形状基材を採用してもよく、また、平板状基材を採用してもよい。
(10)本発明の実施にあたり、上記第1実施形態にて述べた装置本体Bにおいて、前後両側エンドカバー40は、断面コ字状の構成に限ることなく、それぞれ、単なる平板状のエンドカバーであってもよい。なお、この場合、当該平板状の各エンドカバーは、その外周部にて、耐熱性オーリングを介し円筒状容器本体20aの前後両端面の各々に当接されて、例えば、複数のネジにより着脱可能に締着される。
(11)本発明の実施にあたり、上記第1実施形態にて述べた原料ガス導入筒群20b〜20dのうちの原料ガス導入筒群20dは、上記第1実施形態とは異なり、容器本体20aの右側半円筒部26bの上側部位(左側反円筒部位26aの上側部位に対向する)からケーシング10の右壁14を介し右方へ延出するように構成してもよい。
【0170】
具体的には、各原料ガス導入筒25は、上記第1実施形態と異なり、各ガス排出筒28の上側に位置するように、容器本体20aの右側半円筒部26bの上側部位から右方へ延出するように構成してもよい。これにより、各原料ガス導入筒25を通して原料ガスを容器本体20a内に導入するにあたり、各原料ガス導入筒25の内部が詰まることなく、原料ガスを容器本体20a内に円滑に導入することができる。その結果、容器本体20a内における析出物の析出量が、上記第1実施形態にて述べた各原料ガス導入筒25による原料ガスの容器本体20a内への導入による析出物の析出量に比較して増大され得る。
【符号の説明】
【0171】
10…ケーシング、10a…矩形状筒体、10b…角柱状電気絶縁性充填部材、
20…反応容器、20a…容器本体、23、24、25…原料ガス導入筒、
28…ガス排出筒、30…円筒状基材、31…筒状基体、32…円筒状触媒層、
S2…加熱工程、50…加熱回路、60…温度センサ、70…温度制御回路、
S5…原料ガス導入工程。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状容器本体と、この容器本体内にその軸方向に沿い挿入される基材であってその容器本体の内周面に対向するように触媒を担持してなる基材とを有して、熱分解されたときガス状炭素種を生成する原料ガスを前記容器本体の両横方向対向壁部の一方から当該容器本体内に導入するとともに前記両横方向対向壁部の他方から前記容器本体内のガスを排出するようにした反応容器を準備して、
前記容器本体を所定の高温に加熱して維持する加熱工程と、
前記容器本体にその両横方向対向壁部の前記一方から前記原料ガスを導入する原料ガス導入工程とを備えて、
当該原料ガス導入工程にて、前記容器本体を前記所定の高温に維持した状態にて、前記容器本体内に導入した前記原料ガスを前記触媒により熱分解して前記基材にガス状炭素種を生成させ、このガス状炭素種に基づき前記基材から微小コイルを成長させて製造するようにした微小コイルの製造方法。
【請求項2】
筒状容器本体と、この容器本体内にその軸方向に沿い挿入される基材であってその容器本体の内周面に対向するように触媒を担持してなる基材とを有して、熱分解されたときガス状炭素種を生成する原料ガスを前記容器本体の上下方向対向壁部のうち下方向対向壁部から当該容器本体内に導入するとともに前記上下方向対向壁部のうち上方向対向壁部から前記容器本体内のガスを排出するようにした反応容器を準備して、
前記容器本体を所定の高温に加熱して維持する加熱工程と、
前記容器本体に前記下方向対向壁部から前記原料ガスを導入する原料ガス導入工程とを備えて、
当該原料ガス導入工程にて、前記容器本体を前記所定の高温に維持した状態にて、前記容器本体内に導入した前記原料ガスを前記触媒により熱分解して前記基材にガス状炭素種を生成させ、このガス状炭素種に基づき前記基材から微小コイルを成長させて製造するようにした微小コイルの製造方法。
【請求項3】
前記基材は、前記筒状容器本体内にその軸方向に挿入されて外周面に前記触媒を担持してなる筒状基体を有しており、
前記原料ガス導入工程にて、前記筒状容器本体を前記所定の高温に維持した状態にて、前記筒状容器本体内に導入した前記原料ガスを前記触媒により熱分解させて前記筒状基体の外周面にガス状炭素種を生成させ、このガス状炭素種に基づき前記筒状基体の外周面から微小コイルを成長させて製造するようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載の微小コイルの製造方法。
【請求項4】
前記原料ガスは、アセチレンガス、水素ガス及び硫化水素ガスからなる混合ガスであり、
前記加熱工程において、前記所定の高温を600(℃)〜900(℃)の範囲内の温度として、この温度に前記容器本体を加熱して維持することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の微小コイルの製造方法。
【請求項5】
ケーシングと、反応容器と、基材と、加熱制御手段とを備えて、
前記反応容器は、
前記ケーシング内に軸方向に挿入される筒状容器本体と、
この容器本体の両横方向対向壁部の一方から外方へ延出されて、熱分解されたときガス状炭素種を生成する原料ガスを、原料ガス供給源から前記容器本体内に導入する少なくとも1本の原料ガス導入筒と、
前記容器本体の前記両横方向対向壁部の他方から前記少なくとも1本の原料ガス導入筒とは逆方向に外方へ延出されて前記容器本体内のガスを排出する少なくとも1本のガス排出筒とを具備しており、
前記基材は、前記容器本体内にその軸方向に沿い挿入されて、前記容器本体の内周面に対向するように触媒を担持してなり、
前記加熱制御手段は、前記容器本体を所定の高温に維持するように加熱制御するようにして、
前記容器本体を前記所定の高温に維持した状態にて、前記容器本体内の前記原料ガスを前記触媒により加熱分解して前記基材にガス状炭素種を生成させ、このガス状炭素種に基づき前記基材から微小コイルを成長させて製造するようにした微小コイルの製造装置。
【請求項6】
ケーシングと、反応容器と、基材と、加熱制御手段とを備えて、
前記反応容器は、
前記ケーシング内に軸方向に挿入される筒状容器本体と、
この容器本体の両上下方向対向壁部のうち下方向対向壁部から下方へ延出されて、熱分解されたときガス状炭素種を生成する原料ガスを、原料ガス供給源から前記容器本体内に導入する少なくとも1本の原料ガス導入筒と、
前記容器本体の前記両上下方向対向壁部のうち上方向対向壁部から前記少なくとも1本の原料ガス導入筒とは逆方向に上方へ延出されて前記容器本体内のガスを排出する少なくとも1本のガス排出筒とを具備しており、
前記基材は、前記容器本体内にその軸方向に沿い挿入されて、前記容器本体の内周面に対向するように触媒を担持してなり、
前記加熱制御手段は、前記容器本体を所定の高温に維持するように加熱制御するようにして、
前記容器本体を前記所定の高温に維持した状態にて、前記容器本体内の前記原料ガスを前記触媒により加熱分解して前記基材にガス状炭素種を生成させ、このガス状炭素種に基づき前記基材から微小コイルを成長させて製造するようにした微小コイルの製造装置。
【請求項7】
前記基材は、前記筒状容器本体内にその軸方向に挿入されて外周面に前記触媒を担持してなる筒状基体を有することを特徴とする請求項5または6に記載の微小コイルの製造装置。
【請求項8】
前記筒状基材は、筒状基体と、ニッケル金属を、その表面に部分酸化及び部分硫化を施した上で2(μm)〜6(μm)の範囲内の厚さでもって、前記筒状基体の外周面に塗布することで、前記触媒として前記筒状基体の前記外周面に担持させてなる触媒層とにより構成されていることを特徴とする請求項7に記載の微小コイルの製造装置。
【請求項9】
前記少なくとも1本の原料ガス導入筒は、複数の原料ガス導入筒であって、
当該複数の原料ガス導入筒は、前記筒状基材のうち軸方向長さの1/3以上の長さに対応する部位から当該筒状基材の軸方向に前記原料ガス導入筒の内径の20倍以内の間隔をおいて延出されており、
前記筒状基材の外周面と前記原料ガス導入筒の内端開口部との間の径方向対向間隔が、5(mm)〜50(mm)の範囲内の値に設定されていることを特徴とする請求項7または8に記載の微小コイルの製造装置。
【請求項1】
筒状容器本体と、この容器本体内にその軸方向に沿い挿入される基材であってその容器本体の内周面に対向するように触媒を担持してなる基材とを有して、熱分解されたときガス状炭素種を生成する原料ガスを前記容器本体の両横方向対向壁部の一方から当該容器本体内に導入するとともに前記両横方向対向壁部の他方から前記容器本体内のガスを排出するようにした反応容器を準備して、
前記容器本体を所定の高温に加熱して維持する加熱工程と、
前記容器本体にその両横方向対向壁部の前記一方から前記原料ガスを導入する原料ガス導入工程とを備えて、
当該原料ガス導入工程にて、前記容器本体を前記所定の高温に維持した状態にて、前記容器本体内に導入した前記原料ガスを前記触媒により熱分解して前記基材にガス状炭素種を生成させ、このガス状炭素種に基づき前記基材から微小コイルを成長させて製造するようにした微小コイルの製造方法。
【請求項2】
筒状容器本体と、この容器本体内にその軸方向に沿い挿入される基材であってその容器本体の内周面に対向するように触媒を担持してなる基材とを有して、熱分解されたときガス状炭素種を生成する原料ガスを前記容器本体の上下方向対向壁部のうち下方向対向壁部から当該容器本体内に導入するとともに前記上下方向対向壁部のうち上方向対向壁部から前記容器本体内のガスを排出するようにした反応容器を準備して、
前記容器本体を所定の高温に加熱して維持する加熱工程と、
前記容器本体に前記下方向対向壁部から前記原料ガスを導入する原料ガス導入工程とを備えて、
当該原料ガス導入工程にて、前記容器本体を前記所定の高温に維持した状態にて、前記容器本体内に導入した前記原料ガスを前記触媒により熱分解して前記基材にガス状炭素種を生成させ、このガス状炭素種に基づき前記基材から微小コイルを成長させて製造するようにした微小コイルの製造方法。
【請求項3】
前記基材は、前記筒状容器本体内にその軸方向に挿入されて外周面に前記触媒を担持してなる筒状基体を有しており、
前記原料ガス導入工程にて、前記筒状容器本体を前記所定の高温に維持した状態にて、前記筒状容器本体内に導入した前記原料ガスを前記触媒により熱分解させて前記筒状基体の外周面にガス状炭素種を生成させ、このガス状炭素種に基づき前記筒状基体の外周面から微小コイルを成長させて製造するようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載の微小コイルの製造方法。
【請求項4】
前記原料ガスは、アセチレンガス、水素ガス及び硫化水素ガスからなる混合ガスであり、
前記加熱工程において、前記所定の高温を600(℃)〜900(℃)の範囲内の温度として、この温度に前記容器本体を加熱して維持することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の微小コイルの製造方法。
【請求項5】
ケーシングと、反応容器と、基材と、加熱制御手段とを備えて、
前記反応容器は、
前記ケーシング内に軸方向に挿入される筒状容器本体と、
この容器本体の両横方向対向壁部の一方から外方へ延出されて、熱分解されたときガス状炭素種を生成する原料ガスを、原料ガス供給源から前記容器本体内に導入する少なくとも1本の原料ガス導入筒と、
前記容器本体の前記両横方向対向壁部の他方から前記少なくとも1本の原料ガス導入筒とは逆方向に外方へ延出されて前記容器本体内のガスを排出する少なくとも1本のガス排出筒とを具備しており、
前記基材は、前記容器本体内にその軸方向に沿い挿入されて、前記容器本体の内周面に対向するように触媒を担持してなり、
前記加熱制御手段は、前記容器本体を所定の高温に維持するように加熱制御するようにして、
前記容器本体を前記所定の高温に維持した状態にて、前記容器本体内の前記原料ガスを前記触媒により加熱分解して前記基材にガス状炭素種を生成させ、このガス状炭素種に基づき前記基材から微小コイルを成長させて製造するようにした微小コイルの製造装置。
【請求項6】
ケーシングと、反応容器と、基材と、加熱制御手段とを備えて、
前記反応容器は、
前記ケーシング内に軸方向に挿入される筒状容器本体と、
この容器本体の両上下方向対向壁部のうち下方向対向壁部から下方へ延出されて、熱分解されたときガス状炭素種を生成する原料ガスを、原料ガス供給源から前記容器本体内に導入する少なくとも1本の原料ガス導入筒と、
前記容器本体の前記両上下方向対向壁部のうち上方向対向壁部から前記少なくとも1本の原料ガス導入筒とは逆方向に上方へ延出されて前記容器本体内のガスを排出する少なくとも1本のガス排出筒とを具備しており、
前記基材は、前記容器本体内にその軸方向に沿い挿入されて、前記容器本体の内周面に対向するように触媒を担持してなり、
前記加熱制御手段は、前記容器本体を所定の高温に維持するように加熱制御するようにして、
前記容器本体を前記所定の高温に維持した状態にて、前記容器本体内の前記原料ガスを前記触媒により加熱分解して前記基材にガス状炭素種を生成させ、このガス状炭素種に基づき前記基材から微小コイルを成長させて製造するようにした微小コイルの製造装置。
【請求項7】
前記基材は、前記筒状容器本体内にその軸方向に挿入されて外周面に前記触媒を担持してなる筒状基体を有することを特徴とする請求項5または6に記載の微小コイルの製造装置。
【請求項8】
前記筒状基材は、筒状基体と、ニッケル金属を、その表面に部分酸化及び部分硫化を施した上で2(μm)〜6(μm)の範囲内の厚さでもって、前記筒状基体の外周面に塗布することで、前記触媒として前記筒状基体の前記外周面に担持させてなる触媒層とにより構成されていることを特徴とする請求項7に記載の微小コイルの製造装置。
【請求項9】
前記少なくとも1本の原料ガス導入筒は、複数の原料ガス導入筒であって、
当該複数の原料ガス導入筒は、前記筒状基材のうち軸方向長さの1/3以上の長さに対応する部位から当該筒状基材の軸方向に前記原料ガス導入筒の内径の20倍以内の間隔をおいて延出されており、
前記筒状基材の外周面と前記原料ガス導入筒の内端開口部との間の径方向対向間隔が、5(mm)〜50(mm)の範囲内の値に設定されていることを特徴とする請求項7または8に記載の微小コイルの製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図13】
【図14】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図13】
【図14】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−56811(P2012−56811A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202697(P2010−202697)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(509218146)株式会社CMC総合研究所 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(509218146)株式会社CMC総合研究所 (2)
【Fターム(参考)】
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