微小部材加熱用具、微小部材用こておよび微小部材用溶接器
【課題】微小な被加熱物(微小部材)を、安定な状態で、確実に加熱することができる微小部材加熱用具、微小部材用こておよび微小部材用溶接器を提供する。
【解決手段】微小部材を挟持するための挟持部と前記挟持部に挟持力を付与するための保持部とを有する挟持機構、および前記微小部材を加熱するための微小加熱機構を有し、前記保持部は、クランプ機構部および/またはクリップ機構部を有していることを特徴とする微小部材加熱用具、微小部材用こておよび微小部材用溶接器。
【解決手段】微小部材を挟持するための挟持部と前記挟持部に挟持力を付与するための保持部とを有する挟持機構、および前記微小部材を加熱するための微小加熱機構を有し、前記保持部は、クランプ機構部および/またはクリップ機構部を有していることを特徴とする微小部材加熱用具、微小部材用こておよび微小部材用溶接器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小部材を加熱するために用いられる微小部材加熱用具、微小部材用こておよび微小部材用溶接器に関する。
【背景技術】
【0002】
小さな電子部品の小ロット生産においては、自動部品実装装置を使わず、手作業による実装が行われる。しかし、これらの小さな電子部品は、耐熱性が十分とは言えず、また、熱容量も十分ではないとともに微小なので、手作業によるこれらの実装や、これらの取外し(リワーク)は難しい。例えば、センサーモジュール・ホールIC等の微小な多ピン電子部品のリワーク等を手作業で行うことには熟練を要し、特に、微小な多ピン電子部品の取外し等が難しい。
【0003】
このような作業のために、例えば、最近、ピンセット(ホットピンセット)の両先端に加熱具を付けて微小な電子部品を外すためのリワーク専用器が製品化されており、例えば、高周波半田ごてが特許文献1および非特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開2001−298268号公報
【非特許文献1】株式会社オーケー・インターナショナル カタログ No.01M−04(高周波リワークステーション「MX−500TS−11」)、2007年6月配布済
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、小さな電子部品のリワーク等は、顕微鏡を見ながらの作業が多く、被加熱物である小さな電子部品(微小な被加熱物)をホットピンセットで指により狭持した場合、被加熱物に対して斜めの狭持となり易く、被加熱物に対して十分な接触圧力と接触面積を確保することができず、結果的に、加熱面を均一に加圧して加熱することが困難であった。また、手ブレ等により、狭持された微小な被加熱物をそのまま一定の状態に保持しておくことが困難であり、加熱状態が不安定になりやすく確実に加熱することが困難であった。
【0005】
本発明は、微小な被加熱物(微小部材)を、安定な状態で、確実に加熱することができる微小部材加熱用具、微小部材用こておよび微小部材用溶接器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、従来のピンセットによる狭持の代わりに、クリップやクランプによる保持部を設けた狭持機構を有する加熱用具とすることにより、上記の課題を解決した。
以下、各請求項の発明につき説明する。
【0007】
請求項1に記載の発明は、
微小部材を挟持するための挟持部と前記挟持部に挟持力を付与するための保持部とを有する挟持機構、および前記挟持部に接して設けられ前記微小部材を加熱するための微小加熱機構を有する微小部材加熱用具であって、
前記保持部は、クランプ機構部および/またはクリップ機構部を有していることを特徴とする微小部材加熱用具である。
【0008】
クランプ機構部は、クランプ機構による死点を利用し、レバーの操作により前記挟持部に狭持力を付与するものであり、また、クリップ機構部は、この機構内に設けられる弾性体(スプリング等)による復元力を利用して、前記挟持部に狭持力を付与するものである。請求項1に記載の発明では、この挟持部により微小部材を挟持する。
【0009】
請求項1の発明は、上記のように、挟持部により挟持された微小部材を一定の状態に保持する機能を有するクランプ機構部および/またはクリップ機構部を設けたため、加熱面を安定して加圧し、微小部材を、安定な状態で、確実に、加熱面に狭持することができ、確実に加熱することができる。
【0010】
ここで微小部材とは、ピンセット等による挟持では安定な挟持が困難になるような微小な被加熱体(電子部品等)を言うが、例えば、実装時の接合部分の面積が1cm2以下の大きさの部材(電子部品等)や、線材においては芯材部分外周が1cm以下の部材を挙げることができる。また、ここで微小加熱機構とは、このような微小部材に接して加熱するために必要な大きさの加熱体面積を有する機構であって、例えば、加熱体面積が10cm2以下の加熱機構を挙げることができる。
【0011】
請求項1の発明において、微小加熱機構は挟持部に接して設けられており、微小部材は、この微小加熱機構を構成する加熱体に接して挟持されて、この加熱体により加熱される。または、微小部材は、挟持部に挟持されて、挟持部に接して設けられている微小加熱機構により加熱される。前記加熱体を加熱する加熱手段としては、特に限定されず、抵抗発熱、レーザー発熱、高周波加熱、ペルチエ素子等の発熱方法のいずれも利用することができる。
【0012】
微小部材に接する加熱体は、前記加熱手段により、直接加熱されてもよいが、加熱手段よりの熱伝導により加熱されてもよい。また、挟持部は、微小部材を挟持するための一対の面よりなるが、加熱体は、加熱目的に応じて、この一対の面の、両面あるいは片面だけに設けることができる。両面に設ける場合は、互いに同じ、あるいは互いに異なった加熱手段の加熱体であってもよい。
【0013】
前記抵抗発熱としては、具体的には、裸発熱体(例えば、ニクロム線等の金属)、シースヒータ、フィルムヒータ、フレキシブル(シリコンラバー)ヒーター、コンポジットヒータ、モールドヒータ、高融点金属ヒーター、非金属発熱体ヒーター、PTCヒーター等を挙げることができる。
【0014】
これらの加熱手段は、電源部よりの電流により発熱する。従って、この態様の微小部材加熱用具は、前記微小加熱機構(加熱手段)への電流供給機能を有している(請求項2)。
【0015】
電源部は、外部電源あるいは内蔵電源を問わず、また、交流、直流を問わず、各々の加熱手段に対応して、適宜決定される。交流タイプとしては、単相交流サイリスタ制御、高周波インバーター式等による電流供給を挙げることができる。直流タイプとしては、電池(蓄電池、燃料電池、充電電池)、コンバーター充放電、トランジスター制御、インバーター式等による電流供給を挙げることができる。
【0016】
加熱体の、温度コントロールの方法としては、例えば温度センサーを加熱体近傍に付帯させる方法が挙げられる。特に、加熱体のキューリー点効果を利用した温度コントロール機能を有しているセラミックPCTヒーター等、加熱手段自体が、温度コントロール機能を有していると、加熱温度を効率的に制御でき好ましい。
【0017】
微小加熱機構は、挟持部に接して設けられており、挟持部および微小部材に電気が流れることがないように、電流が供給される部分、例えば加熱手段と、微小部材の間が絶縁されている。絶縁手段として、例えば、耐熱絶縁材の素材をビス止めする方法、絶縁材や加熱手段を接着剤で接着する、モールド剤でモールドする等の方法、加熱体表面に耐熱絶縁コートを施す方法を挙げることができる。耐熱絶縁材は、耐熱樹脂、セラミック、絶縁非金属化合物(例えば、窒化物)を挙げることができ、また、耐熱絶縁コート方法としては、溶液法メッキ、溶融法ブラスト、気相法拡散、蒸着法PVD、被覆法塗布等を挙げることができる。
【0018】
前記微小加熱機構の形状としては、微小部材の形状に合わせた形状であると、効率的に加熱でき好ましい。
【0019】
前記加熱手段を、高周波コイルを用いた高周波加熱機構とした場合、キューリー点効果により、設定温度で発熱を確実にコントロールすることができる。ここで、高周波加熱とは、鉄とニッケルとの合金に高周波をかけることにより発熱させるものであり、請求項3の微小部材加熱用具の加熱手段が、この態様に該当する。即ち、請求項3は、高周波加熱機構を有し、前記微小加熱機構が、前記高周波加熱機構により加熱されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の微小部材加熱用具を提供するものである。なお、高周波加熱機構への電流の供給手段としては、前記と同様の手段を用いることができる。
【0020】
請求項4に記載の発明は、前記微小加熱機構が、レーザー光照射手段を有し、前記挟持部により挟持された微小部材が、直接レーザー光により加熱されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の微小部材加熱用具である。
【0021】
ここでは、挟持部に接して設けられている微小加熱機構は、レーザー光照射手段を有し、挟持部により挟持された微小部材は、レーザー光照射手段よりのレーザー光により直接加熱される。レーザー光照射手段としては、レーザー光供給手段(レーザー光発振装置等)と光ファイバーからなるものが例示され、この場合は、光ファイバーの先端部が挟持部に接して設けられ、その先端部からのレーザー光により微小部材は照射され加熱される。
【0022】
本請求項の発明においては、レーザー光を用いて加熱するため、微小部材の微小な箇所への加熱を、微小部材とレーザー光照射手段を非接触状態で、正確に制御しながら行うことができる。また、レーザービーム範囲内に加熱体がある場合、この加熱体を微小部材と同時に昇温することができ、この加熱体による微小部材の加熱も同時に行うこともできる。
【0023】
なお、微小部材や前記のような加熱体からのレーザー光の反射により、他の部分が加熱されないように、この反射を防ぐための、レーザー光反射防止手段を挟持部等に設けることが好ましい。
【0024】
保持部は、クランプ機構部および/またはクリップ機構部を有しているが、さらに挟持部と反対側に弾性体の柄を有していると、微小部材が挟持部や微小加熱機構に斜めに当接していても、弾性により挟持部や微小加熱機構の全面を微小部材に接触させることができ、均一に加圧、加熱する効果がより向上するので好ましい。請求項5が、この好ましい態様として提供される。即ち、請求項5において、前記保持部が、弾性体の柄を有していることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の微小部材加熱用具が提供される。
【0025】
柄の形状としては、特に限定はされないが、コイル状であると、押圧機能の他に放熱機能や接続機能を備えることができるため好ましい。例えば、放熱の良い剛性の有る金属をコイル材として、できるだけ細く長くすることにより、放熱機能を良くすることができる。また、コイルの線径は、微小部材の種類や大きさ、または、微小部材の接合の種類によって変わる。なお、クランプ機構を利用しての接合時には、コイルを少し押しながら縮めて使う方が、微小部材用こてや微小部材用溶接器においては特に、押圧のコントロールが出来て熱効率が良くなる。
【0026】
請求項6に記載の発明は、
微小部材を加熱するための微小加熱機構、および前記微小加熱機構を挟持するための挟持部と前記挟持部に挟持力を付与するための保持部とを有する挟持機構を有する微小部材用こてであって、
前記保持部は、クランプ機構部および/またはクリップ機構部を有していることを特徴とする微小部材用こてである。
【0027】
請求項6の発明においては、微小加熱機構と挟持機構とは別体として構成されている。微小加熱機構を構成する加熱体や、この加熱体を加熱する加熱手段としては、請求項1の発明における場合と同様な加熱体、加熱手段を用いることができる。加熱手段への電流供給は、加熱手段へ直接行われてもよい。また、挟持機構を通して電流供給されてもよい。
【0028】
請求項6の発明においては、挟持部により挟持された微小加熱機構を一定の状態に保持する機能を有するクランプ機構部および/またはクリップ機構部を設けたため、微小加熱機構を安定な状態で、確実に狭持することができ、微小な被加熱物を確実に加熱できる微小部材用こてを提供することができる。
【0029】
また、微小加熱機構は、微小部材に対応したものであるため、微小加熱機構は、熱容量が小さく形状も小さなこて先でよい。なお、挟持部、保持部等の各部の構成については、基本的に請求項1の発明に同じであるので、同様の効果を見込むことができる。詳しい説明は、既に述べているため、省略する。
【0030】
請求項7に記載の発明は、前記微小加熱機構への電流供給機能を有していることを特徴とする請求項6に記載の微小部材用こてである。電流供給機能の構成、その作用、機能、および具体例は、請求項2の発明の場合と同様であるので、その詳細な説明は省略する。
【0031】
請求項8に記載の発明は、高周波加熱機構を有し、前記微小加熱機構が、前記高周波加熱機構により加熱されることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の微小部材用こてである。この高周波加熱機構により加熱される微小加熱機構は、挟持機構とは別体である点は、請求項3の発明と異なるが、高周波加熱機構の構成、その作用、機能、等の他の点では請求項3の発明の場合と同様であるので、その詳細な説明は省略する。
【0032】
請求項9に記載の発明は、前記微小加熱機構へのレーザー光照射手段を有し、前記微小加熱機構が、レーザー光により加熱されることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の微小部材用こてである。
【0033】
ここで用いられるレーザー光照射手段の構成、その作用、機能、および具体例は、請求項4の発明の場合と同様であるので、その詳細な説明は省略する。ただし、請求項9に記載の発明では、レーザー光照射手段により、微小加熱機構が照射され加熱され、この加熱された微小加熱機構により、微小部材が加熱される。
【0034】
請求項9の発明においては、熱容量の小さな微小部材に対応する場合は、微小加熱機構は、微小なレーザー光吸熱体で構成されたものでよい。レーザー光吸熱体としては、カーボン、カーボン複合材、またはレーザー光を吸収するものをコートした金属を用いることができる。
【0035】
請求項10に記載の発明は、前記保持部が、弾性体の柄を有していることを特徴とする請求項6ないし請求項9のいずれかに記載の微小部材用こてである。弾性体の柄の構成、その作用、機能、および具体例は、請求項5の発明の場合と同様であるので、その詳細な説明は省略する。
【0036】
請求項7〜請求項10の発明と、請求項6の発明との関係は、上述した請求項2〜請求項5の発明と、請求項1の発明との関係とそれぞれ基本的に同一であるので、請求項7〜請求項10の発明において、請求項2〜請求項5の発明と同様の効果を見込むことができる。詳しい説明は、既に述べているため、省略する。
【0037】
請求項11に記載の発明は、微小部材と接触して前記微小部材に電流を供給する微小対電極、前記微小対電極間に設けられた絶縁層、および前記微小対電極と前記絶縁層を挟持するための挟持部と前記挟持部に挟持力を付与するための保持部とを有する挟持機構を有する微小部材用溶接器であって、
前記保持部は、クランプ機構部および/またはクリップ機構部を有していることを特徴とする微小部材用溶接器である。
【0038】
請求項11の発明においては、挟持部により挟持された微小対電極を一定の状態に保持する機能を有するクランプ機構部および/またはクリップ機構部を設けたため、微小対電極を、一定の状態で確実に狭持でき、微小対電極に電流を供給することにより、微小対電極に接する微小部材の局部が通電、加熱されて、所定の微小箇所を溶接することができる。
【0039】
ここで、挟持部、保持部、クランプ機構部、クリップ機構部等の構成、その作用、機能、および具体例は、請求項1の発明の場合と同様であるので、その詳細な説明は省略する。
【0040】
微小対電極としては、微小部材に接触して微小部材内に通電されるために設けられた一対の電極と微小対電極間を絶縁する絶縁層とで構成され、一体化された対電極からなるものが挙げられる。この部材を狭持部に狭持し、さらに保持部により保持して用いられる。また、微小対電極の各電極のそれぞれを狭持部の一方と接合し、狭持により、それぞれの電極が一体化して、対電極を形成するようにしてもよい。この場合、対電極間には絶縁部材が狭持され、絶縁層が形成される。
【0041】
なお、ここで接合とは、狭持部と微小対電極を固着するように設けることを言い、接着剤による接着、ビス止め、それぞれに凹凸部を設けて篏合する方法等を挙げることができる。本明細書の他の部分で使用される接合との用語も、特にその趣旨に反しない限り、同様な意味とすることができる。
【0042】
絶縁部材としては、電気的絶縁性と耐熱性とを有する繊維、例えば、ポリイミドやアラミド繊維、雲母やセラミック繊維・特にアルミナ繊維やガラス繊維等を使用することができる。また、金属シートに、絶縁材料を、片面または両面コートしたものを使用することもできる。
【0043】
絶縁部材の形状としては、チップ状やシート状、または、テープ状等、特に限定されるものではない。また、絶縁部材は、電極の一方または両方に接合して設けられてもよいが、電極とは別体とし、使用時には電極間に挟持して用い、使用毎に交換可能に設けられてもよい。特に、テープ状の絶縁部材を用いて、使用毎にテープを移動する方法によれば、使用の都度、新しい部位を使うことができ、好ましい。
【0044】
請求項12に記載の発明は、
前記保持部が、弾性体の柄を有していることを特徴とする請求項11に記載の微小部材用溶接器である。
【0045】
請求項12の発明と請求項11の発明との関係は、請求項5の発明と請求項1の発明との関係に、基本的に同一であるので、同様の効果を見込むことができる。詳しい説明は、既に述べているため、省略する。
【発明の効果】
【0046】
本発明により、微小な被加熱物を、安定にかつ確実に加熱することができる微小部材加熱用具、微小部材用こて、微小部材用溶接器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、本発明をその最良の実施の形態に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、以下の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。なお、以下の各実施の形態では、クリップ機構部および/またはクランプ機構部を有する加熱具において、理解を容易にするため、クリップ機構部だけの場合を基本として説明している。
【0048】
(実施の形態1)
本実施の形態は、請求項1に記載の加熱用具であり、図1、図2を用いて説明する。図1は、微小部材加熱用具20、接続部25、手元スイッチ22、電源部23で構成される全体図であり、図2は、微小部材加熱用具20の斜視図(a)および分解図(b)である。なお、符号は、図1以降すべての図において、共通としている。
【0049】
図1においては、電源部23より、接続部25を介して微小部材加熱用具20に電流が供給されて、微小部材加熱用具20の加熱体(詳細な図示は省略する)が発熱する。また、微小部材加熱用具20には温度コントロール素子が内蔵されていて、電源部23のコントロールパネルで、温度を設定する。電源部23には、他に絶縁チェック機能端子等も設ける。このとき、手元スイッチ22を操作することにより、加熱体の発熱状態をコントロールすることができる。
【0050】
図2においては、クリップ部1、1’は、バネ2、バネ芯棒2’を介して開閉自在に接合されており、保持部3、3’の端部にある挟持部7、7’には、加熱手段4、4’をその内部に有する加熱体5、5’が、絶縁層6、6’を介して接合されている。加熱体5、5’における加熱手段4、4’としては、セラミックPTC(Positive Temperature Coeffcient)素子を利用した自己制御性ヒーターを用いている(接続部は、図示せず)。
【0051】
微小部材は、加熱体5、5’の間に挟持され、保持されたままで加熱される。このとき、クリップ部1、1’の挟持部7、7’には、バネ2により付勢力が働くため、安定して微小部材を挟持部7、7’間に挟持でき、均一に加熱することができる。
【0052】
加熱体5、5’は、被加熱体に対応してその形状を変えることができる。例を図3に示す。図3において、(a)は、加熱手段4、4’からの熱伝導により加熱体5、5’が加熱されるタイプのものであり、加熱手段4、4’と熱伝導体により連結された加熱体5、5’が配されている。保持部3、3’の端部にある挟持部7、7’には、直接電流供給される加熱手段4、4’が、絶縁層6、6’を介して接合されている。加熱手段4、4’による発熱が、加熱体5、5’に伝導され、さらに加熱体5、5’により微小部材が加熱される。
【0053】
また、(b)は、加熱体5、5’が自己発熱するタイプのものであり、加熱手段4、4’の有する電極に連結されて加熱体5、5’が配されている。保持部3、3’の端部にある挟持部7、7’には、加熱手段4、4’が、絶縁層6、6’を介して接合されている。加熱手段4、4’の電極端子による給電により、加熱体5、5’が発熱し、微小部材を加熱する。
【0054】
そして、図4は、本実施の形態の加熱用具を、チップ外し作業に用いた場合を示す図である。図4においては、図2に示した加熱用具に、さらにコイル状の柄21を配している。コイル状の柄21は、後述の図8に示すように、さらに、クランプにて保持されていてもよい。長時間使う時は、クリップ部1、1’が熱くなるので、コイル状の柄21を持って操作する。保持部3、3’の端部にある挟持部7、7’には、加熱手段4、4’をその内部に有する絶縁コートされた加熱体5、5’が接合されている。加熱体5、5’がチップ(微小部材)を挟み込み、加熱することにより、チップを取り外すことができる。
【0055】
(実施の形態2)
本実施の形態は、請求項3に記載の高周波加熱機構を有する微小部材加熱用具であり、図5を用いて説明する。図5において、クリップ部1、1’は、バネ2で固定されており、保持部3、3’には、高周波コイル11が接続された加熱体5、5’が配されている。
【0056】
高周波コイル11は、加熱手段として働き、高周波コイル11の発熱がコイルのシリンダを加熱し、さらに、その熱伝導により、保持部3、3’に接合された加熱体5、5’が、微小部材を加熱する。保持部3、3’の端部にある挟持部7、7’には、加熱体5、5’が、絶縁層6、6’を介して、ビス止めにより固定されている。図5の高周波加熱機構部分は、加熱機構部分の説明のため拡大された図であり、実際高周波コイル11は扁平でも良く、保持部3に収まる大きさである。
【0057】
(実施の形態3)
前記実施の形態2における加熱体5、5’を、ビス止めにより挟持部7、7’に固定せずに、別体の加熱体とすると、請求項8に記載の微小部材用こてとなる。加熱体は、このこての微小加熱機構であり、挟持部7、7’に挟持される。このとき、高周波加熱機構部分は、別体である加熱体と結合して加熱体を直接加熱してもよいし、挟持部7、7’と結合して挟持部7、7’を加熱し、そこに挟持される加熱体を間接的に加熱してもよい。このようにして加熱された加熱体が、微小部材に接触して微小部材を加熱する。このような別体である加熱体としては、後述する図7に示される5a、5b、5cを例示することができる。
【0058】
実施の形態2、3に用いられる高周波コイル11は、無酸化銅丸棒に、鉄とニッケルの合金のコートをしてコイル状に巻いたものである。コイルに高周波を流すと、磁化されコートされた部分が発熱する。高周波は表面を流れやすい。そして、コートされた合金のキユーリー温度に達すると、磁性を失い発熱しなくなる。前記のキユーリー温度は、合金の割合で決まり、一定している。例えば、鉄60%&ニッケル40%で352℃であり、鉄50%&ニッケル50%で405℃である。このように、発熱を自己制御することができ、復帰制御も半田付け持の温度低下よりも素早いため、理想的な半田こてとすることができる。
【0059】
(実施の形態4)
本実施の形態は、請求項4に記載の微小部材加熱用具であり、図6を用いて説明する。図6において、クリップ部1、1’は、バネ2で固定されており、保持部3、3’には、挟持部7、7’がビス止めにより接合されるが、図では接合前の状態であって、挟持部7、7’が微小部材を挟持する位置関係にある場合を示している。
【0060】
挟持部7、7’の一方には、光ファイバー12の先端が接するように設けられており、光ファイバー12の他方の端は、レーザー発振装置(図示せず)と連結している。挟持部7、7’が、微小部材を挟持するときは、図に示すように、狭持部7が狭持部7’を内側に嵌合する。このとき、狭持部7と狭持部7’の間には空洞が生じる。光ファイバー12の先端は狭持部7または狭持部7’の微小部材を狭持する側に固着されているので、この空洞内に、光ファイバー12の先端が固定される。又、微小部材も、この空洞内に挟持される。この挟持を確実に行うために、狭持部7が狭持部7’それぞれの微小部材を狭持する側の端部には突起7aと突起7’aが設けてある。
【0061】
狭持部7と狭持部7’の間の空洞内に挟持された微小部材は、空洞内に固定された光ファイバー12の先端からのレーザーにより直接照射され加熱される。即ち、この態様では光ファイバー12の先端が、微小加熱機構となる。なお、微小部材等からのレーザーの反射により他の部分が加熱されないように、挟持部7、7’の内側は光反射処理コートが施されている。
【0062】
(実施の形態5)
前記実施の形態4において、挟持部7、7’間(の空洞)に微小部材を狭持する代わりに、微小部材を加熱するための微小加熱機構を、別体として、挟持部7、7’間(の空洞)に挟持し、この微小加熱機構を光ファイバー12の先端からのレーザーにより加熱すると、請求項9に記載の微小部材用こてとなる。微小加熱機構は、光ファイバー12の先端からのレーザーにより直接照射されて加熱されてもよいし、レーザーにより加熱された微小部材用こての他の部分により間接的に加熱されてもよい。この微小加熱機構により、微小部材が加熱される。微小加熱機構としては、後述する図7に示される5a、5b、5cを例示することができる。
【0063】
実施の形態5に用いられる微小加熱機構(例えば、図7に示される5a、5b、5c)は、熱容量の小さな微小部材に対応するものであるため、微小なレーザー光吸熱体で構成されたもので良い。このレーザー光吸熱体は、カーボンや、カーボン複合材、またはレーザー光を吸収できるものである。この態様では、微小部材と接して、レーザー光を用いて加熱するため、より微小な箇所への加熱が可能となり、温度コントロールも容易となる。
【0064】
(実施の形態6)
請求項6に記載の微小部材用こては、挟持機構と加熱機構とが別体で、挟持機構が加熱機構を挟持することを特徴とし、その例が、前記の実施の形態3や5である。図7は、本実施の形態において用いられる挟持部と加熱体(微小加熱機構)との組み合わせの例を示したものである。図7において、加熱体の形状として、(a)〜(c)の形状が例示されている。図7において、(a)は、リード線タイプ部品の実装や外し、または、半田除去用等に用いられる。また、(b)は、2列以上の多ピンタイプの部品であるIC等の実装や外しに用いられ、(c)は、1列の多ピンタイプ部品の実装や外しに用いられる。
【0065】
挟持部7、7’は、加熱体5(5(a)、5(b)、5(c))を挟持した状態で、クリップ(保持部)に保持されており、加熱体5が有する加熱手段には、挟持部7、7’より電流供給されてもよいし、外部より直接電流供給されてもよい。又、挟持部7、7’が、加熱手段をその内部にまたは外部に有しても良い。挟持部7、7’と、保持部等、他の部分との関係は、図2の場合と基本的に同様であり、説明は省略する。このように、組み合わせを工夫することにより、適用範囲を広げることができ、IC実装等の場合に使用される。
【0066】
図7に示した挟持部と加熱体との組み合わせの1つを例にとり、その加熱機構を、図8を用いて、さらに詳しく説明する。図8において、(a)は、挟持部下部7’に並列電極端子8、8’が設けられており、加熱体5を挟持してクリップ部(保持部)に保持されている。なお、並列電極端子8、8’は、いずれかが正極であり、他方が負極である。
【0067】
このとき、挟持下部7’に設けられた電極8、8’を介して、加熱体5内の加熱手段に通電され、加熱体5が発熱する。このような構造とすることにより、より小さな加熱体とすることができ、応答性に優れた加熱用具となる。加熱体5、5’における加熱手段4、4’としては、セラミックPTC(Positive Temperature Coeffcient)素子を利用した自己制御性ヒーターを用いている(接続部は、図示せず)。
【0068】
また、(b)は、挟持部7、7’のそれぞれが加熱手段4、4’をその内部に有しており、加熱手段4、4’からの熱伝導により加熱体5が発熱する。
【0069】
図9は、図7、8に示した加熱用具をICの実装または取り外しに用いる場合を示している。図9において、(a)は、全体の概念図であり、図4に既に示した微小部材加熱用具と同様な挟持機構の先端にある挟持部7に、微小加熱機構である加熱体5が挟持される。さらに、この挟持機構のクリップ1に接続している柄21は、クランプ部24により保持されている。また、(b)は、実装作業に関する部分につき拡大したものである。加熱体5の凹部にICが配され、加熱体5より加熱することにより、ICのピンのハンダが溶融して、ICの実装または取り外しがされる。
【0070】
(実施の形態7)
本実施の形態は、請求項11に記載の挟持機構が微小対電極を有する加熱用溶接器であり、図10を用いて説明する。図10において、クリップ部1には、柄21が配されており、保持部3は、一体化された微小対電極9を挟持した挟持部7を保持している。また、図11は、前記加熱用溶接器における挟持部7、7’と微小対電極9を示している。
【0071】
微小対電極9は、各電極10、10’とそれらの間を絶縁する絶縁層10’’からなる。一体化された微小対電極9の先端部に微小部材を電極10および電極10’と接触するように配して、挟持部7、7’から電流を供給すると、電極10、微小部材、電極10’の順で電気が流れ、電極10および電極10’の接触点間の微小部材が通電される。この通電により微小部材の通電部が加熱されて、溶接される。図のような構造としたことにより、先端部をより小さく作ることができ、微小な箇所の溶接が可能となる。
【0072】
微小部材用溶接器の別の例を、図12に示す。図12において、クリップ部1には、柄21が配されており、保持部3には、絶縁層6、6’のそれぞれを介して、微小対電極のそれぞれの電極10、10’が接合されており、さらに、電極10、10’は、絶縁層10’’を挟持して一体化されている。絶縁層10’’としては、例えば、ポリイミドフィルムが用いられる。
【0073】
ただし、この場合には、溶接時に、絶縁層10’’が一番ダメージを受ける。絶縁層10’’にポリイミドテープを用いて毎回スライドして使えば、常に新しい面を使用できて効率よく溶接が行うことができる。
【0074】
溶接の際には、電極10、10’を、絶縁層10’’を介して結合して、微小部材に接触させると、通電材料部分がある微小部材に通電する時の集中抵抗や、皮膜抵抗である接触抵抗により加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】請求項1に係る微小部材加熱用具による加熱システムの全体構成図である。
【図2】請求項1に係る微小部材加熱用具の構造を説明する図である。
【図3】請求項1に係る微小部材加熱用具における加熱体の別の例を説明する図である。
【図4】請求項1に係る微小部材加熱用具の使用例を説明する図である。
【図5】請求項3に係る微小部材加熱用具の構造を説明する図である。
【図6】請求項4に係る微小部材加熱用具の構造を説明する図である。
【図7】請求項6に係る微小部材用こてにおける挟持部と加熱体を説明する図である。
【図8】請求項6に係る微小部材用こてにおける挟持部と加熱体を説明する図である。
【図9】請求項6に係る微小部材用こての使用例を説明する図である。
【図10】請求項11に係る微小部材用溶接器を説明する図である。
【図11】請求項11に係る微小部材用溶接器を説明する図である。
【図12】請求項11に係る微小部材用溶接器の別の例を説明する図である。
【符号の説明】
【0076】
1、1’ クリップ部
2 バネ
3、3’ 保持部
4、4’ 加熱手段
5、5’ 加熱体
6、6’ 絶縁層
7、7’ 挟持部
8、8’ 並列電極端子
9、9’ 微小対電極
11 高周波コイル
12 光ファイバー
20 微小部材加熱用具
21 柄
22 手元スイッチ
23 電源部
24 クランプ部
25 接続部
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小部材を加熱するために用いられる微小部材加熱用具、微小部材用こておよび微小部材用溶接器に関する。
【背景技術】
【0002】
小さな電子部品の小ロット生産においては、自動部品実装装置を使わず、手作業による実装が行われる。しかし、これらの小さな電子部品は、耐熱性が十分とは言えず、また、熱容量も十分ではないとともに微小なので、手作業によるこれらの実装や、これらの取外し(リワーク)は難しい。例えば、センサーモジュール・ホールIC等の微小な多ピン電子部品のリワーク等を手作業で行うことには熟練を要し、特に、微小な多ピン電子部品の取外し等が難しい。
【0003】
このような作業のために、例えば、最近、ピンセット(ホットピンセット)の両先端に加熱具を付けて微小な電子部品を外すためのリワーク専用器が製品化されており、例えば、高周波半田ごてが特許文献1および非特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開2001−298268号公報
【非特許文献1】株式会社オーケー・インターナショナル カタログ No.01M−04(高周波リワークステーション「MX−500TS−11」)、2007年6月配布済
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、小さな電子部品のリワーク等は、顕微鏡を見ながらの作業が多く、被加熱物である小さな電子部品(微小な被加熱物)をホットピンセットで指により狭持した場合、被加熱物に対して斜めの狭持となり易く、被加熱物に対して十分な接触圧力と接触面積を確保することができず、結果的に、加熱面を均一に加圧して加熱することが困難であった。また、手ブレ等により、狭持された微小な被加熱物をそのまま一定の状態に保持しておくことが困難であり、加熱状態が不安定になりやすく確実に加熱することが困難であった。
【0005】
本発明は、微小な被加熱物(微小部材)を、安定な状態で、確実に加熱することができる微小部材加熱用具、微小部材用こておよび微小部材用溶接器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、従来のピンセットによる狭持の代わりに、クリップやクランプによる保持部を設けた狭持機構を有する加熱用具とすることにより、上記の課題を解決した。
以下、各請求項の発明につき説明する。
【0007】
請求項1に記載の発明は、
微小部材を挟持するための挟持部と前記挟持部に挟持力を付与するための保持部とを有する挟持機構、および前記挟持部に接して設けられ前記微小部材を加熱するための微小加熱機構を有する微小部材加熱用具であって、
前記保持部は、クランプ機構部および/またはクリップ機構部を有していることを特徴とする微小部材加熱用具である。
【0008】
クランプ機構部は、クランプ機構による死点を利用し、レバーの操作により前記挟持部に狭持力を付与するものであり、また、クリップ機構部は、この機構内に設けられる弾性体(スプリング等)による復元力を利用して、前記挟持部に狭持力を付与するものである。請求項1に記載の発明では、この挟持部により微小部材を挟持する。
【0009】
請求項1の発明は、上記のように、挟持部により挟持された微小部材を一定の状態に保持する機能を有するクランプ機構部および/またはクリップ機構部を設けたため、加熱面を安定して加圧し、微小部材を、安定な状態で、確実に、加熱面に狭持することができ、確実に加熱することができる。
【0010】
ここで微小部材とは、ピンセット等による挟持では安定な挟持が困難になるような微小な被加熱体(電子部品等)を言うが、例えば、実装時の接合部分の面積が1cm2以下の大きさの部材(電子部品等)や、線材においては芯材部分外周が1cm以下の部材を挙げることができる。また、ここで微小加熱機構とは、このような微小部材に接して加熱するために必要な大きさの加熱体面積を有する機構であって、例えば、加熱体面積が10cm2以下の加熱機構を挙げることができる。
【0011】
請求項1の発明において、微小加熱機構は挟持部に接して設けられており、微小部材は、この微小加熱機構を構成する加熱体に接して挟持されて、この加熱体により加熱される。または、微小部材は、挟持部に挟持されて、挟持部に接して設けられている微小加熱機構により加熱される。前記加熱体を加熱する加熱手段としては、特に限定されず、抵抗発熱、レーザー発熱、高周波加熱、ペルチエ素子等の発熱方法のいずれも利用することができる。
【0012】
微小部材に接する加熱体は、前記加熱手段により、直接加熱されてもよいが、加熱手段よりの熱伝導により加熱されてもよい。また、挟持部は、微小部材を挟持するための一対の面よりなるが、加熱体は、加熱目的に応じて、この一対の面の、両面あるいは片面だけに設けることができる。両面に設ける場合は、互いに同じ、あるいは互いに異なった加熱手段の加熱体であってもよい。
【0013】
前記抵抗発熱としては、具体的には、裸発熱体(例えば、ニクロム線等の金属)、シースヒータ、フィルムヒータ、フレキシブル(シリコンラバー)ヒーター、コンポジットヒータ、モールドヒータ、高融点金属ヒーター、非金属発熱体ヒーター、PTCヒーター等を挙げることができる。
【0014】
これらの加熱手段は、電源部よりの電流により発熱する。従って、この態様の微小部材加熱用具は、前記微小加熱機構(加熱手段)への電流供給機能を有している(請求項2)。
【0015】
電源部は、外部電源あるいは内蔵電源を問わず、また、交流、直流を問わず、各々の加熱手段に対応して、適宜決定される。交流タイプとしては、単相交流サイリスタ制御、高周波インバーター式等による電流供給を挙げることができる。直流タイプとしては、電池(蓄電池、燃料電池、充電電池)、コンバーター充放電、トランジスター制御、インバーター式等による電流供給を挙げることができる。
【0016】
加熱体の、温度コントロールの方法としては、例えば温度センサーを加熱体近傍に付帯させる方法が挙げられる。特に、加熱体のキューリー点効果を利用した温度コントロール機能を有しているセラミックPCTヒーター等、加熱手段自体が、温度コントロール機能を有していると、加熱温度を効率的に制御でき好ましい。
【0017】
微小加熱機構は、挟持部に接して設けられており、挟持部および微小部材に電気が流れることがないように、電流が供給される部分、例えば加熱手段と、微小部材の間が絶縁されている。絶縁手段として、例えば、耐熱絶縁材の素材をビス止めする方法、絶縁材や加熱手段を接着剤で接着する、モールド剤でモールドする等の方法、加熱体表面に耐熱絶縁コートを施す方法を挙げることができる。耐熱絶縁材は、耐熱樹脂、セラミック、絶縁非金属化合物(例えば、窒化物)を挙げることができ、また、耐熱絶縁コート方法としては、溶液法メッキ、溶融法ブラスト、気相法拡散、蒸着法PVD、被覆法塗布等を挙げることができる。
【0018】
前記微小加熱機構の形状としては、微小部材の形状に合わせた形状であると、効率的に加熱でき好ましい。
【0019】
前記加熱手段を、高周波コイルを用いた高周波加熱機構とした場合、キューリー点効果により、設定温度で発熱を確実にコントロールすることができる。ここで、高周波加熱とは、鉄とニッケルとの合金に高周波をかけることにより発熱させるものであり、請求項3の微小部材加熱用具の加熱手段が、この態様に該当する。即ち、請求項3は、高周波加熱機構を有し、前記微小加熱機構が、前記高周波加熱機構により加熱されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の微小部材加熱用具を提供するものである。なお、高周波加熱機構への電流の供給手段としては、前記と同様の手段を用いることができる。
【0020】
請求項4に記載の発明は、前記微小加熱機構が、レーザー光照射手段を有し、前記挟持部により挟持された微小部材が、直接レーザー光により加熱されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の微小部材加熱用具である。
【0021】
ここでは、挟持部に接して設けられている微小加熱機構は、レーザー光照射手段を有し、挟持部により挟持された微小部材は、レーザー光照射手段よりのレーザー光により直接加熱される。レーザー光照射手段としては、レーザー光供給手段(レーザー光発振装置等)と光ファイバーからなるものが例示され、この場合は、光ファイバーの先端部が挟持部に接して設けられ、その先端部からのレーザー光により微小部材は照射され加熱される。
【0022】
本請求項の発明においては、レーザー光を用いて加熱するため、微小部材の微小な箇所への加熱を、微小部材とレーザー光照射手段を非接触状態で、正確に制御しながら行うことができる。また、レーザービーム範囲内に加熱体がある場合、この加熱体を微小部材と同時に昇温することができ、この加熱体による微小部材の加熱も同時に行うこともできる。
【0023】
なお、微小部材や前記のような加熱体からのレーザー光の反射により、他の部分が加熱されないように、この反射を防ぐための、レーザー光反射防止手段を挟持部等に設けることが好ましい。
【0024】
保持部は、クランプ機構部および/またはクリップ機構部を有しているが、さらに挟持部と反対側に弾性体の柄を有していると、微小部材が挟持部や微小加熱機構に斜めに当接していても、弾性により挟持部や微小加熱機構の全面を微小部材に接触させることができ、均一に加圧、加熱する効果がより向上するので好ましい。請求項5が、この好ましい態様として提供される。即ち、請求項5において、前記保持部が、弾性体の柄を有していることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の微小部材加熱用具が提供される。
【0025】
柄の形状としては、特に限定はされないが、コイル状であると、押圧機能の他に放熱機能や接続機能を備えることができるため好ましい。例えば、放熱の良い剛性の有る金属をコイル材として、できるだけ細く長くすることにより、放熱機能を良くすることができる。また、コイルの線径は、微小部材の種類や大きさ、または、微小部材の接合の種類によって変わる。なお、クランプ機構を利用しての接合時には、コイルを少し押しながら縮めて使う方が、微小部材用こてや微小部材用溶接器においては特に、押圧のコントロールが出来て熱効率が良くなる。
【0026】
請求項6に記載の発明は、
微小部材を加熱するための微小加熱機構、および前記微小加熱機構を挟持するための挟持部と前記挟持部に挟持力を付与するための保持部とを有する挟持機構を有する微小部材用こてであって、
前記保持部は、クランプ機構部および/またはクリップ機構部を有していることを特徴とする微小部材用こてである。
【0027】
請求項6の発明においては、微小加熱機構と挟持機構とは別体として構成されている。微小加熱機構を構成する加熱体や、この加熱体を加熱する加熱手段としては、請求項1の発明における場合と同様な加熱体、加熱手段を用いることができる。加熱手段への電流供給は、加熱手段へ直接行われてもよい。また、挟持機構を通して電流供給されてもよい。
【0028】
請求項6の発明においては、挟持部により挟持された微小加熱機構を一定の状態に保持する機能を有するクランプ機構部および/またはクリップ機構部を設けたため、微小加熱機構を安定な状態で、確実に狭持することができ、微小な被加熱物を確実に加熱できる微小部材用こてを提供することができる。
【0029】
また、微小加熱機構は、微小部材に対応したものであるため、微小加熱機構は、熱容量が小さく形状も小さなこて先でよい。なお、挟持部、保持部等の各部の構成については、基本的に請求項1の発明に同じであるので、同様の効果を見込むことができる。詳しい説明は、既に述べているため、省略する。
【0030】
請求項7に記載の発明は、前記微小加熱機構への電流供給機能を有していることを特徴とする請求項6に記載の微小部材用こてである。電流供給機能の構成、その作用、機能、および具体例は、請求項2の発明の場合と同様であるので、その詳細な説明は省略する。
【0031】
請求項8に記載の発明は、高周波加熱機構を有し、前記微小加熱機構が、前記高周波加熱機構により加熱されることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の微小部材用こてである。この高周波加熱機構により加熱される微小加熱機構は、挟持機構とは別体である点は、請求項3の発明と異なるが、高周波加熱機構の構成、その作用、機能、等の他の点では請求項3の発明の場合と同様であるので、その詳細な説明は省略する。
【0032】
請求項9に記載の発明は、前記微小加熱機構へのレーザー光照射手段を有し、前記微小加熱機構が、レーザー光により加熱されることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の微小部材用こてである。
【0033】
ここで用いられるレーザー光照射手段の構成、その作用、機能、および具体例は、請求項4の発明の場合と同様であるので、その詳細な説明は省略する。ただし、請求項9に記載の発明では、レーザー光照射手段により、微小加熱機構が照射され加熱され、この加熱された微小加熱機構により、微小部材が加熱される。
【0034】
請求項9の発明においては、熱容量の小さな微小部材に対応する場合は、微小加熱機構は、微小なレーザー光吸熱体で構成されたものでよい。レーザー光吸熱体としては、カーボン、カーボン複合材、またはレーザー光を吸収するものをコートした金属を用いることができる。
【0035】
請求項10に記載の発明は、前記保持部が、弾性体の柄を有していることを特徴とする請求項6ないし請求項9のいずれかに記載の微小部材用こてである。弾性体の柄の構成、その作用、機能、および具体例は、請求項5の発明の場合と同様であるので、その詳細な説明は省略する。
【0036】
請求項7〜請求項10の発明と、請求項6の発明との関係は、上述した請求項2〜請求項5の発明と、請求項1の発明との関係とそれぞれ基本的に同一であるので、請求項7〜請求項10の発明において、請求項2〜請求項5の発明と同様の効果を見込むことができる。詳しい説明は、既に述べているため、省略する。
【0037】
請求項11に記載の発明は、微小部材と接触して前記微小部材に電流を供給する微小対電極、前記微小対電極間に設けられた絶縁層、および前記微小対電極と前記絶縁層を挟持するための挟持部と前記挟持部に挟持力を付与するための保持部とを有する挟持機構を有する微小部材用溶接器であって、
前記保持部は、クランプ機構部および/またはクリップ機構部を有していることを特徴とする微小部材用溶接器である。
【0038】
請求項11の発明においては、挟持部により挟持された微小対電極を一定の状態に保持する機能を有するクランプ機構部および/またはクリップ機構部を設けたため、微小対電極を、一定の状態で確実に狭持でき、微小対電極に電流を供給することにより、微小対電極に接する微小部材の局部が通電、加熱されて、所定の微小箇所を溶接することができる。
【0039】
ここで、挟持部、保持部、クランプ機構部、クリップ機構部等の構成、その作用、機能、および具体例は、請求項1の発明の場合と同様であるので、その詳細な説明は省略する。
【0040】
微小対電極としては、微小部材に接触して微小部材内に通電されるために設けられた一対の電極と微小対電極間を絶縁する絶縁層とで構成され、一体化された対電極からなるものが挙げられる。この部材を狭持部に狭持し、さらに保持部により保持して用いられる。また、微小対電極の各電極のそれぞれを狭持部の一方と接合し、狭持により、それぞれの電極が一体化して、対電極を形成するようにしてもよい。この場合、対電極間には絶縁部材が狭持され、絶縁層が形成される。
【0041】
なお、ここで接合とは、狭持部と微小対電極を固着するように設けることを言い、接着剤による接着、ビス止め、それぞれに凹凸部を設けて篏合する方法等を挙げることができる。本明細書の他の部分で使用される接合との用語も、特にその趣旨に反しない限り、同様な意味とすることができる。
【0042】
絶縁部材としては、電気的絶縁性と耐熱性とを有する繊維、例えば、ポリイミドやアラミド繊維、雲母やセラミック繊維・特にアルミナ繊維やガラス繊維等を使用することができる。また、金属シートに、絶縁材料を、片面または両面コートしたものを使用することもできる。
【0043】
絶縁部材の形状としては、チップ状やシート状、または、テープ状等、特に限定されるものではない。また、絶縁部材は、電極の一方または両方に接合して設けられてもよいが、電極とは別体とし、使用時には電極間に挟持して用い、使用毎に交換可能に設けられてもよい。特に、テープ状の絶縁部材を用いて、使用毎にテープを移動する方法によれば、使用の都度、新しい部位を使うことができ、好ましい。
【0044】
請求項12に記載の発明は、
前記保持部が、弾性体の柄を有していることを特徴とする請求項11に記載の微小部材用溶接器である。
【0045】
請求項12の発明と請求項11の発明との関係は、請求項5の発明と請求項1の発明との関係に、基本的に同一であるので、同様の効果を見込むことができる。詳しい説明は、既に述べているため、省略する。
【発明の効果】
【0046】
本発明により、微小な被加熱物を、安定にかつ確実に加熱することができる微小部材加熱用具、微小部材用こて、微小部材用溶接器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、本発明をその最良の実施の形態に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、以下の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。なお、以下の各実施の形態では、クリップ機構部および/またはクランプ機構部を有する加熱具において、理解を容易にするため、クリップ機構部だけの場合を基本として説明している。
【0048】
(実施の形態1)
本実施の形態は、請求項1に記載の加熱用具であり、図1、図2を用いて説明する。図1は、微小部材加熱用具20、接続部25、手元スイッチ22、電源部23で構成される全体図であり、図2は、微小部材加熱用具20の斜視図(a)および分解図(b)である。なお、符号は、図1以降すべての図において、共通としている。
【0049】
図1においては、電源部23より、接続部25を介して微小部材加熱用具20に電流が供給されて、微小部材加熱用具20の加熱体(詳細な図示は省略する)が発熱する。また、微小部材加熱用具20には温度コントロール素子が内蔵されていて、電源部23のコントロールパネルで、温度を設定する。電源部23には、他に絶縁チェック機能端子等も設ける。このとき、手元スイッチ22を操作することにより、加熱体の発熱状態をコントロールすることができる。
【0050】
図2においては、クリップ部1、1’は、バネ2、バネ芯棒2’を介して開閉自在に接合されており、保持部3、3’の端部にある挟持部7、7’には、加熱手段4、4’をその内部に有する加熱体5、5’が、絶縁層6、6’を介して接合されている。加熱体5、5’における加熱手段4、4’としては、セラミックPTC(Positive Temperature Coeffcient)素子を利用した自己制御性ヒーターを用いている(接続部は、図示せず)。
【0051】
微小部材は、加熱体5、5’の間に挟持され、保持されたままで加熱される。このとき、クリップ部1、1’の挟持部7、7’には、バネ2により付勢力が働くため、安定して微小部材を挟持部7、7’間に挟持でき、均一に加熱することができる。
【0052】
加熱体5、5’は、被加熱体に対応してその形状を変えることができる。例を図3に示す。図3において、(a)は、加熱手段4、4’からの熱伝導により加熱体5、5’が加熱されるタイプのものであり、加熱手段4、4’と熱伝導体により連結された加熱体5、5’が配されている。保持部3、3’の端部にある挟持部7、7’には、直接電流供給される加熱手段4、4’が、絶縁層6、6’を介して接合されている。加熱手段4、4’による発熱が、加熱体5、5’に伝導され、さらに加熱体5、5’により微小部材が加熱される。
【0053】
また、(b)は、加熱体5、5’が自己発熱するタイプのものであり、加熱手段4、4’の有する電極に連結されて加熱体5、5’が配されている。保持部3、3’の端部にある挟持部7、7’には、加熱手段4、4’が、絶縁層6、6’を介して接合されている。加熱手段4、4’の電極端子による給電により、加熱体5、5’が発熱し、微小部材を加熱する。
【0054】
そして、図4は、本実施の形態の加熱用具を、チップ外し作業に用いた場合を示す図である。図4においては、図2に示した加熱用具に、さらにコイル状の柄21を配している。コイル状の柄21は、後述の図8に示すように、さらに、クランプにて保持されていてもよい。長時間使う時は、クリップ部1、1’が熱くなるので、コイル状の柄21を持って操作する。保持部3、3’の端部にある挟持部7、7’には、加熱手段4、4’をその内部に有する絶縁コートされた加熱体5、5’が接合されている。加熱体5、5’がチップ(微小部材)を挟み込み、加熱することにより、チップを取り外すことができる。
【0055】
(実施の形態2)
本実施の形態は、請求項3に記載の高周波加熱機構を有する微小部材加熱用具であり、図5を用いて説明する。図5において、クリップ部1、1’は、バネ2で固定されており、保持部3、3’には、高周波コイル11が接続された加熱体5、5’が配されている。
【0056】
高周波コイル11は、加熱手段として働き、高周波コイル11の発熱がコイルのシリンダを加熱し、さらに、その熱伝導により、保持部3、3’に接合された加熱体5、5’が、微小部材を加熱する。保持部3、3’の端部にある挟持部7、7’には、加熱体5、5’が、絶縁層6、6’を介して、ビス止めにより固定されている。図5の高周波加熱機構部分は、加熱機構部分の説明のため拡大された図であり、実際高周波コイル11は扁平でも良く、保持部3に収まる大きさである。
【0057】
(実施の形態3)
前記実施の形態2における加熱体5、5’を、ビス止めにより挟持部7、7’に固定せずに、別体の加熱体とすると、請求項8に記載の微小部材用こてとなる。加熱体は、このこての微小加熱機構であり、挟持部7、7’に挟持される。このとき、高周波加熱機構部分は、別体である加熱体と結合して加熱体を直接加熱してもよいし、挟持部7、7’と結合して挟持部7、7’を加熱し、そこに挟持される加熱体を間接的に加熱してもよい。このようにして加熱された加熱体が、微小部材に接触して微小部材を加熱する。このような別体である加熱体としては、後述する図7に示される5a、5b、5cを例示することができる。
【0058】
実施の形態2、3に用いられる高周波コイル11は、無酸化銅丸棒に、鉄とニッケルの合金のコートをしてコイル状に巻いたものである。コイルに高周波を流すと、磁化されコートされた部分が発熱する。高周波は表面を流れやすい。そして、コートされた合金のキユーリー温度に達すると、磁性を失い発熱しなくなる。前記のキユーリー温度は、合金の割合で決まり、一定している。例えば、鉄60%&ニッケル40%で352℃であり、鉄50%&ニッケル50%で405℃である。このように、発熱を自己制御することができ、復帰制御も半田付け持の温度低下よりも素早いため、理想的な半田こてとすることができる。
【0059】
(実施の形態4)
本実施の形態は、請求項4に記載の微小部材加熱用具であり、図6を用いて説明する。図6において、クリップ部1、1’は、バネ2で固定されており、保持部3、3’には、挟持部7、7’がビス止めにより接合されるが、図では接合前の状態であって、挟持部7、7’が微小部材を挟持する位置関係にある場合を示している。
【0060】
挟持部7、7’の一方には、光ファイバー12の先端が接するように設けられており、光ファイバー12の他方の端は、レーザー発振装置(図示せず)と連結している。挟持部7、7’が、微小部材を挟持するときは、図に示すように、狭持部7が狭持部7’を内側に嵌合する。このとき、狭持部7と狭持部7’の間には空洞が生じる。光ファイバー12の先端は狭持部7または狭持部7’の微小部材を狭持する側に固着されているので、この空洞内に、光ファイバー12の先端が固定される。又、微小部材も、この空洞内に挟持される。この挟持を確実に行うために、狭持部7が狭持部7’それぞれの微小部材を狭持する側の端部には突起7aと突起7’aが設けてある。
【0061】
狭持部7と狭持部7’の間の空洞内に挟持された微小部材は、空洞内に固定された光ファイバー12の先端からのレーザーにより直接照射され加熱される。即ち、この態様では光ファイバー12の先端が、微小加熱機構となる。なお、微小部材等からのレーザーの反射により他の部分が加熱されないように、挟持部7、7’の内側は光反射処理コートが施されている。
【0062】
(実施の形態5)
前記実施の形態4において、挟持部7、7’間(の空洞)に微小部材を狭持する代わりに、微小部材を加熱するための微小加熱機構を、別体として、挟持部7、7’間(の空洞)に挟持し、この微小加熱機構を光ファイバー12の先端からのレーザーにより加熱すると、請求項9に記載の微小部材用こてとなる。微小加熱機構は、光ファイバー12の先端からのレーザーにより直接照射されて加熱されてもよいし、レーザーにより加熱された微小部材用こての他の部分により間接的に加熱されてもよい。この微小加熱機構により、微小部材が加熱される。微小加熱機構としては、後述する図7に示される5a、5b、5cを例示することができる。
【0063】
実施の形態5に用いられる微小加熱機構(例えば、図7に示される5a、5b、5c)は、熱容量の小さな微小部材に対応するものであるため、微小なレーザー光吸熱体で構成されたもので良い。このレーザー光吸熱体は、カーボンや、カーボン複合材、またはレーザー光を吸収できるものである。この態様では、微小部材と接して、レーザー光を用いて加熱するため、より微小な箇所への加熱が可能となり、温度コントロールも容易となる。
【0064】
(実施の形態6)
請求項6に記載の微小部材用こては、挟持機構と加熱機構とが別体で、挟持機構が加熱機構を挟持することを特徴とし、その例が、前記の実施の形態3や5である。図7は、本実施の形態において用いられる挟持部と加熱体(微小加熱機構)との組み合わせの例を示したものである。図7において、加熱体の形状として、(a)〜(c)の形状が例示されている。図7において、(a)は、リード線タイプ部品の実装や外し、または、半田除去用等に用いられる。また、(b)は、2列以上の多ピンタイプの部品であるIC等の実装や外しに用いられ、(c)は、1列の多ピンタイプ部品の実装や外しに用いられる。
【0065】
挟持部7、7’は、加熱体5(5(a)、5(b)、5(c))を挟持した状態で、クリップ(保持部)に保持されており、加熱体5が有する加熱手段には、挟持部7、7’より電流供給されてもよいし、外部より直接電流供給されてもよい。又、挟持部7、7’が、加熱手段をその内部にまたは外部に有しても良い。挟持部7、7’と、保持部等、他の部分との関係は、図2の場合と基本的に同様であり、説明は省略する。このように、組み合わせを工夫することにより、適用範囲を広げることができ、IC実装等の場合に使用される。
【0066】
図7に示した挟持部と加熱体との組み合わせの1つを例にとり、その加熱機構を、図8を用いて、さらに詳しく説明する。図8において、(a)は、挟持部下部7’に並列電極端子8、8’が設けられており、加熱体5を挟持してクリップ部(保持部)に保持されている。なお、並列電極端子8、8’は、いずれかが正極であり、他方が負極である。
【0067】
このとき、挟持下部7’に設けられた電極8、8’を介して、加熱体5内の加熱手段に通電され、加熱体5が発熱する。このような構造とすることにより、より小さな加熱体とすることができ、応答性に優れた加熱用具となる。加熱体5、5’における加熱手段4、4’としては、セラミックPTC(Positive Temperature Coeffcient)素子を利用した自己制御性ヒーターを用いている(接続部は、図示せず)。
【0068】
また、(b)は、挟持部7、7’のそれぞれが加熱手段4、4’をその内部に有しており、加熱手段4、4’からの熱伝導により加熱体5が発熱する。
【0069】
図9は、図7、8に示した加熱用具をICの実装または取り外しに用いる場合を示している。図9において、(a)は、全体の概念図であり、図4に既に示した微小部材加熱用具と同様な挟持機構の先端にある挟持部7に、微小加熱機構である加熱体5が挟持される。さらに、この挟持機構のクリップ1に接続している柄21は、クランプ部24により保持されている。また、(b)は、実装作業に関する部分につき拡大したものである。加熱体5の凹部にICが配され、加熱体5より加熱することにより、ICのピンのハンダが溶融して、ICの実装または取り外しがされる。
【0070】
(実施の形態7)
本実施の形態は、請求項11に記載の挟持機構が微小対電極を有する加熱用溶接器であり、図10を用いて説明する。図10において、クリップ部1には、柄21が配されており、保持部3は、一体化された微小対電極9を挟持した挟持部7を保持している。また、図11は、前記加熱用溶接器における挟持部7、7’と微小対電極9を示している。
【0071】
微小対電極9は、各電極10、10’とそれらの間を絶縁する絶縁層10’’からなる。一体化された微小対電極9の先端部に微小部材を電極10および電極10’と接触するように配して、挟持部7、7’から電流を供給すると、電極10、微小部材、電極10’の順で電気が流れ、電極10および電極10’の接触点間の微小部材が通電される。この通電により微小部材の通電部が加熱されて、溶接される。図のような構造としたことにより、先端部をより小さく作ることができ、微小な箇所の溶接が可能となる。
【0072】
微小部材用溶接器の別の例を、図12に示す。図12において、クリップ部1には、柄21が配されており、保持部3には、絶縁層6、6’のそれぞれを介して、微小対電極のそれぞれの電極10、10’が接合されており、さらに、電極10、10’は、絶縁層10’’を挟持して一体化されている。絶縁層10’’としては、例えば、ポリイミドフィルムが用いられる。
【0073】
ただし、この場合には、溶接時に、絶縁層10’’が一番ダメージを受ける。絶縁層10’’にポリイミドテープを用いて毎回スライドして使えば、常に新しい面を使用できて効率よく溶接が行うことができる。
【0074】
溶接の際には、電極10、10’を、絶縁層10’’を介して結合して、微小部材に接触させると、通電材料部分がある微小部材に通電する時の集中抵抗や、皮膜抵抗である接触抵抗により加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】請求項1に係る微小部材加熱用具による加熱システムの全体構成図である。
【図2】請求項1に係る微小部材加熱用具の構造を説明する図である。
【図3】請求項1に係る微小部材加熱用具における加熱体の別の例を説明する図である。
【図4】請求項1に係る微小部材加熱用具の使用例を説明する図である。
【図5】請求項3に係る微小部材加熱用具の構造を説明する図である。
【図6】請求項4に係る微小部材加熱用具の構造を説明する図である。
【図7】請求項6に係る微小部材用こてにおける挟持部と加熱体を説明する図である。
【図8】請求項6に係る微小部材用こてにおける挟持部と加熱体を説明する図である。
【図9】請求項6に係る微小部材用こての使用例を説明する図である。
【図10】請求項11に係る微小部材用溶接器を説明する図である。
【図11】請求項11に係る微小部材用溶接器を説明する図である。
【図12】請求項11に係る微小部材用溶接器の別の例を説明する図である。
【符号の説明】
【0076】
1、1’ クリップ部
2 バネ
3、3’ 保持部
4、4’ 加熱手段
5、5’ 加熱体
6、6’ 絶縁層
7、7’ 挟持部
8、8’ 並列電極端子
9、9’ 微小対電極
11 高周波コイル
12 光ファイバー
20 微小部材加熱用具
21 柄
22 手元スイッチ
23 電源部
24 クランプ部
25 接続部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小部材を挟持するための挟持部と前記挟持部に挟持力を付与するための保持部とを有する挟持機構、および前記挟持部に接して設けられ前記微小部材を加熱するための微小加熱機構を有する微小部材加熱用具であって、
前記保持部は、クランプ機構部および/またはクリップ機構部を有していることを特徴とする微小部材加熱用具。
【請求項2】
前記微小加熱機構への電流供給機能を有していることを特徴とする請求項1に記載の微小部材加熱用具。
【請求項3】
高周波加熱機構を有し、前記微小加熱機構が、前記高周波加熱機構により加熱されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の微小部材加熱用具。
【請求項4】
前記微小加熱機構が、レーザー光照射手段を有し、前記挟持部により挟持された微小部材が、直接レーザー光により加熱されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の微小部材加熱用具。
【請求項5】
前記保持部が、弾性体の柄を有していることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の微小部材加熱用具。
【請求項6】
微小部材を加熱するための微小加熱機構、および前記微小加熱機構を挟持するための挟持部と前記挟持部に挟持力を付与するための保持部とを有する挟持機構を有する微小部材用こてであって、
前記保持部は、クランプ機構部および/またはクリップ機構部を有していることを特徴とする微小部材用こて。
【請求項7】
前記微小加熱機構への電流供給機能を有していることを特徴とする請求項6に記載の微小部材用こて。
【請求項8】
高周波加熱機構を有し、前記微小加熱機構が、前記高周波加熱機構により加熱されることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の微小部材用こて。
【請求項9】
前記微小加熱機構へのレーザー光照射手段を有し、前記微小加熱機構が、レーザー光により加熱されることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の微小部材用こて。
【請求項10】
前記保持部が、弾性体の柄を有していることを特徴とする請求項6ないし請求項9のいずれかに記載の微小部材用こて。
【請求項11】
微小部材と接触して前記微小部材に電流を供給する微小対電極、前記微小対電極間に設けられた絶縁層、および前記微小対電極と前記絶縁層を挟持するための挟持部と前記挟持部に挟持力を付与するための保持部とを有する挟持機構を有する微小部材用溶接器であって、
前記保持部は、クランプ機構部および/またはクリップ機構部を有していることを特徴とする微小部材用溶接器。
【請求項12】
前記保持部が、弾性体の柄を有していることを特徴とする請求項11に記載の微小部材用溶接器。
【請求項1】
微小部材を挟持するための挟持部と前記挟持部に挟持力を付与するための保持部とを有する挟持機構、および前記挟持部に接して設けられ前記微小部材を加熱するための微小加熱機構を有する微小部材加熱用具であって、
前記保持部は、クランプ機構部および/またはクリップ機構部を有していることを特徴とする微小部材加熱用具。
【請求項2】
前記微小加熱機構への電流供給機能を有していることを特徴とする請求項1に記載の微小部材加熱用具。
【請求項3】
高周波加熱機構を有し、前記微小加熱機構が、前記高周波加熱機構により加熱されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の微小部材加熱用具。
【請求項4】
前記微小加熱機構が、レーザー光照射手段を有し、前記挟持部により挟持された微小部材が、直接レーザー光により加熱されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の微小部材加熱用具。
【請求項5】
前記保持部が、弾性体の柄を有していることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の微小部材加熱用具。
【請求項6】
微小部材を加熱するための微小加熱機構、および前記微小加熱機構を挟持するための挟持部と前記挟持部に挟持力を付与するための保持部とを有する挟持機構を有する微小部材用こてであって、
前記保持部は、クランプ機構部および/またはクリップ機構部を有していることを特徴とする微小部材用こて。
【請求項7】
前記微小加熱機構への電流供給機能を有していることを特徴とする請求項6に記載の微小部材用こて。
【請求項8】
高周波加熱機構を有し、前記微小加熱機構が、前記高周波加熱機構により加熱されることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の微小部材用こて。
【請求項9】
前記微小加熱機構へのレーザー光照射手段を有し、前記微小加熱機構が、レーザー光により加熱されることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の微小部材用こて。
【請求項10】
前記保持部が、弾性体の柄を有していることを特徴とする請求項6ないし請求項9のいずれかに記載の微小部材用こて。
【請求項11】
微小部材と接触して前記微小部材に電流を供給する微小対電極、前記微小対電極間に設けられた絶縁層、および前記微小対電極と前記絶縁層を挟持するための挟持部と前記挟持部に挟持力を付与するための保持部とを有する挟持機構を有する微小部材用溶接器であって、
前記保持部は、クランプ機構部および/またはクリップ機構部を有していることを特徴とする微小部材用溶接器。
【請求項12】
前記保持部が、弾性体の柄を有していることを特徴とする請求項11に記載の微小部材用溶接器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−22960(P2009−22960A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−185622(P2007−185622)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(599003464)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(599003464)
【Fターム(参考)】
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