説明

微少カプセル及びそれを含有する皮膚外用剤

【課題】皮膚上で継続的に保湿効果や皮膚バリア機能を発現しうるセラミド含有皮膚外用剤を提供する。
【解決手段】(A)セラミド類;1〜15重量%、(B)高級アルコール;0.5〜5重量%、(C)ステロール類;0.5〜5重量%及び(D)油分;50〜98重量%を含み、好ましくはラメラ型液晶を形成するセラミド組成物を、平均粒径1〜100μm程度の微少カプセルに内包し、これをスキンケア化粧料等の皮膚外用剤に配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミド組成物を内包する微少カプセル(マイクロカプセル)及びそれを含有する皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミドは皮膚の角質層の細胞間脂質に含まれる物質であり、皮膚の水分保持、保湿、皮膚バリア機能の形成などに寄与していると言われている。そのためセラミドは、肌荒れの改善又は予防を目的として、皮膚外用剤、化粧料などに配合されている。また、天然セラミドと同程度の効果を有し、同様の目的で使用可能な類似構造物質も知られている(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、これらセラミド類は比較的融点が高く、また濃度が高いと結晶化しやすいため、一般に化粧品基材等への配合や溶解が困難である、皮膚角質層へ効率的に浸透せず十分な効果を発揮できない、といった問題点があった。
【0004】
そこで、セラミドを、皮膚に対して親和性が大きく角質細胞間脂質と類似の構造である液晶状態とすることにより、セラミドの皮膚への吸収性を改善し、その有効性を効率的に発揮させる工夫が試みられている(特許文献2,特許文献3)。
【0005】
しかしながら、このような液晶状態のセラミドは、皮膚への吸収性は良好であるが、液晶部分への水の侵入により液晶構造の崩壊が起こりやすく、このため皮膚へ塗布・適用中に表面の皮脂や汗等によって容易に液晶が消失するという問題があった。一般に液晶構造を利用してスキンケア効果を高める技術においては、製剤が皮膚に塗布・適用されている間、その液晶構造が安定に保持されていることが必要であり、皮膚上で液晶構造が消失すると、継続的な保湿効果や皮膚バリア機能の発現などの液晶製剤に期待される機能が失われる。
【0006】
このように、液晶状態のセラミドを安定に配合し長期的に保持しうる製剤技術、及びそれを塗布・適用中に皮膚上で液晶構造を安定に保ち継続的に保湿効果・皮膚バリア機能を発現させる技術は、未だ見いだされていない。
【0007】
一方、皮膚外用剤や化粧料の機能性を考える上で大きな課題として、皮膚への適用後、成分の有効性が短時間しか発揮されないという点が挙げられる。また、有効成分の皮膚への浸透速度が速すぎると、皮膚の過敏症および刺激・炎症を引き起こし、このため有効成分が十分に局所に届かず結果的に吸収性が低下するという点も挙げられる。そこで、有効成分の放出速度及び浸透速度を制御する必要があった。
これらの課題を解決する手段として、近年、種々の有効成分を微少カプセルに内包させて皮膚外用剤に配合する技術が開発されている(特許文献4、非特許文献1参照)。
【0008】
しかしながら、セラミド含有組成物をカプセル化することはこれまで知られていない。また、液晶状態のセラミド組成物を、その液晶構造を保持したまま微少カプセルに内包させることも知られていない。
【0009】
【特許文献1】特開昭62−228048号公報
【特許文献2】特開2004−331594号公報
【特許文献3】特開2004−331595号公報
【特許文献4】特開2004−250450号公報
【非特許文献1】FRAGRANCE JOURNAL, 2005-11, p29-37
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような状況下なされたものであって、皮膚上で継続的に保湿効果や皮膚バリア機能を発現しうるセラミド含有皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、セラミド組成物を、液晶状態を保持したまま微少カプセルに内包させ得ることを見いだし、本発明に到達した。
【0012】
すなわち、本発明は、以下に示す微少カプセル及び皮膚外用剤に関する。
(1)(A)セラミド類、(B)高級アルコール、(C)ステロール類及び(D)油分を含むセラミド組成物を内包してなる、微少カプセル。
(2)前記(A)セラミド類が、セラミド組成物全量に対し1〜15重量%配合されていることを特徴とする、(1)記載の微少カプセル。
【0013】
(3)前記(B)高級アルコールが、炭素数14〜22の高級アルコールであって、セラミド組成物全量に対し0.5〜5重量%配合されていることを特徴とする、(1)又は(2)記載の微少カプセル。
(4)前記(C)ステロール類がフィトステロールであって、セラミド組成物全量に対し0.5〜5重量%配合されていることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載の微少カプセル。
【0014】
(5)前記(D)油分がエステル油であって、セラミド組成物全量に対し50〜98重量%配合されていることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載の微少カプセル。
(6)前記セラミド組成物がラメラ型液晶を形成していることを特徴とする、(1)〜(5)のいずれかに記載の微少カプセル。
【0015】
(7)前記セラミド組成物の25℃での粘度が10,000〜100,000mPa・sである、(1)〜(6)のいずれかに記載の微少カプセル。
(8)平均粒径が1〜100μmである、(1)〜(7)のいずれかに記載の微少カプセル。
【0016】
(9)アラビアゴム、寒天、アガロース、マルトデキストリン、アルギン酸、アルギン酸塩、脂肪、脂肪酸、セチルアルコール、コラーゲン、キトサン、レシチン、ゼラチン、アルブミン、セラック、多糖類、セルロース、セルロースエステル、セルロースエーテル、デンプンエーテル、デンプンエステル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、シリコーン、シクロデキストリン、タンパク質、及びペプチド類からなる群から選択されるカプセル材により形成されていることを特徴とする、(1)〜(8)のいずれかに記載の微少カプセル。
【0017】
(10)(1)〜(9)のいずれかに記載の微少カプセルを含有する皮膚外用剤。
(11)化粧料であることを特徴とする、(10)記載の皮膚外用剤。
(12)スキンケア用化粧料であることを特徴とする、(11)記載の皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0018】
本発明の微少カプセルにおいては、セラミド組成物を高濃度で、好ましくは液晶構造を安定に保持したまま内包させることができる。そのため、製剤時に他の共存成分による液晶構造の崩壊が起こりにくく製剤が容易であり、共存成分の制約が少ないため製剤の自由度も高まる。また、皮膚へ塗布・適用中に表面の皮脂や汗等によっても液晶が消失しないため、継続的な保湿効果や皮膚バリア機能の発現効果が格段に向上する。さらに、セラミドの放出速度や浸透速度を制御することができる。穏やかな浸透速度は高い浸透性をもたらすため、セラミドを組織内へより多く取り込むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
1.微少カプセル
本発明の微少カプセルは、(A)セラミド類、(B)高級アルコール、(C)ステロール類及び(D)油分を含むセラミド組成物を内包してなることを特徴とする。
【0020】
(1)セラミド類(A)
本発明で用いられるセラミド類とは、スフィンゴシンのアミノ基に長鎖脂肪酸がアミド結合した化合物の総称で、天然セラミド及びセラミド類似構造物質があり、スフィンゴシンの構造及び長鎖脂肪酸の構造の違いによりセラミド1〜6が知られている。
本発明では天然セラミド又はセラミド類似構造物質を単独で用いても、あるいはこれらの2種以上を併用することもできる。また、これらのセラミド類には、既に皮膚外用剤用の原料として市販されているものがあり、本発明ではかかる市販品を適宜使用することができる。
【0021】
本発明では、セラミド構造を有していればいずれのセラミドを用いることもできるが、その中でもセラミド3(N−ステアロイルフィトスフィンゴシン)が一般市場品グレードとして安定的かつ安価に入手しやすいので好ましい。
例えば、セラミド3としては、商品名「Ceramide III]」(コスモファーム社製)などを使用することができる。
【0022】
この他に使用できるセラミド類としては、セラミド1(商品名「Ceramide I」;コスモファーム社製、ステアロイルオキシヘプタコサノイルフィトスフィンゴシン)、セラミド2(商品名「Ceramide TIC-001」;高砂香料工業社製、(2S,3R)-2-オクタデカノイルアミノオクタデカン-1,3-ジオール)、セラミド6II(商品名「Ceramide VI」;コスモファーム社製、ヒドロキシステアリルフィトスフィンゴシン)などを挙げることができる。
【0023】
セラミド類は、本発明における有効成分として働き、微少カプセルに内包された形で皮膚に到達した後、皮膚保水性及び皮膚バリア機能を向上させる作用を発揮する。
【0024】
本発明の微少カプセルに内包されるセラミド組成物中におけるセラミド類の含有量は特に限定されないが、その下限値としては、該セラミド組成物全量に対し好ましくは1重量%以上、より好ましくは3重量%以上である。セラミド組成物中のセラミド類の含有量が少なすぎると、有効成分であるセラミドの濃度が薄くなるため、皮膚保水性の向上効果や皮膚バリア機能の向上効果が発現しない場合がある。また、皮膚への吸収性に優れた形態である液晶状態を安定に保持できない場合がある。
【0025】
なお、本発明では、セラミド組成物を微少カプセルに内包させることにより、セラミド濃度1重量%以上と高濃度に保持することができる。これにより、製剤中でセラミドを結晶化させることなく高濃度に保持することが可能となる。
【0026】
前記セラミド組成物中におけるセラミド類の含有量の上限値も特に限定されないが、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下である。セラミド類の含有量が多すぎると、セラミド組成物中でセラミド類が結晶化しカプセル化が難しいなどの不具合があり、油剤の選定等処方設計が大幅に制限される場合がある。
【0027】
(2)高級アルコール(B)
本発明で用いられる高級アルコール(B)としては、好ましくは炭素数14〜22の高級アルコール、より好ましくは炭素数16〜18の高級アルコールを1種又は2種以上用いるのがよい。
【0028】
これらのうち、炭素数16の高級アルコール(セタノール又は1−ヘキサデカノール)及び/又は炭素数18の高級アルコール(ステアリルアルコール又は1−オクタデカノール)が好ましい。特に、この両者(セタノール及びステアリルアルコール)を併用するのが好ましい。
【0029】
本発明のセラミド組成物中における高級アルコール(B)の含有量は特に限定されないが、該セラミド組成物全量に対し、好ましくは0.5〜5重量%、より好ましくは1〜2重量%である。
【0030】
高級アルコール(B)の含有量が少なすぎると、液晶形成しにくい傾向にある。一方、高級アルコール(B)の含有量が多すぎると、過剰の高級アルコールが結晶として析出する場合がある。
【0031】
また、セタノール(C16)とステアリルアルコール(C18)を併用する場合、両者の使用比率は特に制限されないが、C16:C18=80〜20:40〜60(重量比)程度が好ましい。
【0032】
(3)ステロール類(C)
本発明で用いられるステロール類(C)としては、フィトステロール、コレステロール等が挙げられるが、これらのうち、フィトステロールが好ましい。フィトステロールは植物性ステロール類の総称であり、植物性のステロール類には、スチグマスタノール、カンペステロール、シトステロールなどがある。これらを一括してフィトステロールと総称している。フィトステロールとしては小麦胚芽などの植物体から、複数のフィトステロールを含有するステロール分画を取り出して用いることができる。また、市販品を使用することもできる。好ましい市販品としては、商品名「フィトステロールS」(タマ生化学工業株式会社製)が例示できる。
【0033】
本発明のセラミド組成物中におけるステロール類(C)の含有量は特に限定されないが、セラミド組成物全量に対し好ましくは0.5〜5重量%、より好ましくは1〜2重量%である。ステロール類の含有量は少なすぎても多すぎても液晶形成がしにくくなる傾向にある。
【0034】
(4)油分(D)
本発明の成分(D)の油分(油性成分)としては、通常化粧品で利用できる常温(例えば15〜25℃程度)で液状及び/又はペースト状の油性成分が挙げられる。
【0035】
このような油分としては、天然動植物油脂類、及び半合成油脂、炭化水素油、高級脂肪酸、エステル油、シリコーン油、動植物や合成の精油成分、脂溶性ビタミン等が例示できる。これらのうちで、特に好ましいものはエステル油である。
【0036】
エステル油としては、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、イソステアリン酸イソステアリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、2−エチルヘキサン酸セチル、ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、オクタン酸セチル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、コハク酸2−エチルヘキシル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ブチル、セバシン酸ジイソプロピル、乳酸セチル、乳酸テトラデシル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、12−ヒドロキシステアリン酸コレステリル、オレイン酸フィトステリル、リンゴ酸ジイソステアリル、パラメトキシケイ皮酸エステル、テトラロジン酸ペンタエリスリット、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル・2−オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル・ベヘニル・2−オクチルドデシル)等が挙げられる。これらは1種もしくは2種以上を併用しても良い。また、これらエステル油とスクワラン等の炭化水素油、シリコーン油等とを組み合わせることもできる。
【0037】
これらのエステル油のうちで、セラミドの結晶化を抑制し液晶形成しやすい点で、より好ましいものは、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル・2−オクチルドデシル)又はN−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル・ベヘニル・2−オクチルドデシル)であり、特に好ましいものはN−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル・2−オクチルドデシル)である。
また、この両者を併用することも好ましい。併用する場合、その比率は特に限定されないが、好ましくはN−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル・2−オクチルドデシル):N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル・ベヘニル・2−オクチルドデシル)=8〜9.5:2〜0.5(重量比)、特に好ましくは9:1程度(重量比)である。
【0038】
本発明の液晶ラメラ型化粧料用組成物100重量部に対する上記油分(C)の配合割合は、好ましくは50〜98重量%、より好ましくは84〜94重量部である。油分(C)の配合割合が少なすぎるとセラミドの結晶化が生じやすくなる場合があり、多すぎると液晶形成しにくい傾向がある。
【0039】
(5)その他の成分
本発明の微少カプセルに内包されるセラミド組成物には、上記必須成分(A)〜(D)の他に、抗酸化剤としてトコフェロール、抗炎症剤としてグリチルレチン酸ステアリル等が配合されていても良い。
【0040】
(5)セラミド組成物
本発明のセラミド組成物は、上記組成をもつものであればその形態はいかなるものでもよいが、好ましくは層状のラメラ型液晶構造をとる。ラメラ型液晶は角質層の細胞間脂質に類似した構造を有し、皮膚との親和性・浸透性に優れる。本発明では、ラメラ型液晶構造をとりやすい組成のセラミド組成物を微少カプセル中に内包させることにより、より好ましくは現にラメラ型液晶構造を保持したままのセラミド組成物を微少カプセルに内包させることにより、皮脂や汗で消失し易い液晶構造を保持したままセラミド組成物を皮膚へ到達させることが可能となり、セラミドの皮膚への親和性・浸透性を高めることができる。なお、ラメラ型液晶構造を有するかどうかは、偏光顕微鏡等により確認することができる。
【0041】
また、本発明のセラミド組成物は特に制限されないが、好ましくは25℃での粘度が10,000〜100,000mPa・s、より好ましくは30000〜60000mPa・sである。
【0042】
また、セラミド組成物中の上記必須成分のうち、高級アルコール(B)とステロール類(C)と油分(D)の相互の割合に特に制限はないが、好ましくは(B):(C)=3:7〜7:3(重量比)である。また、[(B)+(C)]:(D)=1:20〜1:80である。成分(B)、(C)及び(D)間の割合がこの範囲内であれば、ラメラ型液晶構造を安定的に保つことができる。
【0043】
(6)微少カプセル
本発明の微少カプセル(マイクロカプセル)に関しては、製薬分野、化粧品分野等における一般的なカプセル化技術を適用することができる。
【0044】
カプセル材としては、天然、半合成、又は合成の有機又は無機材料を用いることができる。天然の有機材料としては、例えば、アラビアゴム、寒天、アガロース、マルトデキストリン、アルギン酸またはその塩(例えばアルギン酸ナトリウムまたはアルギン酸カルシウム)、リポソーム、脂肪および脂肪酸、セチルアルコール、コラーゲン、キトサン、レシチン、ゼラチン、アルブミン、セラック、多糖類(デンプン、デキストリン、あるいはヒアルロン酸ナトリウム塩などのムコ多糖類等)、シクロデキストリン、ショ糖、ワックス、植物性又は動物性タンパク質(コラーゲン)、ペプチド類等が挙げられる。
【0045】
半合成のカプセル材のなかでは、化学変性されたセルロース、特にセルロースエステルおよびエーテル(例えば酢酸セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびカルボキシメチルセルロース)が挙げられ、さらにはデンプン誘導体、特にデンプンエーテルおよびエステルも挙げられる。
【0046】
合成のカプセル材としては、例えばアミノ樹脂、ポリアクリル酸エステル、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、有機ポリシロキサン等のポリマーが挙げられる。
【0047】
これらのうちで、好ましいものとして、アラビアゴム、寒天、アガロース、マルトデキストリン、アルギン酸、アルギン酸塩、脂肪、脂肪酸、セチルアルコール、コラーゲン、キトサン、レシチン、ゼラチン、アルブミン、セラック、多糖類、セルロース、セルロースエステル、セルロースエーテル、デンプンエーテル、デンプンエステル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、シリコーン、シクロデキストリン、植物性又は動物性タンパク質(コラーゲン)、及びペプチド類からなる群から選択されるものが挙げられる。また、特に好ましいものとして、植物性タンパク質、植物性多糖類等の、皮膚表面の酵素に対して分解性を有するものを挙げることができる。これにより、皮膚への塗布・適用後に皮膚表面で速やかにカプセルが分解し、有効成分であるセラミドが放出される。
【0048】
微少カプセルの製造は先行技術(非特許文献1等)に詳細に記載されており、例えば溶媒蒸発法、沈殿法、コアセルベーション、界面重縮合等の周知の方法によって実施することができる。
溶媒蒸発としては特に噴霧乾燥およびドラムコーティングが挙げられ、リザーバーおよびマトリックス系の作製に用いられる。
沈殿法においては、ポリマー壁材料を水と非混和性の溶媒中に溶解させた後、被包すべき有効成分をその中に分散させ、次いでこの分散液を連続相である水中に導入しながら激しく十分に混合させる。
コアセルベーションとは、コロイド分散液(液/液または固/液)が外的な影響を受けることによって、液体中に分散している物質の濃度が高い相(コアセルベート)と低い相とに分離することを意味するものと理解される。
界面重縮合法の場合は、調製済みのポリマーを被覆材として使用する他のマイクロカプセル化方法(溶媒蒸発、コアセルベーション等)を用いた場合とは対照的に、カプセル化工程を実施している間に限り、対応するモノマーから外殻が形成される。
【0049】
本発明のセラミド組成物を、そのラメラ型液晶構造を保持したままカプセルに内包させる方法としては、例えばセラミド組成物をトリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル等の溶剤に分散させた後、カプセル材と混合することによってカプセル化する方法が挙げられる。
【0050】
微少カプセルの形状及び大きさは、調製方法に応じて適宜変化させることができるが、好ましくは略球形又は略球根形であり、直径は好ましくは1〜100ミクロン、より好ましくは20〜80μmである。直径が大きすぎると肌に浸透しにくい傾向にある。小さすぎるものは製造が困難である。
【0051】
2.皮膚外用剤
本発明の微少カプセルは、スキンケア化粧料、皮膚外用医薬品等の皮膚外用剤に配合して用いることができる。すなわち、本発明の皮膚外用剤は、上述した本発明の微少カプセルを含有してなることを特徴とする。
【0052】
本発明の皮膚外用剤、化粧料及び皮膚外用医薬品のいずれであってもよい。
化粧料としては、スキンケア化粧料、頭髪・頭皮用化粧料などが挙げられる。また、スキンケア化粧料としては、クレンジング化粧料、保湿ジェル、エッセンス、栄養保護料として乳液、クリーム、美容液等を挙げることができる。
【0053】
本発明の皮膚外用剤では、前記微少カプセルと共に、本発明の効果を損なわない範囲において通常化粧料或いは皮膚外用医薬のような皮膚外用剤で通常使用される任意成分を、含有させることができる。
【0054】
かかる任意成分としては、例えば、スクワラン、流動パラフィン、軽質流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、マイクロクリスタリンワックス、固形パラフィンなどの炭化水素類、ジメチコン、フェメチコン、シクロメチコン、アモジメチコン、ポリエーテル変性シリコーンなどのシリコーン類、ホホバ油、カルナウバワックス、モクロウ、ミツロウ、ゲイロウ、オレイン酸オクチルドデシル、イソプロピルミリステート、ネオペンチルグリコールジイソステアレート、リンゴ酸ジイソステアレートなどのエステル類、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソステアリン酸、イソパルミチン酸、ベヘン酸、オレイン酸などの脂肪酸類、ベヘニルアルコール、セタノール、オレイルアルコール、オクタデシルアルコールなどの高級アルコール類、ヒマシ油、椰子油、水添椰子油、椿油、小麦胚芽油、イソステアリン酸トリグリセライド、イソオクタン酸トリグリセライド、オリーブオイル等のトリグリセライド類、グリセリン、ジグリセリン、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコールなどの多価アルコール、ソルビタンセスキオレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタントリオレート、ソルビタンセスキステアレート、ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンオレート、ポリオキシエチレングリセリル脂肪酸エステル、ポリエキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の非イオン界面活性剤、ソジウムラウリルステアレート、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、スルホコハク酸エステル塩などのアニオン界面活性剤、4級アルキルアンモニウム塩等のカチオン界面活性剤類、アルキルベタイン等の両性界面活性剤類、結晶セルロースや架橋型メチルポリシロキサン、ポリエチレン粉末、アクリル樹脂粉体等の有機粉体類、タルク、マイカ、セリサイト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、二酸化チタン、酸化鉄、紺青、群青、チタンマイカ、チタンセリサイト、シリカ等の表面処理されていても良い粉体類、アクリル酸・メタクリル酸アルキルコポリマー及び/又はその塩、カルボキシビニルポリマー及び/又はその塩、キサンタンガムやヒドロキシプロピルセルロースなどの増粘剤、レチノール、レチノイン酸、トコフェロール、リボフラビン、ピリドキシン、アスコルビン酸、アスコルビン酸リン酸エステル塩などのビタミンやグリチルリチン酸塩、グリチルレチン、ウルソール酸、オレアノール酸などのテルペン類、エストラジオール、エチニルエストラジオール、エストリオールなどのステロイド類などの有効成分、フェノキシエタノール、パラオキシ安息香酸メチル等のパラベン類、ヒビテングルコネート、塩化ベンザルコニウム等の防腐剤、ジメチルアミノ安息香酸エステル類、桂皮酸エステル類、ベンゾフェノン類などの紫外線吸収剤などが好ましく例示できる。
【0055】
また、化粧料とする場合、さらに薬剤(美白剤、抗炎症剤、保湿剤等を含む)等を加えることができる。また、必要に応じて通常の化粧料に用いられる色素、香料、顔料等を、本発明の目的を逸脱しない範囲で適宜配合することができる。
【0056】
皮膚外用剤中の微少カプセルの含有量は特に限定されず、剤形や用途に応じて適宜調整することができるが、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは0.5〜7重量%である。この範囲内であれば、化粧料の使用感、安定性等が良好である。
【0057】
尚、本発明の皮膚外用剤は、化粧料用の製剤、皮膚外用医薬品の製剤のいずれの製剤としても適用できるが、微少カプセルに内包されるセラミド組成物の皮膚保湿性、皮膚バリア機能の向上効果を生かして、化粧料(医薬部外品を含む)、特にスキンケア化粧料に適用することが好ましい。
【0058】
本発明の皮膚外用剤は、比較的高濃度のセラミドを含むセラミド組成物を内包した微少カプセルを含有しているため、化粧料におけるセラミド濃度は低くても、これを皮膚へ塗布・適用後にカプセルが分解することにより、高濃度のセラミドを皮膚組織内に浸透させることができる。
【0059】
また、前記セラミド組成物が微少カプセル内でラメラ型液晶構造を安定に保持しうるため、液層状態を保持したまま皮膚へ適用することができ、カプセル分解後の皮膚への浸透・吸収性が良好となる。よって、皮膚保湿作用・皮膚バリア機能等を効率よく向上させることができる。
【実施例】
【0060】
以下に本発明の実施例を比較例と共に示し、発明の内容を詳細に示すが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0061】
<実施例1>
1.セラミド組成物の原料
各成分として、表1に示す原料を使用し、セラミド組成物を調製した(なお、表1中の数値は重量部を表す)。得られたセラミド組成物は、ラメラ型液晶構造を有することが偏光顕微鏡で確認された。
また、このものの25℃における粘度をB型デジタル粘度計(ローターNo.4、6回転、60秒)で測定したところ、34,000mPa・sであった。
【0062】
【表1】

【0063】
2.微少カプセルの製造
上で得られたセラミド組成物を、以下に示す処方で溶剤(トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル)に分散させ、これをヒアルロン酸ナトリウムと水溶性コラーゲンとを含むカプセル材と混合してセラミド組成物を内包したマイクロカプセル(微少カプセル)を製造し、該マイクロカプセルを含む溶剤として得た。得られたマイクロカプセルの平均粒径を顕微鏡で確認したところ、60μmであった。
【0064】
<カプセル化の処方>
上記セラミド組成物;90重量%
トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル;5重量%
水溶性コラーゲン;4.998重量%
ヒアルロン酸ナトリウム;0.002重量%
【0065】
3.化粧料の製造
得られた微少カプセルを用いて、以下の処方でスキンケア化粧品(クリーム)を調製した。
<スキンケア化粧品(クリーム)の処方>
上記セラミド微少カプセル;1重量%
ステアリルアルコール;6重量%
ステアリン酸;2重量%
スクワラン;11重量%
オクチルドデカノール;12重量%
1,3−BG;6重量%
PEG-1500;4重量%
POE(25)セチルアルコールエーテル;3重量%
モノステアリン酸グリセリン;2重量%
メチルパラベン;0.1重量%
精製水(to 100)
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の微少カプセルは、セラミド組成物を高濃度で、好ましくは液晶構造を安定に保持したまま内包させることができる。そのため、製剤時に他の共存成分による液晶構造の崩壊が起こりにくく製剤が容易であり、長期安定性に優れた皮膚外用剤が得られるだけでなく、共存成分の制約が少ないため製剤の自由度も高まる。また、セラミドを皮膚外用剤全体として高濃度に含有していなくても、皮膚へ高濃度のセラミドを到達させることができるため、皮膚組織内・局所へ十分にセラミドを供給することができる。また、液晶構造を保持したまま皮膚へ塗布・適用できるため、皮膚表面の皮脂や汗等によっても液晶が消失しない。これらのことから、セラミド組成物のもつ保湿性や皮膚バリア機能等の発現効果の長期的な継続性を格段に向上させることができる。さらに、セラミドの放出速度や浸透速度を制御して浸透性を高めることができ、セラミドを組織内へより多く取り込むことが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)セラミド類、(B)高級アルコール、(C)ステロール類及び(D)油分を含むセラミド組成物を内包してなる、微少カプセル。
【請求項2】
前記(A)セラミド類が、セラミド組成物全量に対し1〜15重量%配合されていることを特徴とする、請求項1記載の微少カプセル。
【請求項3】
前記(B)高級アルコールが、炭素数14〜22の高級アルコールであって、セラミド組成物全量に対し0.5〜5重量%配合されていることを特徴とする、請求項1又は2記載の微少カプセル。
【請求項4】
前記(C)ステロール類がフィトステロールであって、セラミド組成物全量に対し0.5〜5重量%配合されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の微少カプセル。
【請求項5】
前記(D)油分がエステル油であって、セラミド組成物全量に対し50〜98重量%配合されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の微少カプセル。
【請求項6】
前記セラミド組成物がラメラ型液晶を形成していることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の微少カプセル。
【請求項7】
前記セラミド組成物の25℃での粘度が10,000〜100,000mPa・sである、請求項1〜6のいずれかに記載の微少カプセル。
【請求項8】
平均粒径が1〜100μmである、請求項1〜7のいずれかに記載の微少カプセル。
【請求項9】
アラビアゴム、寒天、アガロース、マルトデキストリン、アルギン酸、アルギン酸塩、脂肪、脂肪酸、セチルアルコール、コラーゲン、キトサン、レシチン、ゼラチン、アルブミン、セラック、多糖類、セルロース、セルロースエステル、セルロースエーテル、デンプンエーテル、デンプンエステル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、シリコーン、シクロデキストリン、タンパク質、及びペプチド類からなる群から選択されるカプセル材により形成されていることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の微少カプセル。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の微少カプセルを含有する皮膚外用剤。
【請求項11】
化粧料であることを特徴とする、請求項10記載の皮膚外用剤。
【請求項12】
スキンケア用化粧料であることを特徴とする、請求項11記載の皮膚外用剤。

【公開番号】特開2010−47493(P2010−47493A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−211232(P2008−211232)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(504401994)株式会社セプテム総研 (11)
【Fターム(参考)】