説明

微生物を用いたグリコール酸の重合方法

本発明は、遺伝子組換え微生物からポリグリコレート(PGA)を生産し調製するための方法に関する。より詳しくは、本発明は、2つの工程;1)グリコール酸を含むまたは含まない培地において、グリコレートをグリコリル−CoAに変換する酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子と、グリコリル−CoAを基質として用いるポリヒドロキシアルカノエート(PHA)シンターゼをコードする遺伝子とを発現する微生物を培養し、2)ポリグリコレートポリマーを回収する、ことを含んでなる方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PGAと呼ばれるポリグリコール酸ポリマーの製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、
遺伝子組み換え微生物を、グリコール酸を含むまたは含まない、適切な炭素源を用いて、培養し、前記微生物は、グリコレート(glycolate)をグリコリル−CoAに変換する酵素をコードする遺伝子と、PHA合成にかかわる酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子とを発現する微生物であり、かつ
ポリグリコレート(polyglycolate)ポリマーを回収する
ことを含んでなる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PLAおよびPGAポリマーは、広範な工業上および生物医学上の用途を有する、生分解性の熱可塑性物質である(Williams and Peoples, 1996, CHEMTECH 26, 38-44)。
【0003】
これらのポリエステルは、工業用プラスチックとしてだけでなく、薬剤送達キャリア(Drug delivery and targeting. Nature 392, 5-10(1998), Langer, R.)、生体材料足場および医療機器(Biodegradable polyesters for medical and ecological applications. Macromol. Rapid Commum. 21, 117-132(2000), Ikeda, Y.& Tsuji, H.; Sterilization, toxicity, biocompatibility and clinical applications of polylactic acid/polyglycolic acid copolymers. Biomaterials 17, 93-102(1996), Athanasiou, K. A. et al)などの用途における医療用バイオポリマーとしても、重要な役割を果たす。PGAは、良好な性質、湿度80%未満でさえとても高いガス不浸透性、生分解性、高い機械的強度、および高い成形性、を有するポリエステル樹脂である(Poly(glycolic acid)In polymer data handbook(ed. Mark, J. E.)566-569(Oxford University Press, New York, 1999)Lu, L; Mikos, A. G)。この性質の特有の組合せにより、PGAは、高性能の包装および工業的用途に理想的に適合したものとなる。今日、PGAにとってターゲットとなる用途は、炭酸のソフトドリンクおよびビールのための多層ポリエチレンテレフタレート(PET)ボトルである。PGAは、PETのものより100倍も高いガスバリアを提供するので、これらのボトルに使われているPETの量を20パーセント以上引き下げることが可能であるとともに、CO損失に対する同等のバリアを維持する。このボトルのリデザインは、生産コスト削減の可能性を有する。おそらく最も重要なことには、PGAの特有の加水分解性により、PGAは、広く実施されている工業的なPETリサイクルプロセスとの高い適合性を有し、材料がリサイクルされたPETの純度および質を確実に妨げないようにする。もう1つの包装用途では、PGA多層デザインは、ポリ乳酸(PLA)などのバイオポリマーのガスおよび水分バリアを高めることが示されている。生分解性用途での使用の拡大により、PGAはさらに環境保全に貢献するだろう。
【0004】
現在、PGAは、環状ジエステルの開環重合、または2−ヒドロキシカルボン酸の重縮合の、2つの異なる化学的経路により調製されている。環状ジエステルの開環重合は、以下の3つの工程である:(i)α−ヒドロキシカルボン酸の重縮合、(ii)熱アンジッピング反応による環状ジエステルの合成、および(iii)環状ジエステルの開環重合(Preparative Methods of Polymer Chemistry2nd edition, Interscience Publishers Inc, New York 1963, Sorensen, W.R.& Campbell, T. W.; Controlled Ring-opening Polymerization of Lactide and Glycolide. Chem. Rev. 104, 6147-6176(2004), Dechy-Cabaret, O. et al.,)。あるいは、低分子量PGAが、グリコール酸の直接重縮合により製造可能なことは、周知である。低分子量ポリマーのみの獲得は、解重合を助ける、水、重合での副生成物の除去の困難が、主に原因である(Synthesis of polylactides with different molecular weights. Biomaterials 18, 1503-1508(1997), Hyon, S.-H. et al.,)。よって、配位開始剤を使った環状ジエステルの開環重合は、高分子量ポリマーの合成に好まれる。しかしながら、このプロセスは、除去が簡単ではない溶媒または鎖カップリング剤(阻害剤)の付加という不利益を有する。
【0005】
一方、バクテリアポリエステル(微生物ポリエステルおよびポリヒドロキシアルカノエート(PHA)とも呼ばれる)は、必須栄養素の制限された供給およびの炭素源の過剰な存在を原因とするアンバランスな成長への代謝性ストレスの結果として、細胞内グラニュールとして蓄積される(Lenz and Marchessault 2005; Lenz 1993; Sudesh et al., 2000; Sudesh and Doi 2005; Steinbuchel and Fuchtenbusch 1998; Steinbuchel and Valentin 1995; Steinbuchel 1991)。PHAは、広範囲の異なるグラム陽性およびグラム陰性菌により、ならびに古細菌により、天然に合成される。PHAは、それらの伸張強度および剛性に関して、通常の石油化学ベースのポリプロピレンに対するこのバイオポリマーの物理的性質の類似により、最近数十年間、多数の注目をひきつけている(Sudesh et al., 2000)。しかしながら、通常のプラスチックとは違って、PHAは、自然において生分解およびリサイクルが可能であるため、この種のポリマーは環境に対して優しい。
【0006】
側鎖の長さによって2つのタイプのPHAが区別されている。
【0007】
1のタイプは、sclPHAという短鎖長のヒドロキシアルカン酸と、短いアルキル側鎖(3〜5炭素原子)とからなり、ラルストニア ユートロファ(Ralstonia eutropha)により生産される(Lenz and Marchessault 2005)。
【0008】
2のタイプは、mclPHAという中鎖長のヒドロキシアルカン酸と、長いアルキル側鎖(6〜14炭素原子)とからなり、シュードモナス オレオボランス(Pseudomonas oleovorans)およびその他シュードモナス属により生産される(Timm and Steinbuchel, 1990)(Nomura, C.T. & Taguchi, S., 2007; Steinbuchel, A. & Hazer, B., 2007)。最も良く研究されているPHAは、3−ヒドロキシブチレート(3HB)のポリマーである、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)(PHB)であるが、150以上の構成するモノマーがある(Steinbuchel A. Valentin AE. FEMS Microbiol Lett 1995, 128:219-228; Madison L. and Huisman G. Microbiol and Mol Biol Reviews, 1999, 63:21-53; Rehm B. Biochem J 2003, 376:15-33)。この広い多様なモノマーは、ポリマー組成に依存する種々の物性を有するPHAを産する。
【0009】
微生物におけるPHAの合成のための最小要件は、(>3)−ヒドロキシアルカノイル−CoA源および適当なPHAシンターゼである(Gerngross and Martin, PNAS 92: 6279-83, 1995)。ポリエステルシンターゼは、ポリエステル生合成の重要な酵素であり、付随するCoAの放出と一緒に、(R)−(>3)−ヒドロキシアシル−CoAチオエステルのポリエステルへの変換を触媒する。これらのポリエステルシンターゼは、生化学的に特徴づけられている。これらの最近の知見の概略は、(Rehm, 2003)において提供されている。PHAシンターゼの配列、それらの基質特異性、およびそれらのサブユニット構成によって、PHAシンターゼの主要なクラスは4つに分けられる(Rhem B. H. A. Biochem J. 2003, 376: 15-33)。PHA生合成のための重要な酵素を表すPHAシンターゼの低い基質特異性のために、発酵により直接生産できるバクテリアPHAの変動性は、並外れて大きい。適当な生産株ならびに適切な培養条件および炭素源の選択により、テーラーメードの組成のPHAを生産することができる。ラルストニア ユートロファ(Ralstonia eutropha)、メチルバクテリウム(Methylbacterium)属、シュードモナス(Pseudomonas)属のような天然のプロデューサーの生物による、および大腸菌(E.coli)のようなものではない、組換えバクテリアの天然のプロデューサーによる、PHAの生産を示す、文献上多くの例がある(Qi et al., FEMS Microbiol. Lett., 157:155, 1997; Qi et al., FEMS Microbiol. Lett., 167:89, 1998; Langenbach et al., FEMS Microbiol. Lett., 150:303, 1997; Madison L. and Huisman G., 1999; WO01/55436; U.S.Pat.No.6.143.952; WO98/54329; WO99/61624)。
【0010】
PHAシンターゼは、基質として(>3)−ヒドロキシアシル−CoAを使ってPHAを合成する。よって、重合の最初の工程は、シンターゼの基質である、(>3)−ヒドロキシアシル−CoAチオエステルの獲得である。そのため、ヒドロキシ酸の(R)−(>3)−ヒドロキシアシル−CoAチオエステルへの変換は、ポリエステルの生合成のための重要な工程である。
【0011】
次の酵素は、3−ヒドロキシアシル−CoA;ラルストニア ユートロファよりクローニングされた、β−ケトチオラーゼ(PhaA)、アセトアセチル−CoA還元酵素(PhaB)、3−ヒドロキシデカノイル−ACP:シュードモナス属よりクローニングされたCoA転移酵素(PhaG)、エロモナス キャビエ(Aeromonas caviae)およびシュードモナス エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)に由来する(R)−特異的エノイル−CoAヒドラターゼ(RhaJ)(Fukui et al., J. Bacteriol. 180:667, 1998; Tsage et al., FEMS Microbiol. Lett., 184:193, 2000)、大腸菌およびシュードモナス エルギノーサに由来する3−ケトアシル−ACP還元酵素(FabG)(Taguchi et al., FEMS Microbiol. Lett. 176:183, 1999; Ren et al., J. Bacteriol. 182:2978, 2000; Park et al., FEMS Microbiol. Lett. 214:217, 2002)、を生ずることができる酵素として知られている。様々な種類のPHAは、炭素鎖における様々な位置をヒドロキシル化されたヒドロキシアルカノエート(主に3、4、5、および6位)を使うこれらの酵素を用いて合成されている。しかしながら、それは、2位をヒドロキシル化されたヒドロキシアルカノエートでは少しのPHAシンターゼ活性を有することが報告されている(Zhan et al., Appl. Microbiol. Biotechnol. 56:131, 2001; Valentin and Steinbuchel, Appl. Microbiol. Biotechnol. 40:699, 1994; Yuan et al., Arch. Biochem. Biophysics. 394:87, 2001)。
【0012】
サルモネラ エンテリカ(Salmonella enterica)由来の遺伝子をコードするプロピオニルコエンザイムAシンテターゼは、2000年にクローニングされ、PrepEと名付けられた。参照資料を示す(Valentin et al., 2000)。報告されたこの酵素の基質は、プロピオネート、アセテート、3−ヒドロキシプロピオネート、およびブチレートである。この酵素は、これら基質のこれらに対応するコエンザイムAエステルへの変換を触媒する。この酵素が、組換え大腸菌におけるラルストニア ユートロファ由来のPHAシンターゼと共に共発現された場合、PHAコポリマーの形成が見られる。
【0013】
大腸菌由来の遺伝子をコードするアセチル−CoAシンテターゼは、2006年にクローニングされ、acsと名付けられた。参照資料を示す(Lin et al., 2006)。大腸菌において過剰発現した場合、この酵素は、前記アセテートをアセチル−CoAに変換することにより、微生物へのアセテート蓄積を減らす。
【0014】
150以上の異なるモノマーが、生物におけるPHAの中に組み込まれているとはいえ、2位でヒドロキシル化されたグリコレートのようなヒドロキシアルカノエートは、PHAシンターゼに対して適切な基質ではないため、生合成のポリグリコライドPGAの生産は未だ報告されていない。
【0015】
2つの特許出願は、生細胞中のPHAシンターゼの作用によってポリマー中に2−ヒドロキシ酸モノマーが組み込まれることを述べている。
【0016】
US2007/0277268(Cho et al.)は、細胞または植物によるポリラクテート(PLA)またはそのコポリマーの生物生産に関する。
【0017】
WO2004/038030(Martin et al.)は、グリコリル−CoAのモノマーと3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、3−ヒドロキシ吉草酸などからなる群から選択される少なくとも1つの他のモノマーとを含むコポリマーの形成を示す。この場合、基質グリコリル−CoAは、4−ヒドロキシブチリル−CoA分子およびFadE、AtoBおよびチオラーゼIIを必要とする反応を経て、得られる。
【0018】
現在のところ、入手できる先行技術文献には、微生物の発酵によるグリコール酸のホモポリマー(PGA)の生産プロセスは、未だ報告されていない。
【0019】
本明細書において、本発明者らは、微生物を使った高分子量PGAを生産する方法を開発した。開示した本明細書では、本発明者らは、ポリグリコール酸ホモポリマーが、PHAシンターゼ遺伝子と、グリコレートをグリコリル−CoAに変換する酵素をコードする遺伝子とを用いて形質転換された組換え微生物を、適切な炭素源を含む生産培地において、培養することにより生産されることを述べる。
【発明の概要】
【0020】
本発明の目的は、グリコール酸のホモポリマーであるPGAの生合成のための方法を提供することである。
【0021】
該方法は、以下を発現している組換え微生物を使用することに基づいている:
1.異種由来のポリヒドロキシアルカノエート(PHA)シンターゼをコードする遺伝子、および
2.グリコール酸をグリコリル−CoAに変換する酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子。
【0022】
本発明の他の目的は、本発明による方法により得られるような生合成PGA、および本発明によるPGAの生合成のための遺伝子を発現する微生物である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、PGAであるポリグリコール酸ポリマーの生産のための連続反応を示す。1段目の反応は、グリコリル−CoAの式であり、グリコリル−CoAは、PHAシンターゼにより引き起こされる2段目の重合反応の基質である。
【図2】図2は、グリコレートを加えたグルコースを含む培地で培養した細胞を用いて、ポリグリコレートを合成するための経路を示す概略図である。
【図3】図3は、いかなる外来のグリコレートを含まないグルコースを含む培地で培養した細胞を用いて、ポリグリコレートを合成するための経路を示す概略図である。
【図4】図4は、LB+グルコースの三角フラスコの中で育ったAG1122株の顕微鏡観察(×100)を示す。光学顕微鏡AVANTEC3804921。
【図5】図5は、LB+グルコースのファーメンターの中で育ったAG1122株の顕微鏡観察(×100)を示す。光学顕微鏡AVANTEC3804921。
【図6】図6は、モディファイドM9+グルコースの三角フラスコの中で育ったAG1327株の顕微鏡観察(×100)を示す。光学顕微鏡AVANTEC3804921。
【図7】図7は、AG1354株の粗細胞抽出物でのグリコレートに対する反応のLC−MSクロマトグラムを示す。
【図8】図8は、精製PrpEstタンパク質でのグリコレートに対する反応のLC−MSクロマトグラムを示す。
【発明の詳細な説明】
【0024】
本発明は、微生物を用いてグリコール酸を重合してPGAを得る方法であって、
炭素源を含む培地において、異種由来のポリヒドロキシアルカノエート(PHA)シンターゼをコードする遺伝子を発現する微生物を培養し、かつ
重合されたグリコール酸(PGA)を回収する
ことを含んでなり、
該微生物が、さらに、グリコール酸をグリコリル−CoAに変換する酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子を発現する方法に関する。
【0025】
「重合」または「単独重合(homopolymeraization)」という用語は、モノマーの分子が互いに結合して、分子量がもとの物質の倍数である大きな分子を形成する、化学反応を意味する。2種またはそれ以上の異なるモノマーが含まれている場合は、該プロセスは共重合またはヘテロ重合(heteropolymerization)と呼ばれる。
【0026】
「PGA」は、図1および下記式Iに表されたグリコール酸繰り返し単位からなるポリグリコレートとも呼ばれる、ポリグリコール酸を示す:
−(−O−CH−CO−)− 式I
【0027】
PGAは、上記グリコール酸繰り返し単位(グリコレートとも呼ばれる)を少なくとも55重量%含んでなるホモポリマーである。PGA樹脂における上記グリコール酸繰り返し単位の含有量は、少なくとも55重量%、好ましくは少なくとも70重量%、さらに好ましくは90重量%である。
【0028】
PGAは、好ましくは、ヘキサフルオロイソプロパノール溶媒を使ったGPC測定により、10,000〜600,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有してもよい。150,000〜300,000ダルトンの重量平均分子量が、さらに好ましい。
【0029】
本発明によれば、「培養」または「発酵」という用語は、代替可能に使用され、炭素源を含む適当な増殖培地におけるバクテリアの増殖を意味する。
【0030】
「培養培地から重合されたグリコール酸を回収する」というセンテンスは、当業者により周知なようなPGAを回収する行為を示す。特に、遠心分離または凍結乾燥により、産生細胞を集めた後、菌株に蓄えられたポリマー物質は、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシドまたはクロロホルムなどの溶媒を使って回収される(Lageveen et al., 1988; Amara et al., 2002)。PGAは、上記溶媒の1つを使って、最も優先的にはHFIP溶媒を使って、凍結乾燥された細胞から抽出され、その後エタノールまたはメタノール中に沈殿される。該沈殿物は、遠心分離により得て、クロロホルム中に溶かされ、そして高精度のPGAのために再沈殿される。ポリマーは、NMRによりさらに解析される。
【0031】
「微生物」という用語は、バクテリア、酵母または菌類を示す。優先的には、微生物は、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)、バチルス科(Bacillaceae)、ストレプトマイセス科(Streptomycetaceae)およびコリネバクテリア科(Corynebacteriaceae)の中で選択される。より優先的には、微生物は、エシェリヒア属(Escherichia)、クレブシエラ属(Klebsiella)、パントエア属(Pantoea)、サルモネラ属(Salmonella)またはコリネバクテリウム属(Corynebacterium)の1種である。さらにより優先的には、微生物は、大腸菌(Escherichia coli)である。
【0032】
本発明による「炭素源」という用語は、微生物の一般的な増殖を支えるために当事者により使用できる炭素のいずれかの起源を意味し、それは、六単糖(グルコース、ガラクトースまたはラクトースなど)、五単糖、単糖、二糖類(スクロース、セロビオースまたはマルトースなど)、オリゴ糖、糖蜜、澱粉またはその誘導体、ヘミセルロース、グリセロールおよびその組合せでありうる。特に好ましい単一の炭素源は、グルコースである。もう一つの好ましい単一の炭素源は、スクロースである。
【0033】
「グリコール酸をグリコリル−CoAに変換する酵素」という用語は、グリコール酸分子を、重合プロセスの中でPHAシンターゼの基質である、グリコリル−CoAへと活性化できる酵素を示す。
【0034】
本発明の第1の態様によれば、グリコール酸は、PHAシンターゼと、グリコール酸をグリコリル−CoAに変換する少なくとも1つの酵素とをコードする遺伝子を発現する同じ微生物により生産される。炭素の再生可能資源から発酵により高レベルのグリコール酸を生産する微生物は、以前に述べられている。詳しくは、WO2007/140816およびWO2007/141316を参照する。
【0035】
さらに、このグリコール酸生産微生物からのグリコール酸の排出(expotation)を削減することは、有利となる。当業者は、特定の代謝産物の輸送の前記削減を得るための非常に多くの方法を知っており、詳しくは、グリコール酸を該微生物から培地に排出させることができる輸送タンパク質の活性および/または発現を減らすまたは阻害する方法を知っている。
【0036】
本発明の第2の態様によれば、グリコール酸は、培養培地中の微生物に対して、外来的に提供される。
【0037】
詳しくは、少なくとも2g/Lのグリコール酸の量は、培養培地に加えられ、好ましくは、少なくとも10g/Lである。当業者であれば、30g/Lのようなグリコール酸の高濃度の毒性を避けるように、投与量を調整するであろう。前記のとおり、グリコール酸の排出は、削減されてもよく、または本発明による微生物の中にさらに全部阻止されてもよい。培養培地に存在するグリコール酸の導入(import)を改良することは、さらに有利となる。当業者は、特定の代謝産物の輸送の前記改良を得るための非常に多くの方法を知っており、詳しくは、微生物に対して培地からグリコール酸を導入することができる透過酵素タンパク質の活性および/または発現を増加する方法を知っている。詳しくは、グリコレートインポーターをコードするglcA、lldPおよびyjcG遺伝子を過剰発現することは、有利となる(Nunez, F. et al., 2001 Microbiology, 147, 1069-1077; Nunez, F. et al., 2002, Biochem. And Biophysical research communicaton 290, 824-829; Gimenez, R. et al., 2003 J. of Bacteriol. 185, 21, 6448-6455 )。
【0038】
本発明の好ましい態様では、グリコール酸をグリコリル−CoAに変換する酵素は、以下の中から選択される:
アシル−CoAシンテターゼまたはアシル−CoA転移酵素、
ブチレートキナ−ゼに関連するホスホトランスブチリラーゼ。
【0039】
嫌気性細菌の中から見つかったアシル−CoA転移酵素は、短鎖長CoA−チオエステルの中鎖長CoA−チオエステルへの変換を触媒することが知られている(Mack, M. and Buckel, W., 1997)。
【0040】
本発明の第1の態様では、グリコール酸をグリコリル−CoAに変換する酵素は、腸内細菌科の種に属する遺伝子の中から選択され、最も好ましくは以下である:
prpE遺伝子によりコードされる大腸菌またはサルモネラ チピムリウム(Salmonella Thyphimurium)由来のプロピニルコエンザイムAシンテターゼ、または
acs遺伝子によりコードされる大腸菌由来のアセチル−CoA転移酵素。
【0041】
本発明の第2の実施形態では、ホスホトランスブチリラーゼは、ptb遺伝子によりコードされ、かつ、ブチレートキナーゼは、buk遺伝子によりコードされる。
【0042】
「コードする(encoding)」または「コードする(coding)」という用語は、ポリヌクレオチドが、転写および翻訳のメカニズムを介して、アミノ酸配列を生成するプロセスを言う。このプロセスは、遺伝子コードにより許可され、それは、DNAに基づく配列と、タンパク質におけるアミノ酸配列との関係である。遺伝子コードの主要なものは縮重されており、それは塩基3個の組合せ(1つの「コドン」)1つ以上により1つのアミノ酸がコードされ得ることを意味する。直接的な結果は、同じアミノ酸配列が、異なるポリヌクレオチドによりコードされ得ることとなる。コドンの使用は、生物により多様となり得ることは、当業者から周知である。同じアミノ酸をコードするコドンの中で、いくつかは、既知の微生物により優先的に使われることができる。つまり、この生物における対応するタンパク質の発現を最適化するためには、特有の微生物のコドンの用法に対して適合させたポリヌクレオチドを設計することが重要である。
【0043】
本発明の明細書では、遺伝子およびタンパク質は、大腸菌における対応する遺伝子の名称を使って特定されている。しかしながら、および別段の記載がない限り、これらの名称の使用は、本発明による、より一般的な意味を有し、他の生物、より詳しくは微生物における、全ての対応する遺伝子およびタンパク質に及ぶ。
【0044】
PFAM(アライメントおよび隠れマルコフモデルのタンパク質ファミリーデータベース、http://www.sanger.ac.uk/Software/Pfam/)は、タンパク質配列アライメントの膨大なコレクションである。各PFAMは、多数のアライメントを視覚化したり、タンパク質ドメインを見たり、生物の中での分布を評価したり、他のデータベースへのアクセスを獲得したり、および既知のタンパク質の構造を視覚化することを可能にする。
【0045】
COGs(タンパク質の相同分子種群のクラスター、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/COG/)は、完全に解読されたゲノム66からのタンパク質配列を比較することによって得られ、30の主要な系統学的系列を表している。各COGは、少なくとも3つの系統から定義され、以前に保存されたドメインの同定を可能にする。
【0046】
相同配列およびその相同性パーセントを同定する手段は、当業者に周知であり、そして特に、BLASTプログラムを包含し、それは、そのウェブサイトで示されたデフォルトパラメータを用いて、ウェブサイトhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/から利用することができる。得られた配列は、その後、例えば、CLUSTALW(http://www.ebi.ac.uk/clustalw/)またはMULTALIN(http://prodes.toulouse.inra.fr/multalin/cgi-bin/multalin.pl)といったプログラムを使い、それらウェブサイトで示されたデフォルトパラメータを用いて、利用される(例えば、配列される)。
【0047】
既知の遺伝子に対してGenBankで示された参照資料を使って、当業者は、他の生物、バクテリア株、酵母、菌類、哺乳類、植物などにおいて相当する遺伝子を決定することができる。この所定の作業は、他の微生物由来の遺伝子との配列アライメントを実行することにより決定され得る共通配列を使って、およびその他の生物における対応遺伝子をクローンニングするための縮重プローブを設計することで、有利に行われる。分子生物学のこれら所定の方法は、当業者に周知であり、例えば、Sambrookらの論文(1989 Molecular Cloning: a Laboratory Manual. 2nd ed. Cold Spring Harbor Lab., Cold Spring Harbor, New York)に記載されている。
【0048】
本発明はさらに、宿主微生物における調節要素機能の制御下で、グリコール酸をグリコリル−CoAに変換する酵素をコードするポリヌクレオチドを含んでなる発現カセットに関する。
【0049】
「発現」という用語は、その遺伝子の産物である、対応するタンパク質の生産に至る、遺伝子配列の転写および翻訳を意味する。
【0050】
本発明の好ましい態様では、グリコール酸をグリコリル−CoAに変換する酵素をコードする遺伝子は、微生物の中に過剰発現される。
【0051】
「増加発現」、「増強発現」または「過剰発現」は、本願明細書において、代替可能に使用され、かつ、似た意味、すなわち細胞内への酵素の量増加に至る、遺伝子の転写および翻訳が、非組換え微生物と比較して増加されたこと、を意味する。
【0052】
遺伝子の発現を増加するため、該分野の専門家は、遺伝子発現操作をするための異なる方法を知っている。詳しくは、遺伝子は、異なった強度のプロモーターを使って発現されてもよく、それは誘導されてもよい。これらのプロモーターは、同種のまたは異種のでもよい。当業者は、例えば、プロモーターPtrc、Ptac、PlacまたはラムダプロモーターcIは広く使えるなど、どのプロモーターが最も適切なのかを知っている。
【0053】
本発明の実施態様では、遺伝子は、微生物に導入されたプラスミドまたはベクターにより発現されてもよい。前記微生物は、その後「宿主微生物」と呼ばれ、外部のまたは異種の遺伝子またはそれ自身の遺伝子の余分なコピーを受け取ることができ、そして活性タンパク質産物を生産するためのそれらの遺伝子を発現することができる微生物である。
【0054】
「形質転換」という用語は、宿主微生物への新しい遺伝子または既存遺伝子の余分なコピーの導入を意味する。例としては、大腸菌では、宿主生物へのDNAの形質転換の方法は、エレクトロポレ−ションである。
【0055】
「形質転換ベクター」という用語は、ポリヌクレオチドを宿主生物に導入するために使われるいずれかのビヒクルを意味する。前記ビヒクルは、例えば、プラスミド、ファージまたは、使われる生物によって当業者から知られている他の要素でありうる。形質転換ベクターは、通常、ポリヌクレオチドまたは発現カセットに加えて、特定の宿主細胞の形質転換を促進する他の要素を含む。発現ベクターは、該カセットに産出される遺伝子の適切な発現を許可する発現カセットと、宿主生物へのベクターの複製を許可する付加要素とを含んでなる。発現ベクターは、宿主生物において単一のコピーまたは複数のコピーで存在しうる。当業者は、複製のプラスミドの起源および細胞内でのその結果のプラスミドコピー数の点で相違する異なるタイプのプラスミドを知っている。それらは、1〜5コピー数で存在してもよく、約20または500コピー未満で、厳密な複製をともなう低コピー数プラスミド(pSC101、RK2)、低コピー数プラスミド(pACYC、PRSF1010)または高コピー数プラスミド(pSK bluescriptII)に相当する。
【0056】
本発明は、グリコール酸をグリコリル−CoAに変換する酵素をコードする遺伝子を含んでなる形質転換ベクターを提供する。
【0057】
本発明のもう1つの実施形態では、前記遺伝子は、微生物の染色体に組み込まれていてもよい。そこには、当業者により周知の組換えの方法により、生物のゲノムの中に導入されることができる遺伝子の1つまたは数個のコピーがあってもよい。
【0058】
遺伝子の過剰発現を得るためのもう1つの方法は、対応するメッセンジャーRNAを安定させる要素の発現または調節を変更することであり(Carrier et al. Biothechnol Bioeng. 59: 666-72, 1998)、mRNAの翻訳を最適化すれば、その後、有効な酵素の量は増加する。
【0059】
本発明で使用される組換え微生物は、さらに、ポリヒドロキシアルカノエートシンターゼをコードする遺伝子を発現する。PHAの4つの主要なクラスが識別できている(Rhem, B., 2003)。クラスIおよびクラスIIのPHAシンターゼは、サブユニット(PhaC)の1つのタイプのみからなる酵素を含んでなる。それらのインビボ(in vivo)およびインビトロ(in vitoro)特異性によると、(例えば、ラルストニア ユートロファの)クラスIのPHAシンターゼは、優先的に、3から5の炭素原子を含んでなる様々なヒドロキシ脂肪酸のCoA−チオエステルを利用し、一方、(例えば、シュードモナス エルギノーザの)クラスIIのPHAシンターゼは、優先的に、6から14の炭素原子を含んでなる様々なヒドロキシ脂肪酸のCoA−チオエステルを利用する。(例えば、アロコロマチウム ビノスム(Allochromatium vinosum)の)クラスIIIのシンターゼは、2つの異なるタイプのサブユニット、PhaCおよびPhaEサブユニット、からなる酵素を含んでなる。これらのPHAシンターゼは、3から5の炭素原子を含んでなるヒドロキシ脂肪酸のCoA−チオエステルを好む。(例えば、バチルス メガテリウム(Bacillus megaterium)の)クラスIVのPHAシンターゼは、クラスIIIのPHAシンターゼに似ているが、PhaEが、PhaRにより置き換わる。
【0060】
本発明の特定の実施形態では、異種由来のPHAシンターゼをコードする遺伝子は、phaC、phaECまたはphaCRの中から選択され、好ましくはphaCおよびphaECの中から選択され、そして最も好ましくは、選択された遺伝子は、クラスIのPHAシンターゼの酵素をコードするphaCである。前記のとおり、「phaC」、「phaEC」および「phaCR」というこれらの名称の使用は、他の生物における、より詳しくは微生物における、全ての対応する遺伝子およびタンパク質に及ぶ。従って、既知の遺伝子に対してGenBankで示された参照資料を使って、当業者は、他の生物、バクテリア株、酵母、菌類、哺乳類、植物などにおいて相当する遺伝子を決定することができる。この所定の作業は、他の微生物由来の遺伝子との配列アライメントを実行することにより決定され得る共通配列を使って、および他の生物における対応遺伝子をクローンニングするための縮重プローブを設計することで、有利に行われる。全ての相当する遺伝子は、参照により本願明細書に組み込まれる。
【0061】
優先的には、異種由来のPHAシンターゼをコードする前記遺伝子は、過剰発現される。前記のとおり、遺伝子の過剰発現は、当業者により知られた異なる方法により得られてもよい。遺伝子は、微生物に導入された発現ベクターにより発現されてもよく、または前記微生物の染色体に組み込まれてもよい。
【0062】
本発明の好ましい実施形態では、該方法に用いられる組換え微生物は、さらにPhaR/PhaP調節系を発現し、特に微生物は、ファシン(phasin)およびその転写発現調節因子をそれぞれコードするW.eutropha由来のphaPおよびphaR遺伝子を発現する。PhaPというファシンタンパク質は、PHAシンターゼの最適な細胞内環境の維持に関係しているようであり、グラニュール形成のプロセスの間、誘導を提供する(Wieczorek, R. et al. 1995)。PhaR相同体は、インビトロおよびインビボの双方で研究されており(Wieczorek R. et al. 1995 およびYork G.M. et al. 2002)、そしてphaP転写の調節因子としての働きを提唱されている。
【0063】
「phaP」および「phaR」というこれらの名称の使用は、他の微生物における全ての対応する遺伝子およびタンパク質に及ぶ。
【0064】
本発明は、さらに、本発明による方法により得られた重合したグリコール酸(PGA)に関する。
【0065】
本発明の主な利点は、グリコール酸から生産するのが難しい化合物である、グリコライドの使用を必要とする化学的方法よりも、簡単に、安い方法で、PGAを生産することである。
【0066】
本発明は、さらに、異種由来のPHAシンターゼと、グリコール酸をグリコリル−CoAに変換する少なくとも1つの酵素とをコードする遺伝子を発現する微生物に関する。
【0067】
優先的には、前記微生物は、腸内細菌科であり、より優先的には大腸菌である。
【実施例】
【0068】
【表1】

オペレーターおよびRBS配列を付けたPtrc01プロモーター 配列番号7:
gagctgttgacaattaatcatccggctcgtataatgtgtggaattgtgagcggataacaattTACGTAtaaggaggtatatt
大文字記載:SnaBI制限酵素認識部位
【0069】
(例1)
アシル−CoAシンセターゼをコードする遺伝子を含む組換えベクターの構築
pSCB−acs、pSCB−prpEおよびpSCB―prpEstの構築
prpE(大腸菌由来またはS.thyphimurium由来)によりコードするプロピオニル−CoAシンテターゼ、またはacsによりコードするアセチル−CoAシンテターゼの、2つのタンパク質が、グリコール酸をグルコリルCoAに変換するために使用される。各遺伝子は、PHAシンターゼをコードする、ラルストニア ユートロファ由来のphaC1遺伝子と共に、細胞内で、共発現される。
【0070】
acsおよびprpE遺伝子を増幅するために、テンプレートとして大腸菌の染色体DNAと、asc Fおよびacs Rと呼ばれるacs増幅のための、ならびにprpE FおよびprpE Rと呼ばれるprpE増幅のための、上記プライマー(表1参照)とを用いてPCRが行われる。
【0071】
acsのPCR断片を、pSCBベクター(stratagene Blunt PCR cloning Kit CAT 240207−5)にクローンニングし、プラスミドpSCB−acsを得る。
【0072】
prpEのPCR断片を、pSCBベクターにクローンニングし、プラスミドpSCB−prpEを得る。
【0073】
サルモネラ エンテリカ チピムリウム(Salmonella enterica thyphimurium)由来のprpE遺伝子を増幅するために、テンプレートとしてプラスミドpPRP45(Alexander R Horswill,Jorge C Escalante-Semerena“Characterization of the Propionyl-CoA Synthetase(prpE) enzyme of Salmonella enterica:Residue Lys592 Is Required for propionyl-AMP synthesis”から)と、prpEst FおよびprpEst Rと呼ばれるprpEst増幅のための、上記プライマー(表1参照)とを用いてPCRが行われる。
【0074】
prpEstのPCR断片を、pSCBベクター(stratagene Blunt PCR cloning Kit CAT 240207−5)にクローンニングし、プラスミドpSCB−prpEstを得る。
【0075】
(例2)
PHAシンターゼおよびアシル−CoAシンテターゼをコードする遺伝子を含む組換えベクターの構築
pMK−Ptrc01/OP01/RBS01−phaC1re−TT02の構築
ラルストニア ユートロファ由来のphaC1の遺伝子を有するプラスミドは、企業により供給され、大腸菌において、最高の転写速度を得るための最適系列を備える遺伝子を合成する。
【0076】
コドン使用の相対的頻度は、生物および細胞小器官により広く異なる。配列をコードする合成タンパク質のための多くのデザインプログラムは、生物の選択を許可する。コドン用法データベースは、多くの普通株やおよび大腸菌のような解析された生物のためのコドン用法統計データを有する。
【0077】
PHAシンターゼをコードする合成遺伝子phaC1は、即使用可の形で企業により提供される。該遺伝子を、該遺伝子の上流に位置するオペレーターおよびRBS配列を付けたPtrc01プロモーター(配列番号1)と、phaC1reの下流に位置するターミネータ−配列の下、クローンニングし、pMK−Ptrc01/OP01/RBS01−phaC1re−TT02プラスミドとした。
【0078】
pUC19−Ptrc01/OP01/RBS01−phaC1re−TT02およびpBBR1MCS5−Ptrc01/OP01/RBS01−phaC1re−TT02の構築
プラスミドpMK−Ptrc01/OP01/RBS01−phaC1re−TT02
を、HindIIIとBamHIとを用いて切断し、得られたPtrc01/OP01/RBS01−phaC1re−TT02を含むDNA断片を、同じ制限酵素により切断したpBBR1MCS5ベクターにクローンニングする。得られたプラスミドはpBBR1MCS5−Ptrc01/OP01/RBS01−phaC1re−TT02と呼ばれる。
【0079】
プラスミドpMK−Ptrc01/OP01/RBS01−phaC1re−TT02
を、HindIIIとBamHIとを用いて切断し、得られたPtrc01/OP01/RBS01−phaC1re−TT02を含むDNA断片を、同じ制限酵素により切断したpUC19ベクターにクローンニングする。得られたプラスミドはpUC19−Ptrc01/OP01/RBS01−phaC1re−TT02と呼ばれる。
【0080】
pMK−Ptrc01/OP01/RBS01−phaC1re−acs−TT02,pMK−Ptrc01/OP01/RBS01−phaC1re−prpE−TT02の構築
pSCB−acsおよびpSCB−prpEプラスミドを、XbaIと、NheIとを用いて切断し、得られたacsまたはprpEのいずれかを含むDNA断片を、同じ制限酵素により切断したpMK−Ptrc01/OP01/RBS01−phaC1re−TT02ベクターにクローンニングする。得られたプラスミドは、pMK−Ptrc01/OP01/RBS01−phaC1re−acs−TT02およびpMK−Ptrc01/OP01/RBS01−phaC1re−prpE−TT02と呼ばれる。
【0081】
pBBR1MCS5−Ptrc01/OP01/RBS01−phaC1re−prpEst−TT02およびpUC19−Ptrc01/OP01/RBS01−phaC1re−prpEst−TT02の構築
pSCB−prpEstプラスミドを、PacIとNheIとを用いて切断し、得られたprpEstを含むDNA断片を、同じ制限酵素により切断したpBBR1MCS5−Ptrc01/OP01/RBS01−phaC1re−TT02ベクターにクローンニングする。得られたプラスミドは、pBBR1MCS5−Ptrc01/OP01/RBS01−phaC1re−prpEst−TT02と呼ばれる。
【0082】
pSCB−prpEstプラスミドを、PacIとNheIとを用いて切断し、得られたprpEstを含むDNA断片を、同じ制限酵素により切断したpUC19−Ptrc01/OP01/RBS01−phaC1re−TT02ベクターにクローンニングする。得られたプラスミドは、pUC19−Ptrc01/OP01/RBS01−phaC1re−prpEst−TT02と呼ばれる。
【0083】
(例3)
グリコレート存在下で培養した場合、PGAを生産する組換え大腸菌株の構築およびポリグリコレートポリマーの調製
pMK−Ptrc01/OP01/RBS01−phaC1re−acs−TT02およびpMK−Ptrc01/OP01/RBS01−phaC1re−prpE−TT02ベクターを、エレクトロポレーションにより、大腸菌MG1655野生株に導入し、それぞれMG1655(pMK−Ptrc01/OP01/RBS01−phaC1re−acs−TT02)およびMG1655(pMK−Ptrc01/OP01/RBS01−phaC1re−prpE−TT02)株を得た。
【0084】
pBBRMCS5−Ptrc01/OP01/RBS01−phaC1re−prpEst−TT02およびpUC19−Ptrc01/OP01/RBS01−phaC1re−prpEst−TT02ベクターを、エレクトロポレーションにより、大腸菌MG1655野生株に導入し、それぞれMG1655(pBBRMCS5−Ptrc01/OP01/RBS01−phaC1re−acs−TT02)およびMG1655(pUC19−Ptrc01/OP01/RBS01−phaC1re−prpE−TT02)株を得た。
【0085】
得られた菌株(図2)を、約5g/lのグリコレートを含むLBまたはMM培地で培養し(条件の詳細は以下の実施例)、次に菌株を回収するために遠心分離した。回収された菌株を、ヘキサフルオロイソプロパノールまたはクロロホルムのような溶媒を用いて、細胞内に蓄積されたポリマー物質を回収するために、凍結乾燥した。得られたポリマーが、ポリグリコレートであることを確認するために、NMR解析を、回収されたポリマー物質に対して行った。
【0086】
グルコースのみで培養した場合、PGAを生産する組換え大腸菌株の構築およびポリグリコレートポリマーの調製
炭素源としてグルコースからグリコール酸を生産するように遺伝子組換えされた菌株は、特許WO2007/141316A、WO2007/140816A、US61/162,712およびEP09155971,6に公開されている。該菌株は、本明細書では、グルコースのみからPGAの生産を可能にするプラスミドの導入のために使われる。
【0087】
pMK−Ptrc01/OP01/RBS01−phaC1re−prpE−TT02およびpMK−Ptrc01/OP01/RBS01−phaC1re−acs−TT02ベクターを、エレクトロポレーションにより、グリコール酸を生産するように遺伝子改変された大腸菌株に導入した。
【0088】
pBBRMCS5−Ptrc01/OP01/RBS01−phaC1re−prpEst−TT02およびpUC19−Ptrc01/OP01/RBS01−phaC1re−prpEst−TT02ベクターを、エレクトロポーションにより、グリコール酸を生産するように遺伝子改変された大腸菌株に導入した。
【0089】
(例4)
三角フラスコにおけるグルコースからポリグルコール酸ポリマーを生産する菌株の発酵
発酵によるPGAの生産は以下の、遺伝子型(MG1655 Ptrc50/RBSB/TTG−icd::Cm ΔaceB Δgcl ΔglcDEFGB ΔaldA ΔiclR Δedd+eda ΔpoxB ΔackA+pta(pME101−ycdW−TT07−PaceA−aceA−TT01)(pMK−Ptrc01/OP01/RBS01−phaC1re−prpE−TT02))を有するAG112株を用いて行われた。
【0090】
細胞内でのPGA生産は、500mlバッフル付き三角フラスコ中で(本例)、およびファーメンターバッチの中で(例5)行った。
【0091】
AG1122を、12.5g/lのグルコースが補充された、それ自体に5g/lのMOPSと、5g/lのグルコースとを含む、LB培地(LB broth)(Bertani,1951,J.Bacteriol.62:293-300)またはモディファイドM9培地(Anderson,1946,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 32:120-128)、を用いて、500mlバッフル付き三角フラスコ中で育てた。培地のpHを、その時、pH6.8に調整した。
【0092】
スペクチノマイシンおよびカナマイシン抗生物質を、最終濃度50mg/lになるように加えた。一晩培養した前培養を、OD600nmが0.3になるように、50ml培養に、植え継いだ。培養は、培地中のグルコースが尽きるまで、37℃、200rpmで、シェーカー上で行った。ポリグルコール酸産物を、Avantec3804921の光学顕微鏡を用いて顕微鏡観察した。
【0093】
増殖の数時間後の細胞の写真を、図1に示す。細胞の中の白い部分は、ポリマーグラニュールを示す。
【0094】
(例5)
バッチ式ファーメンターにおけるグルコースからポリグルコール酸ポリマーを生産する菌株の発酵
AG1122株(MG1655 Ptrc50/RBSB/TTG−icd::Cm ΔaceB Δgcl ΔglcDEFGB ΔaldA ΔiclR Δedd+eda ΔpoxB ΔackA+pta(pME101−ycdW−TT07−PaceA−aceA−TT01)(pMK−Ptrc01/OP01/RBS01−phaC1re−prpE−TT02))によるPGAの生産を、供給バッチプロトコールを用いて、600mlのファーメンターの生産条件で、評価した。
【0095】
ユニークな前培養は、37℃で24時間、12.5g/lのグルコースを補充したLB培地(Bertani,1951,J.Bacteriol.62:293-300)200mlで満たした2l三角フラスコで行われた。該前培養は、ファーメンターの植え継ぎ用に使われた。
【0096】
20g/lのグルコースおよび50mg/lのスペクチノマイシンとカナマイシンとを補充したLB培地400mlで満たしたファーメンターを、初期吸光度(OD)が1.5になるように植菌した。培養を、溶存酸素飽和度30%以上を維持するために調整された撹拌とエアレーションと共に、37℃で行った。pHを、塩基を加えることで、6.8に調整した。培養を、バッチモードで、24時間またはOD600nm>10になるまで、行った。
【0097】
ポリグリコール酸ポリマー産物を、顕微鏡観察した。顕微鏡下の該菌株の写真が、図2に示されている。
【0098】
該培養により得られたグリコール酸の最終滴定濃度(titer)は、1.5g/lであった(分離のためのBiorad HPX97Hカラムを用いたHPLCおよび検出するための屈折率測定器により解析した上清)。
【0099】
同じ発酵を、グルコースを補充したモディファイドM9培地で行った。生産は、LB培地によるものよりも、遅かった。
【0100】
(例6)
三角フラスコにおけるグリコール酸のバイオコンバーションによるポリグリコール酸を生産する菌株の発酵
グリコール酸のPGAへのバイオコンバーションを、AG1327株(MG1655(pUC19−Ptrc01/OP01/RBS01−phaC1re−prpEst−TT02))により確認した。
【0101】
AG1327によるバイオコンバージョンを、5g/lのMOPSと、5g/lのグルコースと、5g/lのグリコール酸とを補充し、pH6.8に調整されたモディファイドM9培地を用いて、500mlバッフル付き三角フラスコ培養で、評価した。10%v/vでのLB培地の補給も、バイオマス成長を高めるために、加えられた。アンピシリンまたはカルベニシリンを、濃度100mg/lで、加えた。一晩培養した前培養を、OD600nmが0.3になるように、50ml培養に植え継ぎされた。培養は、30℃、200rpmで、シェーカー上で行われ、ポリマー産物は、顕微鏡観察にされた。
【0102】
培養の最後に、グルコースおよびグリコール酸は、分離のためのBiorad HPX97Hカラムを用いたHPLCおよび検出するための屈折率測定器により解析した。
【0103】
ポリマーのグラニュールは、グリコール酸の存在下で観察され、グリコール酸の添加の無いコントロール(図3)では観察されなかった。
【0104】
本発明を、特別な特徴に言及することで、詳細を述べているが、この明細書は、好ましい実施形態についてのみであり、そして本発明の範囲を制限しないことは当業者にとって明らかである。よって、本発明の実質上の範囲は、添付されたクレームおよびそれに相当するものにより定義される。
【0105】
(実施例7)
サルモネラ チピムリウム由来のプロピオニル−CoAシンテターゼによるグリコール酸のグリコリル−CoAへの変換
[BL21(DE3)(pLysS)(pPAL−prpEst)組換え株の構築]
サルモネラ エンテリカ チピムリウム由来のprpE遺伝子を増幅するために、テンプレートとしてのプラスミドpPRP45と、pPAL−prpEst RおよびpPAL−prpEst Fと呼ばれるプライマー
pPAL−prpEst R(配列番号8)
CGAATTCCTATTCTTCGATCGCCTGGCG
pPAL−prpEst F(配列番号9)
CCCAAGCTTTGATGTCTTTTAGCGAATTTTATCAGCG
とを用いてPCRを行う。
【0106】
PCR産物を、HindIIIと、EcoRIとを用いて切断し、同じ制限酵素で切断したpPAL7ベクター(Profinity eXact pPAL7 Vector Biorad)に、クローンニングする。得られたプラスミドは、pPAL−prpEstと呼ばれる。
【0107】
pPAL−prpEstベクターを、E.coliBL21(DE3)(pLysS)ケミカルコンピテントセルに導入し、AG1354と呼ばれるBL21(DE3)(pLysS)(pPAL−prpEst)株を得た。
【0108】
[プロピオニル−CoAシンテターゼ、PrpEstの過剰生産]
PrpEstタンパク質の過剰生産は、2l三角フラスコの中で行う。
ユニークな前培養を、5g/lのグルコース、100ppmのアンピシリンおよび1g/lの硫酸マグネシウムを補充したLB培地(Bertani,1951,J.Bacteriol.62:293-300)50mlで満たした500ml三角フラスコで行う。前培養を、OD600=0.5になるまで、37℃、200rpmで培養し、その後、5g/lのグルコース、100ppmのアンピシリンおよび1g/lの硫酸マグネシウムを補充したLB培地500mlで満たされた2lフラスコの植え継ぎ用に使う。培養を、最初は、OD600が0.6〜0.8になるまで、37℃、200rpmで行い、500μMIPTGを用いた誘導前に、2つ目の工程として25℃に移動する。培養は、OD600が約4になる時、止められた。細胞を、4℃で、7000rpm、10分間遠心分離し、その後、−20℃で保管する前に、リン酸緩衝液で洗浄した。
【0109】
[PrpEstタンパク質の精製]
細胞(45mg)を、超音波処理により溶解し、細胞片を、12000g(4℃)、30分間で遠心分離することにより取り除いた。タンパク質を、製造会社が推薦するプロトコールに従いProfinityカラム(BIORAD,Bio−Scale Mini Profinity exact cartridge)の親和性により、粗細胞抽出物から精製した。標識を、室温、30分間、100mMフッ化物を用いた開裂により、タンパク質から取り除いた。溶出バッファーは、100mMリン酸緩衝液、150mM塩化ナトリウムおよび10%グリセロールから成る溶液に対する透析により、交換した。
【0110】
Bradfordタンパク質定量法を、タンパク質濃度を測定するために使った(すなわち、乾燥重量45mgに対して0.23μg/μl)。
【0111】
[LC−MSによるグリコリル−CoAの検出]
グリコレートにおけるPrpEの活性を、LC−MS(Applied/DIONEX)により、得られた分子、グリコリル−CoA(式1の化学的特徴)の検出により、測定する。反応混合物(250μl)は、75mMのリン酸緩衝バッファー(pH7.5)、1.5mM ATP、0.75mM CoAと、粗細胞抽出物10〜40μgまたは精製タンパク質9μgのいずれかとを含む。
【0112】
反応混合液を、グリコレートの異なる濃度(20、40および100mM)で始めた。サンプルは、LC−MSの機械に導入される前に、37℃で30分間インキュベートされた(反応は25μlまたは75μl装填された)。コントロールとして、1)CoA無し、2)酵素無し、および3)グリコレート無しの3つの反応混合液を用いた。
【0113】
結果は、図7、8に示される。
図7:反応は、100mMグリコレートおよびPrepEstタンパク質を過剰生産するAG1354菌株の粗細胞抽出物40μgを用いて行った。
図8:反応は、40mMグリコレートおよび精製タンパク質9μgを用いて行った。
【0114】
どちらの場合も、得られた唯一のものは、グリコリル−CoAに相当するmass825(Mass−1=824.0)が検出された。
【化1】

分子質量 =825,58
計算精密質量(Exact Mass)=825
分子式 =C23H38N7O18P3S
【0115】
参考文献
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【0116】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物を用いてグリコール酸を重合してPGAを得る方法であって、
炭素源を含む培地において、異種由来のポリヒドロキシアルカノエート(PHA)シンターゼをコードする遺伝子を発現する微生物を培養し、かつ
重合されたグリコール酸(PGA)を回収する
ことを含んでなり、
該微生物が、さらに、グリコール酸をグリコリルCoAに変換する酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子を発現する、方法。
【請求項2】
グリコール酸が、PHAシンターゼと、グリコール酸をグリコリルCoAに変換する少なくとも1つの酵素とをコードする遺伝子を発現する同じ微生物により生産される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
グリコール酸が、培養培地の中の微生物に対して外来的に供給される、請求項1に記載する方法。
【請求項4】
グリコール酸のグリコリル−CoAへの変換が、
a.アシル−CoAシンテターゼ
b.アシル−CoA転移酵素
c.ブチレートキナーゼに関連するホスホトランスブチリラーゼ
の中から選ばれる少なくとも1つの酵素によりなされる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の、方法。
【請求項5】
アシル−CoAシンテターゼおよびアシルCoA転移酵素が、prpEまたはacs遺伝子によりコードされる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ホスホトランスブチリラーゼが、ptb遺伝子によりコードされ、かつ、ブチレートキナーゼが、buk遺伝子によりコードされる、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記遺伝子が過剰発現される、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記遺伝子が、微生物に導入されたプラスミドにより発現される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記遺伝子が、前記微生物の染色体に組み込まれている、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
異種由来のPHAシンターゼをコードする遺伝子が、phaC、phaECまたはphaCRの中から選択される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記遺伝子が過剰発現される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記遺伝子が、微生物に導入されたプラスミドにより発現される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記遺伝子が、前記微生物の染色体に組み込まれている、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
微生物が、PhaR/PhaP調節系を発現する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法により得られる、重合されたグリコール酸。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の、異種由来のPHAシンターゼとグリコール酸をグリコリルCoAに変換する少なくとも1つの酵素とをコードする遺伝子を発現する微生物。
【請求項17】
前記微生物が、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)である、請求項16に記載の微生物。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−527367(P2011−527367A)
【公表日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517171(P2011−517171)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【国際出願番号】PCT/EP2009/058836
【国際公開番号】WO2010/004032
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(505311917)メタボリック エクスプローラー (26)
【Fターム(参考)】