説明

微生物精製方法

【課題】フィルターの目詰まりを防止し、迅速かつ高精度に血液製剤中の微生物を精製する方法、微生物検出方法、及び、該方法に供するキットの提供。
【解決手段】a)血小板を含む血液製剤の試料にフィブリン凝集阻害剤を添加した後に、血小板凝集因子を添加することにより血小板を凝集させる工程と、b)微生物は通すが、凝集塊は通さないフィルターを用いて濾過することにより、工程a)により生成された凝集塊を除去する工程と、を有することを特徴とする、血小板を含む血液製剤中に場合により存在する微生物の微生物精製方法、さらにe)精製された微生物を検出する工程と、を有することを特徴とする微生物検出方法、該精製方法に供するキット、及び、該検出方法に供するキット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液製剤中に場合により存在する微生物の精製方法、該方法を用いた微生物の検出方法、該微生物精製方法に用いるキット、及び、該微生物検出方法に用いるキットに関する。
【背景技術】
【0002】
輸血は、医療現場では必要不可欠な行為であるが、ウィルスや細菌に汚染された血液製剤の使用により、感染症に罹ることがある。特に血小板製剤は、他の製剤とは異なり、冷凍・冷蔵保存ができないため、採血時に混入した細菌が保存中に増殖し、その製剤を投与された患者に重篤な感染症を引き起こす危険性が最も高い。このため、血液製剤に含まれる細菌等の微生物を速やかに検出することにより、血液製剤の安全性を高めることが強く望まれている。
【0003】
血液製剤中に存在する病原性微生物の精製・検出については、種々の方法が開示されている。例えば、a)血液製剤の試料に血液細胞の凝集処理を受けさせる、b)汚染菌を通すが、細胞の凝集体を通さない第1フィルターに、処理した試料を通過させることによってステップ(a)で形成した凝集体を除去する、c)ステップ(b)で得た濾液の残留細胞を選択的に溶解させる、d)細胞片を通す第2フィルターに、ステップ(c)の溶解物を通過させることによって汚染菌を回収する、及びe)場合により精製された汚染菌を検出するために第2フィルターを分析する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特表2005−503803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の方法では、第1フィルターと第2フィルターの双方が目詰まりを起こしやすいため、操作に時間がかかり、かつ再現性に乏しい。また、細胞溶解処理としてSDS、ツイーン、トリトン等の洗剤を添加すると、試料溶液の濾過性が若干向上されるが、血液製剤中に場合により存在する微生物の細胞膜も破壊されるという問題がある。
【0005】
洗剤により微生物の細胞膜が破壊されると、核酸染色の染色性は向上するものの、生きている微生物のみを検出することはできないという問題がある。一方、生きている微生物の検出方法としてエステラーゼ活性測定があるが、細胞膜破壊により、エステラーゼ活性の低下や、分解されたエステラーゼ基質の細胞外への流出等により、染色性が低下するという問題がある。このため、上記の方法では、生きている微生物検出の信頼性は低い。
【0006】
本発明は、フィルターの目詰まりを防止し、迅速かつ高精度に血液製剤中の微生物を精製する方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、フィルターの目詰まりを防止し、高精度かつ高感度に血液製剤中の微生物を検出する方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、該微生物を精製する方法に用いるためのキットを提供することを目的とする。
また、本発明は、該微生物を検出する方法に用いるためのキットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、血小板凝集処理を行う工程で、血液製剤中のフィブリノーゲンがフィブリンに変化し、これが不溶性のフィブリンポリマーを形成して第1フィルターを目詰まりさせること、第1フィルターを通過した濾液中の残留細胞の選択的溶解処理の操作中にもフィブリンポリマーの形成反応は進行しているため、第1フィルターを通過した濾液中で生成したフィブリンポリマーによって第2フィルターも目詰まりを起こしてしまうことを見出した。そして、さらに検討した結果、血小板の凝集反応には影響を与えずに、不溶性フィブリンポリマー生成を抑制して、血小板凝集塊を分離することにより、フィルターの目詰まりを防止し得ることを見出した。さらに、微生物と同時に第2フィルター上に捕集される、第1フィルターで捉えられなかった血小板、すなわち、凝集不活性な血小板や血小板凝集塊より剥離した血小板を、微生物検出前に選択的に分解することにより、検出の際のバックグラウンドを抑えて微生物を精度良く検出する方法を見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、血小板を含む血液製剤中に場合により存在する微生物の精製方法であって、(a) 前記血液製剤の試料にフィブリン凝集阻害剤を添加した後に、血小板凝集因子を添加することにより血小板を凝集させる工程と、(b) 微生物は通すが、凝集塊は通さないフィルターを用いて濾過することにより、工程(a)により生成された凝集塊を除去する工程と、を有することを特徴とする微生物精製方法を提供するものである。
また、本発明は、血小板を含む血液製剤中に場合により存在する微生物の精製方法であって、(a) 前記血液製剤の試料にフィブリン凝集阻害剤を添加した後に、血小板凝集因子を添加することにより血小板を凝集させる工程と、(b) 微生物は通すが、凝集塊は通さないフィルターを用いて濾過することにより、工程(a)により生成された凝集塊を除去する工程と、(c) 工程(b)により得られた濾液を、微生物を通さないフィルターを用いて濾過することにより、微生物を捕集する工程と、を有することを特徴とする微生物精製方法を提供するものである。
また、本発明は、血小板を含む血液製剤中に場合により存在する微生物の精製方法であって、(a) 前記血液製剤の試料にフィブリン凝集阻害剤を添加した後に、血小板凝集因子を添加することにより血小板を凝集させる工程と、(b) 微生物は通すが、凝集塊は通さないフィルターを用いて濾過することにより、工程(a)により生成された凝集塊を除去する工程と、(d) 工程(b)により得られた濾液を、蛋白質分解酵素及び/又は界面活性剤で処理する工程と、(c’) 工程(d)により得られた処理済溶液を、微生物を通さないフィルターを用いて濾過することにより、微生物を捕集する工程と、を有することを特徴とする微生物精製方法を提供するものである。
また、本発明は、血小板を含む血液製剤中に場合により存在する微生物の精製方法であって、(a) 前記血液製剤の試料にフィブリン凝集阻害剤を添加した後に、血小板凝集因子を添加することにより血小板を凝集させる工程と、(b) 微生物は通すが、凝集塊は通さないフィルターを用いて濾過することにより、工程(a)により生成された凝集塊を除去する工程と、(c) 工程(b)により得られた濾液を、微生物を通さないフィルターを用いて濾過することにより、微生物を捕集する工程と、(d’) 工程(c)により得られたフィルターを、蛋白質分解酵素及び/又は界面活性剤で処理する工程と、を有することを特徴とする微生物精製方法を提供するものである。
また、本発明は、前記血液製剤が血小板製剤である、微生物精製方法を提供するものである。
また、本発明は、前記フィブリン凝集阻害剤がキレート剤である、微生物精製方法を提供するものである。
また、本発明は、前記フィブリン凝集阻害剤が、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)又はクエン酸である、微生物精製方法を提供するものである。
また、本発明は、前記血小板凝集因子がトロンビンである、微生物精製方法を提供するものである。
また、本発明は、前記工程(a)中のいずれかの段階において、前記血液製剤の試料を界面活性剤で処理する段階を有する、微生物精製方法を提供するものである。
また、本発明は、前記界面活性剤が、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤及びカチオン系界面活性剤からなる群より選ばれる1以上である、微生物精製方法を提供するものである。
また、本発明は、血小板を含む血液製剤中に場合により存在する微生物の検出方法であって、(a) 前記血液製剤の試料にフィブリン凝集阻害剤を添加した後に、血小板凝集因子を添加することにより血小板を凝集させる工程と、(b) 微生物は通すが、凝集塊は通さないフィルターを用いて濾過することにより、工程(a)により生成された凝集塊を除去する工程と、(e) 精製された微生物を検出する工程と、を有することを特徴とする微生物検出方法を提供するものである。
また、本発明は、血小板を含む血液製剤中に場合により存在する微生物の検出方法であって、(a) 前記血液製剤の試料にフィブリン凝集阻害剤を添加した後に、血小板凝集因子を添加することにより血小板を凝集させる工程と、(b) 微生物は通すが、凝集塊は通さないフィルターを用いて濾過することにより、工程(a)により生成された凝集塊を除去する工程と、(c) 工程(b)により得られた濾液を、微生物を通さないフィルターを用いて濾過することにより、微生物を捕集する工程と、(e) 精製された微生物を検出する工程と、を有することを特徴とする微生物検出方法を提供するものである。
また、本発明は、血小板を含む血液製剤中に場合により存在する微生物の検出方法であって、(a) 前記血液製剤の試料にフィブリン凝集阻害剤を添加した後に、血小板凝集因子を添加することにより血小板を凝集させる工程と、(b) 微生物は通すが、凝集塊は通さないフィルターを用いて濾過することにより、工程(a)により生成された凝集塊を除去する工程と、(d) 工程(b)により得られた濾液を、蛋白質分解酵素及び/又は界面活性剤で処理する工程と、(e) 精製された微生物を検出する工程と、を有することを特徴とする微生物検出方法を提供するものである。
また、本発明は、血小板を含む血液製剤中に場合により存在する微生物の検出方法であって、(a) 前記血液製剤の試料にフィブリン凝集阻害剤を添加した後に、血小板凝集因子を添加することにより血小板を凝集させる工程と、(b) 微生物は通すが、凝集塊は通さないフィルターを用いて濾過することにより、工程(a)により生成された凝集塊を除去する工程と、(c) 工程(b)により得られた濾液を、微生物を通さないフィルターを用いて濾過することにより、微生物を捕集する工程と、(d’) 工程(c)により得られたフィルターを、蛋白質分解酵素及び/又は界面活性剤で処理する工程と、(e) 精製された微生物を検出する工程と、を有することを特徴とする微生物検出方法を提供するものである。
また、本発明は、血小板を含む血液製剤中に場合により存在する微生物の検出方法であって、(a) 前記血液製剤の試料にフィブリン凝集阻害剤を添加した後に、血小板凝集因子を添加することにより血小板を凝集させる工程と、(b) 微生物は通すが、凝集塊は通さないフィルターを用いて濾過することにより、工程(a)により生成された凝集塊を除去する工程と、(d) 工程(b)により得られた濾液を、蛋白質分解酵素及び/又は界面活性剤で処理する工程と、(c’) 工程(d)により得られた処理済溶液を、微生物を通さないフィルターを用いて濾過することにより、微生物を捕集する工程と、(e) 精製された微生物を検出する工程と、を有することを特徴とする微生物検出方法を提供するものである。
また、本発明は、前記血液製剤が血小板製剤である、微生物検出方法を提供するものである。
また、本発明は、前記フィブリン凝集阻害剤がキレート剤である、微生物検出方法を提供するものである。
また、本発明は、前記フィブリン凝集阻害剤が、EDTA又はクエン酸である、微生物検出方法を提供するものである。
また、本発明は、前記血小板凝集因子がトロンビンである、微生物検出方法を提供するものである。
また、本発明は、前記工程(a)中のいずれかの段階において、前記血液製剤の試料を界面活性剤で処理する段階を有する、微生物検出方法を提供するものである。
また、本発明は、前記界面活性剤が、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤及びカチオン系界面活性剤からなる群より選ばれる1以上である、微生物検出方法を提供するものである。
また、本発明は、前記工程(e)の検出方法が、蛍光染色試薬を用いて検出するものである、微生物検出方法を提供するものである。
また、本発明は、前記工程(e)の検出方法が、核酸染色及び/又は生きている微生物が有する活性の測定によるものである、微生物検出方法を提供するものである。
また、本発明は、前記生きている微生物が有する活性が、エステラーゼ活性又は呼吸活性である、微生物検出方法を提供するものである。
また、本発明は、前記生きている微生物が有する活性を、蛍光染色試薬を用いて測定するものである、微生物検出方法を提供するものである。
また、本発明は、前記核酸染色を、蛍光染色試薬を用いて行うものである、微生物検出方法を提供するものである。
また、本発明は、血小板を含む血液製剤中の微生物を精製するためのキットであって、フィブリン凝集阻害剤と、血小板凝集因子と、蛋白質分解酵素及び/又は界面活性剤と、を有することを特徴とする微生物精製キットを提供するものである。
また、本発明は、前記フィブリン凝集阻害剤がEDTAであり、前記血小板凝集因子がトロンビンである、微生物精製キットを提供するものである。
また、本発明は、血小板を含む血液製剤中の微生物を検出するためのキットであって、フィブリン凝集阻害剤と、血小板凝集因子と、蛋白質分解酵素及び/又は界面活性剤と、微生物を検出するための蛍光染色試薬と、を有することを特徴とする微生物検出キットを提供するものである。
また、本発明は、前記フィブリン凝集阻害剤がEDTAであり、前記血小板凝集因子がトロンビンである、微生物検出キットを提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、フィルターの目詰まりが防止され、迅速に血液製剤中に場合により存在する微生物が精製できる。従来フィブリンポリマーによって凝集塊に絡めとられていた可能性のある微生物も精製されるため、より精度の高い微生物の精製が可能となる。細胞溶解処理は含まれないため、生きている微生物に対する影響も小さい。このような効果を有する本発明の精製方法を用いた微生物の検出方法により、微生物を高精度かつ高感度に検出することができる。
したがって、血液センター等における微生物検出費用の削減、安全な血液製剤の供給の効率化が期待できる。
また、本発明に係る微生物精製キットにより、簡便に微生物を精製できる。
また、本発明に係る微生物検出キットにより、簡便に微生物を検出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において用いられる血液製剤とは、血液及び血液から作り出される医療用製剤を意味する。したがって、血液製剤には、全血製剤、赤血球製剤、血小板製剤等が含まれる。このうち、血小板製剤が好ましい。
【0011】
本発明において用いられる血小板凝集因子は、血小板凝集を引き起こす物質であれば、特に限定されるものではない。例えば、トロンビン、コラーゲン、トロンボキサンチン、PAF(血小板活性化因子)、ADP(アデノシン二リン酸)、フォン・ヴィレブラント因子、セロトニン等である。
【0012】
好ましくはトロンビン、コラーゲン、トロンボキサンチンである。血小板凝集作用が強いためである。より好ましくはトロンビンである。汎用されており、使用が簡便であるためである。
【0013】
本発明において用いられるフィブリン凝集阻害剤は、フィブリン凝集、すなわち、不溶性のフィブリンポリマー形成を阻害し、かつ、同時に用いられる血小板凝集因子による血小板凝集を阻害しないものであれば、特に限定されるものではない。例えば、キレート剤、Gly-Pro-Arg配列で開始する短ペプチド又はペプチド誘導体(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75, p3085〜3089(1978年)を参照)、プラスミン等である。
【0014】
好ましくはキレート剤、Gly-Pro-Arg配列で開始する短ペプチド又はペプチド誘導体である。より好ましくはキレート剤である。Gly-Pro-Arg配列で開始する短ペプチド又はペプチド誘導体は、直接フィブリノーゲンに結合することによりフィブリンポリマー形成を阻害するため、血小板凝集過程に対する影響が小さい。キレート剤は、フィブリンが重合する時に必要なカルシウムイオンを捕捉することによりフィブリンポリマー形成を阻害するため、阻害効果が最も高い。
【0015】
キレート剤は、カルシウムイオンを捕捉する効果を有する物質であれば、特に限定されるものではない。例えば、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、HEDTA(ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸)、NTA(ニトリロ三酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、TTHA(トリエチレンテトラミン六酢酸)、クエン酸等である。好ましくはEDTA、クエン酸である。血液製剤中の他の成分に対する影響が低いためである。より好ましくはEDTAである。血小板凝集が促進されるためである。
【0016】
Gly-Pro-Arg配列で開始する短ペプチド又はペプチド誘導体は、フィブリノーゲンに結合するものであれば、特に限定されるものではない。好ましくはGly-Pro-Arg、Gly-Pro-Arg-Pro、Gly-Pro-Arg-Sar(アルギニルサルコシン)であり、より好ましくはGly−Pro−Arg−Pro−Ala−NH2である。フィブリノーゲンへの結合性が強いためである。
【0017】
本発明において用いられる微生物は通すが凝集塊は通さないフィルターの孔径は、5μm〜50μmが好ましい。より好ましくは5μm〜20μmである。
【0018】
本発明において用いられる微生物を通さないフィルターの孔径は、0.1μm〜5μmが好ましい。より好ましくは0.1μm〜1μmである。かかるフィルターとしては、例えば、ポリカーボネート、ポリエステルを基材としたフィルターであり、特開2006−129722で開示されている、厚さが10μm〜500μmのポリマー層と、前記ポリマー層上に厚さが0.1nm〜1μmの金属層とを有する微生物検出用メンブランフィルターがより好ましい。捕集した微生物を検出する際に、様々な波長の蛍光色素の組合せにおいて蛍光バックグラウンドを低く抑えることができ、また、操作性に優れているためである。
【0019】
本発明に係る微生物精製法では、まず工程(a)として、血液製剤の試料にフィブリン凝集阻害剤を添加した後に、血小板凝集因子を添加することにより血小板を凝集させる。
フィブリン凝集阻害剤よりも先に血小板凝集因子を添加すると、もともと血小板製剤に含まれるフィブリノーゲンや、凝集作用により血小板から放出されたフィブリノーゲンがフィブリンへ変化し、不溶性のフィブリンポリマーが形成されてしまう。その後にフィブリン凝集阻害剤を添加しても、既に生成されたフィブリンポリマーは除去できないため、血小板凝集因子よりもフィブリン凝集阻害剤を先に添加する必要がある。
例えば、フィブリンポリマー形成は、フィブリノーゲンが第XIII因子により活性化されてフィブリンへと変化することにより形成されるが、この第XIII因子の活性化はカルシウムイオンが担っている。血液製剤の試料中に先にキレート剤を添加することにより、カルシウムイオンのマスキングが行われる。この結果、その後血小板凝集因子を添加しても、フィブリンポリマーの形成は阻害される。
【0020】
フィブリン凝集阻害剤は、各フィブリン凝集阻害剤に応じた適切な濃度を添加する。例えば、EDTAは最終濃度が0.5%(重量/体積)〜5%(重量/体積)になるように添加することが好ましく、1%(重量/体積)〜3%(重量/体積)がより好ましい。クエン酸は最終濃度が1%(重量/体積)〜20%(重量/体積)になるように添加することが好ましく、2%(重量/体積)〜10%(重量/体積)がより好ましい。また、Gly-Pro-Arg配列で開始する短ペプチド又はペプチド誘導体は、最終濃度が0.1mM以上になるように添加することが好ましく、10mM以上がより好ましい。但し、いずれのフィブリン凝集阻害剤を使用する場合であっても、本発明に係る方法において、フィブリン凝集を阻害し、かつ、血小板凝集を阻害しない濃度であれば、特に限定されるものではない。
【0021】
血液製剤の試料に添加する血小板凝集因子は、各血小板凝集因子に応じた適切な濃度を添加する。例えば、トロンビンは最終濃度が0.5U/ml〜10U/mlになるように添加することが好ましく、1U/ml〜4U/mlがより好ましい。但し、いずれの血小板凝集因子を使用する場合であっても、本発明に係る方法において血小板を凝集させる濃度であれば、特に限定されるものではない。
【0022】
血液製剤の試料に添加するフィブリン凝集阻害剤と血小板凝集因子は、共に中性の緩衝液を用いて調製したものを使用することが好ましい。pH7.0〜pH7.8が好ましく、pH7.4〜pH7.6がより好ましい。血小板凝集反応を阻害しないためである。
【0023】
血小板凝集因子添加後に震盪することにより、血小板を凝集させる。震盪時間は特に限定されないが、好ましくは5分〜30分であり、より好ましくは5分〜20分である。震盪温度は室温〜37℃が好ましい。
【0024】
血小板を凝集させた後、工程(b)として、微生物は通すが凝集塊は通さないフィルターを用いて濾過することにより、工程(a)により生成された凝集塊を除去する。
【0025】
さらに、工程(c)として、工程(b)により得られた濾液を、微生物を通さないフィルターを用いて濾過し、微生物を捕集することにより、微生物を濃縮して精製することができる。
【0026】
前記工程(b)により得られた凝集塊を除去した濾液を、蛋白質分解酵素及び/又は界面活性剤で処理する工程を含んでもよい。該処理により、凝集塊に含まれなかった、若しくは、凝集塊から剥離した、微生物以外の物質のうち、蛋白質は分解され、脂肪球はミセル化される。この結果、より精製度が高くなり、微生物検出の際のバックグラウンドが軽減される。
該蛋白質分解酵素及び/又は界面活性剤で処理する工程は、前記工程(c)の前に行ってもよく、後に行ってもよい。前記工程(c)における濾過性がさらに向上することから、前記工程(c)の前に行うほうが好ましい。
【0027】
具体的には、工程(d)として、工程(b)により得られた濾液を蛋白質分解酵素及び/又は界面活性剤で処理する場合には、蛋白質分解酵素及び/又は界面活性剤を、工程(b)により得られた濾液に添加し、インキュベートすることにより行う。また、工程(d’) として、工程(c)により得られたフィルターを蛋白質分解酵素及び/又は界面活性剤で処理する場合には、蛋白質分解酵素及び/又は界面活性剤で該フィルターを洗浄することにより行う。
蛋白質分解酵素と界面活性剤の両方で処理する場合には、いずれを先に添加しても良いし、同時に添加しても良い。界面活性剤により蛋白質分解酵素反応が抑制されるおそれがある場合には、先に蛋白質分解酵素処理をした後に界面活性剤を添加する方が好ましい。
【0028】
前記工程(a)中のいずれかの段階において、前記血液製剤の試料を界面活性剤で処理してもよい。なお、前記血液製剤の試料への界面活性剤処理は、フィブリン凝集阻害剤添加前にしてもよく、フィブリン凝集阻害剤添加後にしてもよい。さらに、血小板凝集因子添加後にしてもよい。工程(b)における濾過工程の際に、大きな脂肪球に付着する等により、微生物が凝集塊とともにフィルター上に残留してしまうことがあるが、該処理により、微生物は効率よくフィルターを通過できるようになる。
【0029】
本発明において用いられる蛋白質分解酵素は、本発明に係る方法において微生物に影響を与えない物質であれば、特に限定されるものではない。例えば、トリプシン、キモトリプシン、ペプシン、プロテイナーゼK等である。好ましくはトリプシンである。室温かつ中性付近において、十分な活性があるためである。
【0030】
本発明において用いられる界面活性剤は、本発明に係る方法において微生物に影響を与えないものであれば、特に限定されるものではない。例えば、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤である。好ましくはノニオン系界面活性剤であり、より好ましくはPLE(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)、ODE(オレイン酸エタノールアミド)である。
【0031】
蛋白質分解酵素処理は、各蛋白質分解酵素に応じた適切な濃度、pH及び温度でインキュベートすることにより行う。例えば、トリプシンは最終濃度が0.1U/ml〜10U/mlになるように添加することが好ましく、0.5U/ml〜2U/mlがより好ましい。インキュベート温度は室温〜37℃が好ましく、37℃がより好ましい。インキュベート時間は特に限定されないが、好ましくは5分〜90分である。
【0032】
界面活性剤処理は、各界面活性剤に応じた適切な濃度を濾液に添加する。例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテルは最終濃度が0.1%(重量/体積)〜4%(重量/体積)になるように添加することが好ましい。インキュベート温度は特に限定されないが、室温以下である方が好ましい。微生物に対する影響が抑えられるためである。インキュベート時間も特に限定されないが、好ましくは0.5分〜90分である。
【0033】
本発明に係る微生物精製方法を用いて、血小板を含む血液製剤中に存在する微生物を高精度かつ高感度に検出することができる。該微生物を検出する方法は、特に限定されるものではない。例えば、核酸染色や、生きている微生物が有する活性の測定、抗体による免疫染色がある。生きている微生物を精度よく検出することができるため、生きている微生物が有する活性の測定が好ましい。このような活性には、例えば、エステラーゼ活性や呼吸活性がある。
【0034】
また、いずれの検出方法を用いて検出する場合でも、蛍光染色試薬を用いて検出する方法が好ましい。検出感度が高いためである。本発明において用いられる蛍光染色試薬は、蛍光物質のみならず、無蛍光物質であって、微生物が有する酵素や微生物の行う種々の生命活動による化学反応の結果、蛍光物質となる物質も含まれる。
【0035】
核酸染色に用いる蛍光染色試薬には、ヘキスト33342やDAPI (4',6 -diamidino -2 -phenylindole)等がある。エステラーゼ活性測定に用いる蛍光染色試薬には、CFDA(carboxy fluorescein diacetate)やカルセインAMエステル等がある。呼吸活性測定に用いる蛍光染色試薬には、CTC(5 -Cyano -2,3 -ditolyl -2H -tetrazolium chloride)等がある。
【0036】
核酸染色では血小板は染色されないが、死んだ微生物も生きている微生物と同様に染色される。一方、エステラーゼ活性測定では、死んだ微生物は検出されないが、血小板もエステラーゼ活性を持つ上に、サイズ/形状等が微生物とほぼ同等であるため、凝集されなかった血小板と微生物との識別が困難である。このため、生きている微生物の検出には、核酸染色とエステラーゼ活性測定を併用することが好ましい。
【0037】
例えば、DAPI染色とCFDAを基質としたエステラーゼ活性測定を併用することができる。
まず、DAPIをフィルター上に捕集された微生物に取り込ませ、核酸を染色する。DAPIにより、微生物は染色されるが、血小板は染色されない。次に、CFDAを微生物に取り込ませ、微生物内のエステラーゼ活性によりCFDAが分解され、蛍光を発する。微生物だけではなく血小板もこの蛍光を発する。
その後、青色励起光を照射してフィルター全面をスキャンしながら、緑色の蛍光を発する微生物様の形状の蛍光点を探索する。続いて、探索した微生物様の蛍光点にUV励起光を照射し、核酸染色性を確認する。ここで、陽性判定であれば微生物であり、陰性判定であれば血小板である。なお、青色励起光とUV励起光の照射順序は逆にしても検出可能である。
【0038】
ただし、本発明に係る微生物精製方法を用いると、精製される微生物にはほぼ全ての血小板が効率よく除去されているため、エステラーゼ活性測定のみでも生きている微生物を高精度に検出することが可能となる。
【0039】
検出装置は、蛍光顕微鏡等の様々な装置を用いることができるが、異なる波長の蛍光染色像を簡便に得ることができるため、WO2003/008634で開示された検出方法を採用したマイクロファインダーが、より好ましい。
【0040】
また、本発明に係る微生物精製キットにより、血小板を含む血液製剤の試料に、キットのフィブリン凝集阻害剤、血小板凝集因子、蛋白質分解酵素及び/又は界面活性剤を、順次添加するだけで、簡便に微生物を精製することが可能となる。
【0041】
同様に、本発明に係る微生物検出キットにより、血小板を含む血液製剤の試料に、キットのフィブリン凝集阻害剤、血小板凝集因子、蛋白質分解酵素及び/又は界面活性剤、蛍光染色試薬を、順次添加するだけで、簡便に微生物を検出することが可能となる。
【0042】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0043】
血小板製剤3.5mlと10%(重量/体積)PLEリン酸緩衝液(pH7.6)2mlを50ml容の遠沈管にとり、試料溶液とした。該試料溶液に、18.6%(重量/体積)EDTAリン酸緩衝液(pH7.6)1mlを添加し、良く攪拌した。次に、5U/mlのトロンビン(Sigma社製 T8885-10VL)リン酸緩衝溶液(pH7.6)5mlを添加し、5分間震盪して血小板を凝集させた後、孔径10μmのフィルターを用いて濾過した。
【0044】
上記濾液に、Tris-HCl緩衝液(10mM、pH7.6)5mlを加えてよく攪拌した後、25U/mlのトリプシン(Difco Laboratories社製 Trypsin Bacto)Tris-HCl緩衝溶液(10mM、pH7.6)0.5mlを添加し、37℃で15分間インキュベートを行った。その後、孔径0.4μmのフィルターを用いて濾過し、フィルター上の残留物を超純水で洗浄した。
【実施例2】
【0045】
血小板製剤3.5mlを50ml容の遠沈管にとり、試料溶液とした。該試料溶液に、7.2%(重量/体積)クエン酸ナトリウム溶液(pH7.0)8.5mlを添加し、良く攪拌した。次に、5U/mlのトロンビン(Sigma社製 T8885-10VL)リン酸緩衝溶液(pH7.6)5mlを添加し、5分間震盪して血小板を凝集させた後、孔径10μmのフィルターを用いて濾過した。
【0046】
上記濾液に、10%(重量/体積)ODEリン酸緩衝液(pH7.6)10mlと3U/mlのアルカラーゼ(Calbiochem Novabiochem Novagen社製)リン酸緩衝溶液(pH7.6)5mlを添加し、37℃で60分間インキュベートを行った。その後、孔径0.4μmのフィルターを用いて濾過し、フィルター上の残留物を超純水で洗浄した。
【0047】
(比較例1)
18.6%EDTAリン酸緩衝液(pH7.6)1mlの代わりに10%(重量/体積)PLEリン酸緩衝液(pH7.6)1mlを添加した以外は、実施例1と同様にして残留物を得た。
【0048】
図1は、フィブリンポリマー生成阻害因子存在下と非存在下における、血小板製剤の血小板凝集因子添加により生成された凝集塊をそれぞれ示したものである。フィブリンポリマー生成阻害因子がないと、広範囲にフィブリンポリマーが形成されていることがわかる。
【0049】
図2〜図8は、実施例1及び2と比較例1における、各工程で得られた溶液の粒度分布図である。横軸は溶液中に含まれる粒子の直径、縦軸は検出強度であり、図2は処理前の血小板製剤の試料溶液の粒度分布図である。
【0050】
図3、4及び5は、トロンビン処理後孔径10μmのフィルターに濾過して血小板凝集塊を除いた濾液の粒度分布図であり、図3は比較例1、図4は実施例1、図5は実施例2のものである。図3には図2と同様に大きな粒子が多く存在しているが、図4及び5では大きな粒子が明らかに減少し、図2では検出できなかった小さい粒子の全体に占める割合が増えていることがわかる。これは、比較例1では、血小板凝集塊濾過後も、フィブリンポリマー形成が進行しているのに対し、実施例1及び2ではフィブリンポリマーが形成されていないためと考えられる。
【0051】
図6、7及び8は、トリプシン又はアルカラーゼ処理後の溶液の粒度分布図であり、図6は比較例1、図7は実施例1、図8は実施例2のものである。図7のみ縦軸が容積になっているのは、他の溶液と比較して非常に濃度が薄いため、検出感度を上げたためである。図7及び8ではシングルピークであり、小さい粒子径のみが存在しているのに対し、図6では図2及び3と同様、大きな粒子が多く存在していることがわかる。これは、大きな粒子が不溶性のフィブリンポリマーによる凝集塊であるため、蛋白質分解酵素では分解できず、そのまま残留しているためと考えられる。
【0052】
実施例1及び2と比較例1の結果から、本発明のようにフィブリンポリマー生成阻害因子を添加した場合には、添加しなかった場合に比して、凝集塊濾過後の濾液に大きな粒子が顕著に減少しており、フィルターの目詰まりが解消されることが明らかである。蛋白質分解酵素及び/又は界面活性剤で処理をすることにより、ほぼ完全に大きな粒子がなくなり、さらにフィルターの濾過性は向上する。したがって、微生物を通さない孔径の小さいフィルター上の残留物から、微生物以外の不要物の大部分が効率よく除去される結果、微生物検出時のバックグラウンドが下がり、検出精度及び感度が高くなる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明に係る微生物の検出方法は、血液製剤の病原性検査の分野で利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】フィブリンポリマー生成阻害因子存在下と非存在下における、血小板製剤の血小板凝集因子添加により生成された凝集塊を示す。
【図2】血小板凝集因子添加前の血小板製剤の試料溶液の粒度分布図を示す。
【図3】フィブリンポリマー生成阻害因子非存在下における、トロンビン処理後孔径10μmのフィルターに濾過して血小板凝集塊を除いた濾液の粒度分布図を示す。
【図4】EDTA存在下における、トロンビン処理後孔径10μmのフィルターに濾過して血小板凝集塊を除いた濾液の粒度分布図を示す。
【図5】クエン酸存在下における、トロンビン処理後孔径10μmフィルターに濾過して血小板凝集塊を除いた濾液の粒度分布図を示す。
【図6】フィブリンポリマー生成阻害因子非存在下における、トロンビン処理後孔径10μmのフィルターに濾過して血小板凝集塊を除いた濾液を、トリプシン処理した溶液の粒度分布図を示す。
【図7】EDTA存在下における、トロンビン処理後孔径10μmのフィルターに濾過して血小板凝集塊を除いた濾液を、トリプシン処理した溶液の粒度分布図を示す。
【図8】クエン酸存在下における、トロンビン処理後孔径10μmのフィルターに濾過して血小板凝集塊を除いた濾液を、アルカラーゼ処理した溶液の粒度分布図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血小板を含む血液製剤中に場合により存在する微生物の精製方法であって、
(a) 前記血液製剤の試料にフィブリン凝集阻害剤を添加した後に、血小板凝集因子を添加することにより血小板を凝集させる工程と、
(b) 微生物は通すが、凝集塊は通さないフィルターを用いて濾過することにより、工程(a)により生成された凝集塊を除去する工程と、
を有することを特徴とする微生物精製方法。
【請求項2】
血小板を含む血液製剤中に場合により存在する微生物の精製方法であって、
(a) 前記血液製剤の試料にフィブリン凝集阻害剤を添加した後に、血小板凝集因子を添加することにより血小板を凝集させる工程と、
(b) 微生物は通すが、凝集塊は通さないフィルターを用いて濾過することにより、工程(a)により生成された凝集塊を除去する工程と、
(c) 工程(b)により得られた濾液を、微生物を通さないフィルターを用いて濾過することにより、微生物を捕集する工程と、
を有することを特徴とする微生物精製方法。
【請求項3】
血小板を含む血液製剤中に場合により存在する微生物の精製方法であって、
(a) 前記血液製剤の試料にフィブリン凝集阻害剤を添加した後に、血小板凝集因子を添加することにより血小板を凝集させる工程と、
(b) 微生物は通すが、凝集塊は通さないフィルターを用いて濾過することにより、工程(a)により生成された凝集塊を除去する工程と、
(d) 工程(b)により得られた濾液を、蛋白質分解酵素及び/又は界面活性剤で処理する工程と、
(c’) 工程(d)により得られた処理済溶液を、微生物を通さないフィルターを用いて濾過することにより、微生物を捕集する工程と、
を有することを特徴とする微生物精製方法。
【請求項4】
血小板を含む血液製剤中に場合により存在する微生物の精製方法であって、
(a) 前記血液製剤の試料にフィブリン凝集阻害剤を添加した後に、血小板凝集因子を添加することにより血小板を凝集させる工程と、
(b) 微生物は通すが、凝集塊は通さないフィルターを用いて濾過することにより、工程(a)により生成された凝集塊を除去する工程と、
(c) 工程(b)により得られた濾液を、微生物を通さないフィルターを用いて濾過することにより、微生物を捕集する工程と、
(d’) 工程(c)により得られたフィルターを、蛋白質分解酵素及び/又は界面活性剤で処理する工程と、
を有することを特徴とする微生物精製方法。
【請求項5】
前記血液製剤が血小板製剤である、請求項1〜4のいずれか記載の微生物精製方法。
【請求項6】
前記フィブリン凝集阻害剤がキレート剤である、請求項1〜5のいずれか記載の微生物精製方法。
【請求項7】
前記フィブリン凝集阻害剤が、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)又はクエン酸である、請求項1〜5のいずれか記載の微生物精製方法。
【請求項8】
前記血小板凝集因子がトロンビンである、請求項1〜7のいずれか記載の微生物精製方法。
【請求項9】
前記工程(a)中のいずれかの段階において、前記血液製剤の試料を界面活性剤で処理する段階を有する、請求項1〜8のいずれか記載の微生物精製方法。
【請求項10】
前記界面活性剤が、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤及びカチオン系界面活性剤からなる群より選ばれる1以上である、請求項3〜9のいずれか記載の微生物精製方法。
【請求項11】
血小板を含む血液製剤中に場合により存在する微生物の検出方法であって、
(a) 前記血液製剤の試料にフィブリン凝集阻害剤を添加した後に、血小板凝集因子を添加することにより血小板を凝集させる工程と、
(b) 微生物は通すが、凝集塊は通さないフィルターを用いて濾過することにより、工程(a)により生成された凝集塊を除去する工程と、
(e) 精製された微生物を検出する工程と、
を有することを特徴とする微生物検出方法。
【請求項12】
血小板を含む血液製剤中に場合により存在する微生物の検出方法であって、
(a) 前記血液製剤の試料にフィブリン凝集阻害剤を添加した後に、血小板凝集因子を添加することにより血小板を凝集させる工程と、
(b) 微生物は通すが、凝集塊は通さないフィルターを用いて濾過することにより、工程(a)により生成された凝集塊を除去する工程と、
(c) 工程(b)により得られた濾液を、微生物を通さないフィルターを用いて濾過することにより、微生物を捕集する工程と、
(e) 精製された微生物を検出する工程と、
を有することを特徴とする微生物検出方法。
【請求項13】
血小板を含む血液製剤中に場合により存在する微生物の検出方法であって、
(a) 前記血液製剤の試料にフィブリン凝集阻害剤を添加した後に、血小板凝集因子を添加することにより血小板を凝集させる工程と、
(b) 微生物は通すが、凝集塊は通さないフィルターを用いて濾過することにより、工程(a)により生成された凝集塊を除去する工程と、
(d) 工程(b)により得られた濾液を、蛋白質分解酵素及び/又は界面活性剤で処理する工程と、
(e) 精製された微生物を検出する工程と、
を有することを特徴とする微生物検出方法。
【請求項14】
血小板を含む血液製剤中に場合により存在する微生物の検出方法であって、
(a) 前記血液製剤の試料にフィブリン凝集阻害剤を添加した後に、血小板凝集因子を添加することにより血小板を凝集させる工程と、
(b) 微生物は通すが、凝集塊は通さないフィルターを用いて濾過することにより、工程(a)により生成された凝集塊を除去する工程と、
(c) 工程(b)により得られた濾液を、微生物を通さないフィルターを用いて濾過することにより、微生物を捕集する工程と、
(d’) 工程(c)により得られたフィルターを、蛋白質分解酵素及び/又は界面活性剤で処理する工程と、
(e) 精製された微生物を検出する工程と、
を有することを特徴とする微生物検出方法。
【請求項15】
血小板を含む血液製剤中に場合により存在する微生物の検出方法であって、
(a) 前記血液製剤の試料にフィブリン凝集阻害剤を添加した後に、血小板凝集因子を添加することにより血小板を凝集させる工程と、
(b) 微生物は通すが、凝集塊は通さないフィルターを用いて濾過することにより、工程(a)により生成された凝集塊を除去する工程と、
(d) 工程(b)により得られた濾液を、蛋白質分解酵素及び/又は界面活性剤で処理する工程と、
(c’) 工程(d)により得られた処理済溶液を、微生物を通さないフィルターを用いて濾過することにより、微生物を捕集する工程と、
(e) 精製された微生物を検出する工程と、
を有することを特徴とする微生物検出方法。
【請求項16】
前記血液製剤が血小板製剤である、請求項11〜15のいずれか記載の微生物検出方法。
【請求項17】
前記フィブリン凝集阻害剤がキレート剤である、請求項11〜16のいずれか記載の微生物検出方法。
【請求項18】
前記フィブリン凝集阻害剤が、EDTA又はクエン酸である、請求項11〜16のいずれか記載の微生物検出方法。
【請求項19】
前記血小板凝集因子がトロンビンである、請求項11〜18のいずれか記載の微生物検出方法。
【請求項20】
前記工程(a)中のいずれかの段階において、前記血液製剤の試料を界面活性剤で処理する段階を有する、請求項11〜19のいずれか記載の微生物検出方法。
【請求項21】
前記界面活性剤が、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤及びカチオン系界面活性剤からなる群より選ばれる1以上である、請求項11〜20のいずれか記載の微生物検出方法。
【請求項22】
前記工程(e)の検出方法が、蛍光染色試薬を用いて検出するものである、請求項11〜21のいずれか記載の微生物検出方法。
【請求項23】
前記工程(e)の検出方法が、核酸染色及び/又は生きている微生物が有する活性の測定によるものである、請求項11〜22のいずれか記載の微生物検出方法。
【請求項24】
前記生きている微生物が有する活性が、エステラーゼ活性又は呼吸活性である、請求項23記載の微生物検出方法。
【請求項25】
前記生きている微生物が有する活性を、蛍光染色試薬を用いて測定するものである、請求項23又は24記載の微生物検出方法。
【請求項26】
前記核酸染色を、蛍光染色試薬を用いて行うものである、請求項23〜25のいずれか記載の微生物検出方法。
【請求項27】
血小板を含む血液製剤中の微生物を精製するためのキットであって、フィブリン凝集阻害剤と、血小板凝集因子と、蛋白質分解酵素及び/又は界面活性剤と、を有することを特徴とする微生物精製キット。
【請求項28】
前記フィブリン凝集阻害剤がEDTAであり、前記血小板凝集因子がトロンビンである、請求項27記載の微生物精製キット。
【請求項29】
血小板を含む血液製剤中の微生物を検出するためのキットであって、フィブリン凝集阻害剤と、血小板凝集因子と、蛋白質分解酵素及び/又は界面活性剤と、微生物を検出するための蛍光染色試薬と、を有することを特徴とする微生物検出キット。
【請求項30】
前記フィブリン凝集阻害剤がEDTAであり、前記血小板凝集因子がトロンビンである、請求項29記載の微生物検出キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−118899(P2008−118899A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−305702(P2006−305702)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)
【Fターム(参考)】