説明

微粉体の散布方法および装置

【課題】被散布体であるガラス基板に対し、所望の領域のみに、微粉体を付着させるようにした微粉体の散布方法および装置を提供すること。
【解決手段】例えばインクジェット方式等を利用し、揮発性の液体等の付着媒体を用いて、微粉体を付着させる付着領域を被散布体上の所望の領域に形成し、被散布体に散布された微粉体のうち、非付着領域内に配置された微粉体を除去することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は微粉体の散布方法および装置に関し、より具体的には、液晶表示パネル用ガラス基板に対し、所望の領域のみにスペーサとしての微粉体(以下、スペーサという)を付着させるようにしたスペーサの散布方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)の表示面(液晶表示パネル)は、概略、図12に示すように構成されている。図12において、41および41’は偏光板、42および43はガラス基板、44および45は透明電極、46および47は配向膜、48はカラーフィルタ、49は液晶、50はスペーサである。
【0003】
カラーフィルタ48は図13に示すように、R,G,Bの三種類の区域が交互に存在し、各区域はブラックマトリクス51によって区切られている。通常、上記各区域の寸法は、一例として、縦300μm、横80μm程度であり、ブラックマトリクス51の幅は20μm程度である。
【0004】
また、スペーサ50は配向膜46および47間のギャップを均一に維持するための球形の粒子で、通常、その直径は2〜6μm程度であり、配向処理されたガラス基板上に散布される。ここで、配向処理とはガラス基板に透明電極,配向膜などを設けることで、いわば、ガラス基板に必要な処理を施すことである。
【0005】
ところで、上述のスペーサ50は、通常は、ノズルからキャリアガスとともに基板上に全面的に散布される。このため、スペーサ50は図14に示すように、カラーフィルタ48のR,G,Bの各区域の内部にも散布される。その結果、発色の明るさが減少したり、発色ムラが発生したりするという問題があった。
【0006】
これに対しては、例えば特許文献1に示されているように、配向膜上の表示画素とならない部分(具体的には、上述のブラックマトリクス部分等)に樹脂膜を形成し、露出した配向膜に帯電処理を施した後、スペーサを配向膜および未硬化の樹脂膜面に散布して、熱または光処理によって樹脂膜を硬化させることにより、樹脂膜面に配置されたスペーサを固着する(未固着のスペーサは除去する)方法が提案されている。
【0007】
【特許文献1】特開平11−14955号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、この方法では、工程が複雑であるばかりでなく、その工程中に樹脂膜を形成する工程,この樹脂膜に露光・現像等の処理(特に、現像処理は湿式処理である)を施す工程等のウェットプロセスを含む点で、処理の管理・廃棄物の処理等、手間のかかる方法であるという問題があった。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、前記従来技術に基づく問題点を解消し、被散布体であるガラス基板等に対し、所望の領域のみに、スペーサを付着させるようにした微粉体(スペーサ)の散布方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明では、
微粉体を被散布体上に均一に散布する散布工程と、
微粉体を前記被散布体上に付着させる付着領域を該被散布体の所望の領域に形成する工程とを有する微粉体の散布方法であって、
非付着領域に配置された微粉体を除去して前記付着領域にのみ粉体を配置することを特徴とする微粉体の散布方法を提供する。
【0011】
また、前記被散布体上に前記付着領域を形成した後に、前記被散布体上に微粉体を均一散布することを特徴とする微粉体の散布方法を提供する。
【0012】
さらに、前記被散布体上に微粉体を均一散布した後に、前記被散布体上に前記付着領域を形成することを特徴とする微粉体の散布方法を提供する。
【0013】
また、前記付着領域の形成は、付着媒体として液体を使用し、
前記液体を微少液滴化し、該微少液滴を飛翔させて前記被散布体上に選択的に配置することで行うことが好ましい。
【0014】
あるいは、前記付着領域の形成は、付着媒体として液体を使用し、
前記液体を前記被散布体上に選択的に塗布して液層を形成することで行うことが好ましい。
【0015】
また、前記付着媒体である前記液体として揮発性の液体を使用することを特徴とする微粉体の散布方法を提供する。
ここで、揮発性の液体は、水あるいはエタノールに代表されるアルコール類を含む有機溶媒であるのが好ましい。
【0016】
また、前記付着媒体として、熱硬化性材料(熱硬化性樹脂等)を使用することを特徴とする微粉体の散布方法を提供する。
【0017】
また、前記付着領域の形成および微粉体の散布が完了した前記被散布体に加熱処理を施すことを特徴とする微粉体の散布方法を提供する。
【0018】
さらに、前記付着媒体である前記液体として不揮発性の液体を使用することを特徴とする微粉体の散布方法を提供する。
ここで、揮発性の液体は液晶または液晶表示装置に用いる液晶に混入される不揮発性の溶媒であるのが好ましい。
【0019】
また、前記付着媒体として、紫外線硬化性材料(紫外線硬化性樹脂等)を使用することを特徴とする微粉体の散布方法を提供する。
【0020】
また、前記付着領域の形成および微粉体の散布が完了した前記被散布体に紫外線照射処理を施すことを特徴とする微粉体の散布方法を提供する。
【0021】
ここで、本発明に係る微粉体の散布装置として、
被散布体を支持する支持手段と、微粉体を前記被散布体上に散布する散布手段とを備える微粉体の散布装置であって、
微粉体を前記被散布体表面に付着させる流動性の付着媒体を使用して、前記被散布体上の所望の領域に付着領域を形成する付着領域形成手段と、
非付着領域に配置された微粉体を前記被散布体上から除去する微粉体の除去手段を備えることを特徴とする微粉体の散布装置を提供する。
【0022】
また、前記付着領域形成手段は、微少液滴化した前記付着媒体を前記被散布体上の所望の領域に配置することにより前記付着領域を形成することを特徴とする微粉体の散布装置を提供する。
【0023】
あるいは、前記付着領域形成手段は、前記被散布体上の所望の領域に前記付着媒体を塗布して液層を形成することにより前記付着領域を形成することを特徴とする微粉体の散布装置を提供する。
【0024】
さらに、前記付着領域の形成および微粉体の散布が完了した前記被散布体に加熱処理を施す加熱手段を備えることを特徴とする微粉体の散布装置を提供する。
【0025】
また、前記付着領域の形成および微粉体の散布が完了した前記被散布体に紫外線照射処理を施す紫外線照射手段を備えることを特徴とする微粉体の散布装置を提供する。
【0026】
ここで、所望の領域とは、被散布体上の領域のうち、微粉体を配置する目的で特定された領域である。また、付着領域とは、微粉体を被散布体上に付着させる付着力を媒介する付着媒体を前記所望の領域に配置して形成されるものである。また、付着領域に対して非付着領域は、付着媒体が配置されない被散布体上の領域である。
例えば、被散布体が液晶表示パネル用ガラス基板であるとき、所望の領域の一例としては、カラーフィルタのブラックマトリクス領域(非表示部)に対応するガラス基板上の領域を挙げることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、液晶表示パネル用ガラス基板に対し、所望の領域のみに、スペーサを付着させるようにした微粉体(スペーサ)の散布方法および装置を実現できるという顕著な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明を詳細に説明する。
以下に説明する実施形態では、所望の領域として液晶表示パネル用ガラス基板(以下、単にガラス基板という)上のブラックマトリクスに対応する領域から、例えば平行線状のパターン(詳しくは図3を参照)を選択して、これを所望の領域とする。
【0029】
図1は、本発明に係る第1の実施形態の微粉体(以下、単にスペーサという)の散布方法の要点を示す処理フロー図である。
図1に示すように、本発明に係るスペーサの散布方法は、最初にガラス基板等の被散布体表面にスペーサを付着させるための付着力を媒介する付着媒体を微少液滴化して、被散布体上の所望の領域に配置し、微粉体を被散布体上に付着させる付着領域を被散布体上に形成する(ステップ12)。
なお、本実施形態では、上記付着媒体として揮発性の液体、特に不純物が少ない水(以下、単に水と記す)を選択して使用する。
【0030】
次に、付着媒体が配置され付着領域が形成された被散布体上にスペーサの均一散布(ステップ14)を行う。ここで、本発明に係るスペーサの散布方法または散布装置において用いられるスペーサは、樹脂やガラス等からなる一般的なスペーサが使用可能であり、特別な特性を有するスペーサである必要はない。但し、その用途から粒径が2〜10μm程度であるものが好ましい。また、粒径均一性が良好であるものが好ましい。
【0031】
上述した二つのステップを施された被散布体は、次に、加熱処理(ステップ16)される。ここで行われる加熱処理は、使用される付着媒体の種類によって加熱時間または加熱温度等の処理条件を適宜設定すればよい。
【0032】
次に、所望の領域に配置された付着媒体によって被散布体表面に付着されたスペーサを残して、上述した付着領域以外の非付着領域に散布されたスペーサを、後述するスペーサ除去手段を用いて上記被散布体表面から除去する(ステップ18)。
【0033】
図2は、本発明の第1の実施形態に係るスペーサの散布装置20の要部構成を示す模式図である。図2に示すように、本実施形態に係るスペーサの散布装置20は、搬送台22,付着領域形成手段24,スペーサ散布手段26,加熱手段28,およびスペーサ除去手段30を備えている。なお、これらの各部分は、クリーンルーム32内に設けられる。
【0034】
被散布体(ガラス基板22a)の支持手段である搬送台22は、ガラス基板22aを支持する位置決め機構を備えており、さらに、上述した各ステップが行われる位置までガラス基板22aを矢印Aで示すように搬送する搬送機構であるコンベア22bを備えている。
【0035】
本実施形態の付着領域形成手段24は、複数のインクジェットノズルを有する、例えばラインヘッド等の公知のインクジェットヘッド24aを備えており、付着媒体を微少液滴化し、飛翔させて、ガラス基板22a表面の上記所望の領域に配置することにより、スペーサをガラス基板22a上に付着させる付着領域を形成することができる。付着領域形成手段24は、ガラス基板22aの上面に対して三次元的に移動可能に構成される。図2の矢印Bは付着領域形成手段24の移動方向の一部が図示されている。
【0036】
ここでの、上記所望の領域は、少なくともカラーフィルタの非表示領域であるブラックマトリクスに対応する領域(つまり、カラーフィルタのR,G,B各領域を除いた領域に対応する領域)である。図3には、カラーフィルタのブラックマトリクス領域から平行線状のパターンを選択して、斜線の領域52が示されている。インクジェットヘッド24aがガラス基板22a上を走査することによって、図3中のブラックマトリクス51上の一部に斜線で示された平行線状のパターンを有する領域52に対応する、ガラス基板22a(図2参照)上の領域である所望の領域に付着媒体を配置する。それにより、平行線状のパターンを有する付着領域が形成される。
【0037】
なお、上記平行線はスペーサの強度等の種々の条件を加味して適当な間隔で設ければよい。また、上述した所望の領域は平行線状のパターンを有するものであるが、これに限定されず、例えば格子状のパターンを有するものでもよい。
【0038】
ここで、本実施形態では付着媒体として揮発性の液体から特に水を選択して使用するが、同様に揮発性の液体である、メタノールやエタノールに代表されるアルコール類またはその他の有機溶媒も使用可能である。ただし、周囲への環境汚染等の理由から水を使用することは好ましい。
また、上述した付着領域形成手段24は、種々のインクジェット方式が利用可能であり特に制限はない。
【0039】
付着領域形成手段24の次に設けられるスペーサ散布手段26は、スペーサを含んだ気流を吐出(放出)して、搬送台22上のガラス基板22a表面上にスペーサを散布する散布ノズル管26aおよびその駆動機構26bを備えている。駆動機構26bは、散布ノズル管26aを3次元的に揺動(その一部が矢印Cで示されている)することができる。
【0040】
加熱手段28の加熱装置28aは、搬送台22の途中部分に搬送台22を覆って設けられており、搬送台22で搬送されるガラス基板22aに対して加熱処理を行い、付着媒体として使用される揮発性の液体(本実施形態では水)を蒸発させることができる。
【0041】
スペーサ除去手段30のスペーサ除去装置30aは、ガラス基板22a表面の1辺に平行に、矢印D方向に往復動可能である。このスペーサ除去装置30aは、上述のガラス基板22a表面の1辺に沿うスリット状のエアー噴き出し口30bと、このエアー噴き出し口30bに沿う吸い込み口30cとを備えている。
【0042】
上記スペーサ除去手段30のスペーサ除去装置30aの機能は、図2中で左から右方向へ移動する際に、エアー噴き出し口30bから噴き出す空気流によりガラス基板22a表面上の付着領域外に散布されたスペーサをガラス基板22a表面から剥離させ、その直後に、吸い込み口30cにより剥離したスペーサを吸引・除去することにある。このため、例えば、エアー噴き出し口30bから噴き出す空気流の方向は進行(移動)方向と逆向きとし、吸い込み口30cは進行(移動)方向に向けて開口させておくことが好ましい。
【0043】
なお、スペーサ除去手段30aは、その退行時(図2中で右から左方向へ移動する際)には、特に動作させる必要はないが、スペーサの除去を徹底するためには、この際にも、吸い込み口30cによる吸引を行ってもよく、また、エアー噴き出し口30b,吸い込み口30cの両方を吸引に用いるように構成してもよい。
【0044】
上述したように構成された本実施形態に係るスペーサの散布装置20は、概略、以下のように動作する。
【0045】
搬送台22上に載置され、アースされたガラス基板22aが、付着領域形成手段24の作業可能位置まで搬送される。ガラス基板22a上に格子状に存在するブラックマトリクスに対応する領域から、平行線状にパターンを有する領域を選択し(すなわち所望の領域)、その選択した領域内に付着媒体(本実施形態では水を使用)が配置されるようにインクジェットヘッド24aから吐出した付着媒体は、ガラス基板22a上に配置され付着領域が形成される。
インクジェットヘッド24aがガラス基板22a上を走査して、上述したようにガラス基板22a表面に平行線状パターンを有する付着領域を形成する(ステップ12)。
【0046】
上述の工程でスペーサを付着させる付着領域が形成されたガラス基板22aは、搬送台22によって、次工程であるスペーサ散布手段26の動作位置まで搬送される。搬送されたガラス基板22aは位置決め固定される。
ここでは、散布ノズル管26aからスペーサを含んだ気流を吐出(放出)させて、ガラス基板22a表面上の予め設定されている所定の範囲内に、均一なスペーサ散布を行う(ステップ14)。
【0047】
スペーサの均一散布が終了したガラス基板22aは、加熱処理手段28の動作位置に搬送され加熱処理される(ステップ16)。
スペーサは、ガラス基板22a表面に付着媒体である液体に起因する液架橋力等の付着力によって付着している。付着媒体が揮発性の液体の場合、その全てが蒸発すると、付着媒体によってガラス基板22a表面に付着しているスペーサが付着力を失い、後述するスペーサ除去手段30により除去されるために好ましくない。従って、付着媒体が全て蒸発することがなく、スペーサが除去されないために必要な付着力を維持できる程度の付着媒体が残留するように加熱時の温度および加熱時間を適宜選択する必要がある。上記温度および加熱時間は、付着媒体の種類、付着媒体の吐出量等の種々の条件を考慮して実験的に決定するとよい。ただし、上記温度は、液晶封入用のシール材が固化しない程度の温度である100℃以下が好ましい。
【0048】
次に、ガラス基盤22aスペーサ除去手段30のスペーサ除去装置30aの動作位置に搬送される。
付着媒体である揮発性の液体上に散布されたスペーサは主に液架橋力により付着していることは上述したとおりである。一方で、付着媒体上に散布されなかったスペーサは、主にファンデルワールス(van der Waals )力によってガラス基板22a表面に付着している。一般的に、液架橋力はファンデルワールス力よりも大きく、本実施形態におけるスペーサ除去手段30では、この二つの付着力の大きさの差を利用することで付着領域にのみスペーサを残し、非付着領域に配置されたスペーサを除去することができる(ステップ18)。
【0049】
ここでは、エアーナイフとも呼ばれる基板幅方向に沿ったスリット状の高速・中圧空気流(一種のカーテン状の流れ)を用いることで、ガラス基板22a上の付着領域外に散布されたスペーサを掻き取る方式を用いている。また、こうして掻き取ったスペーサは、他に移動しないように、直ちに捕集することが必要であるため、上述のエアーナイフの直後に同じく基板幅方向に沿ったスリット状の吸入手段を配置している。
【0050】
すなわち、前述のエアー噴き出し口30bと吸い込み口30cである。ここでのエアー噴き出し口30bからのエアー噴き出し圧力並びに流量等は、事前の実験等により最適値を決定して用いることが好ましい。また、吸い込み口30cからの吸い込み能力についても同様の配慮が必要である。
【0051】
なお、上述のスペーサ除去装置30aにより基板上から除去・回収したスペーサについては、これが高価な材料であることから、予め再利用可能とするように扱うことが好ましい。再利用時には、洗浄・再分級等の、スペーサ製造時に行う操作と同様の操作を行う必要性が高い。
【0052】
本実施形態に係るスペーサの散布装置20によれば、このような処理を行うことにより、所望の領域以外の領域にスペーサを存在させないようにできるため、優れた光学特性を有するLCDに用い得るガラス基盤が得られる。但し、本発明はこれに限定されるものではない。
【0053】
例えば、上述した本発明の第1の実施形態では付着媒体として揮発性の液体から特に水を選択して使用したが、付着媒体として熱硬化性樹脂を使用することもできる。この場合においても上述したスペーサの散布装置が好適に使用可能である。
ただし、付着媒体として熱硬化性樹脂を使用した場合は、上述の第1の実施形態におけるステップ16(図1に示される)である加熱処理は、熱硬化性樹脂を加熱し硬化させることでスペーサをガラス基板22a上に固着させる加熱固着処理のために行われる。
ここで、上記熱硬化性樹脂として、種々公知のものが使用可能である。
【0054】
また、第2の実施形態として、付着媒体に不揮発性の液体である液晶や、液晶表示装置に用いる液晶に混入される不揮発性の溶媒を使用した本発明のスペーサの散布方法および散布装置について説明する。上記不揮発性の液体は、スペーサの散布が終了した後に、基板上に残留しても問題がないものが好ましい。
【0055】
図4は、本発明の第2の実施形態のスペーサの散布方法の要点を示す処理フロー図である。本実施形態は、第1の実施形態における加熱処理(ステップ16)の工程を省略して行われるものである。図4に示されるように、先ず付着領域を形成し(ステップ12)、次にスペーサを均一散布(ステップ14)した後に非付着領域に散布されたスペーサの除去(ステップ18)を行う。上記各々のステップは、第1の実施形態で説明した対応するステップと同様の処理を行うものである。
【0056】
次に本実施形態に係るスペーサの散布装置について説明する。
図5は、本実施形態に係るスペーサの散布装置100の要部構成を示す模式図である。図5に示すように本実施形態のスペーサの散布装置100は、基台122,付着領域形成手段124,スペーサ散布手段126,およびスペーサ除去手段130を備える。なお、これらの各部分は、クリーンルーム132内に設けられる。
【0057】
被散布体を支持する支持手段である基台122は、被散布体であるガラス基板122aを支持する位置決め機構を備えた基台本体122bにより、外部から送り込まれるガラス基板122aを所定の位置に支持することができる。
【0058】
付着領域形成手段124,スペーサ散布手段126,およびスペーサ除去手段130は、第1の実施形態で使用されたものと同様の構成および機能を有するものが使用可能である。図5中の矢印Eはインクジェットヘッド124aの移動方向の一部を示しており、矢印Fはスペーサ散布手段126における散布ノズル管126aの揺動方向が示されており、矢印Gはガラス基板と平行な面上で動作するスペーサ除去手段130の動作方向の一部が示されている。
【0059】
基台122に位置決め固定されたガラス基板122a表面を、上述した第1の実施形態同様に、インクジェットヘッド124aが走査して、付着領域を形成する。その後、スペーサ散布手段126によってスペーサが均一散布される。ここで、本実施形態では、第1の実施形態で行った加熱処理を省略し、スペーサ除去手段130が非付着領域に散布されたスペーサを除去する。
以上、本発明のスペーサの散布方法および装置に係る第2の実施形態について説明した。
【0060】
また、本発明の第3の実施形態として、付着媒体に紫外線硬化性樹脂を使用した本発明のスペーサの散布方法および散布装置について説明する。
【0061】
図6には、第3の実施形態に係るスペーサの散布方法の要点を示す処理フロー図が示される。本実施形態は、第1の実施形態に係る処理フロー図中の加熱処理(ステップ16)に代えて、紫外線硬化性樹脂を硬化させてスペーサをガラス基板上に固着させる紫外線照射処理(ステップ16’)を行う本発明に係るスペーサの散布方法である。図6中に示される、付着領域の形成(ステップ12)、スペーサ均一散布(ステップ14)、および非付着領域のスペーサ除去(ステップ18)については第1の実施形態で説明したものと同様のステップである。
【0062】
本実施形態では、先ずガラス基板上に紫外線硬化性樹脂を使用して付着領域を形成し(ステップ12)、次にスペーサを均一に散布し(ステップ14)、紫外線照射処理を行いスペーサをガラス基板上に固着させて(ステップ16’)、非付着領域に散布され基板上に固着されていないスペーサを除去する(ステップ18)ことによりスペーサの散布を行う。
【0063】
図7は、本発明の第3の実施形態に係るスペーサの散布装置120の要部構成を示す模式図である。図7に示すように、本実施形態のスペーサの散布装置120は、基台122,付着領域形成手段124,スペーサ散布手段126,紫外線照射手段128,およびスペーサ除去手段130を備える。なお、これらの各部分は、クリーンルーム132内に設けられる。
【0064】
本実施形態のスペーサの散布装置120は、上述した第2の実施形態のスペーサの散布装置100に紫外線照射手段128である紫外線照射装置128aを加えたものである。紫外線照射装置128aは、ガラス基板122aの上方に設置され、ガラス基板122aに紫外線を照射することにより本実施形態において付着媒体として使用される紫外線硬化性樹脂を硬化させることができる。
【0065】
本実施形態では上述したスペーサの散布装置120を好適に使用して、基台122に位置決め固定されたガラス基板122aの表面を、上述した他の実施形態同様に、インクジェットヘッド124aが走査し、紫外線硬化性樹脂を使用して付着領域を形成する。その後、スペーサ散布手段によってスペーサが均一散布される。
【0066】
ここで、本実施形態では、紫外線照射手段128の紫外線照射装置128aが紫外線照射処理(ステップ16’)を行って紫外線硬化性樹脂を硬化させることで、付着領域を形成する紫外線硬化性樹脂上に散布されたスペーサをガラス基板122a上に固着させる。つまり、ステップ16’ではスペーサの固着処理を行う。その後、スペーサ除去手段130が固着されていないスペーサを除去する。紫外線照射装置128aは、ガラス基板122a上に均一に紫外線を照射可能であることが好ましい。
以上、第3の実施形態に係るスペーサの散布方法および散布装置について説明した。
【0067】
なお、上述した本発明の第1、第2および第3の実施形態において、ガラス基板上に付着媒体を配置して付着領域を形成するためにインクジェットを利用したが、スクリーン印刷を利用して付着領域を形成するようにしてもよい。
【0068】
ここで、さらに別のスペーサの散布方法である第4の実施形態について説明する。
図8は、本発明に係るスペーサの散布方法の第4の実施形態の要点を示す処理フロー図である。本実施形態は、第1の実施形態におけるステップ12の付着領域形成と、ステップ14のスペーサ均一散布との順序を逆にして行う。
【0069】
本実施形態では、先ず、ガラス基板上にスペーサを均一散布する(ステップ14)。次に、スペーサをガラス基板上に付着させる付着領域を形成する(ステップ12)。さらに、付着領域を形成されたガラス基板に加熱処理を施す(ステップ16)。その後、付着領域外に散布されたスペーサを除去する(ステップ18)。
上記各ステップは、各々に対応する上述した第1の実施形態で詳細に説明した各ステップと同様の処理を行うものである。
【0070】
また、図9は本実施形態に係るスペーサの散布装置20’の要部構成を示す模式図である。本実施形態に係るスペーサの散布装置20’は、図2に示されるスペーサの散布装置20における付着領域形成手段24とスペーサ散布手段26との位置を入れ替えたものが好適に使用可能であり、その作用も同様である。
【0071】
また、第1の実施形態同様に本実施形態においても、付着媒体として不純物が少ない水、メタノールやエタノールに代表されるアルコール類、またはその他の有機溶媒を含む揮発性の液体や、熱硬化性樹脂といった接着剤等が好適に使用可能である。
【0072】
上述した第4の実施形態では付着媒体として揮発性の液体を使用したが、付着媒体として液晶または液晶表示装置に用いる液晶に混入される不揮発性の溶媒を使用する第5の実施形態ついて説明する。
【0073】
図10は、第5の実施形態に係るスペーサの散布方法の要点を示す処理フロー図である。本実施形態は、上述した第2の実施形態における、付着領域の形成(ステップ12)とスペーサの散布(ステップ14)との順序を逆にし、先にスペーサを散布し、その後に付着領域の形成を行う。それらに続く、非付着領域のスペーサ除去(ステップ18)は第2の実施形態で行うものと同様である。
【0074】
また、本実施形態においては、図5に示される、第3の実施形態に係るスペーサの散布装置100を好適に使用することができる。先ずスペーサ散布手段126がガラス基板122a上にスペーサを散布した後に、付着領域形成手段124のインクジェットヘッド124aが付着媒体として液晶または液晶表示装置に用いる液晶に混入される不揮発性の溶媒を使用して付着領域を形成する。続いて、スペーサ除去手段130が非付着領域のスペーサを除去するのは第2の実施形態において説明したとおりである。
【0075】
さらに、上述した第3の実施形態のように付着媒体として紫外線硬化性樹脂を使用する本発明の第5の実施形態を説明する。
図11は、第6の実施形態に係るスペーサの散布方法の要点を示す処理フロー図である。本実施形態は、上述した第3の実施形態における、付着領域の形成(ステップ12)とスペーサの散布(ステップ14)との順序を逆し、先にスペーサを散布し、その後に付着領域の形成を行う。それらに続く、紫外線照射処理(ステップ16’)および非付着領域のスペーサ除去(ステップ18)は第2の実施形態で行うものと同様である。
【0076】
また、本実施形態においては、図7に示される、第3の実施形態に係るスペーサの散布装置120が使用可能である。先ずスペーサ散布手段126がガラス基板122a上にスペーサを散布した後に、付着領域形成手段124のインクジェットヘッド124aが付着媒体として紫外線硬化性樹脂を使用して付着領域を形成する。
【0077】
その後、紫外線照射手段128によって紫外線が照射されて紫外線硬化性樹脂が硬化することでスペーサをガラス基板122a上に固着し、スペーサ除去手段130が非付着領域に散布されたスペーサを除去するのは、第3の実施形態で説明したとおりである。
【0078】
以上、本発明の実施形態について説明した。上記実施形態は、本発明の一例を示したものであり、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更や改良を行ってもよいことはいうまでもない。
【0079】
例えば、本発明に用い得るスペーサ散布手段としては、実施形態に示したような揺動型の散布ノズルユニット(例えば、特開平6−3679号公報,特開平11−276941号公報,特開2002−59036号公報等に開示されている装置)の他、特開2002−148635号公報に開示されている分散型固定散布ノズルユニット等も好適に用いることが可能である。
【0080】
また、上記各実施形態においては、微粉体散布対象となる基板として、LCDの表示パネル(液晶パネル)に用いられる基板の例としてガラス基板を例に挙げたが、本発明はこれに限定されるものではなく、ガラス以外の材料で構成される基板(例えば、各種の樹脂基板)に対しても適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】第1の実施形態に係る微粉体の散布方法の要点を示す処理フロー図である。
【図2】第1の実施形態に係るスペーサの散布装置の要部構成を示す模式図である。
【図3】カラーフィルタ上の領域を示す平面図である。
【図4】第2の実施形態に係るスペーサの散布方法の要点を示す処理フロー図である。
【図5】第2の施形態に係るスペーサの散布装置の要部構成を示す模式図である。
【図6】第3の実施形態に係るスペーサの散布方法の要点を示す処理フロー図である。
【図7】第3の実施形態に係るスペーサの散布装置の要部構成を示す模式図である。
【図8】第4の実施形態に係るスペーサの散布方法の要点を示す処理フロー図である。
【図9】第4の実施形態に係るスペーサの散布装置の要部構成を示す模式図である。
【図10】第5の実施形態に係るスペーサの散布方法の要点を示す処理フロー図である。
【図11】第6の実施形態に係るスペーサの散布方法の要点を示す処理フロー図である。
【図12】液晶表示パネルの要部概略構成を説明する断面図である。
【図13】図12中のカラーフィルタの詳細を示す平面図である。
【図14】従来のスペーサ散布状況を示す模式図である。
【符号の説明】
【0082】
12,14,16,16’,18 処理ステップ
20,20’,100,120 スペーサの散布装置
22 搬送台
22a ガラス基板
22b コンベア
24 付着領域形成手段
24a インクジェットヘッド
26 スペーサ散布手段
26a 散布ノズル管
26b 駆動機構
28 加熱手段
28a 加熱装置
30 スペーサ除去手段
30a スペーサ除去装置
30b エアー噴き出し口
30c 吸い込み口
32 クリーンルーム
41,41’ 偏光板
42,43 ガラス基板
44,45 透明電極
46,47 配向膜
48 カラーフィルタ
49 液晶
50 スペーサ
51 ブラックマトリクス
52 (平行線状のパターンを有する)領域
122 基台
122a ガラス基板
122b 基台本体
124 付着領域形成手段
124a インクジェットヘッド
126 スペーサ散布手段
126a 散布ノズル管
126b 駆動機構
128 紫外線照射手段
128a 紫外線照射装置
130 スペーサ除去手段
130a スペーサ除去装置
130b エアー噴き出し口
130c 吸い込み口
132 クリーンルーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粉体を被散布体上に均一に散布する散布工程と、
微粉体を前記被散布体上に付着させる付着領域を該被散布体上の所望の領域に形成する工程とを有する微粉体の散布方法であって、
非付着領域に配置された微粉体を除去して前記付着領域にのみ微粉体を配置することを特徴とする微粉体の散布方法。
【請求項2】
前記被散布体上に前記付着領域を形成した後に、前記被散布体上に微粉体を均一散布することを特徴とする請求項1に記載の微粉体の散布方法。
【請求項3】
前記被散布体上に微粉体を均一散布した後に、前記被散布体上に前記付着領域を形成することを特徴とする請求項1に記載の微粉体の散布方法。
【請求項4】
前記付着領域の形成は、付着媒体として液体を使用し、
前記液体を微少液滴化し、該微少液滴を飛翔させて前記被散布体上に選択的に配置することで行うことを特徴とする請求項2または3に記載の微粉体の散布方法。
【請求項5】
前記付着領域の形成は、付着媒体として液体を使用し、
前記液体を前記被散布体上に選択的に塗布して液層を形成することで行うことを特徴とする請求項2に記載の微粉体の散布方法。
【請求項6】
前記付着媒体である前記液体として揮発性の液体を使用することを特徴とする請求項4または5に記載の微粉体の散布方法。
【請求項7】
前記付着媒体として、熱硬化性材料を使用することを特徴とする請求項4または5に記載の微粉体の散布方法。
【請求項8】
前記付着領域の形成および微粉体の散布が完了した前記被散布体に加熱処理を施すことを特徴とする請求項6または7に記載の微粉体の散布方法。
【請求項9】
前記付着媒体である前記液体として不揮発性の液体を使用することを特徴とする請求項4または5に記載の微粉体の散布方法。
【請求項10】
前記不揮発性の液体は、液晶または液晶表示装置に用いられる液晶に混入される不揮発性の溶剤であることを特徴とする請求項9に記載の微粉体の散布方法。
【請求項11】
前記付着媒体として、紫外線硬化性材料を使用することを特徴とする請求項4または5に記載の微粉体の散布方法。
【請求項12】
前記付着領域の形成および微粉体の散布が完了した前記被散布体に紫外線照射処理を施すことを特徴とする請求項11に記載の微粉体の散布方法。
【請求項13】
被散布体を支持する支持手段と、微粉体を前記被散布体上に散布する散布手段とを備える微粉体の散布装置であって、
微粉体を前記被散布体表面に付着させる流動性の付着媒体を使用して、前記被散布体上の所望の領域に付着領域を形成する付着領域形成手段と、
非付着領域に配置された微粉体を前記被散布体上から除去する微粉体の除去手段とを備えることを特徴とする微粉体の散布装置。
【請求項14】
前記付着領域形成手段は、微少液滴化した前記付着媒体を前記被散布体上の所望の領域に配置することにより前記付着領域を形成することを特徴とする請求項13に記載の微粉体の散布装置。
【請求項15】
前記付着領域形成手段は、前記被散布体上の所望の領域に前記付着媒体を塗布して液層を形成することにより前記付着領域を形成することを特徴とする請求項13に記載の微粉体の散布装置。
【請求項16】
前記付着領域の形成および微粉体の散布が完了した前記被散布体に加熱処理を施す加熱手段を備えることを特徴とする請求項14または15に記載の微粉体の散布装置。
【請求項17】
前記付着領域の形成および微粉体の散布が完了した前記被散布体に紫外線照射処理を施す紫外線照射手段を備えることを特徴とする請求項14または15に記載の微粉体の散布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−167651(P2006−167651A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−365759(P2004−365759)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(000226954)日清エンジニアリング株式会社 (30)
【Fターム(参考)】