説明

微粒子ベースのバイオチップシステムおよびその使用

本発明は、一般に、分析物アッセイの分野に関する。具体的には、本発明は、分析物を分析するためのデバイスを提供し、このデバイスは、とりわけ、分析物と他のアイテムとを移動させて、分析物と、表面上に固定されたそれらの結合試薬との間の結合を容易にするため、および分析物−結合試薬相互作用からの望ましくないアイテムの除去を容易にして、このアッセイにおけるバックグラウンドノイズを低下させるための、種々の手段を備える。このデバイスを使用して分析物を分析するための方法もまた、開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、一般に、分析物アッセイの分野に関する。特に、本発明は、分析物を分析するためのデバイスを提供し、このデバイスは、特に、分析物およびアイテム(item)を移動させて、分析物と表面上に固定化されたそれらの結合試薬との間の結合を容易にし、そして分析物結合試薬相互作用領域から望ましくないものを取り除くことを容易にし、このアッセイにおけるバックグラウンドノイズを減少させるための種々の手段を備える。このデバイスを用いて分析物を分析するための方法もまた、開示される。
【背景技術】
【0002】
(背景技術)
種々の型の生物学的分析物を検出するために、種々の方法が現在使用されている。例えば、核酸ハイブリダイゼーション、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、制限酵素分析、およびゲル電気泳動が、核酸を検出するために従来通り使用される。タンパク質の検出に関しては、免疫学的方法およびゲル電気泳動が一般に使用される。革新的な分析方法および分析技術としては、一体化、小型化、および自動化に関するその可能性のために、バイオチップが、分析的バイオテクノロジーにおいてますます重要になってきている。初期段階では、バイオチップは、主に核酸チップまたはDNAマイクロアレイとして使用されており、これらは、かなり発展してきており、分析的バイオテクノロジーにおいて広く使用されている。核酸チップまたはアレイは、多数の核酸を同時にアッセイするために使用され得る(Debouck and Goodfellow,Nature Genetics,21(Suppl.):48−50(1999);Dugganら,Nature Genetics,21(Suppl.):10−14(1999);Gerholdら,Trends Biochem.Sci.,24:168−173(1999);ならびにAlizadehら,Nature,403:503−511(2000))。所定の条件下での遺伝子発現パターンは、核酸チップまたは核酸アレイを用いて迅速に分析され得る。特定の領域(1kbまで)におけるSNPは、核酸チップまたは核酸アレイを用いて1回の実験で分析され得る(Guoら,Genome Res.,12:447−57(2002))。
【0003】
種々の異なるタイプのバイオチップが、バイオチップの概念と生物学の基本的な原理、および従来の生物学的検出技術の組み合わせに基づいて開発されてきた。これらのバイオチップとしては、疾患研究および癌研究のために使用されるタンパク質チップ(Belovら,Cancer Research,61:4483−4489(2001);Knezevicら,Proteomics,1:1271−1278(2001);Paweletzら,Oncogene,20:1981−1989(2001));ゲノムスケールの分子病理学研究のために開発された組織マイクロアレイ(Kononenら,Nat.Med.,4:844−847(2001));ならびに多糖とタンパク質との間の相互作用を研究するための多糖マイクロアレイ(Fukuiら,Nat.Biotech.,20:1011−1017(2002))が挙げられる。
【0004】
従来の核酸ベースの検出法(受動チップ(passive chip)を利用する)(例えば、乾癬性因子の臨床検出において使用される方法)は、3つの別個の工程を包含する。第1の工程は、サンプル調製(例えば、DNAまたはRNAのような核酸を得るための、血清、全血、唾液、尿および糞便のようなサンプルの処理)である。しばしば、不十分な量の核酸しか、サンプルから単離もしくは調製されず、その調製された核酸は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、鎖置換増幅(SDA)およびローリングサイクル増幅(RCA)などのような多くの方法を用いて増幅される(Andrasら,Mol.Biotechnol.,19:29−44(2001))。第2の工程は、ハイブリダイゼーション(すなわち、増幅された核酸サンプルとバイオチップ上に固定化されたプローブとの間のハイブリダイゼーション)である。第3の工程は、そのハイブリダイゼーションシグナルを検出することである。これは、しばしば、標識の検出に基づく。この標識は、増幅工程またはハイブリダイゼーション工程の間に導入され得る。このシグナル検出法は、使用される標識に従って変化し、例えば、傾向検出器が使用されて、傾向標識を検出し、オートラジオグラフィーが使用されて、放射活性標識を検出し、生体標識(例えば、ビオチン標識、ジゴキシゲニン標識など)の検出は、さらなる酵素的増幅を要し得る。必要な検出感度に依存して、種々のシグナル増幅法(例えば、チラミドシグナル増幅(TSA)(Karstenら,Nucleic Acids Res.,E4.((2002))およびデンドリマー(Kricka Clin.Chem.,45:453−8(1999)))が使用され得る。
【0005】
核酸検出における3つの重要な工程の分離は、これらの工程の間の手動の操作を要する。これらの手動の操作は、検出手順を複雑にし、時間を浪費し、費用が高く、そして実験誤差をもたらし得、検出の反復性および一貫性を減少させ得る。この手動の操作はまた、交叉汚染を増大させ、これは、臨床用途において核酸ベースの検出(特に増幅工程を含む任意のこのような検出)の広い適用を妨げる大きな理由である。さらに、液体サンプル中の分析物と固体基材上に固定化されたプローブとの間の相互作用は、液体サンプル中の分析物の受動的な拡散に依存し、プローブの近くにある分析物の濃度は低いので、反応効率は比較的低く、反応に要する時間は、比較的長い。
【0006】
従来の2−D(次元)バイオチップに関連した、受動的反応の効率が低いことおよび固定化プローブの量が少ないことのような問題に対処するために、いくつかのタイプの解決法が開発されてきた。1つの解決法は、他のタイプの基材および固定化ストラテジーを利用することである。遺伝子チップ技術において、プローブは、通常、2−D(次元)プレート表面に固定化される。従って、プローブの表面密度は低い。より高いハイブリダイゼーション効率を達成するために、3−D(次元)の構造体または基材にプローブが結合する確率を、試みた(Zlatanovaら,Methods Mol.Biol.170:17−38(2001);Tillibら,Anal.Biochem.292:155−160(2001);Michaelら,Anal.Chem.70:1242−1248(1998))。従来からの2−Dバイオチップと比較すると、この3−Dチップは、2つの新たな特徴を有する:限局的なスポット領域内により多量のプローブがあること;構造体内のプローブの可撓性がより高いこと。結論として、このタイプのチップは、ハイブリダイゼーション効率を増大させ得る。しかし、欠点もまた明らかである。例えば、製造手順が複雑である。結論として、このタイプの遺伝子チップは、高密度にするのが困難である。別の解決法は、特別に設計されたプローブを利用することである。これらのプローブは、特別な構造または5’結合(例えば、下等性を改善するための5’スペーサー(Shchepinovら,Nucleic Acids Res.25,1155−1161(1997))、およびステム−ループプローブまたはヘアピン構造プローブ(Broudeら,Nucleic Acids Res.29:E92(2001))を有する。DNA標的の、このようなアレイへのハイブリダイゼーションは、連続的な積み重なる相互作用によって高められる(Riccelliら、Nucleic Acid Res.29:996−1004(2001))。ハイブリダイゼーション効率を改善するための別のより有効な方法は、遺伝子チップに物理的力を付与することである。振盪は、ハイブリダイゼーションの間に標的の拡散を増大させるために使用されてきた(例えば、Lucidea Automated Slide Processor(Lucidea ASP))。電気による力は、遺伝子チップ上での迅速な移動および核酸の濃縮を可能にするために付与されてきた(Sosnowskiら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A 94:1119−1123(1997);Chengら,Nat.Biotechnol.16:541−546(1998))。このタイプのチップは、能動チップと考えられる。後者の特徴は、従来からの受動的方法のものに対して、マイクロチップに対する分子の結合を1,000倍まで加速し得る。この技術の欠点は、チップおよびデバイスの複雑さである。
【0007】
ラボ−オン−チップ(lab−on−chip)システムが、従来のチップによる、反応の分離という欠点に対処するために提唱されてきた(Manzら,Anal.Chem.74:2623−2636および2637−2652(2002))。生化学反応および生化学分析はしばしば、3つの工程を包含する:サンプル調製、生化学反応、ならびにシグナル検出およびデータ分析。1つのチップ上に1つ以上の工程を小型化することにより、特化されたバイオチップ(例えば、サンプル調製のための細胞濾過チップおよび誘電泳動チップ、遺伝的変異および遺伝子発現を検出するためのDNAマイクロアレイ、ならびに薬物スクリーニングのためのハイスループットマイクロ反応チップなど)がもたらされる。チップ上で生化学分析の全ての工程を行って、マイクロ分析システムまたはラボ−オン−チップシステムを作る努力が行われてきた。このようなマイクロ分析システムまたはラボ−オン−チップシステムを用いると、閉鎖した系で迅速に、サンプル調製から分析結果を得るまでの全ての分析工程を完了することが可能になる。
【0008】
現在のラボ−オン−チップシステムの1つの欠点は、複雑なマイクロスケールの操作を必要とすることである。これは、技術的に労力を要する。報告されたラボ−オン−チップシステムの大部分は、特定の工程の小型化に基づく(例えば、サンプル調製チップ(Wildingら,Anal.Biochem.,257:95−100(1998)、細胞単離チップ(Wangら,J.Phys.D:Appl.Phys.,26:1278−1285(1993)およびPCRチップ(Chengら,Nucleic Acids Res.,24:380−385 1996)。Chengらは、サンプル調製、生化学反応および結果の検出を一緒に組み込んだ最初のラボ−オン−チップシステムを報告した(Chengら,Nat.Biotechnol.,16:541−546(1998))。これは、市販されていない。現在市販されているシステム(例えば、NanogenのMicroelectronic Array)は、ハイブリダイゼーション工程およびシグナル検出工程を組み込み、自動化しているに過ぎない。複雑な器具および分析ソフトウェアのセットが、NanogenのMicroelectronic Arrayで使用されなければならない。さらに、Nanogenの電気泳動チップを作製し、使用する費用は、高い。
【0009】
本発明は、当該分野における上記および他の関連する考慮事項に対処する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
一局面において、本発明は、分析物を分析するためのデバイスに関し、このデバイスは、以下:a)基材上の適切な材料によって収容される、制御可能に閉鎖される空間であって、ここで上記の適切な材料は、熱伝導性で生体適合性であり、かつ分析物と反応物との間の結合を阻害せず、上記の制御可能に閉鎖される空間は、上記の基材の表面に、上記分析物に結合し得る第1の固定された反応物を含む、制御可能に閉鎖される空間;b)上記の分析物を上記第1の固定された反応物へと制御可能に移動させるための第1の手段;c)上記の分析物を、上記の分析物に結合し得る第2の反応物および微粒子を含む、標識された固定されていない複合体へと制御可能に移動させるための第2の手段;ならびにd)上記の分析物に結合していない上記の標識された固定されていない複合体を、上記第1の固定された反応物から離れるように制御可能に移動させるための第3の手段を備え、そしてここで上記の分析物および上記の標識された固定されていない複合体を含むサンプルを、上記の制御可能に閉鎖される空間に添加し、上記の手段を操作すると、上記の基材上で、好ましくは、上記の制御可能に閉鎖される空間と外の環境との間で物質交換が全く行われることなく、上記の標識された固定されていない複合体−上記の分析物−上記第1の固定された反応物のサンドイッチの形成が生じる。
【0011】
別の局面において、本発明は、分析物を分析するための方法に関し、この方法は、以下の工程:a)上記のデバイスを提供する工程;b)分析物を含むかまたは含むと疑われるサンプル、ならびに上記の分析物に結合し得る第2の反応物および微粒子を含む標識された固定されていない複合体を、上記デバイスの上記の制御可能に閉鎖される空間に導入する工程;c)上記デバイスの上記の手段を操作して、上記デバイスの上記基材上で、好ましくは、上記の制御可能に閉鎖される空間と外の環境との間で物質交換が全く行われることなく、上記の標識された固定されていない複合体−上記の分析物−上記第1の固定された反応物のサンドイッチを形成する工程;d)上記サンドイッチを評価して、上記サンプル中の上記の分析物の存在および/または量を決定する工程、を包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(発明の実施の形態)
開示の明瞭性のためであって、限定としてではなく、発明の詳細な説明が、以下の小節に分けられている。
【0013】
(A.定義)
別段規定されない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者により通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書中で言及される全ての特許、出願、公開された出願、および他の刊行物は、それらの全体が本明細書中に参考として援用される。この節において示される定義が、本明細書中で参考として援用される特許、出願、公開された出願および他の刊行物に記載される定義と矛盾するか、そうでなければ一致しない場合、この節に示される定義が、本明細書中に参考として援用される定義にまさる。
【0014】
本明細書中で使用される場合、「1つの(a)」または「1つの(an)」とは、means 「少なくとも1つ」または「1以上」を意味する。
【0015】
本明細書中で使用される場合、「上記の分析物を標識された固定されていない複合体へと制御可能に移動させるための第2の手段」とは、その手段が、その分析物をその標識された固定されていない複合体へと移動し得るか、またはその標識された固定されていない複合体を分析物へと移動し得るか、または上記の分析物および標識された固定されていない複合体の両方を第3のアイテムもしくは位置に移動し得ることを意味する。
【0016】
本明細書中で使用される場合、「特異的結合」とは、1つの物質が別の物質へ、特定の分子構造の存在に依存する様式で結合することをいう。例えば、レセプターは、リガンド結合部位に相補的な化学構造を含むリガンドに選択的に結合する。
【0017】
本明細書中で使用される場合、「特異的結合対」とは、他の物質を除外して、そのリガンドに対する特異的結合親和性を有する、任意の物質、または任意のクラスの物質をいう。一実施形態において、その特異的結合対としては、サンプルリガンドと相互作用する特異的結合アッセイ試薬または免疫化学的様式におけるリガンドに対するサンプルの結合能が挙げられる。例えば、試薬および/またはサンプルリガンドとの間の抗原−抗体またはハプテン−抗体の関係あるいはリガンドに対するサンプルの結合能が存在する。さらに、リガンドと結合パートナーとの間の他の結合相互作用が、特異的結合アッセイ(ホルモン、ビタミン、代謝産物、および薬理学的因子と、それらそれぞれのレセプターおよび結合物質との間の結合相互作用が挙げられる)の基本として働くことが当該分野で十分に理解される(例えば、Langanら編,Ligand Assay,pp.211および以下、Masson Publishing U.S.A.Inc.,New York,1981を参照のこと)。
【0018】
本明細書中で使用される場合、「抗体」とは、特定のタイプの免疫グロブリン(すなわち、IgA、IgD、IgE、IgG(例えば、IgG、IgG、IgG、およびIgG)ならびにIgM)をいう。抗体は、任意の適切な形態で存在し得、任意の適切なフラグメントまたは誘導体も包含する。例示的な抗体としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)フラグメント、Fvフラグメント、ダイアボディー(diabody)、単鎖抗体および抗体フラグメントから形成される多重特異的抗体が挙げられる。
【0019】
本明細書中で使用される場合、「植物」とは、植物界の任意の種々の光合成する、真核の多細胞生物(特徴として、胚を生成し、クロロプラストを含み、セルロース細胞壁を有し、移動能がない)をいう。
【0020】
本明細書中で使用される場合、「動物」とは、動物界の多細胞生物(移動能、非光合成代謝、刺激に対する明白な応答、制限された成長および一定の身体構造により特徴づけられる)をいう。動物の非限定的な例としては、ニワトリのようなトリ、魚類および哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ネコ、イヌ、ブタ、雌牛、雄牛、ヒツジ、ヤギ、ウマ、サル、および他の非ヒト霊長類)のような脊椎動物が挙げられる。
【0021】
本明細書中で使用される場合、「細菌」とは、環状DNAおよび約70Sのリボソームが区分されていない小さな原核生物(約1ミクロンの直線寸法)をいう。細菌タンパク質合成は、真核生物のタンパク質合成とは異なる。多くの抗細菌抗体が、細菌タンパク質合成を妨害するが、感染した宿主には影響を及ぼさない。
【0022】
本明細書中で使用される場合、「真性細菌」とは、古細菌を除く細菌の主要な下位分類をいう。大部分のグラム陽性細菌、シアノバクテリア、マイコプラズマ、腸内細菌、シュードモナスおよびクロロプラストは、真性細菌である。真性細菌の細胞質膜は、エステル結合した脂質を含む;細胞壁にはペプチドグリカンが存在する(存在する場合);そしてイントロンは、真性細菌には見られなかった。
【0023】
本明細書中で使用される場合、「古細菌」とは、真性細菌を除く細菌の主要な下位分類をいう。古細菌の3つの主要な目が存在する:高度好塩菌、メタン生成菌および硫黄依存性高度好熱菌。古細菌は、リボソーム構造、イントロンの保有(いくつかの場合)、および他の特徴(膜組成を含む)が真性細菌とは異なる。
【0024】
本明細書中で使用される場合、「真菌」とは、根、茎または葉がない、不規則な塊で成長し、光合成が可能な葉緑素も他の色素も欠いている真核生物の分類をいう。各生物(葉状体)は、単細胞から繊維状であり、グルカンまたはキチンまたはその両方を含み、真核を含む細胞壁によって囲まれた分岐した体細胞構造(菌糸)を有する。
【0025】
本明細書中で使用される場合、「ウイルス」とは、生きているが、非細胞性質の、DNAまたはRNAおよびタンパク質コートからなる偏性細胞内寄生生物をいう。ウイルスは、約20〜約300nmの直径の範囲である。クラスIのウイルス(ボルティモア分類)は、それらのゲノムとして二本鎖DNAを有する;クラスIIのウイルスは、それらのゲノムとして一本鎖DNAを有する;クラスIIIのウイルスは、それらのゲノムとして二本鎖RNAを有する;クラスIVのウイルスは、それらのゲノムとしてプラスの一本鎖RNAを有し、ゲノム自体は、mRNAとして作用する;クラスVのウイルスは、それらのゲノムとしてmRNA合成のためのテンプレートとして使用されるマイナスの一本鎖RNAを有する;そしてクラスVIのウイルスは、プラスの一本鎖RNAゲノムを有するが、複製においてのみならずmRNA合成においてもDNA中間体を有する。ウイルスの大部分は、植物、動物および原核生物においてウイルスが引き起こす疾患によって認識される。原核生物のウイルスは、バクテリオファージとして公知である。
【0026】
本明細書中で使用される場合、「組織」とは、類似の細胞およびそれらを取り囲む細胞内物質の集まりをいう。身体には4つの基本的な組織が存在する:1)上皮;2)結合組織(血液、骨および軟骨を含む);3)筋肉組織;および4)神経組織。
【0027】
本明細書中で使用される場合、「器官」とは、呼吸、分泌または消化のような特定の機能を果たす身体の任意の部分をいう。
【0028】
本明細書中で使用される場合、「サンプル」とは、本発明のデバイスおよび/または方法を用いて分析されるべき分析物を含み得る任意のものをいう。サンプルは、生物学的サンプル(例えば、生物学的流体または生物学的組織)であり得る。生物学的流体の例としては、尿、血液、血漿、血清、唾液、精液、糞便、喀痰、脳脊髄液、涙液、粘液、羊水などが挙げられる。生物学的組織は、ヒト、動物、植物、細菌、真菌またはウイルス構造体(結合組織、上皮、筋肉組織および神経組織を含む)の構造物質の1つを形成する、通常、特定の種の細胞の凝集物と、それらの細胞内物質である。生物学的組織の例としてはまた、器官、腫瘍、リンパ節、動脈および個々の細胞が挙げられる。生物学的組織は、細胞懸濁サンプルを得るために処理されてもよい。そのサンプルはまた、インビトロで調製された細胞の混合物であってもよい。そのサンプルはまた、培養された細胞懸濁液でもよい。生物学的サンプルの場合において、そのサンプルは、粗製のサンプルであってもよいし、元のサンプルに対する種々の処理または準備の後に得られた、処理されたサンプルであってもよい。例えば、種々の細胞分離法(例えば、磁性活性化セルソーティング)は、体液サンプル(例えば、血液)から標的細胞を分離および濃縮するために適用され得る。本発明に使用されるサンプルとしては、このような標的細胞濃縮細胞調製物が挙げられる。
【0029】
本明細書中で使用される場合、「液体(流体)サンプル」とは、液体または流体(例えば、生物学的流体)として天然に存在するサンプルをいう。「液体サンプル」とはまた、非液体状態(例えば、固体または気体)で天然に存在するが、固体または気体のサンプル材料を含む、液体、流体、溶液または懸濁液として調製されるサンプルをいう。例えば、液体サンプルは、生物学的組織を含む、液体、流体、溶液または懸濁液を包含し得る。
【0030】
本明細書中で使用される場合、「磁性物質」とは、磁石の特性を有する任意の物質をいい、これらの特性は、磁石または磁性に関係し、磁性を生じるか、磁性によって引き起こされるか、または磁性によって機能する。
【0031】
本明細書中で使用される場合、「磁化可能な物質」とは、磁場と相互作用するという特性を有し、従って、磁場で浮遊するかまたは自由に動く場合、磁化を誘導し、磁気モーメントを生成するという特性を有する任意の物質をいう。磁化可能な物質の例としては、常磁性物質、強磁性物質およびフェリ磁性物質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
本明細書中で使用される場合、「常磁性物質」とは、その個々の原子、イオンまたは分子が、恒久的な磁気双極子モーメントを有する物質をいう。永久磁場がない場合、その原子の双極子は、ランダムな方向に向き、全体として、いずれの方向にもその物質の磁性は存在しない。このランダムな配向は、その物質内の熱運動の結果である。永久磁場が付与される場合、その原子の双極子は、それら自身をその磁場に対して平行に配向する傾向がある。なぜなら、これは、反平行位置よりも低エネルギーの状態であるからである。これは、その磁場に対して平行な正味の磁化および磁化率に対して正の寄与を与える。「常磁性物質」または「常磁性」に関するさらなる詳細は、種々の文献(例えば、「Electricity and Magnetism」B.I BleaneyおよびB.Bleaney,Oxford,1975のChapter 6,169−171頁)に見出され得る。
【0033】
本明細書中で使用される場合、「強磁性物質」とは、非常に大きな(正の)値の磁化率により区別される物質をいい、付与された磁場強度に依存する。さらに、強磁性物質は、付与された磁場がない場合ですら、磁気モーメントを有し得、ゼロ磁場における磁性の保持は、「残留磁気」として公知である。「強磁性物質」または「強磁性」に関するさらなる詳細は、種々の文献(例えば、「Electricity and Magnetism」B.I BleaneyおよびB.Bleaney,Oxford,1975のChapter 6,171〜174頁)に見出され得る。
【0034】
本明細書中で使用される場合、「フェリ磁性物質」とは、自発的な磁化、残留磁気、および通常の強磁性物質と類似の他の特性を示す物質をいうが、その自発的モーメントは、その物質における(磁気)双極子の完全に平行な並びが予測される値に対応しない。「フェリ磁性物質」または「フェリ磁性」に関するさらなる詳細は、種々の文献(例えば、「Electricity and Magnetism」B.I BleaneyおよびB.Bleaney,Oxford,1975のChapter 16,519〜524頁)に見出され得る。
【0035】
本明細書中で使用される場合、「金属酸化物粒子」とは、粒子形態の任意の金属酸化物をいう。特定の金属酸化物粒子は、常磁性または超常磁性の特性を有する。「常磁性粒子」は、永久磁場の付与に影響されやすい粒子として規定されるが、恒久的な強磁性磁区を維持することはできない。言い換えると、「常磁性粒子」はまた、「常磁性物質」から作られているかまたはこの物質から作製された粒子として規定され得る。常磁性粒子の非限定的な例としては、特定の金属酸化物粒子(例えば、Fe粒子)、合金粒子(例えば、CoTaZr粒子)が挙げられる。
【0036】
本明細書で使用される場合、ミスマッチ百分率の決定における「ハイブリダイゼーションのストリンジェンシー」は、以下のとおりである:
1)高ストリンジェンシー:0.1×SSPE、0.1% SDS、65℃;
2)中程度の(medium)ストリンジェンシー:0.2×SSPE、0.1% SDS、50℃(中程度(moderate)のストリンジェンシーともいわれる);および
3)低ストリンジェンシー:1.0×SSPE、0.1% SDS、50℃。
等価なストリンジェンシーが代わりの緩衝液、塩および温度を用いて達成され得ることが理解される。
【0037】
本明細書中で使用される場合、「チップ」とは、複数の一次元、二次元もしくは三次元のミクロ構造、または特定のプロセス(例えば、物理的プロセス、化学的プロセス、生物学的プロセス、生物物理学的プロセスまたは生化学的プロセスなど)が行われ得るミクロスケールの構造を有する、固体基材をいう。このミクロ構造またはミクロスケール構造(例えば、チャネルおよびウェル、電極要素、電磁要素)は、チップ上での物理的な、生物物理学的な、生物学的な、生化学的な、化学的な、反応またはプロセスを容易にするための基材に組み込まれるか、基材上に製作されるか、または他の方法で基材に結合される。このチップは、ある寸法において薄くなっていてもよく、他の寸法において種々の形状(例えば、矩形、円形、楕円、または他の不規則な形状)を有していてもよい。本発明において使用されるチップの大きな方の表面のサイズは、かなり変化し得、例えば、約1mm〜約0.25mまで変化し得る。好ましくは、そのチップのサイズは、約4mm〜約25cmであり、約1mm〜約7.5cmの特徴的な寸法を有する。このチップ表面は、平らであっても平らでなくてもよい。平らでない表面を有するチップは、その表面上に製造されたチャネルまたはウェルを備え得る。チップの一例は、複数のタイプのDNA分子またはタンパク質分子または細胞が固定化される固体基材である。
【0038】
本明細書で使用される場合、用語「評価する」とは、サンプル中に存在する分析物の定量的決定および/または定性的決定を含み、サンプル中の分析物のレベルを示す、指数、比、百分率、視覚的映像、または他の値を得ることも意図する。評価は、直接的であっても間接的であってもよく、実際に検出される化学種は、当然のことながら、分析物自体である必要はないが、例えば、その誘導体またはいくつかのさらなる物質であり得る。
【0039】
本明細書中で使用される場合、「低分子」とは、ホモ凝集物を形成しないか、または高分子にもアジュバントにも結合せずに、この低分子に特異的に結合する抗体を生成することができない分子をいう。好ましくは、この低分子は、約10,000ダルトンまたは10,000ダルトン未満の分子量を有する。より好ましくは、この低分子は、約5,000ダルトンまたは5,000ダルトン未満の分子量を有する。
【0040】
本明細書中で使用される場合、「制御可能に閉鎖される空間」とは、その空間の開放および閉鎖が、随意に制御され得、例えば、外側に開いて、サンプルもしくは他の試薬の添加を可能にし、そして閉鎖して、制御可能に閉鎖される空間と外の環境との間で物質交換が全く行われることなく、制御可能に閉鎖される空間において基材上で、標識された固定されていない複合体−分析物−第1の固定された反応物のサンドイッチの形成を可能にすることを意味する。
【0041】
本明細書中で使用される場合、「生体適合性」とは、生物学的系に対して毒性効果も有害な効果も有さず、かつ生物学的反応も生化学的反応も有さないという物質の質および能力をいう。
【0042】
本明細書中で使用される場合、「熱伝導性」とは、断熱材としての物質の効力(この効力は、その熱伝導性の点で表され得る)をいう。身体を通過するエネルギー伝導率は、身体およびその断面積にわたる温度勾配に比例する。厚みと温度差の微分の限界において、熱伝導性の基本的な法則は、以下である:
Q=λAdT/dx
ここでQは、熱流であり、Aは断面積であり、dT/dxは、温度/厚み勾配であり、λは、熱伝導性値として規定される。大きな熱伝導性値を有する物質は、熱のよい伝導体であり、小さな熱導電性値を有する物質は、不十分な熱伝導体、すなわち、良好な断熱材である。よって、熱伝導性値(単位 W/m・K)が分かると、異なる材料の断熱効率間で、比較(所望される場合は定量的比較)を行うことが可能になる。
【0043】
本明細書中で使用される場合、「核酸」とは、任意の形態のデオキシリボ核酸(DNA)および/またはリボ核酸(RNA)(とりわけ、一本鎖形態、二重鎖形態、三重鎖形態、直線状および環状の形態が挙げられる)をいう。核酸はまた、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、核酸のキメラおよびこれらのアナログが挙げられる。本明細書に記載される核酸は、塩基である、アデノシン、シトシン、グアニン、チミジン、およびウリジンから構成される周知のデオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドから構成され得るか、またはこれらの塩基のアナログまたは誘導体から構成され得る。さらに、通常でないホスホジエステル骨格を有する種々の他のオリゴヌクレオチド誘導体もまた、本明細書において含まれ、例えば、ホスホトリエステル、ペプチド核酸(polynucleopeptide(PNA))、メチルホスホネート、ホスホロチオエート、ポリヌクレオチドプライマー、ロックされた核酸(LNA)などが挙げられる。
【0044】
本明細書中で使用される場合、「プローブ」とは、標的配列にハイブリダイズし、代表的には、その検出を容易にする、オリゴヌクレオチドまたは核酸をいう。用語「標的配列」とは、そのプローブが特異的に結合する核酸配列をいう。増幅プロセスにおける標的核酸をプライムするために使用されるプライマーとは異なり、プローブは、ポリメラーゼ酵素を使用して標的配列を増幅するように伸長させる必要はない。
【0045】
本明細書中で使用される場合、「相補的またはマッチした」とは、2つの核酸配列が、少なくとも50%の配列同一性を有することを意味する。好ましくは、その2つの核酸配列が、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。「相補的またはマッチした」とはまた、2つの核酸配列が低ストリンジェンシー、中程度のストリンジェンシーおよび/または高ストリンジェンシーの条件下でハイブリダイズし得ることを意味する。
【0046】
本明細書中で使用される場合、「実質的に相補的または実質的にマッチした」とは、2つの核酸配列が、少なくとも90%の配列同一性を有することを意味する。好ましくは、その2つの核酸配列は、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。あるいは、「実質的に相補的または実質的にマッチした」とは、2つの核酸配列が高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズし得ることを意味する。
【0047】
本明細書中で使用される場合、「2つの完全にマッチしたヌクレオチド配列」とは、その2つのヌクレオチド鎖がワトソン−クリック塩基対原則に従ってマッチし(すなわち、DNA:DNA二重鎖においてはA−T対およびC−G対、ならびにDNA:RNA二重鎖またはRNA:RNA二重鎖においてはA−U対およびC−G対)、その2つの鎖の各々に欠失も付加もない核酸二重鎖をいう。
【0048】
本明細書中で使用される場合、「融解温度」(「Tm」)とは、核酸二重鎖(すなわち、DNA:DNA、DNA:RNA、RNA:RNA、PNA:DNA、LNA:RNAおよびLNA:DNAなど)が変性される温度範囲の中間点をいう。
【0049】
本明細書中で使用される場合、「標識」とは、検出可能な物理的特性を有する任意の化学基もしくは化学的部分、またはある化学期もしくは化学部分が、検出可能な物理的特性を示すことを可能にする任意の化合物(例えば、検出可能な生成物への基質の変換を触媒する酵素)をいう。用語「標識」はまた、特定の物理的特性の発現を阻害する化合物を包含する。「標識」はまた、多くの結合対である一方の化合物であり得る。その結合対の他方のメンバーは、検出可能な物理的特性を有する。例示的な標識としては、質量基(mass group)、金属、蛍光基、発光基、化学発光基、光学基(optical group)、電荷基(charge group)、極性基、呈色、ハプテン、タンパク質結合リガンド、ヌクレオチド配列、放射活性基、酵素、粒状粒子、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)標識、分子ビーコン(molecular beacon)およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0050】
(B.分析物を分析するためのデバイス)
一局面において、本発明は、分析物を分析するためのデバイスに関し、このデバイスは、以下:a)基材上の適切な材料により収容された制御可能に閉鎖される空間であって、ここで上記適切な材料は、熱伝導性で、生体適合性であり、かつ分析物と反応物との間の結合を阻害せず、上記の制御可能に閉鎖される空間は、上記の基材の表面に、上記分析物に結合し得る第1の固定された反応物を含む、制御可能に閉鎖される空間;b)上記の分析物を上記第1の固定された反応物に制御可能に移動させるための第1の手段;c)上記の分析物を、上記の分析物に結合し得る第2の反応物および微粒子を含む、標識された固定されていない複合体に制御可能に移動させるための第2の手段;ならびにd)上記の分析物に結合していない上記の標識された固定されていない複合体を、上記第1の固定された反応物から離れるように制御可能に移動させるための第3の手段を備え、そしてここで上記の分析物および上記の標識された固定されていない複合体を含むサンプルを、上記の制御可能に閉鎖される空間に添加し、上記の手段を操作すると、上記の基材上で、上記の制御可能に閉鎖される空間と外の環境との間で物質交換が全く行われることなく、上記の標識された固定されていない複合体−上記の分析物−上記第1の固定された反応物のサンドイッチの形成が生じる。
【0051】
任意の適切な材料が、本発明のデバイスにおいて使用され得る。例えば、適切な材料は、自己密封チャンバ、自己密封ゲルまたはプラスチックチャンバであり得る。
【0052】
任意の適切な基材が、本発明のデバイスにおいて使用され得る。例えば、その基材は、ケイ素、プラスチック、硝子、石英硝子、セラミック、ゴム、金属、ポリマー、ハイブリダイゼーション膜、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される材料を含み得る。その基材の表面は、化学的に反応性の基または生体分子を含むように改変され得る。例示的な化学的に反応性の基としては、−CHO、−NH、−SH、−S−S−、エポキシ基およびトシル基が挙げられる。例示的な生体分子としては、ビオチン、ストレプトアビジン、アビジン、his−タグ、strept−タグ、ヒスチジンおよびプロテインAが挙げられる。好ましくは、この基質は、チップ(例えば、DNAチップ)の一部である。
【0053】
本発明のデバイスは、任意の分析物を分析するために使用され得る。例示的な分析物としては、細胞、細胞オルガネラ、ウイルス、分子およびこれらの凝集物または複合体が挙げられる。
【0054】
任意の適切な反応物は、第1の固定された反応物として使用され得る。例えば、この第1の固定された反応物は、細胞、細胞オルガネラ、ウイルス、分子およびこれらの凝集物または複合体であり得る。好ましくは、この第1の固定された反応物は、その分析物に特異的に結合する。また、好ましくは、この第1の固定された反応物は、分析物に対する抗体または分析物核酸に相補的な核酸である。この第1の固定された反応物は、任意の適切な方法を介して(例えば、基材の表面に含まれる化学的に反応性の基または生体分子を介して)、基材に固定化され得る。
【0055】
この標識された固定されていない複合体は、第2の反応物上または微粒子上の検出可能な標識を含み得る。この検出可能な標識は、任意の適切な標識(例えば、放射活性標識、蛍光標識、化学標識、酵素標識、発光標識、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)標識および分子ビーコン)であり得る。好ましくは、この検出可能な標識は、蛍光標識である。また、好ましくは、この蛍光標識は、蛍光シグナルを発するように、第2の蛍光標識に隣接している。例示的な蛍光標識としては、FAM、TET、HEX、FITC、Cy3、Cy5、テキサスレッド、ROX、フルオレセイン、TAMRAおよび希土類金属を含むナノ粒子が挙げられる。あるいは、固定化されていない複合体中の微粒子は、分析物の存在および/または量を評価するために使用され得る、直接検出可能な標識として機能する。
【0056】
適切な任意の反応物が、第2の反応物として使用され得る。例示的な第2の反応物としては、細胞、細胞小器官、ウイルス、分子、およびそれらの凝集物もしくは複合体が挙げられる。好ましくは、上記第2の反応物は、分析物に特異的に結合する。また好ましくは、上記第2の反応物は、分析物に対する抗体であるか、または分析物核酸と相補的な核酸である。上記第2の反応物は、適切な任意の方法を介して(例えば、微粒子表面上に含まれる化学反応基または生体分子を介して)、上記微粒子に結合体化され得る。例示的な化学反応基としては、−CHO基、−NH基、−SH基、−S−S−基、エポキシ基、およびトシル基が、挙げられる。例示的な生体分子としては、ビオチン、ストレプトアビジン、アビジン、hisタグ、ストレプトタグ、ヒスチジン、およびプロテインAが、挙げられる。
【0057】
適切な任意の微粒子が、使用され得る。好ましくは、上記微粒子は、磁気微粒子、磁化可能な微粒子、電気的に荷電された微粒子、または電気的に荷電可能な微粒子である。上記微粒子は、適切な任意の材料(例えば、有機材料、ガラス、SiO、セラミック、炭素、および金属)を包含し得る。上記微粒子は、適切な任意の大きさを有し得、例えば、1nm〜約20μmの範囲の直径を有し得る。
【0058】
具体的な一実施形態において、固定されていない標識複合体において使用される微粒子は、磁気マイクロビーズである。この磁気マイクロビーズは、適切な任意の方法によって調製され得る。例えば、CN01/109870.8またはWO02/075309において開示される方法が、使用され得る。磁化可能な適切な任意の物質が、本デバイスおよび本方法において有用な磁気マイクロビーズを調製するために使用され得る。上記の磁化可能な物質の非限定的例としては、フェリ磁性物質、強磁性物質、常磁性物質、または超常磁性物質が、挙げられる。具体的な実施形態において、上記磁性マイクロビーズは、常磁性物質(例えば、常磁性酸化金属組成物)を含む。好ましくは、上記常磁性酸化金属組成物は、遷移金属酸化物またはその合金である。適切な任意の遷移金属(例えば、鉄、ニッケル、銅、コバルト、マンガン、タンタル(Ta)、亜鉛、およびジルコニウム(Zr))が、使用され得る。好ましい実施形態において、上記磁性マイクロビーズにおいて使用される磁化可能な物質は、金属組成物を含む。好ましくは、上記金属組成物は、転移金属組成物または合金であり、例えば、鉄、ニッケル、銅、コバルト、マンガン、タンタル、ジルコニウム、およびコバルト−タンタル−ジルコニウム(CoTaZr)合金である。
【0059】
上記磁性マイクロビーズは、入手可能な一次ビーズから、原材料から、または架橋すると米国特許第5,834,121号に開示される合成ポリマーコーティングを形成するモノマーによってカプセル化された酸化金属から、調製され得る。本明細書中で使用される場合、「剛性」とは、そのポリマーコーティングがそのコーティング内の酸化金属粒子を安定化し(すなわち、そのコーティングは、本質的には膨潤も溶解もせず)て、その粒子がそのコーティング内に収容されたままである程度まで架橋される、ポリマーコーティングを指す。本明細書中で使用される場合、「微小孔性」とは、極性有機溶媒中で膨潤または拡大する、樹脂状ポリマーマトリックスを指す。本明細書中で使用される場合、「負荷」とは、官能化または誘導体化のために有用な結合部位に関するビーズの能力を意味するために使用される。
【0060】
磁化可能な材料として組み込まれ得る適切な物質としては、例えば、酸化鉄(例えば、マグネタイト、マンガンのフェライト、コバルトのフェライト、およびニッケルのフェライト、ヘマタイト)および種々の合金が、挙げられる。マグネタイトは、好ましい酸化金属である。頻繁には、金属塩は、酸化金属へと変換され、その後、ポリマーでコーティングされるか、または還元基を有する熱可塑性ポリマー樹脂を含むビーズ中に吸着されると、教示される。疎水性一次ビーズを得るために酸化金属粒子から始めた場合、ビニルモノマー由来の熱可塑性ポリマー(好ましくは、微小孔性マトリックスに結合可能であるかまたは微小孔性マトリックスによって結合可能である、架橋ポリスチレン)の剛性コーティングを提供することが、必要である。磁性粒子は、当該分野で公知の方法によって形成され得る。その方法は、例えば、Vandenbergeら、J.of Magnetism and Magnetic Materials,15〜18:1117〜18(1980);Matijevic,Acc.Chem.Res.14:22〜29(1981);ならびに米国特許第5,091,206号;同第4,774,265号;同第4,554,088号;および同第4,421,660号において示される手順である。本発明において使用され得る一次ビーズの例は、米国特許第5,395,688号;同第5,318,797号;同第5,283,079号;同第5,232,7892号;同第5,091,206号;同第4,965,007号;同第4,774,265号;同第4,654,267号;同第4,490,436号;同第4,336,173号;ならびに同第4,421,660号において、示される。または、一次ビーズは、開始時のサイズ要件、溶媒中で膨潤して常磁性粒子を保持するために充分なポリマーコーティングの安定性、および使用されるビニルモノマーを吸着もしくは吸収して網目状マトリックスネットワークを形成する能力を満たす、入手可能な疎水性ビーズもしくは親水性ビーズから商業的に取得され得る。好ましくは、その一次ビーズは、疎水性で、ポリスチレンでカプセル化された、常磁性ビーズである。そのようなポリスチレン常磁性ビーズは、Dynal,Inc.(Lake Success,N.Y.)、Rhone Poulonc(France)およびSINTEF(Trondheim,Norway)から入手可能である。さらにカプセル化されて外側剛性ポリマーコーティングを生じる不安定ポリマーの第1コーティングを有するトナー粒子もしくは磁性粒子の使用もまた、企図される。
【0061】
上記の種々の手段は、適切な任意の力を使用して、分析物および他のアイテムを移動させ得る。一例において、第1の手段は、上記分析物を、電気的な力、磁力、音響学的な力、重力、または遠心力を介して、固定されていない標識複合体に対して、分析物を制御可能に移動させる。第2の手段は、固定されていない標識複合体の微粒子に対して力を発揮することによって、固定されていない標識複合体に対して分析物を移動させ得る。なお別の例において、第3の手段は、電気的な力、磁力、音響学的な力、重力、または遠心力を介して、固定された第1の反応物から離れるように、上記分析物に結合していない固定されていない標識複合体を制御可能に移動させる。好ましくは、この第3の手段は、固定されていない標識複合体の微粒子に対して力を発揮することによって、固定されていない第1の反応物から離れるように、分析物に結合していない固定されていない標識複合体を制御可能に移動させる。
【0062】
具体的な一実施形態において、上記分析物は、DNA、RNA、ペプチド核酸(PNA)、ロックト核酸(locked nucleic acid)(LNA)、タンパク質、ペプチド、抗体、および多糖である。好ましくは、上記DNA、RNA,PNAおよびLNAは、約5塩基対〜約1,000塩基対の範囲の長さを有する。別の具体的な実施形態において、本デバイスは、DNA−DNAハイブリダイゼーション、DNA−RNAハイブリダイゼーション、DNA−LNAハイブリダイゼーション、DNA−PNAハイブリダイゼーション、RNA−RNAハイブリダイゼーション、RNA−PNAハイブリダイゼーション、RNA−LNAハイブリダイゼーション、PNA−PNAハイブリダイゼーション、PNA−LNAハイブリダイゼーション、タンパク質−タンパク質相互作用、タンパク質−核酸相互作用、タンパク質−多糖相互作用、または抗原−抗体相互作用を分析するために、使用される。
【0063】
本デバイスは、1つまたは複数の分析経路(例えば、約1個〜約10,000個の分析経路)を含み得る。
【0064】
本デバイスは、温度制御手段をさらに含み得る。例示的な温度制御手段は、PCR機器、インサイチュPCRサーマルサイクラー、水浴、または微小温度制御装置を含み得る。
【0065】
本デバイスは、固定されていない標識複合体−分析物−固定された第1反応物というサンドイッチを検出するための手段を、さらに含み得る。例示的な検出手段は、顕微鏡、光学走査器または蛍光走査器を含み得る。
【0066】
(C.分析物を分析するための方法)
別の局面において、本発明は、分析物を分析するための方法に関する。この方法は、a)上記デバイスを提供する工程;b)分析物を含むサンプルもしくは分析物を含むと疑われるサンプル、ならびにその分析物に結合可能な第2反応物と微粒子とを含む固定されていない標識複合体を、上記デバイスの制御可能に閉鎖される空間へと導入する工程;c)上記デバイスの手段を操作して、そのデバイスの基材上に、固定されていない標識複合体−分析物−固定された第1反応物のサンドイッチを形成し、上記制御可能に閉鎖される空間と外側環境との間で何の物質交換もない工程;d)上記サンドイッチを評価して、上記サンプルにおける分析物の存在および/または量を決定する工程;を包含する。
【0067】
本方法は、任意のサンプル(例えば、固体サンプル、液体サンプル、または気体サンプル)を分析するために、使用され得る。本方法は、1つまたは複数の分析物(例えば、約1個〜約30,000個の分析物)を分析するために、使用され得る。この複数の分析物は、連続的または同時に分析され得る。
【0068】
具体的な一実施形態において、固定されていない標識複合体−分析物−固定された第1反応物のサンドイッチが、まず、第2手段を使用して上記分析物を、固定されていない標識複合体に対して移動させること、その分析物を、固定されていない標識複合体に結合させること、その後、結合した分析物−固定されていない標識複合体を、第1手段を使用して、固定された第1反応物に対して移動させること、そして結合した分析物−固定されていない標識複合体を、固定された第1反応物に結合させて上記サンドイッチを形成することによって、形成される。
【0069】
別の具体的な実施形態において、固定されていない標識複合体自体は、直接検出可能な標識として機能する。
【0070】
本方法は、任意の分析物(例えば、細胞、細胞小器官、ウイルス、分子、およびそれらの凝集物もしくは複合体)をアッセイするために使用され得る。例示的な細胞としては、動物細胞、植物細胞、真菌細胞、細菌細胞、組換え細胞、および培養細胞が、挙げられる。動物細胞、植物細胞、真菌細胞、細菌細胞は、動物界、植物界、真菌界、もしくは細菌界の任意の属もしくは亜属に由来し得る。繊毛虫類、細胞粘菌、鞭毛虫類、および微胞子虫類、の任意の属もしくは亜属に由来する細胞もまた、本方法によってアッセイされ得る。鳥類(例えば、ニワトリ)、脊椎動物(例えば、魚類および哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ネコ、イヌ、ブタ、雌ウシ、雄ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、サル、および他の非ヒト霊長類、ならびにヒト))に由来する細胞が、本方法によってアッセイされ得る。
【0071】
動物細胞に関して、特定の組織または器官に由来する細胞が、本方法によってアッセイされ得る。例えば、結合組織、上皮組織、筋肉組織、または神経組織の細胞が、アッセイされ得る。同様に、副眼器由来の細胞、環螺旋形器官由来の細胞、聴覚器官由来の細胞、チーヴィッツ器官由来の細胞、脳室周囲器官群由来の細胞、コルティ器官由来の細胞、危険臓器由来の細胞、エナメル器由来の細胞、終末器由来の細胞、女の外生殖器由来の細胞、男の外生殖器由来の細胞、遊走器官由来の細胞、ルフィーニ散形器官由来の細胞、生殖器由来の細胞、ゴルジ腱紡錘由来の細胞、味覚器由来の細胞、聴覚器由来の細胞、女の内生殖器由来の細胞、男の内生殖器由来の細胞、陰茎由来の細胞、ヤコブソン器官由来の細胞、神経血液器官由来の細胞、嗅覚器由来の細胞、耳石器由来の細胞、遊走器官(optic organ)由来の細胞、ローゼンミュラー器官由来の細胞、感覚器由来の細胞、嗅覚器由来の細胞、螺旋器由来の細胞、交連下器官由来の細胞、脳弓下器官由来の細胞、過剰器官由来の細胞、触覚器由来の細胞、標的器官由来の細胞、味覚器(organ of taste)由来の細胞、触覚器(organ of touch)由来の細胞、泌尿器由来の細胞、大脳終板の脈管器官由来の細胞、前庭器由来の細胞、平衡聴覚器由来の細胞、痕跡器官由来の細胞、視覚器(organ of vision)由来の細胞、視覚器由来の細胞、鋤鼻器由来の細胞、遊走器官由来の細胞、ウェーバー器官由来の細胞、ならびにツッカーカンドル器官由来の細胞が、使用され得る。好ましくは、動物の内部器官(例えば、脳、肺、肝臓、脾臓、骨髄、胸腺、心臓、リンパ腺、血液、骨、軟骨、膵臓、腎臓、胆嚢、胃、腸、精巣、卵巣、子宮、直腸、神経系、腺、内部血管など)に由来にする細胞が、アッセイされ得る。さらに、任意の植物、真菌(例えば、酵母)、細菌(例えば、真正細菌または古細菌)に由来する細胞が、アッセイされ得る。任意の真核生物供給源または原核生物供給源(例えば、動物細胞、植物細胞、真菌細胞、または細菌細胞)に由来する組換え細胞もまた、アッセイされ得る。体液(例えば、血液、尿、唾液、骨髄、精液、または他の腹水)およびその部分(例えば、血清または血漿)もまた、アッセイされ得る。
【0072】
例示的な細胞小器官としては、核、ミトコンドリア、クロロプラスト、リボソーム、ER、ゴルジ装置、リソソーム、プロテアソーム、分泌小胞、小胞およびミクロソームが、挙げられる。例示的な分子としては、無機分子、有機分子、およびその複合体が、挙げられる。例示的な有機分子としては、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、ヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、核酸、ビタミン、単糖、オリゴ糖、糖質、脂質、およびそれらの複合体が、挙げられる。
【0073】
任意のアミノ酸が、本方法によってアッセイされ得る。例えば、D−アミノ酸およびL−アミノ酸が、アッセイされ得る。さらに、天然に存在するペプチドおよびタンパク質(Ala(A)、Arg(R)、Asn(N)、Asp(D)、Cys(C)、Gln(Q)、Glu(E)、Gly(G)、His(H)、Ile(I)、Leu(L)、Lys(K)、Met(M)、Phe(F)、Pro(P)、Ser(S)、Thr(T)、Trp(W)、Tyr(Y)およびVal(V)が挙げられる)の任意の構築ブロックが、本方法によってアッセイされ得る。
【0074】
任意のタンパク質またはペプチドは、本方法によってアッセイされ得る。例えば、酵素、輸送タンパク質(例えば、イオンチャネルおよびイオンポンプ)、栄養タンパク質または貯蔵タンパク質、収縮タンパク質または運動タンパク質(例えば、アクチンおよびミオシン)、構造タンパク質、欠損タンパク質または調節タンパク質(例えば、抗体、ホルモン、および増殖因子)が、アッセイされ得る。タンパク質様抗原またはペプチド抗原もまた、アッセイされ得る。
【0075】
任意の核酸(一本鎖核酸、二本鎖核酸、および三本鎖核酸が挙げられる)が、本方法によってアッセイされ得る。そのような核酸の例としては、DNA(例えば、A型DNA、B型DNA、またはZ型DNA)、ならびにRNA(例えば、mRNA、tRNAおよびrRNA)が、挙げられる。
【0076】
任意のヌクレオシドが、本方法によってアッセイされ得る。そのようなヌクレオシドの例としては、アデノシン、グアノシン、シチジン、チミジン、およびウリジンが挙げられる。任意のヌクレオチドが、本方法によってアッセイされ得る。そのようなヌクレオチドの例としては、AMP、GMP、CMP、UMP、ADP、GDP、CDP、UDP、ATP、GTP、CTP、UTP、dAMP、dGMP、dCMP、dTMP、dADP、dGDP、dCDP、dTDP、dATP、dGTP、dCTP、およびdTTPが、挙げられる。
【0077】
任意のビタミンが、本方法によってアッセイされ得る。例えば、水溶性ビタミン(例えば、チアミン、リボフラビン、ニコチン酸、パントテン酸、ピリドキシン、ビオチン、葉酸、ビタミンB12、およびアスコルビン酸)が、アッセイされ得る。同様に、脂溶性ビタミン(例えば、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、およびビタミンK)が、アッセイされ得る。
【0078】
任意の単糖が、D−単糖であろうと、L−単糖であろうと、そしてアルドースであろうと、ケトースであろうと、本方法によってアッセイされ得る。単糖の例としては、トリオース(例えば、グリセルアルデヒド)、テトロース(例えば、エリトロースおよびトレオース)、ペントース(例えば、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、およびリブロース)、ヘキソース(例えば、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、およびフルクトース)、ならびにヘプトース(例えば、セドヘプツロース)が、挙げられる。
【0079】
任意の脂質が、本方法によってアッセイされ得る。脂質の例としては、トリアシルグリセロール(例えば、トリステアリン、トリパルミチン、およびトリオレイン)、ロウ、ホスホグリセリド(例えば、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトールおよびカルジオリピン)、スフィンゴ脂質(例えば、スフィンゴミエリン、セレブロシドおよびガングリオシド)、ステロール(例えば、コレステロールおよびスチグマステロール)、ならびにステロール脂肪酸エステルが、挙げられる。上記脂肪酸は、飽和脂肪酸(例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、およびリグノセリン酸)であっても、または不飽和脂肪酸(例えば、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、およびアラキドン酸)であってもよい。
【0080】
本方法は、任意のサンプルをアッセイするために使用され得る。例えば、本方法は、哺乳動物サンプルをアッセイするために使用され得る。例示的な哺乳動物としては、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ウサギ、モルモット、マウス、ヒト、ネコ、サル、イヌ、およびブタが、挙げられる。本方法はまた、臨床サンプルをアッセイするために使用され得る。例示的な臨床サンプルとしては、血清、血漿、白血球、痰、脳脊髄液、羊水、尿、胃腸内容物、毛、唾液、汗、ゴム擦過標本、および生検由来組織が、挙げられる。好ましくは、本方法は、ヒト臨床サンプルをアッセイするために使用され得る。
【0081】
(D.例示的な実施形態)
本発明者らは、従来の受動型バイオチップ、能動型バイオチップ、およびラブ・オン・チップシステムの限界に取り組むために、分析物を分析するための微粒子ベースのバイオチップデバイスを開発した。このデバイスにおいて、従来の分離されていた工程(例えば、シグナル標識、生化学的反応、および反応の検出)が、本発明の微粒子によって統合される。本発明の微粒子は、シグナル標識、生化学的反応速度の増加、およびアッセイにおけるバックグラウンドノイズの減少を、提供する。統合された工程は、適切な物質によって包まれた、制御可能に閉鎖される空間(例えば、反応チャンバ)において実行される。その分析プロセスは、分析されるべきサンプルを上記デバイスに導入する工程、および反応チャンバを直接通してチップ上での反応を評価する工程しか、必要としない。この反応の間に上記チャンバと外側環境との間で物質の交換はないので、従来のシステムにおける手動操作工程が、単純化され、そして混入が回避される。同時に、上記デバイスは、上記チャンバ中の微粒子の移動を制御して反応を促進するように力を適用するための手段を備える。これらの微粒子は、検出可能なシグナルまたはシグナルの標識および増幅のための、キャリアとして作用する。本発明のデバイスは、1つの分析物または複数の分析物を分析するために使用され得る。上記分析物は、DNA分子、タンパク質、RNA分子、抗体、ペプチド、多糖、細胞、ウイルス、またはそれらの任意の組合せなどであり得る。上記デバイスは、基材を備え、この基材は、その基材表面に固定された分析物に結合可能である反応物を含む。このデバイスはまた、適切な物質によって包まれた反応チャンバを備える。この適切な物質は、生体適合性であり、分析物と反応物との間のいかなる相互作用も阻害しない。このような相互作用としては、DNAとDNAとの間の相互作用、DNAとRNAとの間の相互作用、LNAとDNAとの間の相互作用、LNAとRNAとの間の相互作用、PNAとDNAとの間の相互作用、PNAとRNAとの間の相互作用、タンパク質とタンパク質との間の相互作用、抗体と抗原との間の相互作用、タンパク質とDNAとの間の相互作用、ならびにタンパク質と多糖との間の相互作用が挙げられるが、これらに限定されない。上記デバイスは、サンプル調製用微小デバイス、移動式温度制御システム、ならびに検出システムと組み合わせられ得て、移動式分析物圧政システムを形成し得る。本発明のデバイスは、いくつかの利点を提供し、その利点は、自動化、単純な手動操作、混入可能性の減少、改善された反応効率および感度のための固定された反応物付近での分析物の濃縮である。本発明の微粒子は、可視光顕微鏡によって検出され得るか、または高価な蛍光走査器を必要とせずに裸眼によってされ検出可能である、検出可能な標識を有し得る。その基材は、上記デバイスの制御手段と統合されないので、その基材は、従来の大規模製造によって製造され得、従って、その基材の製造コストは、低い。上記デバイスのいくつかの実施形態が、以下および実施例において、より詳細に記載される。
【0082】
本発明のデバイスのいくつかの実施形態が、図1において示される。図1を参照すると、反応チャンバ1が、開放および密閉され得る。上記の適切な物質は、生体適合性であり、DNAとDNAとの間の相互作用、DNAとRNAとの間の相互作用、LNAとDNAとの間の相互作用、LNAとRNAとの間の相互作用、PNAとDNAとの間の相互作用、PNAとRNAとの間の相互作用、タンパク質とタンパク質との間の相互作用、抗原と抗体との間の相互作用、タンパク質と核酸との間の相互作用、ならびにタンパク質と多糖との間の相互作用を阻害しない。いくつかの公知の物質としては、自己シールチャンバ(MJ Research,Inc.,MA,U.S.A.)、自己シールゲル(MJ Research,Inc.,MA,U.S.A.)、およびプラスチックシールチャンバが挙げられるが、これらに限定されない。反応システム2(図1)は、反応物が固定された微粒子と、分析物を含むサンプルと、その反応物とその分析物との間の相互作用のために適切な反応溶液とを、備える。反応物3は、基材表面上に、反応物3と、化学的に反応性の基または生体分子を含むように改変された基材表面との間の、共有結合反応もしくは非共有結合相互作用によって、固定され得る。固体基材4は、熱伝導性で、生体適合性で、かつ容易に入手可能である、物質であるべきである。この基材のために使用され得る物質としては、ガラス、石英ガラス、シリコン、セラミック、金属、およびプラスチックが、挙げられるが、これらに限定されない。デバイス5は、微粒子上に固定された反応物と分析物との間の相互作用を増強するため、反応チャンバ中の微粒子の移動を促進するように反応チャンバに力を適用するために、使用される。デバイス6は、上記微粒子と、基材上に固定された反応物付近の微粒子に結合した分析物との濃縮を促進して、その分析物と、基材上に固定された反応物との間の相互作用を促進するように反応チャンバに力を適用するために、使用される。デバイス7は、基材上に固定された反応物に結合していない微粒子をその反応物から離れるように移動させてその基材上の非特異的シグナルを排除するように、反応チャンバに対して力を適用するために、使用される。上記反応の検出のために使用されるデバイス8は、可視光を検出するための顕微鏡、または蛍光シグナルを検出するための市販の蛍光走査器であり得る。デバイス9は、反応温度制御デバイスであり、これは、漸増する温度の速度および温度制御の感度を調節し得る。この温度デバイスは、市販のPCR機器、インサイチュPCR機器、水浴装置、またはデバイス全体を小型化するための微小温度制御デバイスであり得る。図1におけるデバイスの各部分の構造および相対位置は、例示目的だけのための位置である。
【0083】
以下は、本発明の例示的デバイスを使用してサンプルを分析するための手順例である(図2):
(1)図2−1を参照すると、試験されるべきサンプルが、反応溶液混合されて、反応システム2を形成する。この反応システム2は、その後、反応チャンバ1に導入される。反応システム2は、この反応に必要な溶液、表面上に固定された反応物A’もしくはB’を有する微粒子、ならびにサンプル中の分析物a、b、およびxを備える。基材4は、表面上に異なる位置に固定された異なる反応物A、B、およびCを有する。反応物A’およびAは、分析物aに特異的に結合し得る。反応物B’およびBは、分析物bに特異的に結合し得る。
【0084】
(2)図2−2を参照すると、デバイス5は、力F1を生じるように操作されて、反応システム2における微粒子の移動を加速する。同時に、温度制御デバイス9が、反応システムの温度を制御するために使用される。
【0085】
(3)図2−3を参照すると、デバイス5の操作の間、分析物aまたはbは、微粒子上に固定された反応物A’またはB’にそれぞれ結合する。その後、デバイス5の操作は、停止される。
【0086】
(4)図2−4を参照すると、デバイス5は、力F2を生成するように操作されて、基材4上に固定された反応物に向かって、分析物に結合している微粒子を駆動させる。
【0087】
(5)図2−5を参照すると、デバイス6の操作の間に、分析物に結合している微粒子が、基材4上に固定された反応物付近に濃縮される。デバイス6の操作は、停止され、デバイス9が、反応システムにおける温度を制御するために作動される。
【0088】
(6)図2−6を参照すると、微粒子に結合した分析物aまたはbは、基材4に固定された反応物AまたはBにそれぞれ結合する。その後、その反応は停止される。
【0089】
(7)図2−7を参照すると、デバイス7は、力F3を生成するように操作されて、基材4上に固定された反応物付近の位置から離れるように、基材4に結合していない微粒子を移動させる。
【0090】
(8)図2−8を参照すると、デバイス7の操作の間に、基材に結合していない微粒子が、基材4上に固定された反応物付近の位置から除去されて、反応チャンバ1内の別の領域において濃縮される。デバイス7の操作が、停止される。
【0091】
(9)図2−9を参照すると、検出デバイスが、基材4上のシグナルを評価するために使用される。基材4上における反応物Aおよび反応物Bの位置において示されるが反応物Cの位置では示されない特異的シグナルは、試験されるサンプルが分析物aおよびbを含むことを示す。
【0092】
図1において示されるデバイスを参照すると、いくつかの実施形態において、上記微粒子は、磁気微粒子である。デバイス5は、磁力、機械的な力、または音響学的な力を生成するための、磁気デバイス、機械デバイス、または音響デバイスである。デバイス6は、磁力を生成するための磁気デバイスである。デバイス7は、磁力または遠心力を生成するための、磁気デバイスまたは遠心デバイスである。
【0093】
図1において示されるデバイスを参照すると、他の実施形態において、上記微粒子は、ポリスチレン微粒子である。デバイス5は、機械的な力または音響学的な力を生成するための、機械デバイスまたは音響デバイスである。デバイス6は、遠心力を生成するための遠心デバイスである。デバイス7は、遠心力を生成するための遠心デバイスである。これらの実施形態において、反応物を含む基材の側面が上を向くと、反応物を含む領域は、図3において示されるような基材の他の部分に対して下がる。これによって、遠心力下で反応物付近での微粒子の濃縮が促進される。
【0094】
図1において示されるデバイスを参照すると、他の実施形態において、上記微粒子は、荷電微粒子である。デバイス5は、電気的な力、磁力、または音響学的な力を生成するための、電気デバイス、磁気デバイス、または音響デバイスである。デバイス6は、電気的な力を生成するための電気デバイスである。デバイス7は、電気的な力または遠心力を生成するための、電気デバイスまたは遠心デバイスである。
【実施例】
【0095】
(E.実施例)
(実施例1.B型肝炎の核酸の検出)
(1.アルデヒド基を有する基材の調製)
ガラス基材を、酸性洗浄溶液中に室温にて一晩浸漬した。その後、このガラス基材を、水で洗浄し、蒸留水で3回洗浄し、脱イオン水で2回洗浄した。その後、遠心分離した後に110℃まで15分間加熱することによって、乾燥させた。このガラス基材を、95%エタノール中の1% APTESに浸漬し、振盪器において室温にて1時間穏やかに振盪した。95%エタノール中で振盪した後、このガラス基材をリンスし、その後、約0.08Mpa〜約0.1Mpaおよび110℃の減圧乾燥器において20分間乾燥させた。一旦このガラス基材を室温まで冷却した後、そのガラス基材を、12.5%グルタルアルデヒド溶液(400mlの12.5%グルタルアルデヒド溶液について、100mlの50%グルタルアルデヒドを300mlのリン酸ナトリウム緩衝液(1M NaHPO 30mlおよび2.628g NaCl、pHを7.0に調整する)と混合する)中に浸漬した。室温にて4時間浸漬した後、その溶液を、穏やかに振盪し、そのガラス基材を、このグルタルアルデヒド溶液から取り出し、そして3×SSC中で1回洗浄し、脱イオン水中で2回洗浄した。過剰な水を、遠心分離によって除去し、そしてそのガラスプレートを室温にて乾燥させた。
【0096】
(2.プライマーおよび反応物の合成)
プライマーおよび反応物を、Shanhai Boya Biotechnologies Shanhai BioAsia Bitechnology co.によって合成した。反応物1は、アミノ−5’−ポリT(15nt) GCATGGACATCGACCCTTATAAAG−3’(配列番号1)である。反応物2は、Hex−5’−GGAGCTACTGTGGAGTTACTCCTGG−3’−ビオチン(配列番号2)である。上流プライマーは、gTTCAAgCCTCCAAgCTgTg(配列番号3)である。下流プライマーは、TCAgAAggCAAAAAAgAgAgTAACT(配列番号4)である。
【0097】
(3.磁気微粒子上にビオチン標識反応物を固定すること)
Dynabeads(登録商標)M−280 Streptavidin(10mg/ml,Dynal Biotech ASA,Oslo,Norway)100μl(磁気微粒子)を、1×PBS(0.1% BSA)中で3回洗浄した。その後、洗浄した微粒子を、100μlの1×PBS(0.1% BSA)中に再懸濁し、そして2μlの反応物2と混合した。その反応を、連続的に振盪しながら30℃にて30分間実行し、それによって、微粒子が底にペレット化しないようにした。その後、その微粒子を1×TE緩衝液中で3回洗浄し、1×TE緩衝液中に再懸濁した。
【0098】
(4.表面上に固定された反応物を含むガラス基材の調製)
反応物1を、10μMの最終濃度で50% DMSO中に溶解する。その反応物を、予め設計したパターンに従って、マイクロアレイプリントデバイス(Cartesian Technoligies,CA,U.S.A.)を使用して、基材上にプリントした。その後、プリントした基材を、室温で一晩乾燥した。その後、プリントした基材を、0.2% SDS中で、振盪しながら室温で2分間、2回浸漬した。その基材を2回リンスし、脱イオン水で1回洗浄し、その後、遠心分離によって乾燥させた。その後、その基材を、NaBH溶液(300mlの1×PBSおよび100mlのエタノール中に溶解した、0.1g NaBH)に移し、室温で穏やかに5分間振盪した。その基材を、再度2回リンスし、そして脱イオン水で各回1分間ずつ2回洗浄し、遠心分離によって乾燥した。
【0099】
(5.反応チャンバ)
反応チャンバを、操作マニュアルに従って自己シールチャンバ(MJ Research,Inc.,MA,U.S.A.)を使用して調製した。プリントした反応物(例えば、固定したプローブ)を有する基材が、このチャンバの内側に面した。
【0100】
(6.核酸テンプレート)
上流プライマーと下流プライマーとを使用して増幅した配列を含むプラスミド(pCP10、100ng/μl)を、テンプレートとして使用した。
【0101】
(7.核酸増幅)
PCR反応系は、10mmol/L Tris−HCl(24℃にてpH8.3)、50mmol/L KCl、1.5mmol/L MgCl、0.5mmol/Lの上流プライマーおよび下流プライマー、1単位のTaq DNAポリメラーゼ、200μmol/lのdNTP(dATP、dTTP、dCTPおよびdGTP)、0.1% BSA、0.1% Tween 20、2μmol/Lの反応物2、2μlのテンプレートを含んだ。総反応体積は、25μlである。その後、このPCR反応系を、反応チャンバ中に導入して密閉した。PCRを、94℃にて1分間の変性;94℃にて30秒間、55℃にて30秒間、および72℃にて1分間の主要サイクルを30サイクル;そして72℃にて10分間というプログラムでPTC−2000(MJ Research Inc.)を使用して、実行した。
【0102】
(8.ハイブリダイゼーション)
本実施例の第3節において調製された微粒子(25μl)を遠心分離して上清を除去し、それを、反応チャンバ中のPCR産物25μl中に導入した。その後、この反応チャンバを密閉した。このPCR産物を、まず、94℃にて2分間変性させ、その後、すぐに52℃まで冷却した。この反応チャンバに変化する磁場を適用して、磁気微粒子の移動を10分間加速させた。その後、磁場を上記基材の真下に適用して、反応物付近にこの微粒子を濃縮させた。このチャンバを30分間インキュベートしてハイブリダイゼーションを可能にした。その後、磁場をこのチャンバに適用して、固定された反応物から未結合微粒子が離れるように移動させた。
【0103】
(9.検出)
光シグナルを、操作マニュアルに従ってLeica透過顕微鏡を使用して検出した。基材上に固定された反応物の位置に黒いドットシグナルがあるが、ネガティブコントロールの位置にはシグナルがなく、サンプルを添加していない基材上にもシグナルがないことは、そのサンプルが、B型肝炎の核酸を含むことを示した。蛍光シグナルを、ScanArray 4000(GSI Lumonics,MA,U.S.A.)を用いて走査することによって検出した。この検出は、543nmのレーザー波長、レーザーデバイス3、シグナル検出用のフィルタ7、レーザーデバイスの80%機能、および増倍型光電管という設定を用いて操作マニュアルに従って実行し、基材に基づいて走査焦点を調整した。基材上に固定した反応物の位置に強力な蛍光シグナルがあるが、ネガティブコントロール位置にはシグナルがなく、サンプルを添加してない基材にもシグナルがないことは、そのサンプルがB型肝炎の核酸を含むことを示した。
【0104】
(実施例2.C型肝炎の核酸の検出)
C型肝炎の核酸の検出を、実施例1に記載された手順と同様の手順に以下のように改変を施して、実行した。本実施例のために使用される反応物1は、アミノ−5’−ポリT(15nt)ACGACACTCATACTAACGCCA−3’(配列番号5)であった。反応物2は、Hex−5’−GTCGTCCTGGCAATTCCG−3’−NH(配列番号6)であった。上流プライマーは、5’−CTCgCAAgCACCCTATCAggCAgT−3’(配列番号7)であった。下流プライマーは、5’−gCAgAAAgCgTCTAgCCATggCgT−3’(配列番号8)であった。アミノ基改変反応物2を、製造業者のマニュアルに従って、磁気微粒子(Dynabeads(登録商標)M−270 Carboxylic Acid(10mg/ml)、Dynal Biotech ASA,Oslo,Norway)上に固定した。この核酸テンプレートを、Roche High PureTM Viral Nucleic Acid Kitを製品マニュアルに従って使用する血清学的方法によって示されるC型肝炎陽性サンプル由来の新鮮な全血から単離し、その後、25μl溶出緩衝液中に溶解した。反応チャンバ中でハイブリダイゼーションした後、Leica透過顕微鏡を使用して、シグナルを検出した。基材上に固定した反応物の位置で黒いドットシグナルがあるが、ネガティブコントロールの位置でシグナルがなく、サンプルを添加していない基材にもシグナルがないことは、そのサンプルが、C型肝炎の核酸を含むことを示した。蛍光シグナルを、ScanArray(GSI Lumonics,MA,U.S.A)で走査することによって検出した。基材上に固定された反応物の位置に強力な蛍光シグナルがあるが、ネガティブコントロールの位置にシグナルがなく、サンプルを添加していない基材上にシグナルがないことは、そのサンプルが、C型肝炎の核酸を含むことを示した。
【0105】
(実施例3.E.coli の16S rRNAの検出)
E.coliの16S rRNAの核酸検出を、以下の改変を施した上で実施例1に記載した手順と同様に実行した。本実施例のために使用した反応物1は、アミノ−5’−ポリT(15nt)GCAAAGGTATTTACTTTACTCCC−3’(配列番号9)であった。反応物2は、Hex−5’−AATCACAAAGTCGTAAGCGCC−3’‐ビオチン(配列番号10)であった。核酸16S rRNAを、QIAGEN(QIAGEN GmbH,Germany)から得たRNeasy Kitを使用して、LB培地中で培養した100μl E.coli DN5(10,000/ml)から単離し、5×SSCと0.1% SDSとを含む30μlの溶液中に溶解した。ハイブリダイゼーションした後、シグナルを、Leica透過顕微鏡を使用して、シグナルを検出した。基材上に固定した反応物の位置で黒いドットシグナルがあるが、ネガティブコントロールの位置でシグナルがなく、サンプルを添加していない基材にもシグナルがないことは、そのサンプルが、E.coli 16S rRNAを含むことを示した。蛍光シグナルを、ScanArray 4000(GSI Lumonics,MA,U.S.A)で走査することによって検出した。基材上に固定された反応物の位置に強力な蛍光シグナルがあるが、ネガティブコントロールの位置にシグナルがなく、サンプルを添加していない基材上にシグナルがないことは、そのサンプルが、E.coli 16S rRNAを含むことを示した。
【0106】
上記の実施例は、例示のためだけに含まれており、本発明の範囲を限定することは意図されない。上記に対する多くの改変が、可能である。上記の実施例に対する改変および変更は、当業者にとって明らかであるので、本発明は、添付された特許請求の範囲の範囲によってのみ限定されることが、意図される。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】図1は、本発明の例示的なデバイスを示す。
【図2】図2−1から2−9は、種々の分析物を、デバイスの表面上のそれらの結合試薬に結合し、望ましくないアイテムを、分析物−結合試薬相互作用領域から除去するための、図1に例示されるデバイスの例示的な操作を示す。
【図3】図3は、微粒子が、遠心力または磁力を介して操作される、図1に例示されるデバイスの例示的操作を示す。一例において、この微粒子は、ポリスチレン微粒子である。これらの微粒子は、図3に示されるように、反応物を有する基材の側面に力がかけられ、反応物を有する領域が基材の他の部分に比較して下がっている場合に、遠心力を介して、反応物(例えば、プローブ)領域に濃縮される。このことは、遠心力の下で、反応物の周りに微粒子を濃縮することを容易にする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析物を分析するためのデバイスであって、該デバイスは、以下:
a)基板上の適切な材料によって収容される、制御可能に閉鎖される空間であって、該適切な材料は、熱伝導性であり、生体適合性であり、そして分析物と反応物との間の結合を阻害せず、そして該制御可能に閉鎖される空間は、該基板の表面上に、該分析物に結合し得る第1の固定された反応物を備える、制御可能に閉鎖される空間;
b)該分析物を、該第1の固定された反応物へと制御可能に移動させるための第1の手段;
c)該分析物を標識された、固定されていない複合体へと制御可能に移動させるための第2の手段であって、該複合体は、該分析物に結合し得る第2の反応物および微粒子を含む、第2の手段;ならびに
d)該分析物に結合していない、該標識された固定されていない複合体を、該第1の固定された反応物から離れるように制御可能に移動させるための、第3の手段、
を備え、
該分析物および該標識された固定されていない複合体を含む該サンプルの、該制御可能に閉鎖される空間内への添加、ならびに該手段の操作が、該標識された固定されていない複合体−該分析物−該第1の固定されていない反応物のサンドイッチの、該基板上での形成を生じる、デバイス。
【請求項2】
前記適切な材料が、自己密封チャンバ、自己密封ゲルまたはプラスチックチャンバである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記基板が、ケイ素、プラスチック、ガラス、石英ガラス、セラミック、ゴム、金属、ポリマー、ハイブリダイゼーションメンブレン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される材料を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記基板の表面が、化学的に反応性の基または生体分子を含むように修飾されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記化学的に反応性の基が、−CHO、−NH、−SH、−S−S−、エポキシ基およびトシル基からなる群より選択される、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記生体分子が、ビオチン、ストレプトアビジン、アビジン、his−タグ、sterpt−タグ、ヒスチジンタグおよびプロテインAからなる群より選択される、請求項4に記載のデバイス。
【請求項7】
前記分析物が、細胞、細胞小器官、ウイルス、分子およびこれらの凝集物または複合体からなる群より選択される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記第1の固定された反応物が、細胞、細胞小器官、ウイルス、分子およびこれらの凝集物または複合体からなる群より選択される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記第1の固定された反応物が、前記分析物に特異的に結合する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記第1の固定された反応物が、前記基板の表面上に含まれる、化学的に反応性の基または生体分子を介して、該基板上に固定される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
前記標識された固定された複合体が、前記第2の反応物上または前記微粒子上の検出可能な標識を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
前記検出可能な標識が、放射性標識、蛍光標識、化学標識、酵素標識、発光標識、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)標識および分子ビーコンからなる群より選択される、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記検出可能な標識が、蛍光標識である、請求項11に記載のデバイス。
【請求項14】
前記蛍光標識が、蛍光信号を発生させるために、第2の蛍光標識に隣接している、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記蛍光標識が、FAM、TET、HEX、FITC、Cy3、Cy5、Texas Red、ROX、フルオレセイン、TAMRAおよび希土類金属を含むナノ粒子からなる群より選択される、請求項13に記載のデバイス。
【請求項16】
前記第2の反応物が、細胞、細胞小器官、ウイルス、分子、およびこれらの凝集物または複合体からなる群より選択される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項17】
前記第2の反応物が、前記分析物に特異的に結合する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項18】
前記第2の反応物が、前記微粒子の表面上に含まれる、化学的に反応性の基または生体分子を介して、前記微粒子に結合体化されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項19】
前記化学的に反応性の基が、−CHO、−NH、−SH、−S−S−、エポキシ基およびトシル基からなる群より選択される、請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
前記生体分子が、ビオチン、ストレプトアビジン、アビジン、his−タグ、strept−タグ、ヒスチジンタグおよびプロテインAからなる群より選択される、請求項18に記載のデバイス。
【請求項21】
前記微粒子が、磁性微粒子、磁化可能微粒子、荷電微粒子、または荷電可能微粒子である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項22】
前記微粒子が、有機材料、ガラス、SiO、セラミック、炭素および金属からなる群より選択される材料を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項23】
前記微粒子が、約1nm〜約10μmの範囲の直径を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項24】
前記第1の手段が、電気力、磁力、音響力、重力および遠心力からなる群より選択される力を介して、前記分析物を前記第1の固定された反応物まで制御可能に移動させる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項25】
前記第2の手段が、電気力、磁力、音響力、重力および遠心力からなる群より選択される力を介して、前記分析物を前記標識された固定複合体まで制御可能に移動させる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項26】
前記第2の手段が、前記標識された固定複合体の微粒子に力を付与することによって、前記分析物を該標識された固定複合体まで制御可能に移動させる、請求項25に記載のデバイス。
【請求項27】
前記第3の手段が、電気力、磁力、音響力、重力および遠心力からなる群より選択される力を介して、前記分析物に結合していない前記標識された固定複合体を、前記第1の固定された反応物から離して制御可能に移動させる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項28】
前記第3の手段が、前記標識された固定複合体の微粒子に力を付与することによって、前記分析物に結合していない前記標識された固定複合体を、前記第1の固定された反応物から離して制御可能に移動させる、請求項27に記載のデバイス。
【請求項29】
前記分析物が、DNA、RNA、ペプチド核酸(PNA)、ロックされた核酸(LNA)、タンパク質、ペプチド、抗体および多糖類からなる群より選択される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項30】
前記DNA、RNA、PNAおよびLNAが、約5塩基対〜約1,000塩基対の範囲の長さを有する、請求項29に記載のデバイス。
【請求項31】
DNA−DNAハイブリダイゼーション、DNA−RNAハイブリダイゼーション、DNA−LNAハイブリダイゼーション、DNA−PNAハイブリダイゼーション、RNA−RNAハイブリダイゼーション、RNA−PNAハイブリダイゼーション、RNA−LNAハイブリダイゼーション、PNA−PNAハイブリダイゼーション、PNA−LNAハイブリダイゼーション、タンパク質−タンパク質相互作用、タンパク質−核酸相互作用、タンパク質−多糖類相互作用または抗原−抗体相互作用を分析するために使用される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項32】
単一の分析経路または複数の分析経路を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項33】
約1〜約10,000の分析経路を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項34】
温度制御手段をさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項35】
前記温度制御手段が、PCR機、インサイチュPCRサーマルサイクラー、水浴またはミクロサーマルコントローラを備える、請求項34に記載のデバイス。
【請求項36】
前記標識された固定複合体−分析物−第1の固定された反応物の前記サンドイッチを検出するための手段をさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項37】
前記検出する手段が、顕微鏡、光学スキャナまたは蛍光スキャナを備える、請求項36に記載のデバイス。
【請求項38】
前記基板上の、前記標識された固定複合体−分析物−第1の固定された反応物の前記サンドイッチが、前記制御可能に閉鎖される空間と外部環境との間にいかなる材料交換も含まない、請求項1に記載のデバイス。
【請求項39】
分析物を分析するための方法であって、該方法は:
a)請求項1に記載のデバイスを提供する工程;
b)分析物および標識された固定されていない複合体を含むか、または含むと疑われるサンプルを、該デバイスの制御可能に閉鎖される空間に導入する工程であって、該複合体が、該分析物および微粒子に結合し得る、第2の反応物を含む、工程;
c)該デバイスの手段を作動させて、該標識された固定されていない複合体−分析物−第1の固定された反応物のサンドイッチを、前記基板上に形成する工程;
d)該サンドイッチを評価して、該サンプル中の該分析物の存在および/または量を決定する工程、
を包含する、方法。
【請求項40】
前記サンプルが、固体サンプル、液体サンプル、または気体サンプルである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
単一の分析物または複数の分析物を分析するために使用される、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記複数の分析物が、連続的に分析されるかまたは同時に分析される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
約1〜約30,000の分析物を分析するために使用される、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記標識された固定されていない複合体−分析物−第1の固定された反応物の前記サンドイッチが、最初に、前記分析物を、前記第2の手段を使用して、前記標識された固定されていない複合体まで移動させて、該分析物を該標識された固定されていない複合体に結合させ、次いで、該結合した分析物−標識された固定された複合体を、前記第1の手段を使用して、前記第1の固定された反応物まで移動させて、該結合した分析物−標識された固定されていない複合体を、該第1の固定された反応物に結合させて、サンドイッチを形成させ、そして、該分析物に結合していない該標識された固定されていない複合体を、前記第3の手段を使用して、該第1の固定された反応物から離れるように移動させることによって形成される、請求項39に記載の方法。
【請求項45】
前記標識された固定されていない複合体における前記微粒子が、それ自体で、調節検出可能な標識として機能する、請求項39に記載の方法。
【請求項46】
前記基板上の、前記標識された固定されていない複合体−分析物−第1の固定された反応物の前記サンドイッチが、前記制御可能に閉鎖される空間と外部環境との間にいかなる材料交換も含まない、請求項39に記載の方法。

【図1】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−526134(P2006−526134A)
【公表日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−571760(P2004−571760)
【出願日】平成15年7月14日(2003.7.14)
【国際出願番号】PCT/CN2003/000562
【国際公開番号】WO2004/101730
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(503012203)ツィンフア ユニバーシティ (10)
【出願人】(504278260)キャピタルバイオ コーポレーション (10)
【Fターム(参考)】