説明

微粒子形成装置およびその方法

【課題】 被蒸着体の表面に塊(ダマ)を形成させずに、蒸着材を付着することができる微粒子形成装置を提供する。
【解決手段】 攪拌容器73に収納された担持体であるアルミナ粉(被蒸着体7)を攪拌しながらナノ粒子(蒸着体)のプラズマを上から照射し、アルミナ粉表面に触媒金属を担持させる。この過程で、スタンプ85のアーム部89は、攪拌容器73の回転に連動して、上部開口部の縁部90の斜めに切りかけたスロープを登る。そして、最終上段まで上がったときに、段差90cで低い段差に急激に落とされて、その下部にあった被蒸着体7の塊を粉砕する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ微粒子を担持体に付着する微粒子形成装置およびその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、排ガス用触媒は高度化しており、白金系をベースとしてロジウム,パラジウム等の2元系,3元系の合金のナノサイズにしてアルミナ粉等の担持体に付着させている。
これらの触媒金属の担持は現在主に湿式プロセスで行われており、この方法ではナノ粒子の触媒を長期間使用すると加熱により凝集し易く、性能が劣下するという問題がある。
湿式プロセスではその劣下分を考慮して、初期に多めに触媒を担持しており、貴金属が高騰しかつ、資源としても少なく、今後車が増える点より大きな問題となっている。
この点、最近開発された同軸型真空アーク蒸着源を用いてナノ粒子を真空中で付着させるドライ担持は密着性に優れているので経年変化しにくい。この方法では白金、ロジウム、パラジウムなどの単体金属あるいはこれらの合金のターゲットを用い、真空アーク(下記特許文献1,2)により、これらの金属材料をプラズマ化して原子状でアルミナ等の粉の担持体に吹きつけ、アルミ等の粉に白金,ロジウム,パラジウム等、あるいはそれらの合金のナノ粒子を担持するものである。
また、光触媒においても光触媒用チタニア粉末等に助触媒で金や白金等を0.3%〜1%程度のナノ粒子を担持するたけで、光触媒効果の向上が認められ、ナノ粒子を各種担持体の粉に真空中で担持する製法は今後従来の湿式プロセスから特定の分野においてはとって変わるものになる可能性がある。
【0003】
従来の微粒子形成装置は、真空中の円筒容器に収納されたアルミナ粉などの担持体を攪拌しながら真空アークプラズマ発生装置を用いて発生させた触媒金属のプラズマを上から照射し、アルミナ粉表面に触媒金属を担持させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−204810号公報
【特許文献2】特開2007−254762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の微粒子形成装置は、真空中で従来の攪拌方法で連続で攪拌容器を回転させると、図11に示すチタニア粉に金を担持させた例に示すように、チタニアの粉が凝集したダマ(塊)が形成され、容器の回転と共に雪だるま状に大きくなり、金ナノ粒子がダマ表面にのみ付着して触媒金属を担持したチタニア粉末の性能を劣化させてしまう。
これはチタニア粉表面に付着した金ナノ粒子が接着剤の役割をするためで、真空中のナノ粒子同士は弱い機械的圧力でも容易に凝着することによる。一度小さなダマが形成されると、回転している容器の動きに伴い転がるダマは雪だるま式にチタニアの粉をまぶすようにして大きなダマへと成長してしまう。このようなダマでは金粒子がダマ表面のみに付着し内部のチタニア粉にはほとんど付着しない。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、被蒸着体の表面に塊(ダマ)を形成させずに、蒸着材を付着することができる微粒子形成装置およびその方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した従来技術の問題点を解決し、上述した目的を達成するために本発明の微粒子形成装置は、蒸着材を飛翔する蒸着源と、前記蒸着源と対向して配置され、被蒸着体である粉体状担体を収容する容器と、前記容器内で前記粉体状担体を攪拌する攪拌手段と、前記攪拌手段による攪拌過程で生じた前記粉体状担体の塊を粉砕するために、前記容器内の底面を叩く粉砕手段とを有する。
【0008】
本発明の微粒子形成装置では、蒸着源からの容器に蒸着材が飛翔し、当該蒸着源材料が容器内の被蒸着体に衝突して担持する。
このとき、前記容器内で、攪拌手段によって前記粉体状担体が攪拌されると共に、粉砕手段によって、前記攪拌手段による攪拌過程で生じた前記粉体状担体の塊が粉砕される。
【0009】
好適には、本発明の微粒子形成装置の前記粉砕手段は、スタンプヘッドを前記底面に衝突させる第1の動作と、前記スタンプヘッドを前記底面に接触させた状態で保持する第2の動作と、前記スタンプヘッドを前記底面から離す第3の動作とを順に繰り返す。
好適には、本発明の微粒子形成装置の前記容器は、円筒状あるいは円錐状であり、中心軸を中心に回転し、前記攪拌手段は、前記容器の周囲に一端が固定され、他端が前記容器内に挿入され、前記前記容器の回転と連動して移動する前記前記粉体状担体に衝突して攪拌する。
【0010】
好適には、本発明の微粒子形成装置の前記粉砕手段は、板状の前記スタンプヘッドを、前記底面に対して上下移動させて、当該スタンプヘッドのスタンプ面を前記底面に衝突させ、前記スタンプ面の前記被蒸着体が侵入する側の端部は、前記底面から離れる向きに傾斜している。
好適には、本発明の微粒子形成装置の前記撹拌手段は、前記容器の上部開放部から当該容器の前記底面の外周付近に当接し、当該当接した箇所から底面に沿って内側に延びる第1のスクレーパと、前記上部開放部から前記容器の前記底面の前記中心軸付近に当接し、当該した箇所から底面に沿って外側に延びる第2のスクレーパとを有する。
好適には、本発明の微粒子形成装置の前記容器の前記開放部の円状の縁部は、前記中心軸が延びる方向に傾斜するスロープとなり、所定箇所で段差を有する。また、前記粉砕手段は、前記底面に向けて付勢されながら前記縁部に当接するアーム部を有し、当該アーム部が前記段差で前記底面に向けて落下したときに前記スタンプヘッドを前記底面に接触させ、前記アーム部が前記スロープに沿って所定の位置に達したときに前記スタンプヘッドを前記底面から離す。
【0011】
好適には、前記容器の回転速度は、前記蒸着源の蒸着周期が短くなるに従って高まり、前記攪拌手段の前記スタンプヘッドの前記底面への衝突周期は、前記蒸着源の放電周期が短くなるに従って高まる。
好適には、本発明の微粒子形成装置の前記粉体状担体は、粒径0.1μm以上〜1mm以下の粉体である。
【0012】
本発明の微粒子形成方法は、真空アーク蒸着源と対向して配置された容器内の被蒸着体を攪拌させながら、前記真空アーク蒸着源から飛翔した蒸着材を前記被蒸着体に担持させる微粒子形成方法であって、前記容器内で前記粉体状担体を攪拌する過程で、粉砕手段で前記容器内の底面を叩いて、前記攪拌によって生じた前記粉体状担体の塊を粉砕する。
好適には、本発明の微粒子形成方法は、前記被蒸着体に前記蒸着される蒸着材の量が増えるに従って前記容器の回転速度を速くする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、被蒸着体の表面にダマを形成させずに、蒸着材を付着することができる微粒子形成装置およびその方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係わる微粒子形成装置の模式図である。
【図2】図2は、図1に示す微粒子形成装置のスクレーパの機能を説明するための図である。
【図3】図3は、チタニア粉末上に金を蒸着した場合におけるチタニア表面上の状態を示すTEM観察画像を説明するための図である。
【図4】図4は、図1に示す微粒子形成装置のスクレーパおよびスタンプを説明するための図である。
【図5】図5は、図1に示す微粒子形成装置の攪拌容器の外観図である。
【図6】図6は、図5に示すスタンプの構成の一部を説明するための図である。
【図7】図7は、本発明の実施形態に係わるスタンプと、攪拌容器の底面との距離の変化を時系列的に説明するための図である。
【図8】図8は、図5に示すスタンプの部分断面図である。
【図9】図9は、攪拌容器の上方から見た動作中の外観図である。
【図10】図10は、攪拌過程で生じるダマの外観図である。
【図11】図11は、攪拌過程で生じるダマの外観図である。
【図12】図12は、本発明の実施形態のスタンプヘッドでダマをつぶした場合の状態の図である。
【図13】図13は、本発明の実施形態の微粒子形成装置により、チタニア粉に金を担持した攪拌前後の粉がすりつぶされた結果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係わる微粒子形成装置について、図面を参照しながら説明する。
図1は、同軸型真空アーク蒸着源5を用いた微粒子形成装置1の模式図である。
図1に示す微粒子形成装置1は、例えば、真空中の円筒容器である攪拌容器73に収納された担持体であるアルミナ粉(被蒸着体7)を攪拌しながら真空アークプラズマ発生装置3を用いて発生させた触媒金属である原子状イオン化したプラズマを上から照射し、ナノ粒子をアルミナ粉表面に形成して触媒金属を担持させる。
図1に示す真空チャンバ2は、円筒状をしている。
真空チャンバ2内には、攪拌装置3および同軸型真空アーク蒸着源5が収納されている。
【0016】
[攪拌装置3]
攪拌装置3は、被蒸着体7を入れるための攪拌容器73と、被蒸着体7を攪拌するための固定羽根であるスクレーパ75a,75bと、攪拌過程で生じる被蒸着体7のダマ(塊)を潰すスタンプ85とを有する。
被蒸着体7は、例えば、粒径0.1μm以上〜1mm以下の粉体であるチタニアの粉である。
【0017】
攪拌容器73の下面の中心には、攪拌容器73をその中心軸80を中心に回転させる回転機構72が接続されている。
回転機構72は、固定テーブル71の下方に配置されている。
攪拌容器73の材質は、例えばステンレスであり、内壁(内側側面及び底面73a)はバフ研磨されている。攪拌容器73の上部開口部の径は例えば60〜300mmである。当該上部開口部は楕円形状でもよい。
攪拌容器73の内壁は、アルミナかテフロン(登録商標)でコーティングされている。コーティング方法はCVD,スパッタ,アーク方式いずれでも良い。テフロン(登録商標)であれば容器自体をテフロン(登録商標)で製作してもよい。
【0018】
図2は、微粒子形成装置1のスクレーパ75a,75bの機能を説明するための図である。図2(A)は攪拌容器73の上部開放部側から見た平面方向におけるスクレーパ75a,75bの配置を説明するための図、図2(B)はスクレーパ75aの側面方向から見た配置を説明するための図である。
図2(A)に示すように、攪拌容器73の周囲には、スクレーパ75a,75bが固定されている。
スクレーパ75a,75bは、例えばステンレスで製作されている。また、スクレーパ75a,75bは、直径1mm〜5mm程度の棒材で形成され、外側をテフロン(登録商標)チューブで被覆されている。
【0019】
スクレーパ75aは、攪拌容器73の上部開放部から攪拌容器73内に延び、攪拌容器73の底面73aの内周面付近に当接し、当該当接した箇所から底面73aに接触しながら内側に延びている。
また、スクレーパ75bは、攪拌容器73の上部開放部から攪拌容器73内に延び、底面73aの中心軸付近に当接し、当該した箇所から底面73aに接触しながら内周面に向けて延びている。
また、スクレーパ75bの先端と、スクレーパ75aとの間には、隙間76が形成されている。
【0020】
攪拌容器73内の被蒸着体7は、スクレーパ75bに衝突して隙間76に向けて(攪拌容器73の内周面に向けて)移動し、隙間76を介してスクレーパ75aに衝突して中心軸80に向けて移動する。被蒸着体7の一部は、スクレーパ75a,75bに衝突して、上向きに指向されて、それらを乗り越えて移動する。
このように、スクレーパ75a,75bを構成することで、攪拌容器73内の被蒸着体7を中心軸80から内周面に向けて、内周面から中心軸80に向けて、並びに深さ方向に移動でき、効率的に攪拌することができる。
これにより、チタニア粉末上に金を蒸着した場合には、図3のTEM観察に示されるように、チタニア表面上での金のナノ粒子の数nm〜10nmの金のナノ粒子がチタニア表面上に担持される。
【0021】
また、スクレーパ75a,75bを駆動するのではなく、スクレーパ75a,75bを固定して攪拌容器73を回転させるため、駆動機構を簡単にすることができる。
【0022】
図4は、微粒子形成装置1のスクレーパ75a,75bおよびスタンプ85を説明するための図である。
図4に示すように、攪拌容器73の周囲には、スクレーパ75a,75bの他にスタンプ85が配置されている。
スタンプ85は、スクレーパ75a,75bによる攪拌過程で生じた被蒸着体(粉体状担体)7のダマを粉砕するために、攪拌容器73内の底面73aを叩くスタンプヘッド87と、スタンプヘッドを支持するアーム部89とを有する。
【0023】
スタンプ85は、攪拌容器73が中心軸80を中心に回転する過程で、スタンプヘッド87を攪拌容器73の底面73aに衝突させる第1の動作と、スタンプヘッド87を上記底面73aに接触した状態で保持する第2の動作と、スタンプヘッド87を上記底面73aから徐々に離す第3の動作とを繰り返す。
【0024】
図5に示すように、攪拌容器73の上部開口部の円状の縁部90は、斜めに切り欠けられており、中心軸80が延びる方向に滑らかに傾斜するスロープを形成している。
攪拌容器73の上部開口部の縁部90は、傾斜していない第1の縁部90aと、底面73aから離れる向きに滑らかに傾斜する第2の縁部90bと、段差90cとを有する。
段差90bは、例えば3〜20mmである。
【0025】
アーム部89は、攪拌容器73内に配置される側の一端にスタンプヘッド87を固定し、その他端は図4および図6に示すように、スタンプヘッド保持部93に固定されている。アーム部89の直径は、例えば1mm〜5mm程度である。
【0026】
アーム部89の長手方向の中央付近は、攪拌容器73の上部開口部の縁部90に当接している。アーム部89は、バネ95によって攪拌容器73の底面73aに向けて付勢されている。
これにより、アーム部89は、攪拌容器73が中心軸80を中心に回転する過程で、その中央部付近を縁部90に常に接触させている。
アーム部89は、上述した縁部90の段差90cで底面73aに向けて落下してスタンプヘッド87を底面73aに衝突させ、第1の縁部90aでスタンプヘッド87を底面73aに接触させた状態を所定期間保持する。その後、第2の縁部90bでスタンプヘッド87cと底面73aとを非接触状態にする。この動作は、攪拌容器73が中心軸80を中心に1回転する間に行われ、当該回転中、上述した第1、2、3の動作が繰り返し行われる。
【0027】
図7は、上述した中心軸80の回転中におけるスタンプヘッド87と攪拌容器73の底面73aとの距離の時間変化を説明するための図である。
図7に示すように、スタンプヘッド87と攪拌容器73の底面73aとは周期的に接触する。
すなわち、アーム部89が縁部90のスロープを登るにつれ、スタンプヘッド87は底面73a(床面)から徐々に上方に浮き上がる。
なお、攪拌容器73の被蒸着体7の深さ、並びにスタンプヘッド87の上下運動の移動量は、スタンプヘッド87が被蒸着体7の表面から出ないように設定される。
なお、攪拌容器73の回転数は、例えば、20〜100rpmである。
【0028】
スタンプヘッド87の先端87aは、例えば、図8に示すように、攪拌容器73の底面73aから離れる向きに傾いている。これにより、攪拌容器73の回転に応じて被蒸着体7をスタンプヘッド87aに衝突させ、スタンプヘッド87と底面73aとの間に効率的に引き込むことができる。そのため、被蒸着体7のダマを完全に粉砕できる確率を高めることができる。
また、攪拌装置3では、スクレーパ75a,75bおよびスタンプ85のアーム部89の直径を非常に細くし、且つ、スタンプヘッド87が被蒸着体7の表面から出ないように設定されるため、同軸型真空アーク蒸着源5からのナノ粒子(蒸着体)が、スクレーパ75a,75bおよびスタンプヘッド87に衝突する量を少なくできる。
【0029】
微粒子形成装置1では、後述するようにパルスをトリガとして周期的に放電を行う。この放電(蒸着)の周期が短くなるに従ってダマが生じる量が多くなるため、攪拌容器73の回転速度を高めるように制御を行う。また、構造的理由から、スタンプ85の底面73aへの衝突周期は、攪拌容器73の回転速度に比例する。なお、攪拌容器73の回転開始してから所定時間経過後の攪拌容器73の回転速度を、当該所定時間内での回転速度に比べて早くしてもよい。
すなわち、被蒸着体に蒸着される蒸着材の量が増えるに従って攪拌容器73の回転速度を速くしてもよい。
[同軸型真空アーク蒸着源5]
同軸型真空アーク蒸着源5は、カソード電極に取付けられた金で成る円柱状の蒸着材料11と、アルミナで成るハット状の絶縁碍子14(以下、ハット型碍子と呼ぶ)と、トリガ電極13とを有する。
カソード電極に取付けられた蒸着材料11と、ハット型碍子14と、トリガ電極13は同心円状に密着させて取り付けられている。
【0030】
アノード電極23は、ステンレスで成り、円筒状をしている。また、このアノード電極23は、カソード電極に取付けられた蒸着材料11と同心円状に取付けられている。
なお、同軸型真空アーク蒸着源5は、図示しない支柱と図示しない真空フランジを介して、真空チャンバ2の壁面に取付けられている。
【0031】
また、図1中に簡易的な配線図で電源装置6を示す。
電源装置6は、トリガ電源31、アーク電源32、コンデンサユニット33を有する。
トリガ電源31は、パルストランスからなり、入力200VのμS単位のパルス電圧を約17倍に変圧して、3.4kV、数μS単位のプラス極性のトリガパルスを出力する。
【0032】
アーク電源32は、100V数Aの容量の直流電源であり、コンデンサユニット33に充電している。充電時間は約1秒必要とするので放電周期は1Hzとなる。
コンデンサユニット33は、720〜1800μF、耐圧100Vである。コンデンサユニット33は、アーク電源32により、100Vで充電される。
【0033】
トリガ電源31のプラス出力端子は、トリガ電極13に接続され、マイナス端子はアーク電源32のマイナス出力端子と同じ電位に接続され、さらにカソード電極に接続されている。コンデンサユニット33の両端子は、アーク電源32のプラスおよびマイナス端子間に接続されている。
【0034】
真空排気系9は、ターボ分子ポンプ51、仕切りバルブ52、ロータリポンプ53、調整バルブ54を有する。
ターボ分子ポンプ51からロータリポンプ53までは、金属製の配管で接続されており、真空チャンバ2内の真空排気を行っている。真空排気を行うことで、真空チャンバ2内は、10−4Pa以下に保たれている。
【0035】
以下、図1に示す微粒子形成装置1の動作例を説明する。
[同軸型真空アーク蒸着源5の動作例]
アーク電源32により、100Vで電荷を充電しておく。ここで、コンデンサユニット33は、720〜1800μFとする。
トリガ電極13にトリガ電源31からの3.4kVのトリガパルスを印加し、カソード電極に取付けられた蒸着材料11とトリガ電極13の間に、ハット型碍子14を介して印加することで、ハット型碍子14表面で沿面放電が発生し、蒸着材料11とアノード電極23との間でコンデンサユニット33に蓄電された電荷が放電され、カソード電極に多量の電流が流入し、金で成るカソード電極に取付けられた蒸着材料11が液相から気相、さらに金のプラズマが形成される。
【0036】
この時、カソード電極に多量の電流(2000A〜5000A)が、200μS〜500μSの間に流れるので、カソード電極に取付けられた蒸着材料11に磁場が形成される。プラズマ中の電子が、カソード電極に取付けられた蒸着材料11の形成した磁場によるローレンツ力を受けて、同軸型真空アーク蒸着源5の前方へ飛行するようになる。
【0037】
プラズマ中の蒸着材料である金イオンは、分極することでクーロン力により、同軸型真空アーク蒸着源5の前方へ飛行する電子に引き付けられるようにして同軸型真空アーク蒸着源5の前方へ飛行するようになる。
【0038】
一方、プラズマ中の蒸着材料である金のイオンは、分極することでクーロン力により、同軸型真空アーク蒸着源5の前方へ飛行する。その結果、金のイオンは、カーボンの粉7aを核にして成長し、ナノメートル単位の金粒子が形成される。
【0039】
このように金イオンを照射しながら、チタニアの粉をスクレーパ75a,75b上に攪拌容器73を回転させてチタニア粉を攪拌する。これを継続して、チタニア粉に均一に金のナノ粒子を形成する。
【0040】
さらに詳しくは、攪拌容器73の中のカーボンの粉7に向かって金イオンを照射する。ここで、攪拌容器73は回転機構72により回転しており、スクレーパ75a,75bによって、攪拌容器73内のカーボン等の被蒸着体7は攪拌される。
被蒸着体7は、スクレーパ75a,75bに衝突することにより、攪拌容器73の上に現れて金イオンに曝される。これを次々と継続することによって、攪拌容器73内の全ての被蒸着体7の粒子に均一に金の微粒子を形成するというものである。
【0041】
[攪拌および塊潰し動作]
図1に示す微粒子形成装置1は、例えば、真空中の円筒容器である攪拌容器73に収納された担持体であるアルミナ粉(被蒸着体7)を攪拌しながら真空アークプラズマ発生装置3を用いて発生させた触媒金属であるナノ粒子(蒸着体)のプラズマを上から照射し、アルミナ粉表面に触媒金属を担持させる。
この過程では、図4に示すスタンプ85のアーム部89は、中心軸80を中心とした攪拌容器73の回転に連動して、攪拌容器73の上部開口部の縁部90の斜めに切り欠けたスロープ(図5に示す第2の縁部90b)を登る。そして、スタンプヘッド87は、攪拌容器73の底面73aから徐々に上方に浮き上がる。
このとき、スタンプヘッド87は、アーム部89がバネ97で攪拌容器73の底面73a(下方)に引っ張られながら持ち上げられる。
【0042】
そして、最終上段まで上がったときに、図5に示す段差90cで低い段差に急激に落とされて、バネ97で下方に引っ張られていたスタンプヘッド87は攪拌容器73の底面73aにたたきつけて、その下部にあった被蒸着体7の塊を粉砕する
【0043】
そして、段差の底面73aにあってもスタンプヘッド87にはバネ97の弾性力が働いているので、攪拌容器73の回転にともないスタンプヘッド87は底面73aに接触しながら動く。すなわち、アーム部89と図5に示す第1の縁部90aとが接触している間は、スタンプヘッド87は底面73aに接触しながら移動する。
この時のスタンプヘッド87と底面73aとの間に進入した細かい粒はスタンプヘッド87と底面73aとの間を通過するため、そば粉のすり鉢のようにすれてさらに粉に砕かれる。
そして再度、スタンプヘッド87か下段から徐々に縁部90bのスロープを登って、最上段の段差90cの位置に到達した時点で一気に下段に落とされることで、バネ97の張力が解放されて、ダマを潰して、その後すりつぶす。これを繰り返す。
【0044】
図9は、攪拌容器73の上方から見た動作中の外観図である。
図10および図11は、残ったダマの状態の図である。
図9および図12は、スタンプヘッド87でダマをつぶした場合の状態の図である。
図12にカーボンの粉に金を担持した後の粉がすりつぶされている状態をしめます。
図13は、本発明の実施形態の微粒子形成装置により、チタニア粉に金を担持した攪拌前後の粉がすりつぶされた結果を説明するための図であり、図13(A)が攪拌前、図13(B)が攪拌後を示している。
【0045】
以上説明したように、微粒子形成装置1は、スタンプ85を用いて攪拌容器73内の被蒸着体7のダマに圧力を加えて押しつぶすしかつ、そのつぶした粉をスタンプ85のスタンプヘッド87と攪拌容器73の底面73aとの間で攪拌容器73の回転に応じてさらに細かくすりつぶす。
これにより、真空中で各種金属、反応性物を蒸着担持する場合に粉のダマ形成の抑制と形成されたダマの加砕を行いすりつぶすことでき、触媒担持中の粉の凝集を防ぎ、均一で担自前と粒度を保持したままで粉に触媒を担持することができる。
【0046】
[第1の変形例]
上述した実施形態では、スタンプヘッド87の上下動作に、攪拌容器73の壁上縁にスロープと段差をつけ、スタンプ85のアーム部89をバネ97で下方に引っ張り、攪拌容器73の回転を利用して段差部で下方にたたきつける機構を用いた。
本発明は、例えば、攪拌容器73の回転と連動せずに、独立してスタンプ85を上下駆動する機構を用いてもよい。
【0047】
[第2の変形例]
上述した実施形態では、ダマをすりつぶすのにスタンプ85を利用していたが、代わりに、ローラーやプロペラでダマをすりつぶす機構を用いてもよい。
【0048】
本発明は上述した実施形態には限定されない。
すなわち、当業者は、本発明の技術的範囲またはその均等の範囲内において、上述した実施形態の構成要素に関し、様々な変更、コンビネーション、サブコンビネーション、並びに代替を行ってもよい。
上述した実施形態では、主にチタニアを例示したが、粉はチタニアに限定されない、また蒸着物も金に限定されず、その他全ての粉や蒸着物にダマつぶし機構は適応可能である。
【0049】
また、上述した実施形態では、円筒状の攪拌容器73を例示したが、円錐状の攪拌容器73を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、燃料電池や車の排ガス触媒金属担持や空気清浄用触媒担持、ガスセンサ、磁性材料,誘電体材料に使用される。
【符号の説明】
【0051】
1…微粒子形成装置
3…攪拌装置
5…同軸型真空アーク蒸着源
7…被蒸着体
73…攪拌容器
75a,75b…スクレーパ
85…スタンプ
87…スタンプヘッド
89…アーム部
90…縁部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸着材を飛翔する蒸着源と、
前記蒸着源と対向して配置され、被蒸着体である粉体状担体を収容する容器と、
前記容器内で前記粉体状担体を攪拌する攪拌手段と、
前記攪拌手段による攪拌過程で生じた前記粉体状担体の塊を粉砕するために、前記容器内の底面を叩く粉砕手段と
を有する微粒子形成装置。
【請求項2】
前記粉砕手段は、
スタンプヘッドを前記底面に衝突させる第1の動作と、前記スタンプヘッドを前記底面に接触させた状態で保持する第2の動作と、前記スタンプヘッドを前記底面から離す第3の動作とを順に繰り返す
請求項1に記載の微粒子形成装置。
【請求項3】
前記粉砕手段は、板状の前記スタンプヘッドを、前記底面に対して上下移動させて、当該スタンプヘッドのスタンプ面を前記底面に衝突させ、
前記スタンプ面の前記被蒸着体が侵入する側の端部は、前記底面から離れる向きに傾斜している
請求項1に記載の微粒子形成装置。
【請求項4】
前記容器の前記開放部の円状の縁部は、前記中心軸が延びる方向に傾斜するスロープとなり、所定箇所で段差を有し、
前記粉砕手段は、
前記底面に向けて付勢されながら前記縁部に当接するアーム部を有し、当該アーム部が前記段差で前記底面に向けて落下したときに前記スタンプヘッドを前記底面に接触させ、前記アーム部が前記スロープに沿って所定の位置に達したときに前記スタンプヘッドを前記底面から離す
請求項2または請求項3に記載の微粒子形成装置。
【請求項5】
前記容器は、円筒状あるいは円錐状であり、中心軸を中心に回転し、
前記攪拌手段は、前記容器の周囲に一端が固定され、他端が前記容器内に挿入され、前記前記容器の回転と連動して移動する前記前記粉体状担体に衝突して攪拌する
請求項2または請求項3に記載の微粒子形成装置。
【請求項6】
前記撹拌手段は、
前記容器の上部開放部から当該容器の前記底面の外周付近に当接し、当該当接した箇所から底面に沿って内側に延びる第1のスクレーパと、
前記上部開放部から前記容器の前記底面の前記中心軸付近に当接し、当該した箇所から底面に沿って外側に延びる第2のスクレーパと
を有する請求項2〜5のいずれかに記載の微粒子形成装置。
【請求項7】
前記容器の回転速度は、前記蒸着源の蒸着周期が短くなるに従って高まり、
前記攪拌手段の前記スタンプヘッドの前記底面への衝突周期は、前記蒸着源の放電周期が短くなるに従って高まる
請求項5に記載の微粒子形成装置。
【請求項8】
前記粉体状担体は、粒径0.1μm以上〜1mm以下の粉体である
請求項2〜7いずれかに記載の微粒子形成装置。
【請求項9】
蒸着源と対向して配置された容器内の被蒸着体を攪拌させながら、前記蒸着源から飛翔した蒸着材を前記被蒸着体に担持させる微粒子形成方法であって、
前記容器内で前記粉体状担体を攪拌する過程で、粉砕手段で前記容器内の底面を叩いて、前記攪拌によって生じた前記粉体状担体の塊を粉砕する
微粒子形成方法。
【請求項10】
前記被蒸着体に前記蒸着される蒸着材の量が増えるに従って前記容器の回転速度を速くする
請求項9に記載の微粒子形成方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−132591(P2011−132591A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295508(P2009−295508)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000192383)アルバック理工株式会社 (26)
【Fターム(参考)】