説明

微粒子検出装置

【課題】複数の種類の微粒子や対象とする微生物の生菌、死菌の数等を、迅速かつ高感度に分離検出することができる微粒子検出装置を提供すること。
【解決手段】試料を微粒子の種類に応じて選択的に結合する蛍光染色で処理するとともに、この試料を泳動液を用いて微細管電気泳動することにより微粒子を検出する微粒子検出装置において、蛍光染色された微粒子に励起光照射する励起光発光器1と、励起光照射により発光した蛍光を検出する蛍光検出器12と、この蛍光検出器12の前方で並列配置され、特定の波長領域のみを透過させる複数種類のフィルタ11a、11b、11cとを備え、各フィルタ11a、11b、11cを通過した微粒子の蛍光を蛍光検出器12の検出素子に並列して結像させるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細管電気泳動を用いて、検体試料中に存在する細胞等の各種微粒子を検出する微粒子検出装置に関し、特に人体に有害なレジオネラ属菌等の微生物を含む各種微粒子を迅速かつ高感度に分離検出することができる微粒子検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、試料中に所望の微粒子が存在するか否かを調べたり、また試料中に含まれる微生物等の各種微粒子の種類や量、又は生菌や死菌の区別等を調べるためには、一旦これらの試料を適当な培地に接種して培養することによって目的の微生物である微粒子を増殖させる必要がある。
このため、従来では、微生物の検出には、その培養のために少なくとも数日間以上という長い時間が必要であり、結果が迅速に得られないという問題があった。
また、微生物培養は基本的に無菌的に行われるため、特殊な培養技術や設備が要求される問題もあった。
一方、微生物の遺伝子情報よりその種類を特定する方法等があるが、微生物の数や、生菌、死菌の区別までは特定できない問題があった。
【0003】
これらのことから、微生物の培養並びに高度な技術や装置を要することなく、検体試料中に含まれ得る有害微生物の種類や性質等を迅速かつ簡便に検出し得る方法が望まれている。
多くの種類に分類される微生物の検出は、従来、選択分離培養で培養後、疑わしい集落を釣菌し、確認培地や同定キットあるいは抗血清により判定する必要があり、菌種・菌株を正確に同定するには多くの経験と熟練が必要であった。また、培養等の時間を合わせると判定結果には3〜5日間以上の長期間を要していた。
このため、環境・食品及び医療分野では、微生物、特に有害な微生物を菌種・菌株毎に特異的に検出するための迅速でかつ安全な方法の確立が求められているのが実情である。
【0004】
ところで、近年、迅速な微生物の分離・検出手法として、微細管内で予め蛍光染色した微生物を電気泳動させ、励起光を照射してそのとき発生する蛍光から検出する電気泳動技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、微細管等電点電気泳動技術に関する論文はあるが、その具体的検出手段の詳細は記述されていない(例えば、非特許文献1参照)。
一方、微細管内で微生物を泳動分離する際には、微生物細胞と細管内壁、あるいは細胞と細胞との相互作用が大きく、迅速かつ高感度に微細管内で微生物を分離するためには、泳動液にアルギン酸塩を含有させることが有効である(例えば、特許文献2参照)。
この方法において、微生物の分離効率を向上させる添加剤としてのアルギン酸塩はすべての微生物に対して同様に機能するものではなく、多種多様な微生物種に対応できるより多くのタイプの分離効率向上剤の導入が期待されている。
【0005】
ところで、環境水や食品汚染及び感染症疾患に対して迅速に適切な処置を施したり、その汚染源や感染源を迅速に突きとめ対処したりするためには、汚染源や感染源となり得る微生物等の有害な微粒子の迅速でかつ特異的な検出方法が要求されている。
また、かかる微生物に対して、例えば、塩素殺菌等の処理を施した場合、すべての有害微生物が死滅したかどうかを確認することは重要である。
また、すべての有害菌の死滅が困難な場合には、殺菌後に生菌、死菌の数を確認することにより、塩素殺菌の状況や殺菌効率を把握したりする必要がある。
これら複数の種類の微生物を検出する方法として、複数の反射ミラーとフィルタを利用して所望の波長の光のみを分離して取り出し、解析する例が提案されているが、この方法の場合は、複数の反射ミラーを使用するため、検出する光量が減衰するという問題があった(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2002−345451号公報
【特許文献2】特開2002−181781号公報
【特許文献3】米国特許第5982497号
【非特許文献1】微細管電気泳動法による微生物の分離検出法(月刊フードケミカル2005−2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の微粒子検出装置が有する問題点に鑑み、複数の種類の微粒子や対象とする微生物の生菌、死菌の数等を、迅速かつ高感度に分離検出することができる微粒子検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の微粒子検出装置は、試料を微粒子の種類に応じて選択的に結合する蛍光染色で処理するとともに、該試料を泳動液を用いて微細管電気泳動することにより微粒子を検出する微粒子検出装置において、蛍光染色された微粒子に励起光照射する励起光発光器と、励起光照射により発光した蛍光を検出する蛍光検出器と、該蛍光検出器の前方で並列配置され、特定の波長領域のみを透過させる複数種類のフィルタとを備え、各フィルタを通過した微粒子の蛍光を蛍光検出器の検出素子に並列して結像させるようにしたことを特徴とする。
【0008】
この場合において、蛍光検出器より得られる蛍光信号を、各フィルタ毎に区別して検出する微粒子検出制御装置と、該微粒子検出制御装置の検出信号を記録する画像信号記録装置とを備えることができる。
【0009】
また、微粒子検出信号を、画像の輝度、画像の面積又は微粒子の数とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の微粒子検出装置によれば、蛍光染色された微粒子に励起光照射する励起光発光器と、励起光照射により発光した蛍光を検出する蛍光検出器と、該蛍光検出器の前方で並列配置され、特定の波長領域のみを透過させる複数種類のフィルタとを備え、各フィルタを通過した微粒子の蛍光を蛍光検出器の検出素子に並列して結像させることから、微粒子の種類に応じて異なった波長の蛍光を発する場合や、同じ種類の微粒子であっても、生菌、死菌の区別により異なった波長の蛍光を発する場合等において、蛍光検出器における画像信号から複数のフィルタによる検出波長領域に応じた微粒子を同時に検出することができ、これにより、特殊な技術を必要とすることなく、試料中に種々含まれる微粒子をその種類や特性を高い分離能をもってかつ再現性よく分離するとともに、目的の微粒子を予め蛍光染色することにより、微量の微粒子であっても培養等の増殖処理することなく高感度に検出し、一層高い分離能でもって精度よく所望の微粒子を検出することができ、さらに、試料中に混在する微粒子が単に検出できるだけでなく、微粒子の種類毎に、また特性毎に分離して定量的に検出することができる。
【0011】
この場合、蛍光検出器より得られる蛍光信号を、各フィルタ毎に区別して検出する微粒子検出制御装置と、該微粒子検出制御装置の検出信号を記録する画像信号記録装置とを備えることにより、複数種類のフィルタで複数種類の蛍光を同時に検出するとともに、その画像処理結果又は微粒子検出画像を同時に表示したり、パソコン等のメモリに保存、記録することができる。
【0012】
また、微粒子検出信号を、画像の輝度、画像の面積又は微粒子の数とすることにより、その微粒子の検出結果の詳細データが明確となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の微粒子検出装置の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0014】
本発明の微粒子検出装置は、泳動液を用いた微細管電気泳動法を利用することにより、試料中に種々含まれる複数種類の微粒子を高い分離能をもってかつ再現性よく分離する。
また、この微細管電気泳動法において、検出手段として蛍光検出器を利用することにより、目的の微粒子を予め蛍光染色することによって、微量の微粒子であっても培養等の増殖処理することなく高感度に検出できること、また、これにより、さらに一層高い分離能でもって精度よく所望の微粒子を検出することができる。
さらに、試料中に混在する微粒子が単に検出できるだけでなく、定量的に検出することができる。
なお、本発明でいう検出とは、試料中に含まれる所望微粒子の濃縮、他との分離、定性的検出、定量的検出、スクリーニング、生死判別等を包含するものである。
【0015】
具体的には、例えば、下記の一部又は全部を構成要件として備えた微粒子検出装置である。
(1)微粒子を含む試料を、泳動液を用いて微細管電気泳動する。
(2)微粒子を含む試料を微粒子に選択的に結合するように蛍光染色し、これを微細管電気泳動に供して、蛍光染色された微粒子を蛍光検出する。
(3)微細管電気泳動を用いて微粒子を検出する装置であって、泳動液を含む水槽、泳動液に注入された微粒子を濃縮分離する微細管、又は濃縮された微粒子を検出するための検出手段を備えている。
(4)微細管電気泳動を用いて微粒子を検出する装置であって、微細管内に設けたpH勾配により微粒子を濃縮する。
(5)検出手段として蛍光検出器を備えており、蛍光染色した微粒子に励起光照射し、蛍光染色された微粒子から発光された蛍光を光学系を用いて蛍光検出し、蛍光検出した画像信号から微粒子を検出する。
(6)特定の波長領域のみを透過させる複数種類のフィルタを、蛍光検出器の前方で同一平面上に並列配置し、各フィルタを通過した微粒子の蛍光を、蛍光検出器の検出素子に同時又は順次結像させるようにしている。
(7)また、光学系で蛍光検出した画像信号を記録する画像信号記録装置、画像信号から微粒子を検出した微粒子検出信号を記録する微粒子検出制御装置を有する。
(8)さらには、微粒子検出信号は、画像の輝度、規定した輝度以上の信号を有する画像の面積、画像を空間的、時間的に特徴付けて検出した微粒子の数等とする。
【実施例1】
【0016】
図1に、本発明の微細管等電点電気泳動システムの基本的構成を一実施例として示す。
図1において、1はダイオード等の励起光発光器、2は微細管、3はその検出窓、4a、4bは電極、5a、5bは溶液、6は溶液中に含まれる微粒子、7は励起光発光器1より放射される励起光、8は対物レンズ、9は微粒子から発光される蛍光、10はダイクロイックフィルタを示す。
また、11a、11bはそれぞれ特定の波長のみを通過させる2種類のフィルタ、11cはノンフィルタ、すなわち、すべての波長の蛍光を通過するフィルタ、12はCCDカメラ等の蛍光検出器、13は微粒子検出制御装置、15は表示装置、16は画像信号記録装置である。
【0017】
検出対象物である有害菌等の微粒子、例えば、大腸菌やレジオネラ菌等の人体に有害な微生物は、予め所望の微生物とのみ選択的に結合するように蛍光染色しておき、例えば、キャピラリー等の微細管2の内部に、その両端に設置した溶液5a又は溶液5bより注入する。
溶液5a又は溶液5bは、検出の段階に応じて変更し、電極4a、4bにより微細管2の両端に高圧電源を印加する。
高電圧は図示しない電源より供給し、その電圧の大きさ、印加時間等は、例えば、パソコン等の微粒子検出制御装置13より制御する。
【0018】
励起光発光器1から発した励起光7は、ダイクロイックフィルタ10で反射し、対物レンズ8より微細管の検出窓3より、蛍光染色された微粒子に照射される。
蛍光染色された微粒子は蛍光9を発光し、対物レンズ8より装置本体内に入射し、ダイクロイックフィルタ10を透過する。
このとき、微粒子の種類に応じて結合する蛍光染色の特性に基づき、発する蛍光9は種々の波長を有する。例えば、LIVE/DEAD試薬(Invitrogen社製)で蛍光染色した微生物に対して、青色の励起光を微生物に照射した場合、生菌の場合緑色の蛍光を発し、死菌の場合赤色の蛍光を発する。
これらの蛍光9は、CCDカメラ等で構成される蛍光検出器12の直上部に設置したフィルタ11a、11b及びノンフィルタ11cを通過した後、蛍光検出器12にそれぞれを並列して結像し、その画像信号は微粒子検出制御装置13に送られ、検出処理される。
この検出画像信号は、画像信号記録装置16に記録される。
蛍光染色された微粒子は後に述べる方法により濃縮され、検出窓3を通過させる。この通過時に微粒子の検出動作を行うことができる。
【0019】
図2は、フィルタ11a、11b、ノンフィルタ11cの平面図であり、各フィルタ11a、11b、11cは、それぞれ矩形状に構成され、蛍光検出器12のCCD受光素子の直上部で、微細管の長手方向に同一平面上で並列配置されている。
蛍光9を蛍光検出器12に結像させるとき、各フィルタ11a、11b、11cをそれぞれ所望の波長の蛍光のみを通過させるような特性に構成すれば、所望の特性の蛍光のみを選択的に取得できる。取得した画像の処理内容に関しては、詳細を後述する。
【0020】
図3は、微粒子の例として、微細管2内における有害菌である微生物の泳動状況を示したものであり、次に示す検出過程を踏む。
まず、検出対象としての微生物を含む試料である検水溶液を、例えば、溶液5aとして準備し、溶液5bの側から吸引することにより、微細管2内に対象とする検水溶液20として注入する。
次に、溶液5aとして酸性溶液、例えば、リン酸等を用い、溶液5bとしてはアルカリ性(塩基性)溶液、例えば、苛性ソーダ等を用いる。電極4a、4bは、それぞれ図示しない高電圧電源に接続されており、微粒子検出制御装置13により、電極4a(酸性の溶液5a側)には陽極、電極4b(アルカリ性の溶液5b側)には陰極の電圧を印加するように接続する。
ここで、微細管2の両端は、上記の酸性又はアルカリ性の溶液(泳動液と呼ぶ)にそれぞれ浸され、次いで高圧電源を作動すると、微細管2内の検水溶液20に電位勾配が発生し、その結果、微細管内の泳動領域内(微細管内)の液全体は等電点現象により陰極方向と陽極方向の間にpH勾配を発生する。
【0021】
このとき、検水溶液20内に存在し得る微粒子21は、異なるpH領域に拡散して存在するので、その電荷を持たない状態になる領域、すなわち、等電点位置24又は25に向かって泳動する。
すなわち、微粒子21はそれが有する等電点と同じpH条件の領域(等電点位置24又は等電点位置25)へと移動する。
例えば、等電点pHがpH(A)である微粒子のpHレンジが等電点位置24であるとすると、形成されたpH勾配により、微粒子が等電点位置24より電極(陰極)4b側に存在する場合は移動方向22に移動し、等電点位置24より電極(陽極)4a側に存在する場合は移動方向23に移動し、等電点位置24に濃縮される。
同様に、等電点pHがpH(B)である微粒子のpHレンジが等電点位置25であるとすると、形成されたpH勾配により、微粒子が等電点位置25より電極(陰極)4b側に存在する場合は移動方向22に移動し、等電点位置25より電極(陽極)4a側に存在する場合は移動方向23に移動し、等電点位置25に濃縮される。
すなわち、微粒子はそれが有する等電点により微細管2内の等電点位置24又は等電点位置25に集積化され、濃縮された微粒子塊24a又は微粒子塊25aを形成する。この等電点位置は、対象の微粒子の種類や生菌、死菌の状況により変化する。一般的には、微粒子の表面電荷成分は特定の等電点を持つので、上記微細管内pH勾配により、微粒子はそれぞれの特定箇所である等電点位置24、25等に濃縮される。
この状態になると、両電極4a、4b間の泳動電流は定常状態になり、ほとんど流れなくなる。
【0022】
次に、図4に示すように、溶液5aはそのままの酸性溶液とし、溶液5bに、例えば、塩(モビライザ)を用いて、同様に電極4aに陽極、電極4bに陰極の電圧を印可すると、図3の等電点位置24又は等電点位置25に濃縮された微粒子塊24a又は微粒子塊25aは、再度発生した電位勾配により、例えば、モビライザで流される形で電極(陰極)4bに向かって移動方向26に移動する。
このとき、微粒子塊24a、25aは検出窓3を通過する。この微粒子塊は蛍光染色されており、図1で示したように、対物レンズ8より励起光が照射されると、蛍光染色の特性に応じた波長の蛍光色を発光する。
【0023】
微細管2内への検体試料の注入方法は、特に制限されず、従来使用される重力法、加圧法及び減圧法のいずれをも使用することができる。
注入量も特に制限されないが、通常用いる微細管全域に試料を満たすため、その微細管のサイズに依存し、0.1〜100μL、好ましくは0.5〜100μL、より好ましくは0.5〜10μLを例示することができる。
【0024】
また、上記で例示した一対の電極4a、4b及び高圧電源は、微細管内に注入された微粒子が微細管内の泳動液中を泳動するのに必要な強さの電位勾配を、微細管中の泳動液に対して印加するための手段である。
かかる目的が達成できるものであれば、これらのもの(電源及び一対の電極)に何ら限定されることなく、任意の手段(電位勾配を印加するその他の手段)を使用することができる。
【0025】
電極間にかけられる電圧としては、微細管長さに対して、一般に約1kV/m〜約500kV/m、好ましくは約2kV/m〜約100kV/m、より好ましくは約5kV/m〜約20kV/mを挙げることができる。
微細管としては、内径1〜150μm、長さ0.1〜100cm、好ましくは内径20〜100μm、長さ1〜50cmの中空管を挙げることができる。その材質としては特に制限されず、ガラス(フューズドシリカ)製等を任意に選択することができる。
【0026】
図5は、例えば、ここで検出対象とする微粒子21として、微生物に適用した場合の微生物を拡大して示したもので、その外壁21aに選択的に結合する抗体30、抗体30を蛍光標識した蛍光色素31等を示している。
なお、図示しないが、検出対象である微粒子21に結合している抗体及び蛍光色素31以外に、微粒子に結合しないままに溶液中を浮遊している抗体及び蛍光色素からも蛍光が発せられるが、濃縮位置が検出対象微粒子とは異なるので、時間経過を見ることにより分離することは可能である。
【0027】
図6は、前述した対象微粒子の検出過程をフロー図で示したものである。
まず、検体溶液を微細管に注入し(ステップ32)、pH勾配を設けることにより微粒子を等電点電気泳動し、微粒子塊(濃縮)とする(ステップ33)。
次に、微粒子塊を微細管の中で泳動させ、微粒子塊の探索を行い(ステップ34)、フィルタを通じてCCDカメラ等で微粒子検出する(ステップ35)。
以上の過程で、対象微粒子を検出する。
【0028】
図7は、例えば、パソコン等の微粒子検出制御装置13における微粒子の画像処理表示例を示した図である。
主なキーには、開始キー40、中止キー41、終了キー42等がある。
開始キー40をクリックして微粒子の検出動作を開始すると、状態表示43は検出中となり、経過時間はコメント欄44に表示し、コメント欄45には異常の有無(ここでは正常)をそれぞれ表示する。
検出途中で検出動作を中止する場合は中止キー41を、検出動作を終了する場合は終了キー42をクリックする。
【0029】
図7においては、フィルタ11aの直下におけるCCD素子から得られた画像を画面の左側の領域46として示すとともに、フィルタ11bの直下におけるCCD素子から得られた画像を画面の中央の領域47として示し、また、ノンフィルタ11c直下におけるCCD素子から得られた画像を画面の右側の領域48として示している。
ここで、51a、51bは微細管の管壁を示しており、蛍光染色された微粒子を検出すると、微粒子52、53、54を画像に表示する。
これらの検出画像の輝度、形状、面積、空間的位置、その移動方向等から画像トラッキングを行い、その検出微粒子に固有の番号を付し、その数をカウントする。
この実施例では、領域46に3個の微粒子52を検出するとともに、領域47に2個の微粒子53を検出し、さらに領域48に2個の微粒子54を検出した場合を示している。
すなわち、微粒子52は第1のフィルタ11aを通過したもの、微粒子53は第2のフィルタ11bを通過したもの、微粒子54はノンフィルタ11c、すなわち、フィルタをかけなかった場合の微粒子をそれぞれ示している。これらは、時間とともに右方向に移動し、微粒子の波長条件とフィルタの組み合わせに基づき、消えたり現れたりすることとなる。
【0030】
検出する微粒子の画像輝度やその面積等は、励起光7、蛍光9の強さ、対象とする微粒子の種類により変化する。
そこで、画像処理により検出する画像輝度値のレベル調整は、輝度値キー60の▽(図においては黒塗り。以下、同じ。)をクリックすることにより変更する。
また、検出する画像面積の調整は、面積キー61の▽をクリックすることにより変更する。
このような画像処理による微粒子検出技術は既存の技術であり、容易に実現可能である。
【0031】
さらに、本実施例では、領域46において検出した輝度の合計値62、検出した微粒子の面積の総和63、検出した微粒子数の瞬時値64、及び検出動作開始後に検出した微粒子の総和65を示しており、領域47において検出した輝度の合計値66、検出した微粒子の面積の総和67、検出した微粒子数の瞬時値68、及び検出動作開始後に検出した微粒子の総和69をそれぞれ表示している。さらに領域48において検出したデータを表示することも可能であるが、ここでは表示しない例を示した。
これにより、画像処理が正常に動作していることの確認ができる。また、得られたデータは、微粒子検出制御装置13に内蔵するメモリ等の波形制御装置に保存する。
【0032】
通常、微生物等の微粒子の検出に要する時間は数分から数十分と長時間に亘ることから、画像信号記録装置16は多くの画像信号を記録できるDVDデッキ等とすることが望ましい。
また、微粒子検出制御装置13としては通常のパソコンで十分機能が発揮できるが、検出期間すべての画像の記録は困難なので、対象微粒子を検出した前後の画像のみを記録する、又は画像の記録は画像信号記録装置16専用とし、微粒子検出制御装置13には、本実施例で示したような画像処理結果、すなわち、対象微粒子に対する画像輝度、微粒子の数、その大きさ等、及び電気泳動のパラメータ等のみに限定してもよい。
【0033】
また、微細管内にpH勾配を設けることにより、微粒子を濃縮する方法の代りに、泳動領域で微細管内に電位勾配を発生させ、この電位勾配により微細管内液体全体の流れである電気浸透流が生じ、通常それは陽極から陰極方向への流れとなる。
微細管内に注入された微粒子は、上記発生した電位勾配に応答して、微粒子が有する表面電荷とは反対の極性を有する電極方向へ移動する。
結果として、微細管内での微粒子の泳動方向(陰極から陽極方向)及び速度は、上記電気浸透流速度と微粒子の移動度によって決まり、微細管の反対端の近く(陽極の近く)に濃縮する方式で微粒子を検出する方法等、適宜その方式を変更することができる。
【0034】
また、微細管内で濃縮分離された微粒子を検出する手段としては、一般的には、分光学的、電気化学的、重量検出的方法のいずれもが使用できるが、好ましくは、UV−可視検出や蛍光検出、発光検出、光散乱検出等の光学検出法が挙げられる。
中でも、検出の特異性と感度に優れた蛍光検出法が好ましく、励起光として安価なLEDで光量が不足の場合は、より高感度検出が可能なレーザー誘導蛍光検出法が望ましい。これらの蛍光に基づく検出は、特に有害な微生物等の検出において、免疫反応(抗原抗体反応)、細胞内酵素反応、及び核酸相補鎖形成反応等の反応を目的微生物に応じて適宜組み合わせることで、目的微生物をより特異的かつ高感度に検出することができる。
これらの方法の中でも免疫反応は、微生物試料に特別な前処理をする必要がなく、また特異性に優れている点で、好ましい方法の1つである。かかる免疫反応としては、具体的には蛍光色素標識抗体(単に蛍光抗体ともいう)、酵素標識抗体(単に酵素抗体ともいう)等を用いて目的の微生物を蛍光や酵素等で標識する方法を挙げることができる。
【0035】
かくして、本実施例の微粒子検出装置は、蛍光染色された微粒子に励起光照射する励起光発光器1と、励起光照射により発光した蛍光を検出する蛍光検出器12と、該蛍光検出器12の前方で並列配置され、特定の波長領域のみを透過させる複数種類のフィルタ11a、11b、11cとを備え、各フィルタ11a、11b、11cを通過した微粒子の蛍光を蛍光検出器12の検出素子に並列して結像させることから、検体試料中の微生物等の微粒子を短時間でかつ精度よく分離、検出、定量化することができる。すなわち、微生物の菌種・菌株を個々に分離することが可能となる。また、対象とする微生物に対して選択的に結合するように蛍光染色するので、特殊な技術を必要とすることなく、また培養操作なしに短時間にかつ容易にまた正確に検出できるため、高い精度の微生物検査とモニタリングシステムの確立が可能となる。
また、画像処理技術を用いて微生物を検出することにより、その画像処理結果、及び微生物検出画像をパソコン等のメモリに保存、記録することができる。したがって、その保存データを呼び出すことにより、検出結果の再確認、検体溶液供給者への詳細結果報告が可能となる。また、迅速な微生物対策、滅菌対策等に寄与することが可能となる。
また、蛍光検出手段として安価なLED、又はレーザー誘導蛍光検出器等を利用することにより、所望の微生物を高感度かつ特異的に検出することができるので、試料を培養する等の増殖処理を施すことなく、微量の微生物を精度よく分離検出することができる。
また、本実施例の微粒子検出装置は、定量性を有するため、試料中に存在する菌体数を判別測定(定量検出)することも可能であり、また、試料中の微生物の検出が可能であるだけでなく、種々の微生物に特有の特異的検出試薬(例えば、抗体等)を使用することにより菌種の同定も可能である。
このように、本実施例の微粒子検出装置は、有害微粒子の検出(定性検出、定量検出)に適しているため、病原性微生物によって汚染された環境水や食品が早期に排除でき、病気の発生の防止に有用である。また、病原性微生物による患者の早期診断が可能になることから、有害微生物による被害の蔓延防止並びに早期治療の一助となる。さらには、食品の品質管理期間が短縮でき、また衛生管理の厳格性から賞味期間も延長可能であり、食品流通の経済性に大きく貢献することができる効果がある。
【0036】
この場合、蛍光検出器12より得られる蛍光信号を、各フィルタ11毎に区別して検出する微粒子検出制御装置13と、該微粒子検出制御装置13の検出信号を記録する画像信号記録装置16とを備えることにより、複数種類のフィルタ11で複数種類の蛍光を同時に検出するとともに、その画像処理結果又は微粒子検出画像を同時に表示したり、パソコン等のメモリに保存、記録することができる。
また、微粒子検出信号を、画像の輝度、画像の面積又は微粒子の数とすることにより、その微粒子の検出結果の詳細データが明確となる。
【0037】
以上、本発明の微粒子検出装置について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の微粒子検出装置は、各種微粒子を迅速かつ高感度に分離検出するという特性を有していることから、例えば、浴槽水やプール、冷却塔の冷却水等の環境水、食品及び医療分野等において採取した検体試料中に混在する有害微生物等の微粒子を精度よく検出する用途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の微粒子検出装置の一実施例を示す概略構成図である。
【図2】フィルタの平面図である。
【図3】微細管電気泳動による微粒子の検出過程を示す説明図である。
【図4】微細管電気泳動による微粒子の検出過程の次段階の説明図である。
【図5】微粒子の詳細を示す拡大図である。
【図6】微粒子の検出動作を示すフロー図である。
【図7】微粒子検出制御装置における画像処理状況を表示した画面を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
1 励起光発光器
2 微細管
3 検出窓
4a 電極(陽極)
4b 電極(陰極)
5a 溶液
5b 溶液
6 微粒子
7 励起光
8 対物レンズ
9 蛍光
10 ダイクロイックフィルタ
11a 第1のフィルタ
11b 第2のフィルタ
11c ノンフィルタ
12 蛍光検出器
13 微粒子検出制御装置
15 表示装置
16 画像信号記録装置
20 検水溶液
21 微粒子
24 等電点位置
25 等電点位置
30 抗体
31 蛍光色素
40 開始キー
41 中止キー
42 終了キー
43 状態表示
44 経過時間
45 コメント欄
46 第1フィルタの画像領域
47 第2フィルタの画像領域
48 ノンフィルタ領域
51a 微細管の管壁
51b 微細管の管壁
52 第1フィルタ領域の微粒子画像
53 第2フィルタ領域の微粒子画像
54 ノンフィルタ領域の微粒子画像
60 輝度値調整キー
61 面積調整キー
62 第1フィルタ領域の輝度合計値
63 第1フィルタ領域の微粒子の面積総和
64 第1フィルタ領域の微粒子数の瞬時値
65 第1フィルタ領域の微粒子の総和
66 第2フィルタ領域の輝度合計値
67 第2フィルタ領域の微粒子の面積総和
68 第2フィルタ領域の微粒子数の瞬時値
69 第2フィルタ領域の微粒子の総和

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を微粒子の種類に応じて選択的に結合する蛍光染色で処理するとともに、該試料を泳動液を用いて微細管電気泳動することにより微粒子を検出する微粒子検出装置において、蛍光染色された微粒子に励起光照射する励起光発光器と、励起光照射により発光した蛍光を検出する蛍光検出器と、該蛍光検出器の前方で並列配置され、特定の波長領域のみを透過させる複数種類のフィルタとを備え、各フィルタを通過した微粒子の蛍光を蛍光検出器の検出素子に並列して結像させるようにしたことを特徴とする微粒子検出装置。
【請求項2】
蛍光検出器より得られる蛍光信号を、各フィルタ毎に区別して検出する微粒子検出制御装置と、該微粒子検出制御装置の検出信号を記録する画像信号記録装置とを備えたことを特徴とする請求項1記載の微粒子検出装置。
【請求項3】
微粒子検出信号を、画像の輝度、画像の面積又は微粒子の数としたことを特徴とする請求項1又は2記載の微粒子検出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−96156(P2008−96156A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−275464(P2006−275464)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(390000686)株式会社住化分析センター (72)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】