微細パターン成形用金型及びその製造方法
【課題】
微細パターンを有する成形品を成形するための金型の製造方法について、その製作工程の煩雑化を避け、微細パターンのサイズが制限されないで、所望形状の表面に微細パターンを容易な製作工程で高精度に形成できるように、金型加工方法を工夫すること。
【解決手段】
成形対象の形状に対応した型形状とその精度が得られるように加工した放電プラズマ焼結法(以下「SPS法」という)のための型を使用して、SPS法により、少なくとも金型の成形転写面を、反応性イオンエッチングが可能な材料の微細ナノ粒子を焼結して作製し、その表面にマスクパターンを形成した後、反応性イオンエッチングにより微細パターンを形成すること。
微細パターンを有する成形品を成形するための金型の製造方法について、その製作工程の煩雑化を避け、微細パターンのサイズが制限されないで、所望形状の表面に微細パターンを容易な製作工程で高精度に形成できるように、金型加工方法を工夫すること。
【解決手段】
成形対象の形状に対応した型形状とその精度が得られるように加工した放電プラズマ焼結法(以下「SPS法」という)のための型を使用して、SPS法により、少なくとも金型の成形転写面を、反応性イオンエッチングが可能な材料の微細ナノ粒子を焼結して作製し、その表面にマスクパターンを形成した後、反応性イオンエッチングにより微細パターンを形成すること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、微細パターンを有する成形品を成形するための金型及びその製造方法に関するものであり、特にナノ単位の微細パターンを金型の転写面に高精度に形成することができるものである。
【背景技術】
【0002】
この発明に関連する従来技術、すなわち、成型用金型の転写面を高精度で加工する技術の公知例として、特開2005−272254号公報(特許文献1)、特開2004−268331号公報(特許文献2)に記載されているものがある。
【0003】
〔従来技術1〕
上記特許文献1(特開2005−272254号公報)に記載されているものは、レンズ等の高精度なガラス光学素子を成形するための光学素子成形用金型及びその製造方法に関するものであり、生産性に優れ、低コストで高精度な成形面形状を得ることができる光学素子成形用金型の製造方法であり、高圧水アトマイズ法によって平均粒径2μmの粉体とした鉄を主成分とする金属ガラス(ガラス転移温度(Tg)が540℃、結晶化開始温度(Tx)が590℃)の粉末2を被焼結体3として、Txより低い温度で放電プラズマ焼結法により焼結して成形面を得る工程を備えている。そして、この放電プラズマ焼結法を行う放電プラズマ焼結装置6は、焼結ユニット7を内部に配設している真空チャンバ8と、この真空チャンバ8の上下に設けられ焼結ユニット7を間に挟んで配設された上部パンチ電極10及び下部パンチ電極11と、これら電極を介して焼結ユニット7にパルス電力を印加する電源部12とを備えており(図16)、高いガラス転移温度(Tg)を有する金属ガラスであっても、大型のバルクを形成することができるものである。
なお、図16は特許文献1の図1を転用したものであり、符号は同図1のものと同じである。
【0004】
〔従来技術2〕
また、特許文献2(特開2004−268331号公報)に記載されているものは、レンズ面等の曲面上にCGH(Computer Generated Hologram)16や錐形状等の複雑な形状の微細構造をもつ光学素子を成型するための金型の製造方法であり、金型1が金型母材2と加工層3とエッチング層4により構成されており、レンズ面に対応する形状に粗加工された金型母材2上に加工層3が積層されており、加工層3がレンズ面に対応する形状に高精度に加工されており、加工層3の上にエッチング層4が形成されており、エッチング層4がエッチング処理により微細構造が形成されているものである(図17)。そして、この従来技術は、金型の面精度を機械加工によって確保し、また、微細構造の形状精度をエッチング層4のエッチングによって得ることができるものである。
なお、図17は上記特許文献2の図1を転用したものであり、符号は同図1のものと同じである。
【0005】
〔先行技術〕
また、公知例ではないが、先行技術として特願2006−183320号のものがある。この先行技術は、成形時の離型が容易な構造の微細パターンを形成することによって、傾斜面、曲面、自由曲面などからなる表面に多数の微細溝による微細パターンを有する成形品を成形することができるものであり、金型からの転写によって成形され、成形時の型開きによる離型方向と表面の法線方向とが角度をなす該表面に微細パターンを有する成形品において、前記表面の斜面または曲面の傾斜する方向に沿って延びた微細溝が多数配列する微細溝群を有するとともに、隣り合う微細溝と微細溝の溝間隔が所定の間隔以下となるように表面全体に前記微細溝が配列していることにより、成形時の型開きの離型方向に対して表面が傾斜していない部分から傾斜した方向に向かって微細溝が存在するので、微細溝の開口部が離型方向を向くことになり、離型を容易にすることができるものである。
【0006】
〔従来技術の問題点〕
ところで近年では、光学素子の光学表面に微細パターンを形成することで反射防止機能や回折機能あるいは偏光機能の付加を実現することが行われるようになっている。また、光学素子にかかわらず、近年、濡れ性の制御や摩擦の制御等のために表面に微細パターンを形成することが行われている。加工法として、機械加工あるいはフォトリソグラフィーやエッチング等の半導体プロセスがあるが、大量生産を行うには金型に微細パターンを形成してから樹脂やガラスに転写する方法が好ましい。
【0007】
〔従来技術1について〕
特許文献1(特開2005−272254号公報)のものは、金属ガラスの粉末を放電プラズマ焼結法(SPS法)により焼結して金型を得ているが、金属ガラスは多成分の材料であるため、エッチングによる微細パターン形成が非常に困難である。
【0008】
〔従来技術2について〕
特許文献2(特開2004−268331号公報)の従来技術は、ステンレス鋼材からなる金型母材を機械加工して、その金型母材へ電鋳によりニッケルを積層しており、このニッケル面を成形対象の形状に対応した所定形状によりまた所定精度になるように、超精密の切削あるいは研磨加工によって仕上げ、次に微細パターンを形成するための表面層をスパッタリング、真空蒸着、CVD(Chemcal Vaper Deposition)などの方法で成膜した後、レジストを塗布して、電子線などで露光を行っている。そして、形成されたレジストパターンを利用してドライエッチングを行うことで、微細パターンを形成した金型を得ることができる。しかし、このような方法では、金型母材とニッケル層を機械加工する必要があり、金型作製工程が煩雑になってしまう。また、スパッタリング、真空蒸着、CVDなどの方法で成膜した微細パターンを形成するための表面層を厚膜にすることは困難であり、その膜厚はせいぜい数μmまでであり、微細パターンのサイズはその膜厚により制限を受けてしまう。
【特許文献1】特開2005−272254号公報
【特許文献2】特開2004−268331号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、この発明は、微細パターンを有する成形品を成形するための金型の製造方法について、その製作工程の煩雑化を避け、微細パターンのサイズが制限されないで、所望形状の表面に微細パターンを容易な製作工程で高精度に形成できるように、金型加工方法を工夫することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための手段は、成形対象の形状に対応した型形状とその精度が得られるように加工した放電プラズマ焼結法(以下「SPS法」という)のための型を使用して、SPS法により、少なくとも金型の成形転写面を、反応性イオンエッチングが可能な材料の微細ナノ粒子を焼結して作製し、その表面にマスクパターンを形成した後、反応性イオンエッチングにより微細パターンを形成することである。
【0011】
成形転写面を形成する微細ナノ粒子はSi、Si3N4、SiC、TiN、SiO2、Ta2O5、ダイヤモンド、グラッシーカーボンのいずれかである。金型の母材としては、超硬合金、SiC、Si3N4、ステンレス鋼、グラッシーカーボンのいずれかを選択する。微細マスクパターンの形成は、微小な工具で加工荷重が一定の切削加工によることが好ましい。
【0012】
また、微細ナノ粒子をSPS法(放電プラズマ焼結法)で焼結することによって少なくとも金型の成形転写面を形成するので、短時間で焼結を完了する。このため、焼結を粒子と粒子の界面でのみ進行させることができる。つまり、微細ナノ粒子が大きく成長することを抑制できることから、微細な粒子からなる緻密な材料となるので高精度の微細パターンを形成することが可能である。また、SPS法においては、成形転写面の形状をSPS法の金型形状から転写することができるので、成形転写面の少なくとも粗加工の工程を省くことが可能である。さらに、SPS法においては、微細パターンのサイズに応じて、成形転写面を形成する層の厚さを大きくすることができるので、微細パターンのサイズや形状に制約を与えることがない。SPS法によれば、短時間で焼結が完了し、また、型形状の転写が可能であるので、微細パターンを有する成形品を成形するための金型を数多く作製することが容易である。
【0013】
さらに、成形転写面に微細マスクパターンを形成した後、反応性イオンエッチングにより微細パターンを形成するので、マスク(レジスト)との組み合わせで微細パターンを容易に短時間で形成することが可能となる。また、微小な領域のみでなく、大きな面積に微細パターンを形成することができる。
【0014】
また、微細ナノ粒子はSi、Si3N4、SiC、TiN、SiO2、Ta2O5、ダイヤモンド、グラッシーカーボンのいずれかであるので、反応性イオンエッチング法によって微細パターン形成のための加工をすることが可能であり、容易に微細パターンを形成した金型を得ることができる。さらに、離型性および耐久性に優れた金型を得ることができる。
【0015】
次に、超硬合金、SiC、Si3N4、ステンレス鋼、グラッシーカーボンのいずれかを金型の母材とするので、金型として望まれる高い強度や高い熱伝導性が得られる。
【0016】
さらに、微小な工具で加工荷重が一定の切削加工を行うことで微細マスクパターンを形成するので一定の深さの加工が可能である。したがって、マスクの不要部のみを加工することができ、反応性イオンエッチングにより一定深さの微細パターンを形成することにつながる。また、機械(パラレル機構や多軸の加工装置やステージ)の動きにより、さまざまなパターンを形成することが可能である。
【発明の効果】
【0017】
〔請求項1の発明〕
請求項1の発明は、微細ナノ粒子を放電プラズマ焼結法(SPS法)で焼結することによって少なくとも金型の成形転写面を形成するので、短時間で焼結を完了する。このため、焼結を粒子と粒子の界面でのみ進行させることができる。つまり、微細ナノ粒子が大きく成長することを抑制することができることから、微細な粒子からなる緻密な材料となるので高精度の微細パターンを形成することが可能である。また、SPS法においては、成形転写面の形状をSPS用の金型形状から転写することができるので、成形転写面の少なくとも粗加工の工程を省くことが可能になる。さらに、SPS法においては、微細パターンのサイズに応じて、成形転写面を形成する層の厚さを大きくすることができるので、微細パターンのサイズや形状に制約を与えることがない。SPS法によれば短時間で焼結が完了し、また型形状の転写が可能であるので、微細パターンを有する成形品を成形するための金型を数多く作製することが容易である。
【0018】
さらに、成形転写面に微細マスクパターンを形成した後、反応性イオンエッチングにより微細パターンを形成するので、マスク(レジスト)との組み合わせで微細パターンを容易に短時間で形成することが可能となる。また、微小な領域のみでなく、大きな面積に微細パターンを形成することができる。
【0019】
〔請求項2の発明〕
請求項2の発明は、微細ナノ粒子がSi、Si3N4、SiC、TiN、SiO2、Ta2O5、ダイヤモンド、グラッシーカーボンのいずれかであるので、反応性イオンエッチング法によって微細パターン形成のための加工が可能であり、容易に微細パターンを形成した金型を得ることができる。
【0020】
〔請求項3の発明〕
請求項3の発明は、超硬合金、SiC、Si3N4、ステンレス鋼、グラッシーカーボンのいずれかを金型の母材とするので、金型として望まれる高い強度や高い熱伝導性が得られる。
【0021】
〔請求項4の発明〕
請求項4の発明は、微小な工具で加工荷重が一定の切削加工を行うことで微細マスクパターンを形成するので、一定の深さの加工が可能であり、マスクの不要部のみを加工することができるため、反応性イオンエッチングにより一定深さの微細パターンを形成することが可能になる。また、機械(パラレル機構や多軸の加工装置やステージ)の動きにより、さまざまなパターンを形成することが可能となる。
【0022】
〔請求項5の発明〕
請求項5の発明は、少なくとも金型の成形転写面が、Si、Si3N4、SiC、TiN、SiO2、Ta2O5、ダイヤモンド、グラッシーカーボンであるので、離型性および耐久性に優れた金型を得ることができる。また、超硬合金、SiC、Si3N4、ステンレス鋼、グラッシーカーボンのいずれかを金型の母材とするので、金型として望まれる高い強度や高い熱伝導性が得られる。よって、微細パターンを有する成形品を、高精度で安定して得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明においては、成形品の表面を成形するための金型において、少なくとも金型の成形転写面を、Si、Si3N4、SiC、TiN、SiO2、Ta2O5、ダイヤモンド、グラッシーカーボンのいずれかの微細ナノ粒子をSPS(放電プラズマ焼結)法により焼結することによって、形成したことを特徴とする。
ここで、Si、Si3N4、SiC、TiN、SiO2、Ta2O5、ダイヤモンド、グラッシーカーボンは、反応性イオンエッチング法によって微細パターン形成のための加工が可能な材料である。反応性イオンエッチング法の原理では、反応室内でエッチングガスをプラズマ化し、試料を固定する陰極に高周波を印加し、試料とプラズマ間に電位が生じて、プラズマ中のイオン種やラジカルが試料に加速されて衝突し、このときに、イオンによる物理的なスパッタリングと、エッチングガスとの化学反応が同時に作用することで、加工が行われることになる。
【0024】
上記材料の直径1μm以下の微細ナノ粒子をSPS法により焼結することによって金型を形成する。SPS法の原理では、圧粉体粒子間隙(注:SPS法に使用する型内に挿入した、 焼結前の粉体を加圧した状態における、粉体である粒子同士から形成される間隙)に低電圧でパルス状大電流を投入し、火花放電現象により瞬時に発生する放電プラズマの高エネルギーを熱拡散・電界拡散などに効果的に応用することができる。低温から2000℃以上の高温域において従来法に比べ200〜500℃ほど低い温度域で、昇温・保持時間を含め概ね5〜20分程度の短時間で焼結を完了することができる。ここで、SPS法においては、短時間で焼結が完了するため、焼結を粒子と粒子の界面でのみ進行させることができ、これにより、微細ナノ粒子が大きく成長することを抑制することができる。また、微細ナノ粒子が非晶質であれば、非晶質状態がほぼ維持された状態で焼結させることができる。SPS法とは放電プラズマ焼結法のことであるが、通電焼結法、プラズマ活性化焼結法とも言われており、本発明では上記原理に基づく焼結法であればその焼結法を採用することができる。
【0025】
反応性イオンエッチングによって微細パターンを形成するときに、エッチング速度は結晶粒毎に異なるので、結晶粒の存在によって段差が発生してしまう。この現象によって微細パターンの形状精度が低下することがある。例えば直径1μm以下の微細ナノ粒子においては、結晶粒径は当然1μm以下のナノサイズであり、このような微細ナノ粒子をSPS法により焼結すると、粒子の成長が抑制されるため、ナノサイズの結晶粒により形成された焼結体となる。この焼結体を反応性イオンエッチングによって加工したときには、結晶粒の存在による段差はナノサイズに抑えられ、高精度の微細パターンを形成することができる。結晶粒の大きさは、微細パターンの大きさに対して、10分の1以下程度であれば十分である。ここで微細パターンの大きさは、その幅又は深さのいずれか小さい方の大きさを言う。さらには微細ナノ粒子が結晶質ではなく非晶質であれば、結晶粒ごとのエッチング速度の違いによる加工段差が生じないので、微細パターン形成に有利である。
【0026】
以上のような金型において、Si、Si3N4、SiC、TiN、SiO2、Ta2O5、ダイヤモンド、グラッシーカーボンのいずれかの微細ナノ粒子だけをSPS法により焼結することによって金型を形成しても良いが、上記ナノ粒子によって成形転写面を形成し、その母材として超硬合金、SiC、Si3N4、ステンレス鋼、グラッシーカーボンのいずれかを使用することが好ましい。それは、金型として望まれる高い強度や高い熱伝導性が得られるからである。母材を形成する材料をバルク材(注:塊としての物体。因みに、焼結前の粉体はこれには当たらない)としてSPS法のプロセスに投入して、その成形転写面を形成する微細ナノ粒子を焼結するとともに両者を接合して金型としても、あるいは、母材を形成する材料を粒子(粉末)としてSPS法のプロセスに投入して、その成形面を形成する微細ナノ粒子とともに一体焼結しても良い。または、微細ナノ粒子をSPS法によって焼結することで成形転写面を形成した焼結体と母材とを接合しても良い。さらに、成形転写面形成部と母材との界面は、それぞれの材料の組成が徐々に変化する、いわゆる傾斜組成とすることが好ましい。
【0027】
〔実施例1〕
超硬合金製のダイとパンチを用意し、SPS用の型とする。図1(断面図)のように、所望形状の金型を形成するために、ダイ11とパンチ12a,12bを加工しておく。上側のパンチ12aはレンズ形状に合わせた形状に成形面を形成されている。ダイ11とパンチ12a、パンチ12bから形成される空間の下側にSiCのバルク材13を所望の形状に加工したものを配置した。次に、直径約6nmのダイヤモンド微細ナノ粒子14とSiCの粒子が1:4の体積比で混合したものをSiCの母材(バルク材)13上に配置してパンチ12a,12bで加圧する。上側のパンチ12aを抜いてから、さらに、その上に2:3の体積比に混合したものを配置してこれをパンチ12a,12bで加圧する。このように、3:2、4:1の体積比に混合したものを順次配置して、最後にダイヤモンドの微細ナノ粒子を配置してパンチで加圧する。
【0028】
次に図1に示した部分が配置されているSPS装置の真空チャンバの真空引きを行い、その後、上下のパンチ12a,12bに通電し、パルス電圧を印加する。焼結温度はダイ11の温度で1000℃、2分保持、加圧は30MPaである。それから30分間冷却後、SPS用の型から焼結体を取り出した。作製した焼結体の成形転写面にイオンプレーティングでマスクとしてのAlをコーティングした。このAlに対してAFM加工(走査型プローブ顕微鏡の原理を応用した微細加工)を行い、微細マスクパターンを形成した。AFM加工を行った部分はダイヤモンドが露出している。
【0029】
ここで、図2はAFM加工の原理を示している。プローブ15が物質(工作物)の表面をなぞるときに、カンチレバー16の反り量が一定に維持されるように、つまりフォトダイオードでのレーザー光の検出位置が一定となるようにピエゾ17の伸縮によってZ軸が上下動するフィードバック制御が行われる。カンチレバー16の反り量を一定に維持することは、プローブ15と物質(工作物)との間に働く力を一定に維持することであり、測定時の力は微小であるため原子間力といわれる。この反り量の設定によって原子間力より大きな荷重を発生させることが可能であり、物質(工作物)を加工することができる。発生させた荷重を一定に維持することができるので、深さが一定の溝加工が可能である。加工対象が曲面であっても、原理的にその曲面に対して追従することで深さが一定の溝加工を行うことが可能である。ピエゾ17によるフィードバック制御のストロークは数μm程度であるため、曲面の加工には図2に示すようなヘッド部を搭載していて3次元的に走査できる装置が必要になる。
【0030】
そこで、図2に示すような機構の加工ヘッドを、図3に示すようなパラレルリンク機構に装着して、成形転写面のマスク材の加工を行った。これはパラレルリンク機構19によって自在な角度で加工を行える装置であり、パラレルリンク機構19によって加工ヘッド18を動かすことで、金型の成形面に対してツールパスを発生させ、加工ヘッド部のピエゾを加工荷重が一定となるように制御することによって、金型成形面の微細マスクパターンを加工することが可能となる。この実施例1ではパラレルリンク機構32を採用したが、5軸または6軸で構成される多軸の加工装置やステージを採用することも可能である。
【0031】
次に、反応性イオンエッチング法によって、成形転写面が露出している微細パターン部をエッチングした。上記エッチングに使用したガスはCF4+O2で、10分間エッチングを行った。ここで、エッチング工程において、エッチング終了時にAlマスクがすべて除去されるエッチング条件を選定したが、エッチング終了時にAlマスクが残存する場合は別途Alだけを除去する工程を設けても良い。以上のようにして作製された金型が図4に示されている。そして、この図4に示す金型を使用して、プラスチックレンズを成形したところ、レンズ形状および微細パターン形状を高精度に転写することができた。図5には成形したレンズ表面の微細パターンの配列が示されている。本実施例の微細パターンの断面形状は開口幅が180nm、深さが250nmのV溝形状となっており、可視光域の光に対して反射防止機能を備えている。連続成形後でも、金型の離型性が優れており、金型の微細パターンにはプラスチックの付着は全くなかった。さらには、ダイヤモンドが非常に硬いことから、金型の微細パターンの欠損も存在しない。
【0032】
この実施例1においては、母材となるバルク材と成形転写面との界面の形状は平面からなるものとしているが、図6および図7に示すように、母材と成形転写面との界面の形状は成形転写面形状とほぼ同じ形状にしても良い。
【0033】
〔実施例2〕
図6、図7に示す実施例2は、グラファイト製のダイとパンチを用意し、これらをSPS用の型とする。図8(断面図)に示されているように、所望形状の金型を形成するために、ダイ21とパンチ22a,22bを加工しておく。上側のパンチ22aはレンズ形状に合わせた形状に形成されている。ダイ21とパンチ22a,22bから形成される空間の下側に超硬合金(WC)の粒子を配置して、これをパンチ22a,22bで加圧する。次に、上側のパンチ22aを抜いてから、直径約60nmのTiNの微細ナノ粒子24と超硬合金の粒子が1:4の体積比に混合したものを母材23となる超硬合金の上に配置してパンチで加圧する。さらに、その上に2:3の体積比に混合したものを配置してパンチで加圧する。このように、3:2、4:1の体積比に混合したものを順次配置して、最後にTiNの微細ナノ粒子を配置する。
【0034】
次に図8に示した部分が配置されているSPS装置の真空チャンバを真空引きし、その後、上下のパンチに通電し、パルス電圧を印加する。焼結温度はダイの温度で1600℃、2分保持、加圧は30MPaである。それから50分間冷却後、SPS用の型から焼結体を取り出した。このように焼結された金型の成形転写面を必要に応じて仕上げ加工するが、本実施例ではダイヤモンド砥石を使用した研削加工により仕上げ加工を実施した。次にこの成形転写面にレジストをスプレー法により塗布し、所望の微細パターンに対応するように二光束干渉露光法により露光を行う。その後、現像を行うことで、レジストが除去された部分は成形転写面が露出している。
【0035】
次に、反応性イオンエッチング法によって、成形転写面の露出している微細パターン部をエッチングする。エッチングに使用したガスはCF4+O2+H2+NH3で、30分間エッチングを行った。以上のようにして作製した金型が図9に示されている。この図9の金型を使用して、プラスチックレンズを成形したところ、レンズ形状および微細パターン形状を高精度に転写することができた。連続成形後でも、金型の離型性が優れており、金型の微細パターンにはプラスチックの付着は全くなかった。
【0036】
図12に成形したレンズ表面の微細パターンの配列を示している。これはピッチ190nm、深さ300nmのU字型の溝を形成した異型レンズである。本実施例2においては、母材と成形転写面との界面の形状は概略成形転写面形状と同じ形状としたが、図10および図11に示すように、界面が成形転写面形状と同じ形状でなく、ほぼ平面からなる金型でも差し支えない。この場合は母材をダイとパンチから形成される空間の下側に超硬合金の粒子を配置して、粒子を押圧する面形状が平面のパンチで加圧して、SPS法による焼結の時点でレンズ形状に合わせた形状に形成されたパンチを使用することになる。
【0037】
〔実施例3〕
実施例3では超硬合金製のダイとパンチを用意し、これをSPS用の型とする。図13(断面図)に示すように、所望形状の金型を形成するために、ダイ31とパンチ32a,32bを加工しておく。上側のパンチ32aはレンズ形状に合わせた形状に形成されている。ダイ31とパンチ32a,32bから形成される空間に直径100nm程度のグラッシーカーボンの微細ナノ粒子34を配置して、これをパンチ32a,32bで加圧する。
【0038】
次に図13に示した部分が配置されているSPS装置の真空チャンバの真空引きを行い、その後、上下のパンチ32a,32bに通電し、パルス電圧を印加する。焼結温度はダイ31の温度で800℃、1分保持、加圧は40MPaである。それから30分間冷却後、SPS用の型から焼結体を取り出した。このように焼結された金型の成形転写面を必要に応じて仕上げ加工するが、この実施例3ではダイヤモンド砥石を使用した研削加工により仕上げ加工を実施した。作製した焼結体の成形転写面にイオンプレーティングでマスクとしてのAlをコーティングした。このAlに対してAFM加工を行い、微細マスクパターンを形成した。AFM加工を行った部分はグラッシーカーボンが露出している。
【0039】
次に、反応性イオンエッチング法によって、成形転写面の露出している微細パターン部をエッチングする。エッチングに使用したガスはO2で、20分間エッチングを行った。以上のように作製した金型(図14)を使用して、ガラスレンズを成形したところ、レンズ形状および微細パターン形状を高精度に転写することができた。連続成形後でも、金型の離型性が優れており、金型の微細パターンにはガラスの付着は全くなかった。
図15に成形したレンズ表面の微細パターンの配列を示している。これは、約3μmの段差からなる回折面上にサブ波長サイズの微細パターンを形成したものである。金型の成形転写面としては数μmのパターンに対しても十分な厚さをもっている。
【0040】
〔実施例4〕
実施例4ではグラファイト製のダイとパンチを用意し、これをSPS用の型とする。図8(断面図)のように、所望形状の金型を形成するために、ダイとパンチを加工しておく。上側のパンチはレンズ形状に合わせた形状に形成されている。ダイとパンチから形成される空間の下側にステンレス鋼の粒子を配置してパンチで加圧する。次に、上側のパンチを抜いてから、直径約150nmのSiの微細ナノ粒子とステンレス鋼の粒子が1:5の体積比に混合したものをステンレス鋼の上に配置してパンチで加圧する。さらに、その上に2:4の体積比に混合したものを配置してパンチで加圧する。このように、3:3、4:2、5:1の体積比に混合したものを順次配置して、最後にSiの微細ナノ粒子を配置してパンチで加圧する。
【0041】
次に図8に示した部分が配置されているSPS装置の真空チャンバの真空引きを行い、その後、上下のパンチに通電してパルス電圧を印加する。焼結温度はダイの温度で800℃、2分保持、加圧は40MPaである。次にこの成形転写面にレジストをスピンコート法により塗布し、所望の微細パターンに対応するように電子ビーム露光法により、露光を行う。その後、現像を行うことで、レジストが除去された部分は成形転写面が露出している。
次に、反応性イオンエッチング法によって、成形転写面の露出している微細パターン部をエッチングする。エッチングに使用したガスはSF6(注:六フッ化イオウ)で、15分間エッチングを行った。以上のようにして作製した金型(図9)を使用して、プラスチックレンズを成形したところ、レンズ形状および微細パターン形状を高精度に転写することができた。連続成形後でも、金型の微細パターンにはプラスチックの付着は全くなかった。
【0042】
同様に、SPS法でSi3N4の120nmの微細ナノ粒子を成形転写面に配置して、焼結温度1800℃、2分保持、加圧50MPaで焼結体を作成し、反応性イオンエッチングにより微細パターンを形成して金型を作製した。また、SPS法でSiCの100nmの微細ナノ粒子を成形転写面に配置して、焼結温度1700℃、3分保持、加圧35MPaで焼結体を作成し、反応性イオンエッチングにより微細パターンを形成して金型を作製した。また、SPS法でSiO2の200nmの微細ナノ粒子を成形転写面に配置して、焼結温度900℃、3分保持、加圧20MPaで焼結体を作成し、反応性イオンエッチングにより微細パターンを形成して金型を作製した。また、SPS法でTa2O5の50nmの微細ナノ粒子を成形転写面に配置して、焼結温度1000℃、1分保持、加圧40MPaで焼結体を作成し、反応性イオンエッチングにより微細パターンを形成して金型を作製した。それぞれの金型でプラスチック材料を成形したところ、微細パターンを良好に転写することができた。
【0043】
〔まとめ〕
以上のように、本発明によれば、所望形状の表面に微細パターンを形成した金型を容易に作製することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】は、実施例1のSPS法による金型の焼結装置の断面図
【図2】は、AFM加工の原理の説明図
【図3】は、AFM加工によって成形転写面上の微細マスクパターンを加工する加工例の一部拡大図
【図4】は、実施例1で微細パターンを形成した金型の断面図
【図5】は、実施例の金型で微細パターンを形成したレンズの表面図
【図6】は、実施例2のSPS法による金型の焼結装置の断面図
【図7】は、実施例2で微細パターンを形成した金型の断面図
【図8】は、実施例2の焼結装置による金型の焼結加工の説明図
【図9】は、実施例2の微細パターンを形成した金型断面図
【図10】は、実施例2の焼結装置による他の金型の焼結加工の説明図
【図11】は、実施例2の微細パターンを形成した他の金型断面図
【図12】は、実施例2の金型で微細パターンを形成したレンズ表面の表面図
【図13】は、実施例3のSPS法による金型の焼結装置の断面図
【図14】は、実施例3の焼結装置による金型の断面図
【図15】は、実施例3の金型で微細パターンを成形したレンズの表面図
【図16】は、従来技術1の金型焼結装置の断面図
【図17】は、従来技術2による エッチング層4がエッチング処理により微細構造が形成されているものの断面図
【符号の説明】
【0045】
11,21,31:ダイ
12a,12b,22a,22b,32a,32b:パンチ
13,23:母材(バルク材)、
14,24,34:微細ナノ粒子
【技術分野】
【0001】
この発明は、微細パターンを有する成形品を成形するための金型及びその製造方法に関するものであり、特にナノ単位の微細パターンを金型の転写面に高精度に形成することができるものである。
【背景技術】
【0002】
この発明に関連する従来技術、すなわち、成型用金型の転写面を高精度で加工する技術の公知例として、特開2005−272254号公報(特許文献1)、特開2004−268331号公報(特許文献2)に記載されているものがある。
【0003】
〔従来技術1〕
上記特許文献1(特開2005−272254号公報)に記載されているものは、レンズ等の高精度なガラス光学素子を成形するための光学素子成形用金型及びその製造方法に関するものであり、生産性に優れ、低コストで高精度な成形面形状を得ることができる光学素子成形用金型の製造方法であり、高圧水アトマイズ法によって平均粒径2μmの粉体とした鉄を主成分とする金属ガラス(ガラス転移温度(Tg)が540℃、結晶化開始温度(Tx)が590℃)の粉末2を被焼結体3として、Txより低い温度で放電プラズマ焼結法により焼結して成形面を得る工程を備えている。そして、この放電プラズマ焼結法を行う放電プラズマ焼結装置6は、焼結ユニット7を内部に配設している真空チャンバ8と、この真空チャンバ8の上下に設けられ焼結ユニット7を間に挟んで配設された上部パンチ電極10及び下部パンチ電極11と、これら電極を介して焼結ユニット7にパルス電力を印加する電源部12とを備えており(図16)、高いガラス転移温度(Tg)を有する金属ガラスであっても、大型のバルクを形成することができるものである。
なお、図16は特許文献1の図1を転用したものであり、符号は同図1のものと同じである。
【0004】
〔従来技術2〕
また、特許文献2(特開2004−268331号公報)に記載されているものは、レンズ面等の曲面上にCGH(Computer Generated Hologram)16や錐形状等の複雑な形状の微細構造をもつ光学素子を成型するための金型の製造方法であり、金型1が金型母材2と加工層3とエッチング層4により構成されており、レンズ面に対応する形状に粗加工された金型母材2上に加工層3が積層されており、加工層3がレンズ面に対応する形状に高精度に加工されており、加工層3の上にエッチング層4が形成されており、エッチング層4がエッチング処理により微細構造が形成されているものである(図17)。そして、この従来技術は、金型の面精度を機械加工によって確保し、また、微細構造の形状精度をエッチング層4のエッチングによって得ることができるものである。
なお、図17は上記特許文献2の図1を転用したものであり、符号は同図1のものと同じである。
【0005】
〔先行技術〕
また、公知例ではないが、先行技術として特願2006−183320号のものがある。この先行技術は、成形時の離型が容易な構造の微細パターンを形成することによって、傾斜面、曲面、自由曲面などからなる表面に多数の微細溝による微細パターンを有する成形品を成形することができるものであり、金型からの転写によって成形され、成形時の型開きによる離型方向と表面の法線方向とが角度をなす該表面に微細パターンを有する成形品において、前記表面の斜面または曲面の傾斜する方向に沿って延びた微細溝が多数配列する微細溝群を有するとともに、隣り合う微細溝と微細溝の溝間隔が所定の間隔以下となるように表面全体に前記微細溝が配列していることにより、成形時の型開きの離型方向に対して表面が傾斜していない部分から傾斜した方向に向かって微細溝が存在するので、微細溝の開口部が離型方向を向くことになり、離型を容易にすることができるものである。
【0006】
〔従来技術の問題点〕
ところで近年では、光学素子の光学表面に微細パターンを形成することで反射防止機能や回折機能あるいは偏光機能の付加を実現することが行われるようになっている。また、光学素子にかかわらず、近年、濡れ性の制御や摩擦の制御等のために表面に微細パターンを形成することが行われている。加工法として、機械加工あるいはフォトリソグラフィーやエッチング等の半導体プロセスがあるが、大量生産を行うには金型に微細パターンを形成してから樹脂やガラスに転写する方法が好ましい。
【0007】
〔従来技術1について〕
特許文献1(特開2005−272254号公報)のものは、金属ガラスの粉末を放電プラズマ焼結法(SPS法)により焼結して金型を得ているが、金属ガラスは多成分の材料であるため、エッチングによる微細パターン形成が非常に困難である。
【0008】
〔従来技術2について〕
特許文献2(特開2004−268331号公報)の従来技術は、ステンレス鋼材からなる金型母材を機械加工して、その金型母材へ電鋳によりニッケルを積層しており、このニッケル面を成形対象の形状に対応した所定形状によりまた所定精度になるように、超精密の切削あるいは研磨加工によって仕上げ、次に微細パターンを形成するための表面層をスパッタリング、真空蒸着、CVD(Chemcal Vaper Deposition)などの方法で成膜した後、レジストを塗布して、電子線などで露光を行っている。そして、形成されたレジストパターンを利用してドライエッチングを行うことで、微細パターンを形成した金型を得ることができる。しかし、このような方法では、金型母材とニッケル層を機械加工する必要があり、金型作製工程が煩雑になってしまう。また、スパッタリング、真空蒸着、CVDなどの方法で成膜した微細パターンを形成するための表面層を厚膜にすることは困難であり、その膜厚はせいぜい数μmまでであり、微細パターンのサイズはその膜厚により制限を受けてしまう。
【特許文献1】特開2005−272254号公報
【特許文献2】特開2004−268331号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、この発明は、微細パターンを有する成形品を成形するための金型の製造方法について、その製作工程の煩雑化を避け、微細パターンのサイズが制限されないで、所望形状の表面に微細パターンを容易な製作工程で高精度に形成できるように、金型加工方法を工夫することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための手段は、成形対象の形状に対応した型形状とその精度が得られるように加工した放電プラズマ焼結法(以下「SPS法」という)のための型を使用して、SPS法により、少なくとも金型の成形転写面を、反応性イオンエッチングが可能な材料の微細ナノ粒子を焼結して作製し、その表面にマスクパターンを形成した後、反応性イオンエッチングにより微細パターンを形成することである。
【0011】
成形転写面を形成する微細ナノ粒子はSi、Si3N4、SiC、TiN、SiO2、Ta2O5、ダイヤモンド、グラッシーカーボンのいずれかである。金型の母材としては、超硬合金、SiC、Si3N4、ステンレス鋼、グラッシーカーボンのいずれかを選択する。微細マスクパターンの形成は、微小な工具で加工荷重が一定の切削加工によることが好ましい。
【0012】
また、微細ナノ粒子をSPS法(放電プラズマ焼結法)で焼結することによって少なくとも金型の成形転写面を形成するので、短時間で焼結を完了する。このため、焼結を粒子と粒子の界面でのみ進行させることができる。つまり、微細ナノ粒子が大きく成長することを抑制できることから、微細な粒子からなる緻密な材料となるので高精度の微細パターンを形成することが可能である。また、SPS法においては、成形転写面の形状をSPS法の金型形状から転写することができるので、成形転写面の少なくとも粗加工の工程を省くことが可能である。さらに、SPS法においては、微細パターンのサイズに応じて、成形転写面を形成する層の厚さを大きくすることができるので、微細パターンのサイズや形状に制約を与えることがない。SPS法によれば、短時間で焼結が完了し、また、型形状の転写が可能であるので、微細パターンを有する成形品を成形するための金型を数多く作製することが容易である。
【0013】
さらに、成形転写面に微細マスクパターンを形成した後、反応性イオンエッチングにより微細パターンを形成するので、マスク(レジスト)との組み合わせで微細パターンを容易に短時間で形成することが可能となる。また、微小な領域のみでなく、大きな面積に微細パターンを形成することができる。
【0014】
また、微細ナノ粒子はSi、Si3N4、SiC、TiN、SiO2、Ta2O5、ダイヤモンド、グラッシーカーボンのいずれかであるので、反応性イオンエッチング法によって微細パターン形成のための加工をすることが可能であり、容易に微細パターンを形成した金型を得ることができる。さらに、離型性および耐久性に優れた金型を得ることができる。
【0015】
次に、超硬合金、SiC、Si3N4、ステンレス鋼、グラッシーカーボンのいずれかを金型の母材とするので、金型として望まれる高い強度や高い熱伝導性が得られる。
【0016】
さらに、微小な工具で加工荷重が一定の切削加工を行うことで微細マスクパターンを形成するので一定の深さの加工が可能である。したがって、マスクの不要部のみを加工することができ、反応性イオンエッチングにより一定深さの微細パターンを形成することにつながる。また、機械(パラレル機構や多軸の加工装置やステージ)の動きにより、さまざまなパターンを形成することが可能である。
【発明の効果】
【0017】
〔請求項1の発明〕
請求項1の発明は、微細ナノ粒子を放電プラズマ焼結法(SPS法)で焼結することによって少なくとも金型の成形転写面を形成するので、短時間で焼結を完了する。このため、焼結を粒子と粒子の界面でのみ進行させることができる。つまり、微細ナノ粒子が大きく成長することを抑制することができることから、微細な粒子からなる緻密な材料となるので高精度の微細パターンを形成することが可能である。また、SPS法においては、成形転写面の形状をSPS用の金型形状から転写することができるので、成形転写面の少なくとも粗加工の工程を省くことが可能になる。さらに、SPS法においては、微細パターンのサイズに応じて、成形転写面を形成する層の厚さを大きくすることができるので、微細パターンのサイズや形状に制約を与えることがない。SPS法によれば短時間で焼結が完了し、また型形状の転写が可能であるので、微細パターンを有する成形品を成形するための金型を数多く作製することが容易である。
【0018】
さらに、成形転写面に微細マスクパターンを形成した後、反応性イオンエッチングにより微細パターンを形成するので、マスク(レジスト)との組み合わせで微細パターンを容易に短時間で形成することが可能となる。また、微小な領域のみでなく、大きな面積に微細パターンを形成することができる。
【0019】
〔請求項2の発明〕
請求項2の発明は、微細ナノ粒子がSi、Si3N4、SiC、TiN、SiO2、Ta2O5、ダイヤモンド、グラッシーカーボンのいずれかであるので、反応性イオンエッチング法によって微細パターン形成のための加工が可能であり、容易に微細パターンを形成した金型を得ることができる。
【0020】
〔請求項3の発明〕
請求項3の発明は、超硬合金、SiC、Si3N4、ステンレス鋼、グラッシーカーボンのいずれかを金型の母材とするので、金型として望まれる高い強度や高い熱伝導性が得られる。
【0021】
〔請求項4の発明〕
請求項4の発明は、微小な工具で加工荷重が一定の切削加工を行うことで微細マスクパターンを形成するので、一定の深さの加工が可能であり、マスクの不要部のみを加工することができるため、反応性イオンエッチングにより一定深さの微細パターンを形成することが可能になる。また、機械(パラレル機構や多軸の加工装置やステージ)の動きにより、さまざまなパターンを形成することが可能となる。
【0022】
〔請求項5の発明〕
請求項5の発明は、少なくとも金型の成形転写面が、Si、Si3N4、SiC、TiN、SiO2、Ta2O5、ダイヤモンド、グラッシーカーボンであるので、離型性および耐久性に優れた金型を得ることができる。また、超硬合金、SiC、Si3N4、ステンレス鋼、グラッシーカーボンのいずれかを金型の母材とするので、金型として望まれる高い強度や高い熱伝導性が得られる。よって、微細パターンを有する成形品を、高精度で安定して得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明においては、成形品の表面を成形するための金型において、少なくとも金型の成形転写面を、Si、Si3N4、SiC、TiN、SiO2、Ta2O5、ダイヤモンド、グラッシーカーボンのいずれかの微細ナノ粒子をSPS(放電プラズマ焼結)法により焼結することによって、形成したことを特徴とする。
ここで、Si、Si3N4、SiC、TiN、SiO2、Ta2O5、ダイヤモンド、グラッシーカーボンは、反応性イオンエッチング法によって微細パターン形成のための加工が可能な材料である。反応性イオンエッチング法の原理では、反応室内でエッチングガスをプラズマ化し、試料を固定する陰極に高周波を印加し、試料とプラズマ間に電位が生じて、プラズマ中のイオン種やラジカルが試料に加速されて衝突し、このときに、イオンによる物理的なスパッタリングと、エッチングガスとの化学反応が同時に作用することで、加工が行われることになる。
【0024】
上記材料の直径1μm以下の微細ナノ粒子をSPS法により焼結することによって金型を形成する。SPS法の原理では、圧粉体粒子間隙(注:SPS法に使用する型内に挿入した、 焼結前の粉体を加圧した状態における、粉体である粒子同士から形成される間隙)に低電圧でパルス状大電流を投入し、火花放電現象により瞬時に発生する放電プラズマの高エネルギーを熱拡散・電界拡散などに効果的に応用することができる。低温から2000℃以上の高温域において従来法に比べ200〜500℃ほど低い温度域で、昇温・保持時間を含め概ね5〜20分程度の短時間で焼結を完了することができる。ここで、SPS法においては、短時間で焼結が完了するため、焼結を粒子と粒子の界面でのみ進行させることができ、これにより、微細ナノ粒子が大きく成長することを抑制することができる。また、微細ナノ粒子が非晶質であれば、非晶質状態がほぼ維持された状態で焼結させることができる。SPS法とは放電プラズマ焼結法のことであるが、通電焼結法、プラズマ活性化焼結法とも言われており、本発明では上記原理に基づく焼結法であればその焼結法を採用することができる。
【0025】
反応性イオンエッチングによって微細パターンを形成するときに、エッチング速度は結晶粒毎に異なるので、結晶粒の存在によって段差が発生してしまう。この現象によって微細パターンの形状精度が低下することがある。例えば直径1μm以下の微細ナノ粒子においては、結晶粒径は当然1μm以下のナノサイズであり、このような微細ナノ粒子をSPS法により焼結すると、粒子の成長が抑制されるため、ナノサイズの結晶粒により形成された焼結体となる。この焼結体を反応性イオンエッチングによって加工したときには、結晶粒の存在による段差はナノサイズに抑えられ、高精度の微細パターンを形成することができる。結晶粒の大きさは、微細パターンの大きさに対して、10分の1以下程度であれば十分である。ここで微細パターンの大きさは、その幅又は深さのいずれか小さい方の大きさを言う。さらには微細ナノ粒子が結晶質ではなく非晶質であれば、結晶粒ごとのエッチング速度の違いによる加工段差が生じないので、微細パターン形成に有利である。
【0026】
以上のような金型において、Si、Si3N4、SiC、TiN、SiO2、Ta2O5、ダイヤモンド、グラッシーカーボンのいずれかの微細ナノ粒子だけをSPS法により焼結することによって金型を形成しても良いが、上記ナノ粒子によって成形転写面を形成し、その母材として超硬合金、SiC、Si3N4、ステンレス鋼、グラッシーカーボンのいずれかを使用することが好ましい。それは、金型として望まれる高い強度や高い熱伝導性が得られるからである。母材を形成する材料をバルク材(注:塊としての物体。因みに、焼結前の粉体はこれには当たらない)としてSPS法のプロセスに投入して、その成形転写面を形成する微細ナノ粒子を焼結するとともに両者を接合して金型としても、あるいは、母材を形成する材料を粒子(粉末)としてSPS法のプロセスに投入して、その成形面を形成する微細ナノ粒子とともに一体焼結しても良い。または、微細ナノ粒子をSPS法によって焼結することで成形転写面を形成した焼結体と母材とを接合しても良い。さらに、成形転写面形成部と母材との界面は、それぞれの材料の組成が徐々に変化する、いわゆる傾斜組成とすることが好ましい。
【0027】
〔実施例1〕
超硬合金製のダイとパンチを用意し、SPS用の型とする。図1(断面図)のように、所望形状の金型を形成するために、ダイ11とパンチ12a,12bを加工しておく。上側のパンチ12aはレンズ形状に合わせた形状に成形面を形成されている。ダイ11とパンチ12a、パンチ12bから形成される空間の下側にSiCのバルク材13を所望の形状に加工したものを配置した。次に、直径約6nmのダイヤモンド微細ナノ粒子14とSiCの粒子が1:4の体積比で混合したものをSiCの母材(バルク材)13上に配置してパンチ12a,12bで加圧する。上側のパンチ12aを抜いてから、さらに、その上に2:3の体積比に混合したものを配置してこれをパンチ12a,12bで加圧する。このように、3:2、4:1の体積比に混合したものを順次配置して、最後にダイヤモンドの微細ナノ粒子を配置してパンチで加圧する。
【0028】
次に図1に示した部分が配置されているSPS装置の真空チャンバの真空引きを行い、その後、上下のパンチ12a,12bに通電し、パルス電圧を印加する。焼結温度はダイ11の温度で1000℃、2分保持、加圧は30MPaである。それから30分間冷却後、SPS用の型から焼結体を取り出した。作製した焼結体の成形転写面にイオンプレーティングでマスクとしてのAlをコーティングした。このAlに対してAFM加工(走査型プローブ顕微鏡の原理を応用した微細加工)を行い、微細マスクパターンを形成した。AFM加工を行った部分はダイヤモンドが露出している。
【0029】
ここで、図2はAFM加工の原理を示している。プローブ15が物質(工作物)の表面をなぞるときに、カンチレバー16の反り量が一定に維持されるように、つまりフォトダイオードでのレーザー光の検出位置が一定となるようにピエゾ17の伸縮によってZ軸が上下動するフィードバック制御が行われる。カンチレバー16の反り量を一定に維持することは、プローブ15と物質(工作物)との間に働く力を一定に維持することであり、測定時の力は微小であるため原子間力といわれる。この反り量の設定によって原子間力より大きな荷重を発生させることが可能であり、物質(工作物)を加工することができる。発生させた荷重を一定に維持することができるので、深さが一定の溝加工が可能である。加工対象が曲面であっても、原理的にその曲面に対して追従することで深さが一定の溝加工を行うことが可能である。ピエゾ17によるフィードバック制御のストロークは数μm程度であるため、曲面の加工には図2に示すようなヘッド部を搭載していて3次元的に走査できる装置が必要になる。
【0030】
そこで、図2に示すような機構の加工ヘッドを、図3に示すようなパラレルリンク機構に装着して、成形転写面のマスク材の加工を行った。これはパラレルリンク機構19によって自在な角度で加工を行える装置であり、パラレルリンク機構19によって加工ヘッド18を動かすことで、金型の成形面に対してツールパスを発生させ、加工ヘッド部のピエゾを加工荷重が一定となるように制御することによって、金型成形面の微細マスクパターンを加工することが可能となる。この実施例1ではパラレルリンク機構32を採用したが、5軸または6軸で構成される多軸の加工装置やステージを採用することも可能である。
【0031】
次に、反応性イオンエッチング法によって、成形転写面が露出している微細パターン部をエッチングした。上記エッチングに使用したガスはCF4+O2で、10分間エッチングを行った。ここで、エッチング工程において、エッチング終了時にAlマスクがすべて除去されるエッチング条件を選定したが、エッチング終了時にAlマスクが残存する場合は別途Alだけを除去する工程を設けても良い。以上のようにして作製された金型が図4に示されている。そして、この図4に示す金型を使用して、プラスチックレンズを成形したところ、レンズ形状および微細パターン形状を高精度に転写することができた。図5には成形したレンズ表面の微細パターンの配列が示されている。本実施例の微細パターンの断面形状は開口幅が180nm、深さが250nmのV溝形状となっており、可視光域の光に対して反射防止機能を備えている。連続成形後でも、金型の離型性が優れており、金型の微細パターンにはプラスチックの付着は全くなかった。さらには、ダイヤモンドが非常に硬いことから、金型の微細パターンの欠損も存在しない。
【0032】
この実施例1においては、母材となるバルク材と成形転写面との界面の形状は平面からなるものとしているが、図6および図7に示すように、母材と成形転写面との界面の形状は成形転写面形状とほぼ同じ形状にしても良い。
【0033】
〔実施例2〕
図6、図7に示す実施例2は、グラファイト製のダイとパンチを用意し、これらをSPS用の型とする。図8(断面図)に示されているように、所望形状の金型を形成するために、ダイ21とパンチ22a,22bを加工しておく。上側のパンチ22aはレンズ形状に合わせた形状に形成されている。ダイ21とパンチ22a,22bから形成される空間の下側に超硬合金(WC)の粒子を配置して、これをパンチ22a,22bで加圧する。次に、上側のパンチ22aを抜いてから、直径約60nmのTiNの微細ナノ粒子24と超硬合金の粒子が1:4の体積比に混合したものを母材23となる超硬合金の上に配置してパンチで加圧する。さらに、その上に2:3の体積比に混合したものを配置してパンチで加圧する。このように、3:2、4:1の体積比に混合したものを順次配置して、最後にTiNの微細ナノ粒子を配置する。
【0034】
次に図8に示した部分が配置されているSPS装置の真空チャンバを真空引きし、その後、上下のパンチに通電し、パルス電圧を印加する。焼結温度はダイの温度で1600℃、2分保持、加圧は30MPaである。それから50分間冷却後、SPS用の型から焼結体を取り出した。このように焼結された金型の成形転写面を必要に応じて仕上げ加工するが、本実施例ではダイヤモンド砥石を使用した研削加工により仕上げ加工を実施した。次にこの成形転写面にレジストをスプレー法により塗布し、所望の微細パターンに対応するように二光束干渉露光法により露光を行う。その後、現像を行うことで、レジストが除去された部分は成形転写面が露出している。
【0035】
次に、反応性イオンエッチング法によって、成形転写面の露出している微細パターン部をエッチングする。エッチングに使用したガスはCF4+O2+H2+NH3で、30分間エッチングを行った。以上のようにして作製した金型が図9に示されている。この図9の金型を使用して、プラスチックレンズを成形したところ、レンズ形状および微細パターン形状を高精度に転写することができた。連続成形後でも、金型の離型性が優れており、金型の微細パターンにはプラスチックの付着は全くなかった。
【0036】
図12に成形したレンズ表面の微細パターンの配列を示している。これはピッチ190nm、深さ300nmのU字型の溝を形成した異型レンズである。本実施例2においては、母材と成形転写面との界面の形状は概略成形転写面形状と同じ形状としたが、図10および図11に示すように、界面が成形転写面形状と同じ形状でなく、ほぼ平面からなる金型でも差し支えない。この場合は母材をダイとパンチから形成される空間の下側に超硬合金の粒子を配置して、粒子を押圧する面形状が平面のパンチで加圧して、SPS法による焼結の時点でレンズ形状に合わせた形状に形成されたパンチを使用することになる。
【0037】
〔実施例3〕
実施例3では超硬合金製のダイとパンチを用意し、これをSPS用の型とする。図13(断面図)に示すように、所望形状の金型を形成するために、ダイ31とパンチ32a,32bを加工しておく。上側のパンチ32aはレンズ形状に合わせた形状に形成されている。ダイ31とパンチ32a,32bから形成される空間に直径100nm程度のグラッシーカーボンの微細ナノ粒子34を配置して、これをパンチ32a,32bで加圧する。
【0038】
次に図13に示した部分が配置されているSPS装置の真空チャンバの真空引きを行い、その後、上下のパンチ32a,32bに通電し、パルス電圧を印加する。焼結温度はダイ31の温度で800℃、1分保持、加圧は40MPaである。それから30分間冷却後、SPS用の型から焼結体を取り出した。このように焼結された金型の成形転写面を必要に応じて仕上げ加工するが、この実施例3ではダイヤモンド砥石を使用した研削加工により仕上げ加工を実施した。作製した焼結体の成形転写面にイオンプレーティングでマスクとしてのAlをコーティングした。このAlに対してAFM加工を行い、微細マスクパターンを形成した。AFM加工を行った部分はグラッシーカーボンが露出している。
【0039】
次に、反応性イオンエッチング法によって、成形転写面の露出している微細パターン部をエッチングする。エッチングに使用したガスはO2で、20分間エッチングを行った。以上のように作製した金型(図14)を使用して、ガラスレンズを成形したところ、レンズ形状および微細パターン形状を高精度に転写することができた。連続成形後でも、金型の離型性が優れており、金型の微細パターンにはガラスの付着は全くなかった。
図15に成形したレンズ表面の微細パターンの配列を示している。これは、約3μmの段差からなる回折面上にサブ波長サイズの微細パターンを形成したものである。金型の成形転写面としては数μmのパターンに対しても十分な厚さをもっている。
【0040】
〔実施例4〕
実施例4ではグラファイト製のダイとパンチを用意し、これをSPS用の型とする。図8(断面図)のように、所望形状の金型を形成するために、ダイとパンチを加工しておく。上側のパンチはレンズ形状に合わせた形状に形成されている。ダイとパンチから形成される空間の下側にステンレス鋼の粒子を配置してパンチで加圧する。次に、上側のパンチを抜いてから、直径約150nmのSiの微細ナノ粒子とステンレス鋼の粒子が1:5の体積比に混合したものをステンレス鋼の上に配置してパンチで加圧する。さらに、その上に2:4の体積比に混合したものを配置してパンチで加圧する。このように、3:3、4:2、5:1の体積比に混合したものを順次配置して、最後にSiの微細ナノ粒子を配置してパンチで加圧する。
【0041】
次に図8に示した部分が配置されているSPS装置の真空チャンバの真空引きを行い、その後、上下のパンチに通電してパルス電圧を印加する。焼結温度はダイの温度で800℃、2分保持、加圧は40MPaである。次にこの成形転写面にレジストをスピンコート法により塗布し、所望の微細パターンに対応するように電子ビーム露光法により、露光を行う。その後、現像を行うことで、レジストが除去された部分は成形転写面が露出している。
次に、反応性イオンエッチング法によって、成形転写面の露出している微細パターン部をエッチングする。エッチングに使用したガスはSF6(注:六フッ化イオウ)で、15分間エッチングを行った。以上のようにして作製した金型(図9)を使用して、プラスチックレンズを成形したところ、レンズ形状および微細パターン形状を高精度に転写することができた。連続成形後でも、金型の微細パターンにはプラスチックの付着は全くなかった。
【0042】
同様に、SPS法でSi3N4の120nmの微細ナノ粒子を成形転写面に配置して、焼結温度1800℃、2分保持、加圧50MPaで焼結体を作成し、反応性イオンエッチングにより微細パターンを形成して金型を作製した。また、SPS法でSiCの100nmの微細ナノ粒子を成形転写面に配置して、焼結温度1700℃、3分保持、加圧35MPaで焼結体を作成し、反応性イオンエッチングにより微細パターンを形成して金型を作製した。また、SPS法でSiO2の200nmの微細ナノ粒子を成形転写面に配置して、焼結温度900℃、3分保持、加圧20MPaで焼結体を作成し、反応性イオンエッチングにより微細パターンを形成して金型を作製した。また、SPS法でTa2O5の50nmの微細ナノ粒子を成形転写面に配置して、焼結温度1000℃、1分保持、加圧40MPaで焼結体を作成し、反応性イオンエッチングにより微細パターンを形成して金型を作製した。それぞれの金型でプラスチック材料を成形したところ、微細パターンを良好に転写することができた。
【0043】
〔まとめ〕
以上のように、本発明によれば、所望形状の表面に微細パターンを形成した金型を容易に作製することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】は、実施例1のSPS法による金型の焼結装置の断面図
【図2】は、AFM加工の原理の説明図
【図3】は、AFM加工によって成形転写面上の微細マスクパターンを加工する加工例の一部拡大図
【図4】は、実施例1で微細パターンを形成した金型の断面図
【図5】は、実施例の金型で微細パターンを形成したレンズの表面図
【図6】は、実施例2のSPS法による金型の焼結装置の断面図
【図7】は、実施例2で微細パターンを形成した金型の断面図
【図8】は、実施例2の焼結装置による金型の焼結加工の説明図
【図9】は、実施例2の微細パターンを形成した金型断面図
【図10】は、実施例2の焼結装置による他の金型の焼結加工の説明図
【図11】は、実施例2の微細パターンを形成した他の金型断面図
【図12】は、実施例2の金型で微細パターンを形成したレンズ表面の表面図
【図13】は、実施例3のSPS法による金型の焼結装置の断面図
【図14】は、実施例3の焼結装置による金型の断面図
【図15】は、実施例3の金型で微細パターンを成形したレンズの表面図
【図16】は、従来技術1の金型焼結装置の断面図
【図17】は、従来技術2による エッチング層4がエッチング処理により微細構造が形成されているものの断面図
【符号の説明】
【0045】
11,21,31:ダイ
12a,12b,22a,22b,32a,32b:パンチ
13,23:母材(バルク材)、
14,24,34:微細ナノ粒子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細パターンを有する成形品を成形するための金型の製造方法において、
微細ナノ粒子を放電プラズマ焼結法で焼結することによって少なくとも金型の成形転写面を形成する工程と、成形転写面に微細マスクパターンを形成する工程と、成形転写面に反応性イオンエッチングにより微細パターンを形成する工程を含むことを特徴とする金型の製造方法。
【請求項2】
請求項1の金型の製造方法において、微細ナノ粒子がSi、Si3N4、SiC、TiN、SiO2、Ta2O5、ダイヤモンド、グラッシーカーボンのいずれかであることを特徴とする金型の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2の金型の製造方法において、超硬合金、SiC、Si3N4、ステンレス鋼、グラッシーカーボンのいずれかを金型の母材として、微細ナノ粒子を放電プラズマ焼結法で焼結することによって金型の成形転写面を形成することを特徴とする金型の製造方法。
【請求項4】
請求項1の金型の製造方法において、成形転写面にマスク材料を塗布またはコーティングした後、微小な工具で加工荷重が一定の切削加工を行うことで微細マスクパターンを形成することを特徴とする金型の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の金型の製造方法によって作製されたものであることを特徴とする金型。
【請求項1】
微細パターンを有する成形品を成形するための金型の製造方法において、
微細ナノ粒子を放電プラズマ焼結法で焼結することによって少なくとも金型の成形転写面を形成する工程と、成形転写面に微細マスクパターンを形成する工程と、成形転写面に反応性イオンエッチングにより微細パターンを形成する工程を含むことを特徴とする金型の製造方法。
【請求項2】
請求項1の金型の製造方法において、微細ナノ粒子がSi、Si3N4、SiC、TiN、SiO2、Ta2O5、ダイヤモンド、グラッシーカーボンのいずれかであることを特徴とする金型の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2の金型の製造方法において、超硬合金、SiC、Si3N4、ステンレス鋼、グラッシーカーボンのいずれかを金型の母材として、微細ナノ粒子を放電プラズマ焼結法で焼結することによって金型の成形転写面を形成することを特徴とする金型の製造方法。
【請求項4】
請求項1の金型の製造方法において、成形転写面にマスク材料を塗布またはコーティングした後、微小な工具で加工荷重が一定の切削加工を行うことで微細マスクパターンを形成することを特徴とする金型の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の金型の製造方法によって作製されたものであることを特徴とする金型。
【図1】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【公開番号】特開2009−202469(P2009−202469A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−48083(P2008−48083)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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