説明

微細モールド及びその製造方法

【課題】微細な凹凸パターン自体に歪みを発生させることなく、微細な凹凸パターンを忠実に転写可能な微細モールドを提供する。
【解決手段】ロール2と、このロール2の外周面に内周面が接する緩衝筒3と、この緩衝筒3の外周面に内周面が接し、外周面に微細な凹凸パターン4aが形成されたスタンパ筒4とを有し、緩衝筒3は、スタンパ筒4より、線膨張係数が大きく、弾性率が小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外周面に形成された微細な凹凸パターンを転写するロール状の微細モールド及びその微細モールドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路は微細化、集積化が進んでおり、その微細化等を実現するためのパターン転写技術として、フォトリソグラフィ技術や電子線描画技術と並んで、ナノインプリント技術が提案されている。
【0003】
ナノインプリント技術は、半導体基板上に形成したいパターンと同じ微細な凹凸パターンを有する微細モールドを、半導体基板表面に形成されたレジスト膜層に対して型押しすることでパターンを転写するものである。そして、微細モールドがロール状であれば、微細モールドを転がすことができ、容易に連続してパターンを転写することができる。
【0004】
連続転写のためには、ロール支持体と凹凸パターンを有するスタンパを密着させる必要があり、スタンパをその熱膨張係数よりも大きい熱膨張係数を持つロール支持体に固定する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−190739号公報(図9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ロール支持体が加熱され膨張すると、スタンパに歪が生じ微細な凹凸パターン自体に歪みが発生する場合があると考えられた。また、転写される半導体基板等の被転写基材に段差があったり、スタンパに厚さムラがあったりすると、被転写基材にスタンパが均一な圧力で圧接されず、微細な凹凸パターンが忠実に転写できないと考えられた。
【0006】
そこで、本発明の課題は、微細な凹凸パターン自体に歪みを発生させることなく、微細な凹凸パターンを忠実に転写可能な微細モールド及びその微細モールドの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決した本発明は、ロールと、前記ロールの外周面に内周面が接する緩衝筒と、前記緩衝筒の外周面に内周面が接し、外周面に微細な凹凸パターンが形成されたスタンパ筒とを有し、前記緩衝筒は、前記スタンパ筒より、線膨張係数が大きく、弾性率が小さい微細モールドであることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、外周面に微細な凹凸パターンが形成されたスタンパ筒を形成し、ロールの周面上に、前記スタンパ筒より、線膨張係数が大きく、弾性率が小さい緩衝筒を形成し、前記緩衝筒を冷却しながら、前記スタンパ筒を前記緩衝筒にはめ込む微細モールドの製造方法であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、微細な凹凸パターン自体に歪みを発生させることなく、微細な凹凸パターンを忠実に転写可能な微細モールド及びその微細モールドの製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し重複した説明を省略する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1(a)は、本発明の第1の実施形態に係る微細モールド1の正面図であり、図1(b)は、図1(a)のA−A矢視断面図である。図1(a)と図1(b)に示すように、微細モールド1は、ロール2と、このロール2の周面に内周面が接する緩衝筒3と、この緩衝筒3の外周面に内周面が接し、外周面に微細な凹凸パターン4aが形成されたスタンパ筒4とを有している。微細な凹凸パターン4aのサイズは10nm以上10μm以下である。
【0012】
前記緩衝筒3は、スタンパ筒4より、線膨張係数が大きく、弾性率が小さくなっている。緩衝筒3には、弾性体を用いることができる。
【0013】
ここで、線膨張係数とはα=(δl/δθ)/l、(ここで、θは部材の温度であり、lは室温での部材の長さである。)で定義される値αである。また、弾性率とは応力と歪の比を表す定数であり、ヤング率のように部材を延伸した際の応力と歪の関係より得られる値である。具体的には、部材の変形のしにくさを表す物性値であり、弾性率が大きい場合その部材は硬い場合が多い。
【0014】
そして、緩衝筒3の材質としては、スタンパ筒4よりも線膨張係数が大きく、弾性率が小さい材料であれば特に制限はない。さらに、耐熱性と耐久性がある材料であることが好ましく、シリコーンエラストマ、ジメチルシリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、パーフルオロゴム、パーフルオロフォスファーゼンゴム、さらには、これらのゴムにフィラーやガラス繊維などが配合された複合材料などを用いることができる。
【0015】
前記スタンパ筒4は、表面に微細な凹凸パターン4aが形成されたスタンパシート6を、周方向に3枚接合して形成されている。スタンパシート6の端面間には、接合部10が設けられ、この接合部10によって、スタンパシート6は互いに接合し連結している。
【0016】
スタンパシート6の材質は、可とう性のある金属であり、銅(Cu)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)の他、ニッケル・リン(P)、ニッケル・マンガン(Mn)、ニッケル・鉄、ニッケル・コバルト(Co)、コバルト・モリブデン(Mo)、コバルト・タングステン(W)、ニッケル・モリブデン、ニッケル・タングステン等の合金でもかまわない。これらの金属は、後記するが、電鋳により微細な凹凸パターン5aが形成された原版5(図2参照)よりレプリカ(微細な凹凸パターン6a)が作製可能(剥離可能)な材料であり、このようなレプリカの作製可能な性質の材料であれば、これらの金属に限らない。そして、このレプリカの作製には、ニッケルを主成分とする金属が特に適している。そして、ニッケルを主成分とする金属は、耐磨耗性、耐食性、熱伝導性機械的強度、延性、靭性にも優れている。
【0017】
また、スタンパシート6の厚さは、可とう性を保持し、且つ破断や皺などが発生しない厚さであれば特に限定されない。具体的には、50μm以上100μm以下程度の厚さである。
【0018】
前記ロール2は、円柱状または円筒状に加工された成形品であり所定の強度を有し、中心軸により回転可能なものである。ロール2は、外周面に緩衝筒3の内周面が接するロール本体2aと、ロール本体2aを回転可能に支持するロール軸2bとを有している。そして、ロール軸2bは、外部装置の軸受けに回転可能に支持されることになる。ロール2の材質に特に制限は無いが、ステンレスのような合金やセラミックス、エンジニアリングプラスチックなどが、強度、成形性などの点より好ましく例示される。
【0019】
そして、ロール2の内部、例えば、ロール軸2bの内部には、加熱機構2cが設けられている。加熱機構2cとしては、抵抗体、誘導加熱用のコイルや、加熱用のランプ等を用いることができる。加熱機構2cは、微細モールド1全体を加熱することができる。加熱機構2cには微細モールド1の表面温度を測定し、所定温度に調整する機構も含まれる。転写時には、被転写基材、特に、被転写基材のガラス転移温度に応じ逐次温調を行う。この他、ロール2全体の温度を均一にするための機構がロール2内部に形成されていることが好ましい。ロール2全体の温度を均一にするための機構として、ロール2の全幅にわたり良熱伝導体である銅やヒートポンプを埋め込んでもよい。
【0020】
ロール2は、前記緩衝筒3より、線膨張係数が小さく、弾性率が大きくなっている。また、ロール2の周面、特に、ロール本体2aの周面は、鏡面になっている。ロール本体2aの鏡面は、ロール2の線膨張係数が小さく、弾性率が大きいので、変形しにくく、基準面として、緩衝筒3のつぶれを全幅にわたり一定にすることができる。そして、全幅にわたり微細な凹凸パターンを忠実に転写することができる。
【0021】
次に、本発明の第1の実施形態に係る微細モールド1の製造方法を説明する。
【0022】
まず、図2(a)に示すように、表面に微細な凹凸パターン5aが形成された原版5上に、スタンパシート(電鋳層)6となる無電解メッキ層6bと電解メッキ層6cを形成する。このことにより、スタンパシート6上に、原版5上の凹凸パターン5aが、凹凸パターン6aとして転写され複製される。
【0023】
微細な凹凸パターン5aは、被転写基材へ転写される微細なパターンとなる。微細な凹凸パターン5aを原版5に形成する方法は特に制限されない。例えば、フォトリソグラフィや電子線描画法等、所望する加工精度に応じて選択すればよい。
【0024】
原版5の材料としては、シリコンウエハ、各種金属材料、ガラス、石英(SiO)、セラミック、プラスチック等、要求される強度と、要求される精度の加工性を有するものであればよい。具体的には、シリコン(Si)、炭化シリコン(SiC)、窒化シリコン(SiN)、多結晶シリコン(Si)、ガラス、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、銅(Cu)、及びこれらを1種以上含む材料が好ましい。
【0025】
次に、図2(b)に示すように、スタンパシート6を原版5から剥離する。なお、原版5の表面にはスタンパシート6との接着を防止するための離型処理を予め実施しておくことが好ましい。離型処理としては、シリコーン系の離型剤や、フッ素系のカップリング剤等の塗布が挙げられる。そして、これらのスタンパシート6の形成と剥離の工程を繰り返す等して、複数枚のスタンパシート6を形成する。そして、スタンパシート6をそれぞれ、所定の形状に整形する。
【0026】
次に、図2(c)に示すように、凹凸パターン6aが形成された表面が外周面となるように、複数枚のスタンパシート6を周方向に導電性部材8でつなげて円筒形にする。スタンパシート6の端面は互いに近接させ対向させたまま、導電性部材8で固定される。スタンパシート6の端面間には、わずかながら間隙7が形成される。
【0027】
この円筒形の外周面の全面をメッキ用マスキングテープ9で覆う。同様に内周面もメッキ用マスキングテープ9で覆うが、全面は覆わない。間隙7は露出させて、メッキ用マスキングテープ9で覆わない。そして、電解メッキを行い、間隙7を埋め、図2(d)に示すように、間隙7に換えて接合部10が形成する。この接合部10により、3枚のスタンパシート6が周方向に接合され、外周面に微細な凹凸パターン4aが形成されたスタンパ筒4が形成される。
【0028】
次に、ロール2を用意する。図3(a)は、ロール2の正面図であり、図3(b)は、図3(a)のA−A矢視断面図である。
【0029】
次に、図4(a)と図4(b)に示すように、ロール2のロール本体2aの周面上に、前記スタンパ筒4より、線膨張係数が大きく、弾性率が小さい緩衝筒3を、全周にわたり形成する。
【0030】
最後に、図1(a)と図1(b)に示すように、前記スタンパ筒4を緩衝筒3にはめ込む。緩衝筒3を冷却して収縮させた状態で、スタンパ筒4をはめ込むと、容易にスタンパ筒4をはめ込むことができる。そして、はめ込み後に、緩衝筒3が常温になれば、緩衝筒3は膨張し、緩衝筒3の外周面はスタンパ筒4の内周面に圧接し密着することができる。
【0031】
第1の実施形態において、微細な凹凸パターン5aの形成された原版5を作製するためには、半導体プロセスに用いられるフォトリソグラフィプロセス等が利用される。このフォトリソグラフィプロセス等では平板のシリコンウエハ等を用いており、そこから得られる原版も平板の枚葉体である。そのため、ロール状の微細モールドを実現するためには、原版5から複数枚の可とう性のあるスタンパシート6を形成し、このスタンパシート6を湾曲させながら繋ぎ合わせ1本のスタンパ筒4にしている。スタンパ筒4であれば、被転写基材上を転がすことができ、連続的に微細な凹凸パターンを転写することができる。
【0032】
なお、スタンパ筒4による被転写基材上への転写では、被転写基材上にレジスト層を形成しておき、このレジスト層に微細な凹凸パターンを転写した後に、このレジスト層をマスクに被転写基材を加工し最終的に被転写基材に微細な凹凸パターンを転写する。レジスト層は、樹脂層であり、ガラス転移温度以上で軟化する。このため、レジスト層の温度をガラス転移温度以上にして、レジスト層に微細な凹凸パターンを転写すれば、微細な凹凸パターンを容易かつ忠実に転写することができる。転写の際に、レジスト層の温度をガラス転移温度以上に設定するためには、レジスト層側の被転写基材を加熱するのはもちろんであるが、レジスト層に接触するスタンパ筒4を加熱する。スタンパ筒4は、加熱機構2c(図1(b)参照)からの加熱により昇温する。
【0033】
第1の実施形態においては、緩衝筒3は、線膨張係数をスタンパ筒4より大きく、弾性率をスタンパ筒4より小さくしている。そして、緩衝筒3をガラス転移温度より低い温度あるいは常温より低い温度まで冷却して収縮させた状態で、スタンパ筒4を緩衝筒3にはめ込んでいるので、はめ込み後、緩衝筒3がガラス転移温度以上まで上昇しあるいは常温まで上昇すれば、緩衝筒3はスタンパ筒4より膨張し、緩衝筒3の外周面はスタンパ筒4の内周面に圧接し密着する。また、緩衝筒3はスタンパ筒4によって外周面が半径方向に移動しないように拘束されるので、緩衝筒3の内周面もロール2の外周面に圧接し密着する。これらのことにより、スタンパ筒4は、緩衝筒3を介してロール2の外周面に確実に固定でき、微細な凹凸パターン4aを忠実に転写できる。
【0034】
また、スタンパ筒4には、緩衝筒3の膨張に伴い周方向に引っ張り応力が作用するが、その応力の大きさは周方向全周にわたり均一になっている。このため、応力が局所的に発生し、その箇所に配置された微細な凹凸パターンが歪むのを防止することができる。応力が全周にわたり均一に発生すれば、応力の最大値は低減され、微細な凹凸パターンの歪を小さくすることができる。また、均一に発生した応力は、微細な凹凸パターン4aを均一に歪ませるので、歪を考慮した微細な凹凸パターン4aの形状補正が可能になる。
【0035】
また、転写される被転写基材に段差があったり、スタンパ筒4の肉厚に厚さムラがあったりしても、転写時には緩衝筒3が弾性変形することで、スタンパ筒4も被転写基材に沿うように変形し、圧力が被転写基材の一部やスタンパ筒4の一部に偏って印加するのを防止し、圧力は被転写基材の圧接可能な全幅とスタンパ筒4の圧接可能な全幅に分散して印加される。そして、スタンパ筒4は均一化した圧力で被転写基材に圧接し、スタンパ筒4の全幅を確実に被転写基材表面の全幅に押し付け、高精度な微細な凹凸パターンを忠実に転写することができる。
【0036】
そして、第1の実施形態の微細モールド1は、各種バイオデバイス、DNAチップ等の免疫系分析装置(使い捨てのDNAチップ等)、半導体多層配線、プリント基板やRF MEMS、光ストレージ、磁気ストレージ、光デバイス(導波路、回折格子、マイクロレンズ、偏光素子等)、フォトニック結晶、有機EL照明用基板、LCDディスプレイ、FEDディスプレイ、エネルギー関連デバイス(太陽電池や燃料電池など)等のナノインプリント技術の応用分野に適用することができる。
【0037】
(第2の実施形態)
図5(a)は、本発明の第2の実施形態に係る微細モールド1の正面図であり、図5(b)は、図5(a)のB−B矢視断面図である。第2の実施形態の微細モールド1が、第1の実施形態の微細モールド1と異なる点は、ロール2が、外周部に、前記緩衝筒3より、線膨張係数が小さく、弾性率が大きく、表面が鏡面であるハードコート層11を有している点である。転写の際には、緩衝筒3がつぶれるように圧縮変形し、その反発力で、被転写基材にスタンパ筒4が押し付けられ転写される。このハードコート層11の鏡面は、ハードコート層11の線膨張係数が小さく、弾性率が大きいので、変形しにくく、基準面として、緩衝筒3のつぶれを全幅にわたり一定にすることができる。そして、全幅にわたり微細な凹凸パターンを忠実に転写することができる。また、第2の実施形態でも、第1の実施形態と同様に、緩衝筒3とスタンパ筒4とを有するので、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0038】
(第3の実施形態)
図6(a)は、本発明の第3の実施形態に係る微細モールド1の正面図であり、図6(b)は、図6(a)のC−C矢視断面図である。第3の実施形態の微細モールド1が、第1の実施形態の微細モールド1と異なる点は、前記緩衝筒3の材料が、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、シンジオタクチックポリスチレン樹脂、ポリイミド樹脂等の耐熱性エンジニアリングプラスチック、およびこれらにフィラーやガラス繊維などが配合された複合材料を有している点である。これらの材料によっても、緩衝筒3の線膨張係数をスタンパ筒4より大きく、緩衝筒3の弾性率をスタンパ筒4より小さく設定することができる。ただ、第1の実施形態では、緩衝筒3の材料にシリコーンエラストマ等のゴムを用いていたのに対し、第3の実施形態では、耐熱性エンジニアリングプラスチックを用いているので、第3の実施形態の方が第1の実施形態より、緩衝筒3の線膨張係数をより小さく、緩衝筒3の弾性率をより大きく設定することができる。このため、第3の実施形態の方が第1の実施形態より、緩衝筒3は、温度変化により膨張・収縮しにくく、圧縮にも変形しにくい。しかし、製造方法におけるはめ込みでは、緩衝筒3のある値以上の収縮が必要であり、転写でも、緩衝筒3がある値以上つぶれるように圧縮変形する必要がある。このため、第3の実施形態の緩衝筒3では、肉厚を第1の実施形態より厚くしている。このことにより、ロール本体2aが細くなり、ロール軸2b(図1参照)を兼ねている。
【0039】
次に、第3の実施形態に係る微細モールドの製造方法を説明する。まず、図7(a)と図7(b)に示すようなロール2を用意する。次に、図8(a)と図8(b)に示すように、ロール2のロール本体2aの周面上に、前記耐熱性エンジニアリングプラスチックにより緩衝筒3を全周にわたり形成する。最後に、図6(a)と図6(b)に示すように、前記スタンパ筒4を緩衝筒3にはめ込む。
【0040】
第3の実施形態によっても、第1の実施形態と同様に、緩衝筒3を、温度変化に対して膨張・収縮させることができ、圧縮に対して圧縮変形させることができるので、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、見かたを変えると、第3の実施形態は、第1の実施形態に対して、ロール本体2a(図1(b)参照)の材質を、緩衝筒3と同じになるように変更したと考えることができる。これを突き詰めると、ロール軸2bも含めたロール2全体の材質を、緩衝筒3と同じになるように変更することもできる。そして、このような変更においては、緩衝筒3とロール2の線膨張係数をスタンパ筒4より大きくしつつ第3の実施形態の緩衝筒3の線膨張係数より小さく設定すればよい。また、緩衝筒3とロール2の弾性率をスタンパ筒4より小さくしつつ第3の実施形態の緩衝筒3の弾性率より大きく設定すればよい。
【0041】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係る微細モールドについて説明する。図9(c)に第4の実施形態の微細モールドのスタンパ筒4の断面図を示す。図9(c)に示すように、第4の実施形態の微細モールドが、第1の実施形態の微細モールドと異なる点は、スタンパ筒4に接合部10(図1(b)参照)が無く、スタンパ筒4がシームレスの筒である点である。シームレスであれば、緩衝筒3が膨張してスタンパ筒4に圧接する際に、スタンパ筒4に作用する引っ張り応力を、周方向全周にわたり均一に印加することができる。
【0042】
次に、第4の実施形態に係る微細モールドの製造方法について説明する。第4の実施形態に係る微細モールドの製造方法では、第1の実施形態に係る微細モールドの製造方法に対して、スタンパ筒4の製造方法のみが異なっているので、このスタンパ筒4の製造方法のみについて説明する。
【0043】
まず、第1の実施形態と同様に、スタンパシート6を形成する。
【0044】
次に、図9(a)に示すように、凹凸パターン6aが形成された表面が内周面となるように、スタンパシート6を周方向に複数枚接合して、マスタースタンパ筒12を形成する。このマスタースタンパ筒12の形成は、第1の実施形態でスタンパ筒4の形成と比較して、スタンパシート6の凹凸パターン6aが形成された表面を、筒の内周面(第4の実施形態)にするか、外周面(第1の実施形態)にするかの違いしかない。したがって、マスタースタンパ筒12では、スタンパシート6が、接合部10によって接合されている。
【0045】
次に、図9(b)に示すように、メッキ用マスキングテープ13を、マスタースタンパ筒12の外周面の全面に貼り付ける。次に、無電解メッキ及び電解メッキにより、マスタースタンパ筒12の内周面上にスタンパ筒(電鋳筒)4を形成する。このスタンパ筒4の形成において、スタンパ筒4の外周面上に凹凸パターン4aが複製される。
【0046】
最後に、スタンパ筒4をマスタースタンパ筒12から剥離し、スタンパ筒4が完成する。
【0047】
第4の実施形態にようにスタンパ筒4を製造すれば、接合部10のないシームレスのスタンパ筒4を形成することができる。
【0048】
(実施例1)
実施例1では、第1の実施形態の微細モールドの製造方法にしたがって、微細モールドを製造した。以下では、実施例1の微細モールドの製造方法とその製造方法で製造された微細モールドについて説明する。
【0049】
図2(a)に示すように、まず、表面に直径200nm、深さ300nmのビア(穴)が形成された8インチのシリコンウエハを原版5として用意した。
【0050】
原版5上に無電解メッキ形成のためパラジウム触媒層(ネオガント834:アドテック社製)を形成、活性化した後、無電解ニッケルメッキ液(トップケミアロイ66:奥野製薬工業製)に60℃で、3分間浸漬して表面に無電解ニッケルメッキ層6bを形成した。
【0051】
次に、スルファミン酸ニッケル60%水溶液にホウ酸40g/l、塩化ニッケル5g/l、添加剤5ml/l(ピットレスS:日本化学工業製)、光沢剤適量(NSF−E:日本化学工業製)により調整した50℃のスルファミン酸ニッケルメッキ浴を準備した。そして、まず0.5A/dmで20分間、次に1.5A/dmで60分間、さらに3A/dmで60分間電解ニッケルメッキを行い、電解ニッケルメッキ層6cを形成した。以上により、無電解ニッケルメッキ層6bと電解ニッケルメッキ層6cとが積層されたスタンパシート6が形成された。
【0052】
図2(b)に示すように、原版5からスタンパシート6を剥離し、115mm(短辺)×120mm(長辺)の大きさに切断して整形し、スタンパシート6を3枚作製した。
【0053】
図2(c)に示すように、これらスタンパシート6を、長辺方向を接合するように200μmギャップの間隙7で3枚並べた後、導電性粘着テープ8(No.1245:住友3M社製)で円筒形に固定した。次に、メッキ用マスキングテープ9(No.851T:住友3M社製)で、間隙7以外をマスキングし、間隙7のみを露出させた。
【0054】
図2(d)に示すように、前記と同じスルファミン酸ニッケルメッキ浴を用い、電解ニッケルメッキにより露出された間隙7にニッケルを充填し接合した。この後、メッキ用マスキングテープ9および導電性粘着テープ8を剥離し、接合部10を整形し、内周長345.6mmのスタンパ筒4を完成させた。
【0055】
次に、図3(a)と図3(b)に示すように、SUS304材を切削加工し、直径100mm、幅130mmのロール本体2aにロール軸2bを持つロール2を作製した。
【0056】
次に、ロール本体2aの外周面にシリコーン系プライマー剤(No.10B:信越シリコーン社製)を塗布し、室温で20分間乾燥した後、150℃で20分間オーブンにより加熱するという前処理を行った。次に、ミラブル型シリコーンゴム(XE20−A2156:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)に加硫剤(TC−8)を0.5重量部配合し、ニーダーで混錬してシリコーンゴム組成物を準備した。次に、円筒形キャビティーからなる圧縮成形金型に、ロール2とシリコーンゴム組成物を配置し、170℃で10分間の1次加硫を行った。そして、オーブンに入れ200℃で4時間の2次加硫を行い、シリコーンエラストマの緩衝筒3を形成した。最後に、緩衝筒3を円筒研削盤で研磨し肉厚5mmの緩衝筒3を完成させた。
【0057】
次に、緩衝筒3が形成されたロール2を−50℃に冷却し、緩衝筒3を収縮させた状態でスタンパ筒4を緩衝筒3上にはめ込み、室温まで戻して、緩衝筒3を膨張させ、スタンパ筒4を緩衝筒3に固定した。
【0058】
なお、スタンパ筒4の線膨張係数は、11ppm/Kであり、弾性率は、207GPaであった。一方、緩衝筒3の線膨張係数は、210ppm/Kであり、弾性率は、5.4MPaであった。緩衝筒3は、スタンパ筒4より、線膨張係数が大きく、弾性率が小さくなっていることがわかる。
【0059】
最後に、誘導加熱機構2cとなるコイルをロール2内部に組み込み、実施例1の微細モールド1を完成させた。
【0060】
次に、この実施例1の微細モールド1を用いフィルムへの転写実験を行った。
【0061】
フィルムには幅120mm、厚さ400μmのポリスチレンシートを用いた。微細モールド1と回転軸が平行になるように加圧ロールを並べ、回転させた微細モールド1と加圧ロールとの間にフィルムを送ることで、フィルムに微細な凹凸パターンを押し付け転写した。詳細な転写条件としては、微細モールド1と加圧ロールの表面温度は150℃であり、転写圧力は1.2MPaであり、送り速度は600mm/minであった。
【0062】
フィルムに形成されたビア(穴)パターンについて、フィルムの幅方向に対し3箇所、送りの進行方向に対し4箇所のマトリックスの計12箇所において、直径および深さを測定、評価を行った。評価には原子間力顕微鏡(Nanoscope D5000:Veeco社製)を用いた。評価としては、直径および深さの測定値の寸法誤差が設計値(直径200nm、深さ300nm)の±10%以内に収まっている箇所が、12箇所中10箇所以上ある場合を合格とする転写性の評価を行った。
【0063】
実施例1の評価の結果は、評価箇所12箇所すべてにおいて寸法誤差が±10%以内であり、合格であった。そして、この評価結果より、実施例1、さらには第1の実施形態の微細モールド1を使用することで、連続的にパターンの忠実な転写が可能であることが分った。評価結果を表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
(実施例2)
実施例2では、第2の実施形態の微細モールドの製造方法にしたがって、微細モールドを製造した。以下では、実施例2の微細モールドの製造方法とその製造方法で製造された微細モールドについて説明する。
【0066】
図5(b)に示すように、ロール本体2aの外周面の平坦化(鏡面化)を目的に、ロール本体2aの外周面にニッケルハードコート層11を厚さ10μm程度、電解メッキにより形成した。これ以外の部分の製造方法はすべて実施例1と同じ製造方法で、実施例2の微細モールド1を完成させた。
【0067】
次に、この実施例2の微細モールド1を用いフィルムへの転写実験を行った。転写実験の方法と、転写性の評価方法は、実施例1と同じにした。実施例2の微細モールド1の転写性の評価結果は、評価箇所12箇所すべてにおいて寸法誤差が±10%以内であり、合格であった。そして、この評価結果より、実施例2、さらには第2の実施形態の微細モールド1を使用することで、連続的にパターンの忠実な転写が可能であることが分った。評価結果を表1に示す。
【0068】
(実施例3)
実施例3では、第3の実施形態の微細モールドにしたがって、微細モールドを製造した。以下では、実施例3の微細モールドの製造方法とその製造方法で製造された微細モールドについて説明する。
【0069】
実施例1と同じ製造方法で、78mm(短辺)×120mm(長辺)の大きさに切断して整形したスタンパシート6を2枚作製した。また、実施例1と同様の方法で、ギャップ0.5mmの間隙7をメッキにより接合し、内周長157mmのスタンパ筒4を完成させた。
【0070】
次に、図7(a)と図7(b)に示すように、SUS304材を切削加工し、内径20mm、外径30mm、幅190mmのロール本体2aを持つロール2を作製した。
【0071】
次に、ポリイミド樹脂(ユピモール−R:宇部興産製)を切削加工により内径30mm、外径50mm、幅130mmに加工し、緩衝筒3を完成させた。
【0072】
なお、スタンパ筒4の線膨張係数は、11ppm/Kであり、弾性率は、207GPaであった。一方、緩衝筒3の線膨張係数は、57ppm/Kであり、弾性率は、4.2GPaであった。緩衝筒3は、スタンパ筒4より、線膨張係数が大きく、弾性率が小さくなっていることがわかる。また、実施例3の緩衝筒3の線膨張係数57ppm/Kは、実施例1の緩衝筒3の線膨張係数210ppm/Kより小さくなっている。実施例3の緩衝筒3の弾性率4.2GPaは、実施例1の緩衝筒3の弾性率5.4MPaより大きくなっている。
【0073】
図8(a)と図8(b)に示すように、ロール2のみを−50℃まで冷却して収縮させ、ロール2の中心部付近に緩衝筒3をはめ込んだ。
【0074】
次に、図6(a)と図6(b)に示すように、緩衝筒3及びロール2を−50℃まで冷却して収縮させ、前記スタンパ筒4をはめ込んだ。緩衝筒3及びロール2を室温まで戻して膨張させ、スタンパ筒4を緩衝筒3に固定した。最後に、ロール2に抵抗体加熱機構2cを組み込み、実施例3の微細モールド1を完成させた。
【0075】
次に、この実施例3の微細モールド1を用いフィルムへの転写実験を行った。転写実験の方法と、転写性の評価方法は、実施例1と同じにした。実施例3の微細モールド1の転写性の評価結果は、評価箇所12箇所すべてにおいて寸法誤差が±10%以内であり、合格であった。そして、この評価結果より、実施例3、さらには第3の実施形態の微細モールド1を使用することで、連続的にパターンの忠実な転写が可能であることが分った。評価結果を表1に示す。
【0076】
(実施例4)
実施例4では、第4の実施形態の微細モールドの製造方法にしたがって、微細モールドを製造した。以下では、実施例4の微細モールドの製造方法とその製造方法で製造された微細モールドについて説明する。
【0077】
はじめに、実施例1と同様の方法でスタンパシート6を作製した。次に、図9(a)に示すように、内側に微細な凹凸パターン6aが形成されるように、実施例1の方法により、マスタースタンパ筒12を作製した。
【0078】
次に、図9(b)に示すように、マスタースタンパ筒12の外周面をメッキ用マスキングテープ13でマスキングした。次に、マスタースタンパ筒12を、15℃の濃塩酸に数秒間浸漬させ、表面の自然酸化膜を除去した。そして、室温で2g/lの重クロム酸カリ溶液に30秒間浸漬した。この後、マスタースタンパ筒12を水洗して、剥離のための酸化皮膜をマスタースタンパ筒12の表面(内周面)に形成した。次に、実施例1と同様のスルファミン酸ニッケルメッキ浴中で、まず0.1A/dmで100分間、次に1.5A/dmで60分間、最後に3A/dmで60分間の電解ニッケルメッキを行い、スタンパ筒4となる電解ニッケルメッキ層を形成した。
【0079】
最後に、図9(c)に示すように、スタンパ筒4をマスタースタンパ筒12から剥離して、実施例4のスタンパ筒4を完成させた。そして、実施例4のスタンパ筒4を用いて、実施例1の微細モールドの製造方法により、実施例4の微細モールドを完成させた。
【0080】
次に、この実施例4の微細モールドを用いフィルムへの転写実験を行った。転写実験の方法と、転写性の評価方法は、実施例1と同じにした。ただ、フィルムの送り速度のみを600mm/minから400mm/minに変更した。実施例4の微細モールドの転写性の評価結果は、評価箇所12箇所すべてにおいて寸法誤差が±10%以内であり、合格であった。そして、この評価結果より、実施例4、さらには第4の実施形態の微細モールドを使用することで、連続的にパターンの忠実な転写が可能であることが分った。評価結果を表1に示す。
【0081】
(実施例5)
実施例5では、実施例4と同じ製造方法で作製したスタンパ筒4を、実施例2と同じ製造方法で作製した緩衝筒3付ロール2に固定し、実施例5の微細モールドを完成させた。
【0082】
次に、この実施例5の微細モールドを用いフィルムへの転写実験を行った。転写実験の方法と、転写性の評価方法は、実施例1と同じにした。ただ、フィルムの送り速度のみを600mm/minから400mm/minに変更した。実施例5の微細モールドの転写性の評価結果は、評価箇所12箇所すべてにおいて寸法誤差が±10%以内であり、合格であった。そして、この評価結果より、実施例5の微細モールドを使用することで、連続的にパターンの忠実な転写が可能であることが分った。評価結果を表1に示す。
【0083】
(実施例6)
実施例6では、実施例4と同じ製造方法で作製したスタンパ筒4を、実施例3と同じ製造方法で作製した緩衝筒3付ロール2に固定し、実施例6の微細モールドを完成させた。
【0084】
次に、この実施例6の微細モールドを用いフィルムへの転写実験を行った。転写実験の方法と、転写性の評価方法は、実施例1と同じにした。ただ、フィルムの送り速度のみを600mm/minから400mm/minに変更した。実施例6の微細モールドの転写性の評価結果は、評価箇所12箇所すべてにおいて寸法誤差が±10%以内であり、合格であった。そして、この評価結果より、実施例6の微細モールドを使用することで、連続的にパターンの忠実な転写が可能であることが分った。評価結果を表1に示す。
【0085】
(比較例1)
比較例1では、実施例1と同じ製造方法で作製したスタンパ筒4を、スタンパ筒4の内径に等しい外径のロール2に直接固定し、比較例1の微細モールドを完成させた。
【0086】
次に、この比較例1の微細モールドを用いフィルムへの転写実験を行った。転写実験の方法と、転写性の評価方法は、実施例1と同じにした。比較例1の微細モールドの転写性の評価結果は、幅方向の中央部付近の4箇所において、寸法誤差が±10%以内を満たしていなかったため不合格であった。しかし、両端部分のパターンについては連続的に基準を満たすパターンが形成されていた。評価結果を表1に示す。
【0087】
(比較例2)
比較例2では、実施例1と同様の方法でスタンパシート6を作製した。そして、スタンパシート6の両端部にモールド固定治具を溶接により固定した。このモールド固定治具を溶接されたスタンパシートを2枚作製した。次に、実施例1と同じ材質でモールド固定治具の取り付け部分が形成されたロールを作製した。この取り付け部分にモールド固定治具を固定ネジで固定することにより、ロールに2枚のスタンパシートを固定した。こうして、比較例2の微細モールドを完成させた。
【0088】
次に、この比較例2の微細モールドを用いフィルムへの転写実験を行った。転写実験の方法と、転写性の評価方法は、実施例1と同じにした。比較例1の微細モールドの転写性の評価結果は、幅方向の中央部付近の4箇所において、寸法誤差が±10%以内を満たしていなかったため不合格であった。また、モールド固定治具が接触した部分のフィルムに一部破断が生じており、連続的にパターンが形成できなかった。結果を表1に示す。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】(a)は、本発明の第1の実施形態に係る微細モールドの正面図であり、(b)は、(a)のA−A矢視断面図である。
【図2】(a)は、本発明の第1の実施形態(実施例1)に係る微細モールドの製造方法を説明するための図(その1)で、原版およびスタンパシートの断面図であり、(b)は、本発明の第1の実施形態(実施例1)に係る微細モールドの製造方法を説明するための図(その2)で、原版およびスタンパシートの断面図であり、(c)は、本発明の第1の実施形態(実施例1)に係る微細モールドの製造方法を説明するための図(その3)で、導電性部材で固定された複数枚のスタンパシートの断面図であり、(d)は、本発明の第1の実施形態(実施例1)に係る微細モールドの製造方法を説明するための図(その4)で、スタンパ筒の断面図である。
【図3】(a)は、本発明の第1の実施形態(実施例1)に係る微細モールドの製造途中の正面図(その1)であり、(b)は、(a)のA−A矢視断面図である。
【図4】(a)は、本発明の第1の実施形態(実施例1)に係る微細モールドの製造途中の正面図(その2)であり、(b)は、(a)のA−A矢視断面図である。
【図5】(a)は、本発明の第2の実施形態(実施例2)に係る微細モールドの正面図であり、(b)は、(a)のB−B矢視断面図である。
【図6】(a)は、本発明の第3の実施形態(実施例3)に係る微細モールドの正面図であり、(b)は、(a)のC−C矢視断面図である。
【図7】(a)は、本発明の第3の実施形態(実施例3)に係る微細モールドの製造途中の正面図(その1)であり、(b)は、(a)のC−C矢視断面図である。
【図8】(a)は、本発明の第3の実施形態(実施例3)に係る微細モールドの製造途中の正面図(その2)であり、(b)は、(a)のC−C矢視断面図である。
【図9】(a)は、本発明の第4の実施形態(実施例4)に係る微細モールドの製造方法を説明するための図(その1)で、マスタースタンパ筒の断面図であり、(b)は、本発明の第4の実施形態(実施例4)に係る微細モールドの製造方法を説明するための図(その2)で、マスタースタンパ筒およびスタンパ筒の断面図であり、(c)は、本発明の第4の実施形態(実施例4)に係る微細モールドの製造方法を説明するための図(その3)で、スタンパ筒の断面図である。
【符号の説明】
【0090】
1 微細モールド
2 ロール
2a ロール本体
2b ロール軸
2c 加熱機構
3 緩衝筒
4 スタンパ筒
4a 凹凸パターン
5 原版
5a 凹凸パターン
6 スタンパシート(電鋳層)
6a 凹凸パターン
6b 無電解メッキ層
6c 電解メッキ層
7 間隙(スタンパシートの端面間)
8 導電性粘着テープ(導電性部材)
9 メッキ用マスキングテープ
10 接合部
11 ハードコート層
12 マスタースタンパ筒
13 メッキ用マスキングテープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロールと、
前記ロールの外周面に内周面が接する緩衝筒と、
前記緩衝筒の外周面に内周面が接し、外周面に微細な凹凸パターンが形成されたスタンパ筒とを有し、
前記緩衝筒は、前記スタンパ筒より、線膨張係数が大きく、弾性率が小さいことを特徴とする微細モールド。
【請求項2】
前記緩衝筒は、弾性体であることを特徴とする請求項1に記載の微細モールド。
【請求項3】
前記緩衝筒は、シリコーンエラストマを有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の微細モールド。
【請求項4】
前記緩衝筒は、耐熱性エンジニアリングプラスチックを有していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の微細モールド。
【請求項5】
前記スタンパ筒の材質は、ニッケル(Ni)を主成分とする金属であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の微細モールド。
【請求項6】
前記スタンパ筒は、表面に前記微細な凹凸パターンが形成されたスタンパシートを、周方向に複数枚接合して形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の微細モールド。
【請求項7】
前記スタンパ筒は、シームレスの筒であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の微細モールド。
【請求項8】
前記ロールは、内部に加熱機構を有することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の微細モールド。
【請求項9】
前記ロールは、抵抗体、誘導加熱用のコイルと加熱用のランプの少なくとも1つを内部に有することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の微細モールド。
【請求項10】
前記ロールは、前記緩衝筒より、線膨張係数が小さく、弾性率が大きく、
前記ロールの周面は、鏡面になっていることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の微細モールド。
【請求項11】
前記ロールは、外周部に、
前記緩衝筒より、線膨張係数が小さく、弾性率が大きく、表面が鏡面であるハードコート層を有することを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の微細モールド。
【請求項12】
前記ロールの材質は、前記緩衝筒と同じであることを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の微細モールド。
【請求項13】
外周面に微細な凹凸パターンが形成されたスタンパ筒を形成し、
ロールの周面上に、前記スタンパ筒より、線膨張係数が大きく、弾性率が小さい緩衝筒を形成し、
前記緩衝筒を冷却しながら、前記スタンパ筒を前記緩衝筒にはめ込むことを特徴とする微細モールドの製造方法。
【請求項14】
前記スタンパ筒の形成では、
表面に前記凹凸パターンが形成された原版上にスタンパシートを形成して前記凹凸パターンを複数の前記スタンパシート上に複製し、
前記凹凸パターンが形成された前記表面が外周面となるように、前記スタンパシートを周方向に複数枚接合することを特徴とする請求項13に記載の微細モールドの製造方法。
【請求項15】
前記凹凸パターンの前記スタンパシート上への前記複製では、
前記原版上に前記スタンパシートとなる電鋳層を形成し、
前記電鋳層を前記原版から剥離することを特徴とする請求項14に記載の微細モールドの製造方法。
【請求項16】
前記スタンパシートを周方向に複数枚接合することでは、
前記電鋳層を整形し、
前記電鋳層の端面を互いに対向させたまま、導電性部材で固定し、
前記電鋳層の端面間をメッキにより埋めることを特徴とする請求項15に記載の微細モールドの製造方法。
【請求項17】
前記スタンパ筒の形成では、
表面に前記凹凸パターンが形成された原版上にスタンパシートを形成して前記凹凸パターンを複数の前記スタンパシート上に複製し、
前記凹凸パターンが形成された前記表面が内周面となるように、前記スタンパシートを周方向に複数枚接合して、マスタースタンパ筒を形成し、
前記マスタースタンパ筒の前記内周面上にスタンパ筒を形成し、前記スタンパ筒の外周面上に前記凹凸パターンを複製することを特徴とする請求項13に記載の微細モールドの製造方法。
【請求項18】
前記凹凸パターンを前記スタンパシート上に複製することでは、
前記原版上に前記スタンパシートとなる電鋳層を形成し、
前記電鋳層を前記原版から剥離することを特徴とする請求項17に記載の微細モールドの製造方法。
【請求項19】
前記マスタースタンパ筒の形成では、
前記電鋳層を整形し、
前記電鋳層の端面を互いに対向させたまま、導電性部材で固定し、
前記電鋳層の端面間をメッキにより埋め、
前記スタンパ筒の外周面上に前記凹凸パターンを複製することでは、
前記電鋳層上に前記スタンパ筒となる電鋳筒を形成し、
前記電鋳筒を前記マスタースタンパ筒から剥離することを特徴とする請求項18に記載の微細モールドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−296466(P2008−296466A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−145379(P2007−145379)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)
【Fターム(参考)】