説明

微細加工を施した合成樹脂シートおよびこれを使用した合成樹脂成形品

【課題】
高級感に満ちた加飾面を備えたインモールド成形用の合成樹脂シート、および当該合成樹脂シートを備え、当該合成樹脂シートと一体化された合成樹脂成形品を提供することを課題とする。
【解決手段】
インモールド成形法に使用され、加飾面を有する合成樹脂シートにおいて、 当該合成樹脂シートの片面又は両面に、高さ又は深さ100μm以下、幅100μm以下の微細な凹凸状ラインの集合体から構成される図形、模様、文字、およびこれらの組合せを備え、当該凹凸状ラインの集合体は、視認できる少なくとも2以上の集合体から構成され、1の凹凸状ラインの集合体の高さ又は深さと、その他の凹凸状ラインの集合体の高さ又は深さが異なる構成の合成樹脂シートとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細加工を施すことにより、表面に加飾面を備えた合成樹脂シート、およびこの合成樹脂シートを使用することによって、表面に加飾面を備えた合成樹脂成形品を提供するものである。 更に詳細には、表面に微細な凹凸状ラインの集合体からなる図形、模様、文字、およびこれらの組合せからなる加飾面を備えた合成樹脂シートと、当該合成樹脂シートと一体化された合成樹脂成形品を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の内装品や家電製品など、直接ユーザーの目に触れ、あるいはユーザーが直接手に触れる合成樹脂成形品においては、装飾性を向上させるために、合成樹脂表面に図形、模様、文字、およびこれらの組合せからなる加飾面を設けるようになってきている。
【0003】
このような加飾面を形成する方法として、シート状の表皮材(以下、「合成樹脂シート」とも呼ぶ)に加飾面をなす印刷層を予め設けておき、インモールド成形法によりこの表皮材が成形品基材表面に配置されるようにして、基材樹脂を融着一体化させる製造方法がある。
【0004】
合成樹脂シートの表面に印刷層を設ける方法としては、合成樹脂シート表面にスクリーン印刷、シルク印刷、インクジェット印刷等の印刷技術を利用して直接文字、模様などを印刷する方法が採用されてきている。
【0005】
しかし、このように合成樹脂シートの表面に印刷層を設けることにより、合成樹脂シートの表面に加飾面を設け、これをインモールド成形法によって、表皮材として成形品基材表面に配置したとしても、加飾面における図形、模様、文字、およびこれらの組合せは、平面的なものとして視認されるのみであり、このことが、更なる高級感を備えた加飾面を追求する上での阻害要因となっていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は係る阻害要因を克服することにより、更なる高級感に満ちた加飾面を備えたインモールド成形用の合成樹脂シート、および当該合成樹脂シートを備え、当該合成樹脂シートと一体化された合成樹脂成形品を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
平面的なものとしてのみ視認される加飾面に、立体感を持たせたり、素材の異質感を持たせたりすることによって、更なる高級感を備えた加飾面を作り上げることについて鋭意研究を重ねた結果、微細な凹凸状ラインの集合体から構成される図形、模様、文字、およびこれらの組合せによって、立体感、あるいは素材の異質感を持った加飾面を作り出すことが可能であることを見出し、本発明に至った。
【0008】
第1の態様にかかる発明では、
インモールド成形法に使用され、加飾面を有する合成樹脂シートであって、
当該合成樹脂シートの片面又は両面に、高さ又は深さ100μm以下、幅100μm以下の微細な凹凸状ラインの集合体から構成される図形、模様、文字、およびこれらの組合せを備え、当該凹凸状ラインの集合体は、視認できる少なくとも2以上の集合体から構成され、1の凹凸状ラインの集合体の高さ又は深さと、その他の凹凸状ラインの集合体の高さ又は深さが異なる構成の合成樹脂シートとした。
【0009】
また、第2の態様にかかる発明では、
第1の態様にかかる発明の合成樹脂シートであって、
2以上の凹凸状ラインの集合体の内、1の凹凸状ラインの集合体の高さ又は深さと、その他の凹凸状ラインの集合体の高さ又は深さが5μm以上の差がある構成の合成樹脂シートとした。
【0010】
また、第3の態様にかかる発明では、
第1又は2の態様にかかる発明の合成樹脂シートであって、
2以上の凹凸状ラインの集合体の内、1の凹凸状ラインの集合体のライン幅と、その他の凹凸状ラインの集合体のライン幅が異なる構成の合成樹脂シートとした。
【0011】
更に、第4の態様にかかる発明では、
第1又は2の態様にかかる発明の合成樹脂シートであって、
2以上の凹凸状ラインの集合体の内、1の凹凸状ラインの集合体のラインピッチと、その他の凹凸状ラインの集合体のラインピッチが異なる構成の合成樹脂シートとした。
【0012】
また、第5の態様にかかる発明では、
第1又は2の態様にかかる発明の合成樹脂シートであって、
2以上の凹凸状ラインの集合体の内、1の凹凸状ラインの集合体のライン方向と、その他の凹凸状ラインの集合体のライン方向が異なる構成の合成樹脂シートとした。
【0013】
また、第6の態様にかかる発明では、
第1乃至5の態様にかかる発明の合成樹脂シートであって、
合成樹脂シートの片面又は両面に一色刷りまたは多色刷りの印刷層を更に備える構成の合成樹脂シートとした。
【0014】
更に、第7の態様にかかる発明では、
第1乃至6の態様にかかる発明の合成樹脂シートを射出成形用金型内表面の一部に接触するようにして配置し、当該合成樹脂シートの一面と当該合成樹脂シートによって覆われない金型内面によって画成される空間に、溶融合成樹脂を射出することによって得られる、当該合成樹脂シートと一体化した合成樹脂成形品とした。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、インモールド成形法に使用される加飾面を有する合成樹脂シートにおいて、合成樹脂シートの片面又は両面に、高さ又は深さ100μm以下、幅100μm以下の微細な凹凸状ラインの集合体から構成される図形、模様、文字、およびこれらの組合せを備え、当該凹凸状ラインの集合体は、視認できる少なくとも2以上の集合体から構成され、1の凹凸状ラインの集合体の高さ又は深さと、その他の凹凸状ラインの集合体の高さ又は深さが異なる構成の合成樹脂シートとし、
更に、この合成樹脂シートをインモールド成形の表皮として使用し、合成樹脂シートと一体化した合成樹脂成形品とすることにより、微細な凹凸状ラインの集合体から構成される図形、模様、文字、およびこれらの組合せからなる、立体感、あるいは素材の異質感を有する加飾面を作り出すことが可能となり、更なる高級感を有する加飾面を備えた合成樹脂シートおよび合成樹脂成形品を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明に基いて製作された加飾面を有する合成樹脂シートの加飾面の写真を示したものである。
【図2】図2は、微細なラインの集合体から構成される図形、模様、文字、およびこれらの組合せからなるパターンを備えた合成樹脂シートを使用して、インモールド成形法により、合成樹脂シートと一体化した合成樹脂成形品を製造する工程を説明するための図である。
【図3】図3は、合成樹脂シート表面に各種の凸状ラインを設けた場合の、合成樹脂シート表面写真(写真上段)、および凸状ライン部の拡大写真(写真下段)を示したものである。
【図4】図4は、本願発明にかかる合成樹脂成形品であって、自動車用計器盤の1例を示した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0018】
本実施形態にかかる合成樹脂シートの製造工程は、大きく分けて以下の3つの工程から成り立っている。
【0019】
(1) 原盤製作工程
(2) スタンパー製作工程
(3) 合成樹脂シートへのパターン転写工程
以下、これらの各工程について説明する。
【0020】
原盤製作工程は、スタンパー(又はモールドとも呼ぶ)の製作に先立ち、微細な凹凸状ラインの集合体から構成される図形、模様、文字、およびこれらの組合せから構成される原図を作成する工程である。
【0021】
原盤製作工程では、例えば、ガラス板を原盤の材料として使用してリソグラフィー・プロセスに基き原盤を製作することができる。 このリソグラフィー・プロセスによる原盤製作工程では、ガラス板を研磨洗浄した後、ガラス板表面に感光剤(レジスト)を塗布し、微細なラインの集合体から構成される図形、模様、文字、およびこれらの組合せからなるパターンによって露光・現像が行われる。
【0022】
スタンパー製作工程では、例えば、微細なラインの集合体から構成される図形、模様、文字、およびこれらの組合せからなるパターンを備えた上記原盤を使用し、電鋳(Niメッキ)を施すことによってスタンパーを製作することができる。 電鋳は、電気メッキと同様であって、電気化学反応を利用し、原盤の表面に厚いメッキ層、例えばNiメッキ層を設け、これを原盤から剥離してスタンパーとするものである。 従って、スタンパーには、原盤の凹凸と逆の凹凸面が形成される。 なお、原盤の材料がガラスのような非導電性の材料の場合、原盤の表面には、導体化のために、スパッタリング等によって金属膜を形成しておく必要がある。
合成樹脂シートへのパターン転写工程では、合成樹脂シートをガラス転移温度以上に加熱し、上記スタンパーを合成樹脂シート表面にプレスした後、合成樹脂シートを冷却し、合成樹脂シートとスタンパーを引き離す。 このような工程を経ることによって、スタンパー表面に設けられた微細なラインの集合体から構成される図形、模様、文字、およびこれらの組合せからなるパターンが合成樹脂シート表面に転写される。
合成樹脂シートへパターンを転写する際、合成樹脂シートの片面のみにパターンを転写するようにしても良いし、合成樹脂シートの両面にパターンを転写するようにしても良い。
【0023】
ここで、図形、模様、または文字は微細なラインの集合体から構成され、個々のラインは、所定の長さを有する凹状の溝、あるいは凸状の突起からなり、各々の凹状の溝の深さ、又は凸状の突起の高さは、100μm以下、又は10μm〜25μmであることが望ましい。
【0024】
また、各々凹状の溝、あるいは凸状の突起の幅は、100μm以下、又は20μm〜50μmであることが望ましい。
【0025】
また、各々凹状の溝、あるいは凸状の突起のピッチは、200μm以下、又は40μm〜100μmであることが望ましい。
【0026】
更に、特定の図形、模様、または文字を表す微細なラインの集合体である凹状の溝あるいは凸状の突起と、それ以外の図形、模様、または文字を表す微細なラインの集合体である凹状の溝あるいは凸状の突起とは、その高さ又は深さが5μm以上の差、あるいは20μm以上の差が生じるように寸法を設定することが望ましい。 このような寸法を設定することにより、立体感、あるいは素材の異質感を有する加飾面を作り出すことが可能となる。
【0027】
また、特定の図形、模様、または文字を表す微細なラインの集合体である凹状の溝あるいは凸状の突起と、それ以外の図形、模様、または文字を表す微細なラインの集合体である凹状の溝あるいは凸状の突起とは、その幅が5μm以上の差、あるいは10μm以上の差が生じるように寸法を設定することが望ましい。 このような寸法を設定することにより、素材の異質感を有する加飾面を作り出すことが可能となる。
【0028】
また、特定の図形、模様、または文字を表す微細なラインの集合体である凹状の溝あるいは凸状の突起と、それ以外の図形、模様、または文字を表す微細なラインの集合体である凹状の溝あるいは凸状の突起とは、そのピッチが10μm以上の差、あるいは20μm以上の差が生じるように寸法を設定することが望ましい。 このような寸法を設定することにより、更に素材の異質感を有する加飾面を作り出すことが可能となる。
【0029】
更に、特定の図形、模様、または文字を表す微細なラインの集合体である凹状の溝あるいは凸状の突起と、それ以外の図形、模様、または文字を表す微細なラインの集合体である凹状の溝あるいは凸状の突起とは、凹状の溝あるいは凸状の突起の方向を変えたり、複数の方向を組み合わせることにより、方向性に変化をつけることが望ましい。 このような設定を行うことにより、更に素材の異質感を有する加飾面を作り出すことが可能となる。
【0030】
また、スタンパーによって、微細なラインの集合体から構成される図形、模様、文字、およびこれらの組合せからなるパターンが転写された合成樹脂シートの片面又は両面に、印刷層を設けるようにしても良い。 印刷は、スクリーン印刷、シルク印刷、インクジェット印刷等の印刷技術を利用し、一色刷りまたは多色刷りとしても良いし、印刷により、更に図形、模様、または文字を加えるようにしても良い。
【0031】
なお、特定の図形、模様、または文字を表す微細なラインの集合体である凹状の溝あるいは凸状の突起を設けた領域と、それ以外の図形、模様、または文字を表す微細なラインの集合体である凹状の溝あるいは凸状の突起を設けた領域とは、両者の領域の輪郭を明確にするために、いずれか一方の領域、あるいは両方の領域の輪郭位置において、輪郭を取り囲むようにして配置した1又は複数の凹状の溝あるいは凸状の突起を設けておくことが望ましい。
【0032】
以上の説明においては、原盤製作工程として、リソグラフィー・プロセス技術を利用した原盤製作工程について説明したが、これに限定されるものではない。 原盤にレーザー加工を施したり、あるいは精密機械加工によって微細なラインの集合体から構成される図形、模様、文字、およびこれらの組合せからなるパターンを形成することもできる。 この場合においても、前述した方法と同様に、原盤の表面に電鋳(Niメッキ)を施すことによってスタンパーを製作することができる。
【0033】
また、インクジェット印刷により、フィルムに微細なラインの集合体から構成される図形、模様、文字、およびこれらの組合せからなるパターンを印刷し、これをマスクとしてレジストを塗布したスタンパー表面を露光し、更にエッチング処理を施すことによって、微細なラインの集合体から構成される図形、模様、文字、およびこれらの組合せからなるパターンを有するスタンパーを製作することもできる。
【0034】
あるいは、スタンパー表面に、YAGレーザー等を利用して直接微細なラインの集合体から構成される図形、模様、文字、およびこれらの組合せからなるパターンを彫り込むことも可能である。
【0035】
なお、ここで使用する合成樹脂シートとしては、特に限定されるものではないが、板厚0.1mm程度から2.0mm程度の範囲の熱可塑性合成樹脂シート21が望ましい。 インモールド成形用として使用する場合には、この合成樹脂シートの板厚が薄すぎると、金型内に設置する場合に腰が弱く、金型の構造によっては金型面からずれてしまうことがあるからである。 また、後述する溶融合成樹脂の温度によっては合成樹脂シートが部分的に溶けてしまい、その形状を保持できない場合がある。 また、合成樹脂シートの板厚が厚すぎる場合には、金型に装着する際に金型の形状に合わせて切断する必要があるが、この切断作業が難しくなる傾向にある。 更に、合成樹脂シートの板厚が厚すぎる場合には、金型の曲面が強かったり曲面が複雑な形状をしていると、溶融合成樹脂を射出しても合成樹脂シートが金型内面に沿えず、所望の成形品を得ることができないという問題が生じるからである。
【0036】
次に、微細なラインの集合体から構成される図形、模様、文字、およびこれらの組合せからなるパターンを備えた合成樹脂シート21を使用して、インモールド成形法により、合成樹脂シート21と一体化した合成樹脂成形品23の製造方法について、図2に基づいて説明する。
【0037】
上述したような微細なラインの集合体から構成される図形、模様、文字、およびこれらの組合せからなるパターンを転写をした合成樹脂シート21を後述するように金型27a内に設置するために、合成樹脂シート21は金型27aの開口部形状に合わせて切断加工される。 合成樹脂シート21の切断は、鋏や裁断機(シャーリング)で切断することもできるが、打ち抜き金型を利用したプレス機械によって切断加工するようにしても良い。 また、金型27aの開口部形状に合わせて切断加工された合成樹脂シート21は、金型27aの内面形状に合わせて予めプレス成形等しておくようにしても良い。
【0038】
金型27a内の適切な位置に合成樹脂シート21を保持するようにするために、予め金型27aに微小な孔を設けておき、この孔と真空ポンプ等の真空源とを接続させることによって金型27a内表面と合成樹脂シート21の間を真空状態に維持するようにしても良い。
【0039】
以上のように金型27a内に合成樹脂シート21を装着し、金型27a,27bを閉じた後、溶融合成樹脂22を金型27a,27b内に圧入することによって、合成樹脂シート21と一体化した合成樹脂成形品23を成形する。 この工程は、一般に行われている熱可塑性樹脂による射出成形の工程と基本的には同じであるが、溶融した熱可塑性樹脂(以後単に「溶融合成樹脂22」と言う)はゲート24を通り、既に装着されている合成樹脂シート21の背面と金型27a,27bが成す空間に圧入される。 従って、圧入される溶融合成樹脂22によって予め金型27a内に装着してある合成樹脂シート21を破るようなことがないよう、例えばゲート24の向きが、合成樹脂シート21と直行することがないようにするなどの配慮が必要となる。 このように合成樹脂シート21の背面と金型27a,27bが成す空間に溶融合成樹脂22を圧入した後、溶融した合成樹脂の温度がある程度下がると合成樹脂シート21と一体化した合成樹脂成形品23が成形される。 できあがった合成樹脂成形品23の外表面には、微細なラインの集合体から構成される図形、模様、文字、およびこれらの組合せからなるパターンを備えた合成樹脂シート21が配置されており、微細なラインの集合体から構成される図形、模様、文字、およびこれらの組合せからなるパターン、および合成樹脂シート21に設けられた印刷層に入射される光と反射される光によって、例えば、高さ、幅、ピッチ寸法の異なった特定の微細なラインの集合体からなる文字等が立体的に浮かび上がって見えたり、あるいは異質な材料によって構成されているような感覚を与えるようになる。
【0040】
なお、図2において、符号25はスプルー部を、符号26はノズル部を、そして符号31はバックライティング等に使用される透光窓を示す。
【0041】

次に、本発明に係る実施例について説明する。
【0042】
図1は、本発明に基いて製作された加飾面を有する合成樹脂成形品23用に製作した合成樹脂シート21の加飾面の写真を示したものである。
【0043】
合成樹脂シート21の表層には以下の条件で加工した文字および模様が設けられている。
【0044】
合成樹脂シート21の材質: ポリカーボネイド
合成樹脂シート21の板厚: 0.5mm
文字部分のパターン条件
微細ラインの仕様: 横溝(一方向のみ)
微細ラインのラインの幅: 53μm
微細ラインのラインのピッチ: 70μm
微細ラインのラインの深さ: 20μm
模様部分のパターン条件
微細ラインの仕様: カーボンクロス調配向
微細ラインのラインの幅: 50μm
微細ラインのラインのピッチ: 130μm
微細ラインのラインの深さ: 10μm
文字部分と模様部分の微細ラインの高低差: 10μm

図1の写真からも分かるように、文字部分が立体的に浮かび上がって見えると共に、文字部分と模様部分は異質な材料によって構成されているような感覚を与えるものである。
【0045】

図3は、合成樹脂シート表面に各種の円環状であって凸状のラインを設けた場合の、合成樹脂シート表面写真(写真上段)、および凸状ライン部の拡大写真(写真下段)を示したものである。 写真左側、写真中央、写真右側の凸状ラインの仕様は以下の通りである。
【0046】
写真左側
凸状ラインのラインの幅: 90μm
凸状ラインのラインのピッチ:200μm
凸状ラインのラインの高さ: 14μm
写真中央
凸状ラインのラインの幅: 67μm
凸状ラインのラインのピッチ:150μm
凸状ラインのラインの高さ: 11μm
写真右側
凸状ラインのラインの幅: 42μm
凸状ラインのラインのピッチ:100μm
凸状ラインのラインの高さ: 11μm

また、図4は、本願発明にかかる合成樹脂成形品であって、自動車用計器盤の1例を示した写真である。 中央には、図3で示したような円環状であって凸状のラインを設けてあり、外側円環部分には、図1で示したようなカーボンクロス調配向の模様と文字部分を配置したものである。 なお、外側円環部分には更に黒色の印刷層を設けている。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、自動車や電器製品の計器盤やスイッチパネル、あるいはオーディオ製品の操作パネルなどの他、建築内装部品や日曜雑貨等、幅広い分野に使用される合成樹脂成形品に利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
21 合成樹脂シート
22 溶融合成樹脂
23 合成樹脂成形品
24 ゲート
25 スプルー
26 ノズル
27a,27b 金型
31 透光窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インモールド成形法に使用され、加飾面を有する合成樹脂シートであって、
当該合成樹脂シートの片面又は両面に、高さ又は深さ100μm以下、幅100μm以下の微細な凹凸状ラインの集合体から構成される図形、模様、文字、およびこれらの組合せを備え、
当該凹凸状ラインの集合体は、視認できる少なくとも2以上の集合体から構成され、
1の凹凸状ラインの集合体の高さ又は深さと、その他の凹凸状ラインの集合体の高さ又は深さが異なることを特徴とする合成樹脂シート。
【請求項2】
請求項1に記載された合成樹脂シートであって、
前記2以上の凹凸状ラインの集合体の内、1の凹凸状ラインの集合体の高さ又は深さと、その他の凹凸状ラインの集合体の高さ又は深さが5μm以上の差があることを特徴とする合成樹脂シート。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された合成樹脂シートであって、
前記2以上の凹凸状ラインの集合体の内、1の凹凸状ラインの集合体のライン幅と、その他の凹凸状ラインの集合体のライン幅が異なることを特徴とする合成樹脂シート。
【請求項4】
請求項1又は2に記載された合成樹脂シートであって、
前記2以上の凹凸状ラインの集合体の内、1の凹凸状ラインの集合体のラインピッチと、その他の凹凸状ラインの集合体のラインピッチが異なることを特徴とする合成樹脂シート。
【請求項5】
請求項1又は2に記載された合成樹脂シートであって、
前記2以上の凹凸状ラインの集合体の内、1の凹凸状ラインの集合体のライン方向と、その他の凹凸状ラインの集合体のライン方向が異なることを特徴とする合成樹脂シート。
【請求項6】
請求項1乃至5に記載された合成樹脂シートであって、
前記合成樹脂シートの片面又は両面に一色刷りまたは多色刷りの印刷層を更に備えることを特徴とする合成樹脂シート。
【請求項7】
請求項1乃至6に記載された合成樹脂シートを射出成形用金型内表面の一部に接触するようにして配置し、当該合成樹脂シートの一面と当該合成樹脂シートによって覆われない金型内面によって画成される空間に、溶融合成樹脂を射出することによって得られる、当該合成樹脂シートと一体化した合成樹脂成形品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−121153(P2012−121153A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271367(P2010−271367)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(392010267)株式会社サカイヤ (24)
【Fターム(参考)】