説明

微細構造体の製造方法

【課題】ゾルゲル法により硬化性物質を硬化して得られる、表面に微細構造が寸法精度よく形成された硬化物質を含む微細構造体を生産性よく製造できる製造方法を提供する。
【解決手段】(a)表面に微細構造14に対応する反転構造が形成されかつその表面が含フッ素重合体を含むモールドの表面に、硬化性物質を含む溶液または硬化性物質からなる液体を供給して記モールドの表面に前記溶液または液体の層を形成する工程と、(b)前記含フッ素重合体の軟化温度未満で前記層が溶媒を含む場合は溶媒を除去し、硬化性物質が硬化前駆体となるまで硬化反応を進める工程と、(d)硬化前駆体の層を有するモールドから硬化前駆体の層を分離して硬化前駆体の成形体を得る工程と、(e)硬化前駆体を硬化させて、表面に微細構造14が形成された硬化物質16を含む微細構造体10を得る工程とを有する微細構造体10の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゾルゲル法により硬化性物質を硬化して得られる、表面に微細構造が形成された硬化物質を含む微細構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゾルゲル法により硬化性物質を硬化して得られる、表面に微細構造が形成された硬化物質を含む微細構造体の製造方法としては、下記方法が提案されている。
(1)モールドとガラスとを重ねた状態で加熱、プレスする、いわゆる熱インプリント法で光学素子を製造する方法(特許文献1)。
(2)基材上に、ゾルゲル化合物を塗布し、該ゾルゲル化合物に、剥離剤(フルオロアルキルシラン)で処理されたモールドを押し当てた後、該ゾルゲル化合物を予備焼成し、モールドを分離し、さらに焼成する方法(非特許文献1)。
(3)基材上にゾルゲル化合物を塗布し、該ゾルゲル化合物にポリメチルメタクリレート(PMMA)のモールドを押し当てた後、該ゾルゲル化合物を予備焼成し、モールドを分離し、さらに焼成する方法(非特許文献2)。
【0003】
しかし、(1)の方法では、モールドおよびガラスをかなりの高熱にする必要があるため、製造に時間がかかり、生産性が低い。また、加熱されたガラスの粘度が高いため、数十μm以下の微細構造が密集した微細構造体の製造は困難である。
【0004】
(2)、(3)の方法は、(1)の方法の問題を解決しようとする方法である。
しかし、(2)の方法では、微細構造体の製造のたびに剥離剤を塗布する必要があるため、微細構造体の生産性が低い。また、剥離剤の塗布ムラが発生すると、硬化物質に微細構造が正確に転写されないため、微細構造の寸法精度が悪くなる。そのため、エッチング等による修正作業が必要となり、微細構造体の生産性が低下する。また、剥離剤の塗布ムラが発生すると、離型性が低下するため、微細構造体の生産性が低下する。また、剥離剤によってモールドの耐久性が低下するため、モールドを頻繁に交換しなくてはならず、微細構造体の生産性がさらに低下する。
【0005】
(3)の方法では、PMMAの耐薬品性が不充分なため、モールドが損傷しやすい。そのため、モールドを頻繁に交換しなくてはならず、微細構造体の生産性が低下する。また、モールドの離型性が低いため、微細構造体の生産性がさらに低下する。
【特許文献1】特表2006−504609号公報
【非特許文献1】J.Vac.Sci.Technol.B,Vol.21,660(2003)
【非特許文献2】Nano Lett.,Vol.5,1545(2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ゾルゲル法により硬化性物質を硬化して得られる、表面に微細構造が寸法精度よく形成された硬化物質を含む微細構造体を生産性よく製造できる製造方法を提供することにある。
【0007】
また、本発明の他の目的は、ゾルゲル法により硬化性物質を硬化して得られる、撥水性が高い微細構造が寸法精度よく表面に形成された硬化物質を含む微細構造体を生産性よく製造できる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の微細構造体の製造方法は、ゾルゲル法により硬化性物質を硬化して得られる、表面に微細構造が形成された硬化物質を含む微細構造体の製造方法であって、(a)表面に前記微細構造に対応する反転構造が形成され、かつその表面が含フッ素重合体を含む、モールドの該表面に、前記硬化性物質を含む溶液または前記硬化性物質からなる液体を供給して、前記モールドの表面に前記溶液または液体の層を形成する工程と、(b)前記含フッ素重合体の軟化温度未満で、前記層が溶媒を含む場合は溶媒を除去し、前記硬化性物質が硬化前駆体となるまで硬化反応を進める工程と、(d)前記硬化前駆体の層を有するモールドから該硬化前駆体の層を分離して該硬化前駆体の成形体を得る工程と、(e)前記硬化前駆体を硬化させて硬化物質を含む微細構造体を得る工程とを有することを特徴とする。
【0009】
前記(e)工程における硬化前駆体の硬化を、前記(b)工程で使用した温度よりも高い温度で行うことが好ましい。
本発明の微細構造体の製造方法は、前記(b)工程と前記(d)工程との間に、(c)モールド上の前記硬化前駆体の層の表面に基材を貼り合わせる工程を有していてもよい。
前記含フッ素重合体は、フッ素原子の量が含フッ素重合体(100質量%)中35質量%以上であり、かつ含フッ素重合体からなる膜の水に対する接触角が80度以上であることが好ましい。
前記微細構造における凸部の高さまたは凹部の深さは、平均で1nm〜4μmであることが好ましい。
前記微細構造における凸部または凹部の幅は、平均で1nm〜400nmであり、かつ凸部の高さまたは凹部の深さは、平均で1nm〜400nmであることが好ましい。
【0010】
本発明の微細構造体の製造方法は、さらに、(f))前記(e)工程で得られた微細構造体の硬化物質の表面に、撥水剤の溶液を塗布し、乾燥して撥水剤の薄膜を形成する工程を有することが好ましい。
前記撥水剤は、含フッ素シランカップリング剤であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の微細構造体の製造方法によれば、ゾルゲル法により硬化性物質を硬化して得られる、表面に微細構造が寸法精度よく形成された硬化物質を含む微細構造体を生産性よく製造できる。
また、前記(f)工程を有すれば、ゾルゲル法により硬化性物質を硬化して得られる、撥水性が高い微細構造が寸法精度よく表面に形成された硬化物質を含む微細構造体を生産性よく製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本明細書においては、式(1)で表される化合物を化合物(1)と記す。他の式で表される化合物も同様に記す。
【0013】
<微細構造体>
本発明における微細構造体は、ゾルゲル法により硬化性物質を硬化して得られる、表面に微細構造が形成された硬化物質を含むものである。図1は、本発明における微細構造体の一例を示す断面図である。微細構造体10は、基材12と、基材12に貼り合わされた、表面に微細構造14が形成された硬化物質16と、硬化物質16の表面に形成された撥水剤の薄膜18とを有する。
【0014】
(基材)
基材は、必要に応じて設ければよく、必ずしも設ける必要はない。
基材としては、ガラス、セラミックス、木材、紙、プラスチック、ゴム、金属、有機無機ハイブリッド材料等が挙げられ、硬化物質16との密着性の点から、ガラス、プラスチック、有機無機ハイブリッド材料が好ましい。
【0015】
プラスチックとしては、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリ乳酸等が挙げられる。
有機無機ハイブリッド材料とは、ケイ素化合物を含む有機材料である。有機無機ハイブリッド材料としては、ケイ素酸化物のナノ粒子を分散したプラスチック;シルセスキオキサン誘導体またはポリシルセスキオキサンを含むプラスチック等が挙げられる。
【0016】
(硬化物質)
硬化物質とは、成形、焼成等の工程を経て得られる非金属無機材料であり、各種金属酸化物、金属窒化物等(すなわち、セラミックス)の成形体である。硬化物質には、ガラス、有機変性セラミックス等も含まれる。
【0017】
セラミックスは、高強度、高耐熱性であり、組成を設計することによって様々な特性を有する。セラミックスで実現できる特性としては、高強度、高耐熱性、親水性、耐摩耗性、耐酸性、耐アルカリ性、触媒作用、光触媒作用、低屈折率、洸屈折率、高透明性、光吸収性(紫外線、可視光、赤外線)、電子伝導性、ホール伝導性、イオン伝導性、強誘電性、超伝導性、強磁性、圧電性、フォトルミネッセンス性(蛍光、燐光、蓄光)、光電変換性、電界発光、熱電変換性、エレクトロクロミック性、フォトクロミック性等が挙げられる。
【0018】
有機変性セラミックスとは、セラミックス成分と有機官能基を有するケイ素成分とからなる材料である。有機変性セラミックスは、通常のセラミックスに比べ、柔軟性があり、クラックが発生しにくいため、通常のセラミックスよりも厚い成形体を形成できる。また、セラミックス成分を含むため、通常のセラミックスの有する様々な特性を付加できる。
【0019】
微細構造とは、硬化物質の表面に形成された微細な凸部および/または凹部を意味する。
凸部としては、硬化物質の表面に延在する長尺の凸条、表面に点在する突起等が挙げられる。
凹部としては、硬化物質の表面に延在する長尺の溝、表面に点在する孔等が挙げられる。
【0020】
凸条または溝の形状としては、直線、曲線、折れ曲がり形状等が挙げられる。凸条または溝は、複数が平行に存在して縞状をなしていてもよい。
凸条または溝の、長手方向に直交する方向の断面形状としては、長方形、台形、三角形、半円形等が挙げられる。
突起または孔の形状としては、三角柱、四角柱、六角柱、円柱、三角錐、四角錐、六角錐、円錐半球、多面体等が挙げられる。
【0021】
凸条または溝の幅は、平均で1nm〜400nmが好ましく、30nm〜200nmが特に好ましい。凸条の幅とは、長手方向に直交する方向の断面における底辺の長さを意味する。溝の幅とは、長手方向に直交する方向の断面における上辺の長さを意味する。
突起または孔の幅は、平均で1nm〜400nmが好ましく、30nm〜200nmが特に好ましい。突起の幅とは、底面が細長い場合、長手方向に直交する方向の断面における底辺の長さを意味し、そうでない場合、突起の底面における最大長さを意味する。孔の幅とは、開口部が細長い場合、長手方向に直交する方向の断面における上辺の長さを意味し、そうでない場合、孔の開口部における最大長さを意味する。
【0022】
凸部の高さは、平均で1nm〜4μmが好ましく、1nm〜1μmがより好ましく、1nm〜400nmがさらに好ましく、10nm〜400nmがさらに好ましく、30nm〜200nmが特に好ましい。
凹部の深さは、平均で1nm〜4μmが好ましく、1nm〜1μmがより好ましく、1nm〜400nmがさらに好ましく、10nm〜400nmがさらに好ましく、30nm〜200nmが特に好ましい。
【0023】
微細構造が密集している領域において、隣接する凸部(または凹部)間の間隔は、平均で1nm〜10μmが好ましく、10nm〜1μmがより好ましく、30nm〜200nmが特に好ましい。隣接する凸部間の間隔とは、凸部の断面の底辺の終端から、隣接する凸部の断面の底辺の始端までの距離を意味する。隣接する凹部間の間隔とは、凹部の断面の上辺の終端から、隣接する凹部の断面の上辺の始端までの距離を意味する。
【0024】
凸部の最小寸法は、1nm〜400nm以下が好ましく、30nm〜200nmがより好ましい。最小寸法とは、凸部の幅、長さおよび高さのうち最小の寸法を意味する。
凹部の最小寸法は、1nm〜400nm以下が好ましく、30nm〜200nmがより好ましい。最小寸法とは、凹部の幅、長さおよび深さのうち最小の寸法を意味する。
【0025】
(撥水剤の薄膜)
撥水剤の薄膜は、後述の撥水剤の溶液を微細構造体の硬化物質の表面に塗布、乾燥させて形成される薄膜である。
撥水剤の薄膜の厚さは、0.5〜60nmが好ましく、単分子膜厚に近いことがより好ましい。
撥水剤の薄膜の表面における水に対する接触角は、110度以上が好ましく、150度以上がより好ましい。水に対する接触角は、接触角計を用いて測定する。
【0026】
(微細構造体)
微細構造体の厚さは、0.01〜30mmが好ましい。微細構造体の厚さが0.01mm以上であれば、機械的強度が充分となり、変形しにくく、取り扱いやすい。微細構造体の厚さが30mm以下であれば、熱伝導性が良好となり、硬化性物質が充分に硬化しない等の微細構造体の製造上の問題が生じにくい。
【0027】
微細構造体としては、光学素子(マイクロミラー、マイクロレンズアレイ、ワイヤーグリッド部材、光導波路、波長フィルター、偏光板、光スイッチング、フレネルゾーンプレート、バイナリー光学素子、ブレーズ光学素子、フォトニクス結晶等。)、反射防止フィルター、バイオチップ、マイクロリアクターチップ、記録メディア(パターンドメディア、ディスクリートメディア等。)用部材、ディスプレイ材料(リブ等。)、触媒担持体、フィルター、センサー部材、超撥水材料、エネルギー関連部材(燃料電池、三次元電池、キャパシタ、ペルチェ素子、太陽電池等。)、MEMS部材等が挙げられる。
【0028】
<微細構造体の製造方法>
本発明の微細構造体の製造方法は、下記工程を有する。
(a)表面に前記微細構造に対応する反転構造が形成され、かつその表面が含フッ素重合体を含む、モールドの該表面に、前記硬化性物質を含む溶液または前記硬化性物質からなる液体を供給して、前記モールドの表面に前記溶液または液体の層を形成する工程。
(b)前記含フッ素重合体の軟化温度未満で、前記層が溶媒を含む場合は溶媒を除去し、前記硬化性物質が硬化前駆体となるまで硬化反応を進める工程。
(c)必要に応じて、モールド上の前記硬化前駆体の層の表面に基材を貼り合わせる工程。
(d)前記硬化前駆体の層を有するモールドから該硬化前駆体の層を分離して該硬化前駆体の成形体を得る工程。
(e)前記硬化前駆体を硬化させて硬化物質を含む微細構造体を得る工程。
(f)必要に応じて、前記(e)工程で得られた微細構造体の硬化物質の表面に、撥水剤の溶液を塗布し、乾燥して撥水剤の薄膜を形成する工程。
【0029】
(a)工程:
図2(a)に示すように、表面に微細構造14に対応する反転構造22が形成され、かつその表面が含フッ素重合体を含む、モールド20の該表面に、硬化性物質を含む溶液または硬化性物質からなる液体(以下、「溶液または液体」ともいう。)を供給して、前記モールドの表面に前記溶液または液体の層30を形成する。
【0030】
(モールド)
モールド20はその表面が含フッ素重合体を含む。モールド20に供給する溶液または液体には中性の成分だけでなく、弱酸性、弱塩基性、または強塩基性の成分が含まれている場合がある。また、溶液には有機溶剤が含まれる場合もある。モールド20には、そのような溶液または液体に対して膨潤・溶解しないという耐薬品性が要求される。ポリメチルメタクリレート(PMMA)からなるモールドと異なり、その表面が含フッ素重合体を含むモールド20は耐薬品性に優れる。
モールド20は、含フッ素重合体を含むモールド本体の裏面に基板を設けたものであってもよく、該モールド本体と基板との間に1層以上の中間層を設けたものであってもよい。モールド20としては、コストおよび層間の密着性の点から、モールド本体と基板との間に1〜4層の中間層を設けたものが好ましい。中間層としては、反応性基を有する含フッ素重合体からなる層が挙げられる。反応性基としては、カルボキシ基、スルホン酸基、エステル結合を有する基、水酸基、アミノ基、シアノ基、イソシアネート基等が挙げられ、カルボキシ基が好ましい。
【0031】
基板としては、石英、ガラス;シリコーン樹脂、前記含フッ素重合体のガラス転移温度よりも20℃以上高いガラス転移温度を有するフッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、脂肪族ポリエステル樹脂、セルロース、ポリカーボネート、ポリイミド;サファイヤ、ニッケル、鉄、ステンレス、銅等が挙げられる。
【0032】
含フッ素重合体としては、熱可塑性の含フッ素重合体が好ましい。
含フッ素重合体としては、離型性の点から、フッ素原子の量が含フッ素重合体(100質量%)中35質量%以上であり、かつ含フッ素重合体からなる膜の水に対する接触角が80度以上である含フッ素重合体が好ましい。水に対する接触角は、接触角計を用いて測定する。
含フッ素重合体としては、含フッ素鎖状重合体または含フッ素環状重合体が好ましい。
【0033】
含フッ素鎖状重合体としては、下記共重合体が挙げられる。
テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体、
テトラフルオロエチレン/エチレン系共重合体(以下、ETFEと記す。)、
テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、
フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン系共重合体。
【0034】
含フッ素鎖状重合体としては、離型性および加工温度が低く成形しやすい点から、ETFEが好ましい。
ETFEとしては、テトラフルオロエチレン(以下、TFEと記す。)に基づく繰り返し単位とエチレン(以下、Eと記す。)に基づく繰り返し単位との比(TFE/E)が、70/30〜30/70(モル比)のものが好ましく、65/35〜40/60(モル比)のものがより好ましい。
【0035】
ETFEは、他のコモノマーに基づく繰り返し単位を含んでいてもよい。他のコモノマーとしては、下記化合物が挙げられる。
フルオロエチレン類(ただし、TFEを除く。):CF=CFCl等、
フルオロプロピレン類:CF=CFCF、CF=CHCF等、
炭素数が2〜12のパーフルオロアルキル基を有するフルオロエチレン類:CFCFCFCFCH=CH、CFCFCFCFCF=CH等、
パーフルオロビニルエーテル類:R(OCFXCFOCF=CF(ただし、Rは炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基であり、Xはフッ素原子またはトリフルオロメチル基であり、kは0〜5の整数である。)等、
オレフィン類(ただし、Eを除く。):C3オレフィン(プロピレン等。)、C4オレフィン(ブチレン、イソブチレン等。)等。
【0036】
他のコモノマーとしては、CFCFCFCFCH=CHが特に好ましい。
他のコモノマーに基づく繰り返し単位の割合は、ETFEを構成する全繰り返し単位(100モル%)のうち、30モル%以下が好ましく、0.1〜15モル%がより好ましく、0.2〜10モル%が特に好ましい。
【0037】
含フッ素環状重合体とは、主鎖に含フッ素脂肪族環を有する含フッ素重合体であり、含フッ素脂肪族環を構成する炭素原子の1個以上が該含フッ素重合体の主鎖を構成する炭素原子であるものをいう。主鎖の炭素原子は、該含フッ素重合体を構成する単量体の重合性二重結合の2個の炭素原子に由来するか、または、2個の重合性二重結合を有する単量体を環化重合させて得た含フッ素重合体の場合は2個の重合性二重結合の4個の炭素原子に由来する。含フッ素脂肪族環を構成する原子としては、炭素原子以外に酸素原子、窒素原子等を含んでもよい。含フッ素脂肪族環としては、1〜2個の酸素原子を有する含フッ素脂肪族環が好ましい。含フッ素脂肪族環を構成する原子の数は4〜7個が好ましい。重合性二重結合としては、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基が好ましい。
【0038】
含フッ素環状重合体としては、環状単量体の単独重合体または共重合体、ジエン系単量体を環化重合させた単独重合体または共重合体等が挙げられる。
環状単量体とは、含フッ素脂肪族環を構成する炭素原子間に重合性二重結合を有する単量体、または、含フッ素脂肪族環を構成する炭素原子と含フッ素脂肪族環外の炭素原子との間に重合性二重結合を有する単量体である。
ジエン系単量体とは、2個の重合性二重結合を有する単量体である。
【0039】
環状単量体およびジエン系単量体は、フッ素原子を有する単量体であり、炭素原子に結合した水素原子と炭素原子に結合したフッ素原子の合計数に対する炭素原子に結合したフッ素原子の数の割合が80%以上の単量体が好ましく、パーフルオロ単量体(該割合が100%の単量体。)がより好ましい。
環状単量体およびジエン系単量体は、パーフルオロ単量体のフッ素原子の1〜4個が塩素に置換されたパーハロポリフルオロ単量体であってもよい。
環状単量体およびジエン系単量体と共重合させる単量体も、パーフルオロ単量体またはパーハロポリフルオロ単量体が好ましい。
【0040】
環状単量体としては、化合物(1)または化合物(2)が好ましい。
【0041】
【化1】

【0042】
ただし、X11、X12、R11およびR12は、それぞれフッ素原子、炭素数が1〜4のパーフルオロアルキル基または炭素数1〜4のパーフルオロアルコキシ基である。X11としては、フッ素原子が好ましい。X12としては、フッ素原子、トリフルオロメチル基、または炭素数1〜4のパーフルオロアルコキシ基が好ましい。
21およびX22は、それぞれフッ素原子または炭素数1〜7のパーフルオロアルキル基である。X21およびX22としては、フッ素原子またはトリフルオロメチル基が好ましい。
【0043】
化合物(1)の具体例としては、化合物(1−1)〜(1−3)が挙げられる。
【0044】
【化2】

【0045】
化合物(2)の具体例としては、化合物(2−1)〜(2−2)が挙げられる。
【0046】
【化3】

【0047】
環状単量体と共重合させる単量体としては、下記化合物が挙げられる。
CF=CF
CF=CFCl、
CF=CFOCF等。
【0048】
ジエン系単量体としては、化合物(3)が好ましい。
CF=CF−Q−CF=CF ・・・(3)。
ただし、Qは、エーテル性酸素原子を有していてもよい炭素数1〜3のパーフルオロアルキレン基である。エーテル性酸素原子を有するパーフルオロアルキレン基である場合、該パーフルオロアルキレン基におけるエーテル性酸素原子は、該基の一方の末端に存在していてもよく、該基の両末端に存在していてもよく、該基の炭素原子間に存在していてもよい。環化重合性の点から、該基の一方の末端に存在していることが好ましい。
【0049】
化合物(3)の環化重合により、下式(3−1)〜(3−4)の繰り返し単位を有する重合体が得られる。
【0050】
【化4】

【0051】
ジエン系単量体の具体例としては、下記化合物が挙げられる。
CF=CFOCFCF=CF
CF=CFOCF(CF)CF=CF
CF=CFOCFCFCF=CF
CF=CFOCFCF(CF)CF=CF
CF=CFOCF(CF)CFCF=CF
CF=CFOCFOCF=CF
CF=CFOC(CFOCF=CF
CF=CFCFCF=CF
CF=CFCFCFCF=CF等。
【0052】
ジエン系単量体と共重合させる単量体としては、前記化合物(1)、前記化合物(2)、および下記化合物が挙げられる。
CF=CF
CF=CFCl、
CF=CFOCF等。
【0053】
含フッ素環状重合体は、全繰り返し単位(100モル%)のうち、含フッ素脂肪族環を有する繰り返し単位を20モル%以上含むことが好ましく、40モル%以上含むことがより好ましく、含フッ素脂肪族環を有する繰り返し単位のみからなることが特に好ましい。含フッ素脂肪族環を有する繰り返し単位は、環状単量体の重合により形成された繰り返し単位およびジエン系単量体の環化重合により形成された繰り返し単位である。
【0054】
含フッ素重合体としては、硬化前駆体との離型性に優れる点から、無定形または非結晶性のパーフルオロ重合体が好ましく、該パーフルオロ重合体をフッ素ガスで処理したパーフルオロ重合体がより好ましい。
【0055】
(モールドの製造方法)
モールド20の製造方法としては、モールド20の反転構造22に対応する微細構造が表面に形成されたマスターモールドを用いたナノインプリント法、キャスト法等が挙げられる。
【0056】
ナノインプリント法としては、下記工程を有する方法が挙げられる。
(x−1)マスターモールドの表面と、熱可塑性の含フッ素重合体を含む膜とを熱圧着させ、該膜に反転構造22を形成する工程。
(x−2)マスターモールドと熱可塑性の含フッ素重合体を含む膜とを分離する工程。
【0057】
キャスト法としては、下記工程を有する方法が挙げられる。
(y−1)マスターモールドの表面に、含フッ素重合体の溶液を塗布する工程。
(y−2)含フッ素重合体の溶液を乾燥させて、含フッ素重合体からなる層を形成する工程。
(y−3)マスターモールドと含フッ素重合体からなる層とを分離する工程。
【0058】
マスターモールドの材料としては、シリコン、ニッケル、銅、チタン、ステンレス、石英、ガラス、ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。
【0059】
(硬化性物質)
硬化性物質とは、熱または光により硬化して硬化物質を形成しうる物質である。
硬化性物質としては、加水分解縮合性金属化合物が挙げられ、好ましくは金属アルコキシド、金属キレート化合物、金属アシレート化合物、無機金属塩、無機金属錯体、有機変性アルコキシシラン、有機変性クロロシラン、含ケイ素ポリマー、これらの反応物が挙げられる。該反応物は、金属アルコキシド等に、水、有機溶剤、pH調整剤、加水分解触媒または重合反応安定化剤を反応させたものである。該反応は、必要に応じて、冷却、加熱、加圧、減圧、大気中、窒素雰囲気等の条件下で行う。
【0060】
金属アルコキシドとしては、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラ−n−ブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラエチルチタネート、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムトリ−sec−ブトキシド等が挙げられる。
【0061】
金属キレート化合物としては、チタンジイソプロポキシビスアセチルアセトネート、チタンテトラキスアセチルアセトネート、チタンジブトキシビスオクチレングリコレート、ジルコニウムテトラキスアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビスアセチルアセトネート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムジブトキシモノアセチルアセトネート、亜鉛ビスアセチルアセトネート、インジウムトリスアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート等が挙げられる。
【0062】
金属アシレート化合物としては、酢酸亜鉛、酢酸鉛、酢酸バリウム、酢酸銅、酢酸ニッケル、酢酸コバルト、酢酸マンガン、酢酸クロム、酢酸マグネシウム、酢酸アルミニウム、酢酸カドミウム、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、シュウ酸バリウム等が挙げられる。
【0063】
無機金属塩および無機金属錯体としては、硝酸イットリウム、硝酸ニッケル、硝酸鉄、塩化ニオブ、塩化ジルコニウム、塩化アルミニウム、オキシ塩化ジルコニウム、オキシ塩化アルミニウム、オキシ塩化チタン、塩化チタン、塩化珪素、塩化錫、塩化銅、塩化バナジウム、タングステン酸アンモニウム、フッ化チタン酸、フッ化ジルコン酸、フッ化珪素酸、フッ化アルミン酸、パーオキソチタン酸、ポリオキソタングステン酸等が挙げられる。
【0064】
有機変性アルコキシシランとしては、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、これらの化合物のエトキシ基を他のアルコキシ基(メトキシ基等)としたもの等が挙げられる。
【0065】
有機変性クロロシランとしては、有機変性アルコキシシランのアルコキシ基を塩素原子としたものが挙げられる。
【0066】
含ケイ素ポリマーとは、ポリシロキサン類、ポリシラン類、ポリシラザン類、ポリカルボシラン類、ポリアルミノシロキサン類、ポリチタノシロキサン類、ポリボロシロキサン類、ポリアルミノシラザン類、ポリチタノシラザン類、ポリボロシラザン類、これらの含ケイ素ポリマーの共重合物である。
含ケイ素ポリマーとしては、反応性官能基を有するポリシロキサン類が好ましい。反応性官能基としては、ヒドロシリル基、ビニル基、シラノール基、アルコキシシリル基、メタクリル基、エポキシ基等が挙げられる。
【0067】
硬化性物質は、無機微粒子を含んでいてもよい。無機微粒子を含むことにより、硬化物質の屈折率を制御したり、硬化物質の強度を向上させたり、硬化物質に機能を付加したりすることができる。
無機微粒子としては、酸化物微粒子(シリカ、チタニア、ジルコニア、セリア、酸化スズ、酸化亜鉛等。)、カーボン微粒子(カーボンナノチューブ、カーボンブラック、フラーレン等。)、金属微粒子、合金微粒子、カルコゲナイト化合物微粒子、フッ化物微粒子等が挙げられる。
【0068】
無機微粒子の形状としては、球状、粒状、棒状、数珠状、繊維状、フレーク状、中空状、凝集体状、不定形状等が挙げられる。無機微粒子は、一つの成分が別の成分によって被覆されたコア−シェル型粒子であってもよい。また、無機微粒子は、界面活性剤、高分子分散剤、シランカップリング剤等によって表面処理されていてもよい。
【0069】
硬化性物質には、必要に応じて、水、有機溶剤、厚膜化剤、硬化促進剤、重合反応安定化剤、添加剤等を添加してもよい。
有機溶剤は、硬化性物質の反応性、溶解性、安定性、液状物30の塗布性を考慮して選択する。
【0070】
有機溶剤としては、下記有機溶剤が挙げられる。
アルコール類:メタノール、エタノール等、
ケトン類:アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等、
エステル類:酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等、
グリコールエーテル類:エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等、
グリコールエーテルエステル類:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等、
含窒素極性溶剤類:N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等、
芳香族炭化水素類:トルエン、キシレン等。
【0071】
厚膜化剤としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセトアミド、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース等の高分子化合物が挙げられる。
硬化促進剤を添加すると、低温で硬化させても硬化物質の強度を向上できる。
添加剤としては、レベリング剤、消泡剤、分散剤、粘度調整剤、シランカップリング剤等が挙げられる。
【0072】
硬化性物質が液体である場合はそのままモールド20の表面に供給してもよく、硬化性物質を含む溶液として供給してもよい。
硬化性物質を含む溶液の固形分濃度は、硬化物質換算で2質量%以上が好ましい。溶液の固形分濃度が2質量%以上であれば、塗布効率がよい。固形分濃度の上限は、溶液を良好に塗布できる範囲であれば、100質量%であってもよい。
【0073】
硬化性物質を含む溶液または硬化性物質からなる液体の表面張力は、10〜30mN/mが好ましく、12〜27mN/mがより好ましく、14〜24mN/mが特に好ましい。該溶液または液体の表面張力が10mN/m以上であれば、該溶液または液体の層30が容易に得られる。該溶液または液体の表面張力が30mN/m以下であれば、モールド20が該溶液または液体をはじくことなく、均一に塗布できる。該溶液または液体の表面張力を低下させるために、フッ素系界面活性剤またはシリコーン系界面活性剤を添加してもよい。表面張力は、輪環法によって求める。
【0074】
モールド20への溶液または液体の供給方法としては、スピンコート、ディップコート、キャスト、スリットコート、スプレーコート等が挙げられる。硬化性物質によっては、溶液または液体の供給時に温度制御(加熱、冷却等。)、湿度制御、雰囲気の選択(大気、窒素雰囲気等。)が必要な場合がある。溶液または液体の供給後に、溶液または液体の層30中の気泡を取り除くために、500mmHg以下に減圧処理することが好ましい。
【0075】
(b)工程:
図2(b)に示すように、含フッ素重合体の軟化温度未満で、前記溶液または液体の層30が溶媒を含む場合は溶媒を除去し、前記硬化性物質が硬化前駆体32となるまで硬化反応を進める(予備焼成)。
予備焼成の温度は、モールド20に含まれる含フッ素重合体の軟化温度よりも10℃以上低い温度が好ましい。軟化温度とは、含フッ素重合体が非結晶性である場合はガラス転移温度を意味し、含フッ素重合体が結晶性である場合は融解温度を意味する。
【0076】
硬化前駆体32は、予備焼成によって硬化性物質が半硬化した状態である。該半硬化した状態とは、塗料のJIS規格における指触乾燥(塗った面の中央に触れてみて、塗料で指先が汚れない状態)であることが好ましい。
予備焼成時に、紫外線照射、マイクロ波照射、オゾン処理、プラズマ処理等を行い、硬化性物質の硬化を促進してもよい。
硬化性物質によっては、予備焼成時に湿度制御、雰囲気の選択(大気、窒素雰囲気等。)が必要な場合がある。
【0077】
工程(a)と工程(b)を2回以上繰り返し、硬化前駆体32の層を2層以上形成してもよい。2層以上の硬化前駆体32の層は、すべて同じ成分の層であってもよく、それぞれ異なる成分の層であってもよい。硬化前駆体32の層は多孔質層であってもよい。また、該多孔質層に硬化性物質を含む溶液または硬化性物質からなる液体を含浸させてもよい。
【0078】
工程(c):
図2(c)に示すように、モールド20上の硬化前駆体32に基材12を貼り合わせる。
工程(c)は省略してもよい。たとえば、硬化前駆体32の厚さが100μm以上であれば、基材12は不要である。
【0079】
貼り合わせ方法としては、硬化前駆体32と基材12と加熱圧着する方法;硬化性物質を基材12および/または硬化前駆体32の表面に塗布し、加熱または室温で圧着する方法;接着剤を用いる方法等が挙げられる。
貼り合わせ時の温度は、モールド20に含まれる含フッ素重合体の軟化温度よりも10℃以上低い温度が好ましい。
貼り合わせ時の圧力は、10MPa以下が好ましい。
【0080】
工程(d):
図3(d)に示すように、硬化前駆体32の層を有するモールド20から該硬化前駆体32の層を分離して該硬化前駆体32の成形体を得る。
【0081】
工程(e):
図3(e)に示すように、硬化前駆体32を完全に硬化させて、表面に微細構造14が形成された硬化物質16を含む微細構造体10を得る(焼成)。
(e)工程における硬化前駆体32の硬化は、前記(b)工程で使用した温度よりも高い温度で行うことが好ましい。
焼成温度は、50〜1200℃が好ましく、生産性、硬化性の点から、100〜800℃が特に好ましい。
【0082】
焼成時に、紫外線照射、マイクロ波照射、オゾン処理、プラズマ処理等を行い、硬化前駆体32の硬化を促進してもよい。
焼成時に、雰囲気を大気または窒素雰囲気から別の雰囲気に変更してもよい。別の雰囲気としては、酸素、水素、アンモニア、水蒸気等の雰囲気が挙げられる。
【0083】
工程(f):
図3(f)に示すように、前記(e)工程で得られた微細構造体の硬化物質16の表面に、撥水剤の溶液を塗布し、乾燥させて撥水剤の薄膜18を形成する。工程(f)は省略してもよい。基材12が硬化物質16よりも大きく、基材12の表面の一部が露出している場合、撥水剤の薄膜18が基材12の露出した表面に形成されてもよい。
【0084】
塗布方法としては、スピンコート、ディップコート、キャスト、スリットコート、スプレーコート等が挙げられる。
乾燥温度は、20〜150℃が好ましく、生産性の点から、70〜140℃が特に好ましい。乾燥は、大気中、窒素、酸素、水素、アンモニア、水蒸気等の雰囲気中で行うことが好ましい。
【0085】
撥水剤としては、含フッ素化合物または含ケイ素化合物が好ましい。含フッ素化合物または含ケイ素化合物としては、前記含フッ素重合体、シランカップリング剤等が挙げられる。
シランカップリング剤としては、含フッ素シランカップリング剤、アミノ基を有するシランカップリング剤、アクリロイル基を有するシランカップリング剤、メタクリロイル基を有するシランカップリング剤、チオール基を有するシランカップリング剤、イソシアネート基を有するシランカップリング剤、オキシラニル基を有するシランカップリング剤、FS−10(信越化学社製)等が挙げられる。
【0086】
シランカップリング剤としては、撥水性等の点から、含フッ素シランカップリング剤が好ましく、フルオロアルキル基を有するシランカップリング剤が特に好ましい。
フルオロアルキル基としては、パーフルオロアルキル基;パーフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖を含むフルオロアルキル基等が挙げられる。
【0087】
パーフルオロアルキル基を有するシランカップリング剤としては、下記化合物が挙げられる。
CF(CF(CHCHSiT
(CFCF(CF(CHCHSiT
CF(CF(C)(CHCHSiT
CF(CF(CHCHSiUT
(CFCF(CF(CHCHSiUT
CF(CF(C)(CHCHSiUT
CF(CFSON(C)(CHCHCHSiT等。
【0088】
ただし、aは、3、5、7、9のいずれかであり、bは、2、4、6、8のいずれかであり、cは、0、1、3、5、7のいずれかであり、dは1〜3の整数である。
Tとしては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシロキシ基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、塩素原子が好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基またはエトキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。
Uは、1価炭化水素基である。Uとしては、アルキル基、1以上のアリール基で置換されたアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基等が挙げられ、アルキル基またはアルケニル基が好ましい。Uがアルキル基である場合、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましい。Uがアルケニル基である場合、炭素数2〜4のアルケニル基が好ましく、ビニル基またはアリル基がより好ましい。
【0089】
パーフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖としては、(CFCFO)単位、(CFCF(CF)O)単位、(CFCFCFO)単位および(CFO)単位からなる群から選ばれる1種以上のパーフルオロ(オキシアルキレン)単位からなるものが好ましく、(CFCFO)単位、(CFCF(CF)O)単位または(CFCFCFO)単位からなるものがより好ましく、含フッ素重合体の物性(耐熱性、耐酸性等。)が優れる点から、(CFCFO)単位からなるものことが特に好ましい。
【0090】
市販されているフルオロアルキル基を有するシランカップリング剤としては、Gelest社製のAQUAPHOBE(登録商標)CF、3M社製のノベック(登録商標)EGC−1720、ダイキン社製のオプツール(登録商標)DSX(パーフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖を有するシランカップリング剤)等が挙げられる。
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルメチルジエトキシシラン、アミノエチル−アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチル−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0091】
以上説明した本発明の微細構造体の製造方法にあっては、耐久性、寸法精度、耐薬品性および離型性に優れる含フッ素重合体を表面に含むモールドを用いているため、ゾルゲル法により硬化性物質を硬化して得られる、表面に微細構造が寸法精度よく形成された硬化物質を含む微細構造体を生産性よく製造できる。
【0092】
また、前記(f)工程を有すれば、ゾルゲル法により硬化性物質を硬化して得られる、撥水性が高い微細構造が寸法精度よく表面に形成された硬化物質を含む微細構造体を生産性よく製造できる。微細構造体の硬化物質の表面の疎水性が高ければ、該硬化物質を含む微細構造体を光学素子とした場合、硬化物質の表面が水に濡れにくく、水による光学素子の光学特性の変化または低下が抑えられる。
【実施例】
【0093】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
例1〜5、12は製造例であり、例6〜11は実施例であり、例13、14は比較例である。
【0094】
(固有粘度)
重合体について、粘度計(東機産業社製、TV−20型)を用いて、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)中、30℃における固有粘度を測定した。
【0095】
(ガラス転移温度)
重合体について、熱重量測定装置(マックサイエンス社製、TG−DTA2000)を用いて、示差走査熱分析(DSC)により40℃から400℃まで窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分の条件でスキャンを行い、ガラス転移温度を測定した。
【0096】
(光線透過率)
重合体を膜厚100μmのフィルムに加工し、紫外可視分光光度計(島津製作所社製、UV−3100)を用いて、波長360〜500nmにおける光線透過率を測定した。
【0097】
(接触角)
水に対する接触角は、接触角計(協和界面科学社製、CA−X150型)を用いて、測定対象物の表面に約20μLの水滴を着滴させて測定した。
【0098】
(反転構造および微細構造の寸法)
モールドの反転構造(凹部)および微細構造体の微細構造(凸部)の寸法(高さ(深さ)、幅、間隔)については、レーザー顕微鏡(キーエンス社製、VK−9500)を用い、反転構造または微細構造の寸法を3箇所測定して、それらを平均した。
【0099】
(耐薬品性)
2つのモールドを用意し、一方のモールドを希塩酸(pH1)に1時間浸漬し、他方のモールドを5%水酸化ナトリウム水溶液(pH14)に1時間浸漬した。それぞれのモールドについて、下記基準にて評価した。
○:腐食または溶解が見られない。
×:腐食または溶解が見られる。
【0100】
(離型性)
微細構造体を製造する際のモールドの離型性について、下記基準にて評価した。
○:離型性が良好であり、微細構造が形成されていることが確認できる。
×:離型できずに接着してしまう。
【0101】
〔例1〕
重合体(P)の製造:
オートクレーブ(耐圧ガラス製)に、CF=CFOCFCFCF=CFの100g、メタノールの0.5g、および[(CHCHOCOO]の0.7gを入れ、懸濁重合法によって重合体(P)を得た。
重合体(P)は下式(p)で表される繰り返し単位からなる重合体である。重合体(P)の固有粘度は、0.34dl/gであり、ガラス転移温度は、108℃であった。
【0102】
【化5】

【0103】
〔例2〕
重合体(P1)の製造:
重合体(P)を、オートクレーブ(ニッケル製、内容積1L)に入れ、オートクレーブ内を窒素ガスで3回置換してから4.0kPa(絶対圧)まで減圧した。オートクレーブ内に、窒素ガスで14体積%に希釈したフッ素ガスを101.3kPaまで導入してから、オートクレーブの内温を6時間、230℃に保持した。オートクレーブの内容物を回収して、主鎖に含フッ素脂肪族環を有し、かつ反応性基を有さない重合体(P1)を得た。
重合体(P1)の赤外吸収スペクトルを測定した結果、カルボキシ基に起因するピークは確認されなかった。重合体(P1)の光線透過率は、95%以上であり、フッ素原子の量は、重合体(P1)(100質量%)中68質量%であり、重合体(P1)からなる膜の水に対する接触角は、115度であった。
【0104】
組成物(C1)の調製:
9質量%の重合体(P1)を含むパーフルオロトリブチルアミン溶液を調製し、該溶液をメンブレンフィルター(ポリテトラフルオロエチレン製、孔径0.2μm)で濾過して組成物(C1)を得た。
【0105】
〔例3〕
重合体(P2)の製造:
重合体(P)を、大気圧雰囲気下の熱風循環式オーブン中で300℃にて1時間熱処理した。ついで、超純水中で110℃にて1週間浸漬した。真空乾燥機中で100℃にて24時間乾燥して、主鎖に含フッ素脂肪族環を有し、かつ反応性基(カルボキシ基)を有する重合体(P2)を得た。
【0106】
重合体(P2)の赤外吸収スペクトルを測定した結果、カルボキシ基に起因するピークが確認された。重合体(P2)の光線透過率は、93%以上であり、フッ素原子の量は、重合体(P2)(100質量%)中68質量%であり、重合体(P2)からなる膜の水に対する接触角は、115度であった。
【0107】
組成物(C2)の調製:
1質量%の重合体(P2)を含むパーフルオロトリブチルアミン溶液を調製し、該溶液をメンブレンフィルター(ポリテトラフルオロエチレン製、孔径0.2μm)で濾過して組成物(C2)を得た。
【0108】
〔例4〕
モールド1の製造:
PETフィルム(東洋紡社製、A4100、厚さ100μm)の易接着面に、0.5質量%のアミノ基を有するシランカップリング剤(信越化学工業社製、KBE−903)および5質量%の水を含むエタノール溶液を、バーコーターにて塗布した。該フィルムを水洗し、70℃にて1時間、加熱乾燥して、シランカップリング剤由来のアミノ基をPETフィルム表面に導入する表面処理を行った。
【0109】
ついで、表面処理されたPETフィルム表面に、組成物(C2)をバーコーターにて塗布し、140℃にて2時間、加熱乾燥して、組成物(C2)中のパーフルオロトリブチルアミンを揮発させて、重合体(P2)からなる層(厚さ約0.05μm)をPETフィルム表面に形成させた。
【0110】
ついで、重合体(P2)からなる層の表面に、組成物(C1)をバーコーターにて塗布し、140℃にて2時間、加熱乾燥して、組成物(C1)中のパーフルオロトリブチルアミンを揮発させて、重合体(P1)からなる層(厚さ約2.5μm)を重合体(P1)の表面に形成させた。
【0111】
図4に示すシリコン製のマスターモールド(縦20mm×横20mm×厚さ0.63mm)を用意した。該マスターモールドは、四角柱(ピラー形状)の凸部(高さ150nm、幅150nm、間隔150nm)を表面全体に有する。
該マスターモールドを130℃に加熱しながら、重合体(P1)からなる層へ5MPaの圧力にて押し当てて、5分間保持した。
【0112】
マスターモールドおよびPETフィルムを60℃になるまで冷却し、PETフィルムとマスターモールドとを分離し、PETフィルム上の含フッ素重合体からなるモールド本体表面に、微細構造(凸部)に対応する反転構造(凹部)が形成されたモールド1を得た。
モールド1の反転構造の寸法を測定し、耐薬品性を評価した。結果を表1に示す。
【0113】
〔例5〕
モールド2の製造:
例4と同じマスターモールドの表面に、組成物(C1)を塗布し、13kPaまで減圧した状態で5分間保持した。その後、180℃にて1時間、加熱乾燥して、組成物(C1)中のパーフルオロトリブチルアミンを揮発させて、重合体(P1)からなる層(厚さ約1μm)をマスターモールドの表面に形成させた。
【0114】
ついで、重合体(P1)からなる層の表面に、組成物(C2)をスピンコーターにて塗布し、180℃にて1時間、加熱乾燥して、組成物(C2)中のパーフルオロトリブチルアミンを揮発させて、重合体(P2)からなる層(厚さ約0.05μm)を重合体(P1)からなる層の表面に形成させた。
【0115】
ついで、0.5質量%のアミノ基を有するシランカップリング剤(信越化学工業社製、KBE−903)および5質量%の水を含むエタノール溶液を、スピンコーターにて重合体(P2)からなる層の表面に塗布し、水洗してから、70℃にて1時間加熱、乾燥して表面処理を行った。
【0116】
シランカップリング剤にて表面処理した面に、接着剤(東亞合成社製、アロンアルファ(登録商標))の0.5gをすばやく塗布した後、ガラス板(縦20mm×横20mm×厚さ1.3mm)を重ね、ガラス板と重合体(P2)からなる層とを接着した。
【0117】
ガラス板とマスターモールドとを分離し、ガラス板上の含フッ素重合体からなるモールド本体表面に、微細構造(凸部)に対応する反転構造(凹部)が形成されたモールド2を得た。
モールド2の反転構造の寸法を測定し、耐薬品性を評価した。結果を表1に示す。
【0118】
〔例6〕
微細構造体1の製造:
モールド1の表面に、液状ガラス(アポロリンク社製、TGA−CP210、有機変性含ケイ素ポリマー、テトラエトキシシラン、ジブチル錫ジアセテート、イソプロピルアルコール、メタノールを含む組成物)の2.0gを塗布した。13kPaまで減圧した状態で、モールド1を40℃にて1時間保持し、液状ガラスの硬化反応を進めて、硬化前駆体とした。
【0119】
ついで、減圧を解除し、硬化前駆体の表面に接着剤(東都化学工業社製、ベストン)を塗布し、その上にガラス板(縦30mm×横30mm×厚さ1.3mm)を接着し、9時間室温で放置した。
ついで、硬化前駆体とモールド1とを分離し、硬化前駆体を140℃にて30分間加熱し、完全に硬化させて、硬化物質の表面に微細構造(凸部)が形成された微細構造体1を得た。
微細構造体1の離型性を評価し、微細構造の寸法を測定した。結果を表2に示す。
【0120】
〔例7〕
微細構造体2の製造:
モールド2の表面に、液状ガラス(アポロリンク社製:TGA−CP210)の2.0g)を塗布した。13kPaまで減圧した状態で、モールド2を40℃にて1時間保持し、液状ガラスの硬化反応を進めて、硬化前駆体とした。
【0121】
ついで、減圧を解除し、硬化前駆体の表面に接着剤(東都化学工業社製、ベストン)を塗布し、その上にガラス板(縦30mm×横30mm×厚さ1.3mm)を接着し、9時間室温で放置した。
ついで、硬化前駆体とモールド2とを分離し、硬化前駆体を140℃にて30分間加熱して、完全に硬化させて、硬化物質の表面に微細構造(凸部)が形成された微細構造体2を得た。
微細構造体2の離型性を評価し、微細構造の寸法を測定した。結果を表2に示す。
【0122】
〔例8〕
微細構造体3の製造:
微細構造体1の、微細構造が形成された表面に、1質量%の1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリクロロシランのトルエン溶液を塗布し、150℃で2時間加熱、乾燥して、撥水剤の薄膜を有する微細構造体3を得る。
微細構造体3の水に対する接触角は、165度である。
【0123】
〔例9〕
微細構造体4の製造:
微細構造体2の、微細構造が形成された表面に、1質量%の1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリクロロシランのトルエン溶液を塗布し、150℃で2時間加熱、乾燥して、撥水剤の薄膜を有する微細構造体4を得る。
微細構造体4の水に対する接触角は、165度である。
【0124】
〔例10〕
微細構造体5の製造:
液状ガラス(アポロリンク社製、TGA−CP210)の2.0gに粒径40nmのシリカ微粒子の0.01gを添加し、充分に混合した。これをモールド1の表面に塗布した。13kPaまで減圧した状態で、モールド1を40℃にて1時間保持し、液状ガラスの硬化反応を進めて、硬化前駆体とした。
【0125】
ついで、減圧を解除し、硬化前駆体の表面に接着剤(東都化学工業社製、ベストン)を塗布し、その上にガラス板(縦30mm×横30mm×厚さ1.3mm)を接着し、9時間室温で放置した。
ついで、硬化前駆体とモールド1とを分離し、硬化前駆体を140℃にて30分間加熱し、完全に硬化させて、硬化物質の表面に微細構造(凸部)が形成された微細構造体を得た。
【0126】
該微細構造体の、微細構造が形成された表面に、1質量%の1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリクロロシランのトルエン溶液を塗布し、150℃で2時間加熱、乾燥して、撥水剤の薄膜を有する微細構造体5を得る。
微細構造体5の水に対する接触角は、166度である。
【0127】
〔例11〕
微細構造体6の製造:
液状ガラス(アポロリンク社製:TGA−CP210)の2.0gに粒径40nmのシリカ微粒子の0.1gを添加し、充分に混合した。これをモールド1の表面に塗布した。13kPaまで減圧した状態で、モールド1を40℃にて1時間保持し、液状ガラスの硬化反応を進めて、硬化前駆体とした。
【0128】
ついで、減圧を解除し、硬化前駆体の表面に接着剤(東都化学工業社製、ベストン)を塗布し、その上にガラス板(縦30mm×横30mm×厚さ1.3mm)を接着し、9時間室温で放置した。
ついで、硬化前駆体とモールド1とを分離し、硬化前駆体を140℃にて30分間加熱し、完全に硬化させて、硬化物質の表面に微細構造(凸部)が形成された微細構造体を得た。
【0129】
該微細構造体の、微細構造が形成された表面に、1質量%の1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリクロロシランのトルエン溶液を塗布し、150℃で2時間加熱、乾燥して、撥水剤の薄膜を有する微細構造体6を得る。
微細構造体6の水に対する接触角は、177度である。
【0130】
〔例12〕
モールド3の製造:
PETフィルム(東洋紡社製、A4100、厚さ100μm)の易接着面に、0.5質量%のアミノ基を有するシランカップリング剤(信越化学工業社製、KBE−903)および5質量%の水を含むエタノール溶液を、バーコーターにて塗布した。該フィルムを水洗し、70℃にて1時間、加熱乾燥して、シランカップリング剤由来のアミノ基をPETフィルム表面に導入する表面処理を行った。
【0131】
ついで、表面処理したPETフィルム表面に、30質量%のPMMA(アクロス社製、質量平均分子量15000)の酢酸ブチル溶液を、バーコーターにて塗布し、140℃にて1時間、加熱乾燥して、PMMAからなる層(厚さ約1μm)をPETフィルム表面に形成させた。
【0132】
例4と同じマスターモールドの表面に剥離剤(ダイキン社製、オプツール(登録商標))を塗布した。マスターモールドを130℃に加熱しながら、PMMAからなる層へ5MPaの圧力にて押し当てて、5分間保持した。
【0133】
マスターモールドおよびPETフィルムを60℃になるまで冷却し、PETフィルムとマスターモールドとを分離し、PETフィルム上のPMMAからなるモールド本体表面に、微細構造(凸部)に対応する反転構造(凹部)が形成されたモールド3を得た。
モールド3の反転構造の寸法を測定し、耐薬品性を評価した。結果を表1に示す。
【0134】
〔例13〕
微細構造体7の製造:
モールド3の表面に、液状ガラス(アポロリンク社製、TGA−CP210)の2.0gを塗布した。13kPaまで減圧した状態で、モールド3を40℃にて1時間保持し、液状ガラスの硬化反応を進めて、硬化前駆体とした。
【0135】
ついで、減圧を解除し、硬化前駆体の表面に接着剤(東都化学工業社製、ベストン)を塗布し、その上にガラス板(縦30mm×横30mm×厚さ1.3mm)を接着し、9時間室温で放置した。その後、硬化前駆体とモールド3とを分離しようとしたが、接着してしまい、微細構造体7を得ることはできなかった。
【0136】
〔例14〕
微細構造体8の製造:
モールド3の表面に、剥離剤(ダイキン工業社製、オプツール(登録商標)DSX)を塗布した。該モールド3表面に、液状ガラス(アポロリンク社製、TGA−CP210)の2.0gを塗布した。13kPaまで減圧した状態で、モールド3を40℃にて1時間保持し、液状ガラスの硬化反応を進めて、硬化前駆体とした。
【0137】
ついで、減圧を解除し、硬化前駆体の表面に接着剤(東都化学工業社製、ベストン)を塗布し、その上にガラス板(縦30mm×横30mm×厚さ1.3mm)を接着し、9時間室温で放置した。
ついで、硬化前駆体とモールド3とを分離し、硬化前駆体を140℃にて30分間加熱して、完全に硬化させて、硬化物質の表面に微細構造(凸部)が形成された微細構造体8を得た。
微細構造体8の離型性を評価し、微細構造の寸法を測定した。結果を表2に示す。
【0138】
【表1】

【0139】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明の製造方法で得られる微細構造体は、硬化物質の表面に微細構造が集合してなる微細パターンを有することから、光学素子、反射防止フィルター、バイオチップ、マイクロリアクターチップ、記録メディア用の部材、ディスプレイ材料、触媒担持体、フィルター、センサー部材、超撥水材料、エネルギー関連部材、MEMS部材等として有用である。
【0141】
本発明の製造方法で得られる微細構造体は、微細構造を表面に有し、該表面は低表面エネルギーの化合物で被覆され、かつ可視光の波長以下の微細構造により光の影響を受けないため透明であることから、特に超撥水材料として有望な材料である。
また、製造が容易なことから、大面積化が容易である。また、表面に凸凹を有する基材の表面にも微細構造を有する硬化物質を設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】本発明の製造方法で得られる微細構造体の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の製造方法における工程(a)〜(c)の一例を示す断面図である。
【図3】本発明の製造方法における工程(d)〜(f)の一例を示す断面図である。
【図4】実施例で用いるマスターモールドを示す正面図である。
【符号の説明】
【0143】
10 微細構造体
12 基材
14 微細構造
16 硬化物質
18 撥水剤の薄膜
20 モールド
22 反転構造
30 硬化性物質を含む溶液または硬化性物質からなる液体の層
32 硬化前駆体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゾルゲル法により硬化性物質を硬化して得られる、表面に微細構造が形成された硬化物質を含む微細構造体の製造方法であって、
(a)表面に前記微細構造に対応する反転構造が形成され、かつその表面が含フッ素重合体を含む、モールドの該表面に、前記硬化性物質を含む溶液または前記硬化性物質からなる液体を供給して、前記モールドの表面に前記溶液または液体の層を形成する工程と、
(b)前記含フッ素重合体の軟化温度未満で、前記層が溶媒を含む場合は溶媒を除去し、前記硬化性物質が硬化前駆体となるまで硬化反応を進める工程と、
(d)前記硬化前駆体の層を有するモールドから該硬化前駆体の層を分離して該硬化前駆体の成形体を得る工程と、
(e)前記硬化前駆体を硬化させて硬化物質を含む微細構造体を得る工程と
を有する、微細構造体の製造方法。
【請求項2】
前記(e)工程における硬化前駆体の硬化を、前記(b)工程で使用した温度よりも高い温度で行う、請求項1に記載の微細構造体の製造方法。
【請求項3】
前記(b)工程と前記(d)工程との間に、(c)モールド上の前記硬化前駆体の層の表面に基材を貼り合わせる工程を有する、請求項1または2に記載の微細構造体の製造方法。
【請求項4】
前記含フッ素重合体が、フッ素原子の量が含フッ素重合体(100質量%)中35質量%以上であり、かつ含フッ素重合体からなる膜の水に対する接触角が80度以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の微細構造体の製造方法。
【請求項5】
前記微細構造における凸部の高さまたは凹部の深さが、平均で1nm〜4μmである、請求項1〜4のいずれかに記載の微細構造体の製造方法。
【請求項6】
前記微細構造における凸部または凹部の幅が、平均で1nm〜400nmであり、かつ凸部の高さまたは凹部の深さが、平均で1nm〜400nmである、請求項1〜5のいずれかに記載の微細構造体の製造方法。
【請求項7】
さらに、(f)前記(e)工程で得られた微細構造体の硬化物質の表面に、撥水剤の溶液を塗布し、乾燥して撥水剤の薄膜を形成する工程を有する、請求項1〜6のいずれかに記載の微細構造体の製造方法。
【請求項8】
前記撥水剤が、含フッ素シランカップリング剤である、請求項7に記載の微細構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−162190(P2008−162190A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−356074(P2006−356074)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】