説明

微細気泡発生装置

【課題】ナノレベルの微細気泡を効率良く発生することを可能とする微細気泡発生装置を提供する。
【解決手段】この装置は、円筒状の内周面を有する筒状部材40と、該筒状部材の一端を閉じるように設定される第1端壁部材42と、筒状部材の他端を閉じるように設定される第2端壁部材44とを有する。筒状部材40、第1端壁部材42、及び、第2端壁部材44は流体旋回室46を画定する。筒状部材の第2端壁部材44に近い位置には、気液混合流体を流体旋回室46の周面の接線方向に供給するための流体導入孔48が設けられる。第2端壁部材には、流体旋回室の内周面の中心軸線に沿って貫通する流体吐出孔50が設けられる。気液混合流体は、第2端壁部材近くで流体旋回室内に導入され、その多くは、流体旋回室の内周面に沿って旋回しながら第1端壁部材に向かい、反転して、第2端壁部材に向かい、流体吐出孔から排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細気泡を発生するための装置に係り、特に、直径がナノレベルとされたナノバブルを大量に発生することを可能にする微細気泡発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、直径がミクロレベル、ナノレベルとされた微細バブルの種々の利用方法が注目されており、また、微細バブル発生のための装置が種々提案されているが、本発明は、円筒形にされた内部空間を有し、該内部空間に気体を含む液体を導入して旋回流を起こさせ、旋回流により生じる剪断力によって気体を微細化する装置に関する。
【0003】
この種の装置としては、例えば、特開2001−276589号に開示されてものがある。この公報に開示された装置は、微細気泡を発生させる液体貯留タンク内の液中に上下方向に延びるようにして浸漬された筒状の旋回流発生部材を有する。該旋回流発生部材は、その上端部分に気液混合流体を導入する1つの導入孔が該筒状部材の内周面に対して接線方向で交わるように設けられ、その下端部分には漏斗状部分が設けられ、その下端に流体吐出口が設けられている。導入孔にはポンプからの加圧流体を供給するパイプが接続され、該パイプの途中にはアスピレータが接続されて、該アスピレータを通して空気が気泡として混入された液体が、該導入孔を介して旋回流発生部材内部に導入される。導入された気液混合流体は、旋回流発生部材内部を旋回しながら下方に進み、同部材の下端の流体吐出口から旋回しながら液体貯留タンク内に吐出される。吐出された気液混合流体と貯留タンク内の液体との間には剪断力が生じ、気液混合流体内の気泡が微細化される。
【0004】
特開2003−117368は、円筒形などとされた内周面を有する筒状部材を有する微細気泡発生装置を開示している。この装置では、液体供給のためのポンプに液体と共に空気を導入し、該ポンプ内で気泡を含んだ気液混合流体を作り、この気液混合流体を筒状部材内に、該筒状部材の一端近くに設けた1つの導入孔を通して導入するようになっている。導入された気液混合流体は、旋回しながら筒状部材内を他端に向けて軸線方向で進み、該他端に設けられた吐出口から吐出され、気泡が微細化される。この公報はまた、筒状部材の軸線方向中心部分に設けた導入孔を通して気液混合流体を該筒状部材内に導入するようにし、導入された気液混合液体が該筒状部材の両端に向けて旋回して進み、該両端に設けた吐出口から吐出されるようにした装置も開示している。
【0005】
特許3682286号は、液体貯留槽の液体内に浸漬される、卵形又は楕円形の内周面を有する旋回流発生部材を備える気泡微細化装置を開示している。この装置では、楕円の長軸の中心部分に気液混合流体を導入する1つの導入孔が設けられ、該導入孔から導入された気液混合流体が、長軸方向両端に設けられた吐出口に向って旋回流となって進み、該吐出口から排出される。気液混合流体中の気体は、旋回流発生部材内での旋回流及び吐出される際にかかる剪断力などによって微細化されるとされている。
【0006】
特開2002−11335及び同2002−166151は、円筒状内周面を有する旋回流発生部材内に、その軸線方向で間隔をあけた2つの気液混合導入孔から気液混合流体を導入し、旋回流発生部材の両端に設けた吐出口から気液混合流体を吐出する装置を開示している。
【特許文献1】特開2001−276589号公報
【特許文献2】特開2003−117368号公報
【特許文献3】特許3682286号
【特許文献4】特開2002−11335号公報
【特許文献5】特開2002−166151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した微細気泡発生装置は、いずれも気液混合流体に旋回流を生じさせることにより流体内に含まれる気泡を微細化するものであるが、ナノレベルでの気泡(ナノバブル)発生を効率良く行なうものは見られなかった。
【0008】
本発明は、ナノバブルを効率良く発生することを可能とする微細気泡発生装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は
円筒状の内周面を有する筒状部材と、
該筒状部材の一端を閉じるように設定される第1端壁部材と、
該筒状部材の他端を閉じるように設定される第2端壁部材と、
該筒状部材、該第1端壁部材、及び、該第2端壁部材によって画定される流体旋回室と、
該筒状部材の軸線方向の中心位置よりも第2端壁部材寄りの位置に該筒状部材を貫通するように設けられ、気液混合流体を該流体旋回室内に、その接線方向で導入する1つの流体導入孔と、
該筒状部材の内周面の中心軸線に沿って該第2端壁部材を貫通する流体吐出孔と、
を備える気体旋回剪断装置を有する微細気泡発生装置を提供する。
【0010】
この微細気泡発生装置の特徴は、流体導入孔を該筒状部材の軸線方向の中心位置よりも第2端壁部材寄りの位置に設けたことである。このようにしたことで、流体導入孔を通して流体旋回室内に導入された気液混合流体の多くは、前述した1つの流体導入孔を備えた微細気泡発生装置とは異なり、吐出口が設けられていない第1端壁部材に向けて旋回流となって進み、第1端壁によって当該流体旋回室の半径方向中心部に向けられながら反転し、旋回速度を更に高め、第2端壁部材に向かい、流体吐出口から外部へ吐出されるようになる。
【0011】
すなわち、この装置においては、流体旋回室内に導入された気液混合流体の多くは、前述の従来装置におけるように単純に吐出口に向うのとは異なり、一旦、吐出口のある方向とは反対方向に旋回流として進む。そして、その旋回流は、第1端壁部材によって反転させられ該第1端壁部材から第2端壁部材に向けて進むことになるが、このときの旋回回転半径は第1端壁部材に向かうときに比べて小さくなるので、その流速は高速となり、従って、該液体内に含まれる気体への剪断力が大きくなり、その微細化が促進される。
【0012】
具体的には、流体導入孔は、第2端壁部材に近接して設定することができる。より具体的には、流体導入孔が断面円形とされ、少なくとも流体導入孔の直径の0.5〜2倍の長さだけ第2端壁部材から軸線方向で離されるようにすることができる。
【0013】
流体導入孔を第2端壁部材に接するようにしないのは、流体導入孔を通して導入された気液混合流体が第2端壁による摩擦抵抗により、旋回速度が低下されるのを防ぐためである。
【0014】
また、流体旋回室の軸線方向長さは、流体導入孔の直径の6倍以上とすることが好ましい。第1端壁部材に向う旋回流、そして第1端壁部材から第2端壁部材に向う旋回流の経路できるだけ長くするためである。
【0015】
更に、流体導入孔が、流体旋回室の内壁面に内接して接線方向に延びることを仮想した該流体導入孔の延長方向に対し、該流体旋回室に対する内接点を中心に10°より大きく30°より小さい角度で延びるようにすることが好ましく、より好ましくは、15°〜20°程度とする。この数値は、実際の試作品により得た数字であり、流体導入孔を真の接線方向に設定するより効率の良いナノバブル発生を見ることができた。
【0016】
筒状部材の内周面は鏡面仕上げとし、筒状部材の内周面に開口した流体導入孔に周方向で対応する当該内周面の部分に、該内周面の軸線方向で相互に間隔をあけて設けられた、幅及び深さが1mm以下の複数の環状溝を有するようにすることができる。
【0017】
このようにすることにより、流体旋回室内に導入された気液混合流体を、軸線方向で余り広がらない状態で旋回流とすることができる。
【0018】
該筒状部材及び第1及び第2端壁部材が、該流体導入孔から旋回室内に導入される流体によって発生する振動数とは異なる固有振動数を有するようにする。筒状部材の振動が大きくなると、円滑に旋回流が発生するための支障となるので、これを防止するものである。
【0019】
より具体的には、気体旋回剪断装置の該流体導入孔に接続され液体を該流体旋回室に供給する渦流ポンプであって、ケーシングと、該ケーシング内で回転するインペラーと、該ケーシングの周壁に形成された液体入口と、該ケーシングの周壁に形成された気体入口と、該ケーシングの周壁に設けられ、該インペラーの回転により吸引された液体と気体とが混合されて形成された気液混合流体を吐出する流体出口とを有する渦流ポンプを有し、該渦流ポンプの流体出口が、該気体旋回剪断装置の流体導入孔に接続されるようにすることができる。このような渦流ポンプを使用することによって気体旋回剪断装置に導入される前に気体が微細化され、より効率の良いナノバブル発生が可能となる。
【0020】
気体旋回剪断装置の流体吐出孔には、気体旋回剪断装置から吐出された流体を分散放出する分散器を接続することが好ましい。具体的には、この分散器は、円筒状の内周面を有する筒状部材と、該筒状部材の両端を閉じるように設定された端壁部材とを有し、該筒状部材の軸線方向の中心部分に気体旋回剪断装置の流体吐出孔に連通された流体入口と、該筒状部材の軸線に沿って端壁部材を貫通するように設けられた流体出口とを有するものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る微細気泡発生装置を説明するための図である。
【図2】微細気泡発生装置で用いられている気体旋回剪断装置の内部を説明するための図である。
【図3】図2におけるIII‐III線断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、添付図面に基づき、本発明に係る微細気泡発生装置の実施形態につき説明する。
【0023】
図1は、本発明に係る微細気泡発生装置10の説明図である。該装置10は、気液混合流体を作るための渦流ポンプ12と、該渦流ポンプで作られた気液混合流体を受け入れて該気液混合流体中に含まれる気体を微細化するための気体旋回剪断装置14と、該気体旋回剪断装置によって気体が微細化された流体を分散排出するための分散器16とを有している。分散器16は、液体貯留槽36内の液体内に浸漬されており、微細化された気泡を該液体貯留槽36内の液体L内に分散放出するようになっている。また、液体貯留槽36の液体はパイプ38を介してポンプ12に供給されるようになっている。
【0024】
渦流ポンプ12は、ハウジング20と、該ハウジング内に収納されて回転駆動されるインペラー22とを有する。ハウジング20には、パイプ38に接続されて、液体貯留槽36内の液体を当該パイプ内に吸引するための液体吸引孔24と、該液体吸引孔に連通されて、液体吸引孔24内を流れる液体内に気体が吸引されるようにする気体吸引孔26と、ハウジング内に吸引された液体及び気体がインペラー22の回転により混合されて形成された気液混合流体を吐出する吐出孔28が設けられている。吐出孔28は、液体吸引孔24よりも直径が小さくされており、気体旋回剪断装置14への流体吐出速度が大きくなるようにしている。
【0025】
気体吸引孔26には、パイプ30が接続されており、該パイプにはソレノイドバルブ32が取り付けられており、ポンプ12を駆動するときには、ソレノイドバルブ32は閉じた状態にされ、ポンプ始動後、一定時間(例えば60秒)が経ってから開放されるようにされている。これは、ポンプ内に吸引される気体によるポンプ内でのキャビテーション発生をできるだけ少なくするためである。
【0026】
気体旋回剪断装置14は、図2及び図3に示すように、円筒状の内周面を有する筒状部材40と、該筒状部材40の一端を閉じるように設定された第1端壁部材42と、筒状部材40の他端を閉じるように設定された第2端壁部材44と、筒状部材40、第1端壁部材42、及び、第2端壁部材44によって画定される流体旋回室46と、筒状部材40の軸線方向の中心位置よりも第2端壁部材44寄りの位置に筒状部材40を貫通するように設けられ、気液混合流体を流体旋回室46内に、その接線方向で導入する流体導入孔48と、筒状部材40の内周面の中心軸線に沿って第2端壁部材44を貫通する流体吐出孔50とを備える。
【0027】
図示の例では、筒状部材40の外周面には流体導入孔48に連通された接続用管54が取り付けられており、ポンプ12の吐出孔28から延びるパイプ55に接続されるようになっている。また、第2端壁部材44には流体吐出孔50に連通された接続用管54が取り付けられており、分散器16との間に延びるパイプに接続されるようになっている。
【0028】
また、図示の例では、該流体導入孔48は、第2端壁部材44に近接して設定されており、具体的には、流体導入孔48が断面円形とされ、該流体導入孔48のほぼ直径分だけ第2端壁部材44から離されている。
【0029】
流体旋回室46は、その軸線方向長さが、流体導入孔48の直径の5倍以上、直径が流体導入孔の直径の4倍以上とされる。図示の例では、流体導入孔48の直径に対して軸線方向長さが約12倍、直径が約5倍とされている。
【0030】
また、流体導入孔48及びそれの連通された接続用管54は、当該流体導入孔48が流体旋回室46の内壁面に内接して接線方向に延びることを仮想したその内接接線Tに対し、内接点Iを中心に10°以上30°以内の角度θで延びるように設定され、好ましくは約15°〜20°とされる。
【0031】
筒状部材の内周面は鏡面仕上げとされ、該内周面に開口した流体導入孔48に周方向で対応する当該内周面の部分には、該内周面の軸線方向で相互に間隔をあけて設けられた、幅及び深さが1mm以下の複数の環状溝56が設けられる。図示の例では、流体導入孔48に周方向で対応する内周面部分に5本の溝が設けられており、更に、その両側に1本ずつ追加の溝が設けられている。また、環状溝56の具体的サイズとしては、深さ0.3mm、幅0.5mmとされている。
【0032】
筒状部材40及び第1及び第2端壁部材42,44は、流体導入孔48から旋回室46内に導入される流体によって発生する振動数とは異なる固有振動数を有するような質量等を有するようにされる。
【0033】
分散器16は、円筒状の内周面を有する筒状部材60と、該筒状部材の両端を閉じるように設定された端壁部材62とを有し、筒状部材60の軸線方向の中心部分に気体旋回剪断装置14の流体吐出孔50に連通された流体入口64と、筒状部材の軸線に沿って該端壁部材を貫通するように設けられた流体出口66とを有する。
【0034】
気体旋回剪断装置14の流体吐出孔50から吐出された流体は、分散器16の流体入口64から該分散器16内に流入し、旋回しながら軸線方向両側に分かれて、流体出口66から液体貯槽内の液体内に分散放出される。
【0035】
微細気泡発生装置10を作動させるには、ポンプ12を駆動し、液体貯留槽内の液体を吸引し、該ポンプ12、気体旋回剪断装置14、分散器16そして液体貯留槽36を循環する液体の流れを生じさせる。
【0036】
ポンプ12が駆動されてから一定時間後、例えば60秒後にソレノイドバルブ32が開かれ、空気がパイプ30を通って吸引され、ポンプのハウジング内には気液が混合した流体が導入される。ポンプのハウジング内に導入された気液混合流体は、インペラーの作用によって該ハウジング内の内周面に沿って駆動されて吐出孔28を介して吐出されるが、その間に、流体内の気体は該流体内に生じる乱流による剪断力を受けて微細化が行なわれ、一部はミクロレベルまでなるものも生じ得る。
【0037】
吐出孔28からの気液混合流体は、気体旋回剪断装置14の流体旋回室46内に導入され、該室内で前述の如き旋回流とされ、強力な剪断力を受けて、内部の気体が更に微細化される。この気体旋回剪断装置内での強力な剪断力は多くの気体がナノレベルまで微細化されるのを可能とする。
【0038】
気体旋回剪断装置14から吐出された気液混合流体は、分散器16によって再度旋回流とされながら液体貯留槽36内に放出される。このため、この分散器においても気泡の微細化は行なわれる。
【0039】
図示の例では、液体は液体貯留槽からポンプ12、気体旋回剪断装置14、分散器16を通って循環するようになされているが、ポンプへの液体の供給は該液体貯留槽36とは別のところから供給するようにしても良い。ただ、図示の例のように循環式にすることにより、気体の微細化が口返し行なわれることになるので、より微細な気泡を得ることが可能となる。
【0040】
具体的な実施例としては、流体旋回剪断装置の筒状部材40、端壁部材42,44を10mm厚のステンレススチールで作り、流体旋回室の軸線方向長さ110mm、内径43−55mmとし、流体導入孔48及び接続管54の内径を10mm、第2端壁部材44から流体導入孔48の中心線までの間隔を20mm、接続管54の取付角度θを約18度、ポンプからの吐出量を毎分120リットルとした場合、ナノレベルとされた微細気泡が多数発生されるのが確認された。
【0041】
以上、本発明の微細気泡発生装置の実施形態につき述べたが、この微細気泡発生装置は種々の用途に使用することができる。
【0042】
例えば、本発明にかかる微細気泡発生装置でナノバブルを発生した水(以下、「ナノバブル水」とする)は界面活性作用、濡れ性が高く、繊維、金属金型、機械部品、シリコン・ウエハーその他種々のものの洗浄に使用することができる。シリコン・ウエハーなどの洗浄においては、窒素のナノバブルとすることが好ましい。
より具体的な例としては、製鉄所で作られる鋼材を圧延した鉄材に発生するスケール(酸化鉄)を除去するための酸洗装置に利用することができる。すなわち、酸洗装置は酸洗槽を備え、該酸洗槽中に貯留した塩酸、硫酸等を含んだ酸洗液を一定温度に加熱し、その中に鉄材を浸漬することにより、表面に発生したスケールを除去するものであるが、前述した本発明にかかる微細気泡発生装置における液体貯留槽36を酸洗槽として用いるものである。酸洗層内の酸洗液内にナノレベルでの微細気泡を発生することにより、酸洗効果を向上することができ、酸洗作業時間を短縮でき、また、酸洗液の加熱温度も抑えることができる。従ってまた、硫酸や塩酸の使用量を少なくすることが可能であり、この場合、廃液処理も容易になる。また、この変形例としては、液体貯留槽36内で生じる気泡には、比較的大きな気泡が含まれる場合もあり、酸洗効率の妨げとなることも考えられるので、該液体貯留槽内の酸洗液から、そのような比較的大きな気泡を除去したものを別の酸洗槽に供給して酸洗作業を行なうようにすることもできる。
また、地底に埋蔵されている超重質油を採掘するためには、界面活性剤を含んだ水を地中深くにある超重質油槽に注入し、この水と混じった超重質油を吸い上げることが行なわれるが、ナノバブル水を用いれば、界面活性剤の使用を少なくすることができ、また、採掘した超重質油を界面活性剤から分離する作業も大幅に軽減することが可能となる。
【0043】
また、ナノバブル水は、浸透性が高く、例えば、アルコール醸造などに利用することができる。すなわち、例えば、日本酒を醸造する場合、精米を初めに水に24時間位浸けた後で蒸すが、ナノバブル水に浸けた場合は4分の1の6時間位で十分となる。
【0044】
また、パンや魚肉練り製品などを作るときに、窒素を使ったナノバブル水を作り、このナノバブル水により小麦粉や魚肉を練ると、小麦粉や魚肉中の好気性菌が死滅するので、腐敗防止用剤を使用することなく、これらパンや魚肉練り製品などの腐敗を防止することが可能となる。
【0045】
更に、河川などの水の浄化に使用することもでき、特に、活性汚泥法を用いた浄化槽では、ナノバブル水を用いれば、活性汚泥すなわちバクテリアを活性化することができ、浄化効率を向上することができる。
【0046】
さらに、本発明に係る微細気泡発生装置により石油などの燃焼油に酸素若しくは空気のナノバブルを発生させれば、その燃焼効率を大幅に改善することが可能である。
【0047】
更に、ナノバブルには生理活性作用を奏することができ、例えば、ナノバブルに手を入れれば、毛穴が開き毛穴にある皮脂が除去される。従って、例えば、不織布などの布材にナノバブル水を含浸させることにより手拭用の濡れティシューや化粧落としとすることができる。
また、お風呂で使えば、ナノバブル水の生理活性作用により温浴効果を高めることができる。
【0048】
また、ナノバブル水のナノバブルを超音波などや光エネルギーなどで破壊することによる微小領域での爆発力を生じることができ、例えば、これにより遺伝子組み換えの際の遺伝子切離しに使用することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の内周面を有する筒状部材と、
該筒状部材の一端を閉じるように設定される第1端壁部材と、
該筒状部材の他端を閉じるように設定される第2端壁部材と、
該筒状部材、該第1端壁部材、及び、該第2端壁部材によって画定される流体旋回室と、
該筒状部材の軸線方向の中心位置よりも第2端壁部材寄りの位置に該筒状部材を貫通するように設けられ、気液混合流体を該流体旋回室内に、その接線方向で導入する流体導入孔と、
該筒状部材の内周面の中心軸線に沿って該第2端壁部材を貫通する流体吐出孔と、
を備える気体旋回剪断装置を有する微細気泡発生装置。
【請求項2】
該流体導入孔が、該第2端壁部材に近接して設定されている請求項1に記載の微細気泡発生装置。
【請求項3】
該流体導入孔が断面円形とされ、少なくとも該流体導入孔の直径の0.5〜2倍の長さだけ該第2端壁部材から該軸線方向で離されている請求項2に記載の微細気泡発生装置。
【請求項4】
該流体旋回室の軸線方向長さが、該流体導入孔の直径の6倍以上とされている請求項3に記載の微細気泡発生装置。
【請求項5】
該流体導入孔が、該流体旋回室の内壁面に内接して接線方向に延びることを仮想した該流体導入孔の延長方向に対し、該流体旋回室に対する内接点を中心に10°以上30°以内の角度で延びるように設定されている請求項1乃至4のいずれかに記載の微細気泡発生装置。
【請求項6】
該筒状部材の内周面が鏡面仕上げとされ、
該筒状部材の内周面に開口した該流体導入孔に周方向で対応する当該内周面の部分に、該内周面の軸線方向で相互に間隔をあけて設けられた、幅及び深さが1mm以下の複数の環状溝を有する請求項5に記載の微細気泡発生装置。
【請求項7】
該筒状部材及び第1及び第2端壁部材が、該流体導入孔から旋回室内に導入される流体によって発生する振動数とは異なる固有振動数を有する請求項5に記載の微細気泡発生装置。
【請求項8】
気体旋回剪断装置の該流体導入孔に接続され液体を該流体旋回室に供給する渦流ポンプであって、ケーシングと、該ケーシング内で回転するインペラーと、該ケーシングの周壁に形成された液体入口と、該ケーシングの周壁に形成された気体入口と、該ケーシングの周壁に設けられ、該インペラーの回転により吸引された液体と気体とが混合されて形成された気液混合流体を吐出する流体出口とを有する渦流ポンプを有し、該渦流ポンプの流体出口が、該気体旋回剪断装置の流体導入孔に接続されている請求項1乃至4のいずれかに記載の微細気泡発生装置。
【請求項9】
該気体旋回剪断装置の流体吐出孔に接続されて、該気体旋回剪断装置から吐出された流体を分散放出する分散器を有する請求項8に記載の微細気泡発生装置。
【請求項10】
該分散器が、円筒状の内周面を有する筒状部材と、該筒状部材の両端を閉じるように設定された端壁部材とを有し、該筒状部材の軸線方向の中心部分に該気体旋回剪断装置の該流体吐出孔に連通された流体入口と、該筒状部材の軸線に沿って該端壁部材を貫通するように設けられた流体出口とを有する請求項9に記載の微細気泡発生装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかの微細気泡発生装置を使用して微細気泡を含んだ水を作り、該水を用いて物品の洗浄を行なうようにした洗浄方法。
【請求項12】
請求項1乃至10のいずれかの微細気泡発生装置を使用して微細気泡を含んだ水を作り、該水に穀粒を浸漬し、該穀粒の含有水分を増加させる方法。
【請求項13】
請求項1乃至10のいずれかの微細気泡発生装置を使用して微細窒素気泡を含んだ水を作り、該水を用いて食品の練り材料を作る方法。
【請求項14】
請求項1乃至10のいずれかの微細気泡発生装置を使用して燃料油内に微細酸素気泡を発生し、燃焼効率のよい燃焼油を作る方法。
【請求項15】
活性汚泥を用いた浄化槽の活性化汚泥を活性化させる方法において、請求項1乃至10のいずれかの微細気泡発生装置を使用して浄化槽内の水に微細気泡を発生させ、活性汚泥を活性化させるようにした方法。
【請求項16】
超重質油を採掘する方法において、超重質油の埋蔵層に請求項1乃至10のいずれかの微細気泡発生装置を使用して作った微細気泡を供給し、該水を吸引して超重質油を採掘するようにした方法。
【請求項17】
請求項1乃至10のいずれかの微細気泡発生装置を使用して浄化槽内の水を温浴に使用して温浴効果を向上させる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−272719(P2008−272719A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−136362(P2007−136362)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【特許番号】特許第4118939号(P4118939)
【特許公報発行日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【出願人】(504257911)
【Fターム(参考)】