説明

微細気泡発生装置

【課題】構造が簡単で気泡径を微細化した多量の微細気泡を安定して発生できる微細気泡発生装置を提供する。
【解決手段】微細気泡発生装置1は、外筒3と内筒8の二重筒構造である。外筒3は断面が円形をなす内部空間2を有し、外筒3の内部空間2内に偏心した位置から液体を導入して旋回流を生じさせる液体導入部4と、内部空間2に気体を導入する気体導入部5とを備えた。外筒3内に配設した内筒8はその外周面に凹凸部11を形成した。外筒3の内周面と内筒8の凹凸部11との間の円筒状の間隙13を旋回流の流路とし、間隙13を通して環状の吐出口3aから微細気泡を吐出する。凹凸部11は凸部9と凹部10を中心軸線L方向に交互に配設する。内筒8の先端は外筒3の先端と面一に形成し、内筒8の先端面に略円錐形状の円錐殻14を設けた。外筒3の先端に対向して内筒8に凹凸部11の凸部9を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水等の液体中に微細気泡を発生させる微細気泡発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
微細気泡発生装置は、例えば、製品等の洗浄工程(マイクロバブル洗浄、キャビテーション洗浄)や廃液処理工程(加圧浮上式油分分離)等に広く使用されている。特に、金属製品等の洗浄においては、洗浄液等を使用することなく洗浄可能なため、環境対策として期待されている。
前述の微細気泡発生装置としては、例えば下記特許文献1〜3に開示されているように、旋回流を利用したものが提案されている。特許文献1に記載された旋回式微細気泡発生装置は円錐状のスペース内の底部付近でその内周面の接線方向に加圧液体導入孔を設け、スペースの底部に気体導入孔を設けている。そして、円錐状の内部空間に螺旋状の旋回気液を形成して気体導入孔から導入される気体を巻き込み、円錐状のスペースの先端で小径の気液導出口から旋回流と気体が噴出され、気体の旋回が急激に弱められることで微細気泡が出口付近で発生するとしている。
【0003】
また、特許文献2に記載された微細気泡発生装置は、円筒状のケーシング内に形成された気液旋回室に液体導入口から液体を導入してケーシング内の予備旋回部で旋回流を整流させ、整流された液体と気体導入口から導入される気体を主旋回部で接触させて、ケーシング先端面に設けた小径の気液吐出口から吐出するようにしている。
また、特許文献3に記載された微細気泡発生装置は、円筒状のケーシング内に設けた円錐形状の空間内に液体導入管から導入された液体に旋回流を形成させ、気体導入管から導入された気体を旋回流で分裂させて微細気泡を発生させ、小径の排出管から吐出させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−205228号公報
【特許文献2】特開2006−142300号公報
【特許文献3】特開2007−69071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これら先行技術で提案された微細気泡発生装置は、運転条件によって外部から供給する気体の渦芯が不安定となって脈動を生じることがあり、生成される気泡の寸法が脈動により変化し,安定して微細気泡を供給できない場合がある。また,気泡の吐出部を流れの向きを変える構造にすると脈動は小さくなるか抑えられるが、構造が複雑になるという問題点があった。
また、比較的構造が単純でより多量の微細気泡を発生できる微細気泡発生装置として、ノズルに二重筒を形成して二重筒の隙間を流路とし、二重筒の内側の管が外側の管より引っ込んで構成された微細気泡発生装置が考えられる。しかし、このような構造では、二重筒の隙間から微細気泡を吐出させると、隙間の吐出口付近で中心側が負圧になるために中心側部方向への逆流が発生して渦流を生じる。そのため、渦流によって微細気泡を含む気液の流速が低下して微細気泡が合体し、気泡寸法が粗大化するという不具合があった。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたもので、構造が簡単で気泡径を微細化した多量の微細気泡を安定して発生できるようにした微細気泡発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る微細気泡発生装置は、断面が円形をなす内部空間を有していてこの内部空間の一端側に吐出口を有する外筒と、内部空間内に偏心した位置から液体が導入されて旋回流を生じさせる液体導入部と、内部空間に気体を導入する気体導入部とを備え、内部空間での液体の旋回流によって気体が分裂して微細気泡を発生させて吐出口から噴出させるようにした微細気泡発生装置であって、外筒の内部空間に挿入されていてその外周面に形成した凹凸部と外筒の内周面との間隙を旋回流の流路とする内筒を備えていて、内筒の先端は外筒の先端と面一または外筒の先端より外側に突出していることを特徴とする。
本発明による微細気泡発生装置は、液体導入部から内部空間に導入される液体が偏心して導入されるために旋回流を発生し、気体導入部から内部空間に導入される気体は液体の旋回流によってせん断力を受けて液体中に混入することで発生する気泡の微細化を図ることができ、さらにこの微細気泡を含む旋回流は外筒と内筒とからなる二重筒の間隙を流動し、その断面積が急激に変化する凹凸部をラビリンスとして流動することによって吐出口付近まで旋回流のせん断変形が維持されてせん断力と圧力変動を生じて気泡がさらに分断され、大量の微細気泡が内筒と外筒の略円筒状の間隙を通して吐出口から安定して噴出させられる。よって,液体は凹凸部を有する円筒状の流路である間隙を通るから、従来の旋回式の微細気泡発生装置のように中心部に気体の渦芯が生じない。そのため、脈動を発生せず安定した微細気泡が得られる。
この場合、特に内筒が外筒の先端と面一または外筒の先端より突出しているから、吐出される微細気泡の中心軸線側に負圧が発生して逆流が生じるのを抑制でき、これによって微細気泡が粗大化するのを抑えて大量の微細気泡を発生できる。
【0008】
また、本発明による微細気泡発生装置は、内筒にはその先端に略テーパ形状をなす整流突出部が突出して配設されていることを特徴とする。
内筒にテーパ形状の整流突出部を設けることで、外筒と内筒からなる二重筒の間隙の吐出口から噴出される微細気泡は、更に整流突出部に沿って拡散しつつ流動することで、中心軸線側に負圧の発生や逆流を生じることなく微細気泡の粗大化を防止して、流動方向へ整流させることができる。
また、整流突出部の外表面は円錐形状に形成されていることが好ましい。
整流突出部の外表面が円錐形状で形成されていると、外筒と内筒の間隙の吐出口から噴出された微細気泡は円錐形状の整流突出部に沿って拡散しつつ流動することで、中心軸線側に負圧や逆流を生じることなく微細気泡の粗大化を防止して整流させることができる。
【0009】
また、本発明による微細気泡発生装置では、凹凸部は凸部と凹部が交互に配列されて形成され、凸部は3段以上形成されていることが好ましい。
外筒と内筒の間隙に設けた凹凸部が凸部を3段以上形成することで、内部空間から間隙を通して吐出口付近まで流動する微細気泡のせん断変形が凹凸部によって繰り返され、旋回流に混在して生成された気泡が一層微細化されることになる。
また、内筒の外周面に形成された凹凸部は、外筒の先端面に対向して凸部が配設されていることが好ましい。
外筒と内筒の二重筒で形成する間隙において、外筒の先端に対向する位置に凹凸部の凸部が形成されていることで、吐出口の径方向断面積が小さくなり、吐出口付近の間隙の領域に負圧が発生するのを防止できるから、微細気泡の逆流による合体を防いで、吐出口から噴出する微細気泡の粗大化を確実に防止できる。
また、整流突出部の先端角は30°〜45°の範囲に設定されていることが好ましい。
整流突出部の先端角が30°〜45°の範囲であれば、確実に外筒と内筒の間隙の吐出口付近での負圧の発生を防いで微細気泡を整流させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明による微細気泡発生装置によれば、気体導入部から導入された空気が旋回流によって小径化され,この小径化された気泡が外筒と内筒の凹凸部との間隙内を流動することによって微細化される。また,凹凸部を通過する際に,流体に溶存している空気も微細気泡となって生成するため、大量の微細気泡を安定して発生させることができる。しかも、外筒の先端に対して内筒の先端が面一またはより突出して形成することで、微細気泡の吐出口からの噴出時に中心軸線側での負圧による逆流発生を防止して微細気泡の合体による粗大化を確実に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第一実施形態による微細気泡発生装置の要部断面図である。
【図2】図1におけるA-A線断面図である。
【図3】図1における外筒と内筒の間隙と吐出口を示す部分拡大断面図である。
【図4】本発明の第二実施形態による微細気泡発生装置の要部断面図である。
【図5】本発明の第三実施形態による微細気泡発生装置の要部断面図である。
【図6】本発明の第四実施形態による微細気泡発生装置の要部断面図である。
【図7】微細気泡発生装置の内筒に整流突出部を設けた本発明の実施例1と実施例2と比較例1を示す、微細気泡の吐出及び流動状態を示す説明図であり、(a)は比較例1、(b)は第一実施形態に基づく実施例1、(c)は第二実施形態に基づく実施例2の断面図である。
【図8】微細気泡発生装置の内筒に整流突出部を設けた本発明の実施例3と実施例4と比較例2を示す、微細気泡の吐出及び流動状態を示す説明図であり、(a)は比較例2、(b)は第三実施形態に基づく実施例3、(c)は第四実施形態に基づく実施例4の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態について添付した図面を参照して説明する。図1乃至図3は本発明の第一実施形態である旋回流式の微細気泡発生装置1を示す。
本実施形態による微細気泡発生装置1は外筒3と内筒8との略二重筒構造である。図1に示すように、中心軸線Lに沿って延びる円筒状の内部空間2を有する外筒3を備えている。この外筒3は微細気泡と水を旋回流として吐出する吐出口3aを一方の端部に形成し、他方の端部は底部3bを有している。
外筒3の周面3cには底部3b近傍に水等の液体を供給する液体導入管4が設けられている。液体導入管4は中心軸線Lに直交する円形の断面の接線方向に向けて偏心して配設され(図2参照)、外筒3の内周面には内部空間2内に液体を導入して旋回流を生じさせる給液孔4aが形成されている。なお、本明細書において、中心軸線Lに沿った外筒3の吐出口3a方向を先端、先端側といい、底部3b方向を後端、後端側というものとする。
また、外筒3の底部3bには中心軸線Lに沿って気体として例えば空気を導入する気体導入管5が貫通して設けられている。気体導入管5は先端面が封止されており、外周面には内部空間2内に気体を導入する給気孔5aが周方向に等間隔(例えば90°間隔)に1または複数形成されている。
【0013】
外筒3の内部空間2内には例えば円筒状(円柱状でもよい)の内筒8が配設されており、その後端部は気体導入管5に連結されている。内筒8の後端部と外筒3の底部3bとの間には気体導入管5が配設されており、この領域の内部空間2は環状の基部空間2aを構成し、液体導入管4の給液孔4aと気体導入管5の吸気孔5aとが設けられている。そのため、給液孔4aから基部空間2aに導入される水によって旋回流が形成され、吸気孔5aから導入される空気は旋回流に巻き込まれてせん断されて微細な気泡として混入される。
また、図1及び図3に示すように、内筒8の外周面にはリング状の凸部9が中心軸線L方向に沿って所定間隔で例えば4つ形成されており、凸部9は外筒3の内周面とは非接触で微少な間隙が設けられている。また、凸部9と凸部9との間は凹部10を形成する。これら凸部9と凹部10とで凹凸部11を形成する。凹凸部11は外筒3の内周面との間に間隙13を形成する。
【0014】
この間隙13は中心軸線L方向に沿って交互に配列された凸部9と凹部10からなるラビリンスによって大きさが急激に変化する間隙急変部を構成する。凹凸部11の間隙13を通過する気泡を含む旋回流は、凸部9と凹部10で間隙13が急変することでせん断され、気泡が更に微細化された微細気泡を発生させる。このとき、凹凸部11では流体に溶存している空気も負圧発生に伴い微細気泡となって生成する。そして、間隙13は略円筒形状の流路を構成し、先端に形成された同じく略環状の吐出口3aと連通する。
本第一実施形態では、凸部9を中心軸線L方向に沿って凹部10を挟んで4段形成したが、凸部9は3段〜4段程度形成することが微細気泡の流通性を確保して且つせん断による気泡の微細化を促進する上で最も好ましい。
【0015】
内筒8の先端面は外筒3の吐出口3aを有する先端面と面一に形成されている。そして、図3に示すように、凹凸部11において、外筒3の吐出口3aに対向する内筒8の先端面には、凹凸部11の凸部9が配設されて径方向の隙間が小さく形成されるものとする。この凸部9によって、吐出口3aから外部に吐出する微細気泡が中心軸線L側に負圧を発生させて逆流を生じさせるのを抑制できる。
一方、内筒8の凹凸部11の先端に凹部10が形成されていると、径方向の隙間が増大するために微細気泡が吐出する際に、凹部10内に負圧が発生して逆流による渦巻きが発生し易く、流速が低下して微細気泡の合体を生じて気泡寸法が大きくなる原因になるので好ましくない。
【0016】
図1において、内筒8の先端面には内筒8と同軸に円錐形状の円錐殻14が整流突出部として設けられている。円錐殻12の先端角θは例えば30°〜45°の範囲に設定されている。先端角θをこの範囲に設定することで、外筒3と内筒8との間隙13から突出された微細気泡と水を含む噴流は円錐殻14のテーパ面に沿って前方に整流として噴出され、中心軸線L方向に負圧が生じて逆流を生じることを防止できる。
なお、円錐殻14の先端角θは適宜の角度に設定できるが、小さすぎると微細気泡発生装置1の全長が長くなり、大きすぎると中心軸線L側に微細気泡に逆流を生じさせる原因となる負圧が発生し易くなる。
【0017】
本実施形態による微細気泡発生装置1は上述の構成を備えており、次にその作用を説明する。
図1及び図2に示す微細気泡発生装置1において、水を液体導入管4から外筒3の内部空間2内へ導入する。また、気体導入管5から空気を外筒3の内部空間2内と導入する。すると、液体導入管4から導入された水は、気体導入管5の外周面と外筒3の内周面との間の内部空間2内の環状の基部空間2a内を流動し、旋回流が発生して発達することになる。そして、気体導入管5の外周面の給気孔5aから基部空間2a内の径方向に導入された空気は、この旋回流のせん断力によって分断される。
【0018】
このようにして、微細な気泡を含む旋回流が基部空間2aで気体導入管5の周りに渦流を形成して発達し、内部空間2内を外筒3と内筒8との間隙13内を流路として吐出口3a方向に旋回しながら進行していく。外筒3の内周面と内筒8の凹凸部11との間の間隙13を進行する旋回流は、間隙13内で進行方向に交互に配設された凸部9と凹部10とで断面積が交互に急変するため、より大きなせん断流れを生じ、気泡が剪断されて更に微細化された微細気泡が発生することになる。しかも、凹凸部11による間隙急変部によって圧力変動が生じるため、この圧力変動作用によっても更に微細気泡が微細化される。
【0019】
そして、外筒3と内筒8からなる二重筒で形成される間隙13を通って吐出口3aから外部に噴出された微細気泡は、ほぼ円筒状の噴流を形成する。このとき、断面積の小さな二重筒の間隙13から外部に放出された際にも、流速の大きく異なるせん断流れが生じることになり、微細気泡が発生することになる。
内筒8の先端には円錐形の円錐殻14を設けて略円筒状の噴流が中心軸線L側の負圧によって巻込まれるのを防ぐ。これにより、円筒状をなす微細気泡は円錐殻14のテーパ面に沿って前方に拡散しつつ噴出することになる。
なお、気泡径は、写真撮影による読取、レーザを用いた測定装置等によって測定可能である。また、気泡径と浮上速度、気泡径と溶解速度の関係から、観察によって凡その気泡径を推定することも可能である。
【0020】
上述のように、本実施形態による微細気泡発生装置1によれば、二重筒を構成する外筒3と内筒8の凹凸部11とで形成される間隙13内を旋回流が流通する際、交互に配設された凸部9と凹部10によって径方向速度を得て混流し且つ凹凸部11のラビリンスによる急縮小急拡大によって、せん断及び圧力変動の作用を受けて気泡を細分化することができる。また、間隙13及び吐出口3aは環状であるから大量の微細気泡を吐出できる。
そして、外筒3と内筒8の間隙13を通って吐出口3aから噴出した微細気泡は、間隙13から外部に噴出し、周囲の流体との速度差によるせん断流れが生じ、更に微細気泡を発生させることができる。
【0021】
しかも、間隙13の外側には内筒8に続く円錐殻14が設けられているから、吐出口3a近辺で中心軸線L側に負圧が発生せず微細気泡の逆流を確実に防止して脈動を抑制できる。そして、吐出口3aから噴出された微細気泡は、円錐殻14のテーパ面に沿って前方に拡散しつつ流動することになり、微細気泡同士の合体による気泡の粗大化を防止することができる。
更に、外筒3の吐出口3aに対向する内筒8の先端面には凸部9が配設されて隙間が小さいから、これによっても吐出口3a近辺に負圧が発生するのを抑制し、外部に吐出する微細気泡が逆流するのを防止できる。一方、外筒3の先端に対向する内筒8の先端に凹部10が形成されていると、微細気泡が吐出する際に負圧が発生して、凹部10内や近辺に逆流による渦巻きが発生し易く、流速が低下して微細気泡の合体を生じて気泡寸法が大きくなるおそれが生じる。
【0022】
さらに、本実施形態による微細気泡発生装置1は、内部空間2において内筒8の後端部と外筒3の底部3bとの間に気体導入部5による円環状の基部空間2aが形成されているから、液体導入管4から導入される水は旋回流を形成して気体導入管5の給気孔5aから径方向外側に導入される空気を巻き込んで略円筒状の間隙13に誘導させる。そのため、旋回流が発生・発達し易くなる。
しかも、給気孔5aから内部空間2内に導入された気体は、水の旋回流によってせん断力を受けた状態で液体中に混入することになり、給気孔5aから流入する気泡の小径化を図ることができる。
また、円錐殻14の先端角θが30°〜45°の範囲に設定されているから、微細気泡発生装置1の間隙13から外部に噴出された微細気泡は、円錐殻14のテーパ面にガイドされて拡散しつつ噴出されるから、微細気泡の合体を防いで微細気泡を安定して整流させることができる。
【0023】
次に本発明の他の実施形態について説明するが、上述した第一実施形態による微細気泡発生装置1と同一または同様な部材、部分には同一の符号を用いてその説明を省略する。
図4は本発明の第二実施形態による微細気泡発生装置16を示す断面図である。この微細気泡発生装置16において、内筒8は外筒3の吐出口3aより前方に突出して形成されている。内筒8の凹凸部11は外筒3の先端面に対向して凸部9が設けられている。
そして、内筒8の先端には、整流突出部として階段状円錐殻17が設けられている。階段状円錐殻17は、円筒状の基部17aを有する円錐殻14が内筒8の先端に設けられ、この円錐殻14のテーパ面には断面階段状の段部18が多数段形成されて構成されている。そのため、階段状円錐殻17の段部18は中心軸線Lと同軸をなす円板が中心軸線Lの前方に向かって次第に外径を小さくして多数配列された形状とされている。
階段状円錐殻17において、円錐殻14のテーパ面を段部18に形成することで加工が容易になる。
【0024】
本実施形態による微細気泡発生装置16は上述の構成を備えているから、液体導入管4から外筒の内部空間2の基部空間2a内に導入されて旋回流をなし、気体導入管5の給気管5aから導入された空気を巻き込んでせん断し、微細な気泡を発生させる。そして、旋回流は内筒8と外筒3との間隙13内を吐出口3a方向に旋回しながら流通し、内筒8の凹凸部11による間隙急変部を通過することで、断面積の急変による剪断力を受けて更に気泡が微細化され、先端の吐出口3aから微細気泡が吐出される。
そして、本実施形態では、内筒8が外筒3の先端よりも外側に突出しているから、間隙13から吐出された微細気泡は外筒3から突出する内筒8の凹凸部11で負圧による逆流を生じさせることなく、せん断を受けながら前方に流動し、更に微細化される。次に、内筒8から階段状円錐殻17に流出した微細気泡は、階段状円錐殻17のテーパ状の段部18に沿って拡散しながら速度が低下する。
【0025】
従って、本第二実施形態による微細気泡発生装置16は、上述した第一実施形態による微細気泡発生装置1と同様の効果を奏する。
【0026】
なお、上述の微細気泡発止装置16では、整流突出部として円錐殻14に段部18を形成したが、第一実施形態と同様に段部18は形成しなくてもよい。逆に、第一実施形態において、円錐殻14のテーパ面に段部18を形成してもよい。
【0027】
次に本発明の第三実施形態による微細気泡発生装置20について、図5により説明する。本実施形態による微細気泡発生装置20は、第一実施形態における微細気泡発生装置1の構成において、内筒8に円錐殻14を取り付けない構成である。そして、内筒8の先端面は外筒3の先端面と面一に形成され、外筒3の先端に対向して凹凸部11の凸部9が配設されている。
本実施形態による微細気泡発生装置20では、外筒3と内筒8との間隙13から外部へ吐出される微細気泡は拡散されつつ前方に噴出される。噴出される微細気泡の流れは中心軸線L側に小さな負圧が発生して一部の微細気泡の流れに逆流が生じる点で、上述した第一及び第二実施形態による微細気泡発生装置1,16より微細気泡の微細化と発生量が若干劣る。しかしながら、外筒3と内筒8の各先端面が面一に形成されていることで、逆流の発生と微細気泡の粗大化を小さく抑制できる。そのため、従来技術による小径の吐出口から吐出する微細気泡と比較して、より微細化された微細気泡をより多量に発生させることができる。
【0028】
次に本発明の第四実施形態による微細気泡発生装置22について、図6により説明する。本実施形態による微細気泡発生装置22は、第二実施形態における微細気泡発生装置17の構成において、内筒8に階段状円錐殻17を取り付けない構成である。そして、内筒8の先端面は外筒3の先端面よりも前方に突出して形成されている。外筒3の先端面に対向する内筒8の外周面には凸部9が配設されている。
本実施形態による微細気泡発生装置22は、外筒3と内筒8との間隙13を通して微細気泡が吐出口3aから外部へ吐出され、外筒3より突出して設けられた内筒8の凹凸部11によって微細気泡はせん断されて更に微細化される。
【0029】
そして、微細気泡は内筒8の先端から更に前方に噴出されて拡散される。外筒3及び内筒8の間隙13と外筒3より突出した内筒8の凹凸部11でせん断力を受けて微細化された微細気泡は速度が低下している。内筒8の先端から噴出される微細気泡の流れは中心軸線L側に生じる負圧は小さく逆流も極めて小さい。そのため、逆流によって微細気泡が合体して粗大化することは抑制される。
そのため、本実施形態による微細気泡発生装置22は、第三実施形態による微細気泡発生装置20よりも、より微細化された微細気泡を多量に発生させることができる。
なお、上述の第二、第四実施形態では、内筒8が外筒3の先端面よりも突出しているから、外筒3の先端に対向して内筒8に凸部9が設けられていなくてもよい。
【0030】
ところで、本発明の各実施形態において、内筒8の外周面に設けた凹凸部11について、凸部9を凹部10を挟んで4〜10段設けるようにしたが、少なくとも1段または2段以上設ければ本発明における旋回流に含まれる微細気泡のせん断流通作用を発揮できる。ここで、凹凸を複数段設けると、一段目の凸部9及び凹部10で大きい気泡が通過した場合でも二段目の凸部9及び凹部10で気泡の微細化が期待できる。また、内筒8の凹凸部11の先端が凸部9であるほうが負圧となる中心軸線L側に回り込む流れが抑えられる。間隙13の流路内で気泡のせん断作用を発揮するためには、凸部9は3段以上設けることが望ましい。なお、多すぎる場合には圧力降下が増大するため,液体の供給圧力に応じて段数が定まる.
【実施例】
【0031】
次に上述した各実施形態について微細気泡の噴出試験を行い、噴出された各微細気泡の流動状況を、照明光を照射して写真撮影することで測定した。
外筒3と内筒8は内部の状況を観察できるようにアクリルで作成した。また円錐殻14はアクリルで加工し,内筒8と嵌合で固定した.なお円錐殻14は円錐部の加工を容易にするため、階段状に加工して略円錐形状を成すようにしている.またポンプから供給される水の圧力は0.2〜0.27MPaである。
図7(a)、(b)、(c)は比較例1と実施例1,2とをそれぞれ示すものである。実施例1は第一実施形態による微細気泡発生装置1において、円錐殻14に段部18を設けた構成であり、内筒8は先端面が外筒3と面一に形成されている。実施例2は第二実施形態による微細気泡発生装置16であり、内筒8は先端面が外筒3より前方に突出して形成されている。比較例1は実施例1,2と同様な構成であるが、内筒8の先端は外筒3の先端面より後端側に引っ込んでいる。
これら実施例1,2と比較例1について、供給する水は水道水を用い、水と空気は同一条件に設定して、微細気泡を連続して吐出した状態を照明光によって照明した。微細気泡の噴出状態を写真撮影し、これに基づいて図7(a)、(b)、(c)で微細気泡の流動状況を実線によって示した。
【0032】
試験の結果、比較例1では、図7(a)に示すように、内筒8の先端面が外筒3の吐出口3aより内側に引っ込んでいるため、噴出する微細気泡の流れに対して、内筒8の前方の中心軸線L側に負圧によると見られる小さな渦巻きの発生が確認された。そのため、発生する微細気泡が逆流によって合体を生じ、比較的微細気泡の粒径が粗大化されていた。
これに対し、実施例1では、外筒3と内筒8の間隙13を通して吐出口3aから吐出される微細気泡は吐出口3aの近傍で負圧による逆流を発生することなく、前方に拡散しつつ流動した。そのため、微細気泡は照明光が照射された状態で霧状に微細化されており、粗大化されたものは見られなかった。実施例2では、実施例1と同様に外筒3と内筒8の吐出口3aから吐出される微細気泡は負圧による逆流を発生することなく、前方に拡散しつつ整流されて流動した。微細気泡は照明光が照射された状態で実施例1よりも更に微細化されていた。
これらの試験結果から、内筒8の先端面を外筒3の先端面と面一または外筒3より突出させた構成を採用すれば、微細気泡を粗大化させることなく微細化を促進して大量の微細気泡を発生させることができることを確認できた。
【0033】
次に、図8(a)、(b)、(c)は比較例2と実施例3,4とをそれぞれ示すものである。実施例2は第三実施形態による微細気泡発生装置20であり、円錐殻14を設けないで、内筒8は先端面が外筒3と面一に形成されている。実施例4は第四実施形態による微細気泡発生装置22であり、内筒8は先端面が外筒3より前方に突出して形成されている。比較例2は実施例3,4と同様な構成であるが、内筒8の先端は外筒3の先端面より後端側に引っ込んでいる。
これら実施例3,4と比較例2について、供給する水は水道水を用い、水と空気は同一条件に設定して、微細気泡を連続して吐出した状態を照明光によって照明した。微細気泡の噴出状態を写真撮影し、これに基づいて図8(a)、(b)、(c)で微細気泡の流動状況を実線によって示した。
【0034】
試験の結果、比較例2では、図8(a)に示すように、内筒8の先端面が外筒3の吐出口3aより内側に引っ込んでいるため、間隙13から噴出する微細気泡の流れに対して、内筒8の前方の中心軸線L側に負圧によると見られる比較的大きな渦巻きの発生が確認された。そのため、発生する微細気泡が逆流によって合体を生じ、比較例1と比較しても更に粗大化された粒径の微細気泡が確認された。
これに対し、実施例3では、外筒3と内筒8の間隙13を通して吐出口3aから吐出される微細気泡は吐出口3aの近傍で小さな渦巻きが確認されたが、殆どは前方に拡散しつつ流動した。そのため、微細気泡は照明光が照射された状態で比較例2や1と比較してより微細化されており、粗大化されたものは見られなかった。
実施例4では、実施例3と同様に外筒3と内筒8の間隙13を通して吐出口3aから吐出される微細気泡は内筒8の前方でわずかな渦巻きが発生したが、殆どは前方に拡散しつつ流動した。微細気泡は照明光が照射された状態で実施例3よりも更に微細化されており、粗大化されたものは見られなかった。
【0035】
これらの試験結果から、実施例1〜4では、円錐殻14や階段円錐殻17の有無に関わらず、内筒8の先端面を外筒3の先端面と面一または外筒3より突出させた構成を採用したから、微細気泡の微細化を促進して大量の微細気泡を発生させることができることを確認できた。一方で、比較例1,2に示すように、内筒8が外筒3よりも引っ込んでいるとその空間で、微細気泡の噴出流による負圧に起因する逆流による渦巻きが発生し、これによって微細気泡同士が合体して粗大化する不具合が生じた。
【符号の説明】
【0036】
1、16、20、22 微細気泡発生装置
2 内部空間
2a 基部空間
3 外筒
4 液体導入管
4a 給液孔
5 気体導入管
5a 吸気孔
8 内筒
9 凸部
10 凹部
11 凹凸部
13 間隙
14 円錐殻
17 階段状円錐殻
18 段部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面が円形をなす内部空間を有していてこの内部空間の一端側に吐出口を有する外筒と、前記内部空間内に偏心した位置から液体を導入して旋回流を生じさせる液体導入部と、前記内部空間に気体を導入する気体導入部とを備え、内部空間での液体の旋回流によって気体が分裂して微細気泡を発生させて前記吐出口から噴出させるようにした微細気泡発生装置であって、
前記外筒の内部空間に挿入されていてその外周面に形成した凹凸部と前記外筒の内周面との間隙を旋回流の流路とする内筒を備えていて、前記内筒の先端は外筒の先端と面一または外筒の先端より外側に突出していることを特徴とする微細気泡発生装置。
【請求項2】
前記内筒にはその先端に略テーパ形状をなす整流突出部が突出して配設されている請求項1に記載された微細気泡発生装置。
【請求項3】
前記整流突出部の外表面は円錐形状に形成されている請求項2に記載された微細気泡発生装置。
【請求項4】
前記凹凸部は凸部と凹部が交互に配列されて形成され、凸部は3段以上形成されている請求項1乃至3のいずれかに記載された微細気泡発生装置。
【請求項5】
前記内筒の外周面に形成された前記凹凸部は、外筒の先端に対向する位置に凸部が配設されている請求項1乃至4のいずれかに記載された微細気泡発生装置。
【請求項6】
前記整流突出部の先端角は30°〜45°の範囲に設定されている請求項2乃至5のいずれかに記載された微細気泡発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−234242(P2010−234242A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84285(P2009−84285)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】