説明

微細紙粉含有樹脂組成物の製造方法

【課題】良好な流動性を有し、成形加工用の素材として良好な微細紙粉含有樹脂組成物を得ることが可能な微細紙粉含有樹脂組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】平均粒径が10〜100μmの微細紙粉を20〜70重量部、熱可塑性合成樹脂を30〜80重量部有し、微細紙粉及び熱可塑性合成樹脂の合計が100重量部である原材料を、スクリュー11,12の少なくとも一部がロータ部11b,12bである非噛合型異方向回転2軸混練押出機10を用いて、210℃以下の温度で混練させて、成形用微細紙粉含有樹脂組成物を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細紙粉が均一に分散されて樹脂に含有された微細紙粉含有樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、オフィス、出版社、製紙会社などから大量の廃紙が排出されている。紙は、一般的に木材などからの加工段階で、セルロース繊維を細かく柔らかくする高度な加工を受けており、付加価値の高い構造を有する機能性材料である。そのため、廃紙は、元来付加価値の高い構造を有する機能性材料であり、その上、環境負荷が実質ゼロの原料となる。そこで、粉砕した廃紙を樹脂に混在させた紙含有樹脂組成物を成形加工の素材として用いることが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、少なくとも片面にポリエチレン樹脂層を有する複合紙を1mmから5mm角程度に細断して得られた細断紙成分と、この細断紙成分が50重量%以上となるようポリエチレンなどの樹脂とを混合させて紙含有樹脂ペレットを得ることが開示されている。
【0004】
特許文献2には、古紙などを粉砕して粒径を50μm以上200μm以下とした粉状の紙パウダーを主成分とする低燃焼熱成分を50重量%超過70重量%以下、主として熱可塑性樹脂からなる高燃焼熱成分を30重量%以上50重量%未満含有する成形加工用の紙含有樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−138241号公報
【特許文献2】特開2001−181511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、流動性のない紙成分は溶融樹脂の流動を妨げる。そのため、特許文献1に開示された紙含有樹脂ペレットや特許文献2に開示された成形加工用の紙含有樹脂組成物を用いて複雑な成形品を射出成形で成形した場合、充填不良などの欠陥が生じ易く、転写性も劣り、良好な成形品を得ることができない。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、良好な流動性を有し、成形加工用の素材として良好な微細紙粉含有樹脂組成物を得ることが可能な微細紙粉含有樹脂組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の微細紙粉含有樹脂組成物の製造方法は、平均粒径が10〜100μmの微細紙粉を20〜70重量部、熱可塑性合成樹脂を30〜80重量部有し、前記微細紙粉及び前記熱可塑性合成樹脂の合計が100重量部である原材料を、スクリューの少なくとも一部にロータ部を有する非噛合型異方向回転2軸混練押出機を用いて、210℃以下の温度で混練させて、成形用微細紙粉含有樹脂組成物を得ることを特徴とする。
【0009】
本発明の微細紙粉含有樹脂組成物の製造方法によれば、得られた微細紙粉含有樹脂組成物は、10〜100μmと極めて小さな平均粒径の微細紙粉を含有するので、成形加工したとき、転写性が優れ、成形加工用の良好な素材となり得る。しかし、従来の噛合型2軸混練押出機を用いて原材料を混練した場合、流動性のない微細紙粉は、混練中に凝集し、不均一に樹脂に混和される。
【0010】
そこで、スクリューの少なくとも一部に密閉式混練機であるバンバリミキサ(登録商標)式構造のロータ部を有する非噛合型異方向回転2軸混練押出機を用いて、原材料を混練する。これにより、原材料は、バンバリミキサ式に強く混練され、その後非噛合型のロータ構造の隙間で解放されることが繰り返されるので、ロータによる混和物の繰り返しの切り返し運動により、微細紙粉は、凝集せず、均一に分散されて樹脂に混和される。
【0011】
さらに、従来の完全噛合型2軸混練押出機と比較して、混和物の高温化を抑制することができ、最高温度が210℃以下の温度で混練することが可能となる。よって、紙成分が熱劣化して、得られる微細紙粉含有樹脂組成物に黄変や焦げ臭が発生することを防止することができる。
【0012】
なお、非噛合型異方向回転2軸混練押出機とは、2本の前記スクリューがそれぞれ有する前記ロータ部は、前記スクリューの軸心に垂直な断面において短径方向と長径方向とが直交する同一断面形状を有し、且つ、一方の前記ロータ部の長径方向の外面の回転領域内に、他方の前記ロータ部の長径方向の外面が入り込まないように配置されると共に、前記2本のスクリューは前記ロータ部の長径方向が互いに直交するようにして異方向に回転するものである。
【0013】
また、本発明の微細紙粉含有樹脂組成物の製造方法において、前記熱可塑性合成樹脂が、ポリオレフィン系合成樹脂、ポリスチレン系合成樹脂、又はポリ乳酸系合成樹脂であることが好ましい。そして、この場合、前記ポリオレフィン系合成樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はこれらの混合物であることが好ましい。
【0014】
また、本発明の微細紙粉含有樹脂組成物の製造方法において、前記原材料は、無水マレイン酸基を有する化合物を0.3〜5重量部有することが好ましい。これにより、得られる微細紙粉含有樹脂組成物の物性を良好に改質することが可能となる。
【0015】
本発明の微細紙粉含有樹脂組成物は、射出成形や押出成形などで成形する成形品の材料として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る微細紙粉含有樹脂組成物の製造方法で使用される混練押出機を示す概略図。
【図2】図1のII−II線における断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態に係る微細紙粉含有樹脂組成物の製造方法について説明する。
【0018】
本微細紙粉含有樹脂組成物の製造方法で用いられる原材料は、紙片やパルプシート片などを平均粒径10〜100μmに微細粉砕した微細紙粉20〜70重量部と、ペレット状や粉末状などの熱可塑性合成樹脂からなる樹脂材料30〜80重量部とを有している。微細紙粉及び熱可塑性合成樹脂の合計は100重量部である。紙片やパルプシート片などの粉砕方法は、限定されないが、例えば、竪型ローラミルや薬研式ミルなどを用いて微細粉砕することができる。
【0019】
なお、平均粒径は、株式会社セイシン企業製のレーザー回折・散乱式粒度分布測定装置LMS−350で測定した値である。
【0020】
微細紙粉の平均粒径が100μmを超えると、微細紙粉が混練中に凝集するおそれが高まり、溶融樹脂の流動性が低下し、且つ、得られる微細紙粉含有樹脂組成物の強度が低下する。逆に、微細紙粉の平均粒径が10μm未満であると、流動性及び強度は良好になるが、微細紙粉を製造することが非常に困難になり、大幅に製造コストが上昇する。
【0021】
微細紙粉及び熱可塑性合成樹脂の合計が100重量部である場合において、微細紙粉が70重量部を超える場合又は樹脂材料が30重量部未満の場合は、流動性のない微細紙粉が大部分を占めるので、混和物の流動性が低下し、且つ、得られる微細紙粉含有樹脂組成物の強度が低下する。また、得られる微細紙粉含有樹脂組成物は、その大部分が紙成分からなるので、その強度が低く、脆弱となる。
【0022】
一方、微細紙粉が20重量部未満又は樹脂材料が80重量部を超える場合は、得られる微細紙粉含有樹脂組成物の耐熱軟化性が劣る。また、この場合、微細紙粉の有する柔軟性構造に基づく微細紙粉含有樹脂組成物の成形時の歪み吸収性など紙成分の機能発現が抑制され、環境性能も低下する。
【0023】
微細紙粉は、廃紙を微細粉砕したものであることが好ましい。これは、廃紙は、オフィス、出版社、製紙会社などから大量に排出され、環境負荷が実質ゼロであると評価されるためである。廃紙は、例えば、新聞古紙、雑誌古紙、印刷古紙、包装古紙、段ボール古紙、OA古紙などの各種古紙、バージン紙の製造時に発生した破紙や損紙、雑誌などの裁断屑、研摩粉、シュレッダー屑等である。また、微細紙粉は、パルプシートを微細粉砕したものであってもよい。
【0024】
樹脂材料は、熱可塑性合成樹脂であればよいが、ポリオレフィン系合成樹脂、ポリスチレン系合成樹脂、又はポリ乳酸系合成樹脂であることが好ましい。
【0025】
ポリオレフィン系合成樹脂として、ポリプロピレン、ポリエチレン、又はこれらの混合物が挙げられる。ポリプロピレンとして、ブロック重合ポリプロピレン、ランダム重合ポリプロピレン、ホモ重合ポリプロピレン、メタロセン触媒重合ポリプロピレン、キャタロイプロセスポリプロピレン、変成ポリプロピレンなどを使用することができる。ポリエチレンとして、低密度ポリエチレン、リニア低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、メタロセン触媒ポリエチレン、変成ポリエチレン、エチレンビニルアセテート(EVA)を使用することができる。
【0026】
ポリスチレン系合成樹脂として、PS樹脂(ポリスチレン樹脂)、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合合成樹脂)、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合合成樹脂)などが挙げられる。
【0027】
さらに、原料に、微細紙粉含有樹脂組成物を改質するために、他種の合成樹脂、ゴム、熱可塑性エストラマーなどを20重量部以下添加してもよい。
【0028】
また、原材料に、必要に応じて添加剤を0.3〜5重量部添加してもよい。添加剤として、例えば、酸化防止剤、滑剤、消臭剤、漂白剤、着色剤を添加することができる。
【0029】
特に、樹脂改質剤を含有することが好ましい。樹脂改質剤は、無水マレイン酸基を有する化合物、例えば、マレイン酸変性ポリオレフィン、オレフィン−無水マレイン酸共重合体、マレイン酸変性ワックス、マレイン酸エステル変性ワックスなどであることが好ましい。これらの樹脂改質剤は、樹脂材料、特にポリオレフィン系合成樹脂と混合して極性基を導入し、微細紙粉と樹脂材料との相溶性が高まるので、分散性が向上する。
【0030】
また、酸化防止剤としては、例えば、フェノール系、リン系及びイオウ系の酸化防止剤を添加すればよい。滑剤としては、例えば、第1級アミド、第2級アミド、エチレンビスアミド、ステアリン酸金属塩、ヒドロキシステアリン酸金属塩を添加すればよい。
【0031】
また、原材料に、必要に応じて、無機充填材である酸化チタン、タルク、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏、クレーなどを添加してもよい。
【0032】
本発明の実施形態に係る微細紙粉含有樹脂組成物の製造方法では、混練押出機を用いて、210℃以下の温度で原材料を混練して、成形用微細紙粉含有樹脂組成物を得る。
【0033】
以下、本発明の実施形態で使用される混練押出機10について図1及び図2を参照して説明する。
【0034】
混練押出機10は、非噛合型異方向回転2軸混練押出機であり、2本のスクリュー11,12が、ケーシング13に並列に形成された断面円状の通路14,15にそれぞれ回転可能に配置されている。2本のスクリュー11,12は、ケーシング13の外部に設置された図示しない駆動装置によって、図2に示すように、内回り異方向に回転するように構成されている。
【0035】
ケーシング13の上流端部には、各通路14,15に連通する材料供給口16が形成されている。この材料供給口16を介して、ケーシング13外の図示しない供給装置から微細紙粉及び樹脂材料を含む原材料が、通路14,15内に供給される。
【0036】
また、図示しないが、通路14,15内を流れる原材料を最高210℃以下の温度まで加熱するために、ケーシング13の外周を取り囲むように加熱装置が設けられている。
【0037】
原材料は、通路14,15内で加熱装置によって加熱され、室温から徐々に昇温され、微細紙粉が半溶融又は溶融した樹脂材料に混和されながら、2本のスクリュー11,12によって上流側から下流端に接続されたダイス17の方へ順次移送される。そして、軟化状態の微細紙粉含有樹脂組成物がダイス17の出口から外部にシート状に押出される。ただし、微細紙粉は半溶融も溶融もされない。
【0038】
各スクリュー11,12は、その間に隙間を有する非噛合型である。各スクリュー11,12は、スクリュー溝が外周面に形成されたスクリュー部11a,12aを有している。また、各スクリュー11,12の一部はロータ部11b,12bになっている。このように、各スクリュー11,12には、それぞれスクリュー部11a,12aと、ロータ部11b,12bが、長手方向に交互に複数設けられている。ここでは、各スクリュー11,12には、それぞれ3つのスクリュー部11a,12aと、2つのロータ部11b,12bが設けられている。
【0039】
スクリュー部11a,12aは、通路14,15を介して材料供給口16から供給された原材料を下流側に移送する。
【0040】
図2に示すように、ロータ部11b,12bが内部に配置された通路14,15の部分では、これら通路14,15が連接している。そして、ロータ部11b,12bの最大外径部と通路14,15の内壁面との隙間は狭く設定されている。これにより、隣接するロータ部11b,12bとこれらが配置された通路14,15によって、樹脂材料などの原材料が圧縮、すり潰し、解放されて、微細紙粉と混練される。
【0041】
詳細に説明すると、ロータ部11b,12bとは、それぞれ、軸心に垂直な断面において、特定方向が短径となり、この短径方向と直交する方向が長径となる同じ断面形状を有している。そして、ロータ部11b,12bとは、一方のロータ部の長径方向の外面の回転領域内に、他方のロータ部の長径方向の外面が入り込まないようにして、互いに噛み合わないように配置されている。スクリュー11,12は、ロータ部11b,12bの長径方向が互いに直交するようにして異方向に回転する。
【0042】
樹脂材料などの原材料は、高速回転するロータ部11b,12bの外面及び通路14,15の内面の間で、連続的に圧縮、すり潰し、解放の各工程を経るというバンバリミキサ(登録商標)式に混練される。これにより、溶融しない微細紙粉を凝集させずに溶融樹脂に均一に分散させて混和させることができる。
【0043】
ところで、従来の噛合型2軸押出混練機を用いた場合、完全噛合するディスク状ニーディングユニット部間で原材料を高圧縮、剪断して溶融、混練するので、高速運転を行うと、発熱が大きくなり混合物の温度が高温になる。そのため、紙成分が熱劣化して黄変や異臭が生じる。低速運転を行うと、生産効率が劣る。
【0044】
一方、本混練押出機10では、原材料は、圧縮、すり潰し、解放が比較的短時間で行われ、且つ、非噛合型のロータ部11b,12bの隙間で必ず解放される。これにより、上記従来の噛合型2軸混練押出機と比較して温度を10〜20℃低下させることができる。よって、温度が210℃以下と比較的低温で混練することが可能となり、紙成分が熱劣化して、微細紙粉含有樹脂組成物に黄変や焦げ臭が発生することを防止することができる。
【0045】
さらに、2本のスクリュー11,12は、非噛合型であるので高速回転が可能であり、且つ、バンバリミキサ型であるので混練性に優れる。よって、混練押出機10は、従来の噛合型2軸押出混練機と比較して、吐出量が大きく、生産効率に優れる。
【0046】
微細紙粉は、嵩比重が非常に小さいので多量の空気を含み、また、含有水分が多いので加熱されると多量の水蒸気が発生する。また、樹脂材料など他の原材料も、空気を含み、水分が付着している。そこで、これら空気や水蒸気などの気体を脱気するために、ケーシング13には、通路14,15に連通するオープンベント18が設けられている。混練などで発生した空気や水蒸気などの気体は、オープンベント18を介して大気中に放出される。
【0047】
そして、下流寄りのケーシング13には、通路14,15に連通する真空脱気ベント19が設けられている。真空脱気ベント19には、図示しない真空ポンプに接続されている。混練などで発生した空気や水蒸気などの気体は、真空脱気ベント19によって強制排気される。
【0048】
これらのベント18,19により空気や水蒸気などの気体が良好に脱気されるので、非常に高い吸湿性を有する微細紙粉に水分が吸収されること、及び得られる微細紙粉含有樹脂組成物に空気や水蒸気などの気体が含まれることが防止される。そのため、得られる微細紙粉含有樹脂組成物の品質が向上すると共に、吐出量も向上する。
【0049】
通路14,15の下流端は、ケーシング13に形成された吐出口20と連通している。そして、吐出口20の下流側には、スリット状の出口を有するダイス17が接続されている。このダイス17によって、軟化状態の微細紙粉含有樹脂組成物がシート状となって押出される。
【0050】
混練押出機10から押出されたシート状の微細紙粉含有樹脂組成物は、図示しないが、複数のローラを備える冷却引取機に引き取られ、ローラに掛け渡されながら冷却固化され、その後、シート巻取機により巻き取られる。
【0051】
このようにして形成された微細紙粉含有樹脂組成物シートは、引張強度、伸び率等に優れ、成形用素材として良好なものとなる。そして、このシートは平均粒径10〜100μmの微細紙粉を含有した樹脂からなるので、転写性が優れ、さらに成型加工すれば、高品質の成型品を得ることができる。
【0052】
なお、微細紙粉含有樹脂組成物は、シート状でなく、ペレット状に形成することもできる。この場合、丸孔状の出口を有するダイス17を吐出口20の下流側に接続する。これにより、ダイス17から軟化状態の微細紙粉含有樹脂組成物が円柱状に押出され、これを水槽で固化した後、切断機で切断して、ペレット状に形成する。また、ホットカット式のペレット製造機を使用してもよい。そして、このようにして製造されたペレットを用いて、シート状などの微細紙粉含有樹脂組成物を形成してもよい。
【0053】
さらに、シート状やペレット状などに形成した微細紙粉含有樹脂組成物を、射出成形、ブロー成形、インフレーション成形、真空成形、圧縮成形、溶融圧縮成形、プレス成形などの成形加工で、所望の成形品に成形することができる。
【0054】
本発明は、上記の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【実施例】
【0055】
以下、本発明の実施例を具体的に挙げ、本発明を説明する。
【0056】
[実施例1−7及び比較例1]
実施例1−7及び比較例1では、平均粒径10μm、30μm、50μm、100μmの微細紙粉を表1に示した重量部、ポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製MA−03)を表1に示した重量部、ポリエチレン(日本ポリエチ株式会社製UF−421)を10重量部、酸化防止剤(株式会社ADEKA製アデカスタブAO−60)を1重量部、ステアリン酸カルシウムを1重量部含む原材料を用意した。なお、微細紙粉の平均粒径は、株式会社セイシン企業製のレーザー回折・散乱式粒度分布測定装置LMS−350で測定した。
【0057】
そして、これらの原材料を、上述した混練押出機10を用いてシート状に押出成形した。得られた微細紙粉含有樹脂組成物シートについて、JIS K7210で規定された測定方法で、メルトフローレート(MFR)を測定した。また、得られた微細紙粉含有樹脂組成物シート状成形品について、アイゾット衝撃試験でアイゾット衝撃値を測定した。これらの測定値を表1の各欄に記載した。
【0058】
表1から理解されるように、実施例1−7のように、平均粒径10〜100μmの微細紙粉を20〜70重量部、且つ、ポリプロピレンとポリエチレンとを合計30〜80重量部を有する原材料を用いた場合には、得られた微細紙粉含有樹脂組成物シートは、メルトフローレートが1.1〜15gr/10minと流動性が良好であり、アイゾット衝撃値が2.1〜12KJ/mと強度も良好であり、脆弱ではなかった。
【0059】
一方、比較例1のように、平均粒径50μmの微細紙粉を80重量部、且つ、ポリプロピレンとポリエチレンとを合計20重量部を有する原材料を用いた場合には、得られた微細紙粉含有樹脂組成物シートは、メルトフローレートが0.1gr/10minと流動性が低く、アイゾット衝撃値が0.5KJ/mと脆弱であった。
【0060】
【表1】

【0061】
[実施例8,9及び比較例2,3]
実施例8,9及び比較例2,3では、平均粒径50μmの微細紙粉を表2に示した重量部、ポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製MA−03)を表2に示した重量部、ポリエチレン(日本ポリエチ株式会社製UF−421)を10重量部、酸化防止剤(株式会社ADEKA製アデカスタブAO−60)を1重量部、ステアリン酸カルシウムを1重量部含む原材料を用意した。このように、実施例8と比較例2との原材料は同一であり、実施例9と比較例3との原材料は同一であった。なお、微細紙粉の平均粒径は、株式会社セイシン企業製のレーザー回折・散乱式粒度分布測定装置LMS−350で測定した。
【0062】
そして、実施例8,9では、この原材料を、上述した混練押出機10を用いてシート状に押出成形した。一方、比較例2,3では、この原材料を、同方向回転完全噛合型のニーディングディスク部を有する従来の2軸混練押出機を用いて、シート状に押出形成した。
【0063】
これらの混練押出機は、共に、ロータ部又はニーディングディスク部の直径は50mm、スクリューの全長/直径比は44、スクリューの回転数は150rpm、通路内の設定温度は180〜190℃であり、オープンベントと真空脱気ベントとをそれぞれ1個備える。
【0064】
そして、混練押出機から吐出された微細紙粉含有樹脂組成物の吐出量及び最高温度を測定した。これらの測定値を表2の各欄に記載した。また、得られた微細紙粉含有樹脂組成物シートの黄変の有無を目視で観測した。その観測結果を表2の各欄に記載した。
【0065】
表2から理解されるように、実施例8,9のように上述した混練押出機10を用いた場合には、吐出量がそれぞれ125kg/hr、83kg/hrと大きく生産効率が良好であった。
【0066】
一方、比較例2,3のように上述した従来の噛合型2軸混練押出機を用いた場合には、吐出量がそれぞれ58kg/hr、38kg/hrと低く、生産効率が悪かった。
【0067】
また、実施例8,9のように上述した混練押出機10を用いた場合には、最高温度がそれぞれ205℃、210℃と210℃以下であり、得られた微細紙粉含有樹脂組成物シートに黄変は生じなかった。
【0068】
一方、比較例2,3のように上述した従来の噛合型2軸混練押出機を用いた場合には、最高温度がそれぞれ220℃、230℃と210℃を超え、得られた微細紙粉含有樹脂組成物シートに黄変が生じていた。
【0069】
【表2】

【符号の説明】
【0070】
10…混練押出機、 11,12…スクリュー、 11a,12a…スクリュー部、 11b,12b…ロータ部、 13…ケーシング、 14,15…通路、 16…材料供給口、 17…ダイス、 18…オープンベント、 19…真空脱気ベント、 20…吐出口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径が10〜100μmの微細紙粉を20〜70重量部、熱可塑性合成樹脂を30〜80重量部有し、前記微細紙粉及び前記熱可塑性合成樹脂の合計が100重量部である原材料を、スクリューの少なくとも一部にロータ部を有する非噛合型異方向回転2軸混練押出機を用いて、210℃以下の温度で混練させて、成形用微細紙粉含有樹脂組成物を得ることを特徴とする微細紙粉含有樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記熱可塑性合成樹脂が、ポリオレフィン系合成樹脂、ポリスチレン系合成樹脂、又はポリ乳酸系合成樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の微細紙粉含有樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記ポリオレフィン系合成樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項2に記載の微細紙粉含有樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
前記原材料は、無水マレイン酸基を有する化合物を0.3〜5重量部有することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の微細紙粉含有樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
前記非噛合型異方向回転2軸混練押出機は、2本の前記スクリューがそれぞれ有する前記ロータ部は、前記スクリューの軸心に垂直な断面において短径方向と長径方向とが直交する同一断面形状を有し、且つ、一方の前記ロータ部の長径方向の外面の回転領域内に、他方の前記ロータ部の長径方向の外面が入り込まないように配置されると共に、前記2本のスクリューは前記ロータ部の長径方向が互いに直交するようにして異方向に回転することを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の微細紙粉含有樹脂組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−7030(P2013−7030A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−111839(P2012−111839)
【出願日】平成24年5月15日(2012.5.15)
【出願人】(597022540)株式会社環境経営総合研究所 (23)
【Fターム(参考)】