心血管系パラメータの決定における不規則な心周期の影響の排除
修正された波形データセットを使用して、心血管系パラメータたとえば流体応答性または容積応答性を反映するパラメータを決定するための方法について説明する。波形データセットは、たとえば動脈圧からの信号、または動脈圧信号に比例する、もしくは動脈圧信号から導出された任意の信号に対応する。これらの方法は、波形データセット内の個々の心周期を識別するステップ、この個々の周期の波形特性を測定するステップ、次にこの個々の心周期が規則的な心周期かそれとも不規則な心周期かを判定するステップを含む。不規則な心周期が検出されたら、呼吸パラメータが測定される。次に、規則的な心周期の波形特性と不規則な心周期の波形特性とを含む修正された波形データセットが作成され、ここで、不規則な心周期の波形特性が、推定された波形特性に置き換えられる。最後に、この修正された波形データセットを使用して心血管系パラメータが決定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、心血管系パラメータたとえば流体応答性または容積応答性を反映するパラメータを決定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特に一回拍出量(SV)、心拍出量(CO)、拡張末期容積、駆出率、一回拍出量変動(SVV)、脈圧変動(PPV)、および収縮期圧変動(SPV)などの指標は、疾患の診断だけでなく、被験者と被験動物(以下、被験体と呼ぶ)の両方の前負荷依存性、流体応答性、または容積応答性の状態の「リアルタイム」モニタリングにも重要である。したがって、これらの心臓パラメータのうちの1つまたは複数をモニタする何らかの形態の機器を備えていない病院はほとんどない。侵襲的技法、非侵襲的技法、およびそれらの組み合わせを含む多数の技法が使用されており、さらに多くの技法が文献で提案されている。
【0003】
SVを測定するために使用される技法の多くは、COの推定値も提供するように適合されうる。なぜなら、COは一般に心拍数(HR)のSV倍と規定され、HRはモニタリング機器にとって通常利用可能であるからである。逆に、COを推定する大部分のデバイスは、計算時にSVも推定する。SVVを推定する1つの方法は、複数のSV値を収集し、測定間隔ごとの差を計算するだけである。
【0004】
SVまたはCOを測定する1つの方法は、カテーテルに流量測定デバイスを取り付け、このデバイスを被験体の心臓内またはその近傍に配置することである。このようなデバイスには、右心房などの上流位置で物質またはエネルギー(通常は熱)のいずれかを一度に大量に(bolus)注入し、肺動脈などの下流位置におけるこの注入した物質またはエネルギーの特性に基づいて流量を決定するものがある。このような侵襲的技法(特に、熱希釈)の実装形態を開示する特許には、特許文献1(Newbowerら、1980年12月2日)、特許文献2(Yelderman、1985年4月2日)、特許文献3(McKownら、1992年9月8日)、および特許文献4(McKownら、1997年11月18日)がある。COを動脈血および混合静脈血の酸素化の関数として計算する公知のフィック法に基づく侵襲的デバイスもある。
【0005】
侵襲的技法は、特にこのようなモニタリングを必要とする被験体が重態であるために既に入院しているときに、明らかな欠点を有する。侵襲的方法は、あまり明らかではない欠点も有しており、たとえば、熱希釈などのいくつかの技法は、注入される熱の均一な拡散などの前提に依拠しており、これが測定の精度に影響を及ぼすことがある。さらに、器具を血流に入れると、この器具によって測定される値が影響を受ける場合がある。
【0006】
侵襲的トランスデューサならびに非侵襲的トランスデューサを使用するドプラ法も、流量データを取得し、次にこの流量データを使用してSVおよびCOを計算するために使用されている。しかし、これらのシステムは、一般に高価であり、その精度は、流路の直径および全体的な形状を正確に把握することによって決まる。しかし、このような正確な把握が可能であることは、特にリアルタイムモニタリングが必要な状況下では、あまりない。
【0007】
低侵襲でまたは侵襲せずに取得可能な1つの血液特性は血圧である。血圧測定技術には、患者の外傷が最小限であることに加えて、正確であるというさらなる利点がある。
【0008】
多数の血圧測定システムは、COなど対象となる1つまたは複数の心臓パラメータの推定値を血圧波形の特性から計算するpulse contour法(PCM)に依拠している。PCMでは、大動脈特性インピーダンス、コンプライアンス、および全末梢血管抵抗などの「ウインドケッセル」パラメータは、大動脈の線形または非線形の血行動態モデルを構築するために使用されることが多い。本質的に、血流は、並列接続された抵抗および静電容量(コンプライアンス)とインピーダンスが直列である回路における電流の流れにたとえられる。このモデルに必要な3つのパラメータは、通常、複雑な較正プロセスにより経験に基づいて、または集めた「人体計測」データ、すなわち他の患者もしくは試験被験体の年齢、性別、身長、体重、および/もしくは他のパラメータに関するデータからのいずれかで決定される。特許文献5(Wesseling、1995年3月28日)および特許文献6(Petrucelliら、1996年7月16日)には、COを決定するためにウインドケッセル回路モデルに依拠するシステムが開示されている。
【0009】
PCMに基づくシステムは、指カフなどのさまざまな測定装置を使用して得られる血圧測定値を使用するSV由来の心臓パラメータをモニタ可能であり、程度の差はあるが持続的にモニタすることができる。しかし、この使いやすさは、精度を潜在的に犠牲にして得られる。なぜなら、PCMは、それが派生したかなり簡単な3パラメータモデルより正確なものではない可能性があるからである。他の現象を正確に説明するために、はるかに高次のモデルが必要とされることがある。基本的なPCMモデルの精度を向上させるために、さまざまな複雑度を有する多数の改良が提案されている。
【0010】
最近、いくつかの研究において、機械的換気下で心血管系と肺の相互作用から生じる、左室一回拍出量でみられる変動をモニタすることの臨床的重要性が確認された。これらの一回拍出量変動(SVV)は、機械的換気に起因する胸腔内圧の周期的な増加および減少によって引き起こされ、これが、心臓の前負荷および後負荷の変動をもたらす。SVVは最近、広範に研究され、いくつかの研究から、種々の臨床的状況で前負荷依存性および流体応答性の予測因子としてSVVを使用することの有用性が示された。SVVに基づく他のいくつかのパラメータも有用であることがわかっている。特に、デルタ上昇(Δ上昇)成分およびデルタ下降(Δ下降)成分を有する収縮期圧変動(SPV)は、前負荷依存性および流体応答性の非常に有用な予測因子であることが判明している。SPVは、呼吸により誘発された一回拍出量の変動に起因する動脈圧の変化に基づく。最近研究され、前負荷依存性および流体応答性の有効な指標であることが示されたさらに別のパラメータは、脈圧変動(PPV)である。
【0011】
動脈圧波形解析法におけるこれらの最近の進歩により、より低侵襲的で持続的かつリアルタイムにSVVを推定するまたとない機会が訪れた。これによって、臨床医は、救急救命患者の血行動態状態の評価において、SVおよびCOに加えてSVVを日常的に使用することが可能になる。
【0012】
呼吸により誘発された動脈圧の変化に基づいて前負荷依存性および流体応答性を測定するための既存のシステムはほとんどすべて、数個しかない方法のうちの1つに基づくものである。文献に記載されている方法のうちいくつかは、脈圧変動(PPV)、収縮期圧変動(SPV)、および一回拍出量変動(SVV)の測定を含む。
【0013】
PPVの推定は、以下の式1に基づく。
【0014】
【数1】
【0015】
ここで、PPは測定された脈圧であり、PPmaxおよびPPminはそれぞれ、1回の呼吸(吸息−呼息)周期中の脈圧の最大値および最小値である。PPは、1回の心周期中の最大圧と最小圧の差として計算される。
【0016】
SPVの推定は、以下の式2に基づく。
【0017】
【数2】
【0018】
ここで、SPは測定された収縮期圧であり、SPmaxおよびSPminはそれぞれ、1回の呼吸周期中の収縮期圧の最大値および最小値である。
【0019】
同様に、SVVの推定は、以下の式3に基づく。
【0020】
【数3】
【0021】
ここで、SVは一回拍出量であり、SVmaxおよびSVminはそれぞれ、1回の呼吸周期中の一回拍出量の最大値および最小値である。
【0022】
式1、式2、および式3では、分母はそれぞれ、PP、SP、およびSVの最大値と最小値の平均である。言い換えれば、分母は、2つの測定点のみではあるが、平均値である。このような極値の単純な平均化は、単に計算を単純化するために最もよくみられるものであり、これは、一般に手動によって実行されてきた。しかし、信頼性のより高い値は、測定間隔にわたるすべての測定値の平均、すなわちPP、SP、およびSVの第1の統計モーメントを使用することによって、取得されうる。
【0023】
したがって、PPV、SPV、およびSVVのそれぞれに対して、それぞれの変動値式は、極(最大および最小)値の平均に対する値の範囲(最大マイナス最小)の大きさを示す。
【0024】
特許文献7では、以下の式4に基づいてSVVを測定するために動脈圧周期の標準偏差を使用する方法を含む、SVVを計算するためのさらなる方法が開示されている。
【0025】
【数4】
【0026】
ここで、std(P)maxおよびstd(P)minはそれぞれ、1回の呼吸周期中の動脈圧の最大および最小の標準偏差であり、std(P)meanは、同じ呼吸周期における動脈圧信号の平均標準偏差である。標準偏差は、単一の心周期内のすべての圧力サンプルの標準偏差として算出される。特許文献7では、以下の式5に基づいて動脈圧信号の標準偏差を使用してSVVを測定する代替方法も開示されている。
【0027】
【数5】
【0028】
ここで、std(std(P))は、少なくとも1つの呼吸周期を含む期間における動脈圧の拍動の標準偏差の標準偏差であり、mean(std(P))は、同じ期間に対する動脈圧の拍動の標準偏差の平均であり、Cは、経験に基づいて導出された定数である。
【0029】
SVVの特定のモニタリングは、特定の困難と利点の両方を有する。生理学的には、SVVは、呼吸循環相互作用のいくつかの複雑な機序に基づく。簡単に言えば、機械的換気によって左室前負荷の変化が生じ、これが左室一回拍出量および収縮期血圧の明確な変動をもたらす。SVVのモニタリングは、輸液(volume administration)に対する左室応答の予測を可能にし、血液量減少の適正な評価および以降の決定と共に、多数の重大な状況で緊急輸液療法を行うのに役立つ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【特許文献1】米国特許第4,236,527号
【特許文献2】米国特許第4,507,974号
【特許文献3】米国特許第5,146,414号
【特許文献4】米国特許第5,687,733号
【特許文献5】米国特許第5,400,793号
【特許文献6】米国特許第5,535,753号
【特許文献7】米国特許第7,422,562号
【特許文献8】仮特許出願第61/151,670号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
本発明の課題は、上記課題を解決するためになされたものであって、修正された波形データセットを使用して、心血管系パラメータたとえば流体応答性または容積応答性を反映するパラメータを決定するための方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0032】
心血管系パラメータを決定するための方法が開示される。これらの方法は、動脈圧信号、またはパルスオキシメトリ(pulseox)、ドプラ超音波、もしくは生体インピーダンス信号などの、動脈圧信号に比例する、もしくは動脈圧信号から導出された任意の信号に対応する波形データセットを受け取るステップを最初に含む。この方法は、次に、波形データセット内の個々の心周期を識別するステップ、この個々の周期の波形特性を測定するステップ、およびこの個々の心周期が規則的な心周期かそれとも不規則な心周期かを判定するステップを含む。心周期が規則的な心周期および不規則な心周期に分類されたら、呼吸パラメータが測定される。次に、規則的な心周期の波形特性および不規則な心周期の波形特性を含む修正された波形データセットが作成され、ここで、不規則な心周期の波形特性が、推定された波形特性に置き換えられる。修正された波形を作成するために使用される推定された波形特性が、規則的な心周期の波形特性に基づいて、および必要に応じて呼吸パラメータに基づいて計算される。場合によっては、推定された波形特性は、規則的な心周期の波形特性のみに基づいて決定され、場合によっては、推定された波形特性は、規則的な心周期の波形特性と呼吸パラメータの両方に基づいて決定される。最後に、修正された波形データセットを使用して心血管系パラメータが計算される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】いくつかの心周期を表示する、動脈圧対時間(1/100秒単位)の波形を示す図である。
【図2】2つの不規則な心周期、この場合は心室期外収縮を含む、動脈圧対時間(1/100秒単位)の波形を示す図である。
【図3】2つの規則的な心周期および1つの不規則な心周期を表示する、動脈圧対時間(1/100秒単位)の波形を示す図である。
【図4】不規則な心周期の持続時間(duration)(te)を示すために注釈が付けられた、動脈圧対時間(1/100秒単位)の波形を示す図である。
【図5】不規則な心周期の収縮期の持続時間(ts)および拡張期の持続時間(td)を示すために注釈が付けられた、動脈圧対時間(1/100秒単位)の波形を示す図である。
【図6】不規則な心周期の収縮期上行脚(systolic rise)の持続時間(tr)および収縮期下行脚(systolic decay)の持続時間(tdec)を示すために注釈が付けられた、動脈圧対時間(1/100秒単位)の波形を示す図である。
【図7】不規則な心周期の下行脚全体(overall decay)の持続時間(tov_dec)を示すために注釈が付けられた、動脈圧対時間(1/100秒単位)の波形を示す図である。
【図8】不規則な心周期がなく、計算された呼吸パラメータも示す、動脈圧対時間の波形を示す図である。
【図9】不規則な心周期を有する、動脈圧対時間の波形を示す図である。
【図10】脈拍数に基づいて検出可能な不規則な心周期を有する、動脈圧対時間の波形を示す図である。
【図11】収縮期圧に基づいて検出可能な不規則な心周期を有する、動脈圧対時間の波形を示す図である。
【図12】脈圧に基づいて検出可能な1つの不規則な心周期を有する、動脈圧対時間の波形を示す図である。
【図13】収縮期圧と脈拍数の両方に基づいて検出可能な不規則な心周期を有する、動脈圧対時間の波形を示す図である。
【図14】右側脈圧(right-side pulse pressure)と比較すると異なる左側脈圧(left-side pulse pressure)に基づいて検出可能な不規則な心周期を有する、動脈圧対時間の波形を示す図である。
【図15】不規則な心周期を有し、計算された呼吸パラメータも示す、動脈圧対時間の波形を示す図である。
【図16】本明細書において説明する方法を実施するためのシステムの主要な構成要素を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
種々の図面における同じ参照番号および記号は、同じ要素を示す。
【0035】
上記の式1から式5によって示されるように、心周期の規則性、一貫性、および信頼性は、SVV、PPV、SPV、およびその他の心血管系パラメータの正確な評価にとって重要である。たとえば、心臓不整脈、心室期外収縮、心房細動によって引き起こされる不規則な心周期、またはノイズ、電気的干渉、もしくはモーションアーチファクトの影響を受ける心周期などの、測定周期内での不規則な心周期の発生は、前負荷応答指標としてSVV、PPV、SPV、またはその他の心血管系パラメータの精度に著しく影響を及ぼしうる。たとえば、心臓不整脈の場合、心周期ごとの一回拍出量の変動は、機械的換気によって引き起こされる前負荷変動からではなく、変えられた心臓の充満時間を反映する。それらのタイプの状況では、SVV、PPV、SPV、またはその他の心血管系パラメータは、前負荷依存性および流体応答性を予測するために使用することはできない。これらの問題を解決するために、本明細書で開示される方法は、不規則な心周期の影響を排除し、不規則な心周期が高頻度で発生する状況における前負荷依存性および流体応答性の正確な測定を可能とする。このような正確な測定は、以前から知られている技法では不可能であった。
【0036】
本明細書で開示される方法は、修正された波形データセットを使用して、心血管系パラメータたとえば前負荷依存性および流体応答性を反映するパラメータを決定する。この波形データセットは、たとえば動脈圧からの信号、またはパルスオキシメトリ信号、ドプラ超音波信号、もしくは生体インピーダンス信号などの、動脈圧信号に比例する、もしくは動脈圧信号から導出された任意の信号に対応する。これらの方法は、波形データセット内の個々の心周期を識別するステップ、この個々の周期の波形特性を測定するステップ、次にこの個々の心周期が規則的な心周期かそれとも不規則な心周期かを判定するステップを含む。心周期が検出され、規則的な心周期および不規則な心周期に分類されたら、呼吸パラメータが測定される。この呼吸パラメータは、規則的な心周期の波形特性のみを使用して計算されてもよいし、不規則な心周期からの波形特性を含んでもよい。次に、規則的な心周期の波形特性および不規則な心周期の波形特性を含む修正された波形データセットが作成され、ここで、不規則な心周期の波形特性が、推定された波形特性に置き換えられる。修正された波形を作成するために使用される推定された波形特性は、規則的な心周期の波形特性に基づいて、および必要に応じて呼吸パラメータに基づいて計算される。場合によっては、推定された波形特性は、規則的な心周期の波形特性のみに基づいて決定され、場合によっては、推定された波形特性は、規則的な心周期の波形特性と呼吸パラメータの両方に基づいて決定される。最後に、修正された波形データセットを使用して心血管系パラメータが計算される。本明細書において説明する方法によって波形データセット内で検出され、波形特性を置き換えさせる不規則な心周期の例としては、たとえば、心室期外収縮、心房期外収縮、不整脈によって引き起こされる心周期、心房細動によって引き起こされる心周期、患者によるアーチファクト、外部干渉からのノイズ、およびそれぞれの心拍動が流れまたは圧力を生成しない状況における欠如した(missing)心周期がある。本明細書では、波形データセットという用語は、1つの信号たとえば動脈圧信号、またはパルスオキシメトリ(pulseox)、ドプラ超音波、もしくは生体インピーダンス信号などの、動脈圧信号に比例する、もしくは動脈圧信号から導出された任意の信号に対応するデータのセットを指す。
【0037】
本明細書において説明する方法では、個々の心周期(心拍動とも呼ばれる)が信号内で検出される。図1は動脈圧信号の一例を示し、動脈圧信号10に沿った点30は、それぞれの心周期の拡張末期圧に対応する検出された心周期および次の心周期の開始点を示す。信号内での個々の心周期の検出は、2009年2月11日に出願された特許文献8に記載されているアルゴリズムなどのリアルタイム心拍動検出デジタル信号処理アルゴリズムに基づいてよく、同出願の全体が本明細書に組み込まれ、かつその本文が付録Aに添付される。これらのアルゴリズムは、信号の1次導関数を計算するステップ、および適応閾値とゼロ交差検出の組み合わせを使用して心周期の始まりを検出するステップを含む。
【0038】
本明細書において説明する方法では、次に、不規則な心周期を検出するためのさまざまな方法を利用する。心室期外収縮、心房期外収縮、不整脈によって引き起こされる心周期、心房細動によって引き起こされる心周期、患者によるアーチファクト、欠如した心周期、または外部干渉からのノイズなどの不規則な心周期の検出は、波形データセット内の個々の心周期を識別するステップ、およびこの個々の心周期の1つまたは複数の波形特性を対照心周期の1つまたは複数の波形特性と比較するステップによって達成されうる。不規則な心周期は、個々の心周期の1つまたは複数のパラメータを対照心周期からの同じ1つまたは複数のパラメータと比較することによって識別される。個々の心周期の1つまたは複数のパラメータが、対照心周期からの同じ1つまたは複数のパラメータと所定の閾値量だけ異なる場合、個々の心周期は不規則な心周期と識別される。
【0039】
個々の心周期が規則的な心周期かそれとも不規則な心周期かを判定するために使用されるパラメータは、統計学的であり、他の測定は心周期の一部分すなわち相(phase)に基づく。心周期の相の例としては、心周期全体、収縮期、拡張期、収縮期上行脚、収縮期下行脚、または下行脚全体がある。本明細書において例として使用する心周期の一部分が、図1〜図7に示されている。図1〜図7のそれぞれでは、x軸の単位は100分の1秒である(たとえば、x軸単位の100は1秒に相当し、x軸単位の200は2秒に相当する)。図1は、いくつかの心周期20を有する動脈圧波形10を示す。動脈圧波形10に沿った点は、1つの心周期の拡張末期圧30および次の心周期の開始点を示す。図2は、2つの心室期外収縮60に相当する2つの不規則な心周期を有する動脈圧波形50を示す。図2の心室期外収縮60により、他の心周期と比較したときにより低い圧力を有する心周期が生じる。図3は、3つの心周期(90、100、および110)を有する動脈圧波形80を示す。中央の心周期100は、心室期外収縮を表す。収縮期相の終わりおよび拡張期相の始まりを規定する心周期の動脈圧波形の変曲点を、重複切痕(dichrotic notch)120と呼ぶ。
【0040】
心周期の終点/開始点30および重複切痕120は、本明細書において説明する方法と共に使用される種々のパラメータを定義するための開始点および終点を提供し、たとえば、時間間隔は、前の心周期の拡張期相の終わりから現在の拡張期相の終わりまでに対応する時間から測定されうる。本明細書において使用するパラメータとしては、心周期全体、ならびに動脈圧信号の収縮期、拡張期、収縮期上行脚、収縮期下行脚、および下行脚全体に対応する相がある。これらのパラメータのそれぞれの時間成分も使用され、すなわち、有用なパラメータとしては、心周期全体の持続時間(te)、収縮期の持続時間(ts)、拡張期の持続時間(td)、収縮期上行脚の持続時間(tr)、収縮期下行脚の持続時間(tdec)、および下行脚全体の持続時間(tov_dec)がある。
【0041】
心周期の持続時間teが図4に示されている。図示のように、teは、心周期の開始点30と心周期の終点の間の時間である。
【0042】
収縮期の持続時間tsが図5に示されている。図示のように、tsは、心周期の開始点30と心周期の重複切痕120の間の時間である。
【0043】
拡張期の持続時間tdも図5に示されている。図示のように、tdは、心周期の重複切痕120と心周期の終点の間の時間である。
【0044】
収縮期上行脚の持続時間trが図6に示されている。図示のように、trは、心周期の開始点30から収縮期出現後の動脈圧の初期増加の最大点130までの時間である。
【0045】
収縮期下行脚の持続時間tdecも図6に示されている。図示のように、tdecは、収縮期出現後の動脈圧の初期増加の最大点130から重複切痕120までの時間である。
【0046】
下行脚全体の持続時間tov_decが図7に示されている。図示のように、tov_decは、収縮期出現後の動脈圧の初期増加の最大点130から心周期の終点までの時間である。
【0047】
不規則な心周期を検出する1つの方法は、心周期の異なる相の持続時間を分析することであり、すなわち、上述のような動脈波形/信号の異なる相の時間間隔を比較する。本明細書において説明する方法では、たとえば、心周期全体(すなわち瞬時心拍数(beat heart rate))の持続時間、収縮期の持続時間、拡張期の持続時間、収縮期上行脚の持続時間、収縮期下行脚の持続時間、および/または下行脚全体の持続時間を比較する。
【0048】
不規則な心周期を検出する別の方法は、動脈波形/信号の重複切痕の場所を分析することである。たとえば、重複切痕の場所対最大収縮期圧および重複切痕の場所対拡張期圧(最大収縮期圧より前の心周期の最小圧)が分析される。加えて、心周期の始まりの拡張期圧に対応する値と心周期の最大圧に対応する値の差が使用可能である。さらなる波形特性としては、心周期の最大圧に対応する値と心周期の終わりにおける拡張期圧に対応する値の差がある。
【0049】
不規則な心周期を検出するため、上述のような動脈波形の異なる部分の統計的特性すなわち統計モーメントが比較される。本明細書において説明する方法では、最初の4つの統計モーメントすなわち平均、分散、歪度、および尖度が使用される。以下の式は、最初の4つの統計モーメントを計算するために使用可能である(ここで、Nは収縮期中のサンプルの総数である)。
【0050】
平均:
【0051】
【数6】
【0052】
分散:
【0053】
【数7】
【0054】
歪度:
【0055】
【数8】
【0056】
尖度:
【0057】
【数9】
【0058】
心周期を比較するために使用できる追加の特性としては、上述の心周期の相のパワーならびに相の周波数特性および時間−周波数特性がある。心周期の相のパワーは、各相下での心臓信号の積分として測定される。パワーは、各相内の信号を積分することによって計算されうる。したがって、たとえば、収縮期相のパワーEsysは、以下の式を使用して計算可能である(ここで、Nは収縮期中のサンプルの総数である)。
【0059】
【数10】
【0060】
心周期の各相の周波数特性は、フーリエ変換解析を実行することによって導出可能である。高速フーリエ変換を含む種々の知られているフーリエ変換が使用されうる。
【0061】
心周期の各相の時間−周波数特性は、ウェーブレット変換解析を使用して導出可能である。ウェーブレット解析は、時間領域に過渡またはその他の非定常特性を有する信号の解析に好適である。フーリエ変換とは対照的に、ウェーブレット解析は、時間領域で、すなわちイベントが発生したときに、情報を保持する。
【0062】
また、波形特性は、数学的補間法、カーブフィッティング法、または近似関数を使用して計算可能である。数学的補間法の例としては、スプライン補間、多項式補間、指数補間、線形補間、非線形補間、区分補間、および多変数補間(multivariate interpolation)がある。
【0063】
心周期の1つまたは複数の部分の統計学的特性またはその他の特性もしくはパラメータを対照心周期と比較するにあたっては、さまざまな手法が使用可能である。たとえば、心周期の1つまたは複数の特性は、調査中の心周期の直前の心周期の同じ特性(複数可)と比較可能であり、すなわち、対照心周期は、調査中の心周期の直前の心周期である。別の比較は、心周期の1つまたは複数の特性を、調査中の心周期の直後の心周期の同じ特性(複数可)と比較するステップを含むことができ、すなわち、対照心周期は、調査中の心周期の直後の心周期である。さらなる比較は、心周期の1つまたは複数の特性を、調査中の心周期の直前の心周期と調査中の心周期の直後の心周期の両方と比較するステップを含むことができ、すなわち、対照心周期は、調査中の心周期の直前の心周期および調査中の心周期の直後の心周期である。追加の比較は、心周期の1つまたは複数の特性を、少なくとも3つの心周期を含む系列からの中央(または平均)の心周期における同じ特性(複数可)と比較するステップを含むことができ、すなわち、対照心周期は、少なくとも3つの心周期を含む系列からの中央(または平均)の心周期である。別の比較は、心周期の1つまたは複数の特性を心周期の相の統計学的測定における同じ特性(複数可)と比較するステップを含むことができ、すなわち、対照心周期は、比較されている測定の統計学的表現である。これらの比較例は、1つまたは複数の特性の比較として提示されているが、当業者には明らかなように、心周期の個々のまたは複数の部分に対する複数のパラメータが使用可能である。さらに、同様に当業者には明らかなように、これらの方法はコンピュータデバイスを使用して実行される可能性が高いので、大量のこれらの比較はリアルタイムで実行可能である。
【0064】
このような比較を行うにあたって、所定の閾値が使用可能である。本明細書では、所定の閾値は、比較を行う前に割り当てられた値である。一般に、パラメータに対する所定の閾値は、たとえばモニタされている被験体から、平均化されたデータから、または擬人化されたデータ(anthropomorphic data)から測定された、対照心周期に関連する値を示す。測定されたパラメータに応じて、所定の閾値は、非常に小さな値または差であってもよいし、より大きな値であってもよい。このような所定の閾値は、医療専門家または器具オペレータによって容易に提供される。特定のパラメータに選択される所定の閾値量は、使用される特定のパラメータの精度によって決まる。
【0065】
たとえば、単一のパラメータが使用される場合、所定の閾値量は、対照心周期の同じパラメータと比較して30パーセント以上の差、対照心周期の同じパラメータと比較して25パーセント以上の差、対照心周期の同じパラメータと比較して20パーセント以上の差、対照心周期の同じパラメータと比較して15パーセント以上の差、対照心周期の同じパラメータと比較して10パーセント以上の差、対照心周期の同じパラメータと比較して5パーセント以上の差、対照心周期の同じパラメータと比較して4パーセント以上の差、対照心周期の同じパラメータと比較して3パーセント以上の差、対照心周期の同じパラメータと比較して2パーセント以上の差、対照心周期の同じパラメータと比較して1パーセント以上の差、対照心周期の同じパラメータと比較して0.5パーセント以上の差、対照心周期の同じパラメータと比較して0.4パーセント以上の差、対照心周期の同じパラメータと比較して0.3パーセント以上の差、対照心周期の同じパラメータと比較して0.2パーセント以上の差、または対照心周期の同じパラメータと比較して0.1パーセント以上の差とすることができる。
【0066】
さらに、複数のパラメータが使用される場合、所定の閾値量は、パラメータ測定の精度と組み合わせて使用されるパラメータの特定の組み合わせによって決まる。たとえば、複数のパラメータを使用する場合、所定の閾値量は、対照心周期の同じ1つまたは複数のパラメータと比較して30パーセント以上の差、対照心周期の同じ1つまたは複数のパラメータと比較して25パーセント以上の差、対照心周期の同じ1つまたは複数のパラメータと比較して20パーセント以上の差、対照心周期の同じ1つまたは複数のパラメータと比較して15パーセント以上の差、対照心周期の同じ1つまたは複数のパラメータと比較して10パーセント以上の差、対照心周期の同じ1つまたは複数のパラメータと比較して5パーセント以上の差、対照心周期の同じ1つまたは複数のパラメータと比較して4パーセント以上の差、対照心周期の同じ1つまたは複数のパラメータと比較して3パーセント以上の差、対照心周期の同じ1つまたは複数のパラメータと比較して2パーセント以上の差、対照心周期の同じ1つまたは複数のパラメータと比較して1パーセント以上の差、対照心周期の同じ1つまたは複数のパラメータと比較して0.5パーセント以上の差、対照心周期の同じパラメータと比較して0.4パーセント以上の差、対照心周期の同じパラメータと比較して0.3パーセント以上の差、対照心周期の同じパラメータと比較して0.2パーセント以上の差、または対照心周期の同じパラメータと比較して0.1パーセント以上の差とすることができる。
【0067】
所定の閾値に加えて、分析に使用されるすべてのパラメータは、単一のパラメータデータセットに集められうる。データセットでは、特定のパラメータの精度が、そのパラメータデータセット内のパラメータの重みを定義する。パラメータデータセット内のそれぞれのパラメータの重みに基づいて、閾値が各パラメータに割り当てられ、所定の閾値を超える、パラメータデータセットからのパラメータの数が計数される。複数のパラメータが使用されるとき、各パラメータは、それ自体の所定の閾値量を有することができる。たとえば、所定の閾値量は、対照心周期の同じパラメータと比較して30パーセント以上の差、対照心周期の同じパラメータと比較して25パーセント以上の差、対照心周期の同じパラメータと比較して20パーセント以上の差、対照心周期の同じパラメータと比較して15パーセント以上の差、対照心周期の同じパラメータと比較して10パーセント以上の差、対照心周期の同じパラメータと比較して5パーセント以上の差、対照心周期の同じパラメータと比較して4パーセント以上の差、対照心周期の同じパラメータと比較して3パーセント以上の差、対照心周期の同じパラメータと比較して2パーセント以上の差、対照心周期の同じパラメータと比較して1パーセント以上の差、または対照心周期の同じパラメータと比較して0.5パーセント以上の差とすることができる。具体的な例として、第1のパラメータは、対照心周期の同じパラメータと比較して15パーセント以上の差という所定の閾値量を有することができ、第2のパラメータは、対照心周期の同じパラメータと比較して4パーセント以上の差という所定の閾値量を有することができる。所定の閾値量の数は、評価されるパラメータの数に等しいかまたはこれより少なくてよい。
【0068】
呼吸係数は、修正された波形における不規則な心周期の波形特性を置き換えるために使用される波形特性を推定するために規則的な心周期と共に使用されうる。呼吸パラメータは、呼吸たとえば自発呼吸または機械的換気によって引き起こされる、波形データセットの呼吸誘発性変動である。機械的換気の例としては、従圧式換気、従量式換気、同期型間欠的強制換気、圧支持換気、量支持換気(volume support ventilation)、高頻度換気、同期型間欠的陽圧換気、持続陽圧換気、および非侵襲的換気がある。図8は、不規則な心周期のない動脈圧信号の波形800を示す。収縮期圧の波形特性に基づいて計算された、この規則的な波形の呼吸パラメータ810は、各心周期の収縮期(最大)圧をほぼたどる破線によって示されている。呼吸パラメータは、最小圧、拡張期圧、重複切痕、心周期の標準偏差、または各心周期の終点もしくは開始点などの波形のその他の特徴に関連することができる。呼吸パラメータは、複数の特性を表すことができ、たとえば、呼吸機能は、最大圧と、最小と最大の差とを含むことができる。たとえば、収縮期圧を使用すると、欠如した心周期などの不規則な心周期の波形特性を置き換えるときの置き換え用波形特性の最大アライメント点が得られる。
【0069】
本明細書において説明する方法を使用するために説明される波形信号の凸凹のいくつかは、以下の例によって説明されうる。図9は、不規則な心周期が矢印910によって示される動脈圧信号の波形900を示す。これらの不規則な心周期ならびにこれら以降の心周期の波形特性が、推定された値に置き換えられない場合、計算された一回拍出量変動は、たとえば、その真の値より大きくなる。図10は、いくつかの不規則な心周期を示す動脈圧信号の異なる波形1000を示す。例示的な不規則な心周期の開始点は、四角1010により示される(さらに、その他の心周期の開始点は丸1020により示される)。示される不規則な心周期を識別する1つの方法は、脈拍数をモニタする上述の方法を使用することであり、すなわち、不規則な拍動は、規則的な拍動より長い持続時間を有する。図11は、不規則な心周期の開始点が四角1110により示される(さらに、その他の心周期の開始点が丸1120により示される)動脈圧信号のさらなる波形1100を示す。この不規則な心周期は、たとえば収縮期圧をモニタすることによって検出可能であり、すなわち、この不規則な心周期は、規則的な心周期より低い収縮期圧を有する。図12は、不規則な心周期の開始点が四角1210により示される(さらに、その他の心周期の開始点が丸1220により示される)動脈圧信号の別の波形1200を示す。この不規則な周期は、たとえば脈圧をモニタすることによって検出可能であり、すなわち、不規則な周期は、規則的な心周期より低い脈圧を有する。本明細書での脈圧(PP)は、収縮期圧(Psys)マイナス拡張期圧(Pdia)、すなわちPP=Psys−Pdiaである。
【0070】
図9〜図12に関して説明した単一パラメータのモニタリングによって、多数の不規則な心周期が見つけられるが、複数のパラメータもモニタされうる。たとえば、図13は、2つの不規則な心周期の開始点が四角1310により示される(さらに、その他の心周期の開始点が丸1320によって示される)動脈圧信号の波形1300を示す。これらの不規則な心周期は、たとえば、収縮期圧と脈拍数の両方をモニタすることによって識別可能であり、すなわち、これらの心周期は両方とも、規則的な拍動より小さい収縮期圧を有し、ならびに規則的な拍動より長い持続時間を有する。図14は、複数の不規則な心周期の開始点が四角1410により示される(さらに、その他の心周期の開始点が丸1420によって示される)動脈圧信号のさらなる波形1400を示す。これらの示された不規則な心周期は、右側脈圧と異なる左側脈圧を有し、これらの値を調べることによって識別されうる。本明細書では、左側脈圧(LPP)は、現在の心周期の収縮期圧(Psys)マイナス現在の心周期の拡張期圧(Pdia_cur)、すなわちLPP=Psys−Pdia_curであり、右側脈圧(RPP)は、現在の心周期の収縮期(Psys)マイナス次の心周期の拡張期圧(Pdia_next)、すなわちRPP=Psys−Pdia_nextである。これらの方法のうちの1つまたは複数を使用することによって、不規則な心周期が識別可能であり、それらが心臓パラメータの計算に及ぼす悪影響は最小限に抑えられうる。
【0071】
図15は、いくつかの不規則な心周期の波形特性がどのように回復され、推定された波形特性に置き換えられうるかを説明するために使用されうる。図15では、波形1500は、規則的な心周期と不規則な心周期の両方を有する動脈圧信号である。波形1500では、各規則的な心周期1510の開始点は菱形で示され、各不規則な周期1520の開始点は四角で示される。いくつかの心周期は、不規則な心周期の影響により波形から欠如している。このような欠如した周期の収縮期圧1530の場所は、呼吸パラメータ1540上の黒い丸によって示される。
【0072】
いくつかの不規則な心周期は、規則的な周期より長い持続時間を有するが、延長された持続時間を除いて、これらの不規則な心周期は、異常ではなく計算に直接的に使用できる、収縮期圧などの、直接的に測定可能な波形パラメータを有する。これらの不規則な心周期の波形パラメータを使用するため、擬似開始点および/または擬似終点が決定される。擬似開始点および/または擬似終点を決定するため、所与の波形データセット内のすべての規則的な心周期に基づく時間係数が最初に決定される。この時間係数は、たとえば、規則的な周期の中央または平均の時間長(time duration)とすることができる。次に、周期の拡張期圧に基づく圧力係数が、規則的な周期ごとに計算される。この圧力係数は、たとえば、各周期の拡張期圧と次の周期の拡張期圧の最大圧較差を見つけることによって決定される最大圧の差とすることができる。次に、異常な終点を有する不規則な心周期(図15の周期1520など)では、その開始点が決定可能な場合、開始点からのあらかじめ確立された範囲にある波形の圧力データが調査される。この開始点からのあらかじめ確立された範囲は、たとえば、開始点プラス(範囲開始係数*中央の時間長)から開始点プラス(範囲停止係数*中央の時間長)の間とすることができる。範囲開始係数の例としては、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.86、0.87、0.88、0.89、0.9、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、および0.99があるが、これらに限定されない。範囲停止係数の例としては、1.01、1.02、1.03、1.04、1.05、1.06、1.07、1.08、1.09、1.1、1.11、1.12、1.13、1.14、1.15、1.2、1.25、1.3、1.35、1.4、1.45、および1.5があるが、これらに限定されない。開始点からのあらかじめ確立された範囲のさらなる例は、開始点プラス(0.9*中央の時間長)から開始点プラス(1.1*中央の時間長)までの範囲である。加えて、開始点からのあらかじめ確立された範囲は、持続時間の標準偏差に基づいて決定可能であり、すなわち、開始点からの所定の範囲は、開始点プラス(中央の持続時間マイナス持続時間の標準偏差)から開始点プラス(中央の持続時間プラス持続時間の標準偏差)までとすることができる。あらかじめ確立された範囲内に圧力データ点があると仮定すると、圧力データ点と圧力係数の関係が所定の範囲内にある場合、その点が、擬似終点に割り当てられる。たとえば、その圧力データ点と開始点の圧力の間の圧較差が最大差より小さい場合、その点は、擬似終点に割り当てられうる。この基準を満たす複数の点があり、複数の圧力データ点のそれぞれと圧力係数の関係が所定の範囲内にある場合、時間係数に最も近い時間値を有する圧力データ点を擬似終点に割り当てる。たとえば、複数の圧力データ点と開始点の間の時間差が最大時間差より小さい場合、開始点プラス中央の持続時間に最も近い時間を有する圧力データ点が擬似終点に割り当てられうる。あらかじめ確立された範囲内に圧力データがない場合、または圧力データ点と圧力係数の関係が所定の範囲外にある場合、擬似終点が確実に計算できず、擬似終点は割り当てられない。たとえば、見つかった圧力と開始点の圧力の間の圧較差が最大圧較差より大きい場合、擬似終点が割り当てられることは不可能である。
【0073】
異常な開始点を有する不規則な心周期(図15の周期1570など)では、その終点が決定可能な場合、終点からのあらかじめ確立された範囲にある波形の圧力データが調査される。この終点からのあらかじめ確立された範囲は、たとえば、終点マイナス(範囲始まり係数*中央の時間長)と終点マイナス(範囲終了係数*中央の時間長)の間とすることができる。範囲始まり係数の例としては、1.01、1.02、1.03、1.04、1.05、1.06、1.07、1.08、1.09、1.1、1.11、1.12、1.13、1.14、1.15、1.2、1.25、1.3、1.35、1.4、1.45、および1.5があるが、これらに限定されない。範囲終了係数の例としては、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.86、0.87、0.88、0.89、0.9、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、および0.99があるが、これらに限定されない。終点からのあらかじめ確立された範囲のさらなる例は、終点マイナス(1.1*中央の時間長)から終点マイナス(0.9*中央の時間長)までの範囲である。加えて、終点からのあらかじめ確立された範囲は、持続時間の標準偏差に基づいて決定可能であり、すなわち、終点からの所定の範囲は、終点マイナス(中央の持続時間プラス持続時間の標準偏差)から終点マイナス(中央の持続時間マイナス持続時間の標準偏差)までとすることができる。あらかじめ確立された範囲内に圧力データ点があると仮定すると、圧力データ点と圧力係数の関係が所定の範囲内にある場合、その点は、擬似開始点に割り当てられる。たとえば、その圧力データ点と終点の圧力の間の圧較差が最大差より小さい場合、その点は、擬似開始点に割り当てられうる。この基準を満たす複数の点があり、複数の圧力データ点のそれぞれと圧力係数の関係が所定の範囲内にある場合、時間係数に最も近い時間値を有する圧力データ点が擬似終点に割り当てられる。たとえば、複数の圧力データ点と終点の間の時間差が最大時間差より小さい場合、終点プラス中央の持続時間に最も近い時間を有する圧力データ点が擬似終点に割り当てられうる。あらかじめ確立された範囲内に圧力データがない場合、または圧力データ点と圧力係数が所定の範囲外にある場合、擬似開始点が確実に計算できず、擬似開始点は割り当てられない。たとえば、見つけられた圧力と終点の圧力の間の圧較差が最大圧較差より大きい場合、擬似開始点が割り当てられることは不可能である。
【0074】
開始点および終点が両方とも異常である不規則な心周期(1590における心周期など)では、その最隣接周期の開始点と同じ圧力を有する点などの、推定された開始点が使用可能であり、次に、擬似終点が上述のように推定されうる。次いで、推定された終点が、擬似開始点を決定するために使用される。この推定された終点は、その最隣接周期の終点と同じ圧力を有し、擬似開始点は上述のように計算される。推定された開始点と計算された擬似開始点および推定された終点と計算された擬似終点がそれぞれ互いに近いときのみ、擬似開始点および擬似終点がさらなる計算の目的で採用される。そうでない場合は、データの変動が非常に大きく、可変擬似開始点および擬似終点が確実に決定されることは不可能である。互いに近いと考えられるため、2つの点は、互いに所定の時間内にある。所定の時間の長さは、当業者によって、擬似開始点および擬似終点が、データを使用して計算を実行するために望ましい精度を有する許容できる信頼水準を提供するように設定される。このような所定の時間の例としては、5秒、4秒、3秒、2秒、1秒、0.5秒、0.4秒、0.3秒、0.2秒、0.1秒、0.05秒、0.04秒、0.03秒、0.02秒、または0.01秒がある。
【0075】
このような不規則な心周期の一例は、点1520で開始する不規則な周期によって図15に示されている。この不規則な心周期の擬似終点は、上述のように規則的な心周期の波形特性に基づいて擬似終点1550と決定されうる。同様に、点1570で開始するさらなる不規則な心周期の擬似開始点は、擬似開始点1580となるように計算される。このような不規則な心周期の擬似開始点および/または擬似終点が上述のように計算されると、これらの心周期に対する直接的に測定された波形パラメータおよびこの直接的に測定された波形パラメータに基づく計算可能な波形パラメータ/特性は、規則的な心周期の波形パラメータ/特性を用いるさらなる計算で使用可能である。しかし、上述のように不規則な心周期の擬似開始点および/または擬似終点は、常に確実に決定することができるわけではなく、したがって、いくつかの不規則な心周期の波形パラメータ/特性は、この方法で決定することも、さらに計算に使用することもできない。たとえば、1560で示される不規則な心周期の擬似終点を確実に決定することができない。すなわち、開始点プラス(0.9*中央の時間長)と開始点プラス(1.1*中央の時間長)の間で見つけられる点は、上述の基準に適合しない。擬似開始点および/または擬似終点が決定されると、脈圧および周期の標準偏差などの計算された波形パラメータは再計算される必要がないことに留意されたい。
【0076】
決定可能な心臓パラメータを含む不規則な心周期に対する推定された波形特性または計算された波形特性は、決定されたパラメータから直接的に算出されうる。欠如した心周期を含むすべての他の不規則な心周期では、波形特性は、規則的な心周期の波形特性および呼吸パラメータ1540に基づいて推定可能である。呼吸パラメータ1540は、この例では、規則的な心周期の収縮期圧およびいくつかの不規則な心周期の収縮期圧に基づいて計算されたものであり、推定された波形特性に対して相対的な位置決め点を提供し、すなわち、圧力関連の波形特性が推定されると、これらの特性は、呼吸パラメータと比較して調整されうる。推定された波形特性は、次に、修正された波形における不規則な心周期の元の波形特性を置き換えるために使用される。
【0077】
このような波形特性の計算の一例は、以下の式11を使用して計算できる、不規則な周期の標準偏差(σirregular_cycle)の決定である。
【0078】
【数11】
【0079】
式11では、最も近い規則的な周期の収縮期圧(Psys(nearest_regular_cycle))および標準偏差(σ(nearest_regular_cycle))はわかっており、不規則な周期の収縮期圧(Psys(irregular_cycle))は呼吸パラメータからわかっている。収縮期圧は、不規則な周期における脈圧またはその他の波形特性などのその他のパラメータの標準偏差を与えるために、この式においてそのパラメータと置換されうることに留意されたい。加えて、パラメータ間の関係は、式11に示すようなy=a*xではなく、線形すなわちy=a*x+bとすることができ、ここで、yは標準偏差であり、xは収縮期圧であり、aおよびbは定数である。パラメータ間の決定された関係に応じて、非線形、多項式、またはその他などの他の数学的関係も使用されてよい。いくつかの状況では、2つの最も近い周期(すなわち、1つ前および1つ後)がある場合があり、この場合、両方が使用され、不規則な周期の最終的な標準偏差は、それぞれに計算された2つの平均となる。加えて、標準偏差と波形特性の間の関係は規則的な周期から取得されうるので、最も近い周期以外の周期も使用される場合がある。一例として、標準偏差(y)および収縮期圧(x)は、線形関係たとえばy=a*x+bとすることができ、aおよびbが規則的な周期のyおよびxから最初に決定される場合、不規則な周期のyは、その収縮期圧が与えられれば、計算可能である。
【0080】
本明細書において説明する不規則な心周期を補償する修正された波形を作成することによって、データセットに対して実行される計算の精度および感度が向上する。したがって、一回拍出量変動、脈圧変動、収縮期圧変動、一回拍出量、心拍出量、体血管コンプライアンス、心血流量、心血流速度(cardiac flow velocity)、血管コンプライアンス、および/または血管弾性(vascular elastance)などの計算によって、精度および感度の向上が実現される。心室一回拍出量変動の計算の一例が、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第US2005/0187481号に記載されている。
【0081】
修正された波形データセットの作成に加えて、波形データセットを使用して実行される計算の精度および感度を向上させるために、修正の前またはその後にデータセットに対して他の動作が実行可能である。たとえば、信号は、信号に生じうる、ノイズ、干渉、およびアーチファクトの影響を低減するようにフィルタ処理されうる。このようなフィルタ処理は、たとえばローパスフィルタの使用によって達成可能である。フィルタ処理に続いて、大きなモーションアーチファクトが検出され、波形データセットから除去されうる。このようなアーチファクトは、患者の体動(patient movement)、電気的干渉、信号ノイズから生じたり、動脈ラインのフラッシング(flushing)から生じたりすることが多いので、よくみられる。加えて、異常な心周期が拍動検出後に除去されてから不規則な心周期を検出してよい。
【0082】
波形特性が置き換えられた不規則な心周期は、識別されると、グラフィカルユーザインタフェース上に示されうる。動脈圧、またはpulseox、ドプラ超音波、もしくは生体インピーダンス信号などの、動脈圧信号に比例する、もしくは動脈圧信号から導出された任意の信号に対応する波形データセットは、本明細書において説明する方法のステップを用いて、グラフィカルユーザインタフェース上に同時に表示されるとき、不規則な心周期が通常存在するという表示または特定の心周期が不規則な心周期であるという特定の表示が提供されうる。同じ情報は、リアルタイムに示されないデータに対して提供されてよい。
【0083】
波形データセットのための期間は、設定値であってよく、たとえば、期間は、約10分以上、約5分以上、約4分以上、約3分以上、約2分以上、約1分以上、約50秒以上、約40秒以上、約30秒以上、約20秒以上、約10秒以上、約5秒以上、約2秒以上、約1秒以上、約0.5秒以上、または約0.1秒以上とすることができる。たとえば、期間は、約10、約9、約8、約7、約6、約5、約4、約3、約2、または約1分とすることができる。さらに、たとえば、期間は、約55、約50、約45、約40、約35、約30、約25、約20、約15、約10、約5、約2、約1、約0.5、または約0.1秒とすることができる。この期間は、一定であってもよいし、可変であってもよい。さらに、不規則な心周期が検出された場合、波形データセットのための期間は、増加されてもよいし、減少されてもよい。このようなサンプル時間の増加または減少によって、データの検出能力および一貫性が向上することができる。
【0084】
本明細書では、「動脈圧」という用語は、血液が血管の壁を循環することによって作用する力を指し、「動脈圧信号」は、血圧計または他の圧力トランスデューサなどの血圧モニタリング器具からの信号である。本明細書では、「pulseox」という用語は、光吸収の種々の特性を使用して被験体の血液中の酸素の量を間接的に測定する器具であるパルスオキシメータからの信号を指す。本明細書では、「生体インピーダンス信号」という用語は、生体インピーダンスプレチスモグラフィデバイス、すなわち、大動脈中の拍動血液量(pulsatile blood volume)の変化などの血液パラメータを測定するデバイスからの信号である。本明細書では、「ドプラ超音波」という用語は、ドプラ超音波デバイス、すなわちドプラ増強(Doppler enhanced)超音波測定を行うデバイスからの信号を指す。
【0085】
図16は、本明細書において説明する、心血管系パラメータを決定するための方法を実施するために使用できるシステムの主要な構成要素を示す。この方法は、既存の患者モニタリングデバイスで実施されてもよいし、専用モニタとして実施されてもよい。前述のように、動脈圧信号に関連する波形、または動脈圧信号に比例する、動脈圧信号から導出された、もしくは動脈圧信号の関数であるいくつかの他の入力信号が、以下の2つの方法すなわち侵襲的方法および非侵襲的方法のいずれかまたは実際には両方で検知されうる。便宜上、このシステムについては、動脈圧を測定するものとして説明する。
【0086】
図16は、完全を期すために、侵襲的タイプと非侵襲的タイプの両方の圧力検知を示す。本明細書において説明する方法の最も実用的な適用例では、典型的には、1つまたはいくつかの変動のいずれかが実施される。本明細書において説明する方法の侵襲的な適用例では、従来の圧力センサ200が、患者または患畜の身体の一部分230の動脈220に挿入されたカテーテル210に取り付けられる。動脈220は、たとえば、大腿動脈、橈骨動脈、または上腕動脈などの、動脈系の任意の動脈である。本明細書において説明する方法の非侵襲的な適用例では、光電式容積脈波血圧プローブ(photo-plethysmographic blood pressure probe)などの従来の圧力センサ240が、たとえば指250の周囲のカフまたは患者の手首に取り付けられたトランスデューサを使用して、任意の従来の方式で外部に取り付けられる。図16は、両方のタイプを概略的に示している。
【0087】
センサ200、240からの信号は、処理システム300への入力として任意の知られているコネクタを介して渡され、この処理システム300は、1つまたは複数のプロセッサと、信号を処理しコードを実行するために通常含まれる、他のサポートしているハードウェアおよびシステムソフトウェア(図示せず)とを含む。本明細書において説明する方法は、修正された標準的なパーソナルコンピュータを使用して実施されてもよいし、より大規模な専用モニタリングシステムに組み込まれてもよい。本明細書において説明する方法と共に使用するために、処理システム300は、必要に応じて増幅、フィルタ処理、または測距(ranging)などの通常の信号処理タスクを実行するコンディショニング回路302も含んでよく、またはこれに接続される。条件付けられ検知された入力圧力信号P(t)は、次に、その時間基準を有するかこれをクロック回路305から取得する従来のアナログ−デジタル変換器ADC304によってデジタル形態に変換される。よく理解されているように、ADC304のサンプリング周波数は、圧力信号のエイリアシングを回避するように、ナイキスト基準に関して選定すべきである(この手順は、デジタル信号処理の分野で非常によく知られている)。ADC304からの出力は、離散的な圧力信号P(k)であり、その値は、従来のメモリ回路(図示せず)に記憶されてよい。
【0088】
値P(k)は、本明細書において説明する方法の1つまたは複数の態様を実施するための、コンピュータが実行可能なコードを備えるソフトウェアモジュール310によって、メモリに渡されるかまたはこれからアクセスされる。このようなソフトウェアモジュール310の設計は、コンピュータプログラムの当業者には容易であろう。方法によって使用される追加の処理は、320および330などの追加モジュールで実行されうる。
【0089】
以前に決定された開始時点もしくは以前に決定された終了時点などの信号固有データまたは他の患者固有データは、使用される場合、メモリ領域315に格納されてよく、このメモリ領域315は、必要に応じて他の所定のパラメータも格納可能である。これらの値は、任意の知られている入力デバイス400を使用して従来の方式で入力されうる。
【0090】
図16によって示されるように、結果は、最終的に、ユーザに提示しユーザが解釈するように、従来のディスプレイまたは記録デバイス500上に表示されうる。入力デバイス400と同様に、ディスプレイ500は典型的には、他の目的のために処理システムによって使用されるものと同じである。
【0091】
本発明の例示的な実施形態について、上記で説明してきた。方法の各ステップがコンピュータプログラム命令を含む種々の手段によって実施できることは、当業者には理解されよう。これらのコンピュータプログラム命令は、コンピュータまたは他のプログラム可能なデータ処理装置上で実行する命令が方法で指定された機能を実施するための手段を生成するように、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、またはマシンを製造する他のプログラム可能なデータ処理装置にロードされうる。
【0092】
本明細書において説明する方法はさらに、プロセッサまたは処理システム(図16で300として示される)などのコンピュータまたは他のプログラム可能なデータ処理装置に、特定の方法で機能するように指示できるコンピュータ可読メモリに格納可能なコンピュータプログラム命令に関し、したがって、このコンピュータ可読メモリに格納された命令によって、図16に示されるブロックに指定された機能を実施するコンピュータ可読命令を含む製造品が製造される。このコンピュータプログラム命令は、コンピュータ、処理システム300、または他のプログラム可能なデータ処理装置にロードされ、一連の動作ステップをコンピュータ、処理システム300、または他のプログラム可能な装置上で実行させてコンピュータで実施される処理を生成し、したがってコンピュータまたは他のプログラム可能な装置上で実行する命令が、ブロックで指定された機能を実施するためのステップを提供することができる。さらに、種々の計算を実行し、本明細書において説明する関連の方法のステップを実行するために使用される種々のソフトウェアモジュール310、320、および330も、方法を異なる処理システムにロードし、この異なる処理システムによって実行されることを可能とするために、コンピュータが実行可能な命令としてコンピュータ可読媒体上に格納されてもよい。
【0093】
本明細書において説明する方法のステップは、指定した機能を実行するための手段の組み合わせ、指定した機能を実行するためのステップの組み合わせ、および指定した機能を実行するためのプログラム命令手段によって実施されうる。各方法ステップが、指定した機能もしくはステップを実行する専用ハードウェアベースのコンピュータシステムまたは専用ハードウェアとコンピュータ命令の組み合わせによって実施できることは、当業者には理解されよう。
【0094】
本明細書で開示される方法は、動脈圧、pulseox、ドプラ超音波、または生体インピーダンス信号が検出されうる任意の被験体に等しく適用可能である。たとえば、被験体は、ヒトなどの哺乳動物とすることができるが、これに限定されない。
【0095】
本発明の特許請求の範囲は、本発明のいくつかの態様の説明として意図された本明細書で開示される実施形態によって範囲が制限されるものではなく、機能的に等価な任意の実施形態は、特許請求の範囲内に入る。本明細書において図示し説明した実施形態に加えて、方法の種々の変更形態は、当業者に明らかであり、特許請求の範囲に含まれることを意図したものである。さらに、本明細書で開示される方法ステップのいくつかの代表的な組み合わせのみが上記の実施形態において具体的に説明されているが、方法ステップの他の組み合わせは、当業者に明らかであり、同様に特許請求の範囲に含まれることを意図したものである。したがって、ステップの組み合わせは、本明細書において明確に言及されうるが、ステップの他の組み合わせは、明確に述べられていなくても含まれる。本明細書では「を備える」という用語およびその変形は、「を含む」という用語およびその変形と同義語として使用され、オープンで非限定的な用語である。
【符号の説明】
【0096】
10 動脈圧波形、動脈圧信号
20 心周期
30 点、拡張末期圧、心周期の終点/開始点
50 動脈圧波形
60 心室期外収縮
80 動脈圧波形
90 心周期
100 心周期
110 心周期
120 重複切痕
130 最大点
200 圧力センサ
210 カテーテル
220 動脈
230 一部分
240 圧力センサ
250 指
300 処理システム
302 コンディショニング回路
304 アナログ−デジタル変換器ADC
305 クロック回路
310 ソフトウェアモジュール
315 メモリ領域
320 モジュール
330 モジュール
400 入力デバイス
500 ディスプレイ、記録デバイス
800 波形
810 呼吸パラメータ
900 波形
910 矢印
1000 波形
1010 四角
1020 丸
1100 波形
1110 四角
1120 丸
1200 波形
1210 四角
1220 丸
1300 波形
1310 四角
1320 丸
1400 波形
1410 四角
1420 丸
1500 波形
1510 心周期
1520 心周期、点
1530 収縮期圧
1540 呼吸パラメータ
1550 擬似終点
1560 心周期
1570 周期、点
1580 擬似開始点
1590 心周期
【技術分野】
【0001】
本願は、心血管系パラメータたとえば流体応答性または容積応答性を反映するパラメータを決定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特に一回拍出量(SV)、心拍出量(CO)、拡張末期容積、駆出率、一回拍出量変動(SVV)、脈圧変動(PPV)、および収縮期圧変動(SPV)などの指標は、疾患の診断だけでなく、被験者と被験動物(以下、被験体と呼ぶ)の両方の前負荷依存性、流体応答性、または容積応答性の状態の「リアルタイム」モニタリングにも重要である。したがって、これらの心臓パラメータのうちの1つまたは複数をモニタする何らかの形態の機器を備えていない病院はほとんどない。侵襲的技法、非侵襲的技法、およびそれらの組み合わせを含む多数の技法が使用されており、さらに多くの技法が文献で提案されている。
【0003】
SVを測定するために使用される技法の多くは、COの推定値も提供するように適合されうる。なぜなら、COは一般に心拍数(HR)のSV倍と規定され、HRはモニタリング機器にとって通常利用可能であるからである。逆に、COを推定する大部分のデバイスは、計算時にSVも推定する。SVVを推定する1つの方法は、複数のSV値を収集し、測定間隔ごとの差を計算するだけである。
【0004】
SVまたはCOを測定する1つの方法は、カテーテルに流量測定デバイスを取り付け、このデバイスを被験体の心臓内またはその近傍に配置することである。このようなデバイスには、右心房などの上流位置で物質またはエネルギー(通常は熱)のいずれかを一度に大量に(bolus)注入し、肺動脈などの下流位置におけるこの注入した物質またはエネルギーの特性に基づいて流量を決定するものがある。このような侵襲的技法(特に、熱希釈)の実装形態を開示する特許には、特許文献1(Newbowerら、1980年12月2日)、特許文献2(Yelderman、1985年4月2日)、特許文献3(McKownら、1992年9月8日)、および特許文献4(McKownら、1997年11月18日)がある。COを動脈血および混合静脈血の酸素化の関数として計算する公知のフィック法に基づく侵襲的デバイスもある。
【0005】
侵襲的技法は、特にこのようなモニタリングを必要とする被験体が重態であるために既に入院しているときに、明らかな欠点を有する。侵襲的方法は、あまり明らかではない欠点も有しており、たとえば、熱希釈などのいくつかの技法は、注入される熱の均一な拡散などの前提に依拠しており、これが測定の精度に影響を及ぼすことがある。さらに、器具を血流に入れると、この器具によって測定される値が影響を受ける場合がある。
【0006】
侵襲的トランスデューサならびに非侵襲的トランスデューサを使用するドプラ法も、流量データを取得し、次にこの流量データを使用してSVおよびCOを計算するために使用されている。しかし、これらのシステムは、一般に高価であり、その精度は、流路の直径および全体的な形状を正確に把握することによって決まる。しかし、このような正確な把握が可能であることは、特にリアルタイムモニタリングが必要な状況下では、あまりない。
【0007】
低侵襲でまたは侵襲せずに取得可能な1つの血液特性は血圧である。血圧測定技術には、患者の外傷が最小限であることに加えて、正確であるというさらなる利点がある。
【0008】
多数の血圧測定システムは、COなど対象となる1つまたは複数の心臓パラメータの推定値を血圧波形の特性から計算するpulse contour法(PCM)に依拠している。PCMでは、大動脈特性インピーダンス、コンプライアンス、および全末梢血管抵抗などの「ウインドケッセル」パラメータは、大動脈の線形または非線形の血行動態モデルを構築するために使用されることが多い。本質的に、血流は、並列接続された抵抗および静電容量(コンプライアンス)とインピーダンスが直列である回路における電流の流れにたとえられる。このモデルに必要な3つのパラメータは、通常、複雑な較正プロセスにより経験に基づいて、または集めた「人体計測」データ、すなわち他の患者もしくは試験被験体の年齢、性別、身長、体重、および/もしくは他のパラメータに関するデータからのいずれかで決定される。特許文献5(Wesseling、1995年3月28日)および特許文献6(Petrucelliら、1996年7月16日)には、COを決定するためにウインドケッセル回路モデルに依拠するシステムが開示されている。
【0009】
PCMに基づくシステムは、指カフなどのさまざまな測定装置を使用して得られる血圧測定値を使用するSV由来の心臓パラメータをモニタ可能であり、程度の差はあるが持続的にモニタすることができる。しかし、この使いやすさは、精度を潜在的に犠牲にして得られる。なぜなら、PCMは、それが派生したかなり簡単な3パラメータモデルより正確なものではない可能性があるからである。他の現象を正確に説明するために、はるかに高次のモデルが必要とされることがある。基本的なPCMモデルの精度を向上させるために、さまざまな複雑度を有する多数の改良が提案されている。
【0010】
最近、いくつかの研究において、機械的換気下で心血管系と肺の相互作用から生じる、左室一回拍出量でみられる変動をモニタすることの臨床的重要性が確認された。これらの一回拍出量変動(SVV)は、機械的換気に起因する胸腔内圧の周期的な増加および減少によって引き起こされ、これが、心臓の前負荷および後負荷の変動をもたらす。SVVは最近、広範に研究され、いくつかの研究から、種々の臨床的状況で前負荷依存性および流体応答性の予測因子としてSVVを使用することの有用性が示された。SVVに基づく他のいくつかのパラメータも有用であることがわかっている。特に、デルタ上昇(Δ上昇)成分およびデルタ下降(Δ下降)成分を有する収縮期圧変動(SPV)は、前負荷依存性および流体応答性の非常に有用な予測因子であることが判明している。SPVは、呼吸により誘発された一回拍出量の変動に起因する動脈圧の変化に基づく。最近研究され、前負荷依存性および流体応答性の有効な指標であることが示されたさらに別のパラメータは、脈圧変動(PPV)である。
【0011】
動脈圧波形解析法におけるこれらの最近の進歩により、より低侵襲的で持続的かつリアルタイムにSVVを推定するまたとない機会が訪れた。これによって、臨床医は、救急救命患者の血行動態状態の評価において、SVおよびCOに加えてSVVを日常的に使用することが可能になる。
【0012】
呼吸により誘発された動脈圧の変化に基づいて前負荷依存性および流体応答性を測定するための既存のシステムはほとんどすべて、数個しかない方法のうちの1つに基づくものである。文献に記載されている方法のうちいくつかは、脈圧変動(PPV)、収縮期圧変動(SPV)、および一回拍出量変動(SVV)の測定を含む。
【0013】
PPVの推定は、以下の式1に基づく。
【0014】
【数1】
【0015】
ここで、PPは測定された脈圧であり、PPmaxおよびPPminはそれぞれ、1回の呼吸(吸息−呼息)周期中の脈圧の最大値および最小値である。PPは、1回の心周期中の最大圧と最小圧の差として計算される。
【0016】
SPVの推定は、以下の式2に基づく。
【0017】
【数2】
【0018】
ここで、SPは測定された収縮期圧であり、SPmaxおよびSPminはそれぞれ、1回の呼吸周期中の収縮期圧の最大値および最小値である。
【0019】
同様に、SVVの推定は、以下の式3に基づく。
【0020】
【数3】
【0021】
ここで、SVは一回拍出量であり、SVmaxおよびSVminはそれぞれ、1回の呼吸周期中の一回拍出量の最大値および最小値である。
【0022】
式1、式2、および式3では、分母はそれぞれ、PP、SP、およびSVの最大値と最小値の平均である。言い換えれば、分母は、2つの測定点のみではあるが、平均値である。このような極値の単純な平均化は、単に計算を単純化するために最もよくみられるものであり、これは、一般に手動によって実行されてきた。しかし、信頼性のより高い値は、測定間隔にわたるすべての測定値の平均、すなわちPP、SP、およびSVの第1の統計モーメントを使用することによって、取得されうる。
【0023】
したがって、PPV、SPV、およびSVVのそれぞれに対して、それぞれの変動値式は、極(最大および最小)値の平均に対する値の範囲(最大マイナス最小)の大きさを示す。
【0024】
特許文献7では、以下の式4に基づいてSVVを測定するために動脈圧周期の標準偏差を使用する方法を含む、SVVを計算するためのさらなる方法が開示されている。
【0025】
【数4】
【0026】
ここで、std(P)maxおよびstd(P)minはそれぞれ、1回の呼吸周期中の動脈圧の最大および最小の標準偏差であり、std(P)meanは、同じ呼吸周期における動脈圧信号の平均標準偏差である。標準偏差は、単一の心周期内のすべての圧力サンプルの標準偏差として算出される。特許文献7では、以下の式5に基づいて動脈圧信号の標準偏差を使用してSVVを測定する代替方法も開示されている。
【0027】
【数5】
【0028】
ここで、std(std(P))は、少なくとも1つの呼吸周期を含む期間における動脈圧の拍動の標準偏差の標準偏差であり、mean(std(P))は、同じ期間に対する動脈圧の拍動の標準偏差の平均であり、Cは、経験に基づいて導出された定数である。
【0029】
SVVの特定のモニタリングは、特定の困難と利点の両方を有する。生理学的には、SVVは、呼吸循環相互作用のいくつかの複雑な機序に基づく。簡単に言えば、機械的換気によって左室前負荷の変化が生じ、これが左室一回拍出量および収縮期血圧の明確な変動をもたらす。SVVのモニタリングは、輸液(volume administration)に対する左室応答の予測を可能にし、血液量減少の適正な評価および以降の決定と共に、多数の重大な状況で緊急輸液療法を行うのに役立つ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【特許文献1】米国特許第4,236,527号
【特許文献2】米国特許第4,507,974号
【特許文献3】米国特許第5,146,414号
【特許文献4】米国特許第5,687,733号
【特許文献5】米国特許第5,400,793号
【特許文献6】米国特許第5,535,753号
【特許文献7】米国特許第7,422,562号
【特許文献8】仮特許出願第61/151,670号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
本発明の課題は、上記課題を解決するためになされたものであって、修正された波形データセットを使用して、心血管系パラメータたとえば流体応答性または容積応答性を反映するパラメータを決定するための方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0032】
心血管系パラメータを決定するための方法が開示される。これらの方法は、動脈圧信号、またはパルスオキシメトリ(pulseox)、ドプラ超音波、もしくは生体インピーダンス信号などの、動脈圧信号に比例する、もしくは動脈圧信号から導出された任意の信号に対応する波形データセットを受け取るステップを最初に含む。この方法は、次に、波形データセット内の個々の心周期を識別するステップ、この個々の周期の波形特性を測定するステップ、およびこの個々の心周期が規則的な心周期かそれとも不規則な心周期かを判定するステップを含む。心周期が規則的な心周期および不規則な心周期に分類されたら、呼吸パラメータが測定される。次に、規則的な心周期の波形特性および不規則な心周期の波形特性を含む修正された波形データセットが作成され、ここで、不規則な心周期の波形特性が、推定された波形特性に置き換えられる。修正された波形を作成するために使用される推定された波形特性が、規則的な心周期の波形特性に基づいて、および必要に応じて呼吸パラメータに基づいて計算される。場合によっては、推定された波形特性は、規則的な心周期の波形特性のみに基づいて決定され、場合によっては、推定された波形特性は、規則的な心周期の波形特性と呼吸パラメータの両方に基づいて決定される。最後に、修正された波形データセットを使用して心血管系パラメータが計算される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】いくつかの心周期を表示する、動脈圧対時間(1/100秒単位)の波形を示す図である。
【図2】2つの不規則な心周期、この場合は心室期外収縮を含む、動脈圧対時間(1/100秒単位)の波形を示す図である。
【図3】2つの規則的な心周期および1つの不規則な心周期を表示する、動脈圧対時間(1/100秒単位)の波形を示す図である。
【図4】不規則な心周期の持続時間(duration)(te)を示すために注釈が付けられた、動脈圧対時間(1/100秒単位)の波形を示す図である。
【図5】不規則な心周期の収縮期の持続時間(ts)および拡張期の持続時間(td)を示すために注釈が付けられた、動脈圧対時間(1/100秒単位)の波形を示す図である。
【図6】不規則な心周期の収縮期上行脚(systolic rise)の持続時間(tr)および収縮期下行脚(systolic decay)の持続時間(tdec)を示すために注釈が付けられた、動脈圧対時間(1/100秒単位)の波形を示す図である。
【図7】不規則な心周期の下行脚全体(overall decay)の持続時間(tov_dec)を示すために注釈が付けられた、動脈圧対時間(1/100秒単位)の波形を示す図である。
【図8】不規則な心周期がなく、計算された呼吸パラメータも示す、動脈圧対時間の波形を示す図である。
【図9】不規則な心周期を有する、動脈圧対時間の波形を示す図である。
【図10】脈拍数に基づいて検出可能な不規則な心周期を有する、動脈圧対時間の波形を示す図である。
【図11】収縮期圧に基づいて検出可能な不規則な心周期を有する、動脈圧対時間の波形を示す図である。
【図12】脈圧に基づいて検出可能な1つの不規則な心周期を有する、動脈圧対時間の波形を示す図である。
【図13】収縮期圧と脈拍数の両方に基づいて検出可能な不規則な心周期を有する、動脈圧対時間の波形を示す図である。
【図14】右側脈圧(right-side pulse pressure)と比較すると異なる左側脈圧(left-side pulse pressure)に基づいて検出可能な不規則な心周期を有する、動脈圧対時間の波形を示す図である。
【図15】不規則な心周期を有し、計算された呼吸パラメータも示す、動脈圧対時間の波形を示す図である。
【図16】本明細書において説明する方法を実施するためのシステムの主要な構成要素を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
種々の図面における同じ参照番号および記号は、同じ要素を示す。
【0035】
上記の式1から式5によって示されるように、心周期の規則性、一貫性、および信頼性は、SVV、PPV、SPV、およびその他の心血管系パラメータの正確な評価にとって重要である。たとえば、心臓不整脈、心室期外収縮、心房細動によって引き起こされる不規則な心周期、またはノイズ、電気的干渉、もしくはモーションアーチファクトの影響を受ける心周期などの、測定周期内での不規則な心周期の発生は、前負荷応答指標としてSVV、PPV、SPV、またはその他の心血管系パラメータの精度に著しく影響を及ぼしうる。たとえば、心臓不整脈の場合、心周期ごとの一回拍出量の変動は、機械的換気によって引き起こされる前負荷変動からではなく、変えられた心臓の充満時間を反映する。それらのタイプの状況では、SVV、PPV、SPV、またはその他の心血管系パラメータは、前負荷依存性および流体応答性を予測するために使用することはできない。これらの問題を解決するために、本明細書で開示される方法は、不規則な心周期の影響を排除し、不規則な心周期が高頻度で発生する状況における前負荷依存性および流体応答性の正確な測定を可能とする。このような正確な測定は、以前から知られている技法では不可能であった。
【0036】
本明細書で開示される方法は、修正された波形データセットを使用して、心血管系パラメータたとえば前負荷依存性および流体応答性を反映するパラメータを決定する。この波形データセットは、たとえば動脈圧からの信号、またはパルスオキシメトリ信号、ドプラ超音波信号、もしくは生体インピーダンス信号などの、動脈圧信号に比例する、もしくは動脈圧信号から導出された任意の信号に対応する。これらの方法は、波形データセット内の個々の心周期を識別するステップ、この個々の周期の波形特性を測定するステップ、次にこの個々の心周期が規則的な心周期かそれとも不規則な心周期かを判定するステップを含む。心周期が検出され、規則的な心周期および不規則な心周期に分類されたら、呼吸パラメータが測定される。この呼吸パラメータは、規則的な心周期の波形特性のみを使用して計算されてもよいし、不規則な心周期からの波形特性を含んでもよい。次に、規則的な心周期の波形特性および不規則な心周期の波形特性を含む修正された波形データセットが作成され、ここで、不規則な心周期の波形特性が、推定された波形特性に置き換えられる。修正された波形を作成するために使用される推定された波形特性は、規則的な心周期の波形特性に基づいて、および必要に応じて呼吸パラメータに基づいて計算される。場合によっては、推定された波形特性は、規則的な心周期の波形特性のみに基づいて決定され、場合によっては、推定された波形特性は、規則的な心周期の波形特性と呼吸パラメータの両方に基づいて決定される。最後に、修正された波形データセットを使用して心血管系パラメータが計算される。本明細書において説明する方法によって波形データセット内で検出され、波形特性を置き換えさせる不規則な心周期の例としては、たとえば、心室期外収縮、心房期外収縮、不整脈によって引き起こされる心周期、心房細動によって引き起こされる心周期、患者によるアーチファクト、外部干渉からのノイズ、およびそれぞれの心拍動が流れまたは圧力を生成しない状況における欠如した(missing)心周期がある。本明細書では、波形データセットという用語は、1つの信号たとえば動脈圧信号、またはパルスオキシメトリ(pulseox)、ドプラ超音波、もしくは生体インピーダンス信号などの、動脈圧信号に比例する、もしくは動脈圧信号から導出された任意の信号に対応するデータのセットを指す。
【0037】
本明細書において説明する方法では、個々の心周期(心拍動とも呼ばれる)が信号内で検出される。図1は動脈圧信号の一例を示し、動脈圧信号10に沿った点30は、それぞれの心周期の拡張末期圧に対応する検出された心周期および次の心周期の開始点を示す。信号内での個々の心周期の検出は、2009年2月11日に出願された特許文献8に記載されているアルゴリズムなどのリアルタイム心拍動検出デジタル信号処理アルゴリズムに基づいてよく、同出願の全体が本明細書に組み込まれ、かつその本文が付録Aに添付される。これらのアルゴリズムは、信号の1次導関数を計算するステップ、および適応閾値とゼロ交差検出の組み合わせを使用して心周期の始まりを検出するステップを含む。
【0038】
本明細書において説明する方法では、次に、不規則な心周期を検出するためのさまざまな方法を利用する。心室期外収縮、心房期外収縮、不整脈によって引き起こされる心周期、心房細動によって引き起こされる心周期、患者によるアーチファクト、欠如した心周期、または外部干渉からのノイズなどの不規則な心周期の検出は、波形データセット内の個々の心周期を識別するステップ、およびこの個々の心周期の1つまたは複数の波形特性を対照心周期の1つまたは複数の波形特性と比較するステップによって達成されうる。不規則な心周期は、個々の心周期の1つまたは複数のパラメータを対照心周期からの同じ1つまたは複数のパラメータと比較することによって識別される。個々の心周期の1つまたは複数のパラメータが、対照心周期からの同じ1つまたは複数のパラメータと所定の閾値量だけ異なる場合、個々の心周期は不規則な心周期と識別される。
【0039】
個々の心周期が規則的な心周期かそれとも不規則な心周期かを判定するために使用されるパラメータは、統計学的であり、他の測定は心周期の一部分すなわち相(phase)に基づく。心周期の相の例としては、心周期全体、収縮期、拡張期、収縮期上行脚、収縮期下行脚、または下行脚全体がある。本明細書において例として使用する心周期の一部分が、図1〜図7に示されている。図1〜図7のそれぞれでは、x軸の単位は100分の1秒である(たとえば、x軸単位の100は1秒に相当し、x軸単位の200は2秒に相当する)。図1は、いくつかの心周期20を有する動脈圧波形10を示す。動脈圧波形10に沿った点は、1つの心周期の拡張末期圧30および次の心周期の開始点を示す。図2は、2つの心室期外収縮60に相当する2つの不規則な心周期を有する動脈圧波形50を示す。図2の心室期外収縮60により、他の心周期と比較したときにより低い圧力を有する心周期が生じる。図3は、3つの心周期(90、100、および110)を有する動脈圧波形80を示す。中央の心周期100は、心室期外収縮を表す。収縮期相の終わりおよび拡張期相の始まりを規定する心周期の動脈圧波形の変曲点を、重複切痕(dichrotic notch)120と呼ぶ。
【0040】
心周期の終点/開始点30および重複切痕120は、本明細書において説明する方法と共に使用される種々のパラメータを定義するための開始点および終点を提供し、たとえば、時間間隔は、前の心周期の拡張期相の終わりから現在の拡張期相の終わりまでに対応する時間から測定されうる。本明細書において使用するパラメータとしては、心周期全体、ならびに動脈圧信号の収縮期、拡張期、収縮期上行脚、収縮期下行脚、および下行脚全体に対応する相がある。これらのパラメータのそれぞれの時間成分も使用され、すなわち、有用なパラメータとしては、心周期全体の持続時間(te)、収縮期の持続時間(ts)、拡張期の持続時間(td)、収縮期上行脚の持続時間(tr)、収縮期下行脚の持続時間(tdec)、および下行脚全体の持続時間(tov_dec)がある。
【0041】
心周期の持続時間teが図4に示されている。図示のように、teは、心周期の開始点30と心周期の終点の間の時間である。
【0042】
収縮期の持続時間tsが図5に示されている。図示のように、tsは、心周期の開始点30と心周期の重複切痕120の間の時間である。
【0043】
拡張期の持続時間tdも図5に示されている。図示のように、tdは、心周期の重複切痕120と心周期の終点の間の時間である。
【0044】
収縮期上行脚の持続時間trが図6に示されている。図示のように、trは、心周期の開始点30から収縮期出現後の動脈圧の初期増加の最大点130までの時間である。
【0045】
収縮期下行脚の持続時間tdecも図6に示されている。図示のように、tdecは、収縮期出現後の動脈圧の初期増加の最大点130から重複切痕120までの時間である。
【0046】
下行脚全体の持続時間tov_decが図7に示されている。図示のように、tov_decは、収縮期出現後の動脈圧の初期増加の最大点130から心周期の終点までの時間である。
【0047】
不規則な心周期を検出する1つの方法は、心周期の異なる相の持続時間を分析することであり、すなわち、上述のような動脈波形/信号の異なる相の時間間隔を比較する。本明細書において説明する方法では、たとえば、心周期全体(すなわち瞬時心拍数(beat heart rate))の持続時間、収縮期の持続時間、拡張期の持続時間、収縮期上行脚の持続時間、収縮期下行脚の持続時間、および/または下行脚全体の持続時間を比較する。
【0048】
不規則な心周期を検出する別の方法は、動脈波形/信号の重複切痕の場所を分析することである。たとえば、重複切痕の場所対最大収縮期圧および重複切痕の場所対拡張期圧(最大収縮期圧より前の心周期の最小圧)が分析される。加えて、心周期の始まりの拡張期圧に対応する値と心周期の最大圧に対応する値の差が使用可能である。さらなる波形特性としては、心周期の最大圧に対応する値と心周期の終わりにおける拡張期圧に対応する値の差がある。
【0049】
不規則な心周期を検出するため、上述のような動脈波形の異なる部分の統計的特性すなわち統計モーメントが比較される。本明細書において説明する方法では、最初の4つの統計モーメントすなわち平均、分散、歪度、および尖度が使用される。以下の式は、最初の4つの統計モーメントを計算するために使用可能である(ここで、Nは収縮期中のサンプルの総数である)。
【0050】
平均:
【0051】
【数6】
【0052】
分散:
【0053】
【数7】
【0054】
歪度:
【0055】
【数8】
【0056】
尖度:
【0057】
【数9】
【0058】
心周期を比較するために使用できる追加の特性としては、上述の心周期の相のパワーならびに相の周波数特性および時間−周波数特性がある。心周期の相のパワーは、各相下での心臓信号の積分として測定される。パワーは、各相内の信号を積分することによって計算されうる。したがって、たとえば、収縮期相のパワーEsysは、以下の式を使用して計算可能である(ここで、Nは収縮期中のサンプルの総数である)。
【0059】
【数10】
【0060】
心周期の各相の周波数特性は、フーリエ変換解析を実行することによって導出可能である。高速フーリエ変換を含む種々の知られているフーリエ変換が使用されうる。
【0061】
心周期の各相の時間−周波数特性は、ウェーブレット変換解析を使用して導出可能である。ウェーブレット解析は、時間領域に過渡またはその他の非定常特性を有する信号の解析に好適である。フーリエ変換とは対照的に、ウェーブレット解析は、時間領域で、すなわちイベントが発生したときに、情報を保持する。
【0062】
また、波形特性は、数学的補間法、カーブフィッティング法、または近似関数を使用して計算可能である。数学的補間法の例としては、スプライン補間、多項式補間、指数補間、線形補間、非線形補間、区分補間、および多変数補間(multivariate interpolation)がある。
【0063】
心周期の1つまたは複数の部分の統計学的特性またはその他の特性もしくはパラメータを対照心周期と比較するにあたっては、さまざまな手法が使用可能である。たとえば、心周期の1つまたは複数の特性は、調査中の心周期の直前の心周期の同じ特性(複数可)と比較可能であり、すなわち、対照心周期は、調査中の心周期の直前の心周期である。別の比較は、心周期の1つまたは複数の特性を、調査中の心周期の直後の心周期の同じ特性(複数可)と比較するステップを含むことができ、すなわち、対照心周期は、調査中の心周期の直後の心周期である。さらなる比較は、心周期の1つまたは複数の特性を、調査中の心周期の直前の心周期と調査中の心周期の直後の心周期の両方と比較するステップを含むことができ、すなわち、対照心周期は、調査中の心周期の直前の心周期および調査中の心周期の直後の心周期である。追加の比較は、心周期の1つまたは複数の特性を、少なくとも3つの心周期を含む系列からの中央(または平均)の心周期における同じ特性(複数可)と比較するステップを含むことができ、すなわち、対照心周期は、少なくとも3つの心周期を含む系列からの中央(または平均)の心周期である。別の比較は、心周期の1つまたは複数の特性を心周期の相の統計学的測定における同じ特性(複数可)と比較するステップを含むことができ、すなわち、対照心周期は、比較されている測定の統計学的表現である。これらの比較例は、1つまたは複数の特性の比較として提示されているが、当業者には明らかなように、心周期の個々のまたは複数の部分に対する複数のパラメータが使用可能である。さらに、同様に当業者には明らかなように、これらの方法はコンピュータデバイスを使用して実行される可能性が高いので、大量のこれらの比較はリアルタイムで実行可能である。
【0064】
このような比較を行うにあたって、所定の閾値が使用可能である。本明細書では、所定の閾値は、比較を行う前に割り当てられた値である。一般に、パラメータに対する所定の閾値は、たとえばモニタされている被験体から、平均化されたデータから、または擬人化されたデータ(anthropomorphic data)から測定された、対照心周期に関連する値を示す。測定されたパラメータに応じて、所定の閾値は、非常に小さな値または差であってもよいし、より大きな値であってもよい。このような所定の閾値は、医療専門家または器具オペレータによって容易に提供される。特定のパラメータに選択される所定の閾値量は、使用される特定のパラメータの精度によって決まる。
【0065】
たとえば、単一のパラメータが使用される場合、所定の閾値量は、対照心周期の同じパラメータと比較して30パーセント以上の差、対照心周期の同じパラメータと比較して25パーセント以上の差、対照心周期の同じパラメータと比較して20パーセント以上の差、対照心周期の同じパラメータと比較して15パーセント以上の差、対照心周期の同じパラメータと比較して10パーセント以上の差、対照心周期の同じパラメータと比較して5パーセント以上の差、対照心周期の同じパラメータと比較して4パーセント以上の差、対照心周期の同じパラメータと比較して3パーセント以上の差、対照心周期の同じパラメータと比較して2パーセント以上の差、対照心周期の同じパラメータと比較して1パーセント以上の差、対照心周期の同じパラメータと比較して0.5パーセント以上の差、対照心周期の同じパラメータと比較して0.4パーセント以上の差、対照心周期の同じパラメータと比較して0.3パーセント以上の差、対照心周期の同じパラメータと比較して0.2パーセント以上の差、または対照心周期の同じパラメータと比較して0.1パーセント以上の差とすることができる。
【0066】
さらに、複数のパラメータが使用される場合、所定の閾値量は、パラメータ測定の精度と組み合わせて使用されるパラメータの特定の組み合わせによって決まる。たとえば、複数のパラメータを使用する場合、所定の閾値量は、対照心周期の同じ1つまたは複数のパラメータと比較して30パーセント以上の差、対照心周期の同じ1つまたは複数のパラメータと比較して25パーセント以上の差、対照心周期の同じ1つまたは複数のパラメータと比較して20パーセント以上の差、対照心周期の同じ1つまたは複数のパラメータと比較して15パーセント以上の差、対照心周期の同じ1つまたは複数のパラメータと比較して10パーセント以上の差、対照心周期の同じ1つまたは複数のパラメータと比較して5パーセント以上の差、対照心周期の同じ1つまたは複数のパラメータと比較して4パーセント以上の差、対照心周期の同じ1つまたは複数のパラメータと比較して3パーセント以上の差、対照心周期の同じ1つまたは複数のパラメータと比較して2パーセント以上の差、対照心周期の同じ1つまたは複数のパラメータと比較して1パーセント以上の差、対照心周期の同じ1つまたは複数のパラメータと比較して0.5パーセント以上の差、対照心周期の同じパラメータと比較して0.4パーセント以上の差、対照心周期の同じパラメータと比較して0.3パーセント以上の差、対照心周期の同じパラメータと比較して0.2パーセント以上の差、または対照心周期の同じパラメータと比較して0.1パーセント以上の差とすることができる。
【0067】
所定の閾値に加えて、分析に使用されるすべてのパラメータは、単一のパラメータデータセットに集められうる。データセットでは、特定のパラメータの精度が、そのパラメータデータセット内のパラメータの重みを定義する。パラメータデータセット内のそれぞれのパラメータの重みに基づいて、閾値が各パラメータに割り当てられ、所定の閾値を超える、パラメータデータセットからのパラメータの数が計数される。複数のパラメータが使用されるとき、各パラメータは、それ自体の所定の閾値量を有することができる。たとえば、所定の閾値量は、対照心周期の同じパラメータと比較して30パーセント以上の差、対照心周期の同じパラメータと比較して25パーセント以上の差、対照心周期の同じパラメータと比較して20パーセント以上の差、対照心周期の同じパラメータと比較して15パーセント以上の差、対照心周期の同じパラメータと比較して10パーセント以上の差、対照心周期の同じパラメータと比較して5パーセント以上の差、対照心周期の同じパラメータと比較して4パーセント以上の差、対照心周期の同じパラメータと比較して3パーセント以上の差、対照心周期の同じパラメータと比較して2パーセント以上の差、対照心周期の同じパラメータと比較して1パーセント以上の差、または対照心周期の同じパラメータと比較して0.5パーセント以上の差とすることができる。具体的な例として、第1のパラメータは、対照心周期の同じパラメータと比較して15パーセント以上の差という所定の閾値量を有することができ、第2のパラメータは、対照心周期の同じパラメータと比較して4パーセント以上の差という所定の閾値量を有することができる。所定の閾値量の数は、評価されるパラメータの数に等しいかまたはこれより少なくてよい。
【0068】
呼吸係数は、修正された波形における不規則な心周期の波形特性を置き換えるために使用される波形特性を推定するために規則的な心周期と共に使用されうる。呼吸パラメータは、呼吸たとえば自発呼吸または機械的換気によって引き起こされる、波形データセットの呼吸誘発性変動である。機械的換気の例としては、従圧式換気、従量式換気、同期型間欠的強制換気、圧支持換気、量支持換気(volume support ventilation)、高頻度換気、同期型間欠的陽圧換気、持続陽圧換気、および非侵襲的換気がある。図8は、不規則な心周期のない動脈圧信号の波形800を示す。収縮期圧の波形特性に基づいて計算された、この規則的な波形の呼吸パラメータ810は、各心周期の収縮期(最大)圧をほぼたどる破線によって示されている。呼吸パラメータは、最小圧、拡張期圧、重複切痕、心周期の標準偏差、または各心周期の終点もしくは開始点などの波形のその他の特徴に関連することができる。呼吸パラメータは、複数の特性を表すことができ、たとえば、呼吸機能は、最大圧と、最小と最大の差とを含むことができる。たとえば、収縮期圧を使用すると、欠如した心周期などの不規則な心周期の波形特性を置き換えるときの置き換え用波形特性の最大アライメント点が得られる。
【0069】
本明細書において説明する方法を使用するために説明される波形信号の凸凹のいくつかは、以下の例によって説明されうる。図9は、不規則な心周期が矢印910によって示される動脈圧信号の波形900を示す。これらの不規則な心周期ならびにこれら以降の心周期の波形特性が、推定された値に置き換えられない場合、計算された一回拍出量変動は、たとえば、その真の値より大きくなる。図10は、いくつかの不規則な心周期を示す動脈圧信号の異なる波形1000を示す。例示的な不規則な心周期の開始点は、四角1010により示される(さらに、その他の心周期の開始点は丸1020により示される)。示される不規則な心周期を識別する1つの方法は、脈拍数をモニタする上述の方法を使用することであり、すなわち、不規則な拍動は、規則的な拍動より長い持続時間を有する。図11は、不規則な心周期の開始点が四角1110により示される(さらに、その他の心周期の開始点が丸1120により示される)動脈圧信号のさらなる波形1100を示す。この不規則な心周期は、たとえば収縮期圧をモニタすることによって検出可能であり、すなわち、この不規則な心周期は、規則的な心周期より低い収縮期圧を有する。図12は、不規則な心周期の開始点が四角1210により示される(さらに、その他の心周期の開始点が丸1220により示される)動脈圧信号の別の波形1200を示す。この不規則な周期は、たとえば脈圧をモニタすることによって検出可能であり、すなわち、不規則な周期は、規則的な心周期より低い脈圧を有する。本明細書での脈圧(PP)は、収縮期圧(Psys)マイナス拡張期圧(Pdia)、すなわちPP=Psys−Pdiaである。
【0070】
図9〜図12に関して説明した単一パラメータのモニタリングによって、多数の不規則な心周期が見つけられるが、複数のパラメータもモニタされうる。たとえば、図13は、2つの不規則な心周期の開始点が四角1310により示される(さらに、その他の心周期の開始点が丸1320によって示される)動脈圧信号の波形1300を示す。これらの不規則な心周期は、たとえば、収縮期圧と脈拍数の両方をモニタすることによって識別可能であり、すなわち、これらの心周期は両方とも、規則的な拍動より小さい収縮期圧を有し、ならびに規則的な拍動より長い持続時間を有する。図14は、複数の不規則な心周期の開始点が四角1410により示される(さらに、その他の心周期の開始点が丸1420によって示される)動脈圧信号のさらなる波形1400を示す。これらの示された不規則な心周期は、右側脈圧と異なる左側脈圧を有し、これらの値を調べることによって識別されうる。本明細書では、左側脈圧(LPP)は、現在の心周期の収縮期圧(Psys)マイナス現在の心周期の拡張期圧(Pdia_cur)、すなわちLPP=Psys−Pdia_curであり、右側脈圧(RPP)は、現在の心周期の収縮期(Psys)マイナス次の心周期の拡張期圧(Pdia_next)、すなわちRPP=Psys−Pdia_nextである。これらの方法のうちの1つまたは複数を使用することによって、不規則な心周期が識別可能であり、それらが心臓パラメータの計算に及ぼす悪影響は最小限に抑えられうる。
【0071】
図15は、いくつかの不規則な心周期の波形特性がどのように回復され、推定された波形特性に置き換えられうるかを説明するために使用されうる。図15では、波形1500は、規則的な心周期と不規則な心周期の両方を有する動脈圧信号である。波形1500では、各規則的な心周期1510の開始点は菱形で示され、各不規則な周期1520の開始点は四角で示される。いくつかの心周期は、不規則な心周期の影響により波形から欠如している。このような欠如した周期の収縮期圧1530の場所は、呼吸パラメータ1540上の黒い丸によって示される。
【0072】
いくつかの不規則な心周期は、規則的な周期より長い持続時間を有するが、延長された持続時間を除いて、これらの不規則な心周期は、異常ではなく計算に直接的に使用できる、収縮期圧などの、直接的に測定可能な波形パラメータを有する。これらの不規則な心周期の波形パラメータを使用するため、擬似開始点および/または擬似終点が決定される。擬似開始点および/または擬似終点を決定するため、所与の波形データセット内のすべての規則的な心周期に基づく時間係数が最初に決定される。この時間係数は、たとえば、規則的な周期の中央または平均の時間長(time duration)とすることができる。次に、周期の拡張期圧に基づく圧力係数が、規則的な周期ごとに計算される。この圧力係数は、たとえば、各周期の拡張期圧と次の周期の拡張期圧の最大圧較差を見つけることによって決定される最大圧の差とすることができる。次に、異常な終点を有する不規則な心周期(図15の周期1520など)では、その開始点が決定可能な場合、開始点からのあらかじめ確立された範囲にある波形の圧力データが調査される。この開始点からのあらかじめ確立された範囲は、たとえば、開始点プラス(範囲開始係数*中央の時間長)から開始点プラス(範囲停止係数*中央の時間長)の間とすることができる。範囲開始係数の例としては、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.86、0.87、0.88、0.89、0.9、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、および0.99があるが、これらに限定されない。範囲停止係数の例としては、1.01、1.02、1.03、1.04、1.05、1.06、1.07、1.08、1.09、1.1、1.11、1.12、1.13、1.14、1.15、1.2、1.25、1.3、1.35、1.4、1.45、および1.5があるが、これらに限定されない。開始点からのあらかじめ確立された範囲のさらなる例は、開始点プラス(0.9*中央の時間長)から開始点プラス(1.1*中央の時間長)までの範囲である。加えて、開始点からのあらかじめ確立された範囲は、持続時間の標準偏差に基づいて決定可能であり、すなわち、開始点からの所定の範囲は、開始点プラス(中央の持続時間マイナス持続時間の標準偏差)から開始点プラス(中央の持続時間プラス持続時間の標準偏差)までとすることができる。あらかじめ確立された範囲内に圧力データ点があると仮定すると、圧力データ点と圧力係数の関係が所定の範囲内にある場合、その点が、擬似終点に割り当てられる。たとえば、その圧力データ点と開始点の圧力の間の圧較差が最大差より小さい場合、その点は、擬似終点に割り当てられうる。この基準を満たす複数の点があり、複数の圧力データ点のそれぞれと圧力係数の関係が所定の範囲内にある場合、時間係数に最も近い時間値を有する圧力データ点を擬似終点に割り当てる。たとえば、複数の圧力データ点と開始点の間の時間差が最大時間差より小さい場合、開始点プラス中央の持続時間に最も近い時間を有する圧力データ点が擬似終点に割り当てられうる。あらかじめ確立された範囲内に圧力データがない場合、または圧力データ点と圧力係数の関係が所定の範囲外にある場合、擬似終点が確実に計算できず、擬似終点は割り当てられない。たとえば、見つかった圧力と開始点の圧力の間の圧較差が最大圧較差より大きい場合、擬似終点が割り当てられることは不可能である。
【0073】
異常な開始点を有する不規則な心周期(図15の周期1570など)では、その終点が決定可能な場合、終点からのあらかじめ確立された範囲にある波形の圧力データが調査される。この終点からのあらかじめ確立された範囲は、たとえば、終点マイナス(範囲始まり係数*中央の時間長)と終点マイナス(範囲終了係数*中央の時間長)の間とすることができる。範囲始まり係数の例としては、1.01、1.02、1.03、1.04、1.05、1.06、1.07、1.08、1.09、1.1、1.11、1.12、1.13、1.14、1.15、1.2、1.25、1.3、1.35、1.4、1.45、および1.5があるが、これらに限定されない。範囲終了係数の例としては、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.86、0.87、0.88、0.89、0.9、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、および0.99があるが、これらに限定されない。終点からのあらかじめ確立された範囲のさらなる例は、終点マイナス(1.1*中央の時間長)から終点マイナス(0.9*中央の時間長)までの範囲である。加えて、終点からのあらかじめ確立された範囲は、持続時間の標準偏差に基づいて決定可能であり、すなわち、終点からの所定の範囲は、終点マイナス(中央の持続時間プラス持続時間の標準偏差)から終点マイナス(中央の持続時間マイナス持続時間の標準偏差)までとすることができる。あらかじめ確立された範囲内に圧力データ点があると仮定すると、圧力データ点と圧力係数の関係が所定の範囲内にある場合、その点は、擬似開始点に割り当てられる。たとえば、その圧力データ点と終点の圧力の間の圧較差が最大差より小さい場合、その点は、擬似開始点に割り当てられうる。この基準を満たす複数の点があり、複数の圧力データ点のそれぞれと圧力係数の関係が所定の範囲内にある場合、時間係数に最も近い時間値を有する圧力データ点が擬似終点に割り当てられる。たとえば、複数の圧力データ点と終点の間の時間差が最大時間差より小さい場合、終点プラス中央の持続時間に最も近い時間を有する圧力データ点が擬似終点に割り当てられうる。あらかじめ確立された範囲内に圧力データがない場合、または圧力データ点と圧力係数が所定の範囲外にある場合、擬似開始点が確実に計算できず、擬似開始点は割り当てられない。たとえば、見つけられた圧力と終点の圧力の間の圧較差が最大圧較差より大きい場合、擬似開始点が割り当てられることは不可能である。
【0074】
開始点および終点が両方とも異常である不規則な心周期(1590における心周期など)では、その最隣接周期の開始点と同じ圧力を有する点などの、推定された開始点が使用可能であり、次に、擬似終点が上述のように推定されうる。次いで、推定された終点が、擬似開始点を決定するために使用される。この推定された終点は、その最隣接周期の終点と同じ圧力を有し、擬似開始点は上述のように計算される。推定された開始点と計算された擬似開始点および推定された終点と計算された擬似終点がそれぞれ互いに近いときのみ、擬似開始点および擬似終点がさらなる計算の目的で採用される。そうでない場合は、データの変動が非常に大きく、可変擬似開始点および擬似終点が確実に決定されることは不可能である。互いに近いと考えられるため、2つの点は、互いに所定の時間内にある。所定の時間の長さは、当業者によって、擬似開始点および擬似終点が、データを使用して計算を実行するために望ましい精度を有する許容できる信頼水準を提供するように設定される。このような所定の時間の例としては、5秒、4秒、3秒、2秒、1秒、0.5秒、0.4秒、0.3秒、0.2秒、0.1秒、0.05秒、0.04秒、0.03秒、0.02秒、または0.01秒がある。
【0075】
このような不規則な心周期の一例は、点1520で開始する不規則な周期によって図15に示されている。この不規則な心周期の擬似終点は、上述のように規則的な心周期の波形特性に基づいて擬似終点1550と決定されうる。同様に、点1570で開始するさらなる不規則な心周期の擬似開始点は、擬似開始点1580となるように計算される。このような不規則な心周期の擬似開始点および/または擬似終点が上述のように計算されると、これらの心周期に対する直接的に測定された波形パラメータおよびこの直接的に測定された波形パラメータに基づく計算可能な波形パラメータ/特性は、規則的な心周期の波形パラメータ/特性を用いるさらなる計算で使用可能である。しかし、上述のように不規則な心周期の擬似開始点および/または擬似終点は、常に確実に決定することができるわけではなく、したがって、いくつかの不規則な心周期の波形パラメータ/特性は、この方法で決定することも、さらに計算に使用することもできない。たとえば、1560で示される不規則な心周期の擬似終点を確実に決定することができない。すなわち、開始点プラス(0.9*中央の時間長)と開始点プラス(1.1*中央の時間長)の間で見つけられる点は、上述の基準に適合しない。擬似開始点および/または擬似終点が決定されると、脈圧および周期の標準偏差などの計算された波形パラメータは再計算される必要がないことに留意されたい。
【0076】
決定可能な心臓パラメータを含む不規則な心周期に対する推定された波形特性または計算された波形特性は、決定されたパラメータから直接的に算出されうる。欠如した心周期を含むすべての他の不規則な心周期では、波形特性は、規則的な心周期の波形特性および呼吸パラメータ1540に基づいて推定可能である。呼吸パラメータ1540は、この例では、規則的な心周期の収縮期圧およびいくつかの不規則な心周期の収縮期圧に基づいて計算されたものであり、推定された波形特性に対して相対的な位置決め点を提供し、すなわち、圧力関連の波形特性が推定されると、これらの特性は、呼吸パラメータと比較して調整されうる。推定された波形特性は、次に、修正された波形における不規則な心周期の元の波形特性を置き換えるために使用される。
【0077】
このような波形特性の計算の一例は、以下の式11を使用して計算できる、不規則な周期の標準偏差(σirregular_cycle)の決定である。
【0078】
【数11】
【0079】
式11では、最も近い規則的な周期の収縮期圧(Psys(nearest_regular_cycle))および標準偏差(σ(nearest_regular_cycle))はわかっており、不規則な周期の収縮期圧(Psys(irregular_cycle))は呼吸パラメータからわかっている。収縮期圧は、不規則な周期における脈圧またはその他の波形特性などのその他のパラメータの標準偏差を与えるために、この式においてそのパラメータと置換されうることに留意されたい。加えて、パラメータ間の関係は、式11に示すようなy=a*xではなく、線形すなわちy=a*x+bとすることができ、ここで、yは標準偏差であり、xは収縮期圧であり、aおよびbは定数である。パラメータ間の決定された関係に応じて、非線形、多項式、またはその他などの他の数学的関係も使用されてよい。いくつかの状況では、2つの最も近い周期(すなわち、1つ前および1つ後)がある場合があり、この場合、両方が使用され、不規則な周期の最終的な標準偏差は、それぞれに計算された2つの平均となる。加えて、標準偏差と波形特性の間の関係は規則的な周期から取得されうるので、最も近い周期以外の周期も使用される場合がある。一例として、標準偏差(y)および収縮期圧(x)は、線形関係たとえばy=a*x+bとすることができ、aおよびbが規則的な周期のyおよびxから最初に決定される場合、不規則な周期のyは、その収縮期圧が与えられれば、計算可能である。
【0080】
本明細書において説明する不規則な心周期を補償する修正された波形を作成することによって、データセットに対して実行される計算の精度および感度が向上する。したがって、一回拍出量変動、脈圧変動、収縮期圧変動、一回拍出量、心拍出量、体血管コンプライアンス、心血流量、心血流速度(cardiac flow velocity)、血管コンプライアンス、および/または血管弾性(vascular elastance)などの計算によって、精度および感度の向上が実現される。心室一回拍出量変動の計算の一例が、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第US2005/0187481号に記載されている。
【0081】
修正された波形データセットの作成に加えて、波形データセットを使用して実行される計算の精度および感度を向上させるために、修正の前またはその後にデータセットに対して他の動作が実行可能である。たとえば、信号は、信号に生じうる、ノイズ、干渉、およびアーチファクトの影響を低減するようにフィルタ処理されうる。このようなフィルタ処理は、たとえばローパスフィルタの使用によって達成可能である。フィルタ処理に続いて、大きなモーションアーチファクトが検出され、波形データセットから除去されうる。このようなアーチファクトは、患者の体動(patient movement)、電気的干渉、信号ノイズから生じたり、動脈ラインのフラッシング(flushing)から生じたりすることが多いので、よくみられる。加えて、異常な心周期が拍動検出後に除去されてから不規則な心周期を検出してよい。
【0082】
波形特性が置き換えられた不規則な心周期は、識別されると、グラフィカルユーザインタフェース上に示されうる。動脈圧、またはpulseox、ドプラ超音波、もしくは生体インピーダンス信号などの、動脈圧信号に比例する、もしくは動脈圧信号から導出された任意の信号に対応する波形データセットは、本明細書において説明する方法のステップを用いて、グラフィカルユーザインタフェース上に同時に表示されるとき、不規則な心周期が通常存在するという表示または特定の心周期が不規則な心周期であるという特定の表示が提供されうる。同じ情報は、リアルタイムに示されないデータに対して提供されてよい。
【0083】
波形データセットのための期間は、設定値であってよく、たとえば、期間は、約10分以上、約5分以上、約4分以上、約3分以上、約2分以上、約1分以上、約50秒以上、約40秒以上、約30秒以上、約20秒以上、約10秒以上、約5秒以上、約2秒以上、約1秒以上、約0.5秒以上、または約0.1秒以上とすることができる。たとえば、期間は、約10、約9、約8、約7、約6、約5、約4、約3、約2、または約1分とすることができる。さらに、たとえば、期間は、約55、約50、約45、約40、約35、約30、約25、約20、約15、約10、約5、約2、約1、約0.5、または約0.1秒とすることができる。この期間は、一定であってもよいし、可変であってもよい。さらに、不規則な心周期が検出された場合、波形データセットのための期間は、増加されてもよいし、減少されてもよい。このようなサンプル時間の増加または減少によって、データの検出能力および一貫性が向上することができる。
【0084】
本明細書では、「動脈圧」という用語は、血液が血管の壁を循環することによって作用する力を指し、「動脈圧信号」は、血圧計または他の圧力トランスデューサなどの血圧モニタリング器具からの信号である。本明細書では、「pulseox」という用語は、光吸収の種々の特性を使用して被験体の血液中の酸素の量を間接的に測定する器具であるパルスオキシメータからの信号を指す。本明細書では、「生体インピーダンス信号」という用語は、生体インピーダンスプレチスモグラフィデバイス、すなわち、大動脈中の拍動血液量(pulsatile blood volume)の変化などの血液パラメータを測定するデバイスからの信号である。本明細書では、「ドプラ超音波」という用語は、ドプラ超音波デバイス、すなわちドプラ増強(Doppler enhanced)超音波測定を行うデバイスからの信号を指す。
【0085】
図16は、本明細書において説明する、心血管系パラメータを決定するための方法を実施するために使用できるシステムの主要な構成要素を示す。この方法は、既存の患者モニタリングデバイスで実施されてもよいし、専用モニタとして実施されてもよい。前述のように、動脈圧信号に関連する波形、または動脈圧信号に比例する、動脈圧信号から導出された、もしくは動脈圧信号の関数であるいくつかの他の入力信号が、以下の2つの方法すなわち侵襲的方法および非侵襲的方法のいずれかまたは実際には両方で検知されうる。便宜上、このシステムについては、動脈圧を測定するものとして説明する。
【0086】
図16は、完全を期すために、侵襲的タイプと非侵襲的タイプの両方の圧力検知を示す。本明細書において説明する方法の最も実用的な適用例では、典型的には、1つまたはいくつかの変動のいずれかが実施される。本明細書において説明する方法の侵襲的な適用例では、従来の圧力センサ200が、患者または患畜の身体の一部分230の動脈220に挿入されたカテーテル210に取り付けられる。動脈220は、たとえば、大腿動脈、橈骨動脈、または上腕動脈などの、動脈系の任意の動脈である。本明細書において説明する方法の非侵襲的な適用例では、光電式容積脈波血圧プローブ(photo-plethysmographic blood pressure probe)などの従来の圧力センサ240が、たとえば指250の周囲のカフまたは患者の手首に取り付けられたトランスデューサを使用して、任意の従来の方式で外部に取り付けられる。図16は、両方のタイプを概略的に示している。
【0087】
センサ200、240からの信号は、処理システム300への入力として任意の知られているコネクタを介して渡され、この処理システム300は、1つまたは複数のプロセッサと、信号を処理しコードを実行するために通常含まれる、他のサポートしているハードウェアおよびシステムソフトウェア(図示せず)とを含む。本明細書において説明する方法は、修正された標準的なパーソナルコンピュータを使用して実施されてもよいし、より大規模な専用モニタリングシステムに組み込まれてもよい。本明細書において説明する方法と共に使用するために、処理システム300は、必要に応じて増幅、フィルタ処理、または測距(ranging)などの通常の信号処理タスクを実行するコンディショニング回路302も含んでよく、またはこれに接続される。条件付けられ検知された入力圧力信号P(t)は、次に、その時間基準を有するかこれをクロック回路305から取得する従来のアナログ−デジタル変換器ADC304によってデジタル形態に変換される。よく理解されているように、ADC304のサンプリング周波数は、圧力信号のエイリアシングを回避するように、ナイキスト基準に関して選定すべきである(この手順は、デジタル信号処理の分野で非常によく知られている)。ADC304からの出力は、離散的な圧力信号P(k)であり、その値は、従来のメモリ回路(図示せず)に記憶されてよい。
【0088】
値P(k)は、本明細書において説明する方法の1つまたは複数の態様を実施するための、コンピュータが実行可能なコードを備えるソフトウェアモジュール310によって、メモリに渡されるかまたはこれからアクセスされる。このようなソフトウェアモジュール310の設計は、コンピュータプログラムの当業者には容易であろう。方法によって使用される追加の処理は、320および330などの追加モジュールで実行されうる。
【0089】
以前に決定された開始時点もしくは以前に決定された終了時点などの信号固有データまたは他の患者固有データは、使用される場合、メモリ領域315に格納されてよく、このメモリ領域315は、必要に応じて他の所定のパラメータも格納可能である。これらの値は、任意の知られている入力デバイス400を使用して従来の方式で入力されうる。
【0090】
図16によって示されるように、結果は、最終的に、ユーザに提示しユーザが解釈するように、従来のディスプレイまたは記録デバイス500上に表示されうる。入力デバイス400と同様に、ディスプレイ500は典型的には、他の目的のために処理システムによって使用されるものと同じである。
【0091】
本発明の例示的な実施形態について、上記で説明してきた。方法の各ステップがコンピュータプログラム命令を含む種々の手段によって実施できることは、当業者には理解されよう。これらのコンピュータプログラム命令は、コンピュータまたは他のプログラム可能なデータ処理装置上で実行する命令が方法で指定された機能を実施するための手段を生成するように、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、またはマシンを製造する他のプログラム可能なデータ処理装置にロードされうる。
【0092】
本明細書において説明する方法はさらに、プロセッサまたは処理システム(図16で300として示される)などのコンピュータまたは他のプログラム可能なデータ処理装置に、特定の方法で機能するように指示できるコンピュータ可読メモリに格納可能なコンピュータプログラム命令に関し、したがって、このコンピュータ可読メモリに格納された命令によって、図16に示されるブロックに指定された機能を実施するコンピュータ可読命令を含む製造品が製造される。このコンピュータプログラム命令は、コンピュータ、処理システム300、または他のプログラム可能なデータ処理装置にロードされ、一連の動作ステップをコンピュータ、処理システム300、または他のプログラム可能な装置上で実行させてコンピュータで実施される処理を生成し、したがってコンピュータまたは他のプログラム可能な装置上で実行する命令が、ブロックで指定された機能を実施するためのステップを提供することができる。さらに、種々の計算を実行し、本明細書において説明する関連の方法のステップを実行するために使用される種々のソフトウェアモジュール310、320、および330も、方法を異なる処理システムにロードし、この異なる処理システムによって実行されることを可能とするために、コンピュータが実行可能な命令としてコンピュータ可読媒体上に格納されてもよい。
【0093】
本明細書において説明する方法のステップは、指定した機能を実行するための手段の組み合わせ、指定した機能を実行するためのステップの組み合わせ、および指定した機能を実行するためのプログラム命令手段によって実施されうる。各方法ステップが、指定した機能もしくはステップを実行する専用ハードウェアベースのコンピュータシステムまたは専用ハードウェアとコンピュータ命令の組み合わせによって実施できることは、当業者には理解されよう。
【0094】
本明細書で開示される方法は、動脈圧、pulseox、ドプラ超音波、または生体インピーダンス信号が検出されうる任意の被験体に等しく適用可能である。たとえば、被験体は、ヒトなどの哺乳動物とすることができるが、これに限定されない。
【0095】
本発明の特許請求の範囲は、本発明のいくつかの態様の説明として意図された本明細書で開示される実施形態によって範囲が制限されるものではなく、機能的に等価な任意の実施形態は、特許請求の範囲内に入る。本明細書において図示し説明した実施形態に加えて、方法の種々の変更形態は、当業者に明らかであり、特許請求の範囲に含まれることを意図したものである。さらに、本明細書で開示される方法ステップのいくつかの代表的な組み合わせのみが上記の実施形態において具体的に説明されているが、方法ステップの他の組み合わせは、当業者に明らかであり、同様に特許請求の範囲に含まれることを意図したものである。したがって、ステップの組み合わせは、本明細書において明確に言及されうるが、ステップの他の組み合わせは、明確に述べられていなくても含まれる。本明細書では「を備える」という用語およびその変形は、「を含む」という用語およびその変形と同義語として使用され、オープンで非限定的な用語である。
【符号の説明】
【0096】
10 動脈圧波形、動脈圧信号
20 心周期
30 点、拡張末期圧、心周期の終点/開始点
50 動脈圧波形
60 心室期外収縮
80 動脈圧波形
90 心周期
100 心周期
110 心周期
120 重複切痕
130 最大点
200 圧力センサ
210 カテーテル
220 動脈
230 一部分
240 圧力センサ
250 指
300 処理システム
302 コンディショニング回路
304 アナログ−デジタル変換器ADC
305 クロック回路
310 ソフトウェアモジュール
315 メモリ領域
320 モジュール
330 モジュール
400 入力デバイス
500 ディスプレイ、記録デバイス
800 波形
810 呼吸パラメータ
900 波形
910 矢印
1000 波形
1010 四角
1020 丸
1100 波形
1110 四角
1120 丸
1200 波形
1210 四角
1220 丸
1300 波形
1310 四角
1320 丸
1400 波形
1410 四角
1420 丸
1500 波形
1510 心周期
1520 心周期、点
1530 収縮期圧
1540 呼吸パラメータ
1550 擬似終点
1560 心周期
1570 周期、点
1580 擬似開始点
1590 心周期
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心血管系パラメータを決定する方法であって、
動脈圧信号、または前記動脈圧信号に比例する、もしくは前記動脈圧信号から導出された信号に対応する波形データセットを受け取るステップと、
前記波形データセット内の個々の心周期を識別するステップと、
前記個々の心周期の波形特性を測定するステップと、
前記個々の心周期が規則的な心周期かそれとも不規則な心周期かを判定するステップと、
呼吸パラメータを測定するステップと、
前記規則的な心周期の波形特性と前記不規則な心周期の波形特性とを含む修正された波形データセットを作成するステップであって、前記不規則な心周期の前記波形特性が、推定された波形特性に置き換えられ、前記推定された波形特性が、前記規則的な心周期の前記波形特性または前記規則的な心周期の前記波形特性と前記呼吸パラメータの組み合わせに基づいて計算される、ステップと、
前記修正された波形データセットを使用して心血管系パラメータを計算するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記個々の心周期が規則的な心周期かそれとも不規則な心周期かを判定するステップが、
前記個々の心周期の1つまたは複数の波形特性を対照心周期の1つまたは複数の波形特性と比較するステップと、
前記個々の心周期の前記1つまたは複数の波形特性が前記対照心周期の前記1つまたは複数の波形特性と所定の閾値量だけ異なる場合、前記個々の心周期を不規則な心周期と識別するステップと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記不規則な心周期の前記波形特性を、推定された波形特性と置き換えるステップが、
前記不規則な心周期の擬似開始点および/または擬似終点を決定するステップと、
前記擬似開始点および/または前記擬似終点に基づいて前記不規則な心周期の波形パラメータ/特性を直接的に測定するかまたは計算するステップと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
不規則な周期の前記擬似終点を決定するステップが、
すべての前記規則的な心周期の時間係数を決定するステップと、
前記周期の拡張期圧に基づいて圧力係数を決定するステップと、
前記不規則な周期の開始点および前記開始点からのあらかじめ確立された範囲内にある圧力データ点を識別するステップと、
前記あらかじめ確立された範囲内に圧力データ点があり、かつ前記圧力データ点と前記圧力係数の関係が所定の範囲内にある場合、その圧力データ点が前記擬似終点に割り当てられるステップと、
前記範囲内に複数の圧力データ点があり、かつ前記複数の圧力データ点のそれぞれと前記圧力係数の関係が所定の範囲内にある場合、前記時間係数に最も近い時間値を有する圧力データ点が前記擬似終点に割り当てられるステップと
を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記開始点からの前記あらかじめ確立された範囲が、前記開始点プラス(範囲開始係数*前記中央の時間長)から前記開始点プラス(範囲停止係数*前記中央の時間長)である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記範囲開始係数が0.9であり、前記範囲停止係数が1.1である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
不規則な周期の前記擬似開始点を決定するステップが、
すべての前記規則的な心周期の時間係数を決定するステップと、
前記周期の拡張期圧に基づいて圧力係数を決定するステップと、
前記不規則な周期の終点および前記終点からのあらかじめ確立された範囲内にある波形の圧力データ点を識別するステップと、
前記あらかじめ確立された範囲内に圧力データ点があり、かつ前記圧力データ点と前記圧力係数の関係が所定の範囲内にある場合、その圧力データ点が前記擬似開始点に割り当てられるステップと、
前記範囲内に複数の圧力データ点があり、前記複数の圧力データ点のそれぞれと前記圧力係数の関係が所定の範囲にある場合、前記時間係数に最も近い時間値を有する圧力データ点が前記擬似終点に割り当てられるステップと
を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記終点からの前記あらかじめ確立された範囲が、前記終点マイナス(範囲始まり係数*前記中央の時間長)から前記終点マイナス(範囲終了係数*前記中央の時間長)である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記範囲始まり係数が1.1であり、前記範囲終了係数が0.9である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記波形特性が、不規則な周期の標準偏差である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
不規則な周期の前記標準偏差が、
最も近い規則的な周期の収縮期圧を決定するステップと、
前記最も近い規則的な周期の標準偏差を決定するステップと、
前記呼吸パラメータから前記不規則な周期の前記収縮期圧を決定するステップと、
式11を解くステップと
によって計算される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記所定の閾値量が30%以上である、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記所定の閾値量が25%以上である、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記所定の閾値量が20%以上である、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記所定の閾値量が15%以上である、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
前記所定の閾値量が10%以上である、請求項2に記載の方法。
【請求項17】
前記所定の閾値量が5%以上である、請求項2に記載の方法。
【請求項18】
前記所定の閾値量が1%以上である、請求項2に記載の方法。
【請求項19】
前記不規則な心周期が、心室期外収縮、心房期外収縮、不整脈によって引き起こされる心周期、心房細動によって引き起こされる心周期、患者によるアーチファクト、または欠如した心周期である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記患者によるアーチファクトが、患者の体動、電気的干渉、または信号ノイズに関連する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記対照心周期が、前記個々の心周期の直前の規則的な心周期である、請求項2に記載の方法。
【請求項22】
前記個々の心周期を前記個々の心周期の直後の規則的な心周期と比較するステップをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記対照心周期が、前記個々の心周期の直後の規則的な心周期である、請求項2に記載の方法。
【請求項24】
前記対照心周期が、少なくとも3つの心周期を含む系列からの中央の心周期である、請求項2に記載の方法。
【請求項25】
前記対照心周期が、少なくとも3つの心周期を含む系列からの平均の心周期である、請求項2に記載の方法。
【請求項26】
前記1つまたは複数の波形特性が、心周期の相の統計学的測定である、請求項2に記載の方法。
【請求項27】
前記統計学的測定が、平均、分散、歪度、または尖度のうちの1つである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
心周期の前記相が、心周期全体、収縮期、拡張期、収縮期上行脚、収縮期下行脚、または下行脚全体のうちの1つである、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記1つまたは複数の波形特性が、心周期の相の時間間隔である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記時間間隔が、前の心周期の拡張期相の終わりに対応する時間から測定される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記1つまたは複数の波形特性が、心周期の相のパワーである、請求項2に記載の方法。
【請求項32】
心周期の前記相が、心周期全体、収縮期、拡張期、収縮期上行脚、収縮期下行脚、および下行脚全体からなる群から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記1つまたは複数の波形特性が、心周期の相の1つまたは複数の周波数特性である、請求項2に記載の方法。
【請求項34】
心周期の前記相が、心周期全体、収縮期、拡張期、収縮期上行脚、収縮期下行脚、および下行脚全体からなる群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記1つまたは複数の波形特性が、心周期の相の1つまたは複数の時間−周波数特性である、請求項2に記載の方法。
【請求項36】
心周期の前記相が、心周期全体、収縮期、拡張期、収縮期上行脚、収縮期下行脚、および下行脚全体からなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記1つまたは複数の波形特性が、心周期の最大圧に対応する値である、請求項2に記載の方法。
【請求項38】
前記1つまたは複数の波形特性が、心周期の最大圧および心周期の相の時間間隔に対応する特性を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項39】
心周期の前記相が、心周期全体、収縮期、拡張期、収縮期上行脚、収縮期下行脚、および下行脚全体からなる群から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記1つまたは複数の波形特性が、心周期の始まりの拡張期圧に対応する値と前記心周期の最大圧に対応する値の差である、請求項2に記載の方法。
【請求項41】
前記1つまたは複数の波形特性が、心周期の最大圧に対応する値と心周期の終わりにおける拡張期圧に対応する値の差である、請求項2に記載の方法。
【請求項42】
前記心血管系パラメータが、一回拍出量変動、脈圧変動、または収縮期圧変動である、請求項1に記載の方法。
【請求項43】
前記心血管系パラメータが一回拍出量である、請求項1に記載の方法。
【請求項44】
前記心血管系パラメータが心拍出量である、請求項1に記載の方法。
【請求項45】
前記心血管系パラメータが体血管コンプライアンスである、請求項1に記載の方法。
【請求項46】
前記心血管系パラメータが心血流量である、請求項1に記載の方法。
【請求項47】
前記心血管系パラメータが心血流速度である、請求項1に記載の方法。
【請求項48】
前記心血管系パラメータが血管コンプライアンスである、請求項1に記載の方法。
【請求項49】
前記心血管系パラメータが血管弾性である、請求項1に記載の方法。
【請求項50】
前記波形データセットをローパスフィルタでフィルタ処理するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項51】
前記推定された心周期の位置をグラフィカルユーザインタフェース上に示すステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項52】
不規則な心周期が検出されたとき、推定された心周期を含む波形をグラフィカルユーザインタフェース上に示すステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項53】
前記波形データセットが、設定された持続時間のサンプリング周期に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項54】
不規則な心周期が検出されたとき、前記サンプリング周期の持続時間が増加される、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記動脈圧信号に比例する、または前記動脈圧信号から導出された信号が、pulseox、ドプラ超音波、または生体インピーダンス信号である、請求項1に記載の方法。
【請求項56】
前記呼吸パラメータが、機械的換気によって引き起こされる、前記波形データセットの呼吸誘発性変動である、請求項1に記載の方法。
【請求項57】
前記機械的換気が、従圧式換気、従量式換気、同期型間欠的強制換気、圧支持換気、量支持換気、高頻度換気、同期型間欠的陽圧換気、持続陽圧換気、または非侵襲的換気である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記呼吸パラメータが、自発呼吸によって引き起こされる、前記波形データセットの呼吸誘発性変動である、請求項1に記載の方法。
【請求項59】
前記推定された波形特性が、数学的補間法を使用して計算される、請求項1に記載の方法。
【請求項60】
数学的補間法が、スプライン補間、多項式補間、指数補間、線形補間、非線形補間、区分補間、または多変数補間である、請求項50に記載の方法。
【請求項61】
前記推定された波形特性が、数学的カーブフィッティング法を使用して計算される、請求項1に記載の方法。
【請求項62】
前記推定された波形特性が、近似関数を使用して計算される、請求項1に記載の方法。
【請求項1】
心血管系パラメータを決定する方法であって、
動脈圧信号、または前記動脈圧信号に比例する、もしくは前記動脈圧信号から導出された信号に対応する波形データセットを受け取るステップと、
前記波形データセット内の個々の心周期を識別するステップと、
前記個々の心周期の波形特性を測定するステップと、
前記個々の心周期が規則的な心周期かそれとも不規則な心周期かを判定するステップと、
呼吸パラメータを測定するステップと、
前記規則的な心周期の波形特性と前記不規則な心周期の波形特性とを含む修正された波形データセットを作成するステップであって、前記不規則な心周期の前記波形特性が、推定された波形特性に置き換えられ、前記推定された波形特性が、前記規則的な心周期の前記波形特性または前記規則的な心周期の前記波形特性と前記呼吸パラメータの組み合わせに基づいて計算される、ステップと、
前記修正された波形データセットを使用して心血管系パラメータを計算するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記個々の心周期が規則的な心周期かそれとも不規則な心周期かを判定するステップが、
前記個々の心周期の1つまたは複数の波形特性を対照心周期の1つまたは複数の波形特性と比較するステップと、
前記個々の心周期の前記1つまたは複数の波形特性が前記対照心周期の前記1つまたは複数の波形特性と所定の閾値量だけ異なる場合、前記個々の心周期を不規則な心周期と識別するステップと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記不規則な心周期の前記波形特性を、推定された波形特性と置き換えるステップが、
前記不規則な心周期の擬似開始点および/または擬似終点を決定するステップと、
前記擬似開始点および/または前記擬似終点に基づいて前記不規則な心周期の波形パラメータ/特性を直接的に測定するかまたは計算するステップと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
不規則な周期の前記擬似終点を決定するステップが、
すべての前記規則的な心周期の時間係数を決定するステップと、
前記周期の拡張期圧に基づいて圧力係数を決定するステップと、
前記不規則な周期の開始点および前記開始点からのあらかじめ確立された範囲内にある圧力データ点を識別するステップと、
前記あらかじめ確立された範囲内に圧力データ点があり、かつ前記圧力データ点と前記圧力係数の関係が所定の範囲内にある場合、その圧力データ点が前記擬似終点に割り当てられるステップと、
前記範囲内に複数の圧力データ点があり、かつ前記複数の圧力データ点のそれぞれと前記圧力係数の関係が所定の範囲内にある場合、前記時間係数に最も近い時間値を有する圧力データ点が前記擬似終点に割り当てられるステップと
を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記開始点からの前記あらかじめ確立された範囲が、前記開始点プラス(範囲開始係数*前記中央の時間長)から前記開始点プラス(範囲停止係数*前記中央の時間長)である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記範囲開始係数が0.9であり、前記範囲停止係数が1.1である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
不規則な周期の前記擬似開始点を決定するステップが、
すべての前記規則的な心周期の時間係数を決定するステップと、
前記周期の拡張期圧に基づいて圧力係数を決定するステップと、
前記不規則な周期の終点および前記終点からのあらかじめ確立された範囲内にある波形の圧力データ点を識別するステップと、
前記あらかじめ確立された範囲内に圧力データ点があり、かつ前記圧力データ点と前記圧力係数の関係が所定の範囲内にある場合、その圧力データ点が前記擬似開始点に割り当てられるステップと、
前記範囲内に複数の圧力データ点があり、前記複数の圧力データ点のそれぞれと前記圧力係数の関係が所定の範囲にある場合、前記時間係数に最も近い時間値を有する圧力データ点が前記擬似終点に割り当てられるステップと
を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記終点からの前記あらかじめ確立された範囲が、前記終点マイナス(範囲始まり係数*前記中央の時間長)から前記終点マイナス(範囲終了係数*前記中央の時間長)である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記範囲始まり係数が1.1であり、前記範囲終了係数が0.9である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記波形特性が、不規則な周期の標準偏差である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
不規則な周期の前記標準偏差が、
最も近い規則的な周期の収縮期圧を決定するステップと、
前記最も近い規則的な周期の標準偏差を決定するステップと、
前記呼吸パラメータから前記不規則な周期の前記収縮期圧を決定するステップと、
式11を解くステップと
によって計算される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記所定の閾値量が30%以上である、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記所定の閾値量が25%以上である、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記所定の閾値量が20%以上である、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記所定の閾値量が15%以上である、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
前記所定の閾値量が10%以上である、請求項2に記載の方法。
【請求項17】
前記所定の閾値量が5%以上である、請求項2に記載の方法。
【請求項18】
前記所定の閾値量が1%以上である、請求項2に記載の方法。
【請求項19】
前記不規則な心周期が、心室期外収縮、心房期外収縮、不整脈によって引き起こされる心周期、心房細動によって引き起こされる心周期、患者によるアーチファクト、または欠如した心周期である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記患者によるアーチファクトが、患者の体動、電気的干渉、または信号ノイズに関連する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記対照心周期が、前記個々の心周期の直前の規則的な心周期である、請求項2に記載の方法。
【請求項22】
前記個々の心周期を前記個々の心周期の直後の規則的な心周期と比較するステップをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記対照心周期が、前記個々の心周期の直後の規則的な心周期である、請求項2に記載の方法。
【請求項24】
前記対照心周期が、少なくとも3つの心周期を含む系列からの中央の心周期である、請求項2に記載の方法。
【請求項25】
前記対照心周期が、少なくとも3つの心周期を含む系列からの平均の心周期である、請求項2に記載の方法。
【請求項26】
前記1つまたは複数の波形特性が、心周期の相の統計学的測定である、請求項2に記載の方法。
【請求項27】
前記統計学的測定が、平均、分散、歪度、または尖度のうちの1つである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
心周期の前記相が、心周期全体、収縮期、拡張期、収縮期上行脚、収縮期下行脚、または下行脚全体のうちの1つである、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記1つまたは複数の波形特性が、心周期の相の時間間隔である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記時間間隔が、前の心周期の拡張期相の終わりに対応する時間から測定される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記1つまたは複数の波形特性が、心周期の相のパワーである、請求項2に記載の方法。
【請求項32】
心周期の前記相が、心周期全体、収縮期、拡張期、収縮期上行脚、収縮期下行脚、および下行脚全体からなる群から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記1つまたは複数の波形特性が、心周期の相の1つまたは複数の周波数特性である、請求項2に記載の方法。
【請求項34】
心周期の前記相が、心周期全体、収縮期、拡張期、収縮期上行脚、収縮期下行脚、および下行脚全体からなる群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記1つまたは複数の波形特性が、心周期の相の1つまたは複数の時間−周波数特性である、請求項2に記載の方法。
【請求項36】
心周期の前記相が、心周期全体、収縮期、拡張期、収縮期上行脚、収縮期下行脚、および下行脚全体からなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記1つまたは複数の波形特性が、心周期の最大圧に対応する値である、請求項2に記載の方法。
【請求項38】
前記1つまたは複数の波形特性が、心周期の最大圧および心周期の相の時間間隔に対応する特性を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項39】
心周期の前記相が、心周期全体、収縮期、拡張期、収縮期上行脚、収縮期下行脚、および下行脚全体からなる群から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記1つまたは複数の波形特性が、心周期の始まりの拡張期圧に対応する値と前記心周期の最大圧に対応する値の差である、請求項2に記載の方法。
【請求項41】
前記1つまたは複数の波形特性が、心周期の最大圧に対応する値と心周期の終わりにおける拡張期圧に対応する値の差である、請求項2に記載の方法。
【請求項42】
前記心血管系パラメータが、一回拍出量変動、脈圧変動、または収縮期圧変動である、請求項1に記載の方法。
【請求項43】
前記心血管系パラメータが一回拍出量である、請求項1に記載の方法。
【請求項44】
前記心血管系パラメータが心拍出量である、請求項1に記載の方法。
【請求項45】
前記心血管系パラメータが体血管コンプライアンスである、請求項1に記載の方法。
【請求項46】
前記心血管系パラメータが心血流量である、請求項1に記載の方法。
【請求項47】
前記心血管系パラメータが心血流速度である、請求項1に記載の方法。
【請求項48】
前記心血管系パラメータが血管コンプライアンスである、請求項1に記載の方法。
【請求項49】
前記心血管系パラメータが血管弾性である、請求項1に記載の方法。
【請求項50】
前記波形データセットをローパスフィルタでフィルタ処理するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項51】
前記推定された心周期の位置をグラフィカルユーザインタフェース上に示すステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項52】
不規則な心周期が検出されたとき、推定された心周期を含む波形をグラフィカルユーザインタフェース上に示すステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項53】
前記波形データセットが、設定された持続時間のサンプリング周期に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項54】
不規則な心周期が検出されたとき、前記サンプリング周期の持続時間が増加される、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記動脈圧信号に比例する、または前記動脈圧信号から導出された信号が、pulseox、ドプラ超音波、または生体インピーダンス信号である、請求項1に記載の方法。
【請求項56】
前記呼吸パラメータが、機械的換気によって引き起こされる、前記波形データセットの呼吸誘発性変動である、請求項1に記載の方法。
【請求項57】
前記機械的換気が、従圧式換気、従量式換気、同期型間欠的強制換気、圧支持換気、量支持換気、高頻度換気、同期型間欠的陽圧換気、持続陽圧換気、または非侵襲的換気である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記呼吸パラメータが、自発呼吸によって引き起こされる、前記波形データセットの呼吸誘発性変動である、請求項1に記載の方法。
【請求項59】
前記推定された波形特性が、数学的補間法を使用して計算される、請求項1に記載の方法。
【請求項60】
数学的補間法が、スプライン補間、多項式補間、指数補間、線形補間、非線形補間、区分補間、または多変数補間である、請求項50に記載の方法。
【請求項61】
前記推定された波形特性が、数学的カーブフィッティング法を使用して計算される、請求項1に記載の方法。
【請求項62】
前記推定された波形特性が、近似関数を使用して計算される、請求項1に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2013−517908(P2013−517908A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551301(P2012−551301)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2011/022850
【国際公開番号】WO2011/094487
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(500218127)エドワーズ ライフサイエンシーズ コーポレイション (93)
【氏名又は名称原語表記】Edwards Lifesciences Corporation
【住所又は居所原語表記】One Edwards Way, Irvine, CALIFORNIA 92614, U.S.A.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2011/022850
【国際公開番号】WO2011/094487
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(500218127)エドワーズ ライフサイエンシーズ コーポレイション (93)
【氏名又は名称原語表記】Edwards Lifesciences Corporation
【住所又は居所原語表記】One Edwards Way, Irvine, CALIFORNIA 92614, U.S.A.
【Fターム(参考)】
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