説明

急硬性リン酸カルシウムセメント組成物

あるペースト形態の骨または歯科用インプラント材料には、リン酸カルシウムを含有する、かつ/またはカルシウムを含有する粉末と、(1)1種もしくは複数のリン酸カルシウム化合物に関して飽和している酸性リン酸カルシウム溶液、(2)濃酸溶液、または(3)カルシウム以外のカチオン成分を有する塩溶液である溶液との混合物が含まれる。このペーストは安定であり、ウォッシュアウトへの抵抗性があり、またヒドロキシアパタイトを形成し、比較的急速に硬化してセメント質となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本国際出願特許請求は、2001年1月24日出願の米国仮特許出願第60/263894号の利益を主張する2002年1月23日出願の米国特許出願第10/057554号の一部継続出願に基づく。本出願は、2004年1月16日出願の米国仮特許出願第60/536899号、および2004年9月15日出願の米国特許出願第10/941443号の優先権を主張する。この親明細書はそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
(連邦政府委託研究または開発に関する記述)
この開発は、NIDCR(国立歯科頭蓋顔面研究所)からアメリカ歯科協会基金へのUSPHS(アメリカ公衆衛生局)研究補助金DE11789号により一部援助された。アメリカ合衆国またはその一政府機関は、本特許請求発明に対してある種の権利を有し得る。
【0003】
(発明の背景)
本発明の種々の実施形態は、自硬性のリン酸カルシウム含有、および/またはカルシウム含有ペーストならびにセメント組成物に関する。この組成物を使用して、骨および歯の修復ならびに類似用途のペーストを形成でき、その際このペーストは修復部位まで送達された後所望の時間内に硬化する。
【0004】
多くの従来型リン酸カルシウムセメントは、使用する直前に水溶液と混合される。臨床状況において、このセメントを適切に混合し、次いでこのセメントペーストを所定の時間内に欠損部に入れる外科医の能力が、最適の結果を達成するのに非常に重要な因子である。
【0005】
リン酸四カルシウム(Ca(POO、「TTCP」とも呼ばれる)、および無水リン酸二カルシウム(CaHPO、「DCPA」とも呼ばれる)からなる自硬性リン酸カルシウムセメント(CPC)が骨欠損部を修復するのに効果的であることが、臨床的研究において示されている。このような従来型セメントの硬化時間は、水による場合約30分と長いが、セメント液としてリン酸塩溶液を使用すると硬化時間を短縮することができる。生成物としてヒドロキシアパタイト(Ca(POOH、「HA」とも呼ばれる)が形成される。より最近、TTCPを含有しないさらなるCPC、例えばα−リン酸三カルシウム(α−Ca(PO、「α−TCP」とも呼ばれる)およびCaCO、またはDCPAおよびCa(OH)、も開発されている。これらのセメントは、セメント液としてリン酸塩溶液を使用すると、約10分で硬化できる。それらのセメントも、最終生成物としてヒドロキシアパタイトを形成させる。
【0006】
注射法による根管充填および封着向けに、TTCP粉末およびDCPA粉末と、セメント液としてグリセロールとを含有するプレミックスCPCペーストが使用されている。注射器内でセメントペーストは安定であるが、根管に送入された後、そこで周囲組織からの水に曝露されるようになってからしか硬化しないことが見出された。密閉された領域にセメントペーストが注入されるので、ウォッシュアウト(洗い出し)によってペーストが分解する心配はほとんどなかった。プレミックスCPCは、いくつかの従来の根管充填または封着材料よりも改良された根尖周囲骨組織との生体適合性を有することが示されたが、このプレミックスCPC−グリセロールペーストは、開放性水濡れ領域に使用した場合良好なウォッシュアウト抵抗性を示さなかった。
【0007】
特許文献はまた、ヒドロキシアパタイト生成のための前駆体であり、かつ生体適合性があり、また他のリン酸カルシウム生体材料では得ることができない2つの独特の性状、すなわち(1)自己硬化して、多くの医学的および歯科的用途のために十分な強度を有する塊を形成する点、ならびに(2)骨にインプラントした場合、そのインプラントを受け入れる組織の体積または完全性を全く損なうことなくこのセメントが新たな骨形成物をゆっくり再吸収し、かつその骨形成物によって完全に置き換えられる点を有する、少なくとも1種類のリン酸カルシウムセメント組成物を記載している。このリン酸カルシウム組成物に基づくリン酸カルシウム再石灰化(remineralizing)組成物の調製、および微結晶性、非セラミック性の、漸次再吸収可能なヒドロキシアパタイトセメントの調製を教示しているBrownおよびChowの米国特許33221および33161を参照されたい。
【0008】
米国特許33221および33161において教示されているリン酸カルシウム再石灰化用スラリ、ペースト、およびセメントの主成分は、リン酸四カルシウム(Ca(POO)と、少なくとも1種の他のやや難溶性のリン酸カルシウム、好ましくは無水リン酸二カルシウム(CaHPO)またはリン酸二カルシウム二水和物(CaHPO・2HO)とであることが好ましい。これらのものが水性環境内で反応して、最終生成物として、歯および骨における主要ミネラルであるヒドロキシアパタイトを形成する。凝結したセメントはアパタイトの特性があるため、軟組織および硬組織との適合性が高い。この材料は、ペーストとして手術中に使用されると、その後凝結して、微細孔性ヒドロキシアパタイトから構成される構造的に安定なインプラントとなる。
【0009】
リン酸四カルシウム(TTCP)と、無水リン酸一カルシウム(MCPA)またはその一水和物の形(MCPM)とからなるほぼ同一のリン酸カルシウム系が、Constantzら(米国特許第5053212号および第5129905号)により記載された。このセメント系は、TTCPと反応し、最終生成物として、歯および骨の主要ミネラル成分であるヒドロキシアパタイトを形成させるリン酸二カルシウムへのMCPAの変換を包含すると考えられる。
【0010】
Constantzらの米国特許第4880610号および第5047031号は、セメント粉末として固体リン酸結晶、炭酸カルシウム、および水酸化カルシウムの混合物と、セメント液として7.4mol/L NaOH溶液(水15mL中NaOH4.5g)とからなる他のセメント系を記載している。このセメントの物理的および化学的性質(圧縮強さ、硬化時間、最終生成物の特性、セメント流体のpH、混合熱など)に関するデータは、特許および科学文献中に所在を見つけられていない。
【0011】
(発明の簡単な概要)
本発明の種々の実施形態は、包装において安定であり、ウォッシュアウトへの抵抗性があり、また欠損部またはインプラント部位に送られた後、所望の時間内に硬化するリン酸カルシウムセメントペーストを混合するための組成物および手段を含む。リン酸カルシウムセメント粉末とブレンドすると、リン酸カルシウムセメントの急速な凝結を助長する溶液が提供される。この溶液および粉末は安定であり、一緒にブレンドした場合に、硬化時間が短縮されたセメントスラリをもたらす。
【0012】
本発明に従って数多くの溶液を使用できるが、それぞれの溶液は、リン酸カルシウムセメント粉末とブレンドすると、セメント凝結反応を促進することが可能である。一実施形態において、1種または複数のリン酸カルシウム塩は、比較的反応性の高い形で存在し、ヒドロキシアパタイトのより急速な形成を助長する「種晶(seed)」として作用することにより、セメント凝結反応を促進し、したがってこのセメントの硬化を促進する。この溶液は酸性リン酸カルシウム溶液とすることができる。この溶液は濃酸溶液とすることもできる。このような溶液中にリン酸カルシウムセメント粉末を溶解すると、溶液からのリン酸カルシウム化合物の析出がもたらされる。析出した化合物は非常に反応性が高く、セメント凝結反応を増大させて、セメント硬化時間を短縮する。
【0013】
他の実施形態において、カルシウム塩ではない1種または複数の塩の溶液を、リン酸カルシウムセメント粉末と混合して、溶液のリン酸塩濃度を増加させ、ヒドロキシアパタイトの形成を促進する。この溶液は、(a)カチオン成分がカルシウムではなく、また1種または複数のアニオン成分が溶液内で強いカルシウム錯体を形成する塩、または(b)カチオン成分がカルシウムではなく、また1種または複数のアニオン成分がカルシウムと不溶性の塩を形成する塩とすることができる。この溶液中にリン酸カルシウムセメント粉末を溶解させると、この溶液中のリン酸塩濃度が増加し、それによりセメント凝結反応が増大し、セメント硬化時間が短縮される。
【0014】
本発明の他の実施形態は、骨および歯修復のために、スラリからセメントペーストを調製する一方法である。この方法は、溶液およびリン酸カルシウム粉末からセメントスラリを調製するステップを含む。このセメントスラリは比較的急速に硬化して成形可能なペーストとなり、そのペーストを、それが硬化してセメント質となる前に成形することができる。
【0015】
本発明のさらに他の実施形態は、骨および歯の欠損部を修復する一方法である。この方法は、上述の溶液および粉末をブレンドしてセメントペーストをもたらすステップと、そのセメントペーストを、それが硬化して実質的にセメント質となる前に、欠損部に充填するステップとを含む。
【0016】
本発明はさらに、この方法によって調製した改良されたリン酸カルシウムセメント混合物、事前製造したキットまたは送達用デバイスとしてユーザーに提供される1種または複数のセメント成分、この改良されたセメントを使用する方法、ならびにこのセメントから製造した生体インプラントを企図している。急硬性工業用セメントも企図される。
【0017】
本発明は、水性媒質に接触すると周囲温度で実質的に自己硬化してヒドロキシアパタイトとなるリン酸カルシウムセメント組成物を調製する方法であって、1種または複数のリン酸カルシウム塩またはカルシウム塩を、(1)1種または複数のリン酸カルシウム化合物に関して飽和している酸性リン酸カルシウム溶液、(2)濃酸溶液、または(3)カルシウム以外のカチオン成分による塩溶液である溶液と混合するステップを含む方法を含む。
【0018】
(発明の詳細な説明)
周囲温度(すなわち室温または体温)で自己凝結(self−set)してヒドロキシアパタイト(HA)となる生成物をもたらすリン酸カルシウムセメントを調製する。このリン酸カルシウムセメント組成物は、液体溶液および粉末組成物を含む。ある種のリン酸カルシウム前駆体セメントスラリ組成物を使用すると、確実にかつ急速に凝結してHAとなるセメントがもたらされる。種々の最終用途向けに凝結速度を調節することができ、必要に応じて極めて急速とすることができる。得られたヒドロキシアパタイトセメントは、生体適合性および再吸収性(生分解性)の両方を有し、それにより生体骨と接触した場合骨が置換されると考えられる。
【0019】
このリン酸カルシウムセメントペーストは、骨移植および類似の医学的修復用途に使用することができる。このリン酸カルシウムセメントは、骨または歯欠損部位に送る前に混合し、かつ/または成形することができる。このペーストは、骨または歯欠損部位に送達するための注入可能な形で提供することもできる。このリン酸カルシウムセメントは、比較的急速に硬化してHAを形成する。
【0020】
任意の1種または複数の広く様々なリン酸カルシウムセメント粉末と混合してスラリ組成物を形成すると、(1)このスラリ組成物中のリン酸塩濃度の増加、および/または(2)このスラリ組成物のpHの上昇がもたらされる本発明の溶液を使用することにより、このリン酸カルシウムセメントスラリからのHA形成を大きく促進することができる。どんな理論に縛られることも望まないが、このセメント溶液は、より低い溶液pHにおいて、いずれもHAよりも析出し易いであろう中間体化合物および/またはカルシウム錯体を形成するので、スラリ系内におけるHA形成を促進する有効な手段を提供すると考えられる。このような中間体化合物および錯体は、より低いpH(約pH4未満)でHAよりも溶解性が低いが、一方HAは約4以上のpHで溶解性が最も低い相となる。
【0021】
図1は、Ca(OH)−HPO−HOの溶解度相図であり、図において固相および飽和溶液はどちらも、3成分、Ca(OH)、HPO、およびHOから由来するイオンまたは無荷電化学種だけを含有する。図1は、相図の酸性および濃領域を示す。図中のそれぞれの固相線を溶解度等温線と呼び、示している固相、すなわちMCPM、DCPD、またはDCPAに関して飽和している一連の溶液の組成(HPO質量%、およびCa(OH)質量%で表す)を表す。2つの等温線が交わる点を特異点と呼び、そこでは両固相に関して溶液が飽和している。図1において、等温線の左側にある溶液組成は、その固相に関して過飽和であり、また等温線の右側にある溶液組成は未飽和である。縦軸はHPO溶液濃度を表す。
【0022】
点線を使用して、種々の濃度のHPO溶液中にHAが溶解する場合に起る溶液組成の変化を例示している。例として、10%HPO溶液中にHAが溶解すると、溶解線が最初DCPA等温線と交差し、その時点で溶液はDCPAに関して飽和状態になることが分かる。DCPAは無水塩であり、必ずしも容易に析出せず、HA溶解線がDCPD等温線と交差することが可能となる。さらにHAが溶解すると、DCPDが析出することになるであろう。同様に、30%HPO溶液中にHAが溶解すると、その溶解線はDCPA等温線と、次いでMCPM等温線と交差して、DCPA、またはMCPM、あるいはその両方の析出がもたらされるであろう。これに反して、50%または70%HPO溶液中にHAが溶解すると、MCPMだけが析出することになるであろう。上記のことは、図1の相図を使用して、その図に含まれる任意の溶液組成中にHAが溶解する結果として形成されるであろう相を、どのように予測することができるかを例示している。溶解する化合物として、任意の他のリン酸カルシウム、例えばリン酸四カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸二カルシウムなどについて、同様の解析が可能である。
【0023】
この相図の左下隅は、「水コーナー(water corner)」と呼ぶことがあり、pHが約4以上であるCa(OH)−HPO−HO向け溶解度相図の領域を表す。この領域についての溶液のCaおよびP濃度は、酸性領域におけるそれらよりもはるかに低いので、対数目盛を使用した他の溶解度相図を使用して、pHの関数としての相変態反応の主要な推進力である、種々のリン酸カルシウム相の相対的安定性を例示する。図2Aは、pH領域4〜12において安定である種々のリン酸カルシウム相の溶解度等温線を示す3次元溶解度相図である。図2Bおよび2Cは、それぞれlog[P]軸、およびlog[Ca]軸に沿った3次元図の投影図を例示する。図2Bおよび2Cにおいて、等温線の下方にある溶液は、示している固相に関して未飽和であり、また等温線の上方にある溶液は、示している固相に関して過飽和である。
【0024】
全てのリン酸カルシウム塩の中で、およそ4.5〜14の範囲にある溶液pHの広い範囲においてHAが、最も溶解性が低いことを図中で見ることができる。したがって、このpH範囲内では、どんな他のリン酸カルシウム、またはリン酸カルシウムの混合物も溶解し、かつHAとして再析出する傾向を有する。しかし、一般にHA形成速度が非常に遅く、DCPD、DCPA、リン酸八カルシウム(Ca(PO・5HO、または「OCP」)、非晶質リン酸カルシウム(Ca(PO、または「ACP」)、α−リン酸三カルシウム(α−Ca(PO、または「α−TCP」)、β−リン酸三カルシウム(β−Ca(PO、または「β−TCP」)、またはこれらの塩の混合物のスラリは、凝結したセメントを生成しない、あるいは有効な再石灰化剤として作用しない。
【0025】
本溶液をリン酸カルシウムセメント粉末と一緒に使用すると、リン酸塩濃度が増加し、かつ/または溶液pHが上昇するために、HA形成の促進を達成することができる。最初に中間体化合物が形成される。セメント凝結反応が進むにつれて、溶液pHが上昇し、またこの化合物が溶解し始める。HAの形成と、より可溶性の中間体化合物の溶解とが、セメント硬化の要因である。調製したセメントペースト系のpHを、HAが最も安定な相であるおよそ4.5〜14の範囲内にあるように時間と共に上昇させることが好ましい。これらの条件により、より急速なHA形成、およびその後のセメント固化をもたらすことができる。
【0026】
本発明に従って様々な溶液を使用することができる。一般に、これらの溶液は、セメント凝結反応を促進する機構に基づいて分類することができる。
【0027】
一実施形態において、セメント溶液中の1種または複数のリン酸カルシウム塩は、ヒドロキシアパタイト形成に関して一般に非常に反応性が高く、それによりヒドロキシアパタイトのより急速な形成が助長され、セメント硬化時間が短縮される。どんな理論に縛られることも望まないが、リン酸カルシウム塩はヒドロキシアパタイト形成を助長する「種晶」として作用すると考えられる。すなわち、リン酸カルシウム塩が析出して、それらからヒドロキシアパタイトが形成される基礎を提供する反応性粒子を形成する。少なくとも最初、溶液がより低いpHにあるとき、このリン酸カルシウム粒子は非水溶液または水にあまり可溶性ではない。このペーストのリン酸塩濃度は、水性環境に曝露した場合、あまり著しい量で増加することはないと予想される。このリン酸カルシウム「種晶」が、ヒドロキシアパタイト結晶成長の増大のための鋳型を提供し、それによりヒドロキシアパタイトの形成速度が増大し、そのセメントのより急速な硬化がもたらされる。
【0028】
第1群の溶液において、この溶液は、リン酸一カルシウム一水和物(Ca(HPO・HO、または「MCPM」)、または無水リン酸一カルシウム(Ca(HPO、または「MCPA」)に関して飽和している酸性リン酸カルシウム溶液である。これらの溶液は、約0〜約1.9のpH、約0.3%〜約8.5%のCa(OH)含量、および約30%〜約80%のHPO含量を一般に有する(図1におけるMCPMについての固相曲線を参照されたい)。これらの溶液は、他のリン酸カルシウム相に関して過飽和されておらず、結果として安定である。この溶液をリン酸カルシウムセメント粉末と混合すると、この粉末が溶解し、溶液pHが上昇する。以前に記載したように、セメント成分が溶解すると、pHの上昇、ならびにカルシウムおよびリン酸塩濃度の増加がもたらされる。この溶液は、MCPMまたはMCPAに関して過飽和の状態になり、MCPMまたはMCPAがそれぞれの溶液から析出する。その場所で形成されるMCPMまたはMCPAは反応性が高い。この析出物が、セメント凝結反応を促進し、またセメント硬化時間を短縮させる「種晶」として作用する。
【0029】
第2群の溶液において、この溶液は、リン酸二カルシウム二水和物(CaHPO・2HO、または「DCPD」)、または無水リン酸二カルシウム(CaHPO、または「DCPA」)に関して飽和している酸性リン酸カルシウム溶液である。これらの溶液は、約1.9〜約4.3のpH、約0.05%〜約8.5%のCa(OH)含量、および約0.1%〜約30%のHPO含量を一般に有する(図1におけるDCPAおよびDCPDについての固相曲線を参照されたい)。DCPA飽和溶液は、他のリン酸カルシウム相に関して過飽和されておらず、結果として安定である。DCPD飽和溶液は、DCPAを除く他のリン酸カルシウム相に関して過飽和していないが、DCPAはこれらの溶液から容易に析出しない。したがって、これらの溶液は長期間、例えば約1年以上、安定であると予想される。この溶液をリン酸カルシウムセメント粉末と混合すると、この粉末が溶解し、かつこの溶液pHが上昇し、またカルシウムおよびリン酸塩濃度が増加する。この溶液が、DCPDまたはDCPAに関して過飽和の状態になると、DCPDまたはDCPAがそれぞれの溶液から析出する。その場所で形成されるDCPDまたはDCPAは反応性が高い。この析出物が、セメント凝結反応を促進し、またセメント硬化時間を短縮させる「種晶」として作用する。
【0030】
第3群の溶液において、この溶液は、濃酸溶液である。適切な溶液には、塩酸(HCl)、硝酸(HNO)、リン酸(HPO)、グリセロールリン酸((HOCHCHOPO(OH))、および酢酸(CHCOOH)が含まれる。これらの溶液のpHは強酸性である。この溶液をリン酸カルシウムセメント粉末と混合すると、この粉末は溶解する。酸強度および酸濃度によって、MCPM、MCPA、DCPD、DCPA、およびこれらの組合せが析出するであろう。すなわち、MCPMおよびMCPAはより強酸溶液中で析出すると予想され、またDCPDおよびDCPAはより弱酸溶液中で析出すると予想される。その場所で形成されるMCPM、MCPA、DCPD、およびDCPAは反応性が高い。この析出物が、セメント凝結反応を促進し、またセメント硬化時間を短縮させる「種晶」として作用する。
【0031】
第3群の溶液を使用する場合、溶液濃度を、MCPM、MCPA、DCPD、および/またはDCPAを形成させるのに必要なだけ、十分に高くすべきである。例えば、HPO濃度は、少なくとも約0.015Mであることが好ましい。第3群における他の酸溶液の最小濃度は、それらがリン酸塩イオンを含有しないので幾分より高くなる可能性が高い。酸濃度を減少させると、急結性セメントを提供する際の酸溶液の有効性が低下すると予想される。したがって、所与の酸溶液について、所望の凝結時間をもたらす特定の濃度範囲が存在するであろうと予想される。
【0032】
他の実施形態において、この溶液は、溶液中においてカチオン成分がカルシウムではなく、また1種または複数のアニオン成分が強いカルシウム錯体を形成する塩の溶液である。この型の適切な溶液には、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、カコジル酸ナトリウムなどが含まれる。あるいはこの溶液は、カチオン成分がカルシウムではなく、また1種または複数のアニオン成分がカルシウムと不溶性塩を形成する塩の溶液である。この型の適切な溶液には、フッ化ナトリウム、シュウ酸カリウム、硫酸ナトリウムなどが含まれる。これらの型のいずれかの溶液をリン酸カルシウムセメント粉末と混合すると、少なくとも一部は錯体生成または析出の結果として、溶液中の遊離の、または未結合の形のアニオン成分の濃度と、溶液中の遊離カルシウム濃度とが減少する。相応じて、溶液中のリン酸塩濃度が増加して、溶液中の電気的中性を維持する。リン酸塩濃度の増加はセメント凝結反応を促進する。溶液のpHは変動し得るが、リン酸カルシウム粉末の溶解性を少なくともある程度助長すべきである。このpHは、より高い程度の粉末の溶解性を助長するように選択することが好ましい。
【0033】
本セメント組成物には、1種または複数のセメント粉末も含まれる。任意の上記の溶液と混合して急硬性セメントをもたらすことができる粉末には、(1)1種または複数のリン酸カルシウム塩、または(2)1種または複数のリン酸カルシウム塩および1種または複数のカルシウム塩が含まれる。適切なリン酸カルシウム塩には、(カルシウムのリン酸塩に対する比が大きくなる順に)MCPM、MCPA、DCPD、DCPA、OCP、ACP、α−TCP、β−TCP、HA、炭酸塩HA、カルシウムが不足したHA、低結晶性HA、リン酸四カルシウム(TTCP)、ならびに1種または複数の上記塩の均質混合物である沈降性もしくは高温生成物が含まれるが、それらに限定されない。適切なカルシウム塩は難溶性〜中程度溶解性カルシウム含有化合物であり、これらには酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム(Ca(OH))、炭酸カルシウム(CaCO)、グリセロリン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム、および硫酸カルシウムが含まれるがそれらに限定されない。
【0034】
この粉末の粒径は約0.05μm〜約500μm、より好ましくは約1μm〜約100μmの範囲にあることが好ましい。この粉末の結晶性は非常に低い(非晶質)ものから高いものまで変動することができる。
【0035】
本組成物は、臨床用途で使用する場合などに、本組成物の性質を向上させる1種または複数の添加剤を含むことができる。添加剤には、薬物、充填材料、結晶調整剤、粘度調節剤、ゲル化剤、増孔剤、再吸収性もしくは非再吸収性繊維およびメッシュ、骨誘導因子、骨形態形成タンパク質、他のタンパク質、ならびにそれらの組合せが含まれ得る。
【0036】
本セメント組成物は、ペーストの凝集性およびウォッシュアウト抵抗性を向上させる1種または複数の無毒性ゲル化剤を含むことができる。ゲル化剤には、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、デンプン、プロテオグリカン、グリコプロテイン、キトサンおよびキトサン誘導体、コラーゲン、ガム、ゼラチン、ならびにアルギン酸塩が、またそれらの組合せが含まれ得る。ゲル化剤の使用により、セメントの硬化速度を増加させることができる。
【0037】
充填材料は、セメントの強度を増加させるのに有効な量で添加することができる。適切な充填材料には、無毒性の生体適合性の天然もしくは合成ポリマー、無毒性の生体適合性金属、ならびに他の無毒性の生体適合性の有機および無機材料が含まれるが、それらに限定されない。充填材は、顆粒、繊維、棒、シート、または格子の形、あるいは他の適切な形のものとすることができる。
【0038】
増孔剤は、本組成物に浸潤する組織の血管新生化をもたらすのに有効な直径を有する孔を形成するように選択することができる。この孔の直径は、約30μm〜約500μm、またはより好ましくは約100μm〜約350μmの範囲にあることが好ましい。この増孔剤は、硬化セメント中に組み込むのが可能になるだけ十分にセメントペースト中に不溶であるが、インプラント後生理学的流体中への溶解により実質的に除去され、または細胞の作用により再吸収されるのに十分なだけ可溶性である材料から選択する。あるいは、この薬剤は、溶媒または加熱を利用してセメントが硬化した後除去することができる。適切な溶媒には、水、エタノール、アセトン、エーテル、および増孔剤を溶解する任意の他の有機溶媒が含まれる。加熱する場合、分解、昇華、蒸発、燃焼などによって増孔剤を除去するのに必要なだけ温度を十分に高くすべきである。他の加熱温度も利用できるが、約100℃〜約1200℃の温度範囲までセメントを加熱することが好ましい。増孔剤は、糖、重炭酸ナトリウム、およびリン酸塩を含むことができる。本セメント中に濃リン酸塩溶液を使用することにより、それらがセメント中で比較的不溶性になるので、リン酸塩は有効な増孔剤である。特に有用なリン酸塩は、リン酸二ナトリウムである。
【0039】
本スラリ組成物中に生成される析出したリン酸カルシウム種晶は、酸性リン酸カルシウム化合物であることが好ましい。このような化合物には、とりわけDCPA、DCPD、MCPA、MCPM、ACP、およびHAが含まれる。この化合物は、DCPDまたはMCPM、およびこれらの組合せであることが好ましい。
【0040】
このリン酸カルシウム種晶の粒径は、変動し得る。例として、リン酸カルシウム化合物のナノメートル大の粒子が、フルオロアパタイト形成を助長する。
【0041】
本組成物は、失われたもしくは欠損のある骨または歯組織を修復する(repairing or restoring)様々な医学的および歯科的手順において、急硬性セメントペーストとして使用できる。このセメントペーストは、所望されるように生体内において注射器により注入すること、またはスパチュラで堆積させること、かつまたは型押し、または彫刻することを含む、任意の適切な方法を使用して、その欠損部位に施与できる。本溶液を本セメント粉末と混合すると、得られたスラリ組成物は比較的急速に硬化するであろう。
【0042】
大抵の臨床用途では、60分を超えるセメント硬化時間は長過ぎる。その上、セメントの凝結が早過ぎると、所望の形状にペーストを形作り、それを欠損部位に堆積させる時間が十分でない恐れがある。本セメント組成物は、本発明の種々の実施形態に従って、わずか約35分以下、好ましくはわずか20分以下、またより一層好ましくは約5〜約15分の硬化、または凝結時間を有する。
【0043】
(実施例)
下記の実施例は、本発明の好ましい実施形態をさらに例示しているが、添付する特許請求範囲に示している本発明の範囲を決して限定するものではないと解釈すべきである。
【0044】
種々のセメントペースト系を調製した。このペーストの凝結時間および他の性質を評価した。
【0045】
(セメント粉末の調製)
当分野の技術者に知られている下記の従来の方法を使用して、TTCP、α−TCP、およびβ−TCPを調製する。DCPA、DCPD、HA、CaCO、およびCa(OH)は、J.T.Baker Chemical Co.、Phillipsburg、NJから入手可能なものなどの、市販の試薬級薬品である。
【0046】
TTCPは、市販のDCPA(Baker分析試薬、J.T.Baker Chemical Co.、Phillipsburg、NJ)およびCaCO(J.T.Baker Chemical Co.)の等モル混合物を炉内で約1500℃において約6時間加熱し、室温で急冷することにより調製する。別法として、最終生成物においてTTCPを有し、またα−TCP、HA、およびCaOを含む少量の他の相を有することを所望する場合、適正な量のDCPAおよびCaCOを使用して、約1.8〜約2.2のCa/Pモル比を得る。α−TCPは、約2モルのDCPAと、約1モルのCaCOとを含有する混合物を約1500℃まで約6時間加熱し、次いで空気中で急冷することにより調製する。別法として、最終生成物においてα−TCPを有し、また種々の量のHAを有することを所望する場合、適正な量のDCPAおよびCaCOを使用して、約1.5〜約1.7のCa/Pモル比を得る。混合物を約1200℃まで加熱し、かつ炉内で室温までそのまま冷却させる点を除いて、β−TCPを同様に調製する。粉末は、シクロヘキサン、エタノール中で、または液体なしで遊星ボールミル内において個別に粉砕して、下記の表に示したメジアン粒径を得る。表中に示していない場合、TTCPのメジアン粒径は約17μmであり、α−TCPでは約5μmであり、DCPAでは約1μmであり、CaCOでは約4μmであり、またCa(OH)では約2μmである。
【0047】
(溶液の調製)
示した化合物を適正な量で蒸留水に溶解して下記に示した濃度を得ることにより、種々のセメント溶液を調製する。実施例1および2の溶液は、当分野の技術者に知られており、また文献中に記載されている従来の方法を使用して調製する。全ての他の溶液は、示した化合物を適正な量で蒸留水に溶解して、下記の表に示した濃度を得ることにより調製する。
【0048】
(試験方法)
選択した溶液および粉末を約0.25〜約0.5の質量比でブレンドして、均質なペースト組成物を形成させる。このペーストを型枠に入れ、この型枠を温度約37℃および湿度100%に保持して、欠損部位における予想される条件を模している。
【0049】
重いギルモア(Gilmore)針(荷重453.5g、直径1.06mm)を使用して、ギルモア針装置によりセメント凝結時間を測定する。セメントの表面上に置いた場合に、この針が目に見える圧痕を残さなくなる時、このセメントは凝結していると見なす。コンピュータ制御した汎用試験機(Instron、United Calibration Corp.,Garden Grove,CA)を使用して、圧縮強さ測定を24時間湿潤供試体について行う。粉末X線回折分析(Rigaku,Danvers,MA,USA)を使用して、24時間内にセメント試料中に存在している相を同定する。
【0050】
(実施例1)
この実施例では、セメント液としてpH約1、カルシウム濃度約0.66M、およびリン濃度約7.6Mを有するMCPM−形成溶液を使用する。この溶液は、HPO溶液(約6.3M)中で過剰量のMCPMを平衡するまで攪拌し、続いて濾過することにより調製する。比較用凝結時間を提供するため、粉末は水とも混合する。
【表1】

【0051】
この実施例は、本発明の溶液が比較的急速な硬化を助長し、またセメント粉末を水性溶液(水だけ)と接触させた結果としてそのセメントは凝結しないことを例証している。
【0052】
(実施例2)
この実施例では、セメント液としてpH約2.1、カルシウム濃度約1.5M、およびリン濃度約4.4Mを有するDCPD−形成溶液を使用する。この溶液は、HPO溶液(約2.9M)中で過剰量のDCPDを平衡するまで攪拌し、続いて濾過することにより調製する。比較用凝結時間を提供するため、粉末は水とも混合する。
【表2】

【0053】
この実施例は、本発明の溶液が比較的急速な硬化を助長し、またセメント粉末を水性溶液(水だけ)と接触させた結果としてそのセメントは凝結しないことを例証している。
【0054】
(実施例3)
この実施例では、セメント液として濃酸溶液を使用する。比較用凝結時間を提供するため、粉末は水とも混合する。
【表3】

【0055】

【0056】
この実施例は、本発明の溶液が比較的急速な硬化を助長し、またセメント粉末を水性溶液(水だけ)と接触させた結果としてそのセメントは凝結しないことを例証している。
【0057】
(実施例4)
この実施例では、セメント液として、カルシウム錯体または不溶性カルシウム塩を生成する塩溶液を使用する。比較用凝結時間を提供するため、粉末は水とも混合する。
【表4】

【0058】
この実施例は、本発明の溶液が比較的急速な硬化を助長し、またセメント粉末を水性溶液(水だけ)と接触させた結果としてそのセメントは凝結しないことを例証している。
【0059】
(実施例5)
この実施例は、凝結中のセメント液のリン酸塩濃度に及ぼす、実施例4の溶液の影響を例証する。
【0060】
(方法および材料)
およそ0.4gの等モルTTCP(メジアン径=17μm)およびDCPA(1μm)混合物を、1mLの種々の試験用溶液と表5に示す時間混合する。溶液相におけるリン酸塩濃度を測定する。
【表5】

【0061】
セメント溶液として実施例4の溶液を使用すると、水を使用する場合よりも、溶液中のリン酸塩濃度が著しく高くなる。これらの結果は、実施例4の溶液を使用する場合の、上記において仮定している凝結反応促進の機序をさらに支持するものである。
【0062】
本発明の特定の実施形態を記載し、かつ例証しているが、当分野の技術者により修正を実施できるものであるため、本発明はそれらに限定されないことを理解すべきである。本出願では、本明細書において開示した基礎となる発明の趣旨および範囲内に含まれるあらゆる修正が企図される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】3成分系、Ca(OH)−HPO−HOの溶解度相図であり、その系の酸性および濃領域の相図である。
【図2】図2Aは、Ca(OH)−HPO−HO系の3次元溶解度相図である。図2Bは、log[Ca]軸に沿った図2Aの投影図である。図2Cは、log[P]軸に沿った図2Aの投影図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科用修復ならびに骨インプラントおよび修復向けの物質組成物であって、
リン酸一カルシウム一水和物、無水リン酸一カルシウム、無水リン酸二カルシウム、リン酸二カルシウム二水和物、リン酸八カルシウム、α−リン酸三カルシウム、β−リン酸三カルシウム、非晶質リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、リン酸四カルシウム、およびこれらの組合せからなる群から選択される1種または複数のリン酸カルシウム塩を含む粉末状カルシウム化合物と、
リン酸一カルシウム一水和物、無水リン酸一カルシウム、またはこれらの組合せに関して飽和している酸性リン酸カルシウム溶液と
を含む組成物。
【請求項2】
前記粉末状カルシウム化合物が、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、硫酸カルシウム、乳酸カルシウム、およびこれらの組合せからなる群から選択される1種または複数のカルシウム塩を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
薬物、充填材料、結晶調整剤、粘度調節剤、ゲル化剤、増孔剤、再吸収性および非再吸収性繊維およびメッシュ、骨誘導因子、骨形態形成タンパク質、ならびに他のタンパク質からなる群から選択される1種または複数の添加剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記1種または複数の添加剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、キトサン、キトサン誘導体、コラーゲン、ガム、ゼラチン、およびアルギン酸塩、ならびにこれらの組合せからなる群から選択されるゲル化剤である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記1種または複数の添加剤が充填材料である、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記1種または複数の添加剤が増孔剤である、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
前記酸性組成物のpHが、最初約1.9未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
歯科用修復ならびに骨インプラントおよび修復向けの物質組成物であって、
リン酸一カルシウム一水和物、無水リン酸一カルシウム、無水リン酸二カルシウム、リン酸二カルシウム二水和物、リン酸八カルシウム、α−リン酸三カルシウム、β−リン酸三カルシウム、非晶質リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、リン酸四カルシウム、およびこれらの組合せからなる群から選択される1種または複数のリン酸カルシウム塩を含む粉末状カルシウム化合物と、
リン酸二カルシウム二水和物、無水リン酸二カルシウム、またはこれらの組合せに関して飽和している酸性リン酸カルシウム溶液と
を含む組成物。
【請求項9】
前記粉末状カルシウム化合物が、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、硫酸カルシウム、乳酸カルシウム、およびこれらの組合せからなる群から選択される1種または複数のカルシウム塩を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
薬物、充填材料、結晶調整剤、粘度調節剤、ゲル化剤、増孔剤、再吸収性および非再吸収性繊維およびメッシュ、骨誘導因子、骨形態形成タンパク質、ならびに他のタンパク質からなる群から選択される1種または複数の添加剤を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記1種または複数の添加剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、キトサン、キトサン誘導体、コラーゲン、ガム、ゼラチン、およびアルギン酸塩、ならびにそれらの組合せからなる群から選択されるゲル化剤である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記1種または複数の添加剤が充填材料である、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
前記1種または複数の添加剤が増孔剤である、請求項10に記載の組成物。
【請求項14】
前記酸性組成物のpHが、最初約1.9〜約4.3である、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
歯科用修復ならびに骨インプラントおよび修復向けの物質組成物であって、
リン酸一カルシウム一水和物、無水リン酸一カルシウム、無水リン酸二カルシウム、リン酸二カルシウム二水和物、リン酸八カルシウム、α−リン酸三カルシウム、β−リン酸三カルシウム、非晶質リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、リン酸四カルシウム、およびこれらの組合せからなる群から選択される1種または複数のリン酸カルシウム塩を含む粉末状カルシウム化合物と、
濃酸溶液と
を含む組成物。
【請求項16】
前記濃酸溶液が、塩酸、硝酸、リン酸、酢酸、グリセロールリン酸、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項16に記載の組成物。
【請求項17】
前記粉末状カルシウム化合物が、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、硫酸カルシウム、乳酸カルシウム、およびこれらの組合せからなる群から選択される1種または複数のカルシウム塩を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
薬物、充填材料、結晶調整剤、粘度調節剤、ゲル化剤、増孔剤、再吸収性および非再吸収性繊維およびメッシュ、骨誘導因子、骨形態形成タンパク質、ならびに他のタンパク質からなる群から選択される1種または複数の添加剤を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項19】
前記1種または複数の添加剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、キトサン、キトサン誘導体、コラーゲン、ガム、ゼラチン、およびアルギン酸塩、ならびにそれらの組合せからなる群から選択されるゲル化剤である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記1種または複数の添加剤が充填材料である、請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
前記1種または複数の添加剤が増孔剤である、請求項18に記載の組成物。
【請求項22】
歯科用修復ならびに骨インプラントおよび修復向けの物質組成物であって、
リン酸一カルシウム一水和物、無水リン酸一カルシウム、無水リン酸二カルシウム、リン酸二カルシウム二水和物、リン酸八カルシウム、α−リン酸三カルシウム、β−リン酸三カルシウム、非晶質リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、リン酸四カルシウム、およびこれらの組合せからなる群から選択される1種または複数のリン酸カルシウム塩を含む粉末状カルシウム化合物と、
カチオン成分がカルシウムではなく、また1種または複数のアニオン成分が(i)溶液内において強いカルシウム錯体を形成し、または(ii)カルシウムとの不溶性塩を形成する、塩の溶液と
を含む組成物。
【請求項23】
前記粉末状カルシウム化合物が、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、硫酸カルシウム、乳酸カルシウム、およびこれらの組合せからなる群から選択される1種または複数のカルシウム塩を含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
薬物、充填材料、結晶調整剤、粘度調節剤、ゲル化剤、増孔剤、再吸収性および非再吸収性繊維およびメッシュ、骨誘導因子、骨形態形成タンパク質、ならびに他のタンパク質からなる群から選択される1種または複数の添加剤を含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項25】
前記1種または複数の添加剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、キトサン、キトサン誘導体、コラーゲン、ガム、ゼラチン、およびアルギン酸塩、ならびにそれらの組合せからなる群から選択されるゲル化剤である、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記1種または複数の添加剤が充填材料である、請求項24に記載の組成物。
【請求項27】
前記1種または複数の添加剤が増孔剤である、請求項24に記載の組成物。
【請求項28】
骨および歯の欠損部を修復する方法であって、
(a)請求項1、8、15、および22のいずれか一項に記載の組成物を調製するステップと、
(b)前記組成物が硬化する前に、前記組成物を前記欠損部に充填するステップと
を含む方法。
【請求項29】
リン酸カルシウム骨セメントであって、周囲温度で自己硬化しまた生体骨と接触させてインプラントする場合再吸収可能であり、請求項1、8、15、および22のいずれか一項に記載の組成物を含む骨セメント。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【公表番号】特表2007−522113(P2007−522113A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−549256(P2006−549256)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【国際出願番号】PCT/US2004/039819
【国際公開番号】WO2005/074453
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(505377212)エイディーエイ ファウンデーション (5)
【Fターム(参考)】