説明

情報伝送システム、該システムに用いられる歪み補償方法及び歪み補償制御プログラム

【課題】撮影用ヘリコプタから送信用データを中継用ヘリコプタを経て地上局へ伝送する場合に、ロータモジュレーションの影響が抑制される情報伝送システムを提供する。
【解決手段】歪み補償手段(たとえば、データ無線部28)では、PS抽出部421 ,…,42M で受信データraのパイロットシンボルps1 ,…,psM が抽出される。チャネル推定部431 ,…,43M では、チャネル推定データcp1 ,…,cpM が取得される。選択合成部44により、無歪チャネル推定データnd及び有歪チャネル推定データydが出力される。フェージング補償部45では、無歪チャネル推定データndを用いてフェージング補償が行われ、受信データfaが取得される。ロータ歪み推定部46では、有歪チャネル推定データydに基づいて、ロータモジュレーションの歪み成分diが推定される。ロータモジュレーション補償部47では、補償済み受信データmaが取得される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、情報伝送システム、該システムに用いられる歪み補償方法及び歪み補償制御プログラムに係り、特に、撮影用ヘリコプタ(回転翼機)から映像情報などの送信用データを指向空中線を介して中継用ヘリコプタ(回転翼機)へ伝送し、さらに、同中継用ヘリコプタからリアルタイムで地上局などへ伝送する場合に用いて好適な情報伝送システム、該システムに用いられる歪み補償方法及び歪み補償制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
突発的な地震や火災などの災害発生時では、民間報道機関や官省庁などによる初動対応として、ヘリコプタ(撮影用ヘリ)に搭載されたカメラにより現地が撮影され、撮影された映像情報がいち早くリアルタイムで地上局へ伝送される。1機のヘリコプタで映像を地上局へ伝送する場合、撮影ヘリのカバーエリアは、地上固定局から半径が数十km程度の範囲であり、同撮影ヘリの位置がカバーエリアを越える場合は、中継車などの地上移動局をカバーエリア内に配備する必要がある。また、突発的な地震などの災害発生時では、緊急対応を必要とするため、中継車の配備に時間をかけることができず、さらに、道路の崩壊などで中継車が使えないことも想定される。このため、撮影ヘリの送信部から送出される映像情報が別のヘリコプタ(中継用ヘリ)で中継されて地上受信局へ伝送する装置が使用されることもある。この種の装置では、自機情報と相手機情報を基に演算処理をして空中線の指向制御を行うため、お互いの座標や高度情報などを、UHF(Ultra High Frequency)帯の搬送波を用いて双方向の無線通信を行っている。
【0003】
この場合、双方のヘリ間での指向制御は、上記演算処理の演算結果に基づく座標追尾で行われるため、自機情報及び相手機情報の伝送を行うデータ伝送が重要となる。ところが、このデータ伝送を行うUHF帯の搬送波の受信電界が高いにも関わらず、データ誤りが多々検出されている。このデータ誤りの原因としては、搬送波の伝搬路上でのフェージング歪みの影響が考えられるが、一方、搬送波の受信電界をFFT(Fast Fourier Transform、高速フーリエ変換)で周波数解析すると、ヘリコプタのロータ周期と同じ周波数成分が検出されるので、他の原因として、搬送波が回転翼で遮断されることによるロータモジュレーションが考えられる。
【0004】
このロータモジュレーションに対する対策として、送信側でロータ周期を避けてデータを送信する方法があるが、ヘリ−ヘリ間の伝送では、受信側のヘリでもタイミングが異なるロータモジュレーションが生じるため、送信側のみで対処しても、効果は十分ではない。
また、同じ情報を複数回送信し、ロータモジュレーションの影響を受けなかった情報を選択する方法も考えられるが、送信する情報は、ヘリの位置、機体姿勢などを含む更新レートの高い情報のため、同じ情報を複数回送る間に最新の情報を送信した方が、指向制御には有利となるので、効果は十分ではない。
【0005】
この種の関連する技術としては、たとえば、特許文献1に記載されたOFDM通信装置がある。
このOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing、直交周波数分割多重)通信装置では、送信部は、送信すべき情報に品質判定情報を付加する品質判定情報付加部を備えている。受信部は、伝送路推定部と、伝送路補償部と、誤り訂正部と、誤り検出部と、再符号化部とを備えている。伝送路補償部は、伝送路推定値を用いて受信信号の伝送路歪みを補償する。誤り訂正部は、伝送路歪みが補償された信号に対して誤り訂正処理を行う。誤り検出部は、品質判定情報に基づいて、誤り訂正処理された信号に対して誤り検出を行い、誤りの有無を示す誤り検出信号を出力する。再符号化部は、誤り訂正処理された信号に対して再符号化処理を行う。伝送路推定部は、パイロットシンボルに基づいて伝送路推定値を求め、かつ、再符号化された信号に基づいて伝送路推定を行い、誤り検出信号が誤りがないことを示す場合にのみ、これに対応する再符号化された信号に基づく伝送路推定値をパイロットシンボルに基づくものに代えて出力する。
【0006】
また、特許文献2に記載された受信機では、フィルタを経て入力された受信信号から、逆拡散部によりパイロットシンボル及びデータシンボルが取り出される。チャネル推定部により、フェージング周期測定部で測定されたフェージング周期に対応するブロック長のパイロットシンボルを用いたチャネル推定が行われる。待ち合わせメモリにより、データシンボルをチャネル推定に必要な時間だけ待たせ、逆回転部により、パイロットシンボルの逆回転ベクトル分だけ逆回転させて復号結果が求められ、信号合成回路で合成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−072251号公報
【特許文献2】特開2004−140561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記関連技術では、次のような課題があった。
すなわち、特許文献1に記載されたOFDM通信装置では、受信特性の劣化が防止されるが、撮影用ヘリコプタから送信用データを中継用ヘリコプタを経て地上局へ伝送するシステムに対応するものではなく、上記の問題点は、改善されない。
【0009】
特許文献2に記載された受信機では、受信性能が高められるが、撮影用ヘリコプタと中継用ヘリコプタとの間のデータ伝送に対応するものではなく、上記の問題点は、改善されない。
【0010】
この発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、撮影用ヘリコプタから送信用データを中継用ヘリコプタを経て地上局へ伝送する場合に、ロータモジュレーションの影響が抑制される情報伝送システム、該システムに用いられる歪み補償方法及び歪み補償制御プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、この発明の第1の構成は、第1の回転翼機に搭載され、送信用データを第1の指向空中線を介して送信する情報送信装置と、第2の回転翼機に搭載され、前記情報送信装置から送信された前記送信用データを第2の指向空中線を介して受信し、かつ、他の受信局へ中継伝送する中継用送信装置とを備え、前記情報送信装置は、前記第1の回転翼機の飛行状態を表す第1の状態情報を生成して第1の伝送路を経て前記第2の回転翼機へ送信すると共に、前記第2の回転翼機から該第2の回転翼機の飛行状態を表す第2の状態情報を取得し、前記第1の状態情報及び第2の状態情報に基づいて、適応的に、前記第1の指向空中線の指向特性を制御する第1の空中線制御手段を有し、前記中継用送信装置は、前記第2の状態情報を生成して第2の伝送路を経て前記第1の回転翼機へ送信すると共に、前記第1の回転翼機から前記第1の状態情報を取得し、前記第2の状態情報及び第1の状態情報に基づいて、適応的に、前記第2の指向空中線の指向特性を制御する第2の空中線制御手段を有する情報伝送システムに係り、前記第1の空中線制御手段は、前記第1の状態情報に歪み検出用の第1のパイロットシンボルを挿入する構成とされ、前記第2の空中線制御手段は、前記第2の状態情報に歪み検出用の第2のパイロットシンボルを挿入する構成とされ、かつ、前記第1の空中線制御手段は、前記第2の状態情報に挿入されている前記第2のパイロットシンボルを解析し、この解析結果に基づいて前記第2の伝送路の歪の補償を行う第1の歪み補償手段が設けられ、前記第2の空中線制御手段は、前記第1の状態情報に挿入されている前記第1のパイロットシンボルを解析し、この解析結果に基づいて前記第1の伝送路の歪の補償を行う第2の歪み補償手段が設けられていることを特徴としている。
【0012】
この発明の第2の構成は、第1の回転翼機に搭載され、送信用データを第1の指向空中線を介して送信する情報送信装置と、第2の回転翼機に搭載され、前記情報送信装置から送信された前記送信用データを第2の指向空中線を介して受信し、かつ、他の受信局へ中継伝送する中継用送信装置とを備え、前記情報送信装置は、前記第1の回転翼機の飛行状態を表す第1の状態情報を生成して第1の伝送路を経て前記第2の回転翼機へ送信すると共に、前記第2の回転翼機から該第2の回転翼機の飛行状態を表す第2の状態情報を取得し、前記第1の状態情報及び第2の状態情報に基づいて、適応的に、前記第1の指向空中線の指向特性を制御する第1の空中線制御手段を有し、前記中継用送信装置は、前記第2の状態情報を生成して第2の伝送路を経て前記第1の回転翼機へ送信すると共に、前記第1の回転翼機から前記第1の状態情報を取得し、前記第2の状態情報及び第1の状態情報に基づいて、適応的に、前記第2の指向空中線の指向特性を制御する第2の空中線制御手段を有する情報伝送システムに用いられる歪み補償方法に係り、前記第1の空中線制御手段が、前記第1の状態情報に歪み検出用の第1のパイロットシンボルを挿入し、前記第2の空中線制御手段が、前記第2の状態情報に歪み検出用の第2のパイロットシンボルを挿入し、かつ、前記第1の空中線制御手段が、前記第2の状態情報に挿入されている前記第2のパイロットシンボルを解析し、この解析結果に基づいて前記第2の伝送路の歪の補償を行う第1の歪み補償処理を行い、前記第2の空中線制御手段が、前記第1の状態情報に挿入されている前記第1のパイロットシンボルを解析し、この解析結果に基づいて前記第1の伝送路の歪の補償を行う第2の歪み補償処理を行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
この発明の構成によれば、第1の回転翼機及び第2の回転翼機によるロータモジュレーションによる歪で生じるデータ誤りが軽減され、同第1の回転翼機と同第2の回転翼機との間の空中線指向制御を安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の一実施形態である情報伝送システムが用いられる環境の一例を示す図である。
【図2】図1中の撮影機1に搭載されている情報送信装置の要部の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】図1中の中継機2に搭載されている中継用送信装置の要部の電気的構成を示すブロック図である。
【図4】図2中のデータ無線部17で撮影機データsaに挿入されるパイロットシンボルを示す模式図である。
【図5】図3中のデータ無線部28の要部の電気的構成を示すブロック図である。
【図6】撮影機1及び中継機2によるロータモジュレーションのタイミングを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上記第1の伝送路は、所定の周波数帯域の第1の搬送波を用いて構成され、上記第2の伝送路は、所定の周波数帯域の第2の搬送波を用いて構成され、上記情報送信装置は、上記第1の状態情報を、上記第1の伝送路を経て上記中継用送信装置へ送信すると共に、上記中継用送信装置から上記第2の伝送路を経て上記第2の状態情報を受信するための第1の無指向空中線を有し、上記中継用送信装置は、上記情報送信装置から上記第1の伝送路を経て上記第1の状態情報を受信すると共に、上記第2の状態情報を上記第2の伝送路を経て上記情報送信装置へ送信するための第2の無指向空中線を有する情報伝送システムを提供する。
【0016】
また、この発明の好適な形態では、上記第1の空中線制御手段は、上記第1の状態情報のフレーム毎に所定数の上記第1のパイロットシンボルを挿入する構成とされ、上記第2の歪み補償手段は、上記第1の状態情報のフレーム毎に挿入されている上記各第1のパイロットシンボルに基づいて上記第1の伝送路のフェージング補償を行った後、上記第1の回転翼機及び上記第2の回転翼機によるロータモジュレーションの歪み推定を行うことにより、ロータモジュレーション歪みを補償する構成とされ、上記第2の空中線制御手段は、上記第2の状態情報のフレーム毎に所定数の上記第2のパイロットシンボルを挿入する構成とされ、上記第1の歪み補償手段は、上記第2の状態情報のフレーム毎に挿入されている上記各第2のパイロットシンボルに基づいて上記第2の伝送路のフェージング補償を行った後、上記第2の回転翼機及び上記第1の回転翼機によるロータモジュレーションの歪み推定を行うことにより、ロータモジュレーション歪みを補償する構成とされている。
【0017】
また、上記第1の空中線制御手段は、上記第1の状態情報のフレーム毎に、上記第1の回転翼機のロータ回転周期及び上記第1の状態情報の伝送速度に基づいて設定された数の上記第1のパイロットシンボルを挿入する構成とされ、上記第2の空中線制御手段は、上記第2の状態情報のフレーム毎に、上記第2の回転翼機のロータ回転周期及び上記第2の状態情報の伝送速度に基づいて設定された数の上記第2のパイロットシンボルを挿入する構成とされている。
【0018】
また、上記第2の歪み補償手段は、上記第1の状態情報のフレーム毎に挿入されている上記各第1のパイロットシンボルを抽出する複数の第1のパイロットシンボル抽出部と、上記各第1のパイロットシンボル抽出部で抽出された上記各第1のパイロットシンボルに基づいて、上記第1の伝送路の上記各フレームに対応するチャネルの伝達関数の推定値を表す第1のチャネル推定データを取得する複数の第1のチャネル推定部と、上記各第1のチャネル推定部で取得された上記各第1のチャネル推定データのうち、ほぼ同じ値の第1のチャネル推定データの加算平均値を求めて第1の無歪チャネル推定データとして出力する一方、異なる値の第1のチャネル推定データを抽出して第1の有歪チャネル推定データとして出力する第1の選択合成部と、上記第1の状態情報に対して、上記第1の無歪チャネル推定データを用いてフェージング補償を行って上記第1の回転翼機のロータ回転周期毎の受信データを取得する第1のフェージング補償部と、上記第1の有歪チャネル推定データに基づいて、上記第1の回転翼機及び上記第2の回転翼機によるロータモジュレーションの歪み成分を推定する第1のロータ歪み推定部と、上記第1のフェージング補償部で取得された上記第1の回転翼機のロータ回転周期毎の受信データから、上記第1のロータ歪み推定部で推定された上記歪み成分を除去することにより、ロータモジュレーション補償が行われた第1の補償済み受信データを取得する第1のロータモジュレーション補償部とを備え、上記第1の歪み補償手段は、上記第2の状態情報のフレーム毎に挿入されている上記各第2のパイロットシンボルを抽出する複数の第2のパイロットシンボル抽出部と、上記各第2のパイロットシンボル抽出部で抽出された上記各第2のパイロットシンボルに基づいて、上記第2の伝送路の上記各フレームに対応するチャネルの(伝達関数の推定値)を表す第2のチャネル推定データを取得する複数の第2のチャネル推定部と、上記各第2のチャネル推定部で取得された上記各第2のチャネル推定データのうち、ほぼ同じ値の第2のチャネル推定データの加算平均値を求めて第2の無歪チャネル推定データとして出力する一方、異なる値の第2のチャネル推定データを抽出して第2の有歪チャネル推定データとして出力する第2の選択合成部と、上記第2の状態情報に対して、上記第2の無歪チャネル推定データを用いてフェージング補償を行って上記第2の回転翼機のロータ回転周期毎の受信データを取得する第2のフェージング補償部と、上記第2の有歪チャネル推定データに基づいて、上記第2の回転翼機及び上記第1の回転翼機によるロータモジュレーションの歪み成分を推定する第2のロータ歪み推定部と、上記第2のフェージング補償部で取得された上記第2の回転翼機のロータ回転周期毎の受信データから、上記第2のロータ歪み推定部で推定された上記歪み成分を除去することにより、ロータモジュレーション補償が行われた第2の補償済み受信データを取得する第2のロータモジュレーション補償部とを備えている。
【実施形態】
【0019】
図1は、この発明の一実施形態である情報伝送システムが用いられる環境の一例を示す図である。
この例の環境では、同図に示すように、撮影機(撮影用ヘリコプタ)1と、中継機(中継用ヘリコプタ)2と、地上局3とが設けられている。撮影機1には、情報伝送システムを構成する図示しない情報送信装置が搭載されている。同情報送信装置は、たとえば撮影機1にて撮影された映像や集音された音声を送信用データとして、図示しない指向空中線を介して無線信号wdで送信する。また、中継機2には、情報伝送システムを構成する図示しない中継用送信装置が搭載されている。同中継用送信装置は、上記情報送信装置から送信された送信用データの無線信号wdを図示しない指向空中線を介して受信し、かつ、無線信号ydとしてリアルタイムで地上局3へ中継伝送する。
【0020】
また、撮影機1の情報送信装置及び中継機2の中継用送信装置には、データ伝送用の空中線も設けられ、時々刻々と変化する撮影機データsa及び中継機データsbが、飛行中の相手機との間でやり取りされると共に、同中継機2の中継用送信装置から、撮影機データsaと中継機データsbとを含む機体データscが地上局3に向けて送信される。撮影機データsaは、撮影機1の現在位置情報(機体座標)、機体姿勢、機体高度、機首方位、中継機2に対する離隔距離、及び、所定の飛行運動予測算出プログラムによる飛行運動予測値から構成されている。中継機データsbは、中継機2の現在位置情報(機体座標)、機体姿勢、機体高度、機首方位、撮影機1に対する離隔距離、送信用データの受信レベル、及び、飛行運動予測算出プログラムによる飛行運動予測値から構成されている。
【0021】
図2は、図1中の撮影機1に搭載されている情報送信装置の要部の電気的構成を示すブロック図である。
この情報送信装置10は、同図2に示すように、カメラ装置11と、送信部12と、空中線13と、機体情報取得部14と、GPS(Global Positioning System 、汎世界測位システム)15と、空中線16と、データ無線部17と、演算部18と、駆動部19とから構成されている。カメラ装置11は、撮影した映像に対応した映像データvdを出力する。送信部12は、カメラ装置11から出力される映像データvdに対して、エンコード、変調、所定の周波数帯へのアップコンバート及び増幅処理を行ってRF信号を生成し、同RF信号を送信用データsdとして空中線13へ出力すると共に、送信用データsdの出力レベルnaを演算部18へ出力する。
【0022】
空中線13は、たとえばパラボラアンテナなどの指向空中線で構成され、駆動部19の制御により指向を中継機2に向けて、送信用データsdを無線信号wdとして送信する。
機体情報取得部14は、撮影機1の機体姿勢(ロール、ピッチ、ヨー)、機体高度、及び機首方位を取得して機体情報maとして出力する。GPS15は、撮影機1の現在位置情報を取得して機体座標gaを出力する。空中線16は、無指向空中線で構成されている。
データ無線部17は、演算部18から出力される撮影機データpaを、空中線16から撮影機データsa(第1の状態情報)として、所定の周波数帯域(たとえばUHF帯、Ultra High Frequency)の搬送波で構成されている伝送路(第1の伝送路)を経て中継機2へ送信すると共に、同中継機2から上記第1の伝送路と同様の伝送路(第2の伝送路)及び空中線16を経て中継機データsb(第2の状態情報)を受信して復調し、中継機データpbとして演算部18へ入力する。
【0023】
特に、この実施形態では、データ無線部17は、撮影機データsa(第1の状態情報)のフレーム毎に歪み検出用の所定数の第1のパイロットシンボルを挿入する一方、中継機データsb(第2の状態情報)に挿入されている第2のパイロットシンボルを解析し、この解析結果に基づいて上記第2の伝送路の歪の補償を行う図示しない第1の歪み補償手段が設けられている。この第1の歪み補償手段は、中継機データsb(第2の状態情報)のフレーム毎に挿入されている各第2のパイロットシンボルに基づいて上記第2の伝送路のフェージング補償を行った後、中継機2及び撮影機1によるロータモジュレーションの歪み推定を行うことにより、ロータモジュレーション歪みを補償する。
【0024】
演算部18は、データ無線部17で受信された中継機データsbに基づいて、撮影機1の中継機2に対する離隔距離及び送信用データsd(すなわち、無線信号wd)の受信レベルを算出し、かつ、機体情報ma及び機体座標gaを入力し、上記現在位置情報(機体座標)、機体姿勢、機体高度、機首方位、離隔距離、受信レベル、及び飛行運動予測値に基づいて、適応的に、空中線13の半値角da(指向特性)を算出すると共に、送信部12に対して制御信号caを出力して送信用データsdの変調方式及び同送信用データsdの出力レベルを制御する。駆動部19は、演算部18で算出された半値角daに基づいて制御信号eaを出力して空中線13の半値角を制御する。また、演算部18は、駆動部19が空中線13の半値角を広角化するように制御するとき、送信用データsdの出力レベルnaと、データ無線部17で受信された中継機データsbとに基づいて、中継機2に搭載されている中継用送信装置による無線信号wdの受信レベルの低下を予測すると、送信部12に対して、適応的に送信用データsdの変調方式及び同送信用データsdの出力レベルを制御する。
【0025】
図3は、図1中の中継機2に搭載されている中継用送信装置の要部の電気的構成を示すブロック図である。
この中継用送信装置20は、同図3に示すように、空中線21と、受信部22と、送信部23と、空中線24と、機体情報取得部25と、GPS26と、空中線27と、データ無線部28と、演算部29と、駆動部30とから構成されている。空中線21は、空中線13と同様に、パラボラアンテナなどの指向空中線で構成され、駆動部30の制御により指向を撮影機1に向けて無線信号wdを受信し、図示しない低雑音増幅器を経てRF信号の受信データrdとして出力する。
【0026】
受信部22は、受信データrdをベースバンドにダウンコンバートして受信データtdとして出力すると共に、受信データrdの受信レベルnbを演算部29へ出力する。送信部23は、受信データtdに対して、変調、アップコンバート及び増幅処理を行い、情報送信装置10の送信部12の送信用データsdとは周波数の異なる搬送波を使用した送信用データudを出力する。空中線24は、無指向性アンテナで構成され、送信用データudを無線信号ydとして地上局3へ送信する。機体情報取得部25は、中継機2の機体姿勢(ロール、ピッチ、ヨー)、機体高度、及び機首方位を取得して機体情報mbとして出力する。GPS26は、中継機2の現在位置情報を取得して機体座標gbを出力する。空中線27は、無指向空中線で構成されている。
【0027】
データ無線部28は、演算部29から出力される中継機データqaを、空中線27から中継機データsb(第2の状態情報)として、所定の周波数帯域(たとえばUHF帯)の搬送波で構成されている伝送路(第2の伝送路)を経て撮影機1へ送信すると共に、同撮影機1から上記第1の伝送路及び空中線27を経て撮影機データsaを受信して復調し、撮影機データqbとして演算部29へ入力する。特に、この実施形態では、データ無線部28は、中継機データsb(第2の状態情報)のフレーム毎に歪み検出用の所定数の第2のパイロットシンボルを挿入する一方、撮影機データsa(第1の状態情報)に挿入されている第1のパイロットシンボルを解析し、この解析結果に基づいて上記第1の伝送路の歪の補償を行う図示しない第2の歪み補償手段が設けられている。この第2の歪み補償手段は、撮影機データsa(第1の状態情報)のフレーム毎に挿入されている各第1のパイロットシンボルに基づいて上記第1の伝送路のフェージング補償を行った後、撮影機1及び中継機2によるロータモジュレーションの歪み推定を行うことにより、ロータモジュレーション歪みを補償する。また、空中線27は、撮影機データsaと中継機データsbとを含む機体データscを地上局3に向けて送信する。
【0028】
演算部29は、データ無線部28で受信された撮影機データsaに基づいて、中継機2の撮影機1に対する離隔距離を算出すると共に、受信データrdの受信レベルnbに基づいて送信用データsd(無線信号wd)の受信レベルを算出し、かつ、現在位置情報(機体座標)、機体姿勢、機体高度、機首方位、離隔距離、受信レベル、及び飛行運動予測値に基づいて、適応的に、空中線21の半値角dbを算出すると共に、受信部22に対して制御信号cbを出力して受信データtdの復調方式を制御する。駆動部30は、演算部29で算出された上記半値角dbに基づいて制御信号ebを出力して空中線21の半値角を制御する。
【0029】
図4は、図2中のデータ無線部17で撮影機データsaに挿入されるパイロットシンボルを示す模式図である。
このパイロットシンボル(第1のパイロットシンボル)は、同図4に示すように、N個のデータ信号で構成される撮影機データsa(第1の状態情報)のフレーム毎に、撮影機1のロータ回転周期及び同撮影機データsaの伝送速度に基づいて設定されたNp個が挿入されている。また、同様に、図3中のデータ無線部28で中継機データsb(第2の状態情報)に挿入されるパイロットシンボル(第2のパイロットシンボル)も、N個のデータ信号で構成される同中継機データsbのフレーム毎に、中継機2のロータ回転周期及び同中継機データsbの伝送速度に基づいて設定されたNp個が挿入されている。
【0030】
図5は、図3中のデータ無線部28の要部の電気的構成を示すブロック図であり、特に、第2の歪み補償手段の構成が示されている。
この第2の歪み補償手段は、同図5に示すように、LPF(ローパスフィルタ)41と、PS(パイロットシンボル)抽出部421 ,422 ,…,42M-1 ,42M と、チャネル推定部431 ,432 ,…,43M-1 ,43M と、選択合成部44と、フェージング補償部45と、ロータ歪み推定部46と、ロータモジュレーション補償部47と、復調部48とから構成されている。LPF41は、空中線27を経て入力された撮影機データsaから、歪み補償手段に必要な帯域の受信データraを出力する。PS抽出部421 ,422 ,…,42M-1 ,42M は、受信データraのフレーム毎に挿入されている各第1のパイロットシンボルps1 ,ps2 ,…,psM-1 ,psM を抽出する。
【0031】
チャネル推定部431 ,432 ,…,43M-1 ,43M は、PS抽出部421 ,422 ,…,42M-1 ,42M で抽出されたパイロットシンボルps1 ,ps2 ,…,psM-1 ,psM に基づいて、上記第1の伝送路の上記受信データraの各フレームに対応するチャネルの伝達関数の推定値を表すチャネル推定データcp1 ,cp2 ,…,cpM-1 ,cpM を取得する。この場合、チャネル推定部431 ,432 ,…,43M-1 ,43M は、Mフレームの中のNp・M個のパイロットシンボルNp・M個を抽出し、各フレームの同番号のパイロットシンボル毎にチャネル推定を行い、(Np+N)・M個のチャネル推定データをNp系列取得する。この推定方法では、たとえば、時間領域での2次補間や、周波数領域での0系列挿入などが用いられる。
【0032】
ここで、基本的には、Np系列のチャネル推定データは、ほぼ同じ値となる。しかしながら、ロータモジュレーションの影響を受けたパイロットシンボルを使用して推定されたデータ系列は、ロータモジュレーションの影響のない推定系列とは異なるデータ系列となる。ほぼ同じ成分の複数のデータ系列は、パイロットシンボルがロータモジュレーションの影響を受けていないため、選択合成部44で推定系列の加算平均を行う。選択合成部44は、チャネル推定部431 ,432 ,…,43M-1 ,43M で取得されたチャネル推定データcp1 ,cp2 ,…,cpM-1 ,cpM のうち、ほぼ同じ値のチャネル推定データの加算平均値を求めて無歪チャネル推定データndとして出力する一方、異なる値のチャネル推定データを抽出して有歪チャネル推定データydとして出力する。フェージング補償部45は、受信データraに対して、無歪チャネル推定データndを用いてフェージング補償を行って撮影機1のロータ回転周期毎の受信データfaを取得する。
【0033】
ロータ歪み推定部46は、有歪チャネル推定データydに基づいて、撮影機1及び中継機2によるロータモジュレーションの歪み成分diを推定する。ロータモジュレーション補償部47は、フェージング補償部45で取得された撮影機1のロータ回転周期毎の受信データfaから、ロータ歪み推定部46で推定された歪み成分diを除去することにより、ロータモジュレーション補償が行われた補償済み受信データmaを取得する。復調部48は、補償済み受信データmaを復調して撮影機データqbを出力する。また、この第2の歪み補償手段は、図示しないコンピュータとしてのCPU(中央処理装置)により制御され、同CPUが、コンピュータ読み取り可能な歪み補償制御プログラムに基づいて動作する。また、データ無線部17に設けられている第1の歪み補償手段は、第2の歪み補償手段と同様に構成され、入力される中継機データsbに対して第2の歪み補償手段と同様の処理を行って中継機データpbを出力する。
【0034】
図6は、撮影機1及び中継機2によるロータモジュレーションのタイミングを示す図である。
この図を参照して、この形態の情報伝送システムに用いられる歪み補償方法の処理内容について説明する。
この情報伝送システムでは、データ無線部17により、撮影機データsaに歪み検出用の第1のパイロットシンボルが挿入され、また、データ無線部28により、中継機データsbに歪み検出用の第2のパイロットシンボルが挿入される。そして、データ無線部17により、中継機データsbに挿入されている第2のパイロットシンボルが解析され、この解析結果に基づいて第2の伝送路の歪の補償が行われ(第1の歪み補償処理)、また、データ無線部28により、撮影機データsaに挿入されている第1のパイロットシンボルが解析され、この解析結果に基づいて第1の伝送路の歪の補償が行われる(第2の歪み補償処理)。
【0035】
この場合、第1及び第2の伝送路では、フェージングの影響を受けると共に、撮影機1及び中継機2によるロータモジュレーションの影響を受け、図6に示すように、同撮影機1と同中継機2とでは、ロータモジュレーションのタイミングが異なる。このため、データ無線部17により、撮影機データsaのフレーム毎に、撮影機1のロータ回転周期及び同撮影機データsaの伝送速度に基づいて設定されたNp個の第1のパイロットシンボルが挿入され、データ無線部28により、撮影機データsaのフレーム毎に挿入されている各第1のパイロットシンボルに基づいて第1の伝送路のフェージング補償が行われた後、撮影機1及び中継機2によるロータモジュレーションの歪み推定が行われることにより、ロータモジュレーション歪みが補償される。また、データ無線部28により、中継機データsbのフレーム毎に、中継機2のロータ回転周期及び同中継機データsbの伝送速度に基づいて設定されたNp個の第2のパイロットシンボルが挿入され、データ無線部17により、中継機データsbのフレーム毎に挿入されている各第2のパイロットシンボルに基づいて第2の伝送路のフェージング補償が行われた後、中継機2及び撮影機1によるロータモジュレーションの歪み推定が行われることにより、ロータモジュレーション歪みが補償される。
【0036】
すなわち、データ無線部28では、空中線27を経て入力された撮影機データsaがLPF41に入力され、同LPF41から受信データraが出力される。受信データraがPS抽出部421 ,422 ,…,42M-1 ,42M に入力され、同受信データraのフレーム毎に挿入されている第1のパイロットシンボルps1 ,ps2 ,…,psM-1 ,psM が抽出される(第1のパイロットシンボル抽出処理)。チャネル推定部431 ,432 ,…,43M-1 ,43M では、抽出されたパイロットシンボルps1 ,ps2 ,…,psM-1 ,psM に基づいて、第1の伝送路の受信データraの各フレームに対応するチャネルの伝達関数の推定値を表すチャネル推定データcp1 ,cp2 ,…,cpM-1 ,cpM が取得される(第1のチャネル推定処理)。選択合成部44により、チャネル推定データcp1 ,cp2 ,…,cpM-1 ,cpM のうち、ほぼ同じ値のチャネル推定データの加算平均値が無歪チャネル推定データndとして出力される一方、異なる値のチャネル推定データが抽出されて有歪チャネル推定データydとして出力される(第1の選択合成処理)。
【0037】
フェージング補償部45では、受信データraに対して、無歪チャネル推定データndを用いてフェージング補償が行われ、撮影機1のロータ回転周期毎の受信データfaが取得される(第1のフェージング補償処理)。一方、ロータ歪み推定部46では、有歪チャネル推定データydに基づいて、撮影機1及び中継機2によるロータモジュレーションの歪み成分diが推定される(第1のロータ歪み推定処理)。ロータモジュレーション補償部47では、フェージング補償部45で取得された受信データfaから、ロータ歪み推定部46で推定された歪み成分diを除去することにより、補償済み受信データmaが取得される(第1のロータモジュレーション補償処理)。補償済み受信データmaは、復調部48で復調されて撮影機データqbとして出力される。また、データ無線部17では、入力される中継機データsbに対して、データ無線部28と同様の各処理、すなわち、第2のパイロットシンボル抽出処理、第2のチャネル推定処理、第2の選択合成処理、第2のフェージング補償処理、第2のロータ歪み推定処理及び第2のロータモジュレーション補償処理が行われて中継機データpbが出力される。
【0038】
以上のように、この実施形態では、データ無線部17により第1の歪み補償処理が行われると共に、データ無線部28により第2の歪み補償処理が行われるので、撮影機1及び中継機2によるロータモジュレーションによる歪で生じるデータ誤りが軽減され、同撮影機1と同中継機2との間の空中線指向制御が安定して行われる。また、第1及び第2の伝送路のフェージング補償が行われた後、ロータモジュレーションの歪み推定が行われるので、高精度でロータモジュレーション歪みが補償される。
【0039】
以上、この発明の実施形態を図面により詳述してきたが、具体的な構成は同実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更などがあっても、この発明に含まれる。
たとえば、撮影機データsa(第1の状態情報)のフレーム毎に挿入されるNp個の第1のパイロットシンボルと、中継機データsbのフレーム毎に挿入されるNp個の第2のパイロットシンボルとは、同じでも、異なっていても良い。また、第1及び第2の伝送路を構成する搬送波は、UHF帯に限定されない。また、送信部12に入力されるデータは、カメラ装置11の映像データvdに限らず、たとえば音声データなど、任意のデータで良い。また、図1では、他の受信局として地上局3が設けられているが、自動車や船などに搭載された移動受信局でも良い。また、位置情報取得手段として、GPSが用いられているが、たとえば、ヨーロッパで計画されている「Galileo」や、日本で計画されている「準天頂衛星」が実用化されたとき、これらを用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0040】
この発明は、2機のヘリコプタ間で指向空中線を使用してリアルタイムで映像伝送などを行う場合全般に適用できる。
【符号の説明】
【0041】
1 撮影機(撮影用ヘリコプタ)(第1の回転翼機)
2 中継機(中継用ヘリコプタ)(第2の回転翼機)
3 地上局(他の受信局)
13 空中線(第1の指向空中線)
16 空中線(第1の無指向空中線)
17 データ無線部(第1の空中線制御手段の一部、第1の歪み補償手段)
21 空中線(第2の指向空中線)
27 空中線(第2の無指向空中線)
28 データ無線部(第2の空中線制御手段の一部、第2の歪み補償手段)
421 ,422 ,…,42M-1 ,42M PS(パイロットシンボル)抽出部
431 ,432 ,…,43M-1 ,43M チャネル推定部
44 選択合成部
45 フェージング補償部
46 ロータ歪み推定部
47 ロータモジュレーション補償部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の回転翼機に搭載され、送信用データを第1の指向空中線を介して送信する情報送信装置と、
第2の回転翼機に搭載され、前記情報送信装置から送信された前記送信用データを第2の指向空中線を介して受信し、かつ、他の受信局へ中継伝送する中継用送信装置とを備え、
前記情報送信装置は、
前記第1の回転翼機の飛行状態を表す第1の状態情報を生成して第1の伝送路を経て前記第2の回転翼機へ送信すると共に、前記第2の回転翼機から該第2の回転翼機の飛行状態を表す第2の状態情報を取得し、前記第1の状態情報及び第2の状態情報に基づいて、適応的に、前記第1の指向空中線の指向特性を制御する第1の空中線制御手段を有し、
前記中継用送信装置は、
前記第2の状態情報を生成して第2の伝送路を経て前記第1の回転翼機へ送信すると共に、前記第1の回転翼機から前記第1の状態情報を取得し、前記第2の状態情報及び第1の状態情報に基づいて、適応的に、前記第2の指向空中線の指向特性を制御する第2の空中線制御手段を有する情報伝送システムであって、
前記第1の空中線制御手段は、
前記第1の状態情報に歪み検出用の第1のパイロットシンボルを挿入する構成とされ、
前記第2の空中線制御手段は、
前記第2の状態情報に歪み検出用の第2のパイロットシンボルを挿入する構成とされ、かつ、
前記第1の空中線制御手段は、
前記第2の状態情報に挿入されている前記第2のパイロットシンボルを解析し、この解析結果に基づいて前記第2の伝送路の歪の補償を行う第1の歪み補償手段が設けられ、
前記第2の空中線制御手段は、
前記第1の状態情報に挿入されている前記第1のパイロットシンボルを解析し、この解析結果に基づいて前記第1の伝送路の歪の補償を行う第2の歪み補償手段が設けられていることを特徴とする情報伝送システム。
【請求項2】
前記第1の伝送路は、
所定の周波数帯域の第1の搬送波を用いて構成され、
前記第2の伝送路は、
所定の周波数帯域の第2の搬送波を用いて構成され、
前記情報送信装置は、
前記第1の状態情報を、前記第1の伝送路を経て前記中継用送信装置へ送信すると共に、前記中継用送信装置から前記第2の伝送路を経て前記第2の状態情報を受信するための第1の無指向空中線を有し、
前記中継用送信装置は、
前記情報送信装置から前記第1の伝送路を経て前記第1の状態情報を受信すると共に、前記第2の状態情報を前記第2の伝送路を経て前記情報送信装置へ送信するための第2の無指向空中線を有することを特徴とする請求項1記載の情報伝送システム。
【請求項3】
前記第1の空中線制御手段は、
前記第1の状態情報のフレーム毎に所定数の前記第1のパイロットシンボルを挿入する構成とされ、
前記第2の歪み補償手段は、
前記第1の状態情報のフレーム毎に挿入されている前記各第1のパイロットシンボルに基づいて前記第1の伝送路のフェージング補償を行った後、前記第1の回転翼機及び前記第2の回転翼機によるロータモジュレーションの歪み推定を行うことにより、ロータモジュレーション歪みを補償する構成とされ、
前記第2の空中線制御手段は、
前記第2の状態情報のフレーム毎に所定数の前記第2のパイロットシンボルを挿入する構成とされ、
前記第1の歪み補償手段は、
前記第2の状態情報のフレーム毎に挿入されている前記各第2のパイロットシンボルに基づいて前記第2の伝送路のフェージング補償を行った後、前記第2の回転翼機及び前記第1の回転翼機によるロータモジュレーションの歪み推定を行うことにより、ロータモジュレーション歪みを補償する構成とされていることを特徴とする請求項1又は2記載の情報伝送システム。
【請求項4】
前記第1の空中線制御手段は、
前記第1の状態情報のフレーム毎に、前記第1の回転翼機のロータ回転周期及び前記第1の状態情報の伝送速度に基づいて設定された数の前記第1のパイロットシンボルを挿入する構成とされ、
前記第2の空中線制御手段は、
前記第2の状態情報のフレーム毎に、前記第2の回転翼機のロータ回転周期及び前記第2の状態情報の伝送速度に基づいて設定された数の前記第2のパイロットシンボルを挿入する構成とされていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の情報伝送システム。
【請求項5】
前記第2の歪み補償手段は、
前記第1の状態情報のフレーム毎に挿入されている前記各第1のパイロットシンボルを抽出する複数の第1のパイロットシンボル抽出部と、
前記各第1のパイロットシンボル抽出部で抽出された前記各第1のパイロットシンボルに基づいて、前記第1の伝送路の前記各フレームに対応するチャネルの伝達関数の推定値を表す第1のチャネル推定データを取得する複数の第1のチャネル推定部と、
前記各第1のチャネル推定部で取得された前記各第1のチャネル推定データのうち、ほぼ同じ値の第1のチャネル推定データの加算平均値を求めて第1の無歪チャネル推定データとして出力する一方、異なる値の第1のチャネル推定データを抽出して第1の有歪チャネル推定データとして出力する第1の選択合成部と、
前記第1の状態情報に対して、前記第1の無歪チャネル推定データを用いてフェージング補償を行って前記第1の回転翼機のロータ回転周期毎の受信データを取得する第1のフェージング補償部と、
前記第1の有歪チャネル推定データに基づいて、前記第1の回転翼機及び前記第2の回転翼機によるロータモジュレーションの歪み成分を推定する第1のロータ歪み推定部と、
前記第1のフェージング補償部で取得された前記第1の回転翼機のロータ回転周期毎の受信データから、前記第1のロータ歪み推定部で推定された前記歪み成分を除去することにより、ロータモジュレーション補償が行われた第1の補償済み受信データを取得する第1のロータモジュレーション補償部とを備え、
前記第1の歪み補償手段は、
前記第2の状態情報のフレーム毎に挿入されている前記各第2のパイロットシンボルを抽出する複数の第2のパイロットシンボル抽出部と、
前記各第2のパイロットシンボル抽出部で抽出された前記各第2のパイロットシンボルに基づいて、前記第2の伝送路の前記各フレームに対応するチャネルの(伝達関数の推定値)を表す第2のチャネル推定データを取得する複数の第2のチャネル推定部と、
前記各第2のチャネル推定部で取得された前記各第2のチャネル推定データのうち、ほぼ同じ値の第2のチャネル推定データの加算平均値を求めて第2の無歪チャネル推定データとして出力する一方、異なる値の第2のチャネル推定データを抽出して第2の有歪チャネル推定データとして出力する第2の選択合成部と、
前記第2の状態情報に対して、前記第2の無歪チャネル推定データを用いてフェージング補償を行って前記第2の回転翼機のロータ回転周期毎の受信データを取得する第2のフェージング補償部と、
前記第2の有歪チャネル推定データに基づいて、前記第2の回転翼機及び前記第1の回転翼機によるロータモジュレーションの歪み成分を推定する第2のロータ歪み推定部と、
前記第2のフェージング補償部で取得された前記第2の回転翼機のロータ回転周期毎の受信データから、前記第2のロータ歪み推定部で推定された前記歪み成分を除去することにより、ロータモジュレーション補償が行われた第2の補償済み受信データを取得する第2のロータモジュレーション補償部とを備えてなることを特徴とする請求項4記載の情報伝送システム。
【請求項6】
第1の回転翼機に搭載され、送信用データを第1の指向空中線を介して送信する情報送信装置と、
第2の回転翼機に搭載され、前記情報送信装置から送信された前記送信用データを第2の指向空中線を介して受信し、かつ、他の受信局へ中継伝送する中継用送信装置とを備え、
前記情報送信装置は、
前記第1の回転翼機の飛行状態を表す第1の状態情報を生成して第1の伝送路を経て前記第2の回転翼機へ送信すると共に、前記第2の回転翼機から該第2の回転翼機の飛行状態を表す第2の状態情報を取得し、前記第1の状態情報及び第2の状態情報に基づいて、適応的に、前記第1の指向空中線の指向特性を制御する第1の空中線制御手段を有し、
前記中継用送信装置は、
前記第2の状態情報を生成して第2の伝送路を経て前記第1の回転翼機へ送信すると共に、前記第1の回転翼機から前記第1の状態情報を取得し、前記第2の状態情報及び第1の状態情報に基づいて、適応的に、前記第2の指向空中線の指向特性を制御する第2の空中線制御手段を有する情報伝送システムに用いられる歪み補償方法であって、
前記第1の空中線制御手段が、前記第1の状態情報に歪み検出用の第1のパイロットシンボルを挿入し、
前記第2の空中線制御手段が、前記第2の状態情報に歪み検出用の第2のパイロットシンボルを挿入し、かつ、
前記第1の空中線制御手段が、前記第2の状態情報に挿入されている前記第2のパイロットシンボルを解析し、この解析結果に基づいて前記第2の伝送路の歪の補償を行う第1の歪み補償処理を行い、
前記第2の空中線制御手段が、前記第1の状態情報に挿入されている前記第1のパイロットシンボルを解析し、この解析結果に基づいて前記第1の伝送路の歪の補償を行う第2の歪み補償処理を行うことを特徴とする歪み補償方法。
【請求項7】
前記第1の伝送路は、
所定の周波数帯域の第1の搬送波を用いて構成され、
前記第2の伝送路は、
所定の周波数帯域の第2の搬送波を用いて構成され、
前記情報送信装置は、
前記第1の状態情報を、前記第1の伝送路を経て前記中継用送信装置へ送信すると共に、前記中継用送信装置から前記第2の伝送路を経て前記第2の状態情報を受信するための第1の無指向空中線を有し、
前記中継用送信装置は、
前記情報送信装置から前記第1の伝送路を経て前記第1の状態情報を受信すると共に、前記第2の状態情報を前記第2の伝送路を経て前記情報送信装置へ送信するための第2の無指向空中線を有することを特徴とする請求項6記載の歪み補償方法。
【請求項8】
前記第1の空中線制御手段が、前記第1の状態情報のフレーム毎に所定数の前記第1のパイロットシンボルを挿入し、
前記第2の歪み補償手段が、前記第1の状態情報のフレーム毎に挿入されている前記各第1のパイロットシンボルに基づいて前記第1の伝送路のフェージング補償を行った後、前記第1の回転翼機及び前記第2の回転翼機によるロータモジュレーションの歪み推定を行うことにより、ロータモジュレーション歪みを補償し、
前記第2の空中線制御手段が、前記第2の状態情報のフレーム毎に所定数の前記第2のパイロットシンボルを挿入し、
前記第1の歪み補償手段が、前記第2の状態情報のフレーム毎に挿入されている前記各第2のパイロットシンボルに基づいて前記第2の伝送路のフェージング補償を行った後、前記第2の回転翼機及び前記第1の回転翼機によるロータモジュレーションの歪み推定を行うことにより、ロータモジュレーション歪みを補償することを特徴とする請求項6又は7記載の歪み補償方法。
【請求項9】
前記第1の空中線制御手段が、前記第1の状態情報のフレーム毎に、前記第1の回転翼機のロータ回転周期及び前記第1の状態情報の伝送速度に基づいて設定された数の前記第1のパイロットシンボルを挿入し、
前記第2の空中線制御手段が、前記第2の状態情報のフレーム毎に、前記第2の回転翼機のロータ回転周期及び前記第2の状態情報の伝送速度に基づいて設定された数の前記第2のパイロットシンボルを挿入することを特徴とする請求項6、7又は8記載の歪み補償方法。
【請求項10】
前記第2の歪み補償手段が、
前記第1の状態情報のフレーム毎に挿入されている前記各第1のパイロットシンボルを抽出する第1のパイロットシンボル抽出処理と、
前記各第1のパイロットシンボル抽出処理で抽出された前記各第1のパイロットシンボルに基づいて、前記第1の伝送路の前記各フレームに対応するチャネルの伝達関数の推定値を表す第1のチャネル推定データを取得する第1のチャネル推定処理と、
前記各第1のチャネル推定処理で取得された前記各第1のチャネル推定データのうち、ほぼ同じ値の第1のチャネル推定データの加算平均値を求めて第1の無歪チャネル推定データとして出力する一方、異なる値の第1のチャネル推定データを抽出して第1の有歪チャネル推定データとして出力する第1の選択合成処理と、
前記第1の状態情報に対して、前記第1の無歪チャネル推定データを用いてフェージング補償を行って前記第1の回転翼機のロータ回転周期毎の受信データを取得する第1のフェージング補償処理と、
前記第1の有歪チャネル推定データに基づいて、前記第1の回転翼機及び前記第2の回転翼機によるロータモジュレーションの歪み成分を推定する第1のロータ歪み推定処理と、
前記第1のフェージング補償処理で取得された前記第1の回転翼機のロータ回転周期毎の受信データから、前記第1のロータ歪み推定処理で推定された前記歪み成分を除去することにより、ロータモジュレーション補償が行われた第1の補償済み受信データを取得する第1のロータモジュレーション補償処理とを行い、
前記第1の歪み補償手段が、
前記第2の状態情報のフレーム毎に挿入されている前記各第2のパイロットシンボルを抽出する第2のパイロットシンボル抽出処理と、
前記各第2のパイロットシンボル抽出処理で抽出された前記各第2のパイロットシンボルに基づいて、前記第2の伝送路の前記各フレームに対応するチャネルの伝達関数の推定値を表す第2のチャネル推定データを取得する第2のチャネル推定処理と、
前記各第2のチャネル推定処理で取得された前記各第2のチャネル推定データのうち、ほぼ同じ値の第2のチャネル推定データの加算平均値を求めて第2の無歪チャネル推定データとして出力する一方、異なる値の第2のチャネル推定データを抽出して第2の有歪チャネル推定データとして出力する第2の選択合成処理と、
前記第2の状態情報に対して、前記第2の無歪チャネル推定データを用いてフェージング補償を行って前記第2の回転翼機のロータ回転周期毎の受信データを取得する第2のフェージング補償処理と、
前記第2の有歪チャネル推定データに基づいて、前記第2の回転翼機及び前記第1の回転翼機によるロータモジュレーションの歪み成分を推定する第2のロータ歪み推定処理と、
前記第2のフェージング補償処理で取得された前記第2の回転翼機のロータ回転周期毎の受信データから、前記第2のロータ歪み推定処理で推定された前記歪み成分を除去することにより、ロータモジュレーション補償が行われた第2の補償済み受信データを取得する第2のロータモジュレーション補償処理とを行うことを特徴とする請求項9記載の歪み補償方法。
【請求項11】
コンピュータを請求項1乃至5のいずれか一に記載の第1の歪み補償手段及び第2の歪み補償手段として機能させるためのコンピュータ読み取り可能な歪み補償制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−233120(P2010−233120A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−80646(P2009−80646)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】