説明

情報伝達時間特定システム及び情報伝達時間特定方法

【課題】従来の技術では、第1通信装置と第2通信装置とが回線により接続されている通信網において、第1通信装置から第2通信装置への情報の伝達時間と、第2通信装置から第1通信装置への情報の伝達時間とが異なると、片道の情報の伝達時間を特定することができない。
【解決手段】情報伝達時間特定システム100は、それぞれが時計機能を有する第1計時装置1と第2計時装置2とを有する。第1計時装置1は、伝達時間を特定するための情報を第1通信装置3に送信するとき、その情報を、その情報の送信時刻を特定する値を含む試験情報として第1通信装置3に送信する。第2計時装置2は、第1通信装置3から第2通信装置4へ転送された試験情報を第2通信装置4から受信し、試験情報の受信時刻を特定する値から、試験情報に含まれる送信時刻を特定する値を減じて、試験情報の伝達時間を特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報の伝達時間を特定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電話交換機等の第1通信装置と第2通信装置とが回線により接続されている通信網を実用化しようとする場合、情報の伝達時間を考慮して通信網の使用方法を設計することがある。そのとき、情報の伝達時間を正確に特定する必要がある。
【0003】
従来、第1通信装置と第2通信装置とが回線により接続された通信網における情報の伝達時間を特定する場合、第1通信装置に計時装置を接続し、第2通信装置を情報の折り返し装置に設定する。そして、計時装置から第1通信装置に所定の信号を送信し、その信号が第2通信装置で折り返して計時装置に戻ってくるまでにかかる時間を測定し、その時間の半分を片道の情報の伝達時間と特定している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
第1通信装置の機能と第2通信装置の機能とが同一である場合、第1通信装置から第2通信装置への情報の伝達時間と、第2通信装置から第1通信装置への情報の伝達時間とは同一である。そのため、上記の方法により、片道の情報の伝達時間を特定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭54−105908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、第1通信装置の機能と第2通信装置の機能とが異なる場合等、第1通信装置から第2通信装置への情報の伝達時間と、第2通信装置から第1通信装置への情報の伝達時間とが異なる場合がある。その場合、上記の方法では、片道の情報の伝達時間を特定することはできない。
【0007】
本発明は、第1通信装置と第2通信装置とが回線により接続されている通信網において、第1通信装置から第2通信装置への情報の伝達時間と、第2通信装置から第1通信装置への情報の伝達時間とが異なっても、片道の情報の伝達時間を特定することができる情報伝達時間特定システム及び情報伝達時間特定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決し上記目的を達成するために、本発明の情報伝達時間特定システムは、第1通信装置と第2通信装置とが回線により接続されている通信網における情報の伝達時間を特定する場合に用いられ、それぞれが時計機能を有する計時起点装置と計時終点装置とを有し、前記計時起点装置は、伝達時間を特定するための情報を前記第1通信装置に送信する装置であって、その情報を前記第1通信装置に送信するとき、その情報を、その情報の送信時刻を特定する値を含む試験情報として前記第1通信装置に送信し、前記計時終点装置は、前記第1通信装置から前記第2通信装置へ転送された前記試験情報を前記第2通信装置から受信し、前記試験情報の受信時刻を特定する値から、前記試験情報に含まれる前記送信時刻を特定する値を減じて、前記計時起点装置から前記計時終点装置への前記試験情報の伝達時間を特定する。
【0009】
本発明の情報伝達時間特定方法は、第1通信装置と第2通信装置とが回線により接続されている通信網における情報の伝達時間を特定する方法であって、伝達時間を特定するための情報を前記第1通信装置に送信するとき、その情報を、その情報の送信時刻を特定する値を含む試験情報として前記第1通信装置に送信するステップと、前記第1通信装置から前記第2通信装置へ転送された前記試験情報を前記第2通信装置から受信するステップと、前記試験情報の受信時刻を特定し、前記受信時刻を特定する値から、前記試験情報に含まれる前記送信時刻を特定する値を減じて、前記試験情報の伝達時間を特定するステップとを含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、第1通信装置と第2通信装置とが回線により接続されている通信網において、第1通信装置から第2通信装置への情報の伝達時間と、第2通信装置から第1通信装置への情報の伝達時間とが異なっても、片道の情報の伝達時間を特定することができる情報伝達時間特定システム及び情報伝達時間特定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施の形態の情報伝達時間特定システムの構成図である。
【図2】時刻を合わせる動作を説明するための図である。
【図3】第1水晶発振器及び第2水晶発振器それぞれの発振周波数を測定する動作を説明するための図である。
【図4】情報の伝達時間を説明するための図である。
【図5】変形例の情報伝達時間特定システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0013】
(実施の形態1)
先ず、実施の形態1の情報伝達時間特定システム100の構成を図1を用いて説明する。図1は、実施の形態1の情報伝達時間特定システム100の構成図である。情報伝達時間特定システム100は、第1通信装置と第2通信装置とが専用の回線により接続されている通信網における情報の伝達時間を特定する場合に用いられるシステムであって、第1計時装置1と、第2計時装置2とを有する。図1には、第1通信装置3及び第2通信装置4も示されている。第1通信装置3と第2通信装置4とは、専用の第1回線5及び第2回線6により接続されている。第1計時装置1は第1通信装置3に接続され、第2計時装置2は第2通信装置4に接続される。
【0014】
情報伝達時間特定システム100は、第1計時装置1から第1通信装置3と第2通信装置4とを順に経由して第2計時装置2へ送信される情報の伝達時間を特定するとともに、第2計時装置2から第2通信装置4と第1通信装置3とを順に経由して第1計時装置1へ送信される情報の伝達時間を特定する。以下に、第1通信装置3、第2通信装置4、第1計時装置1、及び、第2計時装置2それぞれの構成を順に説明する。
【0015】
第1通信装置3は、第1通信部31と、第2通信部32とを有する。第2通信装置4は、第3通信部41と、第4通信部42とを有する。第1通信装置3の第1通信部31と、第2通信装置4の第3通信部41とは、第1回線5により接続されており、第1通信装置3の第2通信部32と、第2通信装置4の第4通信部42とは、第2回線6により接続されている。第1通信装置3及び第2通信装置4の各通信部は、一方の接続相手から情報を受信し、その情報を他方の接続相手に送信する。
【0016】
第1計時装置1は、第1入力部11と、第1受付部12と、第1時計部13と、第1送信部14と、第1受信部15と、第1特定部16と、第1報知部17とを有する。
【0017】
第1入力部11は、ユーザが、情報の伝達時間を特定させるための指示を第1計時装置1に入力する際に用いる構成部である。第1受付部12は、ユーザが第1入力部11を用いて第1計時装置1に入力した、情報の伝達時間を特定させるための指示を受け付ける。第1時計部13は、時計機能を有する。第1時計部13は、内部を所定の温度に保つとともに所定の湿度に保つ第1筐体130aと、第1筐体130aに収められる第1水晶発振器130bと、第1水晶発振器130bの発振回数を計測する第1カウンタ130cとを有する。第1時計部13は、第1水晶発振器130bの発振に基づいて時計機能を実現する。
【0018】
第1送信部14は、第1通信装置3の第1通信部31に接続される。第1送信部14は、第1受付部12が情報の伝達時間を特定させるための指示を受け付けた場合、第1時計部13の時計機能に基づいて、伝達時間を特定させるための情報を、その情報の送信時刻を含む試験情報として第1通信装置3の第1通信部31に送信する。第1受信部15は、第1通信装置3の第2通信部32に接続される。第1受信部15は、試験情報を第1通信装置3の第2通信部32から受信する。第1受信部15が受信する試験情報は、第2計時装置2が第2通信装置4へ送信し、第2通信装置4と第1通信装置3とをその順に経由して第1計時装置1に到達した情報である。
【0019】
第1特定部16は、第1時計部13の時計機能に基づいて、第1受信部15が試験情報を受信した時刻を特定し、特定した受信時刻から、第1受信部15が受信した試験情報に含まれる送信時刻を減じて、第2計時装置2から第1計時装置1への試験情報の伝達時間を特定する。第1報知部17は、第1特定部16によって特定された伝達時間を表示する。
【0020】
第2計時装置2は、第1計時装置1と同じ機能を有する装置であって、第2入力部21と、第2受付部22と、第2時計部23と、第2送信部24と、第2受信部25と、第2特定部26と、第2報知部27とを有する。
【0021】
第2入力部21は、ユーザが、情報の伝達時間を特定させるための指示を第2計時装置2に入力する際に用いる構成部である。第2受付部22は、ユーザが第2入力部21を用いて第2計時装置2に入力した、情報の伝達時間を特定させるための指示を受け付ける。
【0022】
第2時計部23は、時計機能を有する。第2時計部23は、内部を上記所定の温度に保つとともに上記所定の湿度に保つ第2筐体230aと、第2筐体230aに収められる第2水晶発振器230bとを有する。実施の形態1では、第2水晶発振器230bの発振特性は、第1計時装置1の第1水晶発振器130bの発振特性と同じであると仮定する。第2時計部23は、更に、第2水晶発振器230bの発振回数を計測する第2カウンタ230cを有する。第2時計部23は、第2水晶発振器230bの発振に基づいて時計機能を実現する。第2水晶発振器230bと、第1計時装置1の第1水晶発振器130bとは、内部が同じ温度でかつ同じ湿度である筐体に収められるので、同じ発振機能を実現する。したがって、第2時計部23と、第1計時装置1の第1時計部13とは、同じ時計機能を実現する。
【0023】
第2送信部24は、第2通信装置4の第4通信部42が接続される。第2送信部24は、第2受付部22が情報の伝達時間を特定させるための指示を受け付けた場合、第2時計部23の時計機能に基づいて、伝達時間を特定させるための情報を、その情報の送信時刻を含む試験情報として第2通信装置4の第4通信部42に送信する。第2受信部25は、第2通信装置4の第3通信部41が接続される。第2受信部25は、試験情報を第2通信装置4の第3通信部41から受信する。第2受信部25が受信する試験情報は、第1計時装置1が第1通信装置3へ送信し、第1通信装置3と第2通信装置4とをその順に経由して第2計時装置2に到達した情報である。
【0024】
第2特定部26は、第2時計部23の時計機能に基づいて、第2受信部25が試験情報を受信した時刻を特定し、特定した受信時刻から、第2受信部25が受信した試験情報に含まれる送信時刻を減じて、第1計時装置1から第2計時装置2への試験情報の伝達時間を特定する。第2報知部27は、第2特定部26によって特定された伝達時間を表示する。
【0025】
次に、実施の形態1の情報伝達時間特定システム100の動作を説明する。
【0026】
情報伝達時間特定システム100に情報の伝達時間を特定させる前に、作業者は、図2に示すように、第1計時装置1の第1時計部13と、第2計時装置2の第2時計部23とを、時刻合わせ信号を出力する時刻合わせ装置7に接続する。その際、作業者は、時刻合わせ装置7が出力する時刻合わせ信号が第1時計部13と第2時計部23とに同時に到達するように、第1時計部13及び第2時計部23を時刻合わせ装置7に接続する。例えば、作業者は、同じ接続部材70を用いて、第1時計部13及び第2時計部23それぞれと時刻合わせ装置7とを接続し、時刻合わせ装置7が出力する時刻合わせ信号を第1時計部13と第2時計部23とに同時に到達させるようにする。
【0027】
そして、作業者は、時刻合わせ信号を出力させるための指示を、時刻合わせ装置7に設けられている第3入力部71により時刻合わせ装置7に入力する。時刻合わせ装置7は、その指示を受け付け、時刻合わせ信号を第1時計部13と第2時計部23とに同時に出力する。時刻合わせ装置7からの時刻合わせ信号は、第1時計部13と第2時計部23とに同時に到達する。第1時計部13の第1カウンタ130cと、第2時計部23の第2カウンタ230cとは、時刻合わせ装置7からの時刻合わせ信号に基づいて同時にリセットされ、その時点から水晶発振器の発振回数の計測を再開する。それとともに、第1時計部13が示す時刻と、第2時計部23が示す時刻とは、一致する。
【0028】
その後、作業者は、第1計時装置1及び第2計時装置2を時刻合わせ装置7から取り外す。次に、作業者は、図1に示すように、第1回線5及び第2回線6により接続されている第1通信装置3と第2通信装置4とのうちの、第1通信装置3に第1計時装置1を接続するとともに、第2通信装置4に第2計時装置2を接続する。具体的には、作業者は、第1計時装置1の第1送信部14を、第1通信装置3の第1通信部31に接続するとともに、第1計時装置1の第1受信部15を、第1通信装置3の第2通信部32に接続する。そして、作業者は、第2計時装置2の第2送信部24を、第2通信装置4の第4通信部42に接続するとともに、第2計時装置2の第2受信部25を、第2通信装置4の第3通信部41に接続する。
【0029】
このようにして、第1通信装置3に第1計時装置1を接続し、第2通信装置4に第2計時装置2を接続した後に、情報伝達時間特定システム100に情報の伝達時間を特定させる。
【0030】
先ず、第1計時装置1から第1通信装置3と第2通信装置4とを順に経由して第2計時装置2に伝達する情報の伝達時間を特定する情報伝達時間特定システム100の動作を説明する。
【0031】
作業者は、伝達時間を特定させるための指示を、第1入力部11を用いて第1計時装置1に入力する。第1受付部12は、その指示を受け付け、第1送信部14は、第1時計部13の時計機能に基づいて、伝達時間を特定させるための情報を、その情報の送信時刻を含む試験情報として第1通信装置3に送信する。第1通信装置3では、第1通信部31が、第1計時装置1からの試験情報を受信して第2通信装置4に送信する。第2通信装置4では、第3通信部41が、第1通信装置3からの試験情報を受信して第2計時装置2に送信する。
【0032】
第2計時装置2では、第2受信部25が第2通信装置4からの試験情報を受信する。第2特定部26は、第2時計部23の時計機能に基づいて、第2受信部25が試験情報を受信した時刻を特定し、特定した受信時刻から試験情報に含まれる送信時刻を減じて、第1計時装置1から第2計時装置2への試験情報の伝達時間を特定する。第2報知部27は、第2特定部26によって特定された伝達時間を表示する。これにより、作業者は、第1計時装置1から第1通信装置3と第2通信装置4とを順に経由して第2計時装置2に伝達する情報の伝達時間を知ることができる。
【0033】
次に、第2計時装置2から第2通信装置4と第1通信装置3とを順に経由して第1計時装置1に伝達する情報の伝達時間を特定する情報伝達時間特定システム100の動作を説明する。
【0034】
作業者は、伝達時間を特定させるための指示を、第2入力部21を用いて第2計時装置2に入力する。第2受付部22は、その指示を受け付け、第2送信部24は、第2時計部23の時計機能に基づいて、伝達時間を特定させるための情報を、その情報の送信時刻を含む試験情報として第2通信装置4に送信する。第2通信装置4では、第4通信部42が、第2計時装置2からの試験情報を受信して第1通信装置3に送信する。第1通信装置3では、第2通信部32が、第2通信装置4からの試験情報を受信して第1計時装置1に送信する。
【0035】
第1計時装置1では、第1受信部15が第1通信装置3からの試験情報を受信する。第1特定部16は、第1時計部13の時計機能に基づいて、第1受信部15が試験情報を受信した時刻を特定し、特定した受信時刻から試験情報に含まれる送信時刻を減じて、第2計時装置2から第1計時装置1への試験情報の伝達時間を特定する。第1報知部17は、第1特定部16によって特定された伝達時間を表示する。これにより、作業者は、第2計時装置2から第2通信装置4と第1通信装置3とを順に経由して第1計時装置1に伝達する情報の伝達時間を知ることができる。
【0036】
上述したように、実施の形態1の情報伝達時間特定システム100では、第1計時装置1は、試験情報を第1通信装置3に送信し、第2計時装置2は、第1通信装置3と第2通信装置4とをその順に経由した試験情報を受信する。そして、第2計時装置2は、試験情報の受信時刻から試験情報に含まれる送信時刻を減じて、第1計時装置1から第2計時装置2への試験情報の伝達時間を特定し、特定した伝達時間を表示する。
【0037】
同様に、第2計時装置2は、試験情報を第2通信装置4に送信し、第1計時装置1は、第2通信装置4と第1通信装置3とをその順に経由した試験情報を受信する。そして、第1計時装置1は、試験情報の受信時刻から試験情報に含まれる送信時刻を減じて、第2計時装置2から第1計時装置1への試験情報の伝達時間を特定し、特定した伝達時間を表示する。
【0038】
これにより、第1計時装置1から第1通信装置3と第2通信装置4とを順に経由して第2計時装置2に伝達する情報の伝達時間を特定することができる。また、第2計時装置2から第2通信装置4と第1通信装置3とを順に経由して第1計時装置1に伝達する情報の伝達時間を特定することができる。つまり、第1通信装置3から第2通信装置4への情報の伝達時間と、第2通信装置4から第1通信装置3への情報の伝達時間とが異なっても、実施の形態1の情報伝達時間特定システム100を用いれば、片道の情報の伝達時間を特定することができる。
【0039】
(実施の形態2)
上述した実施の形態1では、第1計時装置1の第1時計部13の第1水晶発振器130bの発振特性と、第2計時装置2の第2時計部23の第2水晶発振器230bの発振特性とが同じであると仮定した。しかしながら、第1水晶発振器130bの発振特性と、第2水晶発振器230bの発振特性とが異なる場合もある。換言すると、第1水晶発振器130bと第2水晶発振器230bとに個体差が存在する場合もある。
【0040】
実施の形態2では、第1水晶発振器130bと第2水晶発振器230bとに個体差が存在する場合の情報の伝達時間を特定する形態について説明する。なお、実施の形態2の情報伝達時間特定システム100の構成は、実施の形態1の情報伝達時間特定システム100の構成と同じであり、動作が実施の形態2と実施の形態1とで異なる。実施の形態2では、実施の形態1と異なる点を説明する。
【0041】
先ず、作業者は、内部の温度及び湿度それぞれが、第1計時装置1の第1時計部13の第1筐体130aの内部の温度及び湿度それぞれと同じである第3筐体を用意するとともに、発振周波数計時装置を用意する。次に、作業者は、第1計時装置1の第1時計部13の第1水晶発振器130bを第1計時装置1から取り外すとともに、第2計時装置2の第2時計部23の第2水晶発振器230bを第2計時装置2から取り外す。
【0042】
次に、作業者は、図3に示すように、第1水晶発振器130bと第2水晶発振器230bとを、第3筐体320に収め、第3筐体320の外部の発振周波数計時装置8に電気配線80により別々に接続する。そして、作業者は、発振周波数計時装置8により、第1水晶発振器130bの発振周波数と、第2水晶発振器230bの発振周波数とを測定する。
【0043】
次に、作業者は、発振周波数計時装置8によって測定した、第1水晶発振器130bの発振周波数と、第2水晶発振器230bの発振周波数とを、第1入力部11を用いて第1計時装置1に入力する。第1受付部12は、第1水晶発振器130bの発振周波数と、第2水晶発振器230bの発振周波数とを受け付け、第1特定部16は、第1受付部12によって受け付けられた情報を保持する。
【0044】
同様に、作業者は、発振周波数計時装置8によって測定した、第1水晶発振器130bの発振周波数と、第2水晶発振器230bの発振周波数とを、第2入力部21を用いて第2計時装置2に入力する。第2受付部22は、第1水晶発振器130bの発振周波数と、第2水晶発振器230bの発振周波数とを受け付け、第2特定部26は、第2受付部22によって受け付けられた情報を保持する。
【0045】
次に、作業者は、発振周波数計時装置8から、第1水晶発振器130bと第2水晶発振器230bとを取り出し、第1水晶発振器130bを第1計時装置1の第1時計部13の第1筐体130aに収めるとともに、第2水晶発振器230bを第2計時装置2の第2時計部23の第2筐体230aに収める。そして、作業者は、実施の形態1において図2を用いて説明したようにして、第1計時装置1の第1時計部13と、第2計時装置2の第2時計部23とを、時刻合わせ装置7に接続し、時刻合わせ信号を出力させるための指示を時刻合わせ装置7に入力する。
【0046】
時刻合わせ装置7は、その指示を受け付け、時刻合わせ信号を第1時計部13と第2時計部23とに同時に出力する。時刻合わせ装置7からの時刻合わせ信号は、第1時計部13及び第2時計部23に同時に到達するので、第1時計部13の第1カウンタ130cと、第2時計部23の第2カウンタ230cは、時刻合わせ装置7からの時刻合わせ信号に基づいて同時にリセットされ、その時点から水晶発振器の発振回数の計測を再開する。
【0047】
次に、第1計時装置1から第1通信装置3と第2通信装置4とを順に経由して第2計時装置2に伝達する試験情報の伝達時間を特定する際の、実施の形態2の情報伝達時間特定システム100の動作を説明する。
【0048】
実施の形態1と同様に、第1計時装置1の第1送信部14は、試験情報を第1通信装置3に出力する。ただし、実施の形態2では、第1送信部14は、試験情報を送信する時の第1時計部13の第1カウンタ130cが示す値を含む試験情報を送信する。第2計時装置2では、第2受信部25が、第1通信装置3と第2通信装置4とを順に経由した、第1計時装置1からの試験情報を受信する。
【0049】
第2計時装置2の第2特定部26は、下記の式(1)により、第2計時装置2の第2水晶発振器230bに対する第1計時装置1の第1水晶発振器130bの個体差αを算出する。
【数1】

【0050】
式(1)において、「Fs」は、第1水晶発振器130bの発振周波数であり、「Fm」は、第2水晶発振器230bの発振周波数である。
【0051】
次に、第2特定部26は、下記の式(2)により、補正値βを算出する。
【数2】

【0052】
式(2)において、「Ts」は、第1計時装置1が第1通信装置3に送信した試験情報の送信時の、第1計時装置1の第1時計部13の第1カウンタ130cが示す値である。「Tc」は、第1時計部13の第1カウンタ130cと、第2計時装置2の第2時計部23の第2カウンタ230cとがリセットされた時の各カウンタの値である。例えば、「Tc」は、第1カウンタ130c及び第2カウンタ230cが示す値「0(ゼロ)」である。
【0053】
そして、第2特定部26は、下記の式(3)により、第1計時装置1から第2計時装置2への試験情報の伝達時間に対応するカウンタの値を算出する。
【数3】

【0054】
式(3)において、「t」は、第1水晶発振器130bと第2水晶発振器230bとの個体差を考慮した試験情報の伝達時間であり、「Tr」は、第2計時装置2の第2受信部25が試験情報を受信した時の第2時計部23の第2カウンタ230cが示す値である。
【0055】
上述した、第1カウンタ130cと第2カウンタ230cとがリセットされた時の各カウンタの値Tcと、試験情報の送信時の第1時計部13の第1カウンタ130cが示す値Tsと、試験情報が受信された時の第2時計部23の第2カウンタ230cが示す値Trと、試験情報の伝達時間tとの関係は、図4により示される。
【0056】
ところで、上記の式(3)により得られた値「t」は、伝達時間をカウンタの値で示した数値である。そこで、第2特定部26は、式(3)により得た値「t」を、第2水晶発振器230bの発振周波数で除して、伝達時間を特定する。
【0057】
このように、実施の形態2の情報伝達時間特定システム100は、式(1)から式(3)を用いて、第1計時装置1から第2計時装置2への試験情報の伝達時間を特定する。すなわち、実施の形態2の情報伝達時間特定システム100を用いることにより、第1計時装置1の第1時計部13の第1水晶発振器130bの発振特性と、第2計時装置2の第2時計部23の第2水晶発振器230bの発振特性とに個体差が存在しても、伝達時間を正確に特定することができる。
【0058】
ここまでは、第1計時装置1から第1通信装置3と第2通信装置4とを順に経由して第2計時装置2に伝達する試験情報の伝達時間を特定する際の、実施の形態2の情報伝達時間特定システム100の動作を説明した。ところで、第1計時装置1と第2計時装置2とは同じ機能を有する。そのため、実施の形態2の情報伝達時間特定システム100を用いれば、第1水晶発振器130bの発振特性と第2水晶発振器230bの発振特性とに個体差が存在しても、第2計時装置2から第1計時装置1への試験情報の伝達時間も正確に特定することができる。
【0059】
(変形例)
なお、実施の形態1では、試験情報は、試験情報の送信時刻そのものを含む。しかしながら、試験情報は、実施の形態2と同様に、試験情報の送信時における時計部のカウンタが示す値を、送信時刻を特定する値として含んでもよい。その場合、第2計時装置2の第2特定部26は、試験情報の受信時における第2時計部23の第2カウンタ230cの値から、試験情報に含まれる値を差し引き、得られた値を第2水晶発振器230bの発振周波数で除して、第1計時装置1から第2計時装置2への試験情報の伝達時間を特定する。同様に、第1計時装置1の第1特定部16は、試験情報の受信時における第1時計部13の第1カウンタ130cの値から、試験情報に含まれる値を差し引き、得られた値を第1水晶発振器130bの発振周波数で除して、第2計時装置2から第1計時装置1への試験情報の伝達時間を特定する。
【0060】
また、上述した実施の形態1及び実施の形態2では、第1時計部13は、第1水晶発振器130bを有し、その発振に基づいて時計機能を実現し、第2時計部23は、第2水晶発振器230bを有し、その発振に基づいて時計機能を実現する。しかしながら、時計機能は、水晶発振器を用いずに実現されてもよい。例えば、時計機能は、電波による時刻データを受信する時計部によって実現されてもよい。
【0061】
具体的には、図5に示すように、第1計時装置1は、第1アンテナ50と第3時計部51とを有する第1計時装置1Aに置き換えられ、第2計時装置2は、第2アンテナ60と第4時計部61とを有する第2計時装置2Aに置き換えられてもよい。第1アンテナ50は、時刻データを受信し、第3時計部51は、第1アンテナ50によって受信された時刻データに基づいて時計機能を実現する。同様に、第2アンテナ60は、時刻データを受信し、第4時計部61は、第2アンテナ60によって受信された時刻データに基づいて時計機能を実現する。
【0062】
第1アンテナ50及び第2アンテナ60それぞれは、グローバルポジショニングシステムの衛星が発する時刻データを受信してもよいし、電波時計用の、原子時計を有する送信局が電波により送信する時刻データを受信してもよい。
【0063】
図5に示す第1計時装置1Aでは、第1送信部14は、第3時計部51の時計機能に基づいて、送信時刻を特定する値を含む試験情報を送信し、第1特定部16は、第3時計部51の時計機能に基づいて、第1受信部15による試験情報の受信時刻を特定する。同様に、第2計時装置2Aでは、第2送信部24は、第4時計部61の時計機能に基づいて、送信時刻を特定する値を含む試験情報を送信し、第2特定部26は、第4時計部61の時計機能に基づいて、第2受信部25による試験情報の受信時刻を特定する。
【0064】
また、上述した実施の形態1及び実施の形態2では、第1計時装置1の第1報知部17は、第1特定部16によって特定された伝達時間を表示する。しかしながら、第1報知部17は、第1特定部16によって特定された伝達時間を音により第1計時装置1の外部に出力してもよい。同様に、第2計時装置2の第2報知部27は、第2特定部26によって特定された伝達時間を音により第2計時装置2の外部に出力してもよい。要するに、第1報知部17は、第1特定部16によって特定された伝達時間をいずれかの形態により第1計時装置1の外部に報知するものであり、第2報知部27は、第2特定部26によって特定された伝達時間をいずれかの形態により第2計時装置2の外部に報知するものであればよい。
【0065】
更に、第1計時装置1及び第2計時装置2は、伝達時間を特定する機能を有さない通信装置に置き換えられてもよい。その場合、情報伝達時間特定システムには、第1計時装置1及び第2計時装置2が有する、伝達時間を特定する機能と、伝達時間をシステムの外部に報知する機能とを有する情報伝達時間特定装置が設けられる。
【符号の説明】
【0066】
100 情報伝達時間特定システム、 1 第1計時装置、 2 第2計時装置、 3 第1通信装置、 4 第2通信装置、 5 第1回線、 6 第2回線、 11 第1入力部、 12 第1受付部、 13 第1時計部、 14 第1送信部、 15 第1受信部、 16 第1特定部、 17 第1報知部、 130a 第1筐体、 130b 第1水晶発振器、 130c 第1カウンタ、 21 第2入力部、22 第2受付部、 23 第2時計部、 24 第2送信部、 25 第2受信部、 26 第2特定部、 27 第2報知部、 230a 第2筐体、 230b 第2水晶発振器、 230c 第2カウンタ、 31 第1通信部、 32 第2通信部、 41 第3通信部、 42 第4通信部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1通信装置と第2通信装置とが回線により接続されている通信網における情報の伝達時間を特定する場合に用いられ、それぞれが時計機能を有する計時起点装置と計時終点装置とを備え、
前記計時起点装置は、伝達時間を特定するための情報を前記第1通信装置に送信する装置であって、その情報を前記第1通信装置に送信するとき、その情報を、その情報の送信時刻を特定する値を含む試験情報として前記第1通信装置に送信し、
前記計時終点装置は、前記第1通信装置から前記第2通信装置へ転送された前記試験情報を前記第2通信装置から受信し、前記試験情報の受信時刻を特定する値から、前記試験情報に含まれる前記送信時刻を特定する値を減じて、前記計時起点装置から前記計時終点装置への前記試験情報の伝達時間を特定する
情報伝達時間特定システム。
【請求項2】
前記計時起点装置は、第1発振器を有し、前記第1発振器の発振に基づいて時計機能を実現し、
前記計時終点装置は、第2発振器を有し、前記第2発振器の発振に基づいて時計機能を実現する
請求項1に記載の情報伝達時間特定システム。
【請求項3】
前記計時起点装置は、内部を所定の温度に保つ第1筺体を有し、前記第1発振器は、前記第1筺体に収められ、
前記計時終点装置は、内部を前記温度に保つ第2筺体を有し、前記第2発振器は、前記第2筺体に収められる
請求項2に記載の情報伝達時間特定システム。
【請求項4】
前記計時終点装置は、前記温度における、前記第1発振器の発振特性と前記第2発振器の発振特性との差異を示す情報を取得し、前記受信時刻を特定する値から前記送信時刻を特定する値を減じて得られた結果を前記差異に基づいて補正して、前記伝達時間を特定する
請求項3に記載の情報伝達時間特定システム。
【請求項5】
前記計時起点装置及び前記計時終点装置それぞれは、電波による時刻データを受信し、受信した時刻データに基づいて時計機能を実現する
請求項1に記載の情報伝達時間特定システム。
【請求項6】
第1通信装置と第2通信装置とが回線により接続されている通信網における情報の伝達時間を特定する方法であって、
伝達時間を特定するための情報を前記第1通信装置に送信するとき、その情報を、その情報の送信時刻を特定する値を含む試験情報として前記第1通信装置に送信するステップと、
前記第1通信装置から前記第2通信装置へ転送された前記試験情報を前記第2通信装置から受信するステップと、
前記試験情報の受信時刻を特定し、前記受信時刻を特定する値から、前記試験情報に含まれる前記送信時刻を特定する値を減じて、前記試験情報の伝達時間を特定するステップと
を含む情報伝達時間特定方法。
【請求項7】
更に、
内部を所定の温度に保つ第1筺体に第1発振器及び第2発振器を格納し、前記温度における、前記第1発振器の発振特性と前記第2発振器の発振特性との差異を検出するステップと、
前記第1発振器を、内部を前記温度に保つ第2筺体に格納して計時起点装置に配置し、前記第1発振器の発振に基づく時計機能を前記計時起点装置に有させるとともに、前記第2発振器を、内部を前記温度に保つ第3筺体に格納して計時終点装置に配置し、前記第2発振器の発振に基づく時計機能を前記計時終点装置に有させるステップとを含み、
前記伝達時間を特定するステップでは、前記受信時刻を特定する値から前記送信時刻を特定する値を減じて得られた結果を前記差異に基づいて補正して、前記伝達時間を特定し、
前記計時起点装置に、前記試験情報を前記第1通信装置に送信するステップを実行させ、
前記計時終点装置に、前記試験情報を受信するステップと、前記伝達時間を特定するステップとを実行させる
請求項6に記載の情報伝達時間特定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−145258(P2011−145258A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8281(P2010−8281)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(000237662)富士通テレコムネットワークス株式会社 (682)
【Fターム(参考)】