説明

情報入力装置の情報入力部用硬化性樹脂組成物

【課題】入力ペンでの入力性に優れる情報入力装置の情報入力部用硬化性樹脂組成物、それを用いた情報入力装置の情報入力部用コートフィルム、それを用いた情報入力装置を提供する。
【解決手段】乳化重合法により合成され、単量体として多官能架橋剤を5重量%以上使用して合成され、平均一次粒子径が80〜500nmであり、表面が疎水化処理された有機微粒子、及び多官能重合性モノマーを含有することを特徴とする、情報入力装置の情報入力部用硬化性樹脂組成物。これをフィルムに塗布・硬化してハードコートフィルムを作製し、情報入力装置の情報入力部に用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報入力装置の情報入力部用硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の情報入力手段としてタッチパネルが盛んに採用されている。また、入力ペンで入力した文字を読み取り可能なタイプも存在しており、多数の入力ボタンやキーボードを配置する必要がないため、機器の小型化や意匠性の向上が可能となっている。
【0003】
一方、入力ペンでタッチパネルに文字を入力する際、通常の筆記具で紙に文字を書く場合よりもペン先の滑りが悪いことが指摘されている。ペン先の滑りが悪いと、入力する際に指が疲れたり、違和感を感じるだけではなく、文字を正確に入力しにくいため、記入した文字が正しく認識されない等の問題があった。ペン先の滑りが悪い理由として、タッチパネルの表面には硬度を向上させるためにハードコート剤をコートしたフィルムが採用されており、樹脂製の入力ペンとブロッキングしやすいことが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
上記問題に対して、特許文献1、2には筆記感に優れるペン入力装置用表面材が開示されている。また、特許文献3には、入力ペンの傾きに影響されずに常に同じ力(感触)で入力させることができる入力ペンが開示されている。しかしながら、ペン先の滑りの悪さは十分に改善されていなかった。特許文献4には、入力座標値を補正する座標値補正装置が開示されているが、高価なマイクロプロセッサが必要となることや、補正できる範囲に限界がある等の問題があった。
【特許文献1】特開2003−296008号公報
【特許文献2】特開2005−149482号公報
【特許文献3】特開平7−146744号公報
【特許文献4】特開2000−122801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、入力ペンでの入力性に優れる情報入力装置の情報入力部用硬化性樹脂組成物、それを用いた情報入力装置の情報入力部用コートフィルム、それを用いた情報入力装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは前記課題を解決するため、コートフィルムの摩擦を低減する検討を行ったが、顕著な改善はみられなかった。本発明者らはさらに鋭意検討を重ねることによって、本発明を完成させるに至った。即ち、本発明は乳化重合法により合成され、表面が疎水化処理された有機微粒子、及び多官能重合性モノマーを含有することを特徴とする、情報入力装置の情報入力部用硬化性樹脂組成物である。
【0007】
本発明によって入力ペンでの書き味が向上した理由は必ずしも明らかではないが、コートフィルムの摩擦係数を測定した結果、本発明では動摩擦係数と静止摩擦係数にほとんど差がないことが判明した。これは、筆記具で紙に文字を書く場合よりも抵抗感はあるものの、ペン先の動き出しから移動中まで一定の荷重でスムーズに入力できる効果をもたらしていると推察される。一方、従来技術では動摩擦係数と静止摩擦係数の差が大きいため、ペン先の動き出しと移動中で荷重が変化してしまい、スムーズな入力が妨げられていたと推察される。特に複雑な文字を入力する際にはペン先が移動と停止を繰り返すため、前記効果が顕著になる。
【発明の効果】
【0008】
本発明を適用した情報入力装置は、入力ペンによって文字をスムーズに入力することができるため、指が疲れにくく、違和感を感じにくい。また、文字を正確に入力できるため、高価なマイクロプロセッサを用いて電子的な補正を行わなくとも、入力された情報を文字、記号、図形等として正しく認識することができる。また、入力ペンによる繰返しの荷重によっても、情報入力装置表面が傷付かない硬度を有する。そこで、本発明を適用した情報入力装置は、電子手帳、携帯音楽プレイヤー、携帯ビデオプレイヤー、携帯ゲーム機、携帯情報端末等の各種電子機器に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の情報入力装置の情報入力部用硬化性樹脂組成物は、バインダー成分として多官能重合性モノマーを含有する。多官能重合性モノマーは、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などの反応基を分子中に少なくとも2個以上有するものである。中でも(メタ)アクリロイル基を有するものはラジカル反応性が非常に高く、速硬性と高硬度の点から優位性がある。具体的には、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは、単独、または混合して使用しても良い。また、多官能重合性モノマーであればウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、アクリルアクリレート、ポリエステルアクリレートなどを使用しても良い。ここで(メタ)はメチル基の有無を示す。
【0010】
本発明に係る有機微粒子としては、乳化重合法により合成されたスチレン系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系共重合樹脂、(メタ)アクリル系樹脂などの有機微粒子が挙げられる。乳化重合法以外の懸濁重合法では平均一次粒子径が80〜500nmの有機微粒子を合成することが難しく、また分散重合法では架橋剤の添加量を増やすことができないために多官能重合性モノマー内に溶解してしまい、プラスチックフィルム上に硬化させた場合に表面に凹凸を形成することができないため、乳化重合法が好ましい。
【0011】
有機微粒子の平均一次粒子径は80〜500nmであることが好ましい。80nm以上であることにより、少量の添加でも入力性を向上できるため、ハードコート性能を維持することができる。500nm以下であることにより、ヘイズが上昇しにくいため、視認性を維持することができる。有機微粒子の形状は、球状、数珠状が好ましく用いられるが、特にこれらに限定されない。尚、平均一次粒子径とは凝集を起こしていない単一の粒子の径であり、球状のものについてはその直径を、球状以外のものについては長軸径、短軸径の算術平均値を示し、電子顕微鏡により測定される値である。
【0012】
有機微粒子の表面は、重合開始剤やイオン性界面活性剤の吸着により親水性になっているため、疎水化処理を施さないと多官能重合性モノマー中に混合させることができない。有機微粒子表面の疎水化処理としては、半透析膜または適切な細孔をもつ膜を使用し水溶解性成分を膜外の水中へ溶出させる方法、イオン交換樹脂層を通して親水イオン性物質を除去させる方法、電気泳動の原理を応用した電気的な方法により脱着する方法、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム等の水可溶性塩類により塩析して非イオン性吸着層を脱着し、その後適切な細孔を有する膜等で親水性物質を粒子分散体から分離させる方法などが挙げられる。
【0013】
さらに、有機微粒子の疎水化処理だけではイオン性不純物を十分に除去することが難しいため、乳化重合時に媒体として使用した水を除去する方が好ましい。水を除去する方法としては、疎水化処理後の水容液中に非水系有機溶媒を添加していき、上部または下部に発生する透明な水の相を除去できる相分離法が好ましい。
【0014】
相分離に用いられる非水系有機溶剤としては、トルエン、キシレン、ベンゼン、ヘキサン、低分子流動パラフィン、ソルベントナフサ、ミネラルスピリット、ケロシン等の炭化水素、酢酸ブチル、酢酸エチル等のエステル類、メチルエチルケトン、イソブチルケトンなどのケトン類が挙げられる。
【0015】
有機微粒子を合成する際は、単量体に対して多官能架橋剤を5重量%以上配合することが望ましい。5重量%以上とすることにより、微粒子が多官能重合性モノマー中に溶解しにくくなる。また、50重量%を超えて添加しても滑り性は頭打ちとなる一方、コストはさらに増加するため、一般用途では5〜50重量%が望ましい。多官能架橋剤としては、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールメタクリレート、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。
【0016】
多官能重合性モノマー100重量部に対し、有機微粒子の添加量は、1〜120重量部が好ましく、5〜50重量部がより好ましい。1重量部以上添加することにより、入力性を顕著に向上させることができる。また、120重量部以下とすることにより、ハードコート性能を維持することができる。
【0017】
前記多官能重合性モノマーと前記有機微粒子の屈折率差は0.02以下であることが好ましい。0.02以下であることによって、情報入力部の視認性の低下を防ぐことができる。有機微粒子の屈折率は1.47から1.59程度であり、有機微粒子を合成する際にトリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のフッ化(メタ)アクリレートを用いることで有機微粒子の屈折率を下げることができ、スチレンやジニルベンゼン等の芳香環を有するモノマーを用いることで有機微粒子の屈折率を上げることができる。
【0018】
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて重合開始剤を添加することができる。ラジカル型重合開始剤としては、ベンゾフェノン及び他のアセトフェノン、ベンジル、ベンズアルデヒド及びo−クロロベンズアルデヒド、キサントン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、9,10−フェナントレンキノン、9,10−アントラキノン、メチルベンゾインエーテル、エチルベンゾインエーテル、イソプロピルベンゾインエーテル、α,α−ジエトキシアセトフェノン、α,α−ジメトキシアセトフェノン、1−フェニル−1,2−プロパンジオール−2−o−ベンゾイルオキシム及びα,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン等が挙げられる。市販品としては、イルガキュア−184、イルガキュア−651(チバ・ジャパン株式会社製、商品名)、ダロキュア−1173(メルク社製、商品名)などの光開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチル−パーオキシベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリル、ジアセチルパーオキサイド、ジプロピルパーオキサイド、ジブチルパーオキサイド、ジカプリルパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、p,p’−ジクロルベンゾイルパーオキサイド、p,p’−ジメトキシベンゾイルパーオキサイド、p,p’−ジメチルベンゾイルパーオキサイドなどの過酸化物が挙げられる。添加量は重合性多官能モノマー100重量部に対して1〜10重量部である。
【0019】
その他、有機溶剤、各種添加剤、例えば、帯電防止剤、屈折率調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、光増感剤、レベリング剤、消泡剤、無機充填剤、カップリング剤、防腐剤、可塑剤、流動調整剤、増粘剤、pH調整剤、分散剤等などを配合材料としてもよい。
【0020】
本発明の硬化性樹脂組成物が塗布される基材の材質としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、アクリル樹脂等、いずれも公知のものを用いることができる。形状としては、フィルムでも板でもよい。基材の厚みに制限はないが、ペンの書き味及び感度の点で基材厚は50〜250μmが好ましく、さらに好ましくは100〜188μmである。
【0021】
本発明の硬化性樹脂組成物の基材への塗布方法については特に制限はなく、公知の方法、例えばグラビアコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法などを用いることができる。入力性とハードコート性能のバランス取りのため、乾燥後塗膜の厚みが1〜10μmとなるように塗布することが好ましい。
【0022】
本発明の硬化性樹脂組成物は、紫外線や電子線などの活性エネルギー線を照射することによって硬化させることができる。電子線を照射する場合は、走査型あるいはカーテン型の電子線加速器を用い、加速電圧1000keV以下、好ましくは100〜300keVのエネルギーで照射する。紫外線を照射する場合は、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプ等を用い、100〜400nm、好ましくは200〜400nmの波長領域で、100〜800mJ/cmのエネルギーで照射する。また、必要に応じて窒素雰囲気下にて硬化させてもよい。
【0023】
基材の透明性を低下させないため、基材単体のヘイズ値に対して、基材に硬化性樹脂組成物を塗布、硬化した後のヘイズ値の増加量が2.0%以内であることが好ましい。さらに好ましくは、1.0%以内であることが好ましい。
【0024】
以下、本発明について実施例、比較例を挙げてより詳細に説明するが、具体例を示すものであって特にこれらに限定するものではない。
【実施例】
【0025】
(1)有機微粒子の製造
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入口を備えた重合容器に、脱イオン水120重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム0.8重量部およびpH緩衝剤として重炭酸ナトリウム0.4重量部を仕込み攪拌しながら60℃に加熱した後、窒素置換した。この中にメチルメタクリレート2重量部を添加し、10分後に0.98重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し種重合を行った。発熱開始から60分後、4.9重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し、さらに10分後、メチルメタクリレート41重量部、スチレン30重量部、エチレングリコールジメタクリレート29重量部、脱イオン水60重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム1.2重量部、重炭酸ナトリウム0.5重量部からなる乳化モノマー液を攪拌下、温度を75℃に保ちながら3時間かけて滴下し、滴下終了後2時間85℃を維持して重合を終了させ、水系ラテックス(A−1)を得た。
【0026】
上記で合成した水系ラテックス(A−1)をセルロース透析チューブに充填して、これをタンクに移し脱イオン水100Lを外液として加え透析・脱塩を行った。外液の交換は電気伝導度が1000μS/cm以下になるまで行った。この粒子表面疎水処理により、イオン性不純物の限りなく少ない水系ラテックス(A−2)を得た。
【0027】
この精製された水系ラテックス(A−2)をセルロース透析チューブから撹拌付タンクに移し、メチルイソブチルケトン300部を加え撹拌、水系ラテックス中に存在する有機微粒子の有機層への転相を行った。その後静置し、透明な水相と白濁した有機相とを分離し、1次粒子を維持した非水系有機微粒子分散体生成物(A−3)を得た。生成物(A−3)は固形分25.1%、平均粒子径117nm、屈折率1.526であった。
【0028】
実施例1
(1)コート剤の調合
非水系有機微粒子分散体(生成物A−3、固形分25.1%)を多官能重合性モノマーであるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業株式会社製 商品名A−DPA 固形分100%)100重量部に対し、スラリーAの固形分が10重量部となるように添加し、希釈溶剤としてメチルエチルケトン54重量部、レベリング剤としてByketol−OK(ビックケミー・ジャパン株式会社製、商品名)を0.3重量部、開始剤としてイルガキュア184(チバ・ジャパン株式会社製、商品名)を3重量部混合し、コート剤(1)を得た。
【0029】
(2)ハードコートフィルムの製造
次いで、コート剤(1)を厚み100μmのPETフィルム(ポリエチレンテレフタレート、東レ株式会社製、商品名ルミラーU34)に、硬化後の樹脂膜厚が5μmとなるように塗工・乾燥し、紫外線照射機を用いて1500mW/cmの照射強度で、仕事量が300mJ/cmの紫外線処理を行い、硬化物を得た。
【0030】
実施例2
前記実施例1において、ハードコート硬化面の反対側の面にアクリル系粘着剤を含む溶液を塗工、乾燥して厚み25μmの粘着層を設ける以外は同様に実施して、粘着付硬化物を得た。
【0031】
比較例1
前記実施例1において、非水系有機微粒子分散体を添加しなかった以外は同様に実施して、硬化物を得た。
【0032】
比較例2
前記実施例2において、非水系有機微粒子分散体を添加しなかった以外は同様に実施して、粘着付硬化物を得た。
【0033】
比較例3
前記比較例1において、非水系微粒子分散体Aの変わりにシリカ粒子(平均粒子径4.5μm、屈折率1.45、富士シリシア株式会社製 商品名SYLOSPHERE C−1504)を5重量部添加した以外は同様に実施して、硬化物を得た。
【0034】
比較例4
前記実施例2において、非水系微粒子分散体Aの変わりにシリカ粒子(平均粒子径4.5μm、屈折率1.45、富士シリシア株式会社製 商品名SYLOSPHERE C−1504)を5重量部添加した以外は同様に実施して、粘着付硬化物を得た。
【0035】
各硬化物について以下の方法で試験・評価を行い、結果を表1および2にまとめた。
試験・評価方法
(1)Δヘイズ値(ΔHz)
JIS K 7136(2000年版)の規定に基づきヘイズメータ(株式会社東洋精機製作所製、商品名ヘイズガードII)により測定した。PET基材単体のヘイズは0.3であり、測定値から0.3を引いた値をΔHzとした。
(2)鉛筆硬度
JIS K 5600−5−4(1999年版)の規定に基づき鉛筆硬度(株式会社東洋精機製作所製、鉛筆引掻塗膜硬さ試験機(形式P))を測定した。PET基材単体の鉛筆硬度はHBであった。
(3)書き味
ポリアセタールペン(ペン先のφ1.5mm)を用いて、ガラス板上に貼り合せたフィルム上で書き味を確認。フィルム裏面に粘着剤を塗布していないものは、基材両端を両面テープで固定し確認した。書き味をスベリ感と抵抗感の二つの観点で評価し、評価が非常に良好であれば◎、良好であれば○、普通であれば△、悪ければ×とした。
(4)摩擦係数
表面性測定機(商品名HEIDON−14)を用い、23℃、50%RH雰囲気下において、ポリアセタールペン(ペン先のφ1.5mm)を用いて、500g荷重、速度10mm/sの条件にて測定した。
【0036】
【表1】

【0037】
各実施例では書き味が優れていたが、各比較例では書き味が劣っていた。実施例では動摩擦係数と静止摩擦係数にほとんど差がないため、ペン先の動き出しから移動中まで一定の荷重でスムーズに入力することができたため、優れた評価になったと推察される。一方、各比較例では動摩擦係数と静止摩擦係数の差が大きいため、ペン先の動き出しと移動中で荷重が変化してしまい、スムーズな入力が妨げられた結果、実施例よりも劣る結果が得られたと推察される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳化重合法により合成され、表面が疎水化処理された有機微粒子、及び多官能重合性モノマーを含有することを特徴とする、情報入力装置の情報入力部用硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記有機微粒子が、単量体として多官能架橋剤を5重量%以上使用して合成されたものであることを特徴とする、請求項1記載の
情報入力装置の情報入力部用硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記有機微粒子の平均一次粒子径が80〜500nmであることを特徴とする、請求項1または2記載の情報入力装置の情報入力部用硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3いずれかに記載の硬化性樹脂組成物によって塗布・硬化されていることを特徴とする、情報入力装置の情報入力部用ハードコートフィルム。
【請求項5】
請求項4記載のハードコートフィルムが情報入力部に使用されていることを特徴とする情報入力装置。
【請求項6】
入力ペンによって入力された情報を文字、記号、図形等として認識可能なことを特徴とする請求項5記載の情報入力装置。

【公開番号】特開2010−231540(P2010−231540A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78899(P2009−78899)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【出願人】(592230542)ガンツ化成株式会社 (38)
【Fターム(参考)】