説明

情報処理システム、通信制御装置及びプログラム

【課題】送信した情報について通信相手の環境ではどのように再生されているのかを確認する。
【解決手段】情報処理システム60は、情報処理装置20A,20B,20Cと、各情報処理装置20A,20B,20Cの間の通信をそれぞれ中継し制御する通信制御装置10とを含む。通信制御装置10は、情報処理装置20A及び20Bの間の通信に係る情報を取得し、情報処理装置20A及び20Cの間の通信の設定を、取得された通信に係る情報に基づいて設定し、情報処理装置20Aから情報処理装置20Bに向けて送信された情報を、情報処理装置20Bとともに情報処理装置20Cに転送する。情報処理装置20A,20B,20Cはそれぞれ、各情報処理装置から送信された情報を再生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システム、通信制御装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワークを介したデータ通信技術が発達し、遠隔地間でマルチメディアデータを送受信して利用者間の意思伝達を図るシステムが普及してきている。このようなシステムでは、相手側の通信環境によってはデータの欠損や通信遅延が発生し、利用者間の対話に齟齬を来すことがある。そこで、例えば下記の特許文献1には、複数のコンピュータ間で同一のデータの転送をそれぞれ行ってネットワークの遅延を測定し、測定された遅延に基づいて各コンピュータのアプリケーションの動作を決定する技術が開示されている。
【特許文献1】特表2003−523132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的の一つは、通信相手に送信した情報について通信相手の環境ではどのように再生されているのかを確認できる情報処理システム、通信制御装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の情報処理システムの発明は、第1乃至第3の情報処理装置と、前記第1乃至第3の情報処理装置の間の通信をそれぞれ制御する通信制御装置と、を含み、前記通信制御装置は、前記第1及び第2の情報処理装置の間の通信品質に係る情報を取得する取得手段と、前記第1及び第3の情報処理装置の間の通信の設定を、前記取得手段により取得された通信品質に係る情報に基づいて設定する設定手段と、前記第1の情報処理装置から前記第2の情報処理装置に向けて送信された情報を、前記第2の情報処理装置とともに前記第3の情報処理装置に転送する転送手段と、を含み、前記第1乃至第3の情報処理装置はそれぞれ、前記各情報処理装置から送信された情報を再生する再生手段を含むことを特徴とする。
【0005】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の情報処理システムにおいて、前記取得手段は、前記第1及び第2の情報処理装置の間の通信品質に係る情報を予め定められた時間間隔で順次取得し、前記設定手段は、前記第1及び第3の情報処理装置の間の通信の設定を、前記取得手段により順次取得された通信品質に係る情報に応じて順次設定することを特徴とする。
【0006】
また、請求項3に記載の通信制御装置の発明は、第1乃至第3の情報処理装置の間の通信をそれぞれ中継する中継手段と、前記第1及び第2の情報処理装置の間の通信品質に係る情報を取得する取得手段と、前記第1及び第3の情報処理装置の間の通信の設定を、前記取得手段により取得された通信品質に係る情報に応じて設定する設定手段と、前記第1の情報処理装置から前記第2の情報処理装置に向けて送信された情報を、前記第2の情報処理装置とともに前記第3の情報処理装置に転送する転送手段と、を含むことを特徴とする。
【0007】
また、請求項4に記載のプログラムの発明は、第1乃至第3の情報処理装置の間の通信をそれぞれ中継する中継手段と、前記第1及び第2の情報処理装置の間の通信品質に係る情報を取得する取得手段と、前記第1及び第3の情報処理装置の間の通信の設定を、前記取得手段により取得された通信品質に係る情報に応じて設定する設定手段と、前記第1の情報処理装置から前記第2の情報処理装置に向けて送信された情報を、前記第2の情報処理装置とともに前記第3の情報処理装置に転送する転送手段としてコンピュータを機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、送信した情報について通信相手の環境ではどのように再生されているのかを確認できる。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、送信した情報について通信相手の環境ではどのように再生されているのかを経時的に通信環境が変化した場合にも確認できる。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、第1及び第2の情報処理装置間の通信品質を模倣した通信環境を第1及び第3の情報処理装置間の通信に構築できる。
【0011】
請求項4に記載の発明によれば、第1及び第2の情報処理装置間の通信品質を模倣した通信環境を第1及び第3の情報処理装置間の通信に構築するようにコンピュータを機能できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための好適な実施の形態(以下、実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0013】
図1には、本実施形態に係る情報処理システム60のシステム構成図を示す。図1に示されるように、情報処理システム60は、情報処理装置20A,20B,20Cと通信制御装置10とを含み構成される。情報処理装置20A、情報処理装置20C、通信制御装置10は、ローカルシステム40に含まれ、情報処理装置20Bはローカルシステム50に含まれている。ローカルシステム40とローカルシステム50とは、それぞれ遠隔地にあることとしてよく、両者はインターネット等のネットワーク30を介して接続されるものである。そして、ローカルシステム40に含まれる各装置と、ローカルシステム50に含まれる各装置とは、ネットワーク30を介して相互に通信可能となっている。
【0014】
各情報処理装置20の間の通信は、通信制御装置10を介して行われる。そして、本実施形態では、情報処理装置20Aを利用する第1の利用者と、情報処理装置20Bを利用する第2の利用者とがネットワーク30を介して対話を行う際に、情報処理装置20Aから送信された情報が情報処理装置20Bにおいてどのように再生されているのかを情報処理装置20Cにおいて模倣して再生する。以下、各装置の構成について詳細に説明する。
【0015】
図2には、情報処理システム60に含まれる通信制御装置10と情報処理装置20Aの機能ブロック図を示した。本実施形態においては、他の情報処理装置20B,20Cについても情報処理装置20Aとの構成は同じとし、それらの詳細な説明は省略する。
【0016】
図2に示されるように、情報処理装置20Aは、通信部200、記憶部202、制御部204、音声出力部206、表示部208、及び音声取得部210を含む。各部の機能は、コンピュータ読み取り可能な情報記憶媒体に格納されたプログラムが、図示しない媒体読取装置を用いてコンピュータシステムたる情報処理装置20Aに読み込まれ実行されることで実現されるものとしてよい。なお、プログラムは情報記憶媒体によって情報処理装置20Aに供給されることとしてもよいし、インターネット等のデータ通信ネットワークを介して供給されることとしてもよい。
【0017】
通信部200は、ネットワークインターフェースを含み、他の情報処理装置20や通信制御装置10とデータ通信を行う。
【0018】
記憶部202は、半導体メモリや磁気ディスク等の記憶装置を含み、データやプログラムを記憶する。記憶部202に記憶されるプログラムには、各情報処理装置20の利用者の音声データを含むマルチメディアデータを、通信相手の情報処理装置20に送信し、また、当該通信相手の情報処理装置20からマルチメディアデータを受信して再生するアプリケーションプログラムが含まれる。また、記憶部202は、後述する制御部204の作業用のメモリとしても用いられる。
【0019】
制御部204は、中央処理装置(CPU)を含み、情報処理装置20の各部を制御するとともに、記憶部202に記憶されるプログラムに従ってデータを処理する。制御部204は、上述したアプリケーションプログラムに従って、通信部200により他の情報処理装置20から受信したマルチメディアデータを処理してサウンドデータとグラフィックデータを生成し、それぞれのデータを音声出力部206と表示部208に出力する。
【0020】
音声出力部206は、スピーカーを含み、制御部204から入力されたサウンドデータに従って音声を出力する。
【0021】
表示部208は、制御部204から入力されたグラフィックデータに基づいてディスプレイに画像を表示する。
【0022】
音声取得部210は、マイク等の集音装置を含み、利用者の音声を取得し音声データを生成する。
【0023】
本実施形態においては、情報処理装置20Aの利用者と情報処理装置20Bの利用者が互いに対話を行うこととし、情報処理装置20Aと情報処理装置20Bとはそれぞれ相互に、各利用者の音声データと画像データとを含むマルチメディアデータを送受信することとする。
【0024】
次に、通信制御装置10の構成について説明する。通信制御装置10は、各情報処理装置20間の通信を中継し、その通信の帯域や通信の遅延時間等の通信パフォーマンスを制御する装置である。
【0025】
図2に示されるように、通信制御装置10は、通信中継部100、通信品質情報取得部102、及び通信情報設定部104を含む。各部の機能は、コンピュータ読み取り可能な情報記憶媒体に格納されたプログラムが、図示しない媒体読取装置を用いてコンピュータシステムたる通信制御装置10に読み込まれ実行されることで実現されるものとしてよい。なお、プログラムは情報記憶媒体によって通信制御装置10に供給されることとしてもよいし、インターネット等のデータ通信ネットワークを介して供給されることとしてもよい。
【0026】
通信中継部100は、情報処理装置20から受信したデータを、当該データの宛先に応じてネットワーク30やローカルシステム内の装置に転送する。本実施形態においては、通信中継部100は、情報処理装置20Aと情報処理装置20Bとの通信、そして情報処理装置20Aと情報処理装置20Cとの通信をそれぞれ中継するものである。
【0027】
通信品質情報取得部102は、情報処理装置20間のデータ通信についての通信品質の情報を測定し取得する。本実施形態では、通信品質情報取得部102は、情報処理装置20Aと情報処理装置20B間で行われるデータ通信について、一方の情報処理装置20から他方の情報処理装置20へとデータを送信してから到達するまでに発生したデータ転送の遅延時間や、データ送信のパケットロス率(送信エラー率)等の情報を測定し取得するものである。
【0028】
通信情報設定部104は、通信品質情報取得部102により取得した通信品質の情報に基づいて、通信中継部100において中継する通信路の通信パラメータを設定する。具体的には、通信情報設定部104は、情報処理装置20Aと、情報処理装置20Bの環境を模倣する情報処理装置20Cとの間の通信路に設定する通信パラメータを、情報処理装置20Aと情報処理装置20Bとの通信について取得された遅延時間や、パケットロス率に基づいて設定する。
【0029】
通信中継部100は、例えば情報処理装置20Aから情報処理装置20Bを宛先として送信されたマルチメディアデータを、上記設定された遅延時間やパケットロス率に基づいた通信品質で情報処理装置20Cにも送信することとする。こうして、通信制御装置10は、実際にデータ通信が行われる情報処理装置20Aと情報処理装置20Bとの通信を模倣した通信環境を、情報処理装置20Aと情報処理装置20Cとの間に構築する。
【0030】
情報処理装置20Cでは、情報処理装置20Aから情報処理装置20Bに送信されたデータを、情報処理装置20Bとほぼ同じタイミングで受信し再生するものであるから、情報処理装置20Aの利用者は情報処理装置20Cにおける再生態様に基づいて、情報処理装置20Bの再生態様を確認する。
【0031】
次に、図3に示されたシーケンス図を参照しながら、本実施形態に係る情報処理システム60の各装置における処理の流れを説明する。
【0032】
情報処理装置20Aと情報処理装置20Bとはアプリケーションプログラムに従ってデータ通信状態にあるとする。ここで、情報処理装置20Bは、情報処理装置20Aが送信した(S1)データを受信してデータを再生している(S2)。また、同じく情報処理装置20Aは、情報処理装置20Bが送信した(S3)データを受信してデータを再生している(S4)。
【0033】
情報処理装置20Aと情報処理装置20Bとの間の通信は、通信制御装置10により中継されており、通信制御装置10は、情報処理装置20Aと情報処理装置20Bとの間で行われている通信につき、遅延時間やパケットロス率等の通信品質を表す情報を取得する(S5)。通信制御装置10は、取得した情報処理装置20A,20B間の通信品質の情報に基づいて、情報処理装置20Aと情報処理装置20Cとの間の通信情報(通信パラメータ)を設定する(S6)。
【0034】
次に、通信制御装置10は、情報処理装置20Aと情報処理装置20Bとの間で送受信されるデータを、情報処理装置20Cにも転送する。すなわち、通信制御装置10は、情報処理装置20Aから送信(S7)されたデータを受信し、当該受信したデータを情報処理装置20Bに送信するとともに、情報処理装置20Cにも転送する(S8)。こうして、情報処理装置20Bと情報処理装置20Cとでは、概ね同じタイミングでデータが再生される(S9,S10)。
【0035】
情報処理装置20Aの利用者は情報処理装置20Cにおいて再生される画面や音声に基づいて、情報処理装置20Bで再生されている画面や音声を確認する。なお、情報処理装置20Cには、情報処理装置20Bと同じ仕様のコンピュータを用いることにより、異なる使用のコンピュータを用いる場合よりも情報処理装置20Bの再生態様がより近い態様で再現される。
【0036】
以上説明した本実施形態に係る情報処理システム60では、情報処理装置20Aと情報処理装置20B間の通信環境を情報処理装置20Aと情報処理装置20C間で模倣(エミュレート)することで、情報処理装置20Aが送信した情報が、通信相手である情報処理装置20Bの環境でどのように再生されているかについて情報処理装置20Cで再現するものである。なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、この分野の通常の知識を有する当業者によって多様な変更、変形又は置換が可能であることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本実施形態に係る情報処理システムのシステム構成図である。
【図2】情報処理システムの機能ブロック図である。
【図3】情報処理システムにおける処理のシーケンス図の一例である。
【符号の説明】
【0038】
10 通信制御装置、20,20A,20B,20C 情報処理装置、40 ローカルシステム、50 ローカルシステム、60 情報処理システム、100 通信中継部、102 通信品質情報取得部、104 通信情報設定部、200 通信部、202 記憶部、204 制御部、206 音声出力部、208 表示部、210 音声取得部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1乃至第3の情報処理装置と、前記第1乃至第3の情報処理装置の間の通信をそれぞれ制御する通信制御装置と、を含み、
前記通信制御装置は、
前記第1及び第2の情報処理装置の間の通信品質に係る情報を取得する取得手段と、
前記第1及び第3の情報処理装置の間の通信の設定を、前記取得手段により取得された通信品質に係る情報に基づいて設定する設定手段と、
前記第1の情報処理装置から前記第2の情報処理装置に向けて送信された情報を、前記第2の情報処理装置とともに前記第3の情報処理装置に転送する転送手段と、を含み、
前記第1乃至第3の情報処理装置はそれぞれ、
前記各情報処理装置から送信された情報を再生する再生手段を含む
ことを特徴とする情報処理システム。
【請求項2】
前記取得手段は、前記第1及び第2の情報処理装置の間の通信品質に係る情報を予め定められた時間間隔で順次取得し、
前記設定手段は、前記第1及び第3の情報処理装置の間の通信の設定を、前記取得手段により順次取得された通信品質に係る情報に応じて順次設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
第1乃至第3の情報処理装置の間の通信をそれぞれ中継する中継手段と、
前記第1及び第2の情報処理装置の間の通信品質に係る情報を取得する取得手段と、
前記第1及び第3の情報処理装置の間の通信の設定を、前記取得手段により取得された通信品質に係る情報に応じて設定する設定手段と、
前記第1の情報処理装置から前記第2の情報処理装置に向けて送信された情報を、前記第2の情報処理装置とともに前記第3の情報処理装置に転送する転送手段と、を含む
ことを特徴とする通信制御装置。
【請求項4】
第1乃至第3の情報処理装置の間の通信をそれぞれ中継する中継手段と、
前記第1及び第2の情報処理装置の間の通信品質に係る情報を取得する取得手段と、
前記第1及び第3の情報処理装置の間の通信の設定を、前記取得手段により取得された通信品質に係る情報に応じて設定する設定手段と、
前記第1の情報処理装置から前記第2の情報処理装置に向けて送信された情報を、前記第2の情報処理装置とともに前記第3の情報処理装置に転送する転送手段としてコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−74227(P2010−74227A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−236143(P2008−236143)
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】